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Ammo→Re!!のようです

230名も無きAAのようです:2013/12/25(水) 10:26:55 ID:g8BJJxhk0
コーヒーの美味い不味いはよく分からない。
ただ苦いだけの飲み物という認識が強いが、眠気と空腹をごまかせるのも確かだ。
目深に被った黒い中折れ帽子の下から世界を睨みつける深紅色の鋭い眼差しは、802号室に向けられていた。
そして、聴覚に神経を集中させ、室内の様子を窺う。

人の動き、会話。
それら全てを耳に入れ、これから彼らが夕食を食べることを理解した。
どうやら、今晩はトマトとバジルが主役のマルゲリータピザのようだ。
美味そうな匂いに、今夜の夕食はピザにしようと心に固く誓った。

あの少年も美味そうだが、それにしても、本当に美味そうな匂いを漂わせるピザだ。

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                ‥…━━ August 4th PM20:35 ━━…‥
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少し遅めの夕食を知らせたのは、オーブンが焼き上がりを知らせる鐘の音だった。
厚手の生地で作られた鍋つかみでオーブンの扉を開くと、黄昏色の窯の中から小麦色の生地に赤黒いトマトソースが乗ったピザが顔を出す。
白いエプロンを身に付け、肩まで伸ばした赤髪と瑠璃色の瞳を持つ女性が作ったピザは、具材はトマトとチーズ、そしてフレッシュバジルだけと云うシンプルなもので、焼き上がりは色味に欠ける。
しかし、取り出したばかりのピザの上にフレッシュバジルを乗せると、途端に鮮やかな物に変わった。

立ち上る豊かなトマトの香りがバジルの爽やかな香りを際立たせ、こんがりと焼けた生地とチーズが食欲をそそる。
大皿に乗せられてすぐに食卓に並んだのは二枚のピザと、モッツアレラチーズとトマトにオリーブを垂らしたサラダだ。
それを始めて目の当たりにした垂れ目の少年は、眼を輝かせ、くるりと丸まった尻尾を千切れんばかりの勢いで左右に振った。
それは意図してではなく、感情の高ぶりによって自然とそうなってしまうものだった。

その少年は人でありながら、犬の耳と尻尾を持つ、耳付きと呼ばれる人種だった。
サラサラとした黒髪と、深海色の瞳を持つ少年の名はブーン。
それを見て得意げに胸を張る赤髪の料理人、ヒート・オロラ・レッドウィングは、“レオン”の名で多くの重鎮を震え上がらせた元殺し屋だった。
今彼女が浮かべる笑みは、殺し屋だったころには想像もできないほど柔和で、蕩け落ちそうなものだった。

まるで、一人の少女が恋を知った時に浮かべるような、温かな笑顔だ。
それに続いて現れた碧眼の女性もまたヒートと同様にエプロンをして、自慢のウェーブがかった金髪を一つに縛っていた。
デレシアというその旅人は、ブーンに名を与え、旅に同伴させた張本人だ。
彼女なくしてブーンに自由はなく、ヒートとの出会いも、その他全ての出会いもなかった。

デレシアはその手に白ワインのボトルを持って現れ、それぞれの席の前にグラスを置いた。

ζ(゚ー゚*ζ「今日は特別。 ブーンちゃんにも少しだけ飲ませてあげるわ」

(*∪´ω`)「お……!!」


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