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( ´_ゝ`)流石兄弟は探偵ではないようです(´<_`;)

1名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 14:09:45 ID:ZblOxX220
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2名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 14:16:00 ID:ZblOxX220

ミセ*゚ー゚)リ「ん、しょっ」

事務所のドアを肩で押し開けて、手紙の束を抱えたミセリが入ってきた。


弟者は事務机から顔を上げると、眼鏡のずれを直し、
ノックも無しに執務室に入ってきた秘書を、鳶色の瞳でぎろりと睨みつけた。

だがミセリは、そんなボスの視線など意にも介さず、
両手いっぱいに抱えた郵便の束を、弟者のデスクの空いているスペースにどさりと置いた。

ミセ*゚ー゚)リ「午後の郵便です、先生」

舞い散る埃と秘書の無礼に、弟者はさらに不機嫌そうな顔になり、目元に皺を寄せた。
だが、ミセリの純粋なブルーの瞳は、そんな弟者の目を、まっすぐに見返していた。

その目の中に読み取れた彼女の心中のつぶやきは、
「先生の仕事を邪魔してごめんなさい」でも「デスクに物を乱暴に置いてしまい失礼しました」でもなく、

あえて言葉にするならば、
「こんなに重い郵便の束を持って階段を昇り、一回で運べる私ってすごいでしょう。誉め称えなさい」
といったものだろう。

3名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 14:18:54 ID:ZblOxX220

(´<_` )「…私はいま、マディンソン対ホーカス鉄道組合の事件の処理で忙しいんだ。
だからミス・ミセリ、その手紙の束の処理については、君に一任しよう。
君が用件を整理して、その後に私に報告してくれたまえ。わかったね?」

精一杯の威厳を声に込めて弟者は言い、ふたたびデスク上の書類に目を落とした。


ミセ*゚ー゚)リ「……」

求めていた賞賛を得られずに不満顔のミセリだったが、
弟者がこれ以上かまってくれる気配が無かったので、しぶしぶ手近の椅子を引き寄せて、
手紙の山の整理に取りかかった。

ミセ*゚ー゚)リ「スクワイア卿からの手紙…スクワイアスクワイア…ああ、あの件だ。経過を聞いてるのかな。それでこっちは……
ハッチントン商会…? これは請求書ね。ポイっと。それで次は……」

(´<_` )「ミス・ミセリ。君はいちいち声に出してつぶやかないと、物事を処理できないのかね?」

ミセ*゚ー゚)リ「えっ。先生は違うんですか?」

(´<_` )「……」

弟者はふたたび眼鏡のずれを直した。
そして、不遜かつ無作法なる自らの秘書の過ちにつき長い意見を述べるべく、大きく息を吸い、準備した。

4名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 14:21:19 ID:ZblOxX220

だが、その意見の最初の一言を発する前に、ミセリが次に持ち上げた薄い手紙から読み上げた名前に、
弟者は椅子に腰掛けたまま、大きく後ろにのけぞることになった。

ミセ*゚ー゚)リ「さて、この手紙は…差出人はドクター・アーネム・タンブルストン。
アーネム、アーネム…。あれ、この名前って、確か…?」

(´<_`;)「……」

ミセ*゚ー゚)リ「中身は、っと。『親愛なる弟へ。』? 
あーっ、やっぱり!
ミスタ・アーネムは確か、先生の実のお兄さんでしたよね?」

(´<_`;)「……誰にだって、認めたくない事実の一つや二つはあるものだが、
まあ、そういうことだ」

5名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 14:25:25 ID:ZblOxX220

(´<_`;)「ったく何だってんだ、兄者から私に手紙だと?
二年近く音信不通だったというのに、今頃突然、手紙なんか寄越して…」

狼狽する弟者を尻目に、ミセリは手紙の封を切り、便箋を広げて読み上げ始めた。

ミセ*゚ー゚)リ「えーと。
『親愛なる弟へ。現在、私が搭乗しているところの国王陛下の軍艦シュルーズベリー号は…』
すごーい、軍艦ですって。お兄様は海軍の船乗りさん?」

(´<_` )「何? なんだって? 軍艦、そんなバカなことがあるもんか。
あいつは一インチの水ですら怖がるような完全なカナヅチだったんだぞ。
おまけに高所恐怖症だ。椅子以上の高さのところには登ったことがないほどのな。
船に乗るなんて、とんでもない」

ミセ*゚ー゚)リ「でもほら。H.M.S.シュルーズベリー、って」

(´<_` )「あ、ああ…。シュルーズベリー号なら知ってる。
たしか、ここプリマスを拠点にしてる、外洋船の蒸気フリゲート艦だったはずだが…」

弟者はミセリの差し示した箇所を読んだ。
たしかに兄者の筆跡で、海軍の軍艦、シュルーズベリー号と書かれている。

(´<_` )「すると、本当に兄者なのか。
あいつ…突然消えたと思ったら、海軍の船になんか乗ってやがったのか」

6名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 14:30:04 ID:ZblOxX220

ミセ*゚ー゚)リ「ほら、続きにも、こう書いてありますよ。
『シュルーズベリー号は現在帰国の途にあり、まもなくウェッサン島を回る位置にいる。
風が持てば、私は九月の半ばにも祖国の土を踏むことになるであろう』」

(´<_` )「何、あいつ、このニューソクに帰ってくるのか。
ちぇっ、どうせ海に出たんなら、そのまま永久に外国の海を彷徨ってれば良かったのに…」

ミセ*゚ー゚)リ「『ところで、親愛なる弟よ。
兄弟の絆にかけて、君がとある問題の解決に力を貸してくれるならば、兄は幸いである。
というのも私は二年前、シュールズベリー号で世界周航の旅に出る前、
放置したまま家賃を払い続けることの馬鹿らしさを鑑み、自分の部屋の賃貸契約を破棄してきたという経緯を持っている。
このような理由のため、目下、私は帰国しプリマスに上陸したとしても、住むところ、行くところが無い。
さらに海軍船には便乗客としての搭乗であり、経済的な問題もあって、どこかのホテルに滞在するということもできかね…』」

7名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 14:30:56 ID:AwmdpuhA0
支援

8名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 14:31:25 ID:ZblOxX220

と、そこまで手紙が読み上げられた時。

(´<_`;)「はっ。まさか…!?」

弟者はやおらに椅子を倒し、立ち上がった。

(´<_`;)「お、おい! 今日は何日だ!」

ミセ*゚ー゚)リ「? 九月の17日ですけど」

手紙の続きを読もうとするミセリを無視して、弟者は大きな皮のトランクケースを引き寄せると、
机の上にあった書類や事務用品を乱雑に詰め込み始めた。

(´<_`;)「ミス・ミセリ! わ、私は出かけねばならん! 今すぐにだ!」

ミセ*゚ー゚)リ「えっ? 出かける? 出張の予定って、今月ありましたっけ…?」

(´<_`;)「い、いや、その、ロ、ロンドンのほうで職業協会の…その…」

9名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 14:34:44 ID:ZblOxX220

荷造りを終えた弟者は、紙が何枚かはみ出ているにもかかわらず、
掛け錠をぱちんと跳ね上げてトランクを閉め、それを右脇に抱え込んだ。

(´<_`;)「と、とにかく出かけてくるからな! 
いいか、たった今から、私は留守だ! 留守だからな!」

ミセ*゚ー゚)リ「そんな急に。お出かけって、いつまでですか」

弟者は事務所ドアまで駆け寄り、がちゃがちゃとドアノブを回し、扉をあけた。

(´<_`;)「いつ?! いつだと?! それはその、必要があるまではずっとだ! 
いいか、この部屋には絶対に…」

と、そこまで言いかけた時に、


( ´_ゝ`)「よう、久しぶり」


開いたドアの向こう側に、
一人の長身の人物と、それに巻き付いた大きな爬虫類、そして腕に抱きついた手足の長い哺乳類。

それらが行儀よく、廊下に立っているのが、
絶望の表情で立ちすくむ弟者の目に飛び込んできたのである。

10名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 14:37:05 ID:ZblOxX220
1.


(´<_` )「ミセリ君」

ミセリは、お茶のお盆を持ちながら、注意深く事務所の中の様子を伺っていた。
開け放たれたドアから片目だけをのぞかせて、「ヤツ」の居場所を確認する。

(´<_` )「ミーセーリー」

弟者は再びミセリに声をかけたが、秘書は探索の目を休めない。

(´<_` )「いいかげんにしないと、お茶がさめてしまうだろう。
いつまでもそこに隠れてないで、早く持ってきなさい」

( ´_ゝ`)「ああミセリさん、こいつなら心配いりませんよ。ほら、こんなにおとなしいものでしてね」

と言って兄者は、自分の椅子の背もたれに絡み付いていた、黄色と黒の縞模様に覆われたニシキヘビを掴んで、
その一メートルはある太った爬虫類の体を、入り口に潜むミセリのほうに、ぽいっと投げつけた。

廊下から長く尾を引く悲鳴と、ティーカップがたくさん割れる音が同時に聞こえ、
弟者は顔を手で覆い、今日何度目になるかわからない長い溜息をついた。

11名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 14:41:03 ID:ZblOxX220

( ´_ゝ`)「そんなに怖いかなあ」

(´<_` )「あのな兄者、ヘビだぞ。それもニシキヘビだ!」

大人の腕くらいはありそうな太いニシキヘビが、音も無く床を這い、
身をくねらせて兄者に近寄り、その足に絡み付き、上っていく。

(´<_` )(うわあ……)

さすがの俺でも、目の前の光景に、それは引く。

だが兄者は平気な顔で、首もとまで上がってきてチロチロと舌を出しているニシキヘビを
暖かいまなざしで見つめている。

( ´_ゝ`)「ああ、ニシキヘビは確かに毒蛇、それも猛毒を持つ種だと考えられているね。一般的には。
だけどこの、南米の一部、ユーコン地域で見られるこの種だけは違うんだ。私が現地の部族から直接確かめたんだ。
弟者、これは自然科学界の定説を根底から揺さぶる、歴史的大発見なんだぞ。毒の無いニシキヘビだ!」

(´<_` )「…だけどヘビだろ!
いくら無毒だからって、アオダイショウを女性に投げつけたら、どんな結果になると思ってるんだ!?」

( ´_ゝ`)「それは駄目だろうね。アオダイショウはありふれている。学術的には何の価値もないよ」

12名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 14:42:10 ID:ZblOxX220

事務所の一角の応接スペースに、いま、二人は向かい合って座っていた。

弟者の逃亡への試みは、わずかの差で間に合わなかった。
逃げ出そうと荷造りしてドアをあけた先には、二年間の世界周航を終えてプリマスに帰ってきた兄者と、
どこで拾ったものか、その細身の体にからみつくニシキヘビと、頭に抱きついた腕の長いサルがいたのだった。


ティーカップ数脚を破壊し、悲鳴を上げて走り去ったミセリのかわりに、弟者は自分で紅茶を入れることにした。
だが給湯室まで来たところで、彼ははたと気づくことになる。

(´<_`;)(あ…ティーポットも割れたんだっけ…)


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