[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
201-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
('A`)は監禁されてしまったようです
1
:
名も無きAAのようです
:2012/08/23(木) 01:10:45 ID:mpY97bZgO
・お題消化型のながら投稿です
・現在のお題
恋愛要素なし
蜘蛛の糸
限界
365日
・鬱ものの予定
・至らないところが多々ありますがご容赦ください
2
:
1.恋愛要素なし
:2012/08/23(木) 01:13:04 ID:mpY97bZgO
――気付いたら、知らない天井だった
そんな、どこぞのアニメにあったようなシチュエーションを、まさか俺が体験するとは思わなかった
('A`)(……頭がぼーっとする)
何度か瞬きを繰り返す
それでも真っ白い天井はそのまま
俺の家の天井は、茶色い木製のしみったれたものなのに
夢にしてはタチが悪い
('A`)(……そもそも俺は何をしてた?)
ふとそう思い、記憶を探る
深夜まで続いたコンビニのバイトをあがり、家に帰っていた
そこまでは覚えていた
その先は分からなかった
('A`)(とりあえず起きるか)
そう思っていつも通り手を動かそうとした
ちゃりん、と白い部屋に鉄の音が響く
('A`)「あれ?」
そういえばなんで手が後ろに回っているんだろうか
なんで両足が縛られているんだろうか
('A`)「…気付くの遅すぎ」
自分の間抜け加減に、思わず笑ってしまう
これだから寝起きは嫌なんだ
3
:
1.恋愛要素なし
:2012/08/23(木) 01:19:19 ID:mpY97bZgO
手足が拘束されていては何も出来ない
格闘するのも体力の無駄だ
早々に諦めた俺は、何をしようか考える
…まぁ、答えは決まっている
今の状況にすることなんて、できることなんて、何もないのだ
だから、いつも通り俺は寝ることにした
(-A-)(誘拐されても学校にいる時と変わらないな)
状況は違えどやることが同じとは
…なんて無意味なんだろう
行為も、存在も
(-A-)(でも、快適だ)
この部屋は学校みたいにうるさくない
声を掛けてくる奴も、いじめてくる奴も、嘲笑する奴もいない
いないんだ……
そう思うと気分がとても楽だった
学校に行かなくていいし、あわよくば誘拐犯に殺されるかもしれなかった
殺されるなら、苦しみは一瞬がいい
ああ、でも、
(-A-)(俺みたいな奴は、苦しむ以外ないんだろうな)
4
:
1.恋愛要素なし
:2012/08/23(木) 01:24:48 ID:mpY97bZgO
私が学校から帰宅した時には、鬱田は眠っていた
(-A-)「…………」
川 ゚ -゚)「……不細工な寝顔」
デレは、こんな奴の、どこがいいんだろうか
むかつく
私の知っているデレは、かわいくて、優しくて、平等で、愚かなはずだった
…それなのに、高校に入って、鬱田と出会ってからおかしくなった
デレは、やたらとこいつに目を掛けるようになったのだ
幼稚園からずっと一緒だった私と、同じくらいに
しかも鬱田のタチが悪いところは、デレの好意を受け取らないところだ
あいつはデレに愛されているくせに、デレを無視して、優しさや思いやりを踏みにじる
そのせいで、デレは躍起になっているのかわからないが、更に鬱田に構うようになった
私は不愉快だった
あいつがいるせいで、私とデレの会話時間が1時間半も失われたのだ
電話やメールで補っても、その損失は減らせなかった
5
:
1.恋愛要素なし
:2012/08/23(木) 01:30:23 ID:mpY97bZgO
…一度、デレに聞いたことがあった
川 ゚ -゚)「……なんでデレは、鬱田に話し掛けるんだ?」
ζ(^ー^*ζ「みんなと仲良しじゃないとつまらないじゃない」
ζ(゚‐゚*ζ「それに鬱田くんは学校でも家でも一人だし…かわいそうだな、寂しくないのかな、って」
…恵まれていなければ、私はデレに同情されたのだろうか
男であればよかったのだろうか
一人であればよかったのだろうか
そうしたら、愛されていたのだろうか
川 - )「…死んでしまえ」
自然とこぼれ出た言葉は、呪詛のようだった
川 ゚ -゚)「二度とデレに会わせるものか」
そう呟きながら、私は鬱田の足のロープを解く
そして代わりに、足枷をはめた
これには長い鎖がついていて、ある程度の範囲までは歩くことはできる
しかし、それはせいぜいトイレに行くまでの長さしかない
玄関までは、絶対に辿りつくことができないのだ
6
:
1.恋愛要素なし
:2012/08/23(木) 01:31:15 ID:mpY97bZgO
中途半端ですが、書き溜めがここまでなので今日は失礼します
「恋愛要素なし」はもう少しだけ続きます
7
:
名も無きAAのようです
:2012/08/23(木) 01:38:28 ID:SB8KyBNU0
乙、楽しみに待ってるよ
8
:
名も無きAAのようです
:2012/08/23(木) 23:05:20 ID:mpY97bZgO
こんばんは
まさか読んでくれている方がいるとは…ありがたいです
前回投下した際に言い忘れてしまったのですが、お題は随時募集中です
1人当たり1日1題ということでお願いします
さて、やっと「恋愛要素なし」を消化することができたので投下します
9
:
名も無きAAのようです
:2012/08/23(木) 23:10:58 ID:mpY97bZgO
誰かに、足を触られているような気がした
(-A-)(……?)
しゅるしゅる、と縄が解かれる音
それから、じゃらじゃらという、鉄が床に擦れる音
カチン、と軽い音
俺の右足に、何かが巻き付いた
その違和感が気になり、目を開けた
モソモソ
川 - )ぅ Σ('A`)
俺の足にひざまずいて、枷をつけている長い黒髪の女がいた
誘拐犯が女だったことに俺はびっくりして足を動かしてしまった
そいつは顔をあげて、俺を見据えながら、こう言った
川 ゚ -゚)「やっと起きたのか、丸一日寝ていたぞ」
呆れたように言う、そいつの能面のような顔には見覚えがあった
……あるにはあるんだが、思い出せない
('A`)「…………」
川 ゚ -゚) ?
灰色のセーラー服…
俺と同じ比府高校の制服だ
加えて袖口に引かれているラインが赤であることから、二年生だということも分かる
ということは、こいつは俺と同級生なのだ
10
:
名も無きAAのようです
:2012/08/23(木) 23:12:50 ID:mpY97bZgO
('A`)「…………」
川 ゚ -゚)「なんだ、人の顔をじーっと見て」
……そういえば、こいつは俺にやたらと話し掛けてくる奴と名前が似ていた気がした
そして、見た目と同じように、冷たい印象を受ける名前だった気がした
('A`)「……冷子?」
川 ゚ -゚)「名前で呼ぶな気持ちが悪い」
素早く言葉が返ってきた
訂正がない、ということは間違ってはないんだろう
それにしても、ろくに会話したこともないようなクラスメイトの名前を、よく覚えていたものだ
('A`)(偉い偉い)
自画自賛
何をしても誰も認めてくれないから、ついやってしまう、悪い癖だ
('A`)「じゃあ、なんて呼べばいいんだ?」
そう聞くと冷子はずいぶんと間の抜けた顔をした
11
:
名も無きAAのようです
:2012/08/23(木) 23:14:31 ID:mpY97bZgO
川;゚ -゚)「……その質問をする前に、色々聞くことがあるはずなんだが」
川 ゚ -゚)「まぁいいさ、私のことは素直と呼べばいい」
そう言って、素直は俺の体をひっくり返した
(;'A`)「ぐぇっ」
何の断りもなかったもんだから、喉の奥から変な声が出た
喉から蛙が出てきそうな声だった
ガチャガチャと鉄が擦れる音がする
それからまもなく、両手の圧迫感がなくなった
どうやら手錠を外してくれたらしい
素直が体から離れたのを確認してから、俺は起き上がった
ずっと同じ体勢を取っていたせいで、肩が痛い
座ったまま伸びをすると、ポキポキと小気味いい音がした
('A`)「あ、ありがと」
いつの間にか、俺の隣に座って、足枷の鎖をいじっていた素直に礼を言った
川 ゚ -゚)「…はぁ」
わけがわからない、といった風に素直が答える
顔は相変わらず無表情だから、少し気味が悪かった
12
:
名も無きAAのようです
:2012/08/23(木) 23:17:12 ID:mpY97bZgO
川 ゚ -゚)「……きみは、自分が置かれている状況に疑問を持たないのか?」
私が問うと鬱田は、
('A`)「うーん…まぁ…」
と、歯切れの悪い返事をした
('A`)「…こういうのは初めてじゃないし」
川 ゚ -゚)「誘拐されるのが?」
('A`)「いや…手錠とか、ね」
苦々しい笑みを浮かべながら鬱田が言う
何か悪いことでもしたのだろうか
…まぁ、必要ないことか
('A`)「それで、俺は殺されるのか?」
鬱田は、静かに私に聞いた
川 ゚ -゚)「殺したくないね」
即答する
川 ゚ -゚)「きみみたいな人間を殺して、前科者になるなんて絶対に嫌だ」
私の目的は、ただひとつだ
デレから、鬱田に対する興味を失わせる
それだけだ
13
:
名も無きAAのようです
:2012/08/23(木) 23:20:00 ID:mpY97bZgO
('A`)「……そっか」
さっきと同じように、鬱田は小さく呟いた
…どこか、残念そうな響きを持っていたのはきっと気のせいであろう
ああ、そうだ
勘違いされても困るから、これだけは言っておこう
川 ゚ -゚)「鬱田、私はきみのことは大嫌いだ」
川 ゚ -゚)「きみがデレに話しかけられる度に、私は惨めに嫉妬して殺意を押さえ付けていた」
川 ゚ -゚)「毎日毎日、私とデレの知らないところで死んでほしいとさえ、願っていた」
川 ゚ -゚)「デレが鬱田のことを忘れるまで、私はきみをここに閉じ込め続ける」
14
:
名も無きAAのようです
:2012/08/23(木) 23:21:24 ID:mpY97bZgO
すると、鬱田はにやりと嫌らしく笑った
('∀`)「安心しろ、俺は人も、生きてることも、この世も、何もかもが嫌いなんだ」
('∀`)「もちろん、お前のことも」
……なんて、おあつらえ向きなのだろう
干渉もほどほどに、お互い合意の上で監禁だなんて、
血なまぐさいことが一切発生しないなんて、素晴らしいじゃないか
川 ゚ー゚)「……ふふっ」
思わず、笑ってしまった
川 ゚ -゚)「それじゃあ、これから嫌いな者同士やっていこうじゃないか」
ずいぶんと役者ぶった言い回しで私は宣言した
こうして、私とドクオのドライな監禁生活は始まった
15
:
名も無きAAのようです
:2012/08/23(木) 23:24:53 ID:mpY97bZgO
>>14
ああああ…!!
最後の一文で台無しにorz
× こうして、私とドクオのドライな監禁生活は始まった
〇 こうして、私と鬱田のドライな監禁生活は始まった
「恋愛要素なし」は以上になります
次は「365日」あたりを消化すると思います
16
:
名も無きAAのようです
:2012/08/24(金) 03:10:02 ID:iTvlWr/gO
そういう監禁もあるのか……
おつおつ!
【お題】つ抽象画
17
:
>>16 抽象画
:2012/08/24(金) 08:45:03 ID:M5.EYSZwO
('A`)「……」
素直が飯を作っている間、俺は部屋を見回すことにした
俺が今座っているのはソファだ
俺が寝転がっても足が少しはみ出るくらいなので、けっこう大きいことがわかる
ソファの正面には小さな長方形のテーブル
それを挟んで、壁際にはテレビが置いてあった
('A`)(液晶テレビ、いいなぁ)
俺の家には、アナログのやつしかない
そして地デジになった時にそれはただのガラクタになってしまった
テレビの右隣はかなり大きいチェストが置いてあった
その上には、よくわからない絵が置いてあった
サイズはA4くらいだろうか
真っ黒い背景に、でたらめにぶちまけたような赤
それから、白とピンクの小さな点がちらほらと
ああ、あと茶色い棒が四つほど、大胆に配置されていた
18
:
>>16 抽象画
:2012/08/24(金) 08:47:31 ID:M5.EYSZwO
('A`)(……なんだこれ)
思わず、じっと見てしまう
が、そのうち段々気分が悪くなってきた
こんなのをリビングに飾るなんて、素直はおかしいんじゃないだろうか
('A`)(…いやおかしいか)
絵から視線を逸し、今度は部屋の左側を見る
大きな姿見が置いてあった
そいつのお陰で、俺は振り返ることなく、後ろの様子を見ることができた
部屋の後方は、どうやらまた部屋があるようだった
曇りガラスでできた扉はスライド式のようだった
('A`)(洋風の障子……?)
貧弱な俺の頭ではそうとしか表現できなかった
気が向いたら素直に聞いてみよう
そう思っていたら、素直が皿がたくさん乗った盆を持ちながら、部屋に戻ってきた
19
:
名も無きAAのようです
:2012/08/24(金) 09:51:18 ID:8Vo7oxdkO
面白いな
お題なら「愛」、いつ使ってもらっても構わない
20
:
名も無きAAのようです
:2012/08/24(金) 09:59:54 ID:lRRrxExwO
お題 痣
21
:
>>16 抽象画
:2012/08/24(金) 10:53:07 ID:M5.EYSZwO
素直が黙々とテーブルに料理を並べる
カレー、サラダ、味噌汁、ひじきの煮物、福神漬け…
正直盛り付けは下手くそだが、匂いはうまそうだった
料理を並べ終えた素直が、ソファの端に座った
俺の隣に座るのが嫌なんだろう
なんとなく気まずくて、俺も端に詰めた
川 ゚ -゚)「いただきます」
素直が麦茶に手を伸ばしてから、
('A`)「いただきます」
俺も言った
…誰かと一緒に食事するのは、久々だった
胃がキリキリする
手が震えて、喉に食べ物がつっかえそうになった
カチャン、
静かな部屋に、響く耳障りな音
スプーンを、カレー皿にぶつけてしまった音
ミセ* ‐ )リ「いったいこの子は、どんな躾をされてきたのかしら」
(* ‐ )「これだから片親は」
( 、 トソン「汚い食べ方、下品」
22
:
>>16 抽象画
:2012/08/24(金) 10:54:23 ID:M5.EYSZwO
頭の中で、声が響く
ぐるぐると、ぐるぐると
カチャン、
粗相した音も、一緒に
( A )「っ…わ、…悪い…」
吐き出すように謝ると、素直は心底どうでもよさそうに、
「いいや、気にしてないさ」
と言った
そして間を開けずに、
川 ゚ -゚)「そもそも私には、きみが食事のマナーを遵守するような奴に見えなかったのだけど」
カチャン、と素直もスプーンをカレー皿に落とした
川 ゚ -゚)「ああ、私もうっかり落としてしまったよ」
('A`)(嘘つけ、わざとのくせに)
そう思ったものの、素直のその、図々しい態度がおかしくて
('∀`)「…ばかじゃねぇの」
つい俺は笑ってしまった
川 ゚ -゚)「きみには言われたくないね」
川 ゚ -゚)「スプーンの音くらいで命の危機にでもさらされているような顔で謝ってさ」
俺に笑われたのが不服だったらしく、素直はムスッとした
それが余計におかしくて、俺はしばらく笑っていた
こんな風に笑うのは、いつぶりだろう
23
:
>>16 抽象画
:2012/08/24(金) 10:55:55 ID:M5.EYSZwO
川 ゚ -゚)「…さっさと笑うのをやめてくれないか、料理が冷めるだろう」
私が注意すると、鬱田は締まりのない顔で、
('∀`)「悪かったな」
と言った
それから、やっとカレーを口にした
川;゚ -゚)(…不可解な奴だ、気持ち悪い)
そう思いながら、味噌汁に手を伸ばす
('A`)「ところでさ」
やっと笑いが収まったらしい鬱田が、私に話し掛けてきた
('A`)「あそこに飾ってある絵はなんなんだ?」
鬱田の視線を追う
どうやらチェストの上に飾ってある、抽象画が気になっているようだ
川 ゚ -゚)「ああ、あれは中学生の時にデレが私にくれたものだよ」
川 ゚ー゚)(懐かしいな、私もデレにあげたけど…大切にしてもらえてるだろうか)
('A`)「へぇ…こんな絵を描く趣味があるのか」
24
:
>>16 抽象画
:2012/08/24(金) 10:58:02 ID:M5.EYSZwO
川 ゚ -゚)「いや、美術の授業で描いたものだ」
川 ゚ -゚)「テーマは「自分の好きなもの」で描いたんだが」
(;'A`)「…ずいぶん変わった趣味してるんだな」
川 ゚ー゚)「素晴らしいだろう?」
(;'A`)「…まぁ人の感性は、自由だよな」
川 ゚ -゚)(…つまり鬱田には微妙なのか)
川 ゚ -゚)(…もったいない奴だ)
('A`)「…で、これは何を表してるんだ?」
川;゚ -゚)「…それは、わからない」
絵をもらった時に、一度聞いたことがあった
ζ(^ー^*ζ「うーんと…私が好きなもの、だよ」
川;゚ -゚)(テーマと同じだよ、それは)
結局、ごまかされてそのままである
川 ゚ -゚)(…明日、学校に行ったら聞いてみようか)
そう思いながら、味噌汁を飲み干した
25
:
名も無きAAのようです
:2012/08/24(金) 10:59:18 ID:M5.EYSZwO
お題まとめ
蜘蛛の糸
限界
365日
愛
痣
26
:
名も無きAAのようです
:2012/08/24(金) 16:20:07 ID:M5.EYSZwO
じわじわと読んでくれる方が増えて嬉しい限りです
お題の消化順はバラバラです
一応、ふわふわとはしていますが起承転結があるのでそこに加えていく形になるので…
でも全部消化します
27
:
名も無きAAのようです
:2012/08/24(金) 16:21:34 ID:M5.EYSZwO
食事の後、俺は足枷を外された
川 ゚ -゚)「風呂は自分で入ってくれ」
川 ゚ -゚)「きみの裸なんか、お金をもらっても見たくないから」
素直にそう言われて、脱衣所に連れて行かれ、バスタオルと、トランクスとTシャツを渡された
…のだが、トランクスとTシャツのデザインが酷かった
(;'A`)(…「たこ焼きはちベェ」って…なにこれ)
たこ焼きの中から、デフォルメされたたこが生首と足を出しているデザインのTシャツを広げながら、思わずうなる
トランクスは、「余裕のないヨッちゃん」とゴシック体で書かれていた
(;'A`)(別にこの部屋でしか着ないからいいか)
無理矢理納得して、洗濯機に脱いだ服を放り込んだ
頭と体を洗い、湯船に浸かる
(*'A`)「ふぃー…」
浴槽に入るのは久々だ
こっちは親戚と縁を切られて、慎ましく一人で暮らしていたから、こんな贅沢はなかなかできなかった
('A`)(…俺はいつまで素直に監禁されるんだろう)
28
:
名も無きAAのようです
:2012/08/24(金) 16:23:10 ID:M5.EYSZwO
デレこと、井出口玲香が俺のことを忘れるまで、と素直は言った
他のクラスメイトなら、俺に関心がないからすぐに忘れるだろう
一年経てば、俺が比府高校にいたかどうかも、あやふやになるだろう
でも、あの井出口が早々に俺のことを忘れるとは思わなかった
奴はいつの間に調べたのか知らないが、俺が一週間学校をサボっていた時に家に来たのだ
ζ(゚‐゚ ζ「鬱田くん、死んでなかった……よかった」
ζ(゚ー゚*ζ「もー、ちゃんと来ないとみんな心配しちゃうよ?」
(;'A`)(余計なお世話だよ…)
あの時の井出口は、底が知れなくて気持ちが悪かった
…もともと井出口のように、やたらと構ってくる人間は嫌いだったが、それでも井出口には、もっと別の何かがあるような気がした
('A`)(なんか、あの笑顔がうさん臭いんだよな)
奴のあだ名であるデレというのは、苗字と名前から一文字ずつ取ったのと、「いつもニコニコしているから」という理由でつけられたらしい
でもいつもいつも笑っているというのは、おかしな話だ
いつも覇気のない表情をしている俺が言うんだから間違いない
人間には喜怒哀楽があるんだから、違う表情があるはずなのだ
あの素直だって、井出口と話している時は笑顔なのだから
29
:
365日
:2012/08/25(土) 15:57:03 ID:HqQxKOGYO
風呂を出て、体を拭く
洗濯機の上に、紺色のスラックスが置いてあった
どうやら、さっき渡し忘れた素直がここに置いていったようだった
頭を拭きながら、素直に聞いた
('A`)「なぁ、井出口が俺のことをずっと忘れなかったらどうすんの?」
川 ゚ -゚)「……忘れるさ」
そう言う素直の声は、弱々しかった
川 ゚ -゚)「一年経てば、きっと……」
('A`)(一年、ねぇ)
365日、8760時間、525600分、31536000秒……
なんとなく頭の中でそう計算して、膨れ上がった数に嫌気がさした
川 ゚ -゚)「来年の今頃なら、進路のことで精一杯になるだろうから」
('A`)「……そうだといいな」
それきり、素直は黙った
服を着て、脱衣所から出る
素直が、俺に足枷をはめる
カチン、と軽い音
川 ゚ -゚)「さぁ退いてくれ、次は私が入るから」
その言葉に従って、俺はリビングに戻った
30
:
名も無きAAのようです
:2012/08/25(土) 23:14:04 ID:C5y1SBxo0
面白きよの
31
:
名も無きAAのようです
:2012/08/26(日) 03:20:45 ID:winEEcg.O
お題追加
なれの果て
おもちゃのハンドガン
右足が無い女
ニット帽
夕方五時のチャイム
世界を憎んだ男、神を呪った女
陽炎
失明した妹、そしてのちに自身も失明
32
:
名も無きAAのようです
:2012/08/26(日) 03:21:44 ID:winEEcg.O
川 ゚ -゚)(先に鬱田を風呂に入れたのはまずかったかな)
そう思いながら、私は浴槽を見つめた
洗い物や明日の授業の支度を優先するために、先に鬱田に風呂に入らせたのだが…嫌いな奴と一緒の風呂に入るのは少し気が引けた
川 ゚ -゚)(今日はシャワーだけにしよう)
そう考えて、蛇口をひねった
温かくて、気持ちがいい
目をつむりながら、さっきちらっと見えてしまった鬱田の痣を思い浮かべる
あれは、左の二の腕にあった
棒か何か、固いもので殴られたような、青い痣だった
川 ゚ -゚)(痛そうだったな)
きっと長岡かその取り巻きあたりがやったのだろう
長岡はデレに好意を持っているし、しょっちゅう鬱田に暴力を振るっていた
彼の靴や体操着は、いくつ切り刻まれたのだろう
その体に付けられた醜い傷は、いくつ癒えたのだろう
それでも鬱田は、何も言わなかった
そういえば、今は真夏だというのに鬱田の制服は、いつまでも長袖のままだった
去年の今頃も、同じように
33
:
名も無きAAのようです
:2012/08/26(日) 03:23:02 ID:winEEcg.O
川 ゚ -゚)(だからって、鬱田への評価は変わらないのだけど)
シャンプーを落としながら、そう結論付けた
……ああ、でも、
川 ゚ -゚)(太ももについていた傷は、少し気になる)
太ももから膝裏にかけて、褐色の傷があったのだ
もう何年も昔にできたような古い傷跡
川 ゚ -゚)(一体何をしたらあんな傷になるんだろう?)
聞くに聞けない話だった
川 ゚ -゚)「…私には、関係ない」
一線を、引かなくてはならない
もし仮に、鬱田の過去が不幸まみれであったとしても、私は他人でいなければならない
同情をした時点で、この関係は壊れるのだ
世界を、共有してはいけない
同じ言葉を繰り返しながら、私は風呂場を去った
34
:
名も無きAAのようです
:2012/08/26(日) 03:24:33 ID:winEEcg.O
消化したお題「痣」
名前欄に入れるの忘れてた
35
:
名も無きAAのようです
:2012/08/26(日) 11:43:03 ID:winEEcg.O
(;'A`)「あ」
リビングの姿見を見て、俺は気付いた
半袖のTシャツやスラックスから痣や傷が見えてしまった
(;'A`)(……これ、バレるよなぁ)
痣は別にいい
太ももの傷は、正直見られたくなかった
……不意に、あの事故を思い出してしまった
从 从「いたい…いたいよ、おにいちゃん…」
|゚ノ )「……ぁ゛、あ…………」
(;-A-)(はぁ…)
忘れなければ
謝罪しても、後悔しても、跪けど、許しを乞うても、許されなくとも
('A`)(何も、戻ってこないんだから)
ソファに寝転ぶ
こういう時は寝てしまうのがいい
(-A-)(早く寝てしまえ、早く、はやく……)
ひたすらそう念じているうちに、俺の意識はどこかに飛んでいった
36
:
名も無きAAのようです
:2012/08/26(日) 20:48:06 ID:winEEcg.O
風呂から出たら、鬱田がソファで寝ていた
川 ゚ -゚)(よく寝る奴だな)
そう思いながら毛布を掛ける
リビングの灯を消して、私は自分の部屋に戻った
ベッドに寝転び、日記を書く
川 ゚ -゚)φ(今日の学校も何も変わりはなかった)
川 ゚ -゚)φ(鬱田がいなかったことを誰も気にしなかった)
川ρ o-)「ふぁ…」
あくびが一つ出た
昨日、鬱田を拉致するのに夜更かししていたからだろう
二行ほど文を付け加えて、日記を本棚に戻した
その時、あるものが目に入った
川 ゚ -゚)(ああ、最近読んでないなぁ)
そう思いながら、私はハードカバーのそれを手に取った
……「失蒼得紅」は、私の叔母である、くるうが自費出版した小説だ
視力を失った妹を助けるために、兄が奔走する話で、その結末はとても後味の悪いものだった
兄は悪魔と契約して、妹の視力戻す代わりに失明してしまった
しかし悪魔は妹とも契約していた
妹は色を取り戻す代わりに、悪魔から兄殺しを要求される
妹は悩みながらも、白黒の世界で兄を殺し色を取り戻した
しかし悪魔との契約が、「最初に見た色だけを戻す」だけであったから、妹の世界には白と黒と赤しかなかった
妹は気が狂って死んでしまいましたとさ
37
:
失明した妹、後に自分も失明
:2012/08/26(日) 20:50:01 ID:winEEcg.O
川 ゚ 々゚)「ジャンルは現代ファンタジーメルヘンなの」
くるうはそう言っていたけど、絶対違うだろう
ファンタジー要素はあるけど、そんなメルヘンあってたまるか
まぁ…そんな話だから、一般受けするはずもなく、ほとんどの人は知らないだろう
現に私とデレしか…
川 ゚ -゚)(…あ、)
訂正、鬱田も前に読んでいた
しかも愛読書らしく、よく手にしていた
意外な共通点である
川 ゚ -゚)(…ちょっとやだな)
そう思っているうちに、うとうととしてきた
瞼が勝手に閉じていく
川 = -=)(ああ、ねむい)
………………
38
:
名も無きAAのようです
:2012/08/27(月) 13:22:04 ID:6NLP5h1UO
……………………
くるうは気違いだったらしい
私の母、つまりくるうの姉がそう言っていたし、くるう本人も自称していた
詳しいことは知らないけれども、私が生まれる前から色々と騒動を起こしていたらしい
だからくるうは、縁を切られて、みんなには内緒で私に会いに来ていた
川 ゚ 々゚)「私はどうしようもなく歪んでいるの」
彼女は私とデレにそう言った
川 ^ 々^)「だから名前を捨てたのよ」
にこりと笑って、くるうは言ったけど、幼い私達にはその意味がわからなかった
川 ゚ o゚)「名前を捨てたってどういうこと?」
ζ(゚‐゚*ζ「くるうお姉ちゃんの言うこと、よくわかんない」
川 ^ 々^)
くるうは、ただ笑うだけだった
それだから、私は彼女の本名を知らない
彼女が狂っていたかどうかも、わからない
私にとって、くるうはピアノの先生で、話相手で、遊び友達だった
それはデレにとっても同じはず…
デレも、私と同じ…
39
:
名も無きAAのようです
:2012/08/27(月) 21:19:30 ID:6NLP5h1UO
未消化まとめ
蜘蛛の糸
限界
なれの果て
おもちゃのハンドガン
愛
右足がない女
ニット帽
夕方五時のチャイム
世界を憎んだ男、神を呪った女
陽炎
やっぱりある程度書き溜めしたほうがいいのかなぁ
…まぁいっか
40
:
名も無きAAのようです
:2012/08/27(月) 21:31:25 ID:Sbqes5rYO
俺はこのペースでもいいと思うよ
無論速めてもいいけど
41
:
名も無きAAのようです
:2012/08/28(火) 10:26:37 ID:0DggemAUO
やりやすいペースでやればいいじゃない。仕事じゃないもの
42
:
名も無きAAのようです
:2012/08/28(火) 15:25:36 ID:ZkW2qSnsO
>>40
>>41
ありがとう
長編書いたことないからちょっと困ってました
自分がやりやすいようにやってみます
43
:
名も無きAAのようです
:2012/08/28(火) 22:11:30 ID:IJmaETcA0
この先気になるな
見てるよ
44
:
名も無きAAのようです
:2012/08/29(水) 00:44:59 ID:C/cFq9C6O
>>43
ありがとう
がんばります!
45
:
名も無きAAのようです
:2012/08/29(水) 00:49:01 ID:C/cFq9C6O
……………………
目が覚める
時計を見ればちょうど7時であった
私はいつも通り学校に行く準備をする
食パンをトースターに突っ込み、その間に顔を洗い、制服に着替える
紅茶用の湯を沸かし始めた頃に、トースターが私を呼んだ
トーストにマーガリンとママレードをたっぷり塗って、もそもそと食べる
ついでに湯も沸いたので、ティーパックの入ったマグカップにそれを注いだ
今日は期末テストの結果が返ってくる日で学校が早く終わる
川 ゚ -゚)(…家に帰ると鬱田と長い時間を過ごさなければならないな)
気がかなり滅入る
せっかくだからデレを遊びに誘おうか
駅前のショッピングセンターにでも行って、甘い物を食べよう
そうすれば家に帰らなくてもいいし、デレとたくさん話ができる
川 ゚ -゚)(うん、楽しみだ)
熱々の紅茶でトーストを流し込みながら、そう思った
46
:
名も無きAAのようです
:2012/08/29(水) 00:51:08 ID:C/cFq9C6O
夏でも、朝は比較的涼しい
時折吹く風に、癒されながら私は歩く
ζ(゚ー゚*ζ「クー!」
背後から、聞き慣れた声がした
それから、ぱたぱたと駆け寄る音
ζ(^ー^*ζ「おはよう、クー」
川 ゚ー゚)「おはよう、デレ」
ニコニコと笑うデレに、私も笑顔で返す
ちなみにクーというのは私のことで、デレがつけたあだ名である
いつも冷静で、名前も冷たいからクールなんだそうだ
ζ(゚ー゚*ζ「今日も暑そうだね〜」
川 ゚ー゚)「そうだな」
いつものように、何でもない会話を交わす
昨日の夕飯の話とか、テストの出来とか本当に他愛のない会話だ
それでも、楽しい
だって私は誰よりもデレのことが好きだから
きっと私が一番彼女のことを理解しているし、たくさん知っている
ああ、デレ……
ζ(゚ー゚*ζ「クー、どうしたの?」
川 ゚ー゚)「…なんでもない、ちょっとぼーっとしてた」
47
:
愛
:2012/08/29(水) 01:06:27 ID:C/cFq9C6O
きっとこれは恋じゃなくて、愛だ
川 ゚ -゚)(性別なんて、関係ないよね?)
そんなことを思っていた時だった
川 ゚ 々゚)「愛することは、自分が正しいと信じられることだよ」
川 ゚ 々゚)「そして恋は、自分を正しいと思い込みたいんだよ」
川 ゚ 々゚)「この人といれば幸せになれるはず、嫌なところもあるけど、私は信じたい」
川 ゚ 々゚)「そんな疚しい気持ちが恋なのよ」
くるうの言葉が、よぎる
思い込みじゃない
恋じゃない
違う、違う…
ζ(゚‐゚*ζ「クー、どうかしたの?」
川;゚ -゚)「あ…、いや、大丈夫」
ζ(゚ー゚*ζ「体調、悪いなら保健室に…」
川;^ー^)「平気平気」
心配するデレにそう言って、私はそのまま教室に入った
48
:
名も無きAAのようです
:2012/08/29(水) 14:30:49 ID:C/cFq9C6O
教室に入った途端、私はクラスメイトのギャルに話しかけられた
ξ゚⊿゚)ξ「おはよー」
川 ゚ -゚)「おはよう」
ζ(^ー^*ζ「おはようございます」
ξ゚⊿゚)ξ「二人とも知ってるー?」
ζ(゚ー゚*ζ「何をですか?」
ξ゚⊿゚)ξ「鬱田が、失踪したらしいよ!」
ζ(゚o゚;ζ「えっ!?」
川 ゚ -゚)「本当か!?」
驚くデレを真似して、私は聞く
彼女は自慢気に話し始めた
ξ゚⊿゚)ξ「ホントホント、三日くらい前にコンビニ出てから行方がわからないんだってさ!」
その声は、消えた鬱田を心配するようなものではなく、好奇のものだった
気付けば、誰も彼もが鬱田の行方について話していた
_
( ゚∀゚)「やっぱさー自殺とかじゃねぇの?」
( ^ω^)「自殺に見せかけた殺人とかどうかお?」
_
( ゚∀゚)「犯人はヤクザ?w」
( ^ω^)「コンビニでいちゃもんつけられたってのはどうだお」
_
( ゚∀゚)「ああ、あり得るかもなw」
49
:
名も無きAAのようです
:2012/08/29(水) 14:32:43 ID:C/cFq9C6O
川 ゚ -゚)「…………」
ζ(゚ー゚*ζ「みんな…ひどい…」
私は少し鬱田のことが気の毒になってしまった
心配しているのはデレくらいしかいなかったのだ
川 ゚ -゚)(…まぁ、普段から人付き合い悪かったしな)
無理に納得して、席に座った
とりあえず私が鬱田を監禁していることがバレていなくてよかった
その気持ちが、一番大きかった
……その後は、いつも通りの学校と変わらなかった
ただ、ホームルームの際に担任から、鬱田に関する情報を知っていたら教えろと言われただけだった
50
:
名も無きAAのようです
:2012/08/30(木) 15:17:56 ID:gAD3Q6RkO
放課後になり、私はデレに話し掛けた
川 ゚ー゚)「デレ、せっかくだからどこかに寄らないか?」
ζ(゚ー゚*ζ「……うん、行きたいところがあるんだけど、いい?」
川 ゚ー゚)「いいよ、デレの行きたい所なら私は喜んで行くよ」
ζ(^ー^*ζ「ほんと?じゃあ一緒に行こう、鬱田くんの家に」
川 ゚ -゚)(……うそでしょう?)
思わず固まって、心の中でぼやく
大体なんで、デレが鬱田の家を知ってるんだ?
あまりの展開に、眩暈がする
ζ(゚ー゚*ζ「…クー?」
川 ゚ -゚)「…なんでもない、それじゃ行こうか」
なんでもないふりをして、私は歩き出す
デレが慌てて後ろから着いてくるのがわかった
ζ(゚‐゚;ζ「クー、怒ってるの?」
川 ゚ -゚)「怒ってないよ」
嘘だ
本当は、怒っている
川 ゚ -゚)(その相手は鬱田だけど…)
でもそんなこと、デレに言えるわけがない
言ったらきっと、デレは、怒る
失望されたくなかった
嫌われたくなかった
だから私は、なかったことにした
51
:
名も無きAAのようです
:2012/08/30(木) 15:19:07 ID:gAD3Q6RkO
鬱田の家は学校から二十五分ほど歩いた所にあった
トタン屋根の、安っぽい借家が並ぶ中、デレはどんどん進んでいく
川 ゚ -゚)「……デレは、鬱田の家に何回か行ったことあるのか?」
ζ(゚ー゚*ζ「あるよー」
振り返りながら、デレは言う
ζ(゚ー゚*ζ「学校に来なくなったら行くようにしてるんだ」
川;゚ -゚)「……そうなんだ」
反応に困って、無難に返事をした
ζ(゚ー゚*ζ「ここだよ」
デレが指し示した先には、一際小さい荒ら家があった
デレは玄関近くの壁に備え付けてある小汚ないポストを覗いた
ζ(゚ー゚*ζ「…中身が入ったままだね」
川 ゚ -゚)「ということは鬱田は家に帰っていないのか」
52
:
名も無きAAのようです
:2012/08/30(木) 15:21:16 ID:gAD3Q6RkO
我ながら白々しい態度である
デレはうなずく
ζ(゚ー゚*ζ「学校はサボってても、ポストの中身だけは出してたからね」
その後、鬱田の家をぐるりと周った
しかし、有力な情報は得られなかったので、デレはがっかりしていた
ζ(゚ー゚*ζ「うーん…次はバイト先に行こうか」
川 ゚ -゚)「そこも行くのか」
行くのは家だけだと思っていたから、私はびっくりしてしまった
ζ(^ー^*ζ「うん、何か証拠が掴めるかもしれないしさ」
デレはまた歩き出した
慌ててその背中を追い、彼女の隣に並んだ
53
:
名も無きAAのようです
:2012/08/30(木) 15:22:52 ID:gAD3Q6RkO
鬱田のバイト先のコンビニは、私の住んでいるマンションの近くにある
そう、たまたま鬱田が帰る時に、マンションを通るから、私は容易に拉致することが出来たのだ
そしてたまたま、あの日は人通りがまったくなかったから、目撃されることもなかった
…こうして振り返ってみると我ながら危うい橋を渡っていたのだな、と呆れてしまう
…などと考えているうちに、コンビニに着いた
早速デレは店員に、鬱田のことについて聞き込みをしようとしたのだが…
ζ(゚ー゚*ζ「ごめん、私少しトイレに行きたいから代わりに聞いてくれる?」
川 ゚ -゚)「…ああ、わかった」
ごめんね〜と謝るデレを見送り、店員に事情を話し、鬱田のことについて聞く
54
:
名も無きAAのようです
:2012/08/30(木) 15:27:06 ID:gAD3Q6RkO
( ´ー`)「そうだねぇ、真面目な子だったよ、ちょっと暗かったけど」
川 ゚ -゚)「はぁ…そうなんですか」
( ´ー`)「あと…服のセンスが変わってる子だったよ、最後にバイトに来た時も長袖だったし」
うまく濁したその言葉に、私はふき出しそうになった
川 ゚ー゚)(ああ、たしかに)
あの日の鬱田は、青を基調としたよれよれの長袖Tシャツと裾がボロボロになった天然ダメージジーンズを履いていた
ダサくてちょっと誘拐するのをためらった記憶があった
私はお礼を言い、ついでにペットボトルのお茶を買った
そしてトイレから出てきたデレに、話し掛けた
川 ゚ -゚)「暗いけど仕事は真面目だったんだってさ」
ζ(゚ー゚*ζ「へぇ〜」
川 ゚ -゚)「あと失踪した時は青い長袖のTシャツ着てたんだってさ」
ζ(゚ー゚*ζ「そうなんだ…暑そうだね」
55
:
名も無きAAのようです
:2012/08/30(木) 15:28:13 ID:gAD3Q6RkO
川 ゚ -゚)「でも、彼は年中長袖だったから気にしてないんじゃないか?」
ζ(゚ー゚*ζ「そうかもね」
会話が、途切れた
私はなんとなく落ち着かなくて、お茶を飲んだ
ζ(゚ー゚*ζ「……」
気付くと、デレが私を見つめていた
川 ゚ -゚)「どうかしたか?」
少し心配になって聞く
ζ(゚ー゚*ζ「ううん、お茶飲みたいなーと思って」
川 ゚ー゚)「じゃあ、あげるよ」
口寂しくてつい飲んでしまっただけで、喉なんか渇いていなかった
だから、デレにお茶をあげた
ζ(゚ー゚*ζ「ありがとう」
そう言ってデレはお茶を受け取った
……気付くと夕方の三時であった
川 ゚ -゚)(これから駅前に行っても大して楽しめないな)
そう考えて、私はコンビニに備え付けてあるベンチに座って話をすることにした
日差しが暑いのは、仕方のないことである
56
:
名も無きAAのようです
:2012/08/30(木) 21:01:59 ID:5YuOPGQM0
気付いたんやろか。
57
:
陽炎
:2012/08/31(金) 01:32:51 ID:6rbK.kL2O
それから程なくして、鬱田のことからくるうのことに会話が移った
ζ(゚ー゚*ζ「そういえば、そろそろくるうお姉ちゃんの命日だよね」
川 ゚ -゚)「ああ…そうだな」
くるうは、車に轢かれて亡くなった
それも、運転手が故意にやった、と聞いた
親戚達が何やら難しい話をしていたのは覚えている
母は言っていた
あの人は、人のものを盗った泥棒なのよ、と
しかし、当時十一歳だった私とデレには、さっぱりわからなかった
亡くなる三日ほど前に、私達はくるうと遊んだが、彼女は幸せそうだったからなおさらだった
川 ^ 々^)「二人は、絶対結婚式に呼ぶからね」
…でも、今考えてみれば、
川 ゚ -゚)
(……くるうは、誰かの浮気相手だったんだろうなぁ)
そんな気がした
だって私はもう大人に近いのだから、子供騙しの話は意味がないのだ
58
:
陽炎
:2012/08/31(金) 01:38:05 ID:6rbK.kL2O
川 ゚ -゚)「……」
アスファルトを、見つめる
ゆらゆらと揺れる陽炎
思考が、ぼーっとしてくる
ζ(゚‐゚*ζ「クー? ちょっとクー?」
川 ゚ -゚)「…あ、…ごめん、ぼーっとしてた…」
ζ(゚‐゚*ζ「今日のクー、なんだか変だよ?」
川 ゚ -゚)「…そうかな?」
ζ(゚ー゚*ζ「うん…やっぱり具合悪いんじゃない?」
両手をパン、と合わせて、デレは言った
ζ(゚ー゚*ζ「マンションまで送っていこうか?」
川;゚ -゚)(それはまずいって!)
川;゚ -゚)「いや、大丈夫だよ…うん」
ζ(゚ー゚*ζ「でも…」
川; - )「大丈夫だから!」
ζ( ‐ *ζ「っ…」
川;゚ -゚)「ご、ごめん…」
ζ(゚ー゚*ζ「…ううん、こっちこそ」
いつもより少し悲しげに、デレが笑った
胸がちくりと痛む
59
:
陽炎
:2012/08/31(金) 01:38:49 ID:6rbK.kL2O
ζ(゚ー゚*ζ「…無理、しないでね?」
川 ゚ -゚)「…ああ」
川 ゚ -゚)(鬱田がいるから、難しいけど)
一人ぼやきながら立ち上がる
ζ(゚ー゚*ζ「明日は大掃除だね」
その一言で、私達はいつも通りになった
川 ゚ー゚)「……ああ、めんどくさいな」
ζ(゚ー゚*ζ「やっぱそうだよねぇ」
他愛のない会話
いつもと同じ放課後
…それだけが癒しだ
陽炎を踏み付けながら、私は家に向かう
60
:
陽炎
:2012/08/31(金) 01:40:50 ID:6rbK.kL2O
もう少ししたら登場人物一覧でも作ろう
じゃないと作者が忘れそう
61
:
名も無きAAのようです
:2012/08/31(金) 02:06:59 ID:b2IFPh32O
続きキター!
もう少し続けてほしいな
62
:
名も無きAAのようです
:2012/09/01(土) 00:28:09 ID:r0.3ZOeQ0
面白い!頑張ってくれ!
63
:
名も無きAAのようです
:2012/09/02(日) 03:48:35 ID:kjqckVz2O
('A`)「…………」
真っ白い天井
しばらく考えて、思い出す
('A`)(そうだ、今監禁されてるんだった)
壁に備え付けられている時計を見れば、午後の一時だった
ちょっと寝過ぎたような気もするが、やることがないのだから仕方がない
いつの間にか、かけられていた毛布を退けて起き上がる
体のあちこちからポキポキと骨が鳴る音がした
地味に首と腰が痛い
やっぱりソファは所詮ソファだ
昨日と同じように伸びをする
('A`)「…腹減った」
何か食べるものはあるだろうか?
そう思い、キッチンに向かうと、冷蔵庫にメモが書いてあった
どうやら素直がおにぎりを作ってくれたらしい
扉を開けると、すぐそれが目に入った
ついでにお茶のペットボトルももらう
リビングに戻って、それを貪る
64
:
名も無きAAのようです
:2012/09/02(日) 03:49:54 ID:kjqckVz2O
('A`)(うめぇ)
コンビニの廃棄でよくおにぎりは食べていたけど、やっぱり手作りが一番だった
三つあったおにぎりは全て胃の中に収まった
('A`)「ごちそうさま」
考えてみれば誰かの手料理を食べることなんて、母が死んでから、ほぼ皆無に等しかった
('A`)「…………」
ふと、家族が生きていた時のことを思い出す
母は優しくて、父親を深く愛していた
父親は…よくわからない
仕事ばかりしていて家に帰ることは少なかった
出版社に勤めていたらしいとは聞いた
妹は二つ下で、俺に懐いていた
生きていたら、今頃中学三年生で、進路について大いに悩んでいただろう
…もっとも、あの事故で生き延びたとしても、妹には瑕疵が多すぎた
選択肢が与えられない人生は、苦痛だ
生きていないほうがマシだったかもしれない
65
:
名も無きAAのようです
:2012/09/02(日) 03:50:47 ID:kjqckVz2O
('A`)(……なんで俺だけ生き延びてしまったんだろう)
いつも、そう思っている
だけど悪いのは俺じゃない
悪いのは……
('A`)(誰が、悪いんだろう)
父親を誘惑した女が?
そいつと浮気した父親が?
浮気されても父親を愛していた母が?
(;'A`)「あー、わからんっ」
考えても答えが出ない
いつだってそうだ
('A`)(…気持ち悪い)
堂々巡りをしていても仕方がない
気を紛らわせるために俺はテレビをつけた
('A`)(…通販番組ばっかりだ)
チャンネルを変えても、カニが2キロだとか、メモの用意をしろだとか、万能高枝切鋏だとか、そういうものばかりだった
結局、地方放送局のニュース番組に落ち着いた
66
:
名も無きAAのようです
:2012/09/02(日) 03:51:38 ID:kjqckVz2O
('A`)「…………」
報道されているニュースは、ありきたりであった
コンビニへの強盗が入った
轢き逃げ
市内の小学校で飼育されている小動物の惨殺
市役所職員の横領
人が一人消えてもニュースにはならない
その事実に俺は少しびっくりした
('A`)(知られてないだけで、俺みたいな状況の人もいるのかな)
そう思っているうちにニュース番組は終わってしまった
代わりに青汁やグルコサミンのCMがこれでもかと流される
思わずテレビを消して、呟く
(#'A`)「しつこい」
それでも、脳みそに染み込んだCMソングはなかなか離れてくれなかった
おそるべし、青汁グルコサミン
67
:
名も無きAAのようです
:2012/09/02(日) 03:52:57 ID:kjqckVz2O
('A`)(世田谷育ちのグルコサミン〜…)
('A`)「……飽きた」
思考を無理矢理切り替える
少しでも楽しいと感じてしまうと、罪悪感を感じる
誰に?
多分、死んだ妹に?
('A`)(顔も名前も思い出せないのにか)
最低な兄である
薄情だ冷えているきっと血が青い
('A`)(…青くないよ)
左の太ももがじんわりと、感覚を失う
いや、痺れているのか?
わからない
痛い
温かいものが流れている気がする
だらだらと、どろどろと、
痛い、痛い
从 从「いたいよ、おにいちゃん…」
从 从「…たすけて」
のっぺらぼうの女が、目の前に立っている
右足がない女
68
:
名も無きAAのようです
:2012/09/02(日) 03:53:36 ID:kjqckVz2O
ああ、これは妹だ
今も生きていたら、こんな風に成長していたのだろうか?
从 从「ねぇ、いたいの」
从 从「ずっとずっといたい、おにいちゃんのせいだよ」
妹は責め立てる
妹は許してくれない
妹は泣いている
妹は、妹は、
(#'A`)「うるせぇよ!もういねぇんだよ!!」
部屋に響く声
それから、咳き込む音
普段声を出さないからだ
(;'A`)「げほっ…ぇっ、う゛…げほっげほっ」
从 从「…………」
妹が溶ける
部屋の白と混ざる
何もなかった
元々、何も、なかった
ただの、幻
(;'A`)「……寝よう」
眠れば何も感じない
殺されても気付かない
死んでも苦しまない
寝よう、眠れ、寝ろ
ぎゅっと目を瞑る
寝てしまえ、俺
そして、誰か、殺してくれ、
69
:
名も無きAAのようです
:2012/09/02(日) 03:54:57 ID:kjqckVz2O
その日、お母さんは、ドライブに行こうと言った
僕と妹は、喜びました
最近のお母さんは、いつも泣いていたからだ
お父さんが家に帰ってこなかったからだと思う
僕は、後ろの席にすわった
いつもはお母さんのとなりにすわるんだけど、妹がいつもうらやましそうにしていたから、その日はゆずってあげた
妹は喜んだ
お母さんの車はどんどん走る
でも周りが家ばかりでつまらなかった
僕は、本当は海に行きたかった
そのうち、お母さんが笑いだした
おもしろいことはなにもなかった
僕は「どうしたの?」と聞いたけど、お母さんは答えなかった
そのかわり、車がものすごいいきおいで動いた
妹がひめいをあげた
僕はこわくてなにも言えなかった
それから、大きな音といっしょに体がゆれて、いすの間にはさまった
左足がいたかった
でもお母さんと妹と、知らないお姉さんのほうがもっといたそうだった
70
:
名も無きAAのようです
:2012/09/02(日) 03:56:22 ID:kjqckVz2O
お姉さんは、電柱と車の間にはさまれてぐったりしていた
お母さんは車のガラスにぶつかって体がはみ出ていた
妹は僕と同じように体のどこかが、いすの間にはさまっていた
川 々 )「…………」
|゚ノ )「……ぁ゛、あ…………」
从 从「いたい…いたいよ、おにいちゃん…」
僕は妹に話し掛けた
でも妹はずっと「いたい」と言っていて、しばらくしたらねてしまった
気がつくと、色んな人が車を囲んでいた
「大丈夫か!?」
「誰か!救急車!!」
「うわやばいなこれ…生きてるの?」
「いいから早く手伝え!」
「女の子と男の子は平気かも!」
知らない人たちに話しかけられた気がする
だけど、なんだかねむくて、僕も妹みたいにねてしまった
71
:
名も無きAAのようです
:2012/09/02(日) 03:57:37 ID:kjqckVz2O
それから、気がついたら僕は病院にいた
お姉さんは死んだ
お母さんも死んだ
妹も右足を切って、しばらくしてから死んだ
僕は死ななかった
お父さんは泣いていた
( ;∀;)「なんでお前だけ生きてるの?」
そう言ってお父さんは僕をたたいた
( ;∀;)「彼女の代わりにお前が死ねばよかったんだ!!」
何回もたたかれた
すごくいたくて、僕は体を丸めた
お父さんはナースさんに連れられて、それから二度とおみまいしなかった
僕は退院した
たくさんの親せきの家に泊まった
だけど、どこも落ち着かなかった
ひとりがいいな、って思っていた
だから大人になったらひとりになろうって決めた
72
:
登場人物まとめ
:2012/09/02(日) 04:11:05 ID:kjqckVz2O
('A`)「鬱田 独男」
クラスでは空気な人、高2くらい
家庭事情が色々複雑でひねくれてる
人間嫌いのくせにそれになりきれていない
井出口みたいに馴々しい人間が特に嫌い
素直に監禁されてるけど逃げる気はない
むしろ殺してくれと願っている
クラスメイトのジョルジュにはかなりいじめられていた
11歳の頃に事故って天涯孤独になる
川 ゚ -゚)「素直 冷子」
クラスでは近寄りがたい雰囲気を出している美少女、通称クー
井出口ことデレがあまりにも鬱田を構うため、彼を監禁中
井出口に心酔しているヤンデレズ
実は一番平凡で普通の生活を送っている女の子である
ζ(゚ー゚*ζ「井出口 玲香」
クラスで人気者のお嬢様、通称デレ
クーは幼馴染み
鬱田にしつこく絡んでいるがその理由は不明
くるうに多少の影響を受けている
川 ゚ 々゚)「くるう」本名不明のクー母の妹
親戚から縁切り済み
メンヘラと電波の中間に位置しているような人
子供好きでクーとデレにピアノやわけのわからない人生観を教えていた
享年25歳
73
:
登場人物まとめ
:2012/09/02(日) 04:18:27 ID:kjqckVz2O
( ・∀・)「お父さん」
鬱田父
出版社に勤めていたが今はなにしてるかわかりません
以下ネタバレ的な?
|゚ノ ^∀^)「お母さん」
鬱田母
お父さん大好き一筋純愛女の勘って怖いのよ
浮気相手を轢き殺すついでに無理心中してお父さんを廃人にしようとしてた
失敗したけど
从'ー'从「妹」
鬱田妹
お兄ちゃん子で甘えん坊
享年9歳
しばらくは生きていたけど気力が持たなかった
74
:
名も無きAAのようです
:2012/09/02(日) 04:19:51 ID:kjqckVz2O
スクロールした意味なかったじゃないですかーやだー!
ひとまず今日はここまで
お題はまだまだ募集中ですよー
75
:
名も無きAAのようです
:2012/09/02(日) 09:29:32 ID:.v02eby.0
お題「ドクオの性欲」
76
:
名も無きAAのようです
:2012/09/02(日) 11:55:01 ID:ccbpl196O
お題 救済
77
:
名も無きAAのようです
:2012/09/02(日) 12:09:58 ID:5Oz3uKC2O
読ませて頂いてるぜ
お題は「希望」
78
:
名も無きAAのようです
:2012/09/02(日) 14:26:46 ID:xZxEiSjw0
お題「カビパン」
軽く考えてもらっていいです
79
:
名も無きAAのようです
:2012/09/02(日) 18:25:15 ID:LKybjFik0
今のところデレが一番こわい
お題:「月が綺麗ですね」
80
:
名も無きAAのようです
:2012/09/02(日) 19:36:37 ID:X8BNb1ME0
乙先が気になる
お題はピアノ
81
:
名も無きAAのようです
:2012/09/02(日) 20:04:52 ID:ccbpl196O
お題 断罪
82
:
名も無きAAのようです
:2012/09/03(月) 00:17:46 ID:W548Q1wY0
お題「夕焼け」
83
:
名も無きAAのようです
:2012/09/03(月) 18:18:18 ID:f3lRyrLYO
帰宅すると、昨日と同じように鬱田はソファで寝ていた
が、様子がおかしかった
(;-A-)「ぁ…う゛ぅ、ぐ」
彼は、うなされているようだった
川 ゚ -゚)(…少し、かわいそうだ)
そう思ってしまった次の瞬間には、私は鬱田の腹に足を伸ばしていた
(;'A`)「ぐぇっ!?」
蛙がトラックに轢かれたような声を出しながら鬱田が飛び起きた
川 ゚ -゚)「おはよう、いい夢を見ていそうだったからつい邪魔してしまった」
情けをかけてしまった、なんて口が裂けても言えなかった
鬱田は、ぽかんとした後、こう言った
('A`)「ああ…いい夢だったよ」
川 ゚ -゚)「そうか」
会話が途切れる
別に困りはしない
私はキッチンで夕飯の支度を行なった
が、なんとなく身に入らなかった
仕方がないので野菜を適当に切り、サラダとスープ、それから食パンを使ってサンドイッチを作った
84
:
名も無きAAのようです
:2012/09/03(月) 18:21:16 ID:f3lRyrLYO
川 ゚ -゚)「夕食ができた」
('A`)「……ずいぶん朝食的だな」
川 ゚ -゚)「なら食べるな、もしくは先ほど冷蔵庫で見つけてしまったカビパンに変えてやろうか」
(;'A`)「冗談だよ、いただきます」
黙々と私達は食事をする
が、私はなんとなく手をつけにくかった
川 ゚ -゚)「なぁ、鬱田」
川;゚ -゚)(しまった)
つい話し掛けてしまったことに、自己嫌悪
しかしもう遅い
('A`)「なんだ?」
川 ゚ -゚)「……愛って、なんだと思う?」
鬱田は、ぽかんとした後こう言った
('A`)「月が綺麗ですね?」
川 ゚ -゚)「漱石先生はお呼びでない」
('A`)「じゃあ死んでもいいわ」
川 ゚ -゚)「じゃあくたばってしまえ」
思わずそう突っ込むと、鬱田は笑った
('A`)「素直は、意外と面白いな」
川 ゚ -゚)「こっちはわりと真面目に聞いてるんだが」
('A`)「それは悪かった」
悪びれずに、鬱田は謝る
('A`)「でも、そんなこと、考えたことないからなぁ」
川 ゚ -゚)「…いや、気にするな、魔が差したんだ」
('A`)「そうか」
それから、また部屋が静かになった
私はなんだか気まずくて、とりあえず手元にあったスープを飲み込んだ
85
:
名も無きAAのようです
:2012/09/03(月) 18:22:53 ID:f3lRyrLYO
夕食後、私は風呂に入った
鬱田を先にいれるのは生理的に無理だと昨日学習したからである
川 ゚ -゚)(しかし、なんでさっきあんなことを…)
自問自答しながら、シャワーを浴びる
…本当はわかっている
デレへの気持ちが揺らいでいるのだ
たまにあるのだ
自分がこのままデレを慕い続けていいのか、この気持ちは友情ではないのか、本当に愛しているのか
川 ゚ -゚)(…いや、だからって鬱田に聞かなくてもいいじゃないか)
唇を噛み締める
鬱田に頼ってしまった、というのが嫌だった
一線を引くと昨日決めたじゃないか
川 ゚ -゚)(くそっ、死んでしまえ)
川 ゚ -゚)(いや、いっそのこと殺してしまったほうが……?)
精神が不安定な時に、一番嫌いな奴と一緒にいなければならない
しかもいつまで時間を共有しなければいけないのかわからない
なら終わらせてしまえばいい
バレなければ、手は汚れたことにならない
川 々 )「、ひひっ」
いつの間にかあいた口から、笑い声が出た
86
:
名も無きAAのようです
:2012/09/03(月) 18:23:38 ID:f3lRyrLYO
俺がテレビを見ていると、浴室の扉が開く音がした
('A`)(あれ、早くないか?)
シャワーを浴びてきただけにしても、やけに早かった
ぺたぺたと足音がする
('A`)(こっちに来てる?)
なんとなく気まずさを感じて、テレビを必死に見た
足音が止まる
肩に、水滴が落ちてくる
次の瞬間、俺は素直に蹴り飛ばされた
(; A )「っが、」
横っ腹が痛い
しかも何度も体を踏まれる
「う゛、ぇっ…ぐぅ…!」
川 - )「死ね、死んでしまえ」
体に力が入らなくなる
すると素直が、俺の体を仰向けに転がして上に乗ってきた
(; A )「おま…」
87
:
名も無きAAのようです
:2012/09/03(月) 18:24:42 ID:f3lRyrLYO
素直が俺の首に手を回す
そして力が目一杯込められた
(; A )「す、ぁ…ぁ…!」
息ができない
なのに口が開く
ばかみたいだ
やっと死ねるのに
殺されるのに
なのに、
(# A )(この、クソ、が!!)
どうして俺は、素直を蹴り飛ばしたのだろうか
(; A )「げほっ、げほっ…」
息を整えて、まず思ったことはこうだ
(;'A`)(…死に損なった)
それから、腹部を抱え込みながら、静かに泣いている素直を見た
川 ; -;)「…………」
世間の男子高校生なら裸を見れてラッキーと思うかもしれない
しかし残念ながら、俺は性欲というものがまったくないので、なんとも思わなかった
88
:
名も無きAAのようです
:2012/09/03(月) 18:26:13 ID:f3lRyrLYO
まぁ、とりあえずあれだ
このまま見つめていてもかわいそうだと思い、背中を向けた
川 ; -;)「な゛、な゛んで無視ずんのよ゛ぉぉぉ!!!!」
思いっきり背中を蹴られた
(;'A`)「いててて…」
ちくしょう、なんでこんなに力が強いんだ
川 ; -;)「ひっく…ひっく…しね…」
('A`)「ああ、うん…ごめん」
それきり会話らしい会話はなくなり、ひたすら素直が泣くだけであった
('A`)(めんどくせぇ…)
……この数分後、泣きやんだ素直から
「変態!」
と言われて一発殴られたけど、俺は死に損なったショックのほうが大きすぎて何も反応できなかった
89
:
名も無きAAのようです
:2012/09/03(月) 18:28:57 ID:f3lRyrLYO
お題未消化一覧
蜘蛛の糸
なれの果て
おもちゃのハンドガン
ニット帽
夕方五時のチャイム
世界を憎んだ男、神を呪った女
救済
希望
ピアノ
断罪
夕焼け
90
:
名も無きAAのようです
:2012/09/03(月) 18:30:38 ID:f3lRyrLYO
あ、最後のセリフAA抜けてる
泣いてるクーの顔を脳内補完してくださいー
91
:
名も無きAAのようです
:2012/09/03(月) 19:43:40 ID:lBwLFGggO
最後、AA無いのがまた良いと思う
92
:
名も無きAAのようです
:2012/09/03(月) 19:51:23 ID:hGcJysvY0
ものすごく胸クソ悪くていいなこれ好きだ
確かに最後AAなくてもいいと思う
乙!
93
:
名も無きAAのようです
:2012/09/03(月) 22:48:12 ID:.8j.gQ960
書こうと思ってたことが既に
94
:
名も無きAAのようです
:2012/09/04(火) 01:04:56 ID:USqpi9nUO
素直が風呂に入り直した後、俺は風呂に入った
鏡を見ると体のあちこちに痣が出来ていた
首には手の跡が残っていた
('A`)(しばらく痛そうだ)
他人事のようにそう思った
暴力を振るわれるのは、慣れている
昔は親戚に、今は長岡にやられていた
…まさか素直がああなるとは思わなかったけど
しかしこういう素人のほうがいじめ慣れている奴よりよっぽど危険だ
監禁中の人間に、世間体なんてないのだ
体の目立つところに痣があっても誰も気付いてくれはしないのだ
('A`)(やれやれ)
ざぶんと浴槽の中へ
それにしても、素直は意外と感情的な奴であった
まぁ、恋をしている女は不安定で恐ろしいと母はよく言っていた
…それじゃあ、車で女を轢き殺した母は父親に恋をしていたことになる
('A`)(なるほど)
思わぬ収穫である
あってもなくても変わりのないものだけど
('A`)「つまりはどうでもいい」
呟きながら、立ち上がる
そろそろ出よう
そして早く寝るのだ
95
:
名も無きAAのようです
:2012/09/04(火) 01:05:49 ID:USqpi9nUO
居間に戻ってきた鬱田に足枷をして、自室に戻る
早く日記を書こう
未消化物を吐き戻さなければ
川 ゚ -゚)φ(今日は学校で鬱田が失踪したことが告げられ、デレが心配して鬱田の家やバイト先に言った
鬱田はずるい、何もしていないくせにデレに関心を持たれている
死ねばいいのにと思って殺そうとしたけど、暴れたから無理だった
蹴られたお腹が未だに痛い
筋肉なんかなさそうなのに、むかつく、死ね)
それから延々と鬱田への恨み言を書いた
川 ゚ -゚)(ほんと、死んでしまえばいいのに)
幾分かすっきりした気持ちで、眠りについた
でも夢見心地は最悪であった
くるうの、お葬式の夢を見た
96
:
名も無きAAのようです
:2012/09/04(火) 01:08:50 ID:USqpi9nUO
川 p _q)「くるう…なんでしんじゃったの…」
私は、わぁわぁと泣いている
ζ(゚‐゚*ζ「…………」
デレは、棺の中で眠っているくるうを見つめていた
その目は、くるうしか映していないようだった
ζ(゚‐゚*ζ「くるうお姉ちゃん、ほんとに死んじゃったのかな」
川 ; _;)「しんでるよ、お母さんが言ってた」
ζ(゚‐゚*ζ「……そっか、」
ζ(゚‐゚*ζ「なんで死んじゃったのかな」
川 ; _;)「…泥棒したから、ってお母さんが言ってた」
ζ(゚‐゚*ζ「泥棒したら死んじゃうの?」
川 ; _;)「…そうみたい」
川 ; _;)「私も泥棒したら死んじゃうのかな」
ζ(゚‐゚*ζ「…でも、クーは泥棒になりたくないでしょ?」
川 ; _;)「うん」
ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ大丈夫だよ」
97
:
名も無きAAのようです
:2012/09/04(火) 01:10:35 ID:USqpi9nUO
……場面が変わる
火葬場の職員が、くるうの骨を持ってきた
そのそばに、骨壺があった
私とデレは、鉄の箸でそれを摘んで中に入れた
からん、と渇いた音がした
怖かった
生きていた時は色々な話をしてくれたくるうが、こんな小さくなって、白くて、柔らかくて
それから隅っこで、また泣いてしまった
ζ(゚ー゚*ζ「真っ白だったね」
川 ; _;)「…それが怖いよ」
ζ(゚ー゚*ζ「そうかな?」
川 ; _;)「うん」
ζ(゚ー゚*ζ「……泣かないで、クー、きっとくるうお姉ちゃんも困っちゃうよ?」
川 ; _;)「だって…」
死んだら、何も残らないかと思ったら、怖くて
川 ; _;)「デレは、怖くないの?」
ζ( ー *ζ「………………」
98
:
名も無きAAのようです
:2012/09/09(日) 15:37:30 ID:PFGzHVW6O
川 = _=)「…………」
朝起きると、目が腫れぼったかった
顔を洗う
少しマシになったような気がして、鏡を見た
川 = _=)「ひどい顔だ…」
何一つ解決していなかった
川 = _=)(学校行きたくない)
こんなひどい顔をデレに見せるのは気が引けた
でも家に居続けるのも嫌だった
ずる休みなんて、したことがないし
川 = _=)(やったら、あいつと同類だ)
とりあえず、目薬をさそう
それから、学校に行こう
朝食は…食べたくないから抜きだ
(もう、今日は、それでいい)
制服に着替え、すぐに家を出た
時刻はまだ、七時半だった
99
:
名も無きAAのようです
:2012/09/09(日) 15:39:28 ID:PFGzHVW6O
途中でデレに会うこともなく、さっさと歩いてしまったため、かなり早い時間に学校に着いた
教室に入って、目についたのは白い花瓶に生けられた菊だった
その置き場は、鬱田の机の上だった
川 ゚ -゚)「…………」
めんどくさいことになりそうなので、教室に行くのは後にした
たしか、図書室ならもう開いているはずである
そこで本でも眺めていれば、すぐに時間が経つだろう
そう思っていたのだが、図書室は閉まっていた
川 ゚ -゚)「……これはひどい」
今日の私はとことんついていないらしい
行くあてのなくなった私は、やむなく校内を歩き回ることとなった
校内を歩き回ること三十分
ζ(゚ー゚*ζ「クー!」
私は、デレに呼び止められた
川 ゚ー゚)「ああ、おはよう…」
振り返って、私は微笑んだ
デレがこちらに来るのを待ってから、私は教室に向かって歩き出した
100
:
名も無きAAのようです
:2012/09/09(日) 15:43:11 ID:PFGzHVW6O
ζ(゚ー゚*ζ「おはよう…顔色悪いね…」
川 ゚ -゚)「ああ、昨日ちょっと…良くない夢を見て」
笑いながら言ったが、デレは心配そうに私を見る
ζ(゚ー゚*ζ「…なにか、嫌なことがあったの?」
川 ゚ー゚)「…………」
何も言えない
鬱田を監禁し続けることは、かなり精神的にくるし、昨日はあんなことがあった
しかしそれを、誰かに愚痴ることなんてできないのだ
ζ(゚ー゚*ζ「……そうだ!」
ぱん、と手を叩きながらデレは言った
ζ(゚ー゚*ζ「クー、今日うちに泊まりにきなよ!」
嬉しい一言だった
さながら地獄に垂らされた蜘蛛の糸のようにも思えた
ただ、カンダタと違うのは、その糸は容易く切れるものではない
だって、私とデレは深い絆で結ばれているのだから
切れるわけがない
川*゚ -゚)「…いいのか?」
ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫だよ、一人だとよくないことばっかり考えちゃうよ?」
川 ゚ -゚)「…………」
図星である
一人でいても、あの部屋にいても、気分が塞ぐばかりだった
ζ(゚ー゚*ζ「クーのことだから、くるうお姉さんのことで悩んでたんでしょ?」
川 ゚ー゚)「…ありがとう」
その質問には答えずに、私はあいまいに笑みを浮かべた
ζ(゚ー゚*ζ「いいんだよ、学校終わったら荷物用意してうちに来てね」
川 ゚ー゚)「ああ、楽しみにしてるよ」
教室に着き、私達はそれぞれの席に向かった
鬱田の机の上にあった花瓶は、いつの間にかなくなっていた
101
:
名も無きAAのようです
:2012/09/09(日) 15:47:38 ID:PFGzHVW6O
三時間かけて、教室の大掃除が終わった
とはいえ適当にほうきで掃いて、ずっとデレと喋り続けていたのだが
ζ(゚ー゚*ζ「私、先に家帰らなきゃ」
ホームルームが終わって、デレのところに行ったらそう言われた
ζ(゚ー゚*ζ「ちょっと部屋の整理しないと…ね?」
川 ゚ -゚)「悪いね、急に…」
ζ(゚ー゚*ζ「いいのいいの、明日は学校も休みだしさ」
じゃあね、と言ってデレは教室から出ていった
川*゚ -゚)(幸せだ)
昨日はひどい目にあったが、その分今日は満たされていく
鬱田と顔をあわせなくていいというのが一番の幸せだ
一度家に帰ったら、荷物を準備しよう
その間に鬱田を入浴させる
それから、夕飯は適当に冷蔵庫の中にあるものを食べさせればいい
昨日の残ったサンドイッチがあるから十分だろう
わざわざ準備するのも嫌だし
次々計画を立てながら、私は家へ向かった
102
:
名も無きAAのようです
:2012/09/09(日) 15:53:39 ID:jtZujm6c0
きてるー!
支援
103
:
名も無きAAのようです
:2012/09/09(日) 15:56:56 ID:PFGzHVW6O
いつも通り眠っていたら、素直に叩き起こされた
川 ゚ -゚)「起きろ、いつまで寝てるんだ」
('A`)「……」
ぼんやりとした意識で、考える
('A`)(…珍しく機嫌良さそう)
川 ゚ -゚)「足枷は外しておいたから、風呂に入ってくれないか」
どこかそわそわした調子の声で、素直は言った
('A`)「今なのか」
川 ゚ -゚)「ああ、今日はデレの家に泊まるんだ」
勝ち誇ったように素直が言う
優越感にひたっているところに水を差すようだが、俺は井出口に対して特別な感情を持ったことがないから、その報告は心底どうでもよかった
そもそも、今まで、恋をしたことなどないのだが
('A`)「じゃあ、今夜はいないのか」
川 ゚ -゚)「ああ、君は寂しく一人で寝るがいいさ」
あいにく、今までずっと一人暮らしだったから、そんなのは今さらすぎる話である
テンションがやたら高い素直は、うっとうしくて面倒だ
げんなりしながら、そう思った
早くシャワーを浴びに行こう
そうすれば、口をきかなくて済むのだ
104
:
名も無きAAのようです
:2012/09/09(日) 16:00:32 ID:PFGzHVW6O
風呂から上がると、水色のワンピースを着た素直が足枷を持って待構えていた
いつも制服姿ばかり見ていたので、少し新鮮だった
それにしても、きちんとした格好をすれば、意外とさまになるものである
おとなしそうな、清楚な少女の印象を受ける
('A`)(全然ときめかないけど)
川 ゚ -゚)「早くしてくれ、いい加減デレの家に行きたいんだ」
口を開けば、こんな冷たい言葉しか出てこないとは、色々もったいない奴である
俺は無言でソファに座った
かちり、と足枷がはめられる
川 ゚ -゚)「夕食は昨日の残りがあるからそれを食べろ」
そう言って素直は、でかい鞄とともに部屋を去った
('A`)「はぁ…」
やっと静かになった
しかも一日自由だ
(-A-)(監禁されてて自由っていうのもおかしいけど)
そんなことを思いながら、瞼を閉じる
それからまもなくして、心地よい眠気がやってきた
105
:
名も無きAAのようです
:2012/09/09(日) 16:02:00 ID:PFGzHVW6O
私の住んでいるマンションから二十分ほど歩くと、デレの家に着く
少し遠いが、仕方がない
その分、楽しみに感じる、と前向きに考えればいい
川*゚ -゚)〜♪
気付くと、鼻歌まじりにスキップしていた
それにしてもデレの家に泊まるのは何年ぶりだろうか?
最後に泊まったのは、たしか中学三年生の冬休みである
デレの部屋は、今でも代わり映えしないのだろうか
彼女の部屋の壁には、本棚がずらりと並んでいて、本がみっちりと入っていたのが記憶に残っている
本のジャンルは色々だったけど、どれも私の知らないものばかりだった
ネットアイドルの日記とか、なんとかパスの本とか、毒草の本とか
それから、意外なことだけれども、デレはホラー映画が好きだった
彼女の部屋にあったDVDプレイヤーで、「リング」を一緒に見た覚えがあった
ζ(^ー^*ζ「やっぱりクーは有名なやつがいいよね」
黄色いうさぎのぬいぐるみを抱き締めながら、デレは言っていた
有名なやつ
ならば、私が聞いたことのないような無名の作品も彼女は知っているのだろう
106
:
名も無きAAのようです
:2012/09/09(日) 16:02:57 ID:PFGzHVW6O
消化したお題
蜘蛛の糸
今日はここまで
南条あやのことを知っている人はどれくらいいるのでしょうかねという独り言
107
:
名も無きAAのようです
:2012/09/09(日) 19:35:24 ID:cxfKPA4Q0
>>106
卒業式まで死にません?
108
:
名も無きAAのようです
:2012/09/10(月) 02:47:18 ID:3pULoUqU0
これはまた実に面白いな
救いがなさそうなのがまたいい
109
:
名も無きAAのようです
:2012/09/11(火) 00:50:20 ID:gRsDoDjIO
一度でいいから予告文やってみたかった
反省はしていない
いっぱい書き溜めしてそのうち投下いたします
せめて、予告でさらしたところまでは
>>107
それですそれです
110
:
名も無きAAのようです
:2012/09/11(火) 17:00:53 ID:gRsDoDjIO
今日の夜に投下いたします
多分11時から1時くらいまでに
111
:
名も無きAAのようです
:2012/09/11(火) 17:08:13 ID:Uhkdwsk.0
期待
112
:
名も無きAAのようです
:2012/09/11(火) 17:47:05 ID:QpADS3qI0
楽しみに待ってます
113
:
名も無きAAのようです
:2012/09/11(火) 22:28:02 ID:gf6/d.2MO
踊りながら
♪ ∧,_∧
(´・ω・`) ))
(( ( つ ヽ、 ♪
〉 とノ )))
(__ノ^(_)
♪ ∧,_∧ ♪
( ´・ω・) ))
(( ( つ ヽ、 ♪
〉 とノ )))
(__ノ^(_)
待つ
114
:
名も無きAAのようです
:2012/09/11(火) 23:15:27 ID:gRsDoDjIO
そうこうしているうちに、目的地に到着
川*゚ -゚)「…………」
デレの家は、とても素敵だ
赤い屋根のついた真っ白な壁の洋風のお家だ
春になったら、たくさんの薔薇が咲く広い庭だってある
どれもこれも、素晴らしいものばかり
子供の時から、ずっと憧れていた
門扉の前で立ち止まり、深呼吸をした
それから、インターホンを鳴らす
「はい、井出口です」
妙齢の女性の声
きっとデレのお母さんだ
川 ゚ -゚)「素直です、お久しぶりです」
「ああ、今玲香を呼びますね」
ぷつん、とマイクの切れる音
それから少しして、扉の開いて、階段を降りる音
ζ(^ー^*ζ「いらっしゃいクー」
そう言いながら、デレは門扉を開けてくれた
川 ゚ -゚)「お邪魔します」
ζ(゚ー゚*ζ「久々だよね、クーが泊まりにきたの」
川 ゚ -゚)「そうだな」
前回泊まりにきた時のことを話しながら、私達は家の中に入る
ζ(゚ー゚*ζ「夕飯まで何する?」
川 ゚ー゚)「デレのやりたいことでいいよ」
ζ(゚ー゚*ζ「…じゃあ、DVD見たいな」
115
:
名も無きAAのようです
:2012/09/11(火) 23:17:09 ID:gRsDoDjIO
川 ゚ -゚)「ホラーか?」
ζ(゚ー゚*ζ「うん!気分的にはイットかな…でもペットセメタリーもいいなぁ」
怖いのはあまり好きじゃない
でも楽しそうに、デレは話す
だから私も笑う
川 ゚ -゚)「どっちが怖い?」
ζ(゚ー゚*ζ「どっちも怖いよ、でもやっぱりペットセメタリーにするね」
デレが、部屋の扉を開ける
たくさんの本棚
その中にはカバーのかけられた本とDVDケースがずらりと並ぶ
セミダブルサイズのベッドや机の上には、たくさんのぬいぐるみが置かれていた
そのうちのひとつと目が合ったような気がした
川*゚ -゚)「かわいいな」
ζ(^ー^*ζ「かわいいでしょ」
デレが無造作にぬいぐるみを手に取り、抱き締める
116
:
名も無きAAのようです
:2012/09/11(火) 23:17:56 ID:gRsDoDjIO
軍服を着た緑色のクマのぬいぐるみだ
出っ歯で鼻がピンク色のハートで、なかなか愛嬌がある
ζ(゚ー゚*ζ「この子が一番好きかなー」
ぬいぐるみを片手に、デレは本棚を探る
そして一枚のDVDを取り出して、プレイヤーにセットした
ほんの少し、緊張する
川 ゚ -゚)(でも、デレがいるから大丈夫)
そう言い聞かせながら、私は画面に集中した
117
:
名も無きAAのようです
:2012/09/11(火) 23:20:29 ID:gRsDoDjIO
たまに、思い出すことがある
( A )「…………」
降りしきる雨の中で、俺は道端で立ち尽くしていた
電柱のそばに置かれている花束は、雨のせいでグチャグチャになっている
きっとそれは、母が轢いてしまった人に手向けられたものだと考えていた
あの事故で生き残ってしまった俺は、冷笑と軽蔑しか与えられなかったのだ
親戚達は、俺を引き取るのを嫌がっていたし、実際たらい回しにされていた
( 、 トソン「あの子、口を利かなくて不気味だわ」
ミセ* ‐ )リ「すぐうちの子に手を出すの、怖いわ」
(* ‐ )「母親にそっくりで嫌ね」
お前らは何を言ってるんだ
俺はお前の子供に暴力を振るわれたんだぞ
手足を縛られて、殴られて、蹴られて、水中に投げられて、煙草をもみ消され、熱湯を浴びせ、罵声とともに親と妹と太ももの傷を笑われて
それで、一発殴っただけで、
( A )(理不尽だ)
118
:
名も無きAAのようです
:2012/09/11(火) 23:21:54 ID:gRsDoDjIO
幾度となく死のうとしたことがあった
それでも俺は生きてしまった
首を吊っても縄が切れ、薬を致死量飲んでも死ねずに苦しんで、手首を切るのは根性がいることだと悟ってしまった
( A )(誰か殺してくれよ)
切に、そう願っていたんだ
ζ( 、 *ζ「……そこで、何してるの?」
突然、背後から女の子の声が聞こえた
('A`)「あ…なんでもない」
ζ( 、 *ζ「そう?」
彼女は、そう言いながら俺の横を通って、電柱のそばに花を置いた
ζ( 、 *ζ「ここで立ち止まっているから、誰か死んだのかと思ってたわ」
('A`)「…………」
図星である
だけど、それを初対面の相手に説明することもないと思っていた
119
:
名も無きAAのようです
:2012/09/11(火) 23:23:20 ID:gRsDoDjIO
それなのに、俺の口は勝手に喋り出した
父親が浮気していたこと、母が妹と俺を道連れにその浮気相手を轢き殺したこと
母は即死だったこと、妹は右足を切断して苦しみながら死んだこと
俺だけが生き残ってしまったこと、親戚からの扱いがひどいこと
死にたいのに死ねなかったこと
(;A;)「なんで、死ねないんだろうな」
気付くと、俺は泣きながらその子に全てを吐露していた
その子は、なにも言わずに全てを聞いてくれた
同情はなかった
それでよかった
ただひたすら吐き出したかったんだ
だって、
('A`)(もう、二度と会うわけないんだから)
120
:
名も無きAAのようです
:2012/09/11(火) 23:25:06 ID:gRsDoDjIO
川; - )「…………」
ζ(゚ー゚;ζ「…クー、大丈夫?」
川; - )「…ああ、すまない」
例の映画を見たあと、私は気分が悪くなって寝込んでしまった
川; - )(どうも、人が殺される話は好かない)
リングはまだ大丈夫だった
ペットセメタリーはダメだった
洋画は視覚的に強烈な恐怖を好むという話を聞いたことがあるが、実にそうだと思う
ζ(゚ー゚*ζ「お母さんが、おじや作ってくれたみたいだから持ってくるね」
デレが部屋を出て行く
私は、ため息をついた
自分の不甲斐なさに怒りを感じていた
川 ゚ -゚)(デレは、すごいなぁ)
あんな怖い映画でも淡々と見ていられるのだから
121
:
名も無きAAのようです
:2012/09/11(火) 23:28:02 ID:gRsDoDjIO
「クー?」
ζ(゚ー゚*ζ「…クーってば、」
川 ゚ -゚)「……ああ、ごめん、少しぼーっとしてた」
ζ(゚ー゚*ζ「もう、クーったら」
くすくすと笑いながら、デレは私におじやを手渡した
ζ(゚ー゚*ζ「熱くない、大丈夫?」
川 ゚ -゚)「平気だよ、ごめん迷惑かけて」
ζ(゚ー゚*ζ「ううん、私が悪かったわ」
ζ(゚ー゚*ζ「今度からは気をつけるから」
なんだか複雑な気持ちだ
申し訳ないのと心配されて嬉しい、という気持ち
少し顔がにやけてしまう
ζ(゚ー゚*ζ「あ、そういえば明日は暇?」
川 ゚ -゚)「特に用事はないよ」
学校は休みだし、なるべくなら家に帰りたくない
ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ出かけようよ!久々に買い物とか行きたいな、って」
すぐにうなずいた
最近の私はなんてついているんだろうか
鬱田を監禁してから、何もかもがうまくいっているような気がする
私の選択は間違っていなかったんだ
嬉しい
122
:
名も無きAAのようです
:2012/09/11(火) 23:30:13 ID:gRsDoDjIO
ζ(゚ー゚*ζ「駅前のショッピングモールでいい?」
川 ゚ー゚)「デレが行きたいところならどこでもいいよ」
それから、私とデレはどんなことをしたいのかとか、欲しい服の話とか、夏休みはどこに行くのかとか、色々な話をした
ζ(゚ー゚*ζ「クーは実家に帰らないの?」
川 ゚ -゚)「お盆になったら一度帰ろうかなと思ってる」
…とはいえ、無理矢理一人暮らしがしたいと言って出て行ったものだから、あまり長居はしたくないのだが
ζ(゚ー゚*ζ「そうなんだー」
川 ゚ -゚)「デレは?」
ζ(゚ー゚*ζ「うーん、お父さんの仕事が忙しいからね」
川 ゚ -゚)「ああ…お医者さんだから大変だよね」
デレのお父さんは、市内の総合病院に勤めている
ものすごく仕事が忙しいらしく、家に帰ってくることは少ないのだとか
私も二回ほどしか見たことがないけど、相当な愛妻家だということは知っている
というのも、薔薇の花束を片手に家に帰るような人だとデレが言っていたのだ
私達がいる前でも終始離れることはなかったので、それは事実であろう
ζ(゚ー゚*ζ「そういえば、クーは好きな人いる?」
123
:
名も無きAAのようです
:2012/09/11(火) 23:33:20 ID:gRsDoDjIO
川;゚ -゚)「…え?」
ζ(゚ー゚*ζ「だから、好きな人」
今目の前にいる人が好きです、大好きです
小学六年生の頃から意識してました
中学のクラス替えで別のクラスになってしまった時はショックで寝込みました
生きていけないと絶望していました
高校に入ってからは、同じクラスになって嬉しかったけど、デレは鬱田に構うことが多くなって……
川 ゚ -゚)「……いるよ、だけど言えない」
やっとの思いで、そう言った
ζ(゚、゚*ζ「えー、内緒なのー?」
川 ゚ -゚)「…うん」
言えるわけがない
今まで築き上げてきたものが壊れてしまうような気がする
だって、どう足掻いても私はデレにとって親友でしかないんだ
川 ; -;)「……」
ζ(゚ー゚;ζ「え、ちょっ、クー?」
川 ; -;)「ごめん、なんでもない」
拭っても拭っても涙が出てくる
悲しい、悔しい、嫌い、好き、色々な感情が混ざっている
ζ(゚、゚*ζ「…………」
デレは何も言わずに私を抱き締めた
川 ;ー;)「…………」
それだけで、幸せで、優越感に浸れた
だって、鬱田はデレに抱き締められることはないだろうから
川 ;ー;)(ざまあみろ)
124
:
名も無きAAのようです
:2012/09/11(火) 23:36:16 ID:gRsDoDjIO
川 = _=)(……今日も目がしょぼしょぼだ)
あの後、デレと一緒に朝の三時まで話をしていた
内容はくだらないものばかりだ
勢いだけで話していたようなものだし
で、いつの間にか寝てしまって気付けば十時
デレのお母さんに怒られながら家を出て、駅前のショッピングモールに急いで向かっているのが今の状況である
ζ(゚ー゚*ζ「ものすごく目がしょぼしょぼしてるみたいだけど大丈夫?」
川 ゚ -゚)「うん、大丈夫」
あんなに夜更かししたのに、デレの目はぱっちりしている
ちょっと妬ましい
ζ(゚ー゚*ζ「まずどこに行く?」
川 ゚ -゚)「デレが行きたいところで」
ζ(゚、゚*ζ「もう、いっつもそればっかりなんだから」
口を尖らせながら、デレが言った
ζ(^ー^*ζ「たまにはクーの行きたいところからね!」
行きたいところ
どこがいいんだろう?
125
:
名も無きAAのようです
:2012/09/11(火) 23:38:47 ID:gRsDoDjIO
悩みながら歩く
そういえば、久しくピアノを弾いていない
テストやら拉致やら監禁やらで触っていなかった
川 ゚ -゚)(決めた)
川 ゚ -゚)「楽器屋さんで楽譜買おうかな」
ζ(゚ー゚*ζ「いいね、私も何か買おうかな」
そんな話をしながら、私達は歩く
何の楽譜を買うかは決めていない
流行の歌もあまり知らない
なんとなく弾けそうな楽譜があればいい
意外とアバウトな考えである
でも、それが楽しいのだ
行き当たりばったりでもデートが成立するのは女の子同士の特権である
川 ゚ -゚)(デートだと思ってるのは私だけだけどね)
でもいいんだ、これだけでも
126
:
名も無きAAのようです
:2012/09/11(火) 23:41:45 ID:gRsDoDjIO
静かな空間というのは、眠りに最適な条件のひとつである
実際素直が家を出てから、俺は延々と眠り続けていた
その結果……
('A`)「うわー…」
丸一日、寝て過ごしていたようだった
外から、夕方の五時を知らせるチャイムの音が微かに聞こえる
('A`)(ひどい虚無感だ)
とはいえ、トイレと食事とテレビ観賞しかできないのだから、何もできないのだが
(-A-)「ふぁあ…」
目一杯あくびをする
少しすっきりした
('A`)(そういえば素直は帰ってきてないのか?)
部屋に人のいる気配がない
まぁいない方がお互いいいんだろうけど
('A`)(このまま帰ってこなかったら餓死するな)
ふと、そう思った
殺意は有り余るほど持っているが、殺すほどの力を持っていない素直にはちょうどいい方法だろう
それに、餓死は一番苦しい死に方だと思う
いや、拷問には適わないけれども
('A`)(でもそれだと、後始末が大変だよな)
今は夏の真っ直中である
すぐに死体は腐れて、虫がたかり、食まれて腐臭と黒い体液を垂れ流すようになるのだ
それくらいのことはあいつは知っているはずだ
127
:
名も無きAAのようです
:2012/09/11(火) 23:44:47 ID:gRsDoDjIO
('A`)(じゃあ帰ってくるな)
なんて、思っていたら
ピンポーン、
とインターホンが鳴った
('A`)「…………」
思わず息を潜める
相手が誰なのかは知らないが、人がいることを察知されたら面倒なことになるのは目に見えていた
ピンポーン、
もう一度、インターホンが鳴る
('A`)(誰もいませんよ)
心の中で呟いた
それにしても相手は誰なのだろうか?
ピンポーン、
(;'A`)(しつこいな)
カタン、
何かが持ち上がる、軽い音
('A`)(新聞受けの蓋か…?)
何か入れるんだろうか?
…いや、違う
物が入る気配がない
見ている
見ようとしている
この家の中を
(;'A`)「…………」
しかし、新聞受けには返しがついている
中の様子は、わからない
俺がいることは、わからない
128
:
名も無きAAのようです
:2012/09/11(火) 23:47:07 ID:gRsDoDjIO
でも、俺は怖くて仕方がなかった
こうやって、息を潜めながら、外の様子を伺っていることが
相手に伝わってしまいそうな気がして――
「うーつだくーん?いるんでしょうー?」
不意に、新聞受けを通して声が聞こえた
女の子の声
猫撫で声
聞き覚えのある声
いや、ありすぎる声だった
(; A )(…なんで)
「いるんでしょうー?」
(; A )(なんで、あいつがいるんだよ…!?)
ζ(゚ー゚*ζ「ねぇーってばー、鬱田くん」
扉の向こうで、井出口が屈みながら新聞受けを通してこちらに呼び掛けている
いつも通り、笑みを浮かべながら
そんなイメージが、脳内をよぎる
(; A )(な、なんでバレてる? 素直が帰ってきてないことと関係あるのか…?)
ζ(゚‐゚*ζ「鬱田くん、返事してくれないから、勝手に話すね」
少し不機嫌そうに井出口は言った
129
:
名も無きAAのようです
:2012/09/11(火) 23:49:46 ID:gRsDoDjIO
(; A )(話すって、何を?)
ζ(゚ー゚*ζ「鬱田くんが助けてくれって叫んだら、私はあなたを助けるよ」
(; A )(は…?)
ζ(゚ー゚*ζ「警察を呼んで、クーを拉致監禁犯として逮捕してもらうの」
何を、言っているんだろう
ζ(゚ー゚*ζ「でも鬱田くんがそれを望まないなら、私は私のために鬱田くんを助ける」
ああ、わかった
ζ(゚ー゚*ζ「手段を選ばずに、ね」
これはきっと、
ζ(゚ー゚*ζ「取り引きだよ、どっちを選ぶのかは鬱田くんの自由だけど、私は助けてって言ってほしいかな」
(; A )(取り引きと称した脅しだ)
井出口のために俺を助ける?
俺と井出口は特別な関係を持っていないのに、どうして奴はここまで関わろうとしてくるのだろう
こんなことをして何のメリットがあるのだろう
何が目的だ?
ぐるぐると疑問が頭の中で渦巻く
130
:
名も無きAAのようです
:2012/09/11(火) 23:51:24 ID:gRsDoDjIO
ζ(゚ー゚*ζ「鬱田くん、」
('A`)「…………」
俺は、押し黙ったまま、井出口が帰るのを待つ
ζ(゚ー゚*ζ「……わかった、助けてって言ってくれないんだね」
悲しそうに、井出口が言った
だって、助けを求めたら何されるかわからないじゃないか
(;'A`)(あれ?)
なんで、俺はそう思ったんだろう
ζ( ‐ *ζ「後悔しても知らないから」
パタン、と蓋が閉じる
それでも、俺は怖くてしばらく身動きが取れなかった
全身から汗が噴き出す
(;'A`)(…怖かった)
もし素直が帰ってきたら、このことを言うべきだろうか?
…いやだめだ
あいつのことだから、逆上して殺されるかもしれない
('A`)(いや、そのほうがいいか)
131
:
名も無きAAのようです
:2012/09/11(火) 23:56:08 ID:gRsDoDjIO
家の鍵がないことに気付いたのは、ショッピングモールでおやつを食べ終わってデレと雑談していた時だった
川;゚ -゚)「あれ…?」
ζ(゚ー゚*ζ「どうしたの?」
川;゚ -゚)「…鍵が、ない」
たしかに昨日は鞄についていた…はずだった
川;゚ -゚)「…いつからなくしたんだろう」
ζ(゚ー゚;ζ「それは大変だよ、早く探しに行かなきゃ!」
急いで会計を済まし、外に出る
ζ(゚ー゚*ζ「クーは、落とし物のコーナーに行ってきなよ、私は家に電話してみながら道を辿ってみるから」
川;゚ -゚)「ああ、すまない」
そう言って、デレは外に向かった
私は焦りながら、受付の場所を地図で探した
まずいことになった
家の鍵の他にも、あれには鬱田の足枷の鍵もついているのだ
しかも見つからなければ、大家さんに報告してマスターキーを借りなければならない
…でも目の前でドア開けなきゃいけないのだ
そうしたら、中にいる鬱田を見られてしまうのかもしれない
川;゚ -゚)(ちくしょう…!)
やっと受付の場所を探し出し、私は走り出した
最悪なことに、現在地から一番遠い場所であった
132
:
名も無きAAのようです
:2012/09/11(火) 23:59:18 ID:gRsDoDjIO
川;゚ -゚)(頼む、見つかってくれ…!)
そう願いながら、私は向かった
……が、それはまったくの無駄足であった
川; - )(なかった…)
脱力して、近くにあったベンチに座る
楽しくお茶をしていたのは、四時半頃であったのに気付けば、夕方の五時少し前
受付の人が手間取ったせいで、余計に時間が掛かってしまったのだ
とりあえず、デレにメールで鍵が見つからなかったことを伝える
それから、鍵をいつなくしたのか回想する
家を出た時にはあった
デレの家についた時も、あった
今朝、起きた時にはあったような気がする
ショッピングモールには、ない
川; - )(じゃあ見つかるとしたら、ここに来るまでの道…?)
そう思っていたら、メールが来た
「見つかったよ!」
その文字を見た途端、力が抜けてしまった
川; - )「……よ…よかった…」
デレ曰く、探している途中でお巡りさんに出会って、鍵を探していることを伝えたら、これじゃないのかと差し出されたそうだ
川 - )「…………」
安心感で、なかなか動けない
でもなんとか立ち上がって、歩く
133
:
名も無きAAのようです
:2012/09/12(水) 00:07:29 ID:9TYfZ.iIO
メールはこう続いていた
「交番の場所がクーの家に近かったから、そのままクーのマンションの近くで待ってるね」
私のマンションとショッピングモールは少し距離がある
鬱田が部屋にいなかったら、鍵を使って部屋の中で待っててもらいたかったけど、そうもいかない
蒸し暑いけど、外で待ってもらうことにしよう
三十分ほど時間がかかることを謝りながら、そっちに向かうことを伝えて、私はなるべく早く歩き出した
川*゚ -゚)(見つかってよかった)
今度、何かお礼をしよう
デレが喜ぶものって、なんだろう
川;゚ -゚)(…あれ、)
そういえば、デレの好きなものって、
川; - )(なんだっけ……?)
134
:
名も無きAAのようです
:2012/09/12(水) 00:09:38 ID:9TYfZ.iIO
今日はここまで
お題未消化一覧
なれの果て
おもちゃのハンドガン
ニット帽
世界を憎んだ男、神を呪った女
救済
希望
断罪
実は流れ的にはそろそろ終わりが近かったり
遅筆なので終わるのは遅いかもしれないけど
135
:
名も無きAAのようです
:2012/09/12(水) 00:11:26 ID:CGyFSALA0
乙
ハラハラするな
着地点が分からん
136
:
名も無きAAのようです
:2012/09/12(水) 00:23:35 ID:9TYfZ.iIO
蛇足
デレの自室にある本やぬいぐるみは実際にあるもの(もしくはモチーフになったもの)があります
それを考えたら、彼女の趣味と本性が少しだけわかるかもしれません
137
:
名も無きAAのようです
:2012/09/12(水) 00:41:51 ID:zDUEY6/MO
予告のところまでいったな
ζ(゚ー゚*ζが怖く思えてきた
138
:
名も無きAAのようです
:2012/09/12(水) 01:25:11 ID:QtqPx5ycO
乙
デレはどのタイミングで家に来たんだ?
139
:
名も無きAAのようです
:2012/09/12(水) 01:34:50 ID:9TYfZ.iIO
>>138
それは追々回収いたします
ちょっと時系列を目茶苦茶に書いたので混乱するかもしれません
140
:
名も無きAAのようです
:2012/09/12(水) 01:38:02 ID:9TYfZ.iIO
小学生の時、ピンク色のニット帽をプレゼントした
白い花の飾りのついたそれは、デレに似合うだろうな、って
ζ(゚ー゚*ζ「ありがとう」
デレは笑って受け取ってくれた
中学生の時、手作りのケーキをプレゼントした
ハート型の、少しいびつなガトーショコラ
ζ(゚ー゚*ζ「ありがとう」
デレは笑って受け取ってくれた
高校生の時、少し高価なブレスレットをプレゼントした
薔薇型にカットされたローズクォーツがついていた
ζ(゚ー゚*ζ「ありがとう」
デレは笑って受け取ってくれた
他にも色々なものをあげた
食べ物だってあげた
ぬいぐるみもあげた
中学の時に描いた抽象画もあげた
だけど、身に着けているところを見たことがなかった
味の感想を教えてくれたことはなかった
私のあげたぬいぐるみも抽象画も、部屋にはなかった
嬉しいって、言ってくれたことはなかった
川 - )「…………」
ζ(゚ー゚*ζ「クー!」
デレが、駆け寄ってくる
141
:
名も無きAAのようです
:2012/09/12(水) 01:39:14 ID:9TYfZ.iIO
私の手を握って、鍵を渡してくれた
ζ(゚ー゚*ζ「もうなくしちゃだめだよ?」
川 - )「…ああ」
川 - )(なぁ、デレ)
川 - )「…デレは、好きなものはないのか?」
ζ( ー *ζ「……」
ζ(^ー^*ζ「いつか、教えてあげる」
じゃあね、明後日学校で会おうね
そう言ってデレは、私の元から去っていった
川 - )「…………」
なぁ、デレ
私ときみは、長い付き合いがある
私はきみに特別な感情を抱いている
そして長い時間をともにしたから、なんでも知っていると思っていた
私は馬鹿だ
たった今、気付いてしまったことがあるんだ
もしかして、私はきみのことを何も知らないんじゃないかって
川 - )「デレ、」
私達、親友だよな?
142
:
名も無きAAのようです
:2012/09/12(水) 01:59:59 ID:9TYfZ.iIO
カチャカチャ、パタン
鍵の開く音と、扉の開く音
それにやけに安心して、俺は思わずこう言った
(;'A`)「おかえり!」
川 ゚ -゚)「……、ただいま」
面食らった顔をしながら、律義に素直が言った
川 ゚ -゚)「…鬱田相手に、素直に返事してしまったのがなんだか腹立たしいな」
相変わらずの毒舌である
だけど今はそれどころじゃない
(;'A`)「なぁ、さっき家に井出口が来たんだ」
沈黙
それから、素直がかわいそうなものを見る目で俺を見て、嘲笑った
川 ゚ -゚)「デレがここに?そんなわけないだろう」
(;'A`)「本当だって!」
川 ゚ -゚)「デレは、私のために、私の家の鍵を探してくれていたんだ、ここに来るわけがないだろう?」
(;'A`)「でも、」
川 ゚ー゚)「ああ、私がデレの家に泊まったことが羨ましいんだね? だからそんな妄言を吐くんだ、かわいそうに」
(#'A`)(かわいそうなのはお前の頭だよ)
川 ゚ -゚)「デレと私は親友なんだ、彼女が嘘をつくわけがない、お前が嘘つきなんだ」
('A`)「…………」
とはいえ、これ以上何を言っても無駄なのは明白である
恋は盲目、とは言ったけれど…
('A`)(キチガイじみてる)
いくらなんでも、神聖視しすぎだろう
('A`)(気持ちわりぃ)
それからは、いつも通りだった
口も利かずに食事をして風呂に入って寝る
ただ、それだけのこと
143
:
名も無きAAのようです
:2012/09/12(水) 02:22:58 ID:9TYfZ.iIO
デレが私の家に来ただなんて嘘に決まっている
あれは鬱田の嘘に違いない
だって、ほら
ζ(゚ー゚*ζ「おはよう、クー」
川 ゚ー゚)「ああ、おはよう」
いつも通り彼女は話し掛けてくる
私が奴のことを監禁してるって知ってたら、デレは怒るはずだ
でも、デレは笑ってる
怒っていない
笑っている
怒っていない
笑っている
笑っている!!!
ζ(゚ー゚*ζ「夏休みになってもさ、」
川 ゚ -゚)「ん?」
ζ(^ー^*ζ「いっぱい遊ぼうね」
川 ゚ -゚)「…もちろんだよ」
やっぱり鬱田は嘘つきだ
それからも、私とデレの関係に変わりはなかった
それどころか、より深まっていくようだった
夏休みが始まってもデレと会って、たくさん話して、出かけて、遊んで、笑って、
川*゚ -゚)(幸せだ)
144
:
名も無きAAのようです
:2012/09/12(水) 02:23:39 ID:9TYfZ.iIO
ずっとそれが、続くと思っていた
145
:
名も無きAAのようです
:2012/09/12(水) 03:03:25 ID:9TYfZ.iIO
ながら投下はここまで
ここから先は終わりを書き終えるまで投下しません
ものすっごく長くて濃くて気持ち悪くなる文になるかと思います
どうかそれが出来上がるまでは、しばしお待ちを
146
:
名も無きAAのようです
:2012/09/12(水) 03:16:25 ID:NKScNBKoO
長くて濃くて気持ち悪い…!
期待
ぬいぐるみはハッピーツリーフレンズかな
147
:
名も無きAAのようです
:2012/09/12(水) 13:16:55 ID:DAPIKboE0
ハピツリ人形なんてあるのかww
乙
148
:
名も無きAAのようです
:2012/09/12(水) 15:52:01 ID:zW.6/UqU0
乙乙
149
:
名も無きAAのようです
:2012/09/12(水) 21:24:36 ID:Gpcfr8LU0
乙!!
カドルスか…?
150
:
名も無きAAのようです
:2012/09/13(木) 16:12:40 ID:xiNDINlUO
今夜か明日明後日くらいに最終話投下できるかもしれません
若干閲覧注意になっていますのでご了承を
151
:
名も無きAAのようです
:2012/09/13(木) 21:11:11 ID:8VaMa9v.0
楽しみに待ってるー!
152
:
名も無きAAのようです
:2012/09/13(木) 23:11:05 ID:xiNDINlUO
投下します
ちょっと休憩を挟むかもしれませんがご了承を
153
:
名も無きAAのようです
:2012/09/13(木) 23:12:17 ID:xiNDINlUO
小さい頃から、生き物を殺すのが好きだった
最初はアリ、次はバッタ、それからカマキリ、ハムスター、カエル、ハト、ウサギ、ネコ、イヌ
なぜだかわからない
だけど、私の手に温かいものが触れるとすごく嬉しくなったの
冷たいものは、嫌い
冷たくなったものは、憎くて仕方がなくなる
だから、たくさんばらばらにする
耳、目、鼻、くちびる、前足、後ろ足、しっぽ
本当はね、お腹も裂きたかったけどハサミとカッターナイフじゃ脆弱すぎた
知ってる?血と脂に濡れた刃物って、滑りやすくなるんだよ
カッターナイフは、まだいい
刃を替えれば新しく使える
ハサミはダメ、何本も捨てた
でもいいんだ、お父さんに言えば、お小遣いがもらえたから
そのお金の使い道は、誰も知らなかったけど
154
:
名も無きAAのようです
:2012/09/13(木) 23:14:37 ID:xiNDINlUO
ある日、私がいつものようにネコを殺していたら、大人に見つかった
小学一年生の時だった
怒られる、って思った
だって幼稚園や小学校の先生は「生き物は大切に」って言っていたから
川*゚ 々゚)「上手だね、もっとよく見せて」
ζ(゚、゚*ζ「……いいよ」
いつもみたいに、ばらばらにする
お姉さんはすごい、すごいと褒めてくれた
川 ゚ 々゚)「あなた、名前は?」
ζ(゚ー゚*ζ「れいか」
川 ^ 々^)「そう、私はくるうっていうの」
これがきっかけで、私は時々、くるうお姉さんと遊ぶようになった
この時、彼女がクーの叔母であることを知らなかった
クーと知り合ったのも偶然である
公園で遊んでいるクーとくるうお姉さんの姿を見て、私から話し掛けたのだ
ζ(゚ー゚*ζ「くるうお姉ちゃん、何してるの?」
川 ゚ 々゚)「姪っ子と遊んでるの」
川*゚ -゚)「あ、れいかちゃんだ」
ζ(゚、゚*ζ(…だれだっけ?)
幼稚園で遊んだことはあった
小学校では同じクラスだった
だけど、興味がなかったから、覚えていなかった
155
:
名も無きAAのようです
:2012/09/13(木) 23:16:28 ID:xiNDINlUO
川 ゚ 々゚)「ほら、ちゃんと挨拶しなくっちゃ」
川*゚ -゚)「うん、すなおれいこです、こんにちは」
ζ(゚、゚*ζ「…れいこちゃん」
名前がそっくりだなぁ
本当にそんな認識だった
生き物は好きだけど、人は大きすぎるからあまり好きじゃなかったんだ
川 ゚ 々゚)「どっちも名前が似てるから、あだ名つけてあげる!」
くるうが唐突に言い出して、クーを指差した
川 ゚ 々゚)「あなたは名前が冷やっこいからクー」
それから私を指差して
川 ゚ 々゚)「あなたはいつも笑ってるからデレ」
数秒で決められたそれは、なぜだかしっくり来た
それから、そのあだ名を使うようになった
クーとも友達になった
でも、私の秘密をクーは知らない
知っているのは、くるうお姉さんだけ
156
:
名も無きAAのようです
:2012/09/13(木) 23:17:30 ID:xiNDINlUO
ある日、くるうお姉さんは私にプレゼントをもらった
川 ^ 々^)「あけてごらん」
言われるがままに、箱を開けると、おもちゃのハンドガンが出てきた
川*゚ 々゚)「抵抗できないようにした後に撃つと楽しいよ」
そう言われたから、私は学校の飼育小屋からこっそりウサギを盗んで縛った
ウサギは静かで好き
ネコとイヌはうるさいけど、血がたくさん出るから好きだった
ハンドガンを構えると、ウサギの目が潤んだ気がした
一発撃つ
ウサギの体が跳ねる
縛られているのに、だ
それが面白くて、何度も撃った
目や耳に近付けて撃ったりもした
だけど、それだけじゃやっぱり物足りなくて、結局カッターナイフで殺した
でも、あのハンドガンは今でも私の宝物だ
私に、死なない程度に相手をいたぶる楽しみを教えてくれたものだから、今でも、机の中にこっそり隠してあるんだ
157
:
名も無きAAのようです
:2012/09/13(木) 23:20:00 ID:xiNDINlUO
くるうお姉さんは、私の欲しているものを全て与えてくれた
川 ゚ 々゚)「カッターナイフだけじゃつまらないでしょ」
そういってくれたのは、大振りなナイフ
刺しても、切っても、すぐに刃がダメにならない
素敵な、私の相棒
ζ(^ー^*ζ「ありがとう、大事にするっ!」
また、彼女は聞いたことも見たこともないような映画を知っていた
川 ゚ 々゚)「これは、特撮でスナッフフィルムみたいなのを作ったやつ」
ζ(゚ー゚*ζ「スナック?」
川 ^ 々^)「スナッフ、だよ」
よく意味はわからなかったけど、あらすじはおもしろそうだった
だって、マンホールの中に人魚がいるなんて、変わっていたもの!
川 ゚ 々゚)「それから、こっちは死体しか愛せない人の映画」
ζ(゚ー゚*ζ「…ネクってなぁに?」
ζ(゚ー゚*ζ(ロマンティックなら知ってるけど)
川 ゚ 々゚)「ネクロは死という意味、ロマンティックと掛けているんだよ」
ζ(゚ー゚*ζ「ふーん?」
川 ゚ 々゚)「どっちもご両親には内緒ね」
それに関しては大丈夫だった
あの人達は私のことを大事にはしてくれるけど、私の中身は知らないんだから
158
:
名も無きAAのようです
:2012/09/13(木) 23:22:46 ID:xiNDINlUO
……他にも色々、くるうお姉さんの思い出話はあるけど、割愛
くるうお姉さんがくれた最後のプレゼントについて話そう
それは、くるうお姉さん自身の死体だ
ζ(゚ー゚*ζ(……すごい、)
人の死体は、初めて見た
ドラマとかでたまに見たけど、あれは作り物だって分かってたから、つまらなかった
でも、くるうお姉さんは違う
死んでいる、本当に死んでいるのだ
ζ(゚‐゚*ζ「くるうお姉ちゃん、ほんとに死んじゃったのかな」
なんだか現実味がなかったから、クーに思わずそう言ってしまった
川 ; _;)「しんでるよ、お母さんが言ってた」
ζ(゚‐゚*ζ「……そっか、」
ζ(゚ー゚*ζ(でもくるうお姉さん、最後に会った時は元気だったよね?)
159
:
名も無きAAのようです
:2012/09/13(木) 23:24:44 ID:xiNDINlUO
ζ(゚‐゚*ζ「なんで死んじゃったのかな」
川 ; _;)「…泥棒したから、ってお母さんが言ってた」
ζ(゚‐゚*ζ「泥棒したら死んじゃうの?」
川 ; _;)「…そうみたい」
それはいけないことだ
私も、ナイフやDVDを盗られたら相手を殺してしまうかもしれない
川 ; _;)「私も泥棒したら死んじゃうのかな」
ζ(゚‐゚*ζ「…でも、クーは泥棒になりたくないでしょ?」
川 ; _;)「うん」
ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ大丈夫だよ」
そうは言ったけど、大丈夫かどうかなんてわからない
だって私はクーじゃないもの
それから、くるうお姉さんがすっかり骨になってしまうまでにはかなりの時間が掛かった
クーは泣き疲れて寝ていた
私は以前くるうお姉さんにもらった、FBIが扱った事件を取りまとめた本を読んでいた
こういうのって面白いんだ
彼らはナイフ一本で人をばらばらにする
完全に殺してしまう
だけど捕まってしまう
殺しすぎたんだ
だから犯人がわかってしまう
160
:
名も無きAAのようです
:2012/09/13(木) 23:26:39 ID:xiNDINlUO
ζ(゚‐゚*ζ「…………」
大人達がざわざわと動き出す
クーを起こして、後についていく
それから、クーと一緒に、くるうお姉さんの骨を、骨壺の中に移した
ζ(゚‐゚*ζ(長いお箸は使いにくい)
しかも重たくて、大変だった
ああ、それにしても骨はおいしそうだった
ラムネ菓子みたいで、口に含んだら溶けてしまいそうだ
ζ(゚ー゚*ζ「真っ白だったね」
あんなに白くてきれいなものは、初めて見た
川 ; _;)「…それが怖いよ」
ζ(゚ー゚*ζ「そうかな?」
川 ; _;)「うん」
ζ(゚ー゚*ζ「……泣かないで、クー、きっとくるうお姉ちゃんも困っちゃうよ?」
適当に慰める
うるさいなぁ、今は骨を見ていたいのに
川 ; _;)「だって…デレは、怖くないの?」
ζ(゚ー゚*ζ「………………」
人を、殺してみたいな
そう思っただけだった
161
:
名も無きAAのようです
:2012/09/13(木) 23:27:57 ID:xiNDINlUO
くるうお姉さんがいなくなっても私の行動は変わらない
学校の飼育小屋にさえ行けば、生き物は手に入る
死体は適当にゴミ袋に入れて、公園のゴミ箱に入れる
大人達は犯人を見つけようと躍起になっていたけど、無駄だった
ああ、でもそろそろ生き物を殺すだけじゃ物足りなくなってきた
でも、人を殺すのは難しいことだ
まず誰を殺すべきだろうか
知り合いは無理だ
情があるから、殺せない
もし私がサイコパスだったら、淡々と人を殺せるのに
私の中で欲求が膨らんでいく
早く人を殺したい
ζ(゚、゚*ζ(どうやったら、人を殺せるかな)
くるうお姉さんが生きていたら、そう聞きたかった
でも彼女は死んだ
泥棒をして死んだ
仕方がないから、くるうお姉さんにお花をあげよう
泥棒は軽蔑すべき犯罪だけど、くるうお姉さんは私の大切な人だ
162
:
名も無きAAのようです
:2012/09/13(木) 23:29:29 ID:xiNDINlUO
――その日は、雨がたくさん降っていた
夏なのに寒くて、しかも靴がびしょびしょになって、私は嫌だった
でも、お花をあげなきゃ、って思っていたんだ
今にして思えば、
ζ(゚、゚*ζ(あ、)
くるうお姉さんが、
ζ(゚、゚*ζ「……そこで、何してるの?」
('A`)「あ…なんでもない」
ζ(゚、゚*ζ「そう?ここで立ち止まっているから、誰か死んだのかと思ってたわ」
('A`)「…………」
私を導いていたんじゃないかって、
('A`)「…………実は、」
ζ(゚ー゚*ζ(…………)
じゃなかったら、私は、
(;A;)「……なんで、死ねないんだろうな」
ζ(゚ー゚*ζ(…………)
死にたがりの男の子に、出会えなかったと思う
('A`)「…ごめん、急にこんな話して」
目をごしごし擦りながら、彼は言った
私は彼の話を聞いて、気付いてしまった
彼のお母さんが、くるうお姉さんを殺した犯人だって
ζ(゚ー゚*ζ「ううん、大丈夫だよ」
…一度だけ、クーのお母さんが生き残った男の子の…彼の名前を口にしていたような気がする
ζ(゚ー゚*ζ「……ねぇ、あなたのことを殺してもいい?」
('A`)「え…?」
ζ(゚ー゚*ζ「私、いつか人を殺したいと思っていたの」
163
:
名も無きAAのようです
:2012/09/13(木) 23:30:45 ID:xiNDINlUO
彼は押し黙った
だけど、すぐにうなずいて
('A`)「……いいよ」
男の子はそう言った
私は嬉しかった
だけど、人を殺したことはなかったから、下準備が必要だと考えた
ζ(゚ー゚*ζ「今すぐにはできないけど…でも、高校生くらいになったら、出来ると思う!」
('A`)「わかった」
彼はすぐにそう言った
きっと彼は私の言葉を冗談だと思っているんだ
ζ(^ー^*ζ「うん、絶対にね」
でも私は本気だ
('A`)「そうか」
ああそうだ、思い出した
ζ(゚ー゚*ζ「約束だよ、鬱田くん」
164
:
名も無きAAのようです
:2012/09/13(木) 23:31:34 ID:xiNDINlUO
それからの私は、鬱田くんを殺すことで頭がいっぱいだった
以前にも増して、シリアルキラーの本を読むようになって、ナイフの種類も、生き物をばらばらにする練習も増やした
それから、鬱田くんのことについてもたくさん調べた
彼は比府北中の制服を着ていたから、その学校に通っている友達をわざわざ作って、様子を聞いていた
おかげで彼の住んでいる所や進路までわかって、便利だった
ζ(゚ー゚*ζ(私も比府高校にしよう)
比府高校は中堅でそこそこの人気があったから、私が進路の対象に選んでも何の違和感もなく、両親も応援してくれた
そのお陰かわからないけど、私は合格した
鬱田くんも、合格したと聞いて、嬉しかった
なぜかクーも同じ高校を選んで合格したけど、それは別に、どうでもよかった
ζ(゚ー゚*ζ(いよいよ鬱田くんを殺せるんだ)
そう思うと嬉しくて嬉しくて
165
:
名も無きAAのようです
:2012/09/13(木) 23:33:50 ID:xiNDINlUO
入学式の終わった後、彼に話し掛けた時は声が震えた
ζ(゚ー゚*ζ「鬱田くん、久しぶり」
('A`)「…………」
鬱田くんは怪訝な顔をして、
('A`)「……誰?」
と言った
ああ、そうだ
私ったら、あの雨の日に自己紹介するのを忘れてたんだ
ζ(゚ー゚*ζ「井出口玲香です、中学生の時に、一度会ったでしょう?」
('A`)「知らない」
ζ(゚ー゚;ζ「…え、」
('A`)「会ったことないだろ」
鬱田くんは、そのまま学校を出ていってしまった
ζ( ‐ *ζ「…………」
私はショックで何もできませんでした
約束を忘れているだなんて、そんな
ζ( ‐ *ζ(それは、困るよ)
だって、鬱田くんは、私の、人を殺したいという希望を満たしてくれる唯一の人なのだから
166
:
名も無きAAのようです
:2012/09/13(木) 23:35:32 ID:xiNDINlUO
ζ(゚、゚*ζ(……なんとか、思い出して、もらえないかな)
それからは大変だった
何度も何度も鬱田くんに話し掛けた
なぜか鬱田くんは、私を避けて逃げてしまった
しかもクーが度々邪魔をしてきた
ζ(゚‐゚*ζ(めんどくさい…)
クーは、どうも私に好意を抱いているような気がする
私は「初恋」を経験したことがないから、なんともいえないけど
クーは私に依存しすぎていた
でも、無害だと思っていた
彼女はけっこう、規則とか秩序に忠誠な性格のはずだった
くるうお姉さんと違って常識人だと思っていた
だから、鬱田くんが失踪した時は、クーのせいだと思っていなかった
167
:
名も無きAAのようです
:2012/09/13(木) 23:36:30 ID:xiNDINlUO
最初に感じた違和感は、クーのキーホルダーに鍵がひとつ増えたこと
家の鍵より少し小さくて、ギザギザと対象的な形状をしたそれを、私は見たことがあった
SM用に使われる拘束具の鍵だ
大体ああいうものは、普通の鍵とはちょっと違うものである
ζ(゚ー゚*ζ(…何に使ってるのかな)
彼女とはよく会話をするけど、恋人が出来たという話は聞かなかったし、アブノーマルな性癖を持っているような子ではないはずだった
なぜか、嫌な予感がして、私は少しカマをかけてみた
クーが鬱田くんの失踪に関わっていると思ったのは鬱田くんのバイト先に行った時のことだった
コンビニの店長さんに、鬱田くんの様子を聞くように彼女にお願いした
クーは鬱田くんの様子を細くて教えてくれた
でもね、クー
クーが帰った後、私が店長さんに聞いたら、彼は服装のことまで覚えていなかったんだよ
それってつまり、クーはバイトが終わった後の鬱田くんに会ったってことだよね
168
:
名も無きAAのようです
:2012/09/13(木) 23:39:53 ID:xiNDINlUO
ζ(゚‐゚*ζ(もしかしたら、クーは鬱田くんを殺してしまったかもしれない)
だとしたら、すごく残念だ
でも、クーは人殺しなんて出来るだろうか?
前に私がドーンオブザデッドを見せたら、クーは失神したことがあった
あれは全然怖くない映画なのに
そう、クーは、死体が苦手なのだ
死体が苦手な人が、人殺しなんか出来るのかと言われたら微妙だ
ζ(゚ー゚*ζ(殺されていないのなら鬱田くんは、生きてる)
その場所も大体検討がついてしまうが
ζ(゚ー゚*ζ(監禁するとしたら多分自分の家のマンションだよね)
他に場所を確保する金銭的な余裕はないだろう
もし確保していたとしても、クーの性格だったらその場所の鍵を肌身離さず持っていないと安心出来ないだろう
だって、家の鍵と一緒に拘束具の鍵も持っているような子なのだから
とはいえこれだけでは鬱田くんがクーに監禁されているという証拠にならない
なら、やっぱりカマをかけるしかないよね
169
:
名も無きAAのようです
:2012/09/13(木) 23:41:16 ID:xiNDINlUO
夏休み前に、作戦を決行することにした
まず、適当な理由をつけて、クーを家に招いて泊まらせた
わざと夜更かしして、クーがぐっすり寝た後、鞄から鍵を外した
これは、私の鞄の中に入れておく
後々必要になってくるからだ
それから、私もぐっすり寝た
本当は七時に一回起きたんだけど、二度寝した
次に起きたのはお昼の少し前
私のお母さんに叩き起こされて、慌てて準備をするふりをした
とはいえ、昨日準備していたからすぐに終わってしまったんだけどね
ζ(゚ー゚*ζ「クー、まだ終わらない?」
川;゚ -゚)「ま、まって、もうちょっとだから」
クーは、服を着替えながらそう言った
寝坊したのは、わざとだ
慌てていたら、どこで鍵をなくなったのかわからなくなるからだ
川 ゚ -゚)「ごめん、デレ…」
ζ(゚ー゚*ζ「ううん、大丈夫だよ」
むしろ、それでいい
170
:
名も無きAAのようです
:2012/09/13(木) 23:43:23 ID:xiNDINlUO
ショッピングモールに着いて、しばらく私とクーは買い物をした
途中で、トイレに行くと言って、クーを雑貨屋に置いていった
向かった先は鍵屋さん
今の技術って、すごいよね
五分くらいで合鍵が一本作れてしまうのだ
しかも値段もお手頃で、お財布にも優しい
ζ(゚ー゚*ζ(よし)
それからまた、雑貨屋に戻って、クーと合流
川 ゚ -゚)「おかえり、遅かったね」
ζ(゚ー゚*ζ「うん、トイレが混んでたの」
人が多いショッピングモールなら、よくあること
クーはすんなりと信じた
夕方まで私はクーとショッピングモールを歩き回った
川 ゚ -゚)「少し、休もうか」
クーがそう言ったから、喫茶店に入る
ここからが大変だ
頼んだケーキを食べ終えてから、クーに話し掛ける
ζ(゚ー゚*ζ「もうこんな時間なんだね」
川 ゚ -゚)「あっという間だったな」
ζ(゚ー゚*ζ「そうだねー…そろそろ帰る?」
川 ゚ -゚)「そうだな、いくら日がのびてるからって危ないし」
ζ(゚ー゚*ζ「うん、そうだね」
ζ( ー *ζ「…ところで、鍵は、ちゃんとある?」
171
:
名も無きAAのようです
:2012/09/13(木) 23:45:31 ID:xiNDINlUO
鍵をなくしたことに気付いたクーの取り乱しっぷりは少し異様だった
つまり、見られたくないものが、クーの家の中にはあるのだ
私は優しさを装って、提案する
ζ(゚ー゚*ζ「クーは、落とし物のコーナーに行ってきなよ、私は家に電話してみながら道を辿ってみるから」
冷静さを欠いたクーは私の言う通りに動いた
でもね、鍵は私が持ってるんだ
ショッピングモールを出て、クーの住んでいるマンションまで急ぐ
いくら時間稼ぎをしているとはいえ、どうなるかわからない
まぁ、何かあったらまた別の方法を取ればいいだけの話だ
ζ(゚ー゚*ζ(死んでないといいけど)
そう思いながら歩く
死んでいたら、どうしようか
そのまま死体を持って帰ろうかな
最悪、首だけでも
ζ(゚ー゚*ζ(今日は無理だけどね)
172
:
名も無きAAのようです
:2012/09/13(木) 23:47:36 ID:xiNDINlUO
マンションまであともう少し、という時にクーからメールが来た
一応確認する
夕焼けのせいで少し画面が見にくい
なんとか解読すると、見つからなかった、と書いてあった
ζ(゚ー゚*ζ(返事はマンションに着いてからにしよう)
携帯をしまう
少し緊張する
気分が高揚していた
ζ(゚ー゚*ζ(鬱田くん、)
もし、クーが殺していたなら
私はクーを殺すだろう
だって、
ζ(゚ー゚*ζ(泥棒はいけないことだもの)
エントランスに入って、階段を上る
エレベーターは監視カメラがあるかもしれないから、やめた
ζ(゚ー゚*ζ(三階だから上れないことはないし)
夕方五時を知らせるチャイムを聞きながら階段を上る
息が上がっている
階段のせいだけじゃない気がする
ζ(゚、゚*ζ(早く、部屋へ)
クーの部屋は、一番角だ
そこに向かうついでに、メールを送る
「見つかったよ!
たまたまお巡りさんと会って、鍵を探してるって伝えたの
そしたら、交番まで連れていってくれて一番新しい鍵の落とし物を見せてくれたんだけど、それがクーのやつだったの!
交番の場所がクーの家に近かったから、そのままクーのマンションの近くで待ってるね」
173
:
名も無きAAのようです
:2012/09/13(木) 23:48:45 ID:xiNDINlUO
きちんと送られたことを確認してから、ポケットにしまった
ζ(゚‐゚*ζ「ふー…」
深呼吸をひとつ
クーの部屋の前
中には、鬱田くんがいる
できれば生きててほしい
ζ(゚ー゚*ζ(私のために)
インターホンを鳴らす
……物音はしない
もう一度
……反応はない
駄目押しで、もう一度
……静かだ
新聞受けの、蓋を開ける
中の様子が見えないことくらい知っている
でも、こういうのってけっこう怖いんだよね
ζ(゚ー゚*ζ「……」
そのままプレッシャーを与えてみる
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
…………………………………………………………………………鬱田くんが、必死に隠れようとしている気がした
174
:
名も無きAAのようです
:2012/09/13(木) 23:49:57 ID:oaW4xF6c0
怖い怖い。
175
:
名も無きAAのようです
:2012/09/13(木) 23:51:07 ID:xiNDINlUO
なんか、それがむかついた
ζ(゚ー゚*ζ「うーつだくーん?いるんでしょうー?」
呼び掛けてみた
返事は、ない
ζ(゚ー゚*ζ「いるんでしょうー?」
いるのは、分かってるんだよ
ζ(゚ー゚*ζ「ねぇーってばー、鬱田くん」
なんで返事しないのかな
せっかく助けに来たのに
ζ(゚‐゚*ζ「鬱田くん、返事してくれないから、勝手に話すね」
むかつく
ζ(゚ー゚*ζ「鬱田くんが助けてくれって叫んだら、私はあなたを助けるよ、警察を呼んで、クーを拉致監禁犯として逮捕してもらうの」
鬱田くんは、何も言わない
ζ(゚ー゚*ζ「でも鬱田くんがそれを望まないなら、私は私のために鬱田くんを助ける、手段を選ばずに、ね」
なるべくなら穏便に済ませたいよ
クーは一応、友達だし、鬱田くんは生きてるみたいだし
ζ(゚ー゚*ζ「取り引きだよ、どっちを選ぶのかは鬱田くんの自由だけど、私は助けてって言ってほしいかな」
ほら、早く助けてって言ってよ
あの雨の日みたいにさ!
176
:
名も無きAAのようです
:2012/09/13(木) 23:52:51 ID:xiNDINlUO
ζ(;ー゚*ζ「鬱田くん、」
なぜか、私の目から涙が流れる
変なの、どうして悲しいんだろう
ζ(;ー;*ζ「……わかった、助けてって言ってくれないんだね」
次々涙がこぼれる
胸が苦しくなる
生きているのに、返事をしてくれなかった
、クーに負けた気分
クーは、鬱田くんのこと嫌いなのに、鬱田くんはクーを選んだ
悔しい、
ζ( ‐ *ζ「後悔しても知らないから」
蓋を手放す
パタン、と閉まる音が、やけに響いた気がした
歩きながら涙を拭う
そういえば今クーはどこにいるのかな
携帯を取り出すと、メールが来ていた
どうやら、私が話し掛けている間にショッピングモールを出たらしい
もう少し時間の余裕がある
でも、おとなしくマンションの外で待っていよう
考えなければいけないことがたくさんある
ζ( ー *ζ(鬱田くんを、おしおきしなきゃね)
私よりもクーを選んだことを後悔させる
そして、
ζ( ー *ζ(泥棒した罪は、ちゃんと裁かないとね)
177
:
名も無きAAのようです
:2012/09/13(木) 23:54:23 ID:xiNDINlUO
夏休みに入っても、クーとはマメに連絡を取っていこうと考えていた
そうすれば、クーの隙を見て鬱田くんを助けられると思った
ほぼ毎日のようにメールをして、都合さえ会えば遊ぶようにした
でもそれだけでは不十分だ
下準備を、しなければならない
大きな鞄
ライト
手袋
凶器
ガムテープ
縄
服をたくさん
それから、鍵
ζ(゚ー゚*ζ(……これくらいかな)
決行は、お盆がいいだろう
お盆になったら、帰省する人が多いから人が少ない
都合がいいことに、クーは帰省しないそうだ
お母さんと喧嘩したそうだ
ζ( ー *ζ「……もう少し、」
もう少しで助けられるよ、鬱田くん
178
:
名も無きAAのようです
:2012/09/13(木) 23:54:58 ID:d3iDjMHU0
デレこわい支援
179
:
名も無きAAのようです
:2012/09/13(木) 23:56:04 ID:xiNDINlUO
深夜に、私は家を抜け出した
今の私の服装は、男にしか見えないと思う
シークレットブーツで10cmごまかしているし、男物のジーンズを履いている
髪は、黒いニット帽の中に押し込めてある
多分、誰も気付かない
気付くと、呼吸が荒くなっていた
深呼吸をするけど、なかなか治まらない
ζ( ‐ *ζ(大丈夫…)
何度も言い聞かせる
やっぱり、人を殺すのは、ウサギやネコとは違うんだ
ζ( ‐ *ζ「……」
でもやらなきゃ
階段を、一歩一歩踏み締める
足音を、立てないようにしなきゃ
クーの、部屋の前に立つ
手袋をはめながら、耳を澄まして、中の様子を伺う
……静かだ
きっと寝ている
ポケットから合鍵を探り当てる
鍵穴に、それを差し込んで、ゆっくりと、右に回す
かちり、と音がした
ζ( ‐ ;ζ(……開いた)
ドアノブを回して、扉を手前にひく
するりと中に入って、すぐに閉めた
ライトをつけて、靴を脱いだ
玄関には、クーのサンダルと、男物の靴があった
時間は限られているけど、やらなければいけないことはたくさんある
まず、鬱田くんを探す
とりあえずリビングに行こう
180
:
名も無きAAのようです
:2012/09/13(木) 23:57:56 ID:xiNDINlUO
ζ(゚ー゚*ζ(あ、)
すぐに見つかった
彼はソファで寝ているようだった
ζ(゚ー゚*ζ(よかった、)
そう思うと同時に、むかついた
ζ(゚ー゚#ζ(やっぱり、わかってて返事しなかったんだ)
彼には、少し痛い目にあったほうがいいかもしれない
私は、キッチンに向かい、冷蔵庫のコンセントを抜いた
コードもギタギタに切ってしまう
炊飯器のコンセントも同じようにする
鬱田くんを起こさないようにしながら、リビングに入る
テレビのコードも、切っておこう
……その隣のチェストに、抽象画が飾ってあるのを見つけた
ζ(゚、゚*ζ(懐かしい)
あれは私が中学生の時に、授業で描いたものだった
テーマは、「自分の好きなもの」
だから私は、前日に殺したネコの絵を描いた
ζ(゚、゚*ζ(特別、ネコが好きなわけじゃないんだけどね)
むしろ、どんなに刺しても静かなウサギが好きだ
ただ、たまたまその直前に殺したのがネコだった、というだけ
ζ(゚ー゚*ζ(……マメだね)
私は、クーからもらったものは全て物置にしまってしまったのに
181
:
名も無きAAのようです
:2012/09/14(金) 00:00:04 ID:IYiJbBDUO
クーの部屋に入る
ベッドのほうに、ライトを向けないように気をつける
鞄をあさり、縄とスタンガンを出す
万が一起きてしまったら、すぐにスタンガンを使うつもりだ
意外なことだけどスタンガンを使えば必ず気絶するわけじゃないそうだ
あくまでも、気休めでしかない
布団をそっとめくり、まず手を縛る
川 - )「…………」
何度か身動ぎはしたけど、起きなかった
次に、口をガムテープで塞ぐ
川 - )「んん……」
ζ(゚、゚*ζ(あ、起きるかも)
もう、乱暴にしてもいいだろう
彼女には起きてもらわなければいけないのだから
足を思い切り掴んで、縄で縛り上げた
川; - )「んー…!?」
ζ(゚ー゚*ζ「おはよう、クー」
私はいつもみたいに優しく微笑んであげた
182
:
名も無きAAのようです
:2012/09/14(金) 00:02:53 ID:IYiJbBDUO
体を、誰かに触られたような気がした
その手を振り払おうとして、手が動かないことに気付いた
川 - )(あれ?)
文句を言おうとしたら、 何かで口を覆われた
そして、足首を握り締められて、縛られた
川; - )「んー…!?」
ζ(゚ー゚*ζ「おはよう、クー」
その声は間違いなく、デレのもので
川; - )(なんで!?なんでいる!?)
ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、来ちゃった」
ライトに照らされた彼女は、いつも通りの笑みを浮かべていた
ζ(゚ー゚*ζ「まさか、クーが鬱田くんを監禁してるとは思わなかったよ」
川; - )「!!」
そうだ
見られてしまったんだ
どうしよう
嫌われた
絶対に嫌われた
ζ(゚ー゚*ζ「あのね、クー」
川; - )「ん、んー!!」
ζ(゚ー゚*ζ「鬱田くんはね、私のものなんだよ」
川; - )「……」
川; - )(やっぱり、デレは鬱田のことを…)
ζ(゚ー゚*ζ「あ、でもね、好きとか恋とか、そういうのとは違うの」
もそもそと、何かをいじりながらデレは言う
ζ(^ー^*ζ「ただのね、殺したい人なんだ」
川; - )「…?」
183
:
名も無きAAのようです
:2012/09/14(金) 00:05:26 ID:IYiJbBDUO
ζ(゚ー゚*ζ「ずっと前に約束したんだ、鬱田くんを殺すって」
川; - )(なにを、)
なにを、言っているんだろう、この子は
私の知ってるデレは、かわいくて平等で少し変わった本とホラー映画が好きな、私の、憧れの人、なのに
ζ(゚ー゚*ζ「だから、クーが鬱田くんを殺したのかもしれないって思った時は、すごーく怒ってたんだ」
ζ(^ー^*ζ「くるうお姉さんと同じ、泥棒じゃないか、って」
川; - )(違う、)
そんなつもりなかった
ただ、デレが鬱田のことを忘れるまで監禁するつもりで、
川; - )(好きなんかじゃ、ない)
ζ(゚ー゚*ζ「でも鬱田くんを監禁したのも泥棒だよね、泥棒は、いけないことだよね」
川; - )(…やだ、)
ζ(^ー^*ζ「クーも、くるうお姉さんと同じ目に遭わないとね」
まち針の入ったケースを片手に、デレが微笑んだ
川; - )(やめて、)
デレが何をする気なのか、わかってしまった気がする
川; - )(神様、)
もしいるなら、私はあなたを呪うよ
私の好きな人の、こんな姿なんて、
川; - )(見たくない……)
184
:
閲覧注意
:2012/09/14(金) 00:07:29 ID:IYiJbBDUO
爪の裏には、神経が集中してるんだって
かの有名なマゾヒストのアルバート・フィッシュも、快楽を求めるあまりに、そこに針を刺そうとして、あまりの痛さに断念したんだとか
ζ(^ー^*ζ「刺さったら痛いだろうねー」
川; - )「んー!!」
ふるふるとクーが首を振る
そんなことしたって、無駄だよ
ずっとやってみたかったことなんだ
ζ(゚ー゚*ζ「えいっ」
足の指先に、一本刺してみる
川; - )「――!!!!」
声にならない悲鳴をあがる
クーの目が、ぐるんって回って、白目を剥いた
もっと指に刺そうと思ったけど、暴れるからちょっとやりにくい
スタンガンを当てて、スイッチオン
川; - )「っ!!」
スタンガンはね、なかなか気絶しない代わりに、一瞬体を麻痺させるらしいよ
はい、もう一本
川; - )「んん゛ー!!」
両足の親指に、赤と青のお花が一本ずつ咲いた
ζ(゚ー゚*ζ「かわいいね、似合ってるよ」
褒めたのに、クーは何も言わない
本当はもっと奥に突き刺したり、本数を増やしたりしたいけど、長く遊ぶためにはここで打ち止めにするのが最良の選択だと思う
またあとで、刺せばいいしね
185
:
閲覧注意
:2012/09/14(金) 00:09:36 ID:IYiJbBDUO
ζ(゚ー゚*ζ「次はねぇ…これかな?」
この間、刃を替えたばっかりの、新品同様の素敵なカッターナイフ
それをクーに見せてあげる
ζ(゚ー゚*ζ「カッターナイフって、引くと切れるけど刺そうとするとなかなか刺さらないんだよね」
説明しながら、太ももにぶっすり
あ、やっぱりなかなか入らない
ζ(゚ー゚*ζ「うーん、こうかなー?」
ぐずぐずと、前後にかき混ぜながら、押し込めてみる
川; - )「っ! っ!!」
ζ(゚、゚*ζ「少しだけ入ったかなー?」
昔、イヌにもやったことがあったけど、人はもっと大変だ
諦めて、引っこ抜く
川; - )「ぅー……ふー…」
ζ(^ー^*ζ「やっぱりナイフで刺してからが一番かな」
ぶすり、とナイフで穿つ
川; - )「ぁ゛っ、――!!」
ナイフを引き抜いて、今度はぐりぐりしながら、カッターナイフを突き刺す
それから、カッターナイフを真横に倒した
パキッと爽快な音が部屋に響いた
川; - )「……ぅ!!」
思わずクーが暴れる
でもすぐに動きが止まる
そうだよね、体に異物が刺さってるんだもん
痛いに決まってるよね
なかなかいいやり方だ
四肢全てに薄刃の杭を打ち込んだら、静かになるかもしれない
「よし、がんばるね」
私はクーにそう言って、左の太ももにナイフを突き立てた
186
:
閲覧注意
:2012/09/14(金) 00:11:20 ID:IYiJbBDUO
色々な道具を使った
クーの体は、一言では言い尽くせないような状態だった
体のあちこちから、白銀の薄刃が飛び出ていた
ピーラーを使って皮を剥かれた二の腕は、赤い肉と薄いクリーム色の脂肪が見えていた
スタンガンを当てすぎたせいで、お腹には火傷の跡が残っていた
両手両足の指先からは赤青白緑黄色のお花がたくさん咲いている
爪は、ハサミと爪切りで頑張って剥いてあげた
途中で、ガムテープが外れてしまったから、口は直接縫ってあげた
そのせいで、拷問している途中に嘔吐したクーは、吐瀉物が詰まったらしく、そのまま死んでしまった
ζ(゚、゚*ζ「…あっけない」
クーの鼻から垂れている吐瀉物を見ながら、思わず呟いてしまった
ガムテープなら、すぐ剥がせたんだけどね
ζ(゚ー゚*ζ(うん、鬱田くんを殺す時には気をつけよう)
早く殺しすぎたのは残念だけど、練習台としては優秀だったと思う
ζ(^ー^*ζ「ありがとうね、クー」
クーの部屋を出て、持って来たタオルで顔を拭う
替えの洋服に着替えたら、すぐに帰ろう
それから、部屋に戻って寝て
ζ(゚ー゚*ζ(一週間くらいしたら、鬱田くんを迎えに行こう)
187
:
名も無きAAのようです
:2012/09/14(金) 00:12:17 ID:IYiJbBDUO
起きたら、部屋は静まり返っていて、人の気配がしなかった
('A`)(また出かけたのか)
最近、素直は井出口とよく遊ぶようになった
俺としては助かる
嫌いな者同士で暮らすのは、なかなか難しいことだからだ
('A`)(飯でも食うか)
時計を見れば、午後三時で、飯というより間食のほうが正しいかもしれなかった
冷蔵庫を開ける
が、冷気はなかった
代わりに、なんともいえない臭いがした
(;'A`)「げぇ」
どうやら冷蔵庫が壊れたらしい
(;'A`)(食い物全滅か)
素直が帰ってきたら、教えないと
素直が帰ってきたら、教えないと
仕方がないので、水を汲んで飲んだ
('A`)(……それにしてもすごい臭いだ)
こういうのは、意識し出すとなかなか消えないものである
('A`)(寝るか)
帰ってきたら、きっと素直が起こすだろう
188
:
名も無きAAのようです
:2012/09/14(金) 00:13:09 ID:IYiJbBDUO
次に起きた時、もっとひどい臭いが鼻を突いた
(;'A`)「うぇ…」
時計を見ると、午後一時だった
それまでまったく起こされなかった
ということは、素直は最低一日帰ってきていないことになる
(;'A`)「冷蔵庫直ってないんだな」
食べ物が一斉に腐るとこんなひどい臭いがするのだろう
それにしたって、ひどい
(;'A`)(ちょっとテレビでもつけて、気を紛らわせるか)
しかし、スイッチを入れても、うんともすんとも言わなかった
('A`)「…これも壊れた?」
そんなまさか
ついこないだまでなんともなかったのに
('A`)「はぁ…」
こうなると、もう寝るしかない
水を汲もうと、キッチンに向かう
(;'A`)(ひどい臭いだ)
……でも、冷蔵庫の中のものが全部腐ったからといって、ここまで臭うものだろうか
一応冷蔵庫にも扉がついているのだから
189
:
名も無きAAのようです
:2012/09/14(金) 00:14:18 ID:IYiJbBDUO
('A`)「…………」
感覚を研ぎ澄ましてみる
甘酸っぱい、吐き気を催す臭い
その中に、鉄臭い臭いが混じっている気がした
しかも、素直の部屋から、漂っている気がした
(;'A`)(まさかね)
あいにく、足枷の鎖は素直の部屋まで届く長さはない
……もしも、素直が最初から出かけているのではなく、部屋で死んでいるとしたら
しかも、誰かの手によって殺されていたとしたら
(;'A`)(誰が?どうやって?)
ζ(゚ー゚*ζ「でも鬱田くんがそれを望まないなら、私は私のために鬱田くんを助ける、手段を選ばずに、ね」
不意に、井出口の言葉が響いた
ζ( ‐ *ζ「後悔しても知らないから」
(;'A`)(まさか、まさか)
(;'A`)「お、おい!素直!」
不安だった
あんなに嫌いな奴だったのに、今は心配だった
(;'A`)「素直!いるんだろ、なぁ!」
必死に、叫ぶ
(;'A`)(早く返事しろよ!)
(;'A`)「なぁ!冷子!クー!」
(;'A`)(いつもみたいに、怒ってくれよ)
今なら、ムカつかないから
(;'A`)「素直…」
190
:
名も無きAAのようです
:2012/09/14(金) 00:17:22 ID:IYiJbBDUO
( A )「…………」
もう、なんにちたったのかわからない
においは、しない
わからない
いまは、むしがうるさくて、いやだ
だまっていると、むしが、かおにつく
はらっても、つぶしても、すぐにくる
( A )「おなかすいた」
どうして、すなおがしんだのだろう
しにたいとおもっていないひとほどしんでいく
せかいは、おれのおもうとおりにならない
( A )(はやくしぬべきなのはおれなのに)
うごけない
なにもできない
しぬ、かもしれない
…あしが、みえる
かたあしだけ
( A )「…、いもうと」
……ごめん、やっぱりしにたくない
ずっとしにたいって、しぬべきだって、おもってたのに
いでぐちとやくそくもしたのに
たすけてほしい、っておもってるんだ
( A )(やくそく?)
やくそくって、なんの?
……ピンポーン、って、おとがした
もういちど
( A )(あ、)
「クー?」
ききおぼえのあるこえだった
それから、またピンポーンって
191
:
名も無きAAのようです
:2012/09/14(金) 00:18:12 ID:IYiJbBDUO
( A )(いでぐち?)
ζ(゚、゚*ζ「クー?いないの?」
( A )(たすけて、)
( A )「たすけて、」
( A )「たすけて…!」
ζ(゚、゚*ζ「…鬱田くん?なんでクーの家に…」
( A )「たすけて!」
それだけさけんだら、きがぬけて、おれは
192
:
名も無きAAのようです
:2012/09/14(金) 00:19:50 ID:IYiJbBDUO
花束と、本を持って私は歩く
お見舞いに行くのに、ヒールのある靴はまずかったかな?
リノリウムの床って、けっこう響くんだよね
ζ(゚‐゚*ζ(…次からやめよ)
そう考えながら、私は回想する
あの日……
メールをしても、まったく返事が来なかったクーを心配して、家に行った
そしたらなぜか、失踪した鬱田くんの声がした
「たすけて」って、か細い声が
私は、動揺しながら警察を呼んで、クーの家を開けてもらった
そしたら、クーが中で死んでいた
鬱田くんは、リビングで気絶していた
足枷をされていたのは、なぜなのだろう
警察はそれを聞こうとしていたけど、鬱田くんは心身が衰弱していてまともに話は聞けなかった
結局、クーを殺した犯人はわからないし、鬱田くんがなぜクーの家で監禁されていたのかわからない
……というのが、表向きの話
真相は、私だけが知っている
193
:
名も無きAAのようです
:2012/09/14(金) 00:20:38 ID:v0I48ww.O
こえー……
194
:
名も無きAAのようです
:2012/09/14(金) 00:22:28 ID:PDBkk42sO
ラストまで書いたんだな、今から読むよ
195
:
名も無きAAのようです
:2012/09/14(金) 00:24:38 ID:IYiJbBDUO
ζ(゚ー゚;ζ(さすがに警察の人に事情聴取された時は緊張したけど)
それでもすぐに解放されてしまったから、よかった
(‘_L’)「玲香」
背後から、聞き慣れた声が聞こえた
ζ(゚ー゚*ζ「あ、お父さん」
(‘_L’)「見舞いか」
私の荷物を見て、お父さんは言った
ζ(゚ー゚*ζ「うん、けっこう長く入院してるからそろそろ必要かなって」
(‘_L’)「そうだな」
お父さんは無口で見た目が少し怖いけど、とても優しい
鬱田くんが、私のクラスメイトで身寄りのない人だと伝えたら、病状がよくなるまでここに置いてもいいと言ってくれた
(‘_L’)「早くよくなるといいな」
ζ(゚ー゚*ζ「うん、そうだね」
从 ゚∀从「井出口先生」
(‘_L’)「……すまないな」
ζ(゚ー゚*ζ「ううん、大丈夫」
お父さんは、看護士さんに呼ばれて行ってしまった
私は、また歩き始めた
196
:
名も無きAAのようです
:2012/09/14(金) 00:26:12 ID:IYiJbBDUO
鬱田くんの病室は、隅っこにある広い個室だ
ζ(゚、゚*ζ(クーの部屋と同じ場所って、なんか複雑)
ノックをする
返事を聞かずに中に入る
どうせ、返事してくれないからいいんだ
鬱田くんは、ぼんやり窓の外を見ていた
ζ(゚ー゚*ζ「こんにちは、鬱田くん」
('A`)「……」
鬱田くんは、ゆっくりこっちを向いた
('A`)「…ああ、井出口か」
ζ(゚ー゚*ζ「そうだよ」
鬱田くんは、前と比べたら私を避けなくなった
触ろうとすると、逃げるけど
ζ(゚ー゚*ζ「お花、ここに飾っとくね」
私は空っぽの花瓶に、紫蘭を活ける
ついでに、本もそばに置く
('A`)「…ごめん、井出口」
ζ(゚ー゚*ζ「なにが?」
('A`)「いつかは忘れたけど、井出口に死にたいって、言ったよな」
ζ(゚ー゚*ζ「…うん」
('A`)「…それで、井出口と何か約束したんだよな」
ζ(゚ー゚*ζ「…そうだね」
鬱田くんは、私に会ったことは思い出してくれた
でも、
('A`)「…それが、思い出せないんだ」
でも、肝心の約束は、忘れたままだ
('A`)「なぁ、俺はお前と何を約束したんだ? 教えてくれよ」
ζ(゚ー゚*ζ「……それは、無理だよ」
197
:
名も無きAAのようです
:2012/09/14(金) 00:28:13 ID:IYiJbBDUO
自力で思い出してもらわなければいけないのだ
他人から、「殺してほしいってお願いされた」と言われても、信じられるわけがないもの
それに、
ζ( ー *ζ(たまには、感謝されながら殺したい)
生き物は、言葉を喋らないから、私に殺されたことに対して何を思ったのかわからない
でも、多分いい気持ちではない
クーだって同じだ
ζ(゚ー゚*ζ「…悪者になりきれないなぁ」
('A`)「え?」
ζ(゚ー゚*ζ「なんでもない」
どうやったって、私のしていることは異常なのに感謝を求めるのはおかしいけど…
ζ(゚ー゚*ζ「鬱田くん、」
('A`)「!?」
するりと手を伸ばして、首を絞める
鬱田くんは、ぽかんとして、それから私の両手に爪を立てた
(;'A`)「う…、」
パッと手を放す
鬱田くんが、咳き込む
ζ(゚ー゚*ζ「じゃあね、鬱田くん、また来るね」
それだけ言って、病室から出た
これ以上いたら、ついうっかり殺しちゃうかもしれないと思ったから
ζ(^ー^*ζ「なーんてね」
帰りに、DVD屋さんに寄ろう
なにか新しいホラー映画が発掘できるかもしれない
198
:
名も無きAAのようです
:2012/09/14(金) 00:32:12 ID:IYiJbBDUO
(;'A`)「……なんだあいつ」
病室の扉を眺めながら、思わず呟く
幸いにも、絞められたところは痛くないし、跡も残っていなかった
('A`)(素直のやつとは大違いだ)
素直のあれは、ものすごく苦しかったし、跡も残った
つまり、井出口のあれは遊びだったのだろうか?
(;'A`)(いやいや、)
もしかしたら、素直を殺した犯人かもしれないのに
('A`)「……」
とりあえず、あいつが持ってきた本を読んでみよう
この部屋は、何もなさすぎてつまらない
ぺら、とページをめくる
('A`)「あ、」
そのタイトルには、見覚えがありすぎた
一時期狂ったように読んでいたそれは、とある兄妹が奮闘する話だった
その兄妹の立場に、俺と死んだ妹を重ね合わせていたことがよくあった
('A`)(こういうの、井出口も読むのかな)
そう思うと、妙な親近感を感じてしまった
('A`)(今度、井出口と話してみようかな)
ほんの、少しだけ、興味が沸いた
199
:
名も無きAAのようです
:2012/09/14(金) 00:33:48 ID:IYiJbBDUO
以上で「('A`)は監禁されてしまったようです」は終わりになります
質問、突っ込み、叱咤、随時受け付けておりますのでどうぞ
200
:
名も無きAAのようです
:2012/09/14(金) 00:35:37 ID:v0I48ww.O
乙
その後('A`)とζ(゚ー゚*ζはどうなったの?
201
:
名も無きAAのようです
:2012/09/14(金) 00:38:50 ID:ChKSC4920
乙
クー報われねーな
まあ、自業自得か
202
:
名も無きAAのようです
:2012/09/14(金) 00:41:53 ID:IYiJbBDUO
その後の二人についてはご想像にお任せします
もしかしたら約束を思い出して履行したかもしれないし
思い出すまでにデレが我慢出来ずに殺してしまったかもしれません
とにかくデレの行動が読めない終わりにしたかったので
203
:
名も無きAAのようです
:2012/09/14(金) 00:56:46 ID:PDBkk42sO
最終回テンポよかったな、前回までは伏線だったんだな
ただ('A`)のカーチャンがクルウを轢いたのはバレバレだったけど
204
:
名も無きAAのようです
:2012/09/14(金) 01:02:25 ID:v0I48ww.O
確かによめないなー
個人的には親しくなって('A`)が好意を寄せはじめたところでーって考えてた
色々妄想してみるか
205
:
名も無きAAのようです
:2012/09/14(金) 01:25:50 ID:IYiJbBDUO
追記
お題を提供してくれた方々へ
お題がなければ正直キャラ付けが弱かったと思います
最初のプロットではデレは変な抽象画を描かなかったし、クーが全裸で('A`)の首を絞めることもなかったですし
最初に考えていたオチよりよっぽどいいものが出来たような気がします
提供ありがとうございました
206
:
名も無きAAのようです
:2012/09/14(金) 08:41:36 ID:FajE7jGM0
紫蘭の花言葉
「あなたを忘れない」
「変わらぬ愛」「薄れゆく愛」
調べてみた 乙です。
207
:
名も無きAAのようです
:2012/09/14(金) 13:35:42 ID:40PD76yo0
乙です!
208
:
名も無きAAのようです
:2012/09/14(金) 13:57:14 ID:6UuYxXo.0
不完全燃焼
209
:
名も無きAAのようです
:2012/09/14(金) 14:21:57 ID:Nd8NrURU0
えがったなぁ乙
ドクオは第二のクーになるのかもしれないね
210
:
名も無きAAのようです
:2012/09/14(金) 22:32:21 ID:Nd8NrURU0
てか
>>11
のぶちまけたような赤……伏線……
211
:
名も無きAAのようです
:2012/09/14(金) 22:33:14 ID:Nd8NrURU0
>>17
だった
212
:
名も無きAAのようです
:2012/09/14(金) 23:25:46 ID:IYiJbBDUO
>>206
他にも「不吉な予感」というのもありますよ
ついでにひっそりと宣伝します
よかったらどうぞ
百物語
( ^ω^)お金を引き出すようです
(´・_ゝ・`)過去のラミカのようです
('A`)はつかれてしまったようですζ(゚ー゚*ζ
从 ゚∀从轢いてしまったようです
( ´_ゝ`)は(´<_` )の家に泊まるようです
('A`)不思議なアクアリウム?のようです
从 ゚∀从はトイレにびびるようです
爪'ー`)y‐は今日もオレオレ詐欺をするようです
片思いを成就させるようです
短編
( ´_ゝ`)不良岡っ引きの事件簿のようです(´<_` )
ξ ^ω^ξ川 'A`)アイドルマスターのようですo川 ゚∀゚)oζ´・ω・`*ζ
寄り道、のようです(他の短編含む)
213
:
名も無きAAのようです
:2012/09/15(土) 04:04:01 ID:hFQiAUHIO
いい締め方だった
文章はやや拙いけど伏線及び回収、場面転換の挟み方等々お見事でした
他のも読んでみます
214
:
◆R6iwzrfs6k
:2012/10/13(土) 18:38:14 ID:.hv.LAfQO
お知らせ
現行が書き終わるor終わりが見えかけた頃に、続編を書きます
書きたいです
ぼかした終わりに一番納得がいかなかったのは作者だったようです
きっとこいつらはこうなってああなってこんな感じになるんだろうなぁ、そういえばこの人ってどうなったんだよ、実はこの人もああだったんじゃね、などなど妄想が爆発状態でして
嘘予告で多少解消したものの欲は消えずさらにひどくなってしまいました
そういうわけで、もうしばらくお付き合い願いたいです
以上作者でした
215
:
名も無きAAのようです
:2012/10/14(日) 01:21:21 ID:ToqFHZXMO
楽しみにしとります!!
216
:
名も無きAAのようです
:2012/10/14(日) 07:22:20 ID:XYOdHIiE0
フヒヒwwww楽しみでござるよぉwwwwwwww
217
:
名も無きAAのようです
:2012/10/14(日) 08:03:17 ID:SLpsNKKE0
待ってる
嘘予告に書いてくれ書いてくれと念じた甲斐があった
218
:
名も無きAAのようです
:2012/10/14(日) 08:42:12 ID:VC5cabJo0
どうなるのか…
219
:
名も無きAAのようです
:2012/10/22(月) 07:11:12 ID:r2uF2s9g0
現行のやつもこれも好きだわ
時間はかかってもいいから両方完結させて欲しい
220
:
名も無きAAのようです
:2012/12/04(火) 06:44:40 ID:w8O9Dn6w0
とても面白かったです
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板