したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

( ・∀・)モララーは隠居暮らしのようです。 双

473 ◆mGwfd747EA:2021/04/17(土) 21:37:01 ID:f.Pjzmts0
( ФωФ)「……キミはもっと、子供らしくして良いのであるぞ」

( ・∀・)「はは。確かに、そうですね」

ロマネスクの抱いた、親心のような言葉に渇いた笑いが漏れる。
元々少なかった荷物を、鞄にしまい込んで留め具を付けた。


( ФωФ)「いつ、出るつもりなのであるか?」

( ・∀・)「部屋の掃除をしてからなので。あと1時間もしたら」

( ФωФ)「……デレが会いたがってたのであるぞ。
        キミと話したいことがたくさんある、と」

( -∀-)「会うと、別れるのがつらくなりますから。
       ロマネスクさんから、ぼくがお礼を言ってたと伝えてください」

( ФωФ)「……モララー殿」


( ФωФ)「我々は、キミに感謝してもしきれないほどの恩を受けたのである」


( ФωФ)「いつかどこかで、恩返しをさせて欲しいのである」


( ФωФ)「だから……それまで、お元気で」



引き留めることは叶わないと感じたロマネスクは、諭すように言い切ると
大きな手をモララーへ差し出した。

474 ◆mGwfd747EA:2021/04/17(土) 21:38:06 ID:f.Pjzmts0
( ・∀・)「ええ。ロマネスクさんも、お元気で」


覇気のなくなった、柔和な笑顔で手を取り握るモララー。

上着を着こみ、荷物を背にすると
ロマネスクに一瞥し、部屋を出ていった。


( ФωФ)「……」


残された聖騎士団長は、主の居ない部屋を検めた。
そして部屋に残された茶器の数々を見つけると
少し目を細めてから、その場を退いていった。











( ・∀・)(さて。ぼくは、これからどうしようかな)

475 ◆mGwfd747EA:2021/04/17(土) 21:39:08 ID:f.Pjzmts0
冷える鼻を擦りながら、モララーは街道を歩いていく。

王都はすっかり見えなくなっていた。
野垂れ死ぬわけにはいかないので、食糧だけはたくさん積んである。

行き先を考えた時、元々居た家に帰る選択肢は最初から無かった。
戻ったところで、ろくなことにはなるまい。

生き方もそうだが、住むところも考えないと、まともに暮らしていくことは難しいだろう。


モララーの戦う役目は終わったわけだが、自分自身の罪は残っている。

いくつもの人生を終わらせた自分は、簡単に死ぬことすら許されない。


だから、一生懸命生きなくては。





――――でも、何のために?





罪を償うって、どうすればいいのだろう。

476 ◆mGwfd747EA:2021/04/17(土) 21:40:07 ID:f.Pjzmts0
血の涙を流し、存命を請う敵兵を殺した自分が
何をすれば許されるのだろう。



新雪を踏みしめながら、モララーは自問する。



考えても考えてもわからないが、一つだけ。


旅立つ前に買い物をしていて、思ったことがある。



( ・∀・)(そういえば、魔法で育てられた野菜は体に悪いって言うなぁ)


戦いの最中、死体の山を積み上げていくうちに
肉類を体がすっかり受け付けなくなってしまった。

その為、野菜を主に食しているわけだが……。

それでは、もしかすると長生きできないかもしれない。

いくら稀代の魔術師といえ、死の病は回避できない。



( ・∀・)(どこかで、無魔法の野菜でも作ってみるのも良いかもしれないな)

477 ◆mGwfd747EA:2021/04/17(土) 21:41:06 ID:f.Pjzmts0

歩き始めて、どれぐらい経っただろう。
地図も持たずに出てきたので、今どこに居るのかわからない。

ふと、来た道を振り返ってみた。



足跡すら、降りしきる雪でもう無くなっている。

視界の悪い中では、馬を走らせるものすらいない。


まるで、世界に自分ひとりだけが取り残されたようだった。






( ・∀・)


( ・∀・) !

478 ◆mGwfd747EA:2021/04/17(土) 21:42:07 ID:f.Pjzmts0
ふと、モララーは思い立った。

そして防寒具の帽子を一度外すと


長く伸びた後ろ髪を、しっかりと掴む。


逆手で魔力を込め、光の刃を作り出したが




何かを決意すると。




魔法を消し、腰に下げているナイフを引き抜き

刃を束ねた髪先にあてがうと


一思いに、根元から切った。

479 ◆mGwfd747EA:2021/04/17(土) 21:43:06 ID:f.Pjzmts0
手を離すと、さらさらと風に乗って髪が流れていく。



すぐに白い景色に溶けていく、自分の片割れを見届けると




モララーは短くなった髪へ、帽子をしっかりと被り直し


前を向いて、再び歩き出すのだった。








どこへ行くのか、どこへ着くのか。



彼自身も、まだ知りもしないままに。

480 ◆mGwfd747EA:2021/04/17(土) 21:44:08 ID:f.Pjzmts0
( ・∀・)モララーは隠居暮らしのようです。

                 【零落の黒き風】




            おわり

481 ◆mGwfd747EA:2021/04/17(土) 21:49:04 ID:f.Pjzmts0
以上になります。
番外編の時には、もう書かない的なことを言った舌の根も乾かないうちに
こんなものを書いてしまいました。

本編の時間軸に対し、過去と未来をもうやったのでこれで出し切った感はあります。
書こうと考えはしましたが、蛇足になりそうだったのでもうやらないと思います。


本編の最初にノリと勢いで書いた設定を、どうにか壊さないように四苦八苦するのが大変でした。
連載当初の尖った物言いと、連載終盤の優しいモララーのイメージを損なわないようにしてみたつもりです。

思い付きで始めたお話を、まさか元号変わるまで書いているとは思ってもいませんでした。
それほど、自分にとっては思い入れのある作品です。

それではここまで読んでいただいた皆様、ありがとうございました。

482名も無きAAのようです:2021/04/17(土) 22:41:12 ID:.ayZ7wCk0
隠居暮らしという物語、モララーの人生を追ったお話もこれでついにおしまいか……
寂しくなるけども、番外編と合わせてとてもよい作品でした
作者さん、最後まで書ききってくれてありがとう。乙!

483名も無きAAのようです:2021/04/17(土) 23:08:53 ID:/wEHwtXQ0
乙!!!

484名も無きAAのようです:2021/04/22(木) 14:09:20 ID:b5FvTPps0
重たい内容なのに、最後は晴れやかに感じて良い
またここから本編を読み返したい、乙でした


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板