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( ・∀・)モララーは隠居暮らしのようです。 双
467
:
◆mGwfd747EA
:2021/04/17(土) 21:29:59 ID:f.Pjzmts0
( ・∀・)「武器を捨てろ。さもなくば殺す」
歯を打ち鳴らし、戦う術を何もかも失った国王は
涙を流し、失禁しながら何度も何度も首を縦に振る。
長きに渡る戦争は、そこで終わりを告げた。
嘗壱話「零落の黒き風」
468
:
◆mGwfd747EA
:2021/04/17(土) 21:31:00 ID:f.Pjzmts0
つづく
469
:
◆mGwfd747EA
:2021/04/17(土) 21:32:49 ID:f.Pjzmts0
第零話「モララー=レンデセイバー」
.
470
:
◆mGwfd747EA
:2021/04/17(土) 21:33:52 ID:f.Pjzmts0
白い息を吐いて、少年は歩いていた。
厚手の服と、背に負った荷物。
背後に流れていくのは、雪化粧をした王都だ。
道行く人たちはみんな笑顔で、子どもも大人も楽し気に歩いている。
それこそ、彼の最大の功績。
身を削り、心を削り。
何度も挫けそうな思いを、何度も奮い立たせ。
ようやくつかんだ、終戦の証。
赤い鼻をしたモララーは、これが最後になるのだろう、と
その明るい風景を横目に焼き付けていた。
ラウンジ王国が堕ちてから数日後のこと。
難しい政は、全て大人たちに任せると
大魔術師モララー=レンデセイバーは、部屋の片づけを始めた。
彼を懇意にしていた者たちは、必死で止める。
(;ФωФ)「何故であるか、モララー殿!」
471
:
◆mGwfd747EA
:2021/04/17(土) 21:34:58 ID:f.Pjzmts0
荷造りをするモララーに、聖騎士ロマネスクは凄まじい剣幕で詰め寄る。
対するモララーは、淡々とした様子で返してきた。
( ・∀・)「ボクの役目は終わりましたから。
これ以上、城に居ても邪魔なだけでしょう」
(;ФωФ)「そんなことはないのである!
お主程の功労者、誰も咎めないのである」
( ・∀・)「……そうでしょうか。
世の中、良い人ばっかりじゃないですからね。」
( ・∀・)「自分だって、武勲を上げたのに。
自分だって、仲間を家族を殺されたのに。
自分だって……なんて、恨み言を連ねられるのはゴメンですから」
(;ФωФ)「そっ……!」
否定できず、ロマネスクは言葉を詰まらせた。
特にモララーは年も若い。
大きな目で見れば、みなが称賛しているが
気に食わないと思う人間も、少なからずいるだろう。
特に、王都なんて権力に近い場所では。
(;ФωФ)「国王陛下は、なんと仰っていたのであるか?」
472
:
◆mGwfd747EA
:2021/04/17(土) 21:36:05 ID:f.Pjzmts0
( ・∀・)「好きにしなさい、と」
(;ФωФ)「……」
突き放したわけではないだろう。
言葉通りの意味なのだ。
大事な大事な、孫のような存在。
彼が望むことは何でもしてあげたい。
心からそう思っている。
だからこそ、戦争という軛から解放されたのなら
後は、一人の少年として。自由に生かせてあげたい。
それが、国王のできる唯一の償いなのだろう。
モララー自身も、その意図をくみ取り
あえて遠慮することなく、丁重に文言通りの対応をしたわけだ。
その時の、悲しそうな、寂しそうな表情だけは。
モララーは生涯忘れることはないだろう。
473
:
◆mGwfd747EA
:2021/04/17(土) 21:37:01 ID:f.Pjzmts0
( ФωФ)「……キミはもっと、子供らしくして良いのであるぞ」
( ・∀・)「はは。確かに、そうですね」
ロマネスクの抱いた、親心のような言葉に渇いた笑いが漏れる。
元々少なかった荷物を、鞄にしまい込んで留め具を付けた。
( ФωФ)「いつ、出るつもりなのであるか?」
( ・∀・)「部屋の掃除をしてからなので。あと1時間もしたら」
( ФωФ)「……デレが会いたがってたのであるぞ。
キミと話したいことがたくさんある、と」
( -∀-)「会うと、別れるのがつらくなりますから。
ロマネスクさんから、ぼくがお礼を言ってたと伝えてください」
( ФωФ)「……モララー殿」
( ФωФ)「我々は、キミに感謝してもしきれないほどの恩を受けたのである」
( ФωФ)「いつかどこかで、恩返しをさせて欲しいのである」
( ФωФ)「だから……それまで、お元気で」
引き留めることは叶わないと感じたロマネスクは、諭すように言い切ると
大きな手をモララーへ差し出した。
474
:
◆mGwfd747EA
:2021/04/17(土) 21:38:06 ID:f.Pjzmts0
( ・∀・)「ええ。ロマネスクさんも、お元気で」
覇気のなくなった、柔和な笑顔で手を取り握るモララー。
上着を着こみ、荷物を背にすると
ロマネスクに一瞥し、部屋を出ていった。
( ФωФ)「……」
残された聖騎士団長は、主の居ない部屋を検めた。
そして部屋に残された茶器の数々を見つけると
少し目を細めてから、その場を退いていった。
( ・∀・)(さて。ぼくは、これからどうしようかな)
475
:
◆mGwfd747EA
:2021/04/17(土) 21:39:08 ID:f.Pjzmts0
冷える鼻を擦りながら、モララーは街道を歩いていく。
王都はすっかり見えなくなっていた。
野垂れ死ぬわけにはいかないので、食糧だけはたくさん積んである。
行き先を考えた時、元々居た家に帰る選択肢は最初から無かった。
戻ったところで、ろくなことにはなるまい。
生き方もそうだが、住むところも考えないと、まともに暮らしていくことは難しいだろう。
モララーの戦う役目は終わったわけだが、自分自身の罪は残っている。
いくつもの人生を終わらせた自分は、簡単に死ぬことすら許されない。
だから、一生懸命生きなくては。
――――でも、何のために?
罪を償うって、どうすればいいのだろう。
476
:
◆mGwfd747EA
:2021/04/17(土) 21:40:07 ID:f.Pjzmts0
血の涙を流し、存命を請う敵兵を殺した自分が
何をすれば許されるのだろう。
新雪を踏みしめながら、モララーは自問する。
考えても考えてもわからないが、一つだけ。
旅立つ前に買い物をしていて、思ったことがある。
( ・∀・)(そういえば、魔法で育てられた野菜は体に悪いって言うなぁ)
戦いの最中、死体の山を積み上げていくうちに
肉類を体がすっかり受け付けなくなってしまった。
その為、野菜を主に食しているわけだが……。
それでは、もしかすると長生きできないかもしれない。
いくら稀代の魔術師といえ、死の病は回避できない。
( ・∀・)(どこかで、無魔法の野菜でも作ってみるのも良いかもしれないな)
477
:
◆mGwfd747EA
:2021/04/17(土) 21:41:06 ID:f.Pjzmts0
歩き始めて、どれぐらい経っただろう。
地図も持たずに出てきたので、今どこに居るのかわからない。
ふと、来た道を振り返ってみた。
足跡すら、降りしきる雪でもう無くなっている。
視界の悪い中では、馬を走らせるものすらいない。
まるで、世界に自分ひとりだけが取り残されたようだった。
( ・∀・)
( ・∀・) !
478
:
◆mGwfd747EA
:2021/04/17(土) 21:42:07 ID:f.Pjzmts0
ふと、モララーは思い立った。
そして防寒具の帽子を一度外すと
長く伸びた後ろ髪を、しっかりと掴む。
逆手で魔力を込め、光の刃を作り出したが
何かを決意すると。
魔法を消し、腰に下げているナイフを引き抜き
刃を束ねた髪先にあてがうと
一思いに、根元から切った。
479
:
◆mGwfd747EA
:2021/04/17(土) 21:43:06 ID:f.Pjzmts0
手を離すと、さらさらと風に乗って髪が流れていく。
すぐに白い景色に溶けていく、自分の片割れを見届けると
モララーは短くなった髪へ、帽子をしっかりと被り直し
前を向いて、再び歩き出すのだった。
どこへ行くのか、どこへ着くのか。
彼自身も、まだ知りもしないままに。
480
:
◆mGwfd747EA
:2021/04/17(土) 21:44:08 ID:f.Pjzmts0
( ・∀・)モララーは隠居暮らしのようです。
【零落の黒き風】
おわり
481
:
◆mGwfd747EA
:2021/04/17(土) 21:49:04 ID:f.Pjzmts0
以上になります。
番外編の時には、もう書かない的なことを言った舌の根も乾かないうちに
こんなものを書いてしまいました。
本編の時間軸に対し、過去と未来をもうやったのでこれで出し切った感はあります。
書こうと考えはしましたが、蛇足になりそうだったのでもうやらないと思います。
本編の最初にノリと勢いで書いた設定を、どうにか壊さないように四苦八苦するのが大変でした。
連載当初の尖った物言いと、連載終盤の優しいモララーのイメージを損なわないようにしてみたつもりです。
思い付きで始めたお話を、まさか元号変わるまで書いているとは思ってもいませんでした。
それほど、自分にとっては思い入れのある作品です。
それではここまで読んでいただいた皆様、ありがとうございました。
482
:
名も無きAAのようです
:2021/04/17(土) 22:41:12 ID:.ayZ7wCk0
隠居暮らしという物語、モララーの人生を追ったお話もこれでついにおしまいか……
寂しくなるけども、番外編と合わせてとてもよい作品でした
作者さん、最後まで書ききってくれてありがとう。乙!
483
:
名も無きAAのようです
:2021/04/17(土) 23:08:53 ID:/wEHwtXQ0
乙!!!
484
:
名も無きAAのようです
:2021/04/22(木) 14:09:20 ID:b5FvTPps0
重たい内容なのに、最後は晴れやかに感じて良い
またここから本編を読み返したい、乙でした
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