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('A`)ドクオと飛竜と時々オトモのようです
1
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 00:08:51 ID:88pYr5WMO
小説板から引っ越してきました。蕎麦は後程ご馳走します。
前スレ
http://jbbs.m.livedoor.jp/b/i.cgi/sports/37256/1300286882/1-
24
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 00:43:49 ID:88pYr5WMO
―――伝説
その言葉にドクオの瞳に真剣みが増した。
伝説の裏には、必ずと言って良い程、その裏には強大な存在が隠れている物なのだ。
ドクオに伝説を教えようとギコが話し始める。
(,,゚Д゚)「この村には……」
(゚、゚トソン「ギコ君、そこから先は私が話します」
だが、それを一緒にいた女が制した。
(,,゚Д゚)「ゴルァ、了解です。確かに先輩の方がこういう話には詳しいでしょうし」
大人しく口を閉じ、ドクオと同じく聞く態勢に入ったギコに彼女は『ありがとう』と微笑んで話を続けた。
(゚、゚トソン「改めて名乗らせて頂きます。私の名前はトソン。トソン=アデアと申します」
('A`)「こちらこそ。先程も名乗ったがドクオだ。ドクオ=ウェイツーという。以後、宜しく頼む」
立ち話もなんですから、とトソンをドクオに座るよう促した。
(゚、゚トソン「さて、先程ギコ君が話そうとした伝説。それを今からお話させて頂きます」
25
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 00:45:53 ID:88pYr5WMO
―
―――
―――――
それはそれは昔の話です。何十年前か、何百年前か、正確な記録は竜人であられるギルドマスター様でもご存知ありません。
ただそれが“昔から在った”という事さえ、ご理解頂ければ何も問題ありません。
ユクモ村が出来るずっと前の話。ここは多くの生物達の楽園でありました。
ユクモの土地を長く育んできた大火山。その恩恵の一つである“温泉”。それがその理由です。
ユクモの湯は傷に良く、病に良い。
野生の中で傷を負った生き物達にとって、ユクモの湯は掛け替えのない物でした。
だからこそ、この地は狩人の村としての基盤を築けたのです。
周囲を火山と凍土に囲まれてなお、気候は温暖。
そんな恵まれたユクモの地には、一つだけ問題がありました。
26
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 00:46:23 ID:88pYr5WMO
【何十年に一度現れる大積乱雲】
私やギコ。いえ、この村に住む全ての者達が、幼い頃口酸っぱく教えられてきた事。
『雷が鳴ったら決して外に出てはいけないよ。もしこれを破って外に出たらユクモ神様がお前たちを連れて行ってしまうからね』
(゚、゚トソン「ドクオさん、見えますか?あの山に掛かる不気味な黒い雲が」
『あれが【雷狼竜】ジンオウガなのです』
27
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 00:46:57 ID:88pYr5WMO
('A`)「………」
ドクオの視線の先には真っ黒い雲。
(゚、゚トソン「今までユクモギルドは、ジンオウガと二度戦いました。一度目は何も知らない新米狩人達が。結果、四人全員が壊れた状態で見付かりました」
(,,゚Д゚)「………」
(゚、゚トソン「二度目は満を持して、ユクモが誇る凄腕の狩人達が。結果、ジンオウガの撃退には成功しますが、討伐には至らず。更に二人の犠牲者を出すという始末」
('A`)「そして、今日が三度目だったのか」
トソンはドクオの言葉に静かに頷いた。
(゚、゚トソン「ギルドマスターの忠告を無視し、山を登った騎士派の狩人達四人が、今朝渓流エリアで見付かりました。生きていた者は居ません」
ドクオとギコ、二人の視線が交差する。何かを確認するかの様に。
(゚、゚トソン「一度目に四人、二度目に二人、そしてまた四人。計十人の犠牲者を生んだ【雷狼竜】ジンオウガ。件のモンスターは、今日現時点を以て災害指定級モンスター“G”と認定されました」
28
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 00:47:50 ID:88pYr5WMO
ドクオは、ゆったりと自然体のまま立ち上がった。
それに習い、ギコも胸を張り直立する。
(゚、゚トソン「ユクモに在籍するG級狩人は貴方達だけです。追って正式な依頼を承ることとなるでしょう」
トソンは、二人の男の目を見つめた。ユクモの命運を託す事となる二人を。
(,,゚Д゚)「任せて下さい。きっと俺達が狩ってみせます」
('A`)「……狩れというのなら狩るだけだ」
トソンは、ギコを小さい頃からずっと見てきた。幼い頃から、ロマネスクの影響を受け狩人を志し、彼女を見本としてメキメキと力を付けてきた。
独り善がりな部分もあると不安だったが、G級となってからは、それも大分緩和している。
(゚、゚トソン「……ごめんね、ギコ君」
(,,゚Д゚)「うっす」
しかし、そうと分かっていてもトソンの胸から不安は消えない。
彼女の後ろを不安そうに付いてきていた男の子が、今村のために強大な敵と戦おうとしているのだ。
29
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 00:48:30 ID:88pYr5WMO
('A`)「……トソン」
(゚、゚;トソン「あっ、はい」
そして、もう一人。
ギコと共にジンオウガと戦う事になるであろう男。
陰鬱そうな瞳に、狩人にしては細すぎる身体。
初見の者には、その男が彼のドンドルマが誇るG級であると分からないだろう。
だからこそ、彼がユクモに来てからの実績を見れば誰もが目を疑う。
何の防具も着けず、遭遇した上位のアオアシラを討伐する事なく撃退し、初めて相対したはずのギギネブラを、寄せ付ける事無く討伐。
また【空の王】リオレウスに対し、非戦闘員を二人抱えながらも、大した傷を負うことなく討伐。しかも単独で囮をこなすという離れ業をもって。
しかし、やはり一番大きいのは凍土の洞窟の中でトソン自身の目で彼の動きを見た事だろう。
【毒怪竜】ギギネブラを翻弄したスピード、随所に見せた狩人としての創意工夫。
無謀に見えた単独での突出も、全ては仲間を護るため。
30
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 00:50:19 ID:88pYr5WMO
凄腕、それも今まで自分が見た事ない程の。そう認めざるをえない。
そんなドクオが、トソンに向かって言い切った。
('A`)「トソン。きっとお前は勘違いしている。俺達は死にに行く訳じゃない」
(゚、゚トソン「……でも、死にに行くような物です。四人でも勝てない相手に、二人でなんて」
それきりトソンは、顔を伏せてしまった。
('A`)「………」
その様子に、ドクオとて何も感じない訳ではない。
今トソンが感じている不安は“あの時”ドクオが抱いていた物と同じだ。
しかし、だからこそ。それ故にドクオは、背の剣を抜き放ち、俯くトソンを真っ直ぐ見つめて言った。
――――覚えておけ――――
('A`)「Gの狩場に敗北はない」
ハッ、とトソンは反射的に顔を上げた。
太陽は雲の向こうに隠れているはずなのに、ドクオが掲げた剣からは何処からか光が映り込んでいた。
31
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 00:51:30 ID:88pYr5WMO
('A`)「ふぅ。まぁ、何も知らない俺が言ったところで大した意味はないが」
背に剣を収める。
('A`)「とりあえず依頼は承諾だ。俺は少し準備があるので、ここで失礼させてもらう。ギコ、お前も抜かりなく済ませろ」
(,,゚Д゚)「おう」
去っていく二人を、トソンは見送るしか出来なかった。
―――ただ願わくば
(-、-トソン「二人が無事に帰ってこれますように」
32
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 00:52:15 ID:g6YenBfU0
いらっしゃい&おかえり まってたよー
33
:
6―2
:2011/12/18(日) 00:52:42 ID:88pYr5WMO
ドクオとトソンと別れたギコは、真っ直ぐある場所へと向っていた。
小高い丘。緑豊かなユクモの地でも、特に花が咲き乱れる場所。そこに広がる無数の墓標。
ギコは、その一つの前で足を止めた。
墓標に刻まれた“挺身の英雄 ロマネスク 此処に眠る”という文字。
三頭のディアブロスと戦い死んだロマネスク。
だが、ディアブロスは草食故に彼の死体が食い散らかされる事はなかった。
(,,ーДー)「ロマネスクさん……」
静かに祈りを捧げるギコ。
(,,゚Д゚)「俺、今ならロマネスクさんの気持ちが少し分かる気がします。ずっとロマネスクさんを追いかけ続けてきた俺だからこそ、あの時のロマネスクさんの気持ちが……」
眼下に広がるユクモ村。
ギコの生まれた場所。ギコの大切な場所。
34
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 00:53:24 ID:88pYr5WMO
(,,゚Д゚)「ロマネスクさんは……きっとこの景色を守りたかっただけなんだ」
挺身の英雄なんかじゃない。ただロマネスクは、彼自身の為に、ディアブロスとの戦いに臨んだのだ。
―――俺も護ろう
(,,ーДー)(誰の為でもなく、俺の為に)
『――――やぁ、ギコ』
突然ギコに掛けられた声。しかし、ギコはこの声に覚えがあった。
多分、家族以外では一番多く耳にした声。
(,,゚Д゚)「モララー」
( ・∀・)「ふむ。確かに私はモララーだが。そういう君は、これから無謀な戦いに挑む可哀想な程バカなギコではないかい?」
いつも飄々とした態度を崩さないモララー。彼の物言いから、これからギコがジンオウガに挑む事も知っているのだろう。
言ってしまえば、モララーは空気が読めない。
ユクモの者は、そんなモララーを煙たがっているのだが、ギコとモララーは驚くほど仲が良かった。
35
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 00:54:36 ID:88pYr5WMO
(,,゚Д゚)「相変わらず回りくどい喋りをするなぁゴルァ」
( ・∀・)「うふふ、これが“騎士”としての正しい言葉遣いらしいのだよ。諦めてくれたまえ」
幼なじみであり、共に狩人を目指した二人。
【狩人派】と【騎士派】道は違えたが、そんな事は彼らにとって、どうでも良い事であった。
(,,゚Д゚)「もし俺達が失敗すれば、きっと次はお前やトソン先輩、ビロード達の出番だと思う」
( ・∀・)「だろうね。今のユクモは、まだ若樹だ。Gのいる間は良いが、君達が居なくなれば【騎士派】【狩人派】と拘ってはいられなくなるだろう」
二人は揃って溜め息を吐く。
(,,゚Д゚)「……お前には、本当に嫌な役回りを押し付けちまったな」
( ・∀・)「ふふっ、相変わらず君は優しいね。しかし、これは私自身が望んだ事だよ。それに知っての通り私に【騎士派】の自覚なんて物もなければ、歌姫様に払う敬意などこれっぽちも無い」
36
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 00:55:06 ID:z8KKDA6U0
おいふざけんなどれだけ待たせたと思ってんだこら
37
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 00:55:36 ID:88pYr5WMO
ふはっ、とギコがその言葉に吹き出した。
(,,゚Д゚)「騎士派の中枢であるお前がそんなんじゃ、あちらさんも随分苦労してるんだろうな」
( ・∀・)「さぁ、どうだろうね。ただトソン嬢は、最近皺が目立つようになってきたし、デミタスに至っては昨晩も血尿を垂れ流していたよ」
(;,,゚Д゚)「それは普通に不味いだろ……」
二人は笑う。いつものように。
そんな温かな雰囲気の中、訪れた静寂。
(,,゚Д゚)「モララー、これは言おうか本当に迷った事だが、聞いてくれるか?」
( ・∀・)「良いだろう、話たまえよ」
ギコは、拳をギュッと堅く握り言葉を繋いだ。
(,,゚Д゚)「もし俺がくたばっちまったら、ユクモを頼む」
( ・∀・)「………」
38
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 00:56:09 ID:88pYr5WMO
(,,゚Д゚)「お前が、責任感の強い人間だという事も、お節介な人間だという事も、俺は良く知ってる。お前がどれだけ隠していても、知ってるんだ。
俺はそれを知った上で、お前に頼む。卑怯だとは分かってる。だがお前にしか頼めないんだ」
全てを言い切り、ギコは顔を伏せた。
ギコだから知っている。
モララーがどれだけユクモを大切に想っているか。
だからこそ、周りに『騎士派のスパイ』と罵られようと『裏切り者』と蔑まれようと、騎士でありながら狩人を辞めなかった。
そんな人間に『ユクモを頼む』と言えばどうなるか、それをギコは承知で言った。
( ・∀・)「なぁ、ギコ」
弾かれたようにモララーの方を見た。
39
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 00:57:07 ID:88pYr5WMO
( ・∀・)「俺は変わっちゃいない。俺が騎士として護りたいのは今も昔も、あのお転婆な姉妹だけだよ。その二人が生きる場所。そんな大切な場所を、俺が護らない訳ないだろうが」
(,,゚Д゚)「……そう、だな」
―――それに
( ・∀・)「私は騎士だよ。聖下に危害が及ぶとなれば、風のように疾く駆け付けるさ」
モララーは、ユクモを歩く巻き毛の二人の少女を丘の上から見ながら、いたずらっ子の様に笑った。
40
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 00:58:43 ID:88pYr5WMO
('A`)「………」
ユクモ村を、ドクオは一人で歩いていた。
ジンオウガ襲来の報が伝わったのか、いつもはワイワイと賑やかな行商人達の姿は無く、人影は疎らだ。
('A`)「ふむ」
ユクモに来てから初めてのG級モンスター討伐依頼。加えて見た事のないモンスター。
今まで幾度もG級と戦い勝利してきたドクオだが、緊張がある事は否めない。
だが、たからといって特別にする事もない。
いつもの様に万全の準備をし、いつもの様に帰ってくる。
それだけだ。
41
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 00:59:29 ID:88pYr5WMO
途中、ドクオは自分が装備を預けている鍛冶屋に立ち寄った。
こちらに来てからずっと使い続けていた【夫婦剣】コウリュウノツガイだが【雷狼竜】ジンオウガは、その名の通りならば雷を司るモンスターのはずだ。
ドクオがドンドルマで戦ってきた雷の属性を持つモンスター達の肉質を参考にすれば、その弱点は氷だろう。
('A`)(氷なら、うってつけの奴があるな)
取り出したのは武骨な双剣。柄から刃先まで鈍色をした何の装飾もない双剣だ。それもそのはず、これはある伝説の竜の骨、角、爪を何も加工せずに組み合わせてだけの剣だ。
('A`)「伝説に相対するのなら、やはりこちらも伝説でなくてはな」
他にも、閃光玉や罠といった物も取り出す。
そんなドクオに、後ろから声を掛ける者がいた。
(‘_L’)「何か御入り用ですか?」
('A`)「あぁ、フィレンクトさんか。ご無沙汰ですね」
以前ドクオがギコと共に依頼を受けた行商人、フィレンクトだった。
42
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 01:00:23 ID:88pYr5WMO
(‘_L’)「ドクオさん、大物を狩りに行かれると聞きました。準備は万全ですか?何かお手伝い出来る事があれば、遠慮なくお申し付け下さい」
('A`)「ありがとうございます。ただ今必要な物は特に無いですね」
フィレンクトは『残念です』と笑うと『少し一緒に歩きませんか?』 とドクオに尋ねた。
('A`)「構いませんよ。まだ正式に依頼を受けた訳ではないので暇を持て余していたところです」
それから、二人でユクモの村をゆっくりと歩いた。
('A`)「ヘリカルは元気にしていますか?」
(‘_L’)「えぇ、少しお転婆が過ぎる程ですがね。最近は、私が仕事から帰ってくるのを待っている様なのですが、いつも途中で眠ってしまうようで。風邪をひいてしまうから、先に布団で寝なさい、と言ってるんですがね」
呆れたような声色のフィレンクトだが、その顔には温かな笑みが浮かんでいた。
(‘_L’)「そういえば、ツンさんとナルガクルガを討伐したそうですね」
('A`)「流石に情報が早いですね」
(‘_L’)「全く、貴方は大した人だ」
今度は本当に呆れた様に言った。
43
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 01:01:23 ID:z8KKDA6U0
双影か支援
44
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 01:01:38 ID:88pYr5WMO
(‘_L’)「貴方は自分がどれほどの偉業を成し遂げたのか理解していますか?HR2の新米を連れて、あの【迅竜】を倒したのですよ。それも二人とも無事で、です」
('A`)「確かに、ツンにはまだ早かったかもしれないな。だが、彼女ならやれると判断した。彼女のガンナーとしての腕は、彼女のHR以上の物だったし、加えて素晴らしい素質、そして弛まぬ努力があった。だからこその成功だと思います」
ドクオの言う事は、最もな事なのだろう。
しかしフィレンクトは、それだけでは納得出来ない。
確かにツンが弛まぬ努力をしてきたのは知っている。回りの環境にも恵まれ、ガンナーとしての姉を持ち、切磋琢磨できる幼なじみもいる。
だが、視界の効かない夜中に【沈黙の暗殺者】たるナルガクルガを討伐出来るだろうか。
何も知らない者が聞けば、即座に無理だと答えるだろう。
45
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 01:02:46 ID:88pYr5WMO
だがフィレンクトは、その無理を覆す要因を知っている。
('A`)「………」
ほんの数ヶ月前ユクモにやって来た男、ドクオ=ウェイツー。彼ならば、その無理すらも押し通す。
(‘_L’)「……やはり、大した人だ」
行商人の間では有名な話だが、今ユクモはとても危うい状態なのだ。
狩人の世代交代の失敗、それが大きな失敗。
今、狩人派の頂点に立つギコは二十八歳。まだまだ若い。だが実力は折り紙付き、先日G級に昇格した。
村人達の間では『ロマネスク二世』やら『新たな英雄』などと呼ばれている。
しかし、その下が如何せん育っていない。
ビロード=ラシライアやベルベット=ワカッテマスという、ギルド叩き上げの狩人達も育ってきてはいるが年齢は二十歳を過ぎた辺りと若すぎる。
今回のジンオウガ討伐には、とても出せない。
46
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 01:03:35 ID:88pYr5WMO
こうなってくると、やはり騎士派の存在がネックとなってくる。
そもそもモララー=ケーニッヒ、トソン=アデアが居れば状況は全く変わってくるのだ。
ギコよりも早くHR5になった天才、モララー=ケーニッヒ。村人は、将来ギコとモララーがHR6となりユクモを支えてくれるのだと信じていた。
だがその希望は叶わず、モララーは騎士としての道を選んだ。
そしてトソン=アデア。ロマネスク、ベーン、フォックスというユクモに名を残す三人の狩人を唯一直接知る彼女は、キュートの侍女をしている。
狩人派と騎士派、この危ういバランスの中、ギコが倒れる事があれば、きっとユクモは今の形を保てなくなるだろう。
だからこそ、フィレンクトはドクオに期待していた。
彼がカンフル剤となって、確実に周りの狩人達は力を付けている。
ブーンやデレ、ツン、そしてギコ。
この危ういバランスを保つキーパーソンが、まだユクモに来て数ヶ月の男なのだ。
47
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 01:04:05 ID:88pYr5WMO
('A`)「………」
じっと見つめられて照れたのか、ドクオは頬を掻いた。
『おーい、ドクオー』『ドクオさーん!』
('A`)「ん、ブーンか。それにデレも。どうしたんだ、そんなに慌てて」
(;^ω^)「どうしたもこうしたもないおっ!ドクオがユクモ神の討伐に向かうって聞いて、すっ飛んで来たんだお!!」
なんでもツンとデレの三人で、お祝いだと酒場に入ったところで、その噂を聞いたらしい。
('A`)「あぁ、そうらしいな。デレも同じ理由か?」
ζ(゚ー゚*;ζ「はい!まさかジンオウガが現われるなんて!!」
どうやら二人ともドクオを心配して来たようだ。
48
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 01:04:54 ID:88pYr5WMO
('A`)「心配しなくζ(゚―゚*#ζ『心配しますっ!!』あ……はい」
ζ(゚―゚*#ζ「分かってるんですか!?ジンオウガなんて私達は、ちょっとした伝説くらいに思っていたモンスターです!そんなモンスターとたった二人で戦って来いだなんて!!」
どうやらデレは相当頭に血が昇っているらしい。自分の所属するギルドに対してキレている辺りが、もう末期だ。
ζ(゚、゚*ζ「私、今から抗議してきます」
( ^ω^)(やべぇ、荒巻のじいさん。これは死んだかも分からんね)
(;'A`)「おいおい、デレ。仮にも所属するギルドだぞ」
止めようとするドクオに、デレはなんとも良い笑顔で言い放った。
ζ(^ー^*ζ「大丈夫ですよ、最近じゃ鳥竜種くらいなら一撃で仕留められるようになりました。いくら竜人と言っても少し人間より長生きなだけで不死身じゃないんですから、強撃ビン付きの貫通矢を頭に何発かブチ込めば、きっとくたばるはずです。それが不満なら毒ビンにしましょうか?油断させておいて近距離から拡散させれば流石のギルドマスターでも躱せないでしょう。そこから、じわじわと死んでいく姿を眺めるのも良いですね。でも、まぁ、ドクオさんを危険に晒す命令をしようとした馬鹿にそんな後悔する時間を与えても仕方ありませんよね。ならやっぱり、すぐやりましょう」
((((;'A`))))ガダガタガタ
( ;ω;)コワイオ
(‘_L’)
突っ走る女性は、いつの時代も男を恐怖させるのである。ドクオは震え、ブーンは泣き出し、フィレンクトは立ったまま気絶した。
49
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 01:05:37 ID:88pYr5WMO
ギルドマスターが言っていた、デレの困った性格。その片鱗が初めて明らかになった。
('A`)「……まぁ、やめておけよ。そんな事じゃ依頼は取り下げられないだろうしな」
ζ(゚、゚*ζ「……ギルドマスターだけじゃ駄目なんですか?流石にギルドのハンター全員とかになっちゃうと私だけではちょっと……それにツンちゃんも居ますし」
(;^ω^)(違うお!この人、盛大に歪んだ方向に話を持って行こうとしてるおっ!!そして殺害対象にナチュラルに入れられるボク(笑))
50
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 01:06:32 ID:z8KKDA6U0
フィレンクトwww
51
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 01:07:08 ID:88pYr5WMO
影でソワソワしだしたブーンを無視して、ドクオは軽くデレを小突いて言った。
ζ(>Δ<*ζ「いたっ!」
('A`)「全く、言ってるだろ。俺達はどんなに困難な状況だろうと村人達の為に必要なら狩りに出るんだ。デレも自覚しろ。俺達が居ない間にモンスターが村に近づいて来たなら、お前が出なければいけないかもしれないんだぞ」
その言葉にも納得しきれないのか、デレはガルガルと唸りながら俯く。
ζ(゚、゚*ζ「……じゃあ私も連れていって下さい」
ブーンは自分の耳を疑った。
デレは確かに優れた狩人だ。しかし、彼女には幾つかの欠点があった。
彼女は、とてつもなく“生きたがり”なのである。
幼い頃に大好きな祖母を殺されたデレ。
大切な存在を突然モンスターに奪われた彼女だからこそ、自分が死ぬ事で悲しむ人がいる、そしてその悲しみがどれ程の物かを知っている。
だからこそ仲間の為にその身を喜んで差し出すギコが“死にたがり”だとすればデレは、どうしようもなく“生きたがり”なのだ。
狩りは信頼の出来る腕を持った者としか行わない。
デレの性格はユクモの狩人の間でも有名な話である。だからこそ、デレに一緒に狩りに付いてきて貰うという裏HR試験があるとまで言われている。
そのデレが
ζ(゚、゚*ζ「………」
死と隣り合わせの狩りに、自ら付いていきたいと言いだしたのだ。
52
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 01:09:00 ID:88pYr5WMO
しかし、その申し出を
('A`)「駄目だ」
ドクオはキッパリと断った。
ζ(゚、゚*ζ「……どうしてですか?」
('A`)「聞いていないのか?【雷狼竜】ジンオウガはめでたくユクモ初のG級に認定された。狩りに出れるのはG級の狩人、つまり俺とギコだけなんだ」
そんな、とデレは言葉を詰まらせた。
('A`)「デレ、お前のHRは4。まだまだ経験が足りない。今は、まだお前には荷が重いんだ」
ζ(゚、゚*ζ「………」
この言葉に身体を強張らせたのはデレだけではない。ブーンもまた自分の拳を強く握った。
( ^ω^)「………」
HR4のデレでも経験不足だと言われている。それならHR2の自分なんて足手まとい以外の何物でもない。そう言外に言われた気がした。
53
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 01:10:04 ID:88pYr5WMO
('A`)「はぁ……そんな顔するな、二人とも。今はまだ、と言っただろ。お前達には間違いなく才がある。今のまま成長すれば、いつか共に戦えるさ」
ドクオの励ましの言葉も、ブーンにはうまく伝わって来ない。
ブーンの父は偉大だった。ユクモを長年支えてきた、たった三人のHR6。村人からの信望も篤く、そんなベーンに憧れ狩人を目指したのは自然な事だった。
狩人を目指す自分に周りの人達は暖かく祝福してくれた。そんな人達の事をブーンは愛していたし、皆の期待に応えたいと感じていた。
狩人になってからも挫折はなく、命の危険に晒されるような事もなかった。
だから、ブーンは今まで壁を感じた事がなかった。そんな彼の世界を一変させたのがドクオだ。
いつしかベーンに、そしてドクオにも、並び立ちたいて、ブーンは夢見ていた。
しかしまだ無理だと言われた。
初めて自分の前に壁が現れたような気がした。
( ^ω^)(……でも)
54
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 01:10:51 ID:88pYr5WMO
ウジウジと考えている自分が嫌になる。
この状況で一番死に近いのは誰か、それは間違いなくドクオだ。
ジンオウガ、伝説でしか知らないモンスターと戦うなんて。
( ^ω^)「……ドクオ。ドクオは怖くないのかお?ドクオが強いのは知ってるお。
でも相手はドクオの知らないモンスターだお。それも天候を操れるような、とんでもない化け物だお。【雷狼竜】ジンオウガって、ボク達にとっては“神”みたいな存在なんだお。どうしてそんな冷静でいれるんだお?」
優しいブーンだからこその言葉だと感じた。
ドクオだって伊達にブーンの指導をしていた訳じゃない。
ブーンがどんな人間か、ドクオなりに理解していた。
('A`)「……まったく、狩りに出るのに心配されるのなんて何時ぶりだろうな」
だからこそ、ブーンの本心からの心配は心地好い物だった。
('A`)「……ブーン、お前と初めて話した時に俺の二つ名について聞いたことがあったよな」
( ^ω^)「お?」
覚えている。ツンとクルペッコを討伐した時だ。
あの時ドクオにG級だけが許される二つ名について『ドクオにもあるのか?』と尋ねた事がある。
あの時は『忘れてしまった』とお茶を濁されたが。
55
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 01:11:47 ID:88pYr5WMO
('A`)「二つ名は自分で決められる物じゃないからな。俺はあまり使っていなかったが、今打ち明けようと思う」
―――俺の二つ名は
('A`)「―――だ」
ブーンとデレは言葉を失った。ドクオの二つ名、それが持つ意味を正しく理解したからこそだ。
('A`)「だから心配するな。俺はちゃんとここに帰ってくるさ」
ポンポンとブーンの肩を軽く叩き、デレの頭を撫でてドクオは去っていった。
56
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 01:12:22 ID:uhWUenkc0
支援
ドクオかっこよす
57
:
幕間
:2011/12/18(日) 01:13:15 ID:88pYr5WMO
いつもはワイワイと騒がしいユクモギルドも、今日ばかりは静かだ。
普段は温泉に浸かっている連中も、酒を飲んでいる連中も、今は全員直立不動でギルドマスターの言葉に耳を傾けている。
/ ,' 3「先日からユクモを騒がせている積乱雲、あれは【雷狼竜】ジンオウガが引き起こした物じゃ」
その言葉に驚く者は居ない。もうユクモの人間なら誰もが知っている事だ。
/ ,' 3「先日騎士様が四人でこのモンスターを討伐するために山を登ったが、全員が事切れた状態で見つかった。儂はのぉ、自分の判断を初めて悔いた。こんな事ならば、チミ達に頼めば良かったとなぁ」
ギルドマスター、アラマキはゆっくりと息を吸う。
/ ,' 3『怪物を狩るのは“狩人”じゃ!!!!!!!!!』
余りの声量によろける者もいた。まるで飛竜の咆哮のような。
/ ,' 3「これで【雷狼竜】ジンオウガの犠牲者は十人。慣例により彼のモンスターは災害指定“G級”と認定された」
おぉ、と驚きの声があがる。
/ ,' 3「G級にはG級を。ついては我がユクモギルドが誇るGの狩人に【雷狼竜】ジンオウガの討伐を命じる」
58
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 01:13:46 ID:88pYr5WMO
―――ギコ=ストッドウッド
(,,゚Д゚)「はい!」
/ ,' 3「【Stubborn】ギコ=ストッドウッド。お前にジンオウガ討伐を命じる。経験した事のない厳しい狩りになると思うが、受けてもらえるか?」
ギコは迷う事なく、背に背負った己の相棒。【焔剣】リオレウスを抜き、掲げた。
(,,゚Д゚)「誇りあるGの狩人として、そしてユクモに生きる一人のヒトとして。その命、慎んでお受け致します」
59
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 01:14:37 ID:88pYr5WMO
―――ドクオ=ウェイツー
('A`)「はい」
/ ,' 3「【God Slayer】ドクオ=ウェイツー。お前にもジンオウガ討伐を命じる。かつてドンドルマを震撼せし、神殺しの力、このユクモの為に使ってはくれぬか?」
ドクオは、全く気負いのない自然体で背から己の双剣【鋼龍双】ラファール=ダオラを抜き放った。
('A`)「お任せを。殺し尽くしてみせましょう」
【God Slayer】神々を殺す者、それは余りの強さ故に神と崇められた怪物達を討伐してきた者にのみ与えられる称号。
60
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 01:15:05 ID:88pYr5WMO
/ ,' 3「二人とも、良い狩りを」
('A`)『ありがたく』(゚Д゚,,)
====('A`)ドクオと飛竜と時々オトモのようです 六話====
61
:
◆.WtyGIaY4.
:2011/12/18(日) 01:16:00 ID:88pYr5WMO
酉テスト中
62
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 01:17:52 ID:z8KKDA6U0
乙!
ラファールだったか
63
:
◆.WtyGIaY4.
:2011/12/18(日) 01:24:06 ID:88pYr5WMO
ではでは成功したようなので、この話を書いている間は上の酉を使おうと思います。宜しくお願いします。
さて、やってきました。創作避難所。初めましての方は初めまして。このスレッドを開いていただきありがとうございます。
VIPから、旧避難所からのお付き合いの方は、お久しぶりです。
更新の遅い拙作ではありますが、心機一転頑張りますので宜しくお願いします。
今日の投下はここまでです。タイトルコールまで50レス以上、まだまだ続きはありますが明日、明後日と投下しに参ります。
今日はありがとうございました。
64
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 01:26:08 ID:L7n/UbgM0
乙 続きも楽しみにしてる
65
:
◆.WtyGIaY4.
:2011/12/18(日) 01:27:27 ID:88pYr5WMO
>>62
らっ、ラファールが分かる人がいるだとッ!?
ラファールの武器詳細の方は内緒にしておいて下さい。この話の中では、相当弱体化させる予定ですから。それでも出したのは自分の記念すべき最初の剛武器だからです。
66
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 01:28:19 ID:fsrrlbX60
乙です!!明日も楽しみにしてるよー
67
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 01:33:09 ID:uhWUenkc0
おつ
68
:
◆.WtyGIaY4.
:2011/12/18(日) 01:48:47 ID:sRDpegEQ0
どう考えてもデレが最愛キャラ、もう愛してる。
69
:
◆.WtyGIaY4.
:2011/12/18(日) 01:50:52 ID:sRDpegEQ0
どう考えてもデレが最愛キャラ、もう愛してる。
70
:
◆.WtyGIaY4.
:2011/12/18(日) 01:53:40 ID:sRDpegEQ0
二重書き込みしちゃったorz
では感想・質問・指摘は随時募集中です。お疲れ様でした。
71
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 12:30:24 ID:/g9H5jqg0
乙です
向こうで見てたけど誘導しなくてもいいんじゃないか
引っ越し予告はしてたし。
んで質問
>しかし、やはり一番大きいのは凍土の洞窟の中でトソン自身の目で彼の動きを見た事だろう。
一緒にいったのはデレだろ、トソンはいつ見たのさ
トソンがギギネブラ戦を覗いてたってことかい?
72
:
71
:2011/12/18(日) 12:53:41 ID:/g9H5jqg0
いや、自己解決した。
歌姫の侍女か。スマソ
73
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 13:09:05 ID:vw1oSLCcO
引っ越し乙
神の討伐とかwktkすぎる
74
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 18:48:18 ID:ebud7yhkO
>>1
お前のせいでMHP3とPSP買ってしまったんだぞ!
責任とれ!
MH3G出て涙目だぞゴルァ
75
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 18:56:26 ID:0h97EKOs0
乙
剛種倒せるならぶっちゃけジンオウガなんて……
76
:
◆.WtyGIaY4.
:2011/12/18(日) 20:42:51 ID:sRDpegEQ0
本日22:00頃投下しに参ります
77
:
◆.WtyGIaY4.
:2011/12/18(日) 20:49:54 ID:sRDpegEQ0
>>74
自分だけが被害者だと思うなよ!続編がPSPで出ると信じてVITAを先払いで予約してたバカも居るんだぞ!!(´;ω;`)ブワッ
>>75
その辺はバランスを崩さない様に調整します。剛種の強さを知っているならなかなかのベテラン狩人さんですね。
78
:
◆.WtyGIaY4.
:2011/12/18(日) 22:21:55 ID:88pYr5WMO
それでは、改めて開幕でありんす
79
:
6―3
:2011/12/18(日) 22:23:49 ID:88pYr5WMO
さてこの物語の読んでくださっている、物好きな皆様方ならば、もうお気付きだと思うが。一人、いや一匹まだ登場人物が出てきていない。
では、これから彼女の話をしよう。
これは二匹のオトモと、ユクモの英雄の物語。
彼女がずっと、その小さな胸に抱えてきた、悲しみの話を。
(*゚∀゚)
80
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 22:25:47 ID:88pYr5WMO
彼女の名前はツー。アイルーだ。
そもそもアイルーというのは、非常に知能が高く、器用な生き物だ。ドンドルマでは、理髪店を営業していたり、鍛冶屋をしていたりと、活躍の場は多岐に渡る。
だがユクモのアイルーは、彼ら以上の知性を持つ。この理由は未だに明らかにされていないが、ユクモの湯の効能だという説が有力となっている。
ユクモのアイルーは、主人である狩人を愛し、死ぬまで己の主人へと尽くす。
それは彼らの誇りであり、生きる意味であるのだ。
だからこそ
(*゚∀゚)つ((メ)ΦωΦ )「むぅ……ツー、我輩のヒゲを引っ張るのは止めるのである。普通に痛いのである」
(*゚∀゚)「ひゃははwwww」
(;=゚ω゚)ノ「ツーちゃん、やめるよぅ!引っ張り過ぎだよぅ!もうご主人様の輪郭がおかしな事になってるよぅ!!!」
こんな光景は異常であった。
81
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 22:32:13 ID:88pYr5WMO
( ΦωΦ)「全く、ツーは少しお転婆が過ぎるのである。イヨゥを見習って、もう少し静かに出来ないものか」
(*゚∀゚)「うん、それムリだニャー!それにイヨゥは臆病なだけだニャー!!ツーは勇敢だからニャー」
ユクモ史上初めてのHR6、ロマネスク=フェイト。ユクモの守り手であり、これからの活躍を渇望されている狩人だ。
(*゚∀゚)「まったくイヨゥも、もっと頑張るニャー。そんな事じゃオレっちの妹にも追い抜かれちゃうのニャー」
(=゚ω゚)ノ「うぅ、僕はツーちゃんと違って戦いには向いてないんだよぅ。採集してる方がご主人様の役人立てるんだよぅ」
そして彼に付き従う二匹のオトモが居た。
一匹は現ギルドオトモであるツー。
そして虎柄の毛色を持つ、少しオドオドした雄アイルーがイヨゥである。
82
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 22:33:16 ID:88pYr5WMO
( ΦωΦ)「さて、それではそろそろ狩りに出るのである。お前達、準備は出来ているのであるか?」
(*゚∀゚)「万全ニャー」
(=゚ω゚)ノ「はい、ご主人様。出来てますよぅ」
そして彼らは今日も狩りに行く。
(*ー∀ー)『だが断るニャー』
( ΦωΦ)「ところでツー、そろそろ頭から降りぬか」
ツーは漠然と、こんな日々がいつまでも続くのだと思っていた。
ロマネスクの背中を守り、イヨゥをからかう、そんな日常がツーにとって宝物だったのだ。
83
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 22:33:36 ID:88pYr5WMO
あの日【砂漠の暴君】ディアブロス襲来の報を聞くまでは。
84
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 22:36:14 ID:88pYr5WMO
【角竜】ディアブロス、広大な砂漠地帯を支配する飛竜である。
プライドが非常に高く、危害を加えられたり縄張りを侵されると凄まじく猛り狂う故に【砂漠の暴君】と呼ばれている。
棘の付いた襟飾りを持ち、目のうえに二つの巨大な角を備える飛竜。首にある襟状の堅固な鱗や角などは恐竜に於ける『角竜類』と近い。
尾は『曲竜類』のように先端部が棍棒状になっており、鋭い牙を持つが飛竜種の中で数少ない草食竜である。
昼でも夜でも関係なく動き回る上に、移動の殆んどを地面の潜行で行うので、監視が難しく
地響きを感じれば、いきなり目の前に【角竜】ディアブロスが現れた等という報告も珍しくはない。
そんなディアブロスが三頭。ユクモを包囲するように砂漠に現れた。
85
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 22:37:33 ID:88pYr5WMO
ギルドマスターは頭を抱えた。一匹だけでも第一種危険モンスターとして扱われるディアブロスが三頭。とてもではないがユクモの狩人だけで対処出来る状況ではない。
本来ディアブロスは、討伐より捕獲任務があてられる。
動き回るディアブロスを監視し、眠りに就いた所で捕獲するのだ。
しかし今回は複数のディアブロスがいる。縄張り意識の高いディアブロスは、最初から猛り狂った暴君の状態だろう。捕獲は困難だ。
( ΦωΦ)「我輩が行くしかないだろう」
/ ,' 3「ロマネスク」
それならばユクモ最高の狩人、ロマネスクを出すしかないのだ。だが、アラマキは迷っていた。“来るべき日”に向けて、ここでロマネスクが命を落とすような事があってはならない。
86
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 22:38:34 ID:88pYr5WMO
( ΦωΦ)「マスター。我輩では不満か」
/ ,' 3「……いや、残念ながらお主しかおらんのぉ」
アラマキは渋々ロマネスクを討伐任務に出す事を許した。
(,,・Д・)「ぜったい帰ってこいよゴルァ」
( ΦωΦ)「あぁ、勿論である。ギコも、我輩が居ない間、修行を怠るなよ」
(*゚∀゚)「任せとけニャー!オレっち達にかかればディアブロスなんてちょちょいのちょいだニャー」
(=゚ω゚)ノ「頑張るよぅ」
村の期待を、縋る想いを一身に受け、彼らは砂漠へと向かった。
厳しい戦いになる事は、ロマネスクもオトモ二匹も充分理解していた。
87
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 22:40:36 ID:88pYr5WMO
しかし最初の一頭は予想に反し順調だった。砂漠の端、木陰で眠っているところを捕獲したのだ。
( ΦωΦ)「ふむ、最初の一頭は順調であったな」
(*゚∀゚)「ちょっと拍子抜けだニャー!もっと骨が折れると思っていたのにニャー!!」
(=゚ω゚)ノ「戦わないで済んで安心したよぅ。でもまだ二頭いるよぅ、それに嫌な予感もするよぅ」
イヨゥの言葉にロマネスクも同意する。そもそも気が抜ける様な状況ではないのだ。
ここで一つ、戦いの定義という物を一つ紹介しておこう。
複数の敵と“連続”で戦うと、複数の敵と“同時”に戦う事には大きな違いがある。
一般的に同時に二体の敵と戦う場合、要求される実力は敵の最低四倍は必要だと言われている。
88
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 22:41:43 ID:88pYr5WMO
一対一を繰り返す場合、大きく要求される物は【戦い続ける体力】と【集中力】だ。
しかし一度に複数を相手取る場合、要求される物はさらに多岐に渡る。
簡単に例を挙げるが、全身凶器となる飛竜、純粋に脚も牙も爪も全てが二倍だ。それに加えて“どちらのモンスターに幾らダメージを与えたか”。モンスターを追撃する場合は“どちらの方が弱っているのか”その全てを正確に把握しなければならない。
だからこそロマネスク達が行おうとしている【角竜】ディアブロス同時狩猟は、どれだけ凄腕のベテラン狩人でもやりたがらない。
( ΦωΦ)「ふむ。出来れば同時にディアブロスと戦う様な状況は避けたいものであるな」
(=゚ω゚)ノ「まったくですよぅ」
しかしイヨゥの予感は最悪な事に的中した。
89
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 22:42:54 ID:88pYr5WMO
次の日の朝、ロマネスク達は巨大な砂嵐を目撃する。ただの砂嵐ではない。二つの嵐が駒の様にぶつかっては離れを繰り返す。そして、その衝撃が地響きとなって砂漠を揺らしていた。
( ΦωΦ)「………」
【角竜】ディアブロス、それが二頭。しかも自分の縄張りを荒らされて憤怒しているのか口からは黒い息を吐き出している。
状況は、どう見ても悪い。しかし更に最悪な事があった。
(*゚∀゚)「……ユクモの方に向かってるニャー」
( ΦωΦ)「そのようだな」
90
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 22:43:43 ID:88pYr5WMO
もっとユクモから離れた場所であれば、どちらかが弱るまで静観する事も出来たが、これだけ近付かれるとそれも出来ない。
( ΦωΦ)「行くしかない、のであるな」
(*゚∀゚)「ニャー」
(=゚ω゚)ノ「はいですよぅ」
駆け出した。彼らがここまで来たのはユクモを護る為。ここでみすみす奴等をユクモに近付ける訳にはいかない。
(#ΦωΦ)「うおおおおおおお!!!!!!」
鼓舞する様に雄叫びをあげる。狙うは、既に角が一つ折れたディアブロス。
距離が詰まっていくに連れ増してくる飛竜特有の威圧感。しかしユクモの英雄とまで呼ばれるロマネスクは、それを簡単に打ち払う。最初の一撃、これに全力を注ぐ。
二頭のディアブロスの注意が互いに向いている状態の今ならば、この攻撃は必ず成功する。
91
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 22:45:06 ID:88pYr5WMO
己のリーチのギリギリまで近付き、背後から相棒【雹砲】ウルクスレイを引き抜く。
(#ΦωΦ)「勝負なのである!!」
狙うは甲殻のない腹部。ここに叩き込む。
初撃、ディアブロスの身体を削ぎ取るように突きを放つ。そして間断なく突き上げ。
ここまでの連携は完璧、狩人になってから何千、何万と繰り返してきたロマネスクならではの隙の無い連撃。
しかし相手は飛竜。それも全長20mの大型。
その鈍い痛覚は、ロマネスクの連撃を全く気にする様子がない。
だが
(#ΦωΦ)「ハアァァアアアア!!!!!」
ここからがロマネスクの愛槍【ガンランス】の真骨頂。
92
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 22:45:59 ID:88pYr5WMO
(#ΦωΦ)「全開ッ!!撃ちであるっ!!!!!」
ウルクスレイの柄部分から枝分かれした砲身。そこから繰り出される【全弾砲撃】フルバーストである。
火を噴いたガンランス、堪らず片角のディアブロスは膝を付いた。
(#=゚ω゚)ノ「いよぉおおおお!!!!!」
透かさずイヨゥが、ペイントボールをぶつける。
(#*゚∀゚)「ニャーァアアアア!!!」
加えてツーの剣斧が、ロマネスクの傷付けた場所を寸分の違いなく追撃を加えた。
最初の一手は文句なく成功だ。
93
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 22:49:10 ID:88pYr5WMO
( ΦωΦ)「………」
ロマネスクは素早く次弾を装填する。油断なく盾を構えながら、咆哮に備えた。
『Ualaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!』
『Galaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!』
ディアブロス独特の長い咆哮。本来なら前転であったり、物陰に隠れたりしてやり過ごすのだが、ガンランス使いは、正面からそれを受ける。
(;ΦωΦ)「グヌゥ……」
音が振動となってロマネスクの左手を揺らす。だが、ロマネスクの身体にブレはなく、見事二頭のディアブロスの咆哮を受け切った。
94
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 22:50:21 ID:88pYr5WMO
ロマネスクの動きは機敏だ。淀みなく下半身から力を伝え、片角のディアブロスに得物を突き立てる。
(#ΦωΦ)「うおぉぉおおおお!!!!!」
しかし甲殻がなくとも、【砂漠の暴君】ディアブロス。突き刺さったのは、50Cm弱。
(;ΦωΦ)「っ!!やはりディアブロス、甲殻は無くともその硬さは飛竜随一かっ!!」
突き立てられたガンランスを、全く意に介さないディアブロス。寧ろ、焦ったのはロマネスクの方だった。突き立てたガンランスが、抜けないのだ。
95
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 22:51:15 ID:88pYr5WMO
さて、ここでガンランスという武器について簡単ではあるが説明しよう。
ガンランスの歴史は新しく、使われ始めたのは太刀や双剣といった武器よりも後の事になる。
所謂【花形】である太刀、双剣、大剣とは全くと言って良いほど運用思想が異なる。逆に言えば、やはり槍としての形状をしている為に、ランスとは少し似か寄る所がある。
まず守りに主眼が置かれているという点。
この点に於いて、先に挙げた【花形】である三種とは大きく異なる。
それに加えてガンランスによる斬撃は、斬り上げ以外ほぼ“突き”で行う必要があるという点だ。“斬撃”の概要に関しては【太刀】の説明の時に詳しく話そうと思うので、ここでは摘む程度にしておく。
『突き立てる』『突き貫く』『突き刺す』といった言葉があるように、皆のイメージでは得物で相手の体内を貫くと感じるだろう。しかし、これは狩人の用いる“突き”には当て嵌まらない。
96
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 22:53:52 ID:88pYr5WMO
まず解りやすい様に、ヒトを例に取って見てみよう。急所と呼ばれる『心臓』『肺』『腎臓』など、この辺りは皆に聞き馴染みのある部位だろう。
幾ら身体を鍛えようと、鍛えられない部位。だからこそ、それを急所と呼ぶ。だが、この考えは大きな間違いだと言わざるを得ない。
何故なら、これらの内臓を傷付けるためには、筋肉であったり肋骨であったりを全て刺し貫く必要があるからだ。
そして、それ以上に相手の体内から得物を“抜く”という事が一番の問題となる。
だからこそ、突きは一撃必殺の“博打技”と呼ばれるのだ。
だが狩人達が使う“突き”は、『刺し貫く』ではなく『突き削る』。
敵の身体を削ぎ取るための物なのだ。
97
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 22:54:46 ID:88pYr5WMO
さて、ここで話をガンランスの特性に戻す。
従来の突きと、狩人の突き。ガンランス使いは、敢えて従来の突きを行う。だが勿論、いくら狩人であろうとも先の例からは漏れない。
今ロマネスクが陥っている様に、抜けなくなる。
そんな事、彼は百も承知。
(#ΦωΦ)「甘いのであるッ!!!」
響き渡る砲撃音。ウルクスレイから放たれた【拡散砲】だ。超至近距離からの砲撃が、ディアブロスの腹部を焦がす。
そして、この砲撃は更なる追撃の狼煙でもある。
(#ΦωΦ)「ッ!!」
この砲撃により、今までディアブロスの腹に突き刺さっていたガンランスが抜けたのだ。これこそが【従来の突き】を可能にするガンランス、それもロマネスクが最も得意とする戦い方だ。
再び、切り上げ。そこから連撃の突きへと繋げていく。そして再び砲撃。
流れる様な動作。ロマネスクにとって、今の一連の動きは狩人になってからずっと磨き上げてきた物だ。
98
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 22:55:41 ID:88pYr5WMO
(=゚ω゚)ノ「ご主人様っ!!!」
背後から掛けられたイヨゥの叫びに、ロマネスクは咄嗟に身体を捻り、全力で前転した。
『Ualaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!』
通り過ぎていく、もう一頭のディアブロス。
( ΦωΦ)「ツー、頼む」
(*゚∀゚)「お任せニャー」
ツーは、その一言で自分が何をすべきか察した。猛烈なスピードで、先程突っ込んできたディアブロスに近づくと
(*゚∀゚)「ニャー、このマヌケー!そんな図体しててアイルー一匹も倒せないのかニャ?ん?」
その可愛いお尻を向け、挑発した。
99
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 22:57:59 ID:88pYr5WMO
非力なアイルーが、飛竜を馬鹿にする。そんな事をディアブロスは許さない。ディアブロスは決して寛大な賢君ではないのだから。
『Ualaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!』
(*゚∀゚)「その調子だニャー、砂漠の暴君。ツーが相手をしてやるのニャー」
ロマネスクの狙い通り。一頭のディアブロスは、今完全にツーに気を取られている。勿論、ロマネスクもツーだけでディアブロスと戦えるとは思っていない。しかし、今は何よりも時間だ。この弱っているディアブロスを、ツーが引き付けている間に倒してしまいたい。
( ΦωΦ)「ツー、耐えて欲しいのである」
ツーも正しく、主人の考えを理解していた。今、自分がしなければならないのは時間稼ぎ。ロマネスクが一頭を倒すまで、こちらに引き付けなければならない。
100
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 22:58:51 ID:88pYr5WMO
( ΦωΦ)「イヨゥ!あちらのディアブロスが近付いて来たら、すぐに知らせるのである!!」
(=゚ω゚)ノ「はいですよぅ!」
もう一匹のオトモであるイヨゥは、ロマネスクに張りついたまま二頭のディアブロスを注意深く見つめている。
イヨゥは、オトモアイルー達の中で力のある方ではない。寧ろ、飛び抜けて力が弱い。昔はアイルーらしからぬ語尾と、そのひ弱さが原因でアイルーの間では虐められていた程だ。
だが、その点を補って余るほど彼は優秀な頭脳を持っていた。
(=゚ω゚)ノ「ツーちゃん!ディアブロスを斬るなら尻尾を狙うんだよぅ!!首にはツーちゃんじゃ届かないけど、気を逸らすのが目的なら尻尾で充分なはずだよぅ!!!」
全体を見渡し、的確に今出来る最善の選択肢を伝える。こんな芸当が普通のオトモに出来るだろうか。否、出来るはずがないのだ。
101
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 23:07:33 ID:88pYr5WMO
ディアブロスを、単独で引き付けるオトモ、ツー。
そして、主人とオトモを万全の構えで補佐するイヨゥ。
この二匹の力が、【ユクモの英雄】ロマネスク=フェイトを今まで支え続けてきた。
102
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 23:08:15 ID:88pYr5WMO
( ΦωΦ)「ふう、流石はディアブロスなのである。しかし我らとて、負ける訳にはいかぬ。負けられない理由を抱き、お前達と戦う事を決意したのだから」
片角のディアブロスは、ロマネスクの言葉を最後まで聞く事なく、突進した。
( ΦωΦ)「全く、せっかちな王であるな」
しかし、これをロマネスクは難なく躱す。軽くステップを踏んでディアブロスの正面へ。ここで再び腹部へと刃を走らせる。
的確に、先程から傷付ている“その一点”へとウルクスレイを突き刺す。今までよりも一段と深く突き刺さる。
( ΦωΦ)(あと少し……あと少しなのである)
ツーの方は一見問題無い様だ。これが狡猾な【迅竜】ナルガクルガであったり、ずば抜けて知性の高い【火竜】リオレウスであったなら、すぐに見抜かれていただろう。
【角竜】ディアブロスだからこそ、戦い始めてからずっとツーはディアブロスを騙せているのである。加えて怒ったディアブロスの動きは速い。だが、如何せん真っ直ぐ過ぎるのだ。
以上の理由から、ツーはディアブロスから逃げ続ける事が出来ている。
103
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 23:08:45 ID:88pYr5WMO
これだけ聞くと、狩りは順調だと思えるだろう。だが本当のところ彼等に余裕などは存在しない。というより、寧ろロマネスク達は窮地に立たされているのだ。
オトモの弱点、それは体力に尽きる。
(;* ∀ )「ハァ……ハァ……。こっ、れは……きっついニャー」
104
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 23:09:21 ID:88pYr5WMO
その限界は、唐突に訪れた。
105
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 23:11:17 ID:88pYr5WMO
(;=゚ω゚)ノ「ツーちゃん!!!!!」
(;ΦωΦ)「!?」
イヨゥの悲痛な叫びが、砂漠に木霊する。ツーの動きが不意に止まったのだ。
あれではディアブロスの格好の的、しかも意図した動きだとも思えない。
(* ∀ )「―――」
恐れていた事態が起こってしまった。砂漠に大の字に俯せるツーは、自らの限界まで逃げ続けた。だがアイルーの小さな体で、飛竜と根比べをすればこうなる事は当り前。
やっと動きを止めた標的に、雄叫びを上げ嬉々として突っ込んでいくディアブロス。
(#=゚ω゚)ノ「させないよぅ!!」
イヨゥは全速力でツーを抱え込み、地中に潜った。確かにディアブロスの突進は猛烈だが、不幸中の幸い距離は彼の方が近かった。
106
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 23:12:06 ID:88pYr5WMO
寸での所で、ツーを助けだしたイヨゥ。
それを見てロマネスクは“安堵の息”を吐いた。
そう、ユクモの英雄は一番してはいけない事をしてしまったのだ。
それは“安心”油断と言っても良い。
(メ;ΦωΦ)「グフゥ……!!」
片角のディアブロスが、ニヤリと嗤っていた。
深々と貫かれたロマネスクの脇腹からは、ドクドクと赤い液体が溢れていた。
107
:
6―4
:2011/12/18(日) 23:15:53 ID:88pYr5WMO
地中から出てきてイヨゥは、目の前の光景を見て絶句する。脇腹に大きな風穴を作った主人。その大きさからディアブロスの角に刺し貫かれたのだと分かった。
(;=゚ω゚)ノ「ごっ、ご主人様ッ!!」
イヨゥは、狩人を仕留め喜び狂う二頭のディアブロスを無視して駆け寄った。
(メΦωΦ)「イヨゥ……ツーは無事であるか?」
(=;ω;)ノ「はい、ツーちゃんは無事ですよぅ!ご主人様、すいませんよぅ!僕が勝手に離れちゃったから……僕のせいですよぅ!」
咄嗟に、起き上がろうとするロマネスクへ支えようとするが、手で制された。
(メΦωΦ)「戦いは、まだ終わっていないので、ある。我が輩は、まだ戦える」
(;=゚ω゚)ノ「無理ですよぅ!その傷じゃ、満足に動ける訳ないですよぅ!!」
誰が見ても満身創痍。死に体と言っても過言ではない。見ればロマネスクの脇腹からは大量の血液、顔色も青白くなっている。
だが、そうであっても
ロマネスクは己の足で立ち、こう言い切った。
108
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 23:16:49 ID:88pYr5WMO
(メΦωΦ)「我が輩は狩人である!この身は、ユクモを護る盾!!この身朽ちようとも、我が輩は逃げる事を是としない!!!」
_
109
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 23:17:54 ID:88pYr5WMO
これが、今なおユクモで英雄と呼ばれるロマネスク=フェイト。その本質。
身体を刺し貫かれようとも、彼は退く事を是としない。誇り高きユクモを護る盾。
『Galaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!』
―――だからこそ
ディアブロスの突進を受けて尚、彼は一歩も下がらなかった。
ずっと待っていた瞬間。片角のディアブロスが、無防備に慢心した突進を繰り出すのを。
(メΦωΦ)「待って、いたのである……この時を……」
ロマネスクの愛槍【雹砲】ウルクスレイ。それが突き刺さる。
いや“突き刺さる”という言葉では足りない。“突き抜けた”のだ。
110
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 23:21:27 ID:/KaCdXl.O
引っ越しキター!
今から読むしえ
111
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 23:22:08 ID:88pYr5WMO
ずっと狙い続けた腹部の傷。少しずつ、傷口を広げていった。そこに、ディアブロスの突進の勢いを利用し突き刺した。
時速80kmで疾走するディアブロス、その胸を正確に突く。間違いなくロマネスクにしか出来ない技である。
『Galaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!』
しかし暴君は止まらない。今ディアブロスを突き動かしているのは、生物としての本能だ。
ディアブロスは、前腕を振り上げ忌々しい狩人の身体を押し潰そうとする。
112
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 23:23:03 ID:88pYr5WMO
―――だが
『ユクモの狩人を舐めるなあぁぁぁああああ!!!!!!!!』
113
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 23:24:18 ID:88pYr5WMO
太刀にも、大剣にも、他のどんな武器にもない、ガンランスだけの固有兵装。強靭な飛竜の肉質ですら無視する、問答無用の一撃。
(#ΦωΦ)「オオオォォォオオ!!!!!!」
―――対竜種用 竜撃砲
圧倒的火力も以て、ディアブロスを体内から焼き尽くす。
114
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 23:25:26 ID:88pYr5WMO
『Guohooooo………』
今までの雄叫びとは、全く質の違う悲鳴。そのままディアブロスは、倒れ臥した。
(メΦωΦ)「……まずは一頭、なのである」
ロマネスクに油断は無い。
だがディアブロスは、まだ一頭残っている。ロマネスクの身体は既に満身創痍。状況は言うまでもなく最悪である。
115
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 23:26:08 ID:88pYr5WMO
(メΦωΦ)「イヨゥ、ツーは?」
(*゚-゚)「ここにいるのニャー」
ロマネスクに呼ばれ、すぐに地中から出てきたツー。体力は、まだ完全に戻っていないのか、時折肩で息をしている。
同胞が倒され、動揺を隠せないディアブロスが動かないのを見て、ロマネスクは言った。
(メΦωΦ)「ツー、イヨゥ、お前達は逃げろ」
ピク、とツーの猫耳が揺れる。
116
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 23:26:59 ID:88pYr5WMO
(* ∀ )「……なんでニャ?もうツーはいらない子なのかニャ?」
予想外の言葉に、ツーは身体を震わせて尋ねる。
(メΦωΦ)「ツー、お前は充分にやったのである。あのディアブロス相手に、何時間も、逃げ続けたのである。その活躍、見事としか言い様がない。充分、我が輩のオトモとして尽くしてくれたのである」
主人の労りの言葉。しかしツーが今聞きたいのは、こんな言葉ではなかった。
オトモとは主人と共に生き、主人の為に死ぬ。
(* ∀ )「イヤニャー!ツーは、ご主人様と一緒に死にたいのニャー!!」
普段からお転婆だの、口が悪いだの、敬意が足りないと口酸っぱく嗜められていた彼女。
だが彼女は、心から自分の主人を愛していたのだ。それはオトモ特有の刷り込みによる敬愛だったかもしれない。苦楽を共にした情なのかもしれない。
だが、それは紛れもなく彼女だけの、ツー自身の想いであった。
117
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 23:27:51 ID:88pYr5WMO
(メ#ΦωΦ)「聞き分けよッ!!!!」
だがロマネスクは、ここに来てその想いを否定した。
(* ∀ )��
怒鳴るのも辛いのか、ロマネスクは大きな血の塊を吐いた。だが、それでも喋るのを止めない。
(=゚ω゚)ノ「ご主人!」
なんとかイヨゥも出血を止めようと、出血元を強く押えているのだが、効果は見られない。
(メΦωΦ)「イヨゥもツーも、今まで良く我が輩を支えてくれた。だが、それも此処までなのである。今日も以てお前達との契約を切る」
(;=゚ω゚)ノ「ご主人様!」
『Ualaaaaaaaaaa!!!!!!』
主従の繋がりを断ち切る様に、残されていたディアブロスか吠えた。
そして、その巨体を地面へと潜らせる。
ロマネスク達に緊張が奔った。
118
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 23:28:42 ID:88pYr5WMO
(メΦωΦ)「……お前達は、これからのユクモを支えていく若者達の導き手となって欲しいのである」
(* ∀ )「……」
(= ω )ノ「……」
―――これが、不甲斐ない主人からの、最期のお願い、なのである
( ΦωΦ)『ツー、お前が無事で良かったのである』
119
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 23:29:01 ID:zgUJIP.U0
待ってた
待ってた!!!
120
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 23:29:35 ID:88pYr5WMO
(*;∀;)「ごしゅじ……」
ツーは、最後までその言葉を発する事が出来なかった。ツーの小さな身体が、大きく投げ飛ばされたからだ。これには“ロマネスク”も驚きを隠せなかった。
(=;ω;)ノ「ハァ……ハァ……」
ツーをあそこまで遠くに投げ飛ばしたのが、あの“非力な”イヨゥだったからだ。
121
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 23:30:29 ID:88pYr5WMO
暫しの放心状態を経て、我に返ったツーは叫ぶ。
(*;∀;)「ニャ、イヨゥ!なんでツーを投げたのニャ!?」
それに、イヨゥは裂けんばかりに叫び返した。
(=;ω;)ノ「ツーちゃんは生きるよぅ!!生まれてきたしぃちゃんの為にも!ご主人様の為にも!!」
小さな身体で、精一杯の大声。しかし、そこには確かにイヨゥの魂が込められていた。
(メΦωΦ)「……イヨゥ」
この小さなアイルーの精一杯の主張、ロマネスクは否定する事が出来なかった。いや、誰にも否定させはしない。いつも臆病で、自分を隠してきたイヨゥが、やっと自分の意志を主張したのだ。
(メΦωΦ)(誰にも、それを否定させはせぬ)
イヨゥは続けて、こうも叫んだ。
(= ω )ノ「変な口癖で、いつもイジメられてきた僕を助けてくれたのはご主人様だよぅ。いつか恩返しがしたい、そう思っていたんだよぅ。力が弱くて、不器用で、本当にどうしようもなかった僕を救ってくれたご主人様に……僕はここで報いたいよぅ!」
122
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 23:31:05 ID:88pYr5WMO
ディアブロスが地中に潜った時は、決して大きな物音を立ててはならない。視界も利かない地中な中で、奴は耳を頼りに獲物を狙うからだ。ディアブロスと戦うなら絶対に忘れてはいけないルール。
それを頭の良いイヨゥが、忘れているはずがなかった。
波紋の様に広がる地響き。そして、それが収まった瞬間【角竜】ディアブロスは、再び地中からその巨躯を躍らせ顕現した。
狙いは言うまでもなく、イヨゥ。
(#=゚ω゚)ノ「イヨォォォオオオ!!!!」
しかしイヨゥは、軽やかな跳躍でそれを躱す。その動きに速さはない。ただ巧さだけがあった。
(=゚ω゚)ノ「ご主人様、僕の初めての我が儘を許して下さいよぅ。ツーちゃん、僕の初めてのお願いを聞いて欲しいよぅ」
―――僕はただ、君を護りたいんだよぅ
123
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 23:32:01 ID:88pYr5WMO
(メΦωΦ)「行け、ツー。主人と仲間のお願い聞き届けてくれ」
(* ∀ )「ツーは……ツーは……」
『にゃあああああああああああああああああ………!!!!!』
ツーは、駆け出した。ユクモに向かって。どうしようもなく、ここで一緒に死にたい自分を、自らの意志で押し殺し、何度も転げ、心臓が警笛を鳴らそうとも、ツーは逃げ出したのだった。
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