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( ^ω^)_______のようです

1名も無きAAのようです:2011/11/08(火) 22:54:23 ID:bwtyxfCA0
レベルが無いからスレ立て無理と言われて来ました!

134 ◆6Ugj38o7Xg:2012/10/31(水) 23:57:53 ID:YuEAbayY0

(;^ω^)「カプセル薬剤……? これは?」

( ´_ゝ`)「通信用の端末だ、飲めば体内で再構成される」

( ^ω^)(飲むのか……)

若干どころじゃない抵抗があったが、やむなく内藤は怪しい薬を口にした。
幸いとくに味も無く、喉を通る頃にはすぐに違和感もなくなっていく。


( ´_ゝ`)「さ、行きなよ、あとはオペ子が案内してくれる」

そうして促されるまま、内藤は扉を抜け、明るい廊下へと飛び出した。
何処に向かえばいいのか不明だが、とにかく来た道を戻ろうと進む、

「ざ」

(;^ω^)「…?」

と、ふとノイズが鼓膜をたたいた。
何やらムズムズするので方耳を塞げば、唐突に声が響いた。

『内藤君、聞こえる?』

(;^ω^)「おわ!? なんだお!?」

135 ◆6Ugj38o7Xg:2012/10/31(水) 23:59:54 ID:YuEAbayY0

『(*゚∀゚)ああよかった、それじゃ案内するよ!』

(;^ω^)「え、あ、はい……」

(;^ω^)(つ、通信って、こういう事かお)

『(*゚∀゚)とりあえず廊下のどっかに、三角看板のビックリマークあるかな』

( ^ω^)「えっと、はい、ありますお」

『(*゚∀゚)じゃあとりあえず、そこの扉を開けて?』

言われるがままに開けば、そこには一人分程度のスペースがある。
覗き込めば、マッサージチェアめいた椅子があった。


『(*゚∀゚)緊急時用の移動シェルターだよ、そこに座ったらベルトを締めて』

しっかりと捕まるように、そう促された。
何だか嫌な予感しかしないが、やむなくそうするなり、

扉が閉じ、強烈な圧力が上から襲い掛かってきた。


(;゚ω゚)「ぬ、お、お、お、お、お……!?」

136 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/01(木) 00:01:17 ID:6pXeuMd.0

『(*゚∀゚)ああそうそう、言い忘れてたけど、これから君の事はカーズと呼ぶね』

『(*゚∀゚)通信が漏れたときのプライバシー保護の為にね、本名は避ける決まりなの』

矢継ぎ早に話はつづくが、正直それどころではない。
落ちない分恐怖感は薄いが、代わりに頭がぐらつき耳が痛い。


『(*゚∀゚)本当は空路で運んであげたいんだけど、君はちょち特別みたいだから』

やがて速度が緩むのを感じて一息つくと、
ポーンと音が鳴って扉が開いた。

『(*゚∀゚)代わりに、プレゼントを用意したよ』

(;´ω`)「う、うーん……クラクラするお…」

よろめきながら立ち上がると、そこはこれまた広い空間だった。
床にはいくつもの線が引かれており、宙にはPの看板が見える。

またしても駐車場、それも入ってきた時とは別の場所のようだった。

137 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/01(木) 00:02:39 ID:6pXeuMd.0

だが、車は一台しか見当たらない。
黒いスポーツカーだ。

低めの車高に流線ボディ、ボンネット左右タイヤの部位が膨らんでいる。
扉は観音開き、シートはバケット、リヤにウイング付だ。

そして後ろに文字がある。


(;^ω^)「あーるえっくす……はち?」

『(*゚∀゚)それが君への贈り物だよ、レッツビギン』

車は疎いのでよく分からないが、なんだかとても高そうだった。
そんな印象も手伝ってか、内藤は誰も居ない空間にむけ、両腕を交差させてバツを作る。


(;^ω^)「ええ!? でも、僕乗れませんお?! 免許も無し!!」

『(;*゚∀゚)そうじゃないよ!? 君、車のクオリティなんでしょ!』

(;^ω^)「あ、そ、そっか、変身すれば……!」

言って、内藤は車に手を当てた。
そして目を閉じ、少し溜めてから目を見開き、告げる。

( ゚ω゚)「変身!!」

138 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/01(木) 00:04:56 ID:6pXeuMd.0
















                                                      ,

139 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/01(木) 00:05:55 ID:6pXeuMd.0


少女戦闘続行中。


傷だらけになりながら、それでもクーは躊躇い無く突き進む。
戦果としては、右脚二本の装甲と部位破壊、左足一本の装甲破壊だった。


どれも、機能停止にまでは至っていない。

だが確実に、ダメージを蓄積させ始めた。

彼女にしても初めての巨大な敵との戦闘だ、間合いから何まで不明瞭。


それらを理解するまでに、かなりの時間を要してしまった。

ようやく慣れては来たものの、受けたダメージが自由な動作を許さない。
血を垂らす手指には青白い火花が散り、脚は鈍重、幾度か血が視界を奪った。

援護射撃もついに弾切れ、防衛陣も完全な後退を余儀なくされた。

だが。

川メ゚ -゚)「……こんどこそ、こわす…!」

果たして何がそうさせるのか、クーは一切、戦意を惑わせない。

140 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/01(木) 00:07:29 ID:6pXeuMd.0

およその速度は身体が覚えた、行動パターンも頭に入っている、
そしてこれまで、敢えて避けていた事がある。

だから少女は行った。

正面から真っ直ぐに、釣られて、蟹がハサミを振りかざす。

もう何度も行われた一連の流れの一つだ。

少女の動きを予測して放たれる攻撃は、機械故か、狂いが無い。
そしてこれまでの戦闘で、相手がこちらの動きに合わせて動いているのは目に見えている。

川メ゚ -゚)(……ここ!)

ゆえにクーは見切りをつけた。

回避できるギリギリの距離と、蟹が攻撃に移る境界線。
その場でブレーキをかけ、杭打ちを利用した無茶な方向転換。
蟹は狙い通り、少女の進もうとしていた先を穿つ。

141 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/01(木) 00:09:09 ID:6pXeuMd.0

少女の身体が後方へと吹き飛ぶように宙を舞う、
だが自ら行った行為ゆえ、くるくると回りながら姿勢を変え、
着地するや否や、地面に埋まるハサミへ向かって駆けた。


川メ゚ -゚)(ねらいは……)

瞬く間に距離を詰め、ハサミを足場にして、一気に本体を目指し。
ある程度のぼったところで、大きく飛び上がり、中心点へ。


川メ゚ -゚)(……め!)

頭頂部から飛び出した、二本の目玉部位。
分厚いバラボラアンテナのような形の、おそらく最も柔そうな箇所。

あれが少なくともレーダーの類であるならば、潰せば優位に立てる。
そして少女の狙いは正しかった、間違いなく、その二本は目であり、探知機でもあった。

川メ゚ -゚)「……え?」

誤算だったのは。

142 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/01(木) 00:10:50 ID:6pXeuMd.0

いつからか、蟹が吹いていた、青色の泡だった。

それはクーが腕を駆け上がると同時にばら撒かれた、シャボン玉。

目玉部位の下、口元で膨らんでいた泡が大量に宙に浮き上がり、
それを邪魔と見た彼女が、銃剣で打ち払った瞬間。

低音の、しかし大気を震わせるような衝撃が空に生まれた。

泡は幾度か浮かんでいたが、すぐに消えていた為、クーは警戒を怠った。
しかしシャボン玉の正体は青色エネルギーの塊。

対象が触れた場合、激しい衝撃波を発生させながら弾け散る、一種の強力な武装だった。

川; - )「っっ…ぁ……!!」

至近距離から全身に衝撃を受けた彼女が、蟹の反対へと身を流す、
ダメージとしては、そう大きな物ではなかったが、瞬間的な痺れが、全身麻痺を引き起こす。

更には吹き飛ぶ過程でいくつかの泡に触れ、身体が左右に跳ねながら、
ついには大きく、後方へと吹き飛ばされる形となった。

143 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/01(木) 00:12:32 ID:6pXeuMd.0

意識は、既に飛んでいた。

腕の武器は青の輝きの中に消え、少女のか細い腕に変わる。
そしてしばらくの浮遊を終え、頭から落下を始めた。

朦朧とする中、微かにクーが身じろぐが、
もはや何の意味も持たない。

生身と化した今の状態で落ちれば、まず助からない。
地表はみるみるうちに近づいて、そして。











落下する身体を、空中で受け止める影が割り込んだ。

144 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/01(木) 00:14:16 ID:6pXeuMd.0

落下する身体を、空中で受け止める影が割り込んだ。

( ,,゚Д゚)「だから一人で突っ走るなって言ってんだろうが」

川メ゚ -゚)「……?」

ギコと呼ばれた男だった。

彼は少女の身体を抱きとめ、労わる様にして着地した。
そのまま見据えるのは、巨大な蟹だ。


( ,,゚Д゚)「おいお前ら、こいつ連れて此処から離れろ」

そして後ろを追いかけてきた隊員と思わしき男に、少女を受け渡す。

クーはまだ諦めていないのか、拒否しようと足掻くが、
もはや力なく、されるがままに抱きかかえられた。

( ,,゚Д゚)「さて、と……」

向きなおし、空いた片腕を突き出す。
すると青い光が腕を包み、形を歪ませていく。

145 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/01(木) 00:15:49 ID:6pXeuMd.0

次いで光が剥がれ落ち、現れたのは、刀のシルエット。

だが刃となる部位は空洞であり、三角の頂点を切り取ったような形状をしている。
およそ武器には見えない代物だったが、変化はすぐに起きた。

空洞だった部位に、根元から光が立ち昇っていく。

青い輝きだった、やがて光が空洞の全てを覆うと、更に形を歪ませ、
いくつもの刃を象るような形状と貸した。

そして幾度か排気音が響き、刃が激しく上下運動を繰り返す。
動きは時と共に激しさを増し、やがて一つの線と化した。

高速旋回刃、チェンソーと言うより、電動ノコギリ。
男の名は、その存在から名づけられた。

そしてギコは回転刃を正面に向け、相対する存在へと言葉を投げた。


( ,,゚Д゚)「切り刻んでやるさ、覚悟しろよデカブツ」

146 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/01(木) 00:17:15 ID:6pXeuMd.0

















                                     .

147 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/01(木) 00:18:51 ID:6pXeuMd.0


変身。



と、声がむなしく響き渡る。
しかし、何も起こらない。


(;^ω^)「………あれ?」

『(;*゚∀゚)……どうしたの?』

問われ、内藤は嫌な汗をかいて狼狽した。
そう、実はあの初戦以来、なんだかんだで再度の変身を試したことが無い。

しかも緊急時に何が何やら分からない状態でやった事だ。
果たしてどうしていたのか、さっぱり分からなかった。

『 ナンカ、デキナイッテ!! ザワザワ エー ナンデ 』

そして、遠巻きに戸惑うむこうの様子が聞こえる。
かっこよく飛び出した手前、とても恥ずかしい物があったそうな。

『( ´_ゝ`)しょうがないな、教授しよう』

(;^ω^)「…す、すみませんですお」

148 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/01(木) 00:20:02 ID:6pXeuMd.0

『( ´_ゝ`)とは言え話は簡単だ、お前は今何をイメージした?』

(;^ω^)「えと、あの時のロボに変身を…と」

『( ´_ゝ`)ああそれじゃ駄目だ』

『( ´_ゝ`)いいか、クオリティクリスタルの力は、人の願いを形にする物ではない
       突き詰めれば、人の感情を動力源にして物体を変質させる事にある』

( ^ω^)「……感情を、力に?」

『( ´_ゝ`)姿カタチはその結果に過ぎない、想像を心に、言葉で促し、感情を乗せろ』

( -ω-)「イメージ……」

思えばあの時は、ただ巨体に対抗できることを望んだ。
ゆえの巨大化、ゆえのあの姿。

ならば今必要なのは。

( ^ω^)(そういえばあの時は……)

ただ真っ直ぐに、立ち向かうための力を願ったのではなかったか。
より確固たるものとするため、選んだ言葉はあの時と同じ。

( ^ω^)「クオリティ、コード……」

手を車に添えた、いつの間にか輝いていた胸の光がより一層強く。
ついには触れた部位からも、光線のように青が溢れる。

「トランス」



――――――。

149 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/01(木) 00:22:39 ID:6pXeuMd.0

――――――。




「ご、おお―――」

雄叫びとも取れる声が、甲高い金属音の中に混ざる。
おびただしい量の火花が散り、回転刃が金属装甲を抉り削る。

そして。

( #゚Д゚)「るああああああああああああああ!!!!!」

音が、澄んだ音と共に消え、ギコの叫びだけが残り。
巨大蟹の全体が一度、大きく傾いた。

遅れて、大地に巨大な脚が横たわり、端から青い粒子となって消えていく。
装甲の割れた脚の一本を、ギコの回転刃が断ち切った。

( ;゚Д゚)「一本目……っとと、あぶねっ!!」

落ちた脚の傍らに着地したギコを目掛け、別の脚が襲い掛かってくる。
いぜんクーに対して行ったように、巨大蟹がその場で地団駄をはじめたのだ。

150 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/01(木) 00:26:05 ID:6pXeuMd.0

そして同じように、ギコの四肢を弾けた石ころが穿つ。

腕を掠め血が漏れる、だがお構いなしに、
ギコは地面を踏み抜いた瞬間の脚を目指す。

そして上がる脚を掴んだまま、己の身を宙へ投げ出し、
落下する勢いそのままに、もう一本、装甲の剥げた箇所に回転刃を押し込んだ。

火花は、軽く5,6メートルは上がった。
そして数秒を待たずして、更にもう一本の脚をも斬り落とした。

片側四本のうち、前部二本を切り落とされ、
機械蟹はついにバランスを崩し、斜めに倒れこむ。

( ,,゚Д゚)「―――はっ、殻の割れた甲殻類なんざ楽勝だね、
     でかい癖に、あんな小せぇガキんちょにやられ過ぎなんじゃねえの?」

ギコは刃の背を肩に乗せたまま、そう言った。

だが逆を言えば、未だ装甲の残る部位はそう易々とは斬れないという事。
短い戦闘の最中、既に先行きに不利を感じていた。

151 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/01(木) 00:28:25 ID:6pXeuMd.0

だがやるしかない。

先陣を切った少女とうまく連携すれば、もっと良い手もあっただろうが、
それも今では適わない、それにあの少女が素直に従うとも思えない。


蟹が再び身を起こすまでの間、ギコは思案に暮れる。

今が好機ではあったが、少女の戦いを見ている限りでは、今近づくのは得策ではない。
近づけば、おそらく先のシャボン玉が再びばら撒かれ、痛い目をみる羽目になる。

それにその気になれば、残った脚を振り回すことも可能だろう。
現に蟹の目玉は常にギコの姿を追い、口元には泡が液状になって溢れている。

( ,,゚Д゚)(んー……)

せめてもう一手、鋏と脚を封じるか、あのシャボンを封じる手があれば。

思う間に、蟹がついに立ち上がった。

( ,,゚Д゚)「……地道にやるしかねえ、が」

ため息を一つ、現状できるのはやはりそれだけだ。
特定の行動パターンがあるならば、やはり同じ工程を行うしかない。

152 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/01(木) 00:29:50 ID:6pXeuMd.0

ふとハサミ部位を見れば、いくつもの裂傷が見える。
幾度と無く、回転刃をぶつけた痕だ。

だが、まるで砕くには至らない。
ギコのクオリティは、瞬間的な破壊力という点に置いて、
クーの杭打ち銃剣には至らない、つまり、奴の装甲を抜く手段が無い。

時間をかければ可能かもしれないが、動く相手に刃を当て続けるのは不可能に近い。

( ,,゚Д゚)(どうしたもんかね…)

『おうい』

と、そこへ一つの通信が入った。

『( ´_ゝ`)よう兄弟、調子はどうだ?』

( ,,゚Д゚)「最悪だな、斬れねぇんじゃ話にならん、何か手は?」

『( ´_ゝ`)おう、それなんだが――――とびきりのがある』

( ,,-Д゚)「そいつは楽しみだ、詳しく教えな」

153 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/01(木) 00:31:41 ID:6pXeuMd.0

『( ´_ゝ`)そろそろ増援が来るぞ、新顔のな』

( ,,-Д-)「………あー……」


( ,,゚Д゚)「……そうかい、やっぱそうなっちまうのか」

『( ´_ゝ`)そう言うなよ、大助かりだろ?』

( ,,゚Д゚)「……お前らは、わかってねぇんだよ、イーバと戦うってのが何を意味するのか……」

『( ´_ゝ`)わかってるさ、それより到着だぞ、迎えてやりな』

言って、ギコは遠くから響くエンジン音を聞いた。
ふと気付けば、巨大蟹もすでにギコを見ていない。


どこか遠く、とある一点を注視している。

次いで、蟹がハサミを振り上げ威嚇の姿勢を取った。
これも初めての行為だ。まるで、その存在を待ち構えていたように。

154 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/01(木) 00:32:54 ID:6pXeuMd.0

そして荒野へと飛び出してきたのは、青いカラーリングのRX-8。
運転手不在のその車は、タイヤに青光を纏い、荒れ果てた大地を物ともせずに駆ける。

『ギ、ギギ』

( ;゚Д゚)「!?」

と、そこでギコは不思議な声を聞いた。
蟹の方から、スピーカー越しに響くものだ。

『y……ャ…ヴ…ヴィ……ップ…………』

それは、途切れ途切れで非常に聞き取りづらい物ではあったが、
確かに、人の言葉を喋ろうとしていた。

しかしその音すら遮って、エンジン音がギコの正面にて停止、
ギコはただその姿を見据え、奥に見える蟹と正面の車を見比べた。

( ,,゚Д゚)(なんかよくわからん光景だな……)

155 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/01(木) 00:35:34 ID:6pXeuMd.0

『あ、あの……』

と、我慢しきれなくなったのか、今度は正面の車から声。
スピーカー越しで濁っているものの、やはり聞いた覚えがある。

だからギコは静かに問う。

( ,,゚Д゚)「何故来た?」

車の姿のまま、内藤が答えた。

(;^ω^)『……戦うため、ですお』

( ,,゚Д゚)「そうか、なら失うぞ、お前が培ってきた色々な物をな」

そこへ、蟹が新たな動きを見せた。
両のハサミを突き出し開いて、口から大量のシャボン玉を吐き出す、
次いで、ふわりと漂っていたシャボンがハサミの前へ出ると、一気に前へと押し出された。

( ,,゚Д゚)「走れ!!」

(;^ω^)『り、了解!!』

156 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/01(木) 00:36:33 ID:6pXeuMd.0

見るなり、ギコは車の屋根に飛び乗り指示を叫ぶ。
まず突風が吹き、その後を大量のシャボン玉が追いかけ、地面に当たって荒野に穴を開けた。

走りながら、内藤は言った。

(;^ω^)『違うお、僕は……失わない為に、ここに来たんだお!!』

( ,,゚Д゚)「だがお前は、ここに来て、既に平穏な今という日を失っている」

(;^ω^)『でもここに来なければ、きっと多くの何かを失った!!』

( ,,゚Д゚)「恨まなくていいのか、お前は他人の勝手な都合で既に家族を失ったのだろう」

(;^ω^)『だけどトーチャンの求めた物が、僕の命を救った! 力をくれた!!』

( ,,゚Д゚)「……何故、自分である必要がある? 他人に任せればいいんじゃないのか」

(#^ω^)『失いたくないから、自分がやるんだお、そんなのは当たり前の事だお!!』

( ,,゚Д゚)「……知らなければよかったと、後悔する日が来るぞ…!!」

(#^ω^)『関係ない、何を知っていようと、知らなかろうと、僕は……!!』

157 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/01(木) 00:39:11 ID:6pXeuMd.0

車が減速し、代わりに青い輝きに包まれた。
屋根から飛び降りたギコは、その姿が大きく変化していく様を見た。

起き上がり、手と、足を象る。
大きな、人の形をした機械だ。


(#^ω^)『失いたくないと思った物がそこにあれば、必ず僕は手を伸ばす……!!』

そして内藤は、再び青いロボットの姿へと変質。
旋回しながら泡を吐き続ける蟹へと向きなおすと、
迫ってきたシャボン玉のいくつかを叩き落す。


(#^ω^)『それだけだお!!』

破裂音がつづけて響くが、内藤は物ともせず、衝撃をすべて受け止めた。
全身を装甲で覆われた今の姿に、もはやシャボンは通用しない。

もう何を言われても曲がらない、そんな意思も込めた行為だった。
そして内藤は何を言われるかと身構えながら、返事を待つ。

158 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/01(木) 00:43:34 ID:6pXeuMd.0

( ,,゚Д゚)「そうか、なら行くぞ」

(;^ω^)『……あ、あれ…? いいんですかお?』

が、あまりにもあっさりとした受諾の言葉に拍子抜け。
思わず力が抜けて聞き返してしまう。

( ,,゚Д゚)「…敵を目の前にして、身内喧嘩おっ始めるほどアホじゃねえよ」

( ^ω^)『えと……じゃあ』

( ,,゚Д゚)「ああ―――」

まず、ギコが前に出た。そして真っ直ぐに回転刃を正面へ。
次いで内藤がその巨体で大地を踏みしめ、拳を前に。

ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_300.jpg

( ,,゚Д゚)「さて、そんじゃ…クオリティを上げて行くぞ、内藤!!」

( ^ω^)『了解だお!!』

159 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/01(木) 00:46:25 ID:6pXeuMd.0
書き溜め分おわり。

あとは所謂ながら投下。

160名も無きAAのようです:2012/11/01(木) 08:33:47 ID:ZHohGYvMC

挿絵は自作なの?

161 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/02(金) 02:25:52 ID:iAKp35520
二時間しか経ってないと思ったら翌日だったという言い訳、そして続き。

>>160
自作らしいです

162 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/02(金) 02:26:34 ID:iAKp35520

そしてそんな隙間を、青白い光線が通りすぎた。
  _,
( ,,゚Д゚)「………おい、何だ今」

次いで、光が通った筋を爆発という結果が通り過ぎた。
の、と言う言葉が、お、という言葉に変わって二人が叫ぶ。

粉塵が舞う中、吹き飛ばされながらもギコが着地。
反対側では内藤が地面をえぐり頭からスライディング。

( ;゚Д゚)「っぶねえ…! どうなってん…!?」

そして、光線が伸びていった先を見れば、
数十メートル先の市街地にまで到達した爆発が、
立ち入り禁止の策をぶち抜き、奥の建築物までを破壊する様が見える。

光が通った道は黒く焼け焦げ、逆に辿れば巨大蟹、
見れば、飛び出した二本の目玉部位から大きな硝煙を上げている。

(;^ω^)『ビーム! ビームですかお!? あいつビーム撃ったのかお!?』

163 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/02(金) 02:28:13 ID:iAKp35520

『( ´_ゝ`)え? 何? 蟹がビーム撃ったの?』

『 ザワザワ カニコウセン!? ワイワイ ヤルトオモッタ ナンデモアリダナー ガヤガヤ』

内藤の言葉に、ガヤがにわかにざわめき立つ。
とりあえずギコは静かに通信機能をオフに切り替えた。

( ,,゚Д゚)(…? あの蟹、急に動きが変わった…)

(;^ω^)『ギコさん、大丈夫ですかお?』

( ,,゚Д゚)(……こいつが、居るから?)

言う間に、巨大蟹が再びハサミを展開、泡を射出した。
目玉の煙はまだ上がっており、よくよく見ればほのかに赤熱している。

( ,,゚Д゚)「来るな内藤! お前はそっちから周り込め!!」

(;^ω^)『は、了解!!』

市街地を背にするのは不味い、そう判断したギコはすぐさま行動に移した。
対する蟹は脚を失いよろめきながらも旋回し、敵の姿を追った。

狙いは、やはり内藤側である。

164 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/02(金) 02:29:40 ID:iAKp35520

( ,,゚Д゚)「こっちは相手するまでも無いってか…!?」

悪態をつきながらも肉薄し、空いた片側の脚へと斬りかかる。
ぎいい、と凄まじい音が鳴り火花が散った。

だが、切断には至らず。
装甲の一部を浅く抉り取ったに過ぎない。

( ;゚Д゚)(硬ぇ!!)

( ,,゚Д゚)「こうなりゃ……!!」

一方、蟹の正面に躍り出ることになった内藤は、
迫り来るシャボン玉を弾き割りながら、更に接近。

しようとするが、泡の数が多すぎた。

叩き落してしまえば容易く防げる代物であっても、
やはり直撃すれば身体は揺れ、複数喰らえば倒れてしまう。

(;^ω^)(……ち、近づけないお!?)

165 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/02(金) 02:30:46 ID:iAKp35520

そうこうする内、蟹の目玉に変化が起きた。
包むように青い光が生まれ、続けて先端のバラボラ状の部位へと収束していく。

(;゚ω゚)(嫌な予感!!)

次いで、懐中電灯を照らされたような感覚。
咄嗟にその場を大きく跳躍した直後、蟹光線が正面の内藤目掛けて放たれた。

直線状の光が、周囲のシャボンを蒸発させながら地面を打ち抜き黒く焦がす。
そして地が膨らんだかに見えた次の瞬間、隆起した荒野から爆炎が上がった。

宙に居た内藤はどうにか回避するも、爆発の衝撃をもろに受け、
もんどりうって地面を転がって、大地に大きな跡を残した。

(;^ω^)『いてて……ビームはずるいお…って』

そして間髪居れずにシャボン玉が襲った。
破裂音が連続して響き、内藤の体が大きく揺れる。

威力こそ大した物ではないが、動きを封じるには充分だ、
隙をつくように、巨大蟹が泡を吐きつつ前進、内藤の下へと向かう。

(;^ω^)『っっ……これじゃ、埒が明かんお…!』

166 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/02(金) 02:32:05 ID:iAKp35520

やはり、このままでは駄目だと。
どうにかして、もう一段階。

あの姿へと変わる以外、突破口は無い。が。

既に内藤は、頭の中で幾度と無く試そうとしていた。
だが胸の光と、攻撃や防御の際に纏う腕の輝きが強まるばかりで変化が無い。

ついでに蟹がもう目前まで迫っていて、ハサミを持ち上げており、
げ、と言った類の言葉が出る頃には、既に振り下ろされていた。

慌てて身を起こし、青色全開の両手で受け止めるが、堪えきれず膝をついた。

(;゚ω゚)『ぬ、おおおおおお!!??』

腕の装甲がひしゃげて、いくつかの火花が散った。
脚がどんどん地面にめり込んでいく、おかげで踏ん張りも効かない。

そして、激しい金属音が鳴った。

(;^ω^)『お?』

聞こえてきたのは、巨大蟹の左側面。
同時に巨体が大きく傾き、奥に脚が一本横たわった。

167 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/02(金) 02:33:15 ID:iAKp35520

( ,,゚Д゚)「三本目…!」

クーが遺した最後の部位破壊ポイント。
ギコが蟹の腹の下を突っ切って、勢いそのまま回転刃にて断ち切ったのだ。

バランスを崩した蟹鋏が重心を変え、内藤はその隙をついて離脱した。

(;^ω^)『ギコさん! 助かりましたお!』

( ,,゚Д゚)「そのまま正面、抑えられるか?」

その隙に脚を狙う、とギコが提案しようとするが、
続きを言うより先に内藤は、ひしゃげた両腕を見せつけながら無理と叫んだ。

( ;゚Д゚)「はええな……つーか、お前、早くあのでかいのになれよ」

(;^ω^)『どうしたらなれるんですかねぇ……』

( ;゚Д゚)「は?」

と、その時。

傾きかけていた蟹の目玉が再び青光を纏い、バラボラ部位を内藤へと向けた。
ギコが叫び、内藤は咄嗟にジャンプして回避を試みる。

168 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/02(金) 02:34:33 ID:iAKp35520

次いで、眩い発光と共に正射。
先と同じように、光線は一度地面を穿ち。

( ;゚Д゚)「馬鹿野郎!! 飛ぶな!!」

(;^ω^)『!?』

今度は薙ぎ払うようにして、光線が斜めに空を切り裂く。
間をおいて、内藤の左脚部のつけねから右肩にかけて、赤熱の線が生まれた。

そして、苦痛の声が爆発音にかき消され。
内藤の姿は空中の炎を伴う爆煙の中に埋もれ。

粉塵と煙を撒きながら、破損したロボットが地に転がった。

( ;゚Д゚)「内藤!! おい! 無事か!?」

(;´ω`)『う、うう……』

何とか五体無事には済んだものの、腰周りと胸部の装甲が半分吹き飛び、
光線を喰らった各所が剥がれ、内部機械が剥き出しになっている。

青い火花が呼吸するように散り、内藤は視界にノイズが走るのを見た。
通信が入り、安否を求める声がいくつも響くが、とても返事をする余裕が無い。

169 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/02(金) 02:35:49 ID:iAKp35520

だが、生きていた。

(; ω )(ぐ、ぬ)

死ぬかと思って死ぬほど痛かったが、徐々に体の感覚が戻ってくるのを感じる。
我が事ながら、自らの頑丈さに苦笑した。何故ならこれ、普通死ぬ。

しかし腕は動くし、足も抵抗は感じるが依然と稼動している。

そしてあの場所で見た物や、聞いた言葉を思い返す。

(; ω )(負けられない……! )

あの巨大蟹は尋常じゃない、あの体躯で手足を振り回すだけでも脅威なのに、
変なシャボン玉に、ちょっとやそっとの攻撃を跳ね返す装甲。

そして、ついにはこのとんでも破壊光線だ。
生身でどうこうなる相手じゃない、身を以って知った。

だから、と。

(; ω )(ロマネスク、あの人も言ってた、僕の力が必要なんだって…!)

それはこんな所で諦めたり、ましてや負けるなんて許される筈が無い。
皆が期待していた、そして同時にそれは願いでもあった。

170 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/02(金) 02:37:03 ID:iAKp35520

そして何より、何よりも。

(#^ω^)(デレが見てるのに…ここで負けたら、かっこ悪いじゃないかお……!!)

石ころを握りつぶし、内藤が身を起こした。
動けばそれだけで火花が舞うが、お構いなしだ。

と、息を巻いたはいいものの。

凝らした視界に、嫌な物が映る。

親切に待ってくれていたと思われた蟹の目玉が、再度青く輝いている。

(;^ω^)『や、やば…!!』

しかし、まだ素早く動けるほど体の抵抗は軽くない。
連射は卑怯だと思う一方で、内藤は見た。

光を蓄える蟹の目玉は未だ赤熱し、煙を吹いているばかりか、
幾度か火花を散らし、小さな爆発さえも見て取れた。

明らかにオーバーヒート、連射できる代物では無いという事。

そもそもすでに三本の脚を切り落とされ不安定。
そう、あの巨大蟹とて、必死なのだ。

171 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/02(金) 02:38:56 ID:iAKp35520

だからと言って、それはこちらも同じこと。

内藤はどうにか身を起こそうと足掻くが、
無常にも、それよりも先に、蟹光線が再び放たれた。

「おおおおおおお――――」

そんな両者の間に、躍り出る姿があった。

(;゚ω゚)『ギコさん!!?』

( ;゚Д゚)「ぐ…っ……!!!」

あろう事か、ギコは内藤を庇うように前に出ると、
光線に対して発光を強めた回転刃にて受け止め、切り裂かんとする。

同色の光が混ざり合い、裂かれるように光線が周囲へ散開、
あたりにやたらめったな焦げ後が描かれていく。

( #゚Д゚)「お、おいいいぃ!! 呆けてねぇで……! とっとと逃げやがれ!!」

ギコが叫ぶ。

文字通り、その背を呆然と見詰める内藤の目には、回転刃の峰が赤熱を始め、
受けきれない部分から漏れた光線が、ギコの足やわき腹を焼いていく姿が映る。

172 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/02(金) 02:40:09 ID:iAKp35520

(; ω )(駄目だ、このままじゃ、このままじゃ……!!!)

強烈なまでの死の匂い、このままでは共倒れだ。
意外と自分はまだ生き残るかもしれないが、ギコはそうもいかない。

最早、あの巨大な姿へと変わる以外に、助かる道は無い。

(; ω )(変われ、変われ、変われお……! 早く早く早く早く……!!!)

だが願えば願うほど、光が強まる、それだけだった。

何故、という自らへの憎しみにも似た疑念が浮かぶが、
そんな暇も無いとさらに強く願う、それでも変化は現れない。

(; ω )(何でだお!? どうしてなんだお!!!??)

苦悶の声が前から聞こえてきた。

そして。

(# ω )『とっとと変われって……言ってんだおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』

ついに願いが叫びとなって、外へと溢れ出す。
同時に、胸元の青い光が塊となって、二人の姿を覆い隠した。




――――。

173 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/02(金) 02:41:12 ID:iAKp35520

――――。


モニターに出されるのは、グラフィックにいくつかの光点。

敵と思われる赤い点と、少し離れた箇所に一つの青い点、
そして、二つあった点が重なり合い、一つとなっていく。

あたかも、一つが消えていくかのように見えるが、
彼らの状態を示す計器は、うち全て生きている。

そればかりか、単純なエネルギー総量を現す箇所が、完全に振り切っている。

(;´_ゝ`)「これは……超過駆動、やったのか…!」

(´<_`;)「だけど……何だいこの反応は? 何が起きてるんだ?」

(*゚ー゚)「映像、出ます!」

「……!!」ザワッ

( ФωФ)「………これは」

そして映された光景を前にして、誰もが言葉を失った。



―――――。

174 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/02(金) 02:42:46 ID:iAKp35520

―――――。





(  ω )「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」


音が割れた。


それは声というには、あまりにも単調で、ノイズ混じり。

大きく響くのは高音、きいんと響く。
その奥に声がある、しかしスピーカー越しの割れ音のよう。

今のブーンに呼吸は感覚、あるいは概念としてしか存在しない。
故に叫びは無限、絶え間なく続く。

そして、叫ぶという行為は、どうしても感情を奮わせる代物だ。

ゆえに、呼吸の代わりに行われるのは、動力炉への供給。
感情を奮わせる叫びとは、エンジンに注がれるガソリンのようなもの。

彼ら機械人種において、叫ぶ事はそのまま力の発動を意味する。

そしてブーンは、自の声を聞いた。
どんな思いも、迷いも、どうでもよくなっていくような感覚を覚えた。

どれほど叫んだのだろう、自分が何をしているのかも、痺れて分からなくなった。

175 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/02(金) 02:44:09 ID:iAKp35520

その果てに、やがて音がなくなっていった。

行為は理解できているのに、訳がわからない。
気が狂いそうだった、しかし、止める事もできない。

ただ気付けば、目の前が青く染まった。
その果てに、二つ目の、光を見つけた。

(;^ω^)「っ……!!」

そして視えた物を前にして、咄嗟に声が止まる。

気付けば、世界は何も無い、一面の青に染まっていた。
地面の荒野も、敵の姿も、あの光線でさえも。

(;゚Д゚)「……耳がいてぇー…なんだ、どうなったんだ?」

ギコは耳を押さえながら、よろめきながら問いかける。
ブーンは、ぼんやりと光る腕を眺めながら小さく頷いた。

( ^ω^)「…………分かったんだお」

(;゚Д゚)「何が……つーか、何だこれは?」

176 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/02(金) 02:45:47 ID:iAKp35520

( ^ω^)「……ギコさん、もう一度、ちゃんと聞きたい事があるお」

(,,゚Д゚)「…何だよ」

( ^ω^)「僕と"一緒に"戦ってくれるかお?」

(,,゚Д゚)「ああ、まあ、そりゃいいんだが、それよか」

( ^ω^)「よかった」

青色が、更に濃くなった。

ブーンは理解した、あの時と同じように。
自分に秘められた力ではない、自分に"搭載"された"機能"をだ。

最初の超過駆動の際、辺り一面を埋め尽くした青の空間。
そして、元に戻った際に残された、大量の車。

この二つが意味する事、それは。

( ^ω^)「それじゃ、行きますお」

(;゚Д゚)「……は?」

(#^ω^)「クオリティコード―――――」

内藤の体が、青色に包まれていく。
そして更には、相対するギコの姿さえも。



(# ω )『トランス!! フュゥウウウウウウウウウウウウウウジョン!!!!!!』

177 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/02(金) 02:46:28 ID:iAKp35520
















                                   .

178 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/02(金) 02:47:08 ID:iAKp35520

蟹イーバは、突如として現れた物体に、止めた後ろ足の一つを下げる、
青い塊は内藤たちを包むなり肥大化を続け、ついにはイーバの背丈を越えた。

そして市街地付近、立ち入り禁止看板が張られた柵の側。
監視用のコンテナハウスの中から、その場所を眺める者達が居た。

「お、おい、何だよあの変な青いドームみたいなのは…!!」

先には、球状の青い塊がある。

それも相当な大きさだ。

先ほど戦っていた、巨大蟹の全身を覆い隠さんばかりの球体は、
やがて光帯を纏って収束を始めると、何かの形を象っていく。

「全員呼んで来い! コイツはやべーぞ!!」

川メ゚ -゚)「……?」

ここに収容されていた少女も、遠巻きにそれを見た。

川;゚ -゚) 「……!!」

179 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/02(金) 02:48:44 ID:iAKp35520

先ほどのダメージが抜けていないのか、まだふらつく身体を壁に預けながら、
しかし現れた姿を前にして、言葉もなく驚愕の表情を示した。

その姿は。

川; - ) 「…………きょ、じん?」

大きな、人を模すような姿。

そして巨大蟹は、響く声を聞いた。
スピーカー越しの、自分よりも高みから。


『超・過・合・身……!!』


  最中、内藤は一つここに来るまでに話した事を思い返す。
  それは車の姿になって、街中を爆走していた時の事。

  (カーズ、カーズクオリティだって、かっこいいねぇ)

  (な、なんか恥ずかしいお……)

  (そんな事ないよブーン、あ、そういえばもう一つの方の名前は?)

  (もう一つ?)

  (あの大きいのの、もっと大きいやつの名前だよー)

  (ない…んじゃないかなぁ……)

180 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/02(金) 02:49:58 ID:iAKp35520

青い巨人が両腕を持ち上げ交差すると、
身体のあちこちにひびが生まれ、光線が溢れ出る。

  (じゃあ私が考えるね?)

  (とにかく凄いの、だね、特別で、とにかく凄いやつ)

  (なら、そうだなぁ―――)


そして、両腕の振りぬきと共に、光が拡散。

剥がれ落ち、粒子となって舞い飛ぶ青い吹雪の奥から姿を現すは。



(#゚ω゚)『クオリティィィ!! カイ、ザァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!』


いつかと同じ超・巨大ロボットが、青雪舞う大地へと叫び立った。
しかし前回と違う箇所がある、左腕だ。

大きく重厚な腕があった箇所は、およそ手と呼べる代物では無く。

『な、な……なんじゃこりゃああああ!!!』

型は剣、しかし刃にあたる部位は空洞。
代わりに青い輝きを纏う刃が幾重にも分かれ、呼応するように回転し火花を散らす。

181 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/02(金) 02:51:03 ID:iAKp35520

その姿は、ギコのクオリティ、回転刃剣その物であった。

( ;゚Д゚)「………っ」

(#^ω^)『さあギコさん、とっとと片付けるお!!』

( ,,゚Д゚)「合身、ね…そうかい、そういうアレか」

お互いの姿どころか、自分の姿すら見えないが、言葉がどこからか響いてくる。
視界は共有のものとなり、二つの思考のやり取りが一瞬で行われ、最適な物が選択される。

本来であれば、大量の媒体を必要とするこの姿も、
三つ目の核を受け入れたことで、むしろ出力の増加は止まらない。

その力は、もはや小規模な衝撃波を生むシャボン程度では意にも介さず。
あれほど苦難を強いられた、巨大な鋏でさえも。

( ,,゚Д゚)「来るぞ…!」

(#^ω^)「こんなもの…!!」

街まで届くほどの高音を伴わせながら、一刀の下に斬り伏せた。
そして断たれた大バサミが宙を回り、粒子となりながら地に伏せる。

182 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/02(金) 02:52:35 ID:iAKp35520

蟹は火花を散らしながら、慌てたように泡を噴出させ、後退。
しながら、目玉に青光を集め、そのまま発射。

皇帝を名乗ったロボットは、身じろぎせずにそれを受けた。

そして直撃を受けた姿が、大きな煙に包まれる。

が、右腕の一振りで煙は払われ、そこには傷一つ無いロボットの姿があり、
代わりに命中したと思われる箇所が、青い光に包まれている。

次いで、ロボットが動きを見せた。

右腕を上げ、腕の各所からスラスターが展開される。
そして排熱が周りの景色を歪ませながら、

( ,,゚Д゚)『はっ、お返しだ―――ターボスマッシャ―――』

(#^ω^)『パアアアアアアアアアアアアアアアンチ!!!!!!』

爆発めいた音を響かせて、殴りつけるような仕草で射出された。

青い炎を噴出する腕は、一瞬のうちに加速し、
蟹の頭部、バラボラ部位を砕き、装甲を削って火花を散らしながら通過。

183 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/02(金) 02:55:11 ID:iAKp35520

いくどか火花が散ってから、頭部で爆発が起きた。

( ^ω^)『これでもう、ビームは撃てないお…!』

ロボットは掲げた右腕に、戻ってきた拳を装着。
今度は腰溜めに、巨大な回転刃を構えた。

( ,,゚Д゚)『これで、ケリをつける…!』

(#^ω^)『了解…! ぬぅぅ…、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!』

ロボットの胸元、二枚の装甲が左右に開き、青の結晶が露となる。

更には各部位にあるスラスター、排熱口、背の翼までもが展開され、
結晶に輝きが宿るのを筆頭に、火がつき煙を噴き、回転する刃が肥大する。

(#^ω^)『必ィィィィィィィィィィ殺ゥ!!!』

蟹は最後の抵抗を示すように、残ったもう片方の鋏を振り上げ、
ロボットへと迫る、対する姿は剣に全ての光を集め。

(#^ω^)『ヴィップ旋刃斬りィィィィィィィィィ!!!!!!!!!!!』

下からの、昇竜モーションでの斬撃を、襲い来る蟹へとぶち込んだ。
そしてそのまま飛び上がり、蟹を飛び越え、後方にて着地。

184 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/02(金) 02:59:09 ID:iAKp35520

展開されていた各所が閉ざされ、剣に宿っていた光が消え、
開いたままの排熱口からは大量の煙が吐き出された。

蟹は後方で、身体の中心に青い線を描きながらも、
そのまま前進を続ける、が、動きが徐々にぎこちなくなっていく。

ロボットの持つ剣から、ついには回転刃も消えていく、
代わりに、膨大なエネルギーの残光が、雷のように刀身に宿る。

蟹の動きは、ついにコマ送りのようになり、そして。





ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_301.jpg

天を衝くような炎と青光の柱の中で、爆発、四散した。

185 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/02(金) 03:00:59 ID:iAKp35520

そして。



遠く、市街地の方から微かに聞こえてくる歓声と。



通信先から届く賛辞の言葉は、しばらくの間、止むことはなかった。
















――――――――。

186 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/02(金) 03:03:03 ID:iAKp35520

――――――――。









(´<_` )「ギコは……色々と苦労してるからさ、態度は悪いけど、あれで根は良い奴なんだ、
       だからアレコレ言われてたけど、許してあげてほしいな」

( ^ω^)「いや、別に最初から怒ったりはしてないですお?」


( ´_ゝ`)「そもそも、最初に迎えに行った時だってさ、車の中でうるさかったんだから、
       平和に暮らしてる奴をどうこう、なんか黄昏てさぁ、言うわけよ」


ζ(゚ー゚*ζ「窓にひじをかけて顎をのせるアレですか?」

(*´_ゝ`)「そうそう、それそれ、そんな資格は……とかって、なんかチョーカッケーんすよ
      ぶふーー!! 傑作だ、笑えてきた、ぶひゃひゃひゃひゃ」

( ,,゚Д゚)「……誰が何だって?」

187 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/02(金) 03:04:22 ID:iAKp35520

( ´_ゝ`)「おっと、何だ居たのか、とか言ってみる」

( ,,゚Д゚)「この暇人が、それはそうと弟の方、おっさんが呼んでるぞ」

(´<_` )「ん、わかった、ありがとう」

( ´_ゝ`)「え? 俺は?」





川 - )「……」


( ^ω^)「…お?」

ζ(゚ー゚*ζ「どうしたの?」

( ^ω^)「いや、今出てったの、あの時の子、かお?」

( ,,゚Д゚)「ガキんちょがどうかしたか?」

188 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/02(金) 03:06:08 ID:iAKp35520

( ^ω^)「…もう、身体はいいんですかお?」

( ´_ゝ`)「気になるかい? 性的な意味で?」


ζ(゚‐ ゚;ζ「――――!!」


(;^ω^)「このご時世に怖い冗談やめてくださいお! てかデレさん、絶句しないで!?」

( ,,゚Д゚)「俺ら機械人種は、体が千切れでもしない限り寝れば治るさ」

( ^ω^)「そういうもんですかお……」

( ,,゚Д゚)「気になるのか?」

(;^ω^)「まあ、同じVIPだし、そもそも何であんな小さい子が……って」

( ,,゚Д゚)「…………」

( ´_ゝ`)「……………まあ、そうだろうねぇ」

( ^ω^)「それに、何だかろくに話もできていないし」

189 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/02(金) 03:07:53 ID:iAKp35520

( ^ω^)「それに、何だかろくに話もできていないし」

( ,,゚Д゚)「ああ、それについては気にすんな、どうせ話しにならん」

(;^ω^)「へ?」

( ´_ゝ`)「笑ってるとこすら、だーれも見た事無いような子さ」

( ^ω^)「それって……」

ζ(゚‐ ゚*ζ「…………」

( ´_ゝ`)「……いや、ギコはよく見るんだっけ?」


( ,,-Д-)「あー……」


( ,,゚Д゚)「アレを、子供の笑顔と言っていいのか知らんが、な……」

190 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/02(金) 03:09:53 ID:iAKp35520











(*゚∀゚)

(*゚ー゚)「ツー? どうしたの?」

(*゚∀゚)「……ん、何でも、ないよ………」

(* ∀ )「…………………」



ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_302.jpg

                                 to be なんちゃら

191 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/02(金) 03:12:54 ID:iAKp35520

おわり、挿絵はどこまで描くべきなのかわからぬ。むずい。

次回 第四話 「少女の檻」

今度は多分近いうちに

192名も無きAAのようです:2012/11/02(金) 08:45:42 ID:/RQDw.BkO
面白い。支援

193名も無きAAのようです:2012/11/02(金) 22:58:15 ID:zCKVT5YE0
乙!
スーパーロボット物とは熱い
それに異世界絵上手くなったな

194名も無きAAのようです:2012/11/03(土) 09:49:41 ID:fIwal7QsO
きてたんかい

195 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/16(金) 01:00:30 ID:.wU4MnIE0
さる長すぎワロタ

196名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 01:06:23 ID:MDT/DdTM0
お?こっちで続けるの?

197 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/16(金) 01:11:17 ID:.wU4MnIE0
もうちょっと待ってみるよ!迷惑かけてすまないねぇ

198 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/16(金) 01:26:19 ID:.wU4MnIE0
よし、諦めよう。


まだ半分くらいなのにこれ以上さると戯れてる場合ではないので、
こちらに途中からで非常に申し訳ないですがちょっと置いていきますね。

199 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/16(金) 01:27:35 ID:.wU4MnIE0
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1352984912/l50

これまでのおはなし↑ ↓以下本文

200 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/16(金) 01:29:02 ID:.wU4MnIE0

――――――――――――。


( ,,゚Д゚)「……んで、あのガキんちょと合体すんのか?」

(;^ω^)(……他意は無い! この人に他意は無い筈だお……!!!)

基地にやってきて、しばらくのこと。

あれから気付けば少女は居なくなっており、まずは本日の事件をデレに説明。
しばしマッタリとしたあと、モニターが並ぶ本部から、やや離れた場所の地下喫茶店。

非戦闘系のVIPが主人のこちらの店は、内藤やギコたちの溜まり場となっている。

( ;゚Д゚)「なに焦ってんだ?」

(;^ω^)「何でもないです! それで、えーと、まあ、約束みたいなの、しちゃいましたし」

( ´_ゝ`)「合体の約束……いいねぇ、いいじゃないか…」

しかし別に存在する他意の塊、兄者がお茶をすすりながら言った。
突っ込んだら負け、そう思った内藤はスルーを決め込む。

201 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/16(金) 01:29:53 ID:.wU4MnIE0

( ´_ゝ`)「しかも兄と妹プレイと来たもんだ、いい、実にいい……すごくいい」

ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、姉をお忘れですね? あいにく3Pですよ?」

(;´_ゝ`)「姉……姉かぁー……姉はなぁ……なんだか鏡を見るようで…」

(´<_`;)「……どうでもいいけど、君もすごい乗ってくるね」


内藤は思った。

突っ込みたい、特に兄者さんあんた確か妹居たよね。と。
なんとなく察しては居たけれど、やはり危ない系の人なのではないだろうか。

ζ(゚ー゚*ζ「それにしてもクーちゃん、いつも可愛い服着てますよね、
      なのになんだか、髪の毛とかぜんぜんお手入れしてないみたいだし……」

( ´_ゝ`)「服はどれも俺が用意してるんだけどな、髪は流石に本人の意思が必要だからなぁ」

(;^ω^)「……え?」

だんまりを決め込むつもりが、思わず聞き返してしまった。
ていうか、ないだろうかじゃなかった、完全に危ない人だった。

( ^ω^)「えぇ……? あのドレスみたいな、ヒラヒラしたやつですか……?」

( ´_ゝ`)「そうとも」

202名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 01:30:53 ID:4fk3F65A0
こっちにしたのか支援

203 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/16(金) 01:30:59 ID:.wU4MnIE0

(;^ω^)「……趣味なんですかお?」

(;´_ゝ`)「ja、そうだけど……何? 何か言葉が悪意に満ちてない?」

(´<_` )「兄よ、恐らく彼はこう言いたいのだと思う、HENTAIと」

(;´_ゝ`)「馬鹿な……! 可愛い子を可愛く着飾ることは悪い事だと言うのか…!?」

(;´_ゝ`)「そうなのか兄弟!?」

( ,,゚Д゚)「知らん」

ζ(゚ー゚*ζ「ううん、大丈夫、普通です、コモンセンスだよ!」

( ´_ゝ`)「oh…そいつはよかった」

(;^ω^)「そうかなぁ……」

と、兄者は咳払いを一つ。

茶碗を置くと、お茶らけた表情を素に戻した。
異国の顔立ちは、真面目な顔をすれば鼻も高く迫力がある。

同時におふさげ空気が一点する。

( ´_ゝ`)「まあ冗談はともかく、あの子には必要以上にそういった事をさせるべきだと思っている」

( ,,゚Д゚)「ま、その辺については止める理由がねぇからな」

204 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/16(金) 01:31:59 ID:.wU4MnIE0

( ^ω^)「必要以上…って?」

(´<_` )「…もういい加減、きちんと話すべきかもしれないな……空子のことを」

ζ(゚ー゚*ζ「くうこ……あの、クーちゃんの事ですか?」

(´<_` )「ヤ、どうしてあの子がVIPとなり、そしてああまで戦い続けるのか」

(´<_` )「これから話すのは、僕らが知る限りの、その理由と」

(´<_` )「そこへ繋がるための、もう一つの、かつての真実さ」



―――――。



彼女が生まれたのは、三年前の隕石落下事件から二日目の正午。


敢えて誕生を意味する言葉を使ったのも理由がある、
何故なら、それ以前の少女を知る人間は、もはやこの世に存在しないからだ。


あの事件によって家族、親類、友人、身の回りの人間すべてを、
本当に失ったのかどうかさえ、未だ分からないほどに、探す手段ごと失ってしまった。

205 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/16(金) 01:33:16 ID:.wU4MnIE0


しかしそういった存在は、さほど珍しい物でも無い。


それは特に、イーバ襲撃戦が終わりを告げた頃に大きな問題となった。


首都部がまとめて吹き飛んだ影響で、個人を証明するデータバンクを大量に消失し、
身元不明なまま、と言った類の人間は同じく大量に現れる事になった。


そしてその際、特に被害を被ったのは、難民の子供たちだった。


蜘蛛ことイーバの有無に限らずとも、当時の混乱と世紀末ぶりは凄まじく。


自己証明できる大人ですら、自殺や他殺に自然死と、平然と命を落としていく時代に、
生き延びるための手段を持てない子供たちが、どんな運命を辿るかなど、想像に易い。


(´<_` )「特に、同じ境遇含めて知り合いが居ない人々は、それはもう悲惨だったそうだよ」

(;^ω^)「でも……確かそれって、国がすぐに動いたんじゃなかったですかお?」

そう、首都と首脳を失ったものの、それぞれの地区に残った人間たちが結託し、
本当の意味での、新たな政策を始めたのだ、そして内藤自身もまたその恩恵を得ており、
おかげで今もこうして、学校生活を送るに至っている。

206 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/16(金) 01:35:56 ID:.wU4MnIE0

(´<_` )「だがそれは、君に配偶者が居て、かつ知人も多く、早急な自己証明が可能だったからだ」

(´<_` )「そうでない人々が群を成し、かつそこら中に溢れ、情報伝達の術さえ無い」


全てを覆うことなど、できるはずが無かった。


ζ(゚ー゚;ζ「じゃあ…残った人たちは…?」

(;^ω^)「まさか皆…!?」

(´<_` )「いや、もう一つあったのさ、受け入れてくれる場所がね」


それは。


( ´_ゝ`)「それが、今俺たちが居るここ、エイジという組織だ」


かねてより計画、開発が進んでいた、広大で莫大な土地をほこる地下施設。
まだ何も無かった場所へと、一人の男が人々を先導し、その場へ募った。

207 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/16(金) 01:37:25 ID:.wU4MnIE0

(´<_` )「そして、皆を集めてその人は言ったそうだよ」

( ,,゚Д゚)「ああ……おっさんの演説か、俺も居たよ、そこに」

(´<_` )「僕は立ち会えなかったよ、今でも口惜しい」

( ^ω^)「何て、言ったんですかお?」

( ,,゚Д゚)「ああ……」



 ( ФωФ)『己を失った者、そして行く宛てを失った者たち、私にはそれをお返えしする術が無い』


 ( ФωФ)『しかし約束しよう、代わりに―――居場所と、役割を、その全てに与えると』


 ( ФωФ)『取り戻すことはできずとも、やりなおす事はできるはずだ、その手ならばここにある』


 ( ФωФ)『皆、力を貸して欲しい、そしてまた、共に創ろうではないか、皆の―――自分自身を』

ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_312.jpg

広がる暗い地下空洞に、ライトに照らされた一人の男はそう、高々に言った。

208名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 01:37:49 ID:mAP05EZY0
支援

209 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/16(金) 01:39:23 ID:.wU4MnIE0

全てを失った絶望のさなか、自分を必要とし、かつ拠り所を与えると言った男の言葉に、
人々が希望を得たのは必然とも言え、沸き起こる賛同の中、涙を流すものも居た。


ζ( ー *ζ「……っ」

ふと、デレは肩を揺らして顔を背けた。

その気持ちは、内藤にもよく理解できた。


( ,,゚Д゚)「まあ、反発もあったみたいだがな、あのおっさん、その全部を説得して回ったよ」

そして尚、先頭を行く姿に、人々は強く応え。
わずか三年の間に、この巨大地下施設はこうして誕生した。


( ^ω^)「つまり……ここの人たちは、皆?」

( ´_ゝ`)「俺と弟は違うけど、8割以上はそうだな」

(;^ω^)「ギコさん……も?」

( ,,゚Д゚)「まあな……んな顔すんなよ、お前も同じだろ」

(; ω )「………」

210 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/16(金) 01:40:42 ID:.wU4MnIE0

そして、一つ思い立つ。


ギコと言う名は、機械人種化した際の、あの回転刃からつけられた。


かつてそう聞かされている、そして誰もがそう呼んでいる事と、
詮索を避けたことで聞きそびれていたが、それはつまり、そういう事なのだろう。


( ,,゚Д゚)「おい、勝手に人のことで暗くなってんじゃねえ」

(;^ω^)「う……」

( ,,゚Д゚)「……別に、本名失くしたわけでも、隠してるわけでもねぇよ」

( ,,゚Д゚)「ただもう、使う必要がないだけだ」

別の名と、別の役割がある今、もはやそこに意味は無い。
ギコはそう言って、戸惑う内藤をぽかりと叩いた。


( ,,゚Д゚)「つーか、俺のことはどうでもいいんだよ、それよりガキんちょの事だろ?」

(´<_` )「そうだったね、話を戻そう」

211 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/16(金) 01:42:15 ID:.wU4MnIE0

そして、クーと言う少女もまた同じようにして、組織に迎えられる事となった。
だが、そもそもの保護された時の状況が、数多の状況とは違っていた。

(´<_` )「あの子が助け出されたのは、イーバ襲撃から二、三日後のことだだったそうだよ」


当時はまだ組織も発起前、少女は近隣の非常病棟へと搬送される。


発見されたのは、既に目覚め始めたVIPが勇者として蜘蛛を掃討する戦場の近隣。
ほとんどが死に絶え、あるいは機械人種として生まれ変わる中だった。


見つけたのは、とある勇者の一人。

彼はその姿を見つけると、驚きに皆を呼ぶ。

当初は、ハエの群がるただの亡骸だと思われた。


何故なら少女の半身は、血溜まりの海に沈み、肉の塊の下敷きになっていたからだ。
そしてピクリともしない、時折まばたきをするだけで、身じろぎもせず、そこに居た。


見れば被さる肉の正体は、背中から中身をぶちまけた人間である事が分かる、
ひんまがった骨の向きや形から、どうにか姿勢を判断すれば少女を抱きしめる形だ。

親か、身内か、わからないが、彼女を守ろうとしたのだろう。

212 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/16(金) 01:44:03 ID:.wU4MnIE0

破裂した頭からは、赤黒くなったものと、薄汚れたオイルのような粘着性の黄色。

それらは少女の全身をくまなく汚し、異臭と腐臭を漂わせる。
よく見れば嘔吐物と思われるものが幾度と無く、頬を伝って乾いた跡がある。


早く助け出さねば、使命感に駆られた勇者たちが引っ張り出そうとするが、
まるで固形物のように、肉塊もずるずるびちゃびちゃと引きづられるばかり。


よほど強く、しっかりと抱かれているのか、中々離れない。

やがて触れるのも躊躇われる両者の姿をどうにか引き離すが、
それでも千切れた両腕は、最後まで少女の衣服を掴んだままぶら下がる。


本来であれば、優しさを象徴し、惜しみない愛情の証であるはずのそれは、
姿を変えてしまった今では、ただの執念、あるいは怨念として映る。


男に抱えられながら、少女は力ない表情で、その腕を眺めていた。

やがてもう一人が、ごめんよ、と呟き、その腕を落とす。

213 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/16(金) 01:45:45 ID:.wU4MnIE0

それでも、少女に変化は無い。


光の無い瞳に、涙の痕はあるが、もう流すことは無く。
口からは、呼吸音以外の一切が出てこない。


そしてそれは、助け出されてからしばらくしても変化無し。

肯定せず、しかし否定もしない。


ご飯も自分からは食べようとしないが、誰かが口に運べば咀嚼する。
その他も、ありとあらゆる事を、そのまま受け入れた。


中身の無い人形のようにベッドの上から動かない。
心無く、虚ろなまま、何の感情も示さない。

本当に、全部をあそこに置いてきちゃったんだな、誰かが言った。

やがて調査によって、少女の名前が判明する。

名は空子。


以来、それまで世話をしていた人や、その他の人の間で、
やがて少女はこう皮肉を受けるようになった。

214 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/16(金) 01:46:47 ID:.wU4MnIE0

あの空って名前は、きっとソラじゃない、カラなのね。と。


からっぽの子供、カラ子、そう呼ばれ。

どうせ何も感じない人形なのだから、と、それ相応の対応をされた。

かつての事さえ、今では話として語る意外に存在しない為、
果たしてどんな目に合わされたのかも不明なままだ。

ただ、その様は殺されないことが不思議なほど、と誰かが称したと聞く。

だが、その人たちを攻める事はできない。


彼らとて、応えを得ることで、勇気を得たかったのだ。


喧嘩でもいい、それでも互いを認め合う術が必要だった、
そうでもなければ、苦しむ人ばかりの中で生きてはいけない。

ゆえに、その象徴のような少女の存在は、他を酷く苦しめていたのだ。

215 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/16(金) 01:48:11 ID:.wU4MnIE0

だが、それを見かねた人間が一人。



少女を背負い、あてもなくその場から立ち去る者が居た。


( ^ω^)「助け出した、って事でいいのかお…?」

( ´_ゝ`)「ja、そしてその人間ってのが、君もよく知っている子だよ」

(;^ω^)「……えーと、ギコさん…?」

( ;゚Д゚)「子って言ってんだろ……つーだよ」

(;^ω^)「ツーって、あの、いつものオペレータの…!?」

同時に、その場に居たことの意味を思えば、
彼女もまた同じなのであると、否応なしに理解してしまう。


(´<_` )「幸い機械人種化……無事に二人とも蜘蛛からは逃げられたようだけど、身の上は一緒さ」

(´<_` )「ツーもまた、あの事故で、居場所と、両親と……妹を失っている」

216 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/16(金) 01:49:54 ID:.wU4MnIE0


恐らくは、クーにその妹の姿を見たのだろう。

彼女は必死に少女を守ろうと、生きる場所を探した。

そして辿りついたのが、この地下組織だった。


ζ(゚ー゚;ζ「……あれ、二人、とも?」

(;^ω^)「お……クーちゃんと、ツーさん? あれ?ってことはまだ…?」

(´<_` )「そう、この時点では、あの子はまだVIPではなかった」

(;^ω^)「じゃあ、何で…! 何があったんだお?」

( ,,゚Д゚)「……あのガキが望んだからだろ、だからそうした―――そうだったな?」

( ´_ゝ`)「―――――……」

(;^ω^)「そう、した……? したって、どういう意味ですかお?」

(´<_` )「……順に話そう、まずはその後のことだ」


二人はやってきて、すぐに割り振りが行われた。

そしてツーは必死になって少女の世話をしながら、日々の中に身を投じた。

217 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/16(金) 01:51:09 ID:.wU4MnIE0

幸いにも周囲はそんな二人を暖かく迎え、あるいは傷を舐めあうように、
やがて、二人はあの隕石落下の真実と、少女を抱いた肉塊の正体を知る。


寡黙な少女も、両親にまつわる話と、
画像に出された蜘蛛の姿に大きく反応を示し、
ついに言葉を放つ、ようやくぶりの事だった。


聞き出せたのは、両親と共に赤い空の下を逃げる話。


まず母親は、父親が見るな、と叫んで以来はぐれてしまった。
残る父親は、やがて自分に覆いかぶさりながら倒れこみ、最後に、





――空子、せめてお前は、おまえだけは――

言い残して、自らを抱きしめたまま、化物みたいな姿に変わってしまった。

そして化物になった姿を理解できず、他に居るはずの両親に助けを請いながら、
どうやっても離してくれない怪物から逃れようと、ひたすら泣き叫んでいた。

218 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/16(金) 01:52:41 ID:.wU4MnIE0

そして、ついには、今の少女が涙を零し、暴れた。

落ち着かせようとツーも抱きしめるが、少女は狂ったように叫びまわり、
しばらくして、ようやく疲れ果てたのか、深い眠りについた。


だがその夜だけでも、十数回に渡り、
ふと目を覚ました少女の悲痛な声が、辺りに響いていた。


その翌日、ツーは少女にとある事柄を伝える決意をした。







して、しまった。



(; ω )「もしかして……勇者の…VIPの、事を? その時に…?」

(´<_` )「その頃には、きっともう理解していたんだろうね、両親は……殺されたのだと言う事を」

219 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/16(金) 01:54:46 ID:.wU4MnIE0

( ´_ゝ`)「んで…ツーがそれを話した、すぐの事だってさ」


少女は、自らもVIPになると、なりたいと強く願いを示した。


だが、守ろうとしている少女のそんな真似を許せるはずもなく、
ツーは絶対に駄目だと言って、先ほどの発言を酷く後悔した。


なり方も伝え聞いたが、流石にそこまでは話さなかったものの。

しかし、その日の内に少女は自室から姿を消し、
出口を探して彷徨っているところを、付近の人間によって保護された。


聞けば、どこから知ったのか、既にVIPが蜘蛛によって生まれる事を踏まえ、
このまま外に出て、今もつづく戦場に向かい、自らの身を差し出そうと言うのだ。


反射的に、ツーは思わず手を出してしまった。
だが少女は怯まず、迷わない。

220名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 01:55:18 ID:mAP05EZY0
クー……

221 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/16(金) 01:55:40 ID:.wU4MnIE0

ツーはその姿に驚き、たじろいだ。

ベッドの上に居た頃の、弱々しく、無気力な姿はもうどこにも無く、
あるのは、強い意志を瞳に宿し、まっすぐな視線だけを向ける姿。


消えてしまいそうな儚さも消え、困惑の中に安堵を得るが、
しかしすぐに冷静になった心に新たな恐怖が芽生える。

遠くへ行ってしまう、少女の存在をむしろ拠り所としていた彼女に、
それはとても恐ろしいもので、どうにか止めようと試みる。


だが、少女の行動力はそれを上回り、ついに一つの可能性を得た。


( ´_ゝ`)「とある場所で、人工の変質結晶…クオリティクリスタルの研究が行われている、と」

( ,,゚Д゚)「んで、当時のそこの主任として派遣されてきた外人に、ガキは自分で試すよう言った、と」

(  ω )「それって……もしかして…」

( ´_ゝ`)「…ああ、俺だよ、俺が、あの子にクリスタルを埋め込み、VIPとした」

222 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/16(金) 01:57:42 ID:.wU4MnIE0

(; ω )「どうして……だお、だってそんなの」

( ´_ゝ`)「カラの子の話はわりと有名でね、当然こっちの耳にも入ってきていた、
       その子が空子だと気付くのに……そう時間はかからなかった」

(;^ω^)「なら尚の事じゃないかお…!? 止めなかったのかお!?」

( ´_ゝ`)「止めたさ」


いくらなんでも、年端もいかぬ少女に人体実験など行えるはずもない。
その場の誰もが少女を止めた、現に彼女がVIPとして目覚めたのはそれから三月が過ぎた頃だ。

しかし、そこでふと内藤は気が付いた。


(;^ω^)「? 三ヶ月? あれ、でも確か…イーバとの戦いって、一、二週間だったって…」

( ´_ゝ`)「……大規模な掃討が終わった頃、通い詰めてくる少女に俺たちは言ったよ、
       もう戦いは終わったと、敵はもう居ないから、必要もないのだと」


すると、毎日来ていた少女は、以来パタリと姿を見せなくなった。


当の兄者たちも、その後始末やら、勇者たちの今後の身の振り方やらと、
忙しい日々に追われ、いつしか記憶からも薄れていった。

223 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/16(金) 02:00:21 ID:.wU4MnIE0


そして一月後、兄弟はとある場所で少女に再会することになる。


(´<_` )「……病室のベッドの上、点滴のケーブルに繋がれて、横たわる姿だった」

( ´_ゝ`)「はは、聞けばさ、あれからまた空っ子に戻って、今度は飯も食わないんだとよ」

( ´_ゝ`)「言われてる気がしたよ……つか寝てる姿から聞こえるんだよ、お前らのせいだって、
       そして、願いが叶わないのであれば、生きていてもしょうがないんだって」

(; ω )「……………っ」

( ´_ゝ`)「だから二つの事柄を伝えた、一つは、まだ蜘蛛が完全に居なくなった訳じゃない、と」

( ´_ゝ`)「そしてもう一つは………君の願いを叶えてみせる、と言った事だ」


すると、生気を失っていた少女に、再び活気が戻り、
それから更に一週間ほどが過ぎた頃、少女が兄者たちの下を訪ねた。


(´<_` )「そこから先は、今とそう変わらないよ、時折蜘蛛があらわれては、
       まだ何人か居たVIPたちと共に、それを蹴散らす日々だ」

224 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/16(金) 02:02:14 ID:.wU4MnIE0

( ´_ゝ`)「ちなみにあの子の武装だけど、重火器の効果が薄いからと試作してた代物でね、
       数ある中から選んだ理由は、大きくて強そうだから、だ……可愛らしいだろ?」


(´<_` )「それと…あの子が倒れるまで、そしてそれから、何があったのかは知らないが、
       ツーは後を追うようにして、本部のオペレータに志願した」


( ,,゚Д゚)「あと違いがあるとすれば……VIPに嫌気が差して、何人か出てったくらいか」

ζ(゚‐ ゚*ζ「……………」

(  ω )「…………」

手のひらで顔を覆い隠し、なんだか自嘲するように話を続ける兄者の姿に、
内藤もデレも、浮かぶ言葉もなく、返事もできず黙り込んでしまった。

と、ため息を一つ。

一度目を閉じ、兄者は初めて聞くような優しい声色で、呟くように言った。


( ´_ゝ`)「内藤、俺はね……今でもわからないんだよ、いったい、何が正しかったのか」

225 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/16(金) 02:03:50 ID:.wU4MnIE0

今ある形なのか、それとも、もっと前に。
あるいは、全てただの延命処置にすぎず、本当は。


本当は何もかも、とおに―――。


( ´_ゝ`)「それに、こうも思った、たとえ歪んでいても、生きる目的さえあればいつか……」

( ´_ゝ`)「いつかは空でも……機械にも、心は芽生えるのではないか、と」

(´<_` )「だけど、そうはならなかった……ならなかったんだよ」

組織と言う鳥かごの中、イーバという餌が来るのを口を開けて待ち。
今はただ、その存在を喰らい、決して許さない。在るのは、それだけ。


(´<_` )「だから、この話はここでおしまいなんだよ」


けれど、と。


(;^ω^)「……おしまいなんかじゃ、ないお…」

226 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/16(金) 02:06:10 ID:.wU4MnIE0

(;^ω^)「だってあの子は、僕を頼って、わざわざ学校まで来たんだお…!」

( ´_ゝ`)「違うね、あの子がやっているのは、当時から変わっていない……ただの、力の要求だ」

( ´_ゝ`)「奴らを倒すために必要だから……必要としているのはお前じゃない、お前の力、それだけだ」


自分たちの下を訪ねてきた時と、何ら変わりない。

同じ過ちを犯して、罪の意識に苦しむような真似する必要はないのだと、
そう言って、兄者は内藤の考えを一蹴する。


(  ω )(違う、違うお……そんなはずないお…!!)

(  ω )(本当の理由なんて関係ない…! だって大事なのは必要とした、その思いのはずだお…!!)


( ,,゚Д゚)「それでも……力を貸して、今度はガキんちょと合体するか?」

(;^ω^)「だって、手を伸ばしたんだお……必要として、頼ったんだお、それは嘘じゃないはずだお…!!」

( ,,゚Д゚)「それに、約束したから、か? なら悪いがキャンセルだな」

( ,,゚Д゚)「…悪いことは言わねぇ、やめておけ」

227 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/16(金) 02:07:54 ID:.wU4MnIE0

(;^ω^)「どうしてだお……別に、やめる理由なんて」

( ,,゚Д゚)「聞いたろ、あのガキんちょにはな、イーバへの憎しみしかない、
     空っぽの中に、それだけを詰め込んで動いてるようなもんだからだ」


( ,,゚Д゚)「俺も、身をもって試したから分かる、あの力はな、心とか感情まで一つにしちまう代物だ、
     それを、あんなガキとやってみろ……お前、引っぱられるぞ」

(;^ω^)「………それは…」

( ,,゚Д゚)「何がどうなるかまでは知らんがな、良い結果なんざ、出るわけがねぇ」


とにかく、やめるべきだとギコが言った。

確かにどう転んでも、少女の気を晴らす結果にしかならないだろう。

後に、何が残るのだろう。

内藤は考えながら、すっかり冷めてしまったカップを眺める。
果たしてどうあるべきなのか、いくら考えても、やはり答えは出ないままだった。




――――――。

228 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/16(金) 02:10:34 ID:.wU4MnIE0

――――――。

そしてここではない、どこかの海上。
一隻の大型クルーザーが白波を立てて進んでいく。

甲板には旅行客がそれぞれ、カモメを追ったり、海を眺めたり、
それぞれが楽しみを見出し、穏やかな時間をすごしていた。

中に、一際目を引く姿がある。

???「なあ、一体いつまでこんなトロ臭いもんに乗ってりゃいいんだ?」

陽光を映すような長髪をなびかせる、人影だった。
その者は、手すりにだらしなく身体を預け、後ろの姿に声を投げる。

???「ははは、まだまだ先は長いぞ、まあゆっくりしようじゃないか」

???「だーかーらー、それが耐えられないんだって…てか、そうだ」

???「いいじゃん、もうさ、飛んでっちまおう? いや、もう行くぜ」

???「いやいや待って、やめろくださいお願いします」

ちえ、と口を尖らせ、暇そうに長髪の人物はまただらりと両手を下げた。
背後では、眼鏡姿が椅子に深く腰掛け、いくつかの書類を掲げた。

???「やれやれ、そんなに空が好きかね」

???「当然だろ、空はいい、すごくいい」

空に透ける紙面には、いくつもの文字列が並んでいる。
その中には、変質結晶の文字が大きく描かれていた。


―――――。

229 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/16(金) 02:12:14 ID:.wU4MnIE0

―――――。



そして隕石落下が作り上げた巨大なクレーター、ブルーホール。
荒野を進んだ先には、海面がまだ残っている。

そこにもまた、長髪の人物が一人、佇んでいた。

???「ここに立つのも、久しぶり」

正面から吹きぬける潮風を受け、ふと目を閉じる、
何かを思い返すようで、しかし、表情は眉をしかめ苛立ちを示す。

この場所に、許せない何かがあるのか。

しばらく海を眺めた後、やがて一人、市街地へと向かう。
背を打つ風が、人物の表情を隠し、もはやその感情は読み取れない。

ただ一度だけ、両の瞳が同じ色に輝いたように見えたのは、
果たして、空を映したことによるものだったのだろうか。



―――――。

230 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/16(金) 02:14:28 ID:.wU4MnIE0

そして数日が過ぎた。

今日もまた、平和に授業を終えた生徒たちが帰路につき、
内藤たちもそこに混ざり、談笑しながら校庭を横切っていた。

(´・ω・`)「そういえば、妹さんは元気?」

校門を抜けたところで、ショボンは思い出したように言った。
は?妹?と思わず聞き返しそうになったが、寸でのところで気付き、
内藤は内心あわてて取り繕うように返事をした。

あれからイーバは姿を見せていない。

毎日のように基地には顔を出しているが、
何事もなければそう長居する理由も無く。

あの少女とも、特にこれといった会話もできていない。

なるべく意識しないように、とは思っているが、やはりそうもいかず、
ついつい遠慮する心が邪魔をしている事も一因している。


あと、もう一つ。

231 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/16(金) 02:15:15 ID:.wU4MnIE0

(私と、合体して欲しい)


その願いに、果たしてどう応えるべきなのか。
内藤はまだ答えを見出せない。

いや、違う。

答えは出ている。


( ^ω^)(……叶えてあげる、べきだお)

そして心を一つとできるなら、いっそ変えてあげればいい。
言葉では通じ合うことができないとしても、もっと深い部分でならばあるいは。

それに、あの日に困惑する少女の姿は、とてもそんな、
歪んでしまった代物には見えなかったのだ。

なら、思うようにしてあげればいい、そして受け止めればいいのだ。

だから、迷っているのはまた別のこと。

232 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/16(金) 02:16:22 ID:.wU4MnIE0

やめておけ、と言ったのが、他ならぬギコだったからだ。
できることなら、彼の言葉に対して、もう裏切りで返すような真似はしたくない。

そう心から思えるほどに、内藤はギコに対して信を寄せていた。

( ^ω^)「うーん……」

ζ(゚ー゚;ζ「ブーン?」

こうして悩むまま、に自宅へと戻り、お風呂につかってご飯を食べる頃になると、
そろそろ思考が疲れに変わってきて、やがて楽観的な姿勢に落ち着くことになる。


( ^ω^)(………まあ、基本はその時の状況だお、だから)

次が出てきたときに、それは考えることにしよう。
内藤はやがてそう結論付け、食卓に並ぶお皿を前に手を合わせた。

( ^ω^)「いただきまー」


同時に、着信を示す感触が鼓膜を叩いた。

233 ◆6Ugj38o7Xg:2012/11/16(金) 02:17:23 ID:.wU4MnIE0

(;^ω^)「ん、なんだお?」

J( 'ー`)し「どうしたの?」

( ^ω^)「う、うん、なんか通信が、ちょっとごめんお」

J( 'ー`)し「あらあら、忙しないわねぇ」

(;^ω^)『はい、こちらカーズ、なんですかお?』

『(*゚ー゚)夜分にごめんね、悪いんだけど……』

(;^ω^)『……もしかして』

『(*゚ー゚)うん、適性巨大イーバ反応確認、カーズクオリティ、出撃を―――』

(;^ω^)『……了解…!』

何度か目の前のお皿と、時計を見比べながら、すぐに諦めたように返事をする。
そしてすぐさま立ち上がる息子を前に、母親は手を頬に添え。

J( 'ー`)し「あらやだ、また行くの? ご飯どうする?」

(;^ω^)「急いで行って、すぐ戻ってくるから、取っといてくれお…!」


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