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ホテル・サイドニアのようです
1
:
名も無きAAのようです
:2011/09/12(月) 23:43:56 ID:v7OA74xM0
お邪魔しまーす
396
:
名も無きAAのようです
:2012/09/30(日) 01:47:56 ID:bT0XvDj60
やったれドックン
397
:
名も無きAAのようです
:2012/09/30(日) 01:48:15 ID:s8Lru0Dw0
tes
398
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/30(日) 01:49:20 ID:s8Lru0Dw0
('A`)「おら!」
密着していたハンターを突き飛ばした、複数の声が聞こえる方へ。
すかさず銃を構えて別方向に居るハンターに向け、更に発射する。
兄者の狙撃時点で自身を殺す気はないと察知しているだけに、ドクオ
の自信あふれる喧嘩はとどまるところを知らなかった。
なにより、鬱憤が溜りに溜まっていたのであろう、拳銃で
怯ませてから懐に入っては打撃という戦術には容赦というものがなかった。
怒りに身を任せた一人が拳銃を乱射した。しかしそのときにはもう
ドクオは別のハンターの陰に隠れ、銃弾を回避している。
至近距離の発砲は肉壁にされたハンターを死に至らしめた。
「ああ…」と我に返ったときにはもう弾切れで、その隙を突いて
ドクオが突進してくる。真っ向から格闘するかリロードするかの
瀬戸際のときにはもう、ドクオのアッパーが彼の脳を思い切り揺らした。
失神しかけたそいつの襟元をドクオは掴んで、背負い投げの要領で
掲げたかと思うと、腰の引けた別のハンターにそいつを投げつける。
ふたたびドクオは走り出し、とどめにとタックルと頭突きを与えた。
半ば暴走状態のドクオだったが、脳だけはきっちりとフル回転を続けている。
残党の数と戦闘不能者を数えつつも、細かな殴打と蹴りで対応をしていた。
残りは二人だった。しかしそこでドクオの快進撃は止まることになる。
その二人はドクオの真正面と背後にそれぞれ陣取ってい、加えて
じりじりと銃の照準を定めていた。
('A`)「けっ……」
ドクオは蟹走りで照準から逸れると、壁を背にして振り返った。
――しかしその瞬間に頭に衝撃を受けた。動きに対応したハンターの
一人が古枝でドクオの後頭部に一撃をくわえたのだった。
399
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/30(日) 01:53:17 ID:s8Lru0Dw0
(メ'A`)「………」
ドクオの身体がぐらりと傾いで壁にもたれ掛かった。舌なめずりを
するそのハンターが、二撃を与えようと棍棒めいた古枝を振り上げた。
その瞬間、ドクオは唾を吐いた。唾がそいつの鼻にかかった。
とっさの屈辱に一瞬ひるむ彼に、ドクオは前蹴りを放った。
会心の一撃だった。腹を突き上げられたそいつは倒れかけた。
すかさずドクオは彼の股間を蹴撃した。悲しげに沈んでいった。
残りの一人に目を向けると、そいつは電話をしている最中だった。
慌てふためいた敬語で、上層部に何か応援を要請しているのが把握できる。
むろんドクオは容赦せず近づくと、ストレートを加えて失神させた。
(メ'A`)「けっ」
ドクオはそいつの持っていた携帯電話を奪い、更にホルスターから
拳銃を抜き取った。逃げよう。逃げ道を探らなくては、
――しかし、背後から静かな足音が、聞こえてきた。
(メ'A`)「!?」
ドクオは知っている。その気配の主を。
紛れもなく、奴が辿りついたのだ。
( ´_ゝ`)
.
400
:
名も無きAAのようです
:2012/09/30(日) 01:59:06 ID:bT0XvDj60
どうする
401
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/30(日) 01:59:31 ID:s8Lru0Dw0
(メ'A`)「……くそ」
ドクオはたちまち銃を構えた。正面突破で太刀打ち
できる相手ではないことをドクオは身をもって知っているが、
この状況では闇に紛れて逃げることは不可能ということも承知であった。
兄者は構わず、少しずつ近づいてくる。ドクオもすり足で
うしろうしろへと離れようとしたが、距離は確実に詰められようとしていた。
( ´_ゝ`)
(メ'A`)
――さきに動いたのはドクオだった。定めていた照準から銃弾を
発射する。……だが、その弾は、途中で、逸れて、壁に、音を立ててめり込んだ。
ドクオは困惑したがすぐさまに理解をした。兄者がいつの間にか
拳銃をこちらに向けているばかりか、その銃口から煙が吹いている。
つまり、ドクオの撃った弾に対応して射撃し、弾道を変えたのであろう。
(;'A`)「………!」
人間技ではない。ドクオは戦慄した。
一流のガンマンともなれば、敵の撃ってくるタイミングが読めると
聞いたことがあるが、それを踏まえても信じ難い出来事だった。
402
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/30(日) 02:02:21 ID:s8Lru0Dw0
この男から逃げられるのであろうか。
さきの出来事から言っても、兄者はドクオを本気で"捕獲"に来ている。
殺しにかかっていない。本来ならそこが付け目になるが、こと兄者に
そんな常識が通用するか、ドクオには判断しかねた。
(;'A`)「………」
ドクオはふたたび銃弾を放とうとした。しかしそれは叶わなかった。
さきに兄者の弾が発射され、ドクオの手の拳銃を吹き飛ばした。
指先に激痛が走り、手の付け根が折れそうになる。
その後の静寂に兄者が歩みをはやめた。
くそっ。そう言いさしながらドクオは弾けるように逃げ出した。
充分に背後の兄者をケアしつつ、全力疾走で闇夜に紛れようとする。
兄者も駆け足になって追いかけ始める。ドクオは横目で確認したが、
やはり銃殺される心配はないようだった。
403
:
名も無きAAのようです
:2012/09/30(日) 02:06:20 ID:bT0XvDj60
チートだ!こんなもん!
404
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/30(日) 02:08:32 ID:s8Lru0Dw0
――ただし、いつの間にか兄者の手にはロープが握られていた。
一方の先がゆるく輪をつくった、ロデオ用の投げ縄であった。
そうしてそれを走り去るドクオの背中めがけて投げつけた。
ひゅる、ひゅる、ひゅると風切る音を立てながら、投げ縄は
ドクオの浮いた右脚へ確実に向かっていった。ドクオは音から何が
迫ってきているかを察知し、縄に捕まる寸前で方向転換をし、それを回避した。
(;'A`)「ぐうぉおおおお!!」
( ´_ゝ`)
とっさの足さばきでアキレス腱に負担がかかった。
しかしドクオは躊躇せず、脚力を酷使して逃げ切ろうとする。
対し兄者は投げ縄の一環で追跡に遅れを取ることになった。
ふたたび追いかけるも、距離は先より伸びていく。
(;'A`)「………!!」
無我夢中に足を動かす。体力配分など考えなかった。
足場は次第に茂みや樹木が多くなり、森のほうへ向かっているのがわかった。
膝の負担が重くなる。急な斜面ではないが、ふくらはぎが痛んでくる。
ズボンが目に見えて汚れていく。若干ぬかるんでい、スピードが出しづらい。
405
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/30(日) 02:12:21 ID:s8Lru0Dw0
背後で発砲音がした。かと思うと、前方の老いた木の枝が吹き飛んで、
ドクオの眼前に立ちふさがった。枝はためらわず突破するには大きすぎるが、
わざわざ避けるほどのものでもなかった。その思考で、一瞬だけ足の動きが緩んだ。
その緩みは、たちまちドクオに疲労感をもたらした。
息遣いも急激に荒くなって、膝ががくがくと笑い出した。
もう限界か。ドクオは逃げることを諦めた。覚悟を決めなければ。
迫ってくる兄者の足音は、次第次第にはっきり聞こるようになった。
(;'A`)「――!」
ドクオは枝の手前で急ブレーキを掛けると、逆方向――
駆け上ってくる兄者にむかって突撃をした。高低差はドクオに
利を与え、ドクオのタックルは程よい威力をもった。
(;'A`)「こなくそぉ!!」
( ´_ゝ`)
来る魔は急にとまれない。いきなりの反転をしたドクオには、
兄者も止まらざるを得なかった。しかし足を止めるその瀬戸際に、
ドクオの身体と兄者の身体とがぶつかった。
兄者が後方に飛ばされる……しかし、転ぶことはなく片膝で着地した。
ドクオは反撃の隙も与えず追撃の体勢をととのえた。
.
406
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/30(日) 02:15:36 ID:s8Lru0Dw0
('A`)「……うらぁ!」
尽きかけた体力を振り絞って、ドクオは右ストレートを見舞おうとした。
兄者の顔面めがけて放たれたものだが、スウェーの要領で避けられる。
( ´_ゝ`)
(#'A`)「ち!」
疲労しているのに力を込めすぎたせいか、ドクオの身体のバランスが崩れかけた。
その瞬間に兄者がさらに接近してくる。ドクオは腰に力を入れて
体勢を無理やり立て直すと、その反動を利用してさらに裏拳を放つ。
いきなりの一撃だけに狙いはまったく定まっていなかったが、
兄者のこぶしに運良くヒットした。偶然によるものだったが、兄者の
殴打を食い止めたらしい。兄者はすかさずバックステップで間合いをとった。
(;'A`)「はぁ……はぁ……」
じりじりと互いを見つめる時間が続いた。
月光のみの暗い森の中では、ふたりの吐息以外に聞こえるものはなかった。
ドクオの体力は限界を迎えようとしていた。
普段の精密な格闘術も、常人以上の反射神経も披露できそうにない。
407
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/30(日) 02:18:33 ID:s8Lru0Dw0
それでも、やるしかない。
ドクオはふたたびタックルを食らわそうとした。
だが集中力の欠いたそれには先刻の威力も速度も無く、
ただの高低差に身を任せたようなものだった。
兄者は激突する前に肘をまげ、拳を腰まで下げ、
( ´_ゝ`)
(#'A゚)「……ッ!?」
カミソリのようなアッパーカットを打った。兄者の右拳は
紛れもなくドクオの顎にクリーンヒットし、彼の脳に衝撃をくわえた。
(;'A`)「………!」
否でも応でもドクオは動くことができなくなった。
視界がぐらんぐらんと揺れ、あらゆる構えも取れやしない、
兄者を睨みつけることも、立ち続けることも、、、
そうして、意識も彼方へきえていった。
・・ ・・・
・・ ・・・・
・・ ・・・・・
・・ ・・・・・・
・・ ・・・・・・・
408
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/30(日) 02:22:59 ID:s8Lru0Dw0
・ ・ ・
(´<_` )「……ふん。ようやく起きたか」
(;'A`)「う……ぐぐ……?」
( ´_ゝ`)
ドクオは目を覚ました。薄らんだ視界は白く輝いたが、
見覚えのある白色灯だと気がつき始めた。頭がまだ痛むため
見回すことはできないが、そこは以前きたことのある裁判館の一室で
間違いはなかった。ただし今回は傍聴席には誰もいない。
―― 裁判館 1F
流石兄弟と、椅子と共に縄に縛られたドクオのたった三人だけであった。
(´<_` )「随分と手間取らせてくれたもんだ」
いつもの余裕さを見せず、弟者はぽつと呟いた。
ドクオの荷物を見やっては苦々しい表情をした。
('A`)「また此処かい……こんどは何を裁くつもりだ」
(´<_` )「さぁな」
.
409
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/30(日) 02:27:57 ID:s8Lru0Dw0
(´<_` )「単刀直入に言うぞ、ドクオ。
いい加減に我々と手を組め」
('A`)「………」
広大な裁判室のなか、弟者は淡々と言葉を続ける。
(´<_` )「知っているだろう? キャリアに触れられた以上
お前がどこに行こうとも私には手に取るようにわかる。
よしんば逃げられたとしても、発掘箇所は筒抜けなんだ」
(´<_` )「その意味は理解できるだろう? それならば我々の
傘下に加わった方が、はるかに救われるというものだ」
('A`)「……たしかにな」
ドクオは逡巡した。傘下に加わることについてなどではない。
自身の信念を一端は無視をして、時間稼ぎのために
賛同の振りをするべきか否かについてであった。
だが、だがしかし――
ドクオにはもう、抵抗しがたい怒りが胸に宿っていた。
この目の前の男にひと時でも、屈するなど考えられぬことであった。
410
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/30(日) 02:31:28 ID:s8Lru0Dw0
('A`)「ひとつ聞かせてくれ。デルタはどうなった」
(´<_` )「………。不慮の事故で亡くなったよ、
隠し通すことも出来んから言うがね。これは真実さ」
('A`)「そうかい」
('A`)「失せやがれ糞野郎」
(´<_` )「フン……」
弟者はつかつかと歩み寄り、ドクオの頬を思い切りビンタをする。
弾けるような音が走り去ると、ドクオは口から鮮血を一筋垂らした。
ドクオはきっと弟者を睨みつける。両者の表情は共にけわしい。
(´<_` )「今日の私は機嫌が悪い。言葉には慎んでもらおうか」
(´<_` )「ン? そうだろう? 未来の私の部下なのだから」
('A`)「はぁ? 誰が部下だって?」
不敵の目で弟者を睨め上げた。
弟者は笑いもせず怒りもせず、表情を変えぬままであった。
411
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/30(日) 02:35:03 ID:s8Lru0Dw0
この状況でむやみに牙を剥くことは、けっして正しい選択肢とはいえなかった。
ただドクオには、名状し難い負の感情がこみ上げてくる。
理屈は充分理解していたが、ここで弱みを晒すことは彼の信念が許さない。
通さなくてはならない意地があった。
(´<_` )「命が無ければ、通すプライドも無意味なものだ」
( ´_ゝ`)
(´<_` )「愚かにも意地を張って苦しんでいく奴は何人も見ている。
……妥協しなければならないところで、強気に走ってしまう。
そうやって死ぬ愚か者どもさ。ちょうど、今のお前のようにな」
('A`)「お前らに屈したら、俺の全てがぶち壊しになるんだよ」
弟者は鼻で笑うと、ドクオを椅子ごと蹴り倒した。
蹴りと背凭れとの衝撃がドクオに苦痛を与えた。
森での疲労がそれに拍車をかけた。
しかしその体勢のままドクオは弟者を睨もうとする。
(´<_` )「お前も大概に阿呆だな。少しは才覚があると見込んでいたが?
そこで妥協して命拾いしろというのがわからんのか?」
('A`)「アホはおめーだ。他人の気持ちも読み取れねえ無能が」
412
:
名も無きAAのようです
:2012/09/30(日) 02:37:42 ID:c4OR/G620
ドクオさんマジかっけぇッス
413
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/30(日) 02:40:31 ID:s8Lru0Dw0
('A`)「コイツを見りゃわかるさ、お前が部下をどう扱ってるかってな」
そういってドクオは兄者のほうへ顔を向けた。
傍聴席との仕切りに腰を預けている兄者は、そんなふうに話題を
振られてもドクオに一瞥さえくれなかった。
相変わらず、無言で虚空を見つめていた。
( ´_ゝ`)
('A`)「てめえら兄弟に何かあったか知らねぇし知る気もねえ。
だが、ただ一つ言えんのはてめぇが部下を操り人形としか
思ってねえ無能上司ってことだけよ」
(´<_` )「………!」
弟者はやはり無表情のままだが、殺気を隠しきれずにいた。
('A`)「支配の項目もまるで落第点だ。お前、恐怖と暴力で無理やり
相手を手懐けるんだろ? それで人の上に立てたつもりか?」
(´<_` )
('A`)「俺には一人だけ部下がいる。けどそいつを恐怖で
縛ったことなんざねえよ。俺はそいつを信頼しているし、
そいつもきっと……いや、ぜったいに俺を信頼している。
弟者。お前には分かりゃしねえ話だろうがな」
(´<_` )「クックック……」
―― ゴリッ.....
414
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/30(日) 02:43:49 ID:s8Lru0Dw0
.
('A゚)そ 「うぐッ!?」
(´<_` )「言いたいことはそれだけか?」
ドクオの縛られた手に――正確には左手の指に激痛が走った。
弟者はドクオの指を足で踏みつけていた。力を込めて、
潰れてもおかしくないほどに圧迫を加えている。
ぎりぎりと音を立てながら、弟者は抑揚のない声で、
(´<_` )「だから? 信頼がどうだとか、結局なにを伝えたいのだ」
(´<_` )「この状況を見れば分かるだろう。支配という言葉その意味を」
('A`;)「〜〜っ!!」
弟者は足の力に強弱をつけながら、見下してそういった。
対してドクオは苦悶の表情だった。指が折れてしまいかねない。
いや、このままの状態が続けば、あとはもう時間の問題であった。
(´<_` )「てめぇの信頼するセントジョーンズとやらは
いまのお前を救ってくれるのか? ああん?」
('A`;)「……う、る、、、せぇ」
.
415
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/30(日) 02:47:12 ID:s8Lru0Dw0
(´<_` )「ははは、どうあれ無理だろうさ。彼はとっくに死んだからな」
('A`;)「………!」
(´<_` )「ククク……てめぇの目論見とともに木っ端微塵、さ」
弟者はそこでようやくドクオへの虐待を止めた。
腰を屈むと、苦痛でゆがみきったドクオの顔を存分に眺めながら、
(´<_` )「お前の希望とやらも潰れちまったんだよ。わかるだろう?
だから俺はお前に妥協しろといっている……
さ あ 、 服 従 し て お く れ …………!」
ドクオの額から脂汗がぽたりと垂れた。
どくんどくんと、心臓が裂けそうなほどに脈打っている。
脳裏を過るのはクー・スナオリャと、そしてセントジョーンズの姿だった。
(´<_` )「共に世界を築こう」
極めて穏やかな猫撫で声になって、
(´<_` )「私とキミなら、ハンター組合なんぞ敵じゃァないさ」
416
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/30(日) 02:52:58 ID:s8Lru0Dw0
( ´_ゝ`)
( A )「下克上なら一人でやってろよ」
(´<_` )「………」
ぜぇぜぇと息づきながら言い放った。
弟者の沈黙を遮るために、ドクオは続けて、
( A )「俺はただ自分の…夢を切り開く、だけ……
なんどもいうが妥協は……あっちゃならない。。。
……てめぇが、ジョーンズが死んだと、いうなら……
あいつが俺の信頼抱いて、、、死んだなら尚更……
ぜってぇに諦めるわけにゃいけねぇんだよ、わかったかコラ……」
(´<_` )「ふうん、強情だな。この世の仕組みを分からせてやる」
そういうと弟者は兄者に向かって「戻せ」と命令した。
兄者が鷹揚に椅子を立ち上がらせる、そうして
ドクオの目にした光景は、弟者がナックルダスターを
胸ポケットから取り出すその動作であった。
417
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/30(日) 02:56:44 ID:s8Lru0Dw0
そうして弟者はそれを自身の拳にはめ込んだ。
ドクオは舌打ちをすると同時に、強化された拳が頬にぶちあたった。
( A ;)「ぐっ……!」
口のなかで血の味が弾けるように広がり、強烈な鈍痛も響きはじめた。
(´<_` )「ふん……」
さらに続けて二発、三発とドクオの顔を集中的に殴打した。
ドクオは声を立てずにそれを耐えようとしたが、三発目には
悲痛な叫びを漏らした。耐えられないというよりも、
顔の筋肉が言うことを聞かなくなったような気分だった。
( A ;)「うッ……ぐふ……、ぐゥ……!」
(´<_` )「お次はこういうのはどうだいドクオ」
弟者は拳でのいたぶりを中断すると、
背後に回ってドクオの手のほうを確認した。
そうしてまだ痛みのひかない彼の小指を手に取ると、
(゚A゚;)「うぐぁ……ッ!」
ゆっくりゆっくり力を込めて、逆方向に曲げていった。
418
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/30(日) 02:59:04 ID:s8Lru0Dw0
―― ぎり、ぎり、ぎり、ぎり……。
腱が裂けそうになる。小指の付け根は悲鳴をあげはじめる。
歯はがちがちと音を立て、その度に口内にたまった血が鉄の匂いを発した。
(゚A゚;)「や……やめ……!」
(´<_` )「他に言うことがあるだろう。ン?」
弟者は躊躇しない。
ばかりか、笑いながら力に緩急を加えた。
脂汗がドクオの傷だらけの顔に溢れていった。
(゚A゚;)「ぎ……うぎぎ……!」
(´<_` )「こんなのはまだ序の口だというのに……。
やはりお前も命乞いをするんだろうよ、ははは」
ドクオの目に涙がたまり始めた辺りになって、弟者は一端中断をした。
しかしドクオは息を整えると、震え声のまま、
('A`;)「てめぇなんかに……だれが……」
(´<_` )「……ほぉ?」
.
419
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/30(日) 03:00:51 ID:s8Lru0Dw0
('A`;)「死んでも……逆らってやるぜ……このやろう!
てめぇのような、腐った……権力みてぇのにはよぉ……!」
( ´_ゝ`)
(´<_` )「そうかい、そうかい。ならば何かを失って頂こう」
弟者はやけに冷めた口調でつぶやくと、
自身のホルスターからリボルバーを引き抜いて、
(´<_` )「指を一本一本撃ち抜いてあげようじゃないか。
貴様の反抗心が、崩れ落ちるまでな」
( A ;)「………!」
思わず目を瞑った。歯軋りを立ててしまう。
しかし後悔は不思議と無かった。
目の前の男にだけは、何があろうと屈したくないのだ。
相対する弟者は優雅に、リボルバーの黒光りする銃身を見つめると、
シリンダーを回転させては点検をした。本気で撃つつもりらしい。
忍び笑いをしつつ、
(´<_` )「明日からは、まともな発掘も出来なくなりそうだねぇ……」
( A ;)「(くそが、くそが、くそがっ……!)」
420
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/30(日) 03:02:58 ID:s8Lru0Dw0
弟者は弾の確認を済ませると、銃口をドクオの無抵抗の
小指にあてがった。しかし、
そのあたりになって弟者の背後で靴音がした。
弟者が不審に思い振り返ると、そこには兄者が立っていた。
( ´_ゝ`)
(´<_` )「……誰か動いていいと言ったか?」
弟者は苛立った声で咎めた。弟者は片膝立ちをやめて兄者と
同じ目線になると、それでも反応のない兄者に向かって、
(´<_` #)「誰が持ち場を離れろと言ったァ!? ああ!? 命令なく
歩くんじゃねぇッ!! 人形で居ろと言ったろうがッ!」
( ´_ゝ`)
ここに来て、ドクオも兄者の言わんとすることが理解できた。
つまりドクオへの過度な拷問に苦言を呈したがっているらしい。
(´<_` #)「……なんなんだよお前っ……兄者、兄者ァ……
意思を持つなとさんざ言ったじゃねぇか!」
( ´_ゝ`)
兄者は何も言わない。頭も振らない。
ただただ瞳の底には、言い知れぬ悲しみと激情とが秘められていた。
421
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/30(日) 03:06:03 ID:s8Lru0Dw0
(´<_` #)「デルタのときもッ勝手な真似して楽しみ奪いやがって!
そしてお次はドクオもってか!? ふざけんなよッ!
正義気取りだかなんだか知らねえがよぉッ!!」
( ´_ゝ`)
弟者は物言わぬ兄者の頬に平手打ちをした。怒りに任せて
何度も何度も叩いた。兄者の唇が切れて血が顎に滴った。
(´<_` #)「………!」
( A ;)「おい、兄者おま」
しかしドクオの言葉はそこで遮られた。目にも止まらぬ兄者の早撃ちで
ドクオの脚近くの虚空を撃ち抜いた。発砲音とその残響だけが空間を支配する。
( ´_ゝ`)
(´<_` #)「何の真似だよ……俺に逆らいてえってか……」
422
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/30(日) 03:08:24 ID:s8Lru0Dw0
.
( ´_ゝ`)
(´<_` #)「……くそが」
弟者は背を向いてつかつかと離れはじめた。
そうして壁に目を向けたまま、
(´<_` )「……ドクオをぶち込んでこい」
間を置かずに怒鳴って、
(´<_` #)「駐在所にだッ! さっさとやれェ!!!」
( ´_ゝ`)
( A ;)「………」
兄者はドクオと椅子とを繋いでいる縄を解くと、そのまま
ドクオを担いで扉へと向かっていった。ドクオはまったくの抵抗も
せず、生気を失ったようにぐったりとしている。
兄者が裁判館を離れ、広場の方へと歩いていく。
その姿を、弟者はやはりじっと見つめていた。
やがて、ぽつりと、
(´<_` )「なぜだ……兄者……」
.
423
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/30(日) 03:11:59 ID:s8Lru0Dw0
・・ ・・
・・ ・・・
―― 同時刻 ノーナンバーズのアジト。
N| "゚'` {"゚`lリ「――明日、さ」
(((`・ω・´;)))
(*゚∀゚)「そうさね……」
||;‘‐‘||レ「………」
灯りのない古びたバーで、四人のメンバーは静かに語っていた。
デルタを失い、ドクオも囚われてしまった。
(*゚∀゚)「信じられないさね、明日がくるってのは……」
つーは髪の毛を弄りながら、落ち着かない様子で、
(*゚∀゚)「明日が、明日が……なんていうんだろうね、
こーんなこわくてちょっと気持ちよさそうなのってのも」
(((`・ω・´;)))
N| "゚'` {"゚`lリ「そうだな、俺も未来をどんな気持ちで受け止めていいのか判らない」
阿部は抑揚のない声で、
N| "゚'` {"゚`lリ「明日になれば、どんな形でも決着がつく。ドクオはそう言った」
424
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/30(日) 03:17:17 ID:s8Lru0Dw0
N| "゚'` {"゚`lリ「俺達はやるしかない。仲間を失っても、
やるしかないのさ。ドクオは言っていたな、
"俺なんて俺のプランの歯車でしかない"って。
――死ぬつもりでやろう。デルタや、ドクオのように」
(*゚∀゚)「……そうさね」
(*゚∀゚)「そんじゃあたし、ほかの人に声かけしてくるさね」
つーはフラフラした足取りで外に向かっていった。
「気をつけろよ」の阿部の注意も、聞こえていなかったかも知れない。
(`・ω・´;)「神様オナシャス! 僕たちを……!」
||;‘‐‘||レ「私も……つーと一緒に」
N| "゚'` {"゚`lリ「ああ、充分に注意してくれよな。
(ようやく、この村に転機が訪れるのか……。
そして俺にとって、俺の人生にとっても……)」
阿部は頭の中で昔の恋人を思い浮かべながら、
N| "゚'` {"゚`lリ「(正樹……俺には、復讐もお前も忘れられそうにねぇぜ……)」
.
425
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/30(日) 03:19:01 ID:s8Lru0Dw0
(`・ω・´;)「なんでもしますから……なんでもしますから……」ブツブツ
N| "゚'` {"゚`lリ「(明日のためだけに、俺はここにやって来たんだからな……!)」
―― シェリフの駐在所。
( ´_ゝ`)
('A`;)「うぐっ……!」
兄者によって牢屋に放り込まれた。
ハーモニーに来て初日のあの牢屋と同じであった。
ただし今回はとても静かな夜だった。
怯えたように兄者を見つめる門番と、
物言わず牢内に倒れ込んだドクオ。
そして、やはり口を聞かない不気味なカウボーイの兄者。
.
426
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/30(日) 03:21:14 ID:s8Lru0Dw0
「お疲れさまです」と門番が強ばった声で、去り際の兄者に挨拶をする。
そのときドクオはなんとか首を動かして様子を眺めようとした。
当然、兄者は何も応えない。立ち止まるつもりもないらしい、
ドクオは何かを言いたかったが、彼はそのまま闇夜に消えてしまった。
('A`;)「………」
弟者に弄ばれた小指が未だに強く痛んだ。
おそらく腱が損傷したに違いなかった。
だが、それよりも大事なものがドクオにはあった。
命とプライド、そしてプラン。
今夜はその全てを失いかねない危険性を
孕んでいたが、奇跡的になにもかもを守りきることに成功した。
427
:
ラスト投下
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/30(日) 03:23:10 ID:s8Lru0Dw0
.
('A`#)「オリバー……ジャーブロ……!」
怒りを込めて、弟者の本名を呟いた。
看守はそれを聞いていたが、なにも言わずに俯いている。
牢屋の冷えた床の感触、その硬さを背中に感じながら、
解けない縄を手首と足首に感じながら、
('A`#)「(明日だ……明日、てめぇを……!
俺は負けねえぞ……! 何があっても、絶対……!
てめぇには屈しねえからな……!)」
月が狂態を見て笑う。
血と殺意に舞ったこの夜は、いままったく終わった。
そうして明日、その日が、その始まりが告げられようとしていた。……
.
428
:
名も無きAAのようです
:2012/09/30(日) 03:25:11 ID:s8Lru0Dw0
今日はここで終わりです。途中時間があいて申し訳ない、
あまりにも寮のwifiが酷かったんでスタバのにつなげてますた。
ではよい夜を。
429
:
名も無きAAのようです
:2012/09/30(日) 03:34:59 ID:c4OR/G620
乙
弟者は兄者の感じてることが本当にわかんないんだな…
430
:
名も無きAAのようです
:2012/09/30(日) 04:00:44 ID:t9BFCbSA0
おつ!
読んでて凄いドキドキした
431
:
名も無きAAのようです
:2012/09/30(日) 13:20:59 ID:NORimOss0
朝から一気読みしたよ。面白いね。乙。
432
:
名も無きAAのようです
:2012/10/01(月) 13:43:05 ID:spFzvw.6O
乙
ハラハラする
指が無くなった時を想像して思ったが
この世界の義肢技術はどんぐらいなんだろ
433
:
名も無きAAのようです
:2012/10/01(月) 19:29:06 ID:zTluCLbk0
うあああああ乙!!
ドクオさんマジかっけぇっす!
何も語らないのに兄者の心情思うと辛い…
434
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/03(水) 13:32:30 ID:g65Ui6Ng0
レスどうもどうも。活力が湧いてきます。
ところで今週末は多分投下できそうにないです。
来週末かなぁ、いま現在は20レスくらい。
と、これだけも何なので、設定みたいのを垂れ流そうと思う。
作者でさえアヤフヤになった用語などの再確認などなど。
435
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/03(水) 13:38:08 ID:g65Ui6Ng0
・火星での人名
「 (称号) + 登録名 + 姓 + 名」の順に表記される。
登録名+姓が事実名、そこに名を加えて正式名と扱われる。
登録名は火星移住の際に自身で好きに付けられるが、大体は
ファーストネームの略称だったり愛称だったりが多い。
登録名と名が同じの場合、名をイニシャル表記にする。
(火星で生まれた人間は20歳のときに登録名変更の機会が与えられる。
ただし一般開放は17年前のため、この制度はまだまだ先の話である)。
例:あだ名がドクオのドンクホーテ・タケシ・ウツタール氏は
火星移住の際に「ドクオ・ウツタール」を事実名とした。
正式名は「ドクオ・ウツタール・ドンクホーテ・タケシ」である。
例:ジョン・セドリック・ワート・ジュニア氏はセントジョーンズという
名に憧れていたため、移住時に登録名をそれにした。よって、
「セントジョーンズ・ワート・(ジョン・セドリック)」
ちなみに父と同じ名でなくなった場合はジュニアを消してもよい。
例:登録名を面倒臭がったミルナルド・ジェームス・コットン氏は
「ミルナルド・ジェームス・コットン・(M・J)」の名を持っている。
阿部高和氏も「タカカズ・エイブ・(T)」が火星での正式名である。
(阿部は更に発音表記もしなかったため、エイブ読みにさせられた)。
例:流石兄弟は「兄者」「弟者」を登録名にしなかったため、
「アレン・ジャーブロ・(A・ニコラス)」
「オリヴァー・ジャーブロ・(O・トーマス)」が火星での正式名である。
436
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/03(水) 13:44:35 ID:g65Ui6Ng0
・事実名と正式名について
もっぱら事実名が日常生活の大部分で活躍する。正式名はパスポート
などにしか使われておらず、自分の名前なのに忘れそうになる人もしばしば。
セントジョーンズとか。
・火星考古学について
認知されてはいるが、火星人の存在を肯定する学問のため、
とんでも扱いされることも多い。文部省から補助金が降りていない
ため、大学で専門の講座は開かれていないし、大々的な活動もできない。
ドクオは火星考古学の第一人者だが、そうした問題のために
大学生時代から火星古生物学に籍をおいている。
・マーパーツについて
火星でごくたまに出土されるオーパーツ的存在。しかし世に出回っている
ものの殆どが紛い物である。そのため、オカルト扱いもしばしば。
多くはネックレスや人工的に加工された石など。
・エビについて
火星の古生物の化石の俗称。エビに似た生物が大多数をしめるためこう呼ばれる。
やはり偽物も多いが、マーパーツに比べると総数は非常に多い。
とても高価であるため、ハンターの活動の資金源にもなっている。
エビはマーパーツではない。流石兄弟の過去編で混合しちゃったけど
脳内変換してくださいネ。
437
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/03(水) 13:46:53 ID:g65Ui6Ng0
・火星人の最後の地
火星人の終の棲家。ドクオは火星の何処かに存在すると考えている。
この地を捜すために、マーパーツとエビを集めている最中である。
・火星の重力について
火星の重力は地球のと比べると非常に弱く、人間が活動する上では
不便であった。そのため、科学者達はどうにかして同等の重力に仕立て上げた。
よく分からないけど、とても凄いことだと思う。
・
>>432
火星の義肢技術
見た目が殆ど変わらない上、不自由ない生活を送れるレベルの義肢がある。
ただし火星はインフラが未発達なため、それを施せる病院は非常に少ない。
培養細胞による完全再生についても同様。地球で受けた方がはるかに安価。
ちなみにニューシベリアは、生身以上の性能を発揮する超技術の義肢を
作り上げたが、あまりにも高性能すぎたため、道徳上の問題で禁止された。
438
:
名も無きAAのようです
:2012/10/03(水) 15:42:36 ID:JDCVYnZ.0
乙乙です!
兄者好きだわ
精神は壊れても心はまだ死んでないってことか
439
:
名も無きAAのようです
:2012/10/07(日) 01:11:19 ID:xBcE0tsQO
やっぱり技術はめちゃくちゃ発展してるんだな
答えてくれてありがとう
440
:
名も無きAAのようです
:2012/10/07(日) 11:54:10 ID:67Z5dTEQO
久しぶりにきたらめちゃ更新してて嬉しい!乙乙!
441
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/10(水) 15:43:37 ID:jjCas4Rk0
どうもどうもー。
質問があったらこれからも遠慮なく。
それと、近いうちに投下します。
442
:
名も無きAAのようです
:2012/10/10(水) 22:07:25 ID:NAu9zDL60
予定通りだな
待ってるぜー
443
:
名も無きAAのようです
:2012/10/11(木) 15:33:36 ID:vbwQ4uyoO
wktkして待ってる
444
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 01:08:22 ID:SARND0eo0
投下するでよ
445
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 01:16:26 ID:SARND0eo0
・・ ・・
・・ ・・・
・・ ・・・・
どれだけ望もうともフォボスが運動を止めること
はないし、太陽は常に顔を覗かせては朝を知らせにやってくる。
普段は埃っぽいハーモニーの往来も、このときだけは
朝露に濡れてしおらしい。がなり声を立てるハンターもいない
早朝のハーモニーは薄青い空の下、閑静な界隈になりきっていた。
太陽の光で空は紅く溶きほぐされたかと
思うと、瞬く間に明るげな青を取り戻していった。
縄で繋がれた馬達は、餌を待ちわびてそわそわと動き始める。
村外れの養鶏所も俄に騒がしくなっていく。
そう、運命の日はやって来た。
.
446
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 01:20:47 ID:SARND0eo0
―― シェリフ駐在所 その牢屋。
(メ'A`)「………」
看守に手足首の縄を解かれ、朝食のトレイを手渡された。
ドクオは物言わずにそのトレイを眺めている。
冷え切ったバターと一摘みの塩、薄く輪切りされた茹でジャガイモ、
その隣のコールスローにミルクの入ったカップ。それで全てらしい。
牢の鍵が締められてから、ドクオは食事を開始した。
不味いコールスローをミルクで無理やり流し込み、
バターと塩をそのまま口に放り込んだ。バターを口内で溶かしながら
ジャガイモの輪切りをどんどん頬張っては嚥下する。
途中、喉が詰まりそうになったら更にミルクを一飲みする。
(メ'A`) モグ モグ
さいごのひと切れを咀嚼しながら、ドクオは鉄格子の外を見た。
広場とその中央の一本杉。そこで処刑されたダミエルの死体は
当たり前だが撤去されていた。キャリアに利用されたのだろうか、
ドクオはそんなことをぼんやりと考えた。
447
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 01:27:39 ID:SARND0eo0
(メ'A`)「………」
そうして計画について思案を重ねた。この状況下では
ドクオ自身は何もできない。プランが成功しない限り、
一生自由にはなれない。ドクオは身震いしそうになったが、気を引き締めた。
(メ'A`)「(成功する……必ず……)」
そのとき、ハーモニーの上空で流星のようなものが光った。……
―― 裁判館 地下射撃場
( ´_ゝ`)
兄者は、映像空間でひたすら射撃をしている。
ときおり距離の設定を変えてはまた銃弾を放つ。
それを何度も、何度も繰り返していた。
両手に拳銃でピンポイントにエネミーの脳天を撃ち抜いていく。
448
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 01:31:13 ID:SARND0eo0
その殆どが満点を記録していた。たまに誤差が生じても、
次の弾ではきちんとエネミーを殺しきるという腕前だった。
( ´_ゝ`)
百人あまりの仮想敵を撃ち殺すと、それで本日のノルマは
達成になった。装置の電源を切って額の汗をタオルで拭いた。
タオルを脇のデスクに置いてから、ふと兄者はシャツの下を
まさぐってロケットを取り出した。開いて、なかの写真を確認する。
シアトル時代の流石ファミリーの宴会写真を縮小したものだった。
兄者の隣で座っているヒールは、大口を開けて笑っている。
そのヒールを挟んで隣にいる弟者は、グラスを片手に微笑んでいた。
( ´_ゝ`)
.
449
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 01:35:10 ID:SARND0eo0
―― アレンはいつもそうだッピャ、生きるのに全力で。
―― そ、そうかぁ、ははは……。
―― 本当に凄いと思うっピャ。流星のように生きる。
有言実行してて、カッコイイ! キャー!
―― 褒めてもなんもやんねーぞ?
―― 何言ってるっピャ? いつもアタイはアレンから貰ってるよ?
アレンの、眩しい眩しい光って奴をね。アレンはみんなの憧れなんだ。
( ´_ゝ`)
兄者は普段からウエスタンシャツに隠して
ロケットを携えていたが、頻繁に写真を眺めたりはしなかった。
ただ今日だけは、ふいに見たくなったのであろう。
そして兄者は気がつかない。
ハーモニーの上空でそのとき、流星らしき光が尾を引いているのを。
.
450
:
449の前にこれが
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 01:36:41 ID:SARND0eo0
兄者はなにを思って、それを見つめていたのか。
あるいは、その遠き過去を振り返りながら、
当時の自分や仲間のことを思い出していたのかも知れない。
―― ってわけでな、今夜からはゴアの残党刈りよ。
奴らも必死で俺を殺しにくるんだろうな、面白くなってくるぜ。
―― アレンは怖くないッピャか?
―― うーん、どうだろうな。怖くないわけじゃあないんだが……なんつうか、
ああやって命削って戦うとな、生きてるって感じがしてくるんだよ。
―― ………ふーん。
―― っておいおい、呆れたみたいな顔すんじゃねえよ!
―― 逆っピャ。
―― ん? 逆って?
.
451
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 01:38:42 ID:SARND0eo0
―― 裁判館 2F 弟者の仕事部屋
(´<_` )「……本部に繋がらないだと?」
部下のそんな報告に、弟者は眉をひそめて、
(´<_` )「まあいい、送金は正午辺りに私がやっておこう」
「ありがとうございます」と深々お辞儀する部下をよそに、
(´<_` )「しかし、不通か。そんなことが起こり得るものか……」
……弟者が村長に就任してから、ハーモニーは完全にハンター村と
化したのは有名な話である。そして当然ながら、ハンター組合本部から
庇護を受けている。治安自治権を獲得し、近辺のマーポール
とも癒着できるのは、やはり本部の力によるものであった。
ほかにも空域侵犯拒否エリアの設定、闇オークションのための
富豪たちへのコネクションなど、様々な恩恵を受けている。
そしてハーモニー側は、対価としてロイヤリティを本部に払っている。
今朝もそのつもりだったが、何故だか本部に連絡が取れなくなっていた。
前日のこともあり、ついつい弟者の脳裏に不安がよぎっていく。
452
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 01:45:23 ID:SARND0eo0
(´<_` )「(ドクオが何かをしでかしたのか? いや……流石に
本部を壊滅させられるわけはないし、電話線を
叩き切るという問題でもない。……奴はこの件には関係ないか)」
弟者の思考にそのとき、信じたくないような予想がポンと浮かんだ。
それはありえないと自身で打ち消そうとしたが、念のためにと、
(´<_` )「ファッカーに至急連絡をしろ。奴め、途中報告もなしとは
ふざけた真似をしていやがるが……」
「かしこまりました」
それから弟者はふいに背を向いて窓の向こうを見やった。
清々しい快晴だった。雲一つない、順調な空模様だった。
(´<_` )「……キャリアも用意だけはきちんとしておけ」
弟者はどうにも、胸騒ぎを覚えて仕方がなかった。
前日の兄者の予想だにしなかった行動。
ドクオの何処か余裕を隠し持った態度。
そして今の、連絡が途切れている状態。
(´<_` )「(………)」
453
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 01:48:30 ID:SARND0eo0
すると、電話番が慌てた様子で弟者の部屋に入り込んで、
「モアブ署のマーポール(警察)が至急会いたいと!」
また、不安材料がひとつ。
(´<_` )「……適当に、あしらっておけ」
「しかし……」
(´<_` )「口ごたえするな、 やるんだよ」
「は、はい!」
そういって電話番は飛び出ていった。
(´<_` )「………」
弟者は無言で空を見つめていたが、やがて部下相手に確認する口調で、
(´<_` )「……本部直々の迎撃ミサイル、あれさえあれば
最悪の手段も乗り越えられる。だろう」
部下の「最終兵器ですからね」という返事に頷いて、
(´<_` )「(……籠城も可能ならば、……いや、しかし……)」
454
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 01:53:07 ID:SARND0eo0
本部直々の迎撃ミサイル。それはハンター組合本部が設置した
防御用兵器で、敵からの攻撃を完全に無力化することに特化している。
ハーモニー近くのの鉱山ふもとに発射台は存在し、組合本部の衛星システム
によって自動防御システムが常時発動している。何らかの誘導体が
空域に侵入してきた場合、無条件でそれを墜落させ、ハーモニーを守護する。
仮にドクオがどんな凶悪な破壊工作軍を連れて来ようが、
飛び道具だけは確実に防ぐことが可能というわけだった。
ちなみにこのミサイル台は、サイドニアでは
組合本部とハーモニーの二箇所にしか存在していない。
迎撃ミサイルは基本を本部の制御室が管轄しているため、
無力化させるには本部自体を壊滅させるか、あるいは電波ジャック
でもして攪乱作戦といった方法が考えられるが、現実的ではない。
現実にドクオには、その二つの方法を取ることは不可能だった。……
.
455
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 02:00:04 ID:SARND0eo0
(´<_` )「……ん?」
―― そのときだった。
澄み切った青空の彼方から流星らしきものが見えた。しかし、
目を凝らしてみると、それはただの自然現象でないことがわかる。
(´<_` )「……あれは、ミニ・マスドライバーか?」
ミニ・マスドライバー。発掘調査の補助のために
使われる輸送専用装置であり、物資を発射して目的地に送り込める。
いかにも、ドクオが大学院のセンターに頼んだ代物であった。
それはどんどんと此方へ向かって来る。
落下地点は間違いなくハーモニーの何処かに設定されているのだろう。
(´<_` )「……血迷ったかドクオ、迎撃されることも承知だろうに」
しかし、破壊されることもなくラグビーボール形の巨大カプセルが
近づいてくる。ひゅるひゅると音を立てながら落下運動に入り始めた。
.
456
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 02:01:48 ID:SARND0eo0
.
(´<_` )「な……っ」
おかしい。なぜだ。迎撃ミサイルが……なぜ発動しない?
混乱しながら弟者は、窓の向こうの光景を凝視した。
そうして、墜落されるべき巨大カプセルが、なんの障害もなく着地していった。
(´<_` ;)「な、なんだとぉ!?」
すぐに弟者は振り向いて、
(´<_` ;)「おいどうなっている!? ミサイルはなぜ仕事しない!?」
「わ、私にも……」と唖然とした表情の部下に、弟者は続けて、
(´<_` ;)「すぐにカプセルの方へ人を割け! 俺は今から
本部へ電話をする!……急げ! ドクオの仕業だ!
奴はなにかをやりやがったんだ!!」
.
457
:
名も無きAAのようです
:2012/10/13(土) 02:04:01 ID:LuypbkqA0
どうなるどうなる
458
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 02:06:19 ID:SARND0eo0
慌てて飛び出す部下を尻目に、弟者はさっそく本部に連絡を取ろうとした。
しかし、まるで繋がらなかった。番号は間違いなく合っているが、
誰も応対しようとしなかった。どういうことだ、弟者は苛立ちながら受話器を置いた。
そのとき、窓の向こうでは再びミニ・マスドライバーからの発射物
がふたたび見えた。今度は三つであった。しかし、焦る弟者を嘲るように、
そのどれもが村外れに優雅に着陸していった。
迎撃ミサイルなど、まるではじめから無かったかのように。
(´<_` ;)「くそ……! いったい、なにが起こっている…?」
そこでふたたび扉が開いて、兄者とベガーがやって来た。
(´<_` ;)「ベガー! 緊急事態だ、至急この館内の組員に告げろ!
二手に分かれて片方はカプセルの押収、もう片方は
村の見回りだッ! そしてドクオを連れてこい!」
(´<_`#)「はやく動けェッ! もたついてんじゃねえ!!」
459
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 02:09:44 ID:SARND0eo0
怒鳴ってベガーを無理やり働かせた。部屋には兄者と弟者の
流石兄弟だけが残ったが、無論のこと相談も会話もしない。
(´<_` ;)「(どうなっている……どうなっているんだ……!?)」
( ´_ゝ`)
裁判館はみるまに慌ただしくなって、カプセルの落下地点の
把握に四苦八苦しているらしい。弟者は思考に身を沈める。
なぜ迎撃ミサイルが発動しないのか、なぜそのタイミングを
狙ってミニ・マスドライバーが放たれたのか、なぜファッカーや
本部などに連絡が取れないのか。さまざまなピースが回転しては
組み合さろうとする。やがてそのうち弟者は行き着く。
さきほど過ぎった"最悪の可能性"が、真実に近いということに。
(´<_` ;)「(まさか、まさか……そんな、そんな 馬 鹿 な !!
だとしてもどうやって連絡をつける、奴にそんな
コネクションがあるというのか、なにか……
……おれは何かを、見落としていたのだ……!?)」
そしてそのとき 村の何処かで、けたたましい爆発音が轟いた。……
460
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 02:14:03 ID:SARND0eo0
.
――― 前日。サンフラワの町外れ。
……ドクオの個人倉庫に立ち入ったセントジョーンズとクー、
それとシラヒーゲの三人は、まずはじめにデスクの上に置かれた
封されていない茶封筒を発見した。セントジョーンズが手にとって、
(’e’)「これはドクオさん直筆のっすね〜。あけますわ」
川 ゚ -゚)「わたしはこれを起動させよう」
といって、クーはスリープ状態のコンピュータに触れた。
( ´W`)「いか臭い部屋ですな、で、とにかくロックみたいにですね、……」
(’e’)「んーと、これは……緊急事態用みたいっすね」
セントジョーンズは、文面に目を落としながらぽつんと呟いた。
まさしくその通りで、ハーモニーに潜入する、もしものときは
マーポールに連絡を入れてくれといった内容のものだった。
日付や理由などを殊更に書き付け、サインにくわえて血印を
押しているのをみるに、ドクオのライフラインであることに疑いなかった。
461
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 02:18:19 ID:SARND0eo0
(’e’)「………」
文章を読みながらセントジョーンズが黙っているとき、
コンピュータのディスプレイに光が点った。クーとセントジョーンズは
さっと画面を眺めた。発掘カメラの、画像用フォルダが開かれている。
(’e’)「うおお〜」
川 ゚ -゚)「――これが、私たちの武器……!」
そこには既に、ハーモニーで撮られたであろう写真がサムネイルに
なって並んでいる。堅気ではない人間の歩き姿を隠し撮りしたもの、
銃弾の埋め込まれた壁や片腕のない原住民など、まるで昔の内戦地のようであった。
川 ゚ -゚)「で、私がこれらを使って記事にすれば良いのだな」
( ´W`)「ん〜、なんかドクオさんと誰かが写ってますな」
シラヒーゲが一つのファイルをクリックし、拡大した。
その画像は何故か、ドクオといい漢とのツーショットだった。
川;゚ -゚)そ 「阿部さん!? どうしてハーモニーに居るんだ?」
(’e’)「誰ですかぁ、このイイおとこは」
川;゚ -゚)「知り合いだ。誰かを捜すといって、行方不明になっていたんだが……」
462
:
名も無きAAのようです
:2012/10/13(土) 02:19:35 ID:tuWD0ZeQ0
支援
どうなるんだ一体…
463
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 02:20:45 ID:SARND0eo0
川 ゚ -゚)「……ハーモニーに目当ての人間が居たのか、それとも
その道中で閉じ込められたか、どちらにせよ……」
( ´W`)「おやぁ、こちらは手紙を撮ったものぽいですな」
(;’e’)「ちょ、おま」
シラヒーゲは勝手に操作をし、別の画像ファイルを拡大した。
彼の言う通り、それは文章を写真におさめたものであった。
それはまさにドクオからの第二の手紙であった。
クーはシラヒーゲの代わりに操作し、画像の比率を上げて
文面をより読み取り易くした。だが、そうして明かされた文章は、
セントジョーンズとクーを混乱させるものであった。
川 ゚ -゚)「……どういうことだ?」
(;’e’)「は、え? ド、ドクオさぁん?!」
その"第二の手紙"の書き出しはこうであった。
丁寧な文字で、ドクオらしい筆記のまま、
” 親愛なるクー・スナオリャへ。これらの画像、及びこれから
送られる全ての画像は決して、 記 事 に し な い で 頂 き た い。"
.
464
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 02:24:44 ID:SARND0eo0
( ´W`)「はて、これじゃ何がなにやら。本末転倒ですな」
川 ゚ -゚)「………」
シラヒーゲの言うとおりだった。"ハーモニーの現状をとらえた
写真あるいはドクオの第一の手紙を基に、クーが記事を作り
公表する"というのが当初の――すなわち、セントジョーンズに
教えた計画のはずであった。だが、第二の手紙はそれを真っ向否定した。
第二を手紙をわざわざ、書置きせずに画像として転送した理由。
それはカメラが使用出来る状況でないと発動できない一手だった、
というのが真相なのだが、当のふたりにはまだ理解できていない。
ともかく、画面をスクロールして全ての文面を読みきった。
( ´W`)「……ほう」
(;’e’)「……はぃい?」
川;゚ -゚)「……そんな、ことを」
(;’e’)「で、出来るんですかぁ? 危険すぎないっすか!?」
セントジョーンズは慌ててクーに振り返って言った。
クーは目を瞬かせながら、
川;゚ -゚)「……そりゃ、あの事件以前から連絡はとっていたし、
無論のこと私のパソコンにはまだ残されているが……
だからといって、出来るかと言われたら……それは……」
465
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 02:27:34 ID:SARND0eo0
三人に静寂が訪れた。だが、
川 ゚ ー゚)「それは――――面白い。やってやろうじゃないか。
気に入ったよ、ドクオ・ウツタール。その徹底的に
喧嘩を売るって姿勢、まるで私とそっくりだな」
(;’e’)「クーさぁん! 当初の予定でもいいんじゃないっすかぁ!?」
川 ゚ -゚)「いや、此方の方が揺さぶりの面でも上等だ。画像自体にも
よるが、決まれば一気にハンター村を壊滅させられよう」
( ´W`)「しっかしギャンブルですなぁこの作戦」
(;’e’)「そうっすよ! 知らぬ存ぜぬだったらどうすんすか!?」
川 ゚ -゚)「そんなことは有り得ない。私を舐めているのかい?
それに私はね、こういう危険な一手が大好きなんだよ、知ってるだろう?」
.
466
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 02:29:58 ID:SARND0eo0
―― クーがそう言って不敵な笑みを浮かべたときだった。
外から、爆発音がした。
川 ゚ -゚) 「「「!!!???」」」 (´W` )(’e’)
三人は慌てて背後を振り向き、目を大きく見開いた。
壁や扉ががたがたと震えて、異変を如実に知らせていた。
音が残響していく中、ひときわ怯えながら、
(;’e’)「う、う、う、うわぁ〜〜〜〜!!!」
(;´W`)「ぅひぃ〜〜〜!!!」
川;゚ -゚)「……!(爆発音!? しかも……相当近かったぞ)」
そうだった。目先の嬉しいニュースにとらわれ、連中につけ狙われる
危険性を考慮していなかった。唇を噛んでからクーは己を恥じた。
やがて、爆音の余韻がおさまってきた。すると外から騒いだ声が届いてきた。
ただの野次馬かシラヒーゲのお仲間さんが慌てふためいているのかと
思ったが、声の調子はいやにドスが聞いていて、殺気立っている。
「……なんだてめぇらは!」
「…触るんじゃあねえ……!」
明らかに堅気ではない人間の声色と台詞だった。
ここまでくればセントジョーンズですら何が起きたか察せられる。
ハンター達だ。
.
467
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 02:34:23 ID:SARND0eo0
腰を抜かした男達を置いて、クーはそろりそろりと扉へと向かい、
騒ぎの内容に耳を澄ませてみた。すると、どうやらハンター達以外も
混じっているらしく、さらにハンターはなにやら抵抗をしているふうだった。
川;゚ -゚)「………」
抵抗した怒声に混じって、やけに妙な声色の調子も耳に届いてくる。
オカマというか、ゲイバーでよく耳にするような口調であった。
なんだか気の抜けてくるような語りもちらほら聞こえてくる。
更にいえば、おかまらしき人物は複数であるらしい。
――くそったれが! 触んじゃねえ気色悪いッ!! てめぇら
いったい何なんだよ!? 俺らを誰だか分かってんのか! ああ!?
……ええ、とうぜん承知ですとも、ええ、そうよ、ハンター村の
ハンターさんなんでしょう? お話は伺ってよ、あらァそんな顔
しないでったら、ねッ ねッ……………
川 ゚ -゚)「………」
川;゚ -゚)「開けて、みるか」
さしあたっての危機は無さそうだし、クーはドアノブを回して
そうっと外の様子を伺おうとしたが、さっそく火薬の臭いが鼻についた。
顔を顰めたくなるところで、砂埃が扉ごとクーを叩きつけてくる。
それでも目を凝らしてみるが、煙が至るところに立ち込めてい、状況の
完全な把握は不可能であった。一応、会話はより鮮明に聞き取れるように
なったものの、内容は相変わらず罵詈雑言とカン高いゲイトークに一貫している。
468
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 02:38:09 ID:SARND0eo0
風がやみ、視界も開けた頃になって、ようやくクーは周囲の人間の
姿を把握することが出来た。出来立てのクレーターを挟んださきに、
ハンターらしきならず者達が数名と、見たこともない屈強なゲイ達、
それに先程みかけたシラヒーゲの仲間達であった。もっとも、その
シラヒーゲのギーク友達は全員が同じように腰を抜かしてい、専ら
ゲイたちがハンター連中を縛り上げている。彼らの手には縄とナイフが
あり、前もって準備しておいたことが予測された。とはいえ、
クーには未だに、ことの全容が掴めないのだが。
川 ゚ -゚)「……おや?」
視界の端で何かが動いたので、とっさに
目を向けてみると、一人の老人が此方を眺めていた。
( ,'3 )
そのうち彼はビル陰に隠れ、それきり姿を現すことはなかった。
おおかた爆発音を聞きつけた野次馬だろうと、クーは気にも留めず、
騒動の中心人物達に注意を戻した。
呼吸を整えてから、一歩を踏み出した。意外にしっかりした
足取りで彼らに近づくと、ハンドバッグに手を突ッ込みつつ、
川 ゚ -゚)「何が起きたのか、説明してもらいたい」
「「「「「…………………」」」」」
ゲイもハンターも、ついでにギークもクーに注目を集めた。
たちまち縛り上げられたならず者共が騒ぎ始める。「殺す」だの
「犯してやる」だの聞くに耐えない下品な言葉を並び立てた。
469
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 02:41:21 ID:SARND0eo0
.
川 ゚ -゚)「(ああ煩い。貴様らの母体を今に壊滅させてやる)」
「あーらア、あなたがクー・スナオリャじゃないかしら。
ドクオちゃんの言ってたライターの使いって、あなたのことでしたの?」
ふいに声をかけてきたのは、黄色いセーターを着込んだ細いゲイボーイだった。
とはいえきちんと屈強なハンターを地面に押さえ付けているだけあって、
筋力はそれなりにあるらしいが、ともあれ彼は続けて、
「ええ、ええ、返答はいらなくってよ。私たち知ってますもの。
ドクオちゃんにあなた達を遠くから守りなさいって頼まれたのよ?」
川 ゚ -゚)「ドクオ・ウツタールが……」
クーは混乱したままだったが、とりあえず彼らゲイ・ボーイズがクー達の
命を守ってくれたのは確からしい。クーは警戒心を解いて
かれら正義のヒーローを眺めた。声を掛けてきた細面のハンサムから、
筋肉の塊のようなこわもて、化粧のけばけばしい中年男性と妙なくらいに
ラインナップが充実しているが、あとから聞いてみると、彼らは
寂れたゲイ・バーの売り子だという。おキミ――れいの黄色いセーターの
彼は、お侠な鼻声で「はじめましてね」と挨拶をしつつ、
「とりあえず、こいつらをとっ捕まえるのを手伝ってくれないかしら」
続けて、化粧のけばけばしいハルちゃんという名の筋肉漢が、
「あたしたちだけじゃ抑えるのに手一杯。ぐるぐる巻きにして
抵抗できないようにしなくっちゃ。いじめてやるったら」
それを機にハンターどもの怒声がより一層激しくなったが、
クーはただ「わかった」と了承し、倉庫内で未だ怯えているであろう
セントジョーンズとシラヒーゲを呼び寄せた。メンバーが集まってから、
話のすべてを聞くつもりでもあった。
470
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 02:45:02 ID:SARND0eo0
ともあれ、クーは必死にセントジョーンズとシラヒーゲ、それと
シラヒーゲの仲間を呼び寄せて確保の手伝いをさせると、
まるでインタビューをするかのようにゲイたちに話を聞き始めた。
そうしてわかった情報を並べ立てると、
―― ええ、そうなのよ。私たちはドクちゃんに頼まれて
一週間だけ見回りしてたのよ。目的はもちろん彼らの保護よ。
あたしたち、こーんな儚げでもそこらの男より強いったら。
―― そうよぉ。私たちはすぐに気がついたの。あ、この子ったら
悪い虫につかれてるんだわって。だからあなた達を尾行する
ハンターたちを尾行してたのよぉ。こいつらってば、ほんとアホね。
―― あーラ、ママもそう思うの? いくら捕まえられそうになったから
って持ってた手榴弾投げるだなんて、馬鹿の極みよねえ。
ええ、ええ、分かってますとも、危険な仕事ってのは。けれどね、
あのドクちゃんに頼まれたらウンとしか言えないわぁ。だってそうでしょ、
ドクちゃんたちは私たちのダンスや声色を褒めてくださるんですもの。
川 ゚ -゚)「把握した」
つまりドクオは、セントジョーンズやシラヒーゲには知らせずに
彼らの身の安全などを保障しようとしたらしい。それがまさに的中し、
弟者の放った刺客を見事にとっ捕まえられたという。たやすい話だった。
彼らは……ハンター連中は気がつかなかったのだ。
陰から身じろぎせずに観察している連中、ゲイの方々を。
.
471
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 02:47:06 ID:SARND0eo0
(;’e’)
(;´W`)
(;’e’)「ドクオさん……」
「――あとね、もう一つ頼まれたことがあって……」
と、ハルちゃんという筋肉が、縛ったハンターの隣に屈んで、
彼からクールフォン(携帯電話)を取り出そうとした。……そのときである。
そのハンター、ファッカーを捕らえていた縄は縛りが緩かったのであろう。
彼ががむしゃらに暴れだすと、するすると締め付けが弱まっていった。
それに気がついたファッカーは立ち上がって、抑えようとした
セントジョーンズを、その鼻をぶん殴った。
(;’e’)「ぐぇっ!?」
川;゚ -゚)「しまっ……」
後ろから抑えかかろうとするハルちゃんにもエルボーを食らわせ、
彼は颯爽と逃げ出した。慌ててゲイ連中とクーが追いかけるが、
死に物狂いのファッカーの脚を越すことはできなかった。
唯一、余力の残ったクーだけが路地裏に逃げ込んだファッカーの
足取りをおった。とはいえ、走りながらクーは不安を感じていた。
女性である自分に出来ることはあるのだろうか。
川;゚ -゚)「はぁっ……はぁ……」
「くそったれが!」と、先をゆくファッカーの舌打ち。
.
472
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 02:50:19 ID:SARND0eo0
ファッカーは再び角を曲がった。しかし、その際に追跡者を
視認していた。自身を追っているのはクー・スナオリャただひとり。
それをファッカーは知ってしまった。
クーの心中に恐怖が芽生える。逃げ込んだその角を曲がれば、
ファッカーが襲いかかってくるのではないか、と。
川;゚ -゚)
しかし、だからといって止めるわけにもいかない。
ここで取り逃せば、弟者にここでの一部始終を知られてしまえば、
最悪の展開が訪れることになるのだ。クーは息を弾ませながらも
意を決した。背後には仲間はもう居ない。全員振り切られてしまったようだ。
やるしかない。何がなんでも、ファッカーに"連絡"をさせてはいけない。
ぜったいに譲歩できないラインだった。そうして、
川;゚ -゚)「………!」
角を、まがった。
川 ゚ -゚)「!?」
そこで待っていたのは、信じられない光景だった。
ファッカーが、物も言わずに倒れ込んでいる。
.
473
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 02:55:02 ID:SARND0eo0
川 ゚ -゚)「(体力切れか?! いや、外傷のようだ……)」
咄嗟に後ずさって、その狭い路地裏を目で確かめる。
狭く不衛生な小道で、レンガ造りの建物に挟まれた典型的な路地裏だ。
そのちょうど道の中央で、ファッカーが俯せになっている。
彼のそばには彼が吐血したらしい痕が残っていた。そうして
奥に目をやってみると、不思議なことに老人が佇んでいた。
( ,'3 )
川 ゚ -゚)「………!?」
川;゚ -゚)「あなたは――いや、あなたが――」
しかし、質問を投げかけたときになって、
ビル風が吹き込んできた。砂埃が舞う。慌てて目を覆い、
それから視界を開けてみると、不思議なその老人はもう消えていた。
あとに残されたのは、呆然としたクーと動かないファッカーのみであった。
ファッカーを叩きのめしたのはその老人だろうか? しかし幾ら疑問を
抱いても、それが導かれる状況ではなかったし、何よりもまず
やるべきことがあった。クーはそうっとファッカーに近寄って
状態を確かめてみる。死んだように見えたが、脈はきちんと動いている。
ほっと息をついてから、その気絶したファッカーのポケットをあさった。
そうしてハンター御用達のクールフォンが手に入った頃になって、
仲間がどたどたと駆けつけてきた。全員で来なかったが、
それは残りのハンターを監視するためであろう。
474
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 02:58:55 ID:SARND0eo0
(;’e’)「だ、大丈夫ですかぁ!?」
鼻血を手で抑えながらセントジョーンズがまず言った。
クーは「ああ」と頷く。そうして、手にしたクールフォンを
振ってみせると、彼らはわぁっと喜んでみせた。
しかし次に気絶したファッカーを目にし、
(;´W`)「クーさんがやったのですか!?」
川 ゚ -゚)「あ、いや……それが……」
(;’e’)「どひえぇ〜〜!」
川 ゚ -゚)「(ああ、もう面倒だ) そうだよ、とにかく手に入ったんだ」
認めると、男達の顔からさっと血の気がひいたが、おキミちゃんだけは
私をみれば女が強いってわかるじゃなアい、なんて笑いながら近づいて、
「ほおんとありがとね、あなたが居なかったら……いいえ、
元々あなたありきの作戦ですもの、そんなこといってもしようがないわねえ。
でも、こっからは私の領域ですの、その電話を貸してくださらない?」
と、ばかばかしいくらいの丁寧な口調で言われたので、クーは
クールフォンを彼に手渡すと、おキミちゃんはさっそく発信履歴を
覗いてファッカーの上司たる「オリヴァー・ジャーブロ」の名と番号とを確認した。
475
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 03:00:29 ID:SARND0eo0
川 ゚ -゚)「? なにをするつもりなんだ?」
「まァ、見ててらっしゃいよ」
どこまでも外れた調子でおキミちゃんは返してくる。クーが
しかめっ面をすると、彼の同僚たるゲイ達がひそひそと、
「彼ったらアクロバティックも声色も玄人はだしなのよ。
だから……わかるでしょ? 私たちィ静かにしなくっちゃ」
川 ゚ -゚)「……声色? まさか……!」
そのまさかであった。おキミちゃんは喉を一通り撫でさすっては
声色を確かめると、躊躇なく弟者の番号へリダイレクトした。
セントジョーンズ含め、皆が皆、しぃんと静まり返って
おキミちゃんの演技を見守っていた。数回のコールのうちに
弟者が電話に出たようで、訝しがられないうちに矢継ぎ早に、
「ああ、弟者さん! ファッカーです。早速ですが
クー・スナオリャとセントジョーンズ・ワートを仕留めました」
電話口から、弟者が「おお、そうか。よくやった」と返ってくるが、
「ただし手榴弾を使ったので死体の損傷が激しくて、どうにも……。
……え、ああ……報告書。すみません、了解です。はい、はい……
了解しました、野次馬どもは私たちが、はい、了解です、それでは……」
.
476
:
名も無きAAのようです
:2012/10/13(土) 03:01:54 ID:LuypbkqA0
なんと…
477
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 03:04:54 ID:SARND0eo0
声色使いに電話で真似をされればひとたまりもない。
ましてや此処は芸達者な人間のひしめくサンフラワである。
弟者はそこを失念していたらしく、
勘付く様子もなく、忙しいと言葉を残しただけで切ってしまった。
しぃん。ふたたび一同に静寂が訪れる。そこにクーが口火を切って、
川 ゚ -゚)「だ、だましきったのか?」
「ええ、でもその場凌ぎかしらねェ。明日にはバレてしまうわ」
(’e’)「明日ですか?! つーか、電話口で騙してどうすんですか!?」
「それも要領を得ないのよねぇ。ドクちゃんは"闇を引き摺りだす"
とかなんとか格好いいこと言ってたけど、ねぇ」
川 ゚ -゚)「カメラが無力化したと思わせるためにか? 確かに
その方がスクープショットが取れる可能性は上がるだろうが……」
(;’e’)「つまりそれってドクオさんが危険ってことじゃないですかぁ!?」
川 ゚ -゚)「そういうことになるな」
引っ捕えたハンター達に催眠スプレーをかけながら、そっけなく言い放った。
川 ゚ -゚)「ドクオ・ウツタールはこうなることを予想していたらしいな。
となると、私達も第二の手紙を従わなければ、全てを台無しにしてしまうだろう。
――彼はいま、死に物狂いでハーモニーと刺し違えようとしている。
私はそれを全力で支援しなくてはならない。そうだね?」
.
478
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 03:06:56 ID:SARND0eo0
騒動の片付けを済ませ、ゲイバアの方々と別れてから、
クーとセントジョーンズは再びドクオの個人倉庫に足を踏み入れた。
ふたたびコンピュータを起動し、第二の手紙が撮影された画像ファイル
をクリックする。その文章を眺めながら、
川 ゚ -゚)「……私の腕の見せ所だな。ところで彼は私のこんな性格
を見込んだ上で計画したのかな? たしかにジョルジュ
とのインタビューは、このプランと似た所があるんだが」
(’e’)「どうなんでしょうねぇ〜。ところで、本当に大丈夫なんですか?」
川 ゚ -゚)「常識で考えれば。いくら仲違いしたからって連絡先は
私もハンターも消しはしないさ。学生カップルじゃァないんだから。
私が送れば、あちらも相応の対応をしてくるのは違いない」
そういって、ふたたび第二の手紙を読み始めた。
479
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 03:09:29 ID:SARND0eo0
” 親愛なるクー・スナオリャへ。これらの画像、及びこれから
送られる全ての画像は決して、 記 事 に し な い で 頂 き た い。
なぜならこれらはハーモニーを潰すための武器に過ぎず、決して
ハンター組合全体の悪事を暴露するものではないからだ。
手短に目的を伝えよう。私はこれからも、カメラを利用して
徹底的にスクープショット、ハーモニーの抱える醜聞を
このコンピュータに転送し続ける。あなたはそれらを武器に
ハンター組合、いや、ジョルジュ・ナガオカを直接的に 脅 迫 し て も ら い た い。
あなたは有名なライターであり、ジョルジュとはホテル・サイドニアで
一悶着を起こしている。つまりあなたとジョルジュ双方には連絡先が
まだ残されているということ。なるべくハーモニーから手を切るよう、
暴露されたくなければハーモニーを解放しろという調子で誘導してもらいたい。
なるべく迅速に。あなたがこれを確認するのはいつなのか
承知できないが、時間が経てば経つほど確かにスキャンダルを
送られる可能性は高くなるだろう。だがその分、私の生存可能性も
低くなっていくのだ。そこの見極めをしっかりしてほしい。何故なら
私も自分の命は惜しいからね。
そしてセントジョーンズ。クーさんとジョルジュの交渉が
上手くいったら至急、ダディに連絡してミニ・マスドライバーを
打ち上げるように手配してくれ。直接の火力が無ければ、俺は
すぐに殺されてしまうだろうから。頼んだぞ、セントジョーンズ。
あなたとセントジョーンズの無事を願って。"
ドクオ・ウツタール
.
480
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 03:15:18 ID:SARND0eo0
.
ドクオの作戦は一点を揺さぶることに終始していた。
すなわち、標的たるハーモニーの上層部――組合本部や、
マーポールをとにかくけしかけて、ハーモニーの力を弱めることにあった。
ドクオはハーモニーに単身で乗り込む前に、ありとあらゆる状況と
その対策を練ろうとしたが、やはり確実なプランニングは出来なかったし、
確固たるものにする時間もなかった。クー・スナオリャとジョルジュの
インタビューの一件を聞いて「これは使えるぞ」と今回の作戦の
第一希望としたわけだが、まさかここまで
上手く行くとは当人も思わなかったに違いない。
ただ、そのホテル・サイドニアのインタビューの一件を
考えれば考えるほど、その実用性が見えてくるのだ。
まず第一に、その一部始終を知るものは限られてくるということ。
そしてクーの持つ、宣伝力や求心力を余すことなく利用できること。
ジョルジュの激怒し易くも狡猾な性格さえ、作戦の視野に入れられること。
無論のこと、弟者はその一件を知る由もない。
クー・スナオリャに勘づき、仲間になることを予想は出来ても、
まさか自身の直接の上司たるジョルジュを揺さぶることなど
想像もできないに違いなかった。ただ、彼女の持つ知名度を
利用してプレスなりを焚きつけるくらいと、弟者はたかをくくっていた。
本部に「切られた」ことは予想できても、
その理由を推察することは不可能であった。
.
481
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 03:19:09 ID:SARND0eo0
(’e’)「ドクオさぁん……」
必死に脅しの文面を考えているクーを
横目に、セントジョーンズはぼんやりと呟いた。
手榴弾を投げ込まれそうになり、あやうく命を落としかける
ところだったが、それによってセントジョーンズは、
ドクオの陥っている状況というものを肌で感じることが出来た。
どこか惚けていた自身の尻に、火がついたような気がした。
何が何でも、クーには成功してもらいたい。……
そうしてその夜、クーとドクオのもとに信じられないような
スクープが舞い込んできた。いかにも、それはハインリッヒの
死体を無慈悲に操作するキャリアの姿そのものであった。
クーは素早くそれをジョルジュに送りつけ、強気の脅しと
弱者の演技を駆使し、とにかく組合本部を揺さぶった。
組合本部も、キャリアの存在を公にされることだけは
避けたかったのであろう。そっけない返事が夜中に返ってきた。
「組合はハーモニーとの関係を断つ」という結論が、そこには書かれていた。
・・ ・・
・・ ・・・
・・ ・・・・
・・ ・・・・・
482
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 03:20:47 ID:SARND0eo0
―― そして本日に戻り、 渦中のハーモニー。
指定された場所は、アジトの傍の牧場だった。
今は牛も馬も舎で食事を取り、まさにミニ・マスドライバーの
着陸地点としてはうってつけであった。
ドクオはハーモニーに乗り込んでから、ノーナンバーズの
存在を知ったので、アジトから近いというのは全くの幸運だった。
阿部はそれを聞いて思った。運命は、俺達に味方していると。
(;`・ω・´)「き、来た……本当に来た!」
N| "゚'` {"゚`lリ「……ああ、ああ!」
阿部とシャキンは牧場のど真ん中で、空から降りてくる
ミニ・マスドライバーの卵型カプセルを見上げていた。
撃墜することもなく、カプセルは横回転をしながら緩やかに落下した。
風が、青々とした草を薙ぎ立ててはどっと吹き抜けていく。
音も立てずに着陸すると、機械的な音を立ててそのまま静止した。
阿部はとっさに周りを後ろを見、ハンター共が来ていないか確認する。
どうやらまだ来ていないらしく、人っ子ひとりいなかったが、
弟者にはミニ・マスドライバーのことは知られたことだろう、
やがて拳銃を手にしたハンターどもが列挙するに違いない。
.
483
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 03:22:39 ID:SARND0eo0
N| "゚'` {"゚`lリ「急ごう」
シャキンを急かすと、飛びつくようにカプセルに近づいた。
ボタンを押してロックを解除すると、中から様々な物資が顔をのぞかせた。
サンドクラウン、ジャンピンロープのような発掘用品に
ドクタービスケット、タウリンソイヴィタといった食料、
発炎筒や拡声器などの小道具類が敷き詰められ、
そして、サブマシンガンや麻酔銃、小火器たち。
(;`・ω・´)「やべぇよやべぇよ……」
N| "゚'` {"゚`lリ「………!」
ふたりは鞄にそれらの物資類を詰め込みつつ、カービン銃の
重さや手榴弾の感触を確かめ、ポケットにしまいこんだ。
阿部はぞくぞくとチリ毛立つのを感じた。武器の持つ
怪しい光は、彼の瞳にうつっては吸い込まれていく。
「「なにをしているんだテメェらァアッ!?」」
N| "゚'` {"゚`lリ「「!?」」(`・ω・´;)
そのとき背後からドスのきいた声が届いた。
声の主の名前は分からなくとも、それが複数のハンターなのは承知だった。
といっても、弟者から直接指示を受けた人間ではないらしかった。
緊張よりも無知ゆえの苛立ちが声に出ていた。
阿部とシャキンは、ゆっくり、ゆっくりと振り返った。
484
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 03:24:19 ID:SARND0eo0
ふたりとも、手に麻酔マシンガンを携えながら。
「「!?」」
三人のハンターだった。明らかに強ばった表情をした。
ショックで未だ動けないその悪党どもに、阿部とシャキンは遠慮ない様子で、
N|# "゚'` {"゚`lリ「「喰らえぇえええッ!!!」」(`・ω・´#)
麻酔弾を乱射した。
だだだだだだ、と小気味よい連打音が牧場に響いた。
白煙が立ち上る。
その中を阿部とシャキンは鞄を肩に、銃を片手に疾走した。
倒れた三人のハンターなど見向きもせずに。……
485
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 03:26:16 ID:SARND0eo0
.
.
486
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 03:27:24 ID:SARND0eo0
.
「ドクオッ!!!」
(メ'A`)「!?」
独房のなか、ドクオは顔を上げた。そのときに、機関銃の
乱射音も同時に聞こえ、シェリフ駐在所は破壊にみちた。
鉄柵の向こうの騒動も混じって、混沌は強まった。
看守が物も言わずに倒れ、机やそれに乗っていた小道具も
地面に落ち、花瓶も水を立てながら壊れた。
煙がいっそうに舞って、しかしドクオの視野は狭くなった。
だが、
N| "゚'` {"゚`lリ「大丈夫か!? 生きているなっ!?」
(メ'A`)「……阿部さん!」
武器を片手に阿部が襲来してきたようだった。
阿部は鍵を看守からまさぐると、すばやく牢屋を解除した。
487
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 03:29:42 ID:SARND0eo0
ふらふらと立ち上がったドクオの肩を素早く
抱きかかえると、阿部は駐在所外を見やりながら、
N| "゚'` {"゚`lリ「お前のプランは成功したようだな」
(メ'A`)
N| "゚'` {"゚`lリ「シャキンが暴れてるお陰でここらが手薄でな。
おかげで簡単にお前を救出できた」
(メ'A`)「………」
そうして、ふたりで広場の方に目を向けた。
それは、まさに阿鼻叫喚のような光景だった。
488
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 03:31:32 ID:SARND0eo0
.
遠くで絶え間なく聞こえる爆発音――手榴弾が、ハーモニー全体で
投げ使われている。数え切れないほどの発炎筒は煙を立て、
ハーモニーの空を覆い尽くそうとしている。時折、機関銃の音も。
広場はごった返していた。シャキンやつーに物資を手渡された
原住民たちが、それによってハンターに立ち向かったり、
あるいは村の外へ出ようと走り回っている。彼らの走る音が、
地響きのように聞こえてくる。反対にハンターたちは右往左往としている。
銃によって抵抗しようにも、暴徒と化した原住民を抑えることなどできない。
棍棒をもって襲いかかる住民を銃で殺そうとしたその隙に、
後ろから別の原住民が殴りかかり、手も出ないままそのハンターは
地面にキスするという有様で、さらに走り去る連中に足蹴にされていた。
(メ'A`)
ドクオは狂熱に充ちたハーモニーの広場を、じぃっと見続けていた。
誰も駐在所に目を向けようともせず、ただただ出口へと駆けていく。
それらをどうにかして止めようとするハンター達は、
ただ、ただ、滑稽だった。
.
489
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 03:32:44 ID:SARND0eo0
叫び声と煙が混じり、さらに手榴弾の爆発音が騒動を後押しする。
前日からつーとエノーラによって、心の準備をするようにと
原住民たちに伝えていたらしい。皆が皆、混乱をしつつも
一つの道を進んでいこうとする。シャキンは特に銃で暴れまわり、
バイフックを襲撃すると更にその二階からハンターを狙撃していた。
(メ'A`)
流れ弾が駐在所に入り込んできた。だが、それさえドクオには
どうでもよかった。阿部から手渡されたエナジードリンクを一気に
飲み干すと、はぁはぁと荒い息遣いになって、
(メ;A;)「成功、したんだ……」
と、ぽつりと呟いた。涙を拭って、表情を戻そうとする。
そんな様子を見ながら阿部は、鞄から拡声器を取り出した。……
.
490
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 03:35:32 ID:SARND0eo0
―― 裁判館 2F
たちまち混乱に落とし込まれたハーモニーを、裁判館の
二階の窓から弟者は眺め続けていたが、部下が慌ただしく扉を開けると、
(´<_`;)「全ハンターに騒動の鎮圧を命令しろッ!
加えて貯蔵したキャリア共もオートで始動させるんだ!」
「しかし、キャリアは……」
まごつく部下の声。遠くから聞こえる手榴弾の爆発音に呼応するように、
(´<_` #)「黙って言う通りにしろ!! 撃ち殺すぞ!」
無理に焚きつけて其奴を働かせる。それから弟者は再度、
本部に電話をしてみたが、やはりの不通だった。弟者は
悟り始めていた。我々は、いや、ハーモニーは本部に切り捨てられたのだと。
(´<_`;)「(理由はスキャンダルか……? しかし、どこの
メディアも醜聞を伝えていない。なにが、なにが……!)」
.
491
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 03:38:09 ID:SARND0eo0
.
( ´_ゝ`)
兄者はいつも通りに起立していた。弟者のデスクの横で
人形らしく、不動のままだった。その視線は窓のさきの
破壊活動に向けられていた。巻き上がる白煙。銃撃音、
罵声、怒声、地鳴りのような音。それを見続けていた。
眺め続けていた。
(´<_`;)「こうなれば、徹底的に……!」
( ´_ゝ`)
弟者は気がつかない。傍に立っている兄者の瞳のいろに。
表情こそ無変化のままだったが、瞳の様子だけは変化していた。
ときおり広場で放たれる爆炎の光が、兄者の瞳を怪しく彩った。
.
492
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 03:39:25 ID:SARND0eo0
そのとき、拡声器で拡張された
誰かの訴えが、ハーモニー中に響き渡った。
『俺たちは自分たちのために戦乱を起こしたんじゃない!』
『俺達は弱者の代表として、この腐敗した世界に小石を投じたんだ!』
( ´_ゝ`)
(´<_`;)「!?」
弟者は慌てて外の様子をふたたび確認した。
兄者もやや遅れて、弟者の傍に立って広場を見下ろす。
ハーモニー中の騒乱はやや落ち着きを取り戻したように、
ホンの少しだけ静まった。その拡声器の主の次の言葉を
待つかのように、皆が皆、興奮をすこし抑えた。
493
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 03:41:25 ID:SARND0eo0
.
―― その声の主は、シェリフ駐在所の二階に居るらしかった。
『今ここで! 既存体制をブッ壊さなければ!
もう我々に希望は生まれないのだッ!!』
(´<_` #)「誰が、誰がナメた真似を……!」
遥か昔の自分らの訴えを引用し、反乱に花を添えている。
弟者は血眼になって、その声の主を探し出そうとした。
如何にもそれは阿部だったが、流石兄弟は彼の声など覚えていない。
発声源は概ね特定できても、その正体は判らずじまいだった。
しかし、その次に拡声器を持った者の声だけは、聞きなれたものだった。
『落ち着いて行動をしてほしい! 原住民の方々よ、
どうか怒りに身を任さずッ 村の外に避難してほしい!!』
( ´_ゝ`)
(´<_`;)「この声は……」
(´<_` #)「ドクオ・ウツタール……!」
.
494
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 03:44:07 ID:SARND0eo0
流石兄弟の視界に、ドクオが現れた。駐在所の二階のテラスから、
身を乗り出して拡声器片手に、避難勧告を続けていた。
その様子を、弟者は歯軋りしながら眺めている。
(メ'A`)『 〜〜〜ッ! 〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!』
近場のハンターがドクオを撃とうとしても、それをまた
別の原住民が阻害する始末で、弟者には屈辱の展開の連続だった。
(´<_`;)「馬鹿にしやがって……!」
( ´_ゝ`)
そうして、一通りの説明を終えたドクオは、今度は裁判館に向き合った。
拡声器
に口を当て、居るであろう流石兄弟へ向けて、
(メ'A`)『よう弟者。お前はどうやら、人を舐めすぎたみたいだな』
(´<_`;)「………」
(メ'A`)『気分はどうだ、この状況でも俺達を愚か者呼ばわりできるかい?』
(´<_`;)「……貴様ッ……!」
495
:
ラスト投下
◆tOPTGOuTpU
:2012/10/13(土) 03:46:00 ID:SARND0eo0
.
(メ'A`)『―― 覚 悟 し ろ よ 、 流 石 兄 弟 。
て め ぇ ら の 作 り 上 げ た こ の 偽 り の ハ ー モ ニ ー 、
ぶ っ 壊 し て や る ぜ 。 た っ た 今 か ら ッ ! !』
(´<_` #)「………ッ」
( ´_ゝ`)
―― なり止まぬ爆発音、白煙に覆われた村。
武器を手に入れた暴徒は、ハンター達を襲い続ける。……
.
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