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ホテル・サイドニアのようです
1
:
名も無きAAのようです
:2011/09/12(月) 23:43:56 ID:v7OA74xM0
お邪魔しまーす
133
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/20(月) 22:02:27 ID:HWEiDKZc0
.
図書館によって真実を得た。
勤労によって反抗心を得た。
あとはただ、人生設計をするだけだ。
.
134
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/20(月) 22:03:47 ID:HWEiDKZc0
.
( ´_ゝ`)『弟者! 用意したぞマフィア衣装一式wwwww
これで俺たちも今から一流の悪になれるぞ!』
(´<_`;)『せっかくの軍資金をそんなコスプレに……』
( ´_ゝ`)『何事も形からだろーが!』
(´<_` )『やれやれ。ほれ、俺も用意したぞサムコルトだ』
そういって弟者は兄者に黒光りする拳銃を手渡した。
形から入る兄者は、その凶器のデザインにうっとりする。
( ´_ゝ`)『まさに悪……だな。もう戻れねーぜ俺たち』
(´<_` )『もとより進む以外考えてないさ。そうだろ? 兄者』
135
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/20(月) 22:05:20 ID:HWEiDKZc0
( ´_ゝ`)『しゃーねぇなぁあって感じだは。冗談だけど』
(´<_` )『おいおい、もっとやる気を持とうぜ!
この狂った世界を清く正しくだな……』
( ´_ゝ`)『俺にはそんな高尚な信念はない! だがな、ま、
流れ星のように燃え尽きるまでやってやるぜ』
(´<_` )『ありがとう兄者。だが臭いぞ』
( ´_ゝ`)『うるせぇ。ありがとうかあ、もしこの道が正しければ
生き甲斐を与えてくれた弟者に今度は俺が言わなくちゃな』
(´<_` )『正しい道のはずだ。俺たち兄弟の行く先は全て』
( ´_ゝ`)『うむ……』
( ´_ゝ`)b『流石だな。俺ら!』d(´<_` )
136
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/20(月) 22:07:34 ID:HWEiDKZc0
(´<_` )『さあ、初仕事だ。さっそくだがマフィア襲撃するぞ』
( ´_ゝ`)『えーっと……ブレイディ・チームか。何だいこいつらは』
(´<_` )『ガキ相手にヤク売るクズ連中さ。裁きに行く』
そうして兄弟はスーツを羽織り、
兄者はコルト銃を、弟者はタブレット端末を片手に
白昼堂々と標的のチームに制裁を加えにいった。
****
( ´_ゝ`)『おらおらおらおるぁ!! 巨大権力のくせに逆らうんじゃねえぞ』
そして、頭皮から血が溢れ出ている黒人マフィア構成員の頬に銃口を押し付ける。
兄者は髪の毛をひっぺがす勢いでそいつの顔を持ち上げながらそう言い放った。
137
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/20(月) 22:12:19 ID:HWEiDKZc0
飛び散ったガラス破片、引っ繰り返しになったデスク、
だらしなく開かれたその引き出しと、踏まれに踏まれた書類の束。
血まみれのまま壁の四隅に積まれた構成員。
壁には真新しい銃痕が点々と作られ、それらから焦げた臭いがした。
( ´_ゝ`)『ヒィヤッハァアア!!!』
ブレイディ・チームのボスであるビルは、まったく呆然としていた。
とつじょ乱入してきた二人組のチンピラから襲撃を食らい、反撃しようと
四苦八苦している頃にはもう、血の臭いと硝煙とがフロアに漂ったのだ。
ビルは混乱していた。何故かコメカミに銃口を突きつけられている。
そうしてパソコンを差し出され、脅している方のチンピラが悠然と、
(´<_` )『さあボス。被害がデカくならないうちに
早いとこ、コカのルートを教えてくれませんかね?』
.
138
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/20(月) 22:13:57 ID:HWEiDKZc0
( ´_ゝ`)『喚くんじゃねえぞ、オラッ!』
(´<_` )『ほら、ボス。データベース開いてくださいよ』
ビルは催促をする方のチンピラをガンづけて、
『誰なんだよお前らは! どこの組の連中だ!?』
(´<_` )『どこの組か、だって?』
『アイアランドの鉄砲玉か? それともル・ペンの……』
弟者がビルの頬にツバを吐きかけた。
(´<_` )『見当はずれなことばかり宣いやがって……
俺たちは何者でもねえよ』
139
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/20(月) 22:17:27 ID:HWEiDKZc0
(´<_` )『家族もいねえ、コネもねえ、金もねえ。
お前らと違って守る物がねえ種類の人間よ』
『なァんだ……結局金が欲しいだけのハイエナか!』
ビルが鼻でせせらった。
『狂犬どもが、俺たちを……』
(´<_` )『もういい』
「あばよ」と弟者は告げ、引き金をひいた。鈍い衝撃が拳銃越しに伝わった
かと思うと、目の前のビルの頭がトマトのように弾けた。机にも壁にも
パソコンにも弟者のスーツにも暖かい血が散りじりになっていった。
( ´_ゝ`)『おうおう弟者。やっちまったら駄目なんじゃないのか?』
息のある構成員を縄で縛り付けながら、兄者が笑ってそういった。
(´<_` )『壊滅できただけでも及第点さ』
パソコンを弄りながら弟者は事も無げに呟いた。
140
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/20(月) 22:20:18 ID:HWEiDKZc0
.
( ´_ゝ`)『そうなのか?』
(´<_` )『ああ。近辺のチームと情勢も判ったしな。
とりあえずこいつらの財布掻払って、出ていこうぜ』
去り際に弟者はビルの血で「FUCK the Brady Bill!」と壁に記した。
息絶えたビルの頭蓋を掴んで、その死に顔を写真に収め、
今度は血文字をバックにシャッターを押す。
(;´_ゝ`)『おいおい何やってんだ、どんな趣味だよお前』
(´<_` )『これをあるチーム名で投稿してやるのさ。面白いことになるぜ。
おっと。その三下共も殺しとかなきゃな」
・・ ・・
・・ ・・・
・・ ・・・・
141
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/20(月) 22:24:57 ID:HWEiDKZc0
無鉄砲な襲撃は功を奏することになった。抗争の激化するシアトルに
ぽんと投げ込まれたブレイディ・チームの襲撃情報は、更なる
泥沼をマフィアに陥れるものであった。火薬庫でキャンプファイヤーを
開始したような有様で、爆発と混乱とがシアトルを駆け抜けていった。
誰も流石兄弟のことなど知らなかった。彼ら兄弟が波に乗り出して
いくのは、シアトルを紛争地帯のように仕立て上げてからである。
(´<_` )『狩りの時間だぜ、兄者』
( ´_ゝ`)『おうおう、腕がなるぜ』
始めは間隙を縫うように殺し合いを勝ち上がっていった。
そして巨大チームへの煽り文句を残し、ふたたび影に潜んでは隙を伺う。
兄者は元々腕っ節が強かった上に、こと銃に関しては天賦の才を持っていた。
昼にはスナイパーとして教科書ビルからマフィアの後頭部を打ち抜き、
夜になれば少人数のマフィアと挑んでは拳を振るった。
142
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/20(月) 22:33:51 ID:HWEiDKZc0
弟者は専ら情報収集に奔走した。兄者が連れてきたぼろぼろの
チンピラを拷問して重要情報やトップのシモの情報を聞いたりが大半
だったが、汚職警官に擦り寄って情報を買うことも屡々だった。
暴力と情報とを操りだし、軌道に乗り始めた頃になって、
ようやく世間は流石兄弟という存在を知り始めた。
この時点では「悪魔兄弟」だの「ディアブロ兄弟」と呼称されている。
また、名が知れ渡り出した段階では、
阿部の言うように「イカれた兄弟」というのが市民の概ねの感想だった。
「イカれた兄弟」の転機は、左翼側のメディアのインタビューに応じたときである。
兄者は貧困社会の現状を苦々しげに語り、弟者は既存権力への反抗を訴えた。
( ´_ゝ`)『富民層の連中は火星移住に目が行って、何も知らんだろう。
いや、元々お前らは下の人間に目を向けなかったさ。
俺達はな! お前たちの食い残したライビタを青いポリバケツから
漁って、お前たちに供給する麻薬を死にもの狂いで運んで!
俺達兄弟は食いつないできたんだ!』
(´<_` )『俺たちは自分たちのために戦乱を起こしたんじゃない』
(´<_` )『俺達は弱者の代表として、この腐敗した世界に小石を投じたんだ』
.
143
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/20(月) 22:41:14 ID:HWEiDKZc0
(´<_` )『火星移住で既にセレブ共は続々と消えている。やがて
地球に残されるのは俺達のようなゴミばかりになる。
今ここで! 既存体制をブッ壊さなければ!
もう我々に希望は生まれないのだ!!』
わざわざメディアを通じて考えを訴えたのは、世論を味方につけたかった
のもあるが、何より政治家に自分たちの便利な道具ぶりを
アピールすることが第一だった。
始めは兄者はそれに反対した。
流れ弾のような、持たざる者の俺達兄弟だけでやることに意義があるのだと。
しかし弟者は、自分たちだけではやれることに限界があると反論した。
権力に擦り寄るのは確かに不本意だが、のちにそいつらも食い散らかしてしまえばいい、と。
弟者の目論見は正しかった。メディアに登場したその翌日には、
新興政党の大物政治家から使者と資本とを渡されたのである。
弟者は早速、その政治家の弱みを探りはじめた。
144
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/20(月) 22:47:48 ID:HWEiDKZc0
メディアに登場したことによって、流石兄弟のファンも登場した。
彼らの仲間になりたいと志願する者の存在だ。
兄弟は、その志願者の来歴をじっくりと観察し、敵対組織の者でない
と確信を得たら、すぐに仲間として歓迎することにした。
これも兄者は当初は反対していたが、参入者の熱意に触れると意見をころっと変えた。
( ´_ゝ`)『いやあ! 仲間ってのはいいなw』
( ・−・ )『シーンです!よろしくお願いします、兄者さん!』
彼は自分たちと同じく、貧民街の出の者だった。
( ´_ゝ`)『ああ! 俺達はファミリーだ! 仲間だ! 家族だ!』
(´<_` )『ああ。"流石ファミリー"さ』
.
145
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/20(月) 22:52:00 ID:HWEiDKZc0
――真夜中のシアトル。その路地。
川;` ゥ´)『や、やめてくんな! あたいにも貞操ってもんが……』
(゚皿゚メ)『イヒヒ……』
今まさに、口から涎を垂らした男が拳銃を片手に女に迫ろうとしている。
女はその男に財布を差し出して逃げようとしたが、
男にとって金銭など目当てではなかった。ただ己の欲を処理したいだけである。
女は気がついていないだろうが、男の左腕には注射痕が点々と作られている。
今宵も強烈なドラッグをガンギメて、さながらゾンビのように
徘徊しては理性抜きの行動に出ていたのだった。
(゚皿゚メ)『す、す、スケ……スケベしようやぁッ!』
川;` ゥ´)『な、なぁ頼むよ! こんな……イヤだよ』
月の照らす夜道のことだった。しかしその瞬間。
サイレンサーつきの銃声がアスファルトに響いた。
146
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/20(月) 22:53:55 ID:HWEiDKZc0
川;` ゥ´)『ピャ……ピャ?』
いきなりゾンビのような男が血を流して倒れた。起き上がる気配はない。
後頭部から流血するその生々しい様子が、街灯に照らされている。
男は背後から銃で打たれたのだと理解したのは、
近づいてくる二人組の男の会話が耳に入ってきてからだった。
(´<_` )『流石だな兄者。躊躇ってものがない』
( ´_ゝ`)『レイパーほど死に値すべき人間は居ないってことだ。
それより弟者、どうなんだい?』
二人の男が死体に近付いた。弟者と呼ばれた方は、こくんと頷いて、
「間違いない。ゴア組のティッパーだ」と静かに呟いた。
( ´_ゝ`)『そうか。よかったな弟者』
(´<_` )『うむ。徘徊しているのは本当だったらしい。
自分の持ち込んだヤクで隙を見せるとは、愚かな奴だ』
147
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/20(月) 22:57:34 ID:HWEiDKZc0
川;` ゥ´)『え、あ……あの』
女は状況をまるで把握出来ていなかった。
ただ、この兄弟はメディアを騒がせた「流石兄弟」とは判った。
(´<_` )『なんだ女。まだ居たのか?』
ちらりと横を見やると、弟者は感情のこもっていない声で、
(´<_` )『とっとと失せな。俺たちゃァ正義気取りで
あんたを助けたわけじゃねえんだよ』
( ´_ゝ`)『まあまあ弟者。こんな状況じゃ立ち竦むのも無理はない』
川;` ゥ´)『あ……あの……』
( ´_ゝ`)『なに?』
息を整えながら、女はゆっくりと声を出した。
川;` ゥ´)『もしかして……流石兄弟……なのかい?』
148
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/20(月) 23:00:11 ID:HWEiDKZc0
(´<_` )『だとしたらどうする? 通報でもするのか?』
口の端を歪めて笑うと、弟者は拳銃を取り出して女に突き付けた。
(´<_` )『余計な詮索をするな。なんならマフィアらしく
一市民の哀れな死骸を今ここで作ってやろうか?』
( ´_ゝ`)『流石だな弟者。脅しに躊躇がない』
しかし女の口からは意外な言葉が飛び出してきた。
川*` ゥ´)『よかったら……あたいを仲間に入れてくれないかい!?』
(´<_` )『……は?』
川*´ ゥ`)『あたいはね! この前のアンタたちの意見に感動したんだピャ!
あとね! あたいはね掃除洗濯家事全般できるよ! 頼むよ〜!』
(´<_` )『………』
( ´_ゝ`)『意外な展開だな、弟者よ』
149
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/20(月) 23:13:28 ID:HWEiDKZc0
( ´_ゝ`)『だが、そうなら俺が答えてやろう。
歓迎するぞ女!』
(´<_`; )『お、おい……』
川*´ ゥ`)『ピャアア! やったピャー!!』
(´<_`; )『安易に決めるな! 俺達には敵が多いんだぞ?』
( ´_ゝ`)『だってファミリーなら女房も必要だろ?』
川*´ ゥ`)『ラザニエが得意料理だッピャ!』
( ´_ゝ`)『俺の好物じゃないか! ますます気に入ったぞ』
川*´ ゥ`)『ヒール・サトーと申しますぅ……不束者ですけどよろしくですう』
150
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/20(月) 23:15:38 ID:HWEiDKZc0
こうしてヒールは流石ファミリーの女房役として仲間入りを果たした。
しかし、この入団には弟者は納得しきれず、帰り道の路地に兄者へ向かって、
(´<_` )『兄者。こういった仲間入りのさせ方はよくない。
会って五分もたってない、素性の知れない女などなあ』
川*´ ゥ`)『ハリウッドの下町出身ですピャ』
( ´_ゝ`)『だってよ兄者。いいじゃないか。俺は信頼できると思うぜ』
川*` ゥ´)『あたいもあたいを信頼してるよ! なんちてガハハ!』
(´<_`; )『……わかったよ』
(´<_` )『ただし、アジトに戻ったら素性は洗い浚い聞くからな?』
川*` ゥ´)『どんとこーい!』
( ´_ゝ`)『はっはっは! イキがいいなヒールは!』
151
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/20(月) 23:19:35 ID:HWEiDKZc0
川*` ゥ´)『アレンはジェントルマンだよねぇ』
さっそく本名で呼び捨ててくるヒールだが、兄者は気にする様子もなく、
( ´_ゝ`)『俺は女に優しくするって決めてんのよ』
川*` ゥ´)『なんで?』
(´<_` )『くだらん理由だったな』
( ´_ゝ`)『くだらなくねーよ! 女に優しくすれば、優しくすればなあ……!』
兄者の理想論が夜のシアトルの一角で開始された。
ヒールが同意をしたり茶々を入れたり、そして大笑いをする。
横で弟者は苦笑しながら兄者に突っ込みを入れて、話を的確に盛り上げた。……
・・ ・・
・・ ・・・
・・ ・・・・
152
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/20(月) 23:24:32 ID:HWEiDKZc0
流石ファミリーは日に日に拡大していった。
時と共に流石ファミリーの名は売れ、次第に権威さえ付随するようになった。
弟者は流石ファミリーの成長と保護とに力を入れ続けた。
バックの政党から信頼を確保しつつ、裏で支配する工作を練っていくし、
擦り寄ってくる弱小マフィアチームを選別しつつ傘下に取り込んだ。
一方、兄者は抗争の切り込み隊長として活躍し続けた。
兄者の銃の腕も飛躍的に鍛えられ、シアトルでは
右に出る者は居ないほどのガンマンに成長したのである。
そんな兄者を流石ファミリーの喧嘩組が支え続け、弟者のサポート
に下回り組が動き回る。ヒールはアジトで家事をしたり、
時にはガードマンとして活躍したりと、名実共に流石ファミリーの女房役となった。
激動の日々が続いた。
しかし、ある夜のこと。
兄者が浮かない顔をして弟者のオフィスをノックした。
153
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/20(月) 23:26:34 ID:HWEiDKZc0
( ´_ゝ`)『弟者……』
(´<_` )『なんだい兄者。悪いが今忙しいんだ』
オフィスのデスクで、パソコンで
作業をしながら弟者はぶっきらぼうに言い放った。
( ´_ゝ`)『……明日お前。マフィアの談合に出るんだって?』
(´<_` )『ああ』
( ´_ゝ`)『その談合にはシアトルの……俺達が今まで嫌悪してきた、
旧マフィアのドンもやってくるらしいな?』
(´<_` )『それがどうした』
弟者は立ち上がると、棚からいくつかの書類を手に取りそれを捲った。
( ´_ゝ`)『弟者、おかしくないか……それ?』
.
154
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/20(月) 23:37:49 ID:HWEiDKZc0
(´<_` )『なにが?』
ここでようやく弟者は兄者に目を向けた。
( ´_ゝ`)『俺達がこの道に進んだのは、そういう連中を倒すためだった
はずじゃないのか? それを談合で麻薬ルートの取引だなんて……』
兄者は苦々しげな表情をした。兄者の疑問はそれだけではない。
このオフィス――いや、流石ファミリーのアジトもそうだった。
安いアパートだったアジトは、いつしか都心の一頭地の豪邸に変わった。
その新アジトには応接室がいくつも作られ、観葉植物や剥製が彩っている。
何よりも兄者がおかしいと感じたのは、その応接室にやってくる人間たちだった。
その人間たちこそまさに、『貧民を虐げた、既存体制の老害たる存在』だったのだ。
(´<_` )『……ファミリーの拡大のためだ』
( ´_ゝ`)『俺達の目的はどうなったんだよ!?』
155
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/20(月) 23:40:56 ID:HWEiDKZc0
(´<_` )『………』
ヴィンテージのストライプスーツに着込んだ弟者は、
明らかな怒りを持って、食いかかってくる兄者を睨んでいた。
( ´_ゝ`)『腐敗した社会に一石を投じるために、流れ星のように
燃え尽きてやろうってのが始まりだったんじゃないのか?
それが今やどうだ? 俺達が、その腐敗権力の一部に……』
(´<_`#)『理想ばかり語んなよッ!!』
弟者がいきなり怒鳴った。空気が震える。
兄者は目を見開いて、我が弟の激昂ぶりを見つめた。
(´<_`#)『燃え尽きるだと……? この巨大化したファミリーで、
今更そんなこと出来るわけねえだろうが!』
( ´_ゝ`)『お、弟者……』
(´<_`#)『特攻隊気分で襲撃なんて、もう出来ねえんだよ!
……兄者、お前はファミリーを路頭に迷わす気か?
俺達にはなぁ、もう"責任"が生まれているんだよッ!』
156
:
名も無きAAのようです
:2012/02/20(月) 23:42:02 ID:/luJ9EGAO
待ってました!今から追い付きまする。
セントジョーンズの活躍がいつ来るのか楽しみにしてますす。
157
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/20(月) 23:42:33 ID:HWEiDKZc0
( ;´_ゝ`)『……責任』
兄者はその二文字を噛み締めるように口にした。
責任。弟者の脳内にはその概念が鎮座しているのだ。
(´<_`#)『そうだよ……! トップの、トップとしての責任だよ。
兄者は知らんだろう? このアジトの襲撃を食い止める
だけでもどれだけの人づてと金が居るかを……。
この書類の一つも読んだことがないんだろうッ!?』
手にもった書類をデスクに叩きつけ、それでも言い足りないとばかりに、
(´<_` )『無理なんだよ! 持たざる者には限界があるんだよ!
だから俺はッ……のし上がるためにプライドを捨てたんだ!
ファミリーのためにだ、兄者のためにだ……
当初の、目的のためにだ!!』
( ;´_ゝ`)『す、すまなかった』
ボルサリーノ帽のつばを触りながら、兄者は気まずそうな顔をした。
( ;´_ゝ`)『確かに……それは……仕方のない、ことなのかもな』
158
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/20(月) 23:45:50 ID:HWEiDKZc0
( ´_ゝ`)『………』
(´<_` )『怒鳴って、悪かった』
黒革の椅子に体重を預けると、弟者は暗い顔になって、
(´<_` )『俺自身……矛盾は、感じていた。
だけどこれは必要悪だと……そう信じているんだよ』
( ´_ゝ`)『ああ……俺も、お前を信じることにする』
兄者は「すまなかった」ともう一度詫びを入れると、部屋を後にした。
ぼんやりしたまま階段を静かに降りる。するとリビングで、シーンとヒールが
ホログラム射撃訓練に明け暮れていた。兄者はその背後に回って、
( ´_ゝ`)『……ふふ。へったくそだなぁお前らw』
( ・−・ )『あ、兄者の兄貴ィ!』
川*` ゥ´)『あんね! あたいたちもアンタみたいになりたいんだピャ!』
159
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/20(月) 23:49:37 ID:HWEiDKZc0
( ´_ゝ`)『はは! そうかそうか。(兄者の兄貴っておい)』
( ´_ゝ`)『貸してみな。200ヤードからはな……
こうやって、ちょっとずらしめで、撃つんだよ!』
( ・−・ )『うわっスゲー! ドンピシャリだッ!』
川*` ゥ´)『アレン唯一の長所だピャ! それくらいはねー』
( ;´_ゝ`)『唯一だとてめッコラ! もっとあるっつーの!』
********
それからも、流石ファミリーは順調に規模を拡大していく。
弟者の手腕により、兄者の戦闘力により、
シアトルきってのマフィア・ファミリーへと成長していったのである。
弟者が火星進出を狙ったのは、そう遠くない話であり、そして……
・・ ・・
・・ ・・・
・・ ・・・・
160
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/20(月) 23:54:04 ID:HWEiDKZc0
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
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161
:
名も無きAAのようです
:2012/02/20(月) 23:55:07 ID:o4l0cZyMO
兄弟のすれ違いが・・・・
162
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/20(月) 23:56:47 ID:HWEiDKZc0
―― ハーモニー。早朝。
( ´_ゝ`)
夢から醒めた。過去の記憶を、地球時代を思い返していた。
頭を振るい、今日の業務の内容に考えを定める。
寝室の弟者を起こして、朝食のハムエッグを作り、
それを使用人らと共に食卓へ並べていく。
そして虚無の一日がまた始まる。
.
163
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/21(火) 00:00:34 ID:1tLvvKhc0
流石兄弟は「バイフック」へ向かった。
道行くハンター連中は兄弟とすれ違う度に恭しくお辞儀をする。
弟者はさもそれが当然であるかのような顔をし、兄者は無表情のまま
それらを素通りしていく。
バイフックでは判事やシェリフ、役職者との会合のために利用されている。
弟者をトップに据え、それらをサポートする複数の役人という組織図である。
( ´_ゝ`)
兄者は壁にもたれ掛かって、その話し合いを眺めていた。
弟者は会議の中心として議題を持ち出しては会議を進行させる。
その円卓へ、しきりに水やウィスキーを運んでは空のグラスを
片付けるマスターの表情は、ハインリッヒを失ったショックからか大変に暗かった。
会議もそろそろ終わりという時間になって、スイングドアが
豪快に開かれ、憮然とした表情の来客者が現れた。兄者はちらりと目を向ける。
.
164
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/21(火) 00:05:05 ID:1tLvvKhc0
(メ#ФωФ)「………!」
来訪者はロマネスクだった。顔中に出来た生傷が、
憤怒の表情で歪みきって、いっそう醜さを引き立てている。
それらの傷は全て弟者の指示したリンチによってつけられたものだった。
ハインリッヒに誘惑され、みすみすドクオを取り逃したという名目で制裁されたのだ。
しかし、ロマネスクが事の真相を知り、そしてハインリッヒがもうこの村には
居ないということまでも教わった。もう、発狂しそうな怒りを抑えきれず、
何もかも投げ捨てる勢いで弟者の元へ向かっていったのである。
物々しいその雰囲気に、店中の人間は只事ではないと緊張を走らせたが、
(´<_` )「なんだお前か」
弟者は興味なさげに呟いて、腕時計のネジを締め直した。
(メ#ФωФ)「……ハインちゃんはどこに行った?」
(´<_` )「はぁ?」
165
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/21(火) 00:06:59 ID:1tLvvKhc0
(メ#ФωФ)「ハインちゃんはどこなんだって聞いてんだよ!!」
叫びながらロマネスクはガンベルトから拳銃を取り出した。
店中の人間がざわりと声を上げる。ロマネスクの銃口は、弟者に向けられた。
( ´_ゝ`)
(´<_` )「……この村の掟。先に銃を取り出した方が罪に問われる」
(メ#ФωФ)「んなことどうでもいいんだよォ!!
ハインはどこだよっ……ハインはどこだ!!
ハインリッヒを……ハインを返せェエエエ!!!」
――そしてバイフックで、銃声が破裂した。
.
166
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/21(火) 00:10:48 ID:1tLvvKhc0
(メ#ФωФ)「………」
(メ#ФωФ)「……う、うぅ……」
(´<_` )「やれやれ」
(メ# ω)「ハイン……ちゃ……」
( ´_ゝ`)
ロマネスクは声を震わせ、涙を目に溜めながら崩れ落ちた。
兄者はいつの間にか拳銃を手にしていた。その銃口から立つ煙を眺めている。
そしてロマネスクは抵抗する暇も与えられず、絶命に至った。
(´<_` )「これで正当防衛っと。兄者、その犯罪者を捨ててこい」
兄者は頷くと、店からボディーバッグを借りてそれにロマネスクの死体を詰めた。
暖かい血が手に掛かり、橙色のボディーバッグも大部分が鮮血に染まった。
兄者がボディーバッグを背負って店を出る間際、バイフックの店主は
「ハインは本当にどこに行ったのですか?」と弟者に訪ねた。
しかし弟者は何も答えず、ウィスキーを味わってはにやつくばかりだった。
167
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/21(火) 00:14:13 ID:1tLvvKhc0
兄者は村外れの平原に着いた。そこはハーモニーにとっての墓所であった。
幾度となく掘られ埋められてい、緑は生えず、黄土色の土が不自然な凹凸を作っている。
そしてその凸の部分には大体が墓碑代わりの木の棒が刺さっていた。
( ´_ゝ`)
兄者は捨て置かれたシャベルを持って、墓穴を新たに一つ作った。
そしてロマネスク入りのボディーバッグをそこに落とすと、土砂で覆い隠す。
盛り上がった部分に木の棒を刺すと、兄者はその墓所を後にした。
*****
バイフックへ戻る途中、大通りの片隅で男二人に絡まれている
女性を発見した。男は兄者と同じくハンタールックをしていて、
女の方もカウガールの服装をしている。
.
168
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/21(火) 00:14:13 ID:1tLvvKhc0
兄者は村外れの平原に着いた。そこはハーモニーにとっての墓所であった。
幾度となく掘られ埋められてい、緑は生えず、黄土色の土が不自然な凹凸を作っている。
そしてその凸の部分には大体が墓碑代わりの木の棒が刺さっていた。
( ´_ゝ`)
兄者は捨て置かれたシャベルを持って、墓穴を新たに一つ作った。
そしてロマネスク入りのボディーバッグをそこに落とすと、土砂で覆い隠す。
盛り上がった部分に木の棒を刺すと、兄者はその墓所を後にした。
*****
バイフックへ戻る途中、大通りの片隅で男二人に絡まれている
女性を発見した。男は兄者と同じくハンタールックをしていて、
女の方もカウガールの服装をしている。
.
169
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/21(火) 00:15:03 ID:1tLvvKhc0
多重投稿しちまった、どっちか無視してね
170
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/21(火) 00:17:24 ID:1tLvvKhc0
||;‘‐‘||レ「……嫌ですっ…イヤ! 嫌なんで……」
エノーラは今日もまた、ハンターにからかいのようなナンパを受けていた。
いつものことだが、まるで慣れない。
エノーラにとってはまさに反吐の出るような時間だった。
しかし、ときどき、
( ´_ゝ`)
兄者が無言の制圧を放って、ハンターどもを追い払ってくれるのだ。
今日もそうだった。ハンター二人はバツの悪そうな顔をして、
そそくさとどこかへ逃げていく。兄者はガンベルトを指で撫でていた。
||‘‐‘||レ「あ、ありがとございます」
( ´_ゝ`)
.
171
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/21(火) 00:19:10 ID:1tLvvKhc0
兄者は何も語らず、何も答えない。
だからエノーラにはその真意がまるで読めない。
けれども兄者のおかげで幾分か助けられているのも事実だった。
||‘‐‘||レ「これからお仕事なんですか?」
エノーラは世間話を兄者に持ちかけた。兄者はいつものように無言だが、
しかしエノーラの足元に散らばった蒔の一本々々を拾い上げてくれた。
||‘‐‘||レ「あ、そんな……ごめんなさい」
その蒔を全てエノーラに手渡すと、兄者はやはり何も言わずに去っていった。
エノーラはその後ろ姿に小さくお辞儀をした。
ハンターなんて大嫌いだ。どこか行ってしまえと心の中でつぶやき続けている。
だが唯一、兄者にだけは好意を抱いていた。
そして感謝をする度に、ノーナンバーズの皆に申し訳なさを感じていた。
・・ ・・
・・ ・・・
・・ ・・・・
172
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/21(火) 00:22:13 ID:1tLvvKhc0
――ふたたび場所と時とが変わって、ホテル・サイドニア。
(’e’)「頼むっ……今日こそァここにぃ!」
セントジョーンズは祈るような
気持ちで、ホテル・サイドニアの玄関に立った。
( ^ω^)「おはようございますお、お客様」
新人らしいドアマンに連れられ、セントジョーンズはロビーにやってきた。
いつも通りのホテル・サイドニアだ。
いつかは自分もここで長期滞在したいとは思っている。
しかし今は、レセプションにもエレベーターにも
目を向けることなく一目散にラウンジの方へ小走りで向かった。
.
173
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/21(火) 00:26:00 ID:1tLvvKhc0
― 昼前のティー・ラウンジ。
川 ゚ -゚)
クー・スナオリャはドニアンティーを
味わいながら、ラウンジのシルヴィアン調のソファに腰を預けていた。
カップから口を離して、軽くため息をついた。
それから窓の向こうに広がる火星のだだっ広い荒野を眺め、
ぼんやりと天井の農耕画を見上げた。
川 ゚ -゚)「ふぅ……」
クーには課題がいくつも残されていた。
連載中のコラムのネタ。――また締切に追われそうだ。
忌まわしきハンターの殲滅。――そしてその手掛かりの入手について。
ホテルサイドニアの正体を暴く。――その手掛かりが意外に見つからない。
174
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/21(火) 00:30:06 ID:1tLvvKhc0
川 ゚ -゚)「………」
そのどれもがクーの精神や神経を圧迫していた。
膨大な宿題に追われつつ音楽院の
受験勉強に取り組んだ、あの学生時代を思い出す。
……さしあたっての課題は連載のコラムだろうが、ペンを走らす気にはなれない。
ある人から受け取った、ハンターの悪行の証拠――といっても、それ単体では
充分な威力を発揮し得ない――のことで頭がいっぱいだった。
(゚、゚*トソン「あ、あのっ……ドニアンの! お代わりは、大丈夫ですかぁ?」
川 ゚ -゚)「ん。では貰おうか」
(>、<*トソン「はい! 頑張って作っちゃいます☆」
小走りで厨房へ駆けるコンシェールの背中を、
クーは目で追い続けながら「このホテルのIRをくれないかなぁ」などと考えた。
ホテル・サイドニアは非公開株式のため、まともな情報がプレスにさえ届かないのだ。
175
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/21(火) 00:33:46 ID:1tLvvKhc0
(’e’)「あ、あの〜」
川 ゚ -゚)「……?」
すると、妙な小男がへらへら笑いながら話しかけてきた。
(’e’*)「ク、クー・スナオリャさんですよねぇ〜!?」
***** *****
セントジョーンズは心のなかで小躍りした。
ようやく探し求めた、クー・スナオリャに出会えたのだから!
川 ゚ -゚)「なにか?」
(’e’*)「あーっとですねー……」
間近で見るクー・スナオリャは格別に綺麗だった。
透き通るような白い肌に、整った鼻梁とフェイスライン。
全てを見通すかのような幻惑的な瞳、
そしてそのじっとりした目線が、自分に向けられている。
176
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/21(火) 00:35:39 ID:1tLvvKhc0
(’e’*)「あ〜……その〜……」
(’e’*)「ぼかぁセントジョーンズって言います! よろしくっす!」
川 ゚ -゚)
(’e’*)
川 ゚ -゚)
(’e’*)
(゚ -゚ 川 プイッ「そう・・・」
(’e’;)「(無関心!? ……ていうか、あ……ああ……)」
(゚ -゚ 川
(’e’;)「(や、や、……やっちゃったぁ〜おれ!)」
.
177
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/21(火) 00:43:14 ID:1tLvvKhc0
見つめ合うと、素直にお喋りできないもんである。
それも目当ての人物(おまけに超のつく美人)、初対面ともなれば尚更だ。
セントジョーンズにとってはテヘペロもいいとこなミスである。
しかし、これはクーにはどう映ったかというと、
(゚ -゚ 川「申し訳ないがナンパ師には興味がないので」
(’e’;)「あっあ、あ! いや!」
(’e’;)「違います! ナンパとかじゃないです!!
用があってぇ、クーさんに話しかけたんす!!」
(゚ -゚ 川「私はあなたに用がない」
(’e’;)「うわぁ〜〜!(やっちまったぁ!)」
(゚、゚#トソン「お客様、当ホテルの品位を乱すような行為は謹んでいただけないかと」
(;’e’)「あっ! ちが! 違うんすよこれはぁー、ワケがぁー」
(゚、゚#トソン「いずれにしろクー様からはお離れくださいねェお客様!」
(゚ -゚ 川「………」
(;’e’)「あの、あの、……あうあう」
178
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/21(火) 00:47:34 ID:1tLvvKhc0
(;’e’)
「あ……あ……その……」
やってしまった。これではただのナンパに失敗した哀れな小市民だ。
おまけに怒り狂ったコンシェールからは慇懃無礼な言葉の洪水が飛び出てくる。
(^、^#トソン「反対側のピアノ側の席をご用意させていただきますねェ」
ここは一旦離れるべきか、と考えた
辺りになって、ドクオの後ろ姿が脳内に浮かび上がった。
ドクオは今……無謀な挑戦を行い、命さえ落としかねない状況だ。
もしここで自分が引き下がれば……時間のロスが生まれてしまえば……
(;’e’)
絶対に、許されない結果が待つことになる。
.
179
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/21(火) 00:52:12 ID:1tLvvKhc0
.
('A`)『お前に任せたぞ、セントジョーンズ!』
バイクに乗る間際の、ハンター村へ単身向かう間際の、
そのドクオの言葉が頭のなかをこだました。そして、
(; >e<)「すみませんでしたクー・スナオリャさん!!!」
セントジョーンズは考えるより先に、まずその場で土下座をした。
真紅のカーペットに額を擦りつけ、がむしゃらに謝った。
.
180
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/21(火) 00:56:40 ID:1tLvvKhc0
.
(; >e<)「さっきの無礼は許してくださいぃ! 僕はほんとに用があって!
あなたに会いにきたんです! ドクオさんが、ドクオさんがぁ!」
床に手をつけながら、セントジョーンズは叫ぶように続けた。
周囲が、好奇の目でセントジョーンズの姿を見下ろす。
だが、セントジョーンズには、意地よりも大切な使命があったのだ。
あの小煩い暴力ブサメンからもらった、大事な使命が!
川 ゚ -゚)「ドクオ?」
(゚、゚;トソン「お、お客様? あの……」
川 ゚ -゚)「トソンさん、大丈夫ですから。……ええっと、セントジョーンズくん?
とりあえず、顔を上げてくれないかな??」
(; >e<)「話を聞いてくださるまではぁっ!」
川 ゚ -゚)「聞くよ、聞くさ勿論。……ドクオって、このホテルに泊まっている考古学者の?」
ここでクーが興味を示してくれた。
ようやくセントジョーンズは頭を上げ、
(’e’;)「そうです。そのドクオさんが今大変なことになってるんす!」
181
:
ラスト投下
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/21(火) 01:04:49 ID:1tLvvKhc0
川 ゚ -゚)「大変、とは?」
(’e’;)「ドクオさんは今ッ! ハンター村に一人で向かってるんです!
サポートしないといけないんです! そのためには、
クーさんの手を借りないといけないんですよぉ!!」
川 ゚ -゚)「……はぁ」
クーから見れば雲をつかむような話であった。
なぜ考古学者が危険極まりない「ハーモニー」に突撃したのか。
そしてなぜ、私の力が必要だというのか。
しかしセントジョーンズという男の、必死な形相から嘘ではないことは伺えた。
何より、ライターとしての興味が湧いてくる内容であった。
川 ゚ -゚)「詳しく一から話を聞こう。トソンさん、ドニアンをもう一つ」
川 ゚ -゚)「……それとセントジョーンズくん。悪いが、一応身分の証明できるものは?」
(’e’;)「あ、はい! 発掘許可証が! 二種です!」
川 ゚ -゚)「なるほど。たしかにドクオ氏の助手らしいね?」
こうして、セントジョーンズは関門であるクー・スナオリャへの取り付けに成功した。
身分証明が出来たことが、なによりクーの警戒心を溶かしてくれた。
持っててよかった、第二種発掘許可証!
.
182
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/21(火) 01:06:35 ID:1tLvvKhc0
今日はここまでにします。
短めで申し訳ない。
今度は100レスくらいぶつけるお。
それでは、よい夜を
183
:
名も無きAAのようです
:2012/02/21(火) 18:15:50 ID:MQoWnud.0
待っとる!
184
:
名も無きAAのようです
:2012/02/21(火) 18:37:37 ID:.iEVCr0c0
乙
次回も楽しみにしてる
185
:
名も無きAAのようです
:2012/02/21(火) 22:17:35 ID:PXDJZtswO
兄者…
186
:
名も無きAAのようです
:2012/02/22(水) 07:59:44 ID:Zsr4qVwMO
兄
187
:
名も無きAAのようです
:2012/02/22(水) 13:14:01 ID:1sIXnTvk0
乙乙
セントジョーンズいいやつ
188
:
名も無きAAのようです
:2012/02/23(木) 17:44:13 ID:cIzwFm0QO
乙!
189
:
名も無きAAのようです
:2012/02/25(土) 23:13:07 ID:nPLK/Sr60
相変わらず面白い
190
:
名も無きAAのようです
:2012/02/27(月) 21:36:55 ID:PqVMXc/kO
読み応えがあって素敵
191
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/01(木) 01:30:23 ID:E9OTpzFA0
みんなありがとう。そのレスのどれもが俺のやる気の原動力になります。
で、進行状況は現在30レスくらい。かなり書けたと思う。
100レスうんぬんはまだ厳しいけどね。
ところで今考えていることについて。
SS速報板ってあるじゃん。あそこにこの現行を投下するのはどうかなって。
あそこ見てきたけど、ブーン系もなくはないんだよね。数は少ないけどさ。
だからちょっと、やってみるのもどうなのかなぁって。
願わくばシベリアのように受け入れてくれるといいんだけど。
やるだけの価値はあると思う。感触を確かめたいというか。
だから次は、もしかしたらSS速報板でやってみるかも。
その後はまだ決めかねている。vipに行くか、こっちに戻るか。続投するか。
というわけで、わざわざageて宣言します。
ぼろぼろになって帰ってきたら、慰めてやってね!
192
:
名も無きAAのようです
:2012/03/03(土) 22:19:50 ID:7W2X0TnMO
SS速報は過疎だし冷めてるけど根強い読者がつくイメージ
やるなら野次馬しにいくぞー
193
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/06(火) 01:01:58 ID:O//ZDSNY0
ありがとー
私生活が落ち着いたら移行してみます
定期的な投下が求められそう? なので
194
:
名も無きAAのようです
:2012/03/13(火) 18:55:33 ID:waZVsEx.0
投下します
195
:
名も無きAAのようです
:2012/03/13(火) 22:07:03 ID:zcRrW41c0
期待
196
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/13(火) 22:25:33 ID:waZVsEx.0
投下量しょぼいけど、頑張っかんね
SS速報はルールよくわからんから明日から本気出すってことで
とりあえず今日はここに投下
197
:
リプライズ投下
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/13(火) 22:54:15 ID:waZVsEx.0
なぜ考古学者が危険極まりない「ハーモニー」に突撃したのか。
そしてなぜ、私の力が必要だというのか。
しかしセントジョーンズという男の、必死な形相から嘘ではないことは伺えた。
何より、ライターとしての興味が湧いてくる内容であった。
川 ゚ -゚)「詳しく一から話を聞こう。トソンさん、ドニアンをもう一つ」
川 ゚ -゚)「……それとセントジョーンズくん。悪いが、一応身分の証明できるものは?」
(’e’;)「あ、はい! 発掘許可証が! 二種です!」
川 ゚ -゚)「なるほど。たしかにドクオ氏の助手らしいね?」
こうして、セントジョーンズは関門であるクー・スナオリャへの取り付けに成功した。
身分証明が出来たことが、なによりクーの警戒心を溶かしてくれた。
持っててよかった、第二種発掘許可証!
.
198
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/13(火) 22:55:34 ID:waZVsEx.0
.
.
199
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/13(火) 22:57:54 ID:waZVsEx.0
――また、ふたたび。時と場所とが戻って、昼下がりの「ハーモニー」。
(´<_` )「我々は監査に会いに行くが……」
( ´_ゝ`)
正門前に停車した白のベンツに、流石兄弟が乗り込もうとしている。
それを部下達が膝を付きながら取り囲んでいた。まさに主人と召使いの構図であった。
(´<_` )「くれぐれも面倒ごとは起こすなよ?」
その言葉に、部下たちは一斉に頭を下げながら「了解しました!」と合唱する。
200
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/13(火) 23:01:38 ID:waZVsEx.0
( "ゞ)
流石兄弟を乗せたベンツが荒野を走り出す。
それをデルタは舐めるように眺め続けた。
ベンツが地平線の彼方に去って、ハンターが各々に姿勢を崩したり
職場に戻ろうとする喧騒の中、デルタただ一人だけは膝をついたまま、
門の向こう――見えなくなったベンツを
いつまでも求めるように、目を凝らし続けた。
( "ゞ)「………」
やがてデルタは腰を上げ、そしてずんぐりむっくり体型の一人のハンターに
目を向ける。そいつは欠伸を噛み殺しもせず、馬鹿みたいに口を開けていた。
( "ゞ)「……よし」
・・ ・・
・・ ・・・
・・ ・・・・
201
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/13(火) 23:07:26 ID:waZVsEx.0
それからわずか一時間後。
ハーモニーに建てられた木造住居の二階にて、
('A`)「おい……騒ぐなよ?」
(;´$`)「う、うぐ……」
('A`)「騒ぐなと言っている。実力行使してやろうか?」
その部屋では、判事風の男がドクオに背後を取られ、コメカミに銃口を
押し当てられ、更に声が出せないように喉越しに声帯を圧迫されていた。
男――判事のスクラフィはなんとかその脅迫から逃れるために、
喉に巻き付いたドクオの左腕を剥がそうとそれを両手の爪で
引っ掻いたりたりしたが、まるで効果が現れなかった。
ばかりか、抵抗すればするほどドクオの腕の力は強くなっていく。
ドクオが撃鉄の音を鳴らすと、スクラフィはすぐさま両手を上げた。
202
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/13(火) 23:09:59 ID:waZVsEx.0
(;´$`)「頼むっ……命だけは助けっくれ……
いうことをきく、きくから……」
('A`)「………」
しかしドクオがほんの少し腕の力をゆるめると、
('A`(;´$`)「だっ誰かァー! たす、助けっ……!」
いきなり助けを求めはじめた。
ドクオはそれ以上声が出せないよう、いままで以上に強く首を圧迫し、
そしてこめかみに当てた銃口を下にずらし、
スクラフィの右小指に向けて射撃した。
(;゚$`)「ギッ!? っ……あっ……ぁぁぁ……!」
木目の床に鮮血が滴った。スクラフィの身体は小刻みに震えたかと
思えば、硬直し、また苦痛で震え始めた。
('A`)「まだ叫びたいか? 次はどこを撃ってほしい?」
ドクオは耳元にそっと囁いた。
203
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/13(火) 23:16:29 ID:waZVsEx.0
(;゚$`)「っ……! ……!!」
首元のドクオの腕によって、叫ぶことはおろか
まともに息をすることも出来ずにいた。恐怖と痛みが
スクラフィの心と身体を完全に支配し切った。
右小指は焼けたような痛覚に充ちた。心臓の鼓動が信じられないほど
大きくなり、その間隔にあわせて流血していっているようであった。……
ドクオは錯乱状態のスクラフィをしばらく見やると、
そっと拳銃をしまってからその小指に簡易の止血を施した。
それさえスクラフィは気づかずにいる。
ドクオはふたたび銃を握って、もう一度小声で、
('A`)「死にたくなければ言うことを聞け……俺をその倉庫へ案内しろ。
言うとおりにすれば殺しはしない……」
(;゚$`)「うぅ……うううっ!」
('A`)「流石兄弟を裏切るのが怖いか? だがなお前にはそれ以外の道はない。
俺を拒否すればお前は死ぬんだからな。今この場で」
204
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/13(火) 23:19:37 ID:waZVsEx.0
('A`)「お前のこれから唯一の生きる道を教えてやろう。
俺をその倉庫へ案内し、俺の発掘ツール及びデータを渡す。
それだけだ。理解出来たらさっそく行動に移してもらおうか?」
(;゚$`)「………っ………!」
スクラフィはそれから、小さく頷いた。
・・・ ・・・・・
・・・ ・・・・
・・・ ・・・
・・・ ・・
夜明け前のノーナンバーズのアジトでのことだった。
ジンの焼け付くような感覚を味わっているドクオに、デルタが近づいて、
( "ゞ)「それ以上飲むな。チャンスは明日しかない」
('A`)「んあ?」
( "ゞ)「明日、お前には奇跡的なチャンスが訪れる」
205
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/13(火) 23:22:56 ID:waZVsEx.0
(*゚∀゚)「どーしたんさデルタッ! しかめっ面しちゃってさ!」
( "ゞ)「ついでにお前も聞いておけ、明日ミッションを行う」
('A`)「「ミッション?」」(゚∀゚*)
('A`)「それは一体どんな?」
グラスの中のジンを惜しそうに見つめて、しかし興味深げにデルタに訪ねた。
( "ゞ)「いいか。俺は雑用で重要な仕事は任せられないにしろ、
一応はハンターの側に立っている。だから内情は知ることが出来る。
トップの会議の時間帯、倉庫番のシフトなどをな」
('A`)「なるほど」
( "ゞ)「明日の正午から流石兄弟はマーポールの監査と会うために
このハーモニーから離れる。その離れた間には、倉庫番の
交代の時間がやってくる。俺の知る限り、もっとも間抜けた倉庫番に変わる」
(*゚∀゚)「あー、あいつ? スクラフィ?」
( "ゞ)「そうだ」
206
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/13(火) 23:24:43 ID:waZVsEx.0
(*゚∀゚)「知ってるかいドクオ! スクラフィの馬鹿っぷりをさwwwww
あいつったら靴磨きさせんのに水磨きとワックス塗りの区別がつかないんさ!」
('A`)「そ、そりゃ馬鹿な奴だな。……つまりデルタ、こういうことか?
その時間帯に倉庫の物を盗める可能性があると?」
( "ゞ)「ああ」
(*`・ω・´)「な〜にやってんだお前ら。俺も仲間に入れてくれよぉ〜」
べろべろに酔っ払ったシャキンがマジキチスマイルで三人に近づいてきた。
( "ゞ)「ついでだ。お前も聞いておけ。……阿部! エノーラ!」
( "ゞ)「全員の力を合わせなくちゃならないミッションだ」
207
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/13(火) 23:31:42 ID:waZVsEx.0
倉庫は裁判館の近くに建てられている。ドクオは脅しをかけるのは
近くの宿舎の、スクラフィの着替えの最中
……デルタの手解きによって侵入した後になる。
しかし脅迫に成功しても、宿舎と倉庫との間の往来を歩く間際に
他のハンターに見つかったら全てが水の泡になってしまう。
よって、
(*>∀<)「きゃぁ〜〜〜!!! いや〜ん!!」
つーとエノーラがメインストリート側で小火騒ぎを起こし、
(普段の給仕の仕事のミスを装い、)
(`・ω・´)b「(いいですよ!)」
('A`) コクン
宿舎の対面に位置する路地裏からシャキンがタイミングを見計らいドクオに
合図を送り、それからドクオがスクラフィを連れて宿舎を後にする。……
208
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/13(火) 23:34:19 ID:waZVsEx.0
スクラフィがそれでも路地で抵抗しようとすれば、
N| "゚'` {"゚`lリ
宿舎の影に潜んだ阿部が、搾乳の仕事を抜け出してきたその彼が、
ドクオの手助けになるように飛び出してくる算段であった。
('A`)「進め。……よし、鍵を開けろ」
(;´$`)「………!」
わずかに地面に垂れたスクラフィの血痕も、
阿部とシャキンとが後で拭いてくれることだろう。
ドクオはこの作られた真空地帯の中で、倉庫に侵入することが出来た。
('A`)「……中に入れ」
209
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/13(火) 23:38:09 ID:waZVsEx.0
ドクオは倉庫をじりじり進みながら、ミッションの現時点での成功に
喜びを感じていた。しかし、まだまだ課題は残されている。
こんなことも考えた。ノーナンバーズのメンバーが居なかったら、
セントジョーンズの仕事が成功できなかったら。
きっと何もできないままであっただろう。
つくづく無謀な賭けをしたものだと苦笑しかけた。
だが、ハンターに発掘品を奪われて泣き寝入りなど、絶対にごめんであった。
(;´$`)「……ここに、ある」
(;´$`)「だがお前の発掘物は弟者の鍵が無ければ」
('A`)「さしあたってはこの中にある俺の発掘ツールだけでいい。
メッターはあるか? カメラは、その中のデータは?」
(;´$`)「ある……と思う」
('A`)「それでいい」
210
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/13(火) 23:44:20 ID:waZVsEx.0
スクラフィが番号錠を拙い動作で解錠していく。
その後頭部に銃口を向け、脅しをかけ続ける。
ドクオはスクラフィが落ち着きを取り戻し、緊張までも
弛緩しているのを感じていた。
おそらく、発掘品が奪われないことに安堵したのだろう。
これ程度のミスなら、流石兄弟も許してくれると考えているに違いない。
金庫が開いた。ドクオの発掘ツールがそこに眠っていた。
スクラフィからメッターとカメラを渡される。
ドクオはさっそくその発掘カメラを確認した。カメラの中の
写真のデータは抜き取られていた。
学術的機能には気概は加えられていなかったが、
('A`)「データはないのか?」
(;´$`)「さぁ……知らないよ!」
('A`)「………」
ドクオはもう一度、発掘カメラに目を落とした。
バッテリーの残量は充分で、送信機能も問題はない。
211
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/13(火) 23:49:23 ID:waZVsEx.0
('A`)「そうか……」
(;´$`)「や、やめてくれ! データは俺の管轄外なんだッ!
こっから先は俺も知らねえ! ほんとなんだってば!!」
('A`)
ドクオはスクラフィににじり寄った。スクラフィが小さく「ヒッ!」と
声を挙げたが、構わずに……スクラフィのホルスターから拳銃を奪って、
('A`)
そのまま倉庫から出ていった。
(;´$`)「……え?」
スクラフィは呆然としながら、その後ろ姿を眺め続けた。……
212
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/13(火) 23:56:22 ID:waZVsEx.0
"一仕事"を終えると、ドクオと阿部とシャキンはアジトへ戻った。
といってもシャキンは本来の残業に取り掛かろうとすぐに出ていったが、
N| "゚'` {"゚`lリ「うまくいったようだな」
('A`)「ああ」
('A`)「発達した文明と学問の中、古生物学者が
何を使うかに、
よっぽど頭を働かせなかったらしい」
N| "゚'` {"゚`lリ「けど、これが失敗したらどうするつもりだったんだ?」
('A`)「相当妥協したプランになってたさ。ふふ」
ドクオはカメラを弄んだ。そして、阿部の持ち込んだ本日の新聞に目を通す。
213
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/14(水) 00:02:32 ID:x215COcw0
N| "゚'` {"゚`lリ「クーのコラムかい?」
('A`)「合図を送るようにセントジョーンズの方から伝えたんだ。
もし了承してくれたなら、コラムに特定の一文を入れてくれって」
('A`)「………」
('A`)「……あった」
N| "゚'` {"゚`lリ「動いてくれるのか?」
('∀`)「ああ! セントジョーンズの奴。成功させやがったな!」
アジトの
なかでドクオは歓喜の声を挙げた。
本日のミッションでの功労品のおかげで、あの憎き流石兄弟……
いや、ハンター組合全体に決定的なダメージを与えることが出来る。
ドクオの反撃は、これ以上ない形で成功することになった。
214
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/14(水) 00:14:06 ID:x215COcw0
発掘用のカメラ。これの存在意義は、偽証の殲滅のために存在する。
学者それぞれに支給され、その写真データにはその学者の名前が不変に埋め込まれることになる。
更に、日付と場所を入力することで、
('A`)「バックアップとして、研究室にデータが自動送信される」
N| "゚'` {"゚`lリ「それで、ちゃんと送信は出来たかい?」
共に「ハーモニーの現状」を写真に収めた阿部が、すこし不安げに聞いてきた。
('A`)「大丈夫。元々の写真データ取られた以外は何も変わってなかった。
……俺が仲間になることを皮算用して、変にイジりたくはなかったんだろう。
それにさ、そのデータもロック掛かってるからそう簡単には見られないしな」
('A`)「しかしハンターの技術じゃ解析されるのも遠い日ではない。
早いとこ、そのデータも回収しないといけなくなっちまった……」
215
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/14(水) 00:17:51 ID:x215COcw0
.
216
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/14(水) 00:20:30 ID:x215COcw0
―――― 日の暮れたハーモニー。 裁判館の1F。
(´<_`# )「この無能がァッ!!」
弟者が怒号をあげた。
そして床に転がっているスクラフィを、さらに蹴り上げた。
(;´$`)
真紅のカーペットの上で、ごろんとスクラフィの身体が半回転する。
両手両足を縄で縛られているため、一切の抵抗ができない状態だった。
(´<_`# )「発掘カメラを……発掘カメラを渡しただとォ!?」
(;´$`)「す、すみませ……」
ふたたび弟者が蹴りをいれる。弟者のローファーの靴底はもう、
スクラフィの血で汚れに汚れていた。
217
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/14(水) 00:22:33 ID:x215COcw0
( ´_ゝ`)
兄者を含め、弟者の取り巻きは
壁を背にその制裁する様子を眺めるばかりだった。
誰もカメラの性能について記憶していなかった。
兄者を除くそれぞれの判事やハンターは、自身がスクラフィの立場だったら
果たしてカメラを渡していただろうかと思案を巡らせているに違いない。
当の弟者はひたすらスクラフィに暴力を加えていた。
腹立ち紛れの所業だった。スクラフィの顔面をなんども踏みつけて、
それでもまだやり足りないとばかりに、花瓶を振り下ろしたりもした。
(´<_`# )「ふざけやがってっ……! ふざけやがって!!」
肩で息をしながら、弟者は怒りの言葉を吐き続けた。
スクラフィが完全に気絶すると、仕方ないとばかりに携帯タブレットを取り出し、
(´<_`; )「
作戦変更だ。"別ルート"を展開するしかない」
218
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/14(水) 00:24:34 ID:x215COcw0
別ルートとは、いかにも「ドクオがどうしても誘いに応じない」
ときのためのプランであった。もし頑なにハンター側に入らないのならば、
ドクオの研究室に刺客を送り込んで、研究資料を無理やり奪還し、
その研究内容を把握した後に、ドクオを始末するという妥協案である。
ハインリッヒに語っていた案であったが、あまり使いたいものではなかった。
なぜならそれは、弟者に屈服しない者を自身の手で確立させてしまうからである。
(´<_`; )
しかし、写真を……このハーモニーの非人道的な現状を外部に
漏らされたのなら、もはやこの妥協案に頼るしかない。
既に、モテナイ大学院のそばにスタンバイしている刺客に電話口から、
(´<_`; )「おいお前ら。大至急その研究室を襲撃しろ!
多少の殺傷ならある程度揉み消してやる!
――今からだ!! たった今からやれ!」
219
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/14(水) 00:26:18 ID:x215COcw0
だが、刺客のリーダーからの返答は「無理です」という一言だった。
(´<_`# )「無理だと? ふざけるな!! 緊急事態なんだ!
皆殺ししても許す! 奨励もくれてやる!
サーバーを壊すだけだ!! さっさとやれッ!!」
激昂する弟者の耳に届いてきたのは、俄に信じられない情報であった。
(´<_`; )「…………なんだと?」
(´<_`; )「そんな……そんなことが?」
―― ―――
―― ――――
―― ―――――
('A`)「セントジョーンズを通じて、所長に言っておいた。
研究センターの警備レベルをホワイトハウス並にしてくれとな。
220
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/14(水) 00:28:04 ID:x215COcw0
('A`)「警備アンドロイド、警備員を可能な限り導入してくれ、と。
俺が……ハンター村に居る間、そうしてくれと頼んだんだ」
('A`)「そしてセントジョーンズが先回りをして、そのデータを
別の機関へ転送するように仕向ける。……ハンターの手の及ばない場所にだ」
('A`)「クー・スナオリャが、そのデータを基に
……記事を書き、そして……」
というのが、夜中にドクオが説明した計画の流れだった。
懸念材料は山ほどにあった。まずその前に殺されること。
カメラが壊されること。そして、セントジョーンズが失敗すること。
あまりにも不確定要素が多すぎて、いくつもの妥協案を練ってきたが……
('A`)「だが、うまくいった」
スクラフィの背広の裏に取り付けた盗聴器を聞きながら、ドクオはにんまりした。
221
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/14(水) 00:31:18 ID:x215COcw0
('A`)「無理に奪還しようとしても無駄だ。別の場所にデータは転送されてるから。
そもそも、研究センターに乗り込めば即逮捕させてやるぜ?」
ドクオは阿部と顔を見合わせた。そして、乾杯をする。
―― ―――
―― ――――
―― ―――――
(´<_`; )「………ッ!」
刺客に「見つからないうちに逃げろ」と指示を出してから、
弟者は冷や汗を流して、計画の破綻する音を脳で感じていた。
(´<_` )「馬鹿な……」
次々と、こちら側の隙を突くような行動をしてくる。
弟者としては、信じられない思いで一杯だった。
222
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/14(水) 00:33:42 ID:x215COcw0
(´<_` )「どうして……こちらの隙をこうも……」
あの学者ぶぜいめが。弟者は唇を噛んだ。
そして「ハーモニーの写真データ」も、こうなっては
予め別の場所に転送されている可能性が高い。
こちらの打つ手を確実に潰すために。
―― ―――
―― ――――
―― ―――――
N| "゚'` {"゚`lリ「だが、写真はともかく大学院襲撃はどうして読めたんだい?」
阿部はウイスキーに舌鼓をうつドクオに、そんな疑問を投げかけた。
('A`)「ハンター側が優秀な古生物学者たる俺を勧誘することは分かっていた。
だが、俺は死んでも誘いに乗らないだろう? だから奴らは
仕方なく妥協として、俺の研究データを根こそぎ奪う……
俺が、絶対に勧誘されないと知ったあとでな」
223
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/14(水) 00:35:50 ID:x215COcw0
('A`)「はじめにバイフックで弟者がまんまと誘いの言葉を
かけてきたとき、しめたと思ったもんだぜ。あの時点では
俺が仲間になると本気で考えていたみたいだからな。
つまり待ち構えたくせに油断しているとすぐに判った。
あいにく俺はハンターごときに手を貸すつもりはねぇ。
それを奴らが知る頃にはもう、研究センターは強固に守られているって算段だ」
('A`)「たとえ俺を殺したところで、俺の長年の研究データが
全て奪われることはない……。そういう意味じゃ、入村する前で
俺の勝ちは決まっていたもんだ。奴らに渡さずに済むんだからな」
N| "゚'` {"゚`lリ「お前はほんと、いい男だぜ。間違いなくな」
それからアジトにやってきた残りのメンバー、
シャキン、エノーラ、つーがやってきた。ドクオはガッツポーズをしてみせた。
だがドクオは笑顔を振りまきながら、一つの懸念を感じていた。
224
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/14(水) 00:38:32 ID:x215COcw0
―― ―――
―― ――――
―― ―――――
(´<_` )「………」
弟者は兄者のガンベルトからコルト銃を抜き取ると、それで
スクラフィの頭蓋を吹き飛ばした。断末魔など耳に入らない。
そうして反動の残滓を感じながら、返り血を浴びながら、
弟者は考えをめぐらし続ける。
( ´_ゝ`)
(´<_` )「これは……俺のミスなのか?」
研究センターの襲撃失敗はともかく、
発掘カメラの件について、弟者は疑問を感じていた。
なぜ自分はあの発掘カメラという危険な道具を杜撰に管理していたのか。
答えは単純で、ドクオにそれの奪還は不可能と踏んでいたから。
225
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/14(水) 00:41:09 ID:x215COcw0
(´<_` )「いかに知識豊富な学者といえども……こちらの、
我々の管理体制やシフトを知れるはずがないだろう」
倉庫番のなかで最も「愚かな奴」がドクオの私物を守り、
そして俺が村を離れているタイミング……この隙を、
ハーモニーにきて三日目のドクオが知る手立てはない。自力では。
それにあの学者は無謀に見えて、ある程度の勝算は得ようとするタイプだ。
無鉄砲にスクラフィのバカを脅したら、それがたまたま最高のタイミングだった、
そんな奇跡に縋っていたわけではないだろう。
(´<_` )「俺らのなかに内通者がいるな……」
弟者は小声で結論を導いた。
それも、信念もへったくれもない……原住民の人間が疑わしい。
具体的にいえば、"デルタ"など。弟者はあたりをつけた。
しかし、写真を撮られた今、疑わしき者を洗い尽くすには時間が足りなさすぎる。
226
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/14(水) 00:44:18 ID:x215COcw0
(´<_` )「………」
ドクオに交渉するという案がふいに浮かんだ。
奪ったモノをドクオに返す代わりに、口止めをするという……。
(´<_` )「ふざけるな……!」
弟者は自身でそれを否定した。そうして、裁判館のロビーを
血走った目で見回した。たちまち敬礼をするハンター達。
そうだ、こちらには手足などいくらでもある。
そして、「ハインリッヒ」が。
(´<_` )「おいお前ら、"キャリア"の準備は出来たか?」
手下に尋ねると、そいつは「勿論です」と最良の返答をした。
(´<_` )「よし」
227
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/14(水) 00:48:25 ID:x215COcw0
(´<_` )「妥協などするものか……! あの学者ごときに!
確実に、確実に手駒にしてやる!」
弟者は忍び笑いをする。
そうとも。カメラを振りかざしたところで、殺人現場までは撮ってはいまい。
ハーモニーの全てが崩壊する決定的瞬間はまだ、得てはいないだろう。
こちらにはハンター組合と、マーポールのバックがあるのだ。
(´<_` )「俺に反撃など、無意味だと身体に教えこませてやる……!」
・・ ・・・
・・ ・・・・
・・ ・・・・・
・・ ・・・・・・
228
:
ラスト投下
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/14(水) 00:50:18 ID:x215COcw0
・・ ・・・・・・
・・ ・・・・・・・
・・ ・・・・・・・・
『兄者よ、火星進出をすることにしたぞ』
『そうか』
『我々流石ファミリーの力を持って、新たな地を支配してやろう!』
『そうだな……』
『浮かない顔だな兄者?』
『そんなことはないさ。期待している』
『……これは、俺達にとって最良の選択なんだ。分かってくれよ』
『ああ、分かっているとも』
『お前を、信じ続けているからな』
229
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/14(水) 00:51:19 ID:x215COcw0
投下おわりんぐ
よい夜を
230
:
名も無きAAのようです
:2012/03/14(水) 01:07:20 ID:AY5IT0FE0
乙
いい夢見ろよ
231
:
名も無きAAのようです
:2012/03/14(水) 11:50:16 ID:TLX64P0UO
おつおつ!
大分ハーモニー編終盤にきたな。
232
:
名も無きAAのようです
:2012/03/14(水) 21:45:56 ID:NjfveyGYO
乙乙
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