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ヤンデレの小説を書こう!@避難所 Part07

746高嶺の花と放課後 第15話『ジニア』:2020/04/27(月) 17:04:27 ID:iWJxOaSw

「そうか、良かった。じゃあとりあえず不知火から始めるか?」

「はい」

これは僕の返事。

「高嶺は少し廊下で待っててくれ」

「はい」

これは華の返事。

華も特に反発することなく教室の外へと向かっていく。

あとでね

声には発せず、口の動きだけでそんなメッセージを残す。

こんなさりげないやりとり一つが、頬を緩めてしまう。

「不知火と高嶺は付き合ってるのか?」

華が教室を出たのを確認すると、太田先生はそんなことを尋ねてきた。

「えっ…、ああまぁそうです…はい」

薄々聞かれるのではないかと思ってはいたが、厳格な担任からそんなことを聞かれたため、情けない返事をしてしまう。

「そうか…。高嶺からやるべきだったかな」

「え?」

意味の分からないことを呟かれ、反射的に聞き返してしまう。

「いやなんでもない。気にするな。それより彼女は大切にしてやるんだぞ」

僕らの交際を否定的に思うどころか、そんな背中を押すようなことを言われ、先程疑ってしまったことに罪悪感が芽生える。

「さて、不知火。進路調査のことなんだが…」

太田先生はそれ以上僕らについて触れる様子はなく、抱えていた荷物の中から一枚の『僕の夢』を取り出す。

「不知火は小説家になりたいのか?」

疑うわけでもなく、馬鹿にするわけでもなく、覚悟を問うようなそんな目で、真っ直ぐ捉える。

「はい」

「本気か?」

「はい」

「何か賞は取ったことはあるか?」

「ありません、けれど今公募に出す作品を書いています」

緊張が僕の中に張り詰める。

そんな様子を見て、太田先生は少し目を細める。

「勘違いしないで欲しいんだが、俺は今日お前のその『小説家』になりたいという夢を否定しにきたわけじゃないんだ。むしろ応援している」

「え?」

思っていたこととは真逆のことを言われ、動揺が隠せない。

「こういった進路調査は大抵の奴が行きたい大学を書く。お前のような自分の夢を真っ直ぐ書く奴は珍しいんだよ。けどそれは決して悪いことじゃない」

少しずつ緊張が解れていく。

じわり、じわりと太田先生の言葉が胸に染みていく。

「それに俺も昔、目指していたからな。小説家」

「えっ…」

まさか太田先生に作家志望があったなんて、担任の知られざる過去を知り驚愕する。

「大学に通いながら小説家を目指してたんだが、単位のために取っていた教職課程が中々に面白くてな、結局教師になってしまった」

「俺は教師だ。生徒が小説家になりたいって言ってはいはいお好きにどうぞとも言えない立場なんだ、分かるな?」

「はい」

「これは適当に言うわけじゃないんだがな、不知火。お前大学に行ってみる気はないか?」

「大学…ですか?」

「ああ。大学ってのはな、自由がある。時間がある。出会いがある。その一つ一つがお前の人生に貴重な経験をもたらしてくれる」

「はあ」

「きっと今のお前は、そんなことよりも良い小説を書くための努力をした方がいいって、そう思ってるかもしれない」

僕の思ったことを見透かしているようだ。


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