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ヤンデレの小説を書こう!@避難所 Part07

597『彼女にNOと言わせる方法』:2019/11/25(月) 17:19:14 ID:OOhfG3XA
 どうするべきなのか。
 窓側の長いカーテンにくるくるとくるまりながら考える。
 余計なおせっかいは慎んだ方がよい、という近藤くんのアドバイスに従えば、僕は何もしない方がいいらしい。
 現に、今も独りで黙々と勉強しているサユリを見ていると、このままそっとしておいた方がベストなのかも、とも思ってしまう。
 が、僕の心は「解せないぜ!」と声を上げているから、ややこしい。
 独りよがりのエゴイズムだと言われちゃ、まさにその通りなので何も言えないが、
「むむむむ」
 さらに身体を回転させ、カーテンの中にすっぽり身を包む。
 教室のカーテンは、家のよりも長くて素敵だ。こうしてくるまっていると、とても落ち着く。視聴覚室にある、暗幕のように分厚くて黒いカーテンはもっと素敵だ。ちょっとほこりっぽくて、くしゃみが出るが、それも味があっていいだろう。
 ただ、夏場とは相性が悪い。
 すぐに蒸し暑くなって、ぷはっと顔だけを出す。
 カーテンのミノムシになったまま、サユリの席にまで近づき、机の上に広げてあるテキストをのぞき込む。
 どうやら算数をやっているらしいが、どの学年の範囲をやっているのかはわからなかった。グラフやら図形やらがあるのはわかるが、すぐに頭が痛くなってきた。算数によるPTSDは重いみたいだ……。
 サユリ、と声をかけると、鉛筆を動かす手が止まった。銀色のショートボブを揺らし、僕を見上げる。
「お前さんもさ、内心では、みんなと仲良くなりたいって思ってたりする?」
 面倒なので、直接訊くことにした。これでYESと言えば動くし、NOと言えば動かない。単純明快な解決方法であった。
 でも、返答がないケースについては想定していなかった。
「おい、無視するなって」
 カーテンから抜け出して、テキストとノートを取り上げる。
 やるべきことを失ったサユリは、電源を落とされたロボットみたいに停止した。
 奪われたノートとテキストに向かって、指先を伸ばすことすらなかった。それどころか、略奪者である僕にも興味を示さず、挙げ句の果てには窓の外に目を向けてしまった。
 無関心を示すことで無言の非難を表明しているのではなく、単に全てがどうでもよくなったみたいに。
 その態度に、途方もない危惧を感じる。
 サユリは、間違った方向に完成されつつあるのではないか。
 以前は、もうちょっと感情が豊かだった。注視しなければ捉えられない、微細な感情ではあったけど、日常の端々で時折、発露する時があった。
 でも、今はその断片すら確認できない。
 まるで熱を感じない。
 氷。
 存在感は有り余るほどあるのに、中身が比例していない。スカスカだ。感情を虫に食われたせいで、穴ぼこだらけになっているみたいだ。
 装着している鉄仮面の下に、本音が隠されているならまだいい。でも、その下に何もなかったら、奈落のような暗い空洞しかなかったら。


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