したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

避難所

674神代一派:2011/12/10(土) 09:46:44 ID:EK/9fLvc
>>673
「いませんよ、そんな方は」

しかし彼のそんな推測を丸っきり、何故か吐き捨てるような笑いを浮かべ否定した。
どこまでもきっぱり言い切るその言葉には、
おそらく躊躇や後悔と言った物は感じる事が巴津火にもできないだろう。

「ただ、これから起きるであろう騒動の中で、
 中心となっていると思われる対象を殺めれば僕のなすことは、きっと避ける事の出来ない者とする事が出来る

 と榊に言われました」

そして口に出されたのは、この場に何故か姿をあらわさなかった者の名前。

「おそらく榊は、因果の話をしていたのでしょうね。
 万が一にも億が一にも、思い人を奪われた巴津火は決してなにがあろうと、
 僕と敵対して僕のまだある因果をそそぐ行為が出来なくなるのだと」

それでも、できれば雨邑さんで無い方が僕だって良かったと思っているのですよ、
と神代は槍を振りかぶり、牽制として巴津火へ投擲して愚痴った。

「えぇぇ〜・・・なんであたしにお鉢がまわるんだ・・・
 第一最初の最初で自己紹介してなくてタイミング逃したのにこんな満を持して紹介しろなんて、
 絶対あたしみたいな奴が今更やっても―ふ〜ん、そうなんだ―
 みたいな感じで流されるにきまっているんですよ」
「うんにゃ、ここはこれからのこともあんだ紹介行っとけ」
「なんでなんですか・・・分かりましたよこんなところで力使うなんて、おこがましいし。
 あたしは・・・そうですね農夫さんと同じように、織女、というものです」

またもや注目が自分に集まりかける事を知って、彼女はまたも顔をそっぽ向けて、
明らかにキョドッたような反応をした。
しかし農夫の言葉に何故か納得したのか、渋々ながらも紹介を巴津火に向けて言う。

675巴津火『』:2011/12/10(土) 12:34:33 ID:3FBgi9l6
>>674
『要するに榊に言われたってことじゃないか。
 それがボクとの敵対を煽ることくらい判っているだろうに』

(榊はボクに神代を殺させたいのか)

雨邑と因果を漱ぐこととは無関係だった。なのにこれで巴津火は神代と敵対し続けて
因果を漱ぐか、神代を殺すかしなくてはならない。

動きのなかった表情に、初めて動きがあった。
紫濁の瞳は不機嫌そうに細められて、左手の刃に紫電が灯る。
それを斜め下から振り上げて雷光の槍を弾くと、もともと牽制のために力を緩められていた槍は
斜めに天へと飛んでいった。

『その女はいらん、農夫を捕まえろ』

今この場で、最も仔細を知っていそうな者を巴津火は狙った。
共潜ぎの手がわらわらと纏わり付いて農夫の動きを封じ、磯撫での尾びれが迫る。
これを掻い潜ったところで、もう少し沖には磯女が待ち構えている。
ある意味、織女のほうは名乗ることで包帯男ともども難を避けたと言えるだろう。

『お前が雨邑を殺した代償にその男を貰うぞ。そいつの方が色々知っているらしいからな』

今までの巴津火の事を考えれば、捕らえた農夫を悠長に尋問などしないことは予想つくだろう。
波の上にはゆっくりと丸い月が昇り、暗かった海を明るく照らし始めていた。

676神代一派:2011/12/10(土) 14:06:31 ID:EK/9fLvc
>>675
巴津火が槍を弾くという動作をする中で、
先ほど投擲された雷光の槍を計6本、つまりあの時のあの技の準備を済ましていた。
神代の背中を円を描くようにして、槍たちは全て巴津火へと矛先が向けられていた。

「ふふ、ここで雨邑さんを見た時、僕もそれを理解しました。
 僕が巴津火君と敵対するために、殺す相手が誰なのかを。だってあなたは
 あわよくば僕を助けようとしていたじゃないですか」

巴津火がどんな思いだったのかはともかくとして、穂産姉妹の約束を守り、
神代を殺して止めるのでなく、因果を取り除こうとした。
しかしその思いは、神代にとってどうしようもなく余計なものなのだった。
体に幾重にも絡みつく因果たちは、どれも生存する神代を目指していないのだ。

「おいおい、どうせ捕まえるならあの馬鹿にしろよ」

包帯男への誘惑が解けてほんの少し安堵で来たところなのに、
今度は自分があれよあれよと言う内に、がっちり拘束されてしまった。
眉間にしわを寄せ機嫌を悪くした農夫は、気のない声を巴津火に投げかける。

「それとあんたらは馬鹿なのか?
 このおらにむかって、木端みてえな奴らしか作戦に回さねえとは。
 あんま舐めるとおらだって怒るんだぞ?」

すると突然、農夫の体から発する妖気は、一瞬にして強大な、
それこそ神格とも到底引けを取らない程の莫大なものへと変化する。
堪忍袋の尾がそろそろ切れたらしく、農夫の体は突然にして数多くの樹木に包まれた。

そしてその突然の変容に反応できず、避ける、という動作を取ることのできなかった海の者達は、
その樹木たちの成長と言う悪意を持って全身に絡みつかれるだろう。
さらに神格を持つ様な者でなければ、あっというまに絞め殺されてしまう。

677巴津火『』:2011/12/10(土) 19:37:40 ID:3FBgi9l6
>>676
『お前を助けるなだと?』

訝しげにそう呟いた巴津火は、次の瞬間鼻で笑った。

『何を勘違いしている。助けて欲しくなければそう言えば良い。
 そもそもボクに協力を求めてきたのは、お前らのほうじゃないか』

ここで初めて、巴津火に怒りの表情が現れた。
巴津火を選んで引き入れるために声を掛けたのは農夫なのだ。
因果の相手である神代ではなく農夫への怒りならば、神格の縛りを受けない。

『討伐するためだ協力を頼んでいながら、お前らはあの姉妹を殺そうとはしないし、
 果ては自分を助けるなと言う。隠し事も嘘も結構だが、ボクを馬鹿にするにも程があるぞ。
 あの時ボクがお前らを纏めて食わなかったのは、天界の馬鹿どものお陰だと知れ。
 それに友達ではない、望むなら何時でも食ってやると言っただろうが』

巴津火としては、夜行集団との最初の約束である穂産姉妹の因果さえ漱げたら、
後は天界の意の通りさえにならなければ、神代と他の因果がどうなったって良い。
そして、農夫の言葉はさらに巴津火の声を怒りで尖らせた。

『海を舐めているのはお前のほうだ。下っ端』

海面から巨大な柱が持ち上がった。
それはうねりながら岬を跨ぎ、反対側の海面へと突き刺さる。
農夫たちの頭上に、ぬめった橋のような弧が渡されたのだ。
そしてそこから粘っこい油が、農夫たちの頭上に大量に降ってきた。

油は木々に降りかかり、その中に捉えられていた海の妖怪達はそのしなやかな身体を活かして
つるりぬるりと束縛から滑り出し、笑いながら海へと滑り落ちてゆく。

弧を描いて岬を跨ぐのはいくちの身体。船を跨ぎ終えるまでに数日はかかるほど長く、
さらにその身から大量の油を落としてその船を沈めてしまうこともある海蛇である。

『今夜は満月か』

いつの間にか潮は、陸から完全にこの岩島を切り離していた。
海は巴津火の領域である。
この小さな岩島でどれほど農夫が猛ったところで、戦いの場としては圧倒的に不利である。
天界もおそらく、この様子を見ているのであろう。

678神代一派:2011/12/10(土) 20:41:50 ID:EK/9fLvc
>>677
「ふふ、いえいえ現に僕達は救われたのですよ。
 少なくとも僕と、穂産姉妹さんはね。考えうるワーストエンドから逃げ延びさせてくれた」

静かな口調をもって語り神代は、その時の事を思い出すように目を閉じた。
もしあそこで巴津火が神代と穂産姉妹との、繋がりである因果を請け負わなければ、
結局はこの少年と姉妹が、あまたの死者を生み出して命を落としていたのだろう。

なぜなら、どうしても天界に刃向かう神代を、穂産姉妹は神代への児童安全の祈りの制約により、
神代が戦死する最後の最期まで、共に闘って神代の身を守らなければいけなかった。
彼らが共に負った因果は、神話による強制された決闘だけでなく、
それを避けた場合に新たに生まれる、強制された共闘の因果もあったのである。

「おら達がお前に協力を要請したのは、榊の助言があったからだぞ?
 多分、あんたはあの榊に、ものの見事まんまと嵌められたんだ。
 気付けなかったおらも悪い、スマン」

榊が、特別助けを必要としていない農夫に対して、巴津火の引き入れを提案したその理由は、
今まさに、この状況を作るためであった。
巴津火は神格と邪神格を体に混在させ、その境遇のため神代に分け隔てなく接する。
今までに無い笑みを贈られた神代は当然、巴津火を一方的ながらも友達と思うだろう。
しかし、これだけでは神代の死出の旅への、足枷になってしまう。

だが、そこでこの対立の状況を作ってしまえば、巴津火は竜宮の主の資格を持っている事もあり、
完全な神界と神代の対立の構図を、決して逃れ慣れない因果を、
生み出し神代を縛る事が出来るのだ。心を寄せた巴津火に嫌悪される絶望があるからこそ、
神代は心おきなく、その身を心を因果の流れに投じる事が出来る。

「おらは舐めちゃいねえよ。
 大地に恵みをくれる一因は、やっぱり母なる大地だからな」

何の気なしに殺して見ようと思った農夫の攻撃もあっさりと、
新手の奇抜な効力によって防がれてしまう。
改めて自分の地の利の悪さを実感させられて、やはり農夫は深くため息をついた。

「はは、お前は運が悪いな!!とはいっても俺も油まみれだ!!臭い!!」
「あ・・・あたしの服がドロドロ。いくらあたしの作品がつたないからって、
 ここまでしないで欲しいと思わなくは無い・・・」

隣で暢気な反応を示す彼らとは対照的に、農夫の樹木は既にリアクションを行なっていた。
樹木は農夫によって、さらに急速な成長活動を活発化させ遂には、
頭上にある水の半円を飲み込むほどの大樹になった。

「地面がありゃあ植物は育つ、海でも生えるように陸となりゃあ、より一層にな」

そこで神代はすぐさま、農夫たちに向って青白い炎の球を飛ばす。
青白い炎は農夫の先ほどの大樹に着弾して、空を焼くほどの大炎上を発生させる。

神性を帯びたその炎による火災の力は凄まじく、例えここが海の神力に包まれようと、
上にそびえる水の輪を蒸発させ、中の海蛇を焼くだろう。

679巴津火『』:2011/12/10(土) 22:10:30 ID:3FBgi9l6
>>678
『救ってもらったその礼が雨邑の殺害か』

風が強まり雲が沸き始め、月の光が翳り始める。

『代償としてその農夫か榊を寄越せ。お前らの隠している全てを見せてもらうぞ』

その時既に木は育ち始めていた。
いくちの油を受けた大樹はあっさりと炎上し、いくちの身体にも青い炎が燃え移った。
炎を纏ったいくちが苦しげにうねり始め、炎と油は渾然一体となって滴り岩島に降り注ぐ。

(…手間が省けた)

実は巴津火自身、いくちの撒いた油に火を放つつもりで再び左手の刃には紫電を点していたのだ。
炎に包まれたいくちは海中に没して逃れたが、小さな岩島とそこに生えた大樹は
激しく燃え盛っている。そして農夫も織女も包帯男も油まみれ。
延焼するのも時間の問題だ。

さらに農夫が何かしようにも、この小さな岩島の土にはもはや新たな植物を支えられるほどの真水は無い。

『水がなければ植物は育たないだろう』

その水を司る巴津火が、農夫の敵なのだ。

680神代一派:2011/12/10(土) 22:45:29 ID:EK/9fLvc
>>679
「くすくす、あなただって、仲間のメデゥーサを最大の侮辱を持って殺害したじゃないですか」

あの時包帯男と農夫には笑顔で、弔おう、とだけ言い返したが、
神代は悪魔だが鬼ではない、何も感じなかったと言えば嘘になる。

「ふふ、でも命の重さを天秤に掛けても仕方が無いので、
 いいでしょう、榊をそちらへ行かせます。彼女はちゃんと話してくれるでしょう」

攻撃の意識を農夫たちに向けていた巴津火に向けて、出し抜けに神代は雷槍を放った。
数は先ほどの6と後に出した6を合わせて12本。
放射状に射出された槍達の内4本もの数が、雷光の速さで巴津火へと向かう。

「あーあ、やっぱおらは運が悪いんだな」
「そうだな!!お前は常に平吉を引き続ける微妙な幸福度だな!!
 心中お察しするぞ!!」
「いや、正直お前よりかは幸運だ」

自身の体のそこら中から、油によるツンとした刺激が彼らの鼻につく。
それはつまり、彼らの先の姿をより鮮明に想像させるものだというのに、
怯え逃げようとする意思は感じられない。

「おら達が考えなしに燃やすと思うか?そんな時このぼっちゃんだ」

【地の凡術・土呑み】

遠くの場所から神代は、素早く両手を使い、印を組んだ。
それは、神性を帯びた者だけが許された術、凡術。あの滝霊王が以前使用した、
水の凡術と並べて扱われる強大で強力な術の一つだ。

強大な巫女の力を継ぐ神代でも、本来ならば凡術などを使えるレベルではない。
しかし、あの時穂産姉妹神の祈りを一身に浴びた時、強大な神性もまた譲渡されたのだ。

穂産姉妹の行使するあの力のように、地面は任意によって突如隆起、変形し、
農夫たち三名を火から防ぐ防護壁を発生させた。

681巴津火『』:2011/12/10(土) 23:24:22 ID:3FBgi9l6
>>680
『めでぅーさ?…ああ、あの蛙。
 でも無駄に殺しては無いぞ。ちゃんと美味しく食ったからな』

神代の一派にそういう仲間意識があったことに驚きつつも、巴津火が記憶を探ると、確かにその名はあった。

『もし榊がちゃんと話さなかったら、ボクが榊を食べる、からなっ!』

言い終わらぬうちに向かってきた4本の雷槍のうち2本を、逆手に握った草薙剣の紫電で弾き、
弾いた2本は方向を変えられて、うち1本はもう一本とぶつかり合った。
最後の1本だけは避け様がなく、紫電の消えた草薙剣で受けたものの、刀身を伝った雷火の影響が
巴津火にも現れる。

「……っ!!がぁぁっ!!」

まだ傷の癒えていない巴津火は、ようやく立てている状態である。
剣を杖に上体を支えたががくりと膝を突き、全身にまとわりついた雷にそれでも干渉しようと
力を込める。
その身を害しようとする雷と、押さえ込もうとする巴津火の妖気が、しばしの間拮抗した。

大樹はたいまつのように燃え盛り、土の防護壁を炙っていた。
月が隠された今、その炎は辺りを明るく照らし、土壁の影は黒々と海面に落ちてゆれている。

 しゃくり

防護壁の一部が消えた。
何か、見えない顎に齧りとられたような綺麗な形に土壁は抉れている。

 ざくり

今度はもっと大きく抉れた。
しかし防護壁の中の3人からはまだ、海面に長く伸びた影の周りで泳ぐ、影鰐達の姿は見えないだろう。
影鰐は海に落ちた影を食むことで、その影の元を害するのだ。
このまま土壁が消えて火達磨になるのが先か、それとも影鰐に食われてしまうのが先だろうか。

682神代一派:2011/12/11(日) 00:01:10 ID:EK/9fLvc
>>681
「ふふ、有益に殺したところで、行為の正当化は図れないでしょう?
 蛇が蛙へと変えられるというこれほどの皮肉、
 やはり神でなければ到底できないような所業だと思います」

ジャッジアンリーゾナブルは思った以上の効果を発揮し、
巴津火を貫き切るという事を含めた成功を収める。

「くすくす、榊は、おそらく話すでしょうね。
 彼女はそういう存在なのです、これも僕の勝手な憶測ですが」

大樹炎上の一連の動作を終えて、農夫たちも完全アウェイな空間には緊迫していたのか、
ほんのわずかな間だけ安心してため息を付いていた。
しかし、その直後既に頭上の防護壁からは不可思議な音がし始める。

「おいおい、そんな妖怪いたのか?」
「ああ、いたぞそんなやつ!!特殊な条件下じゃ強敵だ!!
 名前は忘れたがな!!」
「やっぱりあたしがあいつ倒そうかな。ああでも先輩無視して頑張るのもおかしいし、
 得体のしれない相手できる程あたし派手なキャラじゃないし」

一様に反応をする三名たちは状況の悪化を把握した。
そして彼らは、懐をそれぞれ探り始め、あるものを取り出す。

「ふふ、今度は正式な手段を踏まえたうえで、全力で戦いましょう。
 巴津火さんが僕を救ってくれた因果という名の例で、
 今回は殺さなくても問題はありませんから」

すると彼らの全身が、あの黒い炎に全身を一瞬で包まれた。
転移の炎。それは竜宮の者たちがリアクションをする前に、彼らをどこかへ転移させるだろう。

しかし、例え神代のそれが高精度の術だったとしても、
今この空間に張られている潮の結界は、入る物拒まず去る者許さず。
絶対的な閉鎖を行なう結界から、彼らが逃げおうせることなど不可能な筈なのだ。
今もまだその結界が、有効のものであるならば、であるが。

「ふふ、さようなら。僕が言っても薄っぺらにしか思ってくれないでしょうが、
 本当に雨邑さんの事は、ごめんなさい」

結界は数人の力の行使によって保たれている。
だが、今では結界の主柱である雨邑は討たれ
神代が先ほど、巴津火へと飛んだ4本を除いた計8本が全て、結界の守り手の全ての心臓を射ぬき切ったのだ。
支柱たちを失った結界は脆くも効果を緩めることを強制され、
結果、神代たちはのうのうと、この場から消失することに成功した。

/僕はこれで落ちにさせてもらいます
/二日間絡みありがとうございました&ありがとうございました
 &雨邑さんはごめんなさいでした・・・

683巴津火『』:2011/12/11(日) 00:35:50 ID:3FBgi9l6
>>682
雷火は徐々に弱まりつつあるが、ダメージもあって巴津火は動けない。
神代達が去るのを止める手段もなく、雷火を打ち消しきるとともに力尽きて倒れた。

(雨邑…)

しかしこれで肩代わりした穂産姉妹の因果は漱ぎ終えたのだ。
かわりに雨邑の仇という因果を残されて、巴津火はただ泣いていた。

燃えつづけた大樹がついに焼け落ちて、巴津火の上へと崩れ落ちてこようとしたその時、
岩島に泳ぎよってきた赤えいの魚が跳ねて大波を起こし、炎を消して島を洗い流す。

波に流された巴津火を幾つもの手が受け止めると、海の中へと運んでいった。


//絡みありがとう御座いました&お疲れ様でした!

684:2011/12/17(土) 23:01:57 ID:BQ990e1A
しとしとと雨が降り注ぐ、寒い夜。
一人の少年は頭や体から血を流しながら山の中を歩いていた。

「くふふっ、あははっ、もうなんもやる気しない、あははは!!」

片方の手には不気味に光る剣を持ち。
それは目的も無くさまようゾンビのようなものだった。

685現人:2011/12/17(土) 23:09:18 ID:rRrCSwK.
>>684
「おいおい、なんか血なまぐさいと思ったら・・・」
唐突に現れる声と足音、少しずつだが近づいていく

「お前さん、大丈夫か?病院に行くことを勧めるが?」
その方向を見ると帽子を目が完全に隠れる程に深く被った青年がいた

686零なか:2011/12/17(土) 23:13:47 ID:BQ990e1A
>>685
「貴方でしたかぁ、どうしました?」

笑みをたやさずに、ゆっくりと現人へ近づいていく零。
それは以前に出会った時の物ではないのは直ぐに分かるはずだ。

「病院?なぜ私が?こんなにも楽しい気分は初めてですよー?くふっ?」

687現人:2011/12/17(土) 23:24:31 ID:rRrCSwK.
>>686
「どうしたもなにも、そりゃこっちの台詞だ」
頭をかりかりとかいて、若干の呆れ顔をしながら言う

「何を楽しんでるのかは知らんが、怪我治してからにしろ」
悪いことは言わんから、と付け加え傷を指差す

688零なか:2011/12/17(土) 23:29:15 ID:???
>>687
「痛くも無いのに治す必要がありますか?」

だが見るからに相当な出血量である。
案の定、零はばたりと倒れて気を失う。
だが、現人が激しく呼び起こせば、きっと意識は戻るはずである。

689現人:2011/12/17(土) 23:34:03 ID:rRrCSwK.
>>688
「痛い痛くないの問題じゃ・・・っておい!」
いきなり倒れた少年に駆け寄る

「言わんこっちゃない、おい!生きてるか!」
近づいて声をかけつつ薬やら包帯やらを取り出していく
しかしどうみても足りそうにはない

690零なか:2011/12/17(土) 23:38:52 ID:BQ990e1A
>>689
「……痛っ、あ、あれ?」

びくんと反応して意識を取り戻した零は、
先程のように狂気に満ち溢れたような雰囲気は全くなかった。
むしろ痛みを訴えかけ、傷口を手で抑えている。

「そ、そうだ。現人さん、前に会った約束、覚えてますか?
私の正体が何なのかと言うことを。」

691現人:2011/12/17(土) 23:47:29 ID:rRrCSwK.
>>690
「おう、起きたか?とりあえず応急措置するから動くな」
手早く出来る限りの治療を行う、しかしやはり十分とは言えない

「ん?あぁ、一応は覚えているが・・・」
その傷は大丈夫なのかと言いたげな顔をしている、半分隠れているけど

692零なか:2011/12/17(土) 23:59:11 ID:BQ990e1A
>>691
治療をしてくれる現人にぺこっと御礼をする。
現人の言うとおり、動かないようにじっとしている。

「私の正体は、ですね…。悪魔なんです。」

はぁっと一つ溜息をついて、再び口を開く。

「先程、現人さんが喋った私は私で、今、喋っているのも私なんです。
雰囲気がお互いに噛み合いませんが、両方とも私なのです。」

一つの個体にパラレルワールドの自分をもう一つ入れた、と言ったイメージだ。
個体は一つしかないが、中身は二人でお互いに意志を持つ、それが零である。

693現人:2011/12/18(日) 00:07:20 ID:rRrCSwK.
>>692
「よし、OKだ、完全に応急措置だから後でちゃんと病院に行くこと!」
一通り治療して、とりあえず一息

「ほぉ、お前さん悪魔なのか・・・」
へぇーと感心したように声を漏らす

「要するに二重人格ってやつだな」
うん、と納得したように頷き

694零なか:2011/12/18(日) 00:12:59 ID:BQ990e1A
>>693
「本当に申し訳ございません…。
もしよろしければ、私の家に来ませんか?
こんなところだと現人さんも風邪ひいちゃいますし…。」

おずおずと聞いてみる。
嫌われたりするんじゃないかと、不安だったりもする。
だが見るからにはそんなでもなく、内心ほっとしている。

「二重人格ですか…自分では制御効かなくて…。」

695現人:2011/12/18(日) 00:18:55 ID:rRrCSwK.
>>694
「お、いいのか?だったらお言葉に甘えさせて貰うぜ」
そんな内心の不安などいざ知らず、純粋にニカッと笑う

「お互いに意識があるのならどっちかがどっちかを制御できないなんて当たり前だと思うがな」
ふむ、と唸って

696零なか:2011/12/18(日) 00:30:57 ID:BQ990e1A
>>695
「では、案内しますね。」

山道を降りて、しばらく歩いた先にはマンションがある。
エレベーターを使って上までいけば、直ぐそこには零の部屋がある。
零はタオルを二枚ほど現人に手渡し、リビングへと向かった。
部屋にはテーブルとテレビ、ソファーなど、充実した家具が揃っている。

「現人さんって、その帽子の下はどうなってるのですか?」

そういえば、と思って聞いてみた。躊躇してない。

697現人:2011/12/18(日) 00:39:28 ID:rRrCSwK.
>>696
「お、ありがとうよ」
タオルを受け取り頭以外の水気を吸いとらせていく
よく見ると防水加工でもされているのか帽子は完全に水を弾いている

「ん?帽子の下?」
何故そんなことを聞くのかとでも言いたげな顔をする

「そりゃ普通に顔があるだけだが」
不思議そうな顔をしたまま答える、余談だが鼻と口は整っている

698零なか:2011/12/18(日) 00:44:25 ID:BQ990e1A
>>697
「え、いやでもその下が気になります。」

なぜに防水!と聞きたくなった。
それだけこの帽子が好きなのだろうか。
じぃっと現人を見て、ねだる様に言った。

「その帽子、取ってみてください、お願いします。」

699現人:2011/12/18(日) 00:50:00 ID:rRrCSwK.
>>698
「はっはっは、やだよ」
何故か笑いながら拒否、わけがわからない

「お前な人にはアイデンティティという物があってだな」
人じゃないけども、と付け加えながら語る

700零なか:2011/12/18(日) 00:55:37 ID:BQ990e1A
>>699
「はは、そうですよねってなんでぇ!!」

びしりと突っ込み!
普通なら見せてくれてもいいじゃん!!みたいな。

「まぁそうですよね…。残念です…。」

だがしつこく要求するほどの零でもない。
しょぼんとしつつもその件から話をひいた。

「はぁ、現人さんって面白いですね。」

701現人:2011/12/18(日) 01:00:19 ID:rRrCSwK.
>>700
「まぁ本当の話をすると、人前だと何故かはずれ無いんだこれが」
からからと笑いながらねたばらし、初めからそういえと

「面白いねぇ・・・意味合いによってどう返すか変わってくるが」

702零なか:2011/12/18(日) 01:05:48 ID:BQ990e1A
>>701
「ええっ……!?
ああ、いい意味でですよ。」

外れないとはくっついているからなのか?
凄く気になるところである。
現人に変な誤解をさせぬためにも、付け足しておいた。

「現人さん、今日は助かりました、ありがとうございます。
まだ雨は止みそうにないので、ゆっくりしていってくださいね。」ニコニコ

心からの御礼なのだろう。
現人に向けられた笑顔は天使のように清らかな物だった。

//ではこの辺で〆ますね。
遅くまで絡みありがとうございましたっ!

703現人:2011/12/18(日) 01:15:27 ID:rRrCSwK.
>>702
「OK、なら素直に喜ぶことにしよう」
やったぜ!と無駄なガッツポーズ

「おう、邪魔にならない程度に滞在させて貰うぜ」
ニカッと笑い頷く、雨がやめば恐らく気がつかないうちに去ってしまうだろう

//お疲れ様でした!&ありがとうございました!

704黒龍:2012/01/01(日) 23:20:03 ID:BQ990e1A
「油揚げ買ったし、飲み物買ったし、クラッカー買ったし。
後は武器を…って違うだろ俺!!

っはぁ、露希も零も結婚式がどうのって、俺一人じゃ行きにくいなァ。」

一人でノリ突っ込みしながら、重そうな袋を持って階段を上がっていく。
冬だと言うのに、夜の風がなぜか心地良い。
それに袂山を覆い尽くすかのような星空もまた良い。

やっとのことで階段を昇り終わり、ぜぇぜぇと息を上げる黒龍は
キョロキョロと辺りを見渡している。すこし挙動不審。

705四十萬陀 七生&狢奈:2012/01/01(日) 23:28:32 ID:???
>>704
「大丈夫?」

突然どこからか聞こえてくる声。
黒龍が辺りを見渡しても、その声の主は視界に映らないだろう。
なぜなら、声の主は黒い翼の雀であり、木の奥に隠れているからだ。

「こんばんはじゃん、お久し振りだね黒龍君!
 あけましておめでとうじゃんっ!」

ぱたぱたと草を分けて、一本の木から夜雀が飛び出した。
黒龍のことは、露奇から訃報を聞いてから一度も会っていなかったため、
不思議に思ったが……それよりも嬉しさが先行した。

「元気そうじゃん! 狢奈が会いたがってたよっ!」

ぜえはあしている黒龍の頭の上に着地し、つんつんと軽く突く。

706黒龍:2012/01/01(日) 23:41:44 ID:BQ990e1A
>>705
不意に聞きなれた声が聞こえて来た。

「おおっ!?」

いきなり飛び出してきた七生にびっくりし、ペタンと尻餅。
何がなんだか分からず、3秒程間が会ったが、すぐさま我に返って笑いだした。

「脅かすなよっ、あけおめっ!!

って、いててててt(ry」

ちょっぴり痛いらしいが、『狢奈』と言うワードが脳に入ると
先程以上に笑顔が輝いた。

今直ぐにでも会いたい、とでもいうように。

707四十萬陀 七生&狢奈:2012/01/01(日) 23:55:10 ID:???
>>706
「にゃはは、ごめんじゃん」

頭の上から飛び立つと、今度は地面に着地する。
何度か毛づくろいしてから、四十萬陀は面白そうにいった。

「そんなに会いたいじゃん?
 心配しなくても、もう黒龍君がきてることは送り妖怪中に――…」


「黒龍ーっ!」

ぼがー!
っと、地面から突然送り鼬が飛び出してきた。
そのまま、尻餅をついた黒龍に飛びつく。

「久し振りって!」

708黒龍:2012/01/02(月) 00:03:49 ID:BQ990e1A
>>707
「どええええーー!?」

あまりのことでペタンと再び尻餅。

「む…じな…?」

自分に飛びついて来る者の名前をゆっくりと言う。
つぅっと一筋の涙が零れると、自分よりも小さい狢奈を力いっぱい引き寄せた。

「ぐすっ、凄い会いたかったよ、ぐすっ、俺、俺ッ」

このままでは狢奈が押し潰されてしまうってくらいに強く。
もう二度と離すまい、とでもいうようにぎゅっと。

709四十萬陀 七生&狢奈:2012/01/02(月) 00:08:02 ID:???
>>708
「うわわ!? く、黒龍?
 大丈夫って……?」

抱きしめられ、あわあわとしながらも、

「……うん! 僕も会いたかったって!」

むぎゅー、と黒龍を小さな体で抱きしめ返す。
四十萬陀はそんな二人を見ながら、にこにことほほ笑んでいた。

(いやー、狢奈はいっつもことあるごとに黒龍君のこと話してたけど、
 この二人がこんなに仲良いなんて知らなかったじゃん)

710黒龍:2012/01/02(月) 00:15:16 ID:BQ990e1A
>>709
「元気そうだなッ、久しぶりに空飛ぶかっ?」

凄い微笑ましい光景である。
内心、ずっとこうしていたいのだが、
なんか変なオーラが漂っているような気がしてならない。

(寒気しかしない…なんだこれ。)

BでL、が大好きなお姉さま方にとってはもう素敵なry

711送り妖怪勢:2012/01/02(月) 00:26:43 ID:???
>>710
「「……」」ジー

「和戌、五月、何してるじゃん……?」

それを木の影から見守る送り雀と送り狼。
別にBでLが大好きなわけではない。微笑ましい光景を見ているだけである。
多分。

「久し振りだね、黒龍」
「あ、あんたらこんな所で抱き合ってなにしてんのよ!」

二匹がのそのそと表に出てきた。
なぜか五月が照れている。

712黒龍:2012/01/02(月) 00:35:17 ID:BQ990e1A
>>711
「ひぃっ!(腐女子!?)
え、あ、久しぶり。」

こういうのにも詳しいながらも、自分がまさか
腐女子に出くわすとは思いもしなかった。

ハァ、と一つ溜息一つをし、何を言い出すかと思えば。

「そうだ、見ての通りだ!
俺は狢奈が大好きなんだ、だからこうやってるだけなんだッ。
狢奈、俺なら…いいだろ?」☆ミ(ウインク)

ひとまず釣る!!腐女子を釣る!!
狢奈と見つめ合い、今にも危なげなことをしそうな黒龍。
本気ではないが、狢奈にはどう見えるか。
少なくとも、好感度下がるに違いない。

713送り妖怪勢:2012/01/02(月) 00:46:42 ID:???
>>712
「え、え……?? 黒龍どうしたって?」

狢奈は頭に「??」と疑問符を浮かべて首を傾げている。
五月はあわあわと口(というか嘴)をぱくぱくさせ、
和戌姉は深いため息をついて呆れている。

四十萬陀は狢奈と同じく状況が飲み込めていないようだ。

「え、えーと……とりあえず!
 黒龍君、何か用があってきたんじゃん?」

とりあえず話題を変えてみることにした。

714零なか:2012/01/02(月) 00:56:47 ID:BQ990e1A
>>713
「………………え。」

冷たい視線を注がれ、顔面真っ青。
下手に動いたあげく自爆である。

「ムジナ ゴメン」

頭に浮かんだ二言を並べ、ロボットのような謝り方。
もう、放っておけば、翌朝に袂山で首つってる奴でも出るんじゃないか。
しかし七生のフォローで少し元気を取り戻した。

「あ、ああそうそう!!
ほら、新年だからさ、露希と零と白龍のお参りだ。
皆ってお酒飲めるんだっけ?お祝いっつったら酒かと思って日本酒買って来た。」

取り出したビニール袋には透明な瓶と茶色の瓶、あわせて4本出て来た。
それからー、と付け足して油揚げやミカン、クラッカー(紐引っ張るとパーンってやつ)
などを取りだした。

「HAPPY NEW YEAR ♪」

715送り妖怪勢:2012/01/02(月) 01:11:06 ID:???
>>714
「「「「おー!」」」」

黒龍が酒瓶を取り出すと、一気に全員のテンションが上昇した。
さっそく仲間を呼ぼうとやんややんや騒いでいる。
送り妖怪たちも酒好きなようだ。

「はっぴーにゅーいやー? 何よそれ」
「新年あけましておめでとう、って意味じゃん」

英語の意味が解らない五月に、四十萬陀が解説する。

716零なか:2012/01/02(月) 01:18:35 ID:BQ990e1A
>>715
「〜♪(今年は皆、笑顔でいて欲しいな。俺の年だし。)」

鼻歌を歌いながら、ビニール袋をポケットにしまう。

「んじゃ、狢奈にも会えたことだし、俺は帰るかな。
ちょっくらやりたいことがあってな〜。
陽狐さんにもよろしく頼むぜ。」

人型だった体は形を変えて、気づけば巨大な黒い龍がそこに。
じゃあな、と言い放つと漆黒の翼をはためかせて飛び去った。

//この辺で区切りが良いので。
こちらの御希望聞いて下さってありがとうございました!
絡みお疲れ様でした。

717送り妖怪勢:2012/01/02(月) 01:22:33 ID:???
>>716
「おおお!」

黒い龍が目の前にあらわれた瞬間、狢奈の瞳がきらきらと輝く。
人型の時よりこちらの姿の方が好きなのだろうか……?

「もう行っちゃうじゃん?
 来てくれてありがとうじゃん! またね、黒龍くん」
「じゃあね! って!」
「また来なよ」「もう来るんじゃないわよ!」

四者四様の別れを口にし、黒龍が飛び立つのを見守った。

//ありがとうございました!

718???:2012/01/05(木) 23:27:21 ID:EK/9fLvc
なぜかあれ以来、坊ちゃんが単独で、
この街からは多少離れた土地のクニツカミを殲滅しに行った以来、
坊ちゃんの近くに誰かが居る時もそうでない時も、どこか全体的に溢れ出る感情を彼は抑えられていない。
普段なら力尽くの笑顔で、それら一切の哀愁は消し去ろうとしているのに、
坊ちゃんの性格にしては珍しく、隠す事もせずに悲哀を垂れ流していた。

一番最初にその事に気付いたのは、農夫であった。
それ故、彼らが何の脈絡もなくピクニックなぞを堪能している理由も、
この男が不意に提案をしたからであった。

「僕たちは使命を帯びているのです。こんな呑気な事をしている場合では」
「まあまあ、どんな英雄悪鬼だろうが歴史上、
 誰も生きる中で生き抜きなんてしてない奴なんて居ねえよ。
 今日は肩の力を抜いてぼーっと、してもいいじゃないか?」
「・・・。ふふ、そうですね。ではお言葉に甘えて」

確かに彼らは、よくある仲間意識を強く持った集団ではない(神代を除いて)。
しかし農夫は、坊ちゃんである自分のいわば棟梁に当たる人物が、
士気を失っている事実を良しとはできないのである、利己的な意味において。



人気のない、そして更に勿論のこと妖気も神気もない、
そんな山のある中腹で、彼らはレザーシートを引いていた。

719波洵:2012/01/05(木) 23:40:51 ID:tElbSrz.
>>718

「やぁ、ピクニックとは言い御身分だな」

 神経を逆撫でるようなおどろおどろしい貪欲の波長が辺りを支配した。
 形ばかりの息抜きに現れた招かれざる客・波洵。

「神代さー、私かなりムカついてるんだよね。
 10年かけてゆっくり再生するつもりだったのに無理に起こすようなことしやがって。
 おかげで貪欲は相手の特性までも写し取れなくなってしまった・・・。
 完全な妖怪どころかとんだ不完全羽化だ」

 ゆらり、と揺れる紫のパーカーコート。
 ミシミシと軋るような音を立て、手が刃物状に変化する。

「さてそういうわけで・・・、死んでほしいな。私の憂さ晴らしの為に!」

 跳躍とともに、神代の座る場所を鋭利な刃物が抉った。

720出世法螺:2012/01/05(木) 23:50:51 ID:3FBgi9l6
>>718-719
上空を赤く細長いものが小さくひらひらと舞っていた。
それは地上の禍々しい気配に気づくと、様子を伺いながらゆっくりと降りてくる。
次第に大きくなった姿は、尾の先に巨大な法螺貝を引っ掛けた赤い鱗の龍であった。
丁度これから天界へ、命を賭しての掛け合いに行くつもりだった、出世法螺のお累婆である。

降りてみれば、紫狂一の実力の持ち主が、丁度神代の一団に襲い掛かっているところなのだ。

(これはどうしたものかねぇ)

一方は巴津火の姉ながら弟妹と異なり、変質前の紫狂であり窮奇の実の娘、
他方は巴津火の仇とも言えるが友ともみなし得る相手である。

(戦えばどちらも酷く傷つくのは明白。
 数多の神格を擁く竜宮として見守るか、殿下に仕える立場として仲裁に入るべきか)

どう転んでも巴津火が泣く事になる。
手を出しあぐねて赤龍は、空からまず様子を伺うことにした。

721???:2012/01/05(木) 23:58:30 ID:EK/9fLvc
>>719
農夫が不遜な下心を潜ませている事実を知らない神代は、
同じく事実を知らない包帯男の作ったお弁当をつつきながら、静かながらも意気揚々と景色を眺めていた。
だが、突然空が機嫌を損ねたかのように、
神代たちの毛嫌いをする気配がこの空間に割り込み、彼らの顔つきは変わった。

「・・・あれは誰だ?坊ちゃんの因縁にしちゃあ、
 随分と筋の通ってない役者じゃないか?」
「ふふ、以前に、僕が射殺した抜け目のない女の子が居たでしょう?
 彼女のお姉さんです」

座ったままながらも訝しげな視線を招かれざる客に飛ばす農夫は、
隣で淡々と事情を説明する神代の言葉を聞いて、
やれやれとでもいうように深く、そして気だるいため息をついた。

「くすくす女の子は、まさかそんな事になるとは思っていませんでしたが、生き返ってますけどね」
「なんじゃそら。もはや因果も何にもないやつに絡まれるなんざ、
 流石坊ちゃんってところか?

 おい、そこの嬢ちゃん。
 おら達は色々先客で予約が一杯一杯なんだ、後にしてくれねえか?」

>>720
「そんな話をしてたら新しく来たぞ!!これもまた強そうだな!!
 皆そんなにピクニック好きか!!」

少し張りつめた空気の中であっても、包帯男は目ざとく、
端で眺めて部外にいる筈の出世法螺にも叫び呼びかけ手を振っていた。
その余りにもな暢気さに、
隣にいる農夫はまたもや深くため息をつく

722波洵:2012/01/06(金) 00:08:45 ID:tElbSrz.
>>720>>721

「因果とかゴタゴタとそんな下らない事ばっかり考えてるから何も作り出せないんだよぉ!」

 グシャリ、と丹精込めて作られたであろう弁当を踏み潰しながら波洵は続ける。

「ま、いいか。私がここに来た本当の所は別の意味があってね」

 波洵は嫌らしい笑みを浮かべながら片腕を鎌状に変化させる。

「君達は放っておけばいずれ私の弟や妹たちと殺し合いを始めることになるだろう。
 可愛い下の子たちが血を浴びるより、嫌われ者の私が汚れ役を引き受けてあげた方がお互いに楽だと思ってね」

 しゃべりながらにして、大鎌を全員の喉元へ振りぬく。
 波洵は空を見上げ、赤龍を指さす。

「そこの、巴津火は呼ぶなよ。それじゃあ私が来た意味がないからな」

723出世法螺:2012/01/06(金) 00:17:12 ID:3FBgi9l6
>>721-722
包帯男の暢気さは、今回良いほうに働いたらしい。
というのも話し合いのできる相手が居るらしいと、出世法螺に判断させたからである。

「この、よぼよぼの老体が強そうに見えるのかい?」

降りてきた赤い龍は確かに年老いていた。
角は先が欠け、牙は黄ばみ、身体のあちこちに古い傷跡がある。

「あの子は来ませんよ。今はね」

とん、と地に降り立った赤い龍は、法螺貝を手にした老婆となった。
真っ白な髪をきっちり纏めた老婆は、波洵の言葉に穏やかに答える。

(殿下が留守のうちに天界へねじ込むつもりだったけれど、どうやらそうも行かないようだ)

「私もお邪魔するつもりではなくて、偶然通りがかったのですよ、姉姫さま」

724???:2012/01/06(金) 00:26:15 ID:EK/9fLvc
>>722
「くすくす、因果を知らなくても何かを作り出せるのは、あなたの能力だけでしょ?」

絶叫を上げる包帯男をほっておいて、神代は笑みを波旬に向ける。
ピクニックを邪魔された事に心が動いた様子は無いが、
能力の超越性にほだされた彼女が因果を知ったように話す事実には、多少感じる物があったらしい。

「なんだ、結構真っ当な、ていうか真面目な理由があんのか。
 ならしゃあねえ、殺し合おうか」

取りあえず刃を交わした彼らは、包帯男を除いて全員が波旬を見つめる形になる。
納得がいったのか軽快な笑顔を浮かべて、
農夫は中指を波旬に向けて立て宣戦布告の受理をした。

>>723
「強そうだぞ!!というか雰囲気が!!
 俺と言うやつはオーラのある奴に弱い!!」

同じく鎌の脅威を回避したばかりだというのに、
まったく意識を波旬に向ける事をしない包帯男は、腕を組んで自分の言葉に同調し頷いている。

「てかお前は誰だ!!なんだ、やっぱりピクニックしたいのか!!
 でも残念!!弁当はぐちゃぐちゃだ、・・・・ぐちゃぐちゃだぞ!!!!!」

警戒心が無いのであろうか、見ず知らずどころか敵対する筈の彼女の下に、
包帯男はまだ生き残っていたお菓子を入れる袋を持参しながら近づいた。

725波洵:2012/01/06(金) 00:38:08 ID:tElbSrz.
>>723-724

「逆だよ、因果だのなんだのがないと何も作り出せないのはお前らだけだろ?」

 波洵は軽くいなした様に見据えて鼻で息をつく。
 出世法螺の方を見て話していく。

「ところで竜宮、お前らもずいぶんめんどくさい事やろうとしているねー」

 ヘラヘラと笑いを上げて、波洵が高らかに言う。

「ばぁーっかじゃないの! こんなくだらねー奴等のやったことの為に天界が動くわけないじゃん!!
 なんでお前らはそんなに天界に支払いをさせることに拘るかなぁ−?
 こいつ等がさっさと意志も無く死ねば全部解決する話なのにさぁ!!」

 波洵は嘲笑する。
 神代一派の意志もやることも全て。

「お前等は今ここで死ぬんだよ!
 何も残せないまま! 何も作り出せぬまま!
 馬鹿な生涯を悔いながらここで理由もなくね!!」

726出世法螺:2012/01/06(金) 00:48:27 ID:3FBgi9l6
>>724-725
波洵の最もな問いかけに、累は老獪な笑みを浮かべて答えた。

「私どもは私どもで、天界に交渉したいことがございましてね。
 今回の件も、その口実に使わせてもらうまでなのですよ」

竜宮としては伊吹と同様巴津火にも、風伯としての力を天界に許可してもらいたいのだ。
雨師として雨を呼ぶことは出来ても、台風を動かす風の力が巴津火には無く、
伊吹の没後それを補いうるだけの数の龍族が、今の竜宮にはない。

そして、出世法螺としては農夫と波洵の戦いならば邪魔するつもりは無い。
包帯男も参戦するようすがないので、お累婆はそちらに問いかけることにした。

「累と申します。私は竜宮で雨師の育成と、成り上がりの龍の束ね役をしておりましてね。
 さして偉い神格ってわけでもない、せいぜい昔話を知っているだけの年寄りですわ」

神代と竜宮は敵対するが、包帯男と累の個人同士には、敵対する理由はまだ無い。

「そして、あなたは?」

自己紹介したお累婆さんは、包帯男にも名乗るよう促した。

727???:2012/01/06(金) 01:01:11 ID:EK/9fLvc
>>725
途中から半分離脱した状態の包帯男はともかくとして、
神代、農夫、落ち着きのない女達は波旬の罵声を全身にかぶっていた。

幼いころから嘲笑、罵倒、あらゆる悪意をこうむってきた神代であっても、
窮奇の力を微力ながらも継承する波旬の言葉で動揺は隠せず、
笑顔とは対照的に、神代の両手は何かをこらえるように固く握りしめられていた。

「実をいうとな、これがまたお前の言う通りなんだよな。
 おら達が死にゃあ、全部が全部丸く収まるんだよ」

しかし、まるで白と黒の対照のように、
農夫と彼女の反応は、波旬の言葉に対してまったくもっての動揺は無かった。
むしろ、何度も聞いて終には飽きてしまった説教を聞いているようでもあった。

「おら達はずっと前から、何にも作り出せてねえよ。多分これからもな。
 作ったそばから、おら達は踏みにじらていってたんだからな。
 それに、何も残すつもりもねえ。
 唯でさえおら達は最大級の不名誉を後世に残しちまってんだ。

 だがな娘っ子、おら達は死ぬ気はねえぞ?」

一派の一番槍は、農夫は引き受ける事になった。
小手調べとして、数本の電柱ほどな太さの樹木が波旬の足元から発生して、
それら全てがしなり、鞭のような形状で波旬に襲いかかった。

>>726
「でもあれだろ!!育ててるってのは偉い事だぞ!!
 ネグレクトは最低だからな!!」

どうやら農夫の一番槍にも気づいていないらしい。
包帯越しでも分かるはつらつさを発散しながらガンガンと彼女に話しかけている。
そしてついに話の流れで、包帯男の素性を疑い知る質問が繰り出された。

しばらく答えようか悩んでいるのか、
首を傾げて小さな声で呻いていたが、最後は柏手をパンと打って話始める。

「答えてやる!!俺はな、名前はない!!
 生まれて名づけられる前に捨てられているからな、申し訳ないが紹介する名前がないんだ!!」

728波洵:2012/01/06(金) 01:12:06 ID:tElbSrz.
>>726>>727

「はっ! これがどうした?」

 特性を写し取るという絶対的な力を失ったとはいえ、
 彼女は大妖怪・天魔波洵。

「貪欲で! テメー等の攻撃の方向なんて!
 手に取るようにわかるんだよっ!!」

 撓る丸太の鞭をスラリ、スラリと水中の魚のような動きで潜り抜け。
 懐に現れる嘲りの表情。

「まず一人!」

 鋼鉄の拳が農夫の顔面を捉えた。

「やぁーっぱり、全然恐くないなぁー。何も欲しがらない奴らはさぁ!」

 貪欲も逆心も心を捉える特性。
 その中に潜む想いが小さいほど、あっさりと手のひらに収まってしまうのだ。

「絶望! 失望! 捻くれ! そんな気持ちは紫狂で飽きるほど見てきた!!
 どーしようもない奴等が、くすぶった気持ちのまま動き回っても茶番にしか見えないね!!」

 法螺の方を見て、納得したような波洵。

「ふぅん、なかなかどうしてお前らも貪欲だねぇ!」

 ニタリと笑う波洵。

「いつか竜宮も乗っ取ってみたいなぁ!!」

 尽きぬ欲望、それへとひたすら突き進む情熱。
 波洵の恐ろしさはここにあった。

729出世法螺:2012/01/06(金) 01:25:23 ID:3FBgi9l6
>>727-728
「名が無いなら、これまでずっと何と呼ばれてきたんです?
 出会う人にどんな言葉でご自身の説明をしてきたのかしら」

戦いの傍らで、試合を楽しむかのように観ながら、累は包帯男を己が気で包もうとする。
尖ったものでもその形に添うように受け止め、優しくなでるうちに真珠層で包み丸くしてしまう、
貝独特の穏やかな平和ボケの気配であった。

化け物であり神格でもある者の多い竜宮で、皆が無駄に争うことなく穏やかに過ごさせる方便としての
もてなしが発達したのは、累のような貝族のお陰かもしれない。

「姉姫様がいらっしゃったら、殿下も喜ぶことでしょうね。お待ちしておりますよ」

累の穏やかさは、波洵に対しても同様に発揮された。

730???:2012/01/06(金) 01:35:50 ID:EK/9fLvc
>>728
小手調べだったとしても、明らかに手を抜きすぎていたようで、
何の労力もなくそれらはかわされ、空振りさせられ、役を果たせなかった。
避ける動作もしていない農夫は思いっきりな一撃を、顎に食らってしまう。
衝撃によって体は宙を舞い、しばらくの時間を置いて数歩後ろへと吹き飛ばされた。

「あー、うん痛いなそれ。
 やっぱお前も結構強いんだな、あの女の子のお姉さんなだけあって」

受け身も取らずにべしゃっと地面で音を鳴らした農夫は、
一撃をくらった顎を労わって手で押さえながら、ゆっくりと立ち上がった。
打撃が聞いている様子は無く、立つ姿にダメージはあまり窺えていない。

「おらは何にもいらねえよ。
 作ったところで、耕したところで、植えたところで、おらはなんの収穫も許されねえ。
 待てども暮らせども欲しい物が手に入らねえとな、
 欲しかった気持ちも心が自分を守ろうとしているんだろうな、欲しいという気持ちすら手に入らなくなんだ」

今度はある程度、というかちゃんと攻撃をしよう、
そんな事を顎の痛みで決心しながら、農家はまた次の動作に移る。
とは言ってもそれは、動作に移る、というよりも、
動作をしない動作に移る、と言った方が正しいのかもしれない。

「やっぱり土は良いよな?」

何故なら彼は、突然首だけを地面から出して、それ以外は地中に埋まってしまったからだ。

>>729
「だから俺はいつも"おい"とか"おまえ"とかで呼ばれていたぞ?
 俺はなんでもないからな!!説明する内容もないから不便はしなかったな!!」

であるならばこの包帯男はまんまと、
出世法螺の作り出す空間に首まですっぽりと使ってしまっているらしい。
口に指をあてる子供のような仕草で考え込む事まで始めた彼は、
むしろ彼女に疑問がわいたのか、とある質問をした。

731???:2012/01/06(金) 01:40:33 ID:EK/9fLvc
>>730
//包帯男は質問をしてませんでした
//なので下二行は無かったことにしてください

732波洵:2012/01/06(金) 01:41:32 ID:tElbSrz.
>>729>>730

「はっ、意味わかんないね。
 何も求めないならなんでこんな愚図と行動を共にする?」

 波洵は神代を指さし、やはり嘲る。

「そもそも力があるくせに何も許されないとかお前らの考えは全く理解できないね!
 力がなくて許されないならまだわかるが、力があるなら許さない奴をねじ伏せればいいだけなのにさぁ!」

 単純な波洵は言葉をつなぐ。
 農夫の埋まった姿を見て、声をあげて笑う。

「あっはっはっはっは! 私はどっちかっていうと空の方が好きだなぁ!」

733出世法螺:2012/01/06(金) 02:02:31 ID:3FBgi9l6
>>730-733
(姉姫様もただ神代を叩き潰す気は無く、対話を交えるつもりのようだ)

波洵は波洵のやり方で神代の件を処理しようとしていることを
やり取りの中から感じ取った出世法螺は、幾分安堵した。
巴津火を預かることになってから、紫狂という存在への理解と
ある種の信頼が生じていなかったら、おそらく累もここで戦うことになっていただろう。

(案外、上手く物事は収まるかもしれないね)

後は神代次第である。

「それなら、ご自分が何と呼ばれたいか、考えておいて下さいな。
 今は名無しの権兵衛さん、またいつか」

平和ボケに包んだ包帯男をそこへ残し、累は再び赤龍の姿で空を泳ぐ。

「姉姫様も、どうかご無理なさらずに」

赤い龍は法螺貝の中から一塊の五色の雲を噴くと、それを波洵の護りに残して
空を駆けて行った。
必要となれば一度だけ、雲は波洵に従いその身を何処へでも運ぶことだろう。

734???:2012/01/06(金) 02:08:37 ID:EK/9fLvc
>>732
片や強大な力を持って、更には禍々しい気配を辺りに漂わしていて、
片や体の9割は地面に埋まってしまい、どちらかというと刑罰を喰らっているような状態で、
そんな彼らが威風堂々と対面する様は、限りなく珍妙で滑稽であった。

「そりゃあおら達だって坊ちゃんに負けず劣らず愚図だからな。
 おらは、いや広く括っておら達はどうしようもなく愚図だからな。
 自由に動き回る事も出来ずに、今も終始の分からん復讐劇を繰り広げるくらいだ」

これだけ真面目に語っても、隣の女性が居た堪れなくなって目を逸らすだけである。
だが、確実に農夫はこの状態に至って、とても幸せそうにしている。
それはきっと、彼が地面を愛しているからなのだろう。

「お前とは違って、おら達は最初無力だったんだぞ?
 だから許されなかった、神はいつだって正しく天に鎮座ましましているからな。

 それと、意外とお前はおら達の事を理解してくれてんだな。
 おら達はお前の言ったその言葉を主義にして、今こうしてここにいるんだよ。
 神を皆殺しにするためにな」

そして術は開始した。
最初の動きとして一切の前触れもなく、全員の立つ大地が大きく震え始めた。
まるで共鳴でもしているかのように低く鈍い音を発する地面は徐々に、
特に波旬を起点として亀裂が入り、瞬く間にその亀裂は広がって地割れを起こし始めた。

すぐさまに奈落の谷になった地割れに呑みこまれてしまえば、あっさりと彼女は土に埋められ圧殺されてしまうだろう。

>>733
「俺は"お前"だけでいいぞ!!名前なんて多分覚えにくいし!!
 なにより何もない俺が名を冠するなんて耐えられん!!」

大地の鳴動が起き始め、流石の包帯男も反応を示した。
だが彼の元へはその亀裂は走っていないらしく、身の安全を確認した彼は、
すぐさま顔を彼女に向けて、限りなく暢気な調子で別れを告げ手を振っていた。

735波洵:2012/01/06(金) 02:29:08 ID:tElbSrz.
>>733>>734

「いーや理解してないさ、なぜなら私はもう“持っている側”だから」

 メキメキ、と翼が背中から延び。
 波洵の体を地面無き空中で支える。

「殺す為か、じゃあ殺した後はどうする?
 殺す事が出来れば、お前らは何か手に入れられるか。
 身を焼くほどに殺したい相手が居なくなったらそりゃあつまらないよ」

 波洵が語る想いの欠片。

「まったく、なんで私が殺す前に死んじゃうんだか・・・」

 翼はゴキゴキと形を変え、波洵の真の姿へと変わっていく。

「理解したよ。お前等のつまらなーくて、くだらなーい復讐劇にはやはり可愛い弟や妹は巻きこめない!
 お望み通り、お前は土に還してやるよ!!」


 変化・天魔雄神――!!


 波洵は原型を現す。
 スサノオの悪面の権化と謂われる女神・天魔雄神。
 六芒星の刻まれた装束をはためかせ、降り立つ九天の主。

「いくら欲せどこの世に星を落とす魔法はなく。
 天を貫く槍も無い・・・神の皆殺しなどできはせぬ。
 お前等が見たのは下賤な夢だ。覚ましてやるよ、この彩りを持って!!」

 天の主は空をかける。
 泥にまみれた土の剣は、空には届かなかった・・・。

 農夫の眼前に、射ち落される巨大な六芒星。
 それは空を夢見た木を砕き、土に埋めるだろう。


    【星を落とす魔法・金剛惑星】

736???:2012/01/06(金) 02:58:38 ID:EK/9fLvc
>>735
「神を殺したりなんかしたら、そりゃあ世界は滅茶苦茶だろうな。
 第一復讐なんて、遂げた達成感以外なんにもないんだ
 殺したところで奪われた物が戻ってくるわけじゃねえ、何も変わらねえ

 だからおら達は何も要らねえんだ。空虚の終わりを慰めてくれる報酬もねえからな
 神を絶滅させれればおら達はそれで良い。

 それでおら達の終わりも続きも後も無くても、それでも良い」

復讐を行なう罪など知らない、遂げる難易度など知らない、
遂げた後も知らない、しかし、彼らは止まれないのだ。
この悠久の時を超えてもまだ燻り続けるこの底のない怨恨の念は、
絶えず自分の身も心も焼いて燃料にして全身を続けるのだ。

言い切った農夫の頭上から降るのは、彼のもっとも嫌う天からの攻撃であった。
限りない力を持って落下するその印は、地割れを含めた彼の頭上である。

「それでもおら達は手を伸ばすんだよ、どうしようもなくな。
 現に人は、その意思で神だけの世界だった筈の天に、鋼の槍を貫通させたじゃねえか」

彼が地面と体を同一にしたのは、なにも地割れなどを起こす為ではない。
地震はむしろ予兆、これが起こる前触れの現象でしかない。

【ザ・サードデイ】

そして大地はまたもや鈍く低く震え始める。
なにかの産声のように響くその轟音とともに、波旬の足元にも通っている複数の巨大な地割れからそれは生まれた。
突然、何かの堰を切ったかのようにその地割れたちから、
あらゆる大樹、草、樹々がまるで木々の洪水のように溢れだし発生し始めた。
それこそ神が樹海を作り出したあの時のような、もはや神聖な程に膨大な木々が成長を続け、
その夥しい程の量と硬度を以って、彼女の六芒星はやすやすと濁流に呑まれて消えていった。

だが勢いはそれで止まらずに、より成長の早い先端部分が、
それでも大川の川幅ほどもあるそれらが波旬に襲いかかる。

737波洵:2012/01/06(金) 03:08:12 ID:tElbSrz.
>>736

「おとと・・・」

 緑の洪水に、立っている場所がよろめく。
 トントンと駆け上がり、空中を駆ける。

「面倒なことになったね」

 地割れを起こしそこから植物を氾濫させるとは。

「これが止められるとは・・・まずいね」

 波洵の姿が揺らぎ始める。
 不完全羽化での原型への変化は身体に凄まじい負荷がかかる・・・。
 もとより長持ちはしなかった。

「ここは退散させてもらうよ、まったく一人も潰せないとはとんだ予想外だ」

 波洵はそのまま背を向け、退散しようとした。

738???:2012/01/06(金) 03:23:11 ID:EK/9fLvc
>>737
絶えずおぞましいほどの成長を続ける激流は今も蠢き、
退散を始めようとする波旬に対してまったくの容赦もなく向かっていた。
しかし

「なんだもう止めんのか。
 さんざ言いながらお前はまだ、終える事の出来ない激情まではもっていないんだな。
 まあ持ってどうのこうのってわけでもねえが」

今までまるで、無機質に全てを飲み込む濁流のようであった木々たちの、
成長によって増えていく攻撃範囲が、一瞬にして終了して動かなくなった。
この技は全てを飲み込もうとする異常な物であるが、
それでもまだこれは、地面と同化した彼の完全な支配下に置かれているのだ。

「おら達をなめねえほうがいいぞ。
 言葉で踏み止まれるほど、おら達の年月は短くはねえからな」

戦闘をする気のないらしい農夫は技を停止させたらしく、
波旬は易々と、撤退を置こう名う事が出来るだろう。

739波洵:2012/01/06(金) 22:15:17 ID:tElbSrz.
>>736

「!?」

 突然の反撃に天魔雄神となった波洵は、
 にべもなくその緑の濁流に飲み込まれる。

 轟々と入り乱れる狂植物の氾濫にその場一帯は緑の爆心地と化した。


 静かな、静かな時間が訪れた。
 先ほどまでの殺気に満ちた空間は跡形もなく、
 ただ成長を終えた植物たちが凄然と揺らめいていた。

740???:2012/01/06(金) 22:24:24 ID:EK/9fLvc
>>739
「・・・さて」

術も、波旬の反応が見られないことから停止をして、
一段落とばかりに未だ地面に潜ったままの農夫は深くため息をついた。
以前にも彼らはこの力を見ていたのか、これと言って驚く素振りは見えず、
首だけをこちらに振り向かせる農夫の意図を把握して、包帯男がゆっくりと歩みよった。

「なんだか俺が言うのもあれだが!!最初はカッコいいのにいつも最後ぐずぐずだな!!
 仲間がいなかったらどうするつもりなんだろうな、この要介護者!!」
「こればっかりは反論できねえな。
 でもまあよく考えてみろ?あれだけの術を発動するんだぞ、
 反動でこの後動けなくなんのも仕方ねえ事じゃねえか?」

その場にしゃがんだ包帯男は、少しの間農夫の首周りの土を掘り返してから、
彼の肩を掘り起こして引っ張った。
絶大な力を持つこの技には、しばらくの間戦闘不能になるデメリットがあるのだ。

741波洵・植物:2012/01/06(金) 22:33:28 ID:tElbSrz.
>>740

 夜の寒風に吹かれ、木々がさやさやと音を立てる。
 凄然と生い上がった緑の残骸は寒空に悲しく泣いているようだった。

 いや、この音。
 一定間隔で・・・近づいてくる?


「隙み〜〜〜っけぇ! あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」


 突然間近に生えていた大木が狂気の表情へと豹変し、
 ギラギラと星明りに煌めく凶刃が農夫へと振り下ろされる。

 植物へと変化した波洵が、すぐ間近まで迫ってきていた。

742???:2012/01/06(金) 22:46:09 ID:EK/9fLvc
>>741
仲間に掘り出されながらも農夫は、戦闘を終えた時の言い知れぬ疲労感と共に、
目の前の樹木が役目を終えて風になびく音を聞き多少の感慨に浸っていた。
しかし、曲がりなりにも植物の力を行使する為に、
一般の者では到底判別のできない微妙な違和感を彼同時に感じ取る。

「これでも死なねえと、しぶといなんて物じゃねえぞ」

ぼそっと呟く農夫の姿を見て、事情を理解できていない包帯男は首をかしげる。
しかし、その理由は直ぐに彼も知る事となった。

「おお!?おまえ何でも変化できるカメレオンだったのか!?
 すごい羨ましいな!!」

農夫は先ほどの反動で身動きが取れない。
であるならば、と包帯男はすぐさまに二人の間に立つ。
そして右手の包帯を緩め始め、波旬の刃が彼らに到達すると、
彼はそこから飛び出した獣の爪で彼女の一撃を防いだ。

743波洵:2012/01/06(金) 22:57:24 ID:tElbSrz.
>>742

「あん? 次はお前か」

 弾かれた凶刃を振り戻し、
 大樹からズルリと這い出すように波洵の人の姿が現れる。

「その通り、私は誰にもなれる。
 誰かになることで誰の幸福でも享受できる。
 残念ながら“私自身”には長時間なれないけどね」

 顔には天魔雄神の文様が未だに消えていなかった。
 不完全羽化の状態で原型の力を振うのは負担がかかるようだ。

「・・・つまんねー奴だなー、お前!
 せっかくだからお前の愛しい者の顔にでもなってやろうと思ったのに、
 お前の心の中には誰も居ないじゃないか」

 波洵の足がギロチンのようにギラギラと輝き、
 風を切る音と共に包帯男の方へと振りかぶられる!

744???:2012/01/06(金) 23:12:08 ID:EK/9fLvc
>>743
「そうだ俺だ!!ぶっちゃけていうとコイツほど強くないがな!!
 イケメン度では俺が圧勝しているぞ!!」
「定番のボケだけどな、そう言うのは包帯取ってからにしろよ?」

武器である爪を使うために一度解かれてから、
彼の全身を満遍なく覆っていた白い包帯ははらりと、それぞれが緩んで解けそうになった。

「気遣いを不意にしてスマンな!!でもこればっかりはどうしようもない!!
 俺は坊ちゃんとも違って慕う両親がいないからな」

彼も戦闘態勢になったのだろう、一気にその緩んだ包帯を剥ぎ取り脱ぎ捨て、
包帯にいつも包まれていた姿を外に晒した。
その姿は、強烈なまでに異様であった。

頭は猩々であるにも関らず、毛におおわれた首から下は虎のソレ。
いうなればキマイラである彼は、瞳孔に獰猛な光りを放っている。
そして、外からでも感じれる程の獰猛さは伊達ではなく、
野生の獣並み、いやそれ以上の俊敏なフットワークでそれらを回避した。

瞬間爪をくぐりぬけて波旬へ更に急接近した彼は、
攻撃を終えて少しの隙を見せる彼女の顔へ、右の詰めを大きく振りかぶって引き裂こうとする。

745波洵:2012/01/06(金) 23:26:35 ID:tElbSrz.
>>744

「ちっ!」

 波洵の背中から石英の翼が突如生え、閃撃から身を守る。
 石の翼はガリガリと音を立て、4本の傷が残された。

(屈辱だ、元とはいえあの女の体に変化させられるなんて・・・!!)

 波洵がとっさに思い浮かんだ身を守るものがこれだった。
 野生そのものであるキマイラの連撃に息つく間もなく守りで手一杯にされてしまう。

「このっ! ケダモノがぁ!!」

 右手を巨大な骸骨に変化させ、
 キマイラの眼前を覆い尽くすように掴み掛る。

746???:2012/01/06(金) 23:37:28 ID:EK/9fLvc
>>745
「坊ちゃん!!農夫!!ここは何も言わず退散してくれ!!」

変容した彼女の片腕が彼に襲いかかるまでの少しの間に、
彼は仲間の方を振り返り、渾身の大声で彼らに撤退を促そうとした。
反撃や防御をせずに仲間を慮ったことで、
先ほどまで回避していた波旬の手を避ける事は出来ずに、顔面を大きく包んで掴まれてしまう。

「言われなくても逃げるわ。ここがお前望んだ場所だろうからな」
「くすくす、僕達だってあなたに敵もろとも口尽くされるなんて御免ですから」

なんとか農夫の回収に成功した神代は、
最後に彼の隣に女性が取り残されている事を確認してから、颯爽と撤退してしまった。

747???:2012/01/06(金) 23:43:27 ID:EK/9fLvc
>>746
訂正です
口尽くされる×
喰い尽くされる○

748波洵:2012/01/06(金) 23:46:44 ID:tElbSrz.
>>746

「・・・」

 貪欲で彼の心を見透かしていた波洵は目を細める。
 骨が軋りながらキマイラの頭部を締め付けた。

「馬鹿な奴」

 捻じ切れて手の付けようもないほど腐敗した心を持つ神代や、
 純朴な仮面の裏に、残忍な下心と身を焼くような炎を持つ農夫とは異なり。

 唯一真っ直ぐで、仲間意識のようなものを持った・・・救いようのある心だった。

「馬鹿な奴」

 もう1つ波洵はそう呟くと、左手を研ぎ澄ませ、心臓部を目がけて撃ち放った。

 だがまだ何か企んでいるようだな、これで終わりじゃあないようだ。
 見せてもらおうじゃないか。

749???:2012/01/06(金) 23:58:30 ID:EK/9fLvc
>>748
「二度も言う事は無いだろ!!俺も頭が足りない事は把握しているぞ!!
 でもここだけは逃げる選択肢を選ぶことは出来ないんでな!!」

近くにいるというのにあいも変わらずな大声で答えた彼のその胸へと、
波旬の容赦のない一撃は放たれる。
しかし、その一閃は彼の胸の数センチ前まで前進しただけで止められてしまう。

だが止めたのは彼ではない。
まるで庇うようにして間に割り込んだ、先ほどまで一言も言葉を発していない彼女であった。

「いや、こんなカッコいい登場で防いでもアンタがこれからする事になんら、
 微塵も影響は与えないのは分かってるんだけどさ・・・
 でもやっぱ脊髄反射でとめちゃうよね、偉そうな事言って申し訳ないけど」
「いや気持ちは十分理解しているぞ!!なによりもこれはお前の体でもあるからな!!
 それに、これからどうせ死ぬんだからと、一回ぐらい目立ってみたかったんだよな!!
 俺の愛おしい胴体よ!!」

胸は波旬によって一突きにされ、そこからは血が止めどなく流れていた。
そして庇われた彼はなおも大声で彼女を労わり、
頭から彼女を喰らった。

750波洵:2012/01/07(土) 00:11:57 ID:tElbSrz.
>>749

「なんだ・・・、こいつ!」

 止められた刺突。
 割り込まれた突然のイレギュラー。

 突然のことに混乱する波洵だが、
 やがて心を読み取り全てを悟る。

「そういうことか・・・、面倒な・・・!」

 ガツガツと“分離した自分”を貪る光景に奥歯をキリリと噛んで見守る。

「どーせ死ぬ・・・か、死に場を求めていたって訳ね。
 ・・・下らない。下らないな、全くもって下らない」

 それを見つめる波洵の目はどこか物悲しそうだった。

「いーよ、かかってこい。そんなに死にたいんならお望み通り殺してやるよ」

 波洵は再び全身の骨格を変えるような変化をする。
 その果てに行き着く姿は・・・。

751???:2012/01/07(土) 00:22:39 ID:EK/9fLvc
>>750
ぐちゃ、ばりっ、
と、肉や骨を牙で咀嚼する嫌な音がこの場に響き渡る。
頭部は一口で飲まれた為に彼女は即死し呻くような声は無く、
数秒で唯の肉塊となった女性の体を、しばらく彼は何も言わずに貪り続けた。

「またせたな!!目の前でこんな酷い事をしてしまって申し訳ないとは思っている!!
 だがこれ以外手段はなくてな!!」

全てを食い尽くして、彼女の体は一欠けらたりとも後には残っていない。
むくっと顔を上げた彼の体に、その途端変化が始まる。

「でも悪いが、もう少し待ってもらうぞ!!シッポの部分の奴が以前死んでしまってな!!
 今代わりを体に吸収するところだ!!」

肉や骨が突然変化を始める為に発生する水気の含んだ音を立てて、
終に彼の胴体に当たる部分は、狸のそれに変化した。
そして次の動作としてどこからか取り出された物は、蛇の鱗である。
彼は波旬に一言告げてから、それを一飲みにする。

「作業はこれで終了!!取りあえずはこれが俺のフルスタイルだ!!
 さっそく戦闘に戻っても良いぞ!!」

そして生えるは蛇の尾。
しかしそれは一匹などではなく、まるで不死鳥の尾羽のように百を超える大群であった。

752波洵ver窮奇:2012/01/07(土) 00:34:20 ID:tElbSrz.
>>751

「よっと、こっちも準備OKだ」

 波洵が変化したのは、なんてことはない。
 彼女の人間形態が少し大人になった姿。

「この姿に深い意味はないよ、ただ」

 ニヤッと、少女の頃よりも数倍は毒々しい笑みを浮かべる。

「お前が榊よりも先にコイツに会ってたら、
 もう少しマシな死に場所が得られたのにねっていう皮肉だ」

 両手には六芒星の魔方陣が浮かび上がる。
 二の句を告げず、波洵は駆け出しその巨躯の懐へと潜り込む。

「星を落とす魔法」

 拳に乗った紫の六芒星が閃光を上げて炸裂する。

753???:2012/01/07(土) 00:50:25 ID:EK/9fLvc
>>752
彼の姿は、鵺。
先ほどまで隣で付き添っていた女性と、
榊が以前メリーから回収した仲間であったメデゥーサの力の残滓を飲み込み、
終に彼の体は頭は狒々、体は狸、手は虎で尾は蛇の、伝承にも残る物となった。

「言っておくがあいつに罪は無いぞ!!俺はもとからどうせ復讐を夢見てただろうからな!!
 生まれてすぐ川に流されるなど、まともに育てるわけがないだろ!!」

目の前では波旬が強烈な力を携えてこちらを狙っている。
それを黒く濡れた目で視認した鵺は、
むしろ避けるのでなくこちらも全速力で、虎の足を生かし急接近を始める。

「ぐっ!?」

だが、あの伝説の悪人の農夫とは違い鵺は所詮まがい物。
更に未完成品である彼に波旬を打倒する力は無く、腹部に重すぎる一撃を喰らい、
弾けるように飛ばされ近くの近く変化によって生まれた岩に叩きつけられる。

「つ・・強いな!それで・・・こそ!!
 俺が神世より憎んで憎んで憎みきった天敵だ!!」

衝撃は深くダメージを与え、口からは血がたまらず吐きだされた。
しかし、足がダメージによってわなわなと震えているものの、
目に灯る火は未だに消えていない。

「どうやらお前のその技!!両手が聞かないと発動できないらしいな!!
 定石通り攻めさせてもらうぞ!!」

ここが踏ん張り所だと鵺は自身に鞭を打ち、
また虎の足の俊敏なフットワークを生かして、波旬との距離をぐんと縮め、
更に対応の遅れる彼女の両手足を、尾にある蛇の大群によって拘束した。
身動きのとれなくなったであろう彼女を、固定しまま鵺は鋭い爪を振りかぶる。

754波洵ver窮奇:2012/01/07(土) 01:09:37 ID:tElbSrz.
>>753

「!?」

 絡み付く数多の蛇たち。
 両の手の動きが封じられ、巨大な爪が眼前に振り下ろされる。

「どうかな・・・?
 全くどいつもこいつも男は私にしがみ付きやがる」

 波洵は迷うことなく蛇の絡んだ両腕ごと発破する。
 蛇の物と波洵の物が混じり合った血飛沫が舞った。

 巨大な爪を躱した先には、両手首のなくなって骨をむき出した波洵がいた。

「墓に刻むのに名前がないと不便だから、お前に5秒で考えた名前をやるよ」

 骨のむき出した腕の先に紫の六芒星が展開し、
 ただ向かってくる狒々の顔へと向けて、撃ち放った。

「檮杌、人面虎足で長い尾を持つ化け物。
 酷く馬鹿で人の教えを決して聞かないらしい・・・ぴったりだろ? 檮杌よぉ」

 紫の六芒星は眩い光を上げて、炸裂した。

755???:2012/01/07(土) 01:26:04 ID:EK/9fLvc
>>754
拘束に用いた自らの尾を突然に爆散され、
鵺はその余りにもの痛みに耐えきれず、頭を仰け反らせて宙に吠えた。

痛みは彼の死への恐怖、作戦や思惑を頭から消し去ってしまったのだろう。
何も考えず空白となった自身の世界を、
ひたすら突き進んで目の前の波旬を打倒しようとした。

まんまと死へのギロチンがそこで待ち構えているといのに、
鵺は躊躇も何もなく、ただひたすら飛び込んで、彼女の六芒星を体への通過を許した。

「」

技を喰らっても、先ほどのように体は後ろへ吹き飛ばされなかった。
吹き飛ばされることない程に、彼は全身に全力を以って前進したのだ。
しかし、体に受けるダメージは吹き飛ぶ事によるのエネルギーの発散もできず、
全てを受け止めてしまったばかりに致命的な物となる。

「これほど何もかもを捨てたのに・・・やっぱりお前らには届かないのか・・・
 俺の・・・完敗なんだろうな・・・」

そこら中が印によって傷つき、体から溢れ出る血液でどこから出血しているかの判別も出来ない。
全身が赤く染まった彼はゆっくり口を開き、彼らしくもない弱った声を吐く。

「檮杌・・・か悪くはないぞ・・・。でもな・・・やっぱり名前は必要・・・ない・・・
 俺には・・・前から名前があった事を・・・呪われた名前があった事を・・・
 今更に思いだしてしまったからな・・・」

ずたぼろの捨て布のようになった彼は、
それでもまだ動けない体になった筈なのに、足を止めず波旬へと歩みと進める・

756波洵ver窮奇:2012/01/07(土) 01:32:52 ID:tElbSrz.
>>755

「逆だ、馬ー鹿。捨てようとするから届かないんだよ。
 生まれてきたからには、なんでもかんでも欲しがってなんぼだろうに」

 波洵は変化を解いて、先ほどのような少女の姿へと戻る。
 爆散した両手首は未だに無いが、肉に包まれ止血された。

「へぇ、私のネーミングセンスを侮下にするとはいい度胸だねぇ。
 言ってごらん、呪われた名前とやらを」

 波洵は、先ほどよりも毒のない笑みを浮かべながら。
 歩み寄る鵺に詰め寄った。

757???:2012/01/07(土) 01:49:01 ID:EK/9fLvc
>>756
「何を欲しがってもな・・・届かないのだ・・・。他の何を望んでも・・。
 これがないと思うだけで・・・途端に何もかもが色褪せる・・・」

体だけでなく、口から咳き込んで吐き出される血液の量も、
確実に彼の終わりは近いのだという事を告げている。

「はっは・・・やはり気づいてはくれないのか・・。確かにここまで・・・変位して・・・
 俺を誰だと知ってくれなど・・・土台無理だな・・・

 第一名前を・・・今の今まで忘れていたのだ・・・。これは多分・・・榊の仕業だがな
 そのせいで俺は・・・不必要に復讐の炎を燃え上がらせた・・・」

獣の喉を低くくぐもって鳴らし鵺は静かに笑う。
そう、せめてもの何かがあれば、きっと彼は多少の踏み止まりを出来たのだ
そして本来、彼は鵺と呼ばれるような存在でもなかった。

そもそも何もなかった、魂の位置も名前も存在もなかった事にされた彼だからこそ、
何もないこの器にあらゆる獣を詰め込み、キマイラの終着点として鵺と成れた。
もし名前の一つでもあれば、彼はその名前の通りにごちゃ混ぜになり、
変遷に変遷を繰り返す必要などなかったのである。

「だが・・・最後に思い出せてよかった・・・。少なくとも俺は・・・名前だけはもらっていたのだ・・・

 ヒルコ、と」

何もない神。
不具として生まれ、何かを手に入れる手も、何かを見に行く足もなく、
末路には彼らの子供としての事実すら、なかった事にされた神。

758波洵:2012/01/07(土) 02:06:02 ID:tElbSrz.
>>757

「・・・」

 倒れた骸を見下げて、波洵は不機嫌そうにポツリと呟く。

「檮杌の方がいい名前じゃん、まぁ私が言えたことじゃないけどさ」

 波洵は燃え上がり、塵と化していくヒルコを見下ろし。
 誰にでもなく問いかける。

「波洵とヒルコの何が違ったんだろうね」

 生まれてから108年間、夜行神の中に放置されていた波洵。
 生まれてすぐに隠岐へと流されたヒルコ。

 両者の間に大きな差はあったのだろうか。

「ほーんとに、榊じゃなくて先にあの女に会っときゃよかったのにねぇ」

 私よりよっぽど向いてたよ、と言いながら。
 波洵は背後に生い茂る巨木の枝を切り落とし、
 刃物に変化させた指で素早く彫刻をする。

「じゃーな、ヒルコ。腹の中の女とも仲良くやれよ」

 波洵はポイッと小さな位牌を投げ捨てると、
 冷めた目は何か遠くのものを見据えていた。

「予想以上にくだらねぇ女だな、榊。
 誰かを幸せにも不幸せにもできないくせに、一丁前に黒幕ぶりやがって」

759波山&おとろし:2012/02/04(土) 22:31:40 ID:tElbSrz.

 町からやや離れた山里の森。

「ああああああああああああああ! 寒みぃ!!
 死ね! 冬死ね! 超死ね!!!」

 今日も威勢だけはいいニワトリ・波山。
 人にもはっきり聞こえる声で堂々としゃべっている。
 こんなところを人に聞かれでもしたら、天才志村動物園行である。

「おい! なんか面白い事やれ!!」
「ぐぅお!?」

 突如無茶振りされる隣の透明な巨大妖怪・おとろし。
 でっかい頭をかきながら、困り果てていた。

「おっ! なんか、人が来るぞ!! へへへ、丁度いい!!」
「うご?」

 波山はドロンと巨大なニワトリに変化する。

「妖怪としての本分だ!
 あいつ化かしてやろうぜ!!」

760現人中:2012/02/04(土) 22:37:22 ID:zj2aQgR2
>>759
「なにやら、さわがしいな・・・っと」
にぎやかな話し声を聞き取ってかふらふらと近づいてくる人影

「・・・さてさて、何が起こるかねぇ」
その人影、目が完全に隠れるほど深く帽子をかぶった青年は
のんびりとした足取りで話し声の元へと歩いていく
気配が極端に薄いおかげで時々見失いそうになりそうだ

761波山&おとろし:2012/02/04(土) 22:43:54 ID:tElbSrz.
>>760

「ヒャッハーーーー、汚物は消毒だぁあああ!!」

 突如青年の周りから燃え上がる、火柱が吹き上がり包囲する!
 赫々と燃える紅蓮の炎は寒気を吹き飛ばし、ジリジリと肌に照り付ける。

 火柱の向こうで巨大なニワトリが羽を散らしていた。


 突如、青年の体が宙に浮く。
 熱気が上へ昇り、あぶり焼きのようにされるだろう。
 そのままグングン空に昇っていき、地上十数メートルまでに上昇。

 熱気はだいぶ薄れたが、今度は足がすくみそうなほどに高い場所へ宙吊りだ。

762現人中:2012/02/04(土) 22:52:46 ID:zj2aQgR2
>>761
「おーおー、冬だっつーのにずいぶんと元気なやつらだな・・・っと」
何かを振り払うような動きで回転し、そのままそこから自由落下

「しかし化かす相手ぐらい一応確かめたほうが無難だな」
すた、ときれいに着地、この一連の動作だけで既に普通の人間ではないことがわかる

「もしこれで俺が凶暴なやつだったら大騒ぎだぜ?」
なぜか確認口調で首をかしげる、目線は鶏・・・ではなくもう一人のほうへ

763波山&おとろし:2012/02/04(土) 23:03:52 ID:tElbSrz.
>>762

「あん!? あの高さから落ちて平然としてやがる・・・。
 こいつ、人間じゃねぇな!!」

 波山は翼を広げ、妖気を振りまく。

「だったら、手加減なしだ!! フルバーナーだっ!!!」

 地面から巨大な火柱が吹き上がり青年を飲み込む。
 幻覚の火災、されど熱は本物のように感じるため、常人ならショックで気絶するほどである。

「ごぉ!!」

 状況を察してか突如、空から青年のいる場所へ大質量が落下する!
 妖怪・おとろしの落下が迫る。

764零なか:2012/02/04(土) 23:06:01 ID:BQ990e1A
避難所見て吹いてしまったのは私だけでしょうか←

765現人中:2012/02/04(土) 23:13:41 ID:zj2aQgR2
>>763
「ふむ、ご名答俺は人間じゃねーよ」
けたけたと笑う青年、緊張感など微塵も無い

「ほうほう、これは幻覚の炎か・・・まずまずだな」
腐りきっても超長生きな守り神、幻覚などに対する耐性は万全らしく割りと平然

「そしてだ、潰そうとするにももうちょっと工夫するべきだな・・・ふんっ!」
まさかの超重量を両手で真っ向から受け止める青年、わずかに残ったアグレッシブな能力のひとつがこの身体能力である
「・・・・・・・・・(さすがに真っ向から受け止めるのはやめとくべきだったなぁ・・・)」
・・・といってもさすがに多少無理はしたらしく微妙に顔色が悪いというか後悔の色

766波山&おとろし:2012/02/04(土) 23:23:02 ID:tElbSrz.
>>765

「んだとぉ! 体感温度800℃(当社比)だぞ!!」

 幻覚の火柱は効果がないとわかるが、
 いかんせんこのニワトリ、手数がそれほど多くない。
 幻覚に敵味方の判別を付けられるようになっただけ、成長したといえるが。

「クソがぁ!」

 性懲りもなくまた火柱、しかし・・・。

(ケケケケケ! 鬼火・雀火!!)

 幻覚の中に本物の鬼火の礫を仕込む!
 幻術師にはすっかりお馴染みの、幻術で攻撃を隠す手!!

 現人の足元の地面は陥没していた。
 単純計算でおとろしの体重はマウンテンゴリラ4頭分(当社比)である。

「ぐぉおお!!」

 受け止められたおとろしは唸った。
 透明な体は徐々に実態が浮き出してくる。
 ひどく頭でっかちで黒い長毛の狒々が姿を現した。

767現人中:2012/02/04(土) 23:34:31 ID:zj2aQgR2
>>766
「はっはっは、もっと驚け」
全く緊張感の無い青年、隙だらけにも見えるが

「おっと、危ない相手ガード!!」
受け止めていた相手を"本物"の炎への盾とするように投げ下ろす
「まぁなんだ・・・そういう不意打ちもよくあるものってこった!!」
そして万全を期すためか木の中へと飛びのく

「年季の差ってやつだよ」
そして森へと入ったとたん僅かにあった気配すら完全に消え、声のみが響くように聞こえる

768波山&おとろし:2012/02/04(土) 23:41:14 ID:tElbSrz.
>>767

「あんぎゃあああああ!!!」
「あぁっ、クソがぁ!」

 おとろしは叫びをあげて、地面を転げまわる。
 ぶすぶすと煙を上げて、ぜーはーしていた。

「チキショー・・・隠れやがったな!」
「ぐぅーぶぅー・・・」

 肩で息するおとろしに向かって翼を上げる。

「よっしゃ、プランDでいくぞ!!」
「ぐぉ!?」

 おとろしは、ギクリとしたが渋々姿を再び消す。

「ケケケ、さぁ出てきな。これでシメーだ!!」

769現人中:2012/02/04(土) 23:48:11 ID:zj2aQgR2
「とりあえずそこのでかいの、これ付けとけ」
ひゅん、風きり音がしておとろしに向かって傷薬が飛んでくる、どこにでも売っている火傷用の物だ
「付けるだけでも気分的に直りが早くなる」
薬が飛んできた方向には、薬を飛ばすためだけのためと思われる簡単な仕掛け、位置の補足はできそうに無い

「出て来いって言われていく馬鹿がどこにいるんだかね」
笑い声、姿が見えないだけに腹立たしい

「んじゃ、小手調べと行こうかね?」
ごう、と先ほどとは比べ物にならない音と共に高さがことも二人文ほどある岩が投げ込まれる、小手調べとか言うレベルじゃない

770波山&おとろし:2012/02/04(土) 23:58:42 ID:tElbSrz.
>>769

「おわぁああああああ!!」

 波山、岩から不通に逃げる。

「あ、危ねぇじゃねぇかボケぇえええええええ!!
 出て来いよこんにゃろーーーーーーっ!!」

 プランD、どうやら相手が出てこないと話にならないようだ。

「おい、おとろし!」
「ぐぉ!」
「ケケケ、幻覚が効かねぇならこいつはどうだ!?」

 空から突如、岩の飛んで来た方向へ瘴気の弾が数多に撃ち込まれる!
 砲弾は当ると爆ぜて地面を抉り、強烈な刺激臭を撒き散らす。

 まともに吸い込んでしまえばクロロホルムのような作用を引き起こすだろう。

771現人:2012/02/05(日) 00:08:09 ID:zj2aQgR2
>>770
「はい、はずれ。」
岩が飛んできた場所には既に青年の姿は無く、微妙に腹の立つ声が響くのみ

「つーかあぶねぇはこっちの台詞だろう、常識的に考えて」
まぁ急に襲われた側なのでごもっともといえばごもっとも

「さて?岩がよけれたなら次はこいつだな」
しゅーー・・・、と不穏な音が響いたと思ったら次々と飛んでくるロケット花火
危険度は大幅に下がったが数と速さは大増量である

772波山&おとろし:2012/02/05(日) 00:26:01 ID:tElbSrz.
>>771

「ぎにゃああああああああああああ!!」

 パンパンと弾けるロケット花火に波山は飛び跳ねながら逃げ回る。

「このヤロー!! 『絶対に人に向けて火をつけないでください』って書いてあるだろうがぁあああ!!」

 お前は人じゃないだろ。
 この口ぶりからどうやら似たようなことを以前やろうとしたことがあったらしい。

「ぐぬぬぬぬ・・・、出てこねぇって言うんならこっちにだって考えがあるぞこのヤロー!!」

 波山はそう言い放つと翼を大きく広げ・・・

「このまま放置して帰る!!」
「ぐおっ!?」

 あまりに突飛な提案におとろしは空から滑り落ち、地面にすっ転んだ。

「バーカバーカ! 一生そこに隠れてろーーー!!」
「・・・」

 波山は変化を解くと、自信満々なままスタコラサッサと逃げ出した。

773現人:2012/02/05(日) 00:33:22 ID:zj2aQgR2
>>772
「バカヤロー!ルールと記録と限界は破るためにあるんだよ!」
今言う台詞ではまかり違ってもない

「まぁ、お前が帰ったら俺も普通に帰るがなー」
ごく普通に返してきやがった

「しかしお前も災難だな」
そしてぶっ倒れたおとろしにむかって声がかかった


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板