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避難所
1
:
名無しさん
:2011/07/26(火) 23:35:39 ID:BQ990e1A
パー速が落ちた時
パー速が使用されている時等に
2
:
田中 夕
:2011/07/27(水) 01:08:46 ID:c1.PBF/s
前
>>998
前
>>999
前
>>1000
「わかった!」
「黒蔵、零、露希、瞳……いつも迷惑かけてごめんね」
そう決まり、改めて田中は四人にお辞儀をする。
「俺は瞳が来ても大丈夫だよ
………ただ姉さんが…コスプレに走りそう」
瞳が来るとなれば間違いなく姉がコスプレを用意しそうな気がする。
黒蔵たちのコスプレや女装で目立たないが、店員三人娘は男装、メイド服、巫女服、和服など曜日によって着せられている。
もっとも店の正装とお客たちは勘違いしてるが…
3
:
名無しさん
:2011/07/27(水) 01:12:01 ID:???
>>前999?1000
>>2
「瞳がそうしてくれると助かるよ。
夕、俺は今日から神社へ移るって店長さんに伝言頼んでもいいかな?
瞳は女の子だから、相部屋って訳にはいかないだろうし」
黒蔵は喫茶店に居ても神社に居ても、店長さんと巫女さんが入れ替わるだけなので
その不幸度はあまり変わらない。
「夕と零はこのまま喫茶店に行くの?
露希がここに残るのなら、瞳には二人の警護をお願いしたいんだ。
ホントは俺がついていたいんだけど、この通りこれから出勤だからさ」
零が承諾してくれたので、黒蔵の抱える心配は少し減った。
それに瞳がついていてくれれば、零と田中君の帰り道は安心だろう。
「それじゃ俺、そろそろ行かないと遅刻になっちゃう」
黒蔵は皆に手を振って、山道を下っていった。
(あとはこの件を狼にも相談して、袂山を守るために仕事を休んで貰えたら、
荒っぽいこと抜きで狼をあの医者から遠ざけられるんだけどな……)
黒蔵の思惑どおりに東雲犬御が動いてくれるかどうか、それはまだこれからの話である。
//ではこの辺で落ちます。皆さん、絡みどうもありがとうございました。
4
:
零「」&露希『』
:2011/07/27(水) 01:21:30 ID:BQ990e1A
前
>>1000
,2-3
「私は夕君にすべて任せるよ。」
『じゃぁ、田中君、瞳、零をよろしくね。』
零も泣きやんで、新しいことへ一歩踏み出そうとしている。
これから世話になる、田中君や瞳に、深々と零はお辞儀をした。
「(やむを得ない…。私にだって策はある。
あいつに協力して貰おう。)」
この後、零は田中君とノワールへ、露希は家へと戻るだろう。
//では、私もこの辺で。
絡み乙&ありがとうございましたー!
5
:
瞳
:2011/07/27(水) 01:32:44 ID:SmXQZqJk
>>2
「謝らないでくれ、夕が謝る必要なんてないよ。友達じゃないか。友達を助けることを迷惑だなんて思わないよ。」
友達は支え合い助け合うもの。それが、瞳の考えなのだ。
「コ、コスプレ?」
言葉の意味がよくわからない様子。しかし、瞳は普段から着物姿なので、さほど抵抗はない…かもしれない。
>>3
「ああ、任せてくれ!二人は、私が責任を持って守るよ。」
自信満々で言った。ただし、油断があるわけではない。きちんと、責任を持って彼らを守るつもりだ。
「じゃあな、黒蔵。」
山を下りる黒蔵を手を振って見送った。
>>4
「ああ、もちろんだ。」
いっそう気合いの入る瞳。また一つ成長した今の瞳なら、きっと大丈夫だろう。
そして、零と夕と共にノワールへ向かうだろう。
/自分もこのへんで。お疲れ様でした。絡みありがとうございます!
6
:
田中 夕
:2011/07/27(水) 01:35:02 ID:c1.PBF/s
>>3
>>4
>>5
寧ろ店長より巫女Bの方が大問題なのだが……ツッコミ担当の巫女Aや止めてくれる巫女さん達が沢山いるため不幸度は五分五分だろう。
「わかった。姉さんには伝えておくよ。またね、黒蔵」
「ありがとう…
うん。じゃあ零、瞳。行こう
またね、露希」
そう言いながら二人をノワールまで案内するだろう。
店内に入ったら沢山の妖怪の気配に驚くかもしれないが…
余談だが瞳を見た姉は「執事服着てくださ〜い。似合いますよ〜〜」と目を輝かせながら迫ってくるだろう。
下手したら店員として働かないか?とも聞いてくるかもしれない。
その間、夕は店員の猫又さんと零を部屋に案内するだろう。
/皆さんお疲れ様でしたー
/絡みありがとうございます
7
:
澪
:2011/07/27(水) 21:25:33 ID:HbHPxpxY
山道を歩く一人の青年。
手には小包と地図を持ち、何かを探しているようだ。
しばらくして、とても大きな家を見つける。
「これが・・・宝玉院家・・・。三凰の家・・・。」
ごくりと息を呑み、恐る恐る、扉をノックした。
8
:
飛葉
:2011/07/27(水) 21:33:18 ID:SmXQZqJk
>>7
「はい。どなたでしょうか?」
ギイイと音をたて、洋館の扉が開かれる。扉を開いたのは、髭をはやし、杖をついた老人。
「おや、あなたは三凰坊ちゃまの…
三凰坊ちゃまに用事ですかな?」
9
:
澪
:2011/07/27(水) 21:38:51 ID:HbHPxpxY
>>8
「あっ、飛葉さん!今日はその・・・三凰のことで貴方方の話を伺いに参りました。」
ちょっぴり驚くかも知れない。
だが、澪は真剣に三凰の事を想い、悩んでいる。
そう、飛葉が二仙を想うように。
「・・・三凰のお父様は居ますか?」
10
:
飛葉
:2011/07/27(水) 21:44:33 ID:SmXQZqJk
>>9
「私達の…?」
少し驚いたが、澪の真剣な表情を見て、納得する。
「わかりました。お入りください。二仙様は、奥にございます。」
扉の中には、廊下。その一番奥の部屋に、二仙はいるようだ。
11
:
澪
:2011/07/27(水) 21:49:23 ID:HbHPxpxY
>>10
「ありがとうございます、飛葉さん。」
ニコリと笑って、奥の部屋へと案内して貰う。
名門家なだけに雰囲気め違い、またもや息を呑む。
がちゃりと扉を開けると、そこには二仙らしき姿が。
「貴方が二仙様ですか?ヤマタノオロチの澪です。」
12
:
二仙「」&飛葉『』
:2011/07/27(水) 21:59:12 ID:SmXQZqJk
>>11
「お前が、三凰の友人の澪か…
いかにも、私が宝玉院家の主、宝玉院二仙だ。」
その部屋は、二仙の部屋のようだ。部屋の中央には、テーブルと二対のソファー。壁には、歴代の宝玉院家の主のものだと思われる肖像画が並んでいる。
部屋の奥には、まるで社長が座るような椅子と机。そこに堂々と座ったどことなく、三凰に似た中年男性。それが、二仙だ。
「まぁ、座りなさい。」
部屋の中央のソファーを指差す。
13
:
澪
:2011/07/27(水) 22:05:45 ID:HbHPxpxY
>>12
「はい。」
ぺこりとお辞儀をして、ソファーへと腰掛ける。
二仙から発せられる妖気はどことなく三凰と似ていたが、性格は全く違っていた。
「その・・・。今回訪れたのは、二仙様は三凰のことをどう思っているのか尋ねにきたんです。
百鬼夜行の主を目指す三凰を、今後どうするのかを・・・。」
14
:
二仙「」&飛葉『』
:2011/07/27(水) 22:17:05 ID:SmXQZqJk
>>13
『どうぞ。』
二仙、澪、それぞれのそばに紅茶が置かれる。
「どうする、か。私は、できるだけ三凰の意思を尊重してやろうと思っている。奴が百鬼夜行の主になるつもりなら、支えるつもりだ。」
言った後、紅茶を一口啜る。
「だが、奴の実力ではあまりにも危険だと判断した場合は、諦めてもらうかもしれない。
まぁ、三凰の奴もわかっているのだろう。だからこそ、必死になっているのだろうな。」
三凰にとっては、納得のいかないことなのだが、これは息子を思う父親の考え。二仙も、三凰の事は大切なのだ。
15
:
澪
:2011/07/27(水) 22:27:36 ID:HbHPxpxY
>>14
「・・・・・・。」
紅茶を一口飲み、二仙の話を真剣に聞く。
父親としての息子への想いは痛いほど伝わってきた。
やはり、優しいお父さんのようだ。だが、澪は、夢を諦めさせたくないのだ。
「二仙様、二人で一つの主、と言うのは駄目なのですか?
僕は、自分を捨ててでも、三凰を助けたい・・・。だから、僕が三凰の右手となって一緒に主を・・・。」
16
:
宝玉院 二仙
:2011/07/27(水) 22:35:15 ID:SmXQZqJk
>>15
「考え方としては、間違っていないだろうな。だが、自分を捨ててでも、というのは関心できないな。
そもそも、三凰は助けを借りることはしないだろうな。」
再び紅茶を啜る。そして、澪に真っ直ぐ視線を向けた。
「澪よ。三凰がなぜ百鬼夜行の主を目指すのか、ご存じかな?」
17
:
澪
:2011/07/27(水) 22:42:10 ID:HbHPxpxY
>>16
「三凰は・・・僕を・・・」
と言い掛けた時だった。
「三凰が主になる理由」、これは澪も知らない。
「知りません・・・。教えて頂けないでしょうか?」
18
:
二仙「」&飛葉『』
:2011/07/27(水) 22:49:46 ID:SmXQZqJk
>>17
「三凰はな、どうやら私のようになりたいみたいだ。」
『三凰坊ちゃまは、幼いころから二仙様に助けられておりました。そんな二仙様を尊敬し、憧れているのでしょうな。』
二仙の話を、飛葉が補足する。二仙を尊敬しているのは、飛葉も同じだからなのか、このことは飛葉の方がわかっていそうだ。
「それで、私のようになる方法を探した結果、見つけたのが百鬼夜行の主になる、ということだったらしい。
だから、私達の手を借りずに、百鬼夜行の主になろうとしているようだ。」
19
:
澪
:2011/07/27(水) 22:56:18 ID:HbHPxpxY
>>18
「二仙様を目指そうと?」
確かに三凰は二仙を凄く尊敬していた。
そのことは澪にも分かっていたが、ここまでとは思わなかった。
二仙のことにも興味が沸いたようで、詳しく飛葉に聞こうとした。
「あの、二仙様、お時間ありがとうございました。
飛葉さん、二人でお話しませんか?」
20
:
二仙「」&飛葉『』
:2011/07/27(水) 23:04:52 ID:SmXQZqJk
>>19
「飛葉と話すのなら、別の部屋を使うといい。
それから、いつも三凰に付き合ってやってくれてすまないな。あんな奴だが、これからも、頼む。」
三凰に親しくしてくれている澪に感謝をしめした。
『私とですか、よろしいですよ。では、空いている部屋に行きましょうか。ついて来てください。』
そう言って、二仙の部屋から出る。
21
:
澪
:2011/07/27(水) 23:13:38 ID:HbHPxpxY
>>20
「三凰は・・・僕に光をくれたんです。暗い闇から助けてくれました。だから、三凰とはずっと一緒にいますよ。」
二仙に深々とお辞儀をして、別の部屋へと向かった。
「飛葉さん、話は巴津火から聞きました。僕達、どこか似てますよね。」
話、とは飛葉が話した事だ。巴津火が、三凰の事を尋ねてきた時に聞いたようだ。
小包の中には、澪の湖で取れる水を使ったお茶と、和菓子が入っている。
それをひろげ、飛葉に渡した。
22
:
飛葉
:2011/07/27(水) 23:23:33 ID:SmXQZqJk
>>21
今度の部屋は、会議室のような部屋。
「どうぞ、お掛けになってください。」
飛葉は、そこにあった椅子を引き、言った。
「おや、お聞きになったのですか。あの話を。
確かに…似ていますな。」
飛葉を助けた二仙と、澪を助けた三凰。
同じものを感じられる。やはり、親子なのだろう。
「わざわざありがとうございます。」
お茶と和菓子を受け取り、嬉しそうに礼を言う。
23
:
澪
:2011/07/27(水) 23:28:33 ID:HbHPxpxY
>>22
「飛葉さん、やはり二仙様はただ者では無いですね。
あの妖気の質といい、威厳さといい、普通の妖怪が身につけられる物ではありません。
それはやはり、多くの支えがあったからですか?
飛葉さんは彼をどう思っているのです?」
飛葉を真剣な瞳で問い詰める。瞳の奥が細くなり、睨みつけているようにも見える。
24
:
飛葉
:2011/07/27(水) 23:37:01 ID:SmXQZqJk
>>23
「でしょうな。二仙様には、数々の支えとなった方々がいて、その彼らとの別れを通してあそこまで強くなられたのです。」
親友や妻、そして飛葉。彼らの支えがあったからこその成長。そして、二仙を劇的に変えたのは親友と妻の死だったのだ。
「そんな二仙様を私は、心より尊敬しております。絶望より救ってくれた二仙様を」
25
:
澪
:2011/07/27(水) 23:44:14 ID:HbHPxpxY
>>24
「やはり二仙様にも辛い過去がありましたか・・・。」
真の強さを持っている人の過去には、辛い物があると聞いたが、その通りだ。
二仙も、それを乗り越えたのだろう。
「・・・飛・・・・・・葉さん、貴方の様に、三凰を・・・信頼すれば・・・いつか、いい関係になれますか?」
二仙への飛葉の気持ちに感動したのか、涙を零した。
飛葉、この人もまた凄いのだ。
26
:
飛葉
:2011/07/27(水) 23:50:51 ID:SmXQZqJk
>>25
「なれますとも。三凰坊ちゃまは、ああ見えて優しいところもありますし。三凰坊ちゃまも、澪さんのことを信頼してくれますよ。」
そう言って、優しく澪の頭を撫でる。
27
:
澪
:2011/07/27(水) 23:59:01 ID:HbHPxpxY
>>26
「飛葉さん・・・・・・。」
優しい飛葉に、心を撃たれてしまった。ぶわっと涙を溢れさせ、静かに泣いた。
しかし、直ぐに泣き終わり、飛葉を見た。
「三凰だけでなく、僕は飛葉さんの助けにもなりたいです・・・・・・。
飛葉さん、これからもよろしくお願いします。」
28
:
飛葉
:2011/07/28(木) 00:05:56 ID:SmXQZqJk
>>27
「私の…?ありがとうございます。こんな老人の助けになりたいなんて…感激でございます。
ええ、よろしくお願いします。」
よほど嬉しかったのか、笑顔で言った。
29
:
零なか
:2011/07/28(木) 00:11:09 ID:HbHPxpxY
>>28
「お時間ありがとうございました。僕はこれでおいとまさせて頂きます。」
飛葉の存在、それは澪の心を深く癒してくれるのだ。宝玉院家にはお世話になりっぱなしである。
「それでは、飛葉さん!」
最後は明るい笑顔で、家を後にした。
//絡みお疲れ様でしたっ!
30
:
飛葉
:2011/07/28(木) 01:00:43 ID:SmXQZqJk
>>29
「こちらこそ、ありがとうございました。
よろしければ、またいらしてください。」
そう言って、入り口まで見送った。
「それでは、また。」
笑顔に、笑顔で返した。
/お疲れ様でしたー!絡みありがとうございます。
31
:
黒蔵
:2011/07/31(日) 01:01:13 ID:???
本スレ
>>919-921
(露希とアネさんアニさんの中には入りづらいし、この人もどっか胡散臭いし、
帰り道わかんないし、叡肖さん捕まんないし、俺どうしたらいいの?)
一人になって考え事をしようなんて思わなければ良かったと今更に後悔する。
「うん、一緒に帰りたい。でも、出づらいって」
露希に答えるorzな黒蔵は、雨子神の言葉に既に涙目である。
そして露希から穂産姉妹への問いかけに、なんとはなしに耳を傾けていると。
「あ、れ?」
嵐のようにアモールが去ってゆく。そして、不意にその姿が消えた。
(あの人、どうやって帰っていったんだ???)
黒蔵には良く判らないことが多すぎる。
一体何をしに彼が現れたのか、この迷いの空間の境目をどうやって越えていったのか、
そもそも彼は何故愛を語り始めたのか。
抱え込む不安をさらにかき混ぜられて、黒蔵は露希と双子神の顔を交互に見た。
「まさか、アニさんアネさんも居なくなるとか言わないよね?」
蟹も、双龍もいなくなった。露希と氷亜も、一時は危なかった。
かつては蛇神が、そして今は犬御が自分のせいで危うくなっている。
誰かを失うのはもう嫌だ。
黒蔵は答えを聞くのが怖くて、小さく震えながら身体を丸め
座り込んだまま膝をぎゅっと抱え込んだ。
それなのに、どうしても耳はしっかりとそばだててしまうのだ。
32
:
露希
:2011/07/31(日) 01:11:32 ID:HbHPxpxY
>>920
「アニさん・・・・・・ならば、ボクは忘れません。
この教会のようにはさせません。絶対迷わせません。
そして、堕落・・・するのを阻止します。これ以上、親しい人が消えるのは嫌ですから。」
雨子神の服を掴み、今度はこちらから彼女に顔を近づける。
そして、不安を打ち払うような笑顔を見せてあげた。
それが正しいことかは分からないが。
>>921
「えっ・・・さ、さようなら。」
結局、最後まで同様は隠せず。
おどおどしながら手を降った。
>>31
「黒蔵君、もしもその時が来るならば、ボク達でなんとかしよう。
ボクも、もう誰も失いたくないから。」
震える黒蔵をそっと抱き、背中を摩った。
黒蔵だって、アニさんアネさんを失いたくないのだ。
「・・・ボクはそこら辺で花を摘んでるから、帰る時には声掛けてね。」
と言い、花を摘み始める。だが、黒蔵が声を掛けようとした時には、露希は居ないだろう。
//明日は早いので、落ちます!
/三人共、絡みお疲れ様でしたっ!
33
:
穂産姉妹
:2011/07/31(日) 01:19:35 ID:d.Sq2D9c
>>921
『分かった・・・覚えておく・・・』
「あなたが本当に神に仕える方でしたら、ご縁があるかもしれませんね」
好きなままに語っていった男の背中を、
穂産姉妹はどこか悪意のこもった笑みで見送る。
「本当の神様、でしたらね」
>>31
しかしそんな悪意の笑みも、
隣から聞こえてくる言葉を聞いたとき、ふっと二人は消した。
そして黒蔵のほうに振り向いた、二人のその顔には、
先ほどの表情が嘘のようなほどの笑顔。
『ゴメン・・・それはできない相談・・・。第一・・・
この世に永遠は無い・・・それは黒蔵も知っているじゃないか・・・』
「ただそれが、早いか遅いかというだけですよ。
私たちもみんなも、結局いなくなっちゃうじゃないですか」
だが笑顔とは言っても、悲哀を帯びたような薄い笑みで、
困ったように口角を上げるだけのもの。
そしてその僅かな笑顔から発せられた言葉に、
選び選ばれたような雰囲気がこもっているのはきっと、穂産姉妹の精一杯の優しさなのだろう。
>>32
『そう・・・ありがとう・・・
なら僕を・・・僕達を忘れないで・・・』
まるで太陽のように微笑みを与える露希。
その笑顔に雨子神の目元は危うく潤みそうになり、
それを誤魔化すためなのか強く、子供のように彼女を抱きしめた。
「さようならですね、あなたも目的地をを見つければ」
『出すことができる・・・とは言っても・・・
もしかしたら氷亜が・・・目的地になってるかもしれないけど・・・』
彼女の姿が消えてしまったので、
まるで姉妹の空言のようになってしまったというのに、
彼女達はこれといって気にするそぶりはなかった。
露希は聞いていたと信じているのだろう。
34
:
黒蔵
:2011/07/31(日) 01:31:22 ID:1gBuqmPQ
>>32-33
「う、うん」
露希に言われて頷いたものの、どうすれば良いのか判らない。
さらに穂産姉妹にやんわりと、願いを否定されてしまった。
「でも嫌だ。判っていても嫌なんだ」
姉妹を困らせたくは無いのに、黒蔵には駄々を捏ねることしかできない。
そんな自分が情けなくて、滲む涙を拭いたとき、手の中のケータイが震えた。
「…はい?」
『おーい、今どっちだ?黒蔵か?坊ちゃんか?』
回線の向こうから聞える衣蛸の声が、これほど嬉しく聞えたことはない。
「もしもしッ!叡肖さん?」
『おー、黒蔵のほうか。どした?そっちからかけてくるなんて初めてじゃないか…?』
また涙が、今度は溢れてくる。
そうだ、夜行集団には竜宮も協力しているのだ。
病院の件とは違い、この姉妹の事ならば、叡肖さんや蛇神に相談してもいいのだ。
多分黒蔵にもまだ、やれることがある。
「あのね、叡肖さんに相談したい…ううん、頼みたい事があるんだ」
涙でぼやけた視界を拭うと、そこは丘ではなくて、喫茶店ノワールの前だった。
(もしかして俺、帰ってこられた?)
ドアのガラス越しに、カウンターについた叡肖の背中が見える。
その背中に向かって、黒蔵は店内へと飛び込んでいった。
//この辺で〆ようかと。
35
:
穂産姉妹
:2011/07/31(日) 01:42:40 ID:d.Sq2D9c
>>34
言葉を選んでも、
相手がそういった感情になるのはある意味どうしようもないことで、
そんな反応も予感していた穂産姉妹は、さらに困ったようになった。
だから、その顔にはもう、悲哀と困惑しかない。
「?」
しかしそのときになった携帯電話の着信音。
その音に二人とも、このどうしようもない状況から救われたような顔つきになり、
彼には気づかれないようにほっとため息をつく。胸をなでおろして下を向き。
そして、二人ともが顔を上げたとき黒蔵の姿は、
迷いから抜け出したのか消え去り、残るは穂産姉妹だけであった。
「さようなら」
『とは言っても・・・僕達は迷っていたわけじゃない・・・』
その手に握られた十字架を、
かりん、と儚げな音を立てて破壊しその青く寂しい空に、
二人は行き場をうしなった瞳をなげやった。
「後二つ」
/了解しました!
/ではお疲れ様&ありがとうございました!
36
:
黒蔵「」 叡肖『』
:2011/07/31(日) 01:56:24 ID:1gBuqmPQ
>>35
「あのね、忘れられた空間にさっきまでいて、そこで夜行集団のアニさんとアネさんが堕落するとか…」
『おい、ちょっと待て落ち着け判るように話すか、さも無きゃ黙れ』
安心して気が抜けて、目を真っ赤にした黒蔵には上手く説明できない。
しかしそれでも、立場上夜行集団に協力することにはなっている叡肖に、
なんとか首を立てに降らせることに成功するくらいには、黒蔵はしつこく食い下がったのだった。
『…判った、何とかしては見る。だが、上手く行くとは限らないからな?
はぁ、あっちもこっちも忙しくなりやがって』
とは言え衣蛸のほうも、落ち着いたら黒蔵からきっちりこの代償を取り立てる気満々ではあるのだ。
(さて、なーにをさせてやろうかな?流石に食うのは無理としても……じっくり考える時間はあるか)
黒蔵の蛇生、今後も通常運行の予感。
//ではこれで。絡みありがとうございました!
37
:
解峯
:2011/08/01(月) 00:36:54 ID:1gBuqmPQ
本スレ
>>929-930
「袂山?」
解峯は陸の地名にはあまり詳しくない。そもそも陸にいた期間もごく短いのだ。
「露希ちゃんが知ってたか。なら先にこっちの姐さんを案内してやんなよ。
俺は何なら蛸の野郎でも探してもいいしな。
どうせあいつのことだ、色街で派手に遊んでる。直ぐ見つかるだろう」
解峯は腕組みしながら溜息をついた。
しかし今回に限っては珍しく、衣蛸は仕事で忙しくしているのだったが。
「でも、黒蔵が居そうなら、俺も袂山に行ってみるのもいいか」
露希の後を着いてゆくことにしたようだ。
「で、姐さんの会いたいのは、子供さん達にかい?」
露希の後を着いて行く道すがら、天多に尋ねる。
38
:
天多
:2011/08/01(月) 00:47:30 ID:/AfNAO.Q
本スレ
>>930
>>37
「七生?」
露希が口にした名前を聞いた途端、天多の目の色が変わった。
驚いたような、それでいて嬉しそうでもある。
「あなた七生のお友達なの?
偶然ね、犬御のことも知ってるのかしら。黒蔵、っていう子もお友達?」
初めて会った、仲間たち以外の四十萬陀の「友達」に興味津々のようだ。
解峯に尋ねられ、天多は少し考えてから答えた。
「正確には違うけど、子供みたいなものね。あの子たちが生まれた時から見てきたから。
もう近くにはいてあげられないけど、こっそり見守ってあげたいのよね」
そう語る横顔は、自分の娘息子を自慢げに語る母親そのものだった。
少しだって悲しみは感じられない。あるのは愛だけだ。
39
:
露希
:2011/08/01(月) 00:55:09 ID:HbHPxpxY
>>37-38
「犬御君も知ってるよ。七生ちゃんも犬御君も、ボクの大切な友達。
黒蔵君は七生ちゃんの彼氏・・・かな?」
普通に言ってしまったが・・・。だが、露希は天多の母性には気がついていたらしく、言っていいと判断したようだ。
しばらく歩き、袂山へと続く階段へと到着した。
「この上に、いると思うよ。」
40
:
解峯
:2011/08/01(月) 01:01:05 ID:1gBuqmPQ
>>38-39
「黒蔵ってのは俺のダチだ。付き合いはかれこれ、180年くらいにはなるか。
つい最近死に別れたもんで、こっそり様子でも見に行こうかと思ってな」
解峯は、まだ今は黒蔵に姿を見せるつもりは無いのだ。
不必要に死者が生者に会うことはするまいと決めている。
「何?あの泣き虫にそんな相手が出来てたのか」
露希の言う、七生と黒蔵の関係には少々驚いた。
蟹は蛸ほど色恋沙汰に詳しくは無いので、黒蔵の様子にも察する事は無かったようだ。
そうこうするうちに、石段の前についた。
「…この山には、今は黒蔵は居ないらしいな。姐さんの逢いたい気配はあるかい?」
しばし山を包む気配を読み、解峯はそう言った。
41
:
天多
:2011/08/01(月) 01:11:58 ID:/AfNAO.Q
>>39-40
「彼氏? あの子に? 本当? 黒蔵君って子かぁ。……あれ、犬御じゃなくて??」
話を聞いた天多は相当驚いた様子だった。
よほど意外だったのか、一人でふーん、へぇー、なるほど……等と呟いている。
だがしばらくして、何故か可笑しそうに笑い始めた。
「じゃあ犬御、フラれちゃったんだ! 可哀想に、あんなに尽くしてたのにねぇ」
フラれたというか、想いにすら気付かれなかったのだが。
それは置いておこう。
袂山へ続く階段を登りながら、天多は露希たちを振り返った。
「そうそう私、様子は見たいけど、あの子たちに姿は見せたくないの。
あの子たち、「あの時」のことにまだ未練があるから。……特に犬御はね」
天多は少しだけ寂しそうに言った。
山に意識を向けると、知った気配がいくつもある。
その中に、あの夜雀と狼の気配があった。
ここから距離は近そうだ。
42
:
露希
:2011/08/01(月) 01:21:31 ID:HbHPxpxY
>>40-41
「う、うん?多分、七生ちゃんは黒蔵君を選んだんだと思うよ?」
二人の関係をそれ程知るわけでもないが、二人が一緒の時はお互い嬉しそうな表情をしている。
それは、露希と氷亜が一緒にいる時も同じだ。
「あ・・・二人共、この近くにいるよ。お姉さん、気をつけてね。」
43
:
解峯
:2011/08/01(月) 01:24:56 ID:1gBuqmPQ
>>41-42
「俺も生きてる間に冷やかしてやりたかったな。黒蔵ならきっと面白かったろうに残念だ」
解峯は解峯で、ちょっぴり悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「でもアイツも俺のことを泣くより、彼女のことをもっと見てやるべきだよな」
今を一緒に生きている者に目を向けなくちゃと、少し寂しそうに化け蟹はぽつりと呟いた。
「じゃぁな、姐さん。またいつか」
石段を登ってゆく天多を見送った。
44
:
天多
:2011/08/01(月) 01:37:51 ID:/AfNAO.Q
>>42-43
「二人とも、送ってくれてありがとう」
石段を登りながら、天多が振り替える。
一歩進む度、その姿は闇に溶けていく。
きっとこのまま見えなくなって、もし次に会えるとすれば、また何年後……いや何十後か。
けれど妖怪にとっては、そう長い時間ではないだろう。
少し短いお別れだ。
そうして、白鼬は山の闇に消えていった。
石段を登りながら、天多は少し微笑んでいた。
まさかあの引っ込み思案だった七生に、彼氏ができるなんて。
……ああ、会って抱き締めてあげたい。
けれどまだ、会うことはできない。
きっと彼らは自分を許していないだろうから。
何もできなかったあの時の自分に、未練を残しているだろうから。
けれど未練が消えて、二人が苦しみなく天多のことを思い出せるようになったなら、
その時こそ、再び会える時だ。
(強くなってね、犬御、七生。そうしたら、ちゃんと会いにいくわ)
45
:
露希
:2011/08/01(月) 01:46:50 ID:HbHPxpxY
>>43-44
「いえ、ボクは当然のことをしただけですよ。では、また会える日まで。」
石段を登る彼女に別れを告げると、黒蔵のいると思われる喫茶店ノワールへと解峯を連れていく。
もし、解峯達みたいにこの世界に来ているのなら、何処かにいるのだろうか。
そんな少しの期待を交えながら、ノワールへ到着した。
46
:
解峯
:2011/08/01(月) 01:53:59 ID:1gBuqmPQ
>>44-45
「姐さん、幸せそうだったな」
解峯も黒蔵に会ったなら、きっと何も言わずに見守るだけだろう。
死者は余程のことがなければ、自から進んで話しかけはしないのだ。
やがて喫茶店ノワールに着くと、丁度中には黒蔵がいた。
ガラス窓越しにも、その草臥れた表情がわかる。
「露希ちゃん、案内ありがとな。
あいつに直接会うことはまだ出来ないんで、俺はここでしばらく見守ることにするよ」
露希ににこっと笑いかけて、解峯はゆっくりとその場で足元から消え始めた。
「露希ちゃんにももし逢いたい誰かがいるならば、そいつのための灯りを点しておいてやりな。
そうすれば俺らは、それを目印に尋ねて行けるんだ」
その言葉を最後に姿は消えたが、解峯の気配だけはそこに留まり続けていた。
きっと今夜は黒蔵の夢に、蟹が現れるに違いない。
//ではこの辺で落ちますね。お二人ともありがとうございました。
47
:
露希
:2011/08/01(月) 02:05:17 ID:HbHPxpxY
>>46
「そうですね、凄く温かみのある人でした。
今の解峯さんも似てますよ・・・。」
黒蔵を見守る解峯を後に、家へと帰る。
「灯り・・・か。」
露希はその夜、小さなキャンドルをベランダへと置いておいた。
その後、彼等と同じ様に、白い龍が少女を見守ったのは言うまでもない。
//では、これで終わりですね。遅くまでありがとうございました!!
48
:
深山 鉱太郎
:2011/08/01(月) 22:10:33 ID:1gBuqmPQ
日は沈んだもののまだ街は明るく、人通りは多い。
まずは一杯飲んで帰ろうというサラリーマン達が、ビヤガーデンに吸い込まれてゆく。
そんな人通りの多い繁華街の中を、大きな灰色の犬が飼い主に連れられることもなく、
一匹で通り抜けてゆくのに気を止めるものは、なぜか人間には一人も居なかった。
犬は一番明るい目抜き通りを抜けて、灯火も少なくやや寂しい通りへ入る。
そのあたりは人通りもまばらで、時折、不自然な形の影も横切る少々薄気味悪い通りだ。
古いビルの谷間、ぽつんと黄色い小さな灯りの灯る扉の前で、灰色の犬は立ち上がった。
「久しぶりだなぁ」
そう呟いた時には既に犬ではなく、がっしりとした体格の男。
この暑い盛りに、なぜか冬物の上着を羽織っている。
その上着と帽子には、同じ警備会社のマークが着いている。
男は一部始終を見ているものの存在に気づくことなく
店名だけの簡素な看板がかかった木の扉を押して、その先の狭い階段を下りて行く。
パタン、と閉じた扉の『Bar 橘』の文字だけが、誘うように揺れていた。
49
:
東雲 犬御
:2011/08/01(月) 22:21:47 ID:/AfNAO.Q
>>48
「、」
時が、本当に止まったかのように感じられた。
灰色の犬が、「彼」の姿になったのを目撃した瞬間。
赤い瞳が大きく見開いている。
見間違えかと疑った。
幻覚ではないかと考えた。
けれどあの犬も、人の姿も、間違いなく、東雲の知っている「彼」だった。
まるで足が棒にでもなったように動かない。
震えているのだろうか。
やっと体が動いた時は、既に男は階段奥の扉に消えた後だった。
(ああ、そうか、この季節は)
真夏の蒸し暑さを肌に感じながら、頭がぼんやりと思考する。
だがそれとは反対に、体は勝手に男の消えた先を追い掛けていた。
狭い階段を掛け降りた狼は、まだ揺れる看板のかかった扉を勢い良く開いた。
50
:
深山 鉱太郎
:2011/08/01(月) 22:26:58 ID:1gBuqmPQ
>>49
階段を下りてゆくと色ガラスの嵌った扉があり、その先には小ぢんまりした空間があった。
落ち着いた琥珀色の照明に照らされたその店は、
カウンター席が8つ、テーブルが3つの小さなバーであった。
片耳のない男、初老の男とカウンターで談笑していた先の警備服の男が、
店内に入ってきた犬御に気づいて片手を上げる。
「よう、久しぶりだな。こっちに座れよ」
犬御に人懐っこく笑いかけ、自分の注文したグラスはテーブルに回してくれるようバーテンに頼んで
テーブル席に移った男は確かに深山鉱太郎である。
「折角だしお前も何か頼め。この店はこの季節限定なんだぜ」
上着を脱いで壁のフックに引っ掛けると、すっかりくつろいだ様子で席に着き、襟元を緩める鉱太郎。
そこにはあの日犬御がつけた筈の傷は、跡形も無かった。
51
:
東雲 犬御
:2011/08/01(月) 22:41:51 ID:/AfNAO.Q
>>50
「……鉱太郎」
更に扉を開いた先に座っていた男を見て、再び足が止まった。
その声は、彼が思っていたより随分擦れ震えていた。
笑顔で「久しぶりだな」等と語り掛けてくる男に、東雲は違和感を覚えない自分が信じられなかった。
(何でコイツはこんなに平然としてるんだ)
目の前に自分を殺した奴がいるというのに。
テーブルに移った彼は確かに鉱太郎だといのに、自身が勝手に描いた都合のいい幻想ではないかとすら思う。
(夢でも見てンのか、俺は)
……そうかもしれない。
本当なら祟り殺しに来たっていいはずなのだ。
自身が付けた、傷もない。
東雲は何も言わず、よろよろと鉱太郎の向かい側に座った。
「……テキトーなもん」
カウンターに声を掛けてから、鉱太郎を身遣る。
何故だか、自分から声を掛けることはできなかった。
52
:
深山 鉱太郎
:2011/08/01(月) 22:57:02 ID:1gBuqmPQ
>>51
「なんだよ、そんな青い顔すんなって。まあ、無理も無いか。
この店の主もあの客も、ここに来る奴は妖怪か幽霊なのさ」
テーブルのマッチと灰皿を引き寄せてタバコに火をつける鉱太郎。
「俺は山に帰れなかった頃、よくここで仲間と飲んでたんだ。
あの片耳と爺ィも俺の群れの仲間さ。爺ィは俺と同じく、幽霊なんだけどな」
良く見れば磨かれた店のカウンターに映った姿が、片耳の男は片耳の山犬として映り
初老の男のほうには影自体が無い。
「なんで殺した相手を恨まないのかって顔に書いてあるな。
じゃ、まずそっから話すか」
鉱太郎が紫煙と共に笑いを吹いた。
「どっちみちあのままじゃ俺は、札と共に朽ちるものだったのさ。
三峯の送り犬として、人間が『転ばないよう』護ることも出来ないままにな」
送り妖怪には犬御のような『転んだ』人間を食うものと、『転ばないよう』に人を護るものがある。
この場合の『転ぶ』は比喩であり、悪の道へ人が嵌った場合のことを言う。
悪に『転んだ』ものはすねこすりに齧られて「脛に傷を持つ」身となり、その傷を目印に
犬御達が狩るのである。
「で、俺はお前に殺された訳だが、どうにもお前の様子は変だった。
だからしばらく背後霊として憑かせて貰ったよ。天逆毎相手に大変だったな。
お前は良くやったよ」
煙越しに温かい視線を犬御に送る。
一度は紫狂に『転んだ』犬御が、再び『起き上がる』のを、鉱太郎は見守っていたのである。
53
:
東雲 犬御
:2011/08/01(月) 23:12:09 ID:/AfNAO.Q
>>52
(……幽霊)
濃密な妖怪の気配は感じていたが、初老の男に目を遣れば、確かに妖怪とは別の気配がした。
けれど、それだと、目の前の鉱太郎は夢でも幻想でもないのだろうか。
東雲は黙って彼の話に耳を傾ける。
どの道朽ちるだけだった、と彼は話した。
様子がおかしかったのも事実、鉱太郎を殺した時の東雲は正気を失っていた。
(それ、でも)
「俺は、殺したんだぞ。オマエを、身勝手な理由で」
東雲はやっとこさ口を開いた。
そうなのだ。鉱太郎は東雲を許したどころか、
天逆毎戦の時も、写し取られていたとはいえ波旬戦の時も、東雲を助けていた。
今ですら、東雲は鉱太郎から奪った力を使い続けているというのにだ。
「それなのに、何で……」
ぐ、と拳を握り締める。
54
:
深山 鉱太郎
:2011/08/01(月) 23:21:11 ID:1gBuqmPQ
>>53
その時バーテンが、グラスを2つ運んできた。
鉱太郎の頼んだのはオン・ザ・ロックのウイスキー。
犬御に来たグラスは、ソルティドッグのようだ。
ナッツとチーズの皿も置いたバーテンが「こっちは新盆の方へのサービスですよ」
と言って去っていくが、その時テーブルの表面にに映ったバーテンの影は、山猫のものだった。
バーテンが去るのを待って、穏やかに鉱太郎が言う。
「仮に俺がお前を恨んで憎んで、それでどうなる?お前を取り殺せばいいのか?
それで俺が満足できる、とでも?」
グラスの氷が、からんと音を立てた。
「俺は送り犬であることに誇りを持ってるんだぜ。俺の山の群れの一員であることにもな。
神に使える群れの一匹が、そんなことで恨みの念を溜めて怨霊になってどうする。
それになにより俺は、お前を助けられた事が嬉しいんだぜ」
そう犬御に伝えて、灰皿に灰を落とした鉱太郎はグラスを傾ける。
55
:
東雲 犬御
:2011/08/01(月) 23:41:00 ID:0YIG7mvA
>>54
「……」
分かっている。
鉱太郎は、そんな妖怪ではない。
死ぬ直前まで自分の勤めを果たし、死んだ後もこうして誇りを持ち続けている。
俯いた東雲は、グラスに視線を落とした。
反射によって狼の姿が写される。
「……わる、かった」
ぽつり、と言葉が落ちた。
いつもの威圧感のある声でなく、驚くほど弱弱しい声。
「謝っても、意味がねェのは分かってる」
けれど、ずっと東雲の胸に残っていたものは、
鉱太郎に対する、ただただ謝りたいという思いと、感謝の思いだった。
56
:
深山 鉱太郎
:2011/08/01(月) 23:54:21 ID:1gBuqmPQ
>>55
「んー、あんま気に病むなよ?
俺だってお前が力を受け継いでくれりゃ、居た意味もあるしな」
短くなったタバコを灰皿にねじ込む。
「今思えば、相手がお前で良かったよ。
在り方が近い妖怪同士、力の受け渡しも苦労はなかったしな。
それにお前には、護りたいものがあるんだろ?だから、俺と殺し合うことになった」
鉱太郎は犬御の『転んだ』理由にも言及する。
夜雀を護りたいからこそ、犬御は力を欲したのだ。
「今だからこそこうして話すことも出来た。もう俺はお前に憑く必要もないだろう。
あの力はお前に残すが、これからはお前は一人だ。
それでも落ち着かないことがあるなら、また来年もこの時期に、この店に来れば良い。
ただ、あの気まぐれが店を開けてるとは限らんかもしれんが…」
ここで鉱太郎は犬御だけに聞えるよう、声を潜めて
「やりたいときだけ気まぐれに店に居たいってんでバーテンを自称してるもんだから、
客がマスターって呼ぶと怒るのさ、あいつ」
と、他の客の対応をする山猫のほうを目で示した。
57
:
東雲 犬御
:2011/08/02(火) 00:11:08 ID:0YIG7mvA
>>56
東雲は視線を落としたまま、自分の手のひらを見た。
鉱太郎から受け取った、障壁の力。
強さを求め何かを奪う狼の力と対を成すように、それは、何かを守る為の力だ。
仲間や、彼女を。
「……あり、がとう」
あまり言い慣れない言葉を発した途端、
こらえていたものが溢れだしたような感覚と共に、涙がこぼれた。
隠すように俯いていたけれど、きっとバレてしまっただろう。
「は、なんだよ、ソレ」
擦れた声が、少しだけ笑っていた。
58
:
深山 鉱太郎
:2011/08/02(火) 00:26:22 ID:1gBuqmPQ
>>57
「あの山猫は、行儀の悪い酔客への扱いがエライ厳しくってなw
『主(マスター)が直々に仕置きしてやるほどの価値すら無い客が居るのに、
良いお客にマスターと呼ばせるなんてとんでもない、この風来猫めはバーテンで十分なんです』
…だとさ」
堪えた笑いを漏らしながら、皿とグラスを空にした鉱太郎が立ち上がる。
「これから俺は山へ里帰りだ。楽しみだなぁ」
その表情は帰郷の喜びと酔いが相まってか、少し浮き立っていた。
「どういたしまして。つーかそんな顔するなよ、笑って見送ってくれていいんだぜ?」
壁から上着を取ると腕にかけ、通り過ぎざまにぽんぽん、と犬御の肩を叩く。
「今度からは間違うことなく正しいやり方で護れよ。俺の後はお前に頼んだからな」
カウンターの向こうに声をかけて支払いを済ませ、そのまま鉱太郎は薄らいで消えた。
犬御の前には、ちょっぴり塩辛くてほろ苦い、酒のグラスが残っている。
そこに留まれば山猫のバーテンがもう一品二品、つまみを見繕って持ってきてくれる筈だ。
「さっきの方からの奢りですから」と、言葉を添えて。
59
:
東雲 犬御
:2011/08/02(火) 00:43:11 ID:/AfNAO.Q
>>58
「ワケわかんねェ」
くつくつと肩を揺らして笑う。
肩を叩かれて掛けられた言葉に、東雲は目を伏せて答えた。
胸のつったかかりは、まだ少しの心残りはあるけれど、随分と楽になったように思える。
「……あァ」
グラスを傾ければ、口に少し塩辛い味が含まれる。
涙のそれに似ているようで、けれど東雲の頬にはもう涙は伝っていなかった。
「またな」
最後に一度だけ振り向いたが、そこに鉱太郎の姿はない。
口元をわずかに綻ばせて、東雲は再びカクテルを一口含んだ。
60
:
名無しさん
:2011/08/02(火) 00:54:16 ID:1gBuqmPQ
>>59
盆の時期、山猫の気分次第で現れる『Bar 橘』の明かりは
翌朝その通りが明るくなってきたころにひっそりと消えた。
夜が巡ってくればまた、その店と扉はその街の妖怪・死者達が訪れるのだろう。
生者と死者が共に語らうその店は、この季節の必要とされる時にだけ
その店名を表の扉に下げるのだ。
61
:
???
:2011/08/03(水) 22:08:30 ID:d.Sq2D9c
場所は山。
人の入りはそこまで多くは無いと言え、
とある宗派の総本山がそこにあるだけに、ある程度道の舗装はされているそこ。
荘厳な建築様式もさることながら、その巨大さでも信仰を多く集め、
修行僧でなくとも訪れるものは多い。
そんな巨大かつ美麗な建築の寺院の門の前には、
いったい何段あるのだろうかを数えることも諦めそうな数の石階段が伸びる。
そして、その石階段を上る女性が一人いた。
急な角度の石階段だというのに無謀にも、
装飾の綺麗にあしらわれた、紅のヒールと灰色の薄手のドレスを身に包む。
しかしそんな珍妙な格好だというのに、
その全身から溢れ出る美貌と、その上品さでそれらが一切どうでもよいものになっていた。
62
:
露希
:2011/08/03(水) 22:18:20 ID:BQ990e1A
「はぁはぁ、この階段はどこまで伸びるんだろう…」
とある山を散策している途中で見つけた階段。
それは初めて見るほどの長い階段で、興味本意で昇ってみたようだ。
しかし、昇っても昇っても頂上は見えず、体力だけが削られていく。
そんな階段で、とある女性が視界に入った。
それは露希でさえも、奇麗だな、と呟いてしまうほど美しかった。
63
:
黒蔵
:2011/08/03(水) 22:21:56 ID:1gBuqmPQ
>>61
(あれ?変なとこに出たな)
寺院の近く、石段の下に小柄な少年が現れた。
汗ばんだ半そでシャツの襟元を緩め、心地良さそうに風を浴び一息つく。
その片手にはくすんだ色に汚れた水晶の欠片。
黒いズボンのポケットにそれをねじ込んで辺りを見回すと、一人の女性が石段の上のほうに見える。
(道、教えてもらえるかな)
遠くから声をかけるのは気が引けて、まずは傍によろうと小走りで石段を駆け上がり始めた。
「あ、露希じゃないか」
ほぅっと溜息をつきながら石段の上を眺めているのは、露希だった。
その視線を辿れば、さらに上のほうにはもう一人の見知らぬ女性も居る。
「あの綺麗な人、知り合い?」
64
:
???
:2011/08/03(水) 22:30:02 ID:d.Sq2D9c
>>62
丁寧に手入れされているのか、
まるで絹糸のような金の髪が、登るたびに上下する体と共に空気に漂い、
ヒールの石を叩く音が静寂の中に響く。
自分が登る階段の後ろからこちらを見つめ、
なおかつそこで会話を始めた彼らに女性が気づいているのかは分からないが、
どちらにせよ気にすることなくすいすいと登り、ついに頂上に着いた。
巨大で、さらに邪なる者を退ける結界が張りめぐらされている門の前に立ち、
美しく潤んだ唇を少し歪ませて、ふ、と短く笑う。
それから先はあっという間であった。
彼女が右手をその門へと差し出す。そうすると数秒もしないうちに、
その堅牢強固なはずの門は脆く砕け散り、その破片を周辺へ乱暴に撒き散らした。
65
:
露希
:2011/08/03(水) 22:38:42 ID:BQ990e1A
>>63
「くっ、黒蔵君!?」
こんな山奥の階段で、急に話しかけられるのだからびっくりする。
その拍子に転げ落ちそうにもなるが、免れたようだ。
「ううん、知らない人だよ。…あ、頂上が見えたね。」
彼が昇ってくるのを待ち、二人で頂上を目指した。
そこには大きく、一人では開けられそうもない門があった。
その巨大かつ荘厳な扉を前に、言葉を失っていたが
次の瞬間、それは美しい女性によって破壊された。
「黒蔵君、伏せてっ!」
飛んできた破片が露希の頬にかすり、少しだけ血が飛び散る。
66
:
黒蔵
:2011/08/03(水) 22:44:11 ID:1gBuqmPQ
>>64-65
(うわ何か不味いところに居合わせたっぽいよ)
お金になりそうな薬の材料探しに、こんな山なんてこなければよかった。
道に迷って挙句また物騒な女性に出くわすなんて、つくづく運が悪い。
(でも物騒じゃない女性なんて、そもそも知り合いには一人も居ない気もするけど)
そんなことを考えているから吹き飛んだ扉の破片の、よりによって青銅で補強された角の部分に
なぎ倒されるのである。
露希の注意も空しく巻き添えを食らった黒蔵は、石段を15,6段ほど背中から落ちて止まった。
登場2レス目で早くもボロボロである。
67
:
???
:2011/08/03(水) 22:53:55 ID:d.Sq2D9c
>>65
、
>>66
あれほど巨大な門を、あっという間に破壊したというのに女性は、
息一つ乱さずにそれが当然というような態度で、門だった物をくぐる。
その際に露希の声を聞いていたのか、
歩みは止めず艶やかに流し目だけを露希達へと向け、くすっと笑った。
「あらぁ?当たってしまわれましたかしらぁ。
それは申し訳ございませんわぁ」
口元に手の側面を当てて、馬鹿にしたような雰囲気は感じなかったが、
明らかな自分の責任だというのに女性は気に掛けることなく、奥へと進んでいく。
その奥にはすでに彼女の襲来を予知していたのか、
この寺院を守るための霊験あらたかな僧侶や、屈強な妖怪が門の前で待ち構えていた。
全員がその顔に、激しい殺意と敵意を覗かせ、
今か今かとばかりに激しく呼吸音を立てていきり立っている。
「貴様、蛇妖怪め!!
これ以上の進行あらば即消去いたす!!」
「そこにいるお前らは誰だ!!この女の仲間か!!」
その怒号にも似た言葉が、門の向こうにいる露希、黒蔵へも向けられる。
68
:
露希
:2011/08/03(水) 23:05:50 ID:BQ990e1A
>>66
「……」ぽかーん
目の前で転げ落ちて行く黒蔵。
ただ唖然としながら落ちるのを見送っていた。
自分は擦り傷で済んだのに、この子は一体…。
「…はっ、黒蔵君大丈夫ー?」
>>67
「え?えぇ……?はい…。」
転げ落ちた黒蔵、破壊された門、不思議な女性に気を取られて戸惑っていた。
そしたら次は色々な妖怪やら何やらに巻き込まれてしまった。
え、何これ、不幸は伝染するのでしょうか?
「ち、違います!!ボク達は通りかかっただけです…。(黒蔵君も蛇妖怪だよね?)」
69
:
黒蔵
:2011/08/03(水) 23:08:55 ID:1gBuqmPQ
>>67-68
「う、てててて…」
のろのろと起き上がり、石段の上のほうの露希に「大丈夫」と手を上げてみせる。
あちこち擦りむいて酷い事になってはいるが、幸いに骨折はない。
しかし顎を打って、頤のあたりに傷が出来ていた。
ぺっ、と、赤い唾を吐くとよろよろ立ち上がる。
(服、だめにしちゃったな)
ズボンには大きく擦過痕が出来、扉の破片が当たったシャツのわき腹は裂けて打身を晒している。
制服をこんなにしてしまって、喫茶店ノワールの店長さんに怒られないだろうか。
「蛇妖怪?!なんでバレタのーっ!」
いきり立つ僧侶にせっかく露希が否定したところだったのに、
それを言っちゃお仕舞いな台詞と共におろおろし始める役立たずの蛇。
(逃げよう逃げたいここは逃げなくちゃ)
しかし黒蔵の意に反して、がくがくと震える膝は石段を登り始めた。
「え?う?お?」
(なんか楽しそうな気配じゃないか。もっと傍で見せろよ)
巴津火はまだ安全圏で、自分は何の痛みも感じることなく観戦するつもりのようだ。
70
:
???
:2011/08/03(水) 23:19:18 ID:d.Sq2D9c
>>68
遠くからだが露希の声は彼らの耳に届いたらしく、
その声に含まれる敵意はなくなった。
「なるほど客人か失礼した!!」
「しかし今日のところはお引取り願おう!!
今はこの通りこの総本山が消されるか否かの瀬戸際だ!!」
しかし目線は鋭く目の前の上品な女性に向けられたままだ。
そしてしばらくの緊張の沈黙の後、
女性が先手を取るように左手を上げようとした。
「させるか蛇妖怪!!
客人!!被害がそちらに向かうかも知れぬ!!どうか逃げてくれ!!」
そうするや否や、寺院側のうちの一人の僧侶が経を唱えだす。
その経はやがて大きな直径6メートル程の光の玉を作り出し、
女性へと向けはなった。術は女性に直撃し、技の破片が露希たちのほうへ向かう。
>>69
そしてその中でも、黒蔵がこちらへ走ってくるのを見受けた者がいる。
すぐさまその屈強な犬との半獣の妖怪は、
黒蔵へ槍を構え獰猛な雰囲気とともに飛びこんできた。
「女性は違ったが!!
貴様はあやつの手の者であったか!!」
71
:
露希
:2011/08/03(水) 23:26:37 ID:HbHPxpxY
>>69
「あ・・・・・・黒蔵君・・・・(ボク達、終わったなぁ。)」
青ざめた顔をして、冷や汗ダラダラ。もしこんなところで戦闘になったら・・・
(間違えなく殺される・・・瞳〜氷亜〜HELP〜)
>>70
「あ、あれ?(助かった〜)」
運よく、敵とは見なされなかったようで安心した。
だが、逃げろと言われるなり、再び破片が来るなり、大変だった。
露希は頭を下げて、破片を避ける。
その破片は黒蔵に飛んでった。
72
:
黒蔵
:2011/08/03(水) 23:31:39 ID:1gBuqmPQ
>>70-71
「待て、違うからちょっと待て!うあ〜っ!!」
しかし誤解を解く暇も無く、光球の破片を浴びてしまう。
目を庇おうと左腕を上げた所に半獣の槍の穂先が突き出され、ずぶりと左の肘を貫いた。
黒蔵が悲鳴を上げて蹲る。
悲鳴と同時に思わず吐き出した瘴気が、どす黒い霧となってその姿を包んだ。
黒蔵の姿を隠したこの瘴気、吸い込んでしまえば肺が爛れる。
今は毒霧の範囲はまだ槍のリーチより小さいが、つづく悲鳴と共に徐々に範囲は広がってゆく。
73
:
???
:2011/08/03(水) 23:42:35 ID:d.Sq2D9c
>>71
光球の光が消えそこから姿を現したのは、
全長15メートル胴囲1.5メートルほどの紅の鱗を持つ、巨大な大蛇であった。
「女性一人に寄ってたかってなんて、
あまりにも品の無い教育をお受けになられていらっしゃったのねぇ」
その大蛇の後ろからあの女性の声がした。
先ほどの術は大蛇が防いだのか彼女は無傷で、顔には美貌と悪意のこもった笑みが。
「まあどちらにせよ。
どこまでもあがいてくださいなぁ、私もそのほうがやりやすいですわぁ」
そして大蛇は突如高スピードで、目の前にいる寺院の守護者達の下へ突進した。
突進によって守護者達の陣形は乱され、大蛇のその牙によって、
大量の者達が切り裂かれ絶命する。
>>72
槍を突き刺し、守護妖怪はしたり顔になる。
しかしその顔も黒蔵が瘴気を出すまでであり、瞬く間にその顔に恐怖が差し込み、
絶望を感じたのか冷や汗を流した。
「おのれ妖怪瘴気なぞ!!
・・・?槍が・・・槍が抜けない!!
・・・あ、ぐあぁ・・・かはっ」
そしてその焦りのためか黒蔵の体から槍を抜くことができず、
ぐいぐいと何度も引っ張っている間に、その顔に瘴気がかかる。
妖怪は少し苦しそうな乾いた声を出した後、いきなり全身から力が消滅し、
その場で倒れこんだ。
その現場を見ていたほかの守護者達が憤慨し、
報復とばかりに手に槌や刀を持って、黒蔵を向け切りかかった。
74
:
露希
:2011/08/03(水) 23:54:37 ID:HbHPxpxY
>>72-73
「黒蔵君っ!!」
自分の後方では黒蔵が襲われていた。だが、前ではたくさんの人や妖怪が殺されていた。
黒蔵はなんとかなる、と信頼して女性に近寄る。
「止めてください、もう殺さないで!!」
75
:
黒蔵→巴津火
:2011/08/03(水) 23:59:41 ID:1gBuqmPQ
>>73-74
『何も見えないじゃないか、この役立たずの器めが』
悲鳴が止み、黒蔵を中心とした瘴気の広がりが止まった。
『このボクに妖怪呼ばわりだと?ふん、それは貴様の自己紹介ではないか』
舌打ちと共にばきりと折れる音がして、半獣妖の手の中の槍の重みが一気に軽くなる。
ゆるゆると瘴気は薄らいで行くのに、なぜかそこだけ暗くなったかのように感じられるほど
重苦しくどろりと濃い妖気が地を這った。
『うるさい小物ども。そんなにボクに祟られたいか』
巴津火は忌々しそうに、焼け焦げた左腕から折れた槍を抜くと、その血に濡れた穂先を一閃させた。
飛び散った血飛沫が切りかかる妖怪達にかかると、赤黒い蛇の紋様となって彼らの身体の表面を
ぬらぬらと這いまわり始めた。
その刺青にも似た蛇の紋様は苦痛を与えながら肌を這いまわり、生気や妖気を吸い取って育つ。
『絞め殺すのも面倒だ。そのまま大人しくしていろ。あとでゆっくり食ってやる』
血の蛇紋に、守護妖怪達を締め上げて縛って置くように命じた巴津火は、
辺りを見回すと女と紅色の蛇ににんまりと笑う。
『まさか寺に会いたい相手が居たとはな』
しかしその左腕から滴り落ちる血の量は、巴津火にもあまり時間が無い事を示していた。
76
:
???
:2011/08/04(木) 00:08:43 ID:d.Sq2D9c
>>74
目の前で紅の大蛇によって行われている殺戮を、
さもそれが喜劇であるかのように、くすくすと静かな音を立てて笑う女性。
すると、彼女の後方から聞こえてきた必死な訴え。
「止めてください、かしらぁ?
それはわたくしにおっしゃるのではなく、
今あそこでお戯れになっている、あの殿方たちに言っていただきたいですわぁ。
だって、大人しくここにある物を破壊させてもらえれば、
わたくしあんな木っ端になんて興味ありませんものぉ?」
ゆっくりと金の映える髪をなびかせ、振り向く。
しかし露希の答えに、否、と答えるような悪意のこもり切った笑みを浮かべ、
露希へと邪の妖気を放った。
>>75
勇ましく巴津火に襲い掛かったものの、
自力の違いによっていとも容易く彼の術を食らってしまった守護者達。
彼らはその場で倒れこみ、腹のそこからなんとかひねりだしたような、
乾いた呻きを上げ、もだえ苦しんでいた。
「あらぁ?
貴方はもしかして、あの八岐大蛇かしらぁ?」
露希へと話しかけている間に巴津火の妖気を感じ、
くるっと体を向けて美しく微笑んだ。
それにともなって今まで暴れていた紅の大蛇も、
巴津火の方へ首だけをむき、舌を出して息を漏らすような音を立てている。
77
:
露希
:2011/08/04(木) 00:22:04 ID:HbHPxpxY
>>75-76
「・・・そう、貴女はそんな妖怪なんですね。解りました。」
腰に挿してある、白い剣を抜くと、一瞬にして邪の妖気を振り払った。
剣から滲み出るそれは、邪とは全く逆の質の妖気。
「・・・・・・巴津火君か。」
もしかしたら、巴津火がこの女性を止めてくれるかも知れない、と少し期待する。
78
:
巴津火
:2011/08/04(木) 00:26:48 ID:1gBuqmPQ
>>76-77
『あの八岐大蛇、がどの八岐大蛇かは知らないが、壊すものがあるならさっさと探せ。
ボクもそいつが何なのか興味があるしな』
澪のことを思い浮かべつつ、巴津火は女にふてぶてしく笑う。どうやら露希の期待には応えそうもない。
その間にも、血の蛇紋は守護妖怪の生気や妖気を吸い取りながら育ち、頭の数を増やしつつあった。
祟られたものが強大なほどその蛇紋の育ちも早く、一番大きなものの頭と尾は既に三つに増えている。
その頭が八つになったとき、祟られた者は一体どうなるのだろうか。
『なんだ、ちっちゃくて可愛いなお前。それに、いい色だ』
そして紅色の蛇のほうに巴津火は無邪気に笑いかけた。折角目の前には美女がいるのに。
しかし当の巴津火も今はまだちっちゃく、露希に言わせれば多分、可愛い部類なのかもしれない。
……でも育ったらいずれは山八つ分サイズだけどなっ。
79
:
???
:2011/08/04(木) 00:40:08 ID:d.Sq2D9c
>>77
決断したように、するりと剣を引き抜いて対峙する露希。
邪を払った彼女に、まあ、と小さく感嘆の声を美麗な唇から漏らし、
にやりと嬉しそうに笑い唇をゆがめた。
「あらぁ貴女、このわたくしと一戦交えるおつもりで?
お止めにられたほうが得策ですわよぉ?だって
わたくしは貴女と刃を交えたら、貴女を消すまで止めませんわよぉ?」
そして、そこで思わず足を数歩後ろへ下げてしまうほど、
それほどに恐ろしい邪の妖気を放って露希を圧倒しようとする。
>>78
「ふふ、わたくし、貴方のような物分りのよろしい殿方、
とても好きですわぁ」
巴津火のせかす言葉に、女性は艶かしく微笑んだ。
紅の大蛇のほうは、目の前にいる格上の存在に少し萎縮し、
先ほどまでの息を漏らす音が少し小さくなっている。
「では、お言葉にあまえさせていただきますわぁ」
その声に伴ってこの寺院の山の底から、
空も震えるかのような地響きが起こり始めた。
「わたくしが破壊するのは一つだけ、ただの仏像ですわぁ」
そして大きな地響きが急に止み、一瞬だけ世界が止まったかのように静かになった。
しかしその直ぐあとにそこらじゅうの地面が醜く隆起しだして、
その中でも特に高く隆起した数個の土の塊から、
先ほどの大蛇より二周りほど大きい大蛇が、15匹以上姿を現した。
80
:
夷磨璃&露希
:2011/08/04(木) 00:54:31 ID:HbHPxpxY
>>78-79
「うん、いいよ。貴女様のような邪の塊は、清く、美しくしなくちゃね。」
剣を構えた時だった。
階段を駆け登る音がした。だんだんと近づいて、もうすぐそこに・・・!
「これはなんでござるかっ?・・・蛇が・・・・・・っ!巴津火お兄ちゃんも、露希お姉ちゃんもっ。」
巴津火よりも小さな少年、夷磨璃だった。血を見るなり、嫌悪を示す表情になる。が、どこか嬉しそうな表情が混じっていた。
少年は空に手を挙げて、蒼い妖気を解き放つ。次第に、真っ黒な雲が、山の廻りへと集まってきた。
あろうことか、山周辺だけ気温が低下し、雪がちらついてきた。
蛇、それは変温動物。寒くなったとあらば・・・眠りにつく。夷磨璃は・・・これを狙ったのか?
「夷磨璃君、なんで雪を・・・」
『凍らせて動きを止めるでござる。』
81
:
巴津火
:2011/08/04(木) 01:06:44 ID:1gBuqmPQ
>>79-80
『なんだー、ただの仏像か。
もっとカッコいいロボとか、宇宙戦艦とか、ひみつきちからばばーん!っとでてくるのかと思ったのに』
手振りを交えて描写した巴津火は、ただの仏像にちょっぴりがっかりしているようだ。
紅い蛇さんもそんなお子様邪神を、ちょっと吃驚したように見つめている気もする。
そっちと視線の会ったはつびー、紅蛇の鼻先をナデナデしながら「お前うちにこないかー?」とか
スカウトを始めてしまった。でもそれ喫茶店にも牛神神社にもエライ迷惑だよ!
『なんだこざるじゃないか、こっちの女とも知り合いか?』
露希と夷磨璃の関係は、巴津火は知らない。
そして、気温が下がってくるよりも前に、巴津火は失血で少し寒くなり始めていた。
『糞っ、まだ十分じゃないのに!』
まだ育ちきっていない血の蛇紋のうち一番大きなもの、それでも頭は6つになろうとしているそれを
巴津火は招く。
主の招きに応じて蛇紋は犠牲者からするりと抜け出し、影のように地を這って巴津火に届き、消えた。
『ふん、まずまずの力か。貴様、運がよかったな』
祟りから解放された守護妖怪に、その生気を我が物とした巴津火がにやりと笑う。
その左肘の傷からの出血は止まったが、失われた血液は戻らない。
『こざる、いい加減にしないとボクも怒るぞ』
既に巴津火は鉄火の温度を右手に備えつつある。
折れた槍の柄が燃え落ち、握られている穂先が赤く熱せられ始めた。
その熱で巴津火はもうしばらく寒さには耐えそうである。
82
:
???
:2011/08/04(木) 01:20:09 ID:d.Sq2D9c
>>80
、
>>81
「うふふ、貴方にはまだそれの価値を理解するのはお早かったかしらぁ?」
巴津火のブーイングに静かに困ったように笑い、
くるっと寺院本殿へと向き直った女性。
そして彼女は、大きく深呼吸をし始める。するとそれにともなって、
女性の妖気はどんどん、どんどん莫大な物に上昇していく。
今まで彼女の体の奥底に隠されていた、
莫大過ぎる邪の妖気が間欠泉のように溢れ出し、あたりは闇に包まれた。
邪であり蛇の妖気の大洪水の水源である彼女の姿は、
もはや先ほどまで美麗を讃えていた面影は無くなっている。
「さあ、坊や達ぃ。
あの仏に死の毒牙を食らわせておやりなさいぃ?」
巨大な蛇たちの鼻先を愛おしそうに撫でる彼女の姿、
白く真珠のようであった皮膚には、そこら中に醜く緑の鱗が生え、
その鱗に覆われた顔面に光る目は、鋭くつりあがった蛇のものへと変貌していた。
そして一番嫌がおうにも目を引いてしまうのは、
金の生糸のようであったその髪の一本一本が、威嚇する声を出す蛇へと変わっていることだ。
そう、彼女はかの有名な西洋妖怪メデゥーサ。
かつて神話の時代で英雄によって葬られた、蛇の大妖怪である。
しかしそれとほぼ同時刻に、夷磨璃の降雪だ。
それは絶大な効力をもたらし、
蛇の代表格なメデゥーサの出現によって四方八方からはせ参じた蛇たちは、
冷気によってたまらず冬眠を余儀なくされた。
彼女の呼び出した大蛇たちも動きが通常よりも鈍り、
悔しそうなうめき声をのどからならしている。
「なかなかのやり手ですわねぇ、そこの坊やぁ?」
しかしその頭領であるメデゥーサの目には、
逆に滾るような火炎の怒りが燃え上がった。鋭い眼光が夷磨璃へと向けられる。
「でも、よく貴方達もご存知のアレは今回はやりませんわぁ。
もともとたいした状況ではありませんし、わたくしの前ではそのような術、
正真正銘の戯れに過ぎませんしねぇ?」
また悪意の笑顔にもどった彼女は、
動きが鈍った大蛇たちを自分の下に近づけさせ、すべての蛇に妖気を注いだ。
すると今まで緩慢な動きであった大蛇たちが嘘のように、
地響きかと思うほどの声を上げ激しく興奮し始める。
活性された蛇たちの体は、異様な速さで脱皮を繰り返し、
最後にはすべてが全長20m超胴囲3メートル超にもなった。
もはや巨木ほどになった大蛇たちは、
いっせいにその毒牙を、仏像に突き立てるために強く突進する。
83
:
夷磨璃&露希
:2011/08/04(木) 01:33:19 ID:HbHPxpxY
>>81-82
「巴津火お兄ちゃん・・・わ、分かった・・・・・・。」
ぱちん、と手を鳴らすと雪は止む。雲は消え去り、と暖かい日差しが差し込んだ。
たくさんの蛇達は仏像へと攻撃を開始し、この場所もかなり危険な常態である。
「・・・たくさんの命・・・守れなかった・・・。」
メデューサに怯える夷磨璃の手を引き、その場から走って逃げた。
結局・・・邪の力を前に、露希は何も出来なかった。
//眠気がそろそろ限界なので、ここで落ちます。
/絡み乙&ありがとうございました!
84
:
巴津火
:2011/08/04(木) 01:40:08 ID:1gBuqmPQ
>>82-83
(ええいこざるの奴め、眠いじゃないか)
焼けた穂先程度の小さなものでは、十分に暖を取れない。
生あくびしながら辺りを見回した巴津火は、ずっと大きな金物に目を付けた。
(そうだ、あれを焼こう)
巴津火が向かった先はあの、ターゲットである仏像。
しかしあんなもの焼いて大丈夫なのか?
輻射熱で周囲の蛇さんが元気になるのか、こんがり焼けるか、それは判らない。
また、仏像そのものが溶けたりしたらこの美女の思う壺かもしれない。
しかし寒さで思考が鈍る以前に、そもそも自分勝手の権化である巴津火には
周囲を気遣う意識は欠片もないのだった。
単に、寒ければ暖をとろう、それだけである。
大蛇たちが脱皮を繰り返している間に、巴津火は仏像に右手を当てていた。
じわり、と金属が熱せられ輻射熱が巴津火を暖める。
(あの女、なんで護る者、の真名を持つくせにこれを破壊するつもりなのだろう?)
メドゥーサの名の意味は「守護するもの」、同じ輝く目の女神アテナに醜き姿にされる逸話を
擦り付けられ零落はしたが、その眼力は古くから悪を祓う御守りであり、
今もトルコなどでは御守りとしてその青い目を模したガラス玉が売られている。
しかしこの我侭な幼い邪神はメドゥーサの真名の意味をその本気の姿にうっすら感じたものの、
せいぜいそこまでであった。
(でも壊すなら焼いちゃっても文句ないよなこれ)
巴津火の手元から金属の表面が徐々に色を変えてゆく。
まだ赤くはならないが、フライパンの底程度には熱いだろう。
//露希さん、絡みありがとうございました。
85
:
???
:2011/08/04(木) 01:52:22 ID:d.Sq2D9c
>>83
、
>>84
意識が破壊へとむかっている今の彼女では、
状況を少し悪くした元凶の夷磨璃であっても、その退却を気づくことはできない。
今はただひたすらに、破壊によって彼女が得る快感を全身で感じ、
口角を横に切り込まれたように上げていた。
「ふふ、弱すぎますわぁ貴方。
そのような火ではこの特殊な仏像は、外見は変えられても、
それの持つ効力までは失わせることはできなくてよぉ?」
するりと仏像に熱を加える巴津火の隣に歩み寄り、
耳元に近いところで艶やかに囁いた。
「これは、この子達の凶悪な毒牙で破壊させていただきますわぁ」
大蛇たちは一斉に、その恐ろしいほどの毒性を持った毒牙を、
守られる者をなくした仏像へと振り下ろした。
鋭い牙は仏像の体に次々に突き刺さり、刺さったところから邪のどこが流れ込む。
そしてその悪によって、ついに仏像の持つ正の決壊の力は消滅した。
86
:
巴津火
:2011/08/04(木) 02:00:16 ID:1gBuqmPQ
>>85
『あたり前じゃん。そもそも暖をとるためだけなんだぞ?』
この金物を溶かしてしまったら湯が跳ねて服がこげる、と巴津火は口を尖らせる。
もう十分にこの服はボロボロなのだ。これ以上見苦しくなるのは、巴津火にはちょっぴり我慢ならない。
『あれ、こざるはもう逃げちゃったのか?』
寺の外にひょいと飛び出すと、巴津火は祟られた妖怪たちから蛇紋を集めた。
その後にはその生死すらわからない、干からびた姿の彼らが転がっている。
たっぷりと生気と妖気を蓄えて、打身も焦げた腕も頤の傷もその痛みがだいぶ引いた巴津火は、
メドゥーサに声をかけた。
『あのさっきの赤い可愛いの、ボクにくれないか?』
どうやら巴津火はペットが欲しいようである。
87
:
メデゥーサ
:2011/08/04(木) 02:11:35 ID:d.Sq2D9c
>>86
そっけなく答えた巴津火と、
その返答に別段気にした様子の無いメデゥーサの目の前には、
無残にもばらばらに破壊され、なおかつ毒によって黒ずんだ仏像の変わり果てた姿があった。
「あの子はもともと、ここにそぐわない実力でしたわぁ。
それに撤退と言ってあげたほうが、友人としてはよろしいのでなくて?」
会話し続ける間も力を集める巴津火にメデゥーサは、
その力にどこか物欲しそうな目つきをした気がした。
「あの子、かしらぁ?
あれでもわたくしの眷属なのですから、わが子のようなものですわぁ
なので簡単にお渡しできるようなことではありませんねぇ。
そうですわぁ、でしたらその子と引き換えにやってほしいことがありますのぉ」
そこで人に戻ってもとの美貌を讃えるその顔を、
巴津火の顔近くにぐいっと寄せて言った。
「この言葉を吹聴していただきたいのぉ
−穂産姉妹は、死によってその身に正義を点す−と」
88
:
巴津火
:2011/08/04(木) 02:19:14 ID:1gBuqmPQ
>>87
『赤いの、駄目なの?』
ちょっぴりがっかりする巴津火。しかし、続く台詞に思い直したようだ。
『そっか、お前の子供なのか。
ううん、もうその赤いのは諦める。お母さんから離しちゃ可愛そうだろ?』
子供みたいなもの、という部分はすっぱりはしょって理解したようだ。
窮奇への思慕が残っている巴津火には、親子といわれてそれ以上無理を通すつもりはないらしく、
美しい顔に、にこにことそう答える巴津火。
『だから吹聴したとしても、あの赤いのは貰えないや』
こういう部分は真に子供らしい。
89
:
メデゥーサ
:2011/08/04(木) 02:28:17 ID:d.Sq2D9c
>>88
自身の起こした凄惨な光景。
その中でもむしろ笑ってさえいたこの子供が、
今はそんな比較してしまうとちっぽけに映るかもしれないことに、
これほど優しく微笑んで慮っている。
「ふふふ、貴方は家族思いですのねぇ」
その小さな体に秘めた矛盾を少しおかしく思い、
潤んだ唇に手を当てながら笑った。
こちらのその姿も、この光景の首謀者とは到底思えない物である。
「この子はもらわなくとも、そのことはしっかり吹聴してくださいなぁ?
ではわたくし用はすんだので、もう逃走させていただきますわぁ
ごきげんよう?貴方はとても面白い殿方でしたわぁ」
最後にそう言い残し、彼女はゆっくりと門へと向かって歩き始める。
かつかつかつ、とヒールの音を上品に立てながら、
振り向かずに堂々と石段を下って、去っていった。
/僕ももうこれで落ちにさせていただきます
/絡みありがとうございました!!
90
:
巴津火
:2011/08/04(木) 02:41:24 ID:1gBuqmPQ
>>89
『なんで逃げなくちゃいけないんだ?』
あの女は何で逃走していったのだろうと不思議に思ったため、
吹聴するべき言葉の意味はあまり良く覚えていない巴津火。
自分もポケットに手を突っ込んで石段を下ろうとして、小さな石英に気づく。
『なんだこれ?大分汚れてるな』
曇った水晶に水の浄化力を込めて、透き通ったものに変えられないか試してみたのだが。
『なんだ、皹はいってんじゃないか。こんなもの見つけてどうするつもりだったんだ?』
つまらなそうにぽい、っと寺の敷地に投げ捨てた水晶が、先ほど壊した仏像とまでは
行かないものの、それなりの正の力を周囲に及ぼしている事には全く無頓着である。
そして最初に瘴気を吸って倒れた半獣の妖怪と、最初に祟りから解放されたもっとも強大である
守護妖怪が倒れたものの中にいないことにも気を止めないまま、寺から出てゆく巴津火であった。
『えーと、穂産姉妹が点す…なんだっけ?』
巴津火はぶつぶつと呟きながら、石段を降りてゆく。
お子様に何か勉強させたら、しく覚えているか確認することも必要なのである。
//お二人とも、絡みどうもありがとうございましたー!
91
:
巴津火
:2011/08/04(木) 02:42:36 ID:1gBuqmPQ
//訂正一つ、 しく覚えている→正しく覚えている
92
:
露希「」&零『』
:2011/08/04(木) 23:07:25 ID:BQ990e1A
一人の少女が少年に肩を貸し、階段を昇っている。
ここは…袂山である。
前回は七生と会って以来、結構な月日が流れた。
だが、色々なことで来れなかったので、空いた時間を見つけて遊びに来たのだ。
「ほら、もうちょっとだから頑張って。」
『でもなんで急に袂山へ…?』
「七生ちゃんが遊びに来ていいって言ってくれたからね。」
93
:
四十萬陀 七生
:2011/08/04(木) 23:15:01 ID:Vd.IXEAk
>>92
二人の少年少女が階段を昇る姿を、遠くの茂みから一匹の犬が覗いていた。
深い蒼色の毛を持った、送り犬の翠狼は、音を立てずにその場から離れる。
それからしばらくもしない内に、階段の上方から少女が顔を出した。
「やっほーじゃん! 露希君、零君!」
揺れる黒髪に、眩しい笑顔が映える。
四十萬陀はその場でぴょん!と跳ねると、階段を十数段飛ばして、二人の元へ飛んだ。
ふわり、と着地する。まるで背中に翼があるようだ。
「お久しぶりじゃん! ……あれ、零君、大丈夫?」
少女に腕を預ける零に、心配げに尋ねる。
94
:
露希「」&零『』
:2011/08/04(木) 23:23:18 ID:BQ990e1A
「うん、久しぶりっ!元気そうで何よりだよ。」
そこに飛んできたのは、いつも元気な七生だった。
その笑顔に凄く安心する露希。
一方、兄の方は……
『久しぶりですね。私は大丈夫。』
はぁはぁ、と息を漏らしているがなんとか大丈夫そう。
「そっちは何か変わったこととかある?」
95
:
四十萬陀 七生
:2011/08/04(木) 23:31:07 ID:Vd.IXEAk
>>94
「立ち話もなんだし、座って話そうじゃん!
向こうに良い場所があるじゃん♪」
息を切らしている零に向かって、にこりと微笑む。
階段から道を外れ、森の奥へ向かうようだ。
木々の間から差し込む太陽光は、幻想的な森を作り出していた。
葉を踏む音を立てながら歩いていく。
「えっと、変わったことだっけ?
ん〜……、あ、犬御が森に戻ってきたことかな?
しばらく病院お休みするらしいじゃん」
また何か隠してそうなんだよね、と首だけで振り向いて、難しそうな顔をする。
96
:
露希「」&零『』
:2011/08/04(木) 23:42:17 ID:BQ990e1A
>>95
「わぁ…袂山ってこんなに奇麗なの?すごーい!!」
自然と光の鮮やかなグラデーションに感動したの露希のテンションは上がっていた。
わくわくした気分で七生についていく。
「犬御君が病院を…。そ、そうなんだ。」
『……(十種神宝を狙いにはまだ来てないのか…。)あ。』どさっ
ずっと歩いてきたこともあり、汗ばんだ手が滑って地面に倒れた。
『柔らかい…』
「うん、分かったから早く行こ?」
と零に手を貸して、再び歩き続ける。
97
:
四十萬陀 七生
:2011/08/04(木) 23:52:57 ID:Vd.IXEAk
>>96
「にゃはは、きれいでしょー?」
自分の故郷を褒められて、嬉しそうに笑う。
なんたって、彼女のお気に入りの場所なのだから。
数多くある「お気に入り」の一つだが。
「おろ、大丈夫じゃん?」
どさりと零が地面に倒れた音を聞き、慌てて後ろに駆け寄る。
「露希君も疲れない? まだちょっと距離あるし……
あ、そうだ。ちょっと待っててじゃん!」
思いついたように言うと、四十萬陀は上空を見上げた。
すうと息を取り入れ、「ピィー!」と高い鳥の声を響かせる。
木霊しながら、森全体に吸い込まれていく声。
するとどこからともなく、がさがさと音を立てて、
「呼んだかい? 七生」
灰色の毛を持った送り狼、和戌(わんこ)が現れた。
のそのそと三人に近付きながら、露希と零の方に視線を向けている。
「呼んだじゃん。えっとね、零君を向こうの切株の所まで運んでほしいんじゃん」
「雑用じゃないか。……まあ、暇だからいいけどね」
98
:
露希「」&零『』
:2011/08/05(金) 00:04:05 ID:BQ990e1A
>>97
「うん、ちょっと疲れた…かな?」
零にずっと肩を貸してたこともあり、ちょっぴり疲れが見える様子。
七生に言われた通り待っていると、見慣れぬ顔の送り狼が。
「えっと…初めましてかな?ボクは露希、七生ちゃんの友達だよ。」
『………助かります。(もふもふ…)』
露希は自己紹介と、軽く頭を下げて感謝している。
零に関しては変なことを考えているようだが、ばれないはず…。
99
:
四十萬陀 七生
:2011/08/05(金) 00:11:13 ID:Vd.IXEAk
>>98
「知ってるよ、七生から話はよく聞いてる。
私は和戌。この山の送り狼さ」
和戌は挨拶すると、四十萬陀の方に視線を移した。
「適当に運んじゃっていいのかい?」
「うん、よろしくじゃん」
了解した、というように頷くと、和戌は突然に姿を変えた。
先程の狼の姿から、すっくと二本足で立ち上がる。
そこにはもふもふした毛はなく、胸にサラシを巻いた、橙色の短髪をした女の姿になった。
釣り上がった瞳で零の方を見ると、背中を向けてしゃがみこむ。
「ほら、乗りな坊主。
……それとも、この運び方は嫌かい?」
おんぶして運んでいくつもりらしい。
もふもふを期待していた零にとっては残念だろう。
100
:
露希「」&零『』
:2011/08/05(金) 00:20:32 ID:BQ990e1A
>>99
「和戌さん…ね、零をよろしくお願いします。」
『……いえ…ありがとうございます…。(…もふもふ……)』
もふもふが無くなったことで、少しテンションダウン。
さらにおんぶと言うこともあり、恥ずかしいのである。
「じゃあボクは七生ちゃんにおんぶして貰おうかなーなんてね♪」
背中からぐいっと抱きしめた ▼
どうやら 七生は 露希のスキンシップグループに 入れられたようだ ▼
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