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巷説修羅剣客伝

195藍三郎:2009/05/15(金) 23:35:02 HOST:164.130.183.58.megaegg.ne.jp

鉄磨「凶護……生きてるか……?」

 傷だらけの身体をおして、鉄磨は凶護のそばに近寄る。
 完全に気を失ってはいるが、まだ息はある。
 今頃は彼の中の妖族の血が、急速に身体を治癒しているところだろう。
 目を覚ますには、後数時間以上は必要のはずだ。

 光明寺兄弟は、“あの時の鉄磨”には勝てないと悟ったのか、つい先ほど逃げていった。
 この場には、鉄磨と凶護の二人しかいない。

鉄磨「ぐ…………!」

 その場で膝を突く鉄磨。意識はあるが、自分も他者を気遣える状態ではない。
 あの時は怒りで我を忘れ、長年の戦いで築き上げた経験と、半ば意地だけで戦っていた。
 
 敵との相性も良かった。
 彼ら双子は妖力を放つ敵に対する完全な対抗策を持っていたが……
 凶護と違い、自分は妖力を表に出して戦うタイプではない。
 常に妖力を内に封じ込め、自身の身体だけを強化する。
 これならば、光明寺兄弟の“光輪反極転”の影響を受ける事はない。

 この特質は、天然に備わったものではない。
 幼少期……鉄磨たち赤霧斗賊団にも、仏法勢力の妖怪狩りの魔の手が伸びていた。
 光明時兄弟のような、妖力を無力化する敵に遭遇した時も何度かある。
 父と共に、弟たちを守って逃げ延びている内に……鉄磨は戦いの中で、妖力を抑える術を身につけていった。
 半妖とはいえ、ここまで完全に妖力を封じ込められるのは、鉄磨以外にはまずいない。
 彼の強さと能力は、生きる為の戦いで培ったものなのだ。



 それでも……痩せ我慢にも限界があった。
 全身の傷が絶えず己を苛み、今にも気絶しそうになる。
 もう少し戦い長引いていれば、今度はこちらが危なかっただろう。

 伊空たちは無事だろうか……人のことを心配していられる状況ではないのだが……


 その時……轟音が鳴り、壁が弾け飛ぶ。背後を振り返ると……

双角「できれば、奴らの“置き土産”など使いたくはなかったがな……」
独角「もう手段など選んでいられるか! 妖怪は皆殺しだ!!」

 二足歩行で歩く、巨大な絡繰兵器が姿を見せる。
 横に長い金色の箱に大きな手足が付属した構造で、機械で出来た蟹のような姿をしている。
 太くて頑丈な脚部を持ち、右腕には削岩機(ドリル)、左腕には巨大な鋏が備え付けられていた。
 胴体部分の上には、光明寺兄弟が乗り込み、操縦桿を握っている。

 <万寿菊>の戯術によって造られた巨人級絡繰兵器『戯鎧(ぎがい)』……

 “万が一”の事態に備えて、一年前万寿菊の使いが残していったものだ。
 それ以来、ずっと倉庫で眠り続けていたが……
 光明寺兄弟によって始めて起動し……今目覚めの雄叫びをあげていた。

鉄磨「くっ……!」
独角「あははははは!! 今度こそ挽き肉にしてやるぞ!! 半妖ぉぉぉぉ!!」

 鉄磨は凶護を担ぎ上げると、唸りを上げる削岩機の脅威から必死に逃走を図る。

196藍三郎:2009/05/15(金) 23:36:49 HOST:164.130.183.58.megaegg.ne.jp
伊空「あ〜あ、いつの間にか獲物取られちゃってるよ。
 ま、あんなじーさんじゃいまいちやる気出なかったけど」

 短刀を指に挟んでくるくる回しながら、壁の穴から出てくる伊空。

深鈴「い、伊空、あんた……」
伊空「よ、深鈴姉。まだ生きてるみたいだね〜
 ねぇねぇ、どっかに手ごろな敵転がっていない?
 いい感じでテンション上がってきたところなんだからさぁ」

 いつも通りの調子を崩さない伊空だったが……
 突如、遠方から鈍い音が轟いて来るのが耳に入った。

深鈴「な、何!? 今の音……」




 一方……

 負傷した桂を抱え、辻占玖郎三郎清光から逃走中の銀時たち。
 やがて、彼らは曲がり角から現れた鉄磨と凶護と鉢合わせする。
 二人ともボロボロで、凶護の方は意識を失い、鉄磨に担がれている。

銀時「あんたは……!」
鉄磨「万事屋か……こっちには来ない方がいいぞ……すぐに逃げ……」
銀時「おいおい、そりゃこっちの台詞だぜ……」

 その内、鉄磨らが来た方向から、二足歩行で歩く巨大な金属の塊が出現する。

長谷川「どわああぁぁぁぁ!! な、何じゃありゃ!?」
雪子「この国の絡繰兵器? こんなものまで持っていたなんて……」

 一方、銀時達の方から、『戯鎧』に勝るとも劣らぬ脅威が姿を見せる。

清光「おやおや……こいつぁ、挟み撃ちという奴かねぇ? うふふふ……」

 獲物が増えたことに舌なめずりすると、清光は腰の刀に手を掛ける。
 前門の虎、後門の狼。二つの絶望が銀時達を挟み込む。

独角「逃がさんぞ! 半妖ォ!!」

 戯鎧の両肩の装甲が展開する。
 そこから噴煙と共に四発の弾頭が放たれ、鉄磨たち目掛けて飛んで行く。

長谷川「う、嘘だろ……!?あ、あれってミ、ミサ――――!」

 長谷川が言い終わる前に、凄まじい光と爆発が、彼ら六人を覆い尽くした……


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