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スーパーロボット大戦ロストセンチュリー 2nd〜折れた剣の先に〜
1
:
蒼ウサギ
:2007/08/01(水) 00:11:18 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
この作品は『スーパーロボット大戦ロストセンチュリー』の続きです。
『スーパーロボット大戦ロストセンチュリー序章編』『SRWロストセンチュリー・アナザー』
を経て作られているので、読む場合はまずはそちらからお願いします☆
これからも頑張っていきますので、協力してくれる方、読んでくださる方、どうぞよろしくお願いします!
2
:
蒼ウサギ
:2007/08/01(水) 00:12:36 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
【あらすじ】
独立組織ギャラクシア・キーパーズ(G・K)。
長きに渡り行われていた地球と宇宙の戦争から弱き人々を守るため、
星倉由佳率いるコスモ・フリューゲル隊は、地球連邦軍、ネオジオンの戦争、
ロンド・ベル、シャア派、ザビ派の三つ巴に参戦した。
一刻も早く、戦争を沈めるために・・・・・・・。
ザビ派主導者・ハマーン・カーンを倒したシャア派主導者・シャア・アズナブルは、
戦争終結の最終手段、アクシズの地球落下作戦を開始した。
蒼き星に落ち行く巨大石はコスモ・フリューゲル隊、ロンド・ベル隊の活躍により、破砕された。
かくして戦争はコスモ・フリューゲル隊が加担したロンド・ベル隊の勝利に終わった。
だが、それを嘲笑で傍観するものがいた。
<アルテミス>
そこに所属するという男、ヴィナスによってコスモ・フリューゲル隊は光に呑み込まれ、世界から消えた。
(スーパーロボット大戦ロストセンチュリー 序章編より)
戦争終結後、連邦とネオ・ジオンの間に停戦協定が結ばれた直後、連邦の統治力は弱体化した。
それを機に活発し始めたテロ組織・ワールドエデン。
混乱する地上を救うため、G・K隊は紫藤トウヤ率いるコスモ・アーク隊を派遣。
同時に消えたコスモ・フリューゲル隊の捜索も開始した。
様々な仲間を引き入れ、コスモ・アーク隊はワールドエデンとの決戦に望んだ。
決戦の場は南極。
激戦の末、勝利したのはコスモ・アーク隊だった。
だが、そこへ悪魔のような笑い声が木霊した。
<アルテミス>
その長であるマルス・コスモの襲撃に遭い、コスモ・アーク隊は一人の犠牲者を出してしまった。
そして・・・・・・・・世界から消えた。
(SRWロストセンチュリー・アナザーより)
呑み込まれた光の先・・・・・・そこは、似ているようで全く違う世界だった。
異星人の襲来と、セカンドインパクトという大災害により、
地球のほとんどの文明が退廃した世界だった。
その戦乱に満ちた世界に迷い込んだコスモ・フリューゲル隊は火星の後継者、月文明との抗争、
使徒と呼ばれる未知なる生命体、グラドス、ザ・ブーム異星人連合勢力、バロータ軍、ギャンドラー。
多くの勢力との戦いに巻き込まれた。
また<アルテミス>によって他の並行世界から連れてこられたOZ、ザフトが結託。
ネオ・バディムとしての活動を始め、コスモ・フリューゲル隊と同じ世界からやってきた
デビルガンダム軍団、ガイゾック、ドクーガも各々の野望のために動き始めた。
コスモ・フリューゲル隊は、宇宙統合軍マクロス7、ナデシコ隊、そして他の並行世界からやってきた
数々の勢力に協力する形で、この世界で戦いを繰り広げた。
数多の激戦の末、火星の後継者、デビルガンダム軍団を倒したが、ギャンドラーの本陣が地球へ落下。
バロータ軍もプロトデビルンなるものの出現により、本格的な侵攻を開始した。
だが、その後、コスモ・アーク隊が合流、ドクーガの和解を経て、G・K隊、統合軍連合は戦力を拡大させた。
戦いは激しさを増す中、徐々に明らかになるのは、この並行世界を巻き込んだ戦いの仕掛け人。
<アルテミス>の謎だ。
彼らの本拠地がこの世界の南極にあるという情報を掴んだG・K隊、統合軍連合は攻撃を仕掛けた。
だが、マルス・コスモ、彼が操るウラノスの圧倒的戦闘力とアルテミスの強大な戦力に、
敗退を帰してしまった。
その後、戦いの舞台は宇宙を中心となった。
月に眠る黒歴史の解放。
そこに封印されていたアルテミスの起源と“失われた世紀”という存在を一同は知ることとなった。
これを機に月と地球は和解への道を進んでいったが、月から独立したギンガナム隊は今もなお牙を剥いている。
(スーパーロボット大戦ロストセンチュリーより)
戦いは、まだ終わらない。
誰かが剣を握る限り・・・・・・・・・・・
誰かが剣を振るう限り・・・・・・・・・
巨人を駆る者たちの戦いは、さらに加速する。
3
:
藍三郎
:2007/08/02(木) 20:56:28 HOST:169.77.231.222.megaegg.ne.jp
第38話「RHYTHM EMOTION」
=宇宙要塞バルジ=
ユーゼス「ようこそ、宇宙要塞バルジへ。歓迎いたしますぞ、お二人とも・・・」
ル=カイン「ふん・・・・・・」
慇懃な挨拶で出迎えたユーゼスを、ル=カインは憮然とした態度で応ずる。
グラドス軍のル=カイン総司令官、そしてグレスコ提督の
二人はバルジ内の貴賓室へと招かれていた。
ガラス窓から覗く宇宙・・・
そこから、何隻ものグラドス戦艦が、続々と入港しているのが見える。
父と子は会見の席につく。テーブルの上に並べられている、
明らかに“地球の物とは違う料理”を見て、ル=カインは鼻を鳴らした。
ル=カイン「グラドス式の晩餐か・・・多少は我々へのもてなし方を分かっているようだな」
ユーゼス「ええ・・・ごゆるりとお楽しみくださいませ」
ル=カイン「いや、お前達と馴れ合うつもりはない・・・」
極めて冷徹な口調で、ル=カインは切り捨てた。
ル=カイン「この場に赴いたのは、貴様らと友好を暖めるためではない。
それを理解してもらわねば困るな・・・」
ユーゼス「ふむ・・・余計なお節介でしたかな・・・」
そこで、グレスコ提督が重々しく口を開く。
グレスコ「いや・・・貴公のもてなしには感謝する・・・
余裕が無い息子をこそお許し願いたい」
ル=カイン「父上!」
ル=カインは、非難の目つきで父をねめつける。
そして、今度はユーゼスの方へと向き直ると、
ル=カイン「まだその仮面は取らんのか?」
自分達を前にして、なおも白銀の仮面を取らぬユーゼスを揶揄した。
ユーゼス「申し訳ない・・・
この要塞内においては、己の正体を晒す事を禁じておるのですよ・・
その料理は、そのせめてもの侘びとお考えください」
ル=カイン「・・・・・・・・・」
ル=カインは、今度は何も言わなかった。
彼が言ったとおり、この会見の席は友好や馴れ合いの場ではない。
互いのカードを見せ合い、いかに相手より優位な条約を結ぶか・・・
そういう暗闘の場なのだ。
ユーゼス「では・・・話し合いましょう・・・お互いの未来について・・・」
仮面の奥の表情を隠したまま、ユーゼスは切り出した。
=バトル7 会議室=
マックス「何・・・ネオバディムとグラドスが、同盟を結びつつあるだと!?」
バトル7、会議室・・・
テーブルには、各艦の主要メンバーが勢ぞろいしている。
デュオ達の口からもたらされた衝撃的な情報により、居並ぶ誰もが驚きを隠せなかった。
デュオ「ああ、何度かそれらしい無線を傍受したし、
俺らが脱出する寸前、グラドスの戦艦が入港するのを確認している」
ジャミル「なるほどな・・・それなら、あの月での会戦・・・
グラドスとネオバディムが妙に連携が取れていたのも説明がつく」
ジョウ「ちっ、あいつら、グルだったのかよ・・・」
トロワ「現在は、あくまで水面下で同盟が進んでいる状態だ。
末端の兵士は勿論、OZやザフトの高官ですらも、この事を知らないだろう」
ムスカ「それを探り当ててくるあんたらも凄いけどな・・・」
ゼド「やはり、貴方がたお二人がネオバディムへ下った理由は、
敵の機密を探るためだったのですね・・・」
トロワ「ああ・・・」
ヒイロとトロワ、突然の裏切りの真相が、ここでようやく明かされた。
それでも、釈然としないものは残るが・・・
トロワ「ネオバディムはこの地球圏全体で暗躍しているが・・・
その目的や組織体系、さらには拠点の位置などが、あまりにも曖昧としている。
ならば、より詳細な情報を得るには、敵の懐に潜り込むのが最適だと考えた」
悠騎「けどあんたらも人が悪いぜ・・・それならそうと、先に言ってくれればいいのによ」
自分程度ならまだしも、
せめてマックス艦長らには一言あって然るべきでは無かったのか。
トロワ「この作戦を思いついたのは、あの時の敵パイロットから勧誘を受けた時だ。
これ以降のそちらへの交信は、俺達の目論見を露呈する危険を孕んでいたからな」
さも当たり前のように、淡々と語るトロワ。
彼らにとっては、情報収集、ひいては長期的な展望において
最適な手段を選択しただけであり、『裏切り』そのものへの罪悪感はまるで無いようだった。
4
:
藍三郎
:2007/08/02(木) 21:00:31 HOST:169.77.231.222.megaegg.ne.jp
デュオ「これだもんな。
俺らも事の真相を打ち明けられた時にゃ、さすがにキレかけたよな〜」
デュオは不機嫌顔で愚痴をこぼす。無理も無い。
裏切られただけならまだしも、追いかけた先で、
ヴァイエイト、メリクリウスに乗った二人と交戦し、危うく撃墜されかかったのだから。
デュオ「なぁ、五飛?」
五飛「別に構わん。奴らが敵に回ったなら、斃すだけの事だった・・・」
事も無げに言ってのける五飛。
そのドライな意見に、デュオは口を塞ぐ。
デュオ「・・・そうですかい・・・カトルはどうよ?」
カトル「僕ですか?そりゃ、最初は悲しかったですけど、
トロワにはトロワの考えがあっての事だとわかりましたから・・・」
デュオ「いい奴だな、お前・・・根に持ってるのは俺だけかよ」
組んだ手に顎を乗せ、ふてくされたポーズを取るデュオ。
カトル「それで・・・僕らはしばらく敵基地に軟禁されていたんですが、
ネオバディム側に協力する事を条件に、ある程度の自由を許されました。
その後、監視の隙を突いたヒイロ達から、事の真相を聞かされたんです」
デュオ「それまでずっと牢屋暮らしだもんな〜窮屈で退屈で死にそうだったぜ」
無機質な監房を思い出し、デュオは自嘲するように言う。
トロワ「ネオバディムの内部調査・・・
それ以外にも、俺達は元の世界に帰る方法について探す目的もあった」
悠騎「元の世界に?」
それは、悠騎達この世界に招かれたイレギュラー全員の、そもそもの目的である。
トロワ「現時点で、ネオバディムは<アルテミス>と最も密接に繋がっている組織だ。
残念ながら、こちらに有益な情報は得られなかったが・・・
ネオバディムは、OZやザフトに対し、
自らの保有する技術力を提供し、元の世界に帰す事を条件に同盟を結んでいる事がわかった」
こちらが元の世界への帰還を模索しているのと同様、
敵勢力もまたネオバディムと手を組む事で、それを果たそうとしているのだ。
ゼド「ふむ・・・この世界で増強した戦力を、
元の世界に戻っても生かそうという腹積もりですか・・・
いやはや、転んでもタダでは起きぬ貪欲さですなぁ」
彼らが最も望むもの・・・元の世界の帰還と戦力の増強。
ネオバディムはそこに付け込み、見事OZとザフトの協力を取り付けたのだ。
トロワ「だが、解せない点も多い・・・」
ムスカ「というと?」
トロワ「俺達は細心の注意を払って、情報収集に当たっていた・・・
だが、それを差し引いても、敵の、俺達に対する監視の眼は緩過ぎた・・・
まるで、情報を盗まれても構わないとばかりにな」
ジャミル「なるほど・・・確かに不可解だ・・・」
潜入工作のプロフェッショナルである五人のガンダムパイロット達。
その中の一人をしてそう言わせるのだから、何か裏があるのは間違い無さそうだった。
マックス「それだけではない。彼らは君達のガンダムを改造し、
さらに新型のガンダム・・・ガンダムエピオンを君達に与えている。
それを指示した人物というのが・・・」
ヒイロ「トレーズ・クシュリナーダ・・・」
黙して席に並んでいたヒイロ・ユイが、初めて口を開く。
容態が回復するまで三日はかかると言われたが、
ベッドに横になってから数時間の間に回復し、今は平然とした顔で席についている。
医者に言わせると、信じがたい体力の持ち主であり、
さらに、無意識下でも体力を最大限まで回復させる方法を知っていた、との事だ。
日々が戦いであるヒイロにとって、疲労で休んでいる暇など無い。
ゆえに、短い休息の間に体力を回復する術を、身につける必要があった。
むしろ、完全回復に数時間もかけたという事実が、ヒイロに掛かった負担の大きさを表していた。
ヒイロ「あの男は、明確にオレ達に協力すると言った訳ではない・・・
だが、俺達がネオバディムで行動しやすいよう、
裏で手を回していた可能性が高い」
カトル「それと、ネオバディムには、僕らのガンダムを製作した科学者達も
捕らえられていました。僕らのガンダムを改造したのは、彼らです」
ゼド「彼らも、ネオバディムに潜入して内情を探っているのでしょうか・・・」
デュオ「いや、喰えないジジイどもだ。
俺らを助けたのも気紛れで、案外、本気でネオバディムに協力するつもりなのかもしれねぇ」
実際、ウイングガンダムゼロや、
ビルゴの元となったヴァイエイト、メリクリウスを製作したのは彼らだ。
その成果は、間違いなくネオバディムを増強させている。
直属の上司に当たる人物であったが、胡散臭い点は五人全員に共通していた。
5
:
藍三郎
:2007/08/02(木) 21:01:56 HOST:169.77.231.222.megaegg.ne.jp
マックス「OZの総帥、トレーズ・クリュリナーダ・・・
彼は必ずしも、ネオバディムの益になるよう動いているわけでは無さそうだな」
ジュン「ネオバディムは、元々OZやザフト・・・
複数の組織が連合して形成された組織・・・
互いの利害が衝突し、一枚岩で無くなっても不思議ではありません」
トロワ「ああ・・・ネオバディムの中でも、
総帥ユーゼスに従う多数派と、
OZを中心としたトレーズに従う勢力とが、水面下で分裂を始めているそうだ」
カトル「現時点では、決定的な対立には至ってませんが・・・」
エキセドル「それに加え・・・例のネオバディムとグラドスの同盟が、
内部分裂に関係しているのではないでしょうか」
マックス「うむ・・・どうかね。エイジ君。ネオバディムとグラドス・・・
この二つの勢力が手を取り合う事について」
この中で最もグラドスについて知る男・・・エイジに質問を向けるマックス。
エイジはしばし黙考した後、はっきりと断言した。
エイジ「グラドスは・・・ル=カイン総司令が率いる地球侵攻軍は・・・
地球を支配化に置き、文化矯正を行ったことからも分かるとおり、地球人を徹底的に蔑視しています。
それが、対等の立場で同盟を結ぶなど・・・およそ考えられない事です」
ルリ「グラドス軍は、統合軍の反撃で勢力を大きく削がれています。
同盟を結ぶ理由は十分にあるのですが・・・」
エイジ「何か・・・キッカケがあったはずなんだ。
そうでなければ、いくら戦力が低下したとはいえ、あのル=カインが地球人と同盟を組むはずが無い」
半分グラドスの血を引き、またグラドスと長きに渡り戦ってきた者として、
エイジにはル=カインの潔癖さやプライドの高さを、よく理解していた。
それゆえに・・・今回の一件は、彼にとって大きな違和感が残るものだった。
ムスカ「そもそも、ネオバディムの方も何考えてんだがわかんねーよな。
よりによって地球侵略を企む異星人どもと手を組みやがるたぁ・・・
グラドスの走狗にでも成り下がるつもりか?」
そうは言ってみたが、それはありえないと自分で否定する。
ルシア・レッドクラウド・・・総帥秘書を名乗る切れ者の青年。
紳士の仮面を被りつつも、その裏では、
蜘蛛の巣の如く思考と謀略の網を張り巡らせている・・そんな印象を受けた。
単なる異星人の手駒で終わるような男とは、とても思えない。
ゼド「統合軍の打倒・・・新たな秩序の創造・・・
それらのお題目は、所詮カモフラージュである可能性が高いですね。
その裏にはもっと遠大な・・・真の目的がある気がします」
マックス「トレーズの目論見・・・グラドスの目論見・・・ネオバディムの目論見・・・
今考えたところで、答えが出るものではないか・・・」
エキセドル「はい・・・それ以上に、我々には早急に対処すべき事態があります」
マックス「ああ・・・」
会議室正面のモニターに、ある建造物の設計図らしき画像が映し出される。
ハーリー「宇宙要塞バルジ。ネオバディムの本拠地となっている、要塞基地です」
設計図に描かれているのは、スペースコロニー級の宇宙要塞だ。
構造は厚みのある円盤型の重力ブロックに、
中心軸を同じにするそれより直径の短い円柱状のエンジンブロックが付属している。
その全容に、居並ぶ出席者達は驚嘆の声を上げる。
ハーリー「名称こそ、宇宙要塞ですが、
実際には高い航行能力と兵装を持つため、宇宙戦艦に近いです。
多数のMS、MDを格納しており、中心軸から伸びる主砲・・・
大口径ビーム砲『バルジ砲』の威力は、大艦隊やコロニーをも一撃で消滅しうるとの事です」
ライ「拠点である一方、決戦兵器でもあるという事か・・・」
ゴート「だが、いつの間にこれだけの建造物を造り上げたのだ?」
これほどまでに巨大な要塞が、
今まで統合軍の眼から逃れていた事は不思議と言う他ない。
機材・物資運搬など、必ず目立つ動きがあるはずなのに・・・
トロワ「ドクター達の話によれば、
バルジ周辺では、強力な電波妨害と空間操作が施され、部外者の侵入を防いできたそうだ」
ゼド「空間操作・・・ですか。その辺りにも、<アルテミス>の影を感じますね・・・」
ハーリー「さらに、この宇宙要塞は一から造ったものではなく、
元より宇宙に廃棄されたものを流用し、改造を施したものだそうです」
6
:
藍三郎
:2007/08/02(木) 21:04:20 HOST:169.77.231.222.megaegg.ne.jp
デュオ「・・・俺達の世界にも、これと全く同じ、
OZの宇宙要塞があったんだよな・・・まさか、丸ごと持ってきたんじゃあるまいな?」
カトル「それも有り得ないとは言い切れませんが・・・
もう一つの可能性としては・・・」
ヴィレッタ「黒歴史・・・」
ヴィレッタはぼそりと呟いた。
ヴィレッタ「この世界が、数多の異世界と同じ歴史をなぞって来たとすれば・・・
ここにも同じ『宇宙要塞バルジ』が存在してもおかしくはないわ」
ムスカ「はっ、黒歴史なんてモンが出てきたせいで、
もう、何が残されていても驚けない状況になってきたな・・・」
彼の発言は、この場に集う者達全員の意見でもあった。
もはや、この宇宙を取り巻く情勢は、闇鍋もかくやと言わんばかりの渾沌を呈してきていた。
マックス「バルジの主砲・・・コロニーをも一撃で破壊しうる破壊力ならば・・・
統合軍、いやこの地球圏にとって最大の脅威となる。
最悪、武力に物を言わせ、地球圏を完全掌握する事も可能だろう」
最強の兵力は、ただ存在だけで最大の脅威となる。
実際に使用するまでもなく、脅迫のカードとして最大の威力を発揮するのだ。
もちろん、もし使われた場合に如何なる大惨事を招くのか・・・あえて想像するまでもない。
ハーリー「ですが・・・救いはあります。
情報によれば、要塞の修復は完全には済んでいないとの事・・・
あちら側がコレを動かしてこないのが、その証拠と言えます」
カトル「ええ・・・会戦当初から彼らが大きな動きに出ず、
散発的な戦闘を繰り返しているのは、時間を稼ぐのが目的だったのでしょう」
マックス「だが、その存在と位置も、君達の情報で明らかとなった。
統合軍を代表して、礼を言わせてもらう」
マックスは、ガンダムパイロット達に感謝の意を示した。
そして、今度は場に集う全員に向けて宣言する。
マックス「宇宙要塞バルジへの対処・・・
今の我々にとって、最優先で処理せねばならない案件だ。
これより、我々宇宙統合軍艦隊は、
ヒイロ君達から提供された座標軸を追って、宇宙要塞バルジへ強襲をかける!!」
この宣言が、ネオバディムとの決戦の号砲となった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
マクシミリアン艦長から、
ネオバディムに対する一大作戦が発表された後・・・
会議室から出た者達は、慌しくそれぞれの持ち場へ戻っていった。
その中で、バトル7の廊下を歩くロランは、浮かない顔をしていた。
ロラン(宇宙要塞の主砲・・・もしそんなモノで、月や地球を狙われたら・・・)
最悪の事態を想像し、ロランは慄然とする。
ロストマウンテンで爆発した、天地を灼く剣・・・核。
強大すぎる兵器は、敵味方関係なくその猛威を振るい、焼き尽くしてしまう。
あの時の経験から、ロランはその恐ろしさをよく知っていた。
ロラン(最悪・・・なら、ホワイトドールの蝶の羽も・・・・・・)
黒歴史を埋葬したと言われる、∀の月光蝶。
ギム・ギンガナムの哄笑が脳裏をよぎる。
ギンガナム『しゃらくさいことを。
∀は、古代の宇宙文明を破壊した禁忌のモビルスーツなんだよ!!』
もしも、彼が言う事が事実ならば・・・
あのホワイトドールも、核やバルジと同等か、それ以上に危険な兵器なのではないか?
そんな、全てを滅ぼしかねない“兵器”を、自分は扱いきれるのか?
いや・・・それ以前に、特別な力も持たぬ
ただの移住民に過ぎない自分に、扱う資格などあるのだろうか?
考え事に耽っていると、突然後ろから肩を叩かれた。
グエン「やぁ、ローラ」
振り返ると、そこにはグエン・ラインフォードが朗らかな笑みを浮かべて立っていた。
ロラン「何ですか?グエン様?」
グエン「いや、何。今から、僕と一緒にウィルゲムに来てもらえないか?
この後の作戦について、大事な話があるんだ」
ロラン「はぁ・・・分かりました」
確かに、これからやるべき事、話し合うべき事は山積みだろう。
ロランは、特に考えなく了承した。
だが・・・グエンは妙に嬉しそうだった。
まるで、何か面白いものでも見せたがっているように・・・
7
:
蒼ウサギ
:2007/08/11(土) 22:49:14 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
=コスモ・アーク=
バルジ攻略前とあって、整備班の仕事にも一層の熱が入る。
それを指揮するレイリーもいつも以上に気合が入っている。
そんな彼女の元に、悠騎がやって来た。
悠騎「よぉ、レイリー。暇―――」
言葉が言い終わる前に、悠騎は脳天に強烈な痛みを味わった。
レイリーの鉄拳が振り下ろされたのだ。
レイリー「これが暇に見えるんだったら、あんたの目と根性は腐りきってるわ!
ついでに超馬鹿の称号をあげるわよ!」
悠騎「ってぇ! いや、今のはオレの失言だったな、わりぃ」
珍しく素直な悠騎にレイリーは、かなり失礼とわかりながら思わず怖気が走った。
レイリー「・・・・・・で、何か用?」
悠騎「あぁ、ちょっとこれ見て欲しいんだけど」
そう言って手渡したのは、一枚のディスクだった。
レイリーは黙ってそれを受け取ると、自分のコンピューターにセットして中のデータを確認した。
数秒後・・・・・・
レイリーはディスクを取り出して、それをフリスピーを投げるかのように飛ばした。
悠騎「のわっ!」
反射的にダッシュして、キャッチ。まるで競技犬のようだ。
悠騎「なにしやがる!」
吼える悠騎に負けずに、レイリーが返してきた。
レイリー「あんたウルトラ馬鹿決定!なによその無茶改造は!!」
悠騎がレイリーに見せたディスクの中には、ブレードゼファーの改良プランのデータが入っていた。
それを見たレイリーの反応が先の通りだ。
悠騎「改造つーか、追加装備だ!」
そう返してきた悠騎に、今度はペンチが飛んできた。
額に直撃、悠騎は痛みに悶えた。
レイリー「どっちも同じよ!こんな無茶な案が呑める訳ないでしょう!」
悠騎「でもよ!これならブレードの突進力と一撃の威力が大幅にアップできる!
ヴィナスの機体をぶっ飛ばせるし、マルスの機体のバリアだって斬り裂けるぜ!」
その言葉で、レイリーは悠騎の意図を理解した。
確かに無茶だが、その分、一撃の攻撃力がアップする。
悠騎が考えたプランはそういうものだった。
レイリー「けどね、これじゃゼファーのウリである小回りが効く運動性は失われる。
第一、このアホでかい剣を振り回そうとするんなら、
特機並の頑強な腕(マニピュレーター)が必要よ!」
悠騎「一発でも振れたらOKだ!これなら一撃必殺で相手を倒せるからな!」
レイリー「はぁ・・・・・・」
レイリーは溜息をつきながら、悠騎からディスクを奪い取った。
レイリー「まっ、アンタの考えと熱意はわかったよ。これをコンセプトに私が改良を加えあげる」
悠騎「えっ!? やってくれんのか!?」
レイリー「こういうの嫌いじゃないしね。由佳艦長やアイには私から言っておくよ」
そう言ったレイリーの顔は、まるで新しいオモチャを得た子供のように活き活きしていた。
なんだかんだ言って、整備士としての血が騒いだようだ。
悠騎「すまねぇ、感謝するぜ!」
軽めだが、頭を下げる悠騎に、レイリーは困惑した上に、どこかむず痒い気持ちになった。
8
:
藍三郎
:2007/08/13(月) 20:23:39 HOST:169.77.231.222.megaegg.ne.jp
=シティ7 森林地帯=
バサラ「『おまえにいつ 出会えるのだろう?』
SUBMARINE STREETで〜 つぶやく俺は今日も・・・」
シティ7郊外の森林地帯にて。
熱気バサラは眠っているシビル相手に歌を聞かせていた。
シビルを発見してから、もう数週間になる。
半ば日課になりつつあるが、光球の中のシビルは、一向に復活の兆しを見せなかった。
バサラ「果てしない砂漠を〜 さまよう2人〜
穴があいている〜 俺の心には〜」
手応えの無さに、バサラの表情にもやや不安と苛立ちが混じっている。
いや、これはシビルの問題のせいだけではない。
彼が自らの生きる意味としてきた『歌』・・・その意義が、今更ながら揺らぎ始めたのだ。
理由は、プロトデビルンとの戦い・・・
自分の歌が、戦いのための道具と見なされる、受け入れがたい現実だった。
前回の戦いの後、レイと交わした会話が脳をよぎる。
レイ『なぁ、バサラ。お前は今まで、がむしゃらに歌ってきた。
だけどな、お前がどんな気持ちで歌おうと、
それをどう受け止めるかは、聞いた人間の勝手だぞ。
まぁ、それで納得するお前じゃないだろうが・・・それは事実だ。
少しは考えて見てもいいかもな・・・何のために歌ってきたのか。何のために歌うのか・・・』
バサラ「おまえに逢いたい〜 この寂しさ 分かちあえる〜〜
おまえをずっと呼び続ける〜〜 声の限り〜〜〜」
『考えろ』と言われたところで、
今まで半ば本能の赴くまま歌い続けてきたバサラには、皆目分からぬ事だった。
仕方が無いので、ただひたすらに歌うしかない。自分には、それしか出来ないのだ。
しかし、いくら歌っても、胸のもやもやは晴れる事は無かった。
一方、木陰から、いつも通りバサラの様子を観察する男が一人・・・
ギギル(・・・いつまで待たせる気だ・・・アニマスピリチア・・・)
顔を憤怒で歪め、拳を握り締めるギギル。
あの男に任せてからもう数週間・・・シビルは一向に目覚める気配が無い。
元々短気な性分・・・そろそろ我慢の限界だった。
バサラ「何故、起きねぇ?俺の歌は、届かねえっていうのか!?」
ギターを弾く手を止めるバサラ。
バサラ「俺の・・・俺の歌は・・・」
9
:
藍三郎
:2007/08/13(月) 20:24:53 HOST:169.77.231.222.megaegg.ne.jp
ギギル「うおおおおおっ!アニマスピリチア――――ッ!!」
バサラ「!!」
木陰から飛び出してきたギギルは、固めた拳をバサラの顔面にぶつける。
顔を張り飛ばされ、バサラは草むらへ倒れこむ。
バサラ「ぐっ!」
ギギル「生ぬるいぜ!」
起き上がったバサラに対し、さらに殴りつけるギギル。
バサラ「ぶはっ!!」
ギギル「お前が・・・お前が!!」
怒り、妬み、苛立ち。それら全ての感情をぶつけるように、バサラをひたすら殴る。
ギギル「お前にしか起こせないんだぞ!!
もっと!もっとスピリチア―――――!!!!」
バサラ「はぁ・・・はぁ・・・」
散々殴られながらも、バサラは反撃しようとはしなかった。
代わりに、ギターに再びピックを当てる。
不思議な事に・・・彼の瞳は、殴られる前より輝いて見えた。
バサラ「なら・・・行くぜぇぇぇぇぇっ!!」
激しくギターをかき鳴らすバサラ。声を張り上げて、魂の限り熱唱する。
バサラ「『おまえは今 何をしてるの?』
誰といても 満たされない MY TRUE HEART〜〜〜」
ギギル「何だってんだぁ――――ッ!!」
なおもバサラを殴り続けるギギル。
しかし、いくら殴られても、途中で歌詞が途切れようとも、バサラは構わず歌い続ける。
それは、加害者であるギギルにすら畏怖を抱かせる、異様な姿だった。
バサラ「おまえに逢いたい 引き寄せたい 運命を〜〜
おまえだけを 待ち焦がれて 時は過ぎる〜〜〜」
ギギル(貴様・・・誰のために歌ってるんだ・・・?一体誰のために?)
いつしかギギルは、拳を下げていた。
その場に立ち止まったまま、バサラの歌声に耳を傾ける自分に気付く。
バサラ「いつか本で読んだ 遥か遠い星の〜〜
透き通る海に おまえを連れてゆこう―――――」
ギギル「・・・・・・」
歌うバサラを前にして、ギギルは呆然として立ち尽くす。
心の奥底から、理解できぬ感情が沸きあがってくる。
それは、先ほどまでの激情とは、似ているようで全く異質な感情だった。
ギギル(誰だ・・・何者だ、お前は!?
その前に俺は何だ・・・俺は一体何者なんだ!?)
半ば忘我していた彼は気付かなかった。
自分の両目から、涙が流れ落ちている事を・・・
シビル「・・・・・・」
光のゆりかごで、沈黙のまま眠り続ける少女。
その閉じられた目蓋が・・・わずかに開かれた。
10
:
藍三郎
:2007/08/13(月) 20:26:36 HOST:169.77.231.222.megaegg.ne.jp
=ウィルゲム=
ロラン「ロラン・セアック、入ります」
ウィルゲムに戻ってきたロランは、グエンの私室のドアを開ける。
グエン「やぁ、ローラ。前祝いに付き合ってもらおうと思ってね」
ロラン「前祝い・・・?」
怪訝な顔で部屋を見回すロラン。
見ると、寝台の上に一人の小柄な女性が腰掛けていた。
赤い道化服のような衣装を身につけ、
目の回りには隈取りのようなメイク、耳にはヘッドフォンらしきものを付けている。
グエン「まずは彼女を紹介しておこう。
彼女はメリーベル・ガジット。ギンガナム家の武門の一族だ」
メリーベル「ロラン・セアック・・・始めまして、じゃあないわよね?」
ロラン「え?」
メリーベル「ヒゲの機械人形乗りなんだろ?ムーンレィスなのにさ・・・ははははっ!」
実物を見て拍子抜けした風に、メリーベルは笑い続ける。
ロラン「まさか君は・・・ギンガナム隊の?」
メリーベル「こないだの戦いじゃ世話になったねぇ。また苛めてあげようか?」
肯定の代わりに悪戯めいた視線を送るメリーベル。
ロランは咄嗟に身構える。
ロラン「どういう事ですか、グエン様!!」
グエン「ロラン、よく聞いてくれ。
我々イングレッサ・ミリシャは、
ギンガナム隊・・・そしてネオバディムと手を組む事を決めた」
ロラン「何ですって・・・!?」
驚愕で思考が上手く働かない。一方、グエンは実に平然とした態度を取っている。
グエン「だから、君をここに呼んだんだ。
君にも是非、私の意見に賛同してもらいたいと思ってね」
ロラン「ソシエお嬢様や、キエルお嬢様は?」
グエン「彼女達は置いていく。反対されるのは目に見えているからな。
彼らの下なら、悪いようにはされまい・・・」
ロラン「・・・僕も反対ですよ。
こんなの、ディアナ様や統合軍の皆さんへの裏切りじゃないですか!」
これまで共に戦ってきた仲間を裏切る・・・そんな事、ロランは到底納得できなかった。
グエン「裏切りか・・・そう言われても仕方がないな・・・」
グエンの顔に憂いが浮かぶ。彼なりに、後ろめたい気持ちは残っているらしい。
グエン「だが、ロラン・・・わかってくれ。
このまま戦争が終結しても、月と地球との力関係は変わらぬままだ。
それでは、いつまた侵略の脅威に晒されるかわかったものではない。
ゆえに、我々は黒歴史を知り、月と同等レベルの文明を築かねばならない。
ギンガナム隊とネオバディムは、それに協力してくれると約束してくれた」
ロラン「彼らは戦争を起こそうとしているんですよ?
せっかく、月と地球が手を取り合おうとしている時に・・・」
グエン「・・・・・・人類の進歩には、劇的な変革が必要だ・・・
“戦争”も、その変革の一つであると、私は考える」
ロラン「・・・・・・わかりました」
短くそう呟くと、ロランは背を向ける。
グエン「ローラ・・・それが君の答えか」
背を向けた彼に、決別の意思を見て取ったグエン。
ロラン「はい。グエン・ラインフォード卿の考えは間違っています」
グエン「ローラ、地球をアグリッパのような者の手に渡さないためだ」
ロラン「黒歴史の再来なんて、あってはならない事です!」
グエン「黒歴史のいいところを学ぼうというのが・・・」
ロラン「“あれ”はそんな生易しいものじゃありません。
僕は今までの戦いを生き抜いてきてわかった・・・
強すぎる兵器は、それを扱う人の思惑も狂わせて行く・・・
兵器が争いを生み、争いがまた強い兵器を生むんです。そして大勢の人が死ぬ。
戦争に正しい事なんてありません。あるのは悲しみだけです。
戦争で人類を救おうなんて考えは・・・絶対に間違っています」
自らの主人に対し、はっきりと言うロラン。
それ以上話す事は無いと言う風に、ロランは走り去っていく。
メリーベル「あいつ!」
追跡しようとするメリーベルだが、後ろからグエンに止められる。
グエン「追わなくていい!メリーベル嬢!!」
メリーベル「あああっ!オヤジが触るな!!」
グエンに掴まれ、じたばたするメリーベル。
グエン「ローラ・・・」
グエンは悲しみを湛えた瞳で、去っていくロランの姿を見送るのだった・・・
11
:
蒼ウサギ
:2007/08/19(日) 19:24:27 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
=バトル7=
艦内に鳴り響く警報は突如、ウィルゲムが発進したことを示していた。
マックス「どういうことだ!? ウィルゲムとの交信はできないのか?」
焦燥するマックス。全ブリッジ要員がそれを試みるも、ウィルゲムとの交信はできないでいた。
それはどの艦も同じようで、ナデシコCのルリがその原因を通信で伝えてきた。
ルリ『向こうから一方的に交信を遮断しています。意図的に・・・・・・』
マックス「それは、どういうことだ?」
ルリ『・・・・・・ウィルゲムが何者かに占拠された、とも考えられますがどこか不自然です
考えたくありませんが、あちらの独断かと』
マックス「ウィルゲム・・・・・・ミリシャか・・・グエン卿は・・・・・・・・あの中か・・・」
肉眼で確認できた、ウィルゲムを見て、マックスは苦虫を噛み潰したかのような顔になった。
§
ウィルゲムに積み込まれていた∀ガンダムにロランは乗り込むと、
すでに宙に浮かんでいるウィルゲムから外に飛び出した。
飛行能力を有する∀ガンダムで、ウィルゲムにビームライフルの銃口を向ける。
ロラン「船を月に戻してください!でなければ撃ちますよ、そのお嬢さんも!」
怒気を孕んだロランの言葉でも、ウィルゲム内のブリッジにいるグエンは平静だった。
グエン「できもしないことを言うんじゃない、ローラ」
メリーベル「撃ってごらんよ」
同席しているメリーベルも同じ考えなのか、平然とそんなことを言う。
ロラン「・・・・・押し戻すぐらいのことはできます!」
グエン「どうしても私に逆らう気なのかい? ローラ」
ロラン「僕はロランです!」
強い口調になり、銃口が少し動く。
それを見て、グエンはまた悲しい目になった。
グエン「残念だよ、ローラ。私の・・・いや、ミリシャの敵になる気かい?」
ロラン「グエン卿に、ミリシャを指揮する資格があるんですか?」
グエン「ここにいる者は皆、私の考えに同調してくれた者ばかりだ」
ロラン「・・・・・・・・」
グエン「さよなら、ローラ」
その言葉と共に、ウィルゲムが加速。月圏内を離脱するのに、数秒と掛からなかった。
ロラン「あぁ・・・・・・っ」
どうにも動けず、ロランは∀のコクピットの中でうな垂れた。
§
=コスモ・アーク=
ミキ「ウィルゲム・・・・・・月圏内を離脱しました」
アイ「・・・・・・・」
事情がよくわからない彼女達はこの突然の事態に戸惑っていた。
アイはふと何かを思い、コンピューターのキーを叩き始めた。
アイ(・・・・・・この艦のデータバンクに不可解なアクセス記録がある。
ブロックはできているけど・・・・・・)
それは、何者かがコスモ・アークのデータバンクを無許可で閲覧、或いは抽出しようとしていた形跡。
アイ(・・・・・・大きな作戦前だというのに、笑えない事態ですね)
彼女を知る誰かが聞けば、「普段から笑わないだろう」と言われるだろう。
これは、彼女なりの嫌味なのだ。
12
:
藍三郎
:2007/08/20(月) 14:53:48 HOST:97.76.231.222.megaegg.ne.jp
=バトル7 ブリッジ=
マックス「そうか・・・グエン・ラインフォード卿は、
確かに我々を裏切ると言ったのだな・・・」
ウィルゲムが、月面から離脱した後・・・
マックスは、その一部始終を目撃したロラン・セアックと、通信で会話していた。
ロラン『はい・・・グエン様は、ギンガナムやネオバディムと手を組むと・・・』
うなだれた様子でロランは答える。
自らの雇い主が、いきなり敵に寝返ったのだ。
そのショックと落胆は計り知れないだろう。
美穂「同時刻に、ギンガナム隊とネオバディムの艦隊も、
月軌道上から離脱していくのを確認しています」
サリー「それらの艦隊も、突然、こちらのレーダーからロストしました・・・」
エキセドル「恐らくは空間転送技術・・・アルテミスと同様、
ネオバディムもそれらの技術を保有していても不思議ではない」
マックス「これでは、ギンガナム隊やグエン卿を追跡するのは難しいか・・・
バルジ攻略戦を控えているこの状況で、厄介な事ばかり起こる・・・」
冷静沈着を旨としているマックスも、さすがにこの状況には嘆息したい気分だった。
美穂「か、艦長!!」
マックス「どうした?」
美穂「宇宙統合軍第8艦隊より緊急入電!
航行中、艦隊の進路上に、宇宙要塞クラスの巨大建造物を確認したとの報告が!!」
マックス「宇宙要塞クラス・・・だと?」
エキセドル「十中八九・・・あの少年達が話していた、宇宙要塞バルジでしょうな・・・」
マックス「奴らめ・・・先手を打ってきたか!!」
ヒイロ達がこちらに合流したのを知った時点で、情報が渡った事には気付いたはずだ。
ならば、満足にこちらの準備が整う前に、一気に攻勢に出る事を決めたらしい。
サリー「第8艦隊は、現在、要塞から発進したMS部隊の攻撃を受けているそうです。
こちらに、至急応援を要請していますが・・・」
マックス「了解した・・・
それと、その宇宙要塞にはマクロスキャノン級の主砲が備わっている・・・
まともに戦おうとはせず、ただちに戦場を離脱するよう伝えろ」
サリー「了解!!」
マックス「このタイミングで動いたか・・・グエン卿の事は、後回しにせざるを得ないな」
マックス(タイミングが悪い・・・
だが、ミリシャがネオバディムと繋がっているとすれば・・・
むしろ、ミリシャ造反と時機を合わせて、バルジを動かしたのかもしれん・・・)
事実、これだけ緊急事態が連続すれば、統合軍も多方面に動きを取れない。
艦を率いる者としては、より切迫した状況・・・
宇宙要塞バルジの対応を選ばねばならないからだ。
向こう側は、その点まで読んだ上で軍を動かしている。
こちらも、いつまでも後手に回るわけにはいかなかった。
マックス「予定を大幅に繰り上げて、
これより宇宙統合軍マクロス7艦隊は、
月面を離れ、宇宙要塞バルジへの攻略戦を開始する!
各艦および、関係機関に通達急げ!!」
「「「了解!!」」」
全てのオペレーター、乗組員が、慌しく動き出す。
=宇宙要塞バルジ=
ルシア『こちらルシア・レッドクラウド。
ギム・ギンガナム御大将、ならびにグエン・サード・ラインフォード卿両名を連れて、
月軌道上を離脱いたしました。
我々ドミニオン艦隊は、ギンガナム艦隊と分かれた後、バルジへ合流いたします』
ユーゼス「うむ。首尾よく行ったようで何よりだ・・・それで・・・黒歴史のデータは?」
ルシア『もちろん・・・Mr.ミドガルドの手引きで、ちゃんと確保してありますよ』
ユーゼス「“あれ”は、我が計画の要となるものだからな・・・
これで、要素(パーツ)は全て出揃った形になる」
ルシア『では・・・いよいよ、始まるのですね・・・』
ユーゼス「ああ・・・だが、計画の発動前に、不確定要素は排除しておきたい。
バルジの総力を持って、宇宙統合軍を壊滅させる―――――」
ユーゼス・ゴッツォは、仮面の奥で力強く、そして、何か含むように宣言した。
13
:
蒼ウサギ
:2007/08/25(土) 01:36:52 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
=フリーデンⅡ=
宇宙要塞バルジの奇襲に、各艦の格納庫は一気に慌しくなった。
そしてここ、フリーデンⅡも同様だ。
整備班の怒鳴り声がけたたましく響き合い、パイロット達は己の機体に駆け乗る。
ガロード「いくらなんでも急すぎるぜ!」
ロアビィ「ま、どの道戦うことになる相手だからいいんだけどねぇ。
覚悟する時間っての、ちょっと欲しかったな」
ウィッツ「喋ってる暇あるんなら急げ!」
三人が各機体で出撃準備をしている中、ガロードのガンダムダブルエックスの
コクピット前にノーマルスーツを着たティファが無重力浮遊でやって来た。
ティファ「ガロード・・・私も連れて行って・・・」
ガロード「いっ!?」
モニター越しにティファの姿を確認して、ガロードは驚きと同時にコクピットハッチを開けた。
ガロード「てぃ、ティファ!? なんで!?」
ティファ「私も・・・ガロードと戦いたいから・・・」
ガロード「でも、危険過ぎる! しかも敵の本陣が攻めてきてるんだぞ!」
ティファ「D.O.M.Eと触れて、思ったの・・・・・・
人同士の戦いはすぐにでも終わらせなきゃいけない。
私達にはそれができることを証明したいの・・・・・・
封印された歴史を見せてくれたD.O.M.Eに答えるためにも!」
その言葉に、ガロードは、あの時のこと・・・冬の神殿内での出来事を思い出した。
黒歴史に残された数々の人類同士の戦い。
そして封印されていた“失われた世紀”の記録。
―僕が介入しなければ知り得ない史実を君達が知った時、そこに悲劇が生まれる可能性がある。―
D.O.M.Eの言葉は痛く、重く響いた。
その時にティファが答えた言葉、
―過ちは繰り返してはならない―
そう、過去の過ちは今を生きる者への戒め。
同じ過ちを繰り返すことは余りにも愚かなこと・・・・・・それが大勢の命に関わることならば尚更だ。
奇しくも月近辺で起こるこの戦い。
ティファがこのようなことを言い出したのは、あの時の自分で言った言葉を貫きたいからなのだろう。
ガロードに、ティファの気持ちは痛いほど伝わった。
それでも、彼女を危険な目にあわせることは忍びない。
葛藤するガロードに、ウィッツが檄を飛ばした。
ウィッツ「ガロード!モタモタすんなっ!迷うことねぇだろう!
てめぇが身体を張って守ってやればいいことだ!」
ガロード「! ウィッツ!?」
ロアビィ「そうそう、愛しの彼女を守ってやるってのが男だよねぇ」
ガロード「ロアビィ・・・・・・」
出撃準備をしながら、二人の話を聞いていたウィッツとロアビィにそう後押しされ、
ガロードの迷いは不思議と晴れた。ティファの手を掴み、力強く告げる。
ガロード「行こう!ティファ!一緒に戦ってくれ!」
ティファ「ガロード・・・・・・」
自分の手を掴んでいる、ガロードの手を精一杯に握る。
お互いの気持ちをずっと繋げるかのように・・・・・・
そんな彼らの様子を垣間見ながら、カトルも出撃準備をしていた。
カトル「フフッ、僕らも負けてられませんね」
トロワ「そうだな・・・・・・」
微笑ましい笑みを浮かべているカトルとは対照的に、目の前の機器を見ながら無表情で返すトロワ。
話を聞いていないように見えるが、把握しているようだ。
五飛「フンッ、戦場に非戦闘員を連れて行くなど、危険と効率が低下するだけだ」
デュオ「わかってねぇなぁ。気持ちの問題って奴だよ、この場合」
五飛「理解できんな」
きっぱり言い切る五飛に、デュオは肩をすくめた。
そして、自機の隣に立っているガンダムエピオンを見据える。
デュオ「・・・・・・ヒイロ、やっぱあれに乗るのか?」
どこか不安を持ちつつも、デュオは他に遅れないよう、出撃準備を急いだ。
14
:
蒼ウサギ
:2007/08/25(土) 01:37:26 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
そのヒイロは、格納庫へ向かう途中でリリーナにつかまっていた。
リリーナ「ヒイロ、戦いに行くのですね?」
ヒイロ「あぁ」
気丈さを保っている中にも、彼を気遣う様子が垣間見れるリリーナ。
ヒイロは、それを悟っている様子もなく、素っ気なく答える。
リリーナ「あの宇宙要塞には・・・お兄様・・・ゼクス・マーキスもいます」
ヒイロ「あぁ、ほぼ確実に出てくるだろう。奴ならな」
リリーナ「・・・・・・・・戦いは避けられないのですね?」
ヒイロ「・・・・・・・・あぁ」
少し間を置いて返事をした後、ヒイロは格納庫へと走った。
リリーナはそれをどこか悲しそうな目で見送ることしか出来なかった。
=アークエンジェル=
捕虜となっていたディアッカは警報が鳴り響く中、ミリアリアによって手錠を外された。
ディアッカ「・・・これ?どういうこと?」
ミリアリア「宇宙要塞バルジが奇襲してきたのよ。だからアンタは釈放。
アークエンジェルはもうすぐ発進するから、その前に艦を降りなさい」
ディアッカ「連戦続きでこの艦も出るのかよ?」
ミリアリア「当たり前でしょ。ネオ・バディムの本陣が攻めてきてるんだもの。
のんびり休んでるわけにはいかないわ。悪いけど、あとは自分でなんとかしてね」
ディアッカ「てっ、言われたってよぉ。あ、おい!バスターは?」
ミリアリア「あれは元々こっちのものよ。艦の格納庫で保管されてるわ」
ディアッカ「・・・・・・お前も戦うのか?」
ミリアリア「私はCIC担当だからね」
そう言った後、ミリアリアはブリッジへと走った。
ディアッカはその様子を呆然と見ていた。
=エターナル 医務室=
キラ「ごめん、本当は君はシティ7の方へ搬送できればよかったんだけど、
エターナルもすぐに発進しなきゃいけないんだ」
アスラン「・・・・・・オレは構わない。捕虜の身だからな」
キラ「・・・・・・僕は、君を捕虜なんて思っていないよ」
アスラン「・・・・・・」
キラ「安心して、エターナルは絶対傷つけさせない。僕が守るよ」
優しい彼の笑顔を、アスランは直視することができなかった。
そして何も返すことが出来なかった。
キラはその笑顔を、守るという強い決意を持った顔に変え、医務室を後にした。
15
:
藍三郎
:2007/08/25(土) 21:17:40 HOST:97.76.231.222.megaegg.ne.jp
=宇宙要塞バルジ 周辺宙域=
進軍を開始した宇宙要塞バルジ・・・
刻一刻と動く鉄の魔城からは、際限なくMS、MDの大群が発進し、難攻不落の陣形を整えていく。
その最前線では・・・
OZ兵「統合軍艦隊、撤退していきます!」
トレーズ「賢明な判断だな・・・」
トールギスの2号機、蒼のカラーリングと
ガンダムタイプに近いフェイス形状を持つMS『トールギスⅡ』に騎乗し、
トレーズ・クリュリナーダは、彼に心酔するOZの精鋭を引きつれ、最前線で指揮を取っていた。
ユーゼス『見事な手並みでございました、トレーズ特佐。
こちらからの援護など、まるで必要ありませんでしたな』
初陣を勝利で飾ったトレーズに対し、バルジに控えているユーゼスが賞賛の言葉を送る。
トレーズ「いや・・・あのバルジの威容に、相手が怖れをなしただけの事・・・
統制の崩れかけた軍を叩く事など、造作も無い事です」
ユーゼスの賞賛を、気取った風も無く謙遜で返すトレーズ。
トレーズ「それに、彼らなどはほんの前座・・・いや、舞台はまだ始まってすらいない。
“主役”が舞台に上がってから、真の戦いは幕を開けるでしょう」
ユーゼス『この先の戦も、期待しておりますぞ・・・
しかし、前線の指揮をお任せするとは言いましたが、何も閣下ご自身がMSに乗る必要は無かったのでは?
戦艦で構えて、MDに指示を下すだけで良かったのですが・・・』
トレーズ「ふ・・・部下にも止められましたがね・・・
戦に臨む以上は、OZ総帥である前に一人の騎士として、
戦場の空気を生で感じたいと思いましてね・・・」
無論それだけではない。
OZ総帥に就任して以降、MSに乗ることはおろか前線に出る事も無くなった彼だが、
MSパイロットとしての技量は、あのゼクス・マーキスに匹敵すると専らの評判だ。
今回の作戦でも、ゼクス以外乗りこなせなかった
トールギスを手足の如く使いこなし、一発も被弾しない戦いを見せている。
ユーゼス『お気持ちは分かりますが・・・あまり無理なさらぬよう。
閣下は、我々にとって必要な御方。
もしもの事態があれば、すぐにこちらが援護に入りますので・・・』
トレーズ「感謝します。そちらが万全の体制でバックアップしてくださるからこそ、
こちらも心置きなく舞台で役を演じる事ができる・・・」
だが、トレーズはユーゼスの言葉に含まれた裏の意味に気付いていた。
トレーズ(・・・妙な素振りを見せれば、すぐに後ろから撃つ準備は出来ている・・・という事か)
トレーズの不穏な動きには、ユーゼスも気がついている事だろう。
それゆえに、彼はトレーズに最前線の指揮を任せたのだ。
トレーズ(激しい前線に置く事で、反乱分子の戦力を削る。
統合軍と相討ちになっても、それはそれで良し・・・・・・)
コクピットの中で、トレーズは自嘲するように笑う。
異世界に放り出され、右も左も分からぬ状況下・・・
彼に戦う場所を与えてくれたネオバディムには、勿論感謝している。
この地球圏の統一という理想を掲げる彼らには、
元の世界に戻ると言う利害関係を抜きにしても、協力していいと思っていた。
だが・・・彼らの行動は、徐々に自分の目指す理想と乖離し始めた。
地球と月、双方を唆して戦火を拡大させる。
トレーズの美学に反するモビルドールの大量生産、さらには地球圏を脅かす異星人との密約・・・
当初の宣言とは裏腹に、ネオバディムはいたずらに戦乱を広げているように思える。
彼らの真意がどこにあるのか、それはまだ読めないが・・・
トレーズにとって、もう既にネオバディムは信ずるに値する組織ではなかった。
ならば、自分の取るべき道は・・・
OZ兵「閣下!!」
トレーズ「?どうした?」
OZ兵「この宙域に、新たな艦隊が集結し始めています!」
トレーズ「ほう・・・“彼ら”が来たのか・・・?」
新たな敵の出現・・・トレーズは、密かな胸の高鳴りを感じていた。
16
:
藍三郎
:2007/08/25(土) 21:19:05 HOST:97.76.231.222.megaegg.ne.jp
フォールドを駆使して、次々と戦闘宙域に現れるマクロス7艦隊。
その先頭に立つのは、マクロス7艦隊旗艦バトル7・・・
シティ7を切り離した状態で、既に強行型に変形し、
その腕に長大なマクロスキャノンを構えている。
美穂「フォールド完了!宇宙要塞バルジ、射程圏内に入っています!」
サリー「友軍の艦隊は既に撤退を完了した模様!射線上に、残る友軍機はありません!!」
マクシミリアン・ジーナス艦長が立てた作戦・・・
それは、バトル7のマクロスキャノンをチャージした状態で、
宇宙要塞の付近へフォールドし、いきなり先制攻撃を浴びせるというものだった。
艦隊をも一撃で消滅させるマクロスキャノンが決まれば、
例え宇宙要塞が相手であろうとも、圧倒的優位に戦いを進める事ができる。
エキセドル「ここまでは順調・・・さて・・・」
=宇宙要塞バルジ 司令室=
ネオバディム兵「バトル7、および統合軍艦隊、戦闘宙域に現れました!」
ユーゼス「来たか・・・バルジ砲のチャージは完了しているな?」
司令室の椅子に座り、自ら陣頭指揮を取るユーゼスは、実に落ち着き払っていた。
このような事態は、想定済みといった風に・・・
ネオバディム兵「はい!後、24秒後に発射できます」
ユーゼス「照準を敵旗艦に合わせろ。
トレーズ閣下率いる前線部隊に、射線上からの離脱命令を」
ネオバディム兵「はっ・・・OZ軍は、既に離脱を開始しています。
残っているのは、囮目的の一部のモビルドール部隊のみです」
ユーゼス「さすがはトレーズ殿・・・よし、カウント・ダウンを開始せよ!」
ネオバディム軍が拠点としている宇宙要塞バルジは、
ただ宇宙に遺されていた黒歴史の遺産を改修しただけのものではない。
来るべき統合軍との決戦に備えて、最新技術を駆使した様々な新機構が備わっている。
マシンセルによる要塞の自己修復機能もあるが、
最大の強化点は新たに備え付けられた要塞砲『バルジ砲』である。
かつて、バルジにおいて宇宙港があった要塞正面・回転軸中心から、
バルジ本体全長の半分の長さにも及ぶ長大な構造物を備え付け、
それを砲身とし、動力にバルジのメインエンジンを直結して使用する巨大なビーム砲である。
=バトル7 ブリッジ=
美穂「宇宙要塞バルジ正面に、高出力のエネルギー反応発生!!」
サリー「バルジ周辺に展開していたネオバディム軍が、一斉に離れていきます!」
エキセドル「あちらも、主砲を撃つ腹積もりのようですな・・・」
マックス「こちらの作戦は、読まれていたというのか・・」
エキセドル「データによれば、バルジの主砲はマクロスキャノンの出力を上回ります。
撃ち合えば、確実にこちらが負けますが・・・・・・」
マックス「わかっている・・・・・・!」
瞳に厳しい色を浮かべて、マックスは光に包まれるバルジの主砲を見据える。
ユーゼス「主砲、発射!」
マックス「マクロスキャノン、発射!!」
号令はほぼ同時だった。
要塞砲から、マクロスキャノンから、眩い破滅の閃光が放たれる。
宇宙を貫く光は、射線上のデブリやモビルドールを消し去りながら進んでいく。
ビルゴのプラネイト・ディフェンサーなど、膨大な熱量を含んだ光には何の役にも立たない。
ぶつかり合う巨光。
溢れ出る光の渦が、漆黒の宇宙を白く染め上げる。
だが、勝敗は明らかだった。
一方の光・・・宇宙要塞バルジから放たれた光が、もう一方を呑み込み、押し退けている。
17
:
藍三郎
:2007/08/25(土) 21:20:47 HOST:97.76.231.222.megaegg.ne.jp
サリー「か、艦長!!」
バトル7のブリッジは、あまりの光量に目を開けるのも辛い状況だった。
それでも、全員が希望を捨てる事無く踏ん張っている。
マックス「何とか・・・何とか直撃だけは反らすんだ!!」
マクロスキャノンを押し上げるバトル7。
それにより、正面からぶつかっていた光が、下から掬い上げるような形になる。
バルジの光は、一部で拡散され、やや威力が弱まる。
だが、それも数秒・・・
バルジの巨光は、マクロスキャノンを征圧し、宇宙に白い直線を引いた。
破滅の光が、バトル7の右ギリギリを掠める。
マクロスキャノンはそれを構える右腕ごと消滅し、バトル7全体の装甲版も熱量で溶けてしまう。
それでも・・・轟沈には至らなかった。
直撃ならば、バルジ砲の破壊光はバトル7全体を呑み込んで、
跡形も無く消滅させていただろう。
それが、マクロスキャノンとの衝突で、多少なりとも威力が弱められた結果、掠めるだけに留まったのだ。
ユーゼス「何とか生き延びたか・・・ただちに、バルジ砲の再チャージを開始せよ」
ネオバディム兵「了解」
ユーゼス「モビルドール部隊を進軍させろ。消耗した敵旗艦を追い詰めるのだ」
一撃で仕留めるには至らなかったが、旗艦は既に瀕死の状態。
切り札のマクロスキャノンももう撃てまい。
このまま包囲を固めて、バルジ砲を再発射すれば確実にケリがつく。
その冷たい仮面と同様、怜悧冷徹に相手を追い詰める。
マックス「ぐっ・・・・被害状況を報告せよ・・・」
サリー「右腕部は、マクロスキャノン共々完全に溶解・・・内部機関へも、甚大な被害が及んでいます!」
美穂「目下、修復を進めていますが・・・
ブースターも衝撃の余波で何基もやられたらしく・・・しばらくは行動不能です!」
マックス「そうか・・・」
壊滅的とも言える被害状況にマックスは頭を抱えたくなる。
だが・・・あのバルジ砲の威力を思えば、“この程度”の損害で済んだ事は奇跡に近いだろう。
それに・・・代償は大きかったが、確かに“目的”は果たした。
エキセドル「しかし・・・無茶をなさりますなぁ・・・
バトル7を“オトリ”として、敵に主砲を撃たせる作戦など・・・」
ここで、エキセドルが静かに口を開き、マックスの真の狙いについて語った。
マックス「成功の確率は高いと見ていたがね・・・
あちらとしても、マクロスキャノンから逃れるには、主砲を使うしか無かったのだから・・・」
マクロスキャノンによる奇襲攻撃は、作戦の第一段階に過ぎない。
本当の目的は、如何な手を使ってでも、バルジに『主砲を撃たせる事』・・・
マックス「あれだけの破壊力だ。
再チャージには、マクロスキャノン同様幾分の時間を有するだろう・・・
バルジを叩くには・・・この時を置いて他に無い」
旗艦を囮にしてでも、要塞砲チャージの時間を稼ぎ、
そのわずかな時間を使って、残る戦力でバルジを攻め落とす。
バルジ砲の被害を最小限に押さえ、
なおかつ活路を切り開く・・・苦肉とはいえ最善の策だった。
エキセドル「時間との勝負ですか・・・
もしそれに敗れた場合・・・こちらは一巻の終わりですな」
バトル7は一切の行動が出来ない。今度こそ、バルジの魔光から逃れる術は無いだろう。
マックス「ああ・・・だが、もはや我々にできる事は何も無い・・・
後は、彼らを信ずる他あるまい・・・」
マックスは、これまで幾多の苛烈な戦いを勝ち抜いてきた“彼ら”に・・・
バトル7の命運・・・そして、宇宙統合軍の命運を託すのだった。
18
:
藍三郎
:2007/08/25(土) 21:21:50 HOST:97.76.231.222.megaegg.ne.jp
金竜「全機!宇宙要塞バルジに突撃せよ!!」
既にバトル7の周辺では、やや時間をずらして到着した
統合軍の軍勢が、宇宙要塞バルジへと進軍を開始している。
ガムリン「艦長達が命を懸けて作った時間・・・無駄にはしない!!」
機動性に優れたバルキリーが、先陣を切って突き進む。
ライ「この戦い・・・要塞砲の再チャージが完了するまでに、
全てを決しなければ・・・俺たちの負けだ」
リュウセイ「へっ!とにかく速攻で要塞に辿り着いて、ブッ壊せばいいんだろ?」
アヤ「言うだけなら簡単だけどね・・・」
キョウスケ「分の悪い賭けだ・・・だが」
エクセレン「嫌いじゃない、でしょ?」
キョウスケは台詞を先取りされて、数かに微笑む。
キョウスケ「その通りだ」
ゼンガー「乾坤一擲・・・刹那に懸ける闘志無くして、この戦で勝利を掴む事はできんぞ・・!」
トロワ「あの要塞は、堅牢な装甲を持つ上、各種のバリアシステム・・・
さらに、マシンセルによる自己修復機能がある・・・
マクロスキャノンを欠いた今、外部からの破壊は困難だろう」
デュオ「中に入って、司令室を占拠する・・・あるいは、動力炉をぶっ壊すか・・だな」
トロワ「ああ・・・内部に侵入するためのポイントは、既に調べてある」
今回の総攻撃の攻撃目標は、大きく分けて二つある。
一つ目は、バルジ砲の砲身。
これを破壊すれば、ひとまずバルジ砲の脅威は抑えられる。
だが、敵もそちらは承知の上。万全の守りで固めてくるだろう。
そこで、もう一つのプランが必要となる。
ヒイロとトロワが調査した、バルジの弱点となる幾つかのポイント・・・
そこを集中砲撃して、内部への道を切り開く。
その後の行動は、デュオが言った通りである。
カトル「あの要塞には、ドクトル達もいるんですよね・・・」
ふと思い出して、静かに呟くカトル。
デュオ「だな。出来れば助けてやりてぇが・・・
そんな余裕は無いと思った方が良さそうだぜ」
カトル「ですね・・・・・・」
今優先すべきは、宇宙要塞バルジの破壊。
デュオ達は兵士として、パイロットとして、作戦に集中する決意を固めた。
19
:
ニケ
:2007/08/26(日) 16:32:48 HOST:zaq3d738a21.zaq.ne.jp
バルジ攻防戦。
その戦端一歩手前のところに配備されたヴェサリウス。
僚機が減って隙間の出来た格納庫で、イザーク=ジュールは静かに闘士を燃やしていた。
イザーク「いくぞ、ニコル!
アスランとディアッカの弔い合戦だ!」
先の戦闘でMIA認定を受けた二人。
ディアッカとは何かと気が合い、よく行動を共にした。
アスランとはソリが合わなかったが、自分を負かせる数少ない男だと密かにライバルとして認めてもいた。
同期のチームとして、長い間仲間としてやってきたそんな仲間と呼べる二人の事実上戦死宣言。
ここで怒らねばいつ怒れというのか。
一方、イザークの闘士が伝播したのか、まだ幼さの残る顔に厳しい表情を浮かべて、ニコルもそれに頷いた。
ニコル「はい、僕も同じ気持ちです」
イザーク「ならば出る!」
カタパルトで加速し、飛び出す二人。
出撃と同時にPSによりカラーリングが変化する二機のガンダム。
一直線に戦場の最先端、統合軍の中核であるG・K艦隊目掛けて突撃していく。
だが、半ばまで来たところで、横合いから彼らの機体を追い越す影が現れた。
クロト「あははは!お先に〜〜〜!!」
オルガ「じゃあな、先輩」
シャニ「へっ」
猛スピードで横切っていくのは、ルシア=レッドクラウドが子飼いにしていた三機の新しいガンダムだ。
イザーク「くっ・・・何故あんな奴らと組まねばならん!」
聞けば、あの三機、彼らのいた世界の連合の最新型というではないか。
乗り込むパイロットもナチャラル、まあそれはOZなどとも組んだ時点でやむないといえるが、何らかの強化を受けているらしいというのは癪に障る。
イザーク(一体、俺達は何の為に戦っている?)
飛びすざっていく三機を眼にして、イザークの頭にふいにそんな疑問が浮かんだ。
元の世界では、彼らはナチュラルの横暴に対して奮起し、決起した。
此方の世界に来てからは、直属の上官ラウ・ル・クルーゼを中心に、世界の再構築を目的とするネオ・バディムと組み、この世界での連合・・・統合軍に戦いを挑んだ。
元の世界に戻るという算段あっての事だが、果たしてその道は正しかったのだろうか?
今、かつての敵と、倒すべき相手だった筈の者とすら、戦線を共にする。
それも、陳腐な打算の上でだ。
それでは本末転倒ではないのか?
この異世界で、自分達は何のために銃を取っているのだろうか?
§
一方で最前線に到着した三機の新型ガンダム。
獲物を刈るように、手当たり次第、その辺のバルキリー隊にターゲッティングを合わせるが、突如鳴る敵機接近のアラーム警報。
そしてそれに反応するより早く、懐に飛び込んでくる赤い影。
オルガ「うおっ!?」
腹部に鈍い衝撃。
吹き飛ぶ緑色のカラミティガンダム。
キョウスケ「さすがにPS装甲は貫けんか」
右手の大型リボルビングバンカーの芯管を抜きながら、キョウスケは呟く。
それでも、TP装甲の二重装甲の内、上部の通常装甲はえぐり飛ばしているし、内部へ与えたダメージも相当なものだろう。
吐き気をするような衝撃に、オルガは顔を歪め、右手のプラズマサボットバズーカ砲を構える。
オルガ「このヤロウ!」
だが、それはキョウスケのアルトアイゼン・リーゼを捉える前に、眼前に回りこんだエッジのメテオゼファーのDウォールに弾かれてしまう。
エッジ「援護するぜ!実弾ばっかのアルトじゃPSの相手はきついっしょ?」
アルト「フッ、問題ない。
ならば此方は手数で勝負するのみだ」
ゼンガー「その通り」
如何にPS、TP装甲とはいえ、無限に使えるわけではない。
そればかりか、攻撃を受ければ受けるほど、そのエネルギーは枯渇していく。
度を越した衝撃なら、装甲は貫通せずとも、内部の機器に致命的な影響を与える事もありうる。
ゼンガー「無敵の盾などありはしない。
そして我が太刀に、断てぬもの無し!!」
ダイゼンガーの構えた日本刀が、変形し青竜刀の様な形に姿を変える。
ゼンガー「飛べ、飛燕の如く斬艦刀!」
そして、それを大きく振りかぶっての投擲。
ゼンガー「大・車・輪ぃぃぃぃぃんっ!!」
疾風でも巻き起こすのではないかと思うほどの勢いで回転し、飛ぶ斬艦刀。
その刃が、周囲に散らばるネオバディムの兵器達を容赦なく、切り刻んでいく。が。
―――ギィン!!―――
真空でなければ、そんな擬音が響いていた事だろう。
回転する斬艦刀が、同じく巨大な剣によって弾かれた瞬間だった。
ジョウ「チッ、そういやアイツもいるんだったな」
エッジ「ナシュトール・・・スルガ」
ナシュトール「フン・・・」
20
:
蒼ウサギ
:2007/08/31(金) 00:34:48 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
餌に群がる蟻の如く、次々に押し寄せるモビルド−ルの軍勢。
それらは戦いの勝利に最も効率の良い戦術をとっていく。
すなわち、指揮系統の破壊、つまりは艦の轟沈を優先して行っていく戦術だ。
それを阻止するがために、機動兵器部隊は奮戦する。
が、いかんせん数の差は歴然だ。
由佳「このままではこちらの戦力がバルジに届かない・・・・・・!」
せっかくバトル7・・・マックス達が作ってくれたチャンスを活かすには時間が勝負だ。
バルジ砲が再チャージを完了すれば、こちらの敗北は一気に色濃くなる。
由佳「各機!敵の量産機には極力無視して、バルジに接近してください!」
そう指示するも、真っ先に返ってきた兄の言葉は切羽詰っていた。
悠騎『無理だ!敵の布陣は思ったより強力だ!』
デュオ『こっちも行きたいが・・・・・・ぐぅっ! ちょっと思い通りにいきそうにないぜ!』
他にも、突破が困難な状況であることが、次々に伝えれられる。
由佳「っ・・・!」
焦る気持ちばかりが募る由佳。その時、フリーデンⅡから全艦隊へ通達がきた。
サラ「全機!全艦に伝えます!これより、ダブルエックスが突破口を開きます!」
その言葉に由佳はハッとした。
直後、コスモ・フリューゲルの横を一筋の光が過ぎった。
月から発信されたマイクロウェーブがガンダムダブルエックスの胸部に射す。
両肩にセットされた二つのサテライトキャノンの銃口が凄まじいエネルギーで発光する。
ガロード「いっけぇぇぇぇぇぇっ!!」
ツインサテライトキャノンの引き金をガロードが引いたその瞬間、
二つの強大なエネルギーが前方上の敵軍のモビルドールを一気に薙ぎ倒していく。
ティファの能力のアシストを受け、なるべく多くの無人機を倒せる射線を撃ったのだ。
ジンやゲイツといった有人機は一切巻き込んでいない。
サテライトキャノンの光が消えた頃、射線軸上には一機もいない見事な道ができた。
ガロード「今だ!」
ガロードがそう叫ぶよりも早く、その道を突っ切った機体があった。
宇宙という空間で深紅という栄える機体色を持つ、ガンダムエピオンだ。
デュオ「おい、ヒイロ!あんまり先走るな!」
通信で警告するも、ヒイロは聞いていない様子で、エピオンの加速を止めない。
デュオ「ったく、あの野郎・・・・・・!」
苛立つデュオの心情を知ってか、知らずか、五飛のガンダムナタクも単独で前進し始めた。
カトル「五飛!?」
五飛「バルジの破壊はお前たちに任せる」
カトルの呼びかけに、素っ気なくそう答えて、五飛はナタクを加速させていった。
デュオ「あぁぁ、もう!勝手な奴等だぜ!」
イライラと頭をかくデュオに、トロワが冷静な口調で告げる。
トロワ「奴らは奴らの戦いがあるらしい。
それに、厄介な相手を引き受けてくれるなら、こちらとしても都合がいい」
デュオ「しゃあねぇ、そういうことで許してやるか!」
カトル「えぇ、僕らも行きましょう!」
デュオ、カトル、トロワは三機で編成を組んで、バルジへと侵攻していく。
21
:
蒼ウサギ
:2007/08/31(金) 00:35:19 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
=宇宙要塞バルジ 周辺宙域=
G・K隊、統合軍の奮戦ぶりは毎度のことながら凄まじいもの。
まさに一騎当千という言葉が相応しいと、トレーズは思った。
トレーズ「さて、ここで待つのも彼らに対して失礼あたる
私も前にでるかな?」
トールギスⅡのコクピットで、高揚感を醸し出して呟くトレーズに、
その両サイドからガンダムヴァサーゴ・チェストブレイクと
ガンダムアシュタロン・ハーミットクラブが挟むかのようにやって来た。
シャギア「閣下の騎士道には敬服いたします」
オルバ「ですが、最前線は我等にお任せを・・・」
トレーズ「フッ、君達は君達の戦いをすればいい。私は私の戦いをさせてもらうだけだ」
それだけ告げると、トールギスⅡのブースターを吹かして、前に出る。
その凄まじきスピードに、二人の肉眼からトールギスⅡが消えるのは数秒と掛からなかった。
オルバ「やれやれ、行ってしまったね、兄さん」
シャギア「我等は我等の戦いを、か・・・・・・あの男、気づいているのかもしれんな」
オルバ「やはり、トレーズはネオ・バディムの不穏分子かい?」
シャギア「それはいずれ、わかる時が来るだろう」
オルバ「その時がくれば、僕らはどっちに付くべきだろうね?
トレーズ?それともユーゼス?」
シャギア「あの男の言った通りだ。我等は、我等の戦いを・・・・・・」
オルバ「そうだね、兄さん」
シャギア「しかし、今はこの戦場を楽しもうではないか」
オルバ「あぁ・・・・・・・・・兄さん!」
抑え切れない高揚感から、その直後、オルバはアシュタロンを変形させ、
シャギアのヴァサーゴの爪がそれに掴まる。
トレーズを追うかのように、二機も高速で前進した。
22
:
藍三郎
:2007/09/02(日) 22:26:51 HOST:97.76.231.222.megaegg.ne.jp
片腕を失った鉄の巨人と、それをさらに上回る巨大な鋼の要塞。
その二つが対峙する戦場では、飛び交う幾つもの機動兵器、
咲いては散る爆炎の華が、漆黒の宇宙を鮮やかに彩っていた。
リョーコ「ちぃ・・・!二発目でようやくかよ・・・」
ディストーションナックルでビルゴを撃墜するリョーコ機。
しかし、ビルゴのプラネイト・ディフェンサーは頑強で、破壊するのに梃子摺っていた。
ヒカル「リョーコちん、先走り過ぎて、
ナデシコのエネルギー供給範囲から出ちゃ駄目よ〜〜」
リョーコ「わーってらぁ!初心者向けのアドバイスすんな!」
ツインサテライトキャノンで大多数が破壊された物の、
再びバルジ方面から第二陣が到着し、統合軍の進撃を押し留める。
そんな膠着した戦況で・・・
虚空を切り裂く三つの光が、三角形(トライアングル)を描いて前線へと驀進する。
ムスカ「バミューダストーム三人・・・新機体で揃い踏みだぜ!!」
ムスカのハイドランジアキャットが、三角形の先陣を切って突き進む。
その後方には、ゼドと白豹の新機体・・・
『ヘラクレスパイソン』と『刹牙』が追随する。
ゼド「前回お披露目の機会を潰されてしまいましたからね。今回は、張り切らせてもらいますよ!」
白豹「・・・・・・」
新しいシートに座り、やる気満々のゼドと対照的に、
白豹は何も変わらず、無言でコクピットに佇んでいる。
ムスカ「それじゃ、俺は二人の露払いといきますか・・・」
久しく三人で戦う機会が無かった事もあり、ムスカもやや昂揚している。
操縦桿を握り、多数のビルゴがひしめく防衛ラインを鋭く見据える。
ムスカ「メーザー誘導線、発信!オールターゲット、ロックオン!!」
コンソールのモニターに表示される、無数のビルゴに照準を合わせる。
噴水の如きメーザーポイントが放たれ、
ムスカの視界に入る全てのMDが、紫色の光で繋がれる。
ムスカ「ミサイルハッチ、オープン!ランチャー、ファイア!!」
ハイドランジアキャットから、背に負う支援メカ『グロリオーサ』から、
一気に多量のミサイルランチャーが放たれる。
洪水のように荒れ狂うミサイルが、虚空の宇宙を乱舞する。
MDのプログラムに従い、回避運動を取るビルゴ達。
だが、無数の弾頭はその動きを予測したが如く、全てのビルゴへと命中する。
ムスカの人並み外れた演算能力と空間把握能力・・・
『演算者(カリキュレイター)』と称される力を持ってすれば、この程度の芸当は十分可能だった。
タツヤ「おおっ!全部当たったぜ!!」
パルシェ「でも、あのバリアに防がれちゃうんじゃ・・・」
ゼド「ふ・・・それは杞憂ですよ・・!」
後方から追いついてきたのは、ゼドのヘラクレスパイソンだ。
グリーンから一転して、派手な金色となった新機体は、
拳を握り締め、鋭いストレートをビルゴへと放つ。
迫る攻撃を前に、プラネイト・ディフェンサーは発動する事無く、
拳はビルゴの動力部へと直撃する。
ゼドが拳を引き抜いた瞬間、ビルゴは爆発四散した。
ムスカ「こいつらのバリアは全部壊させてもらったぜ。
これなら、ちったぁ戦いやすくなんだろ」
ムスカの放ったミサイルは、撃墜が目的ではない。
敵の厄介なバリアシステムを破壊する事にあったのだ。
ミサイルは、尽くプラネイト・ディフェンサーの発生装置に命中し、その機能を消失させている。
数十を越える敵機全てに当てるだけでなく、破壊する部位まで正確に狙い撃つ・・・
まさに神業と呼ぶにふさわしい命中精度だった。
ゼド「ありがとうございます・・・と言いたいところですが、
露払いとしてはいささか派手過ぎるのでは?」
ムスカ「ははっ、悪ぃ。ここからはバックアップに回るから、残った敵を片付けちまいな」
ゼド「ふ・・・では、素直に花を持たせて頂くとしましょう!」
そんなやり取りの後、ゼドは再びビルゴの破壊に移る。
ビームキャノンによる砲撃を難なくかわし、
メーザー光を纏った拳・・・『ブラスターフィスト』を硬く握り締める。
23
:
藍三郎
:2007/09/02(日) 22:27:42 HOST:97.76.231.222.megaegg.ne.jp
ゼド「たあぁっ!!」
ボクシングの構えから繰り出される拳の連打が、ビルゴを正確に射抜いていく。
静かで、派手さは無いが、
機械のように正確無比に、かつ迅速に敵を破壊する様は、
職人芸の如き熟練した技量を感じさせる。
ゼド「ふ・・・これはいい・・・
以前の機体よりも、私の拳との一体感が上がっている気がします」
あっという間に十数機のビルゴを仕留め、ゼドは感慨深く漏らす。
ムスカ「だろ?全く、俺らの社長のダンナは大した腕だぜ」
白豹「・・・・・・」
白豹の駆る『刹牙』は、闇の宇宙を縦横無尽に駆け回り、
神出鬼没な動きで敵機を確実に仕留めていった。
メーザーフィールドクローが、MDの装甲を紙のように切り裂く。
その姿は、まさに宇宙に揺らめく幻影。
刹牙の俊敏な動作に対応できず、
敵兵は自らの死すら直感する事無く、黄泉路へと送られる。
彼は、ゼドと違って新しい機体に格別何かを感じる事は無い。
生粋の暗殺者である白豹にとって、自らの機体もあくまで敵を殺す為の刃物。
それ以上でもそれ以下でもない。
自分自身をも“一族の刃”と見なしている彼にとっては、至極当然の事。
慣れた刃物を使いこなすように、
機体能力を完全に熟知し、その性能を100%引き出す。
ただそれだけ・・・他には何も思うところは無い。
そんな彼だからこそ・・・刹牙に搭載された新たな武装も、
初陣でありながらも、難なく使いこなしていた。
白豹「・・・・・・梟断・・・」
刹牙が腕を振った瞬間、離れた位置にいたビルゴが三体纏めて切断される。
さらに後方から二体のトーラスが迫ってくるが、
同様に刹牙が腕を動かすと、見えない刃によって四肢を切り裂かれる。
メーザー・ワイヤー・・・
刹牙の新武装で、ワイヤー・カッターにメーザー線を通し、
高熱で相手を切り裂く特殊武器である。
高速で動くワイヤーは、肉眼では視認できず、見えない刃となって敵を切り裂く。
その分扱いには熟練を要するが、糸を使った殺人技術も修得している
白豹とっては、何ら問題なく使いこなす事ができた。
ゼド「さて・・・一気に行きますよ・・・!」
ヘラクレスオオカブトの角を模した
頭部のヘッドパーツ『ゴルドホーン』を、右手へと装着する。
スタッグパイソンの物よりも雄雄しく、一点突破を重視したデザインをしている。
ゼド「NEXUS・DRIVE、出力上昇!!」
ハイドランジアキャットと同様の新型メーザードライブエンジン、
NEXUS・DRIVEを起動させ、機体出力を大幅に上昇させる。
紫色の光が機体からあふれ出し、やがてそれはゴルドホーンへと纏わりついていく。
ゼド「ゴルドクラッシャー!!」
ブースターをフル稼働させ、敵群へと突っ込むヘラクレスパイソン。
金色の甲角が光を纏い、障害となる敵を貫き、撃砕する。
その姿は、天を駆ける荒々しい猛牛の如し。
直線上にいたモビルドールは、金牛の突進に巻き込まれ、残らず宇宙の塵と化した。
悠騎「へぇ・・・やっぱ凄ぇな、あの人達・・・」
ドモン「それぞれの連携に、全く隙が無い・・・流石だな」
ムスカ「これが新生バミューダストームの実力ってもんよ。
さぁ、敵が増えちまう前に、とっとと先へ進みな!!」
エイジ「分かった。行くぞ、レイ!」
レイ『レディ!!』
レイズナーMkⅡは、飛行形態に変形して、敵布陣の空白部分を突き進む。
他の機動力に長けた機体もまた、宇宙要塞バルジへと進軍していった。
24
:
蒼ウサギ
:2007/09/04(火) 01:54:47 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
バルジへと侵攻を始める機動部隊。
それを阻止せんとするネオ・バディムの量産機が迎え撃ってくる。
デュオ「くそっ!またゾロゾロと!分散して叩くか!?」
固まっては狙い撃ちにされるだけと思ったデュオが侵攻部隊一同に呼びかけるが、
そこで、後方から声が飛んできた。
キラ「皆さん、そのまま進んでください!」
後方からフリーダムで追いかけてきたキラはそれだけ告げると、
コクピット内のレーダーで敵の位置を確認する。
キラ「ターゲット・マルチロック・・・・・・・!」
直後、フリーダムの全武装が発射状態となり、
レーダーに映る敵機印に次々とロックオンされていく。
そして―――
キラ「いけぇぇぇっ!」
ビーム、実弾等、次々に発射されるそれらに敵量産機は次々に撃ち落とされていく。
それを見て、デュオは焦燥顔から少し笑みに変わる。
デュオ「よっしゃあ、いくぜぇぇっ!」
カトル「はい!」
トロワ「弾を温存できたな」
まだ爆炎が残る中、突っ切る侵攻部隊。
フリーダムも武装を収め、それに続こうとしたその時、
進行方向とは別のところからフリーダムの片翼が攻撃を受けた。
キラ「っ!」
攻撃を受けたことで、フリーダムの動きが止まる。
キラはすぐに周囲を見回すが、敵機は見当たらない。
いや、そう思ったとき、正面から、それが来た。
トレーズの駆る、トールギスⅡだ。
トレーズ「今の攻撃は中々によかった」
その声がキラに届くよりも早く、トールギスⅡはフリーダムの横を通り過ぎ様に
ビームサーベルで斬りつけた。
キラ「くっ!」
機体が大きく揺らめきながらも、トールギスⅡを捉え、ルプス・ビームライフルで反撃するが、
トールギスⅡには掠りもしない。
それどころか、その隙をトレーズにつかれ、トールギスⅡのドーバーガンを撃ち込まれてしまう。
キラ「っ!」
損傷が増大するフリーダム。だが、トレーズはキラが体勢を立て直す前に追い討ちをかける。
トールギスⅡのバーニヤを最大出力で吹かし、再度、ビームサーベルで攻撃をするつもりだ。
だが、その時、トレーズの危機感知能力が働き、機体をバレルロールさせて、下方へと行く。
直後、どこかから伸びてきた龍の顎門が刹那前までトールギスⅡがいた宙間を貫いた。
キラ「!」
発射的にキラは、龍の顎門・・・ドラゴンハングが飛んできたほうを見やる。
五飛のガンダムナタクがそこにいた。
五飛「貴様はバルジへ行け、こいつはオレがやる!」
それだけキラに告げると、伸ばしたドラゴンハングを元に戻し、ビームトライデントで
トールギスⅡにへ仕掛けた。
トレーズ「君は・・・確か・・・・・・!」
迫るガンダムナタクの斬撃にタイミングを合わせ、トールギスⅡがビームサーベルで応戦する。
二、三度、斬り合いが行われた後、武器同士がぶつかり合い、膠着を生む。
トレーズ「その機体、ガンダム05に酷似している。あの時のパイロットか」
五飛「フッ、やはりその機体に乗っているのはトレーズか!」
以前、ゼクス・マーキスが使っていたトールギス。
彼がウイングゼロに乗っている可能性が高い以上、他にトールギスを扱えるOZのパイロットといえば
五飛には、トレーズ・クシュリナーダしか思いつかなかった。
だから、戦場でトールギスⅡを見かけたとき、乗っているのはトレーズだと直感し、仕掛けたのだ。
元いた世界にて、彼に一度、煮え湯を飲まされた五飛としては因縁の相手なのだ。
トレーズ「フッ」
闘志剥き出しで向かってくる五飛の切っ先を、華麗に捌き、トールギスⅡは少し距離をとる。
トレーズ「ガンダム05のパイロット、名前をまだ聞いてなかったな?」
五飛「オレの名は張 五飛・・・・・・覚えておいて貰おう!」
トレーズ「フッ、そうしよう・・・・・・張 五飛」
優雅に微笑むと、トールギスⅡを奔らせる。
それを五飛は迎え撃つ。二つの剣が激しいぶつかり合いを始めた。
25
:
蒼ウサギ
:2007/09/04(火) 01:55:30 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
一方、敵の第一部隊をほぼ一撃で壊滅させたガンダムダブルエックスも
バルジに向けて侵攻していた。
ガロード「月との位置を確認して・・・いざとなったら、サテライトキャノンで
バルジ砲を撃ち返してやる!」
強大な力を持つツインサテライトキャノンといえど、バルジ砲に張り合えるか
どうかは、正直際どいところだが、放たれた場合、少しでも相殺はできることは確信している。
先ほど一発撃ったのでチャージにまた時間を要するが、イザという時は再び引き金を引くつもりだ。
ティファ「! ガロード、来る!」
ニュータイプ能力で何かを感じ取ったティファがそう言った直後、赤い火線がダブルエックスの
横を掠めていった。
その見覚えのある攻撃に、ガロードはすぐに犯人が誰かわかり、歯を食いしばった。
ガロード「あいつらか・・・!」
予想は的中。
漆黒の空間から赤と紫のガンダムがガロードの前に姿を現した。
シャギア「フフフ、貴様をこれ以上、行かせるわけにはいかん」
オルバ「僕らの相手をしてもらうよ、ダブルエックス!」
オルバの語尾と同時にヴァサーゴ・チェストブレイク、アシュタロン・ハーミットクラブが動く。
ガロード「ティファ、しっかり掴まっているんだぞ!」
激しい戦いを予感し、ガロードはティファにそう告げ、自分もDコンを強く握った。
§
G・K隊、統合軍の機動部隊がバルジへ侵攻する隙をついて、
イザーク、そしてニコルは一気に艦隊の方へと仕掛けていった。
宇宙という広い戦場。それに加えての量産機の数は良い隠れ蓑となり、
二機は艦隊へと接近することが出来た。
イザーク「ニコル!お前はエターナルを、足つきはオレがやる!」
ニコルのブリッツにそう告げると、イザークは自機のデュエルを因縁の相手たる“足つき”、
つまりアークエンジェルへと接近させる。
26
:
蒼ウサギ
:2007/09/04(火) 01:56:10 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
サイ「10時方向より、敵機!・・・・・・これは、デュエルです!」
アークエンジェルのブリッジでサイの声が轟く。
総員の顔色が変わった。
マリュー「っ! 弾幕をもっと張って!」
ナタル「出撃中の機動部隊に応援を要請しろ!」
艦長と副長の指示を忙しくなくブリッジ要員は対応する。
だが、デュエルの攻撃の方が早い。
デュエルが放つビーム、ミサイルは次々にアークエンジェルの装甲を削り、武装を破壊していく。
ブリッジは大きく揺れ、一同は動揺する。
マリュー「っ! こちらの隙をつかれたというの!?」
確かにバルジ攻略には時間が重要な鍵であり、攻めに重点を置かれている。
だが、それは艦への隙を生み出すことになっていた。
攻守の按排を失敗したのかと思うが、それを悔やんでいる暇はない。
マリュー「何か手は・・・・・・」
そう模索しているその時、
突如として、格納庫から通信が入った。
イザーク「落ちろぉ!足つきぃ!!」
ビーム兵器に耐性のあるラミネート装甲を持つアークエンジェルには、
アサルドシュラウドに搭載されている実弾兵器を中心に攻めるデュエル。
確実にダメージを与えていき、このまま攻め続けられれば轟沈できるとイザークは確信した。
イザーク「あとは・・・ブリッジを!」
そう思い、機体をアークエンジェルのブリッジ部分にへと移動させる。
そこへビームライフルの銃口を向けた、まさにその時、
イザーク「ぐあっ!!」
突如、背後から攻撃を受け、コクピットのイザークは衝撃に攻撃を中断させられた。
イザーク「ぐっ、もう護衛機が戻ってきたのか!」
そう思い、後ろを振り返ると、その目を大きく見開いた。
そこにいるのは紛れもない。バスターガンダムなのだ。
イザーク「ば、バスターだと・・・おのれぇ、よくもディアッカの機体をぉ!」
仲間の愛機を使われていることに、イザークは一気に頭に血が昇った。
アークエンジェルのブリッジを撃ち抜くことなど、すぐに頭の隅に追いやり、バスターへと仕掛ける。
バスターは、迫るデュエルと距離を保ちながら、後方へと下がっていく。
デュエルをアークエンジェルから引き離しているかのようだ。
イザーク「ディアッカの無念・・・貴様で晴らさせてもらう!!」
激昂するイザーク。彼は、バスターをG・K隊、統合軍の誰かが乗っていると思い込んでいるのだ。
しかし、このバスターに乗っているパイロットは・・・・・・・・
ディアッカ「イザーク・・・・・・」
ディアッカ・エルスマンである。
結局、彼はアークエンジェルを降りることはなかった。
いや、迷っているうちに艦が出撃してしまったという方が正しい。
そして迎えてしまった、艦の危機。
仲間に銃口を向けることになろうとも、ディアッカは出撃することにした。
ディアッカ「今、あの艦を・・・・・・落とさせたくないんでな」
小さく呟いて、ディアッカは決意の砲火を放った。
27
:
ニケ
:2007/09/04(火) 19:18:21 HOST:zaq3d738a21.zaq.ne.jp
犇き合うほどに壁となって此方の侵攻を阻むMD、MSの群れ。
だが、度重なる猛攻の前に、一機、また一機と防衛線を抜け、バルジへと到達し始める機体が現れていた。
それを見送る七機の機体、既に最前線ではなくなったその場で、にらみ合いを続けていた彼らにも、動きが起こるのは当然の事であった。
ナシュトール「フン・・・」
巨大な大検の切っ先を、無造作に前方の敵機へ向けるイスカ。
それが何を意味するかをすぐに悟ったキョウスケ達が、回避行動に移った瞬間、ほんの数秒前まで彼らのいた空間を高熱のビームが薙いだ。
エッジ「相変わらず、大した威力だぜ・・・」
すれすれに過ぎる大口径のビーム砲の火線を睨みながら、エッジは振り返りざまにロングビームライフルでの反撃を試みる。しかし・・・
エッジ「うおっ!!?」
銃を構えようとした瞬間、そのすぐ傍を超高速で通り過ぎていく影が一つ。
OADCASに飛び乗ったイスカが、開いた隙間を縫って此方の戦線に飛び込んできたのだ。
クロト「うひょ〜〜〜」
オルガ「ははは、こいつぁいい!」
奇しくも、それは先程ガロードがダブルエックスで血路を開いたのと同じ作戦だった。
守りなど、元々考えていないのだろう。
先に此方の母艦を沈めようという腹積もりか。
エッジ「ヤロ!俺たちの真似を・・!」
ゼンガー「追うな!」
反転して、追撃しようとするメテオゼファーをダイゼンガーが制す。
ゼンガー「この勝負、時間との戦いだ。
次のチャージまでにバルジを落とさねば、全てが終わる。
艦の事は防衛に回っている部隊に任せろ」
次にバルジに撃たれれば、此方にはまともに抗するカードがない。
初めから電撃戦。
先に城を落した方が勝つ勝負を挑んでいるのだ。
多少の犠牲は覚悟してでも、バルジに取り付くのが何より優先すべき事に変りはない。
エッジ「クソッ、無事でいてくれよ・・・」
§
ミキ「接近する機体1!識別・・・イスカです!!」
アイ「っ!!」
艦砲の防御陣を掻い潜り、藍色の機体が高速で駆ける。
それは、丁度コスモ・フリューゲルらG・Kの主力艦隊を見下ろせる位置にくると、徐にその場に留まり、
ナシュトール「出て来い!紫藤ぉっ!!決着を付けてやる!!」
全周波回線で宙域全土に響くのではないかという声で叫んだ。
その突拍子もない行動に、近くにいるものは、目を丸くして驚きを露にする。
マックス「何を考えているんだ、奴は・・」
アイ「・・・・・」
イスカの構える大剣が、艦隊のほうを向く。
出てこなければ・・・ということなのだろう。
だが、その引き金を引くより早く、その前に割ってはいる影があった。
滑空するように宇宙を奔る翼、アイラのズィッヒェルシュヴァルベだ。
アイラ「ナシュトォォォォォルッ!!」
ナシュトール「チッ」
超速で頭上より迫る刃を、紙一重でかわす。
ナシュトール「貴様か・・・紫藤はどうした?」
両腰のロシュセイバーを抜き放ちながら、ナシュトールが訊ねる。
その質問に対し、アイラは奥歯をギリと鳴らして
アイラ「先輩は・・・倒れた」
怨嗟の言葉を吐き出すように、低い声でそう答えた。
ナシュトール「な・・・に?」
アイラ「南極での戦いの時、敵の首領に挑んで・・・。
今も意識が戻らない」
ナシュトール「紫藤が・・・だと?」
アイラの声には、憤怒と悲哀の情が込められている。
一方で、それを聞いたナシュトールは、明らかに動揺した風を隠そうともしない。
アイラ「だから・・・お前は私が止める!」
拳を握りこみ、力強く宣言するアイラ。
その殺気に当てられたのか、ナシュトールも一瞬の放心状態を解いて、再び剣を構えなおす。
アイラ「先輩に代わって、私がお前を討つ!」
ナシュトール「フン、貴様に奴の代わりが務まるのか?」
アイラ「務めてみせる!」
黒と藍色の影が同時に駆け出し、ぶつかり合う。
28
:
藍三郎
:2007/09/08(土) 07:21:15 HOST:97.76.231.222.megaegg.ne.jp
=ドミニオン=
ルシア「奮戦していますね・・・」
ドミニオンのブリッジから、戦況を眺めるルシアはそう呟く。
ルシア「戦況はまだこちらに有利ですが・・・勢いはあちら側にありそうです。
そろそろ、私も出るとしましょうか・・・」
ジェローム「では、私もご同伴させて頂きましょう」
黒いマントにシルクハットという、いかにもないでたちの老人が、
ルシアと同じく丁寧語で申し出た。
ルシア「Mr.フォルネーゼ・・・」
ジェローム・フォルネーゼと名乗る、奇術師風の姿をしたこの老人・・・
彼は月から離脱する際、ドミニオンを来訪し、
艦に乗り込んだままこの戦場まで付いて来ていた。
ジェローム「これほどの大舞台・・・
私ごとき旧弊な奇術師風情が出張るのは、いささか力不足でありますが・・・
せめて花の一つでも、添えてご覧にいれましょう」
期待を抑えきれない様子で、ジェロームはステッキをくるくると回した。
バルジ目指して突き進む三機のガンダム。
ビルゴやゲイツなどの強力なMS、MDを撃破しつつ、着実にバルジへの距離を詰めていく。
そんな彼らの下に、数条の光の矢が飛来する。
トロワ「!!」
文字通り、矢の形をしたソレは、ガンダムの横ギリギリを掠めて飛ぶ。
ルシア「やぁ・・・ガンダムパイロットの皆さん。“そちら側”ではお久しぶりです」
弓矢を構えて虚空に立つ赤き機体は、ルシアのベルゲルミル・アスラだ。
デュオ「お、ネオバディムの眼鏡野郎か・・・」
ルシア「ルシア・レッドクラウドと申します。
名前を覚えていただけなかったとは、いささか悲しいですね。
一時的とはいえ、共に戦う事を誓った同志だというのに・・・」
いかにも悲しそうに、眉根を寄せるルシア。
デュオ「はっ・・・脅して協力させといて、よく言うぜ」
ルシア「それはお互い様でしょう?
貴方たちも、敵の振りをして我々を欺き、バルジの情報を得ることに成功したのですから」
ルシアは肩をすくめて、ため息を漏らす。
ルシア「残念ですよ・・・貴方たちとは、
良きパートナーとして共に歩んでいけると思ったのですが・・・」
カトル「白々しい事を言いますね・・・
貴方ならば、僕たちの考えぐらい、とっくにお見通しだったんじゃないですか?」
ルシア「半分は本心ですよ・・・
貴方がたの“存在”は、我々の理想に近しいものがありますからね」
そう言うと、ベルゲルミル・アスラは手にしたヴァーテュー・アローに矢を番える。
次の瞬間、三条の光矢がビームの弦を離れて飛翔する。
ガンダムチームは散開、あるいは防御して、矢の直撃を避ける。
ルシア「Mr.マクスウェル、Mr.ウィナー、Mr.バートン・・・
貴方がたはガンダムパイロットとしての訓練を受け、
過酷な任務を潜り抜け、戦いが日常となる日々を送ってきたはずだ」
カトル「・・・・・・」
ルシアの言葉を噛み締めるように聞くカトル。
改めて言われるまでも無く、自分達の境遇は自分達で一番良く分かっている事だ。
ルシア「戦争こそが当然の環境であると認識し、何も感じず、機械の如く敵を殺せる・・・
それこそ正しき兵士の姿。そのような人材こそ、我々の同志となるにふさわしいのです」
デュオ「はっ・・・都合よくこき使えるからか?」
バルカン砲で牽制しながら、皮肉っぽく言うデュオ。
ルシア「ははは・・・手厳しい。
ですが、それ以上に・・・兵士としての貴方がたの素質を、我々は欲しているのですよ。
私たちの大望を、実現するためにね・・・
Mr.バートンならば、お分かりでは無いのですか?」
カトル「トロワ?」
トロワ「・・・・・・」
トロワはヘビーアームズを操縦しつつ、静かに話し出す。
トロワ「ネオバディムの目的は、異星人の撃滅でも、
地球圏の支配でも無い・・・“争い”そのもの・・・」
デュオ「な、何ぃ!」
ルシア「そう!!
この世界に、恒久なる戦闘文化圏を確立する事・・・
それがネオバディムの・・・ユーゼス様の悲願なのです!!」
29
:
藍三郎
:2007/09/08(土) 07:22:23 HOST:97.76.231.222.megaegg.ne.jp
ルシア「文明とは、戦争によって急激に進歩する・・・
かつての黒歴史を見れば、それは明々白々です。
私たちは、それをこの世界にももたらしたい・・・
戦いによって文明を加速させ、争いによって人類を進歩させる・・・
そうする事により、人類はより優れた種へと成長を遂げるでしょう!」
カトル「だからって、その為に戦争を引き起こすなんて・・・あってはならない事だ!」
ツインショーテルで斬りかかるガンダムサンドロック。
ルシアはヴァーテュー・アローを構え、剣の一撃を受け止めた。
ルシア「ふふふ・・・この世界に限った事ではなく・・・
戦争が無くては生きていけない人間というのは、確実に存在するのですよ。
月のギンガナム隊が良い例です。
彼らだけではない・・・地球に降下したムーンレィス達も、
闘争本能を取り戻し、月と地球との争いが始まった。
所詮平和などはかりそめ、闘争こそが世界の本来の姿なのです・・・!」
ショーテルを振り払い、距離を取って矢を連射するベルゲルミル。
サンドロックはやむなく、シールドで防御する。
ルシア「だからこそ・・・戦いに生きてきた貴方がたには、
我々の理想を万民に示す御使いとなって頂きたかった・・・」
デュオ「理想に近しいってなぁ、そういう意味かよ」
カトル「だけど・・・僕らは好き好んで戦っているわけではありません!
最終的には、地球とコロニーの平和の為に・・・」
デュオ「そうだぜ!お前たちが飼ってる、
ヤク中の戦闘狂どもと一緒にされちゃあ心外ってもんだ!」
ベルゲルミル・アスラに対し、同時に斬りかかるデスサイズとサンドロック。
ヴァーテュー・アローで受け止めるが、それと同時にガトリング砲の銃火がベルゲルミルを襲った。
トロワ「確かに俺達は兵士だ。
任務を遂行する事にのみ特化した機械・・・そう呼ばれる事に何ら抵抗は無い。
だが・・・人の心は失っていないつもりだ。カトル達が、それを俺に教えてくれた」
カトル「トロワ・・・」
ルシア「ふ・・・ふふ、そうですか。貴方がたには期待していたのですがね・・・」
ルシアは不敵な笑みを漏らし、ベルゲルミル・アスラを疾駆させる。
ルシア「貴方がたをネオバディムに引き込んだのは、他でもない私です。
責任を取って・・・ここで引導を渡してあげましょう!」
デュオ「ち・・・来るぞ!!」
今までは、ただの機体慣らしに過ぎなかった。
ここからが、ルシア・レッドクラウドの本気・・・
迫り来るベルゲルミルに身構えるパイロットたちだが・・・
ルシア「――――――!」
次の瞬間、高速で動く赤い線が、ベルゲルミルの肩を打つ。
鞭のようにしなる武器の先には、翼を供えた双頭の龍が浮揚していた。
龍は双頭を後ろへ倒すと、人型形態へと変形する。
ルシア「来ましたね・・・Mr.ユイ・・・
それが、Mr.クシュリナーダが造り上げた『ガンダムエピオン』ですか・・・」
ガンダムエピオンは、変形した直後、ヒートロッドによる攻撃を仕掛ける。
真紅の鞭が宇宙を踊り、鮮赤のベルゲルミルに襲い掛かる。
ルシア「ふふふ・・・貴方がここに来る事を、私は予測していました・・・
未来を予知するゼロシステムに・・・
私の『演算者』としての力がどこまで迫れるか・・・是非とも試してみたい・・・!」
笑みを浮かべて、猛獣のように殺気を高めるルシア。
ヒイロ「ターゲット確認・・・排除する」
それに対し・・・ヒイロは表情を崩す事無く、あくまでも、怜悧冷徹に応じる。
30
:
藍三郎
:2007/09/08(土) 07:23:09 HOST:97.76.231.222.megaegg.ne.jp
カトル「ヒイロ・・・大丈夫なんだろうか?」
危険なシステムを積んだガンダムに乗るヒイロの身を案じるカトル。
だが、そんな暇も無く、彼らの下へ数本の物体が飛来する。
カトル「――――!」
サンドロックは、咄嗟にシールドを構える。
シールドに突き刺さったソレは、数本の投げナイフだった。
???「それでは、貴方がたのお相手は私が勤めさせて頂きましょう」
ルシアと同じく慇懃な・・・
ただし、年を経た渋みが含まれた声が、彼らへと投げかけられる。
何も見えない、暗闇の一角・・・
そこで、マントらしきものが翻った瞬間・・・機械仕掛けの魔術師が姿を現す。
デュオ「何だありゃ・・・ガンダムタイプか?」
シルクハットに黒マントという、いかにも奇術師らしい風体のガンダムに、デュオは一瞬呆気に取られる。
デュオ「俺の“死神”も大概だが、ありゃあその上を行くな」
ジェローム「始めまして、皆様・・・
私はジェローム・フォルネーゼ・・・ただのしがない奇術師でございます」
トロワ「知っている・・・統合軍のデータベースにあった“最凶四天王”の一人だな」
ジェローム「既にご存知とは・・・光栄の至りに存じます」
ジェロームの駆るガンダムミステリオは、大きく腰を曲げて一礼した。
戦場に似つかわしくない、緊張感の無い態度だ。
デュオ「悪いが、俺たちは先を急いでいるんだ。
あんたのマジックショーに付き合ってる暇はねーぜ!!」
ジェローム「ふふふ・・・そう言われると、
引き止めたくなるのが奇術師の性というもの・・・
魅惑のマジックにて、夢幻の世界に導いて差し上げましょう・・・!」
ガンダムミステリオは仰々しく黒マントを翻し、三体のガンダムを迎え撃つ。
31
:
蒼ウサギ
:2007/09/14(金) 01:43:56 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
MA形態のエピオンは量産機群などわき目もふらずに一目散にバルジに接近していた。
もちろん、これを阻止しようと数々の量産機が砲撃を繰り出すが、そのスピード故に当たらない。
いや、それらの砲撃をヒイロは全て予測し、回避していた。
ヒイロ「・・・・・・」
月での戦いをリフレインしそうになるが、ヒイロはまだシステムの重圧に耐えていた。
いつものように冷静に、機械のように行動し、任務を遂行するスタイルを継続している。
そしてついにバルジをその目に捉える。
ヒイロ「目標確認・・・・・・」
だが、その時、エピオンのコクピットが警告音を発した。
ヒイロは舌打ちをしながら、機体の機動を変える。
直後、エピオンを覆いつくさんばかりの閃光が走った。
強力なビームだ。
ヒイロ「・・・来たか」
MA形態からMS形態へと変形させて、襲撃者の姿を捉える。
白き姿のガンダム・・・・・・ウイングゼロがそこにいた。
そのパイロット、ゼクス・マーキスが問いかけてきた。
ゼクス「そのガンダムのパイロット・・・・・・ヒイロ・ユイだな」
ヒイロ「・・・・・・」
ヒイロは返さない。問いかけといっても、ゼクスの言葉はほぼ確信めいていた口振りだったからだ。
彼がトレーズから自分がこの機体を受け取ったということは、もはや知っていてもおかしくない。
ゼクス「フッ、我々に余計な会話は不必要ということか?」
ウイングゼロが武器をツインバスターライフルからビームサーベルへと持ち変える。
エピオンもそれに倣うかのように、ビームソードを構えた。
束の間の沈黙後、二機は剣を振るった。
ぶつかり合う剣と剣。
激しく迸るビームが二人の戦いが激しくなるものと予感させた。
§
五飛に助けられたキラは再び侵攻を再開しようとしたが、
艦隊が狙い撃ちにされているのを聞いて、迷いを生じさせた。
キラ「このままじゃ、ラクスやアスランも危ない・・・・・・」
戻るべきか、思考を巡らせていると、そこへ悠騎のブレードゼファーが敵を斬り捨てながらやって来た。
悠騎「オイ、キラ!ボーっとしてる暇はねぇぞ!」
キラ「は、はい!・・・・・・でも、味方の艦が危ないって・・・」
悠騎「っ・・・あぁ、それはオレも聞いたぜ。けど、それは覚悟の上だ」
キラ「・・・・・・・・」
悠騎にはキラの言わんとすることが想像がついた。
元は普通の学生である彼が戦いに身を投じている理由は
友達を守りたいという気持ちからだと聞いたことがある。
そして今、その友達がピンチに陥っていることを聞いたのだ。
妹の由佳も同じピンチを迎えているだけに、悠騎にはキラの焦燥が伝わった。
悠騎「・・・・・・キラ、お前は艦隊の防衛に回ってくれ。オレはこのまま行く!」
キラ「え・・・?」
悠騎「どうも、あのトチ狂った三人衆もそっちへ向かったようだからな。
お前が艦隊の防衛に回ってくれると、こっちとしても心強いからよ!」
それだけ告げて、返事を待たずに悠騎はブレードゼファーを加速させて、
バルジのほうへと侵攻していった。
キラは少し躊躇しながらも、悠騎の指示に甘えることにした。
そしてその道中、悠騎の言った「三人衆」のGが見えた。
その三機に向けて、キラのフリーダムは全武装をフルバーストさせた。
オルガ「んっ!?」
クロト「おっ!?」
シャニ「ん?」
コクピットに鳴り響く警告音から反射的に機体を動かして、フリーダムの攻撃をギリギリで回避する三機。
そしてその姿を各々目で捉えると、ニヤリと笑った。
クロト「出たなぁ・・・白いのっ!」
オルガ「ノコノコ来たぜぇぇ!!」
シャニ「落とす・・・・・・」
フォーメーションなど成さないバラバラの動きで三機はフリーダムに仕掛けていった。
キラはそれら三機を真っ直ぐに見据えて、迎え撃った。
32
:
蒼ウサギ
:2007/09/17(月) 23:42:03 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
31ですが、前半部のヒイロとゼクスのシーンはこちらのミスによりカットとします。
ご迷惑をおかけしましたm(_ _)m
33
:
藍三郎
:2007/09/20(木) 21:57:42 HOST:97.76.231.222.megaegg.ne.jp
宇宙の闇を駆け抜けるは、漆黒の魔術師。
ガンダムミステリオがマントを翻した瞬間、大量のナイフが発射される。
カトル「くっ・・・!」
サンドロックはシールドを構えて防御する。
シールドの表面に、無数のナイフが突き刺さった。
カトル「気をつけてください・・・あの最凶四天王というのは、
実力も元より・・・トリッキーな手を使う事でも知られてますから・・・」
デュオ「見るからにそういう外見だもんな・・・
それじゃ、魔術師さんよ!この死神が相手してやるぜ!!」
ビームシザースを手に、デスサイズヘルは前線へと赴く。
トロワ「後方支援は俺に任せろ・・・」
カトル「うん!」
サンドロックもヒートショーテルを構えてそれに続く。
デュオ「俺の死神(あいぼう)も大概だがよ・・・あんたにゃ負けるぜ・・・!」
飛来するナイフを、ビームシザースで斬り払うデスサイズ。
ジェローム「ふふふ、漆黒の死神に砂漠の鷹・・・ステージを彩るに申し分の無い相手だ!」
ミステリオは頭部のシルクハットを取り去ると、その手を大きく振る。
すると、帽子の中から多量のメカ鳩が吐き出された。
乱れ飛ぶ鳩は、鋭利な嘴を光らせ、弾幕となって二機へ押し寄せる。
デスサイズとサンドロックが迎撃の態勢を取った瞬間・・・
後方から、ホーミングミサイルの束が飛んでくる。
ミサイルの軌道は、二機のガンダムを避けて、メカ鳩に命中する。
爆発は連鎖を引き起こし、宇宙を飛ぶ白い鳩の群れは炎の中に消えた。
カトル「トロワ!」
トロワ「・・・・・・」
引き続き、ガトリングガンを撃って残った鳩を撃ち落す。後方支援により、活路は開かれた。
デュオ「よぉし、行くぜ行くぜ行くぜぇっ!」
ジェローム「!!」
一気に懐に潜り込む二機。ビームシザースとショーテルが唸り、
ガンダムミステリオをXの字に切り裂いた―――――
と、次の瞬間・・・
ジェローム「ふふふふ・・・残念・・・」
斬られたミステリオの全身に、亀裂が走っていく。
ミステリオのみならず、周囲の空間までも・・・
カトル「な・・・!」
デュオ「か、鏡だと!?」
デュオ達が破壊したのは、ミステリオではなく、
その姿を写し取った機体サイズの鏡板だった。
唖然とする二人に、全方位から不敵な笑い声が投げかけられる。
『ふふふふふ・・・・・・』
『ふふふ・・・ふふふふ・・・』
『ふふふふふふふ・・・・・・』
気付けば、三機のガンダムを取り囲むように、
無数のガンダムミステリオが浮揚していた。
そのどれもが、他と寸分違わぬ外見をしている。
デュオ「けっ、量産型魔術師(マジシャン)ってか?」
トロワ「・・・・・・」
その内の一体に向けて、ガトリングガンを放つトロワ。
ミステリオを蜂の巣にした瞬間・・・やはり、その姿は壊れた鏡となって砕け散る。
カトル「そうか・・・これは、鏡の反射だ!」
カトルの叫びに、周囲から響く声が応えた。
『ご名答です』
『あなた方が眼にしているのは全て私の鏡像・・・』
『奇術師としては、いささか使い古された代物ですがね・・・』
デュオ「凝った真似してくれちゃってまぁ・・・
けどな、爺さん。レーダーで探ればあんたの位置なんざ一発で・・・」
トロワ「・・・それはできない」
冷静に否定の一言を放つトロワ。
トロワ「あのミラーからも、敵機体と全く同じ熱源反応と識別信号が放たれている・・・
レーダーで探るのは不可能だ」
デュオ「ちっ・・・・・・」
ジェローム『ふふ、では・・・行きますよ・・・!』
仕込みビームステッキを手に、全方位のミステリオが、一斉に動いた・・・
34
:
藍三郎
:2007/09/20(木) 21:59:08 HOST:97.76.231.222.megaegg.ne.jp
紅き翼を広げた魔神が、灼熱の鞭で虚空を薙ぐ。
鮮血に染まった阿修羅は、破魔の弓を構え、魔神を狙い打つ。
互いの交錯が火花を散らし、宇宙に紅蓮の彩を添える。
ガンダムエピオンとベルゲルミル・アスラ・・・
両者の死闘は開始早々、他を大きく凌駕するレベルにまで激化していた。
ヒイロ「――――――」
ゼロシステムを通して、大量の予知情報がヒイロの脳内に流れ込んでくる。
システムに振り回されそうになるのを抑えながら、ベルゲルミルへと攻撃を加える。
だが、その確実な未来予知を、ルシアのベルゲルミルは尽く回避していった。
“演算者(カリキュレイター)”と呼ばれる、高度な演算による未来予測を可能とする能力者・・・
ルシア・レッドクラウドの“読み”は、ゼロシステムをも追随していた。
ルシア「システムにより未来(さき)を知る貴方・・・
そして、能力により未来(さき)を予測する私・・・
さて、どちらの“未来”が先に綻びを見せるでしょうか・・・!」
この戦いを心底愉しんでいる様子のルシアは、ヴァーテュー・アローを連射する。
エピオンはビームソードを振るい、光の矢を払いつつ突進する。
ヒイロ「貴様は――――敵かっ!」
脅迫的な敵対感情が、ヒイロの脳を侵食する。
だが、ヒイロは意識を強く保ち、必要以上の感情の高ぶりを抑える。
この敵は・・・冷静さを欠いた状態で倒せる相手ではない。
兵士としての冷静な判断力・・・それを持って、ヒイロは暴走を抑えていた。
ルシア「・・・月での戦いでは、システムについていけず暴走したと聞きましたが・・・
少しずつ、ゼロシステムを制御しているというのですか?」
面白い・・・といった様子で、ルシアは口元を吊り上げる。
ベルゲルミル・アスラの背部のデバイスユニットが分離し、正面に展開する。
眩くも淡い緑色の光が生じ、六つの宝玉に似たデバイスが六角形の頂点を象る。
ルシア「シックス・スレイブ・アロー・・・セット」
緑色の光に包まれる中、アスラはヴァーテュー・アローを番える。
ルシア「行きなさい、破魔の七光・・・セブンス・スレイヤー!!」
マニピュレーターを光の弦から離す。
その瞬間、六つの宝玉は光の矢と化し、合計七本の矢がエピオン目掛けて飛翔する。
ヒイロ「・・・・・・」
ヒイロは無言のまま、ビームソードの出力を上げる。
巨大化させたビームソードをなぎ払い、飛来する七本の矢を纏めて消し去る。
それでも、光の刃を逃れた数本の矢が、捻れた軌道を描いて殺到する。
エピオンは驚異的な運動性能で虚空を駆け抜けると、それらの矢も全て回避してのけた。
ルシア「クス・・・」
だが、ルシアの笑みは消えない。
彼は“計算”していた・・・エピオンが回避した光の矢が、
後方に待機しているビルゴのプラネイト・ディフェンサーに反射され、
エピオンの背部に命中する事を・・・
今まさに、その反射が起ころうとした瞬間・・・
背後にいたビルゴを、エピオンのヒートロッドが貫いた。
ビルゴが爆発四散した事で、反射されるはずのビームアローは虚空を突き抜けていた。
ルシア「・・・・・・!」
ヒイロ「・・・その未来は、予測できていた・・・」
返す刀ならぬ返す鞭で、ベルゲルミル・アスラにヒートロッドを飛ばすエピオン。
海蛇の如くうねくる灼熱の鞭を、アスラはヴァーテュー・アローで受け止めつつも何とか凌ぐ。
ルシア「暴走に振り回されないどころか・・・
そこまでゼロシステムを使いこなしているとは・・・
兵器に対する素晴らしいまでの順応力・・・
やはり貴方は戦いの申し子だ!そう・・・私と同じように・・・!」
狂気に瞳を血走らせ、ルシアは歓喜の笑みを零す。
それに対して、ヒイロはあくまで冷淡に応える。
ヒイロ「オレはオレだ・・・お前を殺す、ただの兵士だ・・・!」
35
:
蒼ウサギ
:2007/09/21(金) 03:54:39 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
“強奪者”“災厄”“禁忌”の名を持つGがバラバラに“自由”の名も持つG、
キラのフリーダムへと襲い掛かる。
クロト「滅殺!」
まず先に仕掛けたのは、クロトのレイダーだ。
口部分から放たれた火線はフリーダムの翼を掠める。
その程度に済んだのはキラの素早い回避行動によるものだ。遅れていたらコクピットを撃ち貫かれている。
クロト「上手いじゃないか!これはどうだ白いの!」
第一の攻撃をかわされても、クロトは気にせず次の攻撃を繰り出した。
右腕部から射出された鉄球が回転をしながらフリーダムに迫る。
キラ「っ!」
連撃にも怯むことなく、キラは鉄球を真っ直ぐに見据え、回避と同時に反撃に転じようと考えた。
だが、レイダーが鉄球を放ってきたとほぼ同時に別方向から多数のビームが放たれてきた。
オルガのカラミティの攻撃だ。
キラ「っあ!」
目の端でそれを捉えたキラは華麗とはいえないが、急速行動でそれらを回避した。
クロト「オルガ!またテメェ邪魔を!」
オルガ「うるせぇ!仕留めたモン勝ちなんだよっ!」
そう言って、カラミティが連射してくる。
フリーダムはカラミティと距離を離しつつ、それを紙一重で回避していく。
キラ「こいつら、フォーメーションを組んでいるというわけじゃない!」
先ほどのコンビネーションは絶妙に思えたが、彼らの言動やその後の攻撃から見れば
まるで統率されていないことがわかる。
だが、それ故に危険だと直感した。
バラバラだが、目標は同じ自分なのである。絶え間ない攻撃を繰り出されていて、反撃の暇がない。
彼らの行動を見れば、反撃に転じても味方ごと攻撃しそうな勢いだ。
シャニ「はぁ〜」
そうこう思考を巡らせているうちにシャニのフォビドゥンがフリーダムの背後に迫っていた。
振り下ろされる鎌を、フリーダムはビームサーベルで受け止めた。
ここで膠着が生まれる。
オルガ「そこだぁっ!」
キラ「ぐっ!」
予想通り、近くに味方がいるのも構わず、カラミティが両肩のビーム砲を撃った。
どうせなら同士討ちさせようと、キラはギリギリまでひきつけてからそれを回避した。
シャニ「!」
眼前に迫るビームにフォビドゥンは背部のバックパックを被り、その両側のパーツを盾の様にして前に出した。
すると、カラミティから放たれたビームが軌道を変え、フリーダムの方へと向かっていった。
キラ「ぐっ!」
さすがにこの変化球はかわしきれなかったが、シールドで咄嗟に防御する。
だが、その隙に今度はレイダーがフリーダムの背後をとっていた。
クロト「こっちだよ!白いのぉ!」
射出された鉄球は今度はフリーダムを直撃した。
大きく機体は吹き飛び、コクピットにも強い衝撃が走る。
キラ「ぐぁぁぁぁっ!」
だが、彼らの攻撃は終わらない。
むしろこれは彼らにとって畳み掛けるチャンスなのだ。
オルガ「ヒャーッハッハッハ!!落ちろ落ちろぉ!」
シャニ「死ねぇ!死ねぇ!」
カラミティはビームを撃ち、フォビドゥンはレールガンを撃つ。
フリーダムが瞬く間に砲撃のスコールに見舞われる。
36
:
蒼ウサギ
:2007/09/21(金) 03:55:11 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
ムウ「! くそっ、坊主が危ない!」
それまで一度危機に晒されたアークエンジェルの防衛にまわっていたムウがキラの危機に気づく。
現在、彼が搭乗しているストライクの装備はランチャーだ。
主武器である「アグニ」は長射程武器ではあるが、今いる位置からの援護は厳しいものだった。
ムウ「アークエンジェル!オレは坊主を援護に行く!沈むなよ!」
それだけ告げて、ムウはストライクを奔らせる。
その時だった。
もう一機、彼の元へと向かう機体があった。
それは宇宙空間でも栄える紅色だった。
シャニ「はぁ〜・・・ハァァッ!」
一頻りの砲火が止んだ頃、シャニのフォビドゥンがトドメとばかりに被っている
背部ユニットの先端部から高出力のビームを撃とうとしていた。
数秒のチャージの後、放たれたそれは確実にフリーダムを捉えていた。
キラ「くっぅ!」
なんとか回避しようとするが、ダメージを負った機体の反応は鈍い。
もはや回避は間に合わず、直撃を受けることを直感したその時、
紅い閃光が奔り、フリーダムの前で制止した。
キラ「あ・・・・・・」
キラの目は驚きに見開いた。
フォビドゥンのビームをシールドで防ぎ、フリーダムを守った紅い機体・・・
それは“正義”の名を持つGだった。
そしてその紅いGは右手に装備しているビームライフルの銃口をフォビドゥンに向けた。
まるで、フリーダムを守ると決意したかのように・・・・・・
その紅いGの搭乗者、アスラン・ザラは静かに・・・だが、確実にキラに届く声で告げた。
アスラン「こちらジャスティス、アスラン・ザラ。これよりフリーダムを援護する」
友の声が深く、キラの胸に響いた。
37
:
藍三郎
:2007/09/21(金) 07:08:31 HOST:97.76.231.222.megaegg.ne.jp
一方・・・
リュウセイ「おっし!俺が一番乗りだな!」
奮戦の甲斐あって、何機かの友軍機が、バルジへと到達しつつあった。
鉄壁を誇るバルジへの侵入経路・・・
それは、モビルドールを次々に吐き出しているドッグの入り口に他ならなかった。
ライ「自慢するような事じゃない・・・」
リュウセイ「わ、わかってるぜ!ノリで言ってみただけだっつーの!」
R−ウィングからR−1改へと変形する。
予想通り、ゲート正面には大多数のモビルドールがひしめいていた。
この最終防衛ラインを突破しなければ、バルジへ続く道は開かれない。
アヤ「突破に時間をかければ、ゲートを閉じられるわ!急ぐわよ!」
リュウセイ「おう!早速行くぜ!!天上天下ぁ!念動!爆砕剣!!」
いきなり必殺技を繰り出すR−1を初めとして、他の機体も集中砲火を浴びせる。
しかし、折り重なったビルゴの壁は厚く、
さらに数機破壊されてもまたゲートから新たな機体が出現するため、突破口を開けずにいた。
エクセレン「あぁん、もう!!
スーパーの特売セールじゃないんだから、そんなに固まらなくても〜〜!」
キョウスケ「愚痴を言うな。弾薬が尽き果てても、押し切るしかあるまい・・・」
アルトアイゼン・リーゼがアヴァランチ・クレイモアを放った直後・・・
エイジ「みんな、一旦道を開けてくれ!!」
悠騎「エイジさん!」
高速で突っ切ってくるのは、エイジのレイズナーMkⅡだ。
エイジ「レイ!V−MAXIMUM、発動!」
レイ『レディ!』
飛行形態のレイズナーMkⅡが、電磁フィールドに覆われる。
蒼き流星と化したレイズナーの前には、ビルゴのプラネイト・ディフェンサーも役に立たない。
ビリヤードのブレイクショットを決めるが如く、V−MAXIMUMの前に、
ひしめくビルゴの群れはまとめて弾き飛ばされる。
ヴィレッタ「今よ!私達も、エイジに続くわよ!」
アヤ「了解!!」
数秒の間空いた空白・・・その数秒を逃さず、G・K隊の機体は続々と突入を開始する。
=宇宙要塞バルジ 司令室=
ネオバディム兵「ユ、ユーゼス様!!第4番ゲートより、侵入者が!」
ユーゼス「・・・やはり突入作戦を取ってきたか・・・」
敵機侵入の報を聞いても、ユーゼスの声は実に落ち着いたものだった。
ユーゼス「一つ聞く・・・突入した機体の中に、レイズナーMkⅡは入っているか?」
ネオバディム兵「レイズナーですか?はい・・・入っておりますが・・・」
それを聞いた時、ユーゼスは仮面の下で笑みを零した。
ユーゼス「ふふふ・・・ルシアの読み通り・・・いや、計算通りか。
ここまでお膳立てが揃うとは、な・・・」
ユーゼスは、ゆっくりと司令室の椅子から立ち上がる。
ユーゼス「作戦を、フェイズ3へとシフトする。
侵入者迎撃システム、および、クロス・ディメンション・システムを起動させておけ」
ネオバディム兵「はっ!!」
ユーゼス「では・・・私も出向くとしよう・・・
我が城に来訪した客人を歓迎するのは、城主の務めだからな・・・」
ルシア「・・・・・・」
戦いの悦楽に興じていたルシアだが、突如その顔から笑みが消える。
殺到するエピオンを、ヴァーテュー・アローの連射で押し留めると、一旦大きく距離を取る。
ルシア「残念ですが・・・貴方との死闘(ダンス)もここまでのようです。Mr.ユイ。
私は私で、新しい用事ができたのでね・・・」
ヒイロ「・・・・・・」
そんな言葉に耳を貸すヒイロではない。
なおも猛攻を続けるが、“逃げ”に徹したルシアには掠りもしなかった。
ルシア「せっかく盛り上がってきたと言うのに、名残惜しくもありますが・・・」
まぁ、勝負つかずで終わる・・・それも予測していましたがね・・・」
ヒイロ「――――――!」
ビームソードを構え、突撃するエピオンの正面を、強力なビームが通り過ぎた。
ゼロシステムが、警告を発する。
ルシア「彼は貴方にお譲りしますよ・・・Mr.マーキス。
因縁の相手同士、存分に雌雄を決するとよろしいでしょう」
その隙を衝いて、ベルゲルミル・アスラは一気に戦線から離脱し、バルジへと向かう。
ガンダムエピオンへと迫る機影・・・
それは、ゼロの名を冠す白き翼・・・ゼクスのウィングガンダムゼロだった。
38
:
蒼ウサギ
:2007/10/03(水) 02:37:43 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
ヒイロ「ゼクス・・・・・・」
ウイングゼロと対峙し、その搭乗者の名を呟く。
因縁めいた相手だが、その口調に起伏はない。
ゼクス「フッ、ルシア殿には感謝しなければいけないな
君とこうして再び戦えるのだからな」
ヒイロ「オレは貴様の言う決着をつけることに興味はない。だが・・・・・・」
エピオンがビームソードの出力を上げて構える。
ヒイロ「障害となるのなら、排除する」
言い切ると同時にエピオンがウイングゼロに肉迫し、
ビームソードを振るう。
あわや真っ二つという寸前に、ウイングゼロは左腕に装備しているシールドで斬撃を止めた。
ゼクス「それでいい。それでこそ、ガンダムのパイロットだ!」
ツインバスターライフルからビームサーベルに持ち替えたウイングゼロが反撃に出る。
エピオンはその斬撃を紙一重で後方回避し、間髪入れずヒートロッドを振るった。
しかしこれはゼクスが機体を屈める形で回避した。
そして、すかさずウイングゼロの両肩に内蔵されているマシンキャノンが火を吹く。
ヒイロ「っ!」
エピオンを急上昇させ、実弾の猛攻を回避する。
それを追撃するウイングゼロにカウンターとばかりに斬撃を繰り出す。
反撃に次ぐ反撃。
二機の凄まじい戦いは、他の人型機動兵器同士の戦いとは一線をはくしていた。
ゼクス「システムを使いこなすようになったか・・・!」
ヒイロ「お前もな!」
二機の戦いはさらに激しさを増していった。
§
アスランのジャスティス、そしてキラのフリーダムが
巧みなコンビネーションで戦場を駆ける。
オルガ「この・・・紅いのがぁぁぁっ!!」
逆上したオルガがカラミティの全武装を乱射する。
狙いは一応、ジャスティスではあるが、ろくに狙いを定めているわけではないので、
ジャスティスに仕掛けているクロトのレイダーも砲撃に巻き込んでいる。
クロト「このっ! オルガぁ!いい加減にしろよ!」
オルガ「るせぇ!当たるほうが悪いんだよぉ!!」
なおも乱射するカラミティだが、その隙をキラに狙われた。
肉迫するフリーダムがビームサーベルを一撃見舞い、
直後、クスィフィアス・レール砲を至近距離で撃ち、カラミティを大きく吹き飛ばした。
クロト「ハッ!ざまぁねぇなぁ!オルガ!」
オルガのやられ様を嘲笑するクロトだったが、そうしている間にジャスティスが仕掛けていた。
アスラン「はぁっ!」
連結させたビームサーベルをレイダーに向けて振り下ろす。
クロト「ちぃ!調子に乗るなよ! 撲殺!」
虚をつかれたものの、紙一重でそれを回避して、破砕球のミョルニルを射出しようとするが、
ジャスティスが片手に持っていたビームライフルを連射し、レイダーを撃ち飛ばした。
アスラン(あと一機は・・・・・)
辺りを一通り見回して、フォビドゥンの位置を確認する。
が、その時、コクピット内に警告音が鳴り響く。
39
:
蒼ウサギ
:2007/10/03(水) 02:38:17 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
シャニ「はぁぁぁぁ!」
シャニのフォビドゥンはジャスティスの背後をとっていた。
鎌を大きく振り上げて、すぐにでも振り下ろす体勢に入っている。
アスラン「っ!」
キラ「アスランっ!」
すかさずフリーダムが援護射撃をして、フォビドゥンを吹き飛ばす。
体勢が崩れたフォビドゥンにジャスティスがビームサーベルで追撃をかけた。
丁度、カラミティ、レイダーがいる位置へ斬り飛ばす。
アスラン「キラ!今だ!」
キラ「うん!」
掛け声を合図にフリーダム、ジャスティスの全武装の砲門が三機に向けられ、一斉発射される。
嵐の如きビームが三機を覆い尽くす。
アスラン「やったか・・・・・・」
砲撃を止め、爆煙に包まれた三機の様子を伺う。
が、次の瞬間、爆煙の中から三機が飛び出してきた。
かなりのダメージを負っているものの、パイロットの気性からか、なおも攻撃を仕掛けてきた。
キラ「くっ!この!」
二人が迎撃に構えたその時、三機の動きが途中で豹変する。
クロト「ぐあぁぁっぁっ!!」
オルガ「く、くそっ!もう時間切れかよ!!」
シャニ「あ・・・ああっ!!」
戦闘能力を薬物で向上させている彼らの副作用が起こったのだ。
薬の効果が切れると、禁断症状に苦しむことになる。
クロト「く、くそっ!お、覚えてろよ!白いの!紅いの!」
クロトの捨て台詞を皮切りに、三機が一斉に戦線を離脱していく。
アスラン「・・・どうやら凌げたようだな」
キラ「うん・・・・・・」
小さく頷いて、キラは今一度、アスランのジャスティスを見やる。
キラ「アスラン・・・ありがとう。君が―――」
その時、コクピット内の警告音がキラの言葉をかき消した。
同様に、ジャスティス内にも警告音が鳴り響いている。
アスラン「新手か!?」
レーダーには高速で接近してくる機影が映っていた。
そして、その識別を見て、アスランは息を呑んだ。
アスラン「ゲイツ・・・・・・これはクルーゼ隊長のか・・・・・・!」
程なくして肉眼で確認できたそれはグレーの塗装が施されたゲイツだった。
その搭乗者、ラウ・ル・クルーゼは二機のGを見て、ほくそえんだ。
クルーゼ「アスラン・・・生きていたか・・・・・・
そしてフリーダムのパイロットはやはり彼か・・・・・・」
仮面に隠れて表情こそ見えないが、その言葉には様々な感情が渦巻いていた。
40
:
藍三郎
:2007/10/05(金) 07:03:42 HOST:97.76.231.222.megaegg.ne.jp
=宇宙要塞バルジ 内部=
ライ「ハイゾルランチャー、シューッ!!」
アヤ「テレキネシス・ミサイル、発射!!」
R−2とR−3の一斉砲撃が、機械人形の壁を吹き飛ばす。
バルジ内部には外周部以上の密度で
モビルドールが配置され、侵入者の進撃を阻んでいた。
エイジ「このまま全ての敵と戦っていても拉致が空かない・・・
レイ、動力部の位置はサーチできるか?」
レイ『強力ナジャミングガ展開中。サーチニハ時間ヲ要シマス』
エイジ「そうか・・・」
リュウセイ「分からねぇなら!とにかく暴れ回って全部ぶち壊すしかねぇだろ!」
ライ「全く・・・短絡的な奴め」
リュウセイ「何ぃ!?」
ライ「どれだけ時間がかかると思っている・・・
それに、すぐにエネルギーと弾薬が尽きるのがオチだ」
エクセレン「はいはい、こんな時まで喧嘩しない・・・あら?」
怪訝な眼で前を見るエクセレン。
先ほどまで、密集陣形を組んでいたビルゴが、突然引き上げ始めたのだ。
ヴィレッタ「ここに来て下がらせるなんて・・・どういうつもり?」
エッジ「とにかく、今がチャンスだ!一気に突っ切るしかねぇぜ!」
悠騎「おう!!」
これを好機に一同は機体を前へと進める。
だが、モビルドールの不可解な行動に疑念を持つものもいた。
エイジ「!?」
フロアを抜けた瞬間、眩暈するような感覚が全員を襲う。
エッジ「空間が・・・歪む?」
陽炎の如く、歪む視界。単なる幻覚ではなく、
その影響は機体にも及び、上手くコントロールできない。
エイジ「しまった、これは・・・空間転移!」
キョウスケ「・・・罠、か」
逃れる術など無く、歪みが最高に達した瞬間、
その場にいた機体全ては尽く消失した。
=宇宙要塞バルジ 周辺=
ゼンガー「チェストォォォォォッ!!!」
虚空を圧する斬艦刀が唸り、群がる機械人形を薙ぎ払う。
ドモン「超級!覇王!電・影・弾!!」
ロム「天空宙心拳・・・サンダーボルトスクリュー!!」
一方、外周部では、バルジ砲を中心として苛烈な死闘が展開されていた。
タイムリミットまで、もはや猶予は残されていない・・・
バルジ砲の砲身を破壊すべく、特機を中心とした部隊が奮戦しているが、
敵の防衛ラインは想像以上に厚く、一騎当千の猛者達をしても進撃には梃子摺っていた。
キリー「敵さんも、ここが踏ん張りどころだって分かってるみたいだねぇ」
真吾「全く、特別手当て貰わなきゃ割に合わないっての・・・ゴーフラッシャー!」
五条の光がモビルドールへと突き刺さり、爆砕する。
面倒くさそうな、グッドサンダーチームとは対照的に・・・
ケルナグール「グワハハハハ!!!そぉれそれ!!どんどんかかってこんかい!!」
嬉々として、モビルドールを破壊するケルナグール。
ただ拳を振り回すだけの不器用な戦闘だが、
ビルゴのプラネイト・ディフェンサーを砕くには割と効果的だった。
カットナル「楽しんでどうする!!早いとこあれを壊さんと、ワシら全員お陀仏だぞ!!」
スレイ「どうした!動きが硬いぞ!敵の数に怖気づいたか!」
アイビス「冗談!やってみせるよ!」
ハイペリオンは高速で戦場を駆け、音速の翼でモビルドールを粉砕していく。
ツグミ(確かに敵の防衛ラインは強大・・・でも・・・)
苦戦しながらも、G・K隊は何とか進撃を続けている。
バルジ砲は、敵にとっても生命線・・・
それが、この程度の防衛で終わるのだろうか・・・
その直後・・・
バルジ砲の周囲を取り巻くように、新たな敵増援部隊が現れる。
その機体群は、ビルゴのようなモビルドールではなく・・・
ウィッツ「な・・・グラドス軍だと!?」
バルジから発進するのは、確かにグラドス軍のSPTだった。
ジョウ「あいつら・・・手ぇ組んでやがったのか!!」
レニー「信じられない・・・!」
皆の困惑をよそに、SPT部隊は攻撃を開始する。
予期せぬ敵の襲来に、G・K隊側の陣形がわずかに崩れる。
ゼンガー「怯むな!!何が来ようと、このまま押し切るのみ!!」
41
:
藍三郎
:2007/10/05(金) 07:05:02 HOST:97.76.231.222.megaegg.ne.jp
ジェローム『ふふふ・・・では、参りますよ・・・!』
ガンダムミステリオがステッキに仕込まれたビームサーベルを抜くと同時に、
周囲の鏡に映るミステリオも、全く同じ動作を取る。
あたかも、宇宙に広がる万華鏡(カレイドスコープ)。
しかし、取り囲まれるデュオ達には、どれが本物のミステリオなのか見分けがつかない。
デュオ「ちぃ・・・!!」
とっさに反応して、大鎌を振るデスサイズ。
だが、その一閃は鏡像を破壊するに留まった。
カトル「ぐあっ!!」
その間にも、本物によってカトルが攻撃を受けてしまう。
ジェローム『あなた方には、しばしこの鏡の迷宮を彷徨っていただきますよ・・・!』
デュオ「カトル!!こうなったら・・・トロワ!この周りの鏡、全部ぶち壊しちまえ」
トロワ「・・・・・・あまり有効な手とは思えないがな・・・」
そう言いつつも、ガトリングガンを掃射するヘビーアームズ。
機関銃の発射音が鳴り響き、踊る銃弾の雨が鏡を砕き散らす。
だが・・・・・・
ジェローム『やれやれ・・・それでは興がありませんな』
返礼とばかりに、四方八方からナイフの雨が飛んでくる。
咄嗟に防御体制を取る一同だが・・・その隙に、砕いたはずの鏡が次々に出現する。
トロワ「やはり・・・破壊してもすぐに次が用意される・・・というわけか」
デュオ「じゃあ、どうすんだよ!!」
声を荒げるデュオに、トロワは冷静な声で返した。
トロワ「・・・何もしないのも手かもしれん・・・」
デュオ「何?」
トロワ「ここで俺たちがこいつを引き付けておけば・・・
少なくとも、最前線の部隊にこいつを接触させずに済む・・・」
カトル「そうだね・・・今は、一刻も早くバルジを破壊する方が先決・・・
それなら、敵の戦力を分散するのも、前線の援護に繋がる・・・」
デュオ「囮ってか?損な役回りだねぇ。まぁ、今に始まった事じゃねぇが」
何だかんだ言っても、生粋の兵士であるデュオは、割り切って事を運ぶ。
トロワ「・・・・・・とはいえ、それだけでは長くは持たん・・・
有効な戦略とは言えないな」
デュオ「おいおい・・・やけに勿体ぶるな」
カトル「何か、いい手があるっていうの?」
トロワ「・・・・・・」
カトルの問いかけに、トロワはただ、首を縦に振った。
42
:
蒼ウサギ
:2007/10/08(月) 17:57:46 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
バトル7とバルジとの間で繰り広げられている数々の戦い。
ヒイロとゼクスといった一対一の戦いは、彼ら、五飛とトレーズとの間でも繰り広げられていた。
五飛「異なる世界に自らの野望を持ち込む貴様は悪だ!」
ナタクの振るうビームトライデントの刃がトールギスⅡに迫る。
トレーズはその切っ先を冷静に見据えて、ビームサーベルで華麗に捌いた。
トレーズ「悪か・・・確かに君たちからしてみればそう見えるかも知れない。
ならば、私を殺すかね?」
五飛「無論だぁっ!!」
斬撃を捌かれても、五飛はひたすら攻めた。
凄まじい勢いで連続突きを繰り出すが、それすらもトレーズは見切っている。
トレーズ「それでこそガンダムパイロットだ・・・君達はこの世界に来る前からその信念は変わっていない」
トールギスⅡの頭部を貫かんばかりに繰り出されてくる突きを紙一重で悉く回避しながら、
トレーズは五飛との会話を楽しんでいるようだった。
そして、ふと浮かんだ疑問を五飛にぶつけた。
トレーズ「どうした? 何故、その龍を使わない」
トーレズの言うのはガンダムナタクの象徴とも言える武器・ドラゴンハングのことだ。
伸縮自在で攻撃力の高いその武器を駆使すればトールギスⅡすらも翻弄できるはずであると、
トレーズは判断していた。
五飛「お前とは正々堂々と戦いたい!それだけだ!」
そう言い切って、なおもビームトライデントの攻撃を続ける。
トレーズは小さく嘆息した。
トレーズ「君らしくない。躊躇するのか?」
五飛「貴様こそ、すぐでもオレを殺せるのではないのか!?」
トレーズの戦いには明らかに余裕がある。
これまでの攻防戦もそうだが、一番の疑問は元の世界での出来事だ。
五飛はトレーズを殺すため、単身で彼に挑んだが敗れた過去がある。
その時、普通ならば自分を殺そうとしてきた相手を始末するところなのだが、
トレーズは五飛を見逃したのだ。
命は長らえたものの、それは五飛にとって屈辱であった。
五飛「答えろ!何故あの時、オレを殺さなかった!?」
トレーズ「数少ない私の理解者を、殺すことなど・・・・・・できない」
その言葉に、五飛は一瞬、息を呑んだ。
だが、すぐにまた凄い剣幕で迫る。
五飛「ふざけるなっ! オレは貴様が憎い!」
トレーズ「ならば躊躇するな」
そう返すトレーズの口調は強かった。
それが一層、五飛の神経に障った。
五飛「貴様は、そうして人を見下すことしか出来ない男だ。しょせんエゴでしか戦っていない!
貴様のために、何人の人間が死んだと思っているんだ!?」
トレーズ「聞きたいかね?」
そう前置きして、一呼吸置いてからトレーズは答えた。
トレーズ「昨日までの時点では99822人だ」
五飛「っ!?」
トレーズ「私は死者に対し、哀悼の意を表することしか出来ない」
そう呟く、トレーズの表情はその言葉を強く象徴していた。
トレーズ「だが、君もこれだけは知っていてほしい」
そう言いながら、トレーズはトールギスⅡのビームサーベルで、
ナタクのビームトライデントの突きを受け止めた。
膠着したその状態で、トレーズは乞う様に告げる。
トレーズ「彼らは決して無駄死にではないということを・・・・・・」
五飛「っ!」
言葉にならない呻き声を上げながら、ナタクのブースターを吹かし、
ビームトライデントを突く力を強める。
だが、それを無理に押し返そうとしない、トレーズのトールギスⅡは、
ただただその力を受け流すかのように膠着を保っていた。
結果、ナタクに押される形で、トールギスⅡが後方へ飛ばされる。
トレーズ「ふっ・・・・・・」
モニターに映るガンダムナタクに友好的な視線を向けながら、
機器で位置情報を確認する。
トレーズ「このままバルジへと突入か・・・・・・君との第二ステージにしては少々無骨な舞台かもしれんな」
トールギスⅡとガンダムナタクがバルジの外壁を破り、内部に突入したのは、
それから程なくしてのことだった。
43
:
藍三郎
:2007/10/12(金) 20:51:10 HOST:97.76.231.222.megaegg.ne.jp
=宇宙要塞バルジ 周辺宙域=
ジェローム(さて・・・・・・)
宇宙の闇に紛れて、“本物”のジェローム・フォルネーゼは、
翻弄される観客(オーディエンス)へと密かに忍び寄る。
ジェローム(・・・そろそろお迎えにあがりましょうか・・・!)
仕込みステッキを握り締め、標的に近づくミステリオ。
どれだけ接近しようとも、標的は周囲の鏡像に眩惑され、“本物”に気付く事は無い・・・
ステッキから光の刃が抜き放たれ、最初の犠牲者を黄泉路へと送る・・・
ジェローム「!!」
だが・・・
音速の刃が振るわれた瞬間、標的のヘビーアームズに亀裂が走り、粉々に砕け散った。
ただし本物ではなく、映し出された鏡像が・・・
ジェローム「鏡・・・ですって?」
ジェロームが呆気に取られた瞬間、後方からサンドロックが切り込んでくる。
魔術師は咄嗟にマントを翻し、ビームステッキで突きを繰り出す。
カウンターが決まり、サンドロックを串刺しにするが・・・
やはりそれも、平面の鏡像であった。
中央から蜘蛛の巣のような皹が入り、木っ端微塵に砕ける鏡。
いつしか・・・ジェロームは、鏡に映し出される無数のガンダムによって囲まれていた。
ジェローム「これは・・・」
三体のガンダムは、それぞれ動いて攻撃を仕掛けるが、どれが本物かは見抜けない。
鏡で敵を翻弄していたはずの自分が、逆に眩惑されている・・・?
ジェローム「鏡の迷宮に囚われていたのは・・・私だった・・・という事ですか」
およそ信じがたい。
この奇術を成功させるには、高度に計算し尽くされた鏡の配置を必要とするはず・・・
それを今、この場で即興にやってしまうなど・・・
トロワ「サーカスにいた頃・・・これと同じ鏡を使った奇術を見た覚えがある・・・」
現在、鏡を操作しているのはトロワだった。
ジェロームの奇術を見抜いた彼は、デュオやカトルに指示を送りつつも、
鏡の配置を自分たちに有利なように入れ替えていた。
トロワ「このトリックを、戦闘に活かせないかとシミュレートしてみたが・・・
設備の問題から切り捨てていた・・・しかし、こんな形で実現する事になるとはな」
トロワにとって、これは今日即興で造り上げた戦術ではない。
以前から暖めていたプログラムを、ミステリオが用意した鏡を利用する事によって実現させたのだ。
デュオ「人間、何気ない経験がどこで役立つかわかんねぇもんだな」
しみじみと言うと、ジェロームに向かって斬りかかるデュオ。
ジェロームには三体のデスサイズが同時に突っ込んでくるように見える。
ジェローム「ふ、ふふふ・・・これは、焦りますねぇ!」
とにかく、距離を詰められるのは得策ではない。
ガンダムミステリオは、デスサイズの突撃から一旦距離を取ろうとするが・・・
トロワ「・・・もらった」
機関銃の音がけたたましく鳴った直後、
三体の黒い死神が“全て”砕け散った。
デスサイズの鏡像を貫通し、
ガトリング砲の雨がジェロームへと降り注ぐ。
三体のデスサイズは全て囮。
敵が一旦退いた瞬間を狙って、後方に控えていた“本物”のヘビーアームズが銃撃を仕掛ける。
目論見は見事に成功し、ガトリングの砲火はガンダムミステリオに直撃した。
44
:
藍三郎
:2007/10/12(金) 20:51:40 HOST:97.76.231.222.megaegg.ne.jp
ジェローム「くっ・・・奇術道具を逆利用されるなどと・・・
奇術師の面目丸潰れですねぇ・・・」
トロワ「・・・・・・」
ジェローム「仕掛け人は貴方ですか・・・ふふふ、大した奇術の才能をお持ちのようだ」
トロワ「・・・見様見真似でやったまでだ」
表情を変えぬまま、嘯くトロワ。
あながち間違いではないが・・・
ジェローム「・・・いいでしょう。今回は、敗北(まけ)を認めますよ。
あくまで私は前座・・・今回の主役は、ネオバディムの皆様です。
ゲストは早々に撤収するとしましょう・・・」
ミステリオはシルクハットを取り、軽やかに一礼する。
一見隙だらけの行動だが、その仕草に込められた不気味さに、皆危険を感じ取っていた。
ジェローム「では皆さん、御機嫌よう・・・」
別れの挨拶を述べると、ガンダムミステリオはマントを翻し、宇宙の闇へと溶け込んでいった。
デュオ「スゲーなトロワ!あの爺さんに一泡吹かせたぜ!」
トロワ「・・・どうかな」
強敵を撃退したにも関わらず、トロワの声は重い。
トロワ「結局、俺たちは奴の掌の上で踊らされていたに過ぎんようだ・・・」
次の瞬間・・・
ヘビーアームズのツインガトリングガンの砲身が、
大根でも切るように鮮やかに切断された。
カトル「トロワ!!」
さすがは最凶四天王、ただでは退かなかった。
ミステリオは如何にしてヘビーアームズのガトリング砲を切断したのか・・・
その奇術の種は、結局明かされる事は無かった。
トロワ「・・・それに、足止めという奴の目的は達せられた・・・
今からバルジへ張り付くのはまず不可能だ」
デュオ「なぁに、そこはヒイロや、先に行ってる奴らに任せればいいさ。
俺たちは、そいつらが楽になるように、少しでも多く敵をぶった切ってやろうぜ!」
カトル「ええ・・・」
45
:
蒼ウサギ
:2007/10/23(火) 02:14:21 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
一方、オルガ達三人衆を退けた後、入れ替わるように現れたクルーゼと対峙するキラとアスラン。
クルーゼ「さすがだよ、キラくん。アスランの手助けがあったとはいえ、
あの三機を退ける力とはね」
キラ「! 僕の名を?」
クルーゼ「知っているさ。アスランから聞いているからね。それに・・・・・・」
クルーゼの搭乗するゲイツがシールドから二連装ビームクローを発生させ、
フリーダムに斬りかかる。
少し反応が遅れながらも、キラはビームサーベルでそれを受け止めた。
クルーゼ「フフフ・・・・・・ん?」
不敵に笑うクルーゼの顔が、ふと奔った何かを感じ取り、別の笑いを模る。
クルーゼ「この感じ・・・・・・来たか」
咄嗟にゲイツがフリーダムから離れる。
直後、凄まじいビームの火線がそこを横切った。
見慣れたその火線を確認するまでもなく、キラの視界に狙撃者が映った。
キラ「ムウさん!」
ムウ「大丈夫か、って、お前なら心配する必要はないな」
ランチャーストライクでやって来たムウはそんな軽口をキラに向ける。
そしてすぐにクルーゼのゲイツに鋭い視線を向けた。
ムウ「クルーゼ!」
クルーゼ「やはりお前とは宿命だな。ムウ・ラ・フラガ!」
そう言いながら、ビームライフルを連射する。
それを回避しながら、ストライクは大武器のアグニで反撃するが、同じように回避されてしまう。
クルーゼ「今日こそ付けるかね?決着を!」
ムウ「望む所だ!」
いきり立つムウにキラが叫ぶ。
キラ「援護します!」
ムウ「来るな!こいつは・・・こいつだけはオレが!」
ますます熱くなるムウに、クルーゼは不敵に告げた。
クルーゼ「ははははっ! 援護してもらったらどうだ?
彼の力は素晴らしいぞ、何せ彼は人類の夢の産物なのだから・・・そう狂気のな!」
キラ「!?」
ムウ「なにっ!?」
アスラン「キラが・・・・・・人類の夢の産物・・・だって?」
クルーゼの放った一言は三人を驚かせた。
意味はわからないが、“狂気”と付いただけに、良い予感はしない。
クルーゼ「フフフフ、どうやらキラくん。君は自分の本当の事を知らないようだね?
そうだろうな、でなければそんな風に育つはずもない。
何の影も持たぬ、そんな普通の子供に
アスランから名を聞いた時は、思いもしなかったのだがな、君が彼だとは・・・・・・」
キラ「それは・・・・・・一体、どういう・・・・・・・」
クルーゼ「てっきり死んだものだと思っていたよ。あの双子、特に君はね。
その生みの親であるヒビキ博士と共に、我々の本来の世界での
当時のブルーコスモスの最大の標的だったのだからな!」
アスラン「ブルーコスモス・・・・・・反プラント、反コーディネイター思想の主義者たちか・・・・・・」
クルーゼ「そう、だが、それも当然だよ。キラ・ヤマト・・・・・・
君は人類の夢、最高のコーディネイターなのだから!」
キラ「っ!?」
アスラン「キラが・・・・・・最高の・・・コーディネイター?」
ムウ「ぐっ!奴の与太話なんかに飲まれるんじゃない!」
クルーゼ「ヒビキ博士こそ、君の本当の親なのだよ。今の御両親ではなくてね。
彼が開発した人工子宮。それによって生み出された唯一の成功体が君だ!
数多の兄弟の犠牲の果てにね!」
46
:
蒼ウサギ
:2007/10/23(火) 02:14:56 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
クルーゼが語る衝撃的な話は、キラ達の戦いの手を止めた。
機体越しに伺っても、クルーゼには彼らの驚き具合がよくわかった。
そして、さらに話を続ける。
クルーゼ「“僕は・・・僕の秘密を今明かそう。僕は人の自然そのままにナチュラルに生まれた者ではない。
受精卵の段階で人為的な遺伝子操作を受けて生まれた者”
この言葉を知ってるな?ムウ。そう、あのジョージ・グレンの言葉だよ」
ムウ「貴様っ! 何を!?」
クルーゼ「まぁ、聞きたまえよ、ムウ。そして君も考えてみたまえ。
我々の本来での世界にいた人類最初のコーディネイター、ジョージ・グレン。
彼が世界に公表した遺伝子操作技術は、その後、どこまで闇を広げたと思う?
あれから人は、一体何を始めてしまったか知っているのかね?」
ムウ「・・・・・・コーディネイターブームが起こり、これから生まれてくる自らの子に
優秀な力を与えようと考える親が増加した」
クルーゼ「そうだ。だが、初期の段階では不確定な部分が多く、失敗することが多々あった。
高い金を出して買った夢だ。誰だって叶えたい。誰だって壊したくはなかろう。
ヒビキ博士は最大の問題点を見つけ、それを解消するために研究に挑んだ!
それが夢と望まれて叶えるために!」
だんだんとクルーゼの声が熱を帯びていく。
素顔を仮面に隠していながら、心の中が溢れ出ているようだ。
クルーゼ「命を生み出すのではなく、創り出す・・・・・・クククッ、
それは神への挑戦に等しいことだとは思わないか?
だが、人は神ではない。当然、ヒビキ博士の研究は多くの失敗を重ねたはずだ。
つまり、それだけの犠牲となった命があるということだ!」
まるで舞台で演じる役者のように、クルーゼは語り続ける。
彼自身、昂る高揚感を抑えられないようだ。
クルーゼ「そしてヒビキ博士はついに、その夢を自らの子・・・・・二つのうちの一つにぶつけることにした。
その結果が・・・・・・君だよ、キラ君」
ゲイツのビームライフルの銃口がフリーダムに向けられる。
攻撃をするつもりではない。指の代わりにライフルでフリーダム・・・キラのことを指しているのだ。
クルーゼ「結果、人は何を手に入れたのだ? その手に、その夢の果てに!
知りたがり!欲しがり! やがてそれが何の為だったかも忘れ、
命を大事と言いながら弄び殺し合う! 何を知ったとて!何を手にしたとて変わらない!」
そしてクルーゼは笑いながら、皮肉めいて告げる。
クルーゼ「最高だな、人は」
キラ達には顔が見えないが、クルーゼの口元は歪んでいた。
まるで、全てを嘲笑うかのように・・・・・・
§
=コスモ・フリューゲル=
艦隊を防衛する友軍はいるが、敵は数の利をもって、戦艦を積極的に攻撃してくる。
プロテクトフィールドを持つコスモ・フリューゲルは可能な限り、
他のバリアを持たない艦の盾として前線に出ていた。
由佳「プロテクトフィールドの出力を最大にして、コロナキャノンのチャージ!
敵陣が固まった所へ反撃します!」
アネット「了解!」
神「しかし、自ら前線に飛び出すとは・・・やはり君達兄妹は似ている」
由佳「ちょ! あんな無鉄砲馬鹿兄と一緒にしないでくださいっ!」
顔を赤らめながら抗議する由佳。神はこういう状況にも関わらず楽しげに笑った。
アネット「その、お兄ちゃんだけど・・・バジルに突撃したメンバーからの通信が途絶えたわ!」
由佳「え!?」
神「それは笑えないな・・・艦長、どうする?」
神の問いに由佳は焦る気持ちを抑えつつ、黙考した。
数秒置いて結論を出す。
由佳「彼らを信じましょう・・・・・・どの道、これはスピード勝負!
彼らがバルジを止められなければ・・・・・・私達の負けです!」
覚悟を決めた顔で由佳はこの場を死守することに専念した。
47
:
蒼ウサギ
:2007/10/23(火) 02:15:36 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
§
クルーゼはなおも語り続ける。周囲が激しい戦いを繰り広げていながら、
ここだけはクルーゼの話に衝撃を受けているのだ。
クルーゼ「そして妬み、憎み、殺し合うのさ!・・・ならば存分に殺し合うがいい!それが望みなら!」
高らかに語るクルーゼに、疎く感じたのか、ムウがアグニを撃つ。
ムウ「何を! 貴様ごときが、偉そうに!」
自機に迫るアグニの火線を、クルーゼは紙一重で回避する。
そして、反撃の変わりに言葉を投げつける。
クルーゼ「私にはあるのだよ!この宇宙でただ一人!全ての人類を裁く権利がな!」
ムウ「!?」
クルーゼが何を言っているのか、ムウ、そしてキラやアスランにも理解できなかった。
クルーゼ「覚えてないかな?ムウ。私と君は遠い過去、まだ戦場で出会う前、一度だけ会ったことがある」
ムウ「なんだと!?」
今度はムウが自失しそうな程、驚いた。
それを見透かすように、クルーゼは笑う。
クルーゼ「ふふふふ。私は己の死すら、金で買えると思い上がった愚か者、
貴様の父、アル・ダ・フラガの出来損ないのクローンなのだからな!」
ムウ「なっ・・・・・・!? 親父のクローンだと!?そんなおとぎ話、誰が信じるか!」
クルーゼ「私も信じたくはないがな。だが、残念なことに事実でね!」
ムウ「ぐっ・・・・・・!」
ショックからか、ギリッと奥歯を鳴らす。
クルーゼの笑いはさらに高くなる。
クルーゼ「間もなく最後の扉が開く!私が開く!そして、この世界、いや、全ての世界は終わる!
この果てしなき欲望の世界は!そこであがく思い上がった者達!その望みのままにな!」
狂気に満ちたクルーゼの声は三人の耳に、纏わり付くかのように届いた。
48
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49
:
藍三郎
:2007/10/27(土) 01:07:12 HOST:97.76.231.222.megaegg.ne.jp
=???=
悠騎「こ・・・ここは・・・?」
時空の歪みに呑み込まれた後・・・
バルジに突入した機体群は、
周囲の白い壁面で覆われた、広大なスペースへと転送されていた。
リュウセイ「うう・・・まだ何か頭がぐらぐらするよーな気分だぜ・・・」
エクセレン「二日酔い?若いのに呑みすぎちゃダメよん♪」
キョウスケ「違うだろ・・・」
エッジ「それに、今の発言は自分は若くないと言う事を暗に認め・・・いえ、何でも無いです」
エクセレン「よろしい♪」
オクスタン・ランチャーを向けられ、黙り込むエッジ。
ライ「・・・それより、ここは何処だ?」
アヤ「こちらにあるバルジの構造図には、無かった区画だけど・・・」
突然の状況の変化に、戸惑う面々。
エイジ「・・・似ている・・・」
ぼそりと呟くエイジ。
悠騎「え?」
エイジ「似ているんだ・・・この部屋の様式・・・グラドス星のそれと・・・」
その時・・・
???「選ばれた者よ・・・ようこそ、我が居城へ」
リュウセイ「!誰だ!」
何処からか声が聞こえた瞬間、彼らの前方に、空間転移で次々に機体群が現れる。
戸惑っていた一同も、一気に緊張を強める。
数機の量産型ベルゲルミルと、ビルゴがひしめく中央に・・・
ユーゼス「直接相対するのは初めてだな。
私がネオバディムの総司令官・・・ユーゼス・ゴッツォだ」
中央に陣取ったベルゲルミルから通信が発せられる。
他の機体と違い、そのベルゲルミルは真っ白にカラーリングされていた。
悠騎「あの仮面の男・・・」
ヴィレッタ「彼が、ネオバディムの首領・・・」
ユーゼス「ここまで来た君たちに、まずは歓迎の意を表させてもらおう・・・
しかし、何とも因縁深い面々が集まったものだ・・・フフフ・・・・・・」
ブンドル「運命が結びつけた・・・と言いたそうだな」
悠騎「って、ブンドル!?お前いつの間に・・・!」
自然にこの場にいたレジェンド・オブ・メディチに、悠騎は驚きを隠せない。
ブンドル「フッ・・・私も、君たちとは別のゲートから侵入していたのだよ」
いつもの気障ったらしい態度を取るブンドル。
以前の冬の宮殿の時といい、重要な場面には必ず居合わせなければ気が済まない性分らしい・・・
リュウセイ「御託はいい!俺たちをさっさとここから出しやがれ!!」
ユーゼス「急くな。サイコドライバーよ・・・
まず言っておきたいが・・・私は君たちに対し、友好な関係を築きたいと思っているのだよ」
ライ「何・・・?」
ユーゼス「長きに渡り、私は諸君らの戦いを観察してきた・・・
異星人、そして、数多の異世界の勢力・・・
それらを退けてきたお前たちの力・・・私は高く評価している・・・
我が軍門に下り、ネオバディムの一員として、共にこの世界を変革しようではないか」
エッジ「何だと!」
キョウスケ「降伏勧告か・・・」
ユーゼス「何も隷属を強いようと言うのではない・・・
同志として迎え入れたいと思っているのだ。
ヒイロ・ユイやトロワ・バートン達のようにな」
エイジ「ユーゼス・ゴッツォ・・・貴様の目的は何だ。
世界の変革などと言うが、恐らく単なる世界征服などではあるまい・・・」
ユーゼス「ふふふ・・・異世界からやってきたお前達の技術力・・・そして、異星人の技術。
いずれも、停滞を始めているこの世界を変えるのに大いに役に立とう。
かつての輝かしき栄光の時代・・・黒歴史を復活させるためにな!」
エイジ「!!」
リュウセイ「黒歴史の・・・復活!?」
ライ「それが・・・お前の、ネオバディムの最終目的か」
ついに、ユーゼスの口から、その最終目的が明かされた。
ユーゼス「そうだ。お前達も、月で黒歴史に触れたのなら知っているはずだ。
数多の技術、数多の文明が混合し、果てしなく続く闘争の世界・・・
あれこそ、我らが追い求める理想の世界だ」
50
:
藍三郎
:2007/10/27(土) 01:09:22 HOST:97.76.231.222.megaegg.ne.jp
エッジ「ふざけんな!戦争の続く世界の、どこが理想だってんだ!」
ユーゼス「ふふふ・・・ならば問うが・・・我々が今暮らす世界・・・
そして、君たちがかつて居た世界・・・
それらの高度な文明は、如何にして発展してきた?」
エッジ「ああ?」
ヴィレッタ「・・・・・・戦争・・・ね」
重苦しい口調で、ヴィレッタが呟く。
ユーゼス「そうだ。戦争は・・・人間の闘争本能を刺激し、精神的・技術的な進化を促す。
争いに勝つために、生き残るために・・・人は進化を続け、
結果として、人類の文明は大きく進歩する・・・」
ブンドル「・・・戦争とは、人類の前に常に立ち塞がり続ける壁・・・
だが、その苛烈なる試練を乗り越えてこそ、
人は大きく進歩していく・・・それは実に美しい・・・」
悠騎「おい!お前・・・!」
ユーゼス「流石は元秘密結社ドクーガの幹部。闘争の本質をよく理解しておられるようだ」
ブンドル「フ・・・」
ユーゼス「その最たる例が、君たちも知る黒歴史だ。
私は蘇らせたいのだよ・・・世界が闘争に満ち、人類が最も輝いていた、あの時代を・・・!」
ヴィレッタ「人類のためというけれど・・・
ならば何故、宇宙統合軍と敵対しようとするの?」
ユーゼス「宇宙統合軍こそは、この世界を平穏という碇で繋ぎとめる悪しき元凶・・・
まずはそれを滅ぼしてこそ、新たなる世界の幕開けとなる」
悠騎「そんな事・・・させてたまるか!!」
ユーゼス「心配せずとも、イレギュラーたる君たちの身柄は我々が保障しよう・・・
君たちの返答如何によっては、元の世界に戻る援助も惜しまぬぞ・・・」
ライ「・・・そうやって、OZやザフトの者達を仲間に引き入れてきたわけか」
ユーゼス「本来君たちは異邦人・・・
ならば、元の世界に戻る事を第一に考えるべきだと思うがな」
悠騎「・・・確かにな、けど・・・」
エッジ「あの人達にゃ、こっちの世界に着てから色々世話になってるんでな・・・簡単には見捨てられねぇよ!」
ユーゼス「ふん・・・どうあがこうとも、バルジ砲が発射されれば、全ては終わる」
リュウセイ「だから俺たちは、早くそれを止めなきゃならねぇんだ!
とっとと俺たちをここから出しやがれ!!」
ブーステッド・ライフルを発射するリュウセイ。
周囲のビルゴが動き、ユーゼスのベルゲルミルを護衛する。
ブンドル「ふ・・・残念ながら彼らは、黙って君の言いなりになるような者達ではない。
もしその程度の者達ならば・・・我らドクーガも敗れはしなかったよ」
ユーゼス「レオナルド・メディチ・ブンドル。君は構わないのかね?」
ブンドル「統合軍にさしたる義理はないが・・・
今の私は、ある御方に忠誠を誓った身。
騎士たる者、一度誓った忠誠を曲げるつもりは無い」
ユーゼス「ふん・・・交渉は決裂か」
エクセレン「そういう事よん♪大体、面も晒さない人を信用できると思って?」
ヴァイスリッターのオクスタン・ランチャーが、近くにいたビルゴを破壊する。
ユーゼス「だが・・・まもなくバルジ砲は発射される。
統合軍という後ろ盾を失ったお前達が、この異世界で生き抜いていけるのか?」
リュウセイ「てめぇに心配される筋合いはねぇ!
それに、主砲だって撃たせやしねぇぜ!!」
キョウスケ「俺たちをここから出すつもりが無いならば・・・撃ち貫いて通るまで・・・」
悠騎「そうだ!俺たちの底力を舐めるなよ・・・こんな要塞、すぐにぶち壊してやる!」
ブンドル「君は、そういう力任せの野蛮な作業にだけは向けているからな」
悠騎「お、お前なぁ・・・『だけ』って何だよ『だけ』って・・・」
ヴィレッタ「首領である貴方が直接出てきたなら好都合・・・
貴方を拘束して、主砲の発射を止めさせてもらうわ」
ユーゼス「ふふふ・・・やってみたまえ・・・!
お前たちの力・・・私自身で見定めておくのも悪くは無い・・・」
ユーゼスの周囲を取り巻くベルゲルミルとビルゴが一斉に動き出す。
51
:
蒼ウサギ
:2007/11/08(木) 02:23:14 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
エクセレン「もぅ、またあのMDねぇ」
口調は軽めながらも、内心嫌がりながら、オクスタンランチャーで迫り来るビルゴを迎撃する。
だが、プラネットディフェンサーの電磁防壁はヴァイスリッターの砲撃を悉く無力化していく。
砲撃戦を得意とする彼女にとって、天敵ともいえる相手なのだ。
悠騎「こいつらは接近戦が得意な機体で攻めるべきだ!キョウスケ少尉、リュウセイ!
オレで各個潰していく!」
エイジ「オレもサポートする!」
悠騎「・・・いや、エイジはあの仮面野郎のオフェンスだ!砲撃戦機体はエイジのサポートを頼むぜ!」
エッジ「え、うぇ!?」
矢継ぎ早に指示を飛ばす悠騎。今まで見たことのない彼の様子にエッジは思わず戸惑った。
だが、現状では妥当なその戦術に納得した者はすぐ動いた。
ライ「了解!」
エクセレン「OK〜!あ、でも、キョウスケと離れ離れになるのはちょっと嫌だなぁ♪」
キョウスケ「心配せんでも人形如き、すぐに突破してみせる」
エクセレン「クスっ、待ってるわよん♪」
次々にユーゼスに攻める班とビルゴ部隊を惹きつける班にわかれていく。
ブンドル「フン、猪突猛進な君がまさか部隊全体の戦術を組み立てるとはな・・・宇宙に雨でも降らす気か?」
悠騎「いちいちカンに触る野郎だな。オメェも仮面野郎に行けよ!
雑魚なんかすぐにぶっ潰してオレらも行くから、それまで潰されんなよ!」
少々乱暴ながらも、どこかブンドルの戦闘力を当てにしている節を見せつつ、
悠騎は言い放って、ビルゴ部隊に突撃していく。
その様子を見て、エッジは小さく笑っていた。
エッジ「あいつ・・・・・・ちょっと変わったかもな」
少し見直しつつも、すぐに真剣な顔に戻ってユーゼスのベルゲルミルに迫っていく。
§
=G・K隊、統合軍艦隊 周辺宙域=
一方、衝撃の真実をクルーゼの口から聞かされたキラ達。
全てを話して満足したのか、クルーゼは狂気の笑いを振りまいていた。
愕然とした様子のキラだったが、クルーゼの笑いが鬱陶しいほどに纏わりつき、
それを振り払うようにビームライフルの銃口をクルーゼ機に向ける。
キラ「そ、そんなこと! させるもんか!」
瞬間、放たれたビームはクルーゼのゲイツの頭部の横を掠める。
震えるキラの手は正確な狙いがつけられたなかった。
クルーゼ「フフフ、貴様等だけで何が出来る!もう誰にも止められはしないさ。
この宇宙・・・いや、世界を覆う憎しみの渦はな!」
反撃とばかりにゲイツのビームライフルを向ける。
それに気づいたアスランのジャスティスがビームライフルを連射し、威嚇する。
クルーゼ「フッ、アスラン!友達の真実を知ってどんな気分かね?」
アスラン「くっ!」
言い返す言葉は見つからないものの、アスランは行動で己の感情をぶつけた。
ビームサーベルを抜き、かつて上官だったクルーゼに斬りかかる。
ゲイツのビームクローでそれを受け止めたクルーゼはまた同じように笑う。
クルーゼ「多くの命を吸って生まれた彼を、君はどう思うかね?」
アスラン「・・・・・・・・・」
問われてアスランは想った。
彼と一緒に過ごした学生時代。
桜吹雪の中でトリィをプレゼントした時。
再会した時。
敵同士として戦った時。
キラとの想い出を思い出すうちにアスランは気持ちの奥底にあった迷いが吹っ切れたような気がした。
だから、クルーゼに断言できた。
アスラン「それが真実でも、オレはあいつの友達なんだ!」
だから守る。共に戦う。
その決意を改めるかのように、アスランはビームサーベルを今一度大きく振って、
ゲイツを弾き飛ばした。
52
:
<削除>
:<削除>
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53
:
藍三郎
:2007/11/11(日) 10:44:44 HOST:97.76.231.222.megaegg.ne.jp
ベルゲルミルに肉薄するレイズナーMkⅡ。
周囲を取り巻く量産型ベルゲルミルが援護に回るが・・・
エクセレン「はいは〜い、そこ、通行の邪魔ですよ〜〜♪」
オクスタン・ランチャーの銃弾が量産型ベルゲルミルを撃ち抜く。
さらに援護射撃が降り注ぎ、進路上の敵を尽く排除していく。
エイジ「皆、すまない!」
エッジ「なぁに、後方支援はメテオゼファーの十八番だからな!」
バインドパネルによる跳弾を利用しつつ、敵機を撃墜していくエッジ。
エイジ「ユーゼス!この地球に戦乱を引き起こそうとする貴様を、捨て置くわけにはいかない!」
ついにベルゲルミルへと到達したMkⅡは、レーザードライフルを連射する。
その精密な射撃を、モビルドールとは段違いの運動性で回避、あるいはかすり傷に留めるユーゼス。
多少受けた傷ならば、マシンセルでたちどころに修復される。
ライ「あの動き・・・ネオバディム首領の名は、ただのお飾りというわけでは無さそうだな」
これまで自分達が戦ってきたエースパイロットに引けを取らぬ実力を、あの仮面の男は有していた。
レイズナーMkⅡを視界に収めながら、ユーゼスは仮面の下で笑う。
ユーゼス「くくく・・・そうか。
君がケン・アスカとアルバトロ・ミラ・アイラの息子か・・・」
エイジ「!?」
突然父と母の名を出され、エイジは一瞬困惑する。
ユーゼス「あれからもう十年以上経つのか・・・何もかも懐かしい」
ベルゲルミルを繰りながらも、ユーゼスは訥々と語りだす。
ユーゼス「十数年前・・・他星系への侵出に意欲を燃やしていたグラドス星では、
未開拓の文明を調査する試みが行われていた・・・
その一環として、この地球にも、グラドスの調査隊が派遣された・・・
もっとも、彼らが地球に目をつけたのは偶然ではないがな・・・」
どこか含みを持たせて言うユーゼス。
ユーゼス「地球圏での調査中、彼らは、月で遭難したある地球人を保護した・・・
その男の名は宇宙飛行士、ケン・アスカ・・・
後に、調査隊のアルバトロ・ミラ・アイラと結ばれ、一児をもうける・・・」
エイジ「それが俺だ・・・だが、何故その話を知っている?しかも・・・」
ユーゼス「まるで“見てきた事のように語る”・・・か?
ふふふ、そうだ、それが正解だよ。“我が同胞”」
エイジ「!!それでは、貴様は・・・!」
ユーゼス「そう。君と同じだアルバトロ・ナル・エイジ・アスカ。
私はこの星の人間ではない・・・グラドス星から来た、異星人なのだよ・・・!」
54
:
藍三郎
:2007/11/11(日) 10:45:44 HOST:97.76.231.222.megaegg.ne.jp
アヤ「貴方・・・グラドス人だったの?」
エイジ「そうか・・・ネオバディムとグラドスの結託が何故成立したか・・・
その疑問の答えが、お前の素性だったわけだな」
ユーゼス「その通りだ」
不自然な結託。その謎を解く鍵が、ユーゼスが異星人であったと言う事実だった。
エッジ「てめぇ!グラドスと結託して、この星を奴らに売り渡すつもりかよ!」
ユーゼス「ふん・・・実に短絡的な思考だな」
仮面の下で、鼻を鳴らすユーゼス。
ユーゼス「私の正体を利用して、彼らと一時的に手を組めないかと思ったまでの事・・・
向こうも、それだけで私を信用しきるほど愚かではあるまい」
エイジ「・・・・・・」
ユーゼス「彼らに戦力を提供したのは・・・
作戦発動のための“盾”になればよいと考えたからだ。
それに・・・私の望みは地球征服などではない・・・」
ユーゼス「私はかつて、グラドス星で他星系の調査・研究を行っていた科学者だった・・・
そして、地球暦でおよそ十数年前・・・
私はグラドスの地球調査隊に参加し、この星を訪れた・・・君の母親と共にな」
エイジ「母さんと・・・」
エイジは攻撃の手を緩めない。
それでも、ユーゼスは攻撃を回避しながら、話しかけ続ける。
ユーゼス「当時我々は、月を拠点として地球文明の調査を行っていた・・・
その過程で、私は“あれ”を知ったのだ・・・
この星に封印された禁忌・・・黒歴史をな!」
エイジ「黒歴史・・・!」
ブンドル「では、貴公は冬の宮殿に入ったのか?」
冬の宮殿には、女王であるディアナの許可が無い限りは入れないはずだ。
その上、周囲には防衛用の無人機まで配備されている。
ユーゼス「いや・・・月のマウンテンサイクルにて、偶然見つけたのだ。
“ある機動兵器”の中に残されていた、黒歴史のデータを・・・」
エイジ「ある・・・機動兵器?」
ユーゼス「それについては、今語るべき時ではない・・・
データの方は、冬の宮殿のそれと比べれば、断片的な事実の集まりに過ぎなかったが・・・
全容を把握するには十分だった・・・」
量産型ベルゲルミル達を前面に出し、自らは後方へと下がるユーゼス。
ユーゼス「私はそこで、黒歴史に・・・
失われた地球の文明に魅せられたのだよ!
解析を進めれば進めるほど・・・
私の中で、黒歴史への興味関心が膨れ上がっていった・・・」
エイジ「・・・・・・」
ユーゼス「私は残念でならなかった。
あのような素晴らしい時代が、突然終焉を迎えてしまった事を。
そして・・・私は決意した。再び、この世界に黒歴史を甦らせてみせると!」
ユーゼス「私は・・・調査中の事故で宇宙漂流したと見せかけて、自ら消息を絶った。
もちろん・・・黒歴史の事を知る者は、私だけだ。
そして、調査隊が母星に戻った後も、密かに地球へ潜伏し・・・
何度も名を変えながら、計画を実行に移す準備を着々と進めて行った・・・」
ライ「そして、結成したのが、ネオバディムか・・・」
ユーゼス「そうだ。さらには、<アルテミス>の者達と接触し・・・
かつての黒歴史の似た文明を持つ並行世界から、多くの者達を呼び寄せる事に成功した・・・」
ヴィレッタ「だから・・・OZやザフトなど、
ガンダムやモビルスーツが存在する世界の人達が、多く集められた・・・」
ライ「俺達の世界とこの世界が似ているんじゃない・・・
この世界に、俺達の世界が似ているからこそ・・・俺達は召喚された・・・というわけか」
ユーゼス「<アルテミス>には、別の思惑があるようだがな・・・
失われた歴史については、彼らも興味を抱いていた・・・
見返りの一つとして、私の研究成果を提供してやったよ」
エッジ「ぐだぐだ言ってやがるが、結局はてめぇもこの星を好き勝手にしたいだけじゃねぇか!」
ユーゼス「違うな・・・私はグラドスのように、
地球文明を矯正するなどと、愚かな事はしない。
むしろ、より発展させたいのだ。
かつての黒歴史・・・いや、それを超える文明をこの目で見たい・・・!」
仮面から聴こえる声のトーンが上がる。己の願望に陶酔しているようだった。
ユーゼス「それが成った時・・・人類は大いなる繁栄を手にするだろう・・・
私の描く理想世界は、最終的には人類全ての幸福に繋がるのだ・・・!」
55
:
蒼ウサギ
:2007/11/16(金) 01:20:06 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
エッジ「何が幸福だ馬鹿野郎!!」
ユーゼスの秘密。そしてその目的を知った一同に驚きはあった。
だが、その認めることの出来ない企みに怒りが先立ち、エッジが吼えた。
エッジ「確かにあんたの言う通り、戦いで人類の技術が発展する!
オレ達が乗ってるこの機体も・・・戦いから生まれた産物だ!」
ユーゼス「そう。相手より少しでも優れたモノ・・・武器を、強い力を手にしようと考えた時、
技術は発展する!戦いの連鎖は革命の連鎖でもある!」
エッジ「けどよ!・・・・・・その中で泣く奴がいる・・・・・・悲しみが生まれ、憎しみも生まれる!」
ユーゼス「避けられぬ痛みだ・・・だが、だからこそ幸福というものを味わえる」
エッジ「るせぇ!オレはそれが嫌だからG・K隊として戦ってんだ!
誰かの勝手な思想で関係ない誰かが傷つく・・・・・・んなの、黙ってみてらるわけないだろうが!」
メテオゼファーの翼を模っていた四枚のバインドパネルのうち、一枚が射出される。
そしてほぼ同時にメテオゼファーに握られているスナイパーライフルのビームが上方に向けて放たれた。
それが上方にある先ほど射出した一枚のバインドパネルに反射する。
反射し、軌道をかえたビームは量産型ベルゲルミル群を抜け、後方のユーゼスのベルゲルミルの肩に直撃する。
ユーゼス「・・・・・・・」
軽い衝撃はあったものの、ダメージ自体は少なく、マシンセルによる再生がすぐに行われる。
が、エッジもそれはわかっていて攻撃した。
どうしても一撃見舞わなければ気がすまなかったのだ。
エッジ「こっちは時間がないんだ・・・すぐに終わらせてやるぜ!」
力強く宣言したその時だ。
それに続くかのように声が響いた。
悠騎「全くだぜ!」
語尾と同時に何かが前方に出ている量産型ベルゲルミルの一体にぶつけられた。
先ほどまで悠騎たちが相手をしていたビルゴの残骸だ。
悠騎「よぉ、仮面野郎。どっかの気に入らない奴みてぇに語ってたじゃねぇかよ!
その間にてめぇの駒は潰させてもらったぜ」
それを証明するかのように、キョウスケのアルトアイゼン・リーゼ、
リュウセイのR−1もその場に合流してきた。
キョウスケ「ユーゼス・ゴッツオ・・・・・・貴様のカードは見せてもらった。
あとは貴様がジョーカーを切る前にこちらがアガるまでだ!」
リュウセイ「てめぇの野望なんか、バルジごとぶっ潰してやるぜ!」
ユーゼス「フフフ、その意気・・・闘争本能を掻きたたせるその闘志こそ、黒歴史再来に必要なものだ」
悠騎「言ってやがれ・・・・・・さぁ、第二ラウンドだ!」
量産型ベルゲルミルが動くと同時に、悠騎達も武器を構え、迫っていく。
バルジ再発射までのタイムリミットは・・・・・・刻々と近づいている。
§
一方、戦いの舞台をバルジ内部に移したトレーズと五飛はなおも激しい攻防を繰り広げていた。
トレーズ「このような場所では君の太刀筋も鈍ると危惧していたが、いらない心配のようだ」
五飛「ぬかせ!その余裕がいつまでも続くと思うな!」
その言葉どおり、ビームトライデントの矛先がトールギスⅡの頭部を掠める。
あわや貫かれんばかりの鋭い突きだった。
だが、トレーズの顔は相変わらず涼しいものだ。
トレーズ「さすがだ張 五飛。君の刃は徐々に・・・そして確実に私の命に迫りつつある」
褒め言葉を述べられても、五飛には皮肉としかとれない。
歯軋りを鳴らし、何度も何度も突きを繰り出す。
それを紙一重で回避しつつ、トレーズはある人物と交信しようとしていた。
そう、ユーゼス・ゴッツオとだ。
だが、その交信は繋がらない状態にあった。
トレーズ(この戦域に彼はいないということか?・・・・・・撃墜された・・・とは考えにくいな)
腹の見えない彼の動向が気になるトレーズの顔に、先までの笑顔はない。
56
:
藍三郎
:2007/11/24(土) 19:02:32 HOST:97.76.231.222.megaegg.ne.jp
=宇宙要塞バルジ 内部=
ユーゼス「まだ理解できぬか・・・
一度闘争本能に火がつけば、決して後戻りする事はできん。
人間とは本質的に、平穏よりも闘争を望む生き物なのだよ」
その時・・・
トレーズ『だからこそ、黒歴史を復活させる・・・それが貴方の真の望み・・・』
ユーゼス「!トレーズ・クシュリナーダ、いつから・・・」
突然通信回線に入ってきたトレーズに、ユーゼスはやや面食らう。
トレーズ『失礼・・・貴公の安否が気になるあまり、
司令部を通して強制的に通信を接続させていただきました』
ユーゼス「ふ・・・まぁよい。いずれ、貴公には話すつもりでいた事だ。
私の大望を。黒歴史の復活という、夢を」
トレーズ『・・・・・・』
ユーゼス「トレーズ・クシュリナーダ・・・
君は、人間同士の戦いは崇高である、と考えていたはずだ。
ならば、これからもこの私と共に歩んでくれるな?」
トレーズは数秒の沈黙の後、こう答えた。
トレーズ『残念ながら・・・私と貴公とでは、道を同じくする事はできないようだ』
ユーゼス「何?」
トレーズ『貴公は、人間というものを理解しきれていない・・・
いや、私とは、理解の方向が違う・・・というべきか。
争うばかりが、人間の全てでは無い・・・私はそう考えている』
ユーゼス「ゆえに、共に歩む事はできないと?」
トレーズ『ユーゼス閣下・・・この世界に来た我々を、
貴公が保護および支援してくれた事は、幾重にも感謝している・・・
だが、貴公が<アルテミス>と通じ、
意図的に我々を招聘したとあらば・・・それは別の意味を帯びてくる・・・』
ユーゼス「・・・・・・」
トレーズ『貴方は我々を元の世界に帰すつもりなど毛頭無い・・・
黒歴史を復活させるために、ずっとこの世界に縛り付けるつもりだ』
今度はユーゼスが沈黙する側だった。
ユーゼス「どうしても、私に背くというのだな・・・?」
トレーズ『私と貴公の信念は違う・・・
貴公に従う事は、これまで私に尽くしてくれた同志達を裏切る事に繋がる・・・』
互いの間に沈黙が流れる。
ユーゼス「分かった・・・ならば、何も言うまい」
短いやり取りだったが、ユーゼスはトレーズとの間に、
決して埋めえぬ溝がある事を理解した。
決別は済んだ。後は自分の戦いに戻るだけだ。
ユーゼス「六つのしもべ達よ・・・我が敵を討て!」
背部のデバイスを発射するベルゲルミル。
それと同時に、他の量産型ベルゲルミルも同じ行動を取る。
ユーゼス「シックス・スレイブ!!」
多数のベルゲルミルから、一斉にシックス・スレイブが放たれる。
デバイスは、G・K隊がいる地点を中心として、円を描くように周囲を旋回し始める。
キョウスケ「!全員、直ちに散開しろ!一網打尽にされるぞ!」
悠騎「了解っ!!」
咄嗟に離脱する一同。
瞬間、陰陽のマークを象った、広大なエネルギー領域が発生する。
この陰陽の結界に捕らわれた機体は、尽く撃滅させられるだろう。
キョウスケの言ったとおり、“一網打尽”にするにふさわしい攻撃だ。
ユーゼス「・・・外したか」
ライ「それが貴様の命取りだ!」
リュウセイ「行くぜぇぇぇぇぇ!!」
反撃とばかりに、一気に敵陣へと切り込む機動部隊。
取り巻きの量産型ベルゲルミルを、残らず破壊していく。
悠騎「喰らえっ!!」
ブンドル「フッ・・・!」
ブレードゼファーとレジェンド・オブ・メディチが同時に飛び込み、
ユーゼスのベルゲルミルの片腕と、背部のシックス・スレイブを切り裂く。
ユーゼス「!!!」
エクセレン「あらま、あの二人、意外にも息ぴったりですこと♪」
ブンドル「フ・・・いささか、いや、かなり不本意ではあるがな」
悠騎「それはこっちも同じだっつーの!」
口喧嘩をしつつも、二機は素早くターンして、ユーゼス機に迫る。
後は敵機を捕獲して、バルジの主砲を止めさせるだけ・・・
57
:
藍三郎
:2007/11/24(土) 19:04:07 HOST:97.76.231.222.megaegg.ne.jp
しかし・・・
ブンドル「・・・・・・!」
二機の目前に、数本の光の矢が飛んでくる。
咄嗟に回避する二機だが、その隙を突いて、
突如乱入してきた赤い機体が、ベルゲルミルを押し退けた。
悠騎「!あいつは・・・!」
赤い機体・・・それは、ルシアの駆るベルゲルミル・アスラだった。
ユーゼス「ルシアか・・・」
ルシア「ユーゼス様・・・あまり無茶をされては困りますな」
ユーゼス機を抱えたまま、ルシア機は大きく距離を取る。
ユーゼス「すまなかった。少々遊びが過ぎたようだ・・・
だが、一度は己自身で感じ取っておきたかったのだ。
これから私が作り出す闘争の世界。その本質を・・・」
ルシア「ならば、もう十分でしょう?
準備は既に完了しています。早々にこの場から離脱すべきかと・・・」
ユーゼス「・・・分かっている」
口調は名残り惜しそうだったが、迷う事は無かった。
ユーゼス「空間転送装置を『メイガス』に接続・・・
転送位置固定・・・クロス・ディメンション・システム、起動」
エッジ「!!あいつら!逃げるつもりか!!」
二機のベルゲルミルの周囲の空間が歪む。
<アルテミス>の機体が使うそれと、全く同じ現象だった。
エクセレン「ちょ・・・待ちなさいよ!!
あんた達から喧嘩吹っかけといて、それは無いんじゃない!?」
ルシア「お怒りはごもっともです。Ms.ブロウニング・・・
しかし、こちらにも事情がありますので」
悠騎「ここまで来て・・・逃がすかよ!!」
猛追する一同だが、ルシアが放ったヴァーテュー・アローによって阻まれる。
ユーゼス「一時のさらばだ、諸君。
いずれこの世界は、否応無く黒歴史に染められる・・・それは君達も例外ではない・・・!」
捨て台詞を残して、ベルゲルミルとベルゲルミル・アスラは、完全にこの空間から消失した。
悠騎「ちっくしょぉぉぉぉぉっ!!!」
アヤ「そんな・・・ここまで来て・・・」
後一歩のところまでユーゼスを追い詰めながらも、逃してしまった。
もう残り時間は少ない・・・深い絶望が一同を襲う・・・
その時・・・
エイジ「・・・?緊急通信・・・だと?」
トレーズ『やぁ・・・G・K隊の諸君・・・』
悠騎「こいつは!」
ライ「トレーズ・クシュリナーダ・・・OZの総帥か」
トレーズ『詳しい話をしている暇は無い・・・
これから私が示す座標に急行したまえ。
そこにユーゼス・ゴッツォと・・・このバルジを司るシステムが存在する』
キョウスケ「何・・・・?」
ライ「お前はネオバディム側の人間だろう。何故俺達にそれを教える・・・?」
トレーズ『疑うのは当然だろう。だが、君達には時間が無いはずだ。
信じる、信じないの選択は、君達に託すとしよう』
それだけを言って、トレーズは通信を切った。
リュウセイ「どうする・・・?」
ヴィレッタ「トレーズ・クシュリナーダ・・・
ヒイロ達の話では、彼は密かに私達に力を貸していたらしいわ。それなら・・・」
悠騎「どの道、時間が無い・・・ここは信じて賭けに乗るっきゃねーな!」
アヤ「だけど、この座標に行くには、障害物が多すぎてとても残り時間では・・・」
エイジ「いや、問題ない・・・」
エイジは短く呟くと、レイズナーMkⅡを変形させる。
エイジ「レイ、V−MAXIMUM、発動!!」
レイ『レディ!!』
蒼いパウダー粒子フィールドが、MkⅡの全身を包んでいく。
エイジ「ちょうど残り3分弱か・・・このまま一気に突っ切るッ!!」
いきなり最大加速で壁へと突っ込むレイズナー。
蒼き流星となったレイズナーの前に、壁は一撃で粉砕され、空洞が出来上がる。
このまま障害物を全て破壊して、最短のルートを突き進むつもりだ。
悠騎「よぉし、俺も行くぜ!!うぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
見開かれた悠騎の瞳が紫に染まる。<アンフィニ>の発動である。
<ハーメルシステム>を起動させたブレードゼファーも、
V-MAXIMUMに追随するスピードで続く。
58
:
藍三郎
:2007/11/24(土) 19:05:22 HOST:97.76.231.222.megaegg.ne.jp
=コスモ・フリューゲル=
外部では、バルジを巡る死闘が今も続いていた。
だが、主砲発射までのタイムリミットが迫る中、数名の顔に疲弊と諦めの色が濃くなる。
アネット「もう、時間が無い・・・」
最前線にいるメンバーも、何とか主砲を破壊しようと奮戦しているが、
モビルドールやSPTの防衛、
そしてバルジ全体を取り囲むバリアに阻まれ、決定打を与えられずにいた。
神「こりゃあ・・・いよいよ駄目かもわからんね・・・」
由佳「お兄ちゃん・・・」
兄を初めとするメンバーが、バルジに突入した事は知っている。
外部からの突破口が開けぬ以上、一縷の望みを彼らに託すしかなかった。
隔壁を物ともせず、破壊して突き進むレイズナーとブレードゼファー。
一秒ごとに、バルジの最深部へと近づいていく。
レイ『前方ニ、超大型ノ熱源反応ヲ確認』
エイジ「動力部か・・・?彼の言は正しかったようだな」
やがて、最後の隔壁を突破し、薄暗く開けた空間に出る。
悠騎「!!な・・・何だありゃ!?」
広い室内を、何本ものチューブが埋め尽くしている。
そのフロアの中心に・・・それは鎮座していた。
とぐろを巻いた蛇のような下半身。女を象ったと思われる上半身。
それら二つが結合した異形の女神像が、二人の眼前に現れる。
ルシア「ユーゼス様、残る構成員のバルジからの脱出、完了いたしました。
搭載しているモビルドールも全て出撃済み・・・
要塞の制御も、全て自律回路に切り替えております」
ユーゼス・ゴッツォは、異形の像の内部にいた。
傍にはルシアのベルゲルミル・アスラが寄り添っている。
ユーゼス「よし・・・・・・後はこの『メイガス』を・・・」
その時・・・
エイジ「おおおおおおおっ!!!」
悠騎「はぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ユーゼス「!!!」
超高速でこちらへ突撃してくる二機に、ユーゼスは一瞬我を失う。
あの巨大な像が何なのか・・・考えている暇は無い。
ようやく手繰り寄せた希望の糸・・・それを途切れさせるわけにはいかない――――!
レイズナーMkⅡの体当たりが、
ブレードゼファーの巨大化させたDソードが、それぞれ女神像に直撃する。
ルシア「ユーゼス様!!」
=宇宙要塞バルジ 外周部=
そして・・・
彼らの奮闘は、確実に外部へと影響を与える事となった。
パルシェ「!!バルジを包む、エネルギーフィールドの消失を確認!!」
それは、数秒にも満たぬ間隙だった。
ゼンガー「この期を逃してはならん!!今こそ乾坤を賭す時!!」
だが、片時も諦めずに戦っていた戦士達は、
その数秒の隙を見逃す事は無かった。
斬艦刀を極限まで延長させるゼンガー。
ゼンガー「届けッ!雲耀の速さまで!!」
狙いはただ一点・・・今にも発射寸前の、バルジの砲塔のみ。
ゼンガー「チェストォォォォォォッ!!!」
最大加速で切り込み、大太刀を砲身へと振り下ろす。
真吾「ゴーフラッシャー・スペシャル!!」
ドモン「石破ッ!!天驚拳―――――!!!」
ロム「ゴッドハンド・スマァァァァッシュ!!」
続けて後方からの総攻撃が決まり・・・
バルジの砲塔は、根元から断ち切られ、破壊された。
59
:
藍三郎
:2007/11/24(土) 19:06:15 HOST:97.76.231.222.megaegg.ne.jp
一方・・・・・・
ルシア「ユーゼス様!!」
ユーゼス「・・・問題ない。
衝撃で、要塞の遠隔制御システムがやや損壊したぐらいか・・・」
さすがは一流の科学者だけあって、即座に損壊状況を把握した。
ユーゼス「しかし、何故この場所が・・・・・・」
答えを導き出すのに、そう時間はかからなかった
ユーゼス「トレーズ・クシュリナーダか・・・」
このブロックの存在は彼にも伝えていないが・・・
彼がバルジの事を独自に調査し、『メイガス』の居場所を突き止めた可能性はある・・・
悠騎「ぐ・・・やったか?」
由佳『お兄ちゃん!!』
コスモ・フリューゲルからの通信が届く。
エイジ「外との通信回線も復帰したみたいだな・・・」
由佳『バルジ主砲の破壊を確認!バトル7は健在!みんながやってくれたよ!!』
悠騎「そうか・・・」
吉報に、安堵の声を漏らす悠騎。
全ての力を出し切った後で、とてもではないが、諸手を上げて喜ぶ元気は出なかった。
一方、同様の報告を、ユーゼス達も受け取っていた。
ルシア「ユーゼス様、いかがいたしますか・・・?」
ユーゼス「この『メイガス』は我が計画最大の要・・・万が一にも失うわけにはいかぬ。
ここは大人しく退くとしよう・・・」
ルシア「は・・・・・・」
ユーゼス「予定通り転移を行う。後は任せる」
ルシア「かしこまりました」
エイジ「ユーゼス!その機体は一体・・・」
ユーゼス「ふ・・・これこそ、我が切り札にして、黒歴史の再来をもたらすもの・・・
この宇宙要塞バルジも、これを復活させるための隠れ蓑に過ぎん・・・」
エイジ「何・・・?」
ユーゼス「この『アウルゲルミル』を修復させるには、
バルジの施設が必要だったのでな・・・
しかし、復旧が九割方済んだ今、その必要も無くなった・・・」
女神像を取り囲む空間が歪み始める。彼は再び空間転移を行うつもりだ。
悠騎「逃げる気かっ!」
ユーゼス「二度も逃げ出すなど、いささか醜態を晒すようであるがね。
今回は、君達に白旗を揚げようではないか・・・」
仕掛けようとするエイジだが、
ルシア「させませんよ、Mr.アスカ」
ベルゲルミル・アスラに阻まれ、それも叶わない。
ユーゼス「なお、バルジには最終防衛プログラムを発動しておいた・・・
例えこの『アウルゲルミル』が無くとも、
バルジはその機能を維持し続ける・・・
完全に破壊しつくされるまで、バルジもモビルドールも侵攻を止める事は無い・・・」
エイジ「何!!」
悠騎「けっ・・・最悪の置き土産だぜ・・・」
ユーゼス「さらばだ、諸君。
願わくは、次は黒歴史の復活した世界で巡り合いたいものだ。
敵としても、味方としても・・・」
空間の歪みが最大に達したところで、ルシア機もろとも、女神像は姿を消した。
60
:
ニケ
:2007/11/26(月) 16:17:25 HOST:zaq3d738aa9.zaq.ne.jp
=バルジ周辺宙域=
クルーゼ「バルジは落ちたか。
ユーゼスも案外と不甲斐無い」
砲塔を落とされ、バリアを剥がされ丸裸となったバルジを見てクルーゼは鼻を鳴らした。
曲がりなりにも同胞と手を結んだ相手に対するその態度に、彼の奥底に潜む憎悪と狂気に色を見て取ったキラは愕然とする。
本気なのだと、先に語った彼の世界を道連れに滅びよという怨嗟の思いは本物なのだと思い知らされ、人間はかくも醜く世を呪えるのだと思い知らされたのだ。
ムウ「貴様らの負けだ!
大人しくくたばりやがれ」
ランチャーストライクのアグニを跳ね上げ、発射するも、クルーゼは高笑いと共にそれを回避してのける。
クルーゼ「言ったろう!
最後の扉はまもなく開くと!
グランドフィナーレの舞台はここではないのだよ!」
嘲る様な笑いと共に、そう告げるクルーゼ。
同時に彼の目は、周辺に散らばる僚軍の動きを観察する。
クルーゼ(撤退命令が出ているな。後は機械人形共に任せよという事か・・・)
部隊は大きく分けて二つ。
トレーズを中心として集まる反ユーゼス派。
そしてドミニオンを中心とするルシアの部隊のいずれかだ。
尤も、多くの兵がどちらに付くかで迷いを生じ、右往左往しているのが実状のようだ。
クルーゼ「ふん、つい先ほどまで手を取り合い共闘してきたというのに。
随分と滑稽な事だ」
「そうは思わないかね?」と目の前に立ち塞がる三人に向けておかしさを堪えきれないとばかりに問いかけるクルーゼ。
クルーゼ「これはこの世界の縮図だよ。
諸君らもいずれ知るだろう!
人が歩む愚かな自滅の道を!」
そう宣言して、神経を犯すような狂気の笑いを残して、ラウ・ル・クルーゼは宇宙の闇へと姿を消していった。
クルーゼ(さて、間も無く最後の時だが・・・それまではどこに身を寄せるのが賢明かな?)
§
シャギア(ルシア=レッドクラウドとユーゼス=ゴッツォがついに馬脚を現したか・・)
オルバ(これでネオ・バディムの同盟も終わりのようだね)
組織は真っ二つに割れる事になるだろう。
戦争の混乱は、ますますその度合いを色濃くしていく事になる。
シャギア(我らも退け時か)
オルバ(それで、結局どちらに付く?)
シャギア(そうだな・・・)
§
ナシュトール「・・・・撤退指令。
バルジももう終わりという事か・・・」
OADCASを無造作に肩に担ぎ、ナシュトールは冷めた目で落ち逝くバルジを見やった。
これ以上、この宙域に留まるのは無意味だろう。
ならば自分はどちらに付くべきか?
ナシュトール「ふん・・・」
考えるまでも無い。
自分を拾ったのはあのルシアとか言う男だ。
義理は無いが、満足に機体を整備できるのは奴の下だけだろう。
そう結論付け、ナシュトールは今一度、先程まで敵対していた相手に振り返った。
アイラ「はあ・・・はあ・・・」
コクピットで荒い息を付くアイラの機体は、イスカの剣に切り刻まれ、半壊寸前まで追い込まれていた。
ナシュトール「やはり貴様では役者不足だったな・・・」
心底落胆したような声でそう告げるナシュトール。
その声音には、どこか空しさの様なものが漂っていた。
この胸中を吹き抜ける虚無感は何なのか・・・・
自分でも答えの出せぬまま、ナシュトールはその場を後にした。
アイラ「はあ、はあ・・・・くそ!」
ダンッ!とコクピットの壁を拳で殴りつけるアイラ。
勝てなかった・・・。
ここまで力の差があるとは・・・
ミキ「アイラさん、これ以上の戦闘は無理です。
一度帰還してください」
悔しさに奥歯を鳴らしながら、アイラは母艦へと帰還していった。
61
:
蒼ウサギ
:2007/12/01(土) 22:49:51 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
その一方、一対一の激戦を繰り広げていたヒイロとゼクスだったが、
互いの攻め手が一呼吸ついたところで、ゼクスに暗号通信が送られた。
ゼクス「撤退命令・・・・・・バルジが堕ちたのか・・・?」
ヒイロ「・・・・・・」
そのほぼ同タイミングで、ヒイロの方にも味方艦隊からの通信で、バルジ制圧の旨が告げられる。
だが、戦いの手が止まっても、ヒイロは油断のない眼でゼクスのウイングゼロを見据えている。
組織としては勝利しているが、彼自身の“決着”はまだついていないからだ。
ゼクスを倒す。
それが今のヒイロの目的なのだ。
ヒイロ「貴様をここで逃すわけにはいかない・・・!」
再度、エピオンのスラスターを吹かし、ウイングゼロに肉迫する。
真っ向から振り下ろされるビームソードをウイングゼロはビームサーベルで受け止める。
ゼクス「フッ・・・・・・敵は倒せるときに倒すというわけか・・・!」
口元こそ笑みを作っているが、ヒイロの戦士としての執念にゼクスは焦りの色が見え隠れしていた。
この相手では簡単に退かせてはくれない。
モビルドールはまだ戦闘を続けているが、指揮官クラスの人間がいなくては一掃されるのは時間の問題だろう。
ゼクス「戦場での孤立は辛いものだな・・・・・・!」
皮肉と自虐を混ぜたような物言いをして、エピオンのビームソードを捌き、距離を取り、
両肩のマシンキャノンで牽制する。
相手の隙をついて後退するつもりなのだが、
それを簡単にさせてくれない相手であることをゼクスは自覚していた。
ヒイロ「っ!」
ゼクスの牽制に軽く舌打ちしながらも、強引に距離を詰めるヒイロ。
中距離武器であるヒートロッドを伸ばし、ウイングゼロを絡めとろうとするが、紙一重でかわされてしまう。
ヒイロ「遅いぞエピオン!・・・・・・奴の反応速度を越えろ!」
微かな苛立ちを見せつつ、なおもゼクスに迫る。
が、次に聞こえてきた味方からの通信でヒイロの執着心が僅かに削がれる。
それは、星倉悠騎の声だった。
§
=コスモ・フリューゲル=
由佳「えぇ!? まだなの!?」
バルジ主砲を破壊して、喜びに浸っていたのも束の間、
兄から送られてきた通信に由佳は驚きと焦りを露にした。
悠騎『ああ・・・・・・あの仮面野郎言ってやがった!』
バルジの自律回路のプログラムを走らせたというユーゼスの言葉を悠騎はすぐに由佳達に伝えた。
その報告は安堵に浸っていた味方に再び緊張感を走らせた。
由佳「も、モビルドールの方はなんとかなるかもしれないけど・・・・・・バルジは!?」
悠騎『すぐにでもバラバラにしなきゃ、内部エネルギーを暴発させて大爆発か、
バルト7に突っ込むかもしれねぇ!』
由佳「そんな!?」
主砲の脅威がなくなったと思えばこれだ。
だが、それを嘆いている間にも最悪へのカウントダウンは進んでいく。
皆、それを理解しているのか、各地に展開している味方機はモビルドールを次々に落としていき、
バルジ破壊へと向かおうとしている者がいる。
62
:
蒼ウサギ
:2007/12/01(土) 22:50:22 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
由佳「間に合うか、間に合わないか考えている暇はない・・・・・・!
フリューゲル全速前進!艦全武装、発射準備!」
神「むぅ、守るより攻めろという奴か・・・」
由佳「はい・・・・・・出し惜しみはしません!ありったけの火力をぶつけてバルジを沈めます!」
そう決意した由佳。
主砲のエネルギーをチャージし、目標をバルジへと定める指示を下す。
その時だ、アネットが泡を食ったような声を上げた。
アネット「由佳ちゃん!本艦の主砲射線上に味方機が!?」
由佳「え!? 誰ですか!?」
アネット「これは・・・・・・ヒイロくんよ!」
由佳「すぐに退避命令を・・・・・・・」
下すまでもなかった。
次の瞬間、由佳たちはモニターに映った映像を思わず疑ってしまった。
§
ヒイロ「・・・・・・・・・・・」
悠騎の通信を聞いたヒイロは何を思ったか、ゼクスとの戦いを放棄し、
単身、バルジへと進撃した。
ガンダムエピオンのMA形態は他のモビルドールの妨害をスピードで突破し、
バルジ眼前へと躍り出た。
そして、MS形態へと変形すると、ビームソードを高々とかざした。
ヒイロ「必要ない・・・・・・・この世界にとって、貴様等はっっっっ!」
まるでヒイロの叫びに呼応するかのようにビームソードの刀身が巨大化する。
ヒイロがビームソードのエネルギー出力を限界・・・いや、それ以上に上げたのだ。
そしてそれを真っ向から振り下ろした。
空気のないはずの宇宙が震えているような錯覚を見ている者は感じた。
巨大化したエピオンのビームソードはバルジを文字通り、真っ二つにしたのだ。
§
=バルジ内部=
悠騎「うぉぉっ!な、なんだっ!?」
突如、衝撃が走ったと思えば、バルジ内部が次々に爆発と崩壊を始めた。
中からはわからないが、原因はヒイロである。
エイジ「だが、これは好機だ。このまま内部を破壊しながらバルジを脱出しよう」
悠騎「あぁ!オラオラぁ!ぶっ壊れやがれ!!」
内部いるメンバーは可能な限り、破壊をしながらバルジの脱出をしていく。
そして、ほどなくしてバルジは宇宙でその姿を散らした。
63
:
藍三郎
:2007/12/03(月) 20:52:38 HOST:97.76.231.222.megaegg.ne.jp
バルジ崩壊から、約30分後・・・・・・
残るモビルドール部隊も全て殲滅され、宇宙には無数の残骸が漂っている。
激闘に勝利した統合軍、G・K隊の機体も、
消耗の激しさからほぼ全て一時母艦に戻っていた。
ただ一機を除いては・・・
あたかも鉄の迷路のようなバルジの残骸の中で、
ウイングガンダムゼロとガンダムエピオンは互いに動きを止めて対峙している。
エピオンが、ビームソードでバルジを両断した後・・・
二体のガンダムは、決着をつけるべく戦いを続けていた。
だが、両機とも疲弊しきっており、エネルギー残量もほぼ底を尽いていた。
どちらが先に言い出すでもなく、二人はコクピットハッチを開け、互いに生身を晒す。
ゼクス「お互い、機械に翻弄されたようだな」
ヒイロ「俺の選んだ道に、貴様は障害だとエピオンが言っていた・・・
俺もそれは間違いだと思っていない」
ゼクス「そうか・・・」.
ヒイロ「ゼクス、エピオンにはお前が乗れ。
これはトレーズの作ったガンダム・・・俺には理解できない機体だ」
ゼクス「いいだろう・・・」
半ばその申し出を予期していたかのように、ゼクスは頷く。
ゼクス「ヒイロ・ユイ、我々は本来、この世界にいてはならない存在・・・
文字通りのイレギュラーだ。ならば、我々が戦う意義は何だ?」
ゼクスの問いに対し、ヒイロは実に簡潔に答えた。
ヒイロ「何も変わらん。俺は・・・任務の障害となる敵を排除する。それだけだ」
ゼクス「そうか・・・世界が違えども、
結局人は、それぞれの生き方を貫くしかないのかもしれんな・・・」
そう言い残し、ガンダムエピオンに乗り換えたゼクスは、戦場から立ち去っていく・・・
=バトル7 ブリッジ=
マックス「何とか勝利できたな・・・」
エキセドル「はい・・・間一髪でしたな」
統合軍始まって以来の総力戦に、艦長も参謀もすっかり疲れ果てた様子だ。
マックス「エイジ君からの報告によると・・・ユーゼス・ゴッツォは取り逃がしたそうだ。
そして、彼の正体はグラドス人だったらしい・・・」
エキセドル「成る程、それならば、ここ最近のグラドス軍との連携も説明できますな」
マックス「彼らは、グラドスの下へ身を寄せるのだろうか・・・」
エキセドル「あるいは、月から脱出したギンガナム艦隊と合流する事も考えられます」
マックス「予断を許さぬ状況は続きそうだな・・・
だが、我々は彼らの拠点を潰す事に成功した・・・
何らかの行動を起こすにせよ、しばし時間を置く事だろう」
エキセドル「その間に、こちらも傾いた戦力を立て直す必要がありますな」
マックス「ああ・・・異星人とも決着をつけねばならん。
本当に苦しくなるのは、まだまだこれからだ・・・」
=グラドス艦隊旗艦 司令室=
カルラ「申し上げます。
偵察隊から、宇宙要塞バルジが撃沈したとの報告が・・・」
ル=カイン「ほう・・・・・・」
ネオバディム敗北の報を聞き、ル=カインは微笑を浮かべる。
ル=カイン「ユーゼス・ゴッツォ・・・口ほどにも無かったな。
同じグラドス人とはいえ、
所詮、地球文明などに骨抜きにされた科学者風情は使えぬということか」
グレスコ「・・・・・・」
ル=カイン「だが、奴から提供されたモビルドールは精々有効に使ってやろう。
地球のサルどもよ・・・もはや容赦はせぬぞ。
このル=カインを愚弄した罪、貴様達の血で贖わせてくれる!!」
目を血走らせる息子を、グレスコ提督を複雑な面持ちで眺めるのだった・・・
64
:
蒼ウサギ
:2007/12/11(火) 00:22:39 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
=アークエンジェル=
激しい攻防戦が終わり、各艦の格納庫では整備班が忙しなく損傷した機体の修理や整備に勤しんでいる。
対してパイロットは一息をついて、各々落ち着きを取り戻していた。
が、本来ならばエターナルに着艦するはずのアスラン・ザラはアークエンジェルで
ジャスティスの整備を受けていた。
ディアッカ「よぉ、なんでお前、ここなの?」
アスラン「ディアッカ?」
思わぬ人物から声をかけられ、アスランは驚きに目を見開いた。
捕虜の身であった彼がこうして艦内を自由に動き回っているのもそうだが、
彼がパイロット用のノーマルスーツを着ていたからだ。
つまりは先ほどの戦いに出ていたという証だ。
アスラン「お前、なんで・・・?」
ディアッカ「まぁ・・・・・・なんていうか、なりゆきでね・・・」
どうにも言葉では説明し辛いのか、ディアッカは曖昧な返事で口篭る。
それは先のディアッカの質問がアスランにとってもそうなので、それ以上は追求しないでおく。
そしてそれを察したディアッカも、先の質問の答えを再度、求めることはしなかった。
すると会話が途切れ、沈黙が数秒間訪れたが、ディアッカがそれを破る。
ディアッカ「まいったぜ・・・・・・」
アスラン「ん?」
まるで独り言のように口を開いたディアッカにアスランは耳を傾けた。
ディアッカ「・・・・・・イザークと戦ったよ。といっても、お互い平行線の話だったけどな」
ディアッカの話は、先の戦闘時に遡る。
ディアッカ「今、あの艦を・・・・・・落とさせたくないんでな」
言葉と同時にバスターのライフルを撃つ。
その砲火を寸でのところでかわすと、デュエルは急接近してビームサーベルで斬りかかる。
ディアッカ「ぐぐっ! イザーク・・・・・・」
イザーク「! その声・・・・・・」
デュエルのサーベルがバスターの肩部分を掠めた際のほぼ一瞬の密着したとき、
ディアッカの声がイザークの耳に届いた。
その声を空耳と思い込むには、イザークにはひどく馴染み深かいものだった。
戸惑いながらバスターから距離をとると、回線を使って呼びかける。
イザーク「ディアッカ・・・・・・貴様なのか?」
ディアッカ「ああ、そうだ」
返事は何かを期待するまでもなく、すぐに返ってきた。
イザークの戸惑いは大きくなり、その中に若干の怒りすら芽生えてきた。
イザーク「それが何故・・・何故、奴等と一緒にいる!?どういうことだ!?
貴様が生きていたことは嬉しいが、事と次第によっては許さんぞ!」
ビームサーベルをビームライフルに持ち替え、銃口をバスターに向ける。
ディアッカの目には若干、その手が揺れているように見えた。
ディアッカ「イザーク・・・・・・銃を向けずに話をしよう」
なるべく落ち着かせるかのように、穏やかな口調で告げるディアッカ。
だが、イザークの心は静まらない。
イザーク「敵となったのは貴様の方だろうが!」
ディアッカ「オレはお前の敵になった覚えはねぇよ」
イザーク「ふざけるな!」
ディアッカ「聞けよ・・・・・・実はアスランもちゃんと生きてる・・・」
イザーク「なにぃ!? では、アスランも・・・・・・」
ディアッカ「・・・・・・お前の言葉で言うと、裏切りってことかな?」
自嘲気味にディアッカは零す。
けど、決してふざけている素振りはない。
ディアッカ「けどよ、オレは裏切ったつもりはない。
ただ・・・・・・ただナチュラルを・・・本当の世界で軍に言われたように、
ナチュラルをただ全滅させるために戦う気はもうないってことだ」
イザーク「・・・・・・・」
ディアッカ「なぁ、イザーク・・・・・・こんな世界に連れてこられて、オレ達は何の為に戦ってるんだろうな?」
イザーク「・・・・・・・・!」
ディアッカの問い。それは出撃前、自分も感じたことだ。
そして、その答えは未だ・・・・・・・・・・
イザーク「っ・・・・・・!」
答えを導き出せず、ただ口惜しさに奥歯を鳴らすことしか出来なかった。
ディアッカの語りは、そこで終わる。
65
:
蒼ウサギ
:2007/12/11(火) 00:23:09 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
アスラン「・・・そんなことがあったのか」
ディアッカ「あぁ・・・・・・結局、その後、バルジも堕ちて、退いていったよ・・・・・・」
アスラン「そう・・・か・・・・・・」
恐らくイザークの口から、ニコルにも伝わるだろう。
その時、彼がどう思うのか・・・・・・想像はつかなかった。
彼らからしてみれば確かに今の自分たちは“裏切り者”に見えるだろう。
だが、ディアッカの話にもあったように、アスラン自身も彼らを敵としては見れない・・・・・・
複雑な気持ちと状況に、心が休まること出来ないでいた。
ディアッカ「・・・・・・・・で、そっちは何かあったのか?」
靄になりそうな会話の空気を変えるためか、ディアッカは最初の質問をそれに変えた。
何故、アスランがエターナルではなくアークエンジェルにいる理由が
そこから紐解けるかもしれないと考えたのかもしれないからだ。
アスラン「あぁ・・・・・・あったさ・・・でも、それはオレ自身じゃない」
ディアッカ「んぁ?」
アスラン「オレの友達が・・・・・・な」
そう言ったアスランの声はその友を案じている心境が現れていた。
§
=エターナル 格納庫=
戦闘後、エターナルに着艦したフリーダムだが、そのパイロット、
キラはコクピットから出てこなかった。
キラ「・・・・・・・・・」
俯き、先のクルーゼの話を思い出している。
自分の知らざる出生を知って、どうにもいられない気持ちなっている。
何度も、何度もクルーゼの言葉が頭の中で繰り返される。
虚ろな気分はますます強くなり、心が壊れそうになる。
そんな彼の耳に、ある声が届いた。
ラクス「キラ・・・・・・・・」
コクピットのハッチ越しに聞こえた声に、キラの意識は現実に戻った。
少し間を置いてから、ハッチを開くと、ラクスの心配そうな顔が目に留まった。
キラ「ぁ・・・・・・」
目の前に現れた彼女の顔を見て、キラは平静を見せようとしたが遅かった。
今にも泣き出しそうな、情けない顔が今のラクスの目に留まっているのがわかる。
ラクス「キラ・・・・・・・」
キラ「・・・大丈夫・・・・・・・僕、もう泣かないって決めているから・・・・・・」
ぶつりぶつりと言葉を切りながら告げるキラをラクスはゆっくりと両手を広げて、
彼をその腕の中に包んだ。
ラクス「泣いて、いいのですよ?」
キラ「・・・・・・・・!」
ラクス「だから人は泣けるのですから・・・・・・・」
ラクスの言葉が傷ついた心に薬のように染み渡る。
キラは、その言葉に甘えた。
66
:
ニケ
:2007/12/13(木) 16:40:39 HOST:zaq3dc05e24.zaq.ne.jp
=マクロス7 ブジッジ=
マックス「そうか、キラ君がな・・・」
マクロス7のブリッジ席。
主要なメンツを集めた艦橋で、諸々の報告事項を受けていたマックスの顔が苦渋に歪む。
バルジ攻略を終えたとはいえ、ユーゼス、トレーズといった敵の首脳陣は取り逃がしている。
敵の計画を遅延させた事には違いないが、此方の受けた痛手もまた大きい。
バルキリー隊の損耗、マクロスキャノンの半壊。
機器類面での消耗だけでも激しいのに、パイロット達にまで悪影響を及ぼすような報告は、頭を悩ませる問題であった。
バルトフェルド「今はウチの姫様が見てますがね。
ま、任せるしかないでしょう」
ジャミル「情けない限りだな。
大の大人がこれだけ揃っておきながら・・・」
ジャミルの言葉に皆、一様に難しい表情を浮かべる。
だがそれも仕方が無い。
彼らは各部隊のトップ。
パイロットのメンタル面以外にも、考慮しなければならない問題は山積みなのだ。
マックス「それで、君の方は大丈夫なのかね?」
マックスが話の矛先を向けたのは、この問題のもう一人の当事者。
ラウ・ル・クルーゼとの因縁浅からぬ事が新たに露見したムウだ。
ムウ「坊主達ほど軟なつもりはないですよ」
マリュー「少佐・・・・」
臆した様子も無く答えるムウの横で、マリューは複雑な表情で眉根を下げる。
ショックでないはずが無いのだ。
だが、キラ達の手前、大人の対応をしているに過ぎない。
ムウ「そんな顔するなよ、艦長」
そんなマリューの様子に、逆に心配をかけたかと明るい声をかけるムウ。
ムウ「信じられないのは事実ですがね。
親父のクローンで・・・テロメアが短くて・・」
その性で失敗作と、出来損ないと打ち捨てられたが故のあの憎悪。
生まれながらに不必要と、否もっと酷い間違いとして断ぜられた存在の絶望は如何程だっただろうか?
だが
ムウ「奴には・・・過去も未来も、もしかしたら“自分”すら、ないんだ・・・」
マリュー「だから・・・・世界を道連れにする―――と?」
ムウ「そんな事はさせねぇよ。俺が・・・・」
固い決意の言葉。
クルーゼの憎悪、ムウの気持ちは皆痛いほど判ったが、全てを彼任せにしようなどと思うものは誰もいない。
一個の人間の感情が、世界を滅ぼす。
そんな事はあってはならない。
そんな理不尽を許さぬ為に、その悲劇を繰り返さぬ為に自分達は集まったのだから―――
マックス「――――クローンといえば・・・」
重い雰囲気で落ちた沈黙を破るように、マックスが再び口火を切った。
マックス「エリアル君がユイナ=サイベル、という女性のクローンというのは本当なのかね?」
これも兼ねてより問題とされてきた命題だ。
先の月上空での戦闘の折、殉職した巽 小五郎が残した言葉。
ナデシコを通じて傍受された情報は、主だったメンバーの皆が知る事となっていた。
テクス「ユイナ=サイベルのフィジカルデータが無い以上、断定は出来んが・・・まず間違いないだろう」
重い口調でそう切り出したのは、フリーデンの軍医テクスだ。
テクス「テロメアの長さで判断は出来んが・・・フリューゲルに残された軍の記録。
それにアルテミスのクローン技術。
更に、ルドルフ少佐がガリア=ダイナグレスと同一人物だとすれば・・・・」
ルリ「可能性は高いと?」
ルリの質問に重々しく頷くテクス。
ガリア=ダイナグレス。
ユイナ=サイベル、巽 小五郎と同じく、第一次ヨツンヘイムのメンバーだ。
本来なら齢60歳を超えているはず・・・。
それが今、青年のルドルフ=F=ギーゼルシュタインとしてアルテミスで行動している。
推測するには十分すぎる材料だった。
テクス「問題は肉体面より精神面だ。
どうやら彼女は精神制御の類を受けている可能性がある」
由佳「どういう事ですか?」
テクス「彼女の記憶にはユイナ=サイベルの一生の記録が刷り込まれている。
他にも暗示や精神矯正等精神操作の類のオンパレードだ。
結果的に、彼女は作為的な二重人格といえる状態だ」
由佳「酷い・・・・」
ジャミル「確かにな。
だがこれでルドルフ少佐の目的もおぼろげながら見えてきたというわけだ」
即ちユイナ=サイベルの復活。
それにどんな意味があるのかまでは、今の彼らには推し量る事が出来ない。
マックス「この件については?」
テクス「戒厳令を敷くしかないだろうな。
無用なトラブルは避けるに越したことは無い」
67
:
藍三郎
:2007/12/14(金) 06:22:47 HOST:97.76.231.222.megaegg.ne.jp
第39話「紅蓮に燃える大地」
=アステロイドコロニー ミスルトゥ=
ギンガナム『フハハハハ!!戻ってきたか、ユーゼス・ゴッツォ!!
実に見ごたえのある戦いだったぞ!!
特に、最後のあの“花火”は見事なものだった!!』
バルジから離脱し・・・当面の“本拠地”である
アステロイドコロニー・ミスルトゥまでやってきたネオバディム艦隊を迎えたのは・・・
ギム・ギンガナムの、皮肉に満ちた哄笑だった。
ギンガナム『よくもまぁ、あれだけ派手に沈めてみせたものだ!
あそこまでの負け戦ともなれば、いっそ清々しいわ!!』
ユーゼス「ふ・・・武門を司る御大将と違い、所詮は一介の科学者、
あの宇宙要塞には、私には過ぎたる代物だったのかもしれませんな」
嘲弄に対して、ユーゼスはあくまで謙った態度で答える。
ギンガナム『そういう事だ。これから、武に関しては一切を小生に任せ、
お前は引っ込んで大人しく研究でもしているがいい!!』
メリーベル『根暗な仮面野郎には、それがお似合いだよ!!キャハハハ!!』
明らかな侮辱にも、ユーゼスは逆に不敵な笑みで返す。
ユーゼス「ふふふ・・・では、お言葉に甘えて・・・
本日を持って、ネオバディム軍の全指揮権を、
ギム・ギンガナム御大将、貴方にお譲りいたします」
ギンガナム『ふん、早くそうしておけば良かったものを・・・』
もちろん、今この場で決定した訳ではない。
この契約は、遥か前から・・・
ユーゼスがギンガナム艦隊と接触した頃、決められていた事だ。
ギンガナムはネオバディムの強大な軍事力を得、
その見返りとしてユーゼスの“計画”に参加する・・・
両者の間には、そんな密約が交わされていた。
ユーゼス「ですが・・・」
ギンガナム『わかっておる!計画通り、しばらくは軍を動かすつもりはない。
小生としても、“黒歴史再臨計画”には期待しておるからな・・・』
ユーゼス「ふふふ・・・必ずや、ご期待に添えて御覧にいれましょう・・・」
互いに、相手を推し量るような会話を交わしつつ、一旦通信を切る。
ユーゼス「で・・・ルシア、現時点で、どれほどの部隊が我が軍を離反した?」
ルシア「我が軍の約3割はトレーズ側についたと思われます。
もっとも、これはモビルドールと、ギンガナム艦隊を引いた上での勘定ですが・・・」
ユーゼス「約3分の1か・・・
まぁ・・・手駒に関しては、モビルドールで幾らでも補充が効く・・・」
ルシア「ミスルトゥのモビルドールプラントは、
既に稼働中で、現在も、新型のビルゴを含めたMDの生産を続けております。
生産能力に絞れば、宇宙要塞バルジにも引けを取らないかと・・・」
ユーゼス「うむ・・・では、こちらに残っている者達は?」
ルシア「Mr.クルーゼ、およびフロスト兄弟は、
引き続きこちらでの参戦を表明しています。
彼らは彼らで、個人的な思惑があるようですが・・・」
ユーゼス「それは最初から分かっていた事だ。
むしろ、心に闇を抱えた彼等のような人材こそ・・・黒歴史の再誕に必要となろう」
ルシア「心の闇・・・それは、この私も含めて?」
ユーゼス「ふ・・・・・・」
ルシアの問いに、ユーゼスは笑みだけで返した。
あるいは、自分自身もそれに該当する、と言いたかったのかもしれない・・・
ルシア「しかし・・・あそこでバトル7を落とせなかったのは惜しかったですね・・・
せっかくバルジを捨て石にまでしたというのに・・・」
ユーゼス「統合軍の主力が崩れた事で、
戦力の均衡が崩れ、残る勢力が互いに相争えば・・・
その隙を突いて、計画の発動を容易にできる・・・そう踏んでいたのだが」
ルシア「宇宙統合軍は、これからどう動くでしょうか?」
ユーゼス「ふん、それを私に聞くのかね?
<演算者>である君の方が、余程わかっているはずだ・・・」
ルシア「私は予知能力者ではありません。全てを見透かす事などとてもとても・・・」
ユーゼス「君も食えない男だな・・・
だが、その程度なら私にも予測できるぞ。
彼らが次に向かう先、それは・・・・・・」
68
:
藍三郎
:2007/12/14(金) 06:23:52 HOST:97.76.231.222.megaegg.ne.jp
バルジでの決戦から二日後・・・
激戦で疲弊した統合軍艦隊も、ようやく復旧の兆しを見せ始めていた。
=ナデシコC ブリッジ=
ルリ「それでは、依然ユーゼス・ゴッツォの消息は掴めていないと?」
マックス『ああ、統合軍諜報部も全力を尽くしているのだが・・・
ギンガナム艦隊共々、その行方は杳として知れん』
バルジ陥落前に、ユーゼス・ゴッツォが残した言葉・・・
あれが真実ならば、彼らはまだ何が行動を起こす可能性がある。
決して、捨て置ける問題ではなかった。
マックス『それと、宇宙のグラドス艦隊についてだが・・・
彼らもまた、その消息がぷつりと途絶えてしまった』
ルリ「グラドスの戦艦は、電波撹乱と不可視迷走装置を備えています。
恐らくは、それでこちらの目を眩ましているのかと・・・」
マックス『うむ・・・しかし、これは我々にとって幸運かもしれん。
バトル7はまだ損傷が復旧せず、
統合軍艦隊も、大規模な動きが取れる状況ではない。
彼らとの全面対決に挑むには、まだしばし時間が必要だ』
ルリ「ですね・・・」
マックス『そこで・・・だ』
マックスは一拍置いて、こう続けた。
マックス『ホシノ艦長、ナデシコC、並びエルシャンク・・・
およびG・K隊の面々には、ザ・ブーム軍に占拠された火星の奪還作戦についてもらいたい』
ハーリー「火星の奪還作戦・・・?」
マックス『ああ、火星では、ガイゾックの脅威も広がり始めている・・・
これまでは、グラドスやネオバディムの問題で動けなかったが・・・
今という好機を逃すわけにはいかない』
サブロウタ「たく、ようやく一休みできるか?と思ったらこれだもんな〜〜全く人が悪いぜ」
ハーリー「サブロウタさん、不謹慎ですよ!」
ルリ「了解です。これよりナデシコCは、火星への発進準備を開始します」
マックス『頼む・・・火星からは、既に完全に音信が途絶えてしまっている・・・
何が起こるかはわからん・・・くれぐれも気をつけてくれ』
=エルシャンク トレーニングルーム=
ジョウ「うおおおおっ!!!」
裂帛の気合と共に、殴りかかって行くジョウ。
サイ・サイシー「あらよっと!!」
身軽な動きで、それを回避するサイ・サイシー。
そのまま宙返りして、背後からジョウへと蹴りを放つ。
ジョウ「・・・やっぱ、そう来たか!」
しかし、ジョウはこれに素早く反応。
機敏に体を回転させ、サイ・サイシーの蹴りをガードする。
サイ・サイシー「へへへ・・・それで、上手くやったつもりかい?」
瞬間、サイ・サイシーの体が掻き消える。
少林寺の秘伝、多身神足通による分身だ。
その隙を突いて、本物のサイ・サイシーが死角から迫り来る・・・
ジョウ「・・・だぁっ!!」
サイ・サイシー「!!!」
だが、それをもジョウは読みきっていた。
サイ・サイシーの狙いを見透かしたように、カウンターの裏拳を放つ。
拳と拳がぶつかり合い、両者は反動でやや離れる。
ジョウ「・・・読んでいたぜ?」
サイ・サイシー「ひゅーっ・・・やるね〜〜♪」
得意の分身を破られ、サイ・サイシーは口笛を吹く。
元一朗「・・・修行の成果は出てきているようだな」
ジョウ「ああ、何とかな・・・」
あちこちに生傷が残る顔で、ジョウは微笑を浮かべる。
69
:
藍三郎
:2007/12/14(金) 06:24:38 HOST:97.76.231.222.megaegg.ne.jp
イルボラ・サロの駆る零影に完敗して以降・・・
ジョウは、ガンダムファイター達を相手に猛特訓を開始。
勿論、最初は歯が立たなかったが、毎日厳しい鍛錬を積む事で、
元々備わっていた才覚が開花し、
今では先程のような切り返しを見せるまでになっている。
ジョウ「イルボラの零影は桁違いの強さだ・・・
飛影にばかり頼るわけにはいかねぇ・・・
生き残るには、俺自身がもっともっと強くならねぇとな!」
その様子を、彼の仲間達も見守っていた。
マイク「ふぇ・・・ジョウの兄貴、張り切ってんなぁ・・・」
ダミアン「少し前とはまるで別人・・・
何か、覇気みたいなものまで感じるぜ・・・」
エイジ(飛影に頼るでもなく、対抗心を燃やすでもなく、
あくまで自分自身を高める事に集中する・・・成長したな、ジョウ・・・)
=バトル7 格納庫=
格納庫では、ザンボット3へのイオン砲の取り付け作業が行われていた。
宇宙太「ようやく、イオン砲の修理が終わったか・・・」
恵子「マクロス7で、幾らか改修されたから、
今度は一発撃って壊れる事は無いそうよ」
宇宙太「とはいえ、エネルギーを喰う事には変わりない・・・
使いどころには気をつけねぇとな」
恵子「そうね・・・火星ではガイゾックも暴れているわ。
必要になる時が、きっと来るはず・・・」
まもなく、火星に向かう事は、彼等の耳にも既に入っていた。
宇宙太「ガイゾックか・・・一度倒したと思ったのに・・・
この世界に来てまで奴らとやり合う事になるとはな・・・」
勝平「あいつらをのさばらせておいたら、まだ大勢の人が殺される・・・
もう二度と蘇ってこれないよう、ここできっちり叩き潰してやるぜ!!」
恵子「ええ・・・それこそが、
私達がこの世界で果たすべき事なのかもしれないわ・・・」
70
:
藍三郎
:2007/12/14(金) 06:26:02 HOST:97.76.231.222.megaegg.ne.jp
=火星開拓基地=
火星開拓基地がザ・ブーム軍の手に落ちてから、もう長い時が経っている。
異星人に征圧されたとはいえ、表向きは平穏を保っているが・・・
ハザード「なぬ!?ザ・ブームのアネックス皇帝が火星に来られるだと!?」
火星開拓基地の長官室。
ハザード・パシャ長官は、寝耳の水の知らせを聞いて、素っ頓狂な声をあげる。
シャルム「そういう事だね。
統合軍やグラドスのせいで、地球侵略はさっぱり進みやしない・・・
大部隊を率いて、皇帝自ら遠征に来られるそうだよ」
ハザード「むむぅ・・・」
イルボラ「我々は、この星で陛下を出迎える事となる。
くれぐれも、失礼の無いように振舞えよ」
ハザード(この若造め・・・いっぱしの口を利きおって!!
貴様も同じ裏切り者だろうが!!)
イルボラに腹を立てつつも、ハザードは内心混乱していた。
ハザード(アネックスが来るとは計算外だった!
今更皇帝なぞに出しゃばられては、
ザ・ブームと奴らを上手く動かしつつ、
裏からこの地球圏を支配するわしの野望が・・・)
自分の野望に狂いが生じ、内心で焦るハザード。
ハザード(こうなったら、うまく皇帝に取り入って、わしの地位を確立させねば・・・
さもなくば、わしの今までの苦労が水の泡だっ!!)
=火星近海 バンドック=
ブッチャー「う〜〜ん・・・そこ、そこじゃ・・・
ホホッ!!利くのぉ〜〜〜・・・」
キラー・ザ・ブッチャーは、巨大なベッドに裸でうつぶせになり、
部下達からマッサージを受けている最中だった。
余程気持ちいいのか、普段は見せない緩んだ表情で、奇声を上げている。
ガイゾック『ブッチャー・・・ブッチャーよ・・・』
ブッチャー「むぅ〜〜なんじゃい!
今ワシはマッサージで最高に気持ちいいところなんじゃ、邪魔をするな!!」
ガイゾック『ブッチャー!!』
ブッチャー「こ、これは!!偉大なるガイゾック様!!」
ガイゾックの怒声を聞き、慌てて起き上がるブッチャー。
その際に、ぶよぶよの肉体が激しく揺れる。
姿は見えず、造物主の声だけが、ブッチャーの脳裏に響く。
ガイゾック『時は来た・・・
今こそ、この宇宙に破壊をもたらす時・・・
殺戮の業火を振り撒き・・・全ての文明を破壊しつくすのだ・・・』
ブッチャー「ギョイ!ガイゾック!!」
最終作戦の発動を意味するガイゾックの命令に、
ブッチャーは艦内に響く大声で答える。
ガイゾックの声が消えた後、ブッチャーは一人含み笑いを漏らす。
ブッチャー「ホホホ・・・!今までずぅ〜〜〜〜〜〜〜っと我慢して、
せこせこメカブーストを造っておったが・・・ようやく暴れられるわい!!」
寝台の上に仁王立ちになると、モニターに映る光景を睨む。
ブッチャー「さぁ〜〜て、手始めに、あの赤い星からひねり潰してやるかのぉ〜〜〜!」
71
:
たまらん
:2007/12/14(金) 15:56:32 HOST:TEPte-15p182.ppp17.odn.ad.jp
意見交換
日記は更新する、非常に!!助言する!
p(#^▽゜)q
xi24pps.blog23.fc2.com/
72
:
蒼ウサギ
:2007/12/26(水) 02:12:32 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
=コスモ・アーク 格納庫=
次の作戦の舞台が火星という旨を受け、各艦では火星地での戦闘に対応できるよう、
機体の調整が行われていた。
最も、特機や汎用性の高い機体がほとんどなので、その作業は然程手が掛からないものであり、
火星出立の日まで充分に間に合うペースで順調に進んでいた。
が、レイリーはそれとは別の件で頭を悩ませていた。
例の星倉悠騎が発案した、ブレードゼファーの追加装備の事である。
レイリー「もう一回! 今度は出力30%からスタートして、毎秒8%で刀身形成してみて!」
シミュレーションコンピューターのディスプレイを覗き込みながら、操作している整備員に指示する。
その整備員が手馴れた手つきでキーボードを叩くと、ディスプレイに剣の柄から赤い刀身が徐々に
形成されていく様がCGで映し出されていく。
それが切っ先まで形成されていき、まさに剣として完成するその寸前で、
まるで風船が破裂したかのように赤い刀身部分が霧散してしまった。
それを見て、レイリーはうな垂れる。
レイリー「ダメかぁ〜・・・・・・計算上はバッチリのハズなんだけどなぁ・・・」
後頭部を掻きながらシミュレーションコンピューターに接続されているケーブルの先を見る。
そこにディスプレイのCGを現実化した物が四方八方を野太いケーブルに繋がれた状態で置いてある。
ブレードゼファーの新たな剣であり、悠騎が最も求めた物だ。
レイリーの頭を悩ませているのはこの武器の完成が難航していることである。
レイリー(どうしても高出力・・・・・・悠騎が望むくらいの巨剣の刀身を形成しようとすると、
Dエネルギーが不安定になる・・・・・・)
頭の中で問題点を整理しながら、レイリーは別コンピューターで過去、悠騎が搭乗したAWの戦闘記録を
再度、見直す。
レイリー(エクシオンのときでも、ブレードの時でも理想クラスの刀身を形成しているケースがある。
けど、それはあのシステムが発動している時・・・・・・通常状態では刀身が安定しない。
はぁ・・・・・・面倒なこと引き受けちゃったなぁ)
少し疲れた様子に鼻から息を抜き、天井を仰ぐ。眩い照明が目をチラつかせ、レイリーは目を細めた。
ここ数日睡眠をとっていないため、そのまま眠りにつきそうな勢いだったが、それは彼女のプライドが
許さなかった。
レイリー「うしっ!もう一度、一からプログラムの組み直しだ!」
そう意気込んだその時、不意に頬に冷気が当てられ、背筋がビクッとなった。
悠騎「よっ、まだ元気そうだな!」
犯人はよく冷えた缶ジュースを持って現れた星倉悠騎だった。
作業に夢中で接近に気づかなかった己を不覚に思いながらも、「まーね!」と元気のある返事をして、
レイリーは自分の頬に当てられた缶ジュースを奪い取った。
タブを開け、中身を確認することもなく一気に喉に流し込む。
炭酸でレイリー好みのグレープフルーツの味がした。
悠騎「けどよ、あんま無理すんなよ? オレは別に急いじゃないぜ」
レイリー「・・・・・・・・・」
気遣う言葉を投げかける悠騎の顔をレイリーはジーっと見つめた。
そして苦笑しながら、
レイリー「嘘やめなって!「すぐにでも完成させて欲しい!」って顔してるよ?」
と、指摘した。
73
:
蒼ウサギ
:2007/12/26(水) 02:13:04 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
悠騎「そ、そんなことねぇって・・・」
レイリー「はいはい、すぐ顔に出ちゃう馬鹿正直クンは気を遣ってる暇あったら休んでな!
次の戦いもかなりハードになるはずだよ」
悠騎「あ、あぁ・・・・・・」
ビシッと目の前に指を突き出され、悠騎は思わず気圧された。
その後、レイリーはクスクスと笑って、軽い調子で告げる。
レイリー「ま、その気遣いは嬉しいけどね。それよりは信じてドーンと構えてて欲しい
・・・整備班(私たち)を!
パイロットの注文にはなるべく早くお届けするのがモットーだし!」
悠騎「ピザ屋かよ?」
レイリー「ただの冗談! ま、気が張って眠れないんなら、この機体データでシミュレーション訓練してなよ
追加装甲の“狂戦士の鎧(バーサーカー・メイル)”は完成しているから、そのデータね。
今のうちに操作性慣れといた方がいいよ。本番でゲロっちゃうかもしれないから」
悠騎「・・・・・・・そんなにGキツイのか?」
レイリー「注文通り、かなーり強いブースターだからね。
アレだったら、キョウスケ少尉やアキトさんにコツでも聞いてみれば?」
悠騎「・・・オレの想像以上にトンデモ機体になりそうだな、オイ」
レイリー「何を今さら! さ、行った行った!作業の邪魔だよ!」
半ば追い出すような形で、レイリーは悠騎を帰していく。
だが、その背中が見えなくその前に、大声で言い放った。
レイリー「ジュースありがと!」
急な礼に驚いた顔を見せつつも、悠騎は手を上げて、それに応えた。
コスモ・アークからコスモ・フリューゲルに戻る道中、悠騎はミキと出会った。
ミキ「あ、先輩、こちらに来てたんですか?」
思いもしない遭遇にミキの頬は若干、朱に染まっていたが、
悠騎はそれをまるで気づいていない様子で、いつものように返した。
悠騎「あぁ、ちょっとヤボ用でな」
ミキ「そ、そうですか・・・・・・あ、あの、食事すみました?よかったらこれから一緒に・・・」
悠騎「わりぃ、ちょっとやっておきたいことがあってな」
先ほど渡されたデータでシミュレーション訓練をしておきたいのが、それだ。
ミキの表情が一瞬曇るが、その気持ちを悠騎に悟られぬよう、すぐに明るい調子で返した。
ミキ「そ、そうですか!あ、あの、無理なさらないでくださいね。
休める時に休むのもパイロットの勤めですから!」
悠騎「さっきレイリーにも似たようなこと言われたぜ。
でも、サンキュ!んじゃな」
そう言って、悠騎は足早に去っていった。
少し胸にモヤが掛かった感じがしつつ、ミキは食堂の方へと向かっていった。
§
=シティ7 病院=
次の作戦までの僅かな空き時間を縫って、アイは紫藤トウヤが眠っている病室へと見舞いに来た。
アイ「艦長・・・・・・次は火星です」
呟くように一人話すアイ。
植物状態でベッドにずっと眠りっぱなしのトウヤがそれに何か反応し示すことはない。
アイの声が途切れる度に、その部屋には一切物音がしない静寂が訪れる。
会話というよりは、報告といった風の光景がそこにはあった。
アイ「・・・・・・もう時間です・・・・・・・・・・また来ます、艦長」
訪れてからわずか10分も経たないうちに、アイはそう言って退室した。
「また来ます」。
その言葉にアイは強い―――
強い誓いが込められていた。
74
:
藍三郎
:2007/12/26(水) 22:44:48 HOST:103.95.231.222.megaegg.ne.jp
=機動要塞 シャングリラ=
ヴァルカン「ほぉ〜〜っ、こいつらが・・・」
シャングリラ内部の格納庫・・・
そこでずらりと並んだ人型機動兵器を見下ろし、
ヴァルカンは声を漏らす。
マザーグース「アア・・・これこそミイの
努力練習特訓研究開発設計演算執念の結晶(クリスタル)!!
アルテミスの未来(フュウチャア)を担う剣の使徒、
“ロストセイバー”だヨ!」
ヴァルカンの腰ほどしかない身長のマザーグースは、
覆面の下からでも分かるほどに嬉々とした声で語る。
ヴァルカン「例の“完全兵士計画”・・・その機体に当たるのはこいつらというわけか」
マザーグース「イエェェェェ〜〜〜ス!!
これに最強の人造人間・クリスチャンあ〜んどクリスティンと組み合わせる事で、
ロストセイバー達はこれまでの量産機の
常識(ベエシック・アサンプシヨン)を軽く塗り替える事ダロウ!!」
ヴァルカン「で・・・俺に何をさせようってんだ?」
長話には興味ないといった風に、本題を促すヴァルカン。
マザーグース「なァに・・・AIでの実戦テストでは物足りなくなってきてネ・・・
是非とも、生身の敵を相手にデエタを取りたいと考えているんダ・・・」
ヴァルカン「持って回った言い方をする・・・
要するに、G・K隊にぶつけてこい、という事だろう」
マザーグース「オフ・コォォォォ〜〜ス!!
ちょうど、火星で大規模な戦闘が発生しヨウとしている・・・
数機を引き連れて、火星に向かってくれたまエヨ」
マザーグースの申し出に、ヴァルカンはあっさりと首を縦に振る。
ヴァルカン「いいだろう・・・ちょうど俺も退屈していたところだ・・・!
赤い軍神(マルス)の星は、俺の血を滾らせるのにふさわしい場所となろう・・・!」
=マクロス7船団=
サブロウタ「要は、前回火星に乗り込んだ時と同じ要領でいけばいいんだよな?」
彼が言っているのは、火星の後継者との最終決戦の話である。
ルリ「はい。ボソン・ジャンプとマイクロワームホール航法による惑星間跳躍・・・
ただし今回は、コスモ・アークとコスモ・フリューゲルの両艦も
共に向かう事になります」
ハーリー「ナデシコCにアークを、エルシャンクにフリューゲルを、
それぞれ専用のパーツで“連結”させます。
これにより、連結された艦も空間転送の影響を受け、
四艦ともに空間移動させる事が可能になるかと・・・」
サブロウタ「そんな簡単な方法(て)で上手くいくのかよ?」
ハーリー「実際は、互いの位相空間の同調作業など、
口で言うほど簡単な事では無いですが・・・」
ルリ「そちらは、オモイカネが担当してくれます。
元々、あの二艦は空間転移にも耐えられる外装を施されているようですし」
サブロウタ「そういや、元々あいつらは
時空を越えて俺たちの世界にやってきたんだもんな・・・」
ハーリー「あ、艦長!そろそろ時間ですよ!」
75
:
藍三郎
:2007/12/26(水) 22:46:17 HOST:103.95.231.222.megaegg.ne.jp
ルリ『皆さん、お疲れのところ失礼します。
宇宙統合軍所属、ナデシコC艦長、ホシノ・ルリ少佐です。
今回の作戦では、私が総指揮を勤めさせて頂くことになりました。
どうかよろしくお願いします』
彼女のアナウンスは、艦内のほぼ全域に流れている。
形式上の口上を終えて、ルリは本題に入る。
ルリ『これより、今回の火星突入作戦について説明します。
まず、私達は手筈通り、ナデシコC、エルシャンク、
および随伴するコスモ・フリューゲル、コスモ・アークの四艦で
空間転移を行い、火星近海へワープします。
その後、火星に降下し、ザ・ブーム軍の拠点となっている火星開拓基地を強襲・・・
ザ・ブーム軍および、彼らに協力する火星軍を撃退し、開拓基地を奪回します』
ジョウ「イルボラ・・・その時には、奴も必ず出てくるだろうぜ・・・」
ルリ『なお、現在火星とは連絡が取れない状態が続いています。
従って、現在火星で何が起こっているのか、私達は把握できていません。
ですので、その場の状況に応じて、
この作戦プランは臨機応変に改変されますので、留意しておいてください』
悠騎「要は、ぶっつけ本番になる可能性が高いって事か・・・」
ルリ『それと・・・火星には、ガイゾックの母艦が在留しています。
作戦の途中で、彼らが戦闘に介入してくる可能性は極めて高いと思われます。
その場合、ガイゾックの撃退および殲滅も視野に入れた作戦展開を行う予定です』
勝平「上等だ・・・!奴らとの因縁・・・今日こそ断ち切ってやるぜ!」
火星出航の、およそ1時間前・・・
エルシャンクの前で、エイジは火星に向かうジョウ達を見送っていた。
エイジ「すまない・・・出来れば、俺も火星についていきたかったが・・・」
ジョウ「気にすんなって!」
レニー「エイジさんには、エイジさんの戦いがあるんだし・・・」
エイジの敵であるグラドス軍は、
今だ地球圏に潜伏したまま、攻勢の機会を虎視眈々と伺っている。
もし行動を起こした場合、グラドス軍について
誰よりも知るエイジの存在は、統合軍に必要不可欠だった。
そうでなくても、グラドス軍の決着が間近に迫っている状況で、
火星に向かう事など、エイジ自身にも出来ない事だった。
ジョウ「火星の方は、俺たちがきっちり片をつけてくるからよ!!」
エイジ「ふ・・・皆、すっかり強くなったようだな」
マイク「元々は、エイジさんのお陰ですよ・・・」
ダミアン「ああ・・・火星でグラドスやザ・ブームに襲われた時、
助けてくれたのはあんたとエルシャンクの人達だった・・・」
レニー「慣れない私達に、メカの操縦の仕方を教えてくれたし・・・」
ジョウ「あんたがいなけりゃ、俺たちは地球の土を踏む事も
今こうしている事も出来なかったろうぜ」
エイジ「みんな・・・」
改めて告げられた感謝の言葉に、エイジも反応しづらいようだ。
そして、続けてジョウはこう言い放つ。
ジョウ「だけど、今は違う・・・!
ただ敵から逃げるだけだった俺たちじゃない。
俺たちは、あんたのお陰で強くなった。
心強い仲間もいる・・・必ず、生きて火星から戻ってくるぜ!」
エイジ「ジョウ・・・」
ジョウの力強い言葉に、エイジはその言が真実になると確信した。
ロミナ「ガメラン・・・結局、私達は
伝説のニンジャを見つけられませんでしたね・・・」
ガメラン「姫様・・・諦めるにはまだ・・・」
臣下の慰めを遮って、ロミナ姫はこう続けた。
ロミナ「けれど・・・私達はそれ以上に素晴らしい方々に巡り合えました」
シャフ「統合軍や、G・K隊の皆さんですね」
ロミナ「ええ・・・そして、その人達のお陰で、
わたくしも、ジョウ達も・・・辛い運命に立ち向かっていける強さを手に入れました。
人と人との、強い心の絆・・・
それこそが、わたくし達が地球で得た最高の財産であると、私は思います」
ガメラン「姫様・・・」
ロミナ「火星でどんな厳しい戦いが待っているとしても・・・
自分と、皆さんの力を信じて、必ず乗り越えてみせます・・・!
そしてその想いが、近い未来、
ザ・ブームの脅威からシェーマ星を救う力となるでしょう」
ガメラン(姫様・・・ご立派になられて・・・)
主君の輝かんばかりに成長した姿を目の当たりにし、
ガメランとシャフは臣下として、例えようも無い感動を覚えるのだった・・・
76
:
藍三郎
:2007/12/26(水) 22:46:59 HOST:103.95.231.222.megaegg.ne.jp
=火星近海 G・エクセレント=
空間に歪みが走り、途方も無いスケールの大型戦艦が姿を現す。
マイクロワームホール航法で火星圏に現れたのは、
ザ・ブーム軍団旗艦、G・エクセレントである。
その艦の中枢には、ザ・ブーム皇帝、アネックス・ザ・ブームが玉座に鎮座している。
ザ・ブーム兵「皇帝陛下。あれが現在、
我が先遣隊が占領下においている惑星、火星にございます」
石像のような、頭髪の無い硬質的な顔。
落ち窪んだような黒い眼に赤い瞳が宿っている。
アネックス「あれだけの時間を費やしながら、
落としたのはあれ一つだけか・・・
ふん、奴らの無能ぶりが分かろうというものだな」
アネックス皇帝は、モニターに移る赤い星を見ながら、苦々しげに吐き捨てる。
アネックス「このわしが来たからにはそうはいかんぞ・・・
地球など、このG・エクセレントと我が精鋭艦隊の総力を持って、すぐにでも捻り潰してやろう。
そして、地球に眠る伝説のニンジャの力は、必ずや儂の手中に収める・・・!」
ザ・ブーム兵「しかし、先遣隊の報告では、
ニンジャとはとうに滅びた存在だそうですが・・・」
アネックス「フハハハハ・・・ほとんどの者は勘違いしているようだが・・・
重要なのはニンジャではない・・・“力”の方なのだ。
ニンジャの力とは、その力の凄まじさを、伝説の英雄に例えた形容に過ぎん・・・」
皇帝は高笑いをあげる。
アネックス「“あれ”さえ手中に収めれば、わしは無限の力を得る・・・
シェーマ星系はおろか、全宇宙制覇とて夢ではない・・・!」
ザ・ブーム兵「こ、皇帝陛下!!」
通信兵の一人が、血相を変えて声をあげる。
アネックス「?何事だ・・・!」
ザ・ブーム兵「御報告申し上げます!
火星の周辺に、大多数の機動兵器が・・・いえ、あ、あれは・・・怪物!?」
=火星開拓基地=
ハザード「あわわわ・・・な、何と言うことじゃ!」
イルボラ「来たか・・・化け物どもめ・・・!」
地上からも、宇宙からも見渡せる、異形の怪物たち。
火星の宇宙(そら)を埋め尽くすのは、
かつてない程のメカブーストの大群だった・・・
77
:
蒼ウサギ
:2008/01/08(火) 02:08:30 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
=機動要塞シャングリラ ザオス自室=
格納庫で、慌しく出撃の準備が行われている頃、ヴィナスはザオスの部屋を訪れていた。
ヴィナス「火星・・・・・・まもなくあの赤い星はヒトの血で、さらに染められるのでしょうか?」
ザオス「そんな下らん事を言うために、訪ねてきたのなら失せてもらおう」
訪ねてくるなり、先の台詞を言ってのけたヴィナスを、
椅子に腰をかけ、机に両肘を立てて指を組んでいるザオスはしかめっ面でそう返した。
ヴィナス「これは手厳しい。本題はこれからですよ」
ザオス「ならば早く言うのだな」
ヴィナス「ミスティさんの生体データ・・・・・・おおよそですが、解析できましたよ」
ザオス「ほぅ・・・」
ヴィナスの言う、本題にザオスは興味を示した。
彼女は明らかに普通の人間とは違う特別な能力を持っている。
まるで古代の魔術師が巨人を召喚するように、不可思議な人型機動兵器を生み出す力のことだ。
ヴィナス「やはり、ある特異な遺伝子の存在が確認されましたよ」
ザオス「・・・“ベラアニマ”か?」
ヴィナス「似て非なるもの、とでも言いましょうか。根源は同じですが、派生が違う・・・・・・
今はこのようにしか表現できません」
ザオス「・・・・・・だが、あの能力がその特異遺伝子に起因するものということだな?」
ヴィナス「まだ、可能性の段階ですがね」
ザオス「ご苦労だった。引き続き、研究を進めてくれ。
彼女もマテリアルの一つとして、充分な価値がある」
ヴィナス「同意です。さすがは“失われた世紀の遺産”というべきですかね。
研究すればするほど、“失われた世紀”の興味は強まります」
ザオス「昔のクセか?」
ヴィナス「性分といってくださいよ。“クラインライト隊長”」
ふと口にしたその呼ばれ方に、ザオスは睨みつけるような視線をぶつけた。
ザオス「捨てたファミリーネームで呼ぶな・・・・・・」
ヴィナス「そうでしたね・・・・・・あの日、仲間と家族を失った時、あなたはファミリーネームを捨てた。
まぁ、私は嘗ての名前を全て捨てましたけどね」
自嘲気味にヴィナスは告げた。
ザオス「守るべき家族を守れなかった・・・・・・私にもはや“クラインライト”を名乗ることは許されぬ」
ヴィナス「・・・・・・良い奥様でしたよね。そして娘さんも愛らしかった。
娘さんのお名前は何でしたっけ?」
ザオス「・・・・・・・アリサだ」
ヴィナス「そうでしたね・・・確か、二番目の娘さんもいましたね」
ザオス「あぁ、その子には結局、名すら与えることができなかった・・・・・・」
ヴィナス「なんて、名付けるつもりだったんですか?」
その質問に、ザオスは数秒、沈黙を置いた。
ザオス「・・・・・・・・名付けられなかった名に意味はない」
そう言って、ザオスはそれ以上の詮索を拒否するように目を閉じた。
ヴィナス「失礼。つい、辛い昔話にしてしまいましたね」
ザオス「構わん、・・・・・・・“セルクス博士”」
ヴィナス「・・・やれやれ、先ほどの仕返しですか? まぁ、いいでしょう」
苦笑しながら、ヴィナスは身を翻した。
ヴィナス「それでは失礼します。ザオス様」
ザオス「あぁ、引き続き、研究に勤しみたまえ、ヴィナス」
ザオスが言い切る前に、ヴィナスは部屋の扉を閉めた。
§
火星へと向かう部隊の準備が完了し、出発の時が訪れた。
ルリ「ロミナ姫、そちらの準備はどうでしょうか?」
ロミナ「コスモ・アークとの連結は完了。いつでもいけます」
ルリ「では、こちらもジャンプ、開始します」
それを合図に、ナデシコCとエルシャンクのブリッジが慌しくなる。
そして、それらの後方に連結されているコスモ・フリューゲル、コスモ・アークも同じだ。
由佳「ディストーションフィールドとプロテクトフィールドの干渉率に注意して!
失敗したらボソンジャンプに耐えられないわ!」
アネット「互いに50%50%(フィフティフィフティ)! 問題なしよ!」
由佳「よし。それではホシノ艦長、ユウハブコントロール」
ルリ「アイハブコントロール、了解・・・・・・これより、本艦隊は火星に向かいます」
ハーリー「艦内に異常なし、その他まとめてオールOKです!」
ピコンっと、ハーリーの言葉を証明するかのように、
オモイカネが「よくできました」のマークを映し出した。
その後、ルリが呟くように唱える。
ルリ「ジャンプ」
ボソンジャンプ、そしてマイクロワームホール航法による跳躍が開始された。
目的地は、火星。
78
:
藍三郎
:2008/01/09(水) 20:49:46 HOST:103.95.231.222.megaegg.ne.jp
=火星開拓基地=
イルボラ「失せろ、化け物ども!!」
零影を駆って、火星に降下するメカブーストと戦うイルボラ。
大きさには数倍の差があるが、
零影の秘めたる力とスピードは、そのハンデを者ともしない。
忍刀で切れ込みを入れ、そのまま下へと下がる事で、
メカブースト・ガルチャックをジッパーのように真っ二つにする零影。
しかし、数の差は如何ともし難い。
火星開拓基地周辺では、今も赤い空から、無数のメカブーストが降下し続けている。
メカブーストの魔手は、開拓基地の居住区へと伸び始めていた。
ハザード長官の意向で、こちらの防備は中枢に比べ、手薄になっている。
住民の防備に戦力をつぎ込む気など無いのだ。
イルボラ「地球人どもの住処とはいえ、むざむざ見過ごさねばならんとは・・・」
その時・・・
爆炎を撒き散らして、メカブーストの一体が吹き飛んだ。
居住区に向かうメカブーストに立ちはだかる紅い影・・・
イルボラ「あれは・・・飛影!!」
もう一体の忍者戦士が、炎を背景に参上する。
飛影「・・・・・・」
そして、外側の宇宙でもまた・・・
空間の歪みと共に、火星を眼下に臨む位置に、四隻の戦艦が現れる。
ハーリー「ナデシコC、目的地へのジャンプ完了!随伴するコスモ・アーク、
およびエルシャンクとフリューゲルも、ワープに成功したようです!」
ゴート「まずは第一段階をクリア、といったところか・・・!!」
安堵する暇も無く・・・
彼らの目に飛び込んできたのは、レーダーに映る無数の熱源反応だった。
レーダーを通さずとも、モニターからの目視で十分見える。
火星を取り巻くように蠢く、無数のメカブーストの姿を。
ユキナ「メカブースト!?しかも、あんなに・・・」
ジュン「それだけじゃない!ザ・ブームの戦闘メカも出て、応戦している!」
その眼に映るのは、赤い星を舞台に、
シャーマンやバンクス達が、メカブーストと戦う光景だった。
彼らはザ・ブーム軍とガイゾックが激しく争う、その真っ只中に転移してきたのだ。
驚愕は、他の艦のクルー達も同様だった。
アネット「火星の状況はどうなってるか分からないって話
だったけど・・・これはぶっ飛び過ぎよ!」
アイ「左右にそれぞれ、旗艦と思われる大型戦艦が位置しています。
一方はバンドック・・・ザ・ブーム側のは、始めて目撃されるタイプです」
ガメラン「姫様!あの戦艦は・・・」
ロミナ「ええ・・・間違いない、ザ・ブーム軍のアネックス皇帝の旗艦です!」
シャフ「皇帝自ら、この地球に!?」
ならば、これだけの大戦力も納得できる。
ダミアン「敵の親玉がお出ましって事かよ?」
ジョウ「どうすんだ?ここで決着をつけちまうか?」
ハーリー「艦長!メカブーストの何体かがこちらに向かってきますが・・・」
ルリ「作戦に変更はありません。
ディストーションフィールドを全開にして、火星へと降下します」
ゴート「うむ・・・余計な時間を取られるより、突っ切る方が有利か」
ルリ「降下後、エステバリス隊を直ちに発進させます。
パイロットの皆さんは遅れの無いようお願いします」
サブロウタ『了解♪』
四隻の戦艦は降下していく。
一方、バンドックにて指揮を執るブッチャーは・・・
ブッチャー「なにぃ〜〜地球人どもの戦艦が現れたぁ〜〜?」
ギッザー「は、はい!そのまま火星へ降下していきます」
ブッチャー「フン!ワシを無視していくとは太い奴らよのぉ〜〜。
バンドックも火星に向かわせろぉ〜〜!!」
バレター「ギョイ、ブッチャー!!」
ブッチャー「グフフフフ!!逃がしはせんぞぉ〜〜、ザンボット3!!」
ナデシコCを追って、バンドックも最大速度で火星へと降下する。
二体の忍者戦士とガイゾック・・・
大いなる変転と決着の火種は、着々と赤い星に集いつつあった。
79
:
藍三郎
:2008/01/09(水) 20:51:24 HOST:103.95.231.222.megaegg.ne.jp
=火星=
飛影の奮戦もあり、火星軍はメカブーストを押し返しつつあった。
だが、ここでザ・ブームの一部隊が、飛影へと刃を向ける。
飛影「・・・!!」
スケルトンのビーム砲が、飛影を狙い撃つ。
イルボラ「シャルム!!」
シャルム「何化け物相手に油売っている!さっさと飛影を捕まえろ!!」
イルボラ「だが、ガイゾックは・・・」
シャルム「皇帝陛下は、伝説のニンジャ・・・飛影を御所望だ!
G・エクセレントが来た以上、地球人の基地なぞ放っておけばいい!!」
イルボラ「・・・・・・」
シャルム率いるスケルトン隊は、
なおも飛影に攻撃を続けるが、その俊敏さゆえに中々当てる事が出来ない。
シャルム「ちぃ・・・ちょこまかと・・・
イルボラ!お前の零影で奴を取り押さえろ!!」
イルボラ「私に指図するつもりか・・・?」
シャルム「生意気な口を叩くな!!
裏切り者のお前を拾い、零影をくれてやったのは誰だ?
どこにも行き場のないお前は、私達の命令に服従するしかないんだよ!!」
皇帝がすぐ近くにいるからか、シャルムの態度もいつも以上に居丈高になっている。
基地を預かっているハザード長官でさえこんな事を言い出す。
ハザード『そうじゃ!飛影を皇帝陛下への貢ぎ物にすれば・・・
ワシらの地位も鰻登りよ!!それに比べれば、こんな基地など安い物!!』
イルボラ(保身しか考えぬ地球人・・・権力にしがみつくザ・ブーム・・・
私がエルシャンクを去ったのは、こんな奴らの御守をしてやるためなのか?)
苦渋に眉を歪ませるイルボラ。
己の欲に執着する者達を目の当たりにして、彼の心には揺らぎが生じ始めていた。
イルボラ(いや・・・私も、愚かさでは奴らと大して変わらぬか・・・
自分の心の弱さから眼を背けたいあまり、姫の下から逃げ出したのだからな・・・)
今になって、深い悔恨の念が湧き上がる。
しかし、今更後戻りはできない・・・
罪悪感に締め付けられながらも、
それゆえに背信の道を戻る事のできない悪循環・・・
イルボラ・サロは、信念どころか自分自身をも見失いかけていた。
イルボラ「許せ、飛影ッ!!」
飛影「――――――・・・」
零影を疾駆させるイルボラ。両者の刃が、交錯し、苛烈な火花を散らした。
兵士「ちょ、長官!こちらに、新たに四隻の戦艦が降下してきます!」
ハザード「何ぃ〜〜〜!?」
ナデシコCを初めとする四隻の艦が、赤い大地に舞い降りる。
ルリ「機動兵器部隊は、直ちに発進してください」
ジョウ「黒獅子、行くぜ!!」
マイク「頼んだぜ、爆竜!!」
レニー「鳳雷鷹、発進します!」
三機の忍者メカを始めとして、続々と艦載機が発進していく。
ルリ「こちら、宇宙統合軍所属、ホシノ・ルリ少佐です。
ハザード・パシャ長官、聞こえますか?」
ハザード「な、何じゃい!?」
ルリ「私達は、貴方を逮捕し、
火星開拓基地を貴方の支配から奪還するために来ました。
ですが、現在は非常時です。
メカブーストの撃退に専念するためにも、早めに降伏してくださると助かります。
長官として、潔い判断を期待します」
兵士「どういたしますか・・長官?」
ハザード「フン!小娘風情が生意気な!無視じゃ無視!!」
ハザード(そうじゃ・・・謀略と根回しの果てに手に入れた今の地位・・・
そして、さらに強大な権力にまで手が届いておる!
今更、全てを捨てて、縄で繋がれるなど冗談ではないわい!!)
ハザードの地位と権力への執着の前では、
長官という身分の責任すらも塵芥のように軽いものだった。
シャルム「そうだな・・・エルシャンクもいるとなれば、尚更だ。
者ども!まずはエルシャンクを抑えるぞ!
ロミナ・ラドリオの首級を陛下に捧げるのだ!」
くの一「「「はっ!!!」」」
シャルム配下のくの一軍団が、隊長の号令に続く。
ハーリー「火星側からの応答はありませんね・・・」
ルリ「予想通り、ですが・・・」
プロスペクター「ザ・ブームとガイゾック、両陣営を相手にする事になりますなぁ」
ミナト「前回、火星の遺跡でやったみたいに、ナデシコCでシステムを掌握できないの?」
ジュン「いや、今回は状況が違うよ。
ガイゾックもいる以上、防衛システムまで無力化してしまっては被害が大きくなる」
ルリ「そういう事です。まずは、基地と居住者の安全が最優先です。
火星基地を防衛しつつ、メカブースト、およびザ・ブーム軍団を撃退してください」
80
:
蒼ウサギ
:2008/01/15(火) 22:37:50 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
二大勢力を同時に相手にするということは、いつも以上に熾烈な戦いを強いられる
予感が誰にでもあった。
悠騎(“剣”は間に合わなかったか……戦力差はかなりあるが、やるしかねぇよな)
すでに完成しているというバーサーカー・メイルを装備するというレイリーからの提案はあったが、
それは止めておいた。
確かに突進力や防御力は飛躍的に向上するが、“新たな剣”が完成していない今は
武装面を考えるとバランスが悪くなると悠騎が判断したからだ。
気合を入れ、ブレードゼファーの操縦悍を握りしめ、眼前に見えるガイゾックの敵陣に迫る。
悠騎「いくぜぇぇ!」
紅き翼を持つ機体が敵陣を突っ切っていく。
ブレードゼファーが通りすぎた直線上のメカブーストが次々に撃墜していく。
だが、敵の数は圧倒的。すぐに増援が現れてきてブレードゼファーに迫る。
悠騎「っと、やべっ!」
予想以上の数で攻められ、焦る悠騎だったが、直後、
離脱を促す友軍からの通信が飛び込んできたので瞬時に反応してその場から離れる。
すると、ブレードゼファーに仕掛けてきたメカブーストがビームとミサイルのスコールに見舞われ、
落ちていく。
ムスカ「ヒュウ、こんだけウジャウジャいるとぶっ放し甲斐があるなぁ」
エッジ「全くっすわ。おい、悠騎、良い引き付け役だったぜ!」
親指を立てて悠騎を称えるが、悠騎自身は勝手に囮役にされてたことについては面白くない様子だ。
悠騎「まぁ、いいや!それより、ザ・ブームのほうはどうなってる?」
ムスカ「それが、ちょっと変わったことになっててよ、あの飛影がすでに現れていて
ザ・ブームと交戦してるらしい」
悠騎「あの忍者野郎が?なんで?」
ムスカ「さぁな、けどよ……!」
各機のコクピット内で警告音が鳴り響く。
瞬く間にレーダーが敵機の反応で覆い尽くされていった。
ムスカ「今はお喋りよりこいつらを落とした方が身のためのようだぜ!」
エッジ「同感!」
悠騎「ちっ!一匹見たらなんとやらってか!」
固まっていた三機は即座に散開。各個撃破に向かった。
§
=ナデシコC=
ハーリー「かかかかかか艦長ぉぉおお!!」
執拗に襲いかかるメカブーストやザ・ブーム軍機の群れにハーリーは今にも泣きそうになる。
ほとんどが艦の周囲に配置されているエステバリス隊によって撃墜されていっているので
ナデシコC事態に損害は今のところほぼないのだが、ハーリーの肝は休まらないようだ。
ルリ「ハーリー君、落ち着いて。戦闘状況の随時報告を」
ハーリー「え、えっと、こっちの戦力を5:5の割合で分散して各勢力と交戦中……
ザ・ブームの方はあの飛影っていう機体の存在によって少しかき乱されているようですね」
ルリ「そう……」
短く答えて、ルリは黙考する。何故、飛影がこの場に現れたのか……
自分なりに答えを導きだそうとした。
しかし、それはハーリーの叫びによってすぐに中断された。
ハーリー「かかかかかか艦長ぉぉおお!」
ルリ「だからハーリー君、落ち着いて」
先と同じようにたしなめるが、ハーリーの様子は先程よりも切迫していた。
ハーリー「じょ、じょ、上空から新たな反応!……これはバンドッグです!」
ルリ「!」
さすがのルリもハッとした。
新たに現れたそれはガイゾックの旗艦ともいえるブッチャーの艦だからだ。
81
:
ニケ
:2008/01/17(木) 13:55:31 HOST:zaq3dc05ee9.zaq.ne.jp
ブッチャー「ブホホホ!
とうとう、見つけたわい。
今日で貴様らとの腐れ縁もおしまいしてくれるわ!」
土偶を象ったような四足の戦艦、バンドック。
その内部から、正に蟻の子然と湧き出してくるメカブーストの群れ群れ群れ。
ただでさえ目一杯だったレーダーの画面が、瞬く間に赤い光点で覆いつくされる。
勝平「出やがったな、ブッチャー!!」
その台詞はお前に返してやるといわんばかりに、グラップを構えなおして上空を睨みつけるザンボット3。
慎吾「あわてなさんな。
わざわざ向こうから来てくれたんだし、逃げやしないさ」
キリー「この数だ。
おそらく敵さんもケツに火がついちまってるんだろうぜ」
今にも飛び出しそうな勝平達に、的確な読みで敵の内情を読み取ったゴーショグンが待ったをかける。
メカブーストは元より、バンドック自身も巨大な火力を秘めた侮るべかざる相手なのだ。
総力戦然と化したこの戦い、慎重に行かねばならない。
悠騎「よっしゃ!そういうことなら、露払いは任せとけ!」
アイラ「待て悠騎!先鋒は私が務める」
早速一番槍を突こうといつもの通り、突貫しようとする悠騎だったが、いきなり背後からそう呼び止められて、思わずつんのめった。
悠騎「あ、アイラ姉さん。でもよ・・・・」
アイラ「足回りも火力も私の方が高いんだ。切り崩しは私の方が適任だ」
確かに過剰なチューンを施されたアイラのズィッヒェルシュヴァルベの方が、次世代機とはいえ安定性を求められたブレードゼファーに総合力では勝る。
しかし、それでもこれまでの戦いで常に先陣を切ってきた悠騎にとって、この指示は少々調子を狂わされるには違いない。
だが悠騎が何か言うより早く、アイラのシュヴァルベは敵陣に飛び込んでいった。
アイラ「はあああぁぁぁっ!!」
黄金に輝くその両脚、ライトニングブリンガーを真上から叩き込まれたメカブートが、真っ二つに両断される。
間髪いれずに抜き放ったクライングジャッカルⅡで周囲の敵へも素早くけん制していく。だが・・・
アイラ「っ!!?」
ツーマンセルでの戦闘に慣れ親しんだアイラだけに、パートナー(エレ)の位置が僅かな死角となった。
無論僅かな隙だ。
量産型の人工知能で動くメカブースト程度に突ける隙ではない。
だが今回は数が多すぎた。
津波のように押し寄せる敵の前では、ほんの僅かな隙に敵の攻撃が入り込むのも止むを得ない事とも言える。
一体のメカブーストがアイラの攻撃の隙間を縫って肉薄する。
その腕が振り下ろされようとした正にその瞬間、間一髪で背後から撃たれた機関砲の射撃に、メカブーストの動きが阻まれる。
悠騎「待ちやがれってんだ!」
声に続いて、切り込んできた悠騎のブレードゼファーが、両手の剣で周囲の敵をなぎ払う。
悠騎「無理すんなよ。姉さん」
アイラ「無理だと・・・無理などしていない!
無茶をしているのはお前の方だろう!!」
シュヴァルベと背中合わせになって諌める悠騎に対し、アイラは怒鳴るように言い返した。
悠騎「なっ!!?」
アイラ「お前は才能に頼りすぎなんだ!
前回も我先にと突っ込んでいって・・・」
悠騎「ちょっと待てよ!今はそれは関係ないだろ!」
思わぬ反撃に、悠騎もつい勢いで怒鳴り返す。
アイラ「そうか?いざとなればまたあのシステムが発動するという甘えはないか?
不確定な要素に頼りすぎてはいないか?」
悠騎「そんな事は・・・」
アイラ「少しばかりいい戦果を挙げられたかといって、思い上がるな!」
悠騎「んだとぉ!!」
売り言葉に買い言葉で喧嘩腰に怒鳴りあう二人。
だが、敵はそんなやり取りを黙ってみていてくれるほどお人よしではない。
再び群がってくるメカブーストとザ・ブーム軍。
アイラ「ちっ!!」
悠騎「この!」
§
ハーリー「前線の陣形が乱れています!」
戦況を表示したレーダー画面。
丁度敵陣営とぶつかるその場所で、行き詰ったように次々と青い光点が固まっていく。
敵を突破できずにどん詰まりになっている証拠だ。
ルリ「不味いですね・・・」
82
:
藍三郎
:2008/01/17(木) 22:25:24 HOST:43.67.231.222.megaegg.ne.jp
ブッチャー「ひょぉ〜〜ほっほっほ!忌々しい奴らめが!
この赤い星ごと、まとめて焼き払ってくれる!!」
バンドックから眼下の戦場を見下ろすキラー・ザ・ブッチャー。
勿論彼の狙いは、かつて煮え湯を飲まされたG・K隊である。
リョーコ「ちぃ!あの土偶戦艦まで出てきやがるとはよ!」
元一朗「いや・・・これは好都合かもしれん」
火星の空に聳え立つバンドックを見上げて、元一朗は冷静に呟く。
エッジ「どういうこった?」
ヴィレッタ「ガイゾックのメカブーストは、火星全域に広がりつつある。
これはとても、私達だけで対処しきれる数じゃないわ」
ライ「しかし、この場で奴らの母艦を沈める事が出来れば・・・」
リュウセイ「そうか!頭を潰せば、
メカブーストどもも止まるかもしれねぇ!」
アヤ「少なくとも、新たなメカブーストの発生は止められるはず・・・」
エクセレン「つまり、あのツチダマちゃんを落とせば一挙解決って事ね!」
サブロウタ「ツチダマ・・・って何だ?」
ヒカル「知らないんですかぁ〜?劇場版ドラえもんに出てくるギガゾンビの手下で・・・」
真吾「だからそのギガゾンビってのは・・・」
ムスカ「・・・おいおい、脱線はその辺にしとけよ」
放っておくと話が広がりそうなので、とりあえず止めておく。
シャルム「我らザ・ブームの華たるくの一軍団!
ロミナ・ラドリオ!エルシャンクを貴様の血で染めてやる!!!」
スケルトンを駆るシャルムは、配下のくの一軍団を率いてエルシャンクへ向かう。
マイ「そうはさせませ〜〜ん!」
エクセレン「そっちがくの一軍団なら、こっちは美少女軍団で対抗よん♪」
パルシェ「話の流れが意味不明です・・・」
アルティア「というか、少尉を美少女と呼ぶには無理があります」
エクセレン「んも〜〜!分かってるわよ!
ちょっと軽いノリで言っただけじゃない!」
冷静に突っ込まれて逆切れするエクセレンだった。
マイク「喰らえ!光波弾!!」
レニー「飛べ!十字手裏剣!!」
シャルム「くっ、こいつら・・・!」
他のくの一軍団をG・K隊が抑えている中で、
マイクとレニーはリーダーであるシャルムを狙う。
しかし、流石はくの一軍団の長だけあってか、
三叉槍で振り回して巧みに双方向からの攻撃を凌ぎきるシャルム。
ジョウ「マイク!レニー!」
マイク「おおっと、兄貴!ここは俺達に任せてよ!」
レニー「ええ、ジョウは飛影やイルボラの下へ向かって!」
ジョウ「お前ら・・・」
レニー「エルシャンクなら、私達やG・K隊が守ってみせるわ!」
マイク「それより兄貴は、イルボラとの決着を!」
ジョウ「・・・ありがとよ。恩に着るぜ!」
シャルムの相手を二人に任せ、火星開拓基地へと向かうジョウ。
自分の気持ちを汲んでくれた親友達に、感謝の念を抱いて・・・
シャルム「私を素通りだと?黒獅子め、舐めた真似をしてくれる!」
憤慨するシャルムに、再び十字手裏剣が襲い掛かる。
レニー「貴女の相手は、私達で十分よ!」
マイク「修行していたのは兄貴だけじゃない!俺達だって強くなってるんだ!」
シャルム「小癪な・・・餓鬼どもが!」
ロミナ「フォトン砲で迎撃します!」
ガメラン「はっ!フォトン砲、発射――っ!!」
エルシャンクから放たれる光子の渦が、群がるシャーマンやバンクスを吹き飛ばす。
シャフ「敵の第一波を撃滅!続けて、第二波が来ます!」
ロミナ「フォトン砲の再チャージを!
その間、機関砲とミサイルで敵の侵攻を食い止めます!」
普段のおっとりした姿が嘘のように、声を上げて指揮を飛ばすロミナ。
これまでの戦いで培った、的確な指示を送り、
エルシャンクに向かってくる敵を撃退していく。
今の彼女は、『ラドリオ星の姫君』ではなく、
名実共に『エルシャンクの艦長』としての役割を果たしていた。
ロミナ(ジョウ・・・エルシャンクは、私が必ず護ってみせます・・・
ですから貴方は、イルボラを・・・
私では救えなかった彼ですが、貴方ならば、きっと・・・)
ジョウに望みを託しながら、ロミナは意識を戦場へと集中させるのだった。
83
:
藍三郎
:2008/01/17(木) 22:26:25 HOST:43.67.231.222.megaegg.ne.jp
戦場を舞う紅き影は、群がるシャーマンやバンクス、メカブーストを次々と斬り捨てる。
まさに一騎当千、獅子奮迅の戦いぶりである。
飛影「・・・・・・」
しかし、最強最速を誇る飛影といえど、
間断なく襲い掛かる敵から居住区を護るには、
一点に留まって守勢に回らざるを得なかった。
それに加えて・・・この場で、飛影と同等の技量を誇る、
最強の敵を相手にしなければならなかった。
イルボラ「飛影ェ―――――ッ!!」
イルボラ・サロの駆る零影が、忍者刀で斬りかかってくる。
自分と同等のスピードには、さしもの飛影も回避しきれず、同じく忍者刀で受ける。
イルボラ「もはや・・・私には、貴様を斃す事しか残されておらんのだっ!」
自分の中の迷いを、後悔を、振り払うように、猛然と刃を振るうイルボラ。
かつて地上で戦った時のように、紅と蒼の影が幾度も交錯する。
しかし、今回は紅の影の方が明らかに動きに精彩を欠いている。
居住区を護る意志のある飛影は、
降下するメカブーストにも注意を払わなければならない。
その違いが、この互角の戦いにおいて致命的な差になると分かっていても・・・
果たして、その差はすぐに結果として現れた。
零影の刃が、ついに飛影の肩を穿ったのだ。
飛影「―――――!!」
大地へと落ちていく飛影に、零影は容赦なく追い討ちをかける。
マキビシランチャーの雨が、紅い影を撃ち抜く。
イルボラ「死ねぇ――――ッ!!」
忍者刀の切っ先を下に向け、トドメを刺そうと加速した時・・・
ジョウ「待ちやがれぇぇぇぇ!!!」
イルボラ「!!!」
突然、イルボラに正面に割って入る黄色い影。
ジョウの叫びを聞かずとも、それが黒獅子である事は直ちに察せられた。
イルボラ「くっ、邪魔をするな、ジョウッ!!」
飛影を斬るはずだった刃は、代わりに黒獅子へと命中する。
ジョウ「ぐはっ・・・!」
元々無理な跳躍だったのか、空中で大きくバランスを崩し、地面へと落ちていく黒獅子。
それを目の当たりにして、イルボラの中で一気に積年の恨みがこみ上げてきた。
あるいはそれは、敵の弱味につけ込む、
後ろめたさから目を背けるためだったのかもしれない。
イルボラ「そうだ・・・貴様さえ・・・貴様さえいなければ、私はッ!」
さらにイルボラは追い討ちとして、六方手裏剣を投擲する。
今の黒獅子にそれを躱す術は無い。
旋回する手裏剣は、コクピットに近い部分へと命中する。
ジョウ「うぉぉっ!!」
直撃しなかった事は、非常に悪運が強いと言うべきか。
しかし、コクピットハッチは破壊され、その時の衝撃で、
ジョウは黒獅子のコクピットから火星の大地へと投げ出されてしまう。
レニー「ジョウ!!」
マイク「兄貴!!」
その光景を目の当たりにした仲間達は、顔面蒼白になる。
宇宙服を着ていたため、すぐに死ぬという事は無い。
だが、ここは戦場・・・
爆撃や閃光と言った命の危険が、いつ寄って来るか分からぬ場所なのだ。
ジョウの命は、今や風前の灯となっていた。
イルボラ「!!!」
一方、黒獅子にさらなる追撃をかけようとしたイルボラは・・・
本来の標的を失念している事に、土壇場で気付いた。
だが、その時にはもう遅い。今度は彼が、飛影を前に致命的な隙を晒してしまった。
飛影「――――――・・・・・・」
態勢を立て直し、音も無く背後に忍び寄った飛影が、忍刀を抜き放つ。
即座に反応した零影も、忍刀で迎え撃つ。
だが、振り返った場所にいた飛影は、霞のごとく消えてしまう。
ソレが分身だと気付いた時には、零影はさらに背後からの斬撃を喰らってしまう。
イルボラ「がぁ・・・っ!!」
今度は切り傷を負った零影が、火星の大地目掛けて落下していく・・・
84
:
藍三郎
:2008/01/17(木) 22:27:24 HOST:43.67.231.222.megaegg.ne.jp
ジョウ(・・・・・・へっ、ざまぁねぇな・・・)
赤い大地に横たわって、ジョウは自嘲するように呟く。
結局、今回もイルボラの零影には太刀打ち出来なかった。
悔しいが、あの飛影と零影は、自分達の機体では及びもつかないレベルにあるらしい・・・
だが、先ほどの行為は、ジョウによって自身の勝利よりもなお重みのある成果だった。
あの、飛影の危機を救ったのだ。
いつも自分達を助けてくれた紅の忍者に、ようやく少しだが借りを返せる事が出来た。
零影を倒せるのは飛影しかない。
ならば、何をおいてもまずは飛影が護る事は、
全体に勝利に・・・そして、彼の仲間達を護る事に繋がる。
己は戦場で何をすべきか・・・
どうすれば、仲間達を護れるのか・・・
修行の中で散々悩んで、出した結論がこれだった。
遠くから爆音が聞こえる。
彼がいる場所も戦火に飲み込まれるのは、時間の問題だった。
ジョウ(くっ・・・・・・!)
だが、ジョウはまだ生き延びる事を諦めていなかった。
如何な極限状況に晒されても、生きる意志さえ喪わなければ、活路は開ける。
それが、火星から脱出した時に・・・
そして、今までの死闘を経て学んだ事だった。
――――――そうだ・・・それでいい・・・
ジョウ「!?」
這って進むジョウの下に、突如届いた謎の声。
――――――成すべき事が為に己を殺し、使命を果たさんとする、刃の意志・・・
――――――そして、如何なる窮地においても“生”を諦めない、鉄の意志・・・
――――――それこそが、忍の極意なり・・・
ジョウ「あんたは・・・まさか!」
初めて聞く声。だが、妙に懐かしい気がする・・・
そう・・・長きに渡って共に戦い、助けられてきた戦友・・・
ジョウ「飛影!!」
85
:
藍三郎
:2008/01/17(木) 22:28:26 HOST:43.67.231.222.megaegg.ne.jp
果たして、ジョウの目の前にいたのは飛影だった。
今いる空間が現実なのか、それとも頭の中の幻想なのか、それさえも区別がつかない。
分かっているのは、今自分が飛影と意志の疎通を行っている事だけ・・・
――――――ニンジャの力・・・
それは、この宇宙を来るべき脅威から護るための力・・・
ジョウ「来るべき・・・脅威?」
――――――その力は絶大・・・
ゆえに、私はそれを正しき忍の心を持つ者にのみ託すと決めていた・・・
ジョウ「正しき忍の心・・・」
――――――道無き力は、ただの暴力でしかない・・・
我は、御前達が力を持つに相応しい存在かどうか、見極める必要があった・・・
ジョウ「そうか・・・だから今まで、俺達の前に・・・」
――――――そして、今お前は、我の前で正しき忍道を示した・・・
お前には、ニンジャの力を受け継ぐ資格がある・・・!
ジョウ「俺は・・・護りたい」
背負った想い全てを搾り出すように、ジョウは言葉を紡ぐ。
ジョウ「マイク、レニー、ダミアン・・・
ロミナ姫やエルシャンクの皆・・・そして、大勢の仲間達・・・
皆を護れる力が欲しい・・・!!」
―――――その信念(おもい)、忘れるな。さすればお前は、己の忍道を貫き通せよう・・・!
ジョウ「飛影!俺に力を貸してくれ!!」
―――――ニンジャの極意、今こそ・・・・・・!!
紅の輝きが視界を覆う。
その瞬間・・・全身を、全く未知の感覚が覆っていた。
ジョウ「こ、これは・・・」
目が覚めた時・・・ジョウの体は宙に浮いていた。
辺りに広がるは火星の大空。
まるで生身で浮いているような浮遊感・・・だが、実際には生身ではない。
ジョウ「俺は・・・飛影になったのか!?」
ジョウ・マヤは飛影の中にいた。
その表現も的確ではない・・・黒獅子に乗る時とは全く別物の、
自身が飛影そのものになったような一体感。
強いて言えば、『合身』というべきか・・・
感覚が研ぎ澄まされ、かつてない程の力が溢れてくる。
ジョウ「俺はまだ、戦える・・・!飛影!お前と一緒に!!」
強大なるニンジャの力・・・その片鱗を感じながらも、
ジョウの中ではそれに勝るとも劣らぬ闘志が湧き立っていた。
86
:
蒼ウサギ
:2008/04/21(月) 20:47:21 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
止めどなく迫り来るメカブースト。
撃墜を繰り返してもその勢いは衰えることを知らない。
ガイゾックの旗艦であるバンドックを狙うという方向性は決まったものの、それは容易ではない。
ブッチャー「ホーホッホ!メカブーストは出血大サービスで放出中よ〜!遠慮なく受けとれい!」
圧倒的物量戦を仕掛けて調子づくブッチャーの笑い声が耳に障る。
勝平「くっそ〜!ブッチャーの奴、調子に乗りやがって!」
遠く上空に見えるバンドックを睨み付け、勝平は苛立ちを募らせる。
そんな勝平に、キョウスケが諭す。
キョウスケ「勝負時を見誤るな、損をするぞ。逆に見極めれば大儲けだ」
勝平「けど!時間が経てばこっちが疲弊するだけだぜ!」
キョウスケ「……勝機は必ず来る。多少、分が悪いがな」
§
悠騎「この!鬱陶しいんだよ!」
アイラとのいざこざを尾を引いているかのように、悠騎の心はさざ波立っていた。
Dソードが大振りとなり、傍目からも荒さが目立つ。
アイラ「悠騎!そんな動きでは早死にする!前に出すぎるな!」
尤もな忠告なのだが、相手がアイラだったせいか、悠騎は噛みついてきた。
悠騎「それはこっちの台詞だぜ!」
アイラ「なに……!?」
悠騎「姐さんこそ、いつもの動きじゃねぇ!やっぱお嬢がいねぇからか!?」
アイラ「っ……エレがいないから私が冷静ではないというのか!?」
悠騎「違うのかよっ!?」
互いに言い争いながらも、次々にメカブーストを墜としていく様は流石を思わせたが、
数で攻めてくる相手にそれはいつまでも通じない。
徐々に劣勢が目立ち始め、二人が気付いたときには多数のメカブーストが周囲を囲っていた。
アイラ「ちぃ!」
悠騎「くそがっ!」
毒づいている間に集中砲火を受けた二機は火星の赤い大地に叩きつけられる。
その隙を逃すことのないメカブーストのAIが追撃をかけてきた。
ムスカ「おっと、させねぇぜ!」
二機に迫るメカブーストの群れの背後からその数に勝るミサイルが飛来し、全てを撃墜させた。
爆発で生じた黒い煙が悠騎とアイラの視界を覆ったが、そこからハイドランジアキャットが姿を見せ、
ほぼ同時に二人のコクピットの通信画面にムスカの顔が映し出された。
ムスカ「おいおい、戦力差は圧倒的ってわかってるだろ?揉め事は勘弁だぜ?」
悠騎「そりゃあ……わかってるけどよ……」
悠騎が歯切れ悪く言い淀むと、言い訳を聞いてる暇はないといった感じでムスカが制す。
ムスカ「動けるか?あっちで苦戦している部隊がいるから援護にいくぜ」
悠騎「あ、あぁ……」
アイラ「……了解」
軽めの諫めではあったが、状況が状況だけに二人の頭を冷やすには充分だった。
二人は機体をすぐに起こし、すでに上空に群がっているメカブーストに仕掛けている
ハイドランジアキャットに続いて飛び上がる。
その時だった。
コスモ・フリューゲルから味方全機に向けて緊急連絡が発信された。
アネット『戦闘中の全パイロットに告げます!これより、フリューゲル、
ナデシコCが主砲を発射します!射線軸上の機体は退避してください!』
アネットの通信後すぐに各味方機に二艦の主砲射線軸範囲のデータが送信された。
ムスカ「どうやら攻撃力のある二艦で道を開くみたいだな。悪くない手だ」
アイラ「……18.52秒に発射。ここは該当範囲内です」
悠騎「っしゃ!ならギリギリまでこいつらを引き付けるぜ!」
87
:
蒼ウサギ
:2008/04/21(月) 20:48:58 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
§
由佳「コロナキャノン、最大出力!グラビティブラストの発射に合わせて撃ちます!」
二艦同時広域砲撃。
数の差で圧倒する敵戦力を可能な限り掃討し、バンドックへの突破口を開くという作戦だ。
これが起死回生のきっかけになることを祈りつつ、由佳は指示を下す。
コスモ・フリューゲルの動力が激しく稼動しエネルギーを充填していく。
アネット「太陽との軸線上合わせ良し!照準固定!」
神「エネルギー充填率120%……といいたいところだが、
やはり火星では太陽からの供給率は86%が限度だな。
時間を掛ければ100%に達することも可能だが……」
由佳「そんな余裕はありません。これは奇襲ですから……
残りのチャージはプロテクトフィールドのエネルギーで補完します!」
アネット「了解!」
大胆な由佳の指示に、神は肩をすくめた。
神「本艦の防御力を落としてまで攻撃力を上げるとは……」
由佳「攻撃は最大の防御ですよ!」
わざと不敵な笑みを浮かべてみせたのは単なる強がりではなく、
少しでもクルーの不安を和らげるためだ。指揮官の意気は、全体の士気に直結する。
内心では押し潰されそうなプレッシャーに苛まれても、
由佳は決して表情には出さず、力強く叫ぶ。
由佳「最終安全装置解除!射線軸上の味方機に最終警告発令!……ルリさん!」
艦内のサブモニターに映るナデシコCのルリに目配せをすると、ルリは小さく頷いた。
再び視線を敵陣に戻し、由佳は命令を下す。
由佳「コロナキャノン!発っし―――」
その時、艦内が振動と轟音に包まれた。
§
攻撃的重力波が無数のメカブーストを貫いていく。
放たれたグラビティブラストはその筋に道を作った。
ここぞとばかりに各機体が進軍するが、一つ疑問点があった。
そう、コスモ・フリューゲルのコロナキャノンの光が見えなかったことである。
悠騎「どうした、由佳!?」
沸き上がった嫌な予感が当たったのは数秒後だった。
アネットから全味方機に緊急通信が入る。
アネット『コスモ……ーゲル…敵機…奇襲……けて、コロナ……ノンの発射……
中止され……た!』
ノイズ混じりに聞こえるそれが危機感を煽った。
辛うじて聞き取れた単語から、コスモ・フリューゲルは敵からの奇襲を受けて
主砲が撃てなくなったと推測される。
悠騎「やべぇ!」
血の気が引く思いの中、悠騎はふと考えた。
この機を逃していいものか……と。
確かに作戦の効果は半分に落ちてしまったが、
それでもガイゾックの戦力は一時的にダウンした。
これは小さいが攻め込むチャンスである。
それを棒に振ってまで艦の防衛に戦力を割くべきか否か………
悠騎は逡巡しながらも、活路を見い出すための賭けを提案した。
悠騎「皆はこの機にバンドックに攻め込んでくれ……フリューゲルの応援はオレ一人で行く!」
アイラ「! お前一人でか!?無茶だ!」
悠騎「姐さんもさっき言ったろ。オフェンスならそっちが向いている!
……それに一応、考えがあるんだ」
アイラ「考え?」
悠騎「悪いが論議してる場合じゃねぇ……あの緑野郎は任せたぜ!」
語尾と同時に、悠騎はブレードゼファーを加速させた。
しかし、進行先はコスモ・フリューゲルではなく、コスモ・アークだった。
88
:
蒼ウサギ
:2008/04/21(月) 20:51:06 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
§
悠騎「コスモ・アーク!こちら星倉悠騎だ!聞こえるか!」
コスモ・アークへ向かいながら悠騎は回線を開く。応答したのはミキだった。
ミキ『こちらコスモ・アーク。先輩、どうしました?』
悠騎「すぐにレイリーと交信したい!回線開けるか?」
ミキ『は、はい!』
悠騎の勢いに押されるかのように、ミキが慌ただしくレイリーのいる
格納庫へと回線を開く。コクピット内のサブモニターにレイリーの顔が映し出された。
レイリー『なに?どうしたの?』
悠騎「バーサーカー・メイルと“剣”を使う!準備してくれ!」
レイリー『ちょっ、ちょっと待ってよ!バーサーカー・メイルは完成してるけど
、 “剣”はまだ無理だよ!』
悠騎「できてるところまでいい!頼む!使わせくれ!」
レイリー『ダメよ!未完成な武器ほど危険なものはないわ!
開発責任者として認めるわけにはいかない!』
嘗ての過ちを繰り返すわけにはいかない。元の世界での南極のような悲劇は……
レイリーには断固たる意志が、誓いがあった。
だが、悠騎も強い意志があり、引き下がろうとはしない。
悠騎「無謀かも知れないが、賭けたいんだよ!皆が生き残ってこの戦いに勝つ方法は、
オレにはこれしか思い付かねぇ!オレができることは全てやりたいんだよ!」
レイリー『………』
悠騎の気持ち、悠騎の本気の眼差しが伝わったから、レイリーは沈黙してしまった。
開発責任者としての信念と、芽生え始めた悠騎を信じてもいいと想う気持ちの狭間でレイリーは揺れる。
その時だ。
オドオドとした感じで二人の間にミキが割って入ってきた。
ミキ『あの、レイリーさん……先輩を信じてもらえませんか?』
二人の視線が、ミキが映し出されている通信画面に集まる。
その視線に気付いてミキは身を強張らせたが、さらに言葉を続ける。
ミキ『レイリーさん……Dバスターの時のようなことを繰り返したくないのはわかります。
でも、私、先輩を信じたら、なんとかなりそうな気がするんです!
だって私の憧れている先輩は、そういう人ですから……』
そこまで言って、ミキは途端に自分の言葉に赤面した。
ミキ『す、すみません!なんか部外者が生意気言って……その、今のは忘れてください……』
語尾をか細くして俯くミキに、悠騎はポカンとした間抜け面を晒していた。
レイリーが深くため息を漏らしながら告げる。
レイリー『ったく、このまま論議して時間が掛かったらそれこそ取り返しがつかないわ。
信じる云々より、あんた、絶対に譲りそうにないからね……
“剣”の方は今完成しているプログラムに、あんたが前に使っていた
エクシオンのバックアップデータでサポートするわ。準備するからさっさと着艦しなよ!』
悠騎「! お、おう!頼んだぜ、レイリー!」
レイリー『その代わり!ちゃんと生きて帰って来なよ!ヤバイと思ったら機体を捨てでも帰ってこい!
私が造ったもので死なれたら寝覚めが悪いからね!』
悠騎「肝に命じるぜ!」
吐き気がするほどの緊張感。だが、それを上回る闘志が燃えているのを感じながら、
悠騎はブレードゼファーをコスモ・アークの格納庫へと着艦させた。
89
:
蒼ウサギ
:2008/04/21(月) 20:51:39 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
着艦したブレードゼファーを整備員総出でバーサーカー・メイルの装着作業に取りかかる。
その間、悠騎はレイリーから新たなる剣、
D・O・D(ディメンジョン・オーバー・ドライブ)ブレードの説明を受けていた。
レイリー「さっきも言ったけど、D・O・Dブレードの出力制御プログラムにはエクシオンの
バックアップデータを補助として組み込んである。
けど、これはあくまで私独自の仮説を元にやっただけで成功の保証はゼロ、
正真正銘の出たとこ勝負になるわよ」
悠騎「あぁ。けど、なんでエクシオンのバックアップデータなんだ?」
レイリー「正確にはエクシオンの戦闘データのバックアップデータね。
あんたがエクシオン搭乗時にあのハーメルシステムを発動させた際、
とんでもなく巨大なビームソードを形成したことがあるでしょ?
あれはD・O・Dブレードの理想形に最も近い。
だから、その時の記録をプログラムに組み込むことで似た状況を再現できるかもしれない
……っていう根も葉もない理論よ」
悠騎「・・・・・なるほどな」
そう返事をして、すでに装着がほぼ完了しているブレードゼファーを見やる。
真紅の鎧、というのが第一印象だった。
駆動部である人間でいうところの関節部分を阻害することなく肩、腕、胸部、脚部に覆われた
紅のパーツは炎を彷彿とさせる攻撃的な形状をしている。
手は手袋の要領でより肥大化させた五指を、それぞれ装着されている。
そして、悠騎が驚いたことが一つあった。
バーサーカー・メイルを装着したブレードゼファーには、まるで肉食恐竜のような野太い尻尾が
あったのだ。レイリー曰く、あれはアンバランスになる機体のバランサーの役目を果たすとのことだ。
オート制御で動くため悠騎側では一切操作はできないとも付け加えられた。
悠騎(翼があって、尻尾もある………これで角があったらドラゴンみたいになってたな)
そんなことを考えていると、レイリーが妙に沈んだトーンで口を開く。
レイリー「……許さないからな」
悠騎「え?」
不意にそう言われて、悠騎が驚いて振り返る。
レイリーは、真っ直ぐに悠騎を見つめていた。
レイリー「生きて帰ってくるっていう約束、破ったら許さないからな!男だったら守れよ!」
悠騎「おう!上等!」
親指を立てて笑顔を見せてくれた悠騎は、どこか不安を拭い去ってくれる気がした。
§
艦背後からザ・ブーム軍の忍者ロボット攻撃を受けたことがコロナキャノン発射失敗の原因だった。
いや、そもそもの原因はこの混戦の最中に防御機能のエネルギーを攻撃に回したことかもしれない。
対空射撃や弾幕で敵機の攻撃を凌ぎながら、由佳はそう思った。
由佳(私の判断ミスで、皆の足を引っ張ってる……)
誰に責められたわけではないが、由佳自身はそう思い込んでいた。
歯痒さと己の不甲斐なさに唇を噛む。
だが、悔やむことはここを生き延びてからやるべきと、思い直し、矢継ぎ早に指示を下していく。
そんな時だ
レーダー観測を行っていたアネットが、こちらに並外れた速度で接近してくる機影を発見した。
アネット「本艦に急速接近する機体あり!数1………識別コードは……ブレードゼファー!?」
言いながらアネットは驚愕した。なぜなら、接近するブレードゼファーはそれまでの
ブレードゼファーのスピードとは段違いに速かったからだ。それは特攻機を思わせた。
由佳「お兄ちゃん……」
90
:
蒼ウサギ
:2008/04/21(月) 20:52:47 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
§
ぐんぐんとシャーマン部隊に迫るブレードゼファーだが、悠騎はその凄まじいGに
押し潰されそうになっていた。それでも、何とか目を開き、敵軍を捉えると、
コスモ・フリューゲルの手前で急制動し、直後に垂直へと舞い上がった。シャーマンの
人工知能は突然現れたそれを“敵”と認識したのか、“未知なる脅威”と捉えたのだろうか、
コスモ・フリューゲルの攻撃を一旦止め、次々にブレードゼファーを追い始めた。
悠騎「単純で助かるぜ!」
軽口を叩く悠騎だが、額の汗は止まらない。
暴れ馬なんてものが生易しく聞こえるくらいの、狂暴な機体だ。殺人的ですらある。
自ら設計に関わっているものの、まさに狂戦士の鎧(バーサーカー・メイル)だと悠騎は感じた。
悠騎(よし、これだけ離せば!)
悠騎は機体を制動さすて、中空に止まった。
スピードの定評があるシャーマンだが、今のブレードゼファーには追い付けず、遅れてやってくる。
全機でブレードゼファーを囲み、仕掛け時を伺っているように見える。
悠騎は、そこで背部に背負っている“剣”を抜いた。
剣といっても、鍔と柄だけで、刀身はない。
刀身はゼファーシリーズの動力であるDエネルギーで形成する必要があるのだ。
悠騎(頼むぜ……!)
心の中で強く叫び、悠騎はDエネルギーの出力レバーを倒した。
刀身の根元に当たる部分が真紅のエネルギーをチラチラと眩い輝きを放ち始める。
まるで炎の輝きを思わせるそれは、程なくして一振りの巨大な剣に………
悠騎「! なんだ?こりぁあ!?」
刀身は予想外なことに形成された。
だが、それは非常に波打ち立っていて、とても剣には見えない。フニャフニャだ。
悠騎「っち!」
ブレードゼファーの様子を伺っていたシャーマン達が一斉に襲いかかってきた。
あまりにお粗末なその剣を脅威と認めなかったのだろう。
舌打ちしながら悠騎は、ブレードゼファーを動かす。
悠騎「くそっ!失敗か!」
ヤケクソ気味に、思いきって剣を振ってみる。
もしかしたら鞭のような、しなりを見せてくれるのではないかと期待したが、
それは一瞬のうちに切り捨てられた。
風圧でかき消されたかのように、刀身が霧散したのだ。
試し斬りモドキの役割となった数機のシャーマンは、その動きで一瞬、動きを止めたが、
すぐまた仕掛けてくる。
悠騎「なにもできないのかよっ!」
開発者であるレイリーのせいであるとは微塵にも思っていない。
向かっ腹が立っているのは百パーセント自分だった。
ブレードゼファーの追加装備のお陰でシャーマン達に追い付かれることはないが、
逃げてばかりというのは癪だった。
悠騎「……冗談じゃねぇぜ!」
ブレードゼファーに逆噴射をかけ、制動すると、シャーマン達に向き直る。
悠騎「オレは………全力を尽くしちゃいねぇ!」
Dエネルギーの出力、その限界を突破した。
機体が警告音を鳴り響かす中、両手で剣を真っ直ぐに突き出す。
悠騎「ブレードゼファー……オレはお前の相棒だよな」
その問いに、返ってくる声はない。
悠騎「もし……オレの相棒でいてくれるなら……」
シャーマン達がブレードゼファーを射程内におさめる。各機が一斉に攻撃態勢
に入った。
悠騎は、腹の底から、有らん限りの声で叫んだ。
悠騎「オレの魂(こえ)に!応えてみせやがれぇぇぇ!!」
語尾のその一瞬、警告音も、周囲の音も聞こえない静寂が訪れた。
91
:
蒼ウサギ
:2008/04/21(月) 20:53:19 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
感覚が引き延ばされている妙な違和感。
その中で……気のせいであろうが……
ブレードゼファーが“応えて”くれた気がした。
まるで海を割ったモーゼの如く、真紅の一閃が奔る。
柄だけだったものから突如発生したエネルギーの放射束は確かに剣を型どっており、
微かに揺らめきを見せるそれは炎を彷彿とさせた。
そして、その直線上にいたシャーマン達が連鎖的に爆発していく。
悠騎「………!」
何が起きたのかわからない。わからないが……
悠騎「……反撃開始だ!」
何故そうなったのか、考えるのは頭の隅に追いやった。
今は反撃の時。
悠騎はブレードゼファーの両腕を思い切り振り上げ、肩に担ぐ要領から横薙ぎに振るい、回転した。
瞬く間に何体ものシャーマンがまとめて斬り裂かれ、爆発していていく。
それは、まさに一撃必殺に相応しい攻撃だった。
炎と煙がブレードゼファーを覆い尽くす。その渦中で、ブレードゼファーは再び剣を正眼に構えた。
刀身の長さは40mを越え、ブレードゼファーの三倍以上を誇っている。
悠騎「……いくぜ!」
その場にいるシャーマンを全て破壊し、ブレードゼファーは空を駆ける。
まさにその姿は
一斬討千(いっきとうせん)!!
§
レイリー「なに……今の?」
普通ではありえない現象に、レイリーの目が揺れる。
まだ試作機という段階の新装備はレイリーの方でリアルタイムで録画モニターしている。
開発者の目で稼働状況を把握し、今後の改良点に活かすためだ。
すぐさま今の現象が行った瞬間の映像に巻き戻して解析をする。
斬撃の瞬間で映像を静止させ、剣の刀身部分をアップで抜き出すと、タネが見えてきた。
レイリー「Dエネルギーの余波……不安定な出力が余剰エネルギーを大量に生んで、
それが斬撃の瞬間に広域に拡散している……」
整備員「どういうことです?」
近くで一緒にモニタリングしていた同僚に尋ねられ、
レイリーは分かりやすい言葉を考えながら解説する。
レイリー「つまり、あの剣の刀身を構成しているDエネルギーは出力が安定せず、
斬撃の衝撃で拡散……つまり外部に飛び散りやすくなってるの。
その飛び散ったDエネルギーがさながらビームの役目となって、
斬撃範囲外にいる敵機をも攻撃しているの」
そこまで言って、レイリーは思った。
あれは不完全な剣。
だが、それゆえに予想外な結果を生み出している。
レイリー「悠騎(あいつ)にそっくりね……」
危なっかしいけど、いつも真っ直ぐで、時に頼りになるアイツ。
レイリー(あんたなら私達の願い、もしかしたら叶えてくれるかもね。
戦いを終わらせて、元に世界に帰るっていう……)
そう思った時、レイリーの目には力強く振るわれる剣があるものを彷彿させた。
徐に、剣の設計データをモニターに呼び出すと、開発コードの「O・Dブレード」の文字を消して、
新たな名前を打ち込んだ。
“Dブレード・SS(シューティングスター)”
願いを叶えてくれる“流れ星”ようにと、想いを込めて……
92
:
藍三郎
:2008/04/23(水) 23:01:57 HOST:206.168.183.58.megaegg.ne.jp
マイク「うわぁぁっ!!」
レニー「マイク!きゃっ!!」
スケルトンの三又槍から放つ電撃が、爆竜と鳳雷鷹を襲う。
シャルム「泣け!叫べ!悲鳴をあげろ!ハハハハハハハ―――――!!」
倒れた2機を、シャルム率いるくの一軍団が包囲する。
シャルム「フッフッフッ・・・雑魚どもにしては良く頑張ったようだが、
所詮貴様らなど飛影のおまけに過ぎん。この紅影に敵うはずが無かろう」
三叉槍を構えるシャルム。
シャルム「すぐに仲間の後を追わせてやろう!!」
レニー「ふざけないで!ジョウはまだ死んじゃいないわ!!」
シャルム「どうせ時間の問題よ。ならば・・・先にあの世で奴を待っているんだな!!」
三叉槍を突き出し、トドメを刺そうとするシャルム。
だが、その時・・・・・・
シャルム「!!!」
彼女の近くに居たくの一軍団のスケルトンが、突如爆発した。
くの一「シャ、シャルム様!きゃああああ!!!」
動揺する間も無く、次のスケルトンが餌食となる。
シャルム「な、何だ!?何が起こっている!?」
くの一「解りません・・・どこからか敵が・・・!!!」
喋っている途中で、スケルトンの腹に風穴が開く。
その瞬間、爆炎の中から脱出する紅の影がシャルムの瞳に映る。
シャルム「な・・・・・・飛影だと!?」
天空に舞い上がった紅の影は、果たして飛影であった。
姿を見せたのも一瞬の間、眼にも止まらぬ速さで、残るスケルトン部隊に強襲をかける。
スケルトンも三叉槍で迎撃するが、
小さすぎる飛影を捕らえきれず、接近を許してしまう。
忍者刀が頭部に突き刺さり、そのまま真っ二つに両断される。
シャルム「ちっ、イルボラは何をやっていた!あの役立たずが!!」
マイク「と、飛影・・・」
頼りになる忍者戦士の救援・・・
だが、そこから発せられた言葉は、彼らのよく知る人物のものだった。
ジョウ「レニー!マイク!無事か!!」
レニー「ジョウ!?」
マイク「アニキが・・・飛影の中に!?」
レニーとマイクは驚きを隠せない。
ジョウ「いや、俺にもよく解らねぇんだけどよ・・・
どうも、飛影と一体化しちまったらしい・・・」
そんな会話を交わしている間も、スケルトン軍団はこちらに押し寄せてくる。
ジョウ「まぁ、その話は後だ!!今はあいつらを蹴散らそうぜ!!」
レニー「ええ!!」
スケルトンに十字手裏剣を投げつける鳳雷鷹。
ジョウの生存を確認し、彼女も士気が上がったようだ。
ジョウ「マイク!海魔に合体するぞ!!」
マイク「ああ!わかったよアニキ!!」
二足歩行で歩く竜の姿へと変形する爆竜。
そこに飛影が収まり、海魔へと合体完了する。
くの一「合体した!?」
ジョウ「行くぜっ!!」
マイク「火炎と電撃を・・・喰らえぇぇぇぇぇぇっ!!!」
海魔から放たれる炎と雷。
燃え盛る炎と荒れ狂う電撃の競演が、ザ・ブームのマシンを焼滅させていく。
93
:
藍三郎
:2008/04/23(水) 23:02:48 HOST:206.168.183.58.megaegg.ne.jp
シャルム「ちぃっ!!いい気になるなよ・・・!!」
ただ一機、無事で済んだシャルム機が、三叉槍を構えて突撃する。
鋭い槍の一突きが、海魔の胸部を襲う。
だが・・・その一撃は、敢え無く不発に終わる。
爆竜から咄嗟に分離したジョウ=飛影が、忍者刀で槍を受け止めたのだ。
シャルム「飛影ぇ!!どこまでも忌々しい奴!!
貴様の首を、皇帝陛下への貢物にしてやる!!」
手甲からミサイルを放つも、高速で移動する飛影には当たらない。
もはや、シャルムは完全に冷静さを欠いていた。
シャルム「さぁ、とっととあの世に・・・・・・がぁぁぁぁっ!!」
スケルトンの肩に深々と突き刺さったのは・・・
鳳雷鷹が背後から投擲した、一文字手裏剣だった。
シャルム「こ、小娘っ!!」
レニー「まさか卑怯とは言わないわよね?忍者“紅影”さん?」
シャルムが憤怒に顔を歪めたところで、さらなる追撃が彼女を襲う。
飛影の撃ったビーム弓銃がスケルトンの背部に直撃した。
シャルム「飛影ぇ・・・何なんだ!?
貴様は一体・・・・・・何者なんだ!?」
得体の知れない謎の忍者・・・
シャルムの中では、飛影への畏怖と殺意が綯い交ぜになっていた。
ジョウ「そいつは俺もよく解らねぇな・・・だが、俺の事なら教えてやるぜ!!
俺の名はジョウ・マヤ!!
お前らザ・ブームを地球から追い出すために、命をかけている男だ!!」
忍刀を構え、高速で切りかかるジョウ。
反対方向からは、レニーの鳳雷鷹も動じに仕掛ける。
レニー「大輪剣!!」
ジョウ「うぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
二機の斬撃が、スケルトンの胸部と胴を瞬時に切り裂く。
シャルム「ば、バカな・・・
この紅影が・・・・・・きゃあああああああぁぁぁぁっ!!!!」
全身から火花と電流を散らし、シャルムのスケルトンは爆発四散した。
青い装甲の破片が、火星の大地へと舞う。
ザ・ブーム火星軍の中核を担っていた紅影率いるくの一部隊は、ここに壊滅した。
ジョウ「おっしゃあ!!・・・・・・!!」
勝利の余韻に酔う暇も無く・・・
ジョウは、その脳裏に強い殺気を感じ取った。
感覚が以前よりも遥かに鋭敏になっている。
これも、飛影と合身した影響かもしれない。
そして・・・その殺気の持ち主は、自分の良く知る男だった。
レニー「ジョウ?」
ジョウ「気をつけろ・・・奴が来るぜ・・・!」
イルボラ「飛影ぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」
赤い空を突っ切って、蒼い影が迫り来る。
憎悪と憤怒を剥きだしにしたイルボラは、零影
マイク「ぜ、零影!?」
マイクは以前の戦いを思い出して戦慄する。
飛影と同等の力を持つ零影・・・
サイズは小さくとも、スケルトンなどとは強さの次元が違う。
だが・・・今のジョウに怯えは無かった。
今の自分には飛影がある・・・条件は五分・・・
それに、身に滾る熱い想いが、彼を突き動かしていたからだ。
ジョウ「マイク、レニー・・・」
いやに神妙な口調で話すジョウ。
ジョウ「イルボラは俺が倒す・・・いや、倒さなくちゃいけねぇんだ!!」
レニー「ジョウ・・・」
ジョウ「今日こそ俺は・・・あいつに勝つ!!」
イルボラ自身の為にも――――――
その台詞は喉の奥で飲み込んで、飛影は天を目指して飛翔する。
その瞳に映るのは、自身と同じ姿をした蒼い影・・・・・・
94
:
藍三郎
:2008/04/23(水) 23:03:43 HOST:206.168.183.58.megaegg.ne.jp
ジョウ「イルボラァァァァァァァッ!!!」
忍刀で、零影へと斬りかかる飛影。
二本の刀が重なり、激しい火花を散らす。
イルボラ「その声・・・貴様、ジョウかっ!?何故飛影と共に居る!!」
ジョウ「どうやら、選ばれちまったみたいなんでな!!」
イルボラ「ふざけるなっ!!
貴様が・・・地球人ごときが、飛影などにっ!!」
忍刀を振り払い、マキビシランチャーを発射する零影。
飛影もまた、同じマキビシランチャーで対抗する。
ジョウ「薄汚い裏切り者のてめぇに言われたかねぇな!!」
イルボラ「裏切り者だと・・・くっ、貴様に私の気持ちが・・・」
ジョウ「解らねぇな・・・解りたくもねぇ!!
姫様の信頼を裏切って敵に寝返った奴の言う事なんざよ!!だから・・・・・・」
再度忍刀を手に切り込む飛影。
殆ど同じ武装を持った両者の戦いは、鏡に映る自分自身との戦いのようであった。
ジョウ「きっちりと、実力で勝負をつけようぜ・・・!!」
イルボラ「いいだろう・・・!!
ここでハッキリさせてやる・・・貴様と私の力の差をなぁっ!!」
ジョウ「行くぜ!!イルボラァァァァァァァァッ!!!!」
イルボラ「ジョォォォォォォォォォォォッ!!!!」
再び始まる紅と蒼の忍者の戦い。
以前と違うのは・・・両者の内に、激情の炎が燃え盛っている事だった。
飛影の参戦と、ブレードゼファーのパワーアップ・・・
新たなる力の登場に、戦局は徐々に統合軍に傾いていく。
だが、そのパワーバランスを乱す存在が、新たに・・・・・・
争いの風が吹き荒れる火の星に、幾つもの機動兵器が舞い降りる。
先陣を切るのは、炎の軍神を思わせる赤色の機体だ。
ヴァルカン「ほほう、既に宴も酣(たけなわ)といったところか。
どいつから片付けるか・・・獲物の選別にも迷うというものだな」
クリスチャン「・・・・・・・・・」
クリスティン「・・・・・・・・・」
ヴァルカンのヘファイストスの背後に付き従うのは、
およそ地球圏で確認された事の無い機体だ。
鋭角的なデザインが、何処と無く“剣”を連想させる。
ヴァルカン「“ロストセイバー”全機に命じる!
各機散開して、G・K隊に攻撃を仕掛けよ!!」
「「YES, our commander」」
男女の声が一斉に聞こえる。
あまりに発声する瞬間が一致しすぎていて、
複数の男女が放った声とは思えないほどだ。
そして、一糸乱れぬ陣形を保ったまま、各方面へと展開する。
ヴァルカン「ふん、木偶人形に戦の醍醐味など解らぬか・・・
まぁいい、俺は俺で存分に愉しむだけよ!!この赤き星の戦場をな!!」
95
:
蒼ウサギ
:2008/05/13(火) 00:13:46 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
=コスモ・フリューゲル=
突如、艦内に鳴り響く警告音にアネットが叫ぶ。
アネット「11時方向より所属不明機接近!数多数!」
由佳「このタイミングで!?」
神「敵か、味方か……経験上のこの場合は……」
アネット「待って! 指揮官機と思われる機体を特定………
識別照合……アルテミスです!」
神「やはり……」
由佳「前者ですね……!」
由佳はブリッジ内の人間に気付かれないよう、
小さく舌打ちした。
その舌打ちに気付いたわけではないが、
由佳を落ち着かせるように神が肩に手を置く。
ウサギの着ぐるみ姿で。
神「艦長が苛立っていては艦は沈む。この程度の逆境、
これまでにも幾度となく乗り越えたはすだ」
由佳の顔に微笑が戻る。
由佳「………そんな格好で真面目に言われても、説得力ありませんよ」
神「むう、君の緊張がとれればそれでいいのだよ」
しれっと告げる神に、由佳は嘆息しつつも、
内心救われながら輝きが戻った目で正面を向き、味方の回線へと指示を下す。
由佳「皆さん、敵の増援です!高い確率で、所属はアルテミス!
各個撃破してください!苦しいでしょうが、ここが正念場です!
この戦いに勝って、帰りましょう!待っている人達の所へ!」
由佳の言葉、深く、優しく。
皆の心に響いた。
$
由佳の言葉は、実の兄にも響いた。
相手にしていたシャーマン群を、新たな剣で全滅させた悠騎は、
新しく現れた敵に向けて機体を飛ばす。
小回りこそ利かないが、トップスピードならばハイペリオンにもひけをとらない
今のブレードゼファーならば短時間で戦場を行き来することができるはずだ。
そう、妨害者さえいなければ………
ブレードゼファーのコクピット内に突然、敵機の接近を報せる警告音が鳴り響く。
それは、すぐに前方モニターで確認できた。
ヴァルカンのヘファイトスだ。
悠騎「やろっ!?」
ヴァルカン「小僧!相手になってもらうぞ!!」
関口一番。ヘファイトスがメルティング・チェーンをブレードゼファー目掛けて発射する。
高熱を帯びたその鎖を、悠騎「てめぇの相手してる暇はねぇ!!」
という言葉と共に、新たな剣で弾く。
同時に拡散したDエネルギーの“矢”がヘファイトスへと襲い掛かる。
ヴァルカン「ぬぅぅぅ!身を守ると同時に反撃とは小癪な!」
悠騎「これが、オレの新しい剣だ!」
流れるような動きで、剣を唐竹に振るう。
それをヘファイトスは、鎖を両手でピンと張り、受け止める。
衝突の瞬間、拡散した“矢”が雨のように降り注いだ。
96
:
蒼ウサギ
:2008/05/13(火) 00:15:44 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
ヴァルカン「えぇい!迂濶に防御もできぬか!」
ヴァルカンは、歯噛みすると、機体を後方へと下がらせる。ただし、諦めたわけではない。
歴戦の猛者は目の前の新たな力を手にした強敵に心を踊らせていた。
それをどう倒そうか、考えるだけでヴァルカンは至福にも似た心地を迎えるのだ。
ヴァルカン「これならばどうだ!!」
ヘファイトスの鎖がさらに伸びると、それが鞭のように振るわれる。
悠騎「ちっ!」
予測不可能に振るわれた鎖の動きは迂濶に剣では弾けない。
悠騎は、一先ず回避行動に専念する。
ヴァルカン「逃げ足が速いな! いざとなればオレを振り切れるのではないか!?」
ヴァルカンが悠騎を挑発する。
確かに、バーサーカー・メイルを装着したブレードゼファーならば
ヘファイトスを振り切れるだろう。悠騎がヴァルカンを相手にしている暇はないと
自分で言ったならば、装備を活かしてこの場を振り切った方が賢明だ。
しかし、悠騎はしなかった。
別に、ヴァルカンの挑発に乗ったわけではない。
戦いながら思ったのだ。
目の前のこの危険な男を倒すことが先決だということを。
悠騎「うるせぇ!」
挑発を吹き飛ばし、鎖の鞭を潜り抜けると、
スピードを活かして、ヘファイトスの懐へと突進する。
ヴァルカン「熱いやつよ!」
その瞬間、ヘファイトスの全身が赤く染まる。
見た目から高熱が宿ったことが、想像に容易い。
悠騎「ちっ!」
舌打ちしながら、悠騎はバーサーカー・メイルの胴体パーツから逆噴射を放出させ、
機体を急制止させる。成功したが、それが仇となった。
ヴァルカン「隙だらけよ!」
熱を帯びた鎖がもう一方の腕から発射され、ブレードゼファーを直撃する。
急制止と併せての衝撃で、一気に意識が朦朧とする悠騎。
ブレードゼファーが、赤い大地に墜ちる。
ヴァルカン「フン、いくら機体が高性能でも搭乗者が未熟では宝の持ち腐れよ」
がっかりしたような口調で、ヴァルカンは吐き捨てた。
$
落下を朦朧とする意識で感じながら悠騎は、あの“感覚”の前兆を理解した。
悠騎(あぁ、これだったんだな……)
限りなく“死”に近い感覚にとらわれたとき、
“生”にしがみつきたい本能から生み出される無限の力。
それは生物全てが持つ“死”への恐れと“生”への執着。
“枷”を外したものだけが“死”への道を逸脱できる無限の力を覚醒できる。
その名を“アンフィニ”
97
:
蒼ウサギ
:2008/05/13(火) 00:16:21 HOST:softbank220056148175.bbtec.net
悠騎(でも……)
このままこの感覚に身を委ねれば、“アンフィニ”がすることが悠騎にはわかる。
ひいては“ハーメルシステム”発動をすることができる。
そうなれば形勢逆転だ。
だが、悠騎は迷っていた。
このまま、この力に頼り続けていいのかと……
ふいに声が悠騎の耳に飛び込んできた。
あり得るはずないのに、それが“彼”であると直感的にわかった。
ドウスルノダ?
悠騎(なにがだよ?)
ワタシハ、オマエノ魂(コエ)ニ応エタ。
コンドハオマエノバンダ
悠騎(あぁ、わかってる)
ナラバ、ドウスル?
悠騎(………………)
悠騎は、たっぷり逡巡した。
力を行使する己と、それに甘える己に葛藤する。
下した決断は……
悠騎「いくぜ、相棒!」
心の声ではなく、口から出た確かな声で、悠騎は機体のスロットルを吹かした。
ブレードゼファーが激突寸前で、体勢を立て直し、空へと舞い上がる。
ヴァルカン「む………」
今しがた倒したと思っていた相手が猛然と迫ってくる光景。
ヴァルカンの目に闘争者としての血が騒いだ。
ヴァルカン「そうこなくてはな!」
カウボーイが回す縄のように両腕から伸びている鎖を回しながらブレードゼファーを待つ。
一秒と掛からず、真紅の鎧を纏ったブレードゼファーはヘファイトスと同じ高さで対峙した。
新たな剣を天に突き上げ、悠騎は告げる。
まるで、宣言するが如く、静かだが、力強い口調で……
悠騎「てめぇらを倒して、絶対に帰ってやるぜ!」
紫色の瞳なんかではなく、悠騎本来の黒色の瞳で、皆の願いがこもった剣に向けて誓った。
98
:
藍三郎
:2008/05/18(日) 20:39:22 HOST:250.150.183.58.megaegg.ne.jp
=火星=
勝平「ブッチャー!!今日こそ決着をつけるぜ!!」
押し寄せるメカブーストを押し退け、
撃破し、ついにバンドックの牙城へと迫った勝平たち。
ブッチャー「ほ〜〜っほっほっほっほ!何をちょこざいな!
このバンドックの切り札を、貴様らに拝ませてやる!!
青騎士ヘルダイン、赤騎士デスカイン、出ませい!!」
ブッチャーの号令と同時に、バンドックの中から、二体の戦闘メカが発進する。
その機体は、人間型の上半身に馬の首が生えた戦車を下半身とする姿で、
木馬に跨った騎士を彷彿とさせた。
姿形は両者とも鏡に映ったように同じだが、
違うのは色で、一方は青、もう一方は赤一色に塗られていた。
また、それぞれ両手に武器と盾を備えているが、その武器が異なり、
青い騎士はランスを、赤い騎士はシミターを装備している。
宇宙太「な、何だあいつら・・・」
恵子「メカブーストとは、ちょっと違うような・・・」
二体の騎士の無機質なイメージは、
生物然としていたメカブーストとは大きく異なって見える。
ブッチャー「こやつらこそ、ガイゾックの守護神よ!!
ヘルダイン、デスカイン!ザンボット3を叩き潰してやれぃ!!」
その異名の通り、バンドックを守護するように青と赤の騎士は両翼から進撃する。
宇宙太「ここまで来て、梃子摺っていられるかよ!!
勝平「おう!二体まとめてぶっ壊してやらぁ!!
ザンボット・ブロ―――――ッ!!!」
トライデント型のザンボットブローを取り出し、二体の騎士へと立ち向かう。
ブッチャー「ひょほほほほほ!!ヘルダインとデスカインを、
そこらのメカブーストと同じにするでないわ!!」
シールドでザンボットブローを受け止める青騎士ヘルダイン。
続けて、もう片方の腕でランサーを繰り出す。
勝平「ちぃ!!」
何とか掌で受け止めるも、さらなる衝撃が背後に走った。
恵子「きゃああぁぁ!!」
赤騎士デスカインのシミターが、ザンボットの背部を切り裂く。
勝平「ちくしょう!アームパンチ!!」
両の拳を放ち、ヘルダインとデスカインを退ける。
宇宙太「やっぱり、他のメカブーストとは全然違うぜ・・・!」
勝平「ならこれでどうだ!ムーン・アタァァァァァァック!!!」
額の三日月が輝き、ムーンアタックの発射態勢に入る。
だが、ヘルダインとデスカインは、
互いに寄り添うと、共にシールドを掲げた。
瞬間・・・シールドから眩いばかりの閃光が生まれ、ザンボットを包み込む。
恵子「きゃっ!!!」
眼を開ける事すらできない閃光が、コクピット内を覆う。
必殺のムーンアタックは不発に終わってしまう。
その隙に乗じて、二体の騎士は左右に展開する。
そして・・・駿馬の如く宇宙を駆け、ザンボット3を両側から挟み撃ちにする・・・!
勝平「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
ランサーとシミターが炸裂し、ザンボットに手痛いダメージを与えた。
ブッチャー「ムホホホホホホホ!!ザンボット3!!
今日が貴様らの命日じゃあ!!」
ヘルダインとデスカインの連携に苦しめられるザンボット3。
宇宙太「くっ・・・こんなところで、負けられるかよ!!」
恵子「でも、2対1じゃ・・・」
他の友軍も、無数のメカブーストに阻まれてこちらに来られない状態だ。
勝平「いや・・・違うぜ・・・」
恵子「え・・・?」
勝平「あっちは2体、けどこっちは3!ザンボット3だ!!」
宇宙太「・・・なるほどな、その手で行くしかないか!!」
宇宙太は勝平の言葉の意味を察したようだ。
99
:
藍三郎
:2008/05/18(日) 20:40:30 HOST:250.150.183.58.megaegg.ne.jp
ブッチャー「ホホホホホホ!!!ヘルダイン!デスカイン!
そろそろトドメを刺してやれぃ!!!」
青と赤の騎士は、ザンボット3へと突撃する。
恵子「今よ!!」
勝平「コンビネーションッ・アウトッ!!」
攻撃が炸裂する瞬間・・・
ザンボット3は三つに分裂し、双騎士の同時攻撃をかわした。
ザンバード、ザンブル、ザンベースの三機が宇宙を舞う。
ブッチャー「ほっ!?」
勝平「どうだ!!これで三対二だぜ!!」
恵子「みんな!包囲攻撃で、あのメカの動きを封じるわよ!!」
宇宙太「おう!!」
一転して、三機がヘルダイン、デスカインを囲む形となる。
三機は周囲を旋回しながら、レーザーやグレネードの雨を浴びせる。
ブッチャー「な、何をしておるかぁ!あんなカトンボども、叩き落してしまえぃ!!」
青騎士のランサーがザンブルを狙い撃つ。
だが、その隙を突いて、ザンバードが背後から大型ミサイルをぶつける。
赤騎士が今度はザンバードを狙うも、ザンベースのレーザーの的になってしまう。
標的が三つに増えた事で、双騎士のコンビネーションは崩され始めていた。
宇宙太「勝平!この位置ならいけるぜ!!」
勝平「おう!ザンボット・コンビネーションッ!!!」
2体の騎士が離れた隙を見計らって、再びザンボット3へ合体する。
そして、合体終了直後・・・額の三日月が、煌々と輝いた。
勝平「ム――――ン・アタァァァァァァック!!!」
青騎士ヘルダインに、月光の洗礼が浴びせられる。
シールドは脆くも溶解し、ヘルダインも木っ端微塵に爆砕する。
ブッチャー「のわあああぁぁぁぁぁぁ!!?」
宇宙太「続けていくぜ!!」
恵子「一体だけなら、怖くないんだから!」
勝平「グラップコンビネーションッ!!」
ザンボットグラップ、ザンボットブローによる連撃が、
赤騎士デスカインへと次々と決まる。
トドメのザンボットカッターがデスカインを真っ二つに切り裂き、
宇宙に真紅の華を咲かせた。
ブッチャー「バ、バカな!?
ガイゾックの守護神が、倒されるだとぉぉぉぉぉぉ!!?」
混乱のあまり、ブリッジで暴れ出すブッチャー。
彼の部下が、とばっちりで何人か吹っ飛ばされる。
宇宙太「おっと、高みの見物を決め込むのもここまでだぜ!」
勝平「次はてめぇだぁ!ブッチャー!!」
ブッチャー「ぬかせぇ!ひ弱な人間ごときが・・・うおおおお!!?」
負けじと言い返した直後、バンドックに凄まじい震動が走る。
ブッチャー「な、何じゃ!?何が起こっとるか!?」
ギッザー「ブ、ブッチャー様!バンドックが、地球人に総攻撃を受けております!」
血相を変えて報告する部下。続けて、二度目の震動と共にブリッジに火花が散る。
ブッチャー「ななななななななな!!?」
ケルナグール「グハハハハハハ!!!こりゃあぶち壊しがいのある戦艦じゃわい!!」
グランナグールのパンチが、バンドックの装甲に亀裂を入れる。
ドリル「天空宙心拳!!岩石割りィ!!」
アルゴ「グラビトン・ハンマァァァァァァァッ!!!」
多方向から繰り出されるG・A隊の攻撃が、難攻不落のバンドックを揺るがしていく。
ブッチャー「邪魔くさい奴らがうじゃうじゃと・・・
ええい!!何故こんなに寄ってくるまで気づかなかったのじゃ!!」
バレター「そ、それが、気づいた時には既に・・・ぶへっ!!」
無駄な言い訳をする前に、ブッチャーの太い腕が部下をなぎ払った。
そのまま壁に激突し、壁の染みと化すバレター。
キリー「やっこさん、今頃慌ててるだろうな」
真吾「ザンボット3にまんまと気を取られてやんの」
レミー「あの子達に感謝ね!!」
真吾「ああ、お陰で、楽に接近できたぜ・・・スペースバズーカ!!」
蒼白い閃光が、バンドックの脚部に炸裂する。
キョウスケ「それだけではない・・・
コスモ・フリューゲルに残されていた、
“俺たちの世界”でのバンドックのデータ・・・
それを四之宮艦長が解析し、お前の死角を全て割り出した・・・」
エクセレン「後は、その攻略データに基づいて攻撃すればいいワケ。
これって、周回プレイの特典って奴ぅ?」
キョウスケ「その例えはよくわからん・・・」
軽口を叩きながら放たれた、
アヴァランチ・クレイモアとオクスタン・ランチャーの同時攻撃が、
バンドックの装甲を抉り、機関部に直撃する。
また、ほぼ同時に別の死角からも、バンドックの主要機関に向けた攻撃が放たれる。
真吾「ゴーフラッシャー・スペシャル!!」
蒼き閃光が突き刺さり、バンドックに致命傷寸前の損害を与える。
100
:
藍三郎
:2008/05/18(日) 20:41:34 HOST:250.150.183.58.megaegg.ne.jp
ブッチャー「バカな!バカなバカなバカな!!
わしは認めんぞ!!このバンドックが落ちるなどと!!」
宇宙太「喚くんじゃねぇよ、ブッチャー」
恵子「それに、何も不思議な事は無いわ」
勝平「お前は1回、俺たちに倒されてるんだからな!!」
ブッチャー「な、何!?」
“勝平たちの世界のブッチャー”の記憶を持たない
“今のブッチャー”は、勝平の言葉の意味が解らない。
ただ混乱して、両手両足をじたばた動かすだけだ。
ブッチャー「ええい!どこまでも楯突きおってぇ!!
貴様らは所詮ひ弱な人間!!黙ってわしらに殺されておればよいのだ!!」
宇宙太「けっ、てめぇ自身は関係ないが、
その胸糞悪い物言いを聞いたら、
てめぇが俺達の世界で散々やった悪行を思い出しちまったぜ!」
勝平「ああ、てめぇみたいな野郎は、好き勝手にさせちゃいけねぇんだ!」
恵子「だからここで・・・私達が、倒す!!」
ガイゾックの戦いで生まれた多くの犠牲・・・
その重さを受け止めながら、強い思いを懐いて、叫ぶ。
勝平「ブッチャー!!今日がてめぇの最後の日だ!!」
ブッチャー「ほざけ!!死ぬのは貴様らよ!!
バンドック砲を喰らって、宇宙の塵になるがいいわ!!」
バンドックに備わった主砲が、赤く輝く。
それに合わせて、ザンボットも大型のキャノン砲を取り出し、構える。
宇宙太「気持ち悪い話だが・・・
どうにもお前と俺達には因縁があるみたいなんだな・・・」
勝平「綺麗さっぱり、断ち切ってやるぜ!!」
恵子「イオン砲、エネルギープラグ接続開始!!
バイオニックコンデンサ、全段直結っ!!」
宇宙太「エネルギー充填開始!!・・・60%・・・80%・・・」
バンドック砲に勝るとも劣らぬ光が、イオン砲の砲身に宿る。
ブッチャー「吹き飛べぇ――――――――――っ!!!!」
バンドックから、真紅の破光が放たれる。それと同時に・・・
宇宙太「120%!!充填完了!!」
勝平「いっけぇぇぇぇぇ!!!」
限界までエネルギーを溜めた巨光が、
イオン砲から一気に解き放たれた。
激突する二つの光。
巨光同士のぶつかり合いが、宇宙を白熱させる。
勝平「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
だが、勝負の趨勢は早くも決した。
ザンボットのイオン砲の光が、バンドック砲のそれを呑み込み始めたのだ。
しかも、その威力は衰えるどころか、
ザンボットチームの気魄が乗り移ったが如く・・・その輝きを増していく。
ブッチャー「お、お、おのれぇぇぇぇぇぇっ!!!!」
ブリッジのあちこちで火花が散り、内部は既に崩壊を始めていた。
惑乱の極みに達したブッチャーは、誰もいないはずの天に向かって叫ぶ。
ブッチャー「ガイゾック!ガイゾックの神よ!!」
宇宙太「!!」
恵子「ガイゾックの神、ですって?」
ブッチャー「全知全能なるガイゾックの神よ!!
何とぞ、何とぞ貴方様の力をお貸しください!!」
ブッチャーの叫びが届いたのか・・・
ブッチャーに、そしてザンボットチームの下へも、謎の声が響き渡る。
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