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[SS]壊れた大学生の追憶

673ハイドンピー (ワッチョイ 5dfe-51b2):2024/01/11(木) 20:48:21 ID:2JIdRYuY00

ウィーン…

ギル「おふざけはその辺にして。任務よ」

真面目な顔でギルティースが入ってくる。

ドドンたちもすぐに切り替え、真面目な顔で話を聞く。

ギル「南西の星に大型の宇宙生物が現れたわ。他の星からすでに何人か討伐隊や賞金稼ぎが行ったようだけど、全員撃墜されちゃったみたい」

アルバロ「ほう、強そうだな」

ギル「今近くで動けるのは私たちしかいないから、私、アルバロ、ドドンで行くわ。ポルスは待機して」

ポルス「え〜」

ドドン「ま、なんかお土産買ってきてやるドン。ご当地爆弾とか」

ポルス「そんなのあるのかドン?」

ドドン「さあ」

ギル「大型生物の討伐ならドドンの爆弾はかなり役に立つからね。ただしエネルギープラントの近くで暴れてるらしいから、絶対壊さないように注意すること」

ドドン「任せろドン」

アルバロ「ところでさっきから、その"ドン"というのは何なのだ、ドドン」

ドドン「ドドンのドンだドン。いわゆる語尾による鼓舞だドン」

アルバロ「…ギルティース、此奴は何を言っているのだ?」

ギル「さあ…?好きな言葉を語尾につけると気持ちが昂るってことかしら?」

ドドン「そんなとこだドン」

ポルス「お前らもやってみるといいドン」

アルバロ「フン、遠慮しておこう。さあ、無駄話はやめてさっさと準備を始めろ。最速で任務へ向かうぞ」

ドドン「無駄話って、お前が聞いたんじゃないかドン」

ポルス「やっぱアホバロだなドン」

アルバロ「ウザい…!ポルスのせいで二倍ウザい…!」

ギル「いいから行くわよアホバロ」

アルバロ「ギルティースまで!?」


それからギルティースたち三人はアーウィンで任務の星へ。

674ハイドンピー (ワッチョイ 5dfe-51b2):2024/01/11(木) 20:49:29 ID:2JIdRYuY00




ドドドドドドド!!!

宇宙生物「グオオオオオオオ!!」

三機のアーウィンが一斉に宇宙生物を撃つが、ほとんどダメージは入っていない。

アルバロ「思った以上に強いな!特にあの振り回す尻尾のパワーが尋常ではない!」

ギル「く…風圧で機体が揺れるわね…!ドドン、私とアルバロで急所が無防備になるように誘導するから、ボムよろしく!」

ドドン「了解ドン!」

アルバロとギルティースは宇宙生物の周囲を旋回し、注意を引く。

宇宙生物「ギャァァァース!!」


ドゴォォン!!

ズガァァァン!!


アルバロ「チッ、暴れ過ぎだ貴様ッ!」


ドドドドド!!


アルバロは宇宙生物の眼球を撃ち抜いた。

宇宙生物「グオオオオッ!」

ドドン「今ドン!!」

ドドンが爆弾のマークが描かれたボタンを押すとアーウィンの下部が開き、砲台が現れる。

ドドン「射出!!」

さらにボタンを押すと、砲台からボム兵が撃ち出され。


ドドォォォン!!!!


宇宙生物の首元にボム兵が命中し、大爆発が起きた。

ドシィィン…!

首は完全に破壊され、頭部が落ちる。

体も力を失い、仰向けに倒れた。

アルバロ「…目標完全に沈黙。任務完了だ!」

ドドン「よっしゃー!」

ギル「ふぅ…結構大変だったわね。二人で来てたら危なかったかも。それにしても、まーた威力上がってるわね、ボム兵…」

ドドン「日々の研究の成果だドン!」

アルバロ「それはいいが…威力を上げすぎて市街地にまで被害が出ないように気を付けろよ」

ドドン「うーん、考えておくドン」

アルバロ「考えるな!!」

ドドン「ははは、冗談ドン」

ギル「それじゃ任務も終わった事だし帰りましょうか」

ドドン「えー、せっかく来たんだしちょっとこの星の町に寄って行かないかドン?調べたところ爆薬売ってるとこもあるみたいなんだドン。ポルスに土産の約束もしてるしなドン」

ギル「…んー…まあそうね。ちょっとならいいわよ。私はスイーツ店でも探そうかしら」

アルバロ「フン、観光に来た訳ではないのだぞ。手短に済ませろ。我はここでアーウィンの整備でもして待つ」

そしてドドンとギルティースはアーウィンを停めると、町へと繰り出した。

675ハイドンピー (ワッチョイ 5dfe-51b2):2024/01/11(木) 20:51:24 ID:2JIdRYuY00

アルバロ「まったく…公私混同は控えてほしいものだ。最年長のギルティースまでスイーツなどにうつつを抜かして……まあ、彼奴はナザレンコが引退してからフォックスを先導すべく頑張っておったからな…たまの休息を許してやるのも我の務めか!ワーッハッハッハ!」

女性「そこのフォックスさん」

アルバロ「む…?我か?」

振り返ると、ガラクタを売っている小さな露店から、女性店員が顔を覗かせていた。

女性「はい。私、宇宙整備士なんですよ。それ、アーウィンですよね!」

アルバロ「ああ」

女性「ちょっと見せてください!本物のアーウィン見たの初めてで…!」

女性は目を輝かせる。

アルバロ「見るのは構わんが、勝手にイジるなよ。アーウィンはとても高度な機械だ」

女性「分かってますって!フォックスオタなんで!」

アルバロ「オ、オタ…!?」

女性「おおっ!ここはこんな風になってるんですね!お、これが反重力装置ですか!わっ、コックピットの中もかっこいいっ!ここのボタンは、レーザー砲の操作をするんですね!」

アルバロ「ちょ、オイ!勝手に乗るなよ!?」

女性「はっ!すみませんつい興奮しちゃって…!」

アルバロ「まったく…」

女性「ところでお願いがあるんですけど、ロボットに興味ありませんか?」

アルバロ「ロボット?」

女性「はい!私が独自に開発している戦闘ロボットがありまして、そのモデルとしてフォックス族の姿や動きを取り入れてるんです!」

アルバロ「ほう?ただのロボットに我々の動きなど再現できんと思うが…」

女性「勿論完璧とはいきませんが、フォックス族の任務中の映像なんかを宇宙中探してかき集めて、それを学習させたAIでロボットを動かしてます。見てみませんか?」

アルバロ「なるほどな。フン、まあ奴らが戻ってくるまでここでじっとしているのも退屈だ。一目見るだけなら構わんぞ」

女性「良かった!では呼びますね」

アルバロ「呼ぶ…?」

女性「ええ、自立式ロボットですから呼べばあっちから来てくれますよ」

アルバロ「ほう、面白いな」

女性が手元のリモコンを操作し、しばらくすると。

ガシン…ガシン…ガシン…

露店の裏から、白フォックスが歩いてきた。

女性「これが私の開発したAI戦闘ロボット…その名も"機動戦士"です!」

アルバロ「おおっ!?一瞬本物のフォックスかと思ったぞ!」

機動「俺は機動戦士!お前は誰だ?」

アルバロ「おお、喋るのか!我はアルバロだ!」

機動「アルバロ、よろしくな!」

女性「フォックスに関する記録を調べて、その口調もできる限り再現してるんです」

アルバロ「いいではないか!しかし肝心なのは動きだ。どんな事ができる?」

女性「はい!機動戦士、ファイアフォックスを見せてください」

676ハイドンピー (ワッチョイ 5dfe-51b2):2024/01/11(木) 20:54:20 ID:2JIdRYuY00

機動「いいぞ。…ファイヤーッ!!」


ボォッ!!


機動戦士は宙に向かって見事なファイアフォックスを放った。

アルバロ「おおっ!完璧ではないか!」

シュタッ!

機動「へっ!これくらい朝飯前さ」

華麗に着地した機動戦士は、腕を組んでドヤ顔を披露する。

女性「どれだけ映像を確認しても、どういう仕組みで燃えてるのか分からなかったので、取り敢えず頭部と脚部に火炎放射器と推進装置を仕込んで…」

アルバロ「ああ、アレは気合いだ」

女性「気合い!?」

アルバロ「我々フォックスにしかできぬ芸当だからな。解析できずとも無理はなかろう。それで、他には何ができるのだ?」

女性「フフ、すっかり夢中ですね。作り手として嬉しい限りです。それではお次は…」

それから機動戦士はフォックス族の様々な技を再現してみせた。

アルバロ「すごいぞ!威力やスピードは本物には及ばんが、見た目はまごう事なきフォックスだ!」

女性「そうでしょう!しかも実はさらに秘密があって…なんと戦闘機の操縦もできるんです!」

アルバロ「何!?ロボットが操縦を!?」

女性「機動戦士、見せてくれる?」

機動「お安い御用だ」

機動戦士は露店の裏に停めてあった小型戦闘機に乗り込み、しばらくすると。


キィィィィン…


戦闘機は飛び上がった。

アルバロ「おお!?」

女性「機械が機械を操作なんてちょっと変かもしれませんが…AIに記憶させれば、アーウィンだって乗りこなせます!」

アルバロ「ほう!凄いではないか!」

女性「ありがとうございます!」

アルバロ「ワハハハハ!こちらこそいいものを見せてもらった!礼を言うぞ!」

女性「いえいえそんな!本物のフォックス族の方に見てもらえて、こちらの方が感謝ですよ」

アルバロ「ならばこれからも研究に励むのだ!貴様の造るロボットはいずれは我らと共に宇宙を守る役目を担う存在になるであろう!ワーッハッハッハ!」

女性「そう言ってもらえると頑張り甲斐があります!…では、研究に関して最後に一つだけお願いがあります」

アルバロ「む?何だ?」

677ハイドンピー (ワッチョイ 5dfe-51b2):2024/01/11(木) 20:55:31 ID:2JIdRYuY00

そこに戦闘機が着陸し、機動戦士が降りてくる。

女性「この機動戦士を買い取ってもらえませんか?」

アルバロ「何…?」

女性「リアルな話、研究するにも莫大なお金が掛かるんですよ…本業はしがない整備士ですから、大した稼ぎもなく…この露店もそのためにやってるんですけど、全然儲からないし…正直ちょっと困ってるんです」

アルバロ「成程…しかし此奴はこれからの研究にも必要なのではないか?」

女性「いえ、本物のフォックスに近付けるためにさらに出力を上げるとなると、一から作り直さなくちゃダメだから、これ以上手は加えられません。それにこの機動戦士には見たものを記憶するメモリーがあるので、皆さんの動きや戦闘データを近くで見せてあげてほしいんです」

機動「メモリーはここだ。お前たちの動きを見れば俺のAIも更新できるし、今後の研究にも役立つ」

機動戦士が腕のところについたボタンを自分で押すと、頭部から筒状のメモリーがニョキッと出てきた。

アルバロ「そうか、これも研究の一環という訳だな」

女性「まあつまりそういうことになります」

アルバロ「フン、そういうことならお安い御用だ!実は我らも人手不足で困っておるのでな。少しでも戦力になるなら金を出す価値はある。Win-Winというやつだ」

女性「本当ですか!?ありがとうございます!」

アルバロ「いくらだ?」

女性「こちらになります」

女性は端末に金額を提示した。

アルバロ「たっっっ…!…い、いや、こんな高性能なロボットならそれくらいするのは当然…か…」

女性「これでも相当まけてます。正直かなり安いと思いますけど…」

アルバロ「う…うむ……ま、まあよい!!男に二言は無いわっ!!持っていけ!!」

アルバロは財布から札束を取り出した。

女性「毎度ありっ!」

女性は満面の笑みでそれを受け取った。

アルバロ「メンテナンスはどうすればいいのだ?この星へ来ればいいのか?」

女性「私、宇宙整備士なのでいろんな星を渡り歩いてるんですよねぇ。こちらに連絡くだされば私から出向きますよ」

女性は連絡先を渡す。

女性「とはいえ機構は意外とシンプルなので、別に私じゃなくても、ある程度宇宙で活動できるレベルのメカニックなら整備はできると思います」

アルバロ「成程、了解した」

女性「それとこちらが操作するリモコンです。電源のオンオフはこれでできます」

ポチッ

とボタンを押すと、機動戦士の目から光が消え、動かなくなった。

女性「離れた場所から呼び出したい時はこのボタンです。状況にもよりますが大体半径十キロ以内であれば届くハズです」

アルバロ「分かった」

女性「それでは、私は次の星へ行かなくちゃいけないので、これで!」

女性は露店を片付け、リュックにしまう。

アルバロ「そうか、研究頑張るのだぞ!」

女性「はい!あなたもお達者で!」

女性は小走りで去っていった。

678ハイドンピー (ワッチョイ 5dfe-51b2):2024/01/11(木) 20:56:27 ID:2JIdRYuY00


ちょうどそこへ。

ギル「おまたせアルバロ!…って何これ!?フォックス…のロボット!?」

アルバロ「買ったのだ」

ギル「はあ!?」

アルバロ「フッ、まあ見ていろギルティース。貴様も気に入る筈だ」

ポチッ

リモコンのボタンを押すと、機動戦士が起動する。

機動「俺は機動戦士だ。お前は?」

ギル「喋った!わ、私はギルティースよ。よろしくね」

機動「ギルティースか。よろしくな」

ギル「はえ〜、よくできてるわねえ」

そこへ。

ドドン「おーっす待たせたドン!ってなんだそりゃ!?フォックスのロボットかドン!?」

アルバロ「買ったのだ」

ドドン「買った!?」

ギル「コイツはドドン、爆弾魔よ」

機動「ドドン、よろしくな」

ドドン「おおっ、よくできてるなドン!メチャクチャ高かったんじゃないかドン?」

アルバロ「ま、まあな…」

ギル「でもこんなの買ってどうすんのよ」

アルバロ「性能は本物に劣るが、ちゃんと正常に動作したのは確認しておる。アーウィンも操縦できるそうだ。人手不足の我らにとっては、模造品でもいないよりはマシかと思ってな」

ギル「え…?まさか…」

アルバロ「今後は此奴も任務に同行する」

ギル「ええ!?大丈夫なの?それ…」

アルバロ「問題ない!機動戦士、もう一度ファイアフォックスを見せてみろ!」

機動「オーケー。ファイヤーッ!!」

ボォッ!!

機動戦士は空へ向かってファイアフォックスを繰り出す。

ドドン「おおっ!」

ギル「…んーまあ確かに見た感じは完璧だけど…」

アルバロ「そうだろう!」

機動「ウォォ!」

グシャ!!

アルバロ「グシャ…?」

見ると機動戦士は着地に失敗してバラバラになっていた。

アルバロ「は…はあああああ!?」

アルバロは目をまん丸にして、アゴが外れるくらい口を開けて驚く。

679ハイドンピー (ワッチョイ 5dfe-51b2):2024/01/11(木) 20:56:50 ID:2JIdRYuY00

ギル「あらら…壊れちゃったわね…」

ドドン「ドンマイドン」

アルバロ「そ…そんな…」

アルバロは膝をつく。

ドドン「あっはっはっは!これじゃあ機動戦士じゃなくて、起動戦死だなドン!」

アルバロ「笑い事じゃないわあああ!!」

機動「グギギギ…キ…起動戦死…名称ををを…上書きした…ぞ…」

地面に転がった頭部が喋る。

アルバロ「上書きせんでいいわっ!」

同時に、ジャケットの胸部分についた小さな画面に表示されていた"機動戦士"の文字が消えていき、"起動戦死"と入力される。

ギル「なんか可哀想よこの名前。あ、そうだ!星なんか付けてみたら?可愛いわよ」

アルバロ「何を言っておるのだ貴様までっ!」

ドドン「おもろいなドン!なんかこういうマークも付けてみろドン」

ドドンは地面に指で"ψ"を描く。

起動「…リョ…了…解……"ψ起動戦死☆彡"で上書きした…」

アルバロ「だからせんでいいわっ!!」

ギル「てか真面目な話、詐欺なんじゃないの?」

アルバロ「くっ…!だ…だが確かにこの目で見たぞ…!此奴は本当にフォックスの技を扱えるのだ!それだけは事実!恐らくAIの学習が甘く着地が疎かだったのだ…!」

ドドン「あ、騙された自分を肯定してるドン。詐欺被害者によく見られる傾向ドン」

ギル「どっちにしろこんな脆いんじゃ戦場には連れていけなくない?」

アルバロ「う、うるさあああい!!そ、そうだ!連絡先を貰っておったのだ!問いただしてやるわ!」

ピッ…

『こちらの番号は現在使われておりません』

アルバロ「ふ、ふざけるなあああっ!!」

680ハイドンピー (ワッチョイ 5dfe-51b2):2024/01/12(金) 20:19:40 ID:6VYKp6oY00





さらに月日は流れ。

大学では。

生徒「オイオイ…アイツまたいるよ…」

生徒「怖いよな正直…」

生徒「ウワサだと八浪してたらしい…しかも現在五留してるとか…」

生徒「そこまでオッサンには見えなくない?」

生徒「やっぱ何回も警察に捕まってるって噂もマジなのかな…?」

ベンチに寝転がっている大学生を見て、生徒たちは噂していた。

純白「退学になってないなら違うんじゃないですか?」

生徒「じゅ、純白くん…!そりゃそうか、ハハハ…」

生徒「でもよー、部の先輩に実際に見たってやつがいるんだよ、アイツがクスリやって捕まってるの」

生徒「マジかよ。なかなか抜け出せないって言うしな…それなら何回も捕まってるってのも嘘じゃないかも…」

純白「噂に惑わされすぎですよ…ちょっと話してみます」

生徒「えっ!?純白くん危ないよ!やめた方が…」

純白「大丈夫です。僕、強いので」

にこやかに言い、大学生の元へ歩を進める。

純白「あの、すみません。隣いいですか?」

大学生「あァ…?何だてめーは…」

純白「ハハ、そこ座りたいので、ちょっと脚を畳んでくれるとうれし…」

大学生「死にてえのかァ!?」

純白(あ、ダメだこれ。話通じないやつだ。目がイっちゃってる)

大学生「オイ!なんか文句あんのか!?八浪して五留してなんか悪いか!?目上を敬えよ真っ白野郎が!!」

681ハイドンピー (ワッチョイ 5dfe-51b2):2024/01/12(金) 20:21:33 ID:6VYKp6oY00


ガキィン!!!


大学生は躊躇なく剣を振り下ろした。

純白「あっぶないなぁ…!僕じゃなきゃ死んでるとこですよ」

純白はそれを容易く剣で受け止めていた。

大学生「はっ…!?」

純白「?」

大学生「ぼっ……僕…また……何を…っ!」

大学生は急に剣を引き、頭を抱えてうずくまった。

純白「だ、大丈夫ですか!?」

大学生「ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…!」

大学生は泣きながら何度も謝る。

純白(…これが本性…?何か精神を病んでるのか…?まさか本当にクスリを…?)

純白「前に君を見かけた時は、そこまで凶悪には見えなかった。一体何があったんですか?聞かせてください。人に話せば楽になる事だってありますよ」

純白は大学生の肩に手を置き、優しい口調で言う。

大学生「僕……僕は…僕は…!…誰だっけ…」

純白「え?」

大学生「僕って……なんでこんなとこいるんだろう…」

その顔はどこか小さな子供のようだった。

純白(現実逃避…か…?)

大学生「君は誰…?」

大学生は不思議そうに純白の顔を見る。

純白「…ぼ、僕は純白です」

大学生「純白…君もリンク族?家族以外のリンク族、初めて見たよ!」

今度は急に明るい表情になった。

純白「…僕もだよ。君は今、何歳?」

純白は子供と接するように優しく問い掛ける。

大学生「え?えっと…六歳…?だっけ…」

純白(やっぱり幼児退行してる…!?)

682ハイドンピー (ワッチョイ 5dfe-51b2):2024/01/12(金) 20:23:11 ID:6VYKp6oY00

大学生「いや…ちげーわ…俺は…十五…いやいやいや…二十…?」

純白(精神が不安定すぎる…一体何があったらこんなことに…)

大学生「ハァ……もういいや…なんでも…クソッ…!クソッ!クソッ!!」

純白「!?」

大学生「酒を…よこせ!!クスリ…!クソがッ!!」

ドガァッ!!

大学生は両腕を振り下ろし、地面を叩き割った。

純白「な、何やって…」

教師「大丈夫か!?」

そこへ教師が駆けつけた。

純白「先生!あぶな…」

大学生「あふぁ…?」

純白「…え?」

四つん這いの状態になった大学生の肩に教師が触れた途端、大学生は突然意識を失った。

教師「おい!しっかりしろ!…気絶したのか…?しょうがない、医務室へ連れて行く…」

純白「だ、大丈夫なんですか…!?」

教師「分からんから連れて行くしかないだろう…こいつは俺に任せて、お前たちはしっかり勉強しなさい」

教師はにかっと笑い、大学生をおぶって運んでいった。

純白「……」

生徒「じゅ、純白くん!大丈夫!?なんか斬りかかられてたように見えたけど!」

怯えて見ていた生徒たちが駆け寄ってくる。

純白「…大丈夫ですよ。言ったでしょう?僕、強いので!」

生徒「それならいいけど…」

生徒「もうあんなのに関わるのやめとけよ!」

純白「…そう…ですね…」

683ハイドンピー (ワッチョイ 5dfe-51b2):2024/01/12(金) 20:24:20 ID:6VYKp6oY00



教師「…ったく、Bさんはなんでこんなヤツ飼ってんだか…」

一目のつかないところで、教師は大学生を下ろした。

大学生は眠ったままだ。

プルルル…

教師「はい、もしもし」

B級『俺だ』

教師「Bさん…!」

B級『どうだ?あのガキの調子は』

教師「さ、最悪ですよ!さっき生徒もいる中でいきなり発作起こしやがって!危うく全部バレちまうとこでしたよ!」

B級『フン、まあそうなったらなったで別にいいさ。困るのはそっちだ。生徒の三割がクスリやってるなんて知れたら大学の評判は地に落ちるだろうなァ?』

教師「か、勘弁してくださいよぉ〜」

B級『クク…てめぇらの命運はウチが握ってること忘れんじゃあねえぞ』

教師「わ、分かってますよ…!でも、なんで大学通わせるんですか…?こんなヤベェヤツ、普通に退学して事務所で飼った方がそちらとしても動きやすいんじゃ…」

B級『学生っつう身分は色々都合のいいとこもあんのさ。裁判じゃ有利になるしな』

教師「そういうもんですか…」

B級『つってもソイツはヤンチャすぎて流石にそろそろ庇いきれなくなってきちまったが…最後は絞れるだけ絞って捨てりゃあいいだけだ』

教師「……」

B級『後で事務所に来いと伝えろ。用件はそれだけだ』

ブツッ

教師「はあ…ちくしょう…」

大学生「…あ……お前…?」

教師「!…目ぇ覚めたか」

大学生「ク……クスリ……!」

教師「チッ、そう焦るなって!さっきお前に飲ませた分でなくなっちまったよ」

先ほど肩に触れた時、教師は生徒たちに見えないようにクスリを飲ませていたのだ。

大学生を落ち着かせるための措置だったが、強烈な快楽作用と不安定な精神状態が合わさり気絶に至った。

教師「Bさんが後で事務所に来いとさ。クスリならそこで貰えんだろ、たぶん」

大学生「ハァ…ハァ…クソッ…!」

大学生はすぐにB組の事務所へと向かった。

684ハイドンピー (ワッチョイ 5dfe-51b2):2024/01/12(金) 20:25:21 ID:6VYKp6oY00



B級「よう…随分荒れてるじゃねえか」

大学生「いいから早く…っ…クスリくれよ…!」

B級「タダでとはいかねえな。コイツを潰せ」

B級は写真を見せた。

そこには緑帽子のピカチュウが写っている。

B級「コイツは片割れ。須磨武羅組の実質的なボスだ。俺でも敵わねえこの町で一番厄介な奴だが…てめぇなら勝てねえ相手じゃねえ筈だ」

大学生「…かた…われ……」

B級「今は須磨武羅組の事務所にいることは調べがついている。突っ込んで叩っ斬れ。クク…最高級の鉄砲玉だ。奴らもさぞ気に入るだろうぜ」

大学生「片割れ……潰さなきゃ……」

大学生はフラフラと事務所の外へ出た。

純白「何してるんですか?こんなところで」

そこには純白が立っていた。

大学生「あ…?誰だよテメーは…」

純白「純白だよ。忘れたの?」

大学生「……知らねーな…どけ…早く行かねーと…!」

純白「行かせませんよ!どこに行くのか知りませんけど、どうせヤクザに利用されてるんでしょ!」

大学生「っせぇな!!黙ってどけよ!!邪魔なんだよ!!」

ガチャ…

B級「あ…?なんだ、騒がしいと思って来てみりゃあ、コイツのオトモダチか?」

B級が事務所から出てきた。

純白「あなたが彼をこんなふうにしたんですか?」

純白は睨みつける。

B級「フン、コイツが勝手にハマっただけだ。ここはてめぇのような良い子ちゃんの来るとこじゃあねえぞ。痛い思いしないうちに帰った方が身のためだぜ」

すると、事務所からゾロゾロと武装した組員たちが現れた。

純白「…本気で言ってますか?」

ジャキンッ…

純白は剣を抜き、構える。

685ハイドンピー (ワッチョイ 5dfe-51b2):2024/01/12(金) 20:26:33 ID:6VYKp6oY00

B級「…………冗談だ。てめぇら退がれ」

組員「えっ?なんでッスか親分!こんなガキやっちまいましょうよ!」

B級「やめとけ。勝てねえよ」

その剣を構えた立ち姿に、B級は脅威を感じていた。

大学生「どけっつってんだろうがァ!!」

純白「!!」


ガキィン!!!


大学生はB級のことなど気に留めず純白に斬りかかった。


ガガガガガッ!!

キィン!!

ドガガガッ!!


組員「嘘だろ…!あのガキとまともにやりあってやがる!」

B級「アイツも恐らくA級…下手すりゃあそれ以上の逸材だ。チッ…勿体ねえ限りだぜ。あの目…ありゃあ真っ直ぐすぎてこっちの世界にゃあ絶対堕ちてこねえタイプの人間だ」

純白「落ち着いてください!ヤクザの言うことなんて聞いたって何も良いことありませんよ!」

大学生「はぁ!?知るかよ!!だったらテメーがくれんのかよクスリをよぉ!!俺を助けてくれんのかよ!?」

純白「そのつもりだよ!!」

大学生「意味…わかんねェーんだよォォ!!」

ダンッ!!

大学生は強く踏み込み、回転斬りを放つ。

純白「遅い!」


ガンッ!!


大学生「…っ」

純白はそれをかわして背後に周り、大学生の後頭部を剣の柄で殴った。

ドサッ…

気絶し倒れる大学生を、純白は体で支える。

そして再びB級の方を睨み。

純白「もう二度と…この人に関わらないでください」

B級「……チッ…てめぇ…何故そんな奴にそこまでする…?ソイツの事は監視させてたが、特に親しい奴はいねえ筈だ」

純白「ええ…友人というわけでもありませんし、なんなら喋ったのも今日が初めてですよ」

B級「あぁ…?」

純白「…なんででしょうね。同じリンクだからでしょうか。放っておけなかった。ただそれだけです」

純白はそう言い残し、大学生を担いで去っていった。

686ハイドンピー (ワッチョイ 5dfe-51b2):2024/01/12(金) 20:40:09 ID:6VYKp6oY00




大学生「え…?」

純白「目が覚めましたか」

目を覚ますと、小さな部屋にいた。

大学生「誰だよテメーは…!」

大学生はすぐに背負った剣に手を伸ばそうとするが、そこに剣はない。

純白「そう何度も斬りかかられちゃたまらないからね…寝てる間にこっちで預からせてもらったよ」

大学生「アァ!?なんだテメーは!何が預かっただよ勝手に剣盗みやがって何様だァ!?ドロボー野郎が!!」

純白「純白ですよ。良い加減名前覚えてほしいですね…」

大学生「返せやッ!!」

純白「無茶しないでください。今の君じゃ僕には勝てませんよ」

丸腰で飛びかかる大学生を純白はひらりとかわし、背後に回って関節を固めた。

大学生「いだだだだだ!!アァー骨折れた!!慰謝料よこせ五千万!!」

純白「いや折れてないから」

大学生「早く…早くアレをブッ殺して…!クスリ…!」

大学生は無理やり暴れて抜け出そうとする。

純白「ぐ…暴れないでください!本当に折れますよ!?」

大学生「だったら離せやァ!!」

純白「くっ…クスリなんて使わせません!…お酒とかタバコもダメです!君が今何歳だか分かりませんけど…少なくとも君がそういうのに手を出して、良いことがあるとは思えない!」

大学生「なんなんだよテメーは!!いきなり保護者ヅラしやがって!!」

687ハイドンピー (ワッチョイ 5dfe-51b2):2024/01/12(金) 20:40:46 ID:6VYKp6oY00

純白「それですよ、保護者!」

大学生「あぁぁぁ!?」

純白「何があったか知らないけど、君は時々子供みたいになる!だから僕が保護者になる!僕が君を守る!守りたいんだ!」

大学生「はぁ!?キッショ!!」

純白「自分と同じ顔の人間が、傷つくのも、傷つけるのも、見たくないんですよ!」

大学生「知るかァ!!勝手に見てんじゃねーよ真っ白野郎!!」

純白「同じ大学に通う同じリンク族なんだ!嫌でも視界に入っちゃうでしょ!僕はそれを見て見ぬふりなんてできないんだよ!」

大学生「余計なお世話だっつってんだよ!!」


ボフン!!


純白「うわっ!」

大学生は爆弾を落として爆発させた。

威力はほどほどだったがその拍子に純白は手を離してしまう。

大学生「バァーカ!!誰がドロボーに保護されるっつーんだよ!!同じ顔の他人見る暇あったら鏡見て自分の言動見つめ直しとけハゲ!!」

純白「誰がハゲだっ!」

大学生はその隙に剣を取り返し。

パリーン!!

そのまま窓をブチ破り、部屋を飛び出して逃げていった。

純白「ぼ、僕の部屋が…」

純白の部屋はぐちゃぐちゃになっていた。

純白「…ふ……ふふふ…!いいでしょう…だったら僕も全力で君を止めるよ…!!この僕から逃げ切れると思うなよ…!!」

ダンッ!!

純白も大学生を追って窓から飛び出した。


それから、純白は大学生に付き纏い、壊れた大学生のストッパーとして助けていくこととなる。

バッドエンドで閉じた幕は、こうして再び上がるのだ。

688ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/14(日) 19:36:49 ID:p.3o6J2U00





隣国では。

レイア「うおおおおっ!!」


ドゴォ!!


魔物「プギイイイイ!」

レイア「なんだよこの数は!すげえなオイ!」

リア「いよいよ本格的に攻めてきやがったようだな。やれやれ、面倒事は御免だぜ俺は…」

レイア「ははっ、だが修行にゃちょうどいいじゃねえか!」

出すくん「修行?悠長だね…この地上はもうすぐ地獄と化すっていうのにさ!」

レイア「誰だっ!?」

出すくん「僕は口からミミズ出すくん。お前たちを滅ぼすため送り込まれた魔の一族さ!オロロロロロロ…」

ビチャビチャビチャ!

ミミズ出すくんはミミズの魔物を大量に吐き出す。

レイア「うおっ!気持ち悪りい野郎だな!」

出すくん「気持ち悪いだと!?ミミズかわいいだろ!許さん!いけっ、ミミズたち!」

ミミズたちは一斉に二人に襲いかかった。

リア「合わせろや、レイア!」

レイア「おう!」


ドガガガガガガッ!!

グシャッ!!

ブチブチブチ…!!


魔物「ぴぎぃぃぃ!」

二人は息の合ったコンビネーションで次々とミミズの魔物を潰していく。

出すくん「ぼ、僕のミミズたちが…!!くっ!なんて酷いヤツらだ!」

リア「攻めてきたヤツが何言ってやがる…」

出すくん「うるさいうるさい!!いけっミミズー!!」

ビチャビチャ!ビチャビチャ!

ミミズ出すくんはさらにミミズを吐き出す。

リア「チッ、キリがねえな。先にアイツを倒すぞ」

レイア「分かった!んじゃ俺が行くから雑魚は任せるぞリア・リエ!」

リア「はあ?なんで俺がコッチなんだよ。まあいいけど…しくじんなよ」

レイア「バーカ俺を誰だと思ってんだ!おっしゃ行くぞ!!」

ダッ!!

レイアはミミズ出すくんの方へと一直線に走り出す。

689ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/14(日) 19:37:23 ID:p.3o6J2U00

出すくん「こっち来んな!オロロロロ…」

レイア「どけぇ!!」


ボゥッ!!


ファイヤーボールでミミズを焼き払い、出すくんの眼前へと跳ぶ。

レイア「オラァ!!」


ドガッ!!


レイアのドロップキックが出すくんの顔面にめり込む。

出すくん「ぐあっ!」

レイア「まだまだぁ!!」


ギャルルルル!!


レイアは空中で回転し、ドリルのように踏み潰す。

出すくん「あだだだだ…!」

レイア「うおおおっ!!」


ズドドドドド!!


さらに回転は勢いを増し、両手足を使ってトルネードのごとく連続攻撃を食らわせた。

出すくん「があぁぁっ!!」

ドシャァ!

レイア「っしゃあ!どうだ!」

出すくん「つ…強い…!クソッ、退散だ!」

レイア「あっ!?待てコラ!」

出すくん「誰が待つか!オロロロロ!」

ビチャビチャッ!

出すくんはまたミミズを吐き、肉壁を作り出した。

レイア「どけっ!!」


ドゴォッ!!


ウネウネウネウネ…


レイアが殴ると、ミミズたちはその腕に絡みついた。

レイア「くっそ!キモいな!」

その隙に出すくんはゲートを開く。

出すくん「フン、まあいいさ…目的は果たしたからね…」

リア「目的…?」

レイア「テメェ、待ちやがれ!クソッ!覚えとけ!俺は灼熱のレイア!親玉に伝えろ!今度来やがったらこの俺がまとめて相手してやる!!」

出すくん「バーカ、お前らなんか幹部たちに比べりゃカスだ。僕みたいな下っ端一人追い返したくらいで調子に乗るな。ははははは!」

そしてミミズ出すくんがゲートをくぐり終えると、ゲートは閉じていった。

レイア「ちくしょう、逃げられたか…」

リア「ったく…しくじんなって言ったよな?」

ミミズの魔物を掃除し終えたリア・リエが、不機嫌そうにレイアを睨む。

レイア「おう、すまん!」

リア「…まあいい。アイツの口振りじゃ、まだまだとんでもねえのがいそうだな。もっと鍛えるぞ、レイア」

レイア「おう!」


それから魔族たちによるこの国への侵略はさらに勢いを増していき。

この二人もまた、巨大な戦いへと巻き込まれていくことになる。

690ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/14(日) 19:38:08 ID:p.3o6J2U00





魔界では。

出すくん「お前助け出すのにミミズめっちゃやられたんだから、ちゃんと働いてよ」

下半身「ああ。悪かったな」

ミミズ出すくんは、かつてムッコロズに負け収容所に捕まっていた下半身虚弱体質と話していた。

ミミズでレイアたちの気を引いている間に、ゲートによって魔界へと連れ戻したのだ。

と、そこへ。

ぽふっ

下半身「!?」

突然頭上に何かがのしかかり、下半身虚弱体質はバランスを崩す。

???「やあ。調子どう?」

それは赤カービィだった。

いかに虚弱と言えど軽いカービィに乗られた程度でドンキー族がバランスを崩すはずはないが、カービィがその肩に担いだ巨大なハンマーの重量がそうさせた。

下半身「し、下目使い様…」

出すくん「とりあえず下半身虚弱体質は連れ戻しました」

二人は膝をついて報告する。

下目使いは虚弱の頭上からぴょんと飛び降り、二人の顔を見下ろす。

下目「おっけー。戦力は一人でも多いに越した事はないからね。虚弱はもっと鍛えなよ。下半身とか」

下半身「返す言葉もありません…」

出すくん「ただ地上でちょっと面倒なヤツに出くわしまして…」

下目「は?」

出すくん「灼熱のレイアとかいうヤツなんですけど…もちろん幹部クラスには遠く及びませんが…雑兵の魔物たちでは歯が立たないレベルのヤツが、地上にも意外といるみたいです」

下半身「レイアとかいうのとは違いますが、私も地上のファイターと戦い敗れました…甘く見すぎると予想外の反撃を食らう可能性があります」

691ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/14(日) 19:38:33 ID:p.3o6J2U00

下目「ふぅん…灼熱のレイアね。まあ一応妖魔様には伝えとくよ。でもお前たちがもっと強ければそんな報告する前に潰せたはずだろ」

下目使いはギロリと高圧的な目で二人を見下ろす。

出すくん「は、はい…精進します…」

下半身「申し訳ありません…」

デスエン「ハハハハ、まあそういじめてやるなよ。地上じゃあそういうのはパワハラというらしいぞ」

そこにΦデスエンペラーが歩いてきた。

下目「デスエン。お前には関係ないだろ」

デスエン「なんだよつれないな。もうすぐ地上に出るんだろ?だったらもう少し地上のことも知っておくべきじゃないのか?」

下目「知る必要ないでしょ。どうせ僕たちが全部踏み潰すんだ。それに本当の目的は地上じゃなくてその上…天界の神とやらを見下すことだ」

デスエン「フッ、痛い目を見ても知らんぞ?」

下目「勝手に言ってろ」

デスエン「まあいい。俺もちょっと準備があるんでな」

デスエンは去っていく。

下目「何?まーた何か企んでんの?」

デスエン「企みというほどのモンじゃあない。だが、上手くいけば面白い事になるかもしれんぞ。"お前の企み"のようにな」

下目「…何の話だよ」

デスエン「フ、俺に隠しても無駄だ。だが口を出すつもりもないさ。精々頑張れ」

下目「チッ…」

出すくん(下目使いの企み…?何の話してるんだコイツら)

692ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/14(日) 19:39:07 ID:p.3o6J2U00





王国の城下町では。

???「初めまして!僕はÅライムライトÅと申します!」

ヒーロー「お、おう…?見ない顔だな?」

ヒーローの前に現れたのは黄色い服の少年だ。

ライム「はい。先日引っ越してきました。あなたが噂のヒーローさんですね?この町を守ってるとか…」

ヒーロー「ああ。守るも何も、この国は平和すぎてパトロールくらいしかする事がないんだがな」

ライム「良いことじゃないですか。うちの家族も、世界一平和な国だって聞いてこの国に来たんですよ」

ヒーロー「そうだったのか。フッ、それは光栄なことだ。もし何かが起きてもこのヒーローがご両親共々絶対に守り抜くから、安心して過ごしてくれ」

ライム「ふふ、心強いですね。まあうちお父さんはいないんですけどね…」

ヒーロー「…そ、そうか…」

ライム「あっ!誤解しないでくださいね!死んだとか、離婚したとかじゃないんです。海外でのお仕事が忙しくて、ずっと会えないんですよ」

ヒーロー「なるほど。寂しくはないか?」

ライム「いつも電話してるので平気です!会いたくないと言えば、嘘になっちゃいますけどね」

ヒーロー「そうか…そうだよな。もしよかったらこの国の名物を紹介するよ。F-ZEROというレース競技だ。あれを見ればきっと興奮で寂しさなんて忘れてしまうぞ」

ライム「F-ZERO…聞いたことあります!今度行ってみますね。ヒーローさん、ありがとうございます!」

693ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/14(日) 19:39:32 ID:p.3o6J2U00





極道の町の町はずれの、とある一軒家。

???「うおおー!!やっぱヒーローかっこいい!!」

テレビのヒーロー番組を観ながらはしゃぐのは、青い服の少年。

母親「こらアマゾン、こんな朝っぱらから大声出さないの。近所迷惑になるでしょ。ヒーローなら他人に迷惑かけちゃダメ」

アマゾン「はっ!そうか…確かに…気をつける」

番組が終わると、アマゾンは机に自由帳を広げた。

アマゾン「ぼくがヒーローになったら…」

自由帳に大きく稚拙な妄想を描いていく。

アマゾン「このへんに星をつけて…ポーズは、こうだ!へんしーん!グレイトォー…アーマーゾン!!」

イスの上に立ってポーズを取る。

母親「だからうるさいってば」

アマゾン「あ、ごめんなさーい」

母親「それと…パパに電話しなくていいの?テレビ見終わったらするって言ってたよね?」

アマゾン「あ!わすれてた!」

アマゾンはタンスの上に設置された黒電話の元へと走った。

694ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/14(日) 19:40:19 ID:p.3o6J2U00






数ヶ月後。

とある村。


ドドドドドドドドドド…!!!!


卍「なんだ…?この音…」

バロン「すごい地響きですね…地震…?揺れはそんな強くないですけど…」

卍「いや…何かイヤな予感がする。出るぞ!」

ジムでトレーニングしていた二人は、すぐに着替えて外へ出る。

住民「うわああああっ!!」

卍「!!」

バロン「こ、これは…!」

魔物「グオオオオオッ!!」

そこには大量の魔物が出現していた。

卍「なんという数の魔物…!!バロンムッコロス、パワードスーツを着ろ!」

バロン「は、はい!」


ドガガガガガッ!!!


二人は、というかほぼムッコロズが、次々に魔物を倒していく。



そして数十分後。

卍「はぁ…はぁ…くそっ…犠牲者が出てしまったか…」

魔物は全て倒したが、何人かの住民が血を流して倒れていた。

バロン「あ…あの数じゃ仕方ありませんよ…」

卍「俺たちだけでは限界がある…もっと戦える者を増やさなくては」

バロン「増やすって…どうやって…」

卍「住民を俺たちで鍛えるんだ。自分の身を自分で守れるように。ファイターじゃなくとも、武装して戦い方さえ覚えれば、雑兵程度ならなんとかなるはずだ」

バロン「なるほど…でもそもそも体を鍛えてない人を今からトレーニングするには時間が…」

卍「ああ、分かってる…侵略はもう始まっている。ある程度屈強な肉体を持っている者を集めるんだ。時間がない。すぐに始めるぞ。俺は軍に連絡するから、お前は周辺の町や村に連絡してくれ」

バロン「了解です!」

695ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/14(日) 19:41:03 ID:p.3o6J2U00





動物たちの村では。

魔物「ギャオオオ!!」

ドゴゴォ!!

ゾウ「うわああ!!」

サイ「ぎゃああああ!!」

ここでも大量の魔物が暴れていた。

住民たちが次々と犠牲になり、建物は破壊されていく。

ねこ「やめろー!!」


ドガッ!!


魔物「グギャア!」

ねこ「はぁ…はぁ…くそ…急にこんな魔物が出てくるなんて…!これじゃとても守りきれません…!」

ねこは戦い続けてボロボロになっていた。

テングザル「ねこ、ここは俺たちに任せろ!」

ウォンバット「その体じゃこれ以上は無理だよ!逃げて!」

ねこ「そんな!ファイターのボクが逃げるわけにはいきません!」

テングザル「フッ、実は俺たちだってファイターなんだぜ!」

ねこ「えっ!?」

ピカーーン!!

テングザルとウォンバットの二匹の体が光る。

次の瞬間、二人はマリオとルイージになった。

テングザル「これが俺たちの真の姿だ」

ねこ「な、なんと!」

ウォンバット「行って、ねこ!さっきテレビ見てたら速報が入って、魔物はこの村だけじゃなくこの国の各地で暴れてるらしいんだ!」

テングザル「魔物はどんどん勢いを増してる…被害は世界中に広がっていくハズだ…!こんなところでお前を失うわけにはいかねえ!幸運を呼ぶお前が行って、世界を救うんだ!」

ねこ「で、でも…!」

テングザル「今のお前じゃ足手纏いだって言ってるんだよ!」

ねこ「…!わ…わかりました……!みなさん、どうかご無事で!」

ねこはヨロヨロと歩き、村を離れていく。

魔物「ギャオオオ!!」

そこへ数匹の魔物が走ってきた。

ねこ「うわっ!…………あれ?」

魔物はねこを素通りした。

ねこ「き、きづかれなかった…?運よすぎか」

その後も何度も魔物と遭遇するも、運良く気付かれず、やがてねこは村から完全に脱出した。

ねこ「はぁ…はぁ…なんとかして、魔物を追い払わなきゃ…でもボクひとりじゃとてもムリだ…いっしょに戦ってくれるつよいヒトをさがさなきゃ…!お兄さんをさがして旅に出た妹ちゃんは無事だろうか…」


それから程なくして、ねこは近隣の村に到着する。

そして国の状況を把握するためニュースを見て、故郷の村が完全に滅ぼされたことを知る。

696ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/14(日) 19:42:23 ID:p.3o6J2U00





魔界。

地上を蹂躙していく魔物たちの映像が、空中に大きく映し出されている。

その前には大量の魔族が隊列を組み集まっていた。

???「…これが地上だ。貧弱な人間共など、我等の敵ではない…!時は来た!征くぞ!我らの世界を取り戻すのだ!!」

先頭に立つ巨大な青ドンキーが声を上げる。

魔族「ウオオオオオオオオ!!!!」

魔族たちもドンキーに続いて雄叫びを上げた。

???「フンッ!!」

ドンキーが両腕を大きく広げると、その隊列の横に大量のゲートが開いた。

下目「進め!魔族の力を知らしめるんだ!」

ヤミ「フハハハハッ!!地上の虫どもを蹂躙せよ!!」

ドンキーのすぐ後ろに控えた下目使いとヤミノツルギ†が号令を出し、一斉に魔族たちはゲートをくぐっていく。

下目「我々も行きましょう、妖魔様」

ボォッ…!!

ヤミノツルギはファイアフラワーから放つ炎を操り、大きな輪を作った。

そしてその火の輪はゲートとなって地上の景色を映し出す。

魔物「ギャオオオオオ!!」


ドドドドドドド…!!


そのゲートから、ゴブリンのような魔物たちが先陣を切って地上へ出る。

そして下目使いとヤミノツルギがゲートの左右に跪き。

ヤミ「さあ、お通りください、妖魔様」

ドンキーはゆっくりと歩を進める。

ザッ…

ザッ…

ザッ…

そしてゲートを越えた先には。

697ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/14(日) 19:43:22 ID:p.3o6J2U00

???「…これが地上か…いつ以来だ、この景色は…」

魔物によって破壊されていく村。

逃げ惑う村人たち。

村人「きゃああああ!!」


ドォォン…!!

ズズゥゥン…!!


村人「う、うわああっ!!」

そして逃げた先に、そのドンキーとかち合ってしまった不運な村人は、足を竦ませ尻餅をつく。

村人「ヒィッ…!なんだあのゴリラは…!!」

ドンキーはギロリと見下ろし、言う。


???「我はキング・オブ・妖魔…!いずれ世界を我が手中に収める者なり…!」





第四章 完

698ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/14(日) 19:53:32 ID:p.3o6J2U00
ここまで読んでいただきありがとうございます!
というわけで第四章は浪人生編?でした!
こうしてハイドンピー第一作目の〈勇者ヨシオの冒険〉に繋がっていきます
例によって書き溜めのためしばらく休みますが、クライマックスとなるであろう第五章を気長に待っていただけると幸いです
待ってる間に、四〜五章を繋ぐ勇者ヨシオの冒険や他作品もいかがでしょうか(宣伝)
感想等頂けると喜びます!

699はいどうも名無しです (ワッチョイ a417-3448):2024/04/12(金) 16:41:56 ID:VkdGbQ3U00
まだ回収されてない部分がどうなるのか気になる


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