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テストロールスレ
1
:
◆vjke6TKyHk
:2017/01/29(日) 03:12:53
あなたはふと目を覚ますと、見知らぬ町に佇んでいました。
何故自分がここにいるのかと記憶を巡らせれば、最後に記憶していた光景は、もしかすれば日常を謳歌していたかもしれませんし、もしかすれば死闘を繰り広げていたかもしれませんし、もしかすれば死の間際だったかもしれません。
それらいずれにせよ、少なくとも自分がここに立っている理由にはなりません。
あなたがそう思案していると、電子音が鳴り響きます。
音源を探すと、いつ持たされたのか、スマートフォンのようなタブレットを持っており、そこから音がしているのがわかります。
中を見てみると、こう書かれていました。
『おまえたちのせかいは ほろびました』
『ざんねんなことに かみにみすてられました』
『でも めがさめたということは かみにおもいだしてもらえたということです』
『おまえたちは しにません』
『おまえたちは かみにあきられるまで しにません』
あなたはそのような怪文書を読み、はたしてここからどうするかを思案するのでした。
オープン前のテストロールスレです。
このまましたらば出続けるか、それともパー速に乗り換えるかはさておき、まずはここで手応えを確かめましょう。
42
:
鬼灯 緋那子
◆NaNYuYafv2
:2017/02/12(日) 01:11:40 ID:bf1w8ffU
>>41
「そうですか。……十字架立てただけで安眠できるほど、人の命は安くはないですよ」
ずるり。滴る血が形を変えて、刀の形に。
次の瞬間には、ぎいんと音を立てて――脇腹に喰いつかんと迫る貴女の刃を、受け止めた。
鍔迫り合いの音。ここで初めて、平淡だった表情に縦皺が走る――眉間。
「お友達ですか? そうですね――――貴女が私にとって、全力を出して狩るに足る相手なのであれば」
緋那子自身の持つ筋力は、少女に毛が生えた程度のそれだ。
もし貴女がそれを上回る筋力を持つのなら、緋那子の血の刀を弾き飛ばすことも出来るだろう。
43
:
アルル・ルージュ
◆vjke6TKyHk
:2017/02/12(日) 01:29:19 ID:FtkW6Y52
>>42
「そう、貴女戦いが好きなのね! 私も大好き! 切って切られて潰して潰されて、お互いが最高に気持ちよくなれるもの!」
血の刀とギチギチとせめぎ合いながら、彼女は笑う。
その表情は、苦痛と快楽が織り交ぜられたような、奇妙な笑い顔であった。
「それに、私こういうの好きよ? 刀と刀をぶつけあわせてのせめぎ合い。なんだか漫画やアニメの主人公になったみたいだもの。だからここから、もっと主人公になろうね!」
いうなり彼女は、大きく息を吸った。
そして、次の瞬間。
「キィアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッ!!!」
絶叫。キンキンと耳に響くような絶叫だ。
そしてそれは、まるで断末魔であるかのように苦痛から絞り出されたような声であった。
しかし、その顔は笑顔。狂気の笑顔。
その叫びは、決して相手を怯ませるためのものではない。
己の筋力を増強させる代償なのだ。無論、彼女にとっては快楽以外の何者でもないのだが。
結果今の彼女は日々鍛錬を重ねる軍人よりなお勝るほどの力を得ている。
このままいけば、刀を押し返し斬りつけるまではできるかもしれない。
しかし、その剣筋は素人そのもの。ただ力任せに押し付けているだけにすぎない。
技術か、あるいは戦略か。力に頼らぬそのどちらかがあれば、逆に好機となるかもしれない。
44
:
鬼灯 緋那子
◆NaNYuYafv2
:2017/02/12(日) 01:43:31 ID:bf1w8ffU
>>43
「気持ち良くなれるのは否定しませんけれど……私、痛いのはあんまり好きではないですよ?」
勘違いさせていたならすみませんけれど。そう言いながらも、眉間の皺を深くしていく。
このままなら押し切れるかもしれない、そう思って刀を握る手に力を籠めた、が。
「――――ッ!?」
路地裏に響く大音量。耳を劈くそれに、思わず盛大に顔を顰めて。
次の瞬間、はっと息を呑む――貴女が刀を押す力が、強くなったのを感じ取ったのだ。
ぐ、と奥歯を噛みしめる。押されていく血の刀、貴女の刃が身に喰いこむまであと数センチ。
(……やばいな、今から『別に』用意してたら、間に合わない。この力加減で一撃もらうのもまずい。
なら、一か八か――――っ)
ざり、と地面を踏みしめるローファー。それを勢いよく蹴り上げて。
地面に残る細かな砂利や小石を、貴女の顔に向けてすっ飛ばした。苦し紛れの、軽い目潰しだ。
45
:
アルル・ルージュ
◆vjke6TKyHk
:2017/02/12(日) 02:00:31 ID:FtkW6Y52
>>44
「大丈夫! 痛いってことは大好きってことだから!」
彼女の中でしか通らないような理屈をほざきながらも、力は緩めない。
しかし、次の瞬間。
「うみゅっ!?」
突如目に飛び込んだ砂により、彼女の視界は一瞬不能となる。
そして、それに気を取られたことで、刀に込められた力も緩むことだろう。
この隙を前に、鬼灯が出す行動とは。
46
:
鬼灯 緋那子
◆NaNYuYafv2
:2017/02/12(日) 02:08:36 ID:bf1w8ffU
>>45
「痛いが、大好き……? よく分からない感性ですね、分かりたくもありませんが、っ」
力が緩んだのを感じ取るや否や、すぐに刀を跳ね上げて弾かせる。
刃同士が離れれば、バックステップで距離を取った。
こうも力に差が付けば、正攻法ではやっていられない。
「“逃水”――――これ消費が多いから、あんまり好きではない、ですけれど」
だらん、と手を垂らし、固めていた血を再度液状化させて、地面に垂らす。
小さな血溜まりを作り出してから、再度刀を握り直して。
「さ、仕切り直しです。今度は力任せにやったって、上手くいきませんからね!」
再び距離を詰め、アルルの右肩を狙って――突きを繰り出した。
その動きに追従するように、血溜まりも地を這って移動しているのが、アルルの目には見えただろうか。
47
:
アルル・ルージュ
◆vjke6TKyHk
:2017/02/12(日) 02:30:17 ID:FtkW6Y52
>>46
「うみゅぅ……痛いには痛いけど、こういうのあんまり好きくないなぁ……」
目をこすり、なんとか視界を確保した頃には、再び距離を開けられ、再度刀が握り締められている。
「仕切り直しになっちゃったねぇ。でもいいよ。私も負けないから!」
そう言って、彼女は走り出す。
その軌道はなんと、狙い通り肩に突き刺さるよう道を選んでいる。
向こうにとっては予想外であろうこの動き。
もしもこのまま刀が突き刺さったのなら、彼女は逃さないよう右手で血の刀をつかみ、こういうのだ。
「うん! とってもとっても痛い! 脳みそがとろけちゃいそう! だからこれは、お返しね!」
そう言って、鬼灯の右肩に柄のない刀を突き刺すのだ。
無論、これらの動きはもしも刀が突き刺さったのならの話。
突き刺さらなければ、いくらでも別の未来があるだろう。
それに、地面を蠢く血だまりに、彼女はまだ気づいていないのだから。
48
:
鬼灯 緋那子
◆NaNYuYafv2
:2017/02/12(日) 02:42:41 ID:bf1w8ffU
>>47
「な、っ――――」
大好き、の意味を思い知るのが少しばかり遅かった。
それを理解したのは、貴女の肉を引き裂いて、切っ先が骨まで到達したときのこと。
その頃には既に、逃げられないようがっちりと刃を掴まれていたのだった。
驚愕に目を見開いて――それでもまだ、みっともなく狼狽えはしない。
「――――突き破れ、“鬼哭”っ!!」
地面を這い、緋那子の足元まで移動していた血溜まり。
それが形を変え、地面から突き出す鋭い棘のように――上を向いて、伸びた。
狙うは刃を突き出し返す左腕。血の棘がそれを貫くか、それとも貴女の刃が届くのが先か――。
49
:
アルル・ルージュ
◆vjke6TKyHk
:2017/02/12(日) 03:19:38 ID:FtkW6Y52
>>48
「ンンンンンンッ!!」
鉄の刃は届かず、血の刃が彼女の左腕を貫いた。
右も左も貫かれ、もはや貼り付けられたに等しいこの状況。
しかし、気付くだろうか。彼女の悲鳴が、いつもと違う。
口を閉じて叫んでいるのだ。
その理由は、こう。
「んばぁっ」
彼女の口から、大量の血液が飛び出した。殺傷能力はない。ただの血液の塊だ。
鬼灯のまだ知らない、彼女の能力。再生の応用による血の増殖だ。
これを、舌の先端を噛み切ることにより解放し、さっきのお返しとばかりに目潰しとして吐き出したのだ。
刀を握るほどの距離だ。これを避けるのは至難の技だろう。
怯もうが怯まなかろうが、彼女はこのまま筋力強化を施し、蹴りを放つつもりだ。
50
:
鬼灯 緋那子
◆NaNYuYafv2
:2017/02/12(日) 03:31:39 ID:bf1w8ffU
>>49
「はあっ、これで両腕、潰し――――ッ!?」
一瞬の出来事。緋那子の青白い顔が、一瞬にして真紅に染まる。
思わず目をぎゅうっと瞑って――次の瞬間。放たれた蹴りは、薄い腹に綺麗にめり込んだ。
ぐっと息が詰まる。嘔吐感に襲われる。めぎり、と嫌な音がしたのは体の内部から、恐らく肋骨がイカれた音。
後ろに靴底が滑っていく。けれど、死んでも獲物は手放さない。緋那子はそういう生き物だった。
下を向いて、ぶあっと詰まった息やら血やら唾液やらを盛大に零して――それでもまだだ。
顔を上げ、アルルに向き直り、緋色の瞳をぎっと差し向ける。
「つ、ぎ……脚、ッ」
両腕を潰した。次は脚だ、と言うことだろう。アルルの両腕を貫く血の刃と棘は、一旦引き抜かれた。
返す刀で、左脚の太腿あたりを狙って斬り下ろす。水溜りの状態に戻った足元の血は、そのままだ。
51
:
アルル・ルージュ
◆vjke6TKyHk
:2017/02/12(日) 03:53:08 ID:FtkW6Y52
>>50
渾身の蹴りが無防備な腹に決まった。
しかし、その一撃は相手の心を折るには到底届かなかったようだ。
そして、ぶり返す痛み。その恍惚の激痛に、彼女は避けるという思考を叩きださなかった。
「アギ、イィィィッ!!」
人間が強く痛みを感じる部位である太腿。そこを切り裂かれた以上、やってくる痛みは想像を絶する。
加えて、痛み以外にも動きを封じられるというデメリットまであるのだ。
今の彼女はただ地面に倒れふすのみ。しかしながら、その顔はまるで事後のように恍惚に、赤く染まっている。
普通に見ればこれでゲームセットだ。
しかし、鬼灯は気付くことができるだろうか。
倒れふすアルルの左腕。それが黒紫に染まっていることを。
まるで酷い打撲痕のように黒紫に染まるその腕は、現在進行で血と鉄分が大量生成されている。
もしもそれに気づかないようならば、そこから放たれるウォーターカッターならぬブラッドカッターは、鉄であっても切り裂くことだろう。
当然、少女の柔肌などひとたまりもあるまい。
しかしもし気づけたのなら、チャージが終わる前に腕の破壊なりなんなり、何かしらの対策をねれるはずだ。
52
:
鬼灯 緋那子
◆NaNYuYafv2
:2017/02/12(日) 04:04:14 ID:bf1w8ffU
>>51
「ふーっ、ふー……っ、いっだぁ……」
痛みと苦しみに盛大に顔を歪めながら、地面に突き立てた刀を杖代わりに、膝をつく。
刀の柄を握るのとは反対の手で、思いっきり蹴りつけられた腹を擦り、それでも視線はアルルに向けたまま。
その執念のお蔭か、あり得ない色に変色していく腕に気付くことが出来た。
何をしようとしているのかは分からない。けれども、何かしようとしていることだけは理解できる。
きっとまだ、此方を壊すつもりなのだと。そう結論付けると、はあと息を吐いた。
ちらと視線を移した先は、そのままにしていた血溜まり。刀を振る元気は最早ないので、彼にその役目を任せることにした。
「“鬼哭”――――すみませんけどね、もう、させませんよ。
お楽しみは、ここまでです」
先程下した命令と同じ、鋭い棘を、アルルの左腕に向かって伸ばす。
53
:
アルル・ルージュ
◆vjke6TKyHk
:2017/02/12(日) 04:15:45 ID:FtkW6Y52
>>52
その左腕を貫かれた途端、あたりには地獄絵図が広がる。
極限近く血液を溜め込んでいた腕は、一気にそれを解放させた。
あたりには、血の海が広がる。
当然、アルルの全身余すところなく血でビショビショだ。
アルルは、グッタリとして動きそうにない。しかしこれはダメージや疲労によるものではない。ひとえに、快楽の余韻に浸っているだけだ。
もしもこれを戦いの終わりとして油断するなら、その頃に手痛い反撃を食らうことになるだろう。
具体的には、傷一つ残さず全快したアルルに、刀の投擲を受けることとなる。
そしてその後、疲労困ぱいの中傷一つ残さない彼女と戦わなくてはならなくなるのだ。
54
:
鬼灯 緋那子
◆NaNYuYafv2
:2017/02/12(日) 04:34:33 ID:bf1w8ffU
>>53
「はあっ……もう、便利なカラダをお持ちなことで……羨ましいですね、血を増やせるなんて」
こっちはただでさえ貧血なのに。そう独り言ちながら、刀を支えにしてなんとか立ち上がる。
びちゃびちゃと、血の海を踏みしめて歩き、倒れ伏すアルルを見下ろせる位置まで来た。
刀の切っ先を、アルルの胸――心臓の真上に向けて。
「……この世界では、私たち……『しにません』だそうですよ。貴女も、そうかもしれませんね。
生き返れたなら、またお相手してあげますから。今はもう、お休みなさいな」
戦って、刃を振るって相手を斬るということは、即ち相手を殺すことに繋がる行為だ。
その覚悟をしていないわけはない。緋那子は正常/清浄な人間ではない。ただの戦狂いの、人殺し。
だから、その切っ先をアルルの心臓へ――まっすぐ落とすことに、なんの躊躇も抱かなかった。
アルルが逃げないのなら、刃は迷いなく、心臓へ突き立てられることだろう。
55
:
アルル・ルージュ
◆vjke6TKyHk
:2017/02/12(日) 04:50:41 ID:FtkW6Y52
>>54
心臓は、まずい。
快楽から意識を取り戻した彼女は、それだけは判断がついた。
途端、全身の傷を瞬時に回復。その場で転がることにより、回避を試みる。
トドメを刺すつもりであった相手の意表をつくことはできるだろうが、この危機的状況を脱することができるか。
できなければそれまでのこと。心臓を貫かれて、彼女は死を迎えるだろう。
果たして、どちらに転ぶか。まさしくそれは、かみのみぞしる。
56
:
鬼灯 緋那子
◆NaNYuYafv2
:2017/02/12(日) 05:04:17 ID:bf1w8ffU
>>55
「ッ!?」
瞬きをした次の瞬間、何事もなかったかのように修復された傷。
その光景に目を見開いて――コンマ以下の秒数の話、けれどもそれで十分になるのが、戦場だ。
転がったアルルの肌に幾許かの傷は与えられただろうが、心臓を貫くことは叶わなかった。
(く、っそ……拙い、拙すぎるなこの状況……よりにもよって、傷、治しやがった……!
ふざけんなよ、こっちはもうこれ以上やってる気力も――ああもうっ)
舌打ち交じりに荒れる思考、けれどこれ以上狼狽えているヒマもない。
刀を握り直し、どうすればいいかを考えて――――
「――――――“徒花”っ!」
――命令を下す。手にしていた刀、地面に残しておいた血溜まりに。
緋那子の声に合わせて、それらは風船の弾けるような音を立てて、炸裂した。
辺り一面、所構わず飛び散る血液。それはアルルの肌にも、降りかかるだろうか。
57
:
アルル・ルージュ
◆vjke6TKyHk
:2017/02/12(日) 05:23:43 ID:FtkW6Y52
>>56
「すっっっごい、痛かったよ!」
心臓への攻撃を避け、転がった先で立ち上がり、開口一番、アルルは素直な自分の感想を告げた。
「やっぱりギブだけじゃつまらないよね。ギブアンドテイク、与えて、もらう。それが一番ハッピーな形だよね!」
血まみれで、彼女は笑う。避ける時に受けた傷も、たちどころに治ってしまう。
その余裕の現れか、弾ける血しぶきは避けようともしない。
しかし、頭に降りかかろうとした飛沫だけは片方の腕で防いだ。
「それで、今度はこの飛び散った血で何してくれるのかな? もしかしてこのまま黒ひげさんみたいになるのかな?」
そしてまた、彼女は楽しげに笑った。
しかし、その裏では刻一刻と、ある計画がなされている。
血まみれになった彼女の腕。その片方に、再び血が蓄えられていた。
最初に弾けさせた腕は全てこのための布石だ。赤く染まった今、腕の変化は相手にも見えまい。
こうやって話しているうちに、ブラッドカッターの準備を進めていたのだ。
勝負は、最終局面を迎えている。
相手が脳か心臓を破壊できればこちらの負け。
放つ攻撃がその二つを破壊できなければ、ブラッドカッターによる一閃で、おそらくこちらの勝ち。
にこやかに話す裏側では、刻一刻と終わりの時が近づいていた。
果たして、運命やいかに。
58
:
鬼灯 緋那子
◆NaNYuYafv2
:2017/02/12(日) 05:41:55 ID:bf1w8ffU
>>57
「ふざけないでくださいよ、あなたギブされたって、そうやって治しちゃうじゃないですか。
こっちはテイクされた分だけ、そのまま残っちゃうんですよ、ええもう……」
はーっと大きく大きく溜息をついて、やれやれと言うように肩を竦める。
緋那子自身も血を浴びて、二人とも全身真っ赤どころの話ではない。
「さあどうでしょう。黒ひげ、こま切り、何でもできちゃいますけどねえ。
ひとつだけ奥の手があるので、それを貴女に使ってあげようかと思いまして」
――――ふつり。互いに互いの血を浴び合った少女たちの体に、わずかな熱が燈る。
気付くだろうか、先程辺り一面に振り撒いた緋那子の血が――沸々と泡立ち、だんだん熱くなっていくことに。
「……さっきも言いましたけど、私たち、この世界では『しにません』だそうで。
この際に試してみません? それが本当のことかどうか。
なあに、嘘だったとしても大丈夫、私も一緒に行ってあげますから、怖くはありませんよ」
沸沸沸沸沸沸。ここまでくればきっと、気付かないはずはない。湧き立つ泡の直径が、大きくなっていく。
「さ、これが私の奥の手です。“曼珠沙華”――――――それでは、お元気で」
沸沸沸沸――――轟ッ!!
湧き立つ血液が、一斉に、炸裂する。火花を散らし、熱風を伴って。
血を浴びた地面が、建物の壁が、二人の少女の肌が――――圧倒的な熱によって、焦がされていくことだろう。
戦狂いの少女・鬼灯緋那子は、勝ちも負けも選ばずに――「相打ち」の選択肢を以て、アルルを確実に殺さんとしたのだ。
59
:
アルル・ルージュ
◆vjke6TKyHk
:2017/02/12(日) 06:03:31 ID:FtkW6Y52
>>58
「アァァァ!!」
身を焦がす膨大な熱は、回復したそばから身を焦がしていく。
さらに、この身を傷つけるのは熱。破壊された体組織を元に戻しても、蓄積されていく熱をゼロにすることはできない。
熱は皮膚を焼き、脂肪を溶かし、筋肉を焦がし、脳へとやがて浸透する。
手に集められていた血液も、放たれることなく蒸発してしまう。
「あ、アァ……ふ、ふふふ、さい、こう……!」
黒い人型となった彼女は、そう呟きその場に倒れ伏した。
それは立ち上がることなく、やがて光の粒子となり、その場から跡形もなく消えてしまった。
しかし、彼女はまだ、かみに飽きられていなかったようだ。
「へぇ。こんな風に生き返るんだ」
ニュータウンエリアのどこか。彼女はまた五体満足の姿でこの世界に降り立った。
手を握ったり開いたりしてみるが、なんともない。触れ込み通り、本当に読みが得れるようだ。
「それにしても、ふふふっ!」
死の苦痛を経た直後だというのに、少女は楽しそうに笑った。
「緋那子ちゃん、また会えるといいなー」
自分を傷つけ戦闘するあの少女を思い出し、彼女は微笑む。
最期の一撃すら自分を厭わないそのあり方は、どこか自分に近いような気がして。
根本的な部分は全く違うと気づくことなく、彼女は嬉しそうに、夜の街を歩くのだった。
60
:
鬼灯 緋那子
◆NaNYuYafv2
:2017/02/12(日) 06:10:50 ID:bf1w8ffU
>>59
「――――――――」
熱に呑まれていくのは此方も同じ。青白い肌を黒く焦がし、悲鳴すら焼き尽くされて、
ヒトとしての形すら失って尚――口元だけは、最期まで笑みの形を保ったまま。
緋那子もまた、光の粒子となって、辺り一面が焦土と化した路地裏から消え去った。
同じく、ニュータウンゾーンの何処か。
緋那子の「家」として設定されている、学生向けの安アパートのベッドの上。
何事もなかったかのように朝日は昇り、タブレット端末のアラーム機能で叩き起こされる。
「……まるで夢でも見た、みたいな感覚。いやもう、夢だったら逆にそっちのが嬉しいんですけど」
がしがし。うんざりしたような表情で頭を掻きながらベッドから降り、
「いつものように」ハンガーにかけてあるセーラー服に袖を通すのだった。
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