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ここだけ悪魔が侵食する都市・テストロールスレッド
61
:
フリューゲルス(咲羽 翼音)
◆yd4GcNX4hQ
:2016/01/03(日) 18:23:09 ID:EQaCMdl60
>>60
//おりますよー!
62
:
桜井直斗
◆o/zdiZN8A2
:2016/01/03(日) 18:46:03 ID:if7ZXLvA0
>>61
昨日の出来事のせいで今日は学校を休んだ
自分を悪魔だという男
自分を殺しにくるスール姿の連中
そして──────獣になった自分
訳が分からない事が多くて、逃げたくて
学校の友人に会うことだってどこか嫌になって
家にも帰らず、夜の街を歩いていた
「何なんだよ...ったく」
丈を短く、アクセサリーを付けて改造してある学ラン
長めの前髪をピンクのヘヤピンで茶髪の少年
年頃の学生の様だ
夜の街では補導されそうな少年
このまま歩いていたら事実補導されていただろう
だが、彼はその不安定な足取りで路地裏に入っていく
何かに導かれる様に彼はその暗闇へ
「────────あれ、俺どうしてここに...って、あれ...?」
気がつけば、そこは路地裏
彼でも普段はなかなか入り込まない街の中でも閉ざされた一角に困惑して────。
────そこにいた少女と目が合った。
鳥の様な少女と、一般人の様に見える少年が出会ったのだ
63
:
フリューゲルス(咲羽 翼音)
◆yd4GcNX4hQ
:2016/01/03(日) 19:05:48 ID:EQaCMdl60
>>62
「あ────」
暫しの沈黙。二人の瞳が交差し、その間流れた時は永遠にも感じて──
「──なんだ、悪魔か」
一瞬は一般人かと思った。しかし悪魔が発する独特の雰囲気、彼のその雰囲気は希薄だが、確かに悪魔だ。
獣臭いその感じから自分と同じ獣種か。ならばこの血の匂いにでも釣られてきたのだろう。屍肉に自分は興味が無い、ならあいつにくれてやってもいいだろう。
「血にでも誘われたの?
別に私は食べないし、それ、あげるよ」
死体を翼で指差し、食っていいという趣旨の言葉を少年に投げ掛けては、ゴミ箱から地面に降り立った。その姿は可憐で、妖艶さを醸し出す。
彼女が人ではないということが脳に直接伝わってくる。言わなくてもわかる、彼女は人が関わってはいけない存在なのだと────
「じゃあ、私は行くから
それの処理は好きにするといい」
64
:
桜井直斗
◆o/zdiZN8A2
:2016/01/03(日) 19:30:29 ID:if7ZXLvA0
>>63
「────────。」
身体を構成するパーツが鳥類のそれだと気付くのに時間がかかった
それが異常と思うよりも早く────綺麗だと思った
言葉が出るのに時間がかかった
「────悪魔...? 悪魔!? な、何言ってるんだっ!? アンタも!!」
彼女の話すセリフ、その言葉に込められた不思議な力が彼女を人間じゃないと確信させた
そして少年のこのセリフはまるで人間の様な
この人の擬態が上手い悪魔は何を言ってるのだろうか
そして、去って行こうとする少女に
「まっ...待ってくれ!!」
そう、震える足に力を込めて
逃げ出さない様に
諦めない様に
「えっと........その...お、教えてくれ!! 」
あんた達の事、悪魔の事
何が起こってるのか、と
65
:
フリューゲルス(咲羽 翼音)
◆yd4GcNX4hQ
:2016/01/03(日) 20:11:39 ID:EQaCMdl60
>>64
「……?だってそうでしょ?
血の匂いに誘われてここに来たのだってそう、あなた悪魔でしょ?まだ人間のフリをしてるの?」
ごく自然に、それが当たり前だと言わんばかりに少女は言う。未だ人間のフリをするなどこいつは私をからかっているのか。
しかし少年の顔に嘘をついているような雰囲気は無い。むしろ混乱し本当に状況が分からないようにも見える。
まさか本当に…?いや、それはいくらなんでも突飛過ぎる。やはりこちらをからかっているのだ。
「なに?私はこれから狩りに行くんだけど
別にルシファには忠誠心も何も無いけど来た以上は仕事しないといけないし」
見れば少年の足は震えている。その姿があまりに健気で、少女にはそれが放っておけなくて。
「──あなた、本当に何も知らないのね
分かった、教えてあげる」
「私達は悪魔よ──あなたはまだ分からないけどね
そしてルシファっていう悪魔の命令で此処を第二の魔界にしようとしてる──大まかはこんなところね
まぁ別に私は周りに流されただけでルシファに忠誠なんて誓ってないけど」
少女は自分たち悪魔の目的を大まかに少年に話してあげた。それは凡そ常人には理解出来ない、本当だとは思えない夢物語だろう。
本当ならばこんなこと人間に話すわけがない。目の前のこの少年が悪魔だという証拠はやはりまだ無い。
しかし、この少年の行動に、恐ろしい筈なのに自分へと立ち向かった少年に情──のようなものが湧いたのかもしれない。
「一つ、忠告してあげる
あなたは自分を悪魔じゃないと思ってるんでしょうけど、あなたから感じるモノは悪魔のそれよ
でも、悪魔側に付くか人間側に付くか、それはあなたが決めること」
あぁ、今日の自分はどうかしている。何故こんな変な奴にこんなことを言っているのだろうか。
そんな自分の言動に困惑しながら、少女は少年に選択を強いるのだった。
66
:
桜井直斗
◆o/zdiZN8A2
:2016/01/03(日) 20:34:02 ID:if7ZXLvA0
>>65
「──────。」
息をする事さえ忘れていた
目の前の少女が喋るセリフ1つ1つに心が抉られる感覚
悪魔、ルシファ、魔界
これが普段の、数日前の日常なら凡庸なファンタジーと笑っただろう
だが、それが現実だという心当たりはいくつも思い浮かぶ
つい昨日の出来事を思い出して吐き気がする
「っ........」
自分の中身がぐちゃぐちゃにされる感覚
今まで生きてきた足場が崩される様な
つい、すぐ横の壁に寄りかかった
それでも血の気の引く顔で、少年は続けた
「ち、違うッ!! 俺は...俺は人間だ!!
学校に通って...ダチと遊んで...普通に生きる...」
強がりだ
虚勢だというのは伝わってくる
記憶を消したか、それとも彼に何かあったのか
彼は今まで人として生きてきたのだろう
いくら今の自分の身体が悪魔のソレでも、否定する
「お前らとは...違うんだ..!! 化け物と一緒にするなァ!!!」
と、溢れる己の感情と共に言い放った
それは怒りか、悲しみか
67
:
フリューゲルス(咲羽 翼音)
◆yd4GcNX4hQ
:2016/01/03(日) 20:53:11 ID:EQaCMdl60
>>66
「──本当は自覚しているんでしょう?もう普通に戻るのとはできないって、知ってしまったんだって」
「あなたは人間側に付く事は出来ても、日常に戻ることは出来ないのよ」
感情に任せて罵声を浴びせてくる少年に向かい、このどうしようもない真実を突きつける。
このままではきっと、この少年は破滅する。自身を人間だと、悪魔であることを否定して、そしていずれ大事な者を傷つけるだろう。大事な者を自らの手で傷つけるということは辛いことであることは分かっている。
たかがこんな者にこんなことを言う義理は無いけれど、ここで出会ったのも何かの縁だ。世話を焼いてやろうじゃないか。
「いい加減気付け、お前は"日常"には戻れない」
今度はより強く、はっきりその現実を突きつけた。
「それでもまだ自分が一般人だと思っているのなら、私はお前を此処で殺す」
その言葉は真に迫っていて、冗談だとはとても思えない。殺気を放ち、今にも襲い掛かってきそうな雰囲気すらも感じさせる。
悪魔側か人間側か、どちらにしても"日常"という選択肢はここには無い────
68
:
桜井直斗
◆o/zdiZN8A2
:2016/01/03(日) 21:10:28 ID:if7ZXLvA0
>>67
「俺は...俺は....っ!」
自分でも気付いている正論が身体を突き刺す
分かってる、もう戻れない事ぐらい
自分を覆い尽くすあの黒い獣が、自分と日常の狭間を切り裂いた事も
"もう戻れない"
────その言葉に、心が砕けた気がした。
少年はその場に、座り込んだ
顔を伏せて、沈黙が続く
「じゃあ...これからどうすりゃいいんだよ...
悪魔も魔界も何にも知らねぇのに...どうすりゃ...」
昨日、自分は殺されかけた
獣になった時に自分を殺しにきたあの人達
彼らはきっと普通の人間だ
悪魔を殺す人達だと
「俺...死にたくねぇよ」
恐怖が振り切れたのか
もう考えたくもないのか
泣くでも、怒るでもなく彼は静かに笑って答えた
69
:
フリューゲルス(咲羽 翼音)
◆yd4GcNX4hQ
:2016/01/03(日) 21:36:24 ID:EQaCMdl60
>>68
「──それはあなたが決めること、私はあなたじゃない」
そうきっぱりと少女は言い放った。だがそれで少女は終わらなかった。
ただ一つ言えることがある、と少女は言葉を続ける。
「死にたくないのなら、運命に抗えばいい
力を身に付け、死に抗え」
「そうやって現実から目を背けたままじゃら何も救えず、何も守れず、ただただ死に絶えるだけ」
元気づけた訳では無い。同情したわけでもない。
ほんの気まぐれ、その筈だ。大体自分はルシファへの忠誠などない、もしこれが失敗しても自分に特に影響もない。
だから今、敵を増やしてしまうことになってしまっても自分には影響も何も無いはずだ。
「もし、死にたくないのなら、APOH…確かそう言ってたかな
他の退魔師にその組織のことを告げて、保護してもらうといい
まぁ待遇のことは分からないけど、きっと殺されるような目には合わないはずだよ」
「──私達を異常な程に憎んでいる人が居れば別だけど
それに本当にあなたを信じてもらえるかもわからない、だからもし行くのだったら、本当に切羽詰った時にしなさい」
人間ごときに、何を自分は言っているのだろうか。今のこいつは人間だ。立場的にはどうであれ精神は人間だ。
そんな者を助けるなんて、ついに焼きが回ったか。人の本質を知りたいばかりに、人を助けるなどどうかしている。
少女はそう自分を自嘲するのだった。
70
:
桜井直斗
◆o/zdiZN8A2
:2016/01/03(日) 22:12:50 ID:if7ZXLvA0
>>69
力をつける────?
あの獣を、暴力に手足を付けたようなあの化け物を?
制御しろというのか
「──────。」
困惑する表情だ、無理はない
今までとは違う自分を受け入れるという事が
それがどれほどの苦痛なのかは理解はせずとも伝わるだろう
「保護...でも、それは...」
悪魔に対する公的な組織があるのかと一瞬不安に思ったが
昨日の出来事が組織の存在が確信させる
あの人達と、あの白衣の男もそのAPOHとやらの人間なのだろう
「──────分かった。」
もしそうなら、彼らがその組織なら
頼る事など出来ない
彼らはきっと俺を殺して、解剖するだろう
そのつもりがなかったが、俺も彼らの仲間を殺している
そんな奴らの場所に、行ってもきっと────。
「誰も傷つけないぐらい強くなったらいいんだろ?
自分の日常も、非日常も守るぐらい────強くなってやる」
そうこれが、彼の長所だ
ここ数日の出来事で調子が狂ったが
元来のポジティブさ、明るさが彼の取り柄
なんというか、これが人間として生きた結果か
先に見える苦痛も絶望も、飲み込んで突き進む
哀れで虚しくて、それでいて度し難い
人間のようだと
71
:
フリューゲルス(咲羽 翼音)
◆yd4GcNX4hQ
:2016/01/03(日) 22:35:21 ID:EQaCMdl60
>>70
「────驚いた、さっきまであんなに情けなかったのに」
まるで人が変わったかのように少年は、先程までとは違う明るさを見せていた。脳天気なのかなんなのか。まぁ本人がそれでいいのならいいのだろう。彼は彼なりの答えを見つけたのだ。
もしかすればこれが人間というものの本質なのかもしれない。自分には理解出来ないけど、彼のその真っ直ぐな心は、ちょっとは理解出来る。
「じゃあ私達は敵同士ってわけね、なんてったって日常を奪おうとしてるんだから」
くすくすと笑いながら、少女は少年を見る。その瞳は真っ直ぐで、一寸の曇りもない。
まったく、慣れないことはするべきではないか。なんだか調子が狂ってしまう。本来なら敵はとりあえず殺してきたのに、この少年を殺そうとは思えない。
気の迷いか、それとも本当に殺したくないと思っているのか。それは自分にすらも分からなかった。
「まぁでも、今日だけは見逃してあげる
せっかく私が見逃してあげたその命、大事にしてよ」
いつの間にか街には夜の帳が落ち、すっかりと夜になっていた。夜ならばこんな路地裏に居る必要は無い。
陽の光は無い、今なら外に出ても大丈夫だろう。
「じゃあね、貴重な体験させてもらったよ
もし次があるのなら──その時はどうなるかな」
そう言い残して少女は両翼を大きく広げる。純白の羽が月光を反射し、まるで羽そのものが輝いているかのように見えた。幻想的なその光景は、まるで地上に舞い降りた天使のようで───
そのまま羽ばたけば、あっという間に空へと飛び立ち見えなくなってしまう。
永遠のようで一瞬のようでもあったこの邂逅。これは二人にとってどんな意味があったのだろうか。
時間は進み続ける。時の歯車は止まる事はなく、ひたすら時を刻み続けた────
//こんな感じで〆でいいですかね?
お疲れ様でしたー!!
72
:
桜井直斗
◆o/zdiZN8A2
:2016/01/03(日) 22:59:19 ID:if7ZXLvA0
>>71
「────っっよし!! やる事は分かった!!使いこなしてやるさ!!」
ガッツポーズだろうかそんなことをしながら、やる気でも出すのか
今の自分の状況をなんとなくだが理解して
彼の持ち前の明るさを取り戻したようだ
やってやる、やってやるさと自分に言い聞かせて
「あぁ!! また会おうぜ!
敵とか味方とかよく分かんねーけどさ!! ありがとな!!」
なんて、能天気だろうか
こんな状況でも無理に笑っていられるのも可笑しいが
お礼を言う理由もないし、言われる理由もない
それでなんとも平凡で、退屈で、不思議な少年だったと思うだろう
「────にしても、綺麗な人だったな...
あの夢の...ルシファ? だっけ? 悪魔はどいつもこいつも美男美女揃いなのか...?」
その飛んでいく彼女の姿を見届けながら
なんて、今更彼女への感想を呟いて
「.....あ、名前聞いてねぇ」
と、思い出したように言って
その人間もどきの悪魔、桜井直斗は
帰路につくように夜の街へ溶けていった
余談だが、APOHの情報によれば
その後の文献にもない新種悪魔"黒獣"の目撃情報は激減したとの事
/ありがとうございましたー!!
73
:
華野平馬
◆10pX8BMxfE
:2016/01/04(月) 01:09:29 ID:ydEYc846O
人気の無い薄暗い路地裏の入り口、華野平馬は立っていた。あるものを確認する為、警察などの他機関に場を荒らされてしまう前にと、一人先んじてここへ訪れたのだ。彼はそこから発せられる異様な臭いを嗅がぬように、口元をハンカチで抑えている。
奥へと歩を進めた時、足元で粘ついた水音が聞こえた。音の正体に薄々感づいてはいたが下を見る。
……血だ。人間技ではない。目前には無惨にも獣の食いカスのような姿へ変えられた同業者らの姿があった。
ヨゴレ仕事は彼の役目。今回の任務は不明APOH構成員の生存確認とその状況報告書作成だ
APOHの別部署に関する仕事内容故詳細は分からない。が、「黒獣」と呼ばれる正体不明の悪魔を追う為、3人の構成員が出たという噂を聞いてはいた。そして、彼らとの連絡が取れなくなっていたということも。ここに転がるのは確かにその〝彼ら〟であった。
平馬は体の形が比較的綺麗に残っている1人を観る。右手には救援要請発信装置が固く握られていた。死の間際に強く押したのだろう。左手には。いや、左手は無かった。
「……ん?」
血溜まりに仰向けの状態で倒れる彼のスーツポケットから何か紙が一枚はみ出していた。
それは女の写真。血に濡れて見にくいが、隣にいるのは死体の〝彼〟か。
「ベタだな」
平馬は思わず笑ってしまった。しかし馬鹿にした訳ではない。〝彼〟が遠のく意識の中、写真に写る恋人を想い死んでいく様を想うと。〝彼〟が死んだことを告げられ膝を折る写真の女を想うと。何だかとても虚しくて仕方なくなり、笑えてしまうのだ。
「……考え過ぎか」
〝彼ら〟には家族がいた。〝彼ら〟には恋人がいた。〝彼ら〟には仲間がいた。〝彼ら〟には――今は何もない。ただ、物言わぬ肉が転がるだけ。悪魔が全てを奪った。
死体は見慣れている。驚きはしない。だが、平気な訳ではないのだ。
パトカーのサイレン音が聞こえる。死体の確認を終え、市内APOH構成員閲覧用の報告書を作らねばならない。平馬は路地裏から引き上げる用意をする。腰に刺した刀は鞘から抜かずに済みそうだ。
彼らの死から得られる情報は少ない。殺人犯の正体が黒獣ではない可能性もある。更に彼らの死は後日平馬の手によって闇に葬られる。報告書を読む誰かが、無駄死にだと笑う者もいるだろう。だからこそ彼らの死を無駄にしてはいけない。彼らは身を以て悪魔の強さを教えてくれたのである。
/分割
74
:
(桜井直斗)
◆10pX8BMxfE
:2016/01/04(月) 01:53:14 ID:ydEYc846O
靴に着いた血糊は薬品を使って落とした。採取した数本の毛髪と、血液を容器に収め鞄の中にしまう。これを専門機関へ送り、解析してもらうのだ。
後はいつも通り。この状況を都合の良いように変えてしまうだけ。簡単なものだ。任務が終われば知らぬ振りをして立ち去れば良い。平馬は表情無く、何事もなかったかのように路地裏から出た。
任務に私心を挟んではいけない。組織に入った時、いの一番に習うことだ。振り返らず雑踏に紛れてしまえばそれで済むこと。
しかし、平馬は今一度路地裏に向かって振り返り手を合わせずにはいられなかった。名前も知らぬ〝彼ら〟に。理不尽に奪われた命達がせめて報われるように祈る。
これ以上振り返ることはなかった。己が甘いことは自覚している。だが、その甘さが自分が人間であることを思い出させてくれる唯一の救いだとも考える。ならば今はそれでいい。仇なら必ず――
先日降った雪は陽に照らされ溶けかけている。足を取られぬよう注意して歩かなければ。市役所職員は人ごみの中へ消えていった。
それ以降、黒獣の観測報告は減少しつつある。深紅の瞳の黒狼は未だその尻尾をAPOHに見せない。
/終わり
75
:
桜井直斗
◆o/zdiZN8A2
:2016/01/05(火) 19:15:21 ID:if7ZXLvA0
海馬市の郊外に位置する山中
ただでさえ少ないこの場所には人通りは無い
だがそこには不釣り合いな人物が居た
「──────ッ! うおおおおおおおおお!!!!」
丈を短く、アクセサリーを付けて改造してある学ラン
長めの前髪をピンクのヘヤピンで茶髪の少年
利発そうな表情が、彼の性格をよく表している
見たところ学生の様だ
人通りの少ない山中、林道を行った先にある広場のど真ん中に少年はいた
何をしてるのだろうか、広場の真ん中に太い木の枝を的にでもしてるのか
その前に立って腕を構えていた
まるで何かを抑え込むか、それとも解放するような
そんなポーズ
「だああああああああああッ!!! ッッ!!!」
────叫び声まで上げてなんとも痛い雰囲気。
これが青少年にありがちな若さ故の衝動なら見ないフリをしてその場を去れただろう
ただ、これはただの衝動ではなかった
メキメキと、空間が軋む音
周囲の空気中にある良くない瘴気が少年の周囲に集まる
それは、少年の構えた腕を纏うように固まって────その2倍以上の長さの獣の腕になる
これを見たのが、その手の知識に精通したものなら
これが、悪魔の力だと分かる
そこいらの雑魚とは違う、強力な悪魔の力だ
だが、その変化は腕を超え、肩や胴にまで達しようとして
「────ッ クソッ!!!」
と、少年はその腕を地面に叩きつけて獣との結合を解いた
まるで、侵食を恐れたように
「────まだだッ!! もう一回!!」
そう言って再び同じ動作を始める少年
これは何かの練習だろうか
まるで修行中のように感じられる
──────少年はこの時間のこの場所なら人に見られずに済むと思ってこの場所を選んだのだろう
だが、それは間違い
この場所は人通りが少ないのは事実だが、一部の人間や悪魔には必要な場所なのだ
地脈、霊脈────というのが分かりやすい
いわゆるそう言った霊的なエネルギーが溜まりやすい場所なのだ
本来そういう場所は神社や寺が上に建って住職や神主が管理するのが習わしだが、稀にこういうフリーの場所もある
いわゆる穴場、そう言った力を得やすい場所は人にも悪魔にも力を得るのに重要な場所なのだ
彼がたまたまいるこの場所に今宵も誰か来るのだろうか────?
76
:
黄昏 向日葵
◆WnQfyNHn5I
:2016/01/05(火) 21:47:26 ID:RkSuNfvk0
>>75
「見ぃちゃった…」
私が訪れた場所は、郊外にある山。
その先には広場がある。
こんな場所に人が通らないであろう事は海馬市に来たばかりの私でもわかる。
私が来たのは、霊力が溜まりやすい場所を探しに来たからだ。
そこに居るのは一人の男のコ。高校生かな…
そいつは叫びと共に腕を化け物の様に変えている。
これは悪魔の力だ…しかも、かなり強力な…!!
でも、途中でその変身能力を解いている。
使いこなせてないのかな…
でも、自分の力を使いこなせない悪魔なんて居るのかな…
もしかすると…
「ねぇ、キミは“何者”…?」
私は彼に一つの質問を投げかける。
こいつの行動を見てるけど、コイツが本当に悪魔かどうかは解らない。
力の使い方に違和感がある。だけど、普通に聞いても応えないかも…
だったら…!!
「質問の意味、解るよね?フフッ…」
私は拳を握り、炎を纏わせる。
私が精製する炎は破魔の炎。
退魔師である事を明らかにして、この質問を投げたんだ。
コイツの返答次第では…!!
77
:
桜井直斗
◆o/zdiZN8A2
:2016/01/05(火) 22:10:00 ID:if7ZXLvA0
>>76
昨日からの特訓の成果だ
とりあえず、この体質のオンオフは出来た
意識的に"獣"を出し入れは出来るようになったが──────。
「あとは強弱が────クソッ 上手くいかねぇな」
イメージは獣化を四肢、出来れば腕だけにする
頭を残してりゃコントロールできると思ったがどうも上手くいかない
全身に獣を纏ってようやく安定するのか
どうしたらいいもんか、と思案して地面に仰向けに倒れこんだ
深呼吸して夜空の星を眺めて
「感覚つかめりゃ...ん?」
そう呟いた先で、声が届いたのと視界の端で捉えたのは同時だった
若い女の声、視界の端に映った同年代そうな少女
「────ッッ!!! 待った! タンマタンマ!!!
ストップ!! ストップ!! 俺は怪しいもんじゃ無いッ!!」
と、少年は飛び跳ねるように飛び起きて手を挙げて降参のポーズ
いや、少年のすぐ隣で蒸気吹いて消滅していく獣の腕らしきものがあるし一部始終見られてる
怪しく無いわけ無い
「...あっ、私立夜桜学園2年2組の桜井!! 桜井直斗だっ!!
あ、ああっ怪しい者じゃ無いッ!!!」
自分でも自分が怪しいのは分かってるのか今度は身分を白状し出した
なんというか、イメージの悪魔っぽくないかもしれない
悪魔といえばもっと化け物チックか優雅に毅然としてるかの2択のイメージだろう
...人間くさい彼は本当に悪魔だろうか────?
彼の言葉が本当なのかは分からないが、制服からして本当だろう
それは私立夜桜学園のものと一致する
────というか、同じ学校かもしれない。
78
:
黄昏 向日葵
◆WnQfyNHn5I
:2016/01/05(火) 22:37:19 ID:RkSuNfvk0
>>77
「夜桜学園…」
私と一緒の学校だ…
転校したばかりだから解らなかったな…
制服からして、嘘はついてない。
それに、私の質問に対してこの反応…
あの強烈な腕を持ってるのに、あの動揺の仕方。
本当に悪魔なら、もっと冷静な返答か、問答無用の反撃を行ったはず。
だとしたら…
「ごめんね。早とちりしちゃった。私は黄昏 向日葵。同じ夜桜学園の1年よ。
海馬市には来たばかりで、解らない事ばっかなんだ。よろしくね。」
私は拳に纏った炎を消し、名前を名乗る。
悪魔でありながら、自分の腕を操る練習なんて必要ないはず…
そう考えた私は、彼を人間だと信じる事にした。
//置きでお願いします。
79
:
桜井直斗
◆o/zdiZN8A2
:2016/01/05(火) 23:06:46 ID:if7ZXLvA0
>>78
「あ、あぁ...信じてくれるのか...」
よかった。と肩を撫で下ろす
どうやら彼女も同じ高校の生徒のようだ
自分と同じ、ただの高校生ではないようだが
前に会った悪魔の少女はすぐに俺が悪魔だと言った
一方彼女は俺が何者か確認を取った────きっと彼女は人間側なのだろう
例のAPOH...?とやらの人間かだろうか
だとしたら、本当の事は言わないほうがいいのかもしれない
"怪しい者じゃないと言ったが人間とは言ってない"
嘘はついていない、本当の事を言ってないだけで
まぁ一応自分は人間のつもりだが────。
「あ..いや、その────」
言葉が詰まる
目が泳いで、少し悩む素振りを見せる
もともと嘘とか騙すのが、好きじゃなかった
夜桜学園1年生というと彼女は後輩だ
将来を指し示すべき先輩である俺がそんな彼女に嘘をつくことが許されようか
否、許されるべきでない。今後彼女を騙すのは────。
「......違うんだ。俺は」
────嫌だ。
日常も非日常も、どっちも壊さないように決めてるから
俺は人間とか悪魔とかどっちも守るって決めてるから
どちらかの肩を持つのは嫌だ
「俺は悪魔だよ。ずっと人間だと思ってたけど、人間にも悪魔にもそう言われた。」
そう手を挙げたポーズのまま
少女の目を見て、正直に告げた
/了解ですー!
80
:
出:華野平馬 小黒無甚
◆10pX8BMxfE
:2016/01/06(水) 02:03:35 ID:ydEYc846O
「――何故このことを誰にも報告しなかったのですか」
第三総務課司令室にて。華野平馬は〝もう一度〟少し厳しい口調で問いただした。しかし会話は平行線を辿る。
「何故私がわざわざ君らにそれを教えなければいかんのだ」
小黒無甚は悪びれる様子も無く〝もう一度〟平馬に言い返した。何故この二人がこうして半ば口論するような形になったのか。先日の〝黒獣〟によるAPOH構成員殺害の件に理由はあった。
平馬が昨日採取した毛髪その中に無甚のものが見つかったのだ。本人に聞いたところあっさりとこの事実を認め、更に黒獣との交戦したことも露見した為問題は大きくなる。
報告が無かったことで不明構成員の発見が遅れたこと。無断で交戦していたこと。これが後に分かったことで事務方の職員は多大な迷惑を被ることとなった。
そして今、多忙の課長に代わり比較的業務内容に余裕のある平馬が件の聴取をしていたという訳だ。
「小黒博士、自分の立場を分かっていますか。もう少し組織の人間としての振る舞いを考えていただきたい」
「知らんよ。君が君であるように私は私だ」
平馬が投げつけるイヤミを屁とも思わず、つまらなさ気に義手の指を軋ませた。謝罪の一言さえ出れば済む話がここまで延びれば、彼の眉間にも段々と深い皺が寄る。
「第一――」
無甚は口を開いた。
「第一、黒獣は私の研究対象だ。君らのモノではない、私のモノだ」
スイッチが入ったのかこれを皮切りに狂博士は饒舌になる。こうなればもう止めることはできない。平馬は呆れた顔で彼を眺めた。
「あれはなかなかの逸材だ。悪魔の中でも見ない物理的破壊力。筋肉は人間と同じ作りに見えたが、それ以上の何か……魔力のようなモノを感じたよ。闘争本能は獣以上。知性は無いがその分を暴力で補う戦い方は荒々しくも美しい。いやぁ、解析しがいがありそうだ。早く私のモノになってくれればあの少年にとっても――」
「待ってください」
ここで平馬は無甚の言葉を遮った。
「……少年とは……何ですか?」
脈絡も無く現れる〝少年〟という単語。黒い狼男とされる奴を指す言葉としては不適当なものである。
「何だ、君……そんなことも知らずに私に黒獣の話をさせていたのか。少年とは黒獣のことだが?」
「はい?」
「黒獣は……少年に擬態している。いや、違うな。少年が黒獣に擬態している、と言った方が正しい気がしなくもない」
/分割
81
:
◆10pX8BMxfE
:2016/01/06(水) 02:31:56 ID:ydEYc846O
何故それをもっと早く言わなかったのか。それはまあ良い。〝黒獣は少年に擬態している〟。思いがけず良い情報を得た。
「……分かりました。今回は厳重注意ということで、帰っていただいても結構です。報告書は後で他の係の者が回収しに来るのでそれまで書いておくこと」
「私が君のような若僧の命令を聞くと思うかね」
「聞いてもらわなければ困ります」
「では存分に困らせてやろうじゃないか。ふふ、ふはははは……」
無甚に始末書の用紙を渡すと、そのまま義手の掌から発した熱で燃やしてしまった。
白衣を翻し司令室から去り行く彼の背を見て、平馬は言いようのない疲労感を覚えた。
/物語ロール
82
:
秋宮渚
◆o/zdiZN8A2
:2016/01/06(水) 07:00:02 ID:if7ZXLvA0
>>34
──────戦いは鮮烈を極めた。
死力を尽くすという文字どおりの戦い
秋宮にとって初めての上級悪魔との戦いは苦いデビューに終わった
結論から言えば、勝てなかった
負けてはいない。死ぬことは無い
だが勝利とは程遠い
「......ハァ....ハァ...」
骨が折れてないのは奇跡だろうか
秋宮は胸を押さえて路地裏を壁伝いに歩く
鉄の味がする口内に不快感を覚えつつ、荒い息を整えながら
「────今度は、倒す...今度こそ...」
歯をくいしばる
その目に抱いた光はなんなのだろうか
怒りか、それとも──────。
秋宮はただ、そう呟いたのだった
83
:
アリオク(小黒 有)
◆CELnfXWNTc
:2016/01/06(水) 20:31:22 ID:qk2OKxgg0
夜道に佇むバー『クロヤギ』。その扉より、一人の少年が姿を見せた。
歳は15、6といったところ。右手を隠す黒い手袋と、その赤い目に復讐の炎を灯しているところ以外は、いたって普通の少年。バーなどとても似合わない。それもそうだ、彼は飲みに来たわけ出はなく、情報を得るためにここに来たのだから。そう、半分悪魔である彼は……
(バーで得た情報によると、修道院は今、主力を欠いた状態か……)
今修道院を攻めれば、修道女達、即ち処女を集めるのが容易だろうか?否、あのようなことがあったのだから、警戒は強まっているだろう。そう上手くいく筈が無い。
それに、アリオクの目的は父親とAPOHに対する復讐。ルシファの目的には、興味を持っていない。よって、今攻めるべきはそこじゃない、と結論付けた。
「暫くは様子見か……」
バーから遠ざかった夜道、苛立たしげに呟くと、アリオクは路地裏から争う音が聞こえるのに気が付いた。見れば、APOHの退魔師と眷属が、戦いを繰り広げているではないか。
「オイ、雑魚よりも俺の相手をしろよ。」
「な、なんだお前……ぐっ……あっ……」
今まさに、眷属にトドメを刺した退魔師にアリオクは露にした右腕で掴みかかる。そして、その首を締めた。
「そ、その右腕……まさか……小黒博士の……」
「何っ!?奴を知っているのか!?どこだ!?奴はどこにいる!?」
「ぐ、ぐはっ……」
小黒の名を聞くと、アリオクは激昂。右腕により力が入る。退魔師の男は、そのあまりの力の強さにより気を失った。
「ちっ……お前もこの街にいるのか……小黒無甚っ!!!」
退魔師を投げ捨てると、アリオクは叫ぶ。その声は路地裏に、憎々しげに木霊した。
84
:
セリエ=A=サラスフィール
◆yd4GcNX4hQ
:2016/01/06(水) 21:03:49 ID:EQaCMdl60
>>83
「何かと思って来てみれば…どうやら厄介ごとのようだな」
そんなアリオクの呪詛のような言葉が路地裏に反響するその時、アリオクが来た方向とは逆の方向、そこには人が立っていた。
その姿は白衣。月光を反射してその銀色の髪自らが光を放っているかのようにも見え、この場とはやや異色。
そんな女は煙草を吸いながらどんどんと歩み寄ってくる。その顔には心底面倒臭そうなそんな雰囲気を感じた。
「救難信号を受けて、近くだから寄ってみればこの様か、この程度で気絶とは情けないな
まったく…私は早く自分の研究に戻りたいんだがな……」
どうやら気を失った退魔師は、失う寸前に辺りの退魔師に救難信号を送っていたようだ。それがたまたまセリエに届いたというわけだろう。
頭を掻きながら倒れた退魔師を見下ろし言うと、次はアリオクへと視線を動かす。その瞳をみれば彼女がただの人間ではないということが分かる。そう、まるで生気を感じないようなそんな瞳。
と、そこでやっとセリエはアリオクの姿を脳内のとある人物に重ねる。確かに特徴は一致している。
なるほど、あれが例の──
「貴様があいつが言っていた小黒 有か
なるほど確かに、もうほとんど"悪魔と見分けがつかないな"」
セリエの口角が上げる。それはまるで悪魔に成り下がった少年を嘲笑うような、そんな笑いだ。
報告では暴走して母親を殺したと聞いている。まぁもしかすればそれは虚偽の報告かもしれないが、そんなことセリエには知るよしもない。
──まぁそれがもし本当だとしてもセリエは、小黒 有という少年をただただ憐れな少年だと、愚かな少年だと蔑むだけだが。
復讐以上に非生産的なことは無い。だからそんな考えを持つセリエには、そう思うことは仕方が無いことだった。
85
:
アリオク(小黒 有)
◆CELnfXWNTc
:2016/01/06(水) 21:21:46 ID:qk2OKxgg0
>>84
「研究者……」
一瞬だが、その白衣を見て、父小黒無甚の姿が脳裏に過る。しかし、現れたその研究者は、違う父親ではない。女性だ。
だが、嫌悪感は覚える。研究者、彼が嫌う人種。奴等のせいで、自分の身体は悪魔に蝕まれ、母は死んだ。特に研究しか頭に無い奴等は、父親と同じ死ぬべき人間だとアリオクは思う。
「……俺を知っているのか。まぁ、俺のことはいい。それより、そのあいつとは、無甚の事かっ!?」
小黒、その名を聞くと、やはり激昂し、赤い目で睨み付ける。その感情に反応するかのように、右腕の血管が隆起し不気味に動いた。
「小黒無甚はどこに居る!?答えろっ!!」
その禍々しい紫色の右腕を剣へと変え、怒声をあげるその姿は、まさに悪魔と見分けがつかなかった。
86
:
セリエ=A=サラスフィール
◆yd4GcNX4hQ
:2016/01/06(水) 21:43:44 ID:EQaCMdl60
>>85
「知ってるも何も、貴様はAPOH内ではそこそこ有名だぞ
暴走して知性を失い母親を殺した、とな
で?今は悪魔に成り下がって人間を襲っているのか?それとも自分をそんな身体にしたAPOHへの復讐か?」
睨み付けられても物怖じすらせず、むしろ呆れるような感じで不気味に蠢く右手を見る。
あれが悪魔の腕。なるほど、確かに禍々しいものを感じる。感情の昂りで変化するようになっているのだろうか。
ならばおそらく今この少年は確実に理性を失っている。自分の目的にしか目がなく、これならば戦闘も覚悟しなければならないだろう。そんな面倒なことにならないことを祈るしかない。
「何処に居るだと?教えるわけがないだろう
奴は確かにろくでなしだが、APOHにとっては貴重な研究者だ、それを失うわけにはいかない
ま、ろくでなしならこの私もなかなかだがな」
どうやら居場所を教えるつもりは無いらしい。貴重な人材をそう易々と手放す筈がないだろう。
しかももし教えれば他の退魔師や研究者も巻き添えを食うかも知れない。そんなことになれば悪魔に対抗することは困難になるだろう。
それに責任を問われたくはない。
「さぁどうする?力づくで場所を聞くか?ま、それこそ"悪魔"のすることだがな」
87
:
アリオク(小黒 有)
◆CELnfXWNTc
:2016/01/06(水) 22:02:30 ID:qk2OKxgg0
>>86
「俺が有無を……?」
母親を殺した?他の部分は概ね当たっているが、それだけはアリオクの記憶に無かった。それもその筈、なにせあの時、母親の有無を目の前で殺したのは無甚だったのだから。
そこから導き出される答えは一つ。
「そうか……無甚めっ!巫山戯た真似をしてくれるっ!」
小黒無甚が自身の罪を隠した。研究の為でもなく、ただ研究の邪魔をしたという理由で妻を殺した罪をーー
「ふん……どっちみち、答えが貰えるなんて思ってないさ。」
「ああ、力づくで聞くさ!俺は悪魔っ!復讐の悪魔、アリオクだからなっ!!」
居場所を教えて貰える筈なんて無かった。まぁ、当たり前だろう。
だから、アリオクは右腕を剣へと変えたのだ。力づくで聞き出すために
「さっきの奴みたいに、気を失ったりするなよ!!」
そして、剣へと形を変えた右腕を前方に構え、それで串刺しにせんと走り出した。
88
:
セリエ=A=サラスフィール
◆yd4GcNX4hQ
:2016/01/06(水) 22:23:31 ID:EQaCMdl60
>>85
「復讐など笑わせるな、そんな無意味なことに本気になれるなどよっぽど頭がおめでたいようだ」
咥えていた煙草を地面へ捨てる。やはり戦闘は避けられないようだ。
アリオクの右腕が剣へと変わる。どうやらあの右腕を変形させて戦うようだ。ならばあの右腕を無効化すれば手っとり早く済むだろうか。だがその保証は無い、やはり"本気"で行くしかないか。
「先に言っておくがな────」
こちらへと走ってくるアリオクをその双眸で見据えセリエは言う。その瞳は先程までとは違う、"獲物"を狩る目。
「悪魔と成り下がった貴様は、既に狩られる立場にある──」
真っ直ぐに突っ込んでくるアリオクの動き。その単純な動きに攻撃を合わせるのは容易いことだ。
左手をアリオクへと翳す。すると左手の掌から青白い光が発せられ、エネルギーが集まっていくのが肌で分かる。
「悪魔になった時点で、それは負けだ」
そして放たれる光の柱。それは明らかに高い出力を以てアリオクを突き穿たんと直進していく。
これを見れば、セリエがただの"人間"ではないということが分かるだろう。掌からビームを放つ人間など居るはずがない。
89
:
アリオク(小黒 有)
◆CELnfXWNTc
:2016/01/06(水) 22:38:20 ID:qk2OKxgg0
>>88
「ちっ……」
相手の左手に集まるエネルギー。あれを食らったら不味い。恐らくは、退魔の効果を組み込んだ攻撃だろうから。
そう思うアリオクは、直進する足は止めず、そのまま右腕を剣から巨大な腕へと変える。そして、それで地面を叩くと、右腕に力を込め跳躍した。
「ただの研究者じゃないようだな!」
空中でそう言い放つアリオク。
結果として、光の柱に直撃は回避するものの、その際、右手の指先が触れてしまう。焼け爛れた指先が、痛む。だが、怯んでは要られない。
そのまま、空中で巨大な右腕が拳を作り、セリエへと降り下ろす。だが、やはり指先が痛むのか、見た目程の威力と速さは無いようだ。
90
:
オセ・ザバブ
◆10pX8BMxfE
:2016/01/06(水) 22:52:39 ID:ydEYc846O
>>83
>>84
そこから数百メートル程離れたビルの屋上。普通の人間には見えぬであろう場所から彼らの様子を観察していた者が一人。
「〝アリオク〟……ですか。やはり知らぬ顔ですねェ……」
観測者の名は〝オセ〟。今は人間に擬態しているが、れっきとした悪魔である。始祖悪魔ルシファが眷属を自称する彼は、己が任務を遂行する為前線に出ず、他の悪魔の傍観に徹していた。
そんなある日、彼の知らぬ所で彼の知らぬ悪魔が一人、現れた。
〝アリオク〟を名乗る若い悪魔。それはここ数年の内出現し、行動を開始した。悪魔が集う酒場で聞いた情報では「奴からは人間の匂いがする」とのこと。何かの間違いではないかと思い、ここまで確認しに来たのである。
「……あれは確かに悪魔。そしてこれは畜生の臭い。何故……」
染色したのではない白髪に、紅い瞳。何よりその不気味に盛り上がる紫の腕が彼が悪魔であることを物語っている。しかし、何故これほどに彼の身体からは畜生、つまり人間の臭いがするのであろう。オセはぶつぶつと独り言をし始めた。
「混血種か……ふむ、有り得ます。誇りも無い悪魔が女を孕ませたケースはよく聞きますし――」
それも違う。混血ならばもっと〝混ざった〟臭いがするはず。アリオクとやらの臭いはもっと歪なものだった。
「それに〝あれ〟と戦う女……」
アリオクと戦う女にも不思議な感覚を覚えた。珍妙な手品を使うのは良いとして、彼女からは人間特有の臭いがしない。かと言って悪魔の臭いもせず、それは無臭のまるで人の形を取った人形のような印象を持たせた。
「歪の悪魔〝アリオク〟と無臭の女……ですか」
興味深い二人の登場に、オセはビルの縁にいよいよ腰を下ろし観戦を始めた。片手には魔界式の計算機。串に刺さる玉をはじき、彼らが悪魔が行う計画に及ぼす問題について予想する。
いずれにせよ〝イレギュラー〟な彼らには直接接触する必要があるかもしれない。そう考えるオセであった。
91
:
黄昏 向日葵
◆WnQfyNHn5I
:2016/01/06(水) 22:52:45 ID:RkSuNfvk0
>>79
「えっ…?」
私が直斗サンを人間と信じた途端に、悪魔を名乗り始めた。
一体何故…本当に彼が悪魔だとしたら、その隙をつく筈。
「ねぇ、人間だと思ってたってどう言う事?」
彼は私の目を見て、自分が悪魔だと名乗ってきた。
これが嘘だとは思えない。何か事情があるのかな…
一度、彼を信じてみたんだ。それに、此処で悪魔を名乗ることも相当の勇気が…!!
だから…!!
「私は退魔師だけど、人に危害を加える用な奴にしか攻撃しないよ。
だけど、直斗サンは私に攻撃してきてないよね。私に聞かせて?
その理由と直斗サンの事…」
信じてみたい…!!出来る事なら、彼の味方になってあげたい…!!
その為には、彼の事を知らないと…
92
:
セリエ=A=サラスフィール
◆yd4GcNX4hQ
:2016/01/06(水) 23:01:01 ID:EQaCMdl60
>>89
「いいや、ただの研究者だよ
研究という妄念に囚われた──ね」
攻撃は避けられた。どうやらあの腕の変形にさほどの時間は必要ないようだ。ならば変形の隙をつくのは無理か。
──いや、命中はしたようだ。よく見れば指先が焼き爛れている。この攻撃は効くようだ。
「これくらいでは足りないか、やはり切断くらいはしないとな」
そう言うとセリエは自らの白衣に手を掛ける。そしてそのまま白衣を脱ぎ捨てれば、中から現れるのは凡そ人ではない、機械の身体。プラグスーツのように見えるそれからは、人というものを感じられない。それはつまり、やはり彼女が人間ではないという証拠だ。
「私の身体(ボディ)を見せたんだ、ただでは返さんぞ
貴様を持ち帰れば良い手土産になるだろうさ」
背中から浮き出るのは輪っか状のユニットが頭上へと移動する。それはさながら天使を夢想させる光景、他の悪魔が見ればさぞ腹を立てることだろう。そして背中には青白い粒子が固定化された翼が現れ、いよいよ天使に近くなってきた。
空中から迫るは巨大な拳。しかし見た目ほど速さはなく、セリエが避けるのには十分だった。ひらりと身を翻し避ければ、今度は掌から出る粒子をエネルギーブレイドとして固定化、そのまま自らへと振り落とされた拳へ向かい切断しようとする程の勢いで横へ薙いだ。
93
:
セリエ=A=サラスフィール
◆yd4GcNX4hQ
:2016/01/06(水) 23:04:08 ID:EQaCMdl60
//ちょっとすいません書き直します
94
:
セリエ=A=サラスフィール
◆yd4GcNX4hQ
:2016/01/06(水) 23:10:07 ID:EQaCMdl60
>>89
>>90
「いいや、ただの研究者だよ
研究という妄念に囚われた──ね」
攻撃は避けられた。どうやらあの腕の変形にさほどの時間は必要ないようだ。ならば変形の隙をつくのは無理か。
──いや、命中はしたようだ。よく見れば指先が焼き爛れている。この攻撃は効くようだ。
「これくらいでは足りないか、やはり切断くらいはしないとな」
そう言うとセリエは自らの白衣に手を掛ける。そしてそのまま白衣を脱ぎ捨てれば、中から現れるのは凡そ人ではない、機械の身体。プラグスーツのように見えるそれからは、人というものを感じられない。それはつまり、やはり彼女が人間ではないという証拠だ。
「私の身体(ボディ)を見せたんだ、ただでは返さんぞ
貴様を持ち帰れば良い手土産になるだろうさ」
背中から浮き出るのは輪っか状のユニットが頭上へと移動する。それはさながら天使を夢想させる光景、他の悪魔が見ればさぞ腹を立てることだろう。そして背中には青白い粒子が固定化された翼が現れ、いよいよ天使に近くなってきた。
(視線…観察されているのか……?)
何処からともなく感じた視線。それはセリエだからこそ感じ取れたものだろう。歴戦──とまではいかないが悪魔やらとはかなりの年数やり合ってきた。自分の正体が敵に知られるのは癪だがこの際仕方がない。
今は目の前の敵に集中しなければ。
「先程までの大口に比べれば大したことは無いな、力づくとは笑わせる」
空中から迫るは巨大な拳。しかし見た目ほど速さはなく、セリエが避けるのには十分だった。ひらりと身を翻し避ければ、今度は掌から出る粒子をエネルギーブレイドとして固定化、そのまま自らへと振り落とされた拳へ向かい切断しようとする程の勢いで横へ薙いだ。
95
:
アリオク(小黒 有)
◆CELnfXWNTc
:2016/01/06(水) 23:33:41 ID:qk2OKxgg0
>>90
,
>>94
その身体を見て、アリオクは驚愕する。だが、すぐに納得もし、こう独白した。
ああ、そうだった。ただの研究者だ。研究者とは、そういう人種だった。研究の為ならば、信じられないようなことを平然とやる。そんな奴等だ。
この女は、自ら人の身を捨てたということか?他人を人でなくした無甚よりは、マシだが……
「まったく狂ってるな!研究者という人種はっ!!」
こっちは、人であることを奪われたというのに、この女は自ら人であることを捨てた。アリオクは、それが許せなかった。その怒りが、判断を遅らせたのか……
「くっ……!?」
咄嗟に拳を止め、切断は免れたが、腕は裂かれ、紫色の血液を撒き散らす。
「まだだ!!俺の復讐は、こんなところで終わったりはしない!!」
だが、アリオクは止まらない。今度は右腕を、大砲のような形状へと変えると、暗黒のエネルギー弾を放つ。 威力は高いが、破魔効果を持つ攻撃ならば、掻き消すことは容易だろう。
しかし、そのことはアリオクも分かっていた。爛れた指先が、あれが退魔の武器であることを示していると。だから、もう一つ攻撃を仕掛ける。エネルギー弾を放った直後、それに追走するかのように、アリオクは走りだす。狙いは、そのまま砲身で殴ること。
96
:
セリエ=A=サラスフィール
◆yd4GcNX4hQ
:2016/01/06(水) 23:57:57 ID:EQaCMdl60
>>95
「狂っている、か、はっそうだろうな
だが私は自分のために自分を捨てた、それが最善だ
寿命などというものがあるから人は自分に満足出来ず死んでゆくのだからな」
そう、これがセリエにとって最善だった。研究を続けるには人の命は短過ぎる。ならば命そのものを組み替えればいい──と。
事実それには成功し、もう何年もの時間を研究に費やすことが出来た。自分には研究が出来れば十分だった。
生きるために研究をするのではない、研究をするために生きるのだ。目的がすげ変わり、本来どうして研究を始めたのかさえ忘れてしまった自分は、果たして哀れなのだろうか。
「だから…復讐なぞ下らないと言っているだろう
そんな無駄な時間を過ごして何になる?それで死んだお前の母は生き返るのか?」
「貴様はただ現実を受け入れられない、悪魔でも何でもないただの"駄々っ子"だ」
そう言い放つと、セリエは自らへと向かってくるエネルギー弾を見据える。ただ、この時セリエに誤算が生じた。エネルギー弾の後ろをアリオクは走ってきている。
しかしセリエの今の角度からでは、アリオクを"視認することが出来ない"
エネルギー弾を左手のエネルギーブレイドで両断すれば、その先に見えるのはこちらへと走り来るアリオク。
アリオクの狙いに気付いたセリエは咄嗟にエネルギーブレイドを消し、腰の実体剣に両手を伸ばし、二本の剣で受け止めようとした。
だが遅い。
しっかりと剣を構える前にアリオクの砲身が剣へと直撃、そのまま怪力で壁まで吹き飛ばされ、壁に叩きつけられやっと止まる。
ダメージを負ったが、戦闘を継続不能となるほどのものでは無い。すぐに実体剣を腰に戻し、今度は両手のエネルギーブレイドを出現させる。
「かはっ…頭は少しは、回るようだな……」
身体に僅かに電気が走る。
何処かの器官が損傷したか。これではメンテナンス決定だ。
そう思いながら不機嫌気味にセリエはアリオクを睨み付けたのだった。
97
:
アリオク(小黒 有)
◆CELnfXWNTc
:2016/01/07(木) 00:22:00 ID:qk2OKxgg0
>>96
「黙れっ!黙れ黙れ黙れ黙れっ!!」
復讐しか頭に無いアリオクは、その復讐を無駄なものと否定され、激怒する。
「お前に何が分かるっ!!そうさ!有無が生き返る筈は無いっ!!」
「だからだ!俺が復讐をするのはっ!有無を殺したあいつは、未だ生きていて巫山戯た研究を続けている!!それが許せない!だから、俺は奴を殺し、APOHを潰し奴の研究も全て消し去るっ!!」
唯一自分を愛し、小黒有自身も愛する事が出来た母。彼女が居たから、辛い境遇にも耐えられた。有にとって、全てと言っても過言では無かった母。それを奪った父に対する復讐、今はそれが有ーー否、悪魔アリオクの全てであった。
その全てを否定されたのだから、滅茶苦茶に激怒するのも無理はない。そして、その激怒が怒濤の攻撃へと繋がる。
砲身から連続で放たれるエネルギー弾。大きさは野球ボール程と小さいものの、数が多い。
しかし、アリオクは激怒のあまり気づいていなかった。自身の身体に限界が近づいていることを
98
:
オセ
◆10pX8BMxfE
:2016/01/07(木) 00:24:43 ID:ydEYc846O
>>94
>>95
無臭の女を見やれば、彼女は白衣を脱ぎ捨て無機質な身体をさらけ出している。「やはり人形でしたか」オセがそう呟いた瞬間。
「なんと……っ!」
無臭の女もとい人形はその姿を天使を思わせるそれに変化していくではないか。嘗てルシファの話に聞いた、忌むべき存在天使。これを観たオセは本能的な怒りと共に笑いが零れ出た。
「は、はは、ははは! 天使! あれが天使ですか! なるほどあれが! ははは! 人形が天使を騙るか! ははははは!」
一通り笑った後、その表情は無に戻る。
「……ようやく理解しました。奴が使ったのは……いいえ、奴自身が対悪魔兵装などと呼ばれるもの。あの人形は〝退魔師〟を名乗る畜生共と同類だったのですね」
だとすれば、と計算機をはじき一つの結論を出す。
「〝あれ〟は非常に危険な存在。そして、その武器の塊を圧倒する程の力を持つアリオクは更に危険な存在……!」
思わず観戦に熱が入り、強い怨念の籠もった魔力が漏れ出るのも気にせず考え続ける。
オセが最も恐れるのは、自分があのどちらかに殺されることではない。敬愛するルシファの計画が害虫によって潰されることである。
「……最後まで、最後まで見届けねば」
海馬市の悪魔を監督する任務に当たって、次の一手をどう打つか。重責を担えるのはひとえに主君が愛の為。戦いの結果を見届ける必要があった。
99
:
セリエ=A=サラスフィール
◆yd4GcNX4hQ
:2016/01/07(木) 00:45:00 ID:EQaCMdl60
>>97
>>98
「──本当に解せないな、言論がまるで子供のようだぞ」
「許さない?それは貴様に力が無かったからだろう、貴様が奴から逃れようと、そして母を助けようとしなかった貴様の責任だ
なぜ貴様は逆らおうとしなかった、逆らえないと分かっていた?強すぎて歯が立たなったからか?それはただの言い訳だ、そしてお前は、お前の無力さ故に母を殺したんだ
なのに貴様はまるで自分が被害者の様に語る、無甚がやっていることは確かに非人道的だ、だが私はそれを否定しない
悪魔の力?あぁ結構、人が何を研究しようが私には関係ない、それはあいつなりの信念に基づいてやっていることだからな
だがお前が言っていることは、酷くめちゃくちゃでただの独りよがりだ」
「そしてなんだ?今度はそれを因縁に我々APOHまで潰すだと?
それこそ思い上がりだ、貴様程度の力で潰せると思っているのか?貴様はAPOHどころか、無甚にすら手は届かんよ──その復讐という重荷をつけている限りはな」
家族を失った悲しみ、そんなものは理解出来ない。第一他人の命にあぁまでして執着出来ること自体がセリエには理解出来ない。
他人は所詮他人、血のつながりがなんだというのだ。そんなもので命を賭けるなど愚の骨頂。
「今度は質より量か?その考えは私はあまり好まないな」
そう言って、次々と飛んでくるエネルギー弾を悉く切り裂いていく。切り裂く弾は致命傷になるであろう弾のみ、必要最低限のものを落とすことで自身の力の消費を最低限に抑えていた。
そして弾の隙をつき、片手のエネルギーブレイドを解き、先程までよりは威力は低いエネルギーの塊をアリオクへと飛ばした。
100
:
アリオク(小黒 有)
◆CELnfXWNTc
:2016/01/07(木) 01:10:56 ID:qk2OKxgg0
>>98
>>99
「黙れっ!黙れって言って……」
「うぐっ……!?」
怒りに任せ、怒声を飛ばし続けていたアリオクだったが、その口から突如として声が出なくなり、変わりに赤い血が流れ出した。
怒りのあまり、限界を見極め切れなかった代償だ。そして、その無防備な状態に
「ぐはっ……!?」
エネルギーの塊が炸裂する。エネルギーは、腹部を捉えると、アリオクの身体を吹き飛ばした。
地へと転がるアリオクは、考えた。
確かに俺は無力だと。無力で弱い“人間”だと。このままでは、あの女の言う通り、無甚を殺すことすら叶わないだろう。だから、もっと力が欲しい。
「そうだ……もっと力を……俺は、悪魔だ……そうだ……」
譫言のように呟くと、ゆっくりと立ち上がる。そして、右腕を長く伸ばし、未だ戦う姿勢を見せた。
かと思いきや……その長く伸びた右腕をバネの様な形状へと変化させると、地面を強く押す。そして、その反動でアリオクは宙へと跳んで行く。
これ以上の戦闘は不可能と見ての撤退だった。 その撤退の最中、一体の悪魔ーーオセの姿が目に入った。
ずっと観戦していたのだろうか? それにしても、恐ろしい程の魔力だ。漏れでた魔力を感じ取り、アリオクは思う。
ーーあれ程の力が手に入ればいいのに、と
/時間も遅くなってきたので、〆でお願いします。
101
:
桜井直斗
◆o/zdiZN8A2
:2016/01/07(木) 06:01:56 ID:if7ZXLvA0
>>91
よかった。と胸をなでおろす
もし彼女が悪魔なら誰でも構わず殺してしまおうという人なら
俺はここで死んでしまっていた
「────詳しい事情は俺にも分からない。
ただ俺は生まれて17年間、"桜井直斗"というごく普通の人間として育ってきたというだけ」
悪魔としても特異な体質
人の状態なら太陽光や悪魔祓いが効かないというのが、彼の"自分は人間である"と認識させていた
「生まれた時から悪魔かもしれない
人間として生まれて、途中で悪魔になったのかもしれない...それは分からないけど、1つだけ決めたんだ」
人であって悪魔でもある彼の望み
その願いはきっと自分を壊してしまうと思う
成就するとは思えない、先に待ってるのは破滅かもしれない
「どっちも守る。人とか悪魔とかそんなのよく分からない
ルシファとやらの意思とかAPOHとかもよく知らねぇ...だからこの戦いを止める」
そう、口にした
その選択が自分の命を危険に晒す行為だというのは分かってる
だから、ここで自分の力を制御できるように特訓していたと
彼女に告げた
102
:
セリエ=A=サラスフィール
◆yd4GcNX4hQ
:2016/01/07(木) 20:32:45 ID:EQaCMdl60
>>100
アリオクが放っていたエネルギー弾の雨あられは、セリエが放ったエネルギー塊をアリオクが喰らったことで止まった。
どうやらもう限界が来ていたらしい。先程まで怒りで滲ませていた顔は苦渋のものとなっている。これならばこちらには十分に勝機がある。
が、相手もそれに気付いていたのか、腕をまるでバネのような姿に変え、そのまま跳ねることでこの路地裏から離脱した。
後に残ったのは静寂のみ、風が路地裏へと吹き渡り僅かに音を響かせる。
「────馬鹿な奴め
復讐に囚われた者の末路など、とっくに知っていように」
そう、復讐に囚われた者の最後はいつも呆気なく、下らない。もしもそれを遂げたとしても、残るのはどうしようもない喪失感だけ。
そんなものに何の意味がある。下らない復讐心など犬にでも食わしておけばいいものを。
ともかく戦いは終わった──とその時、セリエ内部に搭載されている通信機能に連絡が入った。
「セリエだ、一体何のようだ?」
『セリエさん!無事でしたか!!』
通信の主はどうやらAPOHの研究員からのようだ。救難信号を受け取って現場に向かったセリエを心配していたのだろうか。
そんな安堵するかのような声が聞こえ、セリエはやれやれと首を振る。
『それでセリエさん、救難信号を出した退魔師の方は──』
「なんだそのことか
あぁ無事だ、ただ気絶しているだけだよ」
『良かった…それでやはり悪魔に襲われたんですか?』
「……いいや、ただの勘違いした餓鬼に絡まれただけだ」
『はい?い、いやそんなはず────』
いいからそれだけだ、と研究員からの追求を半ば強引に締めると、先ほど脱ぎ捨てた白衣を拾い上げる。あれは悪魔ではない。ただの世間知らずの餓鬼だ。奴は悪魔にも人間にもなれない。哀れといえば哀れだろう。
だがこの理不尽というものが平気にまかり通るのがこの世界だ。
──流石にこの状態のままで街を歩くことは出来まい。白衣を羽織ると再び通信へと戻る。
「それと無甚に一つ伝えておけ」
『無甚博士に…ですか?』
「あぁ、"尻拭いくらいしっかりしろ"とな」
『は、はぁ…よく分かりませんが分かりました』
それだけ伝えるとセリエは通信を切り帰路へつく。気を失っていた退魔師も時機に目を覚ますだろう。一応自分は非戦闘員という形になっているのだからこの現状の説明は骨が折れる。
それに何者かの監視、これではこれから悪魔に狙われるリスクがさらに高まってしまった。そのせいで面倒な戦闘がこれから多くなると思うと、それだけでやる気が失せる。
深いため息をつきながら、セリエは退魔師が目覚める前にその場をあとにしたのだった────
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
『でも、やっぱり退魔師がやられたのは悪魔の仕業だろうし……セリエさんはどうやって悪魔を…?』
────セリエの身体が機械だということは、未だAPOH所属の数人しか知らないという。
103
:
黄昏 向日葵
◆WnQfyNHn5I
:2016/01/07(木) 22:31:07 ID:RkSuNfvk0
>>101
「そう…自分でも解らないって事か…」
気が付けば、悪魔になってたって感じなのかな…
APOHの退魔師なら、彼を此処で殺してるかもしれない。
私自身もAPOHの退魔師…だけど私は…!!
「解った。私もAPOHの人間だけど、決して直斗サンには攻撃しないよ。
直斗サンを信じる。だからって心配しないでね。
パパが退魔師でママが防衛省の幹部って事で、APOHに所属してるんだけど…
前の学校で問題ばっかり起こしてたから、ママが煙たがっててね。
私を海馬市に追い出したワケ。そんな不良少女が、APOHの言う事なんて聞くと思う?」
私はタバコを咥え、使い捨てライターで火を点ける。
APOHが売ってる“祓い煙草”って奴じゃない。コンビニに売ってるようなメンソールのタバコだ。
祓い煙草も一応、持ってるけどね。敢えて普通のタバコを吸うのは、敵意が無い事を証明するためだ。
「そろそろ部屋に荷物が届く頃かな…私は帰るね。
引越しの荷物が多いんだよね…
直斗サンの願い、叶うと良いね…」
そう言いながら、私はその場を立ち去る。
APOHでありながら、悪魔を見逃す。
これは極めて重罪だ。だけど、直斗サンは私に悪魔を名乗ってみせた。
それなりの覚悟を見せたワケだ。
それで、APOHに恐れて直斗サンを攻撃したら、格好悪いよね…
それに…私は直斗サンを信じたい…!!直斗サンのやり方が正しいって…!!
//落ちます。ありがとうございました。
104
:
桜井直斗
◆o/zdiZN8A2
:2016/01/07(木) 22:55:38 ID:if7ZXLvA0
>>103
「あぁ...ありがとう。」
悪魔が皆揃いも揃ってルシファやらに忠誠を誓ってるわけでは無い様に
人も皆が皆APOHと手を取り合うわけでは無い事実に胸を撫で下ろした
もし彼女が忠誠を誓ってる人間なら地味にこの会話で殺されていたのかもと思うと震えが今ごろ来た
「うん、それじゃあまた今度。
────学校で会ったらよろしくな」
とにっこりと笑って彼女を見送った
敵か味方か曖昧な相手だろうとこの笑顔
この向こう見ずというか前向きな性格が伝わっただろう
「──────それはそうと、未成年でタバコは頂けないなぁ...
やれやれ。今度会ったら注意しないとな」
と、これまた無駄に真面目なのか
彼女の後ろ姿にそう苦笑いで呟いたのだった
/ありがとうございましたー!!
/返信遅くて申し訳ないですっ!
105
:
◆10pX8BMxfE
:2016/01/07(木) 23:15:14 ID:ydEYc846O
>>100
「ふむ、戦略的撤退……といった所でしょうか」
戦いは終わった。やむなく撤退を決めたアリオク。空を跳び、退散する彼はオセの存在にやっと気づいたのかこちらに一瞬視線を向けた。
ここでオセはやっと自分の身体から魔力が漏れ出していたことに気付く。
「おやおや……いけません、いけませんね。居ないフリをしていたつもりが気付かれてしまったようですが……妙ですねぇ」
すれ違い様に向けられた少年の瞳には、オセに対する羨望の意志が感じられた。理由は分からない。しかし、あの目に見覚えはあった。あれは力を、純粋な力を求める者の目。
この目は好きだ。何より純粋で美しく、そして扱いやすい。
「ああ――」
何かを思い付き、口端を歪ませた。これは任務の合間のほんの戯れ。計算ではうまくさえ行けば、面白い結果が生まれそうだ。
「そうですね。〝彼〟もまた悪魔。今はまだ荒削りですが……磨けばきっと――」
「アリオク、人形。今日は中々面白いものを見られました。く、ふふ、ふふふふ……」
周囲の空間は歪み、オセの不気味な笑顔と共に姿を消す。悪魔の密かな企みは闇と共に動き出した。それは恐らく、誰にも知られることもなく。
/ありがとうございました
106
:
大宮陽子(巫女さん女子高生)操作フリー
◆sF/KB3MJeA
:2016/01/08(金) 06:35:04 ID:2T/1Q67Q0
○出演 大宮陽子 風祭一太郎 (黄昏向日葵)(桜井直斗)
私立夜桜学園高等部――
この学園は「自由」「自立」「自尊心」をモットーとした県内屈指の人気校である。
学内には寮もあり、部活動が盛んなため県外からも多数の生徒たちが集うこの学校は、活気であふれていた――
大宮陽子は、中高一貫校であるこの学園の高等部に外部受験から入った生徒でもある。
学園に入るには並々ならぬ努力を重ねた陽子だったが……その努力をしたかいがあった、とキラキラ輝く校舎で時を過ごすたび、陽子は思う。
彼女は夢にまでみた学園生活を満喫しているのだ。
だが――
「タソガレ……ヒマワリ?」
学園の体育館裏手の人気のない場所に呼び出されたのは、告白などといった甘酸っぱい物ではない。
相手は七・三分けのさえないオッサンだ。だが彼女にとって直属の上司でもある。
『そう。黄昏向日葵……。APOHの中でも超エリート退魔師一族の娘さんだ。彼女もまた、強力な退魔師でもありましてね、エエ』
「その子が、転校してくるんですか? え、受験もパスで?」
『うんうん。なんといっても防衛庁のお偉方のご子息ですからして……』
風祭一太郎は冬だというのに汗をかきながら、陽子に「黄昏向日葵」の写真を渡す。
「金髪……」
長い金髪に褐色の肌。ただでさえ短めな夜桜学園のスカートはさらに折りたたまれており、その顔は……ふてくされている。
あきらかに陽子が苦手としているタイプの女子だ。
『……慣れない土地で不便もあるでしょうし、だから、同じAPOHの職員として、仲良くしてあげてください……もちろん、穏便に……ネ?』
そういって風祭は腰低く頭を下げると、全身の筋肉を躍動させて跳躍し……いずこかへと消え去った。
「仲良く、ったって……ただでさえ私、”仕事”が忙しくて友達ができないのに……」
呆然としながら、陽子は写真を手にして立っている……
× × ×
冬休みが終わると、この学園にほんのすこし異変が起きていた。
この学園の女子の数名が、行方が分からないという――。
彼女らはとても非行に走るタイプではなく、また学園きっての美人として有名な生徒たちであった。
休み明けに不登校になる生徒は多いが、この学園に限ってこんなことが起きるのは前代未聞であった。
「……まさか、悪魔のしわざ?」
担任からホームルームでそのニュースを聞く陽子。
さらにもう一つ、同じクラスの男子の桜井直斗君も、冬休みの部活に来ておらず、連絡も取れないという。
『陽子君は、桜井君の住むマンションの近くだったな……。
学校からのプリント類を、届けてやってくれないか。ついでに、様子も……』
「私、あの……」
『頼んだよ。』
担任の教師に直斗のプリントを渡される陽子。
クールな外見だが、頼み事はうまく断れない性格なのであった……。
/物語ロールソロール
/どなたでも学園ドラマをちょっと回してみていただけるとうれしいです
107
:
咲羽 翼音(フリューゲルス)
◆yd4GcNX4hQ
:2016/01/08(金) 07:35:41 ID:EQaCMdl60
出演:咲羽 翼音(フリューゲルス)、大宮陽子、(桜井直人)
>>106
「はぁ…また断れなかった……」
とぼとぼとプリントを抱えて廊下を歩く陽子。小さなため息をひとつ吐き、自分の情けなさを反省する。
いつも私はそうなのだ。自分の意見を言うことができず結局そんな役回りをさせられる。そんな自分を直そうとしたこともあるが、染み付いたそれはなかなか直らずそのまま今に至るわけだ。
「そのプリント、どうしたの?」
陽子がそうして廊下を歩いていると、ふと後ろから声をかけられた。振り返ってみれば、声の主はこれまた同じクラスの咲羽 翼音。
なかなか彼女とは交流が無かったが、確かよく1人で居る自分と同じような人だったはず。そんな彼女がなぜ私に声を…?
「え、えぇと桜井くんにプリントを届けてほしいって頼まれて……」
「へぇ、そうなんだ」
なんなんだ一体、何か目的があるのならば早く言えというものだ。何も無いのに話しかけるわけなどあるまい。
一体どういう用件が────
「それ、私も一緒に行っていい?」
「────へ?」
一体どういう風の吹き回しだ!?彼女から話しかけてきて、しかもプリントを届けるのを付き添おうとしてくるなんて。いや、これはもしかすれば友達を作るチャンスかもしれない。だが相手の方も何か予定とか無いのだろうか…?
「あ、えとその、咲羽さんも忙しいと思うし……」
「別にいいよ、私この後やることないし」
どうやら暇なようだ。良しと心に決めると、陽子は翼音と一緒にプリントを届けに行くことを決意したのだった。
ただ陽子は未だ知らなかった。この咲羽翼音が悪魔で、しかも優先討伐対象に指定されていることに────
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「はぁ…この学校にも働き者は居るのね」
そう言って老化を歩くのは咲羽 翼音、またの名をフリューゲルス。普段は"蒼銀の鴉"、"魔鳥"などと言われている彼女も、学校では流石に大人しくしている。そもそも彼女が学校に通っているのは何となく、だ。別にこの学校の生徒を攫おうとも、ましてや食べようとも思っていない。本当に暇だから通っているだけだ。
「ん?あれは……」
そんな翼音は、ある1人の少女の姿が目に入った。どうやら教師になにか頼みごとをされたらしく、断ろうにも断れなくなっている、と言ったところか。
あの少女は確か…大宮陽子…だったか。いつも1人で居る自分と同じような立ち位置、まぁ私も暇だ、折角なので話しかけてみよう。
「そのプリント、どうしたの?」
話しかけると驚いたような表情で陽子はこちらを見る。まぁいきなり、しかも私のような者に話しかけられれば誰でもこんな反応をするだろう。
話を聞いてみればあのプリントを桜井直人という人物へと届けてと頼まれたという。どうしようかと悩んだが、どうせこの後は暇なのだ。今日は別段狩りに行くという気分でもない。ならばこれもまた一興だ。
私も一緒に行くという趣旨のことを言えば、陽子の目は驚いたような顔をする。そんなにおかしな事だろうか?まぁ私から人に話しかけるのは確かに珍しいが……
「あ、えとその、咲羽さんも忙しいと思うし……」
「別にいいよ、私この後やることないし」
「え、あ、うんじゃあ……」
そうして翼音はプリント届けに付き添うことになるのだった。ただ、この時の翼音はまだ知らない。
その桜井直人という人間が、先日自分が会って話したあの少年だということを────
108
:
桜井直斗
◆o/zdiZN8A2
:2016/01/08(金) 20:08:39 ID:if7ZXLvA0
>>107
出演:咲羽 翼音(フリューゲルス)、大宮陽子、桜井直人
そして放課後
マンションは街の喧騒から程よく離れた住宅街の外れに位置していた
時間帯も時間帯なのでまばらに帰る生徒も見える
「このマンション?」
「うん、ここの4階。確かそこの角の部屋だよ」
と、大宮は下から部屋のある辺りを指差した
「マンション海馬」────安直な名前が実に市営っぽい
この建物の4階が彼のいる階だ
大宮と咲羽はエレベーターに乗り込んで4階のボタンを押す
4階の405号室、扉の横に「桜井」と表札が付いていた
ピンポーンと、ベルを鳴らす
ーーーーーーーー
ぐっすり寝たのは久し振りだった
あの日以来、寝てしまったらあの獣に乗っ取られそうで────。
だが、今はその心配は無い
とりあえずだが力の制御ができつつある
携帯に山の様に来る友人からのメッセージを睡魔で押さえつけて眠りについていた
今までの夜更かしの反動でこのままずっと寝ていようかと思っていたが
ピンポーンとベルが鳴った
「................む」
中途半端に沈んだ意識が一気に持ち上がった
あれは誰か客が来たのか
聞き間違いか、それとも────。
せっかくの睡眠が邪魔されたのは嫌だが、その呼び鈴を無視できるほど心は強くなかった
ピンポーン、ともう一回
「...はい! はい! 今出ますよー!」
ええい、しょうがないとベッドから起き上がって
と、ほとんど寝巻きみたいな私服で扉を開けた
「はいはいー? ...っと大宮さん? えっとどうしたの?」
2人は同じクラスではあるが性格が真逆だった
楽観的な桜井はいつもしっかり者の大宮に世話になってたりするのだ
この様にプリントを届けられたりというのも決して珍しくない
「ほら、先生から。最近学校休んでるし、みんな心配してるよ?」
「あー、悪い悪い。ちょっと風邪気味でな」
と、目が泳ぐから苦手な嘘を吐きながら、プリントを受け取って
大宮の後ろにいた少女を見た
「────────。」
「──────。」
どこかで見たことある様な...
そう、この雰囲気は──────。
あの夜出会ったあの人みたいな──────。
「......? どうしたの桜井くん、咲羽さん? 黙っちゃって」
と、何やら不思議な雰囲気の2人に萎縮する大宮だった
109
:
黒血川 幸
◆aBUPzR4umA
:2016/01/08(金) 20:40:23 ID:3VcwIkVI0
出演:黒血川 幸
「残念でしたね、そして残念だよ、とても」
「貴方はとても不幸だった、各言う私も不幸だった」
人気の無い路地裏で、黒血川 幸は楽劇めいて呟いた、誰も見ていないと思っていても、そんな風に言わざるを得なかった。
足元に見下ろすのは物言わぬ肉と骨の塊、魂の抜けた人間は、皮に肉を詰めただけの物体だ。
わざわざこんな場所にいたのは、人に見られる訳にはいかなかったから、そういう理由でここに連れてこられたのだ。
彼女の意志ではなく、それは足元に転がる人間だった物によって、とても優しく頼れる『好い人』だったのに。
「不幸にも貴方はAPOHだったなんて、そうでなければきっといい関係になれた事でしょう」
「いいえ、そうであっても私を祓おうだなんてしなければ、ここが眷属共の溜まり場でなければ、ああ不幸だよ、とても」
「フフ…でもまあ、中々楽しめたよ、君を観るのは」
一頻り死体に語り掛けた後、ポケットから取り出したケースを軽く振り、手の甲に出した粉末を鼻から吸入する。
インモラルなその所作自体に酔うように、粘膜から中毒物質を取り込んだ後に、気を取り直して細い目で周囲を見た。
「さて、と…やれやれどうするか、死体を喰われるならまだしも残して帰るのはいただけないね」
「この近くに隠すのを手伝ってくれる悪魔でもいればいいんだけど、そうでないなら勘付かれるのと見付かる前に如何にかしないといけないかな」
自分が置かれた状況が、自分の言葉程呑気にしていられないのは良く理解しているが、しかしなればこそ逆に忙しくするつもりもなかった。
悪魔が来ようと人間が来ようと、成るようになれ、こういう特殊な状況でこそ観察は捗るのだから、寧ろ内心高揚しながら独り言を繰り返した。
110
:
オセ・ザバブ
◆10pX8BMxfE
:2016/01/09(土) 00:36:48 ID:ydEYc846O
>>109
路地裏から更に深くにある行き止まり方向。その奥底から、靴音と拍手する音が近づいてくる。
「いや、お見事。お見事です。ええ、と……今は何と名乗っておられるのでしたかな? 確か、ええとクロ……殿」
現れたのは珍妙な格好をした一人の男だった。擬態はしていても、その小脇に抱えた魔界製の計算機を見ればその正体はそれとなく分かるだろう。彼もまた悪魔だ。悪魔――オセは仰々しく頭を下げて見せる。
「直接お話するのは初めてでしたかな? では改めて……私、オセ。オセと申します」
「一応ではございますが、役職はこの地区の悪魔を監督する者。以後お見知りおきを」
軽い自己紹介をした後、二人の足下に転がる肉塊を何気なく蹴飛ばし、続けた。
「いやはやそれにしても素晴らしい殺しぶり。いえ、陥れぶりにございましたな。この所業、ルシファ様もお喜びになるでしょう」
「働きぶりは◎、と……これはルシファ様にちゃあんとお伝えしますのでご心配なく」
崇敬するルシファの名を出し、彼女を褒め称える。彼女の行動理由の中にルシファが含まれていないことを知っているにしろ、この言葉は出てしまう。それは他でもなく自身がルシファを愛しているからである。
今の一連の行動を見て、悪魔の〝悪〟たる部分が強く揺さぶられたのか少し嬉しげでもあった。
「それでですが――」
「死体の処理にお困りのようでしたが、私にお手伝いできることはありますでしょうか?」
オセは尋ねる。彼の背後からは何時の間にか犬のような獣が二匹程現れ、血の匂いを嗅ぐように鼻を地面にこすりつけていた。
111
:
黒血川 幸
◆aBUPzR4umA
:2016/01/09(土) 01:04:46 ID:3VcwIkVI0
>>110
「おや、君───いや貴方は」
「…ええ、直接会うのは初めましてですねぇ」
拍手の音と共に現れ、頭を下げた中年男性に細い目を向けると、訝しむ様子も無く見知った顔のようにこちらも頭を下げる。
実際見知っている訳でもなかったが、ただその存在だけは知っていた、この街の悪魔を監視し、監督するルシファの狂信者、オセ・ザバブ。
人間よりは面白味もないかもしれないが、とクロは思ったけれども、顔を合わせておいて損は無い、一応は味方の立場なのだから。
「えぇ、えぇ、知っていますとも、顔は見ずとも貴方の名前は知っておりますよ」
「申し遅れました、いかにも私この世界では黒血川 幸…クロってあだ名で通しておりまして…ま、この姿ならそう呼んで下さい」
「いえいえ、これはただの自衛───もとい、ただの『不幸』の結果ですよ、この男はとてもとても不幸でした」
「とはいえ、査定に響くなら是非とも、その件については御報告下さい」
ニコニコというよりはニヤニヤとした、いやらしく胡散臭い笑みをお辞儀の体制のまま顔だけを上げて見せ、それから曲げていた腰を伸ばす。
垂れた黒髪をかき上げて、オセの提案と背後の獣を見ると、嬉しそうに頷いた。
「いやぁ!助かりますねぇ、こういうのをこの国では『渡りに舟』と言うらしいですよ!知ってました?」
「出来れば綺麗さっぱり、血の跡一つ残さず片付けて頂きたい、自信のある悪魔なら見せしめにでもするのでしょうが、何分私は力の無い臆病者でして」
相手によっては煽りと取られても仕方の無い調子良い言葉をつらつらと吐きながら、迷う事無く提案を呑む。
このまま死体を放っておいてもいいが、そうしてしまうと他のAPOHがすぐに嗅ぎ付けてくるだろう、それもいいかもしれないが、今回は片付けておきたい気分だ。
死体として見つかったにしろ、消えたにしろ、結局は嗅ぎ付けてくるのだと予想はついていたから、それが遅いか早いかの違いしか、詰まる所結果は変わらなかろうし。
112
:
◆10pX8BMxfE
:2016/01/09(土) 02:04:24 ID:ydEYc846O
>>111
「不幸、ですか。その男が。はは……そうですか。いや確かに、このような家畜の類に産まれてきたことは不幸以外の何物でもありませんな」
「いえいえ。アナタの仕事ぶりは見事なものでしたよ。悪魔というのはかくあるべき、です」
さすがだ。オセは思った。
殆ど面識が無い相手に此処まで謙遜した物言いをする。否、物言いを〝できる〟悪魔は今までに片手で数える程しか知らない。悪魔とは大凡傲慢不遜なもの。〝査定〟に置いて不備を起こした悪魔が、オセに媚びたことは数あれど、その意地汚い本性をどこかで晒してしまうもの。
綻び無く己を殺し、己を卑下した態度を取ることは難しい。
(女……だからでしょうか?)
物言いは軽く、剽軽な顔のその裏に得体の知れぬ底深さを感じた。
(敵でなくて良かったですな)
が、これは関係のないこと。今は仕事に徹しよう。獣はひくひくと鼻を動かした。
「――ではクロ様。このオセめがお片づけ致しますね。暫しお待ちを。来い!」
声に従いゆらゆらと。獣らはオセの影から身を出し、前へ出た。毛の薄い大きい犬のような姿をしている。
「彼女らは残飯処理の〝イヌ〟。彼女達がここに散らばるものを血一滴残さず食い尽くすでしょう」
「おや、あまり人にくっついてはいけません。失礼ですよ!」
すると、そのイヌの内一匹がクロの足下に擦りよるように近付いて来る。脚絡みになり懐く姿は犬そのもの。
本物の犬との違いは、多少そのシルエットが人間に近く、多少涙を流し「たすけて」と呻く程度か。
「かわいいでしょう? 私が〝作った〟イヌです。気に入ったなら何匹かお貸しできますが」
奥に居るイヌは口輪を付けられてうまく言えずにはいたもの、絶えず「お母さん」と叫んでいた。
イヌは全て元々人間だったもの。オセが術にはまりこの姿に変えられた者達だった。このイヌらに肉塊を食わせるということは、即ち〝共食い〟をさせることである。
その実、通常の悪魔でさえ顔をしかめる所業、クロはどう見るのか試してもいた。
113
:
黒血川 幸
◆aBUPzR4umA
:2016/01/09(土) 03:28:26 ID:3VcwIkVI0
>>112
「いやあ、ふふふ、褒められ慣れてないから照れますねぇ」
「人間社会に溶け込むのも大変で、そっちじゃあ怒られてばかりで…」
悪魔にとってそれは馴染みの無いものかもしれない、謙遜というものだ。
悪魔であるなら尚更、人間に対してそれを行うという事が理解出来ないかもしれない、人間なんていう下等種族に演技であっても媚びへつらうだなんて。
少なくとも彼女自信は気にも留めていないようだ、しかしそれはプライドが無いという事では無い、という事も確か。
「おーよしよし、可愛いですねー」
「失礼なんてありませんよー、イヌが何したって所詮はイヌのする事ですし、可愛いもんですよ」
足元に擦り寄ってきたイヌと目線を合わせるようにしゃがみ込み、両手で耳の辺りを撫で繰りまわす。
彼女の足に擦り寄った事を『失礼だ』とオセは御したが、彼女は『所詮はイヌだから』と気にしていない、つまりはそういう事だ。
「私もこーゆーの欲しいんですけどねー、私の住んでるアパート、ペット禁止なんですよねー…引っ越そうかな」
〝イヌ〟と呼ぶには余りにも異常なその風貌を、しかしそれがまるでただの犬のように扱い、人間が犬について語るように愚痴る。
それが普通なだけだ、彼女にとっては、ちょっと形が変わっただけ、寧ろこの姿の方が余計に可愛げがあるとでも言いたげに。
「おーどうした?何を悲しむ?そんな風に泣いてちゃ運気が逃げるぞ」
「…受け入れ給えよ、今の自分を。どうせ戻れやしないんだ、生まれ変わったと思えば案外楽しいかもしれないよ?」
「気の持ちようさ、イヌライフをエンジョイしようじゃないか」
助けを請うイヌの涙を拭ってやりながら、優しく言葉を投げ掛ける、それはとても慈愛に満ちた、希望に満ちた前向きなアドバイス。
後ろを振り返っても戻れないのだから、前を向いて、人間としての尊厳なんか捨てようじゃないか、そうすれば悲しむ必要は無い。
残酷であると、軽薄であると、彼女の言葉をそう感じるなら、それは人の考えで人の視点だ。理解出来る筈もない、彼女は悪魔なのだから。
「それじゃあほら、大きなお口で食べてみようか?大丈夫、人肉は以外と美味しいと聞くよ?」
114
:
◆10pX8BMxfE
:2016/01/09(土) 21:38:07 ID:ydEYc846O
>>113
「アパートにペット……ですか」
人間世界に居ながら、その社会に身を置かないオセには彼女の話す単語単語が新しいものばかり。人間社会に潜伏する悪魔の腹積もりがいまいち分からないが、成る程人間社会に潜む悪魔には潜む悪魔なりの問題があるのか。と感心する。
忌むべき人間の成れの果てを慈悲深く慰める彼女を不思議がる彼はあまり深くは詮索しなかった。全ては恐らく真意あってのこと。悪魔の戯れを邪魔する謂われはない。
この〝情け〟に見える行為は、人間社会に染まった故が行為でもなさそうだ。
「ふふ、優しいお言葉。彼女達も喜ぶでしょう。さあ、喰いなさい」
オセの声を聞くと、イヌ達は一斉に死体にかかる。一声で動くあたり、よく調教されたものだと分かるだろう。そこに愛情は一かけらもない。
イヌはあっという間に死骸を喰い尽くし、地に流れる血液も一滴残らず消え去った。
「よろしい……そこで大人しくしていなさい」
「クロ様、これでよろしいでしょうか?」
/遅れましたごめんなさい
115
:
黒血川 幸
◆aBUPzR4umA
:2016/01/09(土) 22:27:44 ID:3VcwIkVI0
>>114
「へー、よく躾けてますねぇ、凄い凄い」
「完璧ですよ、これでまあ死体は絶対揚がらないと」
綺麗にイヌ達が片付けた跡を眺めると、満足そうに頷き、手を叩く。
一応はこれで、死体は消えて殺された形跡も証拠も無くなった、一先ず安心と言った所だ。
「…所で、やっぱりお礼とか必要ですかね?いやタダってのも悪いですよねぇ」
「なんか要ります?私に用意出来る物ならなんとかしますよ?」
しかし、同じ悪魔と言えども、悪魔は悪魔、その行動原理という物は理解しているつもりだ。
行動には必ず取引が介入する、何かを頼めば見返りを払うのが悪魔に頼み事をする常であると。
そうでなくとも、オセ・ザバブという悪魔に借りを作ったままにしておくのは不安である、という考えもあった。
(タダより高い物はない…いつどんな時に借りを返せと言われるかわからないからね)
(さっさと返すに限るよ、尤も、返せる物ならいいけど)
116
:
春日 縁
◆ovLCTgzg4s
:2016/01/09(土) 22:41:45 ID:FZqbjWPA0
──いつの間にか、眠っていたらしい。
電車の車内アナウンスが“海馬駅”と告げる声で目が覚め、急いで車両を降りる。
朝方の肌寒い風はコート越しにも身体を蝕む。車内では外していたマフラーを首に巻いた。
キャリーバックを引き摺りながら改札を抜け、駅の外に出る。休日のせいか、この時間帯には人っ子一人見当たらない。
「……ここが、海馬市か。」
黒髪の青年──春日縁は、誰にともなく呟いた。
“四家”からAPOHへの加入、そして海馬市への赴任を言い渡された事情は、了解している。
現場を見ることで、自らの“問題点”を多少荒療治でも解消することになれば、との事だろう。
「(望む所だ。──この地の悪魔を尽く討滅すれば、四家も納得せざるを得ないだろう。)」
退魔師としての本分は、飽くまでも悪魔を討ち滅ぼすこと。
この地で結果を出し、自らの実力を証明する。そして何より、悪魔からこの地の人々を護るのだ。
──さて、APOHから迎えを寄越すとの話だったが、それらしき人間はいない。
確かまずは市役所に行って、風祭とかいう責任者に会えと言われていた。仕方ないから、そこまで歩こうかとは思ったが──
「……む。」
道が全く分からない。
近くにあった地図掲示板に目を通してみるが──地方都市の予算の儚さか、所々が薄汚れていて、上手く判別できない。
あっちがこっちか、それとも、と悩んでいる内に、十分ほどが既に経過していた。
/今日の所は置きになります
117
:
◆10pX8BMxfE
:2016/01/09(土) 23:32:59 ID:ydEYc846O
>>115
「ええ、完璧に仕上げました。一滴でも残れば知恵のある豚共が血の成分とやらを調べてしまいますからねェ。厄介なものです」
先ほどまで血糊がこびりついていた地面を撫で、綺麗であることを確かめながら首を捻る。数百年の内、家畜は悪魔に対抗しうる知恵を持ち始めた。油断はできない。
「お礼、ですか? そうですねェ」
強かにもこのまま立ち去り、貸しを作っておきたかったが流石に気付かれてしまったか。少し唸って考える。
「ああ、そうです。お礼と言ってはなんですが――」
「私、人間社会には疎いもので……良ければ人間社会に潜む為のコツ、のようなものを教えていただければ」
「いえね。私も監督役ともなると、家畜の世界を知る必要があるので」
取引の材料としては、オセ側の利益が少ない気はするが。目の前にいる悪魔が、その他の潜伏悪魔らがこれほどまでに人間社会に入り込み家畜の姿を借り、家畜の世界飲まれ生きようとするのか、彼には分からない。そこに悪魔が太陽を嫌う性質以外の何かが、任務以外の何か理由があるのではないかと、オセは考えた。
もし予想通りの抽象的な何かがあるのなら、理由が知りたがる。
118
:
黒血川 幸
◆aBUPzR4umA
:2016/01/10(日) 00:01:14 ID:3VcwIkVI0
>>117
「人間社会に溶け込むコツ、ですか?それなら簡単ですよ!もう本当簡単!」
思っていたよりも要求された見返りが単純だ、それ故に答えは抽象的になりやすく、深く考えると難しいのだが。
自分を試しているのか、と思ったが、そこで変に考えるのも変だと思い、気付かぬフリをして、オセの気が変わる前に答えてしまう事にした。
これで借りを返せるのなら、安い物だ。
「ペコペコ頭下げて、顔色伺って、無害なフリをしてやればいいんですよ、人間って単純ですからそうしてりゃまず怪しまれる事なんてありません」
「木を隠すなら森って訳じゃあ無いですが、とにかく目立たない事がコツですかねぇ」
人間として社会に溶け込んでいる間、昼の間は実際に自分もしている事───即ち、無害で、別段不思議な事も無げな、言ってしまえば普通でつまらない人間を気取る事───をコツとしてオセに語り聞かせる。
それは他の悪魔にとってどれだけ大変な事なのだろうか、殊更オセのようなプライドの高そうな悪魔には、演技であっても人間の下手に出る事は厳しいのかもしれない。
でも、まあ、彼女からしては知った事ではない、聞かれたから自分の思う事を答えたまでで、相手の参考になるかは自分が決める事ではないから。
「どうです?参考になりました?」
119
:
◆10pX8BMxfE
:2016/01/10(日) 00:56:34 ID:ydEYc846O
>>118
「――これが、その〝コツ〟ですか。ふむん」
クロが出した答えは、馬鹿馬鹿しささえ感じる程単純なものでオセは少し驚き呆れてしまった。
この問いの真意は、オセ自身の興味という理由もあるが正確にはもう一つある。それは、監督役である彼のみに分かる「上級悪魔の成績不振」にあった。
この海馬市に来てからというもの、上級悪魔の家畜駆除が捗っていない。捗らないならまだしも、退魔師を名乗る人間に目を付けられ殺されてしまう始末。
そうと思えば、普段オセが軽んじてみているプライドの無い下級悪魔の成績が魔界に居た時とは別人のように向上し出す。この謎の事態に、彼は頭を悩ませていた。しかし、これで己の中で湧いた疑問の一つが解消された。
納得、上級悪魔の成績不振はそのプライドの高さに理由があった訳か。
悪魔としての力で圧倒することばかり考えていた彼にはついぞ思いつかぬことであった。多くの死んでいった上級悪魔らもそうであったように。
「ええ、とても参考になりましたな。しかし――」
――つくづく人間という生物は度し難い。
己が力を誇示せず己を殺し、無害であることを示し続けさせる社会は傲慢な悪魔にとって苦痛でしかない。
「目立たず、傲らずですか。ううむ、それではまるで自己の存在を否定するようですねェ」
そんな演技ができるのは、確固たる己を持った精神力高い強者かプライドを持たぬ低級悪魔だけだろう。恐らくこれができるクロは前者。で、なければこのような働きはできない。
「はぁ」
この世界は何とも狂気に満ちた世界だ、と溜息を吐く。
ただ、その掟さえ守れば……家畜達は背中を見せてくれる。それが事実だとすれば、主力と成りうる悪魔らを生き残らせる術が見えてくるというもの。これも全ては憎き家畜を滅ぼす為。監督役として戦力を消耗させぬ為。
さて、やるべき仕事に戻らねば、オセは出会った時と同じように深く深く頭を下げる。
「いや、本日も良い経験をさせてもらいました。クロ様、ありがとうございます。そろそろ私はこれにて失礼します」
「ご入り用の際は、このオセめをお呼びください。出来る限りのことは致しましょう。では――」
突如、ぐにゃりと世界が歪みオセとイヌらの姿が曖昧になる。
瞬き一度した後には、そこには彼らの影も形も残ってはいないだろう。
/時間がかかりすいません。このあたりで〆でお願いします
120
:
黒血川 幸
◆aBUPzR4umA
:2016/01/10(日) 01:46:08 ID:3VcwIkVI0
>>119
(ま、そう思うだろうね、そう思うのが普通だよ)
(その程度で崩壊する自己しか持たないなんて馬鹿としか言いようがないけど、それが悪魔って奴なんだろう、きっとね)
オセの溜息を聞きながら、笑みを浮かべた表情の裏で悪魔としての同意を思う。
舌の根も乾かぬ前に自分以外の悪魔を卑下するような、自分は他とは違うとでも言うかのような考えが過るが。
「いずれ来るルシファ様の復活に向けて、今は闇に紛れる事も重要だと思いまして、ね」
「しかしそれは私の事、人それぞれやり方はありますので…」
「それでは、オセ様も御達者で、今宵はどうもありがとうございました」
歪む空間に消えて行くオセの姿に頭を下げると、完全に見えなくなるまでそのまま見送る。
オセの姿が完全に見えなくなってから頭を上げ、上役との商談を終えたかのような溜息を一つ、ケースから振った粉末を鼻から吸い込んで。
「いやいや、疲れたねぇまったく」
「どこでいつ見ているかわからない、下手な事は出来ないかな…」
「…っと、これも聞かれているかな?…『不幸にも聞き逃していた』なんて事を願おうか」
うっとりしながら呟くと、飄々とした風に呟いた、聞かれていようが構わないという風に毒を吐く。
今回は幸運だった、同業者が死体を片付けてくれた事には感謝しつつ、その場をこっそりと後にした。
/お疲れ様でした!
121
:
黄昏 向日葵
◆WnQfyNHn5I
:2016/01/10(日) 02:44:46 ID:RkSuNfvk0
>>108
「あれ…」
放課後、帰り道を散策していると「マンション海馬」とか言うマンションを見つけた。
何処にでもありそうなマンションだ。
それよりあそこに入っていった女のコ二人だ。
一人は知らないけど、もう一人は見た事ある…
確かあれは、海馬市に来た初日…風祭ってAPOHのオッサンから海馬市について説明を聞いてた時だ。
―――――――
【数日前――】
「夜桜学園については解ったけどさ…その女のコは?」
市役所の会議室。此処は第三総務課とか言う部署専用に設けられた会議室だ。
私が聞いてたのは“司令室”だったんだけどな…
そこで私が説明を受けているのは夜桜学園の説明…
元々は女子校で今も女子が多いとか…
そして、最近は行方不明者が出ているとか…
多分、悪魔の仕業だろう…凶悪事件の話は此処に来る前から聞いている。
だけど、解らないのは一枚の写真…黒い髪でメガネを掛けた真面目そうな女のコ。
「大宮陽子、彼女もまた、APOHの職員であり、夜桜学園の学生です。」
風祭とか言うオッサンは淡々と私に写真のコを紹介してくる。
このオッサンはAPOHの幹部であり、海馬市の超常現象に対する責任者の人だ。
弱々しい印象だけど、ママからは防衛省の中でもエリートだって聞いてる。
そのオッサンが言うには…
「慣れない土地で一人では不便でしょう。彼女を紹介しておきましょう。」
―――――――
「あのコだ…」
そうだ…あの女のコが風祭のオッサンが言ってた写真のコ…大宮陽子だ。
もう一人は知らないけど、マンションの中に入ってった…あのコの家かな…
後を追ってみると、エレベーターは4階で止まった。
あのコ達は4階で止まったんだ。私もエレベーターに乗り、4階で降りると、
そこには2人の女のコともう一人、男のコが居た。
男のコの方は、直斗サンだ。あの部屋着…此処は直斗サンの家だったのか…
近づいてみると…
「あれあれぇ〜?」
直斗サンともう一人の…咲羽って呼ばれてたネックレスの女のコ…
黙り込んで変な雰囲気になっている。
「直斗サン…もしかして?」
大宮陽子ちゃんってコが入り込めてない雰囲気だけど、私は敢えてそこに踏み込んでみる。
とは言っても、何の予想も浮かばないけどね。
122
:
管理人
:2016/01/10(日) 03:13:24 ID:???0
>>108
出演 咲羽 翼音(フリューゲルス)、大宮陽子、桜井直人
時はやや遡り――桜井のマンションにいく道中……
陽子は、普段仲の良いわけではない咲羽と一緒に道を歩いている。
だんだんと日が暮れていき”悪魔”のいる時間帯に街は侵食されていく。
陽子は咲羽を、ちらちら見る。
肩よりも少し長いくらいの髪は体質なのか透き通るような純白で、色素の薄い瞳は金色に輝いている。
日本人ではないような凛とした顔立ちは、まるでファンタジーの世界から飛び出してきたような美しさだ。
だが、そのあまりに美しい容姿と、時折浮かべる憂鬱そうな表情から、クラスの皆から距離を置かれているのだった。
「ねえ……大宮さん? 何か私の顔についてる?」
「……えっ、あ」
咲羽は美しい顔をぐっと陽子に近づける。
戸惑う表情の陽子を見ると、咲羽は子供っぽく笑って……
「ふふっ。大宮さんて、美人よね」
「なっ……何を言ってるのよ」
「思ったことを言っただけよ。……ああ、月も出てきたわ。見て。空気の澄んだいい夜ね。私、夜が好きだわ」
「でも気を付けた方がいいわ。だってほら、最近失踪事件が……」
「夜にさらわれちゃったのかしら?」
そういうと咲羽は陽子をじっと見る。
そういえば、咲羽はふと「悪魔」の使命を思い出す。
それは、「この街に住まう純潔の乙女を攫い、ルシファに献上し、街を闇を覆うための魔法陣のためのイケニエにする」こと。
別に咲羽にとって――【蒼銀の鴉・フリューゲルス】にとって、使命がそれほど重要だとは思っていないが……
「ねえ。大宮さん……陽子はさ。好きな人とかいるの? 彼氏とか?」
「は、ハァ? そ、そんなの、いるわけないじゃない。だって私、まだ高校生だし……」
「そう? 早いコはもう、いきつくトコロまでしてるっていうけど?」
そうからかって笑う咲羽。陽子は顔を赤らめて答えず、スタスタと足を早める……。
桜井直斗のマンションは、もう近くだ。
//続きます
123
:
管理人
:2016/01/10(日) 03:14:24 ID:???0
>>108
>>122
「……? どうしたの桜井くん、咲羽さん? 黙っちゃって」
驚いたように見つめ合う、桜井と咲羽。
その様子を見て、陽子は二人に何かあると直感した。
「へえ……サクライ君、か。……こんなところに住んでいたのね?」
咲羽はずけずけと桜井の部屋に入っていく。
「ちょっ、咲羽さんっ」
「お前……おいっ、か、勝手に入るなよ!」
慌てる桜井をよそに、咲羽は室内を見渡す。
一人暮らしの男子の荒れた室内だが――
よく見れば、新聞の切り抜きやオカルト雑誌なども散乱している。
桜井は自身の体の変調の原因を探るため、一人籠って資料を集めていたのだ。もっとも、それらの雑誌や新聞記事などなんの参考にもならなかったが――
「いったい何のつもりだ……学校の制服なんか着て、大宮なんか連れてきて」
小声で咲羽につめよる桜井。
「……『絶滅した狼、o県の森で発見か?』『世界怪奇ファイル・狼男伝説』……へえ、サクライ君ってこういうの好きなんだ」
咲羽が床に落ちていた怪奇雑誌を拾って読む。桜井は慌ててそれを奪う。
「ちょっと咲羽さん! 勝手に男子の部屋に入るだなんて!」
といいつつも、陽子も恐る恐る(なぜかつま先立ちで)部屋の中に入ってきた。
「プリントよ。冬休みが終わってもサクライ君が登校しないから、大宮さんが届けてくれたのよ。ね?」
「桜井君、ごめん、プリントを渡したらすぐ帰るから! 行こう咲羽さん」
ふと、意地悪な考えが、咲羽に――フリューゲルスに思い浮かぶ。
桜井直斗は、まだ自分が「悪魔」だという自覚が薄い。
だが、美しい純潔の乙女をあたがえば、悪魔の本能が疼くかもしれない。
日常も非日常も守る――かつて彼はそう言った。
でも……悪魔の血にあらがって、そんなことが本当にできるのかしら?
「ねえ、咲羽……サン?」
月はもう出ていた。夜。それは悪魔の時間――。
咲羽翼音はフリューゲルスとなって、小さく歌いだす。
《月の女王はかく囀る》
「――っ!」
「あ、あああ……」
陽子と桜井は、不意に自分の意識が前後の感覚がおかしくなり、その場に倒れこむ。
「お、ま、え……何、を……」
かろうじて意識をつないだ桜井は、部分的に身体を悪魔化して意識を保っていた。陽子は倒れている。
「……狼サン。あなたに贄のプレゼントよ」
「どういうつもりだ」
フリューゲルスは、口元の八重歯を光らせて、にやりと笑う。
「その娘、あなたにあげるわ。……純潔の乙女は悪魔にとって最高のごちそう。あなたに潜む悪魔の血の、本能に抗うことができるのかしら」
大宮陽子は倒れている。むき出しになった太ももは穢れを知らない白さがあり……またフリューゲルスの唄声は、強い幻覚とともに、桜井の脳を、神経を刺激する。
そう……「乙女の純潔を犯し、ルシファに捧げよ」と強く幻惑するのだ!
「ぐ、お……あああああ……!」
桜井はまるで血が逆流するような感覚に襲われている。両手は狼の体毛でおおわれ始めて――
「ふふふ……。見せてちょうだい?
あなたが、運命に抗うトコロ……」
小さなマンションの一室で、日常をかけた戦いが静かに始まった!!
124
:
大宮陽子(巫女さん女子高生)操作フリー
◆sF/KB3MJeA
:2016/01/10(日) 03:19:42 ID:F/5G8Uy60
>>123-122
黄昏向日葵は意を決してマンションに踏み込んだ。
すると室内からは異様な歌声とともに……
狼男化しつつある桜井と、倒れている大宮陽子、そして……
八重歯をぎらつかせて薄ら笑いを浮かべている咲羽翼音の姿があった!!
/すみませんタイミング被ってしまったのですが、こんな感じの展開はいかがでしょうか?
125
:
桜井直斗
◆o/zdiZN8A2
:2016/01/10(日) 14:34:33 ID:5ViSQw.E0
>>124
出演:咲羽 翼音(フリューゲルス)、大宮陽子、桜井直人、黄昏向日葵
「ハァ──────ハァ────。」
桜井の身体が狼の肉体で覆われていく
やめろ、止めろ、ヤメロと頭が理解しても止まらない
これが本能、悪魔としての桜井直斗の本能なのか
嫌、だ
ルシファの目的とか知らない
そんな事で大事なクラスメイトを手にかけたくない
意識が塗り潰され
精神が侵される最中────。
「...直斗サン?」
「──────。」
昨日会ったばかりの後輩を見た
「た....黄昏ええええええ!!!」
「はっハイ!?」
最後の、チャンスだ。
急に呼ばれて思わず返事する黄昏
その声は最後に振り絞った叫びで────。
「なん...でも良い!! 悪魔祓い...の道具を.....ッ!!」
「ハ、ハイ! 直斗サン!」
何があったか分からないが黄昏は部屋の中に走った
桜井の横に立つ綺麗で不思議な少女と倒れているAPOHの少女
その2人に思わず尻込みするが、それでも桜井の所へ
「祓い煙草ですっ! これで────。」
懐から取り出した簡易退魔道具
祓い煙草、これなら持ってると桜井に渡そうとして
「≪眠れよ眠れ。汝は森の眠り姫≫.......邪魔しないで貰えるかしら? 人間さん」
「何すか────これ...」
歌われる眠りを誘う唄
それは黄昏の意識さえ奪い去ろうとする
四肢の力が抜けて、床に転がって
「なお...と、サン」
と、最後の力で祓い煙草を手渡した
〜〜〜〜〜
「ッ....!!」
渡された煙草が何か分からないが
狼男となった腕がそれに触れただけで、皮膚が焼けた
爛れて、腐った肉が床に垂れて蒸発する
「うわ...あなたの体って凄いわね。こんな物で負けるの?」
思わず口を押さえる咲羽
だがそれは嫌悪でなく嘲笑
強靭な肉体にはあまりに脆い身体につい────。
「ッッ!!! グゥウウウッッ!」
煙草を握りしめ焼け爛れる皮膚に飽き足らず
桜井は、それを飲み込んだ
────嘔吐、祓い煙草という異物を飲み込んだ悪魔の体にとっての当然の常識
同時に彼の狼男の肉体も溶け出す
「ゲホッゲホッ...!! クソっ!!」
蒸気を吹いて溶ける体
そこから咳き込みながら現れる桜井の姿があった
狼男の時の損傷はともかく、激痛は人間時にも残る
まるで砕けたガラス片でも飲み込んだ様な痛みに体を押さえる桜井は咲羽を睨みつけた
「....ッざけるな...巻き込んでんじゃねーぞ!!!
殺してェなら...俺だけにしろ!! 大宮も、黄昏も巻き込むんじゃねェ!!!!」
激痛で床に転がる
だが、その目はじっと咲羽を睨みつけている
「手ェ...出したら...ぶっ殺す...ぜってぇ...テメェ...殺すぞ...」
ダメだ、意識が
激痛に咲羽の歌の副作用か身体から力が抜ける
最後に、咲羽の足首を掴んでそう言った
126
:
出:フリューゲルス (陽子 直人 向日葵) オセ
◆10pX8BMxfE
:2016/01/10(日) 18:57:43 ID:ydEYc846O
やがて直人のその手が力無く垂れ落ちた時、部屋に寂々たる時が訪れた。そこに立つのはフリューゲルスただ一人。他全ては苦しみ無い眠りへと落ちている。その時――
「派手に暴れてくれたものですね」
彼女の背後に忽然と一人の男が現れた。突如感じた殺気に似た感覚に、フリューゲルスは身構える。
「身構えずとも結構。私です、オセです。いやはやそれにしても……アナタもなかなかに大胆なことをする」
「オセ! 監視、してたのね。本当に貴方って……悪趣味」
「ふん、ほめ言葉として受け取りましょう」
街の悪魔の監督役、オセ。魔界に居た頃から面識がある二人であったが、こうして海馬市で話をしたのは初めてのことであった。彼は今、何やら怒っている様子だ。
「フリューゲルス、そこに転がる男は」
「ああ、〝あれ〟。あれも悪魔。ナオトって言うみたい」
「む! 彼も知らない顔ですねェ。本当に悪魔なのですか? 今は家畜の匂いしかしませんが――」
オセは眠る直人の匂いを顔を近づけ執拗に嗅いだ。監視時、僅かに感じた濃い匂いは彼の出であることは確かだが、今はない。悩みの種が増えました、と深い溜息を吐いた。
次に顔を上げ、フリューゲルスに詰め寄る。
「フリューゲルス、アナタ一体そのナオトに何をしようとしていたのです? 上物家畜を二匹連れて……」
ここでいう上物家畜とは悪魔の好物、穢れを知らぬ女のこと。つまり陽子、向日葵のことを指す。
「答えなさい、フリューゲルス。ナオトとは一体何なのです!」
自分の知らぬ所で知らぬ悪魔が増え続ける現状。不穏な気配を感じ、今まで監視していたのだ。苛立ちを抑えきれず、豹頭の本性を現し鴉に吠える。
しかし怒り震えるオセを前にして、彼女は怯えることなく終始黙りを決め込んだ。
「……はあ」
いや、言っても無駄か。彼女は元来この性格。本心語らず、こうして馬鹿にしたように笑うのだ。言うはずもない。オセは眉間を押さえ、再び溜息を吐くと人の姿に戻った。
「まあこのナオトとかいう新入りの詮索は今日の所だけ見逃しましょう。彼も悪魔ならどうするも彼の勝手ですから。しかし――」
「しかし?」
「どちらにせよここに転がる上物二匹は始末する他ありません」
「……何故?」
「この女達の匂い、よくお嗅ぎなさい……分かりませんか? あの〝退魔師〟を名乗る家畜共と同じ匂いがします。このままにはできない」
/分割
127
:
◆10pX8BMxfE
:2016/01/10(日) 19:48:15 ID:ydEYc846O
オセは続ける。
「彼奴らは〝ガクセー〟という身分の者。このまま眠り続け〝ガッコ〟という施設に行かなければ、その内退魔師の連中が怪しがり、調べられてしまうでしょう。そこはアナタの潜伏先のはず」
「となると、何れアナタにも捜査の手が及ぶ。危険な状況です。それに時間もない。その前に――」
フリューゲルス、いや咲羽翼音は答えない。自身の危機とは言われても、何だか他人事のようにオセの話を聞いていた。
彼の話は終わらない。
「幸運にも上物家畜は退魔師の出のようで。二匹の魂を奪うか、その血を〝魔界の印〟を刻む為の材にすれば……我々にとって得でしょう。どうです?」
それでも彼女は答えない。いつもであれば「そうね」と殺していたものだが、彼女達の首にその翼をかけられずにいた。
何故そうなったのか、彼女にも分からない。人の情に染められたのか、と問われれば……違う。しかし――
「何をやっているのですフリューゲルス。アナタがやらなければ私が――」
冷静を装う彼女の額に冷たい汗が伝った。ここで直人が眠る言葉を思い出す。
『手ェ…出したら…ぶっ殺す…ぜってぇ…テメェ…殺すぞ…』
128
:
ノラ「」&ヴァイオレット『』
◆CELnfXWNTc
:2016/01/10(日) 20:46:24 ID:MrHh1Iuk0
「マザー、もう退院して大丈夫なんですか?」
『平気だよ。アタシを誰だと思ってるんだい?』
人通りの少ない夕暮れの道、会話をするのは二人の女性。一人はフードを被ったハーフの少女、ノラ・クラーク。もう一人は、その師であり、今まで入院をしていたヴァイオレット・クラーク。
彼女は、先日の修道院の襲撃の際、悪魔に操られた人間を撃退したは良いが、病を抱えた身で力を使い過ぎた為、血を吐き倒れてしまったのだ。
だが、退院となった今、そんなことを感じさせない程にヴァイオレットは、以前と変わらぬ姿を見せている。
「でも、無理はしないで下さい……」
『あんたに心配される程、弱っちゃいないよ。』
それでも、ノラは師の事が心配な様子だ。また自分が留守の間に、マザーが倒れてしまうのではないかと、不安で堪らないのだ。実際、ヴァイオレットの身体はかなり危ない状態だ。
しかし、ヴァイオレットは自分は平気だという様子を崩さない。ヴァイオレットもまた、ノラが心配だからだ。彼女一人で修道院を守れる筈など無いし、なにより彼女はまだ心身共に未熟者。自分が側に居てやらねばいけない、とヴァイオレットは思っている。
「それにしても、驚きました。私が留守の間にそんなことがあったなんて……」
『奴等がいよいよ動き出したってところだろ。まったく、厄介だよ。何処から来るか、分かったもんじゃない。……ほらそこっ!!』
「えっ!?わっ!?」
本当に奴等、悪魔は何処から来るか分かったもんじゃない。現に今、ノラの背後に下級悪魔・眷属が複数体現れた。ヴァイオレットは、すぐに聖骸布を手に取り、それを眷属へと伸ばした。
◆◆◆◆◆◆◆◆
一体は聖油によって焼き付くし、一体は銀の剣により斬り裂かれる、一体は聖骸布で絞め殺される、また一体は聖油により……
ヴァイオレットが苦戦する理由など無かった。あれほど沢山居た眷属も、ヴァイオレットはあっさりと蹴散らしてしまった。
「凄い……」
ノラも必死に手伝ったが、殆どはマザーが倒した。やっぱりマザーは凄いなぁ、と憧れの視線を向けていたが……
『ぐっ!?……ごほっげほっ……』
「マザー!?」
突如ヴァイオレットは咳き込みだし、吐血した。しかし、眷属からの攻撃は食らっていない筈。
つまり、修道院の時と同じで、病の身で能力を使い過ぎた事が原因だ。
「マザー!?そ、そんな……」
『くっ……まさか、これ程に……うっ!?』
倒れそうになったマザーの元に走り寄り、その身体を支えるノラ。
すぐに救急車を呼ぼうとしだが、病院からは大分距離があり到着までかなり時間がかかるだろう。一刻を争う事態だ。ならば、このまま、病院へ引き返すべきだろう。悪魔の力を使って運べば、救急車よりも早く移動できる筈だ。
問題は誰かに見られるかもしれないということ。だが、マザーの命がかかっている。そんなこと、気にしていられない。
「マザー……今すぐ病院へ連れていきます。だから、それまで……」
口元から血を流し、呼吸を荒くするヴァイオレットを抱き抱えると、ノラは両腕を悪魔の物へと変え、背中から黒い翼を生やした。
129
:
フリューゲルス、セリエ
◆yd4GcNX4hQ
:2016/01/10(日) 21:00:51 ID:EQaCMdl60
出演:フリューゲルス、大宮陽子、桜井直人、黄昏向日葵、オセ
>>126
>>127
「────嫌よ」
「……今、なんと言いましたか?」
オセが何事かとフリューゲルスを見る。フリューゲルスは嫌だと言った。つまりはこの人間を殺さない、ということ。
そのフリューゲルスの言葉に、オセは同様を隠せない。
「何?聞こえなかった?嫌だって言ったの」
「何故…何故ですフリューゲルスッ!!
理由次第ではタダでは──!!」
遂に耐えきれなくなったのか、豹頭の頭を出し、牙を剥き出しにして怒鳴り散らす。しかしそんなオセを目の前にしてもフリューゲルスは依然としてその顔を崩さない。
それが更にオセを刺激し、今にも襲い掛かりそうな雰囲気まである。
「貴女は自分が何を言っているのか分かっているのですか!?
それはその家畜共の味方をするということになるのですよ!?!?」
「さぁね、私は自分のしたいことをしてるだけよ
私はアンタみたいに誰かの下につくなんて御免よ、私は──この翼で自由に生きるの」
フリューゲルスが言葉を紡ぐ、それに続くようにフリューゲルスの身体は本来の姿を取り戻していく。自由の象徴である翼、それはどこまでも白く、何モノにも染まらないフリューゲルス自身を表現していた。
右翼を横に広げ、その言葉が嘘でないことをこれが証明する。
だからこそ、それを見たオセは普通では居られなかった。有り得ない、悪魔でありながら家畜の、人間の味方をすることなど。オセにはそれは、まるで悪夢を見ているようだった。
「一回…痛い目を見せてあげた方が────」
「おっと、いいのかしら?」
フリューゲルスが何か合図すると、先ほどまで眠っていた大宮陽子が少し動いた。他の二人も同様で、刻一刻と目を覚ましている。
このままオセがこの場に留まれば、もしかすれば四対一という最悪な状況になりかねない。そうなってしまえば幾らオセでも勝つ見込みはほぼ無くなるだろう。
それを分かり、更に顔を怒りに歪ませるが攻撃はしてこない。
「ん、んぅ…こ、これは咲羽…さん…?」
「お、お前何、を……!」
「い、一体何が…な、直人サン…?」
遂に三人は目を覚まし、今の状況を確認しようと身体を起こそうとする。
流石に分が悪いと、オセはその場を離れようとする。しかし離れるその前、フリューゲルスへと再び向き直る。
「ちぃっ…フリューゲルス…ただで済むとは思わないことですよ…!!」
「はいはい、ベタな捨て台詞どうも
まぁルシファの奴隷のあんたに何が出来るのって話だけど」
そう言い残すと、オセの姿はいつの間にか無くなっていた。ふぅ、と一息つくと心が安心したのが分かる。
しかしこれからが大変だ。三人は既に目を覚ましている。今の会話からフリューゲルスがオセを追い払ったということは何となく分かるだろう。だがしかし、三人にとってフリューゲルスが敵では無いという確固たる証拠は何も無い。下手をすればここで成敗される、ということも有り得る。
しかも今のこの姿、APOHに関わりの深いものならば彼女が優先討伐対象に指定されていることは知っているだろう。
だがまぁもう後は流れに任せるしかない。つまりは、もう"なるようになれ"だ。
「えぇと…まぁ、皆大丈夫?」
130
:
桜井直斗
◆o/zdiZN8A2
:2016/01/11(月) 09:24:54 ID:u4smsiKA0
>>129
「ねぇ...これって...」
「咲羽...さん?」
「.........................」
状況があまり理解できないのか
大宮、黄昏、桜井はそれぞれ違う反応をする
その様子に咲羽は口を閉じる
どうなってもいい、という気持ちの表れか
「.......オイ、何のつもりだ。咲羽」
最初に口を開いたのは桜井だった
一番最後まで意識があった故に一番状況を理解できる
彼女は自分に大宮と黄昏に酷い事をさせる気だった
だが、今目が覚めたら他の悪魔を退けた...?
「何のつもりで────!」
「ま、待って! 桜井くん!!」
「そうっすよ! 直斗サン!!」
激情というか、強い怒りに近い感情に駆られそうになった桜井を大宮と黄昏が止めた
正義感は強い方だろう、自分の手で彼女達を傷つけられそうになったらな怒りは当然だ
「その...よく分からないけど...咲羽さんは私たちを...ッ!」
「守った...んですよねっ? 直斗サン落ち着くっすよ!!」
「....けどっ!」
それもまた事実、咲羽が後から現れた悪魔を追い払った
「...好きにしていいわ、もうルシファ側の悪魔にも目をつけられただろうし
.......狙ってくる相手が違うだけよ」
もう、後戻りはできない
贄となり得るAPOHの少女を見逃した上に同胞を追い払った
あいつが他の悪魔に報告した時点で自分は人間にも悪魔にも狙われる身になる
殺されても、いい
そう咲羽は諦めにも似た淡い笑みを浮かべていた
皆が口を噤んだ
怒りか、哀れみか、何とも言えない不思議な感情が渦巻く
「...咲羽さん...は、悪魔なんですね」
と、大宮が口を開いた
弱々しいが、目の前の彼女を確認した
「ええ...そうよ」
隠すことなく、答える
「........悪魔なら、APOHに報告しないといけません...でも──────。」
大宮にはそれが許されないと分かる
でも、それ以前に複雑な思いで
「私...咲羽さんを...」
彼女には殺されかけた
許されない、許してはならないと理解してるはずなのに
助けてもらった、気まぐれかもしれない
でも、今仲間もいない、たった1人になる彼女を見捨てても置けない
それが裏切りに近いと分かってる
人類に対する裏切りと────────。
少なくとも、その場にいた黄昏も
先ほどまで怒りに飲まれてた桜井もまた大宮が言わんとする感情に気付いた
そして、その感情を3人が共有してることも
131
:
沙希
◆gH01LWUntE
:2016/01/11(月) 12:40:00 ID:Y9DCRQiM0
夜は更けてすでに幾許かの時が過ぎ、人の往来も見られなくなる時間帯。
月の光さえも僅かしか届かない路地の奥で、ぼんやりと佇む姿が一つあった。
暗闇に溶けてしまいそうな豊かな黒髪とは対照に、セーラー服から覗く手足は白く目立つ。
同様に色素の薄い顔をしかめ、足元のソレを見つめていたのはまだ年端もいかぬだろう少女だった。
「ふむ、これはどうしたものか」
ぽつりと漏らす。まいったとでも言いたげに数秒目を瞑り、またソレへと視線を向ける。
真っ黒な、それこそ闇から生まれたようなソレは月明かりのお陰で朧げながら輪郭が窺える。
その形、大きさはまるで人が折り重なっているようで、その事が少女を悩ませていた。
「少々やり過ぎたのう。これでは人間か悪魔かの判別もつかん」
焦げ臭いにおいが微かに鼻腔をくすぐる。この場で起きていた小さな戦闘からまだそう時間は経っていない。
焼き尽くされたソレに、少し前まで縄張りの侵入者を排除せんと息巻いていた眷属の名残は一切見られない。
悪魔、もしくは退魔師との接触を計っていたためにわざと目立つように戦っていたのだが、それがよくなかった。
結果加減を怠ってしまい、一つの炭焼きが出来上がってしまった。それも誤解の可能性という不幸つきでだ。
これではやって来たのが人間だった場合、自分が悪魔で人間を襲ってしまったかのように見えてしまう。
今はまだ人間に目をつけられたくない沙希にとって、もしそうなってしまえば非常にまずい展開だ。
この炭焼きが眷属だと信じてもらえればまだ素性を偽れる目も出てくるのだが。
「仕方あるまい。どうにか誤魔化すしかなかろうよ」
切り替えるようにため息一つ、顔を上げた沙希に先程までのような葛藤は見られない。
先の戦闘は派手であった。空へと奔る光やこの眷属の断末魔はさぞ遠くまで響いたろう。
どちらが釣れるにせよ、そろそろいつ誰かがやって来てもおかしくはない。
焦げ跡一つない路地に、揺れる黒髪が月光を反射して妖しく輝いた。
132
:
ノーデイズ
◆xZ2R3SX0QQ
:2016/01/11(月) 14:55:44 ID:/hFq9EzI0
>>116
「――――あら、そんな所で突っ立ってどうしたのかしら?」
掲示板の前から動こうとしない男性が目に入った、七崎夢見は思わず声をかけた。
案内図の記載されている掲示板に目を通す姿から察するに、おそらく海馬市の人間ではない―――市外からやって来た人間なのだろう。
''どうしたのか''という質問は野暮であり、事実そんな問いかけをせずとも、彼が''どうしたのか''なんてことは、分かりきっていた。
然し、夢見の性格上―――というよりは''人間''性的に、彼が何をしているのかを聞かずにはいられなかった。
それは、単純な興味であり、同時にただの意地悪な性格の表れでもある。
つまるところ、七崎夢見という女性は目の前にいる男性が何故困っているのか分かっているにもかかわらず、あえて質問をしたのだ――――。
「それにしても今日は一段と寒いわね」
男性の冬着らしい冬着に対して、夢見の服装は白い学生服のみだった。
真冬の寒さを凌ぐには180度、どの視点から見ても不十分であり、あらゆる観点から争議しても、やはり不完全だろう。
そんな服装であれば、今日の気温を極寒の感じるのは常識の事実であり、当たり前の結果だ。
男のキャリーバックに目を向けながら、夢見は回り込むように彼と案内図の間に割り込み――――慣れた上目遣いで、男を見据えた。
その行動に意味はなく、しいて無理矢理後付けするのであれば、暖かな飲み物をくれというアピールだ。
133
:
春日 縁
◆ovLCTgzg4s
:2016/01/11(月) 15:27:03 ID:FZqbjWPA0
>>132
道を検討している間にAPOHの人間が来るか、とも思っていたが、矢張り来ない。
無駄遣いになるがタクシーでも捕まえるか、と思った矢先、声が聞こえた。
「……む。いや、市役所まで行きたいのだが、道が──」
背を向けながら、言葉を返す。
言葉を続けつつ、声の方向を向こうと思ったが──それより先に、彼女の方が回りこんで来た。
それにしても、で始まる言葉に、彼の言葉は打ち消される。
「それは……そんな格好では、寒いだろう。」
その女性は、一言で言えば“奇妙”に感じられた。
休日だというのに、学生服。部活の朝練か何かに向かうにしては、そんな風にも見えない。
何より、寒い、と言いながら、コートの1つも羽織っていないのは変だ。
「……。 自分は春日縁という。出来れば、市役所までの道を教えてくれないだろうか。」
急いでいる。──予定があるわけではなく、この地に来たことで、気が逸っている。
早く市役所に行きたい。彼女のことも、気にならないわけではなかったが、先ずはそっちの懸案だ。
──尤も、彼女が知らない、と言うのなら、彼としてはそこらの喫茶店にでも入って迎えを待つしかないのだが。
134
:
ノーデイズ
◆xZ2R3SX0QQ
:2016/01/11(月) 16:03:00 ID:/hFq9EzI0
>>133
「―――確かにそうね。でも、気に入ってるのよ」
そんな格好と評された自身の服装―――やはり、今現在の衣服は冬であればそんな格好扱いされるらい。
マフラーやコートでも身に付けていれば話は別だが。
兎も角、目の前にいる男性と比較すれば、自身の服装が薄着なのは明らかだった。
然し、気に入ってるので仕方ない。
そう割り切り、夢見は微笑して、外見の割に大人っぽい妖艶な雰囲気を醸し出し―――上目遣いを止め、男性に目線を合わせた。
冬の冷たな風に、時期外れの桜色をした髪がふわっと揺れ動き、それに合わせ良い香りが漂う。
夢見は動く髪を手で押さえると、大袈裟にその場から半回転して、男に背を向け掲示板に目を通す。
「市役所ねえ……。貴方は―――――春日さんは市役所になんの用事があるのかしら?」
市役所―――海馬市の市役所なんて行ったことのない、夢見はそんな質問を投げかけながら、薄汚れた案内図を見つめる。
場所を知らないなんていう答えを、春日に明かすのは簡単であり、特にこれといった抵抗もない。
然し、聞かれた手前、その目的地を探さずに知らないと突き放すのは、申し訳ないと思えた。
それ故に、夢見は誰が目を通しても読めない案内図を見て、適当に形だけであるが、市役所の場所を探しているのだ。
もっとも、掲示板越しの夢見の表情は妙なニヤつき顔であり、何かを企む悪女のそれに等しいものであったが――――――。
「………そうね〜、市役所の場所はだいたい分かったわ」
やがて数分の時が流れ、やっと夢見は春日に顔を向けた。
場所が分かったという割に、その位置を教えようとはせず、中々案内をしない夢見はただジッと男を見据える。
男が早く市役所に行きたいのをなんとなく察したので、夢見は意地悪をしているのだ。
135
:
大宮陽子(巫女さん女子高生)操作フリー
◆sF/KB3MJeA
:2016/01/11(月) 16:18:16 ID:1F1etlMs0
>>130
そして――
大宮陽子は常に持参している矢筒から一本の「矢」を取り出し、構える。
「私、咲羽さんを……
それ”でも”倒さねばなりません」
陽子の目が鋭く引き締まる。
黄昏も桜井にも、「咲羽は敵ではない。倒したくない――」という感情は共有していた。
それでも……大宮陽子はその感情に”裏切って”、彼女を倒す道を選んだ。
大宮神社100代の研鑽の末作られた退魔具・『震天護符矢』。
その矢を手にすれば、先ほどまで弱弱しく倒れていた少女の姿はない。
「陽子……へぇ、あなたは、『退魔師』だったのね……」
「……そうよ。」
今度は隠すことなく陽子は答える。
「待て! お前たち!」
桜井は悪魔化しつつある体に悶えながら体を起こして制する。
そんな桜井に、黄昏は体を支える。
黄昏は改めて目の前の悪魔を見る。――【魔鳥・フリューゲルス】。それは退魔師一人では太刀打ちできないほどの力を持った優先討伐対象である!
そのことを大宮は知ってか知らずか……
「大宮"朱御門"神宮家代々、悪魔に対して――許容の道はないわっ」
陽子は懐から護符――「九曜護符」の一枚、「火符」を取り出すと、矢に突き刺す。
矢からは聖なる炎が宿ると、陽子はフリューゲルスに突進していく。
「……あははははっ! 悪魔と人間……そんなくくりに縛られて生きるなんてゴメンだわ」
本来の姿となったフリューゲルスの指先から、氷の防壁が出現し、陽子の突進を阻む。
そして……フリューゲルスは窓をぶち破り、夜の街へ飛翔していく。
「陽子さん、サクライ君、あと誰かさん?
私は自由を愛する蒼銀の鴉・フリューゲルス。
捕まえられるものなら、捕まえてごらん……!!」
月の向こうに飛んでいくフリューゲルス。
彼女一人でも三人を殺せる自信はあった。
しかし――せっかくの学校生活も慣れてきたのに、せっかく知り合ったクラスメイトを殺すなんてツマラナイ。
「ふふ……あの驚いた表情。自分の気持ちを裏切ってまで使命を果たそうとする姿……
ああ……人間って、イイわ。
もっと知りたいナ。あなたがた、”人間”のコト……」
おそらく彼女は、また明日以降もしれっとした顔で学校に通う事だろう。
そうなったら、直斗や陽子はどんな顔をするだろう?
それを想像すると、楽しみでならない。
「〜♪」
破滅の歌を歌いながら、月下フリューゲルスは飛ぶ。
この街の人々を悪夢に苛みながら――
× × ×
取り残された直斗、黄昏、そして陽子。
フリューゲルスがぶち破った窓から、寒い冬の風が吹きすさぶ。
「お、俺……」
悪魔化した腕はすっかり人間のものに戻っている。
三人が目撃した「オセ」と呼ばれる豹頭の怪物の存在。悪魔は、この海馬市を、確実に侵略しつつあるのだ。
「桜井君、あなたって……」
陽子は眼鏡越しに冷たい目線を桜井に向ける。
その視線に立ちふさがって、黄昏は桜井の前に立つ。
「この人のコトは、アタシが預かるから」
「預かるって……?」
「悪魔に簡単に眠らされて不覚をとっちゃうような、だらしないセンパイには、任せられなってコト」
「――っ!」
陽子は思い出した。
明るい金髪に褐色の肌。あれは、新しく転校してきた退魔師の――
「いい? 桜井君のコト、APOHにチクったら、たたじゃおかないからね!」
陽子はふと、風祭から効かされていた「黄昏向日葵は防衛庁から派遣されたお偉方の子息」という事を思い出す。
陽子は溜息をつきながら、眼鏡の位置を戻す……。
136
:
春日 縁
◆ovLCTgzg4s
:2016/01/11(月) 16:23:24 ID:FZqbjWPA0
>>134
──鼻腔を擽る甘い香りは、苦手だった。
この匂いは、嫌でも“あの子”のことを思い出す。微かに目を細め、彼女に目線を合わせた。
「引っ越して来たんだ。住民票を移さなければならない。」
悪魔を狩りに来たから、その本部に顔を出すのだ!──と、まさか言うわけにもいかない。
悪魔絡みとなれば分別を失う、と言われるにしても、そこまでの馬鹿でもないのだ。
納得できる理由だが──聞く者によっては、返答の早さは、用意されたようにも聞こえるものだった。
それから、数分。腕を組みながら待つ男と、地図を見る彼女と、周囲の風景が流れる。
「……! 本当か、教えてくれ!」
地図が苦手でもない自分でも手間取った場所がわかる、というのは、地元民の長だろうか。
少し驚いた表情で、春日は食いつく。──だが、彼女はじっと、此方を見るだけ。
謝礼でも要求されているのだろうか、確かに世の常ではある。だが、
「──済まないが、手持ちはそれほど多くない。
後から渡すか、それか、何か物をここで……と言っても、“これ”位だ。」
真面目な顔で指差したのは、自身の首元に巻いている青いマフラー。
京都の西陣かどこかの、結構高価な物の筈だ。──と、春日の頭は算盤を弾くのだが。
目の前の彼女が、単にからかおうとしているだけ、という可能性は、全くの埒外だった。
137
:
ノーデイズ
◆xZ2R3SX0QQ
:2016/01/11(月) 16:53:54 ID:/hFq9EzI0
>>136
「へぇ……ふぅん……。言葉''この時期''に引っ越しなんて、貴方もついてないわね」
男の返答を聞いて、''まあ知っていた''といった表情を浮かべながら、意味深な台詞を吐く。
それの真意に気付く可能性はほぼゼロに等しいにしろ、普遍的な人間であれば疑問を感じるであろう。
然し、逆に何かしら悪魔に関連している人間であれば、その言葉に疑問符を付けることはない――――何故なら、ここ最近、海馬市では悪魔が蔓延り始めた故に、そういった人物達からすれば、''ああ、確かに悪魔が侵食を始めた時期だな''で終わるからである。
もっとも、後日違和感を感じるのは十中八九だが。
「あー………………………いや、いらないわよ。
なんか臭そうだし」
別に金銭目当てではなかったのだが―――どうやら、目の前にいる男性は頭が固い人物のようだ。
指差すマフラーを渡すと言われたが、そういった意味で意地悪をしたわけでもないので、受け取るわけにもいかない。
夢見はなるべくストレートに男性を傷付ける言い方で、ご厚意を蹴り飛ばした。
そして、漸く場所を教える気になったのか夢見は一度髪を耳に掛けると、軽く溜息を吐き、向かって右側を指差す。
「あの道を真っ直ぐ歩くと喫茶店があるわ。
確か――……名前は忘れたけど、とりあえずその喫茶店から向かって左、そしたら私立夜桜学園って高校があるから、夜桜学園の向かって斜め右方向に進みなさい」
デタラメな道順である。
夢見の教えた道は適当な作り話であり、そんな行き方をしたことも、聞いたこともない。
地図を見れば明らかであり、いくら薄汚れた案内図であろうと、それを見れば、夢見の話が嘘であることが容易に分かるだろう。
然し、今回夢見の話した道は地図にない市役所の行き方の一つであり、言う通りに進めば市役所に辿り着けるのだが――――――当の本人はそれを知らない。
138
:
春日 縁
◆ovLCTgzg4s
:2016/01/11(月) 17:16:11 ID:FZqbjWPA0
>>137
いらない、と言われれば、真面目な顔で「そうか、有り難い」と返すだけ。
──彼女からすれば、期待はずれな反応か。嫌味は通じていないらしい。
指差す方向を見て、道順を頭に入れる。まっすぐ、左、斜め右。バッチリ。
「なるほど、見事なものだ。十分ほど地図を見ていたのだが、さっぱりだった。
重ね重ね──む。……そう言えば、名を聞いていなかった。
出来れば、名と、“もう1つ”、教えて欲しいことが有るのだが──」
「“この時期”とは、どういう事だろうか。」
──顔は笑んでいて、瞳の奥も笑っている。
単に“鼻”が利いただけだ。それも、微か。一応尋ねておけ、と。
頭はそれを受けて、「悪魔絡みの事件の話でも聞ければ上々」という程度にしか、受け取ってはいない。
何か、適当な言葉さえあれば、それで納得して終わるだけの話だった。
139
:
秋宮渚 桜井直斗
◆o/zdiZN8A2
:2016/01/11(月) 17:31:37 ID:pkdsPVGg0
>>135
「──────えっ?」
思わず顔を上げる桜井
黄昏が退魔師というのは知っていた
だが大宮までもがその手の人間だとは知らなかった
...いや、家が神社だとは聞いていたがまさか
でもAPOHの人間なら自分は見逃されない
悪魔と知られたらもう終わりと思ったのに────。
「桜井くん。事情は聞かせて貰うからね」
「ちょ、ちょっと待てっ! ...その、いいのか?」
「...........事情があるんでしょう。黄昏ちゃんが見逃してるって事は」
「ご名答っす! 先輩!」
ため息をついてこめかみを押さえる大宮
こうやってクラスメイトの悪魔が続々出てきて気苦労が溜まるのもおかしくないが
更にAPOHのお偉いの子が悪魔を庇うなんて
いや、でもこの桜井くんも悪魔らしさは感じないが
「ほら、話してみて。 桜井くん嘘つくの苦手なの知ってるから
何があったか、聞かせて?」
「あ、あぁ...それは────。」
そして彼は語った
数週間前から見出した夢
自分を導く男────おそらくルシファとやらが自分を導く夢
そして、夢を見で人を喰い殺す
それが続いたある日、本当に自分の体が────。
身体が言うこと聞かず、暴れた末に名前も知らない誰かを────。
その後であったAPOH職員の男
そして、咲羽と会い
黄昏とも出会って────。今に至る
「その...悪かったな。俺が素直にAPOHに自首してりゃ迷惑かけなかったな...」
怖かった、何が起こってるのか分からない自分の体が
一度は誰も傷つけないと誓い、強くなろうと思ったのに
これじゃあ、ダメだと
こんな俺じゃあ誰も守れない、傷付けるだけだと
そう、自嘲気味に笑った
140
:
ノーデイズ
◆xZ2R3SX0QQ
:2016/01/11(月) 18:05:14 ID:/hFq9EzI0
>>138
「あら……」
期待していた反応とは違う彼の態度に、思わず意表を突かれる。
これならば、やはりマフラーを貰っていた方が損得の二極で言えば、得していたかもしれない。
頭が堅いという単純な話ではない――――頭も心も無機物なのではないかと、夢見はそんな感想を抱いた。
悪魔だろうが人間だろうが、こんなにも弄りようのない鋼を具現化したような人物はそうそういない。
良くも悪くも文字通り堅いようだ――――――。
「あら、お礼を言った直ぐに名前を聞くなんてナンパのつもりかしら?」
先程までの意識した意地悪ではなく、今回は純粋な揶揄いのようで――――夢見は笑みを浮かべながらおもむろに指を自身の唇に当てた。
「――――――――――――」
然し、その笑みは春日の言葉により忽然と消え、代わりに表れたのは不気味な微笑みで―――夢見の微笑は人間のそれとは本質的に違っており――全く別の生物にも思える、本能的に違和感を感じれるような、そんな笑顔。
明らかにホモサピエンスではないそれは、人類の種を滅ぼしかねない魔の破顔。
冷たく冒涜的な禍々しい雰囲気を醸し出す、女性は悪女と呼ぶに相応しいだろう。
もっとも、この悪女とは''悪魔の女''の方をさしているが――――――。
「この時期はこの時期よ。
寒さが増した時期、風が強くなった時期、風邪が流行り始めた時期、学期末テストの時期、冬終盤の時期、不可解な事件が多発する時期―――――ありとあらゆる意味が込められた時期よ」
瞳は春日を見据え、その場からは動かず、ただ口のみが淡々と開き閉じ、只管それを繰り返す。
発する声量は変わらず一定であり、波もない―――起伏の皆無な直線で、春日の耳に侵入する。
桜色の髪すら風邪が吹こうが揺れることはなく、銅像の如き佇まいで、全てを言い終えると、女性は―――夢見は再び笑顔を見せた。
141
:
春日 縁
◆ovLCTgzg4s
:2016/01/11(月) 18:31:36 ID:FZqbjWPA0
>>140
「そうか。」
この遣り取りは酷く空虚で、何らの意味を持たないものだった。
“あなたは誰ですか”“アルファであり、オメガです”“それはよろしいことで”──それと、全く変わらない。
言葉面を捉えれば、巫山戯合いにも似ている。表情を見れば、彼らは笑んでしかいない。
“確かめる”ことをしなかったのは、今がその刻ではないからにすぎない。
その刻とは、その刻だ。
空を日が照らす刻、体制が整っていない刻、不可解な事件がまだ起こっていない刻──
「……いや、ナンパではない。
単に、礼を尽くすべき相手の名を知らないのは、非礼だと思っただけだ。
告げたくなければ、それでいい。道を教えてくれて、感謝する。」
── “こんな刻”でなければ、既にどちらかの血が流れているだろう。
春日は姿勢を正し、折り目正しく、礼をした。
顔を上げれば、彼女が内心、鋼と称した頑なさとはミスマッチな若さ。
よく通る声が風を震わせる。──彼女の笑みと合わせるように、彼は口元で笑んで、“お仕着せ”は完成していた。
142
:
ノーデイズ
◆xZ2R3SX0QQ
:2016/01/11(月) 18:53:29 ID:/hFq9EzI0
>>141
「堅いわね、貴方」
最早興味はないのか―――無意味な虚無の押し問答の果てに見出した彼に対する評価は退屈であった。
揶揄いようもなければ、此方の性格に合うわけでもない。簡易的に言えば気の合わない人物だ。
そのような者と話そうが楽しめるわけはなく、今回のみの関係だけ見れば、二度と関わろうとは思わない。
然し、七崎夢見は再び彼に声をかけるだろう。
それは、七崎夢見と呼ばれる女性が―――――悪魔が純粋に人間が好きであり、人間に興味があるからだ。
今後、彼がどのような数奇な運命を辿るかを見届けるためにも、やはりまた出会いに行くに違いない。
「私の名前は七崎夢見。
次会ったら、ゆっくりお話しましょうね」
次回会うときは、おそらく悪魔としてだろう。
その時は、七崎夢見といった通名ではなく真の名を――――――メフィスト・フェレスを名乗り、無意味で虚無な言い合いではなく、もっと別の、意味のある話し合いをするに違いない。
女性は自ら名乗るとゆっくりと背を向け、案内した道とは真逆の方角へと足を進めた。
/こんな感じで〆でしょーか。
ありがとうございましたっ
143
:
春日 縁
◆ovLCTgzg4s
:2016/01/11(月) 19:32:46 ID:FZqbjWPA0
>>142
「……七崎夢見、か。」
去りゆく彼女とは逆の方向へ背を向け、縁は小さく呟いた。
覚えておくべき名だろう。この地に来て、初めて出会った人物の名として。
或いは、道を教えてくれた、親切な人物の名として。 或いは──
「この地の悪魔は、全て討滅する。」
── 自らが、退魔師である意義として。
◆ 以下、余談
その朝の風祭一太郎は、ご機嫌だった。
年中悩み事を抱える彼にとって、ご機嫌とはつまり、大挙する諸懸案の姿が未だ、見えないことである。
だから、朝は総じて機嫌がいい。昼になるにつれ、胃が痛くなる。夜には、頭が痛くなる。
──兎に角、今日も気持ちのいい朝だった。
海馬市の環境は良好。加えて今朝は、一時間後に新人の迎えにさえ行けば、昼まで予定がない。
この新人が中々面倒な事情を抱えているのだが、風祭には、そんな事慣れっこだ。
「……そうだ、時間もあるし、珈琲でも淹れましょうか。プロテインも入れて。
駅から真っすぐ行って……あれ、おかしいな。名前が出て来ませんね。
とりあえず、夜桜学園の手前のあの喫茶店で、挽いて頂いた豆が確か──ありましたありました。」
会議室の棚にしまっておいた、コーヒー豆。
こだわり抜いた物らしく、結構な値が張ったが、つい手が出てしまった。
気持ちのいい朝には、こういう珈琲がいい。袋を開け、芳醇な匂いに包まれながら──
「── 頼 も う ッ !!」
大音声。
「う わ あ あ あ あ っ !?」
それと、35歳のガチビビリ声。
──風祭一太郎を、今日、初めて悩ませることに相成ったのは。
扉を開けた、一時間後に迎えに行くはずの青年と、雲霞の如く飛び散った、コーヒー豆の薫りだった。
/最後遅れてすいません、ありがとうございました!
144
:
マバハリファ(舌使い巨漢悪魔)操作フリー
◆sF/KB3MJeA
:2016/01/12(火) 02:41:47 ID:7QPK/UJo0
>>131
「んあ……なんか叫び声が聞こえたと思ったラ……
女の子、いるじゃねえノ……」
太った体を震わせて、褐色の肌は夜の闇に融けていた……。
悪魔・マッドファット・ハリファは、深夜だというのに人間に擬態している。
その方が「女の子に会っても、気持ち悪がられない」からなのだが……。
巨漢に冬でもタンクトップに短パンという服装は、女性でなくても奇異に映ることだろう。
「んんー? ……火事カ?」
人が引っ越したのか、空き家の連なる寂しい路地の奥で、焦げ臭いにおいが漂っている。
その中心に美しい少女がいるのは、なんとも奇妙な光景だ。
「……へへ、きれいだなあ。こんな夜更けに、女の子が一人いるなんて」
男は、長い舌を舌なめずりして、じりじりと近づく。
なるべく気が付かれないように、そっと……のつもりだが、
男の異様な体臭と、その巨大な体から発する足音では、とうてい気が付かれない、なんてことはないだろう……
それでも男はこっそりと近づき――不意をついて女の子にとびかかろうとしていた。
雑なやり方だが、驚くべきことにこの悪魔はこうした雑なやり方でいままで何人もの女性を攫う事に成功していたのだった!!
/置きになります。明日の昼から夕方にかけて返せる時間がありますー
145
:
沙希
◆gH01LWUntE
:2016/01/12(火) 14:04:58 ID:Y9DCRQiM0
>>144
「…………ふむ」
どれだけの間佇んでいただろうか、その時間が長いほど変化というものは目につくものだ。
静寂に包まれた路地の奥では、小さな物音でもひどく響く。
少なからず警戒していた沙希にとって、忍び寄る気配に気がつくのはそう難しくなかった。
むしろあからさまに襲いかかろうとしている相手の動きに、戸惑いを覚えるほどであったのだが。
しかし人間か悪魔かの判別がつき易いというのはありがたい。焦げ臭いにおいとはまた別の異臭も、相手が人間ではないと告げていた。
「女子(おなご)を狙うのは結構だがのう、もう少し相手を選ぶべきじゃな」
焼け焦げた眷属から顔をそむけず、しかし注意だけは男に向けたまま言い放つ。
その言葉に敵意はない。しかし牽制と警告を含んだ鋭さが言外に含まれていた。
少女の顔を覗き見たならば、さも愉快そうに頬を歪めているだろう。
「それとも、お主も縄張りのために私を追い出そうとでもするつもりか?もしそうであれば………」
言葉を切る。そうして初めて男の方へと振り向いた少女の表情は、やはり楽しそうに嗤っていた。
ほぼ同時、その背後が途端に明るく光る。次いで放たれるのは静かな夜に似つかわしくない熱。
大きく揺れた黒髪が、ふわりと舞い落ちるまでの間に銀色へと染まっていく。
顕れる獣の耳と9つの尾は、彼女が人間ではない事を如実に表していた。
「こちらとて、容赦するつもりはないぞ?」
高熱、そして光。渦巻く炎が湧き上がり、少女の後方でとぐろを巻く。その傍らに寄り添うのは蒼い焔の小さな狐。
月明かりで曖昧だった影が輪郭を持ち、長く伸びてゆらゆらと路地に踊った。時代錯誤な十二単は熱風を浴びても焦げ一つつきはしない。
悪魔に悪魔と知られるのは構わない。しかし下手にこの姿を人間に見られるのは沙希としては避けたい事態。
故に可能な限り、この場を穏便に収めておきたい。笑みを絶やさぬまま目を細め、明るく照らされるだろう男の反応を窺った。
146
:
マバハリファ(舌使い巨漢悪魔)操作フリー
◆sF/KB3MJeA
:2016/01/12(火) 15:12:04 ID:Zz7fGU1w0
>>145
「!?」
突然の高熱と光に、悪魔男の目がくらむ!
「目……目があ!!」
太った男は顔を手で覆い、あちこちに頭をぶつける。
その衝撃で、路地の廃屋の壁に穴が開いていく。
「ぐぶぶ……お前、ナンだぁ? 人間じゃあ……ないのかあああ?」
そういうと、目を覆いながら、男は真の姿を見せ始める……
タンクトップははじけ飛び、3メートルはあろう巨漢の悪魔の頭からは山羊の角が生え出る。
左右の路地の壁を破壊し、庇部分を頭で突き抜けながら、不自由に路地にハマっている――計算外だったのか、身動きがとれない!
「フンガー!」
男は左右の邪魔な壁を、巨大な舌を鞭のようにしならせて破壊する。
周囲は山村で、廃屋が多い集落とはいえ……
先ほどの光と炎、そしてこの騒ぎでは、寝静まった人間の誰かも気づいてしまうかもしれない。
「おいら……アクマ……
ハリファっていう……
お前、穢れなきオンナノコ、思ってたけど違う
……思ってたんとチガウ!!」
怒りのまま、巨漢悪魔はドシドシと狭い路地の奥に、その長くて太い舌――《レイジー・タン》をのばし、叩きのめそうと攻撃を仕掛ける!
相手の姿を見れば、高位な上級悪魔という事も察せられたのかもしれないが……
相手をよく観察するという習慣が、光で目がくらんでいるこの悪魔にはなかったようだ……。
/お返事は深夜になってしまいますー置きですみません
147
:
沙希
◆gH01LWUntE
:2016/01/12(火) 18:20:19 ID:Y9DCRQiM0
>>146
「阿呆め、お主が勝手に勘違いしたのであろう
恨むのならば己の不運と浅慮を恨むのだな」
突然の変貌に惑う男に呆れたように肩をすくめて見せ、しかし油断なく目を逸らさない。
その間にも召喚した身の丈ほどの管狐《黄燐の狐火》に横乗りになり、不慮の事態にも備えておく。
こうして機動力を確保しておかなければ、悪魔内でも身体能力の低い沙希では戦闘についていけない。
しかし男の無差別な破壊活動になにも感じていないわけではない。ただそこには情も憐憫もなく、ただ自身の事を考えてだが。
「ほう、名乗る程の知性は持ち合わせているのだな。
ならば応えてやろう。当代の我が名は沙希、かつて戦乱を幾度か招いた一介の悪魔よ」
長く伸びる舌の振り下ろしに反応した管狐が身を翻して後方に飛び退く。路地裏に一際大きい轟音が響き、中途半端に舗装された道路に爪痕を残す。
自然と背後の炎に飛び込む形になるのだが寸前でまるで幻のようにかき消え、残されたのは真の姿を現した少女と金毛の狐、そして蒼く揺らめく子狐だけだ。
これだけの騒音、そして立て続けの閃光となればいつ人がやってきてもおかしくない状況。顔に出さないまでも内心で歯噛みする。
《蒼燐の狐火》の効果で男以外が熱でやられる事はないが、ここまで派手にやってしまえば話は別だ。
ならば道は2つに1つ。そして決断に許された猶予はあまりに少なかった。
「私が違うというならば諦めて次を探せばいいではないか。
それともここで果敢に私に挑んでみるか?決着がつく前に人間がここにやってくるだろうがな。
人に見られるのはお互い本意ではないだろう?」
選んだのは会話による戦闘回避。短期決戦は分が悪いと睨んだ末の結論だった。
先程までの戦闘音に紛れて人の接近に気がつけない場合や他の悪魔まで乱入してきた場合など、彼女にとって危惧すべき事が多すぎた。
もちろん交渉決裂に備え、いつでも反撃できるように構えは取ってある。
遠く、表通りの方から微かに数人が駆けつけて来る音が男には聞こえるだろうか。
148
:
マバハリファ(舌使い巨漢悪魔)操作フリー
◆sF/KB3MJeA
:2016/01/13(水) 01:10:33 ID:fZ6SeY/I0
>>147
「沙希……サキ、だぁ?」
巨漢悪魔はふと、あばれる動きを止める。
薄目を開けて見れば、銀髪赤目の九尾狐がにらみつけている。
「お、おめえ……ルシファ様がかねてからウワサしているはぐれ悪魔だナ……
ルシファ様はおっしゃってたぞ。
――九尾の老婆はセケンと言うものを知らナイ、ってナ」
ルシファに忠誠を誓わない悪魔の中でも有力な悪魔であった彼女のうわさは、彼程度の悪魔の間でも知られていた。
だが、彼女の強さや世界へもたらした影響力を、長らくルシファに使えているこの男にとっては過小に評価していた。
「おめえも地震で封印が解かれて自由に動けるようになったんだろ?
ルシファ様の計画に協力しろよぉ。
おいらなんか、もう4、5人は女の子を攫ったぞぉ。
もっとも、7、8人は殺しちまったがなあ」
男の背後の後ろで、悲鳴を上げる声がする。
数人が火事と破壊音を聞きつけてやってきたのだろう。
だが、巨漢悪魔はそちらに目をやることなく、巨大な舌をグルンとまげて、やってきた人間に重い舌の一撃を食らわせる。
人間たちはその人舐めに――衝撃もあったがそれ以上に、まるで魂が抜かれたように失神し、その場に倒れる。
人間相手ならそれなりに圧倒的に戦える能力を持っていることが、彼自身を増長させることになっている……。
「おめえみてえな役立たずの悪魔……ルシファ様は面白くおもってねぇぞぉ。
ルシファ様はこの街を、魔界に変えるために特別な術をかけてくださってるんだ。
おめえもカッコつけてねえで、女の子攫ってくるんだな」
お互いの力量差も測れない巨漢悪魔は、脅しのつもりなのか……今一度巨大な舌で彼女を巻き付かせようと口を大きく開け、
その異様な舌を伸ばしてきた!!!
戦闘回避、と言うような情緒は、この無粋な悪魔には持ち合わせていなかったようだ――。
149
:
大宮陽子(巫女さん女子高生)操作フリー
◆sF/KB3MJeA
:2016/01/13(水) 02:00:35 ID:fZ6SeY/I0
>>139
出演 桜井直斗 黄昏向日葵 大宮陽子 風祭一太郎 華野平馬
「自首なんて……直斗はなにも悪いコトしてないんだから、
そんなこと気にする必要ないよっ!」
そういうと黄昏向日葵、桜井の手をぎゅっと握る。
陽子は「あれ、この子いつの間にか『直斗』って呼び捨てにした……?」と思いつつも、顔を曇らせる。
――マンションの窓はぶち壊れているし、また【オセ】と【フリューゲルス】はいまだこの街に潜んでいる。
直斗の事を報告しないようこの事件の事をどう説明したものか……
そう思案していると、向日葵が陽子にぐいっと近づいてきた。
「とゆーわけで、センパイの家に直斗を匿う、つーことで、いいよねっ?」
「……は――ァ?」
素っ頓狂な声をあげる陽子。
「お、おい、それはどういう事だよ」
直斗も向日葵の唐突な案に目を丸くする。
「だって、直斗の家はこんなんだし、咲羽先輩に家がバレちゃってるわけでしょ? こんなところには居られないわ。
陽子センパイの家、すっごいでかいお屋敷に住んでるんでしょう? ここに来る前、APOHの風祭さんから陽子センパイについていろいろ聞いたんです。
だったら、そこに行けばいいんじゃないかなーって」
陽子はグイグイくる向日葵に閉口して
「ま、待ちなさいよ、私の家は古い神社ってだけでお屋敷っていうか……確かにだたっ広いけど――」
すると向日葵は陽子の手を取り、
「じゃあ決まりね! 退魔効果のある神社なんだから、直斗の悪魔化? も防げるかもしれないし」
「お、おい、いい加減にしろ黄昏! 俺は……」
「そうよ勝手に決めないでよ! そ、そんな、男の人を家にいれるなんて……男の人と一緒に暮らすとか、あ、アタシ……」
陽子は顔を赤らめて焦るが、向日葵はキョトンとした顔をして
「何言ってるのセンパイ。私も直斗と一緒に住むから」
と、直斗の腕に抱きついてニッコリ笑う。
「ハ――ア?」
「だって、直斗は私が預かるって言ったじゃないですか!
私もちょうどこっちに来て住むところ探してたけど、センパイの家なら二人くらい人が増えても問題ないでしょ?
それに、いざ直斗に何かがあっても、退魔師二人がいれば心配ないし。
……APOHにはアタシがいろいろ話しつけておくからぁ、センパイも直斗も、この黄昏向日葵に任せてくださいよ」
呆然とする直斗と陽子。
そして、二人はなんとなく悟る。
この娘、一度決めたら、トコトン意見を変えないタイプだ――と。
× × ×
「……というわけなんで、以上が報告でーす。ハンコくーださい」
ニコニコした顔の向日葵が、苦笑いを浮かべている風祭に一枚の紙切れを渡している。
「つまり……黄昏クン。えーと、その……悪魔の襲撃に巻き込まれた男子生徒を保護するために大宮君の神社に匿う、と
……いやあのね。こういう事はAPOHの方で丁寧に処理するから、そういう班があるから……」
「だって、直斗はすっごく心に傷を負ってるの! こういうのは同じクラスメイトが癒してあげないと!」
「クラスメイトったって、君はこの街にきてまだ……」
「大丈夫! 大丈夫ったら大丈夫だから! あー……余計な詮索したら、ただじゃおかないからね」
風祭は、ヤレヤレと言った顔で、やむなくルーズリーフに蛍光ペンで満載の手書きの報告書にハンコを押すのであった。
//ちょっと分割
150
:
大宮陽子(巫女さん女子高生)操作フリー
◆sF/KB3MJeA
:2016/01/13(水) 02:01:14 ID:fZ6SeY/I0
>>149
かくして、陽子と祖母がつつましやかに暮らしていた大宮神社隣接のお屋敷に、騒がしい二人のクラスメイトも同居することになった。
口数も少ないが機敏に動く祖母のおかげで、直斗と向日葵にあてがわれた部屋は綺麗に掃除されており、日常生活を送る分には何の支障もなさそうだ。
向日葵はさっそく自分の部屋を自分流にアレンジし始めている……。
直斗も、戸惑いはしたものの、この神社の聖域の力なのか、今のところ魔力が暴走し変身する予兆がない事に、とりあえず安堵はしていた……。
一方陽子は、これから毎日「男の子」と暮らすことに困り眉であった。「おばあちゃん……どうしよう……」と祖母に相談するも、祖母は「ふぉっふぉっふぉっ」笑うばかりだ。
二人の退魔師と一人の悪魔の奇妙な共同生活は、こうしてはじまってしまった――
× × ×
「――ええ、監視はつけてますよ。あの少年の部屋に、なぜ二体もの悪魔が同時出現したのか……。
ええ、”黒獣”の目撃証言と、DNA解析、そして予測される活動範囲から考えて――ええ、あくまで可能性です、可能性……」
通信機で会話していたのは、細身の長身のスーツの男……特殊工作任務についている華野平馬だ。
通信機を着ると、大宮神社の屋敷を遠目から眺める。
「さ、先にお風呂に入ってるって言うなら言いなさいよ!!」
「お、俺は黄昏に先に入るって言ったぞ!」
「センパイ、なに直斗のお風呂覗いてるんですかー」
にぎやかな喧騒を双眼鏡越しに眺めつつ……
「……考えすぎ、か」
そう呟きながらも、鋭い眼つきに、ゆるみはなかった。
//こんな具合で物語ロールシメてみましたがいかがでしょうか?
151
:
沙希
◆gH01LWUntE
:2016/01/13(水) 12:09:56 ID:JeQEqack0
>>148
「ふむ?お主のような者にまで知られているとはな。私もまだ捨て置いたものではないのう」
巨漢の自分を知るような言葉に意外、と言いたげに目を丸くする。
彼女もまた、封印されている間にどれだけ自分が後世に伝わっているかまだ知らない。
人の噂も七十五日などと言うが、まさか千年にも渡って語り継がれてるとは思いもよらなかったのだ。
しかし沙希とて昔から悪魔間でも悪目立ちしていた自覚がないわけではない。そこまでの動揺を見せるまでには至らなかったが。
「悪いが私はお主らの計画とやらに興味はないのでな。
それに彼奴になんと思われようと、私の知った事ではないわ」
ただの挑発か、それとも本気か窺い知れない誘いを鼻で笑って受け流す。言葉を続けながらも相手の観察と分析は絶やさない。
人間がやってきた時こそ露骨に眉を寄せたが、男の舌の一撃には予想を裏切られたらしく僅かに驚きが顔に浮かぶ。
目撃者の気絶はありがたい。しかし傍から見る限りそれほどの威力があるようにはどうも思えない。
そこからの推論を確信づける前に伸ばされる舌に、もはや戦闘は不可避と考えざるをえなかった。
「だから相手を選べと言っておるだろうに。
仕方ないのう。そこまで言うのならば受けてやろうではないか」
幸い他に人が近づいてくる兆しはない。交渉の道はすでに閉ざされた。ならば選ぶ手段は一つだけだ。
男の豪胆とも軽率とも言える言葉の数々に多少なりとも感じるところがあったというのもあり、容赦する気などさらさらない。
喚び出された《白燐の狐火》が蒼狐と並び後方に控える。蒼と白の子狐は路面を幻想的に映して揺らめいた。
迫り来る舌に動じる事もなく、迎え撃つのは冷寒の炎。路地裏の気温が格段に下がったと感じるのは気のせいではないだろう。
燃え上がる炎が全てを凍てつかせんと、舌を狙いに定めて襲いかかった。
152
:
桜井直斗
◆o/zdiZN8A2
:2016/01/13(水) 18:34:58 ID:if7ZXLvA0
『桜井! 放課後はサッカー部来いよ!』
『悪いっ! バスケの方も頼むぜ!』
『スマン桜井君、新人教えるのに手が足りないんだ。是非カバディ部に...』
久々の登校は心身ともに疲れるものだった
何サボってたんだと教室に入った直後に友人達とレスリングになり
その後、放課後の部活助っ人予約で一杯になった
授業もすっかり遅れてしまい
いずれ来るテストが本当の悪魔に見えそうなくらい勉強も疎かになってた
「えーっと...まず最初にサッカー部で...?」
私立夜桜学園
普通教棟、屋上
そこに息の上がった男子生徒が1人
丈を少々短く、アクセサリーを付けて改造してある学ラン
長めの前髪をピンクのヘヤピンで止めている茶髪の少年だ
時刻は4限目が終わって昼休み
学生憩いの昼食どきである
そんな彼はスマホにメモった放課後の地獄部活助っ人メニューを眺めていた
彼をよく知る人物なら分かるが、彼は特定の部活には入っていない
代わりに多くの部活の助っ人としてよく駆り出されているのだ
あのままでは運動部だけでなく文化部までやってくる勢いだった
なので4限目終了と同時にダッシュでここまで来たのです
「さぁってと...まぁ昼飯昼飯っと。いただきます」
彼は片手に持っていた弁当箱を開いて陽当たりの良い場所に腰掛けて
手を合わせて、いただきます
うん、色鮮やかで美味しそうなお弁当だ
彼はつい昨日まで一人暮らしの身だったが今は訳あって同じ学校の女生徒2人とそのうちの1人の祖母と自分
つまり4人で生活している
こうやって弁当がある昼休みも、彼にとっては新鮮だった
今まで購買のパン争奪戦が無い昼休みとはここまで平和なのかと思いつつ、一口
「うまっ...」
と思わず口に出す
なんというか、凄く優しい味だ
機械的では無い、人の心? みたいな物を感じる
地味に人の温かみを覚える弁当って凄く久し振りなのかとも思いながら、もう一口
うん、やっぱり美味い
そういえば、家を出るときには用意されてたけど誰が作ったのだろう
なんて考えつつ、平和な昼休みを過ごしていた
153
:
春日 縁
◆ovLCTgzg4s
:2016/01/13(水) 19:18:26 ID:FZqbjWPA0
>>152
直斗が学校を休んでいる間、クラスには一人、転校生が来ていた。
クラスメイト達との顔合わせは済んでいるらしく、彼に改めて紹介されることこそなかったが。
それでも、存在ぐらいは認識しただろうし──少し、“目の合う”回数が多いな、とは、感じたかも知れない。
「お邪魔する。──昼ごはん、一緒にいいだろうか。」
──その転校生。春日縁が、屋上の扉を開け、声を掛けてきた。
パンの袋を右手に、牛乳パックを左手に。当然のように、直斗に向き合って座る。膝詰めのような格好だ。
「粗方でしかないが、話は聞いている。災難だったな。」
どうも、“何らかの前提”で話を進めている様だが、直人には話が見えないだろう。
彼を巡った勧誘戦争の話だろうか。それとも──直斗の身に最近起こった、“変事”に携わる、それか。
どちらにせよ、初めて会話する距離でもなければ、内容でもないものだった。
/8時台に一旦落ちますが、宜しければ……!
154
:
マバハリファ(舌使い巨漢悪魔)操作フリー
◆sF/KB3MJeA
:2016/01/13(水) 19:26:11 ID:hT2YRp6Q0
>>151
「こ……が……ア?」
熱を吸収する不思議な炎が舌の行く手を阻む。
唾液にまみれた舌は女の眼前で止まり、一瞬で凍り付いた!
「あごあ、あごごこあ……??」
巨漢悪魔には痛覚はないため、目の前で何が起きているのかわからず困惑している。
舌だけではない。
足、体、……すべてから体温が奪われ、白い彫刻のようになっている。
「……、……!!」
ようやく、相手が自分よりはるかに強い能力があると察した巨漢の男。
すると突然、自分の舌を凍っていない腕で引きちぎり、また怪力で地面とくっついた足を引きはがした。
「……おめ、……ルシフフフファ様に、言いつけっからな……
悪魔が悪魔の仕事サボって、
知らぬ存ぜぬ突き通せると、お、思うなよ!!」
驚異の再生能力を持っているのか、男からはすぐに真っ赤な舌が再生された。だが、舌を戦闘に使うには時間がなかったのか……
不利を悟って背を向け、逃げる体制に入っている。
このまま放っておけば、巨漢悪魔は宵闇の向こうに消えていくかも知れない。……姿に似合わず、意外に俊敏である。
もちろん、完全に背を向けて逃げる体制になっているため、追撃を加えたり、あるいは行く手を阻むことも能力があれば可能だろう。
155
:
桜井直斗
◆o/zdiZN8A2
:2016/01/13(水) 19:35:34 ID:if7ZXLvA0
>>153
「ん...? あぁ、いいぜ。えっと...春日、だっけ?」
最近きた転校生だと聞いていた
ちょうど俺が休みがちな時期に来たからあまり話した機会はなかったな
と、思いつつ昼食を一緒に頂く
桜井の性格上、友人は多ければ多いほどいいというので彼の様な転校生も歓迎する人種だ
いや、さすがにこうやっていきなり昼食を一緒にするなんてなかったが
「え? ...あぁ、」
災難、と聞いて真っ先に思いついたのは昨日の事件
咲羽との交えたあの出来事だ
────彼奴は今日も学校にいるのか
なんて考えたが
ここは学校。一般人は巻き込めない
「そうなんだよ! まだサッカー、バスケはいいぜ? でもカバディってなんなんだって!
ハッハッハ! 笑っちゃうよな! いや、できなくは無いんだけど!」
そんな部活あったっけー、と
先ほどの勧誘戦争に話題をシフトした
笑って膝を叩く姿はまるで普通の高校生だ
いつも通りの日常を、笑って過ごす
そんなごく当たり前の少年にしか見えないかもしれない
────もちろん、この街の事情
悪魔を知らなければの話だが。
156
:
春日 縁
◆ovLCTgzg4s
:2016/01/13(水) 20:17:37 ID:FZqbjWPA0
>>155
「自分には、カバディの経験はないな。
……うむ。桜井の言う通り、この学校には聞いたこともないような物が多くて面白い。」
明るく、笑って話す直斗の言葉に、頷きながら話を合わせる。
──面白いと言いながら、春日の方は一切笑わないのだが、それが性分なのだろう。
それからしばらく、二人は他愛もない話をして過ごす。
春日が固いのは相変わらずだが、話自体は途切れることがない。
そうして、次第に学校の話から、海馬市事へ話が移った頃──。
「……そう言えば、最近この辺りは物騒らしいな。」
報告書を読んだが、“桜井直斗の証言”は見当たらなかった。
何よりも新鮮な一次情報であるのに、だ。──APOHは彼に直接、聴取を行っていないらしい。
一般人保護という題目自体は、春日も大いに首肯する所だ。
だが、眼前の彼を狙った悪魔は討滅せねばならない。ならば、自分が行う。
立ち会ったという朱御門陽子と、もう一人の話も訊きたいが、彼の証言も重要だ。
──それとなく、話を向けてみた。何も出ないのは、ダメでもともとだが。
157
:
沙希
◆gH01LWUntE
:2016/01/13(水) 20:25:31 ID:Y9DCRQiM0
>>154
「どうだ、少しは頭も冷えたであろう?」
眼前までに迫った舌にも表情を変えず、ただ不敵に笑う少女。
とはいえこの結果に確信があったわけではない。唾液という足がかりがあってこその手段だった。
だが舌を引き抜くという無理にはさすがに面食らったのか、数瞬おいて少女の背後にまた炎が舞い上がって路地を赤々と舐める。
容赦のない高熱はしかし、男以外を焼き尽くす事はないのだが。
「巫山戯た事を。誰に私の仕事を決めつける権利があるというのか。
ふむ、しかし話が広まるというのは些か困るのう」
これはもはや性分だ。他者のために生を過ごすなど、退屈にも程がある。どうせならば本能と衝動に生きて何が悪いというのだろうか。
この街に渦巻く陰謀、怨恨、欲望、それらの行先。そしてどう転がしてやるか、考えるだけで胸が膨らむ。
例えその先に待っているのが己の破滅であろうと、ただ目先の享楽を求めたいのだ。
これが大半の悪魔の反感を買う考えだというのは、無論沙希も重々承知の上なのだが。
「これ、背を向けるなど失礼ではないか。
ああ、寒いのか?それはすまんの。ならば温めてやろう」
男の背にかける声はどこか愉快そうで、けれど確かな怒気を孕んでいた。
男を簡単に逃がそうというつもりはない。口封じの意ではあるが、少々腹いせも含んでいるのは否めない。
見かけによらない俊敏な動きに内心舌を巻くが、それで諦める理由になどなりはしない。
逃げ出そうとする無防備な背中を、控えていたとぐろを巻いた炎が猛然と駆けて追った。
158
:
◆CELnfXWNTc
:2016/01/13(水) 20:25:48 ID:QxGk9v1U0
/
>>128
で再募集します
159
:
桜井直斗
◆o/zdiZN8A2
:2016/01/13(水) 20:50:12 ID:if7ZXLvA0
>>156
なんというか、真逆な2人だった
クールな反応の多い春日に桜井は少々調子が狂う事があったが
それでもこうやって会話が続いているのはやはり楽しい
そうやって会話を続けていたが────。
「物...騒...? あぁ、そう...だな。
なんか、若い女の子が...行方不明だっけ? 怖いね...」
と、先程までとは違って随分歯切れが悪い答えだった
情報が正しければ、彼が悪魔と接触
APOHの人間の保護下の筈
その立場で、悪魔について答えられない筈がない
どんな悪魔だったのか、答えるのはそう難しくないと思うのだが
あの場にいた複数の悪魔がいたかもしれないという状況証拠がある
詳しくは不明だが、確実に1人APOHが追う悪魔
"黒獣"があの場にいた可能性が高いのが分かってる
危険度は相当高く、
優先討伐から最重要討伐対象とも言われるあの悪魔だ
目撃者での生き残りは数少ない、その情報は欲しいのだろうが────。
「────────。」
その黒獣が目の前の少年、桜井だとは気付いてはいないだろうが
本人も、内心かなり焦っていた
自分は悪魔だ。いくらこの力が制御出来ない暴走する力でも許されない
人を傷付けた。その罪は一生かけて償おう。
だから今は、自分と周りの人を守るため強くなろうと決めた
だから、バレるわけにはいかない
今目の前の転校生がただの一般人でも、もしAPOHでも────。
冷や汗が背中に流れるのを感じる
僅かに目が泳ぐ受け答えに春日は気付くだろうか...?
160
:
春日 縁
◆ovLCTgzg4s
:2016/01/13(水) 21:48:32 ID:FZqbjWPA0
>>159
桜井直斗は、一目瞭然と言っていいほどの動揺を見せた。
目が泳ぐ。何かを隠しているのか、怯えているのか。
その間隙を睨めつける様に、春日の真っ直ぐな瞳が睨めつけ、暫し屋上を静寂が包み──
「……ぶはぁ!」
──詰まった息を一気に吐くように、声を上げたのは春日だった。
手に持っていた牛乳を一気に飲み干し、袖口で口元を拭う。
「やめだ!この様な真似は性に合わん!」
先程までの物静かな印象と、一変するような大音声。
春日は直斗に頭を下げると、顔を上げ、再び瞳を合わせる。
「嘘をついて悪かった。……自分は“大宮陽子と同じ”だ、と言えば分かるだろう。
──桜井、お前が“悪魔”に出会ったと聞いたんだ。その事について、教えて欲しい!」
この地に来てからは出会っていないが、大宮陽子──“朱御門”の彼女とは、“四家”の誼でで旧知だ。
桜井がAPOHの事まで知っているかは定かで無いから、に関する話の出処は明示していないが、適当に話を合わせてくれるだろう。
──元々、春日は腹芸の苦手な、直情型の人間だ。このやり方が、彼にとっては一番だった。
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