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ここだけ悪魔が侵食する都市・テストロールスレッド
1
:
管理人
:2015/12/22(火) 03:52:04 ID:???0
オープン前のテストロールスレッドです
通常ロールのほかに、試験的に「物語ロール」(操作フリーキャラを登場させて良いロール)をやってみたい方も投下してみてください
ここでの結果が正式なオープンに反映させます
212
:
春日 縁
◆ovLCTgzg4s
:2016/01/17(日) 14:21:38 ID:FZqbjWPA0
>>211
家はない、とは、どういう事か──彷徨っている?
それに、路地の闇に慣れた目が捉えたのは、見慣れぬ制服だった。
だが、今の夜桜学園の制服と、少しだけ意匠が似ているようにも見える。
違和感。疑念。彼女の名を糾そうと、口を開きかけた瞬間、疑問は他ならぬ彼女によって氷解した。
「 ── そうか。 貴様、“悪魔”か。 」
春日の眼が変わる。敵意、憎しみ。──負の感情が澱んだような、鋭い色。
少女とは違った形の、“狂気”とも呼ぶべき様。極端な変貌。
口元は釣り上がり、歪な笑みを湛えていた。
「その口ぶりであれば、人を殺したな。殺したのだろう。
人の姿を騙るとは、卑怯千万。……守護四家が一、春日家嗣子、春日縁。
人の敵であり、世の敵である悪辣非道の悪魔は、全て討滅する。」
即座に距離を取り、素早く両手に札を貼る。──“結界符”に“逆説符”。
同時に、身体に貼り付けていた“強化符”も発動する。
道幅の狭い、一本道の路地。彼らは、そこで向かい合うことになる。
213
:
常世 詠(黄泉の前)
◆yd4GcNX4hQ
:2016/01/17(日) 14:41:06 ID:EQaCMdl60
>>212
「…?まぁえぇ、そういうことになりますね
そのような呼ばれ方をするのは些か不服ですが……」
そう言って少し憂いを帯びた笑みで自身の身体を見る。過去を思い出し、自分の所業を思い出す。
愛に生き、そして死んだ人生。人であった頃の記憶。あの頃、確かに自分はあの人を愛していた。なのに────
それから形成された人格は、とても歪で捻じ曲がり、もはや人とは呼べない。彼女は立派な"悪魔"だ。
「いきなり殺しに来たのですもの、殺されないためには殺すしかない──そうでしょう?確か"朔夜姫"と言っていました、わけも分からない名前で呼ばれ、殺されかければ誰でも抵抗はしましょう
それに人を騙ると言いますが私も元は人です、この姿は生前と同じ、そして私の願いも同じ」
「でも、少し残念です」
距離をとった春日を見て、常世の顔には影が落ちる。落胆、悲しみ。そうと取れる表情をして常世は少し笑う。
「あなたは、悪魔は恋をしてはならないと思いますか?愛を求めてはいけないと思いますか?」
「私はそうは思いません、この世界に生を受けた者は、皆平等に愛を求めていいと思うのです」
語る常世の口角は上がり、歪な笑みが浮かび上がる。語る瞳は狂気そのもの、恋は盲目と言うがこれはそれ以前の問題だ。
盲目以前に、見ようとしてすらいないのだから──
「春日さん、あなたはどう考えますか?」
214
:
春日 縁
◆ovLCTgzg4s
:2016/01/17(日) 15:04:18 ID:FZqbjWPA0
>>213
彼女──“朔夜姫”の言葉には、確かに一分の理があった。
仮に悪魔に生まれたからといって、生きていることには変わりがない。
彼女の為してきた所業とは別の話として、悪魔が愛を求めることも、即座に否定する気にはならない。
だが、その上でも、APOHの構成員として。“朔夜姫”は最早、野放しには出来ない──
「人のような貌をするな、悪魔!」
──と、常人なら、そう思うのだろう。
だが、鋼の如き意思と、澱んだ怨嗟を持つこの少年は、その様な葛藤すらも持たない。
吐き捨てるように告げると、腰を落とし、拳を構える。
「戯れ言を。……ならば言ってやろう。貴様等にそのような権利は、ない。
貴様等は人の愛する者を奪う。──いきなり殺しに来た、だと?それは貴様が、悪魔だからだ。
悪魔が人を殺すから、俺達も貴様等を殺める。先に始めたのは、貴様等だ。」
見ようとしていないのは、春日も同じだ。悪魔、というカテゴリーで全てを捉えている。
どちらも、勝手な論理を振り回す。並行線の議論が相果てることは、決してない。
歪な笑みを浮かべ合う彼らは、暫し向き合い──。
先に動いたのは、春日だった。
先程の眷属に対するそれと同様、一気に距離を詰め、拳を振りかぶる。
拳の“逆結界”は、いわば、対魔特化の攻撃フィールドの様な物だ。
一発で、頭を吹き飛ばす狙い。──だが、先程の攻撃を見た常世は、相応の警戒を持つだろうか。
215
:
常世 詠(黄泉の前)
◆yd4GcNX4hQ
:2016/01/17(日) 15:25:12 ID:EQaCMdl60
>>214
「──確かにそうかもしれませんね、あなたの言う通り、このイタチごっこは永遠に終わらないでしょう」
悪魔が人を殺し、そして人が悪魔を殺す。これは変わらず普遍、いつまでも昔から繰り返される。
これはきっと永遠に終わらず、変わらないだろう。
「このようなことをいつまで話していても仕方がありませんね
私も力を使わないわけには行かなくなるかもしれません
争いは嫌いなのですが……」
先に動いたのは春日。地面を蹴り、瞬く間にこちらへ距離を詰め先程したことと同じく常世の頭を吹き飛ばそうとしてくる。
だがその技は一度見た。ならば対処は容易だ。
素早く左腕を触手へと変え、それで地面を叩くことで横へと跳ぶ。そして射程外へ逃れれば、少し迷いを見せながらも、懐から一本の小太刀を取り出す。
「…使わなければなりませんよね……
私のあの姿は、見られたくはないのですが……」
それが何か特殊なものだということは春日もわかるだろう。だがそれで何をするかは果たして想像できるだろうか?
216
:
春日 縁
◆ovLCTgzg4s
:2016/01/17(日) 15:36:30 ID:FZqbjWPA0
>>215
空振った拳を引き戻しながら、跳んだ方向を向き直る。
先程の眷属よりは、確実に格上。なら、何故、先程の様な状況になっていたのか。
……大方、か弱い人間を演じて、人を“釣る”目算だったのだろう。
重ねて許しがたい。再び、拳を構え──目に入ったのは、彼女が取り出した小太刀。
「(面倒なことをされる前に、吹き飛ばす──!!)」
攻撃用か。或いは──そんな事を考えている暇はない。
再び距離を詰め、今度は彼女が小太刀を持っている側の横っ腹へと、殴りかかる。
拳が当たれば良し。外れたなら、即座に距離を詰め、繰り返す。
そして、防御に入るなら、“小太刀”を使うはずだ。──その場合は、小太刀を吹き飛ばせる。
だが、彼の憎悪で鈍った頭には、一つの慢心があった、と言わざるをえない。
もし、一撃で仕留められなければ。或いは、相手が自分より“強い”のならば。
これは、虎穴に入ることに他ならない。
217
:
常世 詠(黄泉の前)
◆yd4GcNX4hQ
:2016/01/17(日) 15:54:49 ID:EQaCMdl60
>>216
「あぁ…私の醜い、穢らわしい姿を晒さないといけないなんて────」
再び殴りかかろうとしてくる春日。しかしそれよりも早くに常世は小太刀を振りかざす。その狙う先は──
「ぐふっ…!う、うぅ……」
刺したのは自らの腹部、所謂切腹。
それは昔に行われていた伝統的な儀式。そして常世──黄泉の前にとっては自らの力を使うための儀式でもあった。
空間が歪む、世界が軋む。まるで世界が崩壊しているかのような錯覚。
そしてそれが収まれば────
目の前には異世界が広がっていた。
「あぁ…また来てしまいました……」
話すのは常世詠──いや、黄泉の前。"朔夜姫"と称された悪魔の本当の姿。
それは先程までの姿とは違い、そこに居るだけで威圧感を感じさせる。禍々しい瞳がギョロつき、睨まれただけで身が竦む。
「…どうですか?私のこの、醜い姿は……」
俯き、暗い顔がそこにはあった。明らかに自分に優位なのにその顔には余裕はなく、悲哀を感じられる表情。
しかしその姿は皮肉にもそこに合っていて、哀愁を感じさせ、黄泉の前の狂気を物語っていた。
218
:
春日 縁
◆ovLCTgzg4s
:2016/01/17(日) 16:18:18 ID:FZqbjWPA0
>>217
「何、ッ──!?」
彼女が切腹したことに、驚くと同時。
空間ごと、何かが壊れ、そして、自分もそれに飲み込まれていくような感覚。
思わず拳が下がり、顔が歪む。そして気がつけば、そこは──
「……何、だ、……ここは。」
異世界。そんな生易しい表現よりも、“地獄”と呼んだ方がふさわしいかも知れない。
焼け野原に浮かぶ血のように紅い月。怨嗟の声と、その主が其処に、彼処に。
──思わず吐き気を感じたが、それよりも、眼前の“敵”だ。
「醜いな。」
この空間は、奴が展開したものか。或いは、奴の世界に転移させられたものか。
どちらにせよ、獲物を嬲り殺しにする為の空間。斃さねば、自らも怨霊の仲間入りだ。
……だがどう見ても、その姿は“強大”。最重要討伐対象クラスと見て、間違いない。
一人で対等に相手をできるほどの実力は、自身にはないだろう。だが──
「……だが、却って“分かりやすい”。
人の姿を壊すとなれば、意図せぬ手心も加えるかも知れない。
その姿の貴様相手なら──思う存分、“討ち果たす”ことができる。」
ここで退けば、それだけ多くの人が、奴に狩られる。
ならば、何としてもここで狩るのみ。──来い、とでも言うかのように、春日は手招きした。
219
:
常世 詠(黄泉の前)
◆yd4GcNX4hQ
:2016/01/17(日) 16:35:14 ID:EQaCMdl60
>>218
「ここは私の心象風景…つまり心を具現化したものです
この醜い世界こそが私の本性です」
身に纏うは十二単。美しさと醜さが調和しているその姿は、悪魔と呼ぶには生易しい、化け物、怪物。そんな表現が的確だ。
「では…再び参りましょう」
そう言うと鎌首をもたげるように出てくるのは二本の大きな触手。どす黒く、明らかに恐ろしい力を持っているであろうそれは、ゆらゆらと今か今かと待ち構える。
ギョロつく目玉は春日を睨みつけ、瞬きすらもせずに見張っている。
「──行きなさい」
その合図とともに二本の触手の内、一本が辺り一面を薙ぎ払おうと動き出す。その範囲は広く、現在の春日の位置は範囲内。なにかしらの回避行動を取らなければ直撃を受けてしまうだろう。
220
:
華野平馬
◆10pX8BMxfE
:2016/01/17(日) 16:39:44 ID:ydEYc846O
海馬市市役所屋上に煙が立つ。いや、火事ではない。市役所は去年、健康上の観点から所内全面禁煙と相成り喫煙所も撤廃。この決定は所内の喫煙者らを路頭に迷わせる結果となった。
短い休憩時間の合間に愛する彼女を吸う為に、数人が運動をした後、辛うじて屋上で吸うことを許された。という訳で、屋上に煙が立っていたのだ。
「副係長も煙草、吸うんですね」
屋上の一角に群れを成し、狼煙を上げ続ける一団。その中の一番若い衆が、華野平馬に声をかけた。
役所内での華野のイメージは、まさしく旧来の清く正しく自分に厳しい公務員といった感じ。酒の席も「弟が待っているので」と断り続け、酔って顔を赤くする姿を見せたこともない。
そんな彼が珍しく、喫煙所に現れ煙草を吸っているのだ。周りの喫煙者らもジロジロとその妙に様になった立ち姿、吸い姿を眺めていた。
「……まぁ、な。私もタバコぐらい吸う」
「お好きなんですか?」
「ああ、嫌いだ」
「……えっ、じゃあ何で――」
若い衆がそう聞きかけたが、突然眠気が襲って来たのでその場に寝転がりいびきをかきながら眠ってしまった。
異様な光景だ。
平馬を除く全ての喫煙者が眠っている。すると彼らの目や耳、鼻からズルズルと塵が固まったような何かが零れ出てきた。平馬が吸う〝祓い煙草〟の煙に炙り出された悪魔だ。
「近頃おかしな行動を取る職員がいると聞いたが……煙草を媒介にした悪魔が原因だとは、な」
塵の悪魔は虫の如く蠢き出す。が、逃がさない。黒い尻尾を踏みつけ、それを睨んだ。
「侵入方法……煙草の箱の中に潜んでいたか。浅知恵なりによくやる。これなら気付かれぬ訳だ」
「そんなに煙草が好きか。ならくれてやるよ」
灰を身体に落としてやると、小さな悲鳴を上げた。祓い煙草の煙は低級悪魔にとって致命傷になることもある。息も絶え絶え魔界の言葉で命乞いをするも、彼の耳には届かない。
最後にぐいと胸を踏み抜くと悪魔は死に、塵となり消えてしまった。
「――ここまで来ているなんて」
役所内には多少退魔の霊装が至る所仕込まれてはいたが、案外気付かない所から〝奴ら〟は侵入してくるものだ。規制を強めねば。
煙草を口から離し、ふうと息を吐く。白い煙が空に浮かび、やがて消えた。
屋上にはまだ人が倒れている。
221
:
春日 縁
◆ovLCTgzg4s
:2016/01/17(日) 16:53:40 ID:FZqbjWPA0
>>219
◆
十分経っただろうか、二十分経っただろうか。或いはもう少し短かったかも知れない。
腕時計など見る暇はない。それほどに、黄泉の前の力は圧倒的だった。
「……ハァ、ハァ、──ッ!!」
──荒い息のまま、振り下ろされる触手を横に跳んで回避する。
最初の薙ぎ払いに対しては結界を張り、半ば吹き飛ばされる形で回避した。
だが、その後の攻防で既に触手を一発、腹に喰らっている。唾には血が混じっていた。
カウンター気味に触手へ拳を食らわせたが、多少、動きを鈍らせただけ。
彼の悪魔の“本体”が、距離以上に遠く見える。このままでは、あと数分も保つまい。
「(退く、と言っても──。)」
余りにも力の差がありすぎる。そう悟ってからは、退路を探しつつの戦闘だった。
だが、依然として見つからない。──いっそ、全力で本体に向かって、突撃するか。
犬死する公算は高いが、一矢でも報いれば上等かも知れない。そんな弱気が、首をもたげていた──。
222
:
常世 詠(黄泉の前)
◆yd4GcNX4hQ
:2016/01/17(日) 17:12:18 ID:EQaCMdl60
>>221
「──馬鹿な人、力の差は歴然です
もう楽になってしまえばいいのにどうして……
いえ、答えるまでもありませんでしたね、あなたはある意味私と同類、その理由も明白です」
まるで哀れむかのような、しかし見下してはいない。本当にただ哀れんでいる様子だった。
しかしかといって慈悲は無い。黄泉の前にとっては、春日は自らを殺そうとしてくる敵でしかない。そこに哀れみはあっても同情や慈悲などというものは一片たりとも存在しない。
「ならば、せめてあと一撃で葬りましょう
あなたの魂はここに残りますが、致し方ありません」
そう言って黄泉の前は、触手を一本振りかざす。万事休す、と言ったところだろうか──いや、違う。
春日は気付くだろうか。春日の少し離れた先に、空間がひび割れた部分があるのを。
それは黄泉の前の心の隙間、僅かな揺らぎ。
ここは黄泉の前の心象風景を具現化したもの、一見無敵に見えるが、人の心というものに完璧などというものはない。人から悪魔へとなった彼女ならば尚更だ。故にそれは形となって現れる。
「さぁ、死んでください」
振り下ろされる触手。果たして春日は気付き、この地獄から回帰出来るか。
223
:
メモリー
◆3wYYqYON3.
:2016/01/17(日) 17:16:52 ID:tVFZhA6M0
>>195
「ふふ、感謝します。行きましょうか、上映まであまり時間がありませんから」
ベンチを立ち、少女を映画館まで人ごみの中を先導する。その間に此方から話すことは無い。話は向こうに着いてからゆっくりする予定なのだから。
数分ほど歩けば、近年建てられたであろうガラス張りの高層ビルが2人の前に現れるだろう。
そこのワンフロアが、「ニューシネマ海馬」_____彼女の城だ。
最も、外から見れば大きめのシネコンと言ったところだが。
「それじゃちょっと待ってて下さい、用意してきますから」
そう言って、少女からチケットを預かろうとする。
少女がチケットを渡せば、女は一旦その場を離れる。
そして数分後には、2人分の座席指定券と、塩とキャラメルが半分ずつ入ったポップコーンとLサイズのドリンク、おまけにアイスクリームを抱えてくるだろう......
224
:
春日 縁
◆ovLCTgzg4s
:2016/01/17(日) 17:32:40 ID:FZqbjWPA0
>>222
「ハァ、ハァ……。──黙れ、悪魔。
戯言で心を乱すほど、自分は弱くはない──。」
自分と、目の前の悪魔が同類?──それは、春日には理解できない言葉だ。
だが、その言葉は真実を指しているのだ。そして同時に、彼女の言葉は、彼女自身の“地獄”も吐露する物だった。
「……断るッ!!」
しかし、繰り返すが、今の彼にはその事を理解できない。
確かに見えた、“罅”。直感的に、そこが活路だと感じられた。
触手を回避しようと、動こうとしていた足を止める。懐に手を入れ、“符”を取り出す。
──どん!と、触手が地を叩く音が、この世界に響いた。
黄泉の前にも“手応え”があった筈だ。少なくとも、身体の一部分の骨は折った、と。
だが、数秒後、違和感を感じる。……彼を捉えた筈の触手が、何故か即座に動かないだろう。
「──ッ!!」
春日は既に、駆け出していた。──クロスカウンターの様な形で、触手に“硬化符”を貼り付けたのだ。
触手はその柔らかさ故に、自由自在な動きが叶う。その“武器”を奪った。
代償として、右腕は潰されこそしなかったものの、改めて見たくもない状態だ。
だが、全てが上手く行っていれば──恐らく、時間は稼げる。
春日は、罅に向けて拳を振り、世界の境界を突き破らんとする。果たして、間に合うのか──!!
225
:
常世 詠(黄泉の前)
◆yd4GcNX4hQ
:2016/01/17(日) 17:58:15 ID:EQaCMdl60
>>224
「まさか…"ヒビ"を…!?」
触手が動かない。そして駆け出す春日の先には、紛れもない自身の弱さの象徴である"ヒビ"が。
どうして気付いたのかはわからない。ただ止めなければ、この空間は無効化されてしまう。そうすればもはや倒す手段はなくなってしまう。
慌ててもう一本の触手を伸ばすも、既にそこはこちらの射程外。
振るわれる拳、広がるヒビ、割れる世界、そして────
気付けば元の世界、あの路地裏に戻ってきていた。黄泉の前は地面に座り込み、悟ったような表情で地を見つめている。
再び展開することは出来ない。今の自分は非力。もしもまだ春日に余力が残っていれば自分は────
「終わって…しまいましたね……」
ただ呆然と、そう呟くことしか出来なかった。
これも全て、自身が招いたこと。今までの油断が招いたことだろう。受け入れるしかない。
ただ、心残りがひとつ。結局自分は、本当の意味での想い人を見つけられなかった。それが唯一の心残り。
226
:
春日 縁
◆ovLCTgzg4s
:2016/01/17(日) 18:17:49 ID:FZqbjWPA0
>>225
気づけば、元の世界。
目の前には、先ほど切腹をした“少女”が、呆と座していた。
勝ったのか。──否、このような形での決着など、“勝利”とは言えまい。
運が良かっただけだ。だが、これでかの悪魔を“討滅”できるのも事実。
おかしな方向に曲がって、最早感覚も麻痺している右腕の代わりに、左腕を振りかぶり──
「……一つ、答えろ。」
自然に、問いが溢れていた。
此れほどの強敵とは遭ったことがなかったが、それなりに悪魔とは戦ってきた。
だが、幾ら実力を示そうとも、父も、祖父も、自分を認めはしなかった。
他の四家も、朱御門ですら、自分をAPOHに入れることには慎重だったと聞く。
「先ほど、自分と貴様が“同類”と言っていたな。……それは、どういう意味だ。」
悪魔への憎しみが、恨みが、危惧されているのは分かる。
だが、それの何が駄目なのか。我々は、悪魔を弑する守護四家だ。
そう言った春日に、四家は海馬市への赴任を命じた。──何を学べ、と言うのだ。何が、悪いのだ。
その手がかりが、彼女の言葉にあるような気もした。
──問うているのは、“彼女”のことか、“自分”のことか。春日にも、よく分からなくなっていた。
227
:
常世 詠(黄泉の前)
◆yd4GcNX4hQ
:2016/01/17(日) 18:42:07 ID:EQaCMdl60
>>226
「…はい、なんでしょうか」
既に自分には何も出来ない。そんな自分へのトドメの前に、一体何を聞きたいのだろうか。
彼は悪魔を純粋なまでに憎んでいた。そんな彼が、悪魔である自分に何を───
「あぁ…そのことですか」
「同類と言ったのは、私もあなたもただひたすら一つのモノを追いかけ続けているからです。
あなたは悪魔の殲滅を、そして私は愛、恋を。知っていますか?愛情と憎悪というのはほとんど同じなんですよ。
愛情は一つ道を間違えれば憎悪へと変わります。そしてその逆もあります。
一つモノに執着し、ひたすら追いかけるのを愚かだという者もいます。事実、あなたも今までそのようなことを言われたこともあるでしょう。
しかし私はそうは思いません。一つのモノにひたすら執着出来るのは、なかなかに出来ないことです。例えそれが、どんなに道を違えていようとも──
たぶん、私が元は人だからこんなことを言えるのだと思います。普通悪魔はそういったことには興味はありませんからね。
ただ、一つだけ。あなたにも分かってもらいたいんです。
悪魔確かに悪魔はあなた方にとって倒すべき巨悪なのかも知れません、でも悪魔にも様々な者が居るということを────」
それを言い終わると、すっきりした表情で天を見る。あぁ、そういえばあの日もこんな夜だった。綺麗に月が登っていて、私は悲しみに溢れていて──
でも今は違う。二度目の死、だがこんな気分で死ねるのなら文句はない。
「これで終わりです、私が言ったことは間際の戯れ言
忘れてしまって構いません」
そう言って、最後の時を待つのだった。
228
:
春日 縁
◆ovLCTgzg4s
:2016/01/17(日) 19:08:44 ID:FZqbjWPA0
>>227
──彼女の言葉を聞いて、春日はもっと、訳が分からなくなった。
愛、憎悪、執着。人間、悪魔。マーブルに織りなす諸要素が、モザイクに塗り潰される。
カテゴリィは最大項の筈だ。なのに、例≪── “された子” /“縁は、気づい” / ── ≫外など
「──ッ。」
思考の中に、ナニかがザッピングした。
いつかの記憶だろうか。だが、覚えがない。父の声のようにも聞こえた。
頭が痛い。……疲れたのだろう、今日は。なにせ、あんな“悪魔”と一人戦ったのは初めてだ。
だから、春日は振りかぶった腕を下げた。
まるで論理が成立していないのは、分かっている。それに、後で後悔するだろうことも。
だが、何故かここで、彼女を殺す気にはならなかった。
「……貴様の愛を貫く上で、人を殺す必要は、ないだろう。」
そう、去り際に告げ──春日はこの場から、表通りの方へ去ってゆく。
その言葉を、逆に自己に言われても、まるで答えることは出来ない癖に。
後方の彼女を警戒もせず、血のついた服のまま、右腕を庇い、その姿は消えていくのだろう。
/では、この辺りで!お疲れ様です!
229
:
常世 詠(黄泉の前)
◆yd4GcNX4hQ
:2016/01/17(日) 20:18:59 ID:EQaCMdl60
>>228
「…?どうしたのですか?」
突然、春日は振り上げた腕を下げた。何故、彼はあれほどまでに悪魔を怨んでいた、憎悪していた筈なのに。
しかし春日は実際にそうしたのだ。止めを刺す手を止め、その殺気も消え失せている。
「……!!」
その言葉を最後に春日緑はその場を去った。残されたのは力なく地に座している黄泉の前と、静寂だけ。
自分は倒された。あれは紛れもない敗北だ。例え相手の方がそう思っていなくとも、あの結界を破壊された時点で自身の負けは確定していた。
しかし彼は、自分に人を殺す必要は無い、つまりは温情を掛けてくれたのだ。自分を悪魔と知っておきながら、自分があれほど彼を痛めつけてしまったのに。
「行って…しまわれましたわ……」
そしてそこに一陣の風が吹く。黄泉の前は動けない。自分の両手を見つめ、そして両手を合わし今の出来事を思い返す。そして────
「春日…緑様……あぁ、この胸の高鳴りはきっと、きっと────」
先程までとは違う、嬉しさに満ちた顔を月に照らし黄泉の前は一人呟く。
彼こそが自分の"想い人"だと。ついに見つけた自分が添い遂げるべき相手。
「確か…夜桜学園でしたね
誰か…あぁメモリーさんが居ましたね、あの方にお願いして夜桜学園へと入学…ふふふ…待っていてくださいね?私の"想い人"様……」
不気味な笑いを浮かべて、黄泉の前は立ち上がる。そうと決まれば善は急げ。早速これからの計画を立てなければ。
黄泉の前は本当に楽しそうに、その場を歩き去っていく。その背中には先程死闘をしていたとは思えないほどの幸せを感じさせるのだった。
────さてさて、厄介な恋魔に目をつけられた春日の未来は如何なものになるのか。それを知る者はは未だ居ない。
まぁとにかく、厄介なことが起こるのだけは明白だった。
//ロールありがとうございました!楽しかったです!
お疲れ様でした!
230
:
日々奈彩花
◆xZ2R3SX0QQ
:2016/01/17(日) 22:30:04 ID:/hFq9EzI0
>>207
「?」
やたらと周囲を警戒する桜井を不思議そうに見つめる。
今更、彼は何に対して注意を払っているのか。
悪魔やAPOHの話題をこの場でした時点で、今から周囲を警戒しようが色々遅い気がした。
「なによ?」
手招きされ日々奈はそれについて行く。
何処となく警戒した様子を見せる日々奈は、桜井とは違い、周囲ではなく、彼に対して警戒をしていた。
「――――――――――――は?」
桜井の発言に思わず目を丸くする。
一瞬だけ、日々奈の思考は完全に停止した。
それほどまでに、彼の言葉が予想外過ぎたのだ。
「え、ちょっ、ごめん。待って、えーっと……つまり、え、あなたは……桜井は悪魔なの?
APOHに保護?悪魔が?ごめん、意味がわからない」
明らかな動揺と混乱。
日々奈は頭に手を当てると、必死に理解しようと脳味噌を働かせる。
然し、色々といきなり過ぎた所為か、全くと言って良いほど、状況を整理出来ない。
「と、とりあえずあなたはどっちの味方でなの?」
必死に吐き出した言葉はそんな質問だった。
未だに理解は出来ないが、彼が悪魔ということだけは分かった。故に、敵か味方か。それを日々奈は聞いた。
231
:
沙希
◆gH01LWUntE
:2016/01/17(日) 22:33:00 ID:Y9DCRQiM0
>>223
頷いて女の後を追う。先程までの不調はどこへ行ったのか、今やその足取りはどことなく軽い。
ある種未知の経験を前に、ともすれば浮かれているようにまで見える。
道中は互いに無言、2人の足音だけが人混みに紛れて消えていく。
ただ辿り着いた大きな映画館を見た時だけ、小さく感嘆の声を漏らした。
促されるままチケットを手渡し、待っている間もそわそわと辺りを見回しどこか落ち着かない様子。
「……なるほどのう、そういった手合いの者か」
ぽつり、1人呟いた言葉は誰の耳にも届く事はなく。
そうしてしばらく、戻ってきた女が抱えている数々の物を見た途端にぱっと目を輝かせて受け取ろうとする。もし断られればあっさりと諦めるだろうが。
どちらにせよ早く早くと言いたげにせっつく少女は、完全に映画を楽しみにしているそれだ。
そのまま上映場所へと入場すれば、薄暗い密閉空間にまた嘆息を1つ。
「なるほど、このような場所で楽しむものなのか。これは確かに気の利いた趣向よの」
指定の座席を探して着席を済ませれば、上映時間はすぐ間近だ。か細い照明がさらにその照度を落としていく。
闇に閉ざされるその間際、少女の口元は確かに弧を描いていた。
232
:
桜井直斗
◆o/zdiZN8A2
:2016/01/17(日) 23:48:03 ID:if7ZXLvA0
>>230
「生まれて17年。 ずっと人間だって思ってたけどな...
何日か前に分かったんだけど...俺、悪魔みたいなんだ」
と笑って答える
そういえば、その時期と彼の学校を休みがちになっていた時期と一致する
思い出せば、彼の様子も少しおかしかった気がするだろう
人間だと思ってた自分が化け物だという事実
それがいかに重いか、その笑顔の重さを感じられるか
「...どっちの味方ってのは、難しいな
多分俺はどっちの敵にもなるし、どっちの味方にもなる」
快楽で人を虐殺する悪魔がいたら止めるだろう
意味もなく、悪魔を鏖殺する人間がいたら止めるだろう
悪魔である自分が、人間である自分が止めると
そう、告げた
疎まれるのは見えている。殺されるだろうって気もする
でも、だからこそ進む
言葉があって通じあうなら、互いの理解はそこにあると思う
確信はない────、でも今のまま突き進めば
どちらが勝っても詠われるのは勝利の凱歌でなく敗北の呪詛だ
血の上の秩序ならそれを再び血が染めるだろう
それは事実だと思う
「...彼女達は、そんな俺の無茶を信じてくれた」
と、タンクの向こうを見る
見えはしないが、その先のグランドにいるであろう同居人に目を向けた
それが裏切りとも受け取れると理解して、俺を守ったと
「...だから、彼女達が守ってくれたのなら。俺も俺の義務を果たす。
人として、悪魔として。この街の騒乱を止めたいと思う」
それが、無茶だという次元を超えて
すでに自分で自分を壊してしまうような選択だと気付いている
「...なんか、悪いな。こんな話聞かせて
.......その、お前が俺を見逃さず殺してくるならそれでいい。相応しい場所で相手するよ」
こんな学校じゃ嫌だぞ。と笑っていった
まるでさっきまでの冗談のやり取りのようで
本当に変わりない。桜井の目
達観してるともいうのか、まるでお前になら殺されていいとでも言いそうな
触れれば崩れそうな不安定な瞳のようで────。
/遅れてすいませんでしたー!!
233
:
メモリー
◆3wYYqYON3.
:2016/01/17(日) 23:55:16 ID:tVFZhA6M0
>>231
(魂より、ポップコーンですか......)
これは悪魔界きっての変わり者という噂も本当なようだ、というのは心に止めつつ、座席へと座れば、間も無く闇が空間を満たす。観客は、いかにも映画好きと言った人間が十数名、スクリーン内に点在していると言ったところか。
「余り長々と話してもお楽しみの邪魔でしょうから、率直にお聞きするんですけど......」
BGMと共に、白と黒で構成された画面に機械工の格好をした喜劇王が現れる。画面を見ているならば、それが資本主義社会と機械文明を皮肉った、コメディであることがわかるだろう。
「貴女はどういうつもりで、あんな事したんですか?貴女ほど賢ければ、信心深い同族を殺すことがどういうことか分かると思うのですが」
「そしてもう1つ。貴女はこれから先、どうするつもりなんですか?人間も悪魔も、貴女のことを放っておかないと思うのですが」
問いは、BGMや効果音に消されたりしない程度の声で行われているが、観客はそれを気にすることはない。
メモリーの力で「自分が何をしているか」忘れさせられた観客達は、意思の感じられない目でスクリーンを見つめ続けている......
234
:
日々奈彩花
◆xZ2R3SX0QQ
:2016/01/18(月) 00:31:22 ID:/hFq9EzI0
>>232
淡々と語られる真実。
日々奈は最早、驚く様子を見せなくなり、恐ろしほど静かに、ただひたすら無言で桜井の話を聞く。
生まれて17年の月日が経ち、人間的に長く、悪魔的に短い歩みの中で、自身の信じていた、確信していた自己の正体が偽りだった。
それに気が付いた刹那がどれほどまでに恐ろしかったか――――――。
並みの人間ならば、精神など一瞬にして崩壊し、身も心も、真の自分―――悪魔の力に染められるだろう。
然し、彼は―――――桜井直斗という男は、闇に染まることはなく、今も不変の自我を保っている。
それがどれほどに素晴らしく、如何に偉大かなど、同じ人間であり、また同じ悪魔でもある、日々奈は痛いほどに理解していた。
故に、彼の浮かべた笑顔の裏に潜む、数々の複雑な心情に対して、日々奈は言い知れぬ重みを感じた。
普段から目にしていた桜井の笑顔。
その無邪気な笑顔が、自分の知らない場所で消えていた事実に―――――桜井を助けられなかった現実に、日々奈は一人責任感を持ってしまった。
APOHに所属していながら、自分の知っている人物を守ることすらできないなんて――――――。
一丁前に、異名など持っている自分を、ひたすらに情けなく思う。
もし、もっと早くに、桜井の変化に気が付けば、今の現実は別のものへとなっていたかもしれない。
日々奈は、自分を責め、彼の――――桜井の笑顔から目を背けた。
「…………………………」
全てを語り終えた桜井に対して日々奈は沈黙を貫く。
彼は強いな。とそんな勘違いな評価を抱きながら。
然し、それを口にしようとはしない。
迷いがあった。日々奈は分岐点に差し掛かっていた。
悪魔の味方であり人間の敵であり、悪魔の敵であり人間の味方である、と桜井はそう言った。
APOHに所属してから、今まで一度も、そんな言葉を口にする存在とは出会ったことはない。
故に、どう対処すればいいのか分からなかった。
私情を挟んで良いなら、勿論、桜井を殺したくはないし、寧ろ見逃したい。
然し、APOHという立場である以上、目の前の悪魔を名乗る人物をみすみす取り逃がすわけにはいかない。
例えそれが、顔の知る人物であり、''同じ立場''の存在だろうと――――――。
苦悩の表情は、普段の日々奈からは想像できないほど、悲痛なもので、如何に葛藤しているかがよく理解できる。
「――――――ッ」
崩れるほどに不安な瞳を向けられ、日々奈は一歩だけ後ずさりをした。
まるで、桜井の視線から逃れるように―――――
そんな目で私を見ないでくれ――――――と。
「……………………一回。一回だけで良いから、私を殴って。思いっきり……頬でも腹でも、好きな場所を」
突然、日々奈はそんな提案を示した。
何を言っているのかと思われても仕方ないが、それしか方法はなかった。
今の自分を落ち着かせ、普段の日々奈彩花を取り戻すためには、桜井に殴られ、先程までの緩く平和な空気を再び構築するしか、手段はなかった。
情にも流れにも、縛られないで、今後を判断するには、それを行うしか方法は存在しない。
235
:
沙希
◆gH01LWUntE
:2016/01/18(月) 00:46:05 ID:Y9DCRQiM0
>>233
「うむ、なんでも聞くがいいぞ。私が答えられるものであればな」
ポップコーンを頬張りながらもスクリーンから目は離さない。
とはいえ内容はほぼ頭に入ってない。雰囲気を楽しんでいるといった方が近いだろうが。
「あんな事、か。正当防衛では納得してくれんかの?私とてなんでも打算の上で行動している訳ではないのだからな。
同族間の殺し合いなど、そう珍しいものでもないであろう?」
映画がもたらす感動が非日常との触れ合いによるならば、今居合わせている観客達には残念ながらそれは訪れないのだろう。
ただそこにいる事だけが存在意義であるかのような彼らに、哀れみこそ感じるもののただそれだけだ。
同様に相手に聞こえる程度の声量で語る沙希の声に、時折ポップコーンを噛み砕く音が混じる。
「そうだな、人間はともかく彼奴らは何かしらの動きを見せるだろうよ。今この街を取り仕切っているのが誰かは知らんが。
だからといって何をどうするというつもりもないぞ、今の所はな。何より情報が足りぬ故」
これでいいか、と横目で女を見やってドリンクに口をつける。
そもそも納得させるつもりがないのか、はたまた本当に何も考えていないのかまで読み取るのはこの暗さでは難しいだろう。
「ああ、此方からも1ついいか?そういえばお主の名をまだ聞いていなかったの」
236
:
桜井直斗
◆o/zdiZN8A2
:2016/01/18(月) 00:58:19 ID:if7ZXLvA0
>>234
日々奈の言葉に思わず困惑する
彼女が自分に責任を感じているのだろう、その罪悪感とかの感情が入り混じる事に気付く
「.............分かった。」
桜井も何かを察したのだろうか
彼女の言葉に少しだけ沈黙してそう口にした
ギュッと右手を握りしめた
構える高さからして頬だろうか、この距離なら外す事はない
桜井はその構えた右腕を全力で───────。
日々奈の頬へ向けて
「......なんて、やる訳ねーだろ。 俺が女に、ダチに手を上げた事なんてあったか?」
──────振りかぶらなかった。
握りしめていた拳はいつの間にか開いていて
音を立てて頬にビンタする腕はビンタどころかただ頬に触れた程度だ
「...お前が俺をどうしようか迷う事はない。自分を信じるんだ
ましてや、俺の事に責任なんて感じる必要なんかない...俺もお前の事に気付けれなかったんだから」
日々奈の頬から手を離して言う
その手はとても温かくて────。
「...でも、お前が俺の事をそこまで本気で思ってくれて嬉しかった。
..スゲー嬉しい。やっぱお前に話せて良かった」
そう、紛れもない表情で
人間でも悪魔でもない"桜井直斗"の笑顔で答えた
237
:
◆10pX8BMxfE
:2016/01/18(月) 00:59:50 ID:ydEYc846O
>>220
/一応置きレスです。お暇な時、絡んでください
238
:
日々奈彩花
◆xZ2R3SX0QQ
:2016/01/18(月) 01:15:11 ID:/hFq9EzI0
>>236
「――――――ッ」
頬に触れられた手は暖かく、悪魔や人間のそれとは違う。
人間の温もりでいて、けれど悪魔の温もりでもある。
紛れもない桜井直斗の温もりだった―――――。
日々奈はその手に自身の手を重ねる。
普段の、今日初めて出会った時同様の無邪気な笑顔――――今まで何度も見てきた、彼の笑顔。
いつか見た―――――初めて桜井と出会い、初めて目にした彼の笑顔を思い出す。
あの時の笑みも今の笑みも、全て知っている。
消えてなんていなかった。失われてなんてなかった。
自分の見てきた、認知している笑顔が―――――目の前にはあった。
その事実を知り、日々奈はクスリと微笑む。
そして――――――――――――
「………じゃあ、代わりに私が殴るね」
右拳を振り上げた。
普段の日々奈の口調でいて、いつも通りの日々奈彩花がそこにはいた。
然し、不思議と日々奈の表情は笑顔でいて、恐らく先程までの苦悩は桜井の助けにより消えたのだろう。
その拳を振り下ろすことはないが、脅しにはなるか。
普段のたわいない日常でよく見かける状況だ。
桜井に感謝され照れているのか、日々奈の頬は僅かながらに紅く染まっていた。
「…………ねえ、私も一つ聞いてほしいことがあるの」
日々奈は再び真剣な顔付きを見せる。
雰囲気から察する限り、彼女は桜井の暴露話同様の爆弾発言をしようとしているのだろう。
239
:
メモリー
◆3wYYqYON3.
:2016/01/18(月) 02:00:09 ID:tVFZhA6M0
>>235
「人間の間では、それは過剰防衛というらしいですよ?貴女ほどの実力があれば、あそこまでやる必要はなかったでしょう」
キャラメルのたっぷり絡んだポップコーンをちびちびと口に運びつつ、「まあ、人間もしばしばそういう事をしますから不思議ではありませんが」と付け加える。
口調は、何処か皮肉を含んでいる。
「何をどうするつもりはない、ですか。実に貴女らしい答えです。ですが......今回ばかりは早めに手を打っておかなければ後悔する事になるかもしれませんよ。貴女が情報が足りないと言って動かない間にも、相手は動いているのですからね」
(......こんな風に)
この台詞を喋ると同時に、少女の記憶へ、メモリーは不可視の魔の手を伸ばしそれを書き換えんとするだろう。先程の発言の意味を身を以て体感して貰おう、と言う趣向だ。もしも少女が言葉とは裏腹に警戒を怠っていなければ、記憶を保つ事に集中すれば改竄を防げるだろう。
書き換えようとする記憶は、2つ。
1つは、沙希の持つ能力やその使用法に関する記憶の消去。最も、これは少女が怒り出した時の保険とでもいうべきか。
「その証拠に、ほら。『思い出してみてください』、私の名前を」
そしてもう1つは、一度も聞いた事のないはずの、女の名前「メモリー」を記憶に書き込む事。
スクリーンの光により、暗闇にぼんやりと浮かぶ女の顔は、笑っている事が見て取れるだろう。
その笑顔には、「今はまだ」敵意はない。
240
:
沙希
◆gH01LWUntE
:2016/01/18(月) 02:52:09 ID:Y9DCRQiM0
>>239
「なに、あの時は少々癪に障っていたのでな。それに生きて情報を振りまかれるよりは屍を晒してもらった方がよい」
皮肉交じりの口調にもどこ吹く風、小さくせせら笑ってまたポップコーンを放り込む。
映画の内容にも頓着せず話し続ける2人は異質そのものだが、気に留める者など誰1人としていない。
「後悔か。そもそも此度の件、私はほとんど部外者であるからな。気にせず勝手にやってくれればいいものを。
最悪、事の顛末を見届けるだけでも充分楽しめるだろうよ」
闇から伸びる改竄の手。それは未だ致命的ではないものであったが、ある種沽券に関わるものと言っても過言ではない。
しかし少女は既に、相手の能力が精神干渉系のものであると当たりをつけていたのだ。
人間側の重要文書を持っていた事から、最初はただ向こうに潜入しているだけかと思っていた。
しかしAPOHとはなんの関係もなさそうに思えるここに連れてこられてから、別の予想が首をもたげ始める。
そして他の人間の様子を見てようやく、その想定は確信へと近づいていた。
「ふむ、すまんの。歳のせいか物忘れがひどくてな。もう1度教えてくれんか?」
だからこそ、自らの能力に関する記憶を守る事ができた。とはいえ全てを弾いた訳ではない。
具体的な能力までは予想がついていなければ、しっかりとした対策を練る事も難しい。
流れ込んできた相手の名前に僅か目を見開くが、スクリーンの光だけで気がつくのは難しいだろう。
それでもあえて知らない振りをするのは、急な悪戯への意趣返しといったところか。
241
:
桜井直斗
◆o/zdiZN8A2
:2016/01/18(月) 04:02:55 ID:if7ZXLvA0
>>238
「うんうん.........ってちょ、ちょっと待て!! ここで殴る流れか!?」
その思わず困惑し後ずさる桜井
身を守ろうとこっちも腕を構えたが────。
いつまでたっても日々奈の拳は降らない
その言葉が冗談だとわかるにお互いに笑い合った
自然と笑みが出てきて、こうやって互いに笑いあう
この2人が守りたい日常が、そこにあった
「...........」
そして、彼女が自分に伝えたいことがあるという
きっと自分が彼女に伝えたような重大なのだろう
思わず沈黙するだろう
これから起きる戦いで重要な事柄かも
「......あぁ、何だ?」
だから、今度は自分の番
沈黙を破って彼女の言葉を受け入れる
彼女が俺の話を聞いてくれて、受け止めてくれたのなら
今度は俺が、彼女を受け止めるんだ
その目はいつだって真面目に、日々奈を見つめている
242
:
メモリー
◆3wYYqYON3.
:2016/01/19(火) 00:58:48 ID:tVFZhA6M0
>>240
「あらら?おかしいですねえ?私は『メモリー』ですよ、沙希さん」
笑いが混じりつつも、少女の悪戯を見透かしているという事を感じさせる、ある種のわざとらしい言い方だ。
能力関連の記憶改竄は失敗したが、名前の書き換えは確かに成功した手ごたえがあった。
こちらの認識を誤らせる能力があるか、それともただしらばっくれているのか......
悪魔の間での噂と報告書、さらに先程探る中で読み取った幾つかの記憶から推測すれば恐らく後者であろう、と言うわけだ。
「まあいいです、安心しましたよ。貴女がその口で言ってるほどの破滅願望持ちでなくて」
『何をどうするつもりもない』と言っていながらも、(意識的かどうかはともかく)少女は自身や周囲の状況を的確に判断し、必要があればそれに対する適切な策をきっちりと打つであろう。
先程の記憶をめぐる攻防は、女にそれを確信させるには十分であった。
(沙希さん......やはり、貴女が私にとってベストな選択のようですね)
その思いを胸に、こう問い掛ける。
「そんな貴女を見込んでお聞きします」
「私と、同盟を組む気はありませんか?」
243
:
沙希
◆gH01LWUntE
:2016/01/19(火) 10:32:52 ID:xOtEyC7.0
>>242
「ああ、そうであったの。どうも長く生きるといかんのう、許せ」
くつくつと笑うそこに悪意は見られない。少女にとって虚構が見破られても、さしたる問題ではないのだ。
コメディ映画の上映中ならばなんらおかしくはない小さな笑い声も、今はひどく異質なもののよう。
女の安堵の言葉を受け流した無言は、話の続きを暗に促していた。
「……ほう?よりによってこの私を相手に選ぶとは。
如何に後悔しようと構わんのだな?」
悪魔とは生来、情も憐憫も持ち合わせていないものがほとんどだ。
それを同族間で考慮せずに済むのは、偏に信仰のおかげと言える。
しかしごく一部、信心とは縁遠い連中も中にはいる。同胞にさえも容赦なく刃を向けるもの達が。
そしてこの少女もまた、その少数派であると言っても過言ではないのだ。
いつ裏切られようとも構わないのか。そんな問いが言外に含まれていた。
「まあよい。まずは話を聞いてからだ。して、もう少し具体的に言ってみろ」
244
:
日々奈彩花
◆xZ2R3SX0QQ
:2016/01/19(火) 17:43:20 ID:/hFq9EzI0
>>241
「………………」
少しの間だけ、日々奈は黙り込む。
桜井の真剣な眼差しを感じ、同じくそれを送り返す。
そして――――――
「わ、私も…………悪魔なんだ」
吐き出すように、されど何処となく怯えながら、日々奈は真実を打ち明けた。
覚悟を決めたその表情は、何かを決意した力強いもので――――桜井の目の前に立つ日々奈彩花という少女は、一人の悪魔として、その場にいた。
自分の正体を聞いて、彼がどんな反応をするかは分からないが、同じ立場である桜井には、話しておきたかった。
245
:
秋宮渚 桜井直斗
◆o/zdiZN8A2
:2016/01/19(火) 18:25:50 ID:if7ZXLvA0
>>244
驚かなかったと言えば、嘘になる
人とは違う。どんなに人と同じ形をして同じ言葉を喋れても
誰もが"人ではない"と一線引く存在
悪魔であると聞かされれば────。
「あ...悪魔....?」
日々奈の怯える顔見て、自分はどんな顔をしただろう
自分はその言葉を受け止めれているだろうか
自分は、彼女にどんな言葉を掛けたらいいのか
「..........」
一息、深呼吸
そして──────。
ペチンッと
日々奈の額に一発、デコピンを放つ
そこそこの痛みを残す。強い一撃
「なーに不安な顔してるんだよ。 お前らしくもねぇ」
と、不敵に彼は笑った
日々奈が自分の正体が悪魔と、その言葉の真意は何だろうかと思った
言葉の重さは、きっと信頼の証だろう
桜井が日々奈を信じたように
日々奈もまた、桜井を信じた
「何というか、...他のダチにもAPOHか悪魔がいるかなとは思ってたんだよ
...その、言ってくれてありがとな。 嬉しかった」
その事実が、嬉しかった
悪魔とか、人間とか桜井自身にとって違いはかなり曖昧だ
そこには当然、蔑みも何もない
日々奈の信頼がただ嬉しい
そう、照れ隠しなのか笑って答えたのだった
「...にしてもお前も悪魔かー...ますます、俺の持論が固まっていくな。
これじゃあ、誰が悪魔か見ただけで分かるかもな」
と、桜井は腕を組んで考え込む
何を考えているだろうか
まぁ付き合いが長いと分かるが、こういう時の男子生徒
...もとい、桜井は大抵バカをやらかす前兆なのだが
246
:
日々奈彩花
◆xZ2R3SX0QQ
:2016/01/19(火) 20:30:44 ID:/hFq9EzI0
>>245
額に若干の痛みが走った。
日々奈は弾かれた額に手を当てると、涙目で桜井を睨みつける。
こちらの心配など無駄だと思える彼の笑顔が目に入り、日々奈は心の内で微笑。
そして、口角を上げてその感情を体現すれば、日々奈は意地の悪い表情を浮かべて、桜井の額を指で弾く。
''なに、偉そうにしてんのよ''と言わなくとも伝わる、圧力を醸し出しながら――――――。
然し、それが普段の日々奈であり、桜井の友人である日々奈彩花という少女のいつも通りの反応なのだ。
「うん……確かに、あなたのいつも通りね。
今日の私は少し変ね――――――」
桜井の意見に同意する。
昨日や一昨日の、過去の自分からは想像できないほどに、弱気だった気は確かにした。
然しそれは、彼が――――桜井直斗といった身近な人物が、自分と同じ人間であり悪魔であるという特殊な存在だったことによる嬉しさや安堵からのものであった故、日々奈は恥ずかし気に目を逸らし――――――
「うっさい!」
必死に照れ隠しをして、彼の顔を蹴ろうとした。
「……自論って、あなたまさか変なこと考えてない?」
247
:
桜井直斗
◆o/zdiZN8A2
:2016/01/19(火) 20:59:51 ID:if7ZXLvA0
>>246
「────っ! お前力つえーな本当...」
こうやってやられたらやり返す仲
遠慮なくできる。悪友
2人の関係は、こういうものだ
「蹴るな蹴るなっ!! 全く...言った通りだ。 悪魔の見分け方って奴だ
そりゃそういう道具使えば分かるんだろうけどさ、俺持ってないし」
大真面目そうに語ろうとするが、彼のキャラ的に非常に胡散臭い
こういうバカを他の男子生徒とやってるから周囲の人間からも
「重要な場面で鈍感で難聴」「黙ってりゃそれなり」とか「何というか、いろいろ残念な人」
とか、言われてるのだ
────多分、本人は気付いてないだろうが
だが、彼の言うように悪魔を見分ける方法があるのなら何かと便利だ
街中にいる悪魔の姿を確認できれば、いざという時に先手を取られない
人にでる被害を最小限で食い止めれるかも
そう考えれば、聞く価値はあるだろう────。
「男はわかんねーけどな。少なくとも女の悪魔はだいたい見分けが付く気がするぞ?
アレだ、綺麗なんだよ。顔付きとか声とか、そういう美人に多いと思うんだ。」
────前言撤回。
こいつは一回締め上げた方が良いかもしれない
「言っておくが、別に人間全員ブサイクって言いたいわけじゃないぞ?
吸血鬼が美しく異性を魅了させる力があるという
きっとそういうのが潜在的に悪魔にも──────ん? どうした日々奈?」
そこまで言って日々奈の変な様子に気づくだろう
こんな馬鹿げた持論を自信満々に展開する桜井
本当に、バカだ この男は
248
:
日々奈彩花
◆xZ2R3SX0QQ
:2016/01/19(火) 21:56:43 ID:/hFq9EzI0
>>247
淡々と自論を展開する桜井を前に、日々奈は呆れた表情を浮かべる。
たびたび、彼に対しては馬鹿っぽいといった印象を抱いていたが、まさかここまでとは――――――。
日々奈は、溜息を吐くと桜井の自慢気な自論が終わるのも恐ろしいほど静かに待った。
そして、今更気が付いたのか、此方の変化に反応を見せた桜井だが、日々奈はその質問を無視。
自論が終わりを告げたのを確信すれば、鋭い目付きで彼を見据えて
――――――あなたは馬鹿なの!!?――――――
と怒号を撒き散らした。
夜桜学園に木霊する日々奈のさけび声は本日一番の大声量だろう。
「そんな単純な特徴で、悪魔か人間か見分けられるわけないじゃない!
いい!悪魔はね、普段から人間に擬態してる奴だけとは限んないのよ!」
ビシッと桜井の鼻先に指をさし、悪魔を甘く見据えている桜井に御説教。
APOHに所属しているだけあり、彼の自論が如何に間違っているかは分かるようだ。
一般市民である桜井とAPOHの日々奈では、悪魔に対する知識に大きな差があるのは明白だった。
そのため、彼が悪魔の見分け方を見つけたといった際には、内心嫌な予感がしていた。
「ハァ………呆れた。まさか、何を自慢気に語ると思えば、こんな内容だなんて。
どうやら、あなた悪魔の知識を増やす必要があるみたいね」
やれやれ、と言わんばかりの表情を見せつつ、何処となく先輩面をする日々奈。
「てか、まずあなたって自分の悪魔の力をちゃんと制御できてんの?
なんか今の間違えだらけの自論を聞く限りだと、それすらもが心配なんだけど………」
249
:
日々奈彩花
◆xZ2R3SX0QQ
:2016/01/19(火) 22:02:05 ID:/hFq9EzI0
ふと、彼との会話を思い出す。
そしてその内容から推測する限り、桜井は悪魔の力を使いこなせてはいないのではないだろうか。
先保、正体を明かした際に街の騒乱を止めたい、義務を果たしたいと言っていたが、力を制御できないのでは、彼の目標は達成されないだろう。
故に、日々奈は桜井へ確認をとる形で質問をした。
もっとも、悪魔の見分け方を聞いた時点で、彼がいまだ未熟であり、力をセーブしきれていないと予想はしているが――――――。
250
:
桜井直斗
◆o/zdiZN8A2
:2016/01/19(火) 22:29:55 ID:if7ZXLvA0
>>248
「ああああ!! ですよねー!!」
日々奈の怒号に仰け反りながらその反応分かってましたと
耳を押さえてもなお響く彼女の声はどこまで響いたのだろう
明日あたり、屋上で何してたのかと問い詰められそうだが...まあいいか
「知識も何も...こっちは悪魔デビュー数週間だぜ...?
何かあるなら教えてくれよせんせー」
地面に座り込んでそう答える桜井
まぁ、今まで悪魔も何もかもが創作のファンタジーだと思ってた人間だ
今の段階で知識が豊富である事は難しいとは思う
そんな彼にできるのは、己の体を知ることだけ
「──────。」
制御できるのか、という問いに自分の右手を見た
何の変哲もない手
一度意識をオンにすれば、この自分の肉体を覆うように獣の肉体が出現できる
理性なく、本能で相手を喰らう狼男だ
「────確証はない。 できるかも分からないけど...
こいつは俺の半身だ。 使い続ければ飼い慣らせるかもしれない」
試した事がある
1人での修行中の時、変身中あえて"何もしない"事ができるかという実験
結果から言うと、できた
返信する前から意識し続ければ、変身後もその単純な命令を維持できるかもしれないというもの
「俺の中のこいつが、俺と一緒になればきっとイケる」
今はきっと、どちらかしか表に出ていないんだ
同じ肉体を"人間の桜井直斗"と"悪魔の桜井直斗"が使っていると仮定される
普段は人間として、あるタイミングで入れ替わるよう
これを完全に使いこなすというのはつまり────。
「...ま、やるだけやってみるだけさ」
意識の同一、理性と本能の融合
2つの精神が限りなく混ざり合うことではないのか
2人が混ざり合うというのは、今の桜井直斗が桜井直斗でなくなることになる
今とは違う自分になる事と同義だ
それにも関わらず、彼の顔に不安は見えない
頭の後ろで手を組んでタンクに凭れかかって笑っている
この自信は何だろう、元々前向きな性格ではあったがこれは少し行きすぎてる
251
:
メモリー
◆3wYYqYON3.
:2016/01/20(水) 02:39:38 ID:tVFZhA6M0
>>243
「後悔?とんでもない。後悔しないと思ったから、貴女にこの話を持ちかけたのですよ」
暗闇にぼんやりと浮かぶ顔はニコリと笑ってはいるが、女の目にそれはない。
そして、その表情のまま、語り始める。
「簡単な話です。この街で今起きている騒ぎ、ひいてはその先を生き残る為のお互いにとっての最善手、といったところです」
バターと塩のかかったポップコーンを一粒、口へ放り込む。
「ではまず、貴女の置かれている立場と、同盟のメリットから話しましょうか。
貴女は先日、愚鈍ではありますが熱心な『あの方』の信者を1匹殺してしまいました。その結果今、貴女は人間と悪魔の両方から目をつけられてしまっています」
今度はキャラメルへ手を伸ばす。既に残りは少なく、紙のバケツの底に指が触れる。
『あの方』というのは、悪魔であればその名前を知らない者はいない存在_____ルシファの事だ。
「人間は言わずもがな、悪魔の方も貴女を放ってはおかないでしょう。『あの方』自身か、それともその周りの意思かは分かりませんが、必ず貴女を近い内に潰しにかかるでしょう。『あの方』がこの街を支配する中で、貴女のような非協力的な悪魔は邪魔でしかないはずですからね」
幾ら相当な力を少女が持つとはいえ、幹部級の悪魔はそう安易に相手にしたくはないはずだ、というのがメモリーの読みだ。
「要するに現状の貴女は、『もうこの街で起きている事に部外者でいる事は出来ない』というわけです」
ドリンクへと手を伸ばし、暫くの間が開く。
一息置いて、再び話す。
「ですが、私と同盟を組めば話は別です。手を組めば、全ての人間と悪魔......とは言いませんが、少なくとも諜報部隊まがいの中級・下級悪魔や、並の人間の目は欺けます。上手く立ち回れば、貴女の存在を向こうの頭から完全に消してしまう事も、罪を適当なものに擦りつける事も不可能ではないでしょう」
メモリーの持つ記憶操作の力は、それがどれほどのものか少女も先程味わったであろう。
情報操作に関して、現状自身の右に出る悪魔は存在しない、とメモリーは自負している。
「............如何ですか?」
ひとまず、少女のこの提案への反応を確認する。
自身についての事は、まだ伏せたままで。
252
:
沙希
◆gH01LWUntE
:2016/01/20(水) 09:21:59 ID:KcDs7/aA0
>>251
「そうか、お主がそこまで言うのならば私からはなにも言わんよ」
愉快そうに目を細める。劇場内を朧に照らすスクリーンでは、いよいよクライマックスに差し掛からんというところだ。
その決断が全てを飲み下せるという自負からか、はたまた若さ故かはまだ判断がつかない。
ただそれも一興、とも思った。沙希にとって人間だろうと悪魔だろうと、愉しませてくれればそれで充分なのだ。
女の話に口は挟まない。正面を見据えたまま残りも僅かなポップコーンを物惜しげに口へと放る。
ややあっての確認に少しだけ悩むように宙空を見上げ、「そうだな」と小さく零した。
「大方お主の言う通りで間違いはないだろう。此方の利益も理解はできる。
それで、お主は私になにを求めるつもりだ?」
確かにここまでの話を聞く限り、こちらのデメリットはないようにも思える。
しかしそれだけで済むはずがないのだ。同盟とは名目上は対等の上で成り立つのだから。
そのバランスが崩れればそれは最早、同盟ではなくただの隷属にすぎない。
ちらりと横目で女を見て話の続き、つまりはその対価の内容を目で促した。
253
:
日々奈彩花
◆xZ2R3SX0QQ
:2016/01/20(水) 09:43:20 ID:/hFq9EzI0
>>250
「………………………」
話を聞いた日々奈はただ沈黙する。
結果的に桜井は悪魔の力を制御できておらず、更に今の現状がとても不安定だと分かった。
人間である桜井直斗と悪魔である桜井直斗の存在融合により、形成された桜井直斗という人物。
その人物が、悪魔になるか人間になるか、はたまた両者になるか――――――。
彼の今後を決めるのは、桜井を刺激する存在により大きく分岐する。
「…………………………」
他者に感化されやすい、不安定な状態だということに桜井本人は恐らく気が付いていないだろう。
日々奈は、その現状と事実に危機感を感じた。
「課題は山積ってわけね………」
一人険しい表情を浮かべ、日々奈は頭を悩ます。
桜井が悪魔の力を使いこなせていたならば、後は知識を叩き込むだけで良かったのだが――――――。
流石に、悪魔になってから数週間―――――というよりは悪魔という自覚を持ってから僅かなの時の中で、それを我が物にするのは難しいか。
「はぁ……………」
先に見える課題の山脈に気が滅入ってしまう。
もっとも、桜井自身はそんなこと気にもしていない様子だが。
「ま、なるようになるか……!」
しかし、今やるべきことは判明した。
日々奈は拳を強く握りしめると、ズイッと桜井の顔に自身の顔を接近させる。
いつもより、力強い日々奈の表情は悪巧みの影すら見えるほど、怪しいもので―――――
「あなた、私とタッグを組みなさい!」
大抵、予想外な発言をする。
「今のあなたじゃ、義務を果たすどころか、自分すら守ることができない。
だから、同じ人間であり悪魔な存在、半悪魔である私が先輩としてあなたを鍛えてあげるわ!」
彼女には彼女なりの思考があったのだろう。
そしてその結果、日々奈はこのような答えを導き出したのだ。
今の桜井は力を使いこなせていない。
ならば、同じ立場である自分が手を貸し、彼のレベルを上げさせれば良い――――――。
恐らく、人間に鍛え上げられれば、人間としての桜井直斗が強まり、悪魔に鍛え上げられれば、悪魔としての桜井直斗が強まる。
人間と悪魔の―――両方の桜井直斗を均等に作り上げるには、どちらか片方の存在ではなく、どちらともが必要なのだ。
ならば、その双方を兼ね備えた自分が彼を完成――――――とまではいかなくとも助力し、力を手に入れさせることは可能だろう。
「それに、ザミエルの異名を持ち悪魔にビビられる私なら、十分にあなたの相手をできると思うけど?」
日々奈は、APOHでは魔弾の射手と異名を持ち、悪魔からはザミエルと呼ばれ一部から恐れられている。
それほどの実力を持つ存在ならば、仮に桜井が暴走したとしても十分相手になり、最悪殺すことも可能だろう。
そういった観点からもやはり、自分が適任だと日々奈は考えた。
「――――――で、どうする?
私の申し出受け入れるのかしら?」
姿勢を立て直すと、日々奈は桜井へと手を差し伸べる。
彼の返答を待つ彼女の姿はとても頼り甲斐があった。
254
:
桜井直斗
◆o/zdiZN8A2
:2016/01/20(水) 17:57:54 ID:if7ZXLvA0
>>253
「た、タッグ!?」
それはつまり、コンビを組むということか
日々奈と...俺が?
なんというか、確かに彼女の方が悪魔としての経験は上だろう
右も左も分からない自分にいろいろ教えてくれるのはありがたい
悪魔にビビられる日々奈なら、自分が暴走しても止められるだろう
だが、────────。
「その提案は魅力的だけど、1つ確認したい
それは、俺がAPOHの傘下に入るという意味ではないよな?」
"黒獣"────確かそう言っていたはずだ
悪魔となっている俺を、彼らは...APOHの人間はそう言っていた
俺は、狙われている
正体がバレれば俺の命が危ない
それに俺を匿う大宮や黄昏だって危険な目に合う
「俺はどちらの味方でも敵でもない。
その時によって、俺の牙が向く相手は違う────。」
人と悪魔と、2つの世界を知ったのだから
2つの世界を繋がなければならない
それを、分かってくれるか?
そう確認するように日々奈に問いかけた
もし了承するなら、彼の手はその日々奈の差し伸べられた手を握るだろう────。
255
:
メモリー
◆3wYYqYON3.
:2016/01/20(水) 20:10:20 ID:tVFZhA6M0
>>252
「ざっくり言ってしまえば、私の後ろ盾になって欲しい、ってところです」
その問いを少女がしてくる事は、予測がついていた。当然だろう。
いくら魅力的であっても、その価格が分からなければモノを買おうとはしないのが、一般的な選択だろうから。
「私は昔から荒事が苦手でしてね、ですからこうして『巣』を張って、慎ましくやらせてもらっているわけです、が」
烏龍茶を飲もうとするが、ズゾゾとストローは音を立てるばかり。
「......いかんせん、まだ守りが薄い。勿論ノーガードという訳ではありませんが、現状だと退魔師連中が数人そのつもりで乗り込んでくれば、私は此処を放棄せざるを得なくなるでしょう」
事実、今この場の観客には、万一に備え支配下に置いた退魔師を数名紛れ込ませている。
無論少女に勝てるとは思ってはいないが、逃走程度なら何とかなるだろう、と言う目論見だ。
「記憶を書き換えるにしても、定期的に記憶を書き換え続けなければ、ひょんな事で記憶を取り戻しかねない。勿論、そんな事になったらおしまいです。ですから、記憶操作無しで、自分の意思で動いてくれる協力者が欲しいんですよ」
この事は、同盟を組む場合、とりあえずの裏切りへの牽制として働くだろう。
もし同盟を組んだ上で少女が裏切れば、記憶操作により封じ込まれていた疑惑が一気に噴出する事となり、それは少女の破滅を招くだろう......。
「......それに、今後悪魔として生きていく上で、貴女とのお付き合いを始めておくのは有用だと思いまして」
ニヤリと、口元が歪む。
まるで、此処からが本題と言わんばかりに。
「悪魔の寿命は、今でもはっきりしていませんが、少なく見積もっても数十億は超えてくるでしょう。対して、人類がどれだけ長くこの繁栄を続けられるでしょうか?」
地球史上、「大絶滅」と呼ばれる現象はこの数億年の間に5回ほど発生している。
6度目のそれに人類が巻き込まれ絶滅する可能性も、ゼロではない。
それを抜きにしても、生物の代替わりのサイクルを考えれば、一悪魔の生涯を終えるより先に人類が滅ぶ可能性は、極めて高いと言えるだろう。
「私達以外の生物が滅んで新たな富が生み出されなくなれば、節制と言うものを知らず、怠惰で傲慢で貪欲な私達は残った富を巡っての闘いを余儀無くされるはずです。そのときへ向けて、強力な貴女とある種の縁を結んでおきたい、と言う訳です」
「納得して、頂けましたか?」
256
:
沙希
◆gH01LWUntE
:2016/01/20(水) 22:03:40 ID:Y9DCRQiM0
>>255
「ほう?お主、顔に似合わずなかなか思い切った事を言うのだな」
かいつまんだ要点はさすがに予想外だったのか、ほんの少し目を見開いて横を見る。
遠回しな警告についてはもちろんその意図まで理解していたが、それよりもメモリーの真意の方が少女の興味をくすぐった。
ルシファへの信奉を是としない悪魔は少数なれどいつの時代にも存在する。
そしてその誰もが、どれほど強大な力を持っていたとしても悪魔たちの間では腫れ物扱いされるのだ。
無論沙希とて例外ではない。彼女もそれは分かっているだろうに、自分を相手に選んだ事に驚きを隠せなかったのだ。
「随分と先まで考えているのう。私なんぞは現在の事で精一杯よ」
女が語り終えて幾許かの間が空き、大きく息を吐いてついて出たのはそんな感嘆ともとれる言葉。
嘘ではない。これまでも少女は後の安泰よりも今の快楽を選びとってきたのだから。
そういった意味では、2人は本質的に異なると言えるのだろう。
なにがおかしいのか忍び笑いを漏らしながらも、心の内では損得天秤の行方を見守る。
そして沙希の選択は、幾分とあっさり下された。
「いいだろう、気に入った。お主の言う同盟とやら、受けてやろうではないか」
細かい打算はいくつもあった。だがそれらを軽く上回ったのがメモリーの言い分と、何より自分を選んだという事だ。
なにを決め手としたのか窺い知る事はできないが、ここまで来れば言語化できる理由は必要ない。
なおも笑みを絶やさぬまま、軽い調子で了諾の意を唱えた。
257
:
メモリー
◆3wYYqYON3.
:2016/01/21(木) 23:53:22 ID:tVFZhA6M0
>>256
「いいえ。さっきも言いましたが、貴女は貴女自身が思うより、ずっと先見性があると思いますよ」
その言葉に、嘘はない。
それが、少女を同盟相手に選んだ1つの理由でもあるのだから。
隷属の関係ならば、相手は愚鈍であっても問題ない。
しかし、同盟となると話は別だ。
同盟は、対等であってこそのもの。少なくとも、明らかに自分より劣る脳味噌の持ち主では、話にならない。
互いの意図を察し合い、ときには牽制し合い、最終的に互いの利益を最大化する。
女が同盟に求めるものは、そういうものだ。
「快諾、感謝します。では連絡先を渡しておきますので、何かあったら連絡するか、此処に直接いらしてください。歓迎しますよ」
メモ帳に携帯番号とメールアドレスを記し、少女へ渡そうとする。「此処に直接いらしてください」と言ったのは、出会った時の様子からして、この社会に馴染み切れていないであろう少女への配慮だ。
「出来れば、こちらにも連絡手段を頂ければ有り難いのですが、お持ちですか?」
スクリーンには、映画の終わりを告げるスタッフロールが流れていた。
258
:
<削除>
:<削除>
<削除>
259
:
沙希
◆gH01LWUntE
:2016/01/22(金) 00:57:29 ID:Y9DCRQiM0
>>257
「うむ、今度は別の映画でも楽しませてもらおうかの」
差し出された連絡先を素直に受け取りポケットに捩込む。
察しの通り少女はこの時代を知ってからまだ日が浅い。特に電子機器などは未知の世界だ。
もちろん携帯電話を持っているはずもなく、連絡手段を聞かれれば僅かに眉を顰めてううむと唸った。
「すまぬが持っておらなんだ。すまーとほんだったか、さぞ便利であろうがどうにも馴染めんでな。
そうだな…お主、『クロヤギ』は知っておるか?」
バー『クロヤギ』。この街の悪魔間ではそこそこ知られた憩いの場だ。
その名をメモリーが知っているのであれば話を続け、もし初めて聞くのであれば簡単な説明を挟むだろう。
「あそこにはよく顔を出す故な、用があれば時と場所を店主に伝えておけ。出来る限り向かってやろう」
無感動に流れるスタッフロールが終わりを告げ、劇場内がほのかな照明に照らされる。
慣れない光に眩しげに目を細め、話は終わりと徐に席を立つ。
「馳走になったな。改めてこれからよろしく頼むぞ、メモリー」
新たな同盟相手をちらりと見やり、柔らかな笑みとともに軽く優美に一礼。
もし女が呼び止めなければそのまま劇場、ひいては彼女の根城を無言で後にするだろう。
既に夕闇に包まれつつあった街に繰り出た少女は1人、これからの騒乱に思いを馳せて頬を吊り上げた。
/それではこの辺りで〆でいいでしょうかっ
/長時間ありがとうございました!
260
:
メモリー
◆3wYYqYON3.
:2016/01/23(土) 21:36:22 ID:tVFZhA6M0
>>259
//長い間お付き合い頂き、ありがとうございました。楽しませていただきました。
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