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ダンゲロスSSヘル✿流血少女 本スレ

6榑橿(1話の前日譚的な幕間だけど別世界です):2022/10/16(日) 21:09:03
「…糸で巻かれたというようなことは?」
「こちらの友人が解いてくれたので大丈夫でした」
「つまり、2人とも当事者ってことでいい?」
「遺失物拾得という扱いならば1割貰うつもりはありません、それでは」

そそくさと部屋を出ようとする君はしかし、横合いから突き飛ばされた。
突き飛ばしたのは不居潟さん。
直後、彼女は空中に浮き上がるようにして吊り下げられた。
その身体にはテニスボール大の蜘蛛が何匹も群がり、爪先から糸を巻き付けられていく。

彼女は君を庇ったのだ。

「何故です」

ボストンバッグを探りながら君は振り返る。
壁、天井、床から大小様々のボール達がにじり寄ってくる。

「全国大会前に不祥事は頂けないから、それ以外に理由があるか?凶暴化段階の蜘蛛を部員が規定外の場所で放してしまったという事実を漏らすわけにはいかない。君が糸に巻かれる姿を見た生徒は他に居るかもしれないが、それは他所の管理ができていない学校から逃げたくもちゃんのしたことにすれば良い」

萱津の目は蜘蛛達のものと同じだ。
人間らしく焦点を結ばず、単純な明度を見ることしかできないような、そんな目だ。

「不居潟さんと私を逃がしてくれるならば、ここでの出来事を漏らすつもりはありません」
「そんな言葉を信じられるとでも?全国大会常連の我が部は僅かな瑕疵も悪評も大きな悪評に繋がるのだ。なに、普段から馬一頭を餌にしている彼らは骨まで溶かして食べてくれるから証拠は残らない。安心してくれていい」
「そんな話はしていない!」

激昂した君は魔法瓶を取り出し、湯気の立つ紅茶を周囲へぶちまけた。
それを浴びた蜘蛛は脚をバタつかせるが、萱津さんは火傷の赤い色を皮膚に浮かべる。

「プレゼントだ。おかわりが欲しいか、まだあるぞ!」

すぐに不居潟さんの方へ向き直って蜘蛛をはたき落とすと、身体に張り付いたロープ、あるいはテープ状の糸を剥がして地面へ下ろす。

「逃げよう!」

君は不居潟さんの脇を抱えて立たせようとする。
私は正直に言うと不居潟さんのことはよく知らない。
君が過ごした高校生活は4月から10月の約6ヶ月、換算すれば約180日。
細かい数までは覚えていないが、最低でも12回は能力が発動しているはずだ。
その中で彼女と友人になったのは3回ほど、顔ぐらいは知ってる程度の知り合いだったことは4回ほど、残りの5回かそれ以上ではそもそも全く顔を合わせていないか、存在していなかった。
友人であるのに殺したり、顔見知り程度なのに殺されたりしたこともある相手だから、私の中では正直人物像としても不確かだ。

君の頭の中には、15日の期限が表示される以前のこの世界での不居潟さんとの6ヶ月間が実在していて、そもそも彼女のことを知らなかった、大して繋がりのなかった君に関する記憶は無いのだろう。

だから、この友人に対する思い入れは私と君との間で大きく異なるものだろう。
体勢を立て直して再び群がる蜘蛛を、触りたくも無いのに払い除ける君に、早く逃げろ、1人で逃げろと私は呼びかける。
しかし、この声は絶対に君に届かなかったしこれからも絶対に届かない。

ミイラ男のように、不居潟さんは先程よりも隙間なく包まれ、顔を出せるように必死で糸の膜を剥がす君も少しずつピンポン玉とソフトボールとボーリング球に寄り付かれ、包まれていく。

「毒も熱も衝撃も、くもちゃん達には効かない。育てる過程で覚え込ませた薬品の香りを体臭に馴染むほど長期間服用している人間を除けば逃れることはできない。血の踊り場事件のことも隠し切ったのだから、ここでミスをするわけにはいかない。この部活動はあらゆる不祥事とは無関係であり、そのようなものとの関係を調べることも、噂をすることも許されない」

萱津さんは仰向けに倒れたまま指示を出して、君の魔法瓶を、君のボストンバッグをバランスボール大の蜘蛛に齧らせている。
不居潟さんに渡したはずの洋菓子もいつのまにか床に落ちていたようで、そちらはビーズサイズの小蜘蛛達によって欠片も残さず分解されていく。

「姫代学園全身外骨格超重量級女郎くも相撲部は永遠なのだ。その栄光を汚す者は糞だ。死んで地獄に堕ちればいい。いいや、現世を地獄の苦しみで終えて、もう一度地獄に堕ちろ。死ね、死ね、死ね。苦しんで後悔して泣いて溶けてしまえ。死ね」


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