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ダンゲロスロワ

5 ◆fKOYRw.njI:2019/06/16(日) 00:03:22
続いて候補作を投下します。

6カ・イ・カ・ン ◆fKOYRw.njI:2019/06/16(日) 00:04:43
訳がわからない、というのが意識を取り戻して初めて抱いた感情だった。
眼の前でド正義生徒会長が頭を吹き飛ばされて死んだ。
あの、生真面目で、ちょっとムッツリで、でもカッコよくて。
みんなの憧れだったド正義会長が死んだ。あんなにもあっけなく。

私たちを拉致したあの小竹とかいう男は言っていた。『優勝すれば帰してあげる』、と。
細部は白昼夢での体験のようにぼやけて思い出せないが、おおよそは間違っていないはずだ。

確か小竹はこうも言っていた。『殺し合いをしなければならない』。
――コロシアイヲシナケレバナラナイ。
その言葉が呪文のように私の頭の中をぐるぐると駆け巡る。

気がつくと、私は嘔吐していた。
思いっきり吐いた。今朝食べたカレーピラフだったものが足元に散らばる。
まだ頭が痛い。最初、あの暗い部屋に連れてこられてからずっと頭痛がする。

「大丈夫、だいじょうぶっ! 元気を出せ、香取星羅(かとり・せいら)!」

そう、大丈夫なのだ。
自分の名前もきちんと言えた。
私だって”隠れ”とはいえ、一応は魔人だ。
心なしか頭痛も収まってきた……気がする。

しかし、ここはどこだ?
地面には土。空はまるで真っ昼間のように青く明るい。
周囲にはどこか見慣れた景色が。

そうだ、ここは希望崎学園か。
どうりで見たことがあると思った。

なんだ。さっきまでのは夢か幻覚だったのだ。
もしくは不良魔人の魔人能力か。

とにかく殺し合いも死んだド正義会長も小竹も全部ウソだったのだ。

私はスキップでも踏んで遠く彼方に見える校舎へ戻ろうとした。

――しかし。

『あー、テスト、テスト。聞こえるかね、参加者の諸君?』

突然、例の嫌味な声が頭の中に響いてきた。

『フフフ、いやあすまないねぇ。放送に思ったより手間取ってしまってね……!
 とにかく、だ。やっとロワイヤルが始まったので僕はとても嬉しい。とてもだ。
 おっとっと、そうそう、ルールの詳細な説明がまだだったんだな。
 まずは【支給品】から説明しようか。ディパックを見て欲しい。近くにあるはずだ。
 中には色々入っているが、一つ【ランダム支給品】を用意した。
 生徒会長たる僕からのプレゼントだよ。フフ、感謝したまえ。
 それはゲームを盛り上げるための特別なアイテムさ。
 何が入っているかはお楽しみだよ。武器やマジックアイテム、生き物だったり……なんて。
 弱い魔人でもそのアイテムがアタリだった場合は一気に勝てる可能性が出るかもね』

私は膝から崩れ落ちた。
何ということだ。やっぱり夢ではなかったのか。

『それから、次に【名簿】。これもディパックの中に入っているはずだ。
 これには諸君ら参加者の名前と魔人能力名が記載してある。
 いいか? もう一度言うぞ? 名前と”魔人能力名”だ』

現実感が無くなり一気に気が遠くなった私をよそに、小竹からの”放送”は続く。

『最後に【禁止エリア】。
 現在はディパック内の地図準拠で”B-6”に設定されているが、そこに侵入後10分が経過すると侵入者は死ぬ。
 フフフ、嘘だと思うなら試してもらって構わないよ?
 うーんと、ではこれで伝えることは以上かな。では6時間後にまた放送をかけるよ。
 次回以降の放送では死亡者の人数と名前を読み上げるからせいぜい殺し合ってくれたまえ。
 では、また会おう! バァイ♪』

そこで私の頭の中に”声”は響かなくなった。

7カ・イ・カ・ン ◆fKOYRw.njI:2019/06/16(日) 00:05:13
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「こんなことって――」

私はやっとの思いで声を絞り出した。
こんなことって、あんまりにもあんまりだ。
嫌な予感は恐らく的中した。

よろよろと立ち上がり、近くの木に立てかけてあったデイパックから『名簿』を取り出す。

指で名前を辿りながら、間違いであってくれと願う。

ひとり、ふたり、さんにん……途中まで名簿を確認したところで私は数えるのを止めた。

何ということだ。少なくとも三人以上の希望崎学園の生徒が参加している。もちろん全員魔人のようだ。
名前の横に魔人能力名らしきものが記載してあったことから判別できる。
そして、名簿の「か」行には私の名前と……能力名『セーラ服と機関銃』の文字が。
――ということは、だ。

知られたということか。

私が、魔人だということを。

おそらくはもう既に名簿を読んで能力名から、私のことを推察した者もいるだろう。

私が、二年前に埼玉で起きた未曾有の無差別銃撃事件の犯人――自身の服をガトリング砲に変形させる魔人少女Aであることを。

二年前の”アレ”を否応なしに思い出す。
あの時は奇跡的に死人が出なかった上に魔人覚醒時ということで罪には問われなかったが、マスメディアには相当書き立てられた。

両親はそれを苦に自殺した。

そして今でも時々衝動的にフラッシュバックしてしまう。
伸び悩んだ成績。溜まるフラストレーション。
いつの間にか手にしていたガトリング砲。
飛び散る血飛沫。肉片。怒号。悲鳴。

あれは本当に、本当に…………。

「気持ちよかったな……」

しかし。しかし、だ。

知られてはならないことがある。
知ってはならないことがある。

私には、この「香取星羅」には絶対に知られたくない秘密があるのだ。
例えそれがこのロワイヤルという戦場でもはや何の意味もない秘密だったとしても。

ならばどうするか。
優勝などどうでも良い。

だが、希望崎学園出身の参加者は――。

「消さなきゃ……」

私は先程とは違った確固とした足取りで希望崎学園の森の中を突き進むのだった。

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【名前】香取星羅(かとり・せいら)

【性別】女性

【能力】
『セーラー服と機関銃』
自身の着用している服をガトリング砲に変える。能力名には『セーラー服』とあるが、服であれば変形させることができる。
もちろん威力は普通のガトリング砲並みにあり、戦闘に特化した魔人でも喰らえばただでは済まないだろう。
ただし欠点として、ガトリング砲の弾薬数の消費の激しさと機動性の乏しさから撃っている間は無防備になることが多い。
さらに言えば、変形中は上半身裸になるため、発砲時の熱で火傷を負う可能性が高く、連続しての使用はできない。

【人物】
希望崎学園の三年生。自分が魔人だということを秘密にしている、いわゆる”隠れ魔人”。
被害妄想があり、自身の『秘密』を知った人間を殺すことに躊躇がない。
過去に自身の魔人能力で殺人を犯したことがあり、それを知られることを極端に嫌う。

【備考】
特になし。

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【不明/1日目・昼間】
【香取星羅】
[状態]:微かな頭痛と吐き気
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本行動方針:殺すために行動する。
1:秘密を知られたくない。
2:希望崎学園出身者は皆殺しにする。
[備考]
※ロワイヤルのルールを大まかに把握しました。

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8 ◆fKOYRw.njI:2019/06/16(日) 00:05:26
投下を終了します。

9 ◆fKOYRw.njI:2019/06/16(日) 00:07:02
ルールやマップ、候補作等をまとめたwikiです。
設定の確認に役立てていただければ幸いです。

tps://www65.atwiki.jp/dangerous_royal/

10 ◆fKOYRw.njI:2019/06/16(日) 00:08:10
これより候補作の投下期間を開始します。
何か質問等がありましたらこちらまでよろしくお願いします。

11 ◆nCmjZ6YnME:2019/06/16(日) 01:23:26
俺、安雄!誰よりも早いのが自慢なんだ!

今日も誰よりも早く下校するぜと思っていたら、急に意識が遠のいて…いつの間にか知らない部屋にいたんだ!(勿論誰よりも早く目覚めたぜ。見くびるなよ)

そうこうしてるうちに知らないやつがなんか殺し合いがどうとか言い始めて、うちの生徒会長が怒りだした!うひぃーっ、一体どうなっちまうんだ!誰よりも早く不安になるぜ!

…なーんてね、実はこの後の展開はもう決まってるのさ。
要は今から殺し合いが始まるんだろ?

こういうのは最初が肝心だからな!場の膠着を防ぐためにも、いっちょ俺が誰よりも早「バンッ!」バンッてなに?ああ、生徒会長の頭が弾けた音ね。おっけおっけ。
それで俺が誰よりも早く生徒会長の頭が弾けた音ってなに??????

え、あいつ死んだのか?死んでるよな。

え、なに?つまり、なに?


あいつ、誰よりも早く死んだの?


は?


「あああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!????????????」

俺の意識は暗転した。
倒れこむ自分の身体を他人事のように感じながら、とりあえずホワイトハウスに照準を合わせたミサイルの発射ボタンを押した。




【名前】誰よりも早い男安雄

【性別】男性

【能力】
『能力名』 生き急げ!俺の命
魔人能力の説明
誰よりも早くなる。もしも遅れれば、気が狂ってめちゃくちゃ周りに被害を撒き散らして死ぬ。

【人物】
希望崎学園1年生。
非常にせっかちで、何事も誰よりも早くなければ気が済まない。
ま、俺が遅れたことなんて今まで一度もないんだけどな!
今回も大丈夫に決まってらい!

【備考】
人物像とか能力の描写もなしに死ぬのは嫌です。


【不明/1日目・昼間】
【誰よりも早い男安雄】
[状態]:発狂
[装備]:世界の主要な都市に照準を合わせたミサイルの発射ボタン(500個くらい)
[道具]:全部捨てた
[思考・状況]
基本行動方針:めちゃくちゃ周りに被害を撒き散らして死ぬ
[備考]
※話が通じません

12 ◆6zF/61Tl7U:2019/06/16(日) 21:25:42
クククククククク、俺様の名前はDEATHゲーム魔堕男!!


連続殺人鬼だ!!


これまでもいくつものデスゲームに参加し、人を殺してきた!!


どうやら新しいデスゲームに召喚されたようだな!!


ほう、バトルロワイヤルとは素晴らしい!!


今回は何人の人間を殺害することができるかな!!


楽しみだな!!クククククククク。



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【名前】DEATHゲーム魔堕男

【性別】男性

【能力】
『ザ・マーダー』
殺したい相手を殺害するのに最適な凶器を一つだけ出すことができる。
二人以上には対応できない。

【人物】
三角のマスクを被った見るからに危険な男。
数多くのデスゲームで参加者たちを皆殺しにし、勝ち残ってきた殺人鬼。
基本的に人を殺す事しか考えていない危険人物である。


【備考】
とりあえず人を殺したい。

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【不明/1日目・昼間】
【DEATHゲーム魔堕男】
[状態]:健康
[装備]:特になし
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本行動方針: とりあえず人を殺す
[備考]
とりあえず人を殺す。

13 ◆6zF/61Tl7U:2019/06/17(月) 21:37:59
一つの登場話候補作に登場させることができる参加者は一人ですか?

14 ◆fKOYRw.njI:2019/06/17(月) 22:36:48
>>13
既に登場させたキャラを後の候補作で登場させる場合も、一つの候補作に書き手が新しく作成した複数のキャラを登場させたい場合も、
結局その候補作に登場したキャラ全てが採用されなかった場合に整合性がとれず悲しいことになるので一人でお願いします。

15 ◆fKOYRw.njI:2019/06/17(月) 22:37:58
投下します。

16懲悪は誰のために ◆fKOYRw.njI:2019/06/17(月) 22:38:51
ビルの屋上で二人の男が何やら話し込んでいる。

すると、片方の男の身振り手振りが急に激しくなった。しばらくしてもう片方の動きも挙動不審になる。
どうやら怒っているのだろう、両方ともお互いを殺さんばかりに掴み合いをしているようだ。

「どうやら遂に俺の出番が来たようだな……」

その様子を隣のマンションの一室から覗きながら、剛城海(ごうじょう・かい)は呟いた。

張り込みを続けて二ヶ月と二週間。
これでようやく「正義の執行」に移れるというものである。

いきなり「ゴロツキーズ」だの「正義の執行」だのという言葉のシャワーを浴びせられて面食らっている読者諸兄に説明せねばなるまい。

遡ること、約三ヶ月前。ジャスティスレンジャーイチの熱血漢、ジャスティスレッドである剛城に予期せぬ難題が乗りかかった。
悪の組織「ゴロツキーズ」の根城を突き止めたと思ったのだが、なんという誤算だろう。
ゴロツキーズが悪事を働かないのである……!

常なら三週間――、いや一週間もすれば悪の組織は子供を攫ったり謎のウイルスをばら撒いたりして街を混乱に陥れるはずである。
だが、アタリをつけたビルから出入りする人間――実はゴロツキーズ構成員の妖魔である――を尾行しても全く尻尾を出さなかった。

これでは俺たちジャスティレンジャーが出動できぬ、ひいてはこの街の平和が守れぬではないか、と剛城は歯ぎしりをしていた。
それはもう、歯がすり減って歯茎から血が出そうになるほど、毎晩毎晩双眼鏡でビルとにらめっこしては歯ぎしりを繰り返していた。

だが剛城は正義の徒である。諦めるわけにはいかぬ。
赤マムシドリンクやウコンドリンクなどで睡魔を追い払い、時には眠気に負けて昏倒しながらも必死で”その時”を待ち続けた。

しかし、期待する瞬間などその時になってみればあっけないものである。
張り込みを続けてから常用食となったアンパンと牛乳を胃に流し込み、さあて今日も双眼鏡を覗くか、と思ったらビルの屋上で二人の男が取っ組み合っているではないか。

これはもう、明らかに、どう見ても、ゴロツキーズ内での仲間割れではないか。
そういえば取っ組み合っている片方の男の魚っぽい顔は幹部の「ターボハゼ」に、もう片方の首の長さと馬面はこれまた幹部の「ギギキリン」に心なしか似ている。
剛城はこれは妖魔が人間形態をとっているのだと考えた。

「よし、じゃあ早速行くか!!」

剛城は割れんばかりの大声を上げ、ポーズを取ってヒーロースーツに着替えた。
アンパンと牛乳が腹の中でタプタプとして若干気持ちが悪いが、そこは目をつぶって急いで張り込んでいたマンションの階段を駆け下りる。

程なくして、剛城はビルの前にたどり着いた。だが、ここからは少しばかり難しい。
何しろビルはゴロツキーズの構成員妖魔の根城だ。表向きは普通の会社のオフィスを装っているが、正面から入ればたちまち捕らえられるだろう。

「うむっ、こうなったら仕方ない! こんな姿は良い子のみんなには見せられんが……」

剛城――いや、今はジャスティスレッドか。ジャスティスレッドはビルの窓際を器用によじ登り始めた。
常人なら怖くて手が震え即座に落下だが、ジャスティスレッドは正義のヒーローであるため、恐怖など全く意に介さない。

そうこうしている内に二分程度で屋上まで登りきった。二十七階建ての高層ビルだが、流石は正義のヒーロー、ジャスティスレッドである。

早速怒鳴り声のする方へ忍び足で近づいたジャスティスレッドは、こっそりと給水タンクの影から様子を窺った。

「テメッ! 俺の資料をパクっただろう! 大体さっきのプレゼンが上手くいったのも――」

「――んだよ、それはお前の勘違いって言ってんじゃん!」

話の内容はよく分からないが、とにかく邪悪な妖魔の仲間割れだとジャスティスレッドは確信した。
妖魔は性根が邪悪なのでよく仲間割れをする。そしてまだ姿を見せぬ謎の首魁によってこれまたよく制裁を受けるのだ。

「フハハハハハ!! 邪悪なるゴロツキーズの幹部たちよ、残念だったな!!
 苦節、二ヶ月と二週間。遂に尻尾を出したが運のツキ。貴様らゴロツキーズはこのジャスティスレッドによって――とうッ!」

給水タンクの上に登ったジャスティスレッドは前口上を述べ、いっきに給水タンクから飛び降りて二人の悪しき妖魔の前に降り立った。
階下へ降りるドアを塞ぐ形だ。これなら逃げようにも逃げられまい。

「――正義の執行を受けるのだ!」

17懲悪は誰のために ◆fKOYRw.njI:2019/06/17(月) 22:39:36
ふふん、とジャスティスレッドは勝利のポーズを取った。いや、まだ勝ってはいないのだから勝利のポーズは早いのだが、既に心の中では勝利していた。
この勝負、負けると思ったやつから負けるのだ。

二人――いや、二匹の妖魔は突然の正義のヒーローの登場に驚愕し、目を丸くしている。

「正体を現せ! 『ターボハゼ』に『ギギキリン』よ! そしてこの俺の必殺技を受けるのだ!!」

しかし、二匹の幹部妖魔は身じろぎもしない。自身がジャスティスレッドに倒されるかもしれないという恐怖で動けなくなったか。
思ったよりも貧弱な幹部だな、とジャスティスレッドは心の中で少し残念に思った。これでは血湧き肉躍る熱き正義を繰り広げることができぬではないか。

すると、「ターボハゼ」の方が胸ポケットに手を入れた。ジャスティスレッドは勝利のポーズを取ったまま、少々身を固くする。
何が出てくる? 超電子分解レーザーか? それとも、強力殺人ウイルスのカプセルか?

ポケットから出てきたは通信機だった。どうやらこれで応援を呼ぶ腹積もりらしい。

「……あの、警備員さん、ちょっといいッスか? あの、変な人が……いや、あの、正義のヒーロー? みたいなカッコしたオッサンが屋上にいるんスけど来てもらえないッスか?」

ターボハゼは思ったより軽薄な声で通信機に話しかけている。
「ケービインサン」とかいう新手の幹部を呼ぶようだ。名前を聞くに太陽光を模した妖魔だろう。
これはなかなか強敵になりそうだな、とジャスティスレッドは考えた。

ならばすることは一つ! 新手が現れる前にこの場でターボハゼとギギキリンを倒すのだ!!

「先手必勝! とあッ!!」

ジャスティスレッドは目にも留まらぬ早業でターボハゼをビルの屋上から投げ落とし、ギギキリンの頭を蹴りで砕いた。

二匹はあっという間にもの言わぬ死人――いや、死妖魔へと変わった。

「フハハ、二匹の妖魔ごとき、俺一人で十分よ」

地上では既にターボハゼの死妖魔を見た女性ファンからの黄色い声が上がり始めている。
もう少し聞いていたいが、正義のヒーローとは人の目を忍ぶもの。あまり長居は無用だ。

「フッ、『ケービインサン』! 貴様は来週相手をしてやろう! では、さらばだ!!」

そう高からに宣言し、再びビルを窓を伝って降りようとしたやいなや、青いスーツに身を纏ったケービインサンが屋上に姿を現した。

手には……超電子分解レーザー!? これは流石のジャスティスレッドも分が悪い。

「クソ、こうなったら……! 来い! 『ジャスティスマシーン・レッド』!」

ジャスティスレッドは両手を挙げ、叫んだ。

するとケービインサンのすぐ上空――目測して約五メートル程――にバイクと同じ大きさの真紅に彩られたメカニカルな右腕が出現した。
これこそジャスティスレッドの『両手を挙げることによってジャスティスマシーンをその場に喚び出す』チカラだ!

本当はジャスティスブルー、グリーン、イエロー、ピンクの仲間四人がいれば全てのマシンパーツを喚び出すことができるのだが、残念ながらレッド一人では右腕一本しか喚び出せない。

だが、ケービインサンを圧殺するのであれば右腕一本で十分だった。
ケービインサンはあっけなく潰され、ターボハゼやギギキリンと同じく肉塊と化した。

――だが、ジャスティスレッドは大変なミスを犯していた。
そう、ビルから降る格好のまま、両手を挙げてしまったのだ。
これでは足で全体重を支えるしかない。

結論から言うと、さしものヒーローもそれは無理だったようだ。

ジャスティスレッドは二十七階建てのビルから落下し、そのまま地面に叩きつけられた。

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ジャスティスレッド――剛城海は気がつくと暗い部屋にいた。

自分は死んだはずだが……? ここはあの世――天国なのか?

そう考えていると急に部屋が明るくなり、男の耳障りな声が聞こえてきた。

18懲悪は誰のために ◆fKOYRw.njI:2019/06/17(月) 22:39:52
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【名前】剛城海(ごうじょう・かい)

【性別】男性

【能力】
『虚構戦団』
自身の所属している(と思っている)ジャスティスレンジャーの保有している(と思っている)メカである、「ジャスティスマシーン」の右腕を召喚する能力。
召喚範囲は自身を中心として半径十メートル。「ジャスティスマシーン・レッド」と名付けられたそれは謎の合金で出来ており、ちょっとやそっとでは傷つかない。

【人物】
正義のヒーロー、ジャスティスレンジャーイチの熱血漢。
ただ熱血なだけではなく、クレバーに敵を仕留める冷静さも併せ持つ。
ジャスティスレンジャーでは「ジャスティスレッド」を名乗り、日々人助けと悪を挫くことに邁進している。

――と妄想しているただの中年魔人男性。
今年で三十八歳。もちろん独身。好きな女性のタイプは巨乳。
悪だと決めつけた一般人を徹底的に痛めつけ、時には殺害する危険な男。

【備考】
参戦時期はビルから落下して死亡後。

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【不明/不明】
【剛城海】
[状態]:健康
[装備]:ヒーロースーツ
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本行動方針:現状不明
[備考]
※これからロワイヤルのルールを聞くところです。

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19 ◆fKOYRw.njI:2019/06/17(月) 22:40:04
投下を終了します。

20 ◆fKOYRw.njI:2019/06/18(火) 19:53:58
投下します。

21おくびょうドウカツ ◆fKOYRw.njI:2019/06/18(火) 19:54:42
昔々、あるところに「ドウカツ」という大男がおったそうな。
ドウカツは子供の頃からとても気が弱く、夜中に厠へ行くのも一人では行けないほどじゃった。
性格に似合わず大人が一人と半分もの身の丈と羅刹の如き厳つい顔をしたドウカツは、自分の気が弱いのを常々恥ずかしいと思っておった。
じゃがある日、ドウカツは不思議な夢を見た。それは、家の池の中から仏様が現れて、ドウカツにある『力』を授けてくれるというものじゃった。
その『力』はドウカツと目の合った者を臆病な鶏にしてしまうという力じゃった。その日の朝、ドウカツが起きると、家の外から何やら騒ぐ声が聞こえてきた。

----

馬鹿馬鹿しい。

昔話を思い出し、「ドウカツ」はかぶりを振った。
その後は隣の家の庄屋の娘を攫った盗賊たちを『力』で鶏に変えてめでたしめでたし、だったか。

何がめでたしだ。糞の役にも立たぬ能力を押し付けやがって。おかげで俺たち一族は魔人になって一生日陰者だ。
ドウカツは教室のロッカーで一人震えながら、何代前かの自分の先祖である「ドウカツ」への文句を内心呟いた。

昔話に出てきたドウカツは、今まさにロワイヤルに参加し、希望崎学園の二階校舎の清掃用ロッカーの中で必死で息を殺している「ドウカツ」の先祖である。
そして、先祖のドウカツが仏様から授かったという『力』は紛れもなく魔人能力のそれである。なぜなら、日本魔人昔話「おくびょうドウカツ」という話にきっちりと描かれているからだ。

だが、『仏様から授かった』という奇異な覚醒の仕方から、通常の魔人能力とは一線を画する部分があった。
それは、その先祖のドウカツの魔人能力が『子孫に伝達する』という点だ。

五百年以上前に盗賊たちを一網打尽にしたドウカツのその能力は、子から孫へ、孫から曾孫へと連綿と受け継がれているのだ。
ただし、時が経つと流石に効力も薄くはなるようで、『目を合わせた者を一瞬で鶏にする』能力は、当代ではすっかり弱体化し、『十分間以上目を合わせた者』限定で効くようになっている。

そして、先祖のドウカツの恰幅と厳つい顔と魔人能力、おまけに子孫の長男には代々名付ける決まりになっている「ドウカツ」という名をしっかり受け継いだ現代のドウカツは、魔人学園たる希望崎学園の不良たちからも強面の魔人として恐れられていた。
――しかし、何ということであろう。ドウカツはご先祖譲りの気弱なメンタルまで受け継いでしまったのだ。

昔話にあったように、深夜に尿意を催した際は家中の明かりを付けなくてはトイレに行けず、またチンピラがバイクで街中を爆走している音を聞くだけで心臓が縮み上がる。
さらには、毛虫や蛙、蜂などの、女性が嫌いなタイプの生きものも大の苦手で、触るはおろか、見るのさえ勘弁だった。

だが悲しいことにドウカツは表情筋を含む身体中の筋肉が逞しすぎた。
筋肉は通常、緊張した際に瞬時に収縮し、身動きを止めてしまうのだが、ドウカツの場合は筋力が凄まじすぎて、いくら怯えてもそれが一切表に出ないのだ。
これによってドウカツはビビっているのに顔に出ず、身体にも出ないと周囲に認識されるようになってしまった。

そんな訳で、どんなに威嚇しても、襲いかかっても一切の動揺を見せないドウカツは、希望崎学園の一部の魔人に畏れられるようになり、次期番長とも噂されるようになった。

ただ当のドウカツは、いつまで経っても子供の頃と同じビビリのままで、相変わらず夜中のトイレは一人では行けなかった。

22おくびょうドウカツ ◆fKOYRw.njI:2019/06/18(火) 19:54:58

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「――とまあ、こんな風に僕には諸君を爆発させる能力がある。
 もちろん例外は無しだ。不死の魔人だろうと、何だろうと殺せるのさ」

小竹の声が耳に響く。
目の前で同じクラスのド正義が頭を吹き飛ばされて死んだ。

怖い。

ドウカツは初めて人の死を目前にして、失禁せんばかりに怯えていた。
今ではすっかり平和になった希望崎学園では、死体など殆ど目にしない。

ましてや自分がその当事者、目撃者になるなど考えてもみなかった。

以前に不良魔人が生徒会にカチコミをかけ、死刑に処されたと聞いたときなどは三日間恐怖で何も喉を通らなかった。

だがドウカツはその恐怖心を表情に出すことはない。叫び声を出そうにもあまりの怯えに喉が上手く収縮してくれない。
現に傍から見ると、ド正義の死などには全く動揺しない、よほどの冷血漢かサイコパスだと思われているだろう。

しばらく小竹が訳の分からないことを喋った後、指を鳴らすと、ドウカツは気を失った。
――いや、実を言うと小竹が指を鳴らす少し前から恐怖で失神していたのだが。

----

――そして話は現在に戻る。

どれくらいになるだろうか、ドウカツはロッカーの中で箒や雑巾に紛れて隠れていた。
さっきの放送とやらでようやくおおよそのルールは把握したが、殺し合いをするのなどまっぴらごめんだ。
ロッカーの扉の内側に取り付けられた小型の鏡に自分の顔が写っていることに気づいた。恐怖の涙で目が充血している。

死にたくない、死にたくないと心の中で念仏のように唱えていると、誰かがドウカツの潜んでいる教室に入ってくる気配がした。
心臓がドクンドクンと激しくリズムを刻む。生唾を飲み込もうとしたが、既に口内はカラカラに乾燥している。

こうなったらいっそのこと、ロッカーを内側から蹴り破ってその隙に逃げるか……?
いや、逃げ切れる保証はない。相手が小竹のようにこちらを一瞬で殺せる能力を持っていたらどうする?
ならばどうしろというのだ。このまま隠れてやり過ごす……?

思考がまとまらぬ内に侵入者がロッカーの扉に手をかけた。
どうやらドウカツが隠れていたのは気づかれていたようだ。

ドウカツはある覚悟を決めて、目をつぶった。

----

【名前】ドウカツ

【性別】男性

【能力】
『メンチキン』
連続して十分間以上目を合わせた者限定で対象を鶏に変える。
鶏になった場合、十分経過するかドウカツが能力を解除しない限り元へは戻れない。
条件は厳しいが決まれば強力な能力。

【人物】
強靭な肉体に臆病な心を宿した強面の魔人。
その膂力、羅刹が如し。殴れば1トントラックでも粉々に粉砕できる。
その胆力、赤子が如し。夜中になれば明かりが付いていてもトイレに行けない。

【備考】
特になし。

----

【D-2/1日目・昼間】
【ドウカツ】
[状態]:恐慌
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いをしたくない。
1:隠れていたい。
2:誰かが来た、どうしよう。
[備考]
※ロワイヤルのルールを大まかに把握しました。
※誰かがドウカツが隠れているロッカーの扉に手をかけました。

----

23 ◆fKOYRw.njI:2019/06/18(火) 19:55:10
投下を終了します。

24トマト祭:2019/06/18(火) 22:22:55
リレー小説というのにあまり馴染みがないのですが、1人の優勝者を決めるのではなく、皆で作品を作ろうぜ!
という企画でしょうか。候補作のみ(キャラクター作成のみ)の参加はありですか?

25 ◆fKOYRw.njI:2019/06/19(水) 21:02:48
>>24
はい、トマト祭様の認識どおりみんなで話を繋いで一つの作品を作ろうという企画です。
またご質問されていました、候補作のみの参加やリレーSSのみの参加ですが全く問題ありません。

26トマト祭:2019/06/19(水) 21:36:20
>>25
ありがとうございます!

27 ◆G7wbG9fIug:2019/06/19(水) 22:27:15
投下します。

28 ◆G7wbG9fIug:2019/06/19(水) 22:30:51
夜明け、朝靄の中で。

「と、とんでもない事になっちゃったね〜…」
「ふん。どうという事もないだろう」

女は青い顔で呟く。その顔を見上げながら、俺は吐き捨てる様に言った。この世の中なんて、所詮はこんな物だ。
いつだって、誰かの気まぐれで死は訪れる。つい夜更かしをしたせいで、翌朝に誰かをひき殺す事になるなんて話は――

「ハーイ。OK,OK。あなたのその悲観的というか皮肉屋というか虚無的というか、そういう所は嫌いじゃない
けれどねー。ほら、ネガティブな方が長生きするっていうし?でも」

女が俺を見下ろす。その表情はやや無理やりながらも、笑顔を作っていた。…これもまた、いつもの事だ。
その口が開いて、飛び出す言葉も。

「殺しはダメだよ?皆で逃げる方法を探さないとね。」
「…パンツ見えてんぞ。」

きゃ、とわざとらしい悲鳴が聞こえる。俺は大きくため息をついた。結局、この世界なんてこんな物だ。誰かの気まぐれに
付き合わされる羽目になる。多くの人間はそれを運命だとか何とか言って美化しようと必死だが、俺は違う。だが、今それに
抵抗する力もないので、ただ憎まれ口を叩くしか無かった。

上にいる女が、わざとらしく俺を助兵衛だの何だのと避難する。俺たちが“こうなって”からもスカートを着てくるくせに、
何ほざいてやがるんだか。

光が、女の姿を照らす。朝日だ。女が眩しそうに眼を細める。俺は彼女の、その姿を見上げた。希望崎学園のセーラー服。
屈託のない笑顔。先程怯えていた姿はもう感じない。

眩しい。頭が痛くなってきた。太陽の光は、やはり俺には厳しい。そう考えていつもの寝床に戻ろうとした時、上から声がした。
――ネコの声が聞こえる。

「今日も一日よろしくね、シャドウ。必ず生きて、ここから帰ろうね。」

…知った事か、馬鹿。俺はそう吐き捨て、両目を閉じた。

29 ◆G7wbG9fIug:2019/06/19(水) 22:34:59
【名前】羽駒 音々子 (はねこま ねねこ)

【性別】女性

【能力】
『エビル・イン』
羽駒の影には、殺し屋「シャドウ・ヒットマン」が潜む。シャドウは日光に当たると焼けてしまうので、日中は羽駒の
影に隠れ、完全に離れる事が出来ない。しかし、夜闇の中では別である。
身体能力は、羽駒が常人の2〜3倍(魔人としては平均的)。シャドウが戦闘型魔人に等しい。

【人物】
羽駒は明るく素直で陽気な女の子。基本的には善人だが、迷惑ではないと思っている犯罪行為(廊下を走る、夜の学校に
侵入するなど)は平気で犯す。
シャドウは男性で、影と一体化し全身黒く目だけが光る。皮肉屋。殺しを全く厭わない。慎重な性格であるシャドウから
見て、無謀な行動を取りまくる羽駒は常に頭痛の種。

【備考】
グロ歓迎。エロ大歓迎。かませ犬でもいいです。でも活躍してくれると超嬉しい。

【不明/1日目・朝】
【羽駒 音々子】
[状態]:健康 (羽駒)/精神的な軽い頭痛(シャドウ)
[装備]:なし(羽駒)/地面に落ちていた小石(シャドウ)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本行動方針:島からの安全な脱出方法の模索。
1: 出来れば殺したくない。また殺させたくない。/羽駒。
2: 何人殺してでも生き延びるつもりである。/シャドウ。
現在の状況での行動・思考の優先順位
[備考]
昼間に話しかければ協力してもらえる可能性が高いです。但し、シャドウの警戒を解く事は困難です。
夜間に話しかければ協力してもらえる可能性が高いです。但し、シャドウと戦闘になる可能性も高いです。

30 ◆G7wbG9fIug:2019/06/19(水) 22:35:17
投下を終了します。

31 ◆NpOW0juB8E:2019/06/20(木) 21:22:12
候補作を投下します。

32守谷奏 ◆NpOW0juB8E:2019/06/20(木) 21:24:11
守谷奏 プロローグ『高大連携プログラム』

(1)
射撃場に一人の若い女がライフルを構えて的を狙っていた。しかし、その頭にはコードが繋げられており、何かを計測しているようだった。
しばらくすると、女は引き金を引いた。
バンッ!的は撃ち抜かれ、中心に穴が空いた。
その後何発か射撃を行うと、女はライフルを構えるのを解いた。
すると数人の若い学生らしき人物が射撃場に入り、女に繋げられたコードを外す作業を行った。コードが外し終わる頃、今度は若々しさの残る中年の男が射撃場に入り、射撃をした女を労った。
「お疲れ様、守谷くん。今日の中二力の計測は終了だ。前回の計測と比べると若干中二力の量が増加しているようだね。射撃の結果も良くなっている」
「はい、谷和原先生、アニメのバトルシーンを見ると魔人の中二力が増幅される仮説は正しそうですね」
「その可能性は高いだろうが、まだまだ検証が必要だろう。おっと、その姿を維持しているのも疲れるだろう、元の姿に戻ったらどうだ?」
谷和原と呼ばれた男がそう促すと、守谷と呼ばれた女は何かを念じるように目をつむった。すると、女が持っていたライフルは無くなり、女が立っていた位置に顔立ちのよく似た若い男が立っていた。どうやら女は若い男が変身した姿のようだ。
「…別に私はそのままの姿でも構わないのですけど…」
「そうは言ってもこの前、女の姿で男子トイレに入っただろう、その時トイレにいた八潮くんがびっくりしていたぞ」
「うっ…」
若い男は失敗を思いだし、うなだれた。
「さて、日付が近くて悪いが、来週は希望崎学園で実戦形式の測定を行う。今回は高大連携プログラムなので、希望崎学園の生徒も戦闘に参加する。生徒会長のド正義くんも気兼ねなく戦って欲しいと太鼓判を押しているから、全力で戦えるよう、その日まで体調を整えるように」
「かしこまりました」


M大学谷和原研究室は、谷和原肇准教授のもと、中二力が発生するメカニズムを研究している。その関係で、谷和原研究室には魔人が多数在籍している。
守谷奏は谷和原研究室に所属する修士2年の学生で、中二力とアニメの関係を論文のテーマにしている。彼自身も魔人であり、時折研究のため、自らの中二力を測定することがある。
この日は彼の中二力の測定のため、近隣の射撃場を貸し切り、射撃を行っていた。


射撃の翌日、計測で得たデータの解析を行った。その休憩中、奏の隣の席に座る、若いが髪の薄い男、八潮信宏助教が奏に話しかけた。
「しかし昨日の守谷の女の姿、一段と綺麗だったなぁ」
「なに言っているんですか八潮さん、あれは能力発動時の制約のようなものです。好き好んで女になっている訳では無いですから」
「なぁ守谷、今度女の姿であのテーマパークに一緒に行ってくれないか?どうしてもカップル限定のメニューが食べたいんだ!」
「やめて下さい八潮さん!セクハラですよ!」
「悪い悪い、冗談だ」
本気で嫌な顔をした奏に対しても、八潮は笑っていた。しかしすぐ顔を真剣にし、奏に対してこう話した。
「さて、俺は今年になって谷和原研に入ったから、守谷が何故能力発動時に女になるのかよく分からないんだ。もし良かったらその理由を教えてくれないか?」
「私が女になる理由ですか?」
そう言うと、奏は魔人覚醒をした時の事を語った。

33守谷奏 ◆NpOW0juB8E:2019/06/20(木) 21:25:15
(2)
それは大学3年の時、サークルの飲み会で夜遅くに帰った日の事だった。
奏は相当酔っぱらっており、千鳥足で歩いていたところ、柄の悪そうな男とぶつかってしまった。
一気に酔いが覚めたた奏は慌てて謝った。
「す、すみません!」
だが、男は、
「お前は俺を誰だと思ってぶつかったんだ!?俺は魔人だぞ!お前が魔人かどうかは知らんが、俺とぶつかったからには、俺と戦うという意思表示をした事だからな!」
と言い、いきなり奏の腹を強く殴った。奏は近くの壁まで吹き飛び、口から血を吐いた。
「ふん、一撃でこの有様とは、お前、非魔人だな。俺たち魔人をコケにしやがって、こんなんで済むと思うなよ…!」

吹き飛ばされた奏は、薄れ行く意識の中で、希望崎学園に通っていた時の事を思い出していた。
あの頃は番長グループが猛威を震っており、非魔人の生徒は番長グループの魔人の言われるがままだった。それが嫌で、奏は少しでも強くなろうと空手を始めた。それでも魔人には敵わず、コツコツと勉強をし、大学に入った。
大学での生活は高校とは大違いの解放された生活。それを再び不良魔人によって脅かされるなんて…!
その思いが奏の頭の中によぎり、涙が流れてきた。

「僕と契約して魔法少女になってくれるかな?」

ふと、こんな声が頭の中に聴こえてきた。かつて流行り、奏も視聴していたアニメの有名なセリフだ。何故こんなセリフが聴こえてきたかどうかは知らないが、奏はほぼ無意識にこう呟いていた。

「不良魔人にこれ以上馬鹿にされない為なら…魔法少女でも何でもなってやる…!!」

すると、奏の両手に二丁の拳銃が現れた。身体にも力がみなぎっている。今なら、あの不良魔人と戦えるかも…!

「な、何だ?いきなり拳銃を持ちやがって!この程度で俺がビビるとでも思うなよ!」
そう言うと男は再び奏を殴ろうとした。しかし、奏は素早くかわし、隙を見せた男に手元の拳銃を発砲した。
「ぐっ!てめぇ!」
拳銃が命中したが、決定的なダメージを与えるには至らず、男は激昂した。だが冷静さを失い、更なる隙を見せた男に対し、奏は男の腹に蹴りを入れた。
「グハッ!」
男はその場に倒れた。奏は拳銃を男に突き付け、
「これ以上危害を加えようとするなら…僕は頭にこれを撃ち込みます…」
そう冷酷な顔をして言うと、男は、
「ひ、ひぃ!ごめんなさい!もう非魔人を馬鹿にしません!許してぇ!」
と、ふらふらになりながら逃げていった。

緊張が解けた奏は、その場に倒れ込んだ。だが、奏は自分の身体に違和感を感じていた。声がいつもと比べて甲高い…、胸が苦しい…、股間に違和感がある…。
もしかしたらと思い、胸に手を当てた。胸が盛り上がっている。股間に手を当てた。アレが無い。
「ま、まさか…魔法少女になるって言ったから…」


奏の話を聞き、八潮は深く頷いた。
「なるほど、魔法少女になるって答えたから能力発動時に女性になってしまうのか」
「そう言うことです。あの時はどうやったら男に戻るか焦ってしまいましたが、そう思ってすぐに男に戻れたので安心しました」
「俺は守谷は男に戻らなくてもいいと思うんだけどなぁ…」
「いい加減にして下さい八潮さん」
過度にからかわなければ八潮さんはいい人なのに…、と奏は思っていた。

夜になり、データの解析を終えた奏と八潮は来週の高大連携プログラムについて話していた。
「そう言えば来週は希望崎学園で中二力の測定を行うんだろ?でも守谷は希望崎学園で悪い目に遭ったんだから嫌じゃないのかな?」
八潮は奏の事を心配していた。しかし、奏は、
「今は生徒会長のド正義さんがしっかりやっているみたいですし、魔人を含めて同学年に仲の良い友人が何人もいたので、希望崎学園自体にはそこまで悪い思いは持っていません」
と答えた。

その後、奏は戦闘訓練、自身の研究と忙しい日々を過ごしつつ、希望崎学園での高大連携プログラムの日まで体調を整えつつ過ごした。

高大連携プログラムの前日、奏はいつものように大学に来ていた。昼の12時頃まで研究をしていると、谷和原が奏の前に現れた。
「谷和原先生、お疲れ様です」
「守谷くん、明日は希望崎学園の生徒達と戦うことになる。今日は午前で帰り、体を休めなさい」
その言葉に甘え、奏は帰ることにした。

いつもより早い帰り道、日中の自宅の最寄り駅は夜に比べると人が少なかった。
特に不審がらずに駅の改札を出たところ…。
「ぐっ!」
奏はいきなり後ろから何者かによって羽交い締めにされた。慌てて手元に拳銃を出現させるが、魔人の腕力をもってしても腕を動かせなかった。もがいているうちに、奏は首の辺りに注射のようなものを刺された感覚がした。
(い、一体何が…)
奏は除々に意識を失っていった。

34守谷奏 ◆NpOW0juB8E:2019/06/20(木) 21:26:07
(3)
「ん…ん…」
気づくと奏は暗闇にいた。
(ここは一体…)
念のため、拳銃を手元に出現させ、警戒しながらその場に座った。
(近くに蠢く影がある。気をつけなければ…)
しばらく臨戦態勢のままでいたが、
「十二分と三十四秒。やっと全員起きたようだねぇ」
という声が聞こえ、部屋が明るくなった。
(誰だ…!)
奏はお立ち台に座る男に拳銃を向けて警戒した。
「やあ、魔人諸君。僕の名前は『小竹』。諸君をここに集めたのは僕さ。早速だが諸君にはある『ゲーム』をしてもらいたい」
その後、小竹は奏の警戒態勢を無視するかのように、殺し合いのゲームをするという説明をした。
(殺し合いをゲームだと…!生き残った者には願いを叶えるだと…!)
奏は憤りを感じ、小竹に対し拳銃を発砲しようとしたところ、
「ふざけるなッッ!!!!何が『殺し合い』だ!」
一人の男子生徒が小竹に近寄った。ド正義卓也だ。奏も高大連携プログラムの打診で会ったことがあり、ド正義の顔を知っていた。
(ド正義さん…!)
奏は拳銃を構えながら、しばらくド正義と小竹のやり取りを様子見していたが…、

バンッ!いきなりド正義の頭が吹き飛んだ。

(ッ…!!)
「――とまあ、こんな風に僕には諸君を爆発させる能力がある。もちろん例外は無しだ。不死の魔人だろうと、何だろうと殺せるのさ。フフ、誰かもう一人ぐらい試してみるかい?」
(な…なんだと…!)
奏はド正義の死に動揺した。そして、小竹に対して向けていた拳銃を下ろし、奏は悟った。
(小竹に下手に逆らってはいけない…!)


その後発生した刺激臭により再び意識を失い、目を覚ましたところ、奏にとって見慣れた景色だった。
(ここは…希望崎学園か…?)
自分のいる場所を把握した奏は、周りへの警戒を怠らずに歩こうとしたが、
『あー、テスト、テスト。聞こえるかね、参加者の諸君?』
あの時と同じ小竹の声が聞こえた。奏はド正義の頭が爆発した事を思い出し、恐怖した。
その後、小竹はロワイヤルの説明を行った。怖がりながらも、奏はロワイヤルのルールを把握していた。
(ふむ、これが支給品のデイパックか、中身を確認しよう)
奏は近くにあったデイパッグを開けた。
(ええと、地図、コンパス、懐中電灯、筆記用具、水、食料、名簿、時計と、イヤーマフか?)
これがランダム支給品なのだろうか…?
(他の参加者がこれを受け取ったら『ヘッドホンみたいなものでどう戦えばいいんだ!』と憤りを感じるだろうな。だがこれをランダムアイテムとして僕が受け取ったということは…できすぎている)
と言うのも、奏の魔人能力『蒼の契約者』は自分の手元に銃器を出現させる能力である。出現させた銃器は弾数が無限で、メンテナンスも不要、おまけに他人は使う事ができないという大変都合の良いものであるが、発砲時の音は通常の銃器並に発するため、耳を塞ぐものが必要不可欠である。
よって奏は通常は小型の拳銃を使用し、耳栓を常に携行している(ズボンのポケットを探ったところ、耳栓はあった)が、支給されたイヤーマフは射撃音といった大きな音はカットし、それ以外は聞こえるというもの。
これでは銃器を使ってくれと主催者が言っているようなものである。
(他の参加者に何を支給されたかは今のところ知る由が無いが、僕の場合は明らかに作為が含まれているな…となるとこのゲームは僕を知る何者かが関わっている可能性が高い。更に言えば高大連携プログラムで僕のコンディションが整っている状態で開催されたロワイヤル、谷和原先生に早めに帰るように促された後での拉致…まさか…!)
奏はある恐ろしい仮説に行き着いた。

谷和原准教授がロワイヤルに関わっている。

「そんな…谷和原先生は人を殺してでも中二力の計測をしたいというのか…!?」
奏はその可能性を否定したかった。しかし、一度思いついた疑念は晴れる事なく、奏の心を支配していく。
(谷和原先生がこのロワイヤルに関わっているのなら、何としても止めなければならない…!願わくば、これ以上犠牲者が出ないうちに…!だが小竹はどうする…!)
そう思う一方、奏はもう一つの考えを持っていた。この極限状態、躊躇いも無く人を殺す輩が現れるだろうと。その時は…。
「殺すしかない…」
奏は静かに決心を固め、拳銃を手元に出現させた。

35守谷奏 ◆NpOW0juB8E:2019/06/20(木) 21:26:38
【名前】守谷奏(もりや かなで)

【性別】両性(普段は男性の姿)

【能力】
『蒼の契約者』
自分の手元に銃器を出現させる能力。
出現させる事ができる銃器は拳銃から対戦車ライフルまで銃器であれば特に制限は無い。
出現させた銃器は奏本人にしか扱えないが、弾切れを起こす事は無い。但し、撃つたびに奏の体力を削るため、過度な連射はできない。
また、銃器を出現させると同時に、奏は女性化し、髪や服もその際に変化する。出現させた銃器は男性の姿に戻る際に消滅する。
奏は元々空手を習っており、銃器を使用せずとも戦い慣れしていない魔人であれば対応することができる程度の腕を持つ。その身のこなしで近距離では主に二丁拳銃を用い戦い、遠距離ではライフルを出現させ射撃することが多い。

【人物】
希望崎学園OBで、現在は関東のM大学に通う大学院生。24歳。但し、希望崎学園在学中は非魔人であった。魔人になったのは研究室に入る直前の21歳の時。
所属する谷和原(やわら)研究室では、谷和原肇(やわら はじめ)准教授のもと、中二力が発生するメカニズムを研究している。奏が谷和原研究室に入ったのも、魔人覚醒により希望していた研究室に入れなかったのを見かねた谷和原准教授が誘ったことがきっかけ。
性格は真面目で、規範意識が高い。
見た目は黒髪のミディアムで眼鏡をかけているイケメン。青系統の服を着ている事が多い。変身時は黒髪が肩に付かない程度のストレートでクールビューティ。眼鏡は掛けたまま。服は変身と共に女性ものにアレンジされるが、青系統なのは変わらない。
背は男性時ではやや高い程度であるが、女性時でも男性時と比べて変わらないため、女性としてはかなり高い方となる。

【備考】
奏がバトルロワイヤルに連れられた経緯から、谷和原准教授がバトルロワイヤルに関わっていることを疑っている。


【不明/1日目・昼間】
【守谷奏】
[状態]:若干の動揺があるが、至って健康
[装備]:拳銃(魔人能力によるもの)
[道具]:基本支給品、イヤーマフ、耳栓
[思考・状況]
基本行動方針:バトルロワイヤルを止める
1: 基本的に参加者を殺す事はしない
2: 但し、相手が明確な殺意を持って襲ってきた場合、殺すつもりでいる
3: 小竹の弱点、及びバトルロワイヤルを止める方法を主催者に隠れて探す
[備考]
バトルロワイヤルのルールは把握した。
拳銃を出現させているため、現在の奏は女性化している。

36守谷奏 ◆NpOW0juB8E:2019/06/20(木) 21:27:17
投下を終了します。

37 ◆996Ti8USe2:2019/06/21(金) 22:44:35
投下します

38 ◆996Ti8USe2:2019/06/21(金) 22:45:36
「止まれ、お前の顔を確認するから、そこを動くな」

池田吐夢は、物陰に潜む男の声によって静止した。

「お前は......?ああ、隣のクラスの奴か、名前、何だっけか?」

吐夢はそのままの姿勢で目線だけを移動させるが、物陰の男の姿は確認できない。

「名前は何だと聞いているんだ!」

「あぅ⁉︎い、池田吐夢......」

声を荒げた男の声に、元来気の強い方ではない吐夢はたじろぐ。

「池田か。お前確か非魔人だったかな。まー、魔人でも大した奴じゃなさそうだ。ヤバそうな能力者は既にマーク済だからな」

物陰の男はゆっくりと立ち上がり、吐夢の前に姿を現した。怯えた子豚のような雰囲気の吐夢に、多少警戒心を緩めたようだった。

「き、君は......?」

「ああ、脅かして悪かったな。俺はスグニ、洲国 氏怒太郎だ」

洲国。隣のクラスで、確か口からビームが出るという、取って付けた様な魔人能力を持った男だ。

「洲国くんは、隠れてたのかい?」

「まあな、希望崎には俺なんかじゃ瞬殺される様なやべー能力者はごまんと居るからな。ある程度人数が減るまでは動きたく無いんだ」

「ちょっと待ってよ!洲国くんはこの殺し合いに乗るのかい?」

「そうは言ってねーだろ!けど、俺やお前じゃ、この状況変えられると思うか?」

「そうだけど!このままじゃ、死ぬのが早いか遅いかの違いだけだよ!」

「じゃあ、どうしろって言うんだ⁉︎俺らに何が出来る?」

吐夢は一呼吸置くと、ボソリと呟いた。

「ボ、ボクは、仲間を増やそうと思う。『ケモナーの洲国』くん」

「ファッ⁉︎」

39 ◆996Ti8USe2:2019/06/21(金) 22:47:04
洲国はまず自分の耳を疑った。吐夢の口から発せられた台詞があまりにも意外で、そして、当たっていたからである。

「お、お前......?何で......?」

「ケモロリっ娘でほぼ毎日オナニーしてるみたいだね。ここにはそういった本とか無いから、フラストレーション溜まるよね」

コイツ、やっぱ魔人かよ!隠していやがったな!しかもこの能力......!
洲国の殺意が瞬時に上昇する。駄目だ、コイツは生かして置く訳にはいかない。なるべく殺したくないとか言っている場合じゃない。

洲国の視線が冷たいものに変わるのを察知した吐夢は、次の手を打つ。

「待ちなよ。今ここでボクを殺したら、どうなると思う?試してみるかい?」

これは吐夢のハッタリだった。ここで動揺を見せたら吐夢はビームを浴びて一巻の終わり。何も起きはしない。故に、吐夢は背中に流れる汗を感じつつ、不敵に微笑んだ。

「洲国くん、ボクに力を貸してくれないかい?」

洲国は目の前で微笑を浮かべる魔人に、圧倒されつつあった。
駄目だ。恐らくこの池田の能力、本人が死ぬと、何らかの形で俺の性的嗜好が暴露されるシステムになって居るんだろう。なるほど、こうして仲間を増やす訳か。

洲国は慎重な男だった。殺し合い開始から物陰に潜んでいた様に、一か八かのリスクを取れる人間ではない。
一方吐夢は、この殺し合いを一人で生き抜けるとは微塵も思っておらず、仲間を増やす為に、自身の命を秤にかける覚悟が出来ていた。
そういった意味では、洲国が吐夢に勝てる道理は無かった。

「分かった。お前に協力するよ」

洲国は屈した。吐夢を生かさないと、自分がケモナーだとバレてしまう。万が一死ぬにしても、ケモナーの洲国として死ぬのは嫌だ。

「洲国くん、君の事は誰にも言わないから安心してよ」

「信用できるか。最後の2人になったら覚悟しとけよ」

「違うよ洲国くん。ボクは仲間を増やして、みんなでここから脱出するんだ」

「は?出来るわけねーだろ」

洲国は毒づくが、その一方で微かな希望を見出していた。

コイツの能力なら、強力な魔人も仲間に率いれる事が出来るかも知れない。そうなれば、この地獄から脱出する糸口を掴めるかも知れない。

「まあ、ここでこのまま死ぬよりかはマシかもな」

半ば本心で呟いた。

40 ◆996Ti8USe2:2019/06/21(金) 22:48:04
【名前】池田 吐夢(いけだ とむ)

【性別】男性

【能力】
『劣情の合鍵(スケベア・バーク)』
他人の性的嗜好、性体験等、性にまつわるデータを覗き見る事ができる。
文字データとしては勿論、任意でアクセス深度を上げれば実際の行為等もリプレイで見られる。覗き見る事が出来るのはあくまでデータなので、現在進行形でエロい事を考えている人間の心を読むことは出来ない。

人物
希望崎学園一年生。小太り癒し系の地味メン。
善性淫魔人。ただし偽悪的に立ち振る舞う時も。
他人の性的嗜好や性体験のデータを見ることができる魔人能力「劣情の合鍵」を持っている。
本人はこの能力を忌まわしい物と思っている。好きな子のデータを見てオカズにしてしまった事に罪悪感を感じている為。
ロワイアル前は、この能力自体を他人から隠していた。
ケンカは苦手で、戦闘能力は並。魔人としてはザコキャラレベル。
口からビームを吐く魔人、洲国 氏怒太郎(すぐに しぬたろう)を仲間に率いれる。

【備考】キャラ投下のみなので、気に入った方が好きに使って下さって構いません。付属品の洲国 氏怒太郎はすぐに殺しても地味に生き延びさせてもいいです。

【不明/1日目・昼間】
【池田 吐夢】
[状態]:健康
[装備]:特になし
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合い否定派、仲間を増やしたい
1:仲間を増やして、あわよくば主催を出し抜いてエスケープしたい
2:生き残り優先
3:自ら手を汚したくない
他人の弱みを握れる能力なのでそれを駆使して、相手と交渉するのが主な戦術。余計な敵を作りたくないと思っているので、自分の性癖に関してはあえてオープンに振る舞う。ちなみにコスプレAV好き。

41 ◆jG/Re6aTC.:2019/06/22(土) 03:03:25
候補作を投下します。

42 ◆jG/Re6aTC.:2019/06/22(土) 03:05:01
tl;dr 希望崎学園生、杏堂皿(あんどう・さら)が能力を披露しつつ拉致されるまでのお話。

登場人物
鎌瀬某……頭髪を短く刈り込んだ大柄で筋肉質な髭面の男。
夜永某……前髪で片目を隠した細身の男。
杏堂皿……希望崎学園の二年生。絶賛ひきこもり中。

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深夜二時、希望崎学園女子寮を訪れる二人の男の姿があった。
管理人室前に差し掛かったとき、頭髪を短く刈り込んだ筋肉質な髭面の大男が言った。

「夜永、頼む」
「もうやってますよ、鎌瀬先輩」

夜永と呼ばれた細見の男は窓越しに管理人の顔を覗き込み、舌を出し、手を大きく振る。
そんな男の振る舞いに管理人は特段の反応を示さず、携帯電話を弄り続けている。
夜永の魔人能力「闇夜に烏雪に鷺」の効果により、男たちの存在は限りなく認識されにくくなっていた。
男たちは顔を見合わせると、目的地へと歩みを進めていった。

男たちが辿り着いたのは希望崎学園生、杏堂皿(あんどう・さら)の部屋であった。
髭の大男──鎌瀬は前に出ると、慣れた手つきでドアを抉じ開けた。
部屋の電気はついておらず、短い廊下の先にある窓から月明かりが差し込んでいるのが見える。
鎌瀬に続いて夜永が部屋に侵入したところで、鎌瀬は振り返らずに言った。

「夜永、もういいぞ」
「えっ何でですか。いま能力解除して何のメリットがあるんですか」
「台本をちゃんと読んでおけ。戦闘能力を確認するのもシナリオの内だ」
「マジですか、俺そっちは得意じゃないですよ。帰っていいですか」
「元は包装部所属でかなり使う生徒だったらしい。油断はするなよ」

大げさに手を額に当てて天を仰ぐ夜永をよそに、鎌瀬は部屋をひとつひとつ確認しながら廊下の奥へと進んでいく。
廊下の横の部屋は風呂、トイレ。いずれも人影なし。
廊下の奥は6畳ほどの洋室だったが、鎌瀬は思わず足を止めてこぼした。

「汚い部屋だな」

皿の部屋は物取りに荒らされたかのような有様だった。
開け放しの衣装ケースからは衣類が垂れ下がり、インスタント食品の容器の山がミニテーブルから床にかけて雪崩を起こしている。
大画面のテレビ、2モニタのパソコンから出たケーブル類は絡まりあってどれがどこに繋がっているのか分からない。
部屋の一角には大小さまざまな段ボールと破られた包装紙、緩衝材などが無造作に積み上げられている。
付近にはその中身であろう洗剤、タオル、ぬいぐるみ、酒、観葉植物、一メートルを超える巨大ぬいぐるみ(イカ)、電気ポットといった選択基準の分からない雑多な品物が散らばっていた。

男たちは床に置かれたものを蹴散らしつつ、窓際に置かれたベッドへと向かった。
ベッドの上では皿が死んだように眠っている。
彼女を見下ろしながら鎌瀬が言った。

「起こすぞ」
「このまま攫いましょうよ。楽に済むに越したことはないですよ」

夜永の言葉を無視して鎌瀬が皿を揺さぶったとき、違和感が彼を襲った。
柔らかすぎる。軽すぎる。そして、体温がない。

「気をつけろ。既に能力を使ってい──」

その言葉を言い終える前に、背後から伸びてきた二本の白い腕が男たちの顔をひと撫でした。

43 ◆jG/Re6aTC.:2019/06/22(土) 03:06:47
するとどうだろうか。何やら薄い膜のようなものが彼らの頭部を包み込んだではないか。
男たちは咄嗟に首筋に指を這わせたが、幾重にも巻かれたそれを引き剥がすのは容易ではなかった。

男たちの顔に巻かれていたものの正体、それはあれだった。
権利関係のあれで具体的な商品名を出すわけにはいかないが、どの家庭の台所にもあるあれ。
無色透明で薄く、若干の伸縮性があり、細長い筒に巻かれて収納されていて、おにぎりを握るのに使ったり、電子レンジで冷えた食品を温めるときとかにピッとやって被せるやつ……そう! それである。
そのあれなんだけど、何でも通気性があるものとないものがあるんだって。
ポリ塩化ビニリデンというものを原材料として作られたものは通気性がないらしい。
ここでは通気性がないものが巻かれたこととする。

男たちはしばしの間それと格闘していたが、やがて一人、また一人と力尽き、その場に倒れ伏した。
その様子を、いつの間にか接近していた巨大ぬいぐるみ(イカ)が無表情に見下ろしていた。
十分あまりが経過したとき、おもむろに巨大イカの背中のファスナーが下り、中から今まさに連れていかれんとしていた皿が姿を現したではないか。
どういうからくりか理解の追い付かない読者諸氏のために解説が必要だとは思うが、偶然にも皿には独白癖があったので、まずはそれを聞いてみたい。

「あーしはベッドで寝ねーんだわ。いつ来るか分かんねーしな。賊が。信用できねーし。でも暑ちーから正直辛いわ。最近は。ちなみにそっちもイカ。デコイのイカだからデコイカな。包み直すの面倒だから破らんといて。あっ、死んでるから聞こえないか。わりーわりー」

お分かり頂けただろうか。
ひきこもり生活が続いてめっきりコミュニケーション能力が低下してしまった皿の独白では若干分かり辛い部分があったかもしれないので、以下に補足説明させて頂く。

・皿は他人が信用できない。
・皿は『他人が寝込みを襲ってくるかもしれない』という妄想を常日頃から抱いていた。
・皿は自衛のため通販でイカ怪人の着ぐるみを購入し、その中に隠れて眠ることにした(魔人能力不使用)。
・それだけでは家捜しの末に自分の居場所がばれてしまう可能性があるので、身代わりを用意することにした。
・追加で購入したイカのぬいぐるみを自分の姿に変え、ベッドの上に配置した(魔人能力使用)。

大丈夫ですね? 先に進みましょう。

「──で、あんたらは誰よ」

警戒を解かぬまま皿は男たちの体を表に裏にひっくり返し、何か素性の分かるようなものがないかと探り始める。
すると細見の男、夜永のジーンズの後ろポケットに薄い本のようなものが丸めて入れられていることに気が付いた。
本を手に取り、表紙を窓のほうへと向けると、月明かりに題名が浮かび上がった。

『tl;dr 希望崎学園生、杏堂皿(あんどう・さら)が能力を披露しつつ拉致されるまでのお話。』

「これは……」

背中を冷たいものが伝う。
皿は嫌なものを感じながらも、次のページをめくった。

『登場人物。
 鎌瀬某……頭髪を短く刈り込んだ大柄で筋肉質な髭面の男。
 夜永某……前髪で片目を隠した細身の男。
 杏堂皿……希望崎学園の二年生。絶賛ひきこもり中。』

ページをめくる。

『台詞
 鎌瀬:台本をちゃんと読んでおけ。戦闘能力を確認するのもシナリオの内だ
 夜永:マジですか、俺そっちは得意じゃないですよ。帰っていいですかね』

本を閉じる。

「これは……演劇部様式の任務指示書、通称『台本』」

44 ◆jG/Re6aTC.:2019/06/22(土) 03:08:22
皿はかつて耳にした話を記憶の底から蘇らせた。
希望崎学園の演劇部員。卒業後は舞台役者や映画俳優への道を進むものが少なくないが、成功者となれるのはほんの一握り。
多くのものは夢破れて別の道を選ぶか、諦めきれず副業をこなしながら端役やエキストラとして出演を続けるか。
そんな元演劇部員たちの受け皿の一つに、非合法活動を主とする闇組織が存在するという噂がまことしやかに囁かれていたのだ。

「演劇部OBがなんであーしの部屋に……演劇部!?」

演劇部と自身の関係性について思いをめぐらせていた皿であったが、あることに気づいて目を見開いた。

「まずい! 演劇部員なら……アレがある!」
「ガバアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

突如として上がった雄叫びの方向に、とっさに顔を向ける皿。
目にしたのは跳ね起きる夜永、その勢いでめくれ上がる服、露わになる腹部!
そこには人の顔をした深い傷痕……人面瘡が刻まれていた。
横に大きく避けた亀裂はひゅうひゅうと音を立てている。
反射的に『あれ』を取り出した皿はその亀裂を塞ごうと手を伸ばすが、背後からの一撃により、皿はその場に倒れ伏した。
皿は演劇部員の基本技能、入部条件にもなっているそれに気付くのが遅れたことを悔やむも、既に体は動かない。

「腹式……呼吸……」

窓から一陣の風が吹き込み、台本がぱらぱらと捲れる。
薄れ行く意識の中、皿の目に映ったのは最後のページに書かれた一文だった。

『鎌瀬:悪いがここまでが台本通りだ。続きは会場で演じてくれ』

----

【名前】杏堂皿(あんどう・さら)

【性別】女性

【能力】
『アグノスティケーション』
自らの手で包装を施したものを別の何かに誤認させる、認識阻害能力。
影響範囲は視覚のみであり、触感などは包装資材に依存する。
変装に使用するのであれば声、体臭、振る舞いなどは別の方法で誤魔化す必要がある。
何に誤認させるのかは任意に選択可能だが、精度は以下の二点に依存する。
一、元の形状との類似度。
二、包装の完成度。
不透明な物質を透過させるような運用は非現実的だし、十分な効果を得るためには包装に相応の時間を要する。
ただし杏堂は一通りの包装技術を習得しているため、両手で包み込める程度のものであれば一瞬で包装できる。

【人物】
希望崎学園の二年生。包装部所属。
包装の完全熟達者になることを夢見て日夜研鑽を積んでいたが、ある事件をきっかけに人間不信となり、不登校となる。
自室に籠りきりの陰鬱な日々を重ねるにつれ、瞳の輝きは見る影もなく濁り、肌は幽鬼めいて青白くなっていった。
学園に通うのをやめた後も包装大学への進学は諦めきれず、インターネットを利用して独学で包装技術を学んでいる。

【備考】
ある事件については何も決まっていません。

----

【不明/1日目・朝】
【杏堂皿】
[状態]:心身ともに不健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本行動方針:他人を信用できないため、単独行動する。
1:人気のない場所を目指す。
2:他人と遭遇した場合、当たり障りのない会話をした上でその場を去ろうとする。
3:相手から離れるのが困難であると判断した場合、包殺を試みる。
[備考]
設定に従い単独行動させることにしましたが、これでは他のキャラと絡むことができません。
一体どうすればいいのでしょう。

45 ◆jG/Re6aTC.:2019/06/22(土) 03:09:24
投下を終了します。

46qaz:2019/06/23(日) 18:53:19
>>2-3
質問です。
ゲーム開始は1日目の何時ですか?

47私と変わりますか? ◆6zF/61Tl7U:2019/06/23(日) 21:23:30
田母神財閥の令嬢といえば、誰もが羨む何不自由のない生活を恵まれた人生を送っていると世間の人間は思っているのだろう。
だから、皆、私のことを羨ましいという。
それが私には疎ましかった。



◆◆◆◆


中学時代のある日、昼食に毒を入れられた。

犯人は兄だった。
田母神財閥の膨大な財産のために後継者候補の一人である私を殺そうとしたのだ。
大切な妹だと、私のことを可愛がってくれていたのに。

それまでも私の命を狙う人間はいたが、家族にまで命を狙われるとは思わなかった。

事件は今までの事件と同じように内輪で隠ぺいされた。

それからは誰も信用できなかった。家族さえも私の敵だった。
いや、家族こそが私の敵だった。

なのに、そんな私を皆が羨ましいという。

ふざけた話だ。
誰も本当の私の事なんて知らないくせに。
私はこんな家に生まれたくなんてなかったのに。
彼らに私の苦しみを味あわせたかった。


世界のすべてが恨めしく感じたその時―――


気が付けば、私は魔人になっていた。


◆◆◆◆



皆、私のことを羨ましいという。
何人もの人間が貴方のような人生を送ってみたいと言っていた。
だから、彼らに私は問うた。

「いいですよ。私の事がそんなに羨ましいなら変わってみますか?」と。


私の問いに、もちろんみなが了承した。
私でも大財閥の令嬢になれると皆が狂喜乱舞した。

常人であればたどり着けないであろう金も名誉も彼らには魅力的に映っただろう。

けれど、もちろんそれは最初だけだった。

自分の命が脅かされることに気付くと、皆が私に元に戻すように懇願した。
時には土下座をし、時には涙を流して、皆が私にそれを訴えた。
その姿を見るのが私にはとても気持ちがよかった。
きっと彼らが私を羨ましがることはないだろう。

世界の醜さは何も変わらなかったが、それでも心が晴れ渡るようだった。


◆◆◆◆


目の前で人が爆発して、死んだ。
私をここへ連れてきた人間の仕業だった。
死んだのは見知らぬ人間だったが、人が死ぬ光景は何度見ても気持ちがよいものではない。

どうやら首謀者は殺し合いをさせたいらしい。

なぜこうなってしまったのだろう。

世界を呪い、あんなことを繰り返していたせいだろうか。
それとも、また誰かが私を後継者から排除しようしたのだろうか。


私がこんな事件に巻き込まれたのは――――






----

48私と変わりますか? ◆6zF/61Tl7U:2019/06/23(日) 21:24:34
【名前】田母神 クレス

【性別】女性

【能力】
『ダモクレスの剣』
他者とクレスの立場、地位・肩書を入れ替える能力。

例えば、その辺の庶民と田母神財閥の令嬢という立場を入れ替えれば、彼女は庶民と認識され、入れ替えた相手が令嬢と認識される。

オリンピックの金メダリスト、ノーベル賞受賞者などの地位も得ることができるが、それに相当する能力が得られるわけではない。
性別は補正される。
能力の発動には両者の同意が必要。ただし、死者に対しては同意は必要ないが、彼女が出会ったことのある人間である必要がある。


【人物】
田母神財閥の令嬢で後継者候補の一人。20才。
涼しげな顔をした長い黒髪の美少女。
周囲の人間に幼少のころより命を狙われてきたため人間不信気味で他者を信用できない。
自分に友好的に接してくる人間もいつか裏切ると思っているが故に、他者と協力はしても心を許すことがない。

彼女を羨ましいと思う人間は嫌い。



財閥の跡取り娘である自分の立場を羨ましいといった人間と立場を入れ替え、それを元に戻すことを繰り返してきた。





【備考】
特になし


----


【地名/時間(日数、深夜・早朝・昼間など)】
【キャラ名】
[状態]:健康
[装備]:特になし
[道具]:基本支給品、不明支給品。
[思考・状況]
基本行動方針:生き残る
1:基本的に勝てそうにない相手からは逃げる。
2:他者は裏切る前提で行動するが、求められれば協力する。
3:積極的に人を殺したいとは思っていない
現在の状況での行動・思考の優先順位
[備考]
バトルロワイヤルのルールを把握したところです。

49私と変わりますか? ◆6zF/61Tl7U:2019/06/23(日) 21:25:10
投下を終了します。

50 ◆fKOYRw.njI:2019/06/23(日) 21:42:38
>>46
返信遅れてすみません。
開始時刻は10〜14時くらいを想定していますが、
候補作によって多少ズレがあっても問題はありません。

51qaz:2019/06/23(日) 21:44:50
>>50
ありがとうございます。

52 ◆jG/Re6aTC.:2019/06/24(月) 18:29:54
質問です。
一度禁止エリアに指定された区域はゲーム終了まで解除されないという認識で正しいでしょうか?

53私と変わりますか? ◆6zF/61Tl7U:2019/06/24(月) 23:42:35
>>48
すみません。記述されてないところがあったので修正させてください

【名前】田母神 クレス

【性別】女性

【能力】
『ダモクレスの剣』
他者とクレスの立場、地位・肩書を入れ替える能力。

例えば、その辺の庶民と田母神財閥の令嬢という立場を入れ替えれば、彼女は庶民と認識され、入れ替えた相手が令嬢と認識される。

オリンピックの金メダリスト、ノーベル賞受賞者などの地位も得ることができるが、それに相当する能力が得られるわけではない。
性別は補正される。
能力の発動には両者の同意が必要。ただし、死者に対しては同意は必要ないが、彼女が出会ったことのある人間である必要がある。


【人物】
田母神財閥の令嬢で後継者候補の一人。20才。
涼しげな顔をした長い黒髪の美少女。
周囲の人間に幼少のころより命を狙われてきたため人間不信気味で他者を信用できない。
自分に友好的に接してくる人間もいつか裏切ると思っているが故に、他者と協力はしても心を許すことがない。

彼女を羨ましいと思う人間は嫌い。

財閥の跡取り娘である自分の立場を羨ましいといった人間と立場を入れ替え、それを元に戻すことを繰り返してきた。



【備考】
特になし


----


【不明/1日目・朝】
【田母神クレス】
[状態]:健康
[装備]:特になし
[道具]:基本支給品、不明支給品。
[思考・状況]
基本行動方針:生き残る
1:基本的に勝てそうにない相手からは逃げる。
2:他者は裏切る前提で行動するが、求められれば協力する。
3:積極的に人を殺したいとは思っていない
現在の状況での行動・思考の優先順位
[備考]
バトルロワイヤルのルールを把握したところです。

54 ◆fKOYRw.njI:2019/06/26(水) 17:38:41
>>52
原作の小説では、禁止エリアに指定された区域はゲーム終了まで解除されませんが、
今回はマップが狭いことと海が多いことから「禁止エリアは放送毎に切り替わる」という方式にさせてください。
通常のロワイヤル企画とは異なりますが、なにとぞよろしくお願いします。

55 ◆jG/Re6aTC.:2019/06/27(木) 12:54:21
>>54
分かりました。ありがとうございます!

56 ◆G7wbG9fIug:2019/07/04(木) 21:33:02
投下します。

57 ◆G7wbG9fIug:2019/07/04(木) 21:35:19
 ある所に、無神論者が居た。彼は今まで神の愛に触れた事がなく、悪魔さえも信じてはいなかった。
 母を知らず、いくら呪えども嘲りが絶えない世界にあっては、それも無理からぬ話であろう。
 しかし、天使ならば信じていた。そこにあった「それ」を、確かに天使であると、信じていた。

 1人の男が、光の中で立っている。男の周囲は闇と静寂に包まれており、動く者はいない。傍らには風変りな楽器が1つ。横倒しにされたグラスと
それを繋ぐ金属の棒が嵌め込まれた、一体型の装置。装置が起動すると、鉄製の棒を回し、グラスが回転を始めた。男がグラスに指を触れる。その
度に機械は共鳴し、柔らかい音色を周囲に響かせる。やがて音は反響し、幾重にも折り重なり、空間全体を包み込んだ。音の向こうに風景が見える。
穏やかに日の差す湖が、鼻をくすぐる緑が、草を揺らして駆け回る動物たちが!
蠢く春はやがて匂い立つ夏へと変わる。夏は秋へ、秋は冬へ。男の手がグラスに触れる度、香りが、色が、動きが、味覚が、次々と付け足されていく。
しんしんと降る雪が息を白くさせ、冷たい空気が肌に刺さった。思わず身震いする。辺りを見回せば氷と雪で閉ざされ、どこにも逃げ場など存在しない。
寒い。
動く物など何も存在しない、ただ、ただ冷たさだけがある世界。どこまでも濁った灰色の続く、そこは地獄であった。思わず天を仰ぐ。そして気づいた。
空を覆う分厚い雲の切れ間から、細く、しかし確かに、日の光が差し込んでいる事に。子供の声が聞こえる。その声は、足取りも軽くこちらへと駆け寄っ
てくるのが見えた。

1人の男が、光の中で立っている。傍らには風変りな楽器が1つ。男が演奏を止めた時、静寂を突き破って割れんばかりの喝さいが轟いた。

58 ◆G7wbG9fIug:2019/07/04(木) 21:36:49
『一二野 単独コンサート成功』
『想像を遥かに超える演奏 観客も涙』
『収益は全額チャリティーへ寄付』
『早くも次開催望む声』

 「…〜ッかー、やっぱ俺って天才だな!」

 男が、部屋の中で独り言ちる。手にした新聞を放り投げると、そのまま真白いベッドへと飛び込んだ。その顔はにやにやとした笑みが止まらず、
とてもだらしがなかった。

「まぁ〜全額寄付は正直勿体なかったけれど、世間的な評価は得られた訳だし。次は適当なパトロンでも見つけて、“ひっかけて”やればいいか。」
 
 男は、とても良い気分であった。大々的に宣伝した初のソロコンサートを大入り満員で迎え、そして音楽家としても篤志家としても名を挙げた
のだ。次の仕事にも繋がった。鼻歌でも歌いたい気分だった。最も、次への仕事だのは、仮に成功しなかった所でどうにでもしてしまえたのだが。

「たまには正々堂々ってのも悪くはねぇ…あぁー、い〜い気分だぜぇ〜」

ふんふん、と本当に歌いだす。その音は相棒である楽器―グラスハーモニカ「セラフ」の音色には程遠い物の、やはりとても上手かった。


男はそのまま眠りに落ちる。次に目覚めた時にどことも知れぬ島の中に居る事など、無論知る由もない。

59 ◆G7wbG9fIug:2019/07/04(木) 21:40:14
【名前】一二野 三太郎 (ひふの さんたろう)

【性別】男性
【能力】
『サイミンコキネシス』
 動植物や無生物を相手に、催眠術をかける事が出来る。かける時間さえあれば、結果として風を巻き起こしたり物体を空中浮遊させる等
も可能。催眠術は素の実力なので、普通に人間にもかけられる。但し精神攻撃なので、対象の精神力が3以上ならば無力化されてしまう。
自己催眠はいつでも可能。

【人物】
 幼少の頃からその才能を発揮し、周囲の人間を意のままに操ってきた催眠術士。自分中心でわがままな性格であり、他人を信用していない。
唯一信じているのは催眠術の腕と音楽だけ。しかしここぞという所で道を外れられなかった小心者でもある。
彼が催眠術をかける手段は多い。古典的な5円玉を用いた手法から、愛用のグラスハーモニカ「セラフ」を用いた催眠演奏まで多種多様である。

【備考】
特になし

【場所不明/1日目・時間帯不明】
【一二野 三太郎】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品。
[思考・状況]
基本行動方針:生き残る為に行動
1: 出会った相手全員に催眠術をかけ、無力化or手駒化を試みる。
2: 主催者「小竹」の無力化(状況次第。可能と見れば行う)
現在の状況での行動・思考の優先順位
[備考]
コンサート疲れで爆睡しました。ルールの把握自体は出来ているでしょう。
最大の武器であるグラス・ハーモニカ「セラフ」を無くした事にはすぐ気づきます。そしてめっちゃ落ち込みます。

60 ◆G7wbG9fIug:2019/07/04(木) 21:40:44
以上で投下を終わります。

61 ◆G7wbG9fIug:2019/07/04(木) 21:43:03
>>57-59
名前欄に題名を書き込んだら反映されていませんでした。
題名は「幽遠なる舞台に悠久の音色を」です。

62毒も皿も喰らう者:2019/07/05(金) 09:20:50
投下します

63毒も皿も喰らう者:2019/07/05(金) 09:25:07
『…ここは、森の中ですか』

意識を取り戻したカルナは、自身が森の中に横たわっていた事を、土の感触と草木の匂いで理解した。
だが、身体は微動だにさせず、そのままの状態を維持し続ける。
先程の小竹と言う青年が言った事を考えれば、もう既に事は始まっていると考えられ、既に自身が狙われている可能性があるからだ。

『あー、テスト、テスト。聞こえるかね、参加者の諸君?』

カルナが周りの気配を探るのに、全神経を集中していると、突然、頭の中に声が響く。

『やはり、仲間はいるようですね』

その声の主が小竹のものである事、小竹の能力が少なくとも爆破に関する事、そして、今こうして脳内に直接言葉を送る術を持つ者がいる事からそれを察すると、周囲の気配を探りつつ、小竹の説明にも意識を向けた。



『ーでは、また会おう! バァイ♪』

一方的な説明が終わると、小竹の声は途切れた。
元より、こちらの意見等聞くつもりはないのだろう。
必要な情報は与えるが、それ以外は完全に遮断し隔離する。
典型的な殺し合わせのテンプレートである。
故に、主催者側の意図もそこから読み取るのは難しい。

『近くに人の気配はありませんか…』

周囲の安全を確認し終えたカルナは、足の反動と背筋を使い起き上がると、軽くストレッチを行い身体をほぐす。
ほぐし終わると、先程小竹の説明にあった名簿を手に取り、1ページ目から順々に目を通す。
カルナは、名前と魔人能力名だけしか書かれていない単調なページを次々と捲り、その情報を瞬時に頭に叩き込んでいった。

『これで全員ですか』

参加者全員分の情報を読み終えるのに、それほど時間は掛からなかった。
するとカルナは、どこからともなくケチャップとマスタードを取り出し、読み終わった名簿にまるでホットドッグと同じとばかりにかけると、数十ページはある名簿をまるでサンドイッチでもかじるかの如く、噛みきり、咀嚼し、飲み込みだ。

『名簿には顔写真はありませんし、魔人能力の効果も不明。
多少お腹も膨れましたし、まずは情報収集から始めましょうか』

64毒も皿も喰らう者:2019/07/05(金) 09:25:38
さも平然と名簿を食べきったカルナは、そのまま支給品であるディパック、正確にはその隣にある物に手を伸ばした。

『血は止まってますがほのかに体温が残っていて、関節も全て動く。それとこの制服や体つき。
となるとこちらに入っているのは重さ的にまず間違いなさそうですね』

それは先程、参加者全員の前で頭部を吹き飛ばされたド正義卓也の死体と、ビニール袋に詰められた頭部の肉片であった。
それを理解したカルナは、縛られたビニール袋の持ち手をほどき、何の躊躇もなくその中に手を入れる。
そして手首まで入り込んだ手を引き抜くと、その手には肉片以外の物が握られていた。

「歯と眼球、顎の骨に三半規管と髪の毛が十数本。
他にも色々と入っているみたいですし、どうやら貴方の頭は全部この中に入っている様ですよド正義さん。」

血と肉の混ざった臭いが、袋とカルナの手から漂い始める。
だがカルナは、その異臭に眉一つ動かす事なく、答える事のないド正義に語り続ける。

「貴方がここにいると言う事は、どうやら私達の事を十分理解した上で、私達に殺しあいをさせたいのでしょう。

となると、少しおかしいですね。
仮にド正義さんの能力が、小竹と言う人が言った通りの能力だとしたら、『殺しあいをさせる』には明らかに有利すぎますし、ワンサイドゲームを楽しむ為に呼んだのなら、貴方の性格が殺しあいに向いていないのは百も承知のはず。
実際、ド正義さんはそれを拒み頭を爆破、いえ、焼けた臭いがないので破裂させられたと言った方が正しいですね。

とにかく、貴方は殺されました。
ですが、私は腑に落ちないんです。
ド正義さんみたいな方は、自身より他者の安全を優先するタイプとお見受けしますし、そう考えると、何故あの時わざわざ『殴る』と言う自身の感情を優先したのかが?

私はこう考えています。
『あそこでド正義卓也が殺されるのは最初から決まっていた』と。

そう仮定した場合、考えられる理由はいくつかあります。
例えば、『貴方が最初からあちら側と面識があり、そうする事を強要または望んで行った』とか、『既にド正義卓也は死んでいたので、全員の目の前で殺した事にしたかった』とかですね。
しかし、殺しあいをさせるのが目的だと考えると、ド正義さんのご学友の方が何名かいらっしゃる様ですし、やはり『知り合いを殺す事で死への恐怖心を煽る』と言うのが妥当でしょう。

そうなると、ド正義さんのあの行動も何らかの魔人能力によって『とらされた』可能性もあります。
『相手の頭部を破裂させる能力』と『言葉を脳内に直接届ける能力』は確定として、先程言った『行動を操る能力』と、ド正義さんが死んでからまだそんなに時間が経っていないので『対象を移動させる能力』、禁止エリアの事もあるので『制約を作る能力』、そしてあちらの言う事を信じるなら『願いを叶える能力』。
全員いるのだとしたら、6人以上の魔人能力者があちらにはいる事になりそうですね。

もっとも、私の予測が正しければ、の話ですが。
とはいえ、まだ情報が少なすぎます。
あちら側が何らかの介入をしてくる事も考えると、まずは情報収集と拠点の確保、安全の確保と食事、罠や必要な物の製作、禁止エリアや他の参加者の事を考えると、拠点場所は複数確保したいですね。

地図を見ると校舎があるようですし、まずはそこに向かう事にしましょう。
水道や電気、ガスが使えるならそこを拠点にしたいですし、探せば使えそうな物がいくつか見つかるかもしれません。」

答える者がいないが、カルナは淡々と話続ける。
それは今に至るまでの情報から推測した仮説であり、今後の方針を決めるものだった。

「安心してください。
貴方の犠牲と命、私が無駄にはしません」

そう言いカルナは、森の中を進み始める。
その背にはド正義の亡骸が背負われており、二人分の影が森の中に消えた。
今この場に何者かが訪れたとしても、ここにド正義卓也の亡骸があった等とは夢にも思わないだろう。

そしてそう遠くない未来、ド正義卓也と言う男がこの世界から完全に消えてなくなる事も、知るよしもないだろう。

65毒も皿も喰らう者:2019/07/05(金) 09:26:49
【名前】
カルナ・ウェンディバル

【性別】
女性

【能力】
『ミスティックパワー』
口に入った物が何の問題もなく飲食できる様になる能力。
どんなに物でも噛めば噛みきれ、毒や熱を無いかの如く飲み込め、臓器を傷付ける事なく胃に運び、その全てを消化し自らの血肉とする。
なお、味は変化しないので不味い物は不味いままである。


【人物】
シリアルキラーにしてカニバリストの女性。
全ての物に命があり、その命の価値は平等と思っている為、牛や豚を食べるのと変わらない感覚で人間も食べているし、普通なら食べない物も食べている。
どんな物でも食べるからには美味しく食べたいと思っており、何時如何なる状況でも料理が出来るよう、常に調味料各種と小型鍋、携帯コンロに包丁代わりにもなるサバイバルナイフを持参している。

普段は冷静沈着な性格で、頭の回転の早さと観察力や状況判断力の高さ、何事にも動じない胆力と身に付けたゲリラ戦法やサバイバル技術を用いて、待ち伏せや罠、矢による狙撃等の手段で相手を追い詰め捕獲または殺害しているが、空腹感に比例して徐々に野生的な一面が見え始め、奇襲によるヒット&アウェイで対象を狙う様になる。
更に、空腹がピークに達した飢餓状態になると野生の獣を彷彿とさせる動きで、満腹になるまであらゆる物に食らい付き、生きたまま相手を食べる事もあるのだが、彼女は大食間なので、人間だけなら二人は食べなければ飢餓感は満たされない。
ちなみに、毒や爆発物の使用は美味しく食べられる所が減る可能性があるので、あまり好まない。

食べ物を粗末にする事を嫌っており、空腹でなければそう言う者を探しだして食べている。
ちなみに彼女の基準では、食べ物を半分以上残すのと人を殺したのに食べないのは、等しく食べ物を粗末にする事である。
また、不特定多数の人間を拉致監禁し、人間を調理してから食べるまでの過程を見せる事で、彼女と同じ思考になるよう洗脳するケースもあり、そのショックによるトラウマで、拒食症や対人恐怖症等になる者、逆に彼女のシンパとなりカニバリストに目覚めた者も少なくはない。
これは、彼女が望んでいる『全人類が人間を当たり前の様に食べられる世界』を作る為の行動であり、この様な事件を世界各国で行っている事や、文字通り骨まで残さず食べるので死体が残らない事も合わさり、彼女の犠牲者の正確な数は不明となっている。

【備考】
能力で毒や熱等を無効にするのは、あくまで自分が食べた時に限り、体外で受けた毒や熱等によるダメージは普通に効果が出ます。



【?→D-2に移動中/昼間】
【カルナ・ウェンディバル】
[状態]:小腹が空いている
[装備]:サバイバルナイフ
[道具]:調味料各種・小型鍋・携帯コンロ
[思考・状況]
基本行動方針:全員食べる(殺す)
1:状態が時間経過で『満腹→小腹が空いている→空腹→飢餓』と変化。何かを食べる事で回復する
2:同じ考え(カニバリズム)を持つ者や(洗脳等で)目覚めた者とは協力関係を結ぼうとする
3:誰かを食べる際は調理を行うが、飢餓状態だと生きたまま食べる

[備考]
満腹だと、罠を仕掛けたり状況確認等を優先し、探してまで誰かを襲おうとは思わない
小腹が空いていると、食事をする為に行動を開始、殺人を犯した者を優先的に捕獲または殺害する
空腹だと、特に何の罪もない人間も襲う様になり、飢餓になると敵味方関係無く襲うようになる。
現在、ド正義の死体を持って移動中。

66毒も皿も喰らう者:2019/07/05(金) 09:31:18
投下を終了します

67ただの二郎:2019/10/22(火) 18:29:37
これってまだ投下可能ですか?

68ただの二郎:2019/10/22(火) 18:30:41
これってまだ投下可能ですか?

69ルフトライテル:2019/10/26(土) 01:15:56
投下は締め切られてはいないの投下可能だと思いますが、そもそもGKが見当たらないようですね
wikiも更新が止まっていますし


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