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【セ】彼方への郷愁【銀剣のステラナイツ】
19
:
トワレカ・ヴァニア
:2018/10/24(水) 04:20:07
>>18
「へえ…………ありがたい食べ物なんだね。一度食べてみたいな。
実は私もね、チョコレートは好きなんだ。コーヒーゼリーは皆のお勧めだけど、
チョコレートケーキは……実のところ、私のお気に入りなんだよ。ぜひ頼もう」
チョコバー。きっと彼の――――故郷の食べ物なのだろう。
この世界に似た物があるのだろうか。同じ物が伝わっているだろうか。
それでも、記憶の中にあるのなら――――『料理』もまた、『芸術』なのだろう。
「これは…………私の夢にも関わる事、なんだけどね。
貴方の過去、今、それは確かに……少し『怖い』かもしれない。
それを取り繕うのは主旨に反するから。でも、失礼な事だ……ごめんなさい」
「…………」
このカフェにはいろんな客がいる。みんな綺麗な恰好をしている。
紅茶もコーヒーもこのあたりのお店では一番値段が高くて、
味も――――味は人によるだろうけど、平均点で見ればきっと一番だ。
「こういう『カフェ』とか、私が着ているこの『服』とか。
似合う? ……ありがとう。頑張って似合うようにしてるんだ。
頑張って。……自分で言うのもどうかとは思うんだけどね、
こういう考えというのも、教えておいた方が良いかなって思うんだ」
トワレカ・ヴァニアが大事な話をするのに使うカフェは『こうあるべき』だし、
そこに来るために引っ張り出してきたこの服は高かったけど、『こうあるべき』だ。
もっと言うなら、その服を着るために、細身なこの体も『こうあるべき』なのだ。
それは誰かに決められた事じゃあない。強いて言うなら『ミューズ』が決めた。
「っ…………」
その男の空気が変わっているのは、英雄ではない自分でもわかった。
いや、英雄ではないから――――『舞台』に立つ者だから、わかった。
目の前の英雄が、その『変身』がとても、『儚い』ものだとわかった。
「そうだね、一言で言うなら」
「私は……………………『芸術』を作り出したい。いや、『芸術』になりたいんだ」
「だってね、『芸術』は…………不滅なんだよ。ねえアレックスさん。
いや、芸術という言葉だけじゃあ表せない。『心に残る物語』は『不滅』なんだ」
がたっ、と音を立てて立ち上がった自分に後から気づいた。
今から座り直すのも気恥ずかしくて、そのまま話すことにした。
強く握った拳には、気づいていなかった。
集まる視線は気にする理由もなかった。
「…………ああ! 『不滅』という言葉の、なんて甘美で素晴らしい事だろう!
食べ物も、服も、お店も……人間も。『形ある物』はいずれなくなってしまう」
本で――――映像でしか知らない。何処かの世界の〝隣人〟が、
滅んで行く自分の故郷を綴ったものを、昔見たことがあった。
「………………………………世界も。でも、そこで生まれたものは。
それを見て、聴いて、知って。心に刻んだ誰かがいるものは。
不滅なんだ。抽象的な話じゃない。……どこかで『再演』出来るんだ。
誰かが覚えていれば、元とは少し違っても……それはこの世界に、残るんだ」
悲痛な芸術だった。だけど、その世界のことは――――それを見た人は覚えている。
その人のこともだ。名前だって憶えている――――その人は当の昔に、『なくなった』。
生まれた全ては消えていく。だが、『残す』事は、『継ぐ』事は出来る。それは『希望』だった。
かたん、と椅子に腰を落とした。
自分の熱に不釣り合いで、でも、そこから作られた軽い音だった。
「そういう存在になりたい…………
なるための『大舞台』を整えるのが、私の夢だよ」
そうなる事自体が『ステラバトル』で叶えたい夢じゃあない。
それは手っ取り早いかもしれないが、『ステラバトル』でしかない。
戦いの延長上で、本来経るべき物語を飛ばして――――それがいつまで『残る』?
なにせ『ステラナイツ』は、自分達だけじゃあない。だが、『トワレカ・ヴァニア』は一人だけだ。
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