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【セ】彼方への郷愁【銀剣のステラナイツ】
18
:
アレックス・グロース
:2018/10/24(水) 00:41:42
要素を並べれば並べるほど、痛感する。彼女と俺は、何もかもが正反対だ。
普通なら、関わる機会を持つことさえ、まずなかっただろう。
それが良いことなのか悪いことなのかは、わからないが。
「正直に言えば、少し意外でもある。」
「大体、あー……怖がられたりすることの方が多いから、正直珍しいというか。」
「君のように、華やかな御婦人からパートナーになることを歓迎されるとは、その……正直、思ってなかった。」
自分の活動が、端的に言って、その、なんだ。
異常な行為であることは、理解している。
何度か警察に追われたこともあるし、法規制と戦った事もあった。
特にこう、表面上平和な時ほど顕著なのだ。そう―――
―――『ヒーローって、必要?』なんて言い出すのは、いつだって平和に暮らしてる善良な一市民だ。
まあ、背後に悪党の影があることも、往々にしてあるんだが。
「そうなのか? ……てっきり、いつもこういう店で優雅にティータイムを楽しんでいる物だとばかり……」
「あー、いや、その、気分を害したらすまない。そういうイメージがあるというか、そういうのが、そう……すごく、似合うもんだから。」
なんとなく、普段より饒舌になっている自覚はある。
慣れない状況では、自然と口数が増えるか、逆に減るものだ。
「……チョコバーだよ。小さくて、安くて、高カロリー。」
「まあ、でも、そうだな。せっかくだし、後で頼もうか。チョコレートケーキ。」
と言っても、それはあくまで慣れない状況に起因するもの。
戦いを前に浮ついている、とか、そういうのではない。
何しろ俺は、経験者だ。いや、武器に変身して振るわれた経験は流石にないが。
少なくとも、俺は一度あの怪物と対峙した事がある。その時はまあ、戦いというほどの物にもならなかったが。
それでも、前に立つだけで足を引っ張りかねなかった当時より、現状は恵まれていると言えるだろう。
実際に戦うのが、彼女のような御婦人だという点に関しては、少々思う所もなくはないのだが―――
「確かに、そうだな。俺も、君のことをよく知ってるわけじゃあない。」
「君は俺を安心して使うために、俺は君に安心して使われるために。互いに互いを知る必要があるだろう。」
どうでもいい―――聞かれても問題ないって意味で、意味がないってわけじゃない―――話から、声のトーンを落とす。
言ってみれば、それまでが普段の、ここからはマスクを被ってる時のトーン、というやつだ。
もちろん、他人から声を聞かれにくくする意味合いもあるが―――どちらかと言えば、意識を切り替える意味合いの方が強い。
あたかも役者が役に入り込むように。地味な男のアレックスから、路地裏の私刑執行人へ、意識をスイッチする。
「俺のことを話す前に、まず確認しておきたい事がある。」
「君はなぜ戦う? 何を願い、何を求める?」
ステラバトルに挑む者は、例外なく何らかの願いを持つ。
しかし今の俺は、自分の相方の願いさえ、満足に知らない。
パートナーの願いは、例外なく自身のそれに近いものであるそうだが―――
それでも、何かしらのズレはあっておかしくない。まず確認すべきは、そこだ。
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