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【セ】貴婦人焦がすは鉄の檻【ドラクルージュ】

128『貴婦人焦がすは鉄の檻』:2018/09/20(木) 00:40:18

【リネット卿】
「そうですね……どうしましょうか」

【ライネット卿】
「領主がいないまま、というわけには行きません」
「民のためにも……新たな領主を見つけなければ」

ふと視線をやれば、既にマルグレット公の姿は無い。
次なる罪人を裁くため、遍歴の旅に戻ったのだろう。
あのお方は決して一か所に留まるということを知らぬ。

【リネット卿】
「……我々は……強制的な叙勲から、まだどれほども年月を経ていません」
「私に至っては夜獣」
「私たちが領を治めるというのは、いささか難しいことでしょう」

彼女らは確かに騎士ではあるが……その心根は、およそ民に等しい。
貴族としての務めを果たせというのは、いささか酷だろう。

【リネット卿】
「ですから――――――――」

リネット卿の瞳が、そっとコンラッド卿を捉えた。
捉えて――――遠慮がちに微笑むと、瞳は姉へと向けられた。
言いかけた言葉があった。
その言葉は、そっと乙女の胸の内に。

【リネット卿】
「――――代わりを探すことにいたしましょう」
「探し、待ち……やがてこの領が元の通り穏やかになるように、身を砕きますとも」

そう言って――――乙女たちは、美しく笑ったのだった。
彼女たちを閉じ込める檻は、もうないのだから。

129”艶福卿”コンラッド:2018/09/20(木) 01:02:39
「そうか、であればこれ以上私が口を挟むこともあるまい」

「とはいえ、何かあれば我が領主へ文を出されよ」

「すぐに馳せ参じる」

柔らかく笑む艶福卿。
しなやかで強く、そして優雅であれとする心。
それさえあればどんな道も光がさす。
彼はそう信じている。

「行こう。サーラ」

130“月蝕卿”サーラ:2018/09/20(木) 01:16:16

彼女らには、領地を治めることは難しい。
しかし―――それでも、領地に騎士は必要だ。
故に彼女らは、この地を離れることはできない。

「騎士と異端に時の枷はありません。」
「縁あらば、またお会いすることもあるでしょう。」

「―――それでは、またいつか。」

最後に一つ、礼をして。
静かに身を翻す。

131『貴婦人焦がすは鉄の檻』:2018/09/21(金) 01:40:18

【リネット卿】
「……ええ、またいつか」

【ライネット卿】
「本当に、ありがとうございました」

【リネット卿】
「またいつか――――またいつか!」

乙女たちは静かに手を掲げる。
その手の内には、具現化にて生み出されたいくつもの花弁。
騎士と従者の出立を祝福するように、花弁が高々と振りまかれる。

騎士と異端に時の枷は無く――――それ故に、悠久に果ても無く。
またいつか、と。
その言葉に、どれほどの祈りが込められたものか。

花弁が舞う。
貴卿らが呪われた城を後にして、やがてその城が見えなくなるまで。
風に乗った一片の花弁は、遥か彼方まで貴卿らを見送るのであった――――――――



                           ――――――――――――【終の幕、閉幕】


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