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【セ】『怒りの日 -Dies irae』【アマデウス】

338烏丸 弥太郎:2016/10/02(日) 23:09:12


「五右衛門さんは」

 静かになった頃合いを見て切り出す。
 間違っても、親神の前では口にできないことだ。

「本当は、どう思っていますか。今回の神話災害について」

 ずっと迷っていたこと。
 悲劇の老英雄、ワイナミョイネンの話は、本来ならば悲劇でもって幕を閉じる。


「僕たちは――――ハッピーエンドを、押し付けた形になります」


「彼の正当な怒りや嘆きを、理解も共感も出来たのに、
 神殿(こっち)側の都合で、否定して、踏みにじって……」

「望まないハッピーエンドを押し付けて、彼の影霊を打倒しました。
 ヴィルがいたから、彼女の言葉が届いたから、最期は少しだけ報われたかもしれない。
 けれど……、そういう『都合の良い正義』で、今後も誰かを否定していくのだと思うと……」


 一つ一つ、言葉を慎重に紡ぐのは、その結果手に入れたものにも価値があると知っているからだ。
 無理やりにでも救ったことを否定してしまっては、救われた相手が立つ瀬がない。

 けれど、道理だけで回る世界ではないだろう。
 いかに正義が正しくとも、やりきれない思いだってあるはずだ。
 そうして生まれた影霊の叫びを否定し、存在しないもののように扱って、その上に打ち立てた平穏は、果たして本当に良いものだといえるのだろうか。


「五右衛門さんは、今回の結果に、胸を張って『最善だ』って言えますか……?」

 恐る恐る、けれどもしっかりと、目を見て尋ねる。


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