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きせいくるしんでしね その4

359名も無き小宇宙:2014/03/31(月) 04:42:03 ID:3S.P0rzk0
おいでよVIPRO! 〜定期試練の巻〜

第14話「光の戦士たち」


(この声……)

突然の声に驚くないしょだが、すぐに片方は知り合いのものだと思い当たる。
木の枝によじ登り声のする方向を見ると、いた。
見覚えのあるグランペコを傍らに、体格のいいパラディンの男性が赤毛の男を詰問している。
結構近いところだ。

「改めて聞こう。お前はいったい誰で、ここで何をしている?」
「そんなの決まってらwwwwwwwwwwww」

パラディンが静かな声音で尋ねるが、対する男、恐らくクラウンの声量はその倍はある。
赤毛の男は叫びながらハープをかき鳴らす。

「休日の朝にやることはひとつ!! 光の戦士・キュアヘナギに目覚める特訓だっぜえwwwwwwwww」
「……」

はあ。
ないしょの溜息は図らずもパラディンとシンクロした。
彼の後ろ姿が疲れて見えたのは気のせいじゃなかったらしい。
ちなみにあのパラディンはカピトーリナの警備を担当する聖騎士団員だ。
名前は知らないが大きな魔族の角飾りを付けているので遠目にもすぐ分かる。

「ハッピネスチャーッジで今日こそ覚醒できる! こいよNew Awaking, Foooooooo !!」

自称光の戦士の口上はいつまでも終わりそうにない。
あのパラディンはこれを聞くの何回目なんだろう。
同情を覚えながらもないしょはいそいそと鉄カゴを背負い、こっそりその場を離れた。
それからさほど時間をかけずにないしょは修道院の正門をくぐる。
予定より少し遅れたが朝食には充分間に合う時間だ。

「んんー、ちょっと疲れたかな……」
「スミマセーン、チョットオ話イイデスカー」
「はい?」

カゴを片付けて食堂に向かおうと思った矢先、背後から声がかかる。
ないしょは振り返ると同時に気を練り上げ、瞬時に全身に巡らせてさらに気功を生み出す。
背後にいたのは全身黒装束の男。
うん、怪しい。
そう認識するや否や、ないしょは生み出した気功を全て男に打ち出した。

「ウギャアアアアアアッ」
「……よし」

男が悲鳴を上げて倒れるのを確認すると、ないしょは今度こそ『お話』するため男に近寄る。
ぼろぼろの腰布に骨を連想させる手甲や鎧。
黒髪のその男はまるでアサシンクロスのよう……というかアサシンクロスそのものではないか。
勘任せでも先手を打っておいて正解だった。
今日は変な客が多い日だ。

「お兄さん、誰? 暗殺者?」
「うう、ひどいっ……ぼくは怪しい者じゃありません……人を探してるだけで……」

説得力の欠片もない。
でもしばらく立てないだろうし、このまま聞くだけ聞いてみよう。

「誰を探しているの?」
「誰かはまだ分からないんだけど僕を知っている人をだね」
「探して殺すの?」
「なんでや!? 殺さないよ!」

暗殺者が何を言っても信用ならない。
ならないが……この男はあまり悪い人ではなさそうだ。
知り合いを探しているというのも多分本当だろう。
話すうちに、男はふと何かに気付いたような顔をした。

「あれ、もしかしてないしょちゃん?」
「! ……うん、そうだよ」
「おおおおっ、やっぱり!」

驚いた。
ということはこの人が探しているのは自分だろうか。
そう思えば確かにどことなく見たことがあるような顔の気がしなくもなくも……。

「俺だよ俺おれ、ゴミ当番!」
「変な名前」
「ひどい!」

……知らない、やはり気のせいのようだ。
ないしょが素直に男、ゴミ当番? に伝えると、彼は酷く落ち込んだ。
残念だが知らないものは知らないのだ。

ないしょはゴミ当番の体力を回復させ、先ほどの非礼を詫びて彼と別れた。
そのまま釈然としない気分で寺院の石畳を歩くこと数分。

「あっ」

しまった、朝食……。
ないしょは急いで鉄カゴを片付けると、すでに皆が集まっているだろう食堂へ向かった。



続く


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