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隔離部屋〜眠れぬ夜の姉ちゃんの為に〜

534第5話<17>:2004/09/23(木) 20:46

わらしたちは、朝の町に飛び出した。
大家さんの庭に立ち、ヤツデの茂みの下に潜む。
ピィィィ……
リスが、高く指笛を鳴らす。
やがて、かさこそと落ち葉を踏む足音が近づいてきた。

現われたのは、灰縞の大きな猫だった。
「おはよう、社長」
リスが親しげに声をかけると、「社長」はつまらなさそうに、
大きなあくびを一つした。

「さむくなったから、もうのみはいないよねえ」
ふかふかした猫の背中に飛び乗りながら、ピカドンが嬉しそうに言った。
「まえ、ちんちんのところさされてかゆかったぁ」

「今日も頼むよ、社長」
リスは「社長」の目の前に、
大きな岩魚の干物をうやうやしく差し出した。
「にゃあ」
「社長」は、地元の顔役らしく鷹揚に一声鳴くと、
ふがふがと鼻を鳴らしながら、貢物を綺麗に平らげた。

「よし、社長、ガソリンは満タンだな。
じゃあ、やってくれ。駅の裏まで」

猫は、ゆっくりと歩き出し、さっと塀に飛び移った。
わらしたちは、ふかふかと温かい猫の背中にしっかりとしがみつく。

まるまると太ったその体躯には不釣合いな敏捷さで、
猫は塀の上をゆうゆうと歩いた。
冬の朝のにおいは、薄荷を思わせる冷たい清涼さをたたえ、
わらしたちの鼻をやさしくくすぐっては通り過ぎていった。


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