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隔離部屋〜眠れぬ夜の姉ちゃんの為に〜

533第5話<16>:2004/09/23(木) 20:43
「うーーーん……」
カズナリが去ってしまった後を、ピカドンはしかめっつらで見つめる。
「どったの、ピカちゃん」
5杯目の飯を頬張りながら、リスが問う。

「なんかおかしいよ、ぜったい」
「何がだ?」
「かずくん、げんきなさすぎ。ていうか、なんかなやんでるみたい」
「そっか……そうかな、あいつ朝は、いっつも結構テンション低めじゃん」
「そうなんだけどさ。なんかいつもと、ちがうよ」
ピカドンは座り込むと、食べかけの飯にざっと味噌汁をかけ、かきこむ。
「こら。ネコマンマするなって言ってるだろ」
リスが口を尖らせる。
「いいじゃん、おいしいんだから」
ピカドンは頬をぷっと膨らませながら、飯粒でいっぱいの口をもぐもぐさせた。

「なんか、あるのかもなぁ」
食後の冷酒をぐいっとあおりながら、ベソが言った。
「やっぱり、べそくんもそうおもう?」
「ん。カズくんの周りの気、みたいなのがね…どよんってしてる」
「ちぇっ」
リスは、面白くなさそうにそっぽを向いたが、
何かひらめいたように、不意に声を張り上げた。

「ならさぁ、様子見に行こうぜ、予備校まで」

「あ、それいいかんがえ!」
「ふむ、確かに」
ピカドンとベソが、すかさず賛同したので、
リスはすっかり気をよくしたように頷いた。
「よし、決まりだ。オガミ、行くだろ?」

車座の対面で、静かにお茶を啜っていたオガミは、
「俺?行かねえよ」
抑揚のない口調で答える。
「ちょっと元気がないくらいで、過保護過ぎだろ、お前ら」

「そっか」
リスは、ベソに目配せする。
ベソは心得ているというふうににやりと笑うと、
懐から細く編まれたしなやかな縄を取り出した。
オガミは、挙動不審な二人に気づかず、
食事を終えてすっと席を立とうとする。
その、一瞬の間隙を突いて、
リスは、オガミの後ろ襟に縄を放った。

縄の先はきらりと光りながら、オガミの襟に引っかかる。

「よし、釣れた」
そのままリスは、ずるずるとオガミを引きずった。
「バカ、よせ。なんの真似だよ!」
オガミは意外なほどの慌てぶりで声を裏返し、叫ぶ。
「黙れ。集団行動を乱すなって話だよ」
二人のコントを見守っていたピカドンとベソも、
にやにやしながら縄に取り付いた。
「やっぱり、おがみくんだってしんぱいだよねえ」
「オガミはいい奴だなあ。俺大好きだなあ」
「やめろぉぉ〜〜〜〜」


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