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隔離部屋〜眠れぬ夜の姉ちゃんの為に〜
530
:
第5話<13>
:2004/09/23(木) 20:36
「うーん……」誰かが、ごろりと寝返りをうった。
カズナリははっとして立ち上がり、炬燵の上に4人分の小さな布団を敷くと、
1人ずつ抱き上げて、そっと転がして毛布をかけてやった。
急に、どっと疲れが押し寄せてきた。
カズナリも、炬燵の中に潜り込むと、ごろりと横になる。
胸の下辺りがずんと重く、やがてちりちりと痛み始めた。
夕方、自分の目の前にいたひなたは、
何らのかげりもない、いつもの明るいひなただった。
今日、突然会いたいと言い出したのは、
明日から会えなくなるからだったのか。
しかし、それなら何故、あのとき何も言わなかったのか。
ひなたの真意がどこにあるのか、
いくら考えてもカズナリには理解できなかった。
少しの間、カズナリは呆然と天井を見つめていたが、
不意に起き上がり、パソコンの画面に再度向き合うと、
開いたままのメールに、返信をしようと試みた。
だが、いくら頭をひねっても、言葉が浮かんでこなかった。
「急な話でびっくりしたけど、
ひなたがそう決めたのなら、応援します。
頑張って。俺も、クリスマスまで必死にやります」
当たり障りのない返信を送ってしまってから、
ひなたにきちんと理由を聞けない自分を、カズナリは責めた。
視界のひらけた、日当たりのよい道を歩いていたはずなのに、
目の前に突然、深い地割れが出来ていたときのような、
暗い地の底を覗き見たような恐怖が、カズナリを支配していた。
自分の中の心の在処を、カズナリは初めて知ったと思った。
今痛み出したあたり、何かの前触れを察知して、
しんしんと痛みの信号を発しているあたり……
多分、そこに、心はあるのだ。
心が痛むというのは、おそらくそういうことなのだ。
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