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隔離部屋〜眠れぬ夜の姉ちゃんの為に〜

521第5話<9>:2004/09/18(土) 19:15
「そうかあ、付き合ってるって、そういうこともするんだぁ」
心底感心したように、カズナリは言った。

「んでは、いかようにいたしましょうか」
「いかようにでも。……そうだねえ、どこかで待ち合わせして、
ちょっとだけ遊ぼうか」
「おお、余裕ですなあ」
「当然、それまでは必死でやることやるんだよ」
「当然だね」
「よしよし。うん、これで当面の目標ができた」
ひなたは満足げに頷くと、「わーい」と腕を上げた。
「んふふ」カズナリも、下を向いて笑う。
ひなたといると、他愛もない些細なことが、なんと嬉しく楽しいのだろう。

裸婦の彫像は、寒風の中にすっくと立っていた。
長い手足をぴんと伸ばし、西の空を見上げている。
「ずるいよ、これ外人でしょ」
ひなたは、その傍らに立つと、わざと口を尖らせ因縁をつけた。
「こんなカッコイイスタイルの人、近場で見たことないもん」
「つか、やっぱ街の顔なわけだから。
あんまりずどんとしてるのも困るんだろ?」
「いいじゃん、胴長短足ずんぐりむっくり万歳だよ」
言いながら、ひなたは身体を反らし、彫像と同じポーズを取る。
「ほら、どうよ?イケてない?」
「ああ、微妙にイケてる、とも言いがたいわけではないねえ」
「どっちだよっ!」

ひなたは、大げさに頭をのけぞらせたまま、
バッグから手探りで携帯を取り出して、
「カズ、撮って!写メ写メ!!」
「バカ……」
「いいのっ、ほらっ」

ひなたのツボは、時折理解しがたい。
あきれ笑いしながら、カズナリはひなたの姿をカメラに収めた。

「カズ、こっち来て。一緒に撮ろう」
誘われるまま、カズナリはひなたの隣に立った。
縦長の画面に、二人が並ぶ。整った顔立ちのひなたの微笑と、
はにかんで引きつりぎみなカズナリの笑顔。
ぽつぽつと、黄色い点々に見える光をバックに、
初めてのツーショットを写し撮るカメラが、
パシャッと陽気なシャッター音を立てる。


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