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隔離部屋〜眠れぬ夜の姉ちゃんの為に〜

514第5話<5>:2004/09/17(金) 21:41
昼前に図書館に着き、夕方まで数時間。
カズナリの勉強は、それなりにはかどった。
知識をにわかに詰め込んだ頭が、ほんのり重いように感じながら、
カズナリが外に出たときには、とっぷりと日は暮れていた。

「ひなた、どうしてるかな」

図書館の大机に向かい、参考書を広げながら、
幾度も脳裏を巡っていた問いが、再び蘇ってくる。
もちろん、彼女も貴重な休日を、
受験勉強の追い込みに費やしていることは確実だった。
人一倍頑張り屋のひなたは、努力を妨げられることをひどく嫌う。
そうとわかっているからこそ、
カズナリも勉強に集中しようと努めていたのだ。
なんだかんだと、わらしたちと賑やかに過ごすあの部屋にいては、
どうしても集中力が削がれる。
必死で何かに取り組んでいなければ、
カズナリの思考は、まっすぐひなたに向かってしまう。

自転車置き場に向かう途中、カズナリの視界の隅に、
公園の電話ボックスが捉えられた。

「電話、してみようかな」

カズナリは、携帯電話を持っていない。
高校時代はさして必要を感じなかったし、予備校に通いだしてからは、
親への多大な負担を考えると、持たせてくれとは言いづらかった。
今になり、カズナリは密かに悔やむ。
大学に受かったら、とりあえず携帯を持とう。

今の時間なら、家にいるだろうか。
カズナリは思い切って、車椅子用に大きく設えられたボックスに足を運んだ。

緑色の受話器を取ったとたん、ずきずきと鼓動が騒いだ。
甘苦しさと痛さとで、すくみそうになる心を、目を閉じてカズナリは制する。


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