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隔離部屋〜眠れぬ夜の姉ちゃんの為に〜

513第5話<4>:2004/09/17(金) 21:36
「んじゃさ、俺たちってなんなんだろうな」
リスが、目の前で湯気を立てる湯呑みを見つめたまま、ぼんやりと問う。
「俺はただ、家主の幸せのために働くのが、俺たちの役目かなって……」
「あいつにとって何が幸せか、なんて。そんなの、誰にもわからないよ」
リスの疑念を断ち切るように、オガミはきっぱりと答えた。
「…………」

「さ、かずくんいっちゃったから、おれそうじするよ」
ピカドンが、弾けるように立ち上がった。
「おがみくんのいうこと、むずかしいからよくわかんないけど……
でも、かずくんにいじわるしてるんじゃない、のは、なんかわかるからさ」

「幸せ、ってものの中身が、リスとオガミじゃ違うんだろうな」
いつの間にか、湯呑みをぐい呑みに替え、ぽっと頬を赤くしたベソが言う。

「オガミはさ、うんと小さいときからよその山で修行してたからな……
俺らの知らない苦労とか、いっぱいしてきたろうし、
俺らには見えないもんが、
オガミには見えてるのかもしれないな。
多分さ、ほんわかしたあったかい幸せを、
偶然手にすることもあれば、苦しんで苦しみぬいて、
自分の力でやっと手にする幸せもあるってことなんじゃないかなあ?
そりゃぁ、確かに人それぞれだわ。
どっちがいいとか、そういうもんじゃないねえ」

「お前さ、賢いんだかばかなんだかわかんねえな」
リスは、まだ何か吹っ切れないように、ベソに向かって毒づいた。
ベソは、にやにや笑いながら、嬉しそうにぐい呑みの酒を啜る。

「ねえ、おがみくん、まどあけていい?ほこりたまるからさ」
ピカドンに促され、オガミは窓からさっと飛び降りた。
がらがらっ−−景気の良い音を立て、窓が開く。
見上げる空は、一点の曇りもなく真っ青だった。
大家さんの広い庭に、赤い小菊がいっぱいに咲きそろっている。
垣根のさざんかも、ちらほらと花をつけ始めていた。

やがて、ピカドンの使うほうきのすがしい音が、部屋の中に響きはじめた。


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