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ダンゲロス二次創作スレ

102minion:2011/09/20(火) 23:21:43
やったー、ロシアのスパイだー、やったー!
セーラー服を脱いだら、下にはボディスーツ着込んでそうw

103minion:2011/09/21(水) 00:23:32
『ダンゲロス・ハルマゲドン開戦 〜導入編〜』挿絵 ダンゲロス子参ッ上ぉぉーっ!!

tp://s1.gazo.cc/up/s1_0792.png
お団子頭=チャイナ娘という固定観念が……w

ジェバンニが一晩で挿絵を描いてくれました。

104あやまだ:2011/09/21(水) 03:57:22
ごめんなさい、今やっとこ読めました……!
いつものことながら面白い! さすがminionさんやで!
ゲロ子のイラストも何これすげーえろかわいい!!

もう手遅れかもしれませんが、アンケートにも答えておきます。
かわいいうちの子が辱められるかもしれないSSだなんて、そんなもの……そんなもの……!

⇒1,「構わん、続けろ。むしろ続けてください」

105minion:2011/09/21(水) 06:43:01
ククク……馬鹿め、アッシーナが一番酷い目に遭うとも知らずにっ……!
いや、知ってるのか……とんだドMやで!w

チャイナゲロ子はあげませんw 八重歯かわいいよ八重歯。

106ε:2011/09/21(水) 09:30:31
>>103
あらかわいい…
ありがとうございます!!

107minion:2011/09/21(水) 20:18:55
いえいえ、お礼なんて…………代わりにゲロ子ちゃんを嫁にください!

108ε:2011/09/22(木) 00:14:23
すまない、ゲロ子は米ットさんの嫁に差し出すことに決まってるんだ…

109minion:2011/09/22(木) 20:45:50
なんてこった…………諦めてSSがんばろう(´・ω・`)

110稲枝:2011/09/23(金) 21:54:20
ヌガーさんにリクされてた
チューリッヒさんを描きました
tp://pixiv.cc/yu-nomi/archives/1709067.html

111minion:2011/09/23(金) 22:06:35
なにこの子アルプスの少女かわいい!

112ε:2011/09/23(金) 22:39:27
チューリッヒなつかしいいいい

113minion:2011/09/26(月) 20:28:31
『ダンゲロス・ハルマゲドン開戦 〜導入編〜』挿絵
「真打ち登場! 埴井葦菜(はにい・あしな)華麗に見参…………って、
 あんた何やってんのよ!?」

一くんと合わせようとしたせいなのか、なんかちょっとロリ化した葦菜。
これがパーフェクトハーモニーか…………。

tp://s1.gazo.cc/up/s1_1365.png
実は俺、ポニーテール萌えなんだ……。

あやまださんはみやこさんに差し上げますので、
アッシーナは一くんの嫁にください!

あと、導入編において葦菜の一人称が間違っていた事を深くお詫び致します。

114minion:2011/09/26(月) 21:39:50
『ダンゲロス・ハルマゲドン開戦 〜本編〜 前編』


 気がつけば、そこは第二保健室だった。
 当たり前の話だ。先程まで居た場所なのだから。
 破壊された室内も、全くそのまま。
 窓から見える景色も、全くそのまま。
 違うところなど何一つない。
 ほんの僅か眠っていたような、随分と長い間眠っていたような──────どちらとも感じ
られる、不思議な感覚。ぼんやりとしていた意識が、少しずつ明瞭になってゆく。
 「此処…………でいいのかな?」
 一一(にのまえ・はじめ)は床から起き上がると、辺りを見回した。
 「遅い! もう少し寝てたら蹴り起こすところだったわよ」
 腕組みをしながら仁王立ちしていた埴井葦菜(はにい・あしな)と目が合う。その隣では、
竹取かぐや(たけとり・かぐや)が悠然とした佇まいで髪を手櫛で整えていた。どうやら起き
るタイミングには個人差があったらしい。
 「埴井さん、なんか顔真っ赤になってない? どうかしたの?」
 なんとなく気になり、一は尋ねてみる。
 「べ、別にどうもしないわ! 何馬鹿な事言ってるの!」
 あからさまに動揺した様子だったが、勿論一にはその理由などさっぱり見当がつかない。傍
に居るかぐやに助けを求めるように目を向けたが、此方は何故か口元を抑えて──────
まるで、笑いを堪えているようにも見えた。
 「えっと、此処に来させられた能力の副作用か何かで、体調が悪くなったんじゃないかと
 心配になって…………何もないなら、いいんだけど」
 初めての体験の筈である。名ばかりのチームリーダーではあったが、気遣うくらいなら一に
も出来た。
 「大丈夫だから!」
 「そう? …………あれ、そう言えばゲロ子ちゃんは?」
 腑に落ちない点もあったが、本人が大丈夫というならこれ以上追及しない方が良いだろう。
いつも女心が分からない、と怒られている身では、余計な詮索はしない方が良い。
 「私たちが目覚めた時には、もういませんでしたね」
 かぐやの言葉に、落ち着いた葦菜も頷く。どうやら、ダンゲロス子が一番先に目覚めたよう
だが──────。
 「何かあるといけない、とりあえず探しに行こうか」
 一は決断すると、二人を促す。
 爆音が聞こえてきたのは、その時だった。

115minion:2011/09/26(月) 21:41:06
 第二保健室を出た三人の眼前に現れた光景、それは──────。
 「ヒャッハー! 校舎は破壊だーッ!」
 使い込まれた鉄パイプを手に、手近なコンクリートの壁を壊しまくっているダンゲロス子の
姿だった。魔人としての力を持つ彼女ならば、鉄パイプで校舎を破壊する事など造作も無い。
 「お? この辺り結構手強いな……生意気な! 喰らえ、フレイムパンチャー!!」
 鉄骨骨組の部分を叩いた所為か、一撃で壊れなかった壁に舌打ち。だがすぐに不敵な笑みを
浮かべると自らの右手に炎を出現させ──────叩きつける!
 派手な爆砕音と共に、頑強な柱もガラガラと崩れ去った。
 「ちょ、ちょっとー!? 何やってるのゲロ子ちゃん!?」
 慌てて止めに入る一。いきなりの事態に、何が何やら分からない。
 「おっ、やっと起きたかネボスケども! 見りゃ分かるだろ、学園をぶっ壊してんだよ!」
 「い、いや、それは一目瞭然だけど、そうじゃなくって! 何でこんなこと……!」
 「ハルマゲドンを起こすんだろ? なら、騒ぎを起こせばいいんだよ! 生徒会の奴等は
 番長グループの仕業だと思うだろうし、逆に番長グループの奴等は生徒会の仕業だって思う
 って寸法よ!」
 理に適っている──────ような、そうでもないような。
 「そ、それにしてももう少しやり方ってものが…………
 「うるせー! アタシは学園を破壊してーんだ! 邪魔すんなコラー!!」
 一の制止も、全く聞く耳を持たない。強引な勢いそのままに、校舎の破壊を続ける。
 「ふ、二人とも、ゲロ子ちゃんを止めて……!」
 自分一人では止められない、と判断した一は振り返ると葦菜とかぐや、二人に助けを求めた
が──────。
 「いいわね、ちょうどむしゃくしゃしてたところよ! 校舎の一つや二つ、ベッコベコに
 してやるわ!!」
 「あららー、ちょっと面白そうですね」
 「って、えええー!? 他の二人も超乗り気になってるー!?」
 過激な性格の葦菜だけではなく、比較的常識人と思われたかぐやまでもがダンゲロス子の
行動に賛同していた。一の脳裏にド正義会長の言葉が蘇る。
 ──────君以外の他のメンバーはいずれも能力面に疑いはないものの、性格や行動に
若干の不安要素がある──────。
 まさか、一人残らずだったなんて。

116minion:2011/09/26(月) 21:41:29
 「オラオラー! この壁が気に入らねえ! この廊下も破壊してえ!! ぶっ壊せッ!!!
 フレイムレインだッ! 燃えろ燃えろーッ!」
 「うりゃうりゃうりゃー! あたしの恨みを思い知れー!!」
 「窓ガラスも割っておきましょうか。えいっ」
 ダンゲロス子の破壊活動は激しさを増し、葦菜とかぐやの二人までもがそれに続いた。使役
する蜂まで使って破壊する葦菜の激しさには、何か八つ当たり的なものが感じられたが。
 「あっ!! この教室は特に気に入らないわ! 跡形もなくなれっ!!」
 葦菜は自分のクラスを見つけると、念入りに破壊を始めた。彼女にとってはトラウマである
一とのえっちなハプニングが何度も起こっている場所である。
 「あぁぁ、僕たちの教室が…………」
 まだ入学して間もないとはいえ、それなりに愛着がある教室である。しょんぼりとした一の
前で、葦菜は更に暴虐を続ける。
 「おりゃー! 柱もっ! 壁もっ! 机もイスも、みんなあたしに跪きなさい!!」
 「机と椅子は最初から跪いてるよ、埴井さん……」
 肩を落としながらも、律儀にツッコミを入れてしまう一。性分である。
 「っ! わ、わかってるわよ、わざとに決まってるじゃない! この変態! 変態のくせに
 揚げ足とるんじゃないわよ!」
 喧しくも微笑ましい(?)やり取りが繰り広げられている中。
 「校舎を破壊するのもいいですが、もう少しインパクトのある事件が欲しいですね」
 ダンゲロス子や葦菜とは違い、感情に任せた破壊ではなく実験や興味本位的な眼差しで破壊
を行なっていたかぐやは、ふと言葉を洩らす。
 「えっ…………?」
 とても嫌な予感がして、一はかぐやを見る。その整った口元が再度開かれて──────。
 「そうですね、生徒会長を殺しましょう」
 「えええええーっ!?」
 爆弾発言がさらり、と零れた。
 「だ、だって生徒会長は僕たちをこっちに送った側の人間で…………」
 「確かにそれはそうですが、こちらの生徒会長は違いますね」
 冷静に答えるかぐや。その言葉に、はっとなる一。
 確かにその通りだ。『夢幻抱影』の共有夢世界の人間は、現実と異なる。
 しかし幾ら現実に死ぬ訳ではないと言っても、人一人の殺害をあっさりと決意したかぐやに
一は身震いするものを感じた。なまじ姿が美しいだけに、より強く。
 「で、でもやっぱり…………」
 一の言葉をそれ以上聞かず、長い黒髪を靡かせて颯爽と生徒会室を目指すかぐや。その前方
には、目に付く障害物もそうでないものも等しく破壊してゆくダンゲロス子と葦菜の姿。さな
がら、海を割り開いた古代の預言者のように。
 一には、その後を追う事しか出来なかった。

117minion:2011/09/26(月) 21:42:01
 かぐやは生徒会室への廊下をつかつかと歩きながら、リストバンドを絞る。
 そこから宙に弾かれたように浮かぶ一発の弾丸。
 ふわり、とセーラー服のスカートを捲ると白く美しい太ももが顕になり、そこに吊るされた
拳銃と言うよりは小型のライフル──────トンプソン・コンテンダーを引き抜く。
 中折れ式の銃身を折り、宙に浮いた弾丸を込める。安全装置を解除する。
 一連の動作に三秒と掛からない。
 その無駄のない流麗な動きに、一は先程感じた震えも忘れて見入ってしまう。
 そんな一に気付くと、葦菜は近寄って来て激しく抗議した。
 「ちょっと変態! かぐやの太ももに見入ってんじゃないわよ!」
 「ち、違うよっ、ただすっごく綺麗だな、って……」
 慌てて葦菜に弁解する一。葦菜は小さな声でぽつり、と呟く。
 「………………あたしだって、美脚には結構自信が…………」
 「え? 何か言った?」
 「何でもない! ほら、行くわよ!」
 ぷくーっ、と膨れながらずんずん、と一を置いてけぼりにして先へ。心なしか、蜂たちの
破壊攻撃も激しさを増していた。
 かぐやの足が止まる。目前に現れた目標──────生徒会長の存在を認めて。
 躊躇いなく、トンプソン・コンテンダーを両手で構える。
 向こうも気付いたのか、足を止めた。だが、一歩遅い。
 躊躇いなく、引き金を引いた。
 無骨な銃声が──────。
 「やっぱり駄目だよ、こんなことっ!」
 かぐやの細腰に後ろから抱きつくように、一は飛びついていた。
 「幾ら夢世界だからって、こんな人を簡単に殺すなんて…………良くない!」
 「一さん…………」
 弾丸は標的には命中していたが、急所を外し絶命には至らなかった。右肩を押さえて倒れた
生徒会長を、すぐに周囲の生徒会役員が取り囲み生徒会室へ運び込む。
 こうなっては、追撃するにしても体勢を立て直す必要がある。それに、ある意味では成功と
も言えた。生徒会側の戦力を削り過ぎる事無くハルマゲドンに向かわせられると考えれば。
 「一さん…………あの」
 「分かってます、考え方が甘いって事は…………でも!」
 必死になってかぐやを押し留め続ける一。自分でも甘いという事は、良く分かっていた。
それでも──────。
 「一さん、あのですね。胸、触ってます」
 「えっ…………?」
 夢中になっていて気付かなかったが、言われてみれば確かに両手には柔らかな双丘の感触。
セーラー服越しでもはっきりと分かる、豊かな果実が一の掌では包みきれずに弾んでいた。
 一は慌てて両手を離し、平謝りする。
 「ごっ、ごごごごめんなさいっ!?」
 「いえ、私は良いんですが…………もっと別に謝った方がいい相手がいるかもしれませんね」
 ──────人は、本当に恐怖を感じると寒気がするんだよなぁ。
 振り返るまでもなく、一は実感していた。




<了>

118あやまだ:2011/09/27(火) 08:04:25
>>113
かっ、かわええー!!
ポニテでロリ気味な葦菜もいいなあ! minionさんまじ最高!
でも葦菜はみんなのアイドルなので嫁には出せませぬ。恋愛禁止条例!

SSも順調に進んでますねー。すごい面白いです! 後篇も期待!

119サンライズ:2011/09/27(火) 14:11:55
【師弟永久の別れ!大銀河に受け継がれた小宇宙!】

「久しぶりだな…希望崎も…」

 魔人学生・全宇宙神哉は魔人の巣窟、腐敗と自由と暴力の真っ只中、戦闘破壊学園ダンゲロスへ帰ってきていた。
卒業から3年、大学で教職課程を取っていた彼は、教育実習の行き先に母校を選んだのである。
 進んでこの学園で働きたがる教師などまずいない。魔人生徒への抑止力として雇われているはずの魔人体育教師でさえも
魔人に対して皆逃げ腰である。どんな能力の魔人でも、これだけ多くの魔人がいれば必ず誰かの能力に殺される。
ジャンケンで一番強い手など無いように、魔人には「無敵」も「最強」も無いのである。
彼の在学中に現れた、神とさえ思える強さだった転校生もバナナの皮を無限に召喚するというしょうもない能力に破れて死んだ。
当然、番長として学園の平和に貢献し、裏番、裏生徒會を打ち破った全宇宙神哉も、この学園にいる限り明日をも知れぬ身なのである。
しかし、彼は番長としてでは無く、今度は教師としてこの学園の平和に貢献したかった。
自分が見てきた逃げ腰の教員にはならず、生徒と共により良い学園を作りたい。そう願っていた。
だから警察や自衛隊などから引く手数多でありながら教員の道を選んだのだ。それに−

「神哉兄〜ッ!」

「よう、超一郎!久しぶりだな!」

教育実習3日目のことである。この日は中学生の1日体験入学の日であった。
まだあどけない中学3年の少年が彼を見るなり手を振ってくる。
彼の名は大銀河超一郎、全宇宙神哉の従弟であり、3人の姉に頭の上がらなかった神哉は
彼を実の弟のように可愛がっていた。

「おじさんから聞いたぞ。お前、希望崎に行きたいんだって?」

「うん、神哉兄の卒業した学校だろ。だから俺もここに行きたいって思ったんだ。」

「気持ちは嬉しいが、しかしなあ…」

来年からここの教師になろうという彼が言うのは不謹慎な話ではあるが、希望崎は身内が入学するのを歓迎できる場所では到底無い。
番長グループと生徒會の均衡が表向きの平和を保っているだけで、彼がいたときのようにいつメギドの火がつくかもわからぬ火薬庫である。
ハルマゲドンに至らずとも、水面下で凄惨な殺し合いは行われている。それは番長として学園の平和のためにその手を血に染めた彼が
一番よくわかっている。前述の通り彼のような強力な魔人でさえ明日をも知れぬ身、ましてや−

「お前は魔人でも無いじゃ無いか。」

「それは…そうだけどさ…」

魔人は社会的マイノリティである。その人格や能力とは無関係に魔人であるというだけで差別の対象となりうる。
が、魔人が数多く在籍する希望崎にそういった差別は起こらない。だから超一郎が魔人であれば希望崎に入学する意味はあるかも知れない。
しかし彼は常人なのだ。普通の人間が魔人の巣窟に入学することにメリットなど無い。

「好きな魔人の女の子がここに行くとか行ってるのか?」

「そんなんじゃ無いよ…。神哉兄、希望崎を魔人も普通の生徒も通える学校にしたいって言ってたろ?
ここから『魔人であることが悪いんじゃない』って認識が広まって、魔人差別の無い社会の起点になって欲しいって。」

「そう…だったな…」

「だからさ!俺も神哉兄の夢の力になりたいんだ!普通の人間の俺が、楽しい高校生活を送れば平和な希望崎のイメージの助けになるだろ?」

「超一郎…ありがとう!」

彼がそのように考えて決めたならもう何も言うまい。そもそも一般生徒もいる魔人学園の教員である自分が
彼を止めること自体ルール違反なのだから。彼が言うような平和な学園を、自分は目指す。それでいい。

「ケケっその坊やがオメエの身内かい?可愛いねえ、全宇宙。」

「その声、髑髏山死郎!」

120サンライズ:2011/09/27(火) 16:59:09
髑髏山死郎、希望崎を影で統べる裏番長(自称)。学年は2年生らしいが、外見の印象は学ラン以外
どう見ても高校生相当では無い。何しろ全宇宙が入学した時点で2年生で、しかも留年していることがわかっていた。

「くへへへへへっ3年前の恨み…!晴らさせてもらうぜ!その坊やと一緒に血祭りにあげてやる!」

「神哉兄…この人はいったい…」

「超一郎…お前は俺の後ろに隠れていろ…!俺も仲間達の仇を打ちたいところだが…、今の俺は教員を目指す身だ…!
仮にも生徒を殺すわけにはいかない。だが、他の生徒にも手を出したら…」

両者の間でバチバチと火花が散る。全宇宙が番長であったころ、裏番だった髑髏山は彼の多くの仲間を手にかけ、
髑髏山も全宇宙によって裏番グループを壊滅させられ、権力を失った。

「フッフッフ…そうだなあ…まっ来年以降いくらでもてめえを殺す機会はあるんだ…。来年を気長に待つさ…。」

そう言って全宇宙と超一郎に背を向け、髑髏山は去っていく…かと思いきや、

「ヒャッハーッ!死にさらせこのオマンコマヌケ野郎がァーッ!!」

髑髏山は自身のモヒカンヘアに手を当て、ウルトラセブンのアイスラッガーの如く、投げた。
モヒカンヘアの中には殺人ブーメランが仕込まれている。魔人のテクノロジーによって作られたそれは
破壊されない限り相手に向かって飛んでいく。モヒカンザコのAK47とまで言われる暗器「ヒャッハーカッター」である。

髑髏山の頭部から放たれたそれは空中で向きを変え、全宇宙の顔面を両断すべく飛んでいく。と、思いきや
それは更に方向を変え、今度は超一郎へ向かっていく。
髑髏山の恐ろしさはこの暗器では無く、その能力にあった。彼の能力は「不意打ち」。
不意打ちである限り、どれほど時間のかかる攻撃でも相手は回避も防御も出来ない。
超一郎も、普通の人間でも十分反応できる余裕があるはずなのに、全くの無反応のまま呆けていた。

超一郎の顔面に迫るヒャッハーカッター。が、そのとき突然ヒャッハーカッターは何かの力に引っ張られたかのように
先ほど避けて飛んだはずの全宇宙へと向かっていった。

「わかっていたさ髑髏山。お前がこういう男だと。お前が必ず弱い者から狙うと。」

予測されていた不意打ちは「不意打ち」には成り得ない。そして、ヒャッハーカッターを引き寄せたのは
全宇宙の能力であった。能力の名前は「燃え上がれ俺の小宇宙よ!」。彼の体は宇宙である、という認識によって
天文学的な現象をその身で再現できる。それが彼の能力。ヒャッハーカッターを引き寄せたのは高重力惑星の再現によるモノである。
重力の発生源である彼に近づきすぎて砕け散るヒャッハーカッター。全宇宙の立っている床にはヒビが入っている。

「食らえ髑髏山!ペガサス流星拳!」

流星群の如き連打を浴び、倒れる髑髏山。生きてはいるが重傷である。

「妙な真似をすれば今度は貴様の体を消し飛ばすぞ!」

彼の最大火力の技「ギャラクシアンエクスプロージョン」の構えを取る。この技によって彼はEFB指定を受けている。
まともに食らえば跡形も残らないのは必定であった。

「神哉兄…強い…!」

「わ、わかったもう何もしねーッ!そっちの小僧にも!大人しく卒業するから助けてくれ!」

涙を流し、失禁して命乞いをする髑髏山。こちらの被害は今のところ0。
命乞いをする生徒を殺すわけにもいかない。髑髏山の暗器は他にもいくつか知っているが、
この状態から出されても全て回避できる。そう思い戦闘態勢を解いた。

「わかった。せいぜい大人しく卒業するんだな。さあ行くぞ超一郎。」

そう言って髑髏山に背を向ける全宇宙。しかし、彼は忘れていた。在学中、彼が能力を使う際は必ず
「ヒャッハーッ!死にさらせこのドチンポマヌケ野郎がァーッ!!」と叫んでいたことを。
先ほどは「ヒャッハーッ!死にさらせこのオマンコマヌケ野郎がァーッ!!」と叫んでいた。あの攻撃は最初からブラフ。
そして彼の油断は、髑髏山の不意打ちを可能にした。


「ヒャッハーッ!死にさらせこのドチンポマヌケ野郎がァーッ!!」

尿に濡れたズボンの股間を突き破って飛び出すミンチドリル。
モヒカンザコのAK100と謳われる暗記「ドリルチンコ」であった。

「ぐああああッ!」

121サンライズ:2011/09/27(火) 17:04:43
「ぐああああああッ」

ドリルをモロに背中に受ける全宇宙。ドリルは背中を貫通し、口から傷口から血が噴き出す。

「しっ神哉兄いいいいいいいいいいいいいッ!」

「逃げろ…超一郎…!」

誰より尊敬する従兄が崩れ落ちる様を見る超一郎の脳裏を、かつての思い出がよぎった。

「またいじめられたのか…超一郎…」

「うん…」

超一郎は幼い頃いじめられっ子だった。いつものように泥まみれにされた超一郎は、神哉の通う中学の校門前で彼を待っていた。

「相手は数も多くてお前より強い。それはわかるさ。けど、それでも立ち向かわなきゃ強くなれないぞ。」

「だって…僕神哉兄みたいに魔人じゃあ無いよ。弱い普通の子どもだよ。」

「超一郎。俺は人間の心はみんな、『小宇宙』だと思ってる。俺の能力の話じゃなくてな。
魔人にだって自分より強い魔人と戦わなきゃいけないときがある。普通の人間も同じだ。
そんなとき、『小宇宙』が恐怖で縮こまったままか、それとも燃え上がるか、それで
人間の真価が決まると俺は思ってるんだ。」

「小宇宙…」

超一郎は次の日いじめっ子に立ち向かった。超一郎は知らないが、神哉は学校をサボってその様を影で見ていた。

「神哉兄…」

超一郎の腕の中で、偉大なる番長全宇宙神哉は仲間たちのもとへ旅立っていった。

「さあ、坊やてめえも兄貴のところへ送ってやるぜヒャッハー!」

股間のドリルが唸りを上げる。不意打ちで無くとも、普通の中学生など髑髏山には簡単に殺せる。

「ざまあ見ろ全宇宙!てめえは仲間の敵も取れず、弟分も守れずに死ぬんだ!」

全宇宙の亡骸にツバを吐きかける髑髏山。そのツバが亡骸に当たるのを超一郎が手で防いだ。

「ん?何だ坊や?これから死ぬんだ。下手に抵抗すると全宇宙みてえに楽には死ねないぜ。」

「許さない…許さないぞ髑髏山あああああああああああああああッ!!燃え上がれ!俺の小宇宙よおおおおおおおおおッ」

超一郎が眼前の男に覚えたのは、恐怖ではなく怒りであった。
少年の体が激しく輝いた。

「なっ何だこいつ?まさか、今魔人に?ハッ…」

何か「恐ろしい物の片鱗」を察知した髑髏山は、全力で身を躱す。それは賢明な判断だった。
髑髏山の優れている数少ない点の1つは、その危機察知能力である。

もし棒立ちのままなら、彼は即死していただろうから。

「いでえよ〜俺の、俺の腕があ〜」

髑髏山は身を躱したが、その右腕の肘から下は超一郎の発した何かによって消し飛んでいた。
何かとは魔人能力であろうが、髑髏山にはどんな能力か想像もつかない。
この状態から不意打ちを狙うほどの胆力は髑髏山には無かった。震える左手の指でベルトのバックルを押すと、
瞬時に煙が噴き出す。モヒカンザコの最後の切札「ヒャッハー煙幕」だ。

「ヒャッハーッ!アバヨこのドチンポマヌケ野郎がァーッ!!ゴホゴホ」

「髑髏…山…」

覚醒したその日に中二力を一気に放出した疲れか、超一郎は意識を失った。
その後、駆けつけた番長グループによって超一郎は保護され、髑髏山の捜索が行われたが
ついに見つからなかった。偉大なる番長の死を悼み、当時のOBが集まって盛大な葬儀が行われた。

そんなことがあったために超一郎の希望崎進学を誰もが止めたが、彼は聞かなかった。

「神哉兄、俺…魔人になっちゃったけどさ…神哉兄みたいに、魔人として学園の平和を守るよ!」

魔人に覚醒した1人の少年が全宇宙神哉を超える番長と言われる男に成長するのは、それから2年程先の話である。

122minion:2011/09/28(水) 00:05:27
>>118
通りすがりの仮面ライダーザビーがクロックアップして描いてくれました。

なんてこった、また振られた…………諦めてSSがんばろう(´・ω・`)

後編は例のシーンのハードルが高いよ……w

123ε:2011/09/28(水) 19:50:27
●王女エリエスと護衛騎士ファイエル
tp://ipusiron.up.seesaa.net/image/20110928eriesandgoeikisifaieru.png

124minion:2011/09/28(水) 20:27:54
何このリア充!?

125minion:2011/09/28(水) 22:49:51
振られたのでむしゃくしゃして剥いた! 今では反省している。
大きさ比較の為のマッチ箱(あずま)を隣に置いときました。

tp://s3.gazo.cc/up/s3_0434.png
蜂モチーフなのでしましまニーソ。

仮面ライダーザビーがライダースティングして描いてくれました。

126あやまだ:2011/09/28(水) 23:24:42
>>125
きっ……貴様アアアアアア!
ウチの娘になんと不埒な真似をッ……!
許さんぞ! 許してほしければもっと描k(ry

ザビーの中身が誰かは分かりませぬが、礼を言わずにはいられない……ありがとうございますッッ!!

127minion:2011/09/29(木) 21:10:13
『ダンゲロス・ハルマゲドン開戦』がちょっと長引きそうなので場繋ぎ。

tp://s1.gazo.cc/up/s1_1677.png
かぐやを嫁に……なんて、恐れ多くて言えない……。

tp://s1.gazo.cc/up/s1_1678.png
ゲロ子ちゃん別ばーじょん。ちょっと悪そう。

アッシーナは剥かれたのでおやすみ。不埒な真似のしすぎはいけませんからね!

早く書き終えないと、ジェバンニがいつまでもその三人を量産してしまう……!w

128ε:2011/09/30(金) 00:37:19
>>127
うわあああい!やったぁ!!
ありがとうございます!

129オツカレー:2011/09/30(金) 15:13:49
>>127
わーい、こいつぁ可愛いなー

ダンゲ世界のどこかにminionさんの嫁になるかぐやちゃんがいるかもしれないので
その子を探してください……

130仲間同志:2011/10/02(日) 16:15:00
今更感が激しいですが、自キャラの流血少女エピローグSSを作成しました。
まさかまさかのキャンペーン終了後に自キャラをSSに登場させてくださった陸猫さんと、キャラを終始お借りしてしまいましたあやまださんに全力で多謝!

番長Gの応援スレですが、沈んでいるので一応貼っておきます
tp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/39801/1313498052/164-171

131KEY:2011/10/06(木) 01:07:27
tp://0006.x0.to/oo/gif/nanami.png
七宮雲珠です。
本当はSSでイラストのお礼をしていこうと思ったのですが、ちょっと時間が取れそうになかったので…。
こんなお返しで心底申し訳ないです。

132KEY:2011/10/06(木) 01:56:05
tp://0006.x0.to/oo/gif/suziki-0001.png
鈴木 三流です。
鈴木さんもSSでお返ししようと思っていたのですが、ちょっと時間が取れそうになかったので…。
ごめんなさい。

133稲枝(挿絵担当):2011/10/07(金) 03:17:05
>>132
おおおおおおかわいいい!!
ありがとうございます!!

134KEY:2011/10/07(金) 09:26:22
tp://0006.x0.to/oo/gif/met-00001.png
ミス・メテオストームです。

135鳩子:2011/10/07(金) 20:48:28
>>131
ありがとうございます!
やったー

136オツカレー:2011/10/08(土) 05:29:50
ちさやお姉ちゃんとこだちちゃん
tp://blog-imgs-31.fc2.com/o/t/s/otsukaworks/dangerous026.jpg

かぐやと描き分け出来なくて死にたくなった。

137みやこ:2011/10/10(月) 01:14:21
>>136
ありがとうございます!!
ちさやもこだっちゃんもどうしていいかわからないくらいかわいいです!
オツカレーさん結婚して下さい!!

138ヌガー:2011/10/17(月) 01:09:48
ダンゲロス斧術史 その1

「斧…ですか?」
夕暮れの生徒会長室に男の声が響いた。
彼の名は福本忠弘。最近生徒会に入会したばかりの1年生である。
「うん。斧を作って欲しいんだ」
答えたのは度の強そうな細眼鏡を掛けたオールバックの男。
彼こそはド正義卓也。ダンゲロスの名で近隣住民を震え上がらせる希望崎学園の現生徒会長である。
とはいえ彼もこの時まだ福本と同じ1年生。前生徒会長の任期が終わらぬうちに実力に依って政権を奪取したのだが、その辺の経緯は本題とは関係無いので省略する。
ともかくこの時、1年生のみで構成された新生徒会は発足からまだ間もない時期で、かつての有名無実に過ぎなかった生徒会を一新し、無政府状態の希望崎学園に秩序をもたらすための準備を推し進めている段階であった。
そのための期待の新人が福本である。

福本は魔人刀匠の二つ名を持ち、鍛冶業界では知らぬものが居ないほどの天才児であった。
熟練の職人の元で長く修行を積んで始めて認められる業界の中で、我流の素人の名が広まることなど極めて異例の事態であり、最近では季刊誌「刀匠」や鍛冶新聞などでも頻繁に特集が組まれ、トンカチ王子などという頓珍漢なあだ名が付けられそうになっていたほどであるが、魔人であることが発覚して以降は手のひらを返したかのように叩かれ(鍛冶だけに)、最近ではすっかり忘れられた存在になりつつある。元々狭い業界なので一般人はそもそもそんな経緯すら知らないのであるが。
そうして失意の日々を送っていた福本に再び刀作りの情熱の火を灯したのがド正義であった。
福本は生徒会の力となるために身を粉にして刀を作ることを誓い、生徒会に参加した。
そして意気揚々と試作品を初献上した日のことであった。

呆然とする福本の表情に気づいているのかいないのか、マイペースでド正義は続ける。
「気を悪くせずに聞いて欲しい。もちろんこの刀は大したものだと思うが、刀というのは一般人が扱うにしては難しい所がある。剣道経験者なら多少は様になるだろうが、それでも剣道というのは竹刀を前提とした技術だから、あれは叩いたり突いたりするだけで斬ることが抜けている。刀で敵の攻撃を受けたりするのも実際的ではないしな。
大体、僕らのような魔人はやたらタフだったり皮膚が硬かったりする奴も居るものだから素人がちょっと習ったくらいの剣術で戦うのは却って危険だったりするんだよ。
その点、斧ならば振り回すだけで有効なダメージになるから使いやすい。相手の武装ごと叩き切ったって簡単には壊れない頑丈さも強みだ。
それだけじゃない。学校を主戦場にすることを考えると、防衛のためにバリケード武装することだってある。その時にバリケードを築いたり壊したりするのにも斧は有用だ。いざとなれば壁を壊すことだってできるしね。
とまあ、そういう訳で我々生徒会では斧をメイン・ウェポンとして採用することを考えている。
だからね、福本くん。君の技術は刀より斧を作るために使ってもらえないだろうか」

「しばらく考えさせてください…」
顔面蒼白になった福本はモグモグとつぶやくと、おぼつかない足取りで生徒会長室を後にした。
西陽が色味を補うように顔面を照らす。
焦点の定まらない目付きとフラフラした足取りでグラウンドをさまよう福本を避けるようにランニング中の陸上部女子が通りすぎていった。
(刀は…必要ない)
武器といえば刀と当然のように信じていた福本にとってこれは頭をハンマーでぶん殴られたようなショックだった。
(俺は、刀は、魔人学園でも要らないものだったのか?)
これは明らかに思い詰め過ぎである。ド正義は一言もそんな事は言っていない。
だが、福本にしてみれば斧なんか誰が作ったって一緒だろうと言う意識があった。
だからそんな雑用のようなことをやらされるのは自分を価値を否定されることに繋がる。
福本は夕陽に叫んだ。
「チクショウ、チクショ…オゴオッ!!!」
その福本の顔面をどこからか飛来した競技用のハンマーがジャストミートした。

続く?

139ヌガー:2011/10/17(月) 02:42:03
ダンゲロス斧術史 その2

福本が気がついた時にはもう真夜中になっていた。
保健室の養護教諭が帰った後も意識を失なったままの福本につきっきりで看病してくれたド正義の姿に心を打たれた福本は、どうせ一度は諦めた道と刀への執心を捨て、斧鍛冶として一から出なおすことを決心する。

しばらくは見様見真似で斧を作っていた福本だったが、その内に斧という分野がまだ武器として未開拓であることに気づく。
もはや完成されている刀と違い、斧には未知の可能性がある。
次第に斧作りに没頭していく福本。

いつの間にやら「誰にでも使いやすい武器」としてのリクエストを完全に忘れ、斧の可能性を追求するための奇斧・珍斧を工房に籠もりっきりで製作する福本のことを生徒会の役員たちは冷ややかな目で見るようになった。
福本が我に返ったのはロケットランチャーの先端に斧を取り付け、遠距離では火器、近距離では鈍器として使える新斧・アックスランチャーを完成させた時だった。
披露会で歪み崎絶子が呟いた「物置のどこに置こうかしら」という言葉で、壁に飾られていたはずのこれまでの作品がいつの間にか全部片付けられていることに気づいた福本は、自分の間違いと生徒会に自分の居場所がもはや無いことを悟った。

「エース。俺はやはり刀の道にしか生きられなかったみたいだ。かくなる上は生徒会のため、最強の刀を作りだす。」
福本が最後に作り出した刀は彼の汚名を見事返上し、宝剣として生徒会室に飾られることになった。
一方で斧たちは黒歴史として積極的にその存在を秘匿された。

それらが再び人の目に触れることになったのは、ダンゲロスハルマゲドン終結後、全滅した生徒会に代わって後片付けが行われている時のことだった。
これらの斧がどう処分されたか正確な記録が残されてないことから、厄介物として扱われたようであるが
後に福本剣が転校生を斬ったとの伝説が人口に膾炙するにつれ、これらの斧の価値も再評価され、福本36斧と呼ばれるようになった。
現在希望崎学園斧部に保管されているものはその内の半分以下であり、残りはどこへ流出したともわからない。

ちなみに斧部とは、斧の活用を目指したド正義生徒会によってまとめられた斧の実践活用法を元にしたものである。
斧を振り回すには意外と体の関節や筋に負担がかかるため攻撃法がワンパターンになりがちといったような問題の対策や、剣や槍などのメジャー武器を相手にする際の立ち回り、ゲリラ戦・サバイバルにおける万能ツールとしての斧の使い方などを体系化したものであり、これらの技術が失われることを惜しんだ次代の学生たちによって作られた部活動である。しかし代によってはお茶を飲みながら斧の地位向上について語り合うだけの部になっていることもあるらしい。

140minion:2011/10/18(火) 00:22:36
『ダンゲロス・ハルマゲドン開戦 〜本編〜 後編』


 生徒会長の暗殺に失敗した一たちは、一旦引いて体勢を立て直す事にしていた。狙撃犯の正体が分からぬ方が、より抗争を勃発させやすいだろう、という判断からである。
 生徒会も、加えて番長グループも、破壊されてゆく学園とその犯人を指を咥えて見逃すつもりはなかっただろう。だが、破壊活動が唐突だった所為もありどうにも対応が遅い。更には生徒会長の狙撃事件まで発生し、その犯人探しも容易ではない。
 「一般生徒を、避難させよう」
 展開の速さに対応が些か遅きに失した感はあったが、一は宣言した。
 「えー? いーじゃねーか、そんなのほっとけばよー!」
 ダンゲロス子がぶーぶー、と不平を口にする。破壊の手を一時止めているのは、あらかた破壊し終わったというのもあったが、若干飽きてきた、というのもあった。熱しやすい分、冷めやすいのである。
 「なんだかんだ言っても、生徒会の人も番長グループの人も、一般生徒に被害が及ぶのは避けたいんじゃないかな、と思うんだ」
 戦闘と破壊の権化である魔人。その魔人たちが集まる両勢力ではあるが、彼らとて一部を除けば狂人という訳ではない。無関係の人間を巻き込みたくはない、という意見がどちらの勢力でも主流を占めている。
 その事は過去、不本意ながらも一度はハルマゲドンに関わった一自身が体験済みである。あの時も開戦は一般生徒への避難勧告を出した後だった。それを思い返しての提案である。
 「邪魔者がいなくなれば、両者とも心置き無く戦いを始められると思うんだけど………………どうかな?」
 自らの意見を口にし、恐る恐る他の面々の反応を窺う。
 「ふーん、変態のくせにたまには良い事言うじゃないの」
 「そーだな、変態にしては上出来だぜ」
 「流石に変態ですね、一さんは」
 三者三様に感心する女性陣。
 「っていうか、なんでみんな変態をねじ込んでくるの!?」
 しかもさり気なくかぐやが一番酷い。
 「あの…………ひょっとして、さっきの事怒ってます?」
 「いえ、全然怒っていませんよ?」
 全く気にしていない様子でにこやかに微笑むかぐや。
 「…………ごめんなさい…………」
 何となく余計に怖くなって、つい再度謝ってしまう一だった。
 「と、とにかくっ! そんなわけで一般生徒を下校させるから、みんな手分けして…………」
 気を取り直し、三人に呼び掛ける。だが──────。
 「腹減ってきたなー、なんか食おうぜ!」
 「購買にでも行けば何かあるんじゃない?」
 「そうですね。少し運動しましたし、おやつにしましょうか」
 「ちょっとー!? なんでゆるふわスイーツタイムになっちゃうの!?」
 思わず抗議したものの、逆に反論される。
 「うっさいなー、いっぱい暴れたから燃料補給が必要なんだよ!」
 「そうそう、あたし達はさっき沢山働いたんだから、今度はあんたが働きなさいよ。まだ何もしてないんだから」
 「流石に変態ですね、一さんは」
 「それはそうかもしれないけど…………って、最後関係ないよっ!」
 しかもさり気なくかぐやが一番酷い。
 「あの…………やっぱりさっきの事怒ってますよね?」
 「いえ、全然怒っていませんよ?」
 全く気にしていない様子でにこやかに微笑むかぐや。
 「…………ごめんなさい…………」
 何となく余計に怖くなって、つい三度謝ってしまう一だった。
 ともあれ言い出したのは自分である。他の三人が乗り気でなくてもやらない訳には行かない。
 「じゃあ、僕も後で購買に行くから、そこで待っててね!」
 とりあえず合流地点を決めておくと、一は一人で走り出した。
 その背中を見送る三人。
 「おー、意外に行動力あるじゃねーか」
 「まあ、殿方は行動力があるに越した事はありませんね」
 「ふん! パシリ根性が染み付いてるだけよ!」
 それなりの評価を出したダンゲロス子とかぐやに対し、あくまでも低評価を崩さない葦菜。
 「蜂子はあいつに厳しーな。なんか恨みでもあんのか?」
 「誰が蜂子よ! …………恨み、っていうか…………」
 言い淀む葦菜の様子に、かぐやは優しく微笑む。
 「葦菜さんって、可愛いですね」
 「な、な、な、何言ってんのあんた!?」
 虚を突かれて慌てふためく葦菜。
 「安心して下さい、そういう意味じゃないですから」
 「どういう意味よ…………」
 ぶつぶつ、と不満そうに呟く。
 「まったく、あの変態と関わってからろくな事がないわ…………」

141minion:2011/10/18(火) 00:23:27
 「へくちっ!」
 廊下を走りながら、可愛いくしゃみを一つ。
 「誰かに噂されてるのかな…………?」
 というか、間違いなくあの三人だろう。揃いも揃っての問題児たち。
 「みんな、可愛いし綺麗なのになあ…………」
 外見だけを抜き出せば、文句の付けようもなく何処に出しても恥ずかしくないトップクラスの美少女たち。
 破天荒で暴れん坊だが、情熱的に明るくエネルギッシュ、パワー溢れる魅力のダンゲロス子。
 穏やかに見えて時折物騒な程暴力に肯定的だが、日本国内は言うに及ばず世界に飛び出しても通用するであろう完璧な美貌のかぐや。
 怒りっぽくてすぐに暴力を振るい、何かにつけて目立ちたがり屋ではあるが本当は仲間思いで優しいところもある葦菜。
 一癖も二癖もあるが、タイプの違いはあれども全員が魅力的な少女である事に間違いは無い。
 「…………っていうか、全員に『暴』が含まれてる、っていうのはどうなんだろう……?」
 せめてそこだけはなんとかならないかな、と思ってしまう一だった。
 そんな事を考えながらも、校内に残っている生徒を見つけてはその度に逐一声を掛け、下校を促してゆく。地味な作業ではあったが、一の丁寧な話し言葉や人畜無害そうな顔立ちが功を奏したのか、比較的素直に避難勧告は受け入れて貰えた。
 もっとも、至る所で破壊の音が聞こえたりしていた後ではさもありなん、と言ったところだったが。
 「ふう…………これで大体、残ってる人はみんな避難したかな?」
 周囲を見回し、確認する。勿論全員という訳にも行かないだろうが、目に付いた生徒はその大部分を誘導できた筈だ。
 そろそろ戻って合流しようか、と一が思い始めた頃──────。

 「余計な真似、してくれてるじゃない」
 その目前に現れたのは、すらりとしたシルエットの一人の女生徒。一に見覚えは無いところを見ると、上級生だろうか。
 彼女にも避難を促そうとした一だったが、どうも様子がおかしい。
 「困るのよね、こういう事されちゃうと…………さ」
 腕組みしたまま、仁王立ち。少し気怠げな表情。
 「あの…………あなたは、いったい……?」
 一般生徒ではない。それは確かだ。だが、生徒会や番長グループの人間にも見えない。
 「ま、誰でもいいじゃない。でも、この世界でハルマゲドンを起こされると困る人間も居る、って事」
 つまり彼女は、ハルマゲドンを止めようとしている──────?
 いや、違う。
 この共有夢世界においてハルマゲドンの勃発を抑えようとしている者、それはすなわち裏を返せば現実世界でのハルマゲドンを起こそうとしている者だ。
 そして彼女は如何なる手段を用いたのか、現実世界の意識を持って此処へ介入して来ている。
 特命を帯びて潜入した自分たち以外の存在、しかもその目的は明らかに相反するもの。
 「敵…………なの?」
 「今は違うわ。でも、邪魔しちゃおっかな。生徒会か番長グループ、どっちか片方だけでも壊滅させちゃえば済む話だし」
 ひどくあっさりと物騒な言葉を口にする女生徒。その口調に一は何故かかぐやを思い出した。
 外見や言葉遣いが似ている訳ではない。だが、何か雰囲気、空気とも言うものだろうか。言葉にならない何かが一に想起させる。
 ゆっくりと、その女生徒は近付いてくる。一は一歩も動けなかった。それどころか指一本、動かす事さえ出来なかった。
 伸ばされたその指先が、顔に近付いてくる。
 「…………っ……!」
 ぎゅっ、と目を閉じた。
 「あは、泣きそうな顔しちゃってかーわいい♪ その顔に免じて、今回は見逃してあげる」
 耳元で囁かれた楽しそうな、嗜虐心溢れる言葉。 
 再び目を開いた時には、彼女は何処にも居なかった。

142minion:2011/10/18(火) 00:24:28
 「ハルマゲドンを止めようと…………いえ、起こそうとしている人間、ですか」
 合流した一の話を聞くと、かぐやは少し考え込む。
 「はい、正体はまったく分からないんですが…………」
 「謎の存在なんて調子乗ってるわね! 探し出してぶっ飛ばしてやるわ!」
 「おもしれー、動かない柱や壁相手はもう飽き飽きしてたところだぜ!」
 葦菜やダンゲロス子は既に戦闘態勢。だが──────。
 「罠ですね」
 一人冷静に、かぐやは断じた。
 「わざわざ私たちの前に姿を表す必要がありません。恐らく、無駄に捜索させて時間を稼ぐ目算でしょう」
 共有夢の世界に誘う『夢幻抱影』には、そこでの活動時間に制限がある。無駄な行動で時間を浪費してしまえば、それだけ本来の目的を果たす機会が失われてしまう。
 「相手の正体や行動目的も、此方の世界に干渉してきた手段も今は分かりませんが…………今は、私たちがやるべき事をすべきです」
 ほえーっ、と他の三人が感心したように溜息を付く。
 「かぐやさんって…………なんか、凄いですね」
 「何がですか?」
 「いえ、その…………すっごく落ち着いてるっていうか、大人、っていうか……」
 不測の事態にも、迷いがない。泰然自若とはこの事だろう。
 「慣れてますから」
 事も無げに答えるかぐやの横顔は何処までも涼やか。
 「…………で、結局どうするのよ」
 どこか不機嫌そうな顔で葦菜が一を責める。
 「え、えっと…………」
 「私にいい考えがあります」
 困った一に助け舟を出すようなかぐやの発案。
 「何よ、いい考えって?」
 葦菜は疑い深そうに眉を顰める。そんな彼女をかぐやは手招きして。
 「ちょっとお耳を拝借しますね」
 ぼそぼそ、と葦菜に耳打ち。それを聞いているうちにどんどんと顔が真っ赤になってゆく。
 「ふんふん…………って…………えええええええ!?」


 希望崎学園の報道部は優秀である。彼らはいつ如何なる時でも事件とあらば現場に駆け付け、『真実の報道』を大衆に伝える。それがたとえどんなに危険な現場でも、或いはショッキングな映像であろうとも──────。
 とはいえ、校舎が破壊されているだけならそれは学園においては日常茶飯事。報道部の敏腕記者たちの興味をそこまでそそるものでは無い筈だった。
 だが、通報を聞いた彼ら一級記者の勘は別の匂いを嗅ぎ取っていた。すなわち──────。
 「…………おい! すぐにカメラ回せ! 配信するぞ!」
 第二保健室に到着するやいなや、報道部員は即座に中継の手配を決断する。彼らの眼前に繰り広げられていた光景、それは。

 灰色の瓦礫が積み重なる荒廃した校舎。
 死を思わせる荒れ果てた終末の世界。
 その中心にあったのは二輪の美花。
 両手をお互いの腰に回し、見つめ合う二人の少女。
 色を失った世界で、その中心だけが鮮やかに色付いていた。
 それは、死の中の生。タナトスとエロス。
 お互いの瞳には、お互いしか映らない。
 眼を閉じてもそれは同じ。心に思い描いた姿は決して消えはしない。
 震える唇は、震える唇で贖われる。
 世界に花園が広がる──────。

143minion:2011/10/18(火) 00:25:51

 時間は少し遡る。
 「人前で、れ、れ、レズプレイ!? いったい何考えてるのよ!」
 かぐやの『いい考え』を聞かされた葦菜は、赤面しながら叫んだ。
 対して提案したかぐやは平然としたもの。
 「妨害者が居ると判明した以上、通常の扇動では効果が薄いかもしれません。それならば、搦め手を用いる必要があります」
 「だからって、それがなんで…………」
 「この学園は世間一般よりも性的倒錯者が多い傾向にあります。その中でも、男女共に勢力が大きいのが女性同士の恋愛に関わる性嗜好…………一般にレズだとか百合だとか言われますが、この二つには似て非なる大きな違いがあります。そして、違いが有るという事はそこには派閥が生まれるという事…………」
 「なーるほど! そこを刺激しておっぱじめさせるってわけだな!」
 ハルマゲドンとは、生徒会と番長グループ間にだけ生まれるものではない。二つの大きな勢力があり、その間に抗争が生まれれば──────それもまた、ハルマゲドンになる。
 「理屈は分からないでもないけど…………でも、どうしてあたしなのよ!」
 一応の理由は理解したものの、それでも納得できない様子で葦菜はかぐやに抗議する。
 「失礼ながら、ダンゲロス子さんはあまりこうした演技には向いていないように思われましたので…………あぁ、でも、そうですね。一さんという選択肢もありますね。女の子顔ですから、うまく私と絡めばレズプレイとしての説得力も…………」
 「それは駄目!!」
 「まあ…………何故ですか?」
 のほほんとした顔で問い返され、一瞬答に窮する葦菜。
 「そ、それは…………そう! こんな目立てるおいしい役、あたしが他の人に譲る訳には行かないからよ!」
 「そうですか。やる気になって頂けたようで何よりです」
 なんだかうまく乗せられたような、思惑通りに嵌められたような気もしないでも無かったが、ここまで来たらやるしかない。半ばやけっぱちになって葦菜は叫んだ。
 「どうせなら大々的にやるわよ! 総員、戦闘配置!」


 広がる花園。誘われる二人。
 「葦菜ちゃん…………」
 「かぐや………………」
 その名を呼び合えば、それが禁断の扉を開く鍵となる。
 眼差しを交し合えば、それが背徳の花園への橋となる。
 繋いだ手が名残惜しそうに離れ、そして再び触れ合う。
 伸ばした指先が相手の頬に触れ、お互いを確かめ合う。
 「ふふ、葦菜ちゃんのほっぺた柔らかい…………」
 「かぐやのほっぺたも、柔らかいわ………………」
 その言葉を証明するように、頬を擦りつけ合う。マシュマロのような柔らかさ。
 砂糖菓子の甘い香りが二人の周囲に漂い、鼻腔をくすぐる。
 「食べちゃいたい…………かも」
 「食べられちゃいたい……かも」
 少女の唇が、少女の耳元に近付く。熱い吐息が、耳朶を弄ぶ。
 甘やかに咥えられた箇所から、弱い電流が走る。じんわりと、熱を帯びる。
 「んっ…………」
 堪え切れず、震える唇から吐息が零れる。
 その吐息さえ、絡み合う。
 少女の唇が、少女の首筋に近付く。熱い吐息が、襟首を弄ぶ。
 緩やかになぞられた箇所から、温い媚毒が走る。ねっとりと、熱を帯びる。
 「ぁぁ…………」
 天を仰ぎ、切なげに揺れる髪。苦しげでいて、それでいて恍惚の世界へ旅立つような喘ぎ。
 どちらともなく、お互いの服に手を掛ける。恥じらいながらもはだけられてゆく乙女の柔肌。
 天上の果実のような膨らみが、お互いに押し付けられて柔らかく形を変える。
 滑らかな素足が鍔迫り合い、絡み合う。
 白い肌が、桃色に染まってゆく。
 絡み合う二人の影は、やがて一つに。

144minion:2011/10/18(火) 00:26:36
 絡み合う二人を見守るのは、独占中継を目論む報道部員たちだけではない。一とダンゲロス子も同じように部屋の隅でカーテンに隠れながら見守っていた。
 葦菜とかぐや、二人の睦み事を傍から眺めていざという時──────────生徒会や番長グループ、或いは一の出会った正体不明の妨害者等に備える必要があった。
 いつ、何が起こるか分からない。その緊張からか、一はごくり、と唾を飲み込む。
 「何興奮してんだよ、一」
 そんな一を茶化すように、隣に並んだダンゲロス子はにやにやと笑う。
 「そ、そういうんじゃないよ……っ」
 慌てて小声で否定するという器用な真似をしながら、一は小動物のように首を激しく振った。
 その様子が面白いのか、ダンゲロス子は猶もからかい続ける。彼女の性格上、地味な見張り等という役割に飽きていた、という理由もあったのだろう。
 「で、どっちが本命なんだ? おら、素直に吐け」
 つつつ、と身体を寄せてくると、ダンゲロス子は一の背後に回ってぎゅうぎゅう、とスリーパーホールド的に締め上げ始める。無論、手加減はしているのだろうがそれでも非力な一に返せるような力ではない。
 「ほ、本命とか、そんなの…………っていうか、ちょっと苦しいよ……」
 とは言うものの、実際のところは苦しさよりも他の感覚が勝る。
 背中に押し付けられた柔らかな双丘は、やや小ぶりながらも確かな感触を与えてくる。
 首に回された二の腕は、破壊の炎を呼び起こすとは思えぬまろやかさを生む。
 密着した身体から仄かに香る汗の匂いは、少し甘酸っぱい。
 「まーだ言うか…………じゃあ、こっちに聞くか」
 伸ばされた指は、するりと一の下半身へ。手早くベルトを緩めると、その隙間から蛇のように潜り込む。
 「ひぁっ…………!?」
 直接触れられると、思わず大きな声が零れそうになって慌てて口を噤む。
 「やーっぱり、興奮してたんじゃねーか」
 にぎにぎ、と確かめるように柔らかく揉み解す。
 「…………ってゆーか、お前って顔の割にけっこー……」
 意外そうな表情を浮かべた後に、熱い吐息を洩らす。いつの間にか、頬が淡く上気していた。我知らず、葦菜とかぐやの痴態の熱気に当てられていたのかもしれない。
 「だ、だめだよこんなところでっ…………」
 「構いやしねーよ、どうせ誰も見てねーって」
 反論を封じるように、絡めた指先をゆっくりと上下させ始める。既に、からかいの領域からは大きく逸脱していた。
 指先を動かす度に起こる面白いほど敏感な反応に、その勢いは止まらない。
 遂には押し倒し、馬乗りになる。両手を押さえ、抵抗を封じる。
 「おい、あっちでも何か始まってるぞ……!」
 外野の声が聞こえたが、もう手遅れだった。
 「もっと、じ、自分を大切にしようよっ……!」
 「どーせ夢の中だからやっちまってもガキも生まれねーし、いいじゃねーか」
 なんとも刹那快楽的な台詞を告げながら、それぞれの下半身が近づいてゆく。
 ゆっくりと腰が降ろされていき──────────。
 「ふわぁぁっ!?」

145minion:2011/10/18(火) 00:27:29
 その瞬間、一斉に周囲に唸るような羽音が響く。数え切れぬ程の多数の蜂が何処からともなく現れ、葦菜たちを取り囲んだのだ。
 これでは、甘く密やかなひとときも続けられよう筈もない。たちまち蜜なる空間は雲散霧消してしまう。
 「きゃああっ! ちょっと、なんなのよ! あたしとかぐやの神聖なレズプレイを邪魔しないでっ!」
 先程までの蕩けた表情も瞬時に怒りに変わり、叫びを上げる葦菜。
 「ああっ、もォ……これは間違いなく、レズ嫌いで有名な『反レズ陣営』の仕業ね!!」
 「あ、葦菜ちゃんっ!」
 「許せないわ……! あたしとかぐやの仲を引き裂いたことだけじゃないわ! これは、レズ好きな『山一会』への宣戦布告よ!!」
 民衆を鼓舞する指導者の如く、葦菜の煽動は続く。その言葉は報道部の中継を通し、学園中に広がってゆく。
 無論、蜂の乱入が葦菜自身の仕業である事は言うまでもない。単純な自作自演ではあったが、葦菜とかぐやの真に迫った演技のお蔭もあって効果は絶大だ。
 葦菜の熱弁は続く。まさに彼女の独壇場だった。
 「あたしたちは戦わなければならないわ! レズの、レズによる、レズのための世界を守るのよ! 立ち上がれ、レズ好きの者どもよ! 剣をとり、反レズの者どもと戦うのよ!」
 自分自身でも何を言っているのか分からなくなっていたが、その熱狂は聴衆に火をつけた。
 元々、些細な口実でもきっかけさえあれば容易に燃え上がる火種を抱えた勢力抗争である。ドラマティックな演出はどちらの陣営にとっても渡りに船だった。
 そして、一度火のついた熱狂は最早誰にも止められず──────────。
 ここに、レズマゲドンと呼ばれる史上類を見ない大戦が勃発したのであった。


 気がつけば、そこは第二保健室だった。
 当たり前の話だ。先程まで居た場所なのだから。
 破壊された室内も、全くそのまま。
 窓から見える景色も、全くそのまま。
 違うところなど何一つない。
 ほんの僅か眠っていたような、随分と長い間眠っていたような──────どちらとも感じられる、不思議な感覚。ぼんやりとしていた意識が、少しずつ明瞭になってゆく。
 「戻って…………来たのかな?」
 一は目を覚まし、床から起き上がろうとして──────────違和感に気付く。
 なんだろう、この柔らかいものは──────────?
 自らの顔に押し付けられていたもの。
 おっぱいだった。
 どう見ても、どう触っても、どう揉んでも、どう吸っても、間違いなくおっぱいだった。
 ぇぇぇぇぇぇ!?
 内心で大声を上げながらも確認してみると、それはぐーすか眠り込んでいるダンゲロス子だった。隣のベッドから転がり落ち、抱き枕よろしく一を抱え込んでいたのだ。
 しかも寝相の悪い事に、着ている服はめくれ上がったりずり落ちてしまっていたり、ほぼ全裸に近い有様である。しがみつかれていた一もいつのまにか脱がされて同じような状態であった。
 つまり、ほとんど全裸のまま、保健室の床で絡み合っていたのだ。
 「こんな事になってたから、向こうでもあんな事に…………」
 思い出してしまうと、たちまち羞恥に顔が真っ赤に染まる。
 「と、とにかく離れよう…………」
 誰かが目覚めぬうちに、と身体を動かした一だったが。
 ぬるり。
 密着していた二人の下半身の間に感じた、ねっとりとした感触。
 若い肉体の当然の生理現象。生命の迸り。
 「………………あたし、変態は殺しても罪に問われないって思うのよね」
 隣のベッドから、静かに死刑宣告が聞こえてきた。

146minion:2011/10/18(火) 00:27:49
 処刑が行われた後、三人とずたぼろになった一人は生徒会長への報告に廊下に出る。既に時間は放課後だったが、随分と多くの生徒が残っていた。そして何やら口々に噂している。
 「いやー、凄かったなー、あれは。あんな濃厚でエロい夢は初めて見たよ」
 「あ、お前もそうなんだ。俺は和風美女と気が強そうな子の絡みが、どストライクだった!」
 「アタシは大人しそうなコが乱暴そうなコに押し倒されてレイプされてるのが…………!」
 「どっちも、受けの子の表情が秀逸だったよねー、泣きそうな顔でゾクゾクしたわ」
 曖昧だが少しは記憶が残っているのか、それぞれの性癖に合わせた感想を口にしている。
 「「「「でも、なんかどっかで見た顔だったような…………」」」」
 異口同音の言葉に、葦菜と復活した一は猛スピードでその場から走り去る。
 生徒会室に到着すると、ちょうど生徒会長が部屋から出てくるところだった。
 「やあ、どうやら任務は成功したようだね。私も向こうで暴れたようで、とても心身がすっきりしているよ。そこで、どうだろう? これからは定期的にこの任務を引き受けてもらう、というのは──────────」
 「「絶対にお断りですっっ!!」」
 生徒会長の提言を、全身全霊で拒否する二人だった。


 ──────作戦終了。





 「少し…………面白そうな事になってきたかしら」
 誰にも聞こえない声で、一人そう呟いたのは──────────。






                                   <了>

147minion:2011/10/18(火) 00:28:45
『ダンゲロス・ハルマゲドン開戦 〜導入編〜』>>89-93
『ダンゲロス・ハルマゲドン開戦 〜本編〜 前編』>>114-117
『ダンゲロス・ハルマゲドン開戦 〜本編〜 後編』>>140-146

ようやく『ダンゲロス・ハルマゲドン開戦』完結。
挿絵は秘書が勝手にやりました。私は何も記憶にございません。

tp://s1.gazo.cc/up/s1_3480.png
ゆりゆららららゆるゆり☆だいじけん♪

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※画像はイメージであり、本編とは無関係です。

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※画像はあくまでもイメージであり、本編とは無関係です。

tp://s1.gazo.cc/up/s1_3483.jpg
刑法199条(改正案) 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。但し変態を殺した場合は、罰しない。

148オツカレー:2011/10/21(金) 20:37:08
minionさんどうもありがとう!面白かった!!
あのセッションをキチンと仕上げていただけドルとは・・・・・・いやはや感服いたしました。
SSかけて絵もかけるminionさんは多才やで〜ッ!!
後、だいじけんはありがたく頂戴してきますぜ・・・・・・

149陸猫:2011/10/21(金) 23:27:44
股ノ海でちょろっと書いてみました。たびびとさんごめんなさい。




『股ノ海……股ノ海……』

草木も眠る丑三つ時。
激しい稽古の疲れもあって泥のように眠っていた関脇・股ノ海は、己の名を呼ぶ何者かの声で目を覚ました。
寝ぼけ眼を擦りつつ布団から体を起してみると、そこには目映い光を放つ球体が浮かんでいた。

『起きよ……股ノ海……起きるのだ……』
「だ、誰かッ!」

驚愕しながらも何とか平静を保った股ノ海は鋭く声の主に問う。
すると光球はそれに応ずるかの様に、滑らかに姿を変えた。
純白の大きな翼、艶やかな肌、全てを包み込むかの如き光のオーラ―――
神々しいまでの威厳を備えたその姿は正しく。

「力士……!?」

そう、力士そのものであった。
翼を生やした力士はしかし首を振り、厳かに答えた。

『否、我は力士に非ず……我が名は相撲天使ガブリヨル』
「ガ、ガブリヨル!?」
『いかにも……私がここへ参ったの他でも無い、股ノ海、お前に伝えるべき事がある」
「は、自分に、ですか」

股ノ海は居住まいを正した。

『まずお前が習得した技の数々……あれは相撲ではない』
「なんと!?」

股ノ海の目が驚愕に見開かれた。
血の滲むような猛特訓の末に身に付けた必殺技の数々が、誰あろう相撲天使に否定されたのである。
思わずがっくりと両手をつく股ノ海。

「自分は……自分の技は、一体何がいけなかったんでしょうか……」
『うむ……股ノ海よ、お前が物にした技を挙げてみよ』
「は……えー、大外刈り、巴投げ、サマーソルトキック、百烈脚……」
『そうだ。おかしいとは思わないか』
「何がでしょうか」
『……よく考えてみよ』

しばし首を傾げていた股ノ海だが、やがてハッと掌を打った。

「手技が無い!」
『違う!!』
「ち、違いましたか」
『当たり前だ!大体習得した技が相撲では無いと言うておるに、何故バリエーションを気にする!』
「そういえば……」
『……良いか股ノ海、大外刈りはともかくとして、その他の技は全て……反則だ』
「!!!!」

脳天を思い切り殴りつけられたような衝撃。完全なる盲点であった。再びがっくりと両手をつく。
これまでの努力が音を立てて瓦解していく感覚に目眩を覚えつつも、股ノ海は食い下がる。

「しかし、巴投げは反則にはならぬのでは」
『よく考えるのだ股ノ海……巴投げとはどういう技だ?』
「それは……こう、相手の体を崩してから後ろに転がりつつ……」
『それだ。自分が先に土をついてしまっては元も子も無かろうが!』
「はぁあああ!!」

またしても盲点であった。三度両手をつく股ノ海。

「自分は……自分は一体、これからどうやって戦って行けば……」
『案ずるな股ノ海……お前は方向性を間違っているだけで才能と情熱はある。
 これより我が正しい必殺技というものを伝授しようではないか』
「天使殿が直々に?良いのですか?」
『うむ、遠慮は要らぬ。存分にかかって来るが良い!』
「それでは胸をお借り申す!ウオオオオオオ!!!」

ガブリヨルによるぶつかり稽古は夜が明け、不審な音に気付いた力士達が股ノ海の個室をノックするまで続いた。


†††


その夜。取り組みを前に股ノ海の気合はこれまでに無い充実ぶりを見せていた。
わずか一晩の特訓にも関わらず、股ノ海はガブリヨルの技をほぼ完全に自分の物としていた。
彼はこの飲み込みの早さとたゆまぬ努力によって現在の地位を獲得したのだ。
土俵に向かう股ノ海の背中は、新たなる決意による気炎に燃え上がっていた。


†††


股ノ海○(オクトパスホールド)濡葉山●

150陸猫:2011/10/21(金) 23:31:24
うわー、スレ間違えた……けどまぁ良いか、ある意味間違って無いし

151minion:2011/10/22(土) 08:00:30
>>148
セッション再現度は30%程度の捏造品ですので、きちんと仕上げたというには若干の語弊が……w
そして多才という言葉はそっくりそのままお返しいたします!
挿絵は秘書がやった事なので、私には一切関係なく無実です……w

152あやまだ:2011/10/23(日) 18:14:20
minionさん、『ダンゲロス・ハルマゲドン開戦』完結おめでとうございます!
そして何よりありがとうございます! すっげー面白えろかわ面白かったです!
巧みな文章も素晴らしすぎる美麗イラストの数々も、この約一ヶ月間、私の生活に多大なる潤いを与えてくれました。
佐賀セッションも楽しみにしています!(私は参加してないけど←)

追伸:本編にはなかったゲロ子×一がレズよりも気合入っててすごくすごかったです。ごちそうさまでした!

153minion:2011/10/23(日) 21:56:28
あんまり百合百合するのも悪いかと思って、かぐや×アッシーナは自重してしまいました……w
なんだかんだでアッシーナは出番多めだったので!

佐賀は…………あまりえろいシーンもなかったので、あっさりした話になると……思います……w

154minion:2011/10/26(水) 14:29:25
『佐賀探索 〜佐賀を探そう〜 導入編』


 「一一(にのまえ・はじめ)くん。君にはある任務を引き受けてもらいたい」
 「お断りします」
 生徒会室に呼び出された一は予想通りの言葉に、珍しくきりっとした表情で発言の主──────希望崎学園の生徒会長、ド正義卓也(どせいぎ・たくや)を見つめ返して断った。
 「断るにしても、もう少し詳しい話を聞いてからにしてはどうかな?」
 即断で拒絶されたにも関わらず、さして気分を害した様子もなく話を続ける生徒会長。交渉事は断られてからが本番、とはよく言われる言葉だが、高校生にしてそれを実践できる者はなかなかいるものではない。
 「詳しく聞いたら、断れなくなる話もあるじゃないですか…………」
 その言葉を疑い深い、と責めるのは容易だが、それも無理からぬ事だった。何しろ、前回が前回だ。今回も一筋縄で行く話ではあるまい、と一が身構えても仕方なかった。
 「確かにそれも道理ではある。…………さて、任務というのは他でもない。ある幻の存在を探す調査隊としての実地探索だ」
 「あの、僕の話聞いてました……?」
 一の主張を納得したように頷いた後に、しかし委細構わず詳細を語り出す生徒会長。交渉事は押しの強さが最も肝心、とはよく言われる言葉だが、高校生にしてそれを実践できる者はなかなかいるものではない。
 「安心したまえ、特に機密を要する案件ではないからね。君の懸念が形になる事はない」
 秘密任務という事でなければ、話を聞いてしまったので断れない、という事もないだろう。
 そう結論付けてしまったのが、一の失敗だった。
 失敗というのが言い過ぎなら、浅慮だった。
 「日本には、幻の県と呼ばれる『佐賀』が存在する。…………知っているかな?」
 「ええ…………話くらいなら、ですけど……。地図にも載っていなくて、日本政府も公式には存在を認めていない県。場所どころか名前も知らない人も多い…………でも、確かに存在はしている」
 「ほう、なかなか詳しいな」
 眼鏡を光らせて感心するド正義会長に、一は恐縮する。
 「いえ、家族にそういう話が好きな子が居るもので、ただの受け売りです」
 「成る程。しかしそれなら話が早い。今回はその『佐賀』を見つけて貰いたい」
 「ですから、それはお断りし……」
 「そう言えば最近、ダンゲロス子くんが精液をぶち撒けられるという破廉恥で痛ましい事件が発生したそうだ。学園の風紀を守る生徒会としては、犯人には断固たる処断を…………」
 「お断りしようかと思っていたんですけど、一度、『佐賀』を見てみたいと常々思っていました……」
 肩を落とし、しょんぼりと答えを返すしかなかった。
 「そうか、喜んでやってくれるか! うむ、君なら必ず引き受けてくれると信じていたよ」
 爽やかな笑顔と沈んだ表情。対照的な二人だった。
 「それで、残りのチームメイトって…………調査隊、と言うからには僕一人じゃないんですよね?」
 やると決めてしまった以上、最も気に掛かる点はそこである。作戦の成否がそのまま左右されるだけに、如何なる人選が行われたのか一としては心配になる。問い質そうとしたその時──────。
 「やっほー! 鏡宮那雲(かがみや・なくも)だよ!」
 突如として生徒会室の校庭側の窓をぶち破り、ヘリコプターのようなローター音と共に小型機械に掴まったポニーテールの長身少女が乱入してきた。ちなみに此処は三階である。
 驚きに固まっている一とは裏腹に、落ち着いた様子でド正義会長は乱入者を紹介する。
 「紹介しよう。彼女が今回のミッションで君に同行する三人のうちの一人、鏡宮那雲くんだ。機械の分解や組み立てをさせれば右に出る者はいない、機器のスペシャリストだ」
 「よっろしくぅ〜♪」
 軽やかに室内に着地すると、蛮行にも関わらずにこやかな笑顔を振りまく那雲。長身と無邪気さのアンバランスさは何処か微笑ましい。
 その隣にはパタパタと空中を浮遊する小さな飛行機械。
 「キュキュー」
 可愛らしい鳴き声(?)まで上げている。
 「え……なんだろ、これ?」
 ひとまず落ち着きを取り戻した一は見たこともない機械に好奇心を刺激され、指先でつんつん、とつついてみる。
 「ソプターちゃんだよ。力は弱いけど言う事をよく聞く可愛いやつだよ!」
 「へぇ…………確かにちょっと癒されるかも……」
 精巧すぎて全く仕組みは分からないが、可愛いという那雲の言葉も頷ける。
 「ところで、なんでわざわざ窓から…………?」
 「なんとなくノリで!」
 勢い良く即答される。特に理由はないようだった。
 「まぁ、前回のゲロ子ちゃんもそんな感じだったし、一人くらいは…………」
 許容範囲、と続けようとしたところで一の目はふと、窓の外に向けられる。

155minion:2011/10/26(水) 14:31:02
 こちらに向かって急速に近付いてくる、翼を広げた大きな鳥影。鷹だろうか──────いや!
 「あら、ちょうど窓が開いてて良かったわ」
 窓を抜けてばさり、と翼を休めた美女──────美しい羽根を持つ翼人、北部理里(ほくぶ・りざと)は蕩けるような声で艶然と微笑んだ。
 「二人目は彼女、北部理里くんだ。見た通り飛行能力を持ち、探索・支援要員としてはこの上もなく優秀だ」
 ド正義会長は指を組みながら、淡々と紹介する。
 「え、えっと、あの、見た通りって、羽根が生えてるみたいなんですけど……」
 「まぁ、可愛らしい坊やだこと。でも、レディの秘密を詮索するのはいけないコトよ?」
 「ご、ごめんなさい……」
 っていうか、秘密も何も全開なんですけど──────とは、気弱な一にはとても言えなかった。
 「素直なコね。いいわ、許してあげる」
 機嫌を直した理里は再び微笑を浮かべると、右手を伸ばして一の顎を軽く撫でる。その優雅さと色気漂う所作はとても一と同じ高校生とは思えない。
 加えて、背中の翼の可動を妨げぬ為なのだろう、大きくゆったりと肩を出した特別製の制服は当然、理里の豊かな胸元さえも際どいところまで露出させていて──────。
 「こらこら。何をじーっ、と見ちゃってるのかなっ?」
 背後から一の頭の上に顎を乗せ、ぐりぐりと楽しそうにからかう那雲。身長差を存分に活かした攻撃である。
 「べ、別にそんなじーっと見てたわけじゃっ……!」
 慌てて否定するものの、紅潮した顔では説得力の欠片もない。
 「なーに? 見たいなら後でゆっくり見せてあげてもいいわよ。…………二人っきりになったときに、ね♪」
 ふぅっ、と熱い吐息を一の耳元に吹き込むと、理里は大人の余裕で誘惑の水先を向けた。
 「ひゃっ!? あ、いえ、そのっ…………!」
 しどろもどろになって慌てふためく様子に微笑むと、理里は指先を伸ばして一の額をつん、と軽く小突いた。
 「冗談よ、冗談♪…………でもあんまり反応が可愛いと、本気になっちゃう・か・も?」
 何処までが冗談で、何処からが本気なのか。この手のやり取りの経験が無いに等しい一にその判断は酷というもので、気の利いた言葉も言えずに固まってしまう。
 第一、こういう展開になると前回なら決まって──────。
 「会長、ひょっとして最後の一人って…………」
 「申し訳ないが、残念ながら一くんの想像している人物ではないよ。声を掛けようと思ったんだが、彼女は芸能活動が忙しいようでね。今は全国ツアー中らしい」
 「べ、別に埴井さんを想像した、ってわけじゃ……」
 言い訳がましく口にした一を目ざとく捉え、那雲はソプターや理里と一緒になって囃し立てる。
 「なになに、カノジョさん? ひゅーひゅー、人畜無害な顔して隅に置けないねっ!」
 「キュキュー」
 「まぁ、芸能人と付き合ってるの? おねーさんに白状しなさいっ♪」
 「だ、だから違っ……!」
 否定すればするほど挙動が怪しい、とますます追及される事になる。しばし他愛もない戯れが続いたが──────。

156minion:2011/10/26(水) 14:31:39
 「失礼します」
 浮ついた空気を破るように、やや固い真面目な声と共に生徒会室の扉が開いた。
 「妃芽薗学園高等部三年、鈴木三流(すずき・みりゅう)です。今回の調査隊のお手伝いをさせて頂く事になりました。宜しくお願いします」
 姿を現したのは、凛々しい中性的な容貌がさぞかし妃芽薗学園のような女子校では人気のありそうな、しゃんとしたスレンダーな少女だった。
 黒髪を一本の三つ編みにまとめた髪型などは、彼女の生真面目な性格をよく表していると言えた。
 他校の生徒が何故──────?
 そう思ったのは一だけではないようで、那雲や理里も不審とは行かないまでもやや怪訝そうな表情を浮かべる。
 「彼女には他校との文化交流プログラムの一環として我が校を見学に来てもらっていてね。その折に話をしたら是非協力したい、と申し出てくれた訳だ」
 ド正義会長の紹介を受け、礼儀正しく頭を下げる鈴木。その様子に那雲たちも警戒心を解き、各々自己紹介を交わす。
 「鏡宮那雲、あーんどソプターちゃんだよっ!」
 「キュキュー」
 「北部理里よ、よろしくね」
 「あ、一一、です……宜しくお願いしますっ」
 そのとき、鈴木の意志の強さを示すような片眉が、ぴくりと動く。
 「にの……まえ?」
 「えっと、漢数字の一、って書いて『にのまえ』って読むんです……けど……?」
 獲物を射竦める射手の如き視線に、思わず一の語尾が弱くなる。
 「どうかしたかね、鈴木くん?」
 「…………いえ、何でもありません」
 ド正義会長の言葉を受け、鈴木はきつい眼差しをふっ、と緩めると一転して年下の後輩に掛ける優しい口調に変わる。
 「宜しくね、一さん」
 「は、はい…………」
 腑に落ちない点はあるものの、頷くしかなかった。  
 「調査隊はこの五人ってことだね!」
 那雲が無難に纏める。ソプターが人数に入っているのが彼女らしい。
 「そうね、じゃあ早速だけど隊長を決めておきましょうか」
 理里の提案には誰も異存はない。咄嗟の判断時に指揮系統が確立されていなければ隊全体にどんな危機が訪れるか分からない。リーダーの決定は必須と言えた。
 「じゃあ、一くんで!」
 「ええ、坊やでいいんじゃないかしら」
 「一さん、お願いします」
 電光石火、即断即決、一致団結の意思表示。
 「え、ええーっ!? 会ったばっかりなのにチームワーク良すぎない!?」
 なんだか誰もなり手のない学級委員に無理やり推薦されたような気分だった。
 「なんか面白そうだし!」
 「男のコなんだから、頑張ってね」
 「私はそもそも外部の人間でお手伝いという立場だし」
 最もな理由なような、適当な理由なような。
 ともあれ、多数決と言う名の数の暴力により、ここに一一調査隊が結成される事になる。
 その行く手に何が待ち受けているとも知らないで──────。




                             <了>

157minion:2011/10/26(水) 14:33:34
Aマホ『佐賀を探そう』導入編(仮)できましたー。今回は顔見せ程度で。
相変わらずのセッション無視の捏造クオリティ!

各キャラクターのPLさんはお手すきでしたら口調や言動、人称のチェックをして頂ければ嬉しいです。
問題がなさそうならこういうキャラ把握で本編に進みたいと思います。

もし見せ場のご要望等があれば、力量の及ぶ範囲で努力したいと思います……!

158ε:2011/10/29(土) 00:35:51
酔った勢いで書いた。後悔はしてない。


¶¶¶『斧部の部室に遊びにいこう!』¶¶¶

¶¶¶

徒守:「斧、いいよね。拙者も所持武器斧にしたいでござる。」
ダンゲロス子:「先輩、忍者やめるんスか?」
徒守:「別に忍者が斧を持ってはいけないという決まりごとはないであろう。忍者と斧使いの両立はできるはずだ。」
ダンゲロス子:「ふーん…」
徒守:「そんなわけで、これから一緒に斧部の見学にいくぞ。」
ダンゲロス子:「え、アタシもッスか?」


そんなわけで、ダンゲロス子が徒守先輩に誘われて斧部見学に行ったようです。



¶¶¶

徒守:「今日はよろしくお願いします。」

ダンゲロス子:「お願いしゃーッス!」

部員:
「まあまあ、そんなにかしこまらなくてもいいよ。」
「お茶でも飲んでゆっくりしていってよ。お菓子もあるよ。」

ダンゲロス子:「いただきまーす!」

部員:「急に見学したいって言うから驚いたけど、二人とも斧に興味があるのかな?」

徒守:「はい。拙者、斧に対する見識を深めて斧術について学びたいと常々思っておりまして…」
ダンゲロス子「アタシはなんか先輩に誘われて。あと、斧にもちょっと興味があって。」

部員:「そうかそうか、まあ斧に興味を持ってくれる人が増えるのは我々としても嬉しいよ。」

我々を温かく迎えてくれた斧部の部員達。
どんな強面が現れるのかと思ったら、意外に普通な、どこにでもいる人達であった。
筋骨隆々とした蛮族のような者達が荒々しく出迎えてくれるものかと予想していただけに
少し肩すかしを食らった気持ちになったが、まあ歓迎されるのは悪い気はしない。
部員達の好意を受けて、ありがたくお茶とお菓子をいただくことに。



¶¶¶

徒守:「さっそくですが、この希望崎学園斧部では一体どんな部活動をしているのでしょうか?」

部員:「そうだねぇ…基本的には、伝統的な斧術の稽古が主な日課かな。」

ダンゲロス子:「斧にも伝統的な構えとか攻撃法みたいのがあるんスか?」

部員:
「もちろんだよ。斧は最も古い時代から使われていた武器で、長い年月を費やして武術として確立しているんだ。」
「剣術みたいに流派や技もあるし、斧道の作法なんかもあるんだよ。」

ダンゲロス子:「へぇ〜…」

部員:「あとは、今みたいにみんなでお茶飲みながら斧の歴史について学んだり、斧で立ち合いをした時の感想戦をしたりとかかな。」

ダンゲロス子:「勉強はちょっと苦手ッスね…」

部員:
「あはは、そんなに敬遠しなくても大丈夫だよ。基本的にはお茶飲んで駄弁りながら雑談するだけだから。」
「自分で新しい技を考えたら、技名を考えたりするのは楽しいよ。」

ダンゲロス子:「ああ、それは楽しそうッスね!」

部員:
「まあ、コアな部員達は夜遅くまで斧の可能性とか、斧の有用性とか、斧の地位向上について熱く議論してるけどね。」
「あとは、年に数回斧の展覧会なんかにも連れて行ってもらえるかな。いろんな斧が見れて楽しいよ。」

ダンゲロス子:「はあ…」

部員達は、知識がなく斧を軽んじていた我々にも嫌な顔一つせず親切に活動内容を説明してくれた。
お茶のおかわりを御馳走になりながら、我々は斧の有用性について語る部員達の話に耳を傾けた。

159ε:2011/10/29(土) 00:37:06
¶¶¶

部員:
「斧はいいよね。斬ってよし、殴ってよし。時には盾としても使えて、時には投擲武器としても使える。」
「そうそう、ただ叩きつけるだけでも破壊力があるから初心者でも扱いやすい。」
「相手の武器破壊なんかもできるしね。」

ダンゲロス子:「校舎を破壊する時なんかも、鉄パイプとかより斧の方が効率がよさそうッスね。」

部員:
「そうだね。壁や柱も、もちろん破壊できるし敵の作ったバリケードなんかを突破する時にも役に立つよ。」
「屋外での戦闘なら、邪魔な木の枝なんかを切り払いながら進めるしね。刀や槍と違って、いろんな局面で役に立つんだよ。」

ダンゲロス子:「なるほど〜…」

部員:
「でも、斧はただ叩きつけるだけの道具じゃないんだ。やってみればわかるけど、とても奥の深い武器だよ。」
「俺の知り合いで斧の道場やってる人がいるんだけど、その人の演武見せてもらった時は鳥肌が立ったよ。
斧ってこんなに美しくてきめ細やかな動きができるものなのか、ってね。」
「斧を極めた達人なら、流れるような動きで刀持った数十人の暴漢瞬殺できるからね。」
「あ、俺もそれ知ってる。この間youtubeでやってたやつでしょ?」
「そうそう、アレ。あの人なんかの大会に出てた人じゃなかったっけ?」
「確か前に都大会に出てた人だと思う。」

ダンゲロス子:「斧の試合とか、大会とかもあるんスか?」

部員:
「もちろんだよ。剣道や弓道に試合や大会があって、斧だけ大会がないなんて、そんなことあるはずがないだろう?」
「ウチの学校はまだ全国大会に出たことがないけど、部員も増えてきたし次の大会ではいい成績を残したいね。」

ダンゲロス子:
「アタシも入部したら斧部の試合に出るんスか?」

部員:
「強制ではないから、純粋に斧が好きなだけの人や、斧に興味があるだけの入部でも大丈夫だよ。」
「でも、どうせやるなら勝ち負け意識したメリハリのある部活動にした方が充実するよ。」

ダンゲロス子:「ふ〜ん…」

部員:「そうだ、口で説明しても上手く伝わらないかもしれないから、よかったら二人とも斧の立ち合いを見ていかない?」

徒守:「よろしいのですか?」
ダンゲロス子:「おお、面白そう!見たいッス!」

部員:「じゃあ、道場の方に移動しようか。」

そんなわけで、我々は急遽部員達の立ち合いを見学させてもらうことになった。
おそらくダンゲロス子が話し合いに飽きてきたのを察して気を使ってくれたのだろう。
部員達とすっかり打ち解けた我々は、斧の立ち合いというものがどんなものなのか
お手並み拝見させてもらおうなどと軽口をたたいていたが、
実際に立ち合いを見せてもらうことで我々は驚愕することになる。



¶¶¶

部員:「さて、それじゃあ始めようか。」

部員達は全員道着に着替えて一列に並び正座していたが、
我々には「楽にしてていいよ」と座布団が与えられていた。
ダンゲロス子などはあぐらをかいて思いっきりリラックスしていたが、
こいつは後で説教してやろう。「楽にしていいよ」はあくまでも社交辞令だろうに。
しかし、欠伸をして体を伸ばしていたダンゲロス子の顔つきが急に何かを察したように変わった。
よく見ると、さきほどまでの和やかなムードとは一転し、道場全体が張り詰めた雰囲気に包まれていた。
中央には、これから立ち合いを行う二人の部員が対峙していたが…

徒守:「!? ま…まさかッ!防具もつけずに、本物の斧で立ち合いを行うのかッ!?」

部員:
「もちろん、初心者は防具をつけて、竹斧で稽古をするけどね。」
「真斧での立ち合いが許されるのは本当に斧を使いこなせる上級者だけさ。」
「ウチの部で真斧での立ち合いが許されているのはあの二人だけだよ。」
「まあ、あの二人なら大丈夫さ。」

それにしても…一歩間違えれば怪我では済まない。
どちらかが死んでもおかしくないはずだ。
さきほどの談笑で完全に油断していた。彼らは単なる斧好きなミーハーの集まりなどではない。
真斧(真剣の意)に斧と向き合い、斧に命をかけられる者達なのだ。
私とダンゲロス子は道場全体と部員達の雰囲気に呑まれ、二人の立ち合いを固唾を飲んで見守った。

160ε:2011/10/29(土) 00:38:07
¶¶¶

まず、立ち合いを行う二人は正座し、互いに礼をした後に斧を持ってお互いに構えの姿勢をとった。

徒守:「剣道でいう正眼の構えに似ているな…」
部員:「まあ、剣術自体が斧術から派生して生まれたものだからね。似通った構えになるのは仕方がないよ。」

立ち合い者達は、しばらく睨みあった後に二人とも前に踏み込み、
大きく上段に振りかぶって互いに打ち合い、即座に相手から距離をおいてまた正眼の構えへと戻った。
一瞬の静寂の後、一人がすり足で少しずつ相手との距離を縮めていく。もう片方は同じくらいのペースで後退していく。
おそらく、あの距離が彼らの間合いなのだろう。
すり足で前進している方が少しずつその速度を増し、そして次の瞬間大きく踏み込み、一気に相手との間合いを詰めて再び斧を振りかぶり斬りかかった。
守りに入った方は正面から相手の斧を受け止める。
攻撃手はその勢いを緩めることなく、弐撃目、参撃目を次々に打ちこむ。
一見すると右に左に交互に打ち合っているだけのようにも見えるが、
攻撃手の方は踏み込むたびに相手の正面からずれ、死角からの攻撃を狙っていることがわかった。
守り手の方もただ受けるだけではなく、的確な足捌きで常に相手を正面に捉えるよう向き合っていた。

ダンゲロス子:「すげえ…」
徒守:「なんという滑らかな動きだ…」

部員:「あの足捌きこそが熟練した斧術の真髄さ。」

次の瞬間、守り手の方が大きく前に踏み込み、攻撃に転じた。お互いに斧で互いを押し合い、鍔迫り合いの格好となった。
反撃の手に出た方は、そのまま相手を押してどんどん前進していく。押されている方も、ただ押し返すだけではなく
相手の勢いに任せて走るような勢いで後退していく。
一瞬の隙をつき、後退している方が一気に距離を離し間合いを広げたが
前進する方は歩を緩めずにそこで更に加速し、そのまま力強く踏み込んで斬りかかる。完全に攻守が逆転した。
攻撃に転じた方はどんどん距離を詰めながら果敢に攻めるが、ここで大きく勝負が動いた。
守り手に転じた方が相手の斧に横から自分の斧を叩きつけて捌いた瞬間、攻撃手の体勢が大きく横に崩れたのである。
そして捌いた方はこれを好機とみてそのまま振りかぶり、相手の頭蓋を目がけて斧を振り下ろした。
しかし、攻撃をはじかれた方もそのままの体勢から相手の胴体を両断するべく大きく横薙ぎの動きを見せた。

立ち合い者:「いえぁいっ!!」
立ち合い者:「応っ!!」

私とダンゲロス子が「あっ!!」と口にした瞬間…勝負はついた。
お互いに相手の頭蓋と胴体から僅か数センチといったところで斧の動きは止まっていた。
辺りには再び静寂が戻り、幾ばくかの沈黙があった後で、二人は再び道場の中央へと移動し
互いに礼をして立ち合いは終了した…。



¶¶¶

部員:「どうだった?」

ダンゲロス子:「どう…というか…凄かったとしか…」
徒守:「うむ、ただただ圧巻させられたな…」

部員:「あはは、先輩達かなり張りきってたからね。きっと見学に来てくれて嬉しかったんだよ。」

立ち合いの後、部室へと戻った我々は再びお茶を御馳走になり、部員達とさきほどの立ち合いについて、そして斧について語り合った。
正直、私もダンゲロス子も斧というものを甘く見ていたことを心の底から痛感していた。
最初に談笑していた時に、部員の一人が斧について「とても奥の深い武器だ」と言っていたが、まさにその通り。

部員:
「今すぐでなくてもいいけどさ、もし入部したくなったらいつでも来てよ、歓迎するよ。」
「入部する気がなくてもさ、もし気が向いたらまた遊びに来てよ。お茶くらい出すからさ。」

徒守:「うむ…そうですね。では、少し考えさせていただいてもよろしいでしょうか?」

すっかり話し込んでしまったことで、外はもうだいぶ暗くなっていた。
手厚くもてなしてくれた部員達にお礼を言い、我々は斧部の部室を後にした。

161ε:2011/10/29(土) 00:38:25
¶¶¶

ダンゲロス子:「先輩帰りはどうするんスか?電車ッスか?」
徒守:「いや、歩きだな。お前は?」
ダンゲロス子:「アタシは電車だけど、まだちょっと時間あるからどっかで時間潰そうかな…」
徒守:「これから本屋によって斧の入門書を買おうと思うのだが、一緒に来るか?」
ダンゲロス子:「いいッスね!」

こうして我々の斧部部活動見学は終わった。
軽はずみな気持ちで斧部の部室を訪れた我々であったが、
入部するからには部活動として真斧(真剣の意)に取り組まなければ他の部員達に失礼であろう。
入部するかどうかは、まだわからないが今回の斧部見学は非常にためになる時間であった。
やはり斧というものには他にはない魅力がある。また見学にいってみようか。



¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶


   ダ ン ゲ ロ ス 斧 部 !  部 員 募 集 中 !!


¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶

162白金:2011/10/29(土) 01:22:09
わーい斧部SSだー。εさん ありがとう。ありがとう。

さり気に徒守出してくれてありがとう。

剣術が斧から発達したのか…ダンゲロス世界の斧すげーーwwww

163ヌガー:2011/10/29(土) 03:10:52
斧の鍔迫り合いってどういう状況なんだよww

164米ット:2011/10/29(土) 14:08:08
剣術自体が斧術から派生www

165サンライズ:2011/10/29(土) 15:00:20
¶¶¶『斧部の部室に遊びに行こう番外編〜斧で学ぶ鍔の歴史〜 』¶¶¶

ダンゲロス子「その斧についてるの、鍔っすか?」

部員「うん、鍔だよ」

徒守「剣でも無いのにどうして鍔が?」

鍔とは一般に、柄を握る手を誤って刃で斬らぬようにするための物と理解されている。
しかし斧はその刃の形状から握る手を斬る心配など無いのでは?
2人が抱いた疑問はそのようなモノであった。

部員「ハハハ、剣の鍔は確かに手を斬らないためのモノだけど、鍔自体は元々
    斧から生まれた物なんだよ。斧における鍔は別な役割があるんだ。」

そういうと部員は大きな巾着袋を持ってきた。

部員「斧を携帯する斧使いは、刃の部分がむき出しにならないよう、こういう袋を被せておくんだ。
    剣みたいに鞘に納めるなんて出来ないからね。」

そう言うと、自分の斧の刃にその袋を被せ、紐を引くと、鍔に空けられた2つの斧にそれぞれの紐を通し、
きゅっと結んだ。

ダンゲロス子「なろほど〜これで斧を安全に携帯できるんすね。秀逸っす。」

部員「まあ斧は無骨な武器だから、申し訳程度の装飾という意味もあるね。」


剣術の始まりは斧術、剣鍔の始まりは斧鍔(ふがく)、斧という武器の歴史の深さを改めて知った2人であった。

166minion:2011/11/02(水) 20:53:20
『佐賀探索 〜佐賀を探そう〜 本編・前編』


 結成された調査隊を前に、一一(にのまえ・はじめ)は精一杯の威厳を持とうと口を開く。
 「さて、と…………じゃあまずは確認なんだけど」
 「おーっ、なんだかリーダーっぽいね!」
 「調査隊だし、隊長、の方が良くないかな?」
 「坊やで隊長…………微笑ましいわね、七五三みたいで」
 がやがや、と好き放題、口にする三人。なんだかんだで女三人寄れば姦しい。
 どう見ても隊長としての威厳の欠片もないが、それも致し方ない。鈴木三流(すずき・みりゅう)、北部理里(ほくぶ・りざと)の二人は自分よりも上級生で、鏡宮那雲(かがみや・なくも)は学年こそ同級であるものの、背の高さを比べれば差は明白。
 「まぁ、いいんだけど…………慣れてるし……」
 弱い立場なのはいつも通りなので、それほど凹みはしなかった。
 気を取り直して言葉を続ける。
 「この中で、『佐賀』について何か知ってる人って、いるかな?」
 まずは初期情報の摺り合わせから始めよう。何をするにしろ、現状把握は大切である。
 意外にもしっかりとした一の方針に、茶化し気味だった少女たちも少しだけ真面目な表情になる。
 「『佐賀』って一体何なんだろうな〜? 人の名前? どこかの名物とか?」
 「『佐賀』…………『新潟』遠征の肩慣らしにはなりそうねえ」
 「『佐賀』…………不思議な名前ね」
 辛うじて『佐賀』を地名として認識していたのは、理里のみ。一自身も家族から話を聞いていなければ似たり寄ったりだっただろう。
 つまり、世間一般の認識では『佐賀』はこの程度のものだった。
 「とりあえず現状、分かっているのは何処かの地名、って事くらいか」
 『新潟』を死の匂い漂う災禍の魔境だとすれば、『佐賀』は神秘のヴェールに隠された幻妖の秘境。
 危険度で言えば『新潟』に軍配が上がるものの、その正体不明度で言えば『佐賀』は他のあらゆる秘境を抑え、群を抜いていた。
 「うーん、これだけじゃちょっと分からないね!」
 「地図を見ても載っていない訳だし…………どうしようかしらね」
 日本政府が公式に認めている地図に、『佐賀』の所在は無い。そこにどのような政治的判断が含まれているのか、魔人とはいえ高校生の彼らには窺い知れない事だった。
 「じゃあ、問題の解決法が分からない時の最善の行動を取るとしようか」
 いきなり壁に突き当たった一行を前に、年長者らしく落ち着いた台詞を口にしたのは鈴木だった。
 「手近な機械を分解するとか!」
 「手近な可愛いコを構うとか?」
 「どっちも何の解決にもなってないんじゃ……」
 那雲と理里の自分の欲望に正直な解決法(?)に突っ込みを入れる一。そんな彼女たちを尻目に、鈴木は行動を開始する。
 おもむろにスマートフォンを取り出すと、連絡先を呼び出す。
 彼女が会長を務める組織──────『SLGの会』。
 SLGとは、Short-Lived Glowの略称であり、魔人能力の中でも比較的弱い、役に立たないとされる能力を持つ者たちを指す。
 会長の鈴木は妃芽薗学園生であるが、SLGの会は希望崎学園にも支部が存在し、今回の彼女の来訪はその視察も兼ねていた。
 そして、その会員仲間は妃芽薗学園や希望崎学園だけに留まらず、全国に散らばっている。
 「自分で解けない問題の解決法はね。分かる人間に聞く、ってこと」
 『佐賀』の情報を求めるメールの文面を手早く打ち込むと、会員仲間へ向けて一斉送信。
 たちまちのうちに、ひっきりなしに返信が来る。その殆どは有益な情報ではなかったが、その中に一つだけ。
 《私は知らないけど、確か伊藤さんが、千葉とか滋賀とか佐賀とか、そんなような地名の近くに住んでるとかいう話を聞いたような…………》
 「伊藤さん、ね…………!」
 だが、その肝心の伊藤からの返信は来ていない。
 鈴木は今度は直接、電話を掛ける。
 1コール。2コール。3コール。
 なかなか出ない。那雲や理里も事の推移を黙って見守るしかない。
 コール数が二桁を越え、一が思わず声を掛けようとしたそのときだった。
 《…………はい…………もしもし……》
 「伊藤さん? 鈴木です。…………どうしたの?」
 伊藤の声に混じる怯えの響きを、鈴木は聞き逃さなかった。
 《本当に………………鈴木さん、なの……?》
 「ええ、そうよ。大丈夫。あなたには私達がついてるから。何も怖がる必要なんてないからね」
 やはり、様子がおかしい。情報を聞き出す前に、まずは落ち着かせないと。
 鈴木は彼女を安心させようと、柔らかい声で宥めるように声を掛け続ける。

167minion:2011/11/02(水) 20:56:31
 だがその気遣いも虚しく、伊藤はうわ言のように掠れた声で呟く。
 《私、私……。見たんです……。『佐賀』……らしきもの。あれは…………》
 「伊藤さん! 落ち着いて!」
 《…………ああ! 窓に! 窓に!》
 「っ! どうしたの!? 返事をして! お願い! 伊藤さん! 伊藤さん!?」
 ぶつり。鈴木の必死の呼びかけに、しかし無情にも回線は途切れ、ツーツーという無機質な電子音が返ってくるだけだった。
 「………………っ!!」
 無力感と自らへの怒りにスマートフォンを握りしめた鈴木の肩を優しく叩いたのは、理里だった。
 「行きましょう。立ち竦む前に出来る事がある筈だわ」
 「そうだよ! すぐにその子のところに行こう!」
 那雲も、そして一もそれに続く。
 「伊藤さん、って子はどの辺りに住んでるんですか?」
 「確か…………九州だったと思う。長崎……だったかな」
 三人の言葉に鈴木は少しずつ、冷静さを取り戻す。
 「こうなったら、なんとしてでも『佐賀』を見つけ出さなきゃ。おそらく彼女は、『佐賀』の秘密に触れてしまった……!」
 「『佐賀』って九州に存在するのかな? それならテクノロジーの粋を極めた旅客機に乗って行くしかない!」
 「大まかな場所が分かっただけで収穫ねえ。あとは現地で考えましょう」
 伊藤という女生徒には悪いが、おかげで事態は大きく動く。理里の言葉を皮切りに、調査隊は行動を開始する。
 「急がなきゃ! いつまでも『佐賀』が九州に留まっているかどうかわからない!」
 「待っててね『佐賀』! この私がバラバラに解体してやるぞっ!」
 「え……? 『佐賀』って移動したり、解体できたりするようなものなの……?」
 ふと疑問に思った一の発言程度では、走り出した三人の勢いを止める事など出来はしない。
 「ほら、ぼーっとしてないで行くよ、一ちゃん!」
 ぐずぐずしていては置いて行かれる。慌ててついていくしかなかった。


 東京から長崎までの交通手段としては新幹線と飛行機、その二つが考えられたが、那雲のたっての希望もあり飛行機での移動が選ばれた。
 格安航空会社の普通席と言う事もあり、お世辞にも快適とは言えない座席とサービスだったが、旅費は希望崎学園生徒会の予算から出ているので文句は言えない。
 「飛行機ってすごいよね、ソプターちゃん! 人類の文化の極みだね!」
 「キュキュー」
 それでも離陸すると、窓からの景色に大満足の那雲。小さな飛行機械と一緒になって子どものようにはしゃいでいる。
 「機内に連れ込んでもいいのかな……」
 心配する一の不安など、どこ吹く風である。
 「まぁまぁ、いいじゃない。それより坊や、蜜柑剥いてあげたから食べなさい。はい、あーん♪」
 「あ、あの、蜜柑はともかく、この姿勢ってどうにかなりませんか……?」

168minion:2011/11/02(水) 20:57:14
 座席の取り方は、那雲&ソプターと鈴木。一と理里。それはいいのだが──────。
 理里は席に座る一の膝の上に跨る形で、対面していた。
 まるでセクシーキャバクラのサービスタイムのように──────もっと有り体に言えば、対面座位だった。
 「だって、普通に座ってたら背中の翼が痛むんですもの。仕方ないじゃない? 離陸と着陸の時以外はリラックスしていたいの」
 妖艶に微笑むと、魅惑の谷間を強調するように一の目前で双丘を揺らす理里。
 「そ、それはそうです、けど……っ」
 那雲は外の景色に夢中。鈴木も消息を絶った伊藤の事が心配なのか、腕組みをしたまま目を閉じて思案に耽っていた。
 幸か不幸か、シーズンオフの平日。乗客も一たち調査隊以外には出張と思しき背広の男性やスーツ姿の女性、家族旅行か里帰りの親子連れなど、まばらで数える程しか居ない。客室乗務員が頻繁に回ってくるようなサービスの良さもない。
 赤面して動揺する一の反応が面白いのか、その状況を嵩に理里は更に大胆な行動に出る。
 「んっ♪」
 剥いた蜜柑の一房を口に咥えると、目を閉じて顔を近付ける。
 「えっ、ええーっ……?」
 当然拒否しようとしたものの、応じるまで諦めそうにないその様子に、一は観念すると恐る恐る唇を開いた。
 甘酸っぱい果実が、唇から唇へ。
 親鳥が雛に餌を与えるように。
 だがそこに含まれるのは親子の情愛ではない。もっと根源的な、生物としての欲求。
 一つ、二つ、三つ──────数を重ねる度に、果実に塗れた唾液の量が増えてゆく。唇と唇のニアミス距離が縮まる。押し付けられた柔らかな胸の弾力が高まる。
 五つを数える頃には、蜜柑は理里の口内を出発点として、外気に触れること無く一の口内に送り込まれるようになっていた。支えるように細腰に手が回される。
 七つを数える頃には、蜜柑は理里の口内で咀嚼され、甘い蜜とのカクテルになって一の喉を潤していた。何も考えられなくなる。
 そして、十を数え終わる頃には。蜜柑という素材の媒介は最早必要とされず、純粋な蜜を交換するようになっていた。
 「ふふ…………ご馳走様でした」
 「ぁぅ…………お、お粗末さまでした……」
 食べさせられていた筈の一の方が、いつの間にか食べられていた。立場の逆転に、頬を染めて俯く。
 「もう一つ、食べる……?」
 二回戦を示唆するように取り出された二つ目の蜜柑。だが先ほどと同じで済む保証は、ない。
 「え、えっと、その…………」
 一が答を返そうとしたその時。
 「てめぇら、動くんじゃねぇ!」
 野蛮な怒声が機内に響き渡った。


 数少ない乗客の視線が、声の主に集まる。
 血走った目をした背広姿の男が立ち上がり、客室乗務員を背後から拘束していた。
 その手に光るのは、どうやって持ち込んだのか一本のナイフ。人質の喉元に突き付けられていた。 
 単純に航空会社の不手際を責める事は出来ない。いくら持ち物検査を徹底しようとも、この世に魔人能力がある以上、不測の事態を防ぐ事は出来ないのだ。
 武器を隠して持ち運ぶ。遠くから呼び寄せる。或いは、その場で作り出す。
 そのような魔人能力がさして珍しくない世の中で、完全な防犯体制など存在し得るだろうか。
 だが、それを逆手に取っておざなりな防犯対策で済ませ、コストカットとしている不届きな航空会社もあった。
 ただ一つ言える事は、男が一般人であれ魔人であれ、逼迫した事態が発生したという事実だった。
 「機長に告げろ! 今すぐ…………今すぐ、元の空港に引き返せ! 『佐賀』になんて近付いてたまるか!」
 喚き散らす要求は、とても正常な精神状態とは思えない。まるで何かに取り憑かれているかのよう。
 それはつまり、人質にされている客室乗務員の命の保障も無いと言う事。
 乗客たちは恐怖に竦み、一言も発する事が出来ない。
 突然の出来事に、一は周囲を見回す。 
 「どっ、どうしよう……?」
 那雲は、広がる雲海から眼差しを戻した。
 鈴木は、閉じていた双眸を静かに開いた。
 理里は、笑みを浮かべていた唇を結んだ。
 三人の魔人少女が持つそれぞれの能力。そのいずれが発揮されるのか──────。
 結論から言ってしまえば、そのどれでも無かった。
 事態は、意外な方向へと動く。

169minion:2011/11/02(水) 20:58:22
 何の姿も見られなかった。
 何の音も聞こえなかった。
 何の兆しも表れなかった。
 ただ、一が気付いた時には。
 暴漢の背後に気配もなく出現した人影が、刃物を握るその手を鮮やかに捻り上げていた。
 「ぐぁっ!?」
 痛みに呻き、藻掻こうとした暴漢だったが。
 くるり、と手首を捻られ、床に叩きつけられた。
 その人物は男の首筋をハイヒールで踏みつけ気絶させるとそのまま、後ろ手に銀色の手錠を掛けて完全に無力化する。
 「航空機の強取等の処罰に関する法律第一条、航空機強取等罪の現行犯で逮捕します」
 冷たく事務的な、しかしこの上なく麗しい美声で罪状を読み上げたそのスーツ姿の女性は──────。
 「かぐやさん!?」
 「お久しぶりですね、へんた…………一さん」
 艶やかな黒髪のスーツ美女は、間違いなく一の知る竹取かぐや(たけとり・かぐや)その人だった。
 「どうしてこんなところに……っていうか、その格好は?」
 前回のセーラー服とは打って変わって、びしっとしたダークスーツを着こなしたビジネスウーマン──────いや、隙のない軍人のような振る舞い。
 「今日の私は、魔人公安。この頃流行りの女の子です。それ以上でもそれ以下でもありません」
 変わるわよ? と真顔でポーズを決めるかぐや。
 「いや、意味わかんないですけど…………っていうか、もう許してください……」
 相変わらず行動が読めない。魔人公安というのは警察とは別系統の特別治安組織である。構成員は魔人能力を持つ者で占められており、文字通り少数精鋭の特殊部隊と言える。
 とすれば、前回は任務として希望崎学園に潜入していたのか、それともあの後、魔人公安にスカウトされたのか──────?
 「なになに、知り合いなのっ?」
 最も好奇心旺盛な那雲がソプターを抱えてやって来る。
 「えっと、前に任務で一緒になった人で……」
 「竹取かぐやです」
 第三者の登場に、先程までのとぼけた振る舞いはどこへやら、冷たく澄ました表情で名乗るかぐや。
 「その魔人公安の竹取さんが、一体どうして?」
 鈴木も立ち上がると、一の問いを継ぐように質す。
 「極秘任務です。今のはただの偶然ですが」
 組織の性質上、魔人公安は公に出来ない特殊な事件を扱う事も多いが、それだけに外部に明かせる情報は無い。そもそも、明かす義理も義務も無い。
 たまたま移動中に発生した事件を職務的倫理観に基づいて解決した、と言われればそれ以上追及する言葉は無かった。
 「まぁ、いいんじゃないかしら? 何事も無く片付いた訳だしね」
 理里はのんびりとした口調で締める。かぐやの言動から、これ以上の追及の無益さを悟ったのだろう。
 釈然としない思いはあったが、他の三人も一応は納得して諦めた。
 「かぐやさんの事はいいとして…………」
 床に転がったままの暴漢に、一同は目を向ける。少なくとも行動を起こすまではどう見ても普通のビジネスマンだったのだが。
 突然の暴挙は、まるで気が狂ってしまったのか、或いは──────。
 「ひょっとして、さっき魔人覚醒が起こった…………とか?」
 極稀な例を除けば、魔人は元々は人として生まれる。そしてその成長過程において、突如として異能力に目覚め魔人となる。殆どは思春期に起こるものだが、それとて例外が無いわけではない。
 そして魔人覚醒したばかりの者は大抵、その能力の制御を果たせずに衝動のままに暴走する。そこに本人の意思は存在せず、刑事的責任すら阻却される。いわゆる責任無能力者として扱われるのである。
 つまり、先程かぐやは暴漢をいわゆるハイジャック犯として現行犯逮捕したものの、それが初めての魔人能力の現れであったならば不起訴処分となる。
 この司法的措置が妥当かどうかは常に議論が分かれる所だが、今はそこは問題ではない。
 「可能性は否定できませんね」
 「でも、それなら何かきっかけはあった筈…………」
 覚醒は唐突に起こるものだが、理由もなく起こるものではない。その多くは自己の認識から生まれる。
 例えばそれは、漫画や小説に感化されてのものであったり、ふとした疑問や思考をきっかけにしたものだったり、或いは眼鏡に対する無限の愛だったりもする。
 「飛行機に乗ってテンション上がっちゃった、とか!」
 「うーん…………初めて飛行機に乗った子どもならそれも分かるけど……」
 那雲の仮説にも、一の表情は冴えない。男が出張慣れしているビジネスマンにしか見えないからだ。
 何か、腑に落ちない。
 だが、一の思考はそこで中断させられる。

170minion:2011/11/02(水) 20:58:59
「うぐるるるる…………!」
 不気味な唸り声が、無力化した筈のハイジャック犯から漏れる。白目を剥いたままふらふらと立ち上がると、口元からは涎さえ垂らしていた。
 「『佐賀』ニ…………チカヅクナ……!」
 ごぼごぼ、と得体の知れない音と共に不明瞭ながらも意味のある言葉が紡がれた。
 手錠で拘束されたままの両手を、強引に開く。手首に食い込ませながらも、魔人公安特別製で有る筈の手錠の鎖を引き千切る。
 「この男…………!? もしかして、『佐賀』の支配を受けて!」
 身構える鈴木。だが、一瞬遅かった。
 男は猛然と両手を振りかぶる。
 硬い金属を叩く雷鳴のような轟音。
 飛行機の壁に大きな穴が開き、ジェットコースターの如く激しく揺れる。
 一たちは近くの座席に捕まって耐えるが、しかし──────。 
 他の乗客たちはそうも行かない。とりわけ、体重の軽い子どもなら。
 幼い悲鳴が響く。
 家族連れの中の幼女が衝撃に宙を舞い、裂けた穴から外へ──────。
 その直前。
 「危ないっ!」
 しがみついていた座席から自らの手を離し、落ちゆくその手を掴む。
 反動をつけて仲間の方へと放り投げ、幼女の身を託す。
 「わぁぁぁっ!?」
 一は、代わりにその穴に吸い込まれるようにして滑り落ち、空中へ投げ出された。 
 「鈴木ちゃん! その辺の椅子ひっぺがして下に投げて!」
 誰よりも早く反応した那雲の言葉に、鈴木は返答の間を惜しんで素早く行動を開始する。頑丈に備え付けられた座席だが、魔人である鈴木の怪力の前には抵抗も虚しい。
 べきべきべきぃっ!
 悲鳴のような音と共に台座ごと椅子は引き剥がされ、開いた大穴へ投げ入れられる。
 同時に、それを追うように那雲も飛び降りた。
 プリーツスカートから工具を引き抜くと、文字通り目にも留まらぬ早さで両手が閃く。
 「URYYYYYYYYAAAAAAAAAAA!!」
 落下しながら空中で座席が分解され、瞬く間に別の何かに組み立てられてゆく。それは、精密なる羽ばたき飛行機械、Ornithopter。
 これこそが鏡宮那雲の魔人能力『弱者の飛行機械』だった。那雲の前ではあらゆる部品は分解され、ソプターへと組み立て直される。
 柔らかなシートも、固い台座も、リクライニング機構も、内蔵されたヘッドホンも、全てが等しく次々と新たな生命の一部へと生まれ変わってゆく。
 生まれ落ちたソプターたちは先に落下した一を捕まえ、持ち上げる。一体では非力だが、数体集まれば──────。
 「一ちゃん、げっとだぜー!」
 「僕、ぽけもんなの……?」
 自らもソプターに掴まりながら緩やかに落下し、一に追いついた那雲は満面の笑顔を浮かべた。
 「そうね、捕まえて飼っちゃおうかしら?」
 鈴木を抱えて羽ばたく理里も、上からやってくる。那雲が飛び降りた後、すぐに追ってきてくれたのだろう。
 「勘弁してください…………」
 助かった安堵と困惑で、ふぅ、と溜息。
 だが、それも僅かひととき。
 風が、震えた。
 突然周囲の大気が禍々しさを帯びたかと思いきや、空中の四人を襲う。
 激しい突風、翻弄する嵐。身動きするどころか、呼吸をする事すらままならない。
 「わわわわっ!?」
 「くぅっ!」
 「きゃあぁっ!?」
 「那雲ちゃんっ! 鈴木さんっ! 理里さんっ……!」
 悲鳴も呼び掛けも、全てが荒ぶる暴風にかき消されて。
 伸ばした手は、誰にも届くことはなく。
 一の意識は暗闇に呑み込まれた。





                                 <了>

171minion:2011/11/02(水) 20:59:38
『佐賀探索 〜佐賀を探そう〜 本編・前編』出来ましたー。

いつも通りセッションの再現性とか完全放棄です。無理なんだ……。
三人共に見せ場を作るのは難しい…………活躍してないぞ! って人は
ごめんなさい、次でもう少しがんばります……。

今回はえろいシーンは控えめにしておきました!


次回、「暗黒の秘境『佐賀』奥地3000キロに消えた幻の少女を追え!」に乞うご期待!

172minion:2011/11/09(水) 22:04:24
今一番熱い、日谷創面くん。そのお姉さん、日谷奴子ちゃん。

tp://s1.gazo.cc/up/s1_5349.jpg

このお姉さんならシスコンになっても仕方がない……のか?

通りすがりの切り絵職人が下絵を描いてくれました。シュゲイ!

173日谷創面(SS担当):2011/11/09(水) 22:13:44
>>172
なにこれかわいいい!死ぬ氏のう死んだ!

174minion:2011/11/11(金) 19:28:21
しばらく佐賀の続きは取り掛かれそうにないので、時間稼ぎ。

Aマホ『ダンゲロス・ハルマゲドン開戦』の時のかぐやちゃん。

tp://s1.gazo.cc/up/s1_5511.jpg

やっぱり日本人は黒髪だね! …………あれ、かぐやちゃんそもそも地球人じゃなかったような……?w

またもや通りすがりの切り絵職人が下絵を描いてくれました。シュゲイシュゲイ!

175オツカレー:2011/11/11(金) 19:47:19
おおう……ありがとうございます!ありがとうございます!
minionさんには施しを受けっぱなしで申し訳ないです……

おおう、可愛い……ありがたや、ありがたや……

176オツカレー:2011/11/13(日) 16:51:38
裸繰埜夜見咲 らちか描きました……
p://blog-imgs-31.fc2.com/o/t/s/otsukaworks/dangerous027.jpg

設定資料風……

177minion:2011/11/14(月) 20:45:07
しばらく佐賀の続きは取り掛かれそうにないので、時間稼ぎその2。

Aマホ『佐賀探索 〜佐賀を探そう〜 』より鈴木さん。
凛々しさ控えめ、ろりしさ多め。

tp://s1.gazo.cc/up/s1_5769.jpg

鈴木さんは美少女! 異論は認めない!!

お絵かき妖精さんは鈴木さんが好きみたい。

178稲枝:2011/11/14(月) 20:59:06
>>177
なんて奥ゆかしいお嬢さん!! とても脳筋とは思えない
かわいーーーなああああ ありがとうございます。カチグミ!!

179オツカレー:2011/11/16(水) 22:17:41
戈止権現像(複製品)描きましたー
tp://blog-imgs-31.fc2.com/o/t/s/otsukaworks/dangerous028.jpg

後光をやりすぎた感はあるが反省はしていない。

180オツカレー:2011/11/16(水) 23:32:06
やまいちさんへ
俺の嫁優勝イラストですが、どのようなシチュエーションが良い等の要望はありますか?

181オツカレー:2011/11/18(金) 17:59:07
ダンゲロス俺の嫁優勝者:山一夜三
tp://blog-imgs-31.fc2.com/o/t/s/otsukaworks/dangerous029.jpg

ということで完成しましたー

182かがみ ◆NsGJ9t.qAY:2011/11/18(金) 20:39:50
この夜三画像をレズ画像にする場合、やまいちさんの脳内がどういう状況になるのか教えて欲しい。

183やまいち:2011/11/19(土) 01:06:29
>>182
まずレズ画像じゃなくて百合画像な。間違えんなよ。
そしてここまで直球な百合画像は素直に脳内がユリドルフィンで満たされます。

184やまいち:2011/11/19(土) 01:09:48
>>181
あ、こっちでも改めて!本当にありがとうございます!家宝にします!!
嫁も「この私かわいーなー」とかほざいて喜んでます!!

185稲枝:2011/11/19(土) 12:07:46
ゲーム的な意味は何も無い「魔法のトーフプリンセス・ヘルシー奴子」
tp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=23137979

186オツカレー:2011/11/21(月) 21:13:30
白金虹羽
tp://blog-imgs-31.fc2.com/o/t/s/otsukaworks/dangerous030.jpg

完成しました

187白金:2011/11/21(月) 22:59:44

高校生剣士を作って良かったと素直に思える完璧な一枚です。ありがとうございましたっ

188今日知ろう:2011/11/23(水) 20:57:26
風巻とるね
tp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=23243386

描かなきゃいけない気がした

189あやまだ:2011/11/24(木) 00:03:03
やったー、ハニワっ子だー、やったー!
ありがとうございますっ!!

190仲間同志:2011/11/26(土) 21:31:08
流血少女時の『プロローグ・千坂らちか』にて自キャラを使って頂いた感謝を込めて、
ダンゲロスSSにてSS作成に苦心していた陸猫さんへの応援SSをご本人快諾の元、公開致します。

らちかvs夢追(?)
tp://madromanticist.shisyou.com/home/content/ss035.html

長さの関係でスレに直接貼るのが憚られたのでURLのみ貼っておきます。

中身がダンゲロスSS風の見た目になっているのは、
「らちかと夢追の絡みが見たい」「じゃあ陸猫さんSSダンゲ中だし、そちらの〆切りに合わせて野試合風SS作って応援します」
等のその場のノリで作成したためです。

191仲間同志:2011/11/26(土) 22:08:47
らちかよ目立てage

192サンライズ:2011/11/27(日) 04:38:54
眼鏡っ娘のうちへに遊びに行こう

「兄さんっ…恥ずかしいです…っ」

「じゃあやめるかい?」

「兄さん…昔はこんなに意地悪なこと言わなかったのに…」

白王みずきはベッドの上で兄・みかどの愛撫を受けていた。
その性格にも関わらず、能力ゆえに多くの人に破廉恥な姿を晒してきた彼女だが、
兄に生まれたままの姿を見せるのはこれが初めてであった。
思い返してみると、不思議なことだが幼い頃一緒に風呂に入った記憶も無い。

「兄さん…好きです…愛しています…。」

「僕もだよみずき。君と一つになれるなんて、こんなに嬉しいことは無い。」

みずきも同じ気持ちだった。幾度と無く貞操の危機に遭ってきたが、今日こうして最愛の兄に処女を捧げることが出来る。
みかどの愛撫は首筋から腋の下、ささやかな双丘、脇腹を通り、やがて乙女の秘所へと至る。
そこは既に、「みずのはごろも」を纏えそうな程の潤いを湛えていた。
それを確認するとみかどはみずきの両脚をそっと開かせようとする。

「兄さん…っ」

「どうした?怖いのかい?」

「違うんです…。その…兄さんも…服を脱いで欲しいんです…。」

みずきが既に赤い顔をより赤くしながらそう言うと、みかどは苦笑して自身の派手な服に手をかけた―。

「ハッ…!!」

みずきがベッドで目を覚ましたとき、隣にみかどはいなかった。
というかそもそも最初から寝ていたのはみずき1人、つまりは夢オチである。
しっかりと着たままのパジャマがそれを証明している。

「私…あんな夢を見るなんて…。」

夢には自身の願望が反映されるのだと言う。
であれば、自分は兄との性行為を、と考えてまた顔が赤くなってしまう。
確かに、自分は兄に恋をしているのだけれど…。

「パジャマ…ぐっしょり…早く着替えなきゃダメですね…んっ…」

あんな夢を見たせいなのか、寝汗で濡れたパジャマを不快に感じ、着替えようと立ち上がった際に気づいてしまった。
ショーツの内側にまとわりついた、汗とは明らかに違う粘液の感触。


「みずき…今日はずいぶん長い『お着替え』ね…」

みずきの母は朝食を盛りつけながら独りごちた。TVではニュースキャスターが
各地のウルワシ系列の施設襲撃事件について的はずれな意見を述べている。
みずきは休日だと言うのにいつも通りに早起きして着替えに向かった。普段通りの朝。
小さな違和感があるとすればそのみずきのことだけだった。
「今日は最近出来たお友達の家にお呼ばれなのです。」
なんて言っていたから、お洒落な服にしようと思って悩んでるのかしら、などと考えていた。

降り注ぐシャワーの水を浴び続けて、みずきの火照った体は十分以上に冷えていた。
風邪を引くのではと思われそうだが、みずきはシャワーを止めようとしない。
まるで何かに打ちひしがれて、土砂降りの雨に自ら打たれているようにも見える。

「私…あんな夢を見て…下着を汚して…」

水のしたたるその肢体は、まだ見ぬ兄、いや姉のそれに姉妹だけあってよく似ていた。
肉付きの無い体つき、特にそれが顕著な胸、無毛の恥丘。

「いいんでしょうか、こんなことで…私、兄さんの言う立派な女性になれるんでしょうか…。」

自慰の経験も無いのに敏感なみずきは「お着替え」のたびに疼きを覚えていたし、それで秘所を濡らしてしまうこともあったのだが、
不可抗力的なそれに対して淫夢を見て濡らすというのは一線を超えているように思える。
しかし、今みずきの心を暗くするのは単に性的なことへの羞恥心だけでは無く、もっと根源的なモノが他にあった。
以前からどこかに抱えていた、自分の想いそのものへの罪悪感。近親者との恋愛などあってはいけないという倫理観。
自分は兄を慕うが故に、彼に認められる「立派な女性」を目指しているのだけれど、兄に恋をしている時点で「立派な女性」とは程遠いのでは無いか。
そんなジレンマが、淫夢を見た故の自己嫌悪と相まっていっそう心を締め付ける。
兄への恋を諦めて、単に妹として兄の言う立派な女性を目指せば、矛盾は無くなるのかも知れない。
しかし、そんな理屈と恋心は別問題である。

「兄さん…私どうすればいいんでしょうか…。」

ガラッ

「みずきーっ!風邪引くわよー!」

「お、お母さん!?ヘックシュンッ!」

193サンライズ:2011/11/27(日) 04:53:29
2時間程後、みずきは一家にやってきていた。
一∞はみずきと同じく「ユキ使」トーナメントに出場し、決勝戦に当たって眼鏡を貰ったり、
親身になって励ましてくれたりした恩人であり友人である。

「やあ、よく来たねみずきちゃん。今日はお兄さんの眼鏡かい?よく似合ってるね。」

∞が容姿を褒めるのは眼鏡を掛けている者だけで、しかも褒め方は眼鏡関係しか無い。
しかし、みずきは毎度∞にほめられることを嬉しく感じていたし、見かけは全く変わらないみかどの眼鏡と∞がみずきに贈った眼鏡を
見分けられる∞に感心していた。誰より眼鏡を愛し、眼鏡に愛されし少女というのは確かなようだ。

「ここが僕の部屋さ。」

「…!」

眼鏡の奥のみずきの瞳が大きくなる。∞の部屋は眼鏡に埋めてくされていた。
壁には∞と思えるほどの眼鏡が飾られ、眼鏡っ娘のポスターが貼られ、棚には眼鏡っ娘ばかりの美少女フィギュアが並び、
本棚を埋めるのも眼鏡関係の書籍ばかり―大空翼の部屋がサッカーボールに埋め尽くされるように、∞の部屋がこうなるのは当然のことと言えるだろう。

「す、素敵な部屋ですね!凄く∞さんらしいですよ!」

「そうだろう。僕も気に入ってるんだ。」

いつもは本心の読めない不敵な笑みを浮かべる∞とは思えぬ、澄み切った笑顔であった。
「正直ここまで来ると気持ち悪い」などと口に出そうものなら本当に殺されるかも知れない。
その後、映画「めがね」のDVDを見たり、眼鏡の歴史について語られたり、メガネファッションショーをしたり、
「そんなメガメガ言ってばっかじゃ白王さんも引いちゃうでしょ。」と言ってきた四が眼鏡をかけさせられて三回ほどイカされたりして時を過ごした。

「クシュンッ」

「みずきちゃん、熱があるみたいだね?」

「ふえっ…」

みずきが可愛らしくクシャミをすると、おでこを合わせて∞がそう言った。
「眼鏡サーチ」で彼女の体温が高くなっていることはわかっているのだが、敢えてそうしてみずきの反応を楽しんでいた。

「け、今朝ちょっとシャワーを長く浴びすぎて…その…風邪引いちゃったみたいです。」

普段なら自慰に耽るみずきを想像するところだが、その言い方にどこか影があることに∞は気づいていた。

「じゃあさ…お風呂入っていくかい?」

「おっお風呂ですか?」


「ニ六(ロマエ)くん、今お風呂入れるかな?この子、風邪気味みたいだから。」

「ああ。構わないぞ。ゆっくり温まっていくといい。ちょっと待っていてくれ。」

「あ、ありがとうございます。(固い感じだけど、良い人そうな外人さんです。ていうかいくつなんでしょうか?)」

一ニ六(ニノマエ・テルマエ・ロマエ)。ギリシア彫刻の如き風貌をしたイタリア人の一一族であり、
40代半ばといった印象の気難しそうな顔に反して、希望崎の1年生である。
ファーストネームが長いので、「ロマエ」という愛称で呼ばれている。

浴室の前で待っているとゴボゴボと音がして、その後にニ六がフルーツ牛乳を飲みながら出てきた。

「注文通り風邪に効く温泉を掘った。上がる頃には治っているだろう。」

「ありがとう。入らせてもらうよ。行こう、みずきちゃん。」

「はっ、はい。」

女同士でも恥ずかしいのかしっかりタオルを巻くみずきと全裸に眼鏡の∞が共に風呂場に足を踏み入れると、
みずきはここでもまた驚いた。一家は確かに豪邸だったが、それに比しても風呂場、いや浴場は格段に豪華だった。
中は古代ローマ風の装飾が施された見事な造りで、銭湯ほどの広さがある。
一家は大家族らしいので、これだけ広い方が一緒に入れていいのだろうか。

体を洗い、湯船に浸かる。ニ六の言葉通り、浸かった瞬間に全身に覚えていた軽い筋肉痛が和らいで感じる。
普通温泉の効能というモノは一度入ったくらいで現れはせず、だから湯治客などは数日かけて湯に浸かるのだが、
このお湯のそれは彼の魔人能力でブーストされているようだ。

194ミスターK:2011/11/27(日) 18:52:15
「Aマホダンゲロス 第48回「ミスダンゲロスで上位入賞しよう」 のSSの書きました。良かったら読んでください
tp://www.pixiv.net/novel/show.php?id=641345

195ε:2011/11/27(日) 19:17:12
>>194
やったー!てか、いろいろツッコミどころが多すぎるwwwwww

196オツカレー:2011/11/27(日) 20:35:04
>>194
面白かったですーwでも十萌ちゃんぶっ殺すのはいかがなもんだと思うんだぜw

197minion:2011/11/27(日) 21:29:26
>>193
やったー、眼鏡だー、やったー!

ダンゲロスSS一のエロあざとい子と、ダンゲロスSS一の変態眼鏡っ娘が
一緒にお風呂に入ったら、いったいどうなるんですか──────!?

あと、さらっと流されてますが四ちゃんの扱いがひどすぎるw(褒め言葉)

198サンライズ:2011/12/02(金) 02:45:09
「さっきの外国人のおじさんはどういう方なんですか…?」

「彼は僕の弟だよ。」

「おっ、弟さん?年下なんですか?」

「いや、同い年だけど。」

しれっと言う∞に、みずきはそれ以上何も言わないことにした。四やニ六以外にも、希望崎の一年生に一家の生徒がいることは知っていたし、
一姉弟には何か複雑な事情があるのだろうと察したのである。

「仲…いいんですね…。」

先ほどと同様、どこか影のある言い方だった。

「君たち兄妹だっていいんじゃないか?君だけじゃなく、兄さんだって何年も会っていない君のピンチに駆けつけてくれただろう。」

「兄さんは凄く立派な人です…。でも、私が兄さんを裏切ってるんです。」

「…。」

みずきは兄への秘めたる想いを∞に語った。そして、「立派な女性」であろうとするなら実の兄に恋なんてしてはいけないのでは無いかという悩みも。

「兄さんが私の気持ちを知ったら、軽蔑するんじゃないかって…。兄さんの妹でいる資格も、私には無いんじゃないかって思うんです…。」

優等生のみずきが後ろ暗い恋を涙声で語る様はゾクゾクくるものがあったが、それ以上に∞には言わねばならないことがあった。

「僕はそんなことは思わないな…。」

「えっ」と俯いていた顔を上げたみずきはどきりとした。特殊な加工が施されているのか、湯気の中でも曇らない眼鏡の奥で彼女を見つめる∞の双眸に。
「僕はみかど君の人となりなんて知らないし、だから彼が君の想いを受け入れるかまではわからない。」

「だけどね。妹が、形はどうあれこんなにも自分のことを想ってくれているのに…
それをつまらない道徳に囚われて軽蔑するような兄を、ぼくは兄とは思わないよ。君の兄さんは…そうなのかい?」

「…。」

みずきは思い出していた。小学生の頃、妹を苛めた男子と風紀を破って喧嘩したみかどのことを。
風紀皇帝が一番大事にしていたのは風紀では無く、それによって守るべきモノ。

「ありがとうございます…明良くんのときから、∞さんには教えられてばかりですね。」

涙ぐみながら、∞に抱きつくみずき。そんな彼女を膝立ちになって抱きしめる∞。剥き出しになった豊満な乳房に
美少女が顔を埋めるという、神聖さとエロティシズムの同居した宗教画のごとき光景であった。

「みずきちゃん…やっぱり君は最高だよ…」

「えっ…?」

それまではただみずきの頭や背中を優しく撫でていた∞の両手が、急にワキワキと動き出した。
虚を突かれたみずきは何も出来ずにタオルを剥ぎ取られ、その下の無防備な裸体が顕に―

「またタオル…だと…!?」

ならなかった。剥ぎ取られたタオルの下にはもう1枚のタオルが巻かれていたのである。

「隙を生じぬ二段構え、なのですっ…!」

「みずのはごろも」―タオルは瞬時に水の大きな拳となって突き出され、∞はそれをすんでのところで跳躍して躱した。

「ほうっ…やるじゃないか…」

199サンライズ:2011/12/02(金) 02:50:48
空中で回転し、飛沫をあげて着水する∞。一方、剥ぎ取られて湯に落ち、多量のお湯を含んだ本物のタオルは「みずのはごろも」の能力で、
水そのものの如くにみずきの体に纏われ、再び裸体を隠した。タオルに含まれていた水分は数瞬で両腕を覆い、肌にフィットしたスーツのような袖を形成する。
さらに、湯に浸かった両脚にもお湯を纏い、ニーハイソックスのように腿までが覆われる。
胴に巻いているのがタオルなのでやや間抜けだが、何だかアニメのヒロインのようなコスチュームだ。
本当ならタオルと違って脱げることの無い水着のような衣服を纏いたいが、そんなことをすれば乳首や陰部を擦られる快感に悶えてしまい、致命的な隙になる。

「本物のタオルの下に能力で精製したタオル。そんな用意があるってことは、警戒されていたわけか。傷つくなあ。」

「∞さん、エッチぃですから。」

顔を赤らめてそう言うみずき。事実、∞は今日みずきが風邪を引いていなくても一緒に風呂に誘うつもりだったし、
「泊まって行きなよ」と誘うつもりでもあった。
みずきの裸体を見たいだけでなく、自身の乳房や下腹の茂りもまるで隠そうとせず、むしろ見せつけるかのように仁王立ちしている。
いや実際に見せつけているのだろう。

「ふふっ…まあ、エッチなのは否定しないさ。眼鏡っ娘は性欲も120%マシだからね。
ミドちゃんだってそうだったろう?」

決勝戦の相手で、みずきを大会中ダントツで破廉恥な状態に追い込んだミドの名を出され、
みずきは更に顔を赤らめる。∞はそんなみずきを見てクスリと笑うと
一体どこに隠していたのやらーみずきのそれと同じデザインの眼鏡を手にしていた。

「眼鏡を掛けさせて可愛がってあげるよ。大丈夫、処女も唇もみかどくんに取っておいてあげるさ。
ぼくとは、そのときに備えてちょっとした練習だと思えばいい。」

「おっ…女の人同士でいくらしたって…男の人との練習にはなりませんっ…!」

「そうかな?わからないよ。」

みずきを救い、去っていくみかどを目撃した際、「眼鏡サーチ」によって
彼の体温変化が女性のそれであることに∞は気づいていたが、
それ以上そのことについて示唆するようなことは言わなかった。
みずきにはどういう理由でか隠されているようだが、自分が軽率に明かしていいことでは無いのだろう。
内心ではそのような思慮がありながらも、傍から見ると今の∞はミドと同じような痴女としか見えない。空いた左手をワキワキさせながら、みずきへと距離を詰める。

「ごめんなさい、∞さんっ…!」

みずきが勢い良く右腕を振り上げると、袖が水へと戻り、鞭の如くに∞へ襲いかかる。
メガネ=カタの達人とはいえ、肉体的にそこまで頑強で無い∞がまともに受ければ骨折くらいしかねない。
しかし、彼女の実力ならこれくらい難なく避けられるだろうと思った上での攻撃というより牽制に近いモノであった。
が、∞は迫る水鞭を前に微動だにしない。
左の掌を円を描くようにして回す。すると水鞭は弾かれるというより、その流麗な動きに流され、飛沫となって散った。

「マ・ワ・シ・ウ・ケ……見事な…」

肉体を透明化する魔人にして希望崎の体育教師・ψ南光澄(さいなん・こうちょう)はその流麗な技に息を飲む。

「そんな…」

牽制のつもりが、武器の1つのリーチを削られてしまった。

「みずきちゃん、手加減をしていちゃあぼくには勝てないよ?試合で見せた君の水弾は今よりずっと威力があったと思うけど。」

みずきが本気になれない理由は2つ、1つは∞の身を案じてのこと。
たとえ死んでも回復できる試合ですら相手を気遣うみずきが、
貞操を守るためとはいえ友人相手に本気になれるはずがない。
そしてもう1つは、本気で水弾を放てば、この浴場を恐らく傷つけてしまうこと。
2度の攻撃が水弾による射撃で無く、打撃だったのも躱された際に引き戻せるからであった。
水が大量にある状況はみずきにとっては有利なはずだが、同時に全力を発揮するには不利過ぎる状況でもある

200サンライズ:2011/12/02(金) 02:57:10
「優しいねえ。みずきちゃんは。そんなんじゃぼくにいたずらされちゃうけど、いいの?」

挑発するような笑みを浮かべながら更に距離を詰める∞。確かに、みずきは強能力には不相応に甘い。
年頃は同じでも、∞や救世のような殺人も辞さない者たちのそれに比べれば、彼女の戦いは子供のごっこ遊びと言うべきモノだろう。
が、そんな彼女で無ければ、きっと不動明良の心は救われなかった。今回も彼女は考えていた。友人を傷つけることなく、自身の貞操を守りぬく方法を。

左脚を湯から上げる。水面より下に隠れていた部分はソックスが異常に分厚くなっている。

「エイッ!」

左脚から放たれる湯の散弾。いや、散弾と形容するには水の粒子はあまりに微小で、それはまるで、
というか比喩でもなんでも無く、湯気であった。圧倒的な勢いで空間に広がる大量の湯気。

「…!」

押し寄せる高密度の湯気に∞は呑み込まれる。入浴中も使えるよう特殊加工が施されているはずの∞の眼鏡のレンズも流石に曇った。

「目くらまし…そういうのもあるのか…」

メガネ=カタの使い手は、メガネが使えない状態では身体能力は少なくとも120%低下、
一撃必殺の技量も63%低下する。無論、彼女ほどの使い手であれば低下率はそれどころでは無い。

「ヤアッ!」

更に、みずきは右足で強く湯船の底を蹴った。同時に纏っていた湯を後方に撃ち出し、その反動を乗せて一気に加速する。
水柱を上げて湯気を切り裂き、∞へと一直線に突進するみずき。

「うっ!?」

体当たりを食らわされるかと思った∞だが、みずきは彼女の両肩を掴み、勢いはそのまま湯船から飛び出す。
下になった∞の背中はみずきの右腕に残っていた湯がジェル状になって覆い、濡れたタイルの上に着地してズルズルと滑り、停止する。
床に寝た∞の上に馬乗りになったみずき。まるでみずきが∞を押し倒しているかのような体位、いや体勢であった。

「たまには押し倒されるってのも、悪く無いかな?」

眼鏡の曇りは既に取れているが、そのレンズには眼前に突きつけられた、湯を纏ったみずきの拳が映っている。
やや誇らしげな表情で∞を見下ろすみずき。

「私の…勝ちですね…」

∞の挑発はみずきに大技を撃たせて隙を作り、一気に間合いを詰めて蹂躙することを狙ったモノであった。
みずきが守りに徹したら、∞と言えども彼女を無傷のままもて遊ぶことはほぼ不可能であったろう。
しかし、彼女は今まで通り、あくまで甘い戦法で攻めを選び、それが意表を突いた。

「相変わらず甘いんだね。が、その甘さ嫌いじゃあないぜ。」

「眼鏡フラッシュ」

「眼鏡レーザー」とは違い、収束させない「ちょっと眩しい」程度の発光だが、それで十分だった。
みずきの隙を突いて、タオルの隙間から覗く幼女のような割れ目へと指を走らせる。

「ああっ…!」

敏感なみずきは突然の刺激によがり声を上げ、体を震わせる。

「む、∞さん…私の勝ちだったじゃ無いですか」

「そんなの君が一方的に宣言しただけだろう?そういう方面の甘さはやっぱり直した方がいいんじゃないかな。」

拳に纏わせていた水で攻撃を試みるが、今のみずきにはそれを出来るだけの集中力が無かった。
攻撃以前に、拳に纏わせていることも出来なくなり、「はごろも」からただの水へと戻り、バシャリと音を立てて飛び散った。
そして、∞がタオルの結び目を解くと、はらりと体から離れて落ちた。今のみずきは一切を纏っていない。完全な全裸である。
しかし、その時間は短かった。何故ならさっきの眼鏡を、∞がみずきに掛けさせたから。

201サンライズ:2011/12/02(金) 03:01:55
「ぼくは眼鏡が無い方が可愛いなんて言う輩は死ねばいいと思うけど、小さい胸が可愛いと思うことはあるよ。
大きくは出来ても、小さくはならないしね。」

顕になったみずきの貧乳に、∞が自身の豊かな乳房を押し付ける。互いの先端が触れ合うと、みずきはさらに嬌声を上げ、
桃色の突起は固く尖っていく。

「ダメェ…こんなエッチなことしちゃあ…ダメです…。兄さんに怒られちゃう…。」

「そんなことは無いよ。言ったろう、そんなことはつまらない道徳だって。同性だろうと血のつながりがあろうと。
神様は何も禁止なんかしてないのさ。」

「想像してご覧、みずきちゃん。この指は最愛の兄さんの指、この舌は兄さんの舌だって。
愛する人の体を求めることがおかしくってたまるものか。」

「兄さん…?兄さん…!」

みずきの眼鏡がキラリと光ったように見えた。∞はみずきの乳首を舌で、秘部を指で愛撫する。
やはりみずきの感度は相当なモノのようで、泉のごとくにこんこんと愛液が湧き出してくる。

「∞さん!…兄さん…!」

胸を愛撫する∞の頭をぎゅっと胸に押し付けるみずき。

「彼奴め…天稟がありおる」

ψ南は逸物を扱きながら独りごちた。ただ風呂を覗くだけのつもりが、目の前でレズプレイを始められ、
思わず襲いかかりそうになった彼だが、みずきの背中越しに∞が凄まじい眼光を向けたため、
刃牙に睨まれたスペックの如くその場で硬直した。

今のみずきは、明らかに自分から快楽を求めていた。みずきはエッチな女の子だった。能力がエッチなのではない。
彼女自身がエッチだから、能力もそうなってしまったに違いない。彼女がいくらコンプレックスに感じようと、
魔人能力は彼女の本性の発露に他ならないのである。

「みずきちゃん…気持ちいいかい?」

「ハイ、気持ち…いいです…!」

顔を真赤にし、涙声でそう言うみずきを見ているだけで、∞は自分がどんどん昂ぶっていくのを感じる。
今のみずきに愛撫を期待することは出来ないので、自分で股間に手を伸ばすと、茂みはお湯以外の液体でしとどに濡れている。

「みずきちゃんはやっぱり最高だよ…フフッ…あんっ」

どんどん高みへと登り詰めていく両者だが、先に達したのはやはりみずきであった。
頭が真っ白になり、ビクンビクンと痙攣した後、ぐったりとその場に倒れた。遅れて数秒後、∞もまた自らの指で絶頂を感じる。

「(エッチってこういうことなんですね…。兄さん、私…。)」

今はまだ意識がぼうっとしていて判断がついていないが、冷静さを取り戻したら死ぬほど恥ずかしがるだろう。
しかしそれももう数分先のこと…のはずだった。

ショロロロロロロロ……

「えっ…お、おしっ…」

絶頂により弛緩しきった括約筋では、急激にその出口へと流れこむ尿を止めることは出来ない。
みずきが失禁した黄金水はタイルに流れ出し、やがて水たまりとなった。

「あっ…ああ、わ、私…おしっこ漏らして…」

股間を中心にタイルに出来た黄色い水たまりに手をついて、みずきは呆然としていた。
熱に浮かされた頭は急速に冷えてゆき、先ほどまでの∞との行為、
そしてたった今やってしまった粗相への猛烈な羞恥の感情が沸き起こる。

「おやおや…みずきちゃん。君はどこまで素晴らしいんだい?」

「えっ…?」


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