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【SS】魔境探索

1GM★:2008/01/28(月) 22:51:38

プロローグ


淡い部屋の魔導灯が豪奢な部屋を照らし、三つの人影を浮かび上がらせる。
月に踊る天使亭地下の魔方陣から転移可能なこの部屋は、"月の魔女"月宮かぐやの寝室だった。

「ん……それで、ボク達は……」
「ふふ、"姉妹"が揃うようにしてくれるなんて、かぐやちゃんの計らいに感謝ね」
「少し難しい場所だもの。息の合う相手を、ね」
三者共に全裸のまま、十人以上は寝転がれるようなサイズのベッドで戯れ……甘く囁くように言葉を紡ぐ。

「くぅん――。かぐやさんの……言うこと…だから……」
「パティ、健気で可愛いわ♪」
「くすくす。本当に、ね。レイナ」
二人が一人に覆いかぶさり、またくぐもった声と吐息。

魔女は思う。
この二人と、もう一人の能力者ならばきっと与えられた任務を果たすだろう、と。
運命操作も周囲の状況を整えれば対象不可存在に対しても影響を及ぼすことが出来る。
この"月の魔女"かぐやであっても、純戦闘能力はSSS級を僅かに超える程度に過ぎない。
ある種のルナに対しては絶対的な能力を持ち合わせているが相性の悪い相手には梃子摺る。
――それだけに、この麗しく高い戦闘能力を持つ"姉妹"達の協力は重要だった。
彼女達に依頼したモノは代わりが利く。しかし、彼女達を頼ることによって生まれる運命は唯一の存在。

「愛してるわ。パティ、レイナ」
「――ぁ、うれしい……よぉ」
「その言葉が、一番の報酬ね♪」
嘘ではない。
何度か"殺した"事もあるこの二人を、かぐやは心底愛していた。
彼女達がいなければ、この世界の在り方を変えよう等とは思わなかっただろう。
柔らかな身体を楽しみながら、かぐやは微笑む。


「かぐやさんにとって最善の未来を……きっと」

2GM★:2008/01/28(月) 22:55:49

◆ ◆ ◆

カイゼルードから魔境ワースティタースに向かう街道。
対魔族用戦車の通過を用意に出来るようにと、辺境にしては広い範囲で大規模な舗装が施されている。
その街道に――三人の美女が並んで歩いていた。

「確かに、私達三姉妹を一緒に使ってくれた"月の魔女"には感謝しなければならないな」
黒髪ロング。癖一つない髪が腰の辺りまである白衣の美女――ナトセがポツリと言う。
「ふふ、本当に。パティったら喜んじゃって仕方なかったのよ」
「あっ、お姉様、それは秘密だって言ったのに!」
そんなナトセの言葉に、銀髪の美しいエルフ――レイナと、蒼髪童顔の女剣士――パティがじゃれあいながら答える。
「私も嬉しい。パティはランファルとに来ても、首席戦技教官と近衛騎士団長とばかり一緒だったからな。
彼女達とナニをしていたか……私は全部知っているのだぞ。まったく……」

ぐにゅり。
ナトセの掌がパティの胸に伸びて、メロンのような柔肉を掴んだまま引き寄せる。
「ゃぅ!!だ、だって……。修行とかみんなの訓練みなきゃ……」
「ほほう。パティがどんな修行と訓練をしていたか、ここでレイナに話してやろう」
「そ、それは……ナトセちゃ……。だめだよぉ」
「ナニがダメなんだ?」
意地悪な笑みのまま、ナトセはパティといちゃつき始める。
「ふふふ、ナトセはパティが他の子と"遊んで"いて寂しかったのよね」
そんな二人を止めようともせず、レイナはナトセの耳に触れる程唇を近づけて囁く。
「う、それは――パティは誰にでも懐きすぎだ。だから、首席戦技教官にあんな……」
「やぁ――そこ、はぁ」
ナトセの手が服まで潜り込んで、胸に触れている為かパティはもう言葉すら言えない状態になっている。
だが、レイナは全く気にせず、からかうように言葉を重ねる。
「あんな?――続きが気になるわ♪やっぱり"月の傭兵"へ出向して来たセイちゃんと……?」
「それだけでは無いぞ、騎士団全員。ん?……ちょっと待て。レイナ、何故首席戦技教官に対しそんな親しげな呼び方を?」
「さーぁ?どうしてかしら?」

ナトセが事情を悟るのに数秒の間、沈黙が流れる。

「――くぅ!やはりあの人は危険だ!!」
パティの感触を掌で確かめ、柔らかく楽しみつつナトセはレイナにジト目を向ける、が。
「そんなコトしてるナトセが言っても説得力無いでしょ?それに、何となく似てない?ナトセとセイちゃん」
「っ!……そんなことがある訳無い」
一瞬激昂しかけて、慌てて冷静さを装う。その間もパティの胸からは手を離さないところがさすがというべきだった。

3GM★:2008/01/28(月) 22:59:27

「ふぁぁ、二人ともぉ。……あぅ、んっ。もう少しで魔境なんだから警戒しよーよ――こんなことしてる場合じゃないのにっ」
ぐったりと、ナトセにされるがままになっていたパティが息も絶え絶えに文句を言う。
それでも、ナトセが微妙に掌を動かすたびに声が途切れるので、迫力は皆無だった。
「ねぇ?パティ。ナトセと私、二人で周辺探査をしているのよ?
どんなステルス能力を持っていたとしても。近づけばすぐ解るわ。安心してナトセに愛されていて大丈夫よ」
と、パティのすべすべの頬を細い指でなぞり、レイナが笑う。
「少し静か過ぎる位だとは思うが……。魔境中央部に近づくにつれ反応を補足するだろうな。それまでは、パティを問い詰めお仕置きしておきたい」
ナトセも更にパティへ近づき、甘く脅す。
「ボク、何も悪いことはして――きゃぅぅっ!」
「ほほう。反省の色無しだな」
静かな怒りと嗜虐を湛えてナトセは唇を歪めて笑う。
そこへ、クスクスと笑いながらレイナが助け舟を出した。
「ナトセだって、ラトナに来る時は、私達を放っておいて雪君の処ばかりじゃない?」
「うっ、それは……だな。コホン」
「そ、そうだよっ。ナトセちゃんもずるいっ」
この時とばかり、パティも攻勢に転じるものの……。
「あら?そういうパティも雪君と、とても仲良くしてなかったかしら?」
「――ほう、そうなのか」
再びナトセの瞳がすっと物騒な気配を湛えだすのをパティはひきつり笑いしながら見つめた。

――その時。
「はい、遊びはおしまいね」
レイナがパンと掌を打ち合わせて、街道の先、広大な荒野……魔境ワースティタースへ視線を移す。
「そうだな。かなり先ではあるが、私達が目標としている地点に魔族の反応を捉えた。
全く気配を隠そうとしない処をみると、向こうもこちらに気づいている可能性もある」
「……うぅ〜。そういう真面目なコトは、いい加減ボクの胸から手を離していって欲しいよ」
ぐにゅぐにゅとナトセの掌は、相変わらずパティの豊かな胸部をまさぐっているのだ。
それは真面目な顔で探査結果を話しているときも変わらなかった。
「名残惜しくて、つい」
「そーいう処もちょっとセイちゃんに似てる」
「くすくす、確かにね」
「……今後、控える」
ぷいっとそっぽを向いたナトセは、ぶっきらぼうにそう呟いてパティを話すと。
一つ、息を吸い込み――魔族の反応を更に探るべく能力を開放した。
反応は三体。丁度、こちらと同じ人数だった。

4GM★:2008/02/08(金) 07:29:51

◆ ◆ ◆

作物も育たない岩場、砂漠。
何も無い荒地が延々と続く地獄のような場所。
――それが魔境ワースティータス。魔族の住まう地。
少なくとも、人間の社会ではそう流布されていた。

だが、目の前に広がるのは。

「最深部がこんなに豊かな森だったなんて……信じられないわ」
「信じられないといえば、ここに至るまで全く魔族もその眷属も現れなかったことも、だな」
「うん。――ボク達に近づく気配すら無かった」
レイナ、ナトセ、パティの三人は新緑の森の入り口を前に立ち尽くしていた。
いくつかの魔術的防御機能によって隠蔽されていたらしいその森は、魔境とは思えない安らかな佇まいを見せていた。

――"月の魔女"が三人に探索を依頼した理由は二つ。
魔境の最深部の様子を監査すること。そして二つ目は……その中央にある魔素の結晶を手に入れることだった。

「ふふ、ここまで無事にこれたという事は歓迎されてるってことね♪」
レイナが周囲に探査用の結界を展開しながら楽しげに言う。
美しく艶やかな相貌にちらりと笑みを浮かべ、唇を舐める。
(お姉様が緊張してる……)
パティには解る。いつも余裕と自信に満ちた態度を崩さないレイナが僅かではあるものの堅くなっていることに。
「誘い込まれている、とも言うがな」
ナトセの方はあからさまに警戒の表情を露にし、すっと瞳を細めている。
二人の反応の理由、それは……魔境の入り口から常に感じていた気配に近づいていることからだった。
レイナのような魔術もナトセのような探査能力も持たないパティでさえ、痛いほどに感じている。

魔族やその眷属達が三人に近づかなかった理由も恐らくは、その気配のせいだろう。
露骨に誘われているのだ。

7GM★:2008/02/09(土) 23:26:17

「ボク達を襲うならいつでも出来た筈だから、きっと話し合いでなんとかなるよっ」
希望的観測を口にしてみると、二人の義姉はクスリと笑ってパティを抱き寄せ撫でる。
「そうね。魔族も悪い人ばかりじゃない、だったかしら?ふふ」
「真魔と戦ったパティの言葉はなかなか説得力があるぞ」
末っ子に甘い二人の姉は、パティの言葉に同意しながら――。
「あぅ、どさくさに紛れて……胸触らないでよぉ」
「あら?魔境の入り口では、ナトセといちゃいちゃしていたでしょう?――次は私の番」
主にレイナが、パティのたっぷりとした膨らみを味わうように揉みしだいている。
捏ね上げる手つきは次第に情熱的になり、パティの羞恥心を煽る。
「全く。もう少し緊張感をもったらどうだ?敵は目の前と言っても良い状況だぞ?」
と言っているナトセも、パティの太ももをつつっと指でなぞっているのだから説得力が無い。

「くぅ……ん。だめだってばぁ――お仕事終わったら……」
抵抗する声に甘さが混じらせながら、パティはとろんとした瞳でいやいやをする。
性質が悪いことに、この二人の義姉はパティにイタズラをしながらきっちりと森の中の詳細探査を行っているのだ。
それが解っているからこそ、殺気には敏感でも索敵能力は二人に劣るパティは怒れない。
「もうちょっと、この柔らかい感触を楽しんでおきたいのだけれど。ざーんねん、もう探査終了してしまったわ」
ツンッと尖った先端を指先で摘み、弄びながらレイナは甘く囁く。
「こちらも"虫"による視覚情報の分析終了だ。誘っている相手は姿を隠そうともしていない」
既に太ももとは言えない場所を指で楽しんでいたナトセも冷静な口調で報告する。
二人共、しっかり仕事をしながらパティをからかい、愛しんでいるのだ。

「ほら。パティ、立てる?――仕方の無い子ね」
ぐにゅぅぅ。
脱力したパティをレイナが"胸を掴んだ"まま引き上げる。
「きゃぅぅっ。そ、れ、やぁ」
そこへ――。
「まったくだ。私達が偵察をしている間にそんなにだらけていてはダメだぞ?」
ナトセも楽しそうに"足の間"に入れた掌で支えるようにする。
「――っ!ふやぁ……ふたりともぉ」」
完全に甘えた声がパティから漏れた……その時。

8GM★:2008/02/09(土) 23:27:41

「もう見てらんない!!!!――こっっっの、ヘンタイ!!」
中空から、可愛らしい声が罵ってきた。

見上げると、そこには三つの人影。
一人は古代ファルトゥース時代を思わせる幾つものフリルが飾る漆黒のドレスを着た長髪の少女。
もう一人は、同じく黒衣のドレスに身を包んだセミロングの優しげな少女。
その相貌は全く同じ造作で、一目で双子と解る。
最後の一人は、パティの記憶にある人物だった。
紅の翼を描いた文様が鮮やかに刺繍されたスーツに、肩にすら届かない短髪。
凛とした顔立ちの少女。

以前、セイと共に出会った真魔の一人ロセアムだった。

双子のうち一人は怒ったようにレイナ達を睨み付け、
もう一人、セミロングの少女は真っ赤になって目を逸らしている。
ロセアムはパティを見つめ、やはり頬を染めている。
どうやら、姉妹の戯れは、彼女達にとってかなり刺激的な光景だったらしい。

「うふふ。覗くだけじゃなくてここまで来てもらえるなんて嬉しいわ」
レイナがパティの胸から手を離さないまま妖艶に笑う。
「しかし――先ほど映像で確認はしたが……美人揃いだな」
感心したように、ナトセは的外れな感想を漏らす。
突然現れた事よりも、そちらが重要らしい。――しかも、パティの足の間にあてがった掌もそのままだ。

「ぅぅ〜。恥ずかしいよぉ。お姉様もナトセちゃんも真面目にやろーよ」
恥ずかしさのあまり涙目になりながら、パティが再び抗議の声をあげる。
特に知り合いでもあるロセアムの視線が痛い。

「全く同意だわ。何、人の庭で破廉恥な真似してるのよ!さっさと離れなさい!」
そんなパティに助け舟をだしたのは、最初に罵声をあびせてきた双子の一人だった。
怒りのあまりか、周囲に隠し切れない魔力渦が幾重にも現れ始めている。

「あら、これは姉妹のスキンシップよ」
そんな怒りをレイナは余裕で受け流しつつ笑う。
「そちらから一気に転移してきてくれるとは親切だな」
ナトセの言葉で、彼らが魔術によって一気に飛んできたことが解る。
それは――。
「ぅぅ、つまりボクをダシにして挑発……したってこと?」
パティはジト目で二人の姉を睨んでやる。
向こうもこちらを観察していることを察知して、わざとイタズラシーンを見せ付けていたらしい。

9GM★:2008/02/21(木) 07:55:38

向こうも、なんらかの手段でパティ達を探査していたのだろう。
――突然いちゃつき始めた為、我慢できずに転移してきたようだった。
「……はぅ〜。ロセちゃん、助かったよっ。ええとそっちの二人はお友達かな?」
やっと義姉二人の手が緩んだのを確かめると、パティは慌てて振り解き一歩前に出る。
そして、ロセアムに真っ赤な顔を向け、何でも無かったように慌てて挨拶する。

「ええと。同僚かな?」
余程免疫が無いのか、パティと同じように頬を染めているロセアムが瞳を逸らしたまま頷いて応える。
時々、ちらりとパティの方を見つめる時もあるものの、どうしても胸に視線がいってしまうらしく、
その度に湯気をださんばかりになってしまっている。
「何、こいつ。なんで真魔のアンタとそんな親しげな訳?」
「――私も聞きたいです」
長髪の少女がジロリとロセアムを睨みつけると。
隣のセミロングの少女も、妙に冷たい声で追随する。

「ふふふ、こんな美少年と知り合いなんて。パティも隅に置けないわね」
ふわりとパティを軽く抱きしめたレイナが、耳を甘噛みせんばかりに唇を寄せ囁くと、
「前にセイ・エイリン首席戦技教官との合同任務時に遭遇したらしいな――確か、女性……だとか」
ロセアムを見つめるナトセの瞳に興味深そうな光が宿る。

「――え、ええと。ははっ……。その――ほら、ステルラ、ルーア!彼らに用件があるんだよね?
僕がパティと知り合いなのは前に話した通りだから、別に……」
しどろもどろといった風情でロセアムが双子にあわあわと言い訳する。
「アンタも……あーいうことシたんじゃないでしょうね?」
「っっ!そうなの?」
「してないっ!」
激昂した声と、妙に怖い冷たい声が再び被ると、ロセアムは紅くなったままぶんぶんっと首を振る。
確かに、義姉達の"挑発"は最大限の効果をあげているようだ。

「面白い子達ねぇ。ふふふ、確かにパティの言うとおり悪い子ばかりでもないみたい」
「話し合いが通じると、助かるな」
義姉達が三人の真魔を眺め、艶やかな笑みを浮かべているのを見てパティは心の中でため息をつく。
(お姉様もナトセちゃんも、やりすぎだよ〜)

10GM★:2008/02/21(木) 07:57:43

「それで。私達に――用があるのよね?」
くすくす笑いながらレイナがやっと話を前に進める。
そう、真魔達がワースティータスで気配も隠さず、眷属達に攻撃もさせずにただ待ち受けていたのは、
パティ達を自らの地に引き込んだ上で、交渉をする為だろう。姉妹間の破廉恥な行為に文句を言う為だけの訳が無い。
(うぅぅ、恥ずかしいよぉ――)
そんな緊迫した状況だったにも関わらず、イタズラされて蕩けている場所を目撃されたという事実に、パティは顔から火を噴きそうになる。
「用件に関しては、推測できなくも無い。何らかの条件提示を行うつもりだろう」
パティとは違い、全く恥ずかしがることなく何事も無かったかのようにナトセがレイナの言葉に補足を加える。
(ナトセちゃんって、こーいう処、やっぱりセイちゃんに似てるよね)
今、ここにはいない、パティに"よくイタズラをする"一人を思い浮かべ小さく笑う。
きっとそれを言ったら、むっとして否定するに違いない。

「そ、そう!――アンタ達が本当に実力があるかどうか、試させてもらうのよ!何脱線してんの!」
我に返ったように長髪の少女――ステルラがパティ達に指をつきつけて宣言するように言う。
「脱線していたのは、ステルラだと思うけど……」
ロセアムが脱力しながらも突っ込むが、ステルラはまるで気にすることなく腰に手をあてて偉そうに睥睨している。

「実力を試す?――それなら、月の傭兵というだけで充分だと思うわ」
誇りと余裕に満ちた表情で、レイナが応える。
確かに"月の傭兵"は美女ばかり選ばれていると陰口を叩かれる事は多いが、実力に疑問を挟む者がいないも事実だった。
「ああ、成る程。魔女がらみという事は……ふむ。恐らく、この行動は彼女達の独断――かな?いや、そのステルラと呼ばれている女の子のか」
ナトセがちらりと三人を見て断言する。
「なっ!!」
「読まれているね」
「……だから止めようって言ったのに」
ステルラ、ロセアム、ルーアの順にナトセの言葉へ反応する。どうやら図星だったらしい。

「ええと、つまり。真魔のリーダーさんは、かぐやさん絡みだから、ボク達のワースティータス通行と魔素採取を黙認するつもりだったけど、
ステルラちゃんはボク達の実力を見たくて、他の二人を誘って待っていたということなのかな?」
「ううっ!」
パティの言葉が更に的を射ていたのか、それを聞いたステルラはぐっと身体を仰け反らせて動揺を見せる。

11GM★:2008/02/21(木) 07:59:24

「うるさーーーいっ!何、アタシの事をちゃん付けで呼んでるのよ!誰が許可したっていうの?!」
ぶんぶんと小さな拳を振ってステルラが可愛らしい声で喚く。
が、罵っているにも関わらず、その声と可憐な容姿でこどもがワガママを言っているような風情でどうにも和んだ雰囲気になる。
「う、うん。ごめん。えと――可愛くて、つい……じゃなかった。そ、そう!ボク達の実力を見るんだよねっ」
パティは、うっかりと本音を言いかけ、火に油を注ぐ寸前で話題を軌道修正する。
このままでは延々と漫才みたいな掛け合いを続けることになりそうだ、と。
周りを見ると、レイナとナトセは笑いを堪え、ロセアムとルーアは困ったような表情で二人を眺めている。

「パティの実力なら僕が確認したし、他の二人も探知能力からしてずば抜けている。もう必要ないと思うよ」
仲間だからだろうか、初めてパティ達と会った時とは違う砕けた口調でロセアムがステルラを諭す。
「そりゃー。このエロ娘と"仲良く"なってるロセからすればそーでしょーけど。ははーん、あの胸でたらしこまれたんだ?」
正論が気に喰わなかったのか、ステルラは妙に絡むような言い方でロセアムを睨む。

途端。
突然、周囲の空気が凍りついた。
――ステルラの隣にいたルーアが、その言葉を聞いた途端、奇妙な殺気を纏い始めたのだ。
「ロセ……さん。それ、本当に?」
今までの穏やかで優しげな瞳から一転、炎を宿しながらも冷たい瞳でロセアムとパティの二人を見つめている。
「え?……パティは嫌いじゃないけど……ステルラが言うような事は……」
何故、ルーアがそんな反応するかが解らないのか、ロセアムはオロオロと回りに助けを求めるように視線を泳がせる。
そして、一瞬だけではあるものの、パティの深い谷間を凝視してしまいポッと頬を赤らめた。
「あっ、ボクもロセちゃん好きだよっ」
対するパティも、急激な空気の変化に違和感を感じながらも、ロセアムの言葉と態度が嬉しくてついにっこりと笑って彼女を見つめてしまう。

「――姉さん。私が"試して"いいよね?」
黒いオーラが立ち昇るような声で、ルーアがステルラを見つめる。
「ひっ!?……そ、そうね。い、いいわよ、もちろん」
その迫力にたじろいで、コクンコクンとステルラが頷く。
「パティさん、でしたよね。私のお相手お願いできますか?――手加減はお互い無しにしましょう。しんじゃっても……恨みっこなしですよ?」
可憐な仕草でルーアは笑顔を見せる……しかし瞳は笑っていない。
「あ、あはは。ええと、お姉様、ナトセちゃん……ボクどうしたら?」
「ふふふ、モテルわねぇ」
「自業自得だな」

かくして。
――パティは再び真魔と戦うこととなった。

12GM★:2008/03/07(金) 18:40:09

◆ ◆ ◆

魔境と言われるには不釣合いな豊かな森を眼前に、真魔と向き合う。
既に、他の真魔も義姉達も楽しそうな様子で遠巻きに眺めている有様だった。
一人、殺意をむき出しにしているが目の前の可憐な少女――ルーアだった。

「え、ええと。ボクは別にその……ロセちゃんとはまだ……」
「――"まだ"?」
慌てて言い訳をしようとしたパティだったが、再び地雷を踏んだようでルーアから漂う圧力が更に増してしまった。
ルーアは静かに右腕を水平に持ち上げる。途端、ふんわりとお嬢様然としたワンピースには似合わない、
黒色の鋼で構成された長大な魔導機銃が転移して掌に収まる。
その銃身は――彼女の細い腕よりも太く、醸し出す圧倒的な禍々しさは各国軍隊で使用される公式魔導機銃とは比べ物にならない。
どう考えても片手で扱うものでは無いにも関わらず、ルーアは軽々と持ち上げパティに向けた。

「うわわっっ」
爆風と蒼い光を残し――パティはその場から瞬時に消え去る。
ガガガガガガガガガガッ!!
銃撃が数十発、パティのいた場所に打ち付けられる。
ごっそりと地面にクレーターを刻むようなそれは、迂闊に一発浴びただけで致命傷に至るような威力を湛えている。
さすがに命の危機を感じたパティは、一瞬で異能"ブルー・ブレード"を発動させ、身体能力を爆発的に上昇させ、ルーアの周囲を旋回する。
(今のはびっくりしたけど、距離は詰められた。ボクの優位に……)
愛刀――剣竜――の柄に手をかけたままパティは一気に居合いで決めようとルーアを見つめる。
「……死んじゃえ」
ルーアの唇がそう言葉を紡ぐと、突如姿が消えた。残るは高速で発動した魔方陣。
「っ!?転移!」
高速移動を主としたパティにとって一番厄介なのが召喚術を利用した転移魔術だった。
通常の魔術であれば転移速度は低い。しかし――召喚術応用での転移速度は高速で展開可能。
それはパティに補足出来ない距離まで間合いをとられてしまう事を意味する。
遠距離攻撃を得意とする魔術師相手だとかなり厄介な戦術だが、それ以上に相性が悪いのは……。

13GM★:2008/03/07(金) 18:41:51

「さようなら……パティさん」
パティの頭の上、空から"片手"で軽々と対物魔導機銃を扱いながら、ルーアがパティへ照準を合わせ言う。
そして……引き金を引いた。
マズルフラッシュが輝き、耳を劈くような轟音が響き渡る。
「――くっ!!」
正確無比な精度で、膨大な魔力の塊がパティに迫る。
それを冷静に見つめて、パティは地を蹴った。――前へ。
飛び交う銃弾を紙一重で避け、刀で無駄なく弾く。弾の周囲に発生する衝撃波が肌を傷つけ痛みを伝えるが、精神力で持ちこたえる。
神速の移動を実現しながら、綺麗に回旋して、ルーアに近づく。
そして――。

「はぁぁぁっ!蒼天神撃流――神空気斬!!」
魔導機銃目掛けての居合い。刃の間合いに入らずとも膨大な剣気を圧縮させ、威力を遠く離れた相手に届かせる技。
その威力は、弾道上にある魔力弾さえ切り裂き、ルーアに迫るほど。
しかし――パティの剣気は空を切り裂き、空へ消えていった。
ルーアがいた場所には彼女の残像と……魔方陣のみ、先手を打って転移していたのだ。

「ここですよ」
上品な声が"地上"から。パティが見下ろす先には魔導機銃を構えたルーアの姿。
「しまっ……」
技を放った直後。地上よりずっと動きがとり難い中空。この条件下で対空砲撃可能な敵に下をとられたのだ。
今のパティは完全な"的"だった。
いくら実戦において高い適応性と豊かな経験を積んでいるとは言え、転移術を駆使する魔導機銃使いというレアな相手は初めて。
らしくも無く、後手後手を踏まされている。
(うわ、この状態を脱しないと、ボク――確実に死んじゃうよね……)
元々パティは高速戦闘を得意とするだけあって、回避能力は高いものの闘気や装備の装甲は厚いとは言えない。
真魔であるルーアが放つ規格外の魔力塊を受ければ、かなりのダメージは免れない。

14GM★:2008/03/07(金) 18:43:36

マズルフラッシュが再び輝く。
一秒にも満たない瞬間にパティがとった行動は――。
(一か八か!ううん、絶対に成功させて見せる!お義姉達がみてるのに無様な闘いできないもんね)
身体操術によって「筋力」を極限まで高めることだった。

数十発もの弾丸が迫り来る中、"初弾"だけをパティはその精度の高い瞳で見つめ続ける。
威力、速度、弾道。それらを自らの経験と感覚だけで判断し、強化された筋力で刀を振るう。
ギィィィィィン!!
刃と魔弾が衝突する音が響く。
弾丸を弾くのではなく"受け止め"、その力を自らの身体に伝える。
途端、パティの姿が残像を残してかき消えた。残像を貫き十数発の弾丸が空を駆け抜けてゆく。

(せ、成功……した〜)
地面に小さなクレーターを作り着地したパティは心の中でほっと息をつく。
――パティは、ルーアの放った初弾の威力を反動として利用し、空中での超高速移動の基点としたのだ。
その結果、通常レベルでさえ神速の身体移動速度を誇るパティの動きは、魔弾の威力をも利用し、死の雨から一瞬で逃れることが可能な加速を得た。
一歩間違えれば蜂の巣になっていたであろう危険な橋だったが、パティは見事に渡りきり、完全な劣勢から生還を果たしたのだった。

そして――すぐさま地を蹴る。

「くっ!?」
「させないよっ!」
パティの"返し"を予測出来なかったルーアは慌てて転移しようとするが――遅い。
眼前まで迫ったパティに反応する為、術式を解き、銃身で刃をガードする。
キィン!っと澄んだ音を立てて火花が散った。
(ルーアちゃん、白兵戦も結構できる……でも、この距離はボクの――)
すぐさま、パティは切り返しての連続攻撃。威力を抑え速度を重視して、高速転移の隙を与えない。
「邪魔です!」
ルーアの左手が高速で動き、一瞬で手にした短銃を抜き撃つ。
「はっ!」
パティもまたそれを刀の柄で受け、弾き、間合いを開かせない。
――凄まじく高度な駆け引きと戦闘技術の鍔迫り合いが繰り広げられる。

15GM★:2008/03/25(火) 01:38:14

「私が"覚醒"すれば、貴女なんて――」
ルーアの黒く潤んだ瞳が、突如、真紅に染まる。
同時に、パティへの圧力が急激に増し始めた。殺気の色が変わるようなイメージがパティの脳裏をよぎった。
(な、に?これ……ルーアちゃんの異能?何か違う気がする……)
じりじりと高まる危機感にパティの身体が反応する直前。

「そこまで!!」
「ふふ、このくらいで、ね」
「こーら!ルーア!」
「――困ったものだ」
パティとルーアを引き離すようにロセアム、レイナ、ステルラ、ナトセが二人の周囲に集まる。
白兵戦を得意としているロセアムは一気に二人の間に入って、パティの刀、ルーアの銃を止めている。

「え、ええっと」
「邪魔、しないで」
戸惑うパティに、まだ殺意の収まらないルーア。
しかし、パティを守るようにしてレイナ、ナトセが寄り添っており、中央にはロセアム。
ルーアの傍にはステルラが制止するように肩に手を置いている。
この状況で戦闘を続行するのは不可能に近かった。

「あ、あはは、引き分け、だね?」
戦闘のことならば後ろには引かないタイプのパティだったが、ルーアの瞳に宿る殺意の根源を感じて一歩引いてしまう。
こういう形の"嫉妬"には縁が無い為、妙に罪悪感を感じしまうのだ。
(ボク、まだロセちゃんに何にもシてないのにっ。あぅ、まだっていうのがダメなんだっけ)
そんな事を思いながら、引きつり笑いを浮かべてしまうパティに……。

「お疲れ様、パティ。がんばったわね♪」
ちゅ。
レイナが労いの言葉と共にパティの唇を当たり前のように奪う
不意打ちに驚き、パティの唇が開くと、舌が滑り込み――接吻は、一瞬で深くイヤラシイものに変わる。
「ふぁ、ちゅ……やぁ、ボク……」
「む、ずるいぞ、レイナ。次は私の番だからな」
そんな二人を羨ましそうに眺めてナトセが抗議する。

16GM★:2008/03/25(火) 01:40:45

「なっ……こ、こらぁぁ!」
「………あぅ、キス……」
突然の行為に、ステルラが声を張り上げて怒り、ルーアの瞳は、先程の殺意の赤から通常の黒に戻り……真っ赤になって、それでも興味津々というように見つめている。
ロセアムは――何も言えず、横を向いている。ただ、耳朶は紅く染まっていた。

「ちゅ……ぅん。ふふ、だって、合格でしょう?
姉妹が頑張ってよい成果がでたのだから、これくらいのスキンシップは当たり前よ」
エルフらしからぬ豊かな胸をつんと反らして、レイナは堂々と言う。
その価値観を示しているかのように、レイナの後方では、ナトセがパティの唇を味わっている。
ついでに、そのたっぷりとした乳房を掌で歪ませて楽しんでいた。
(やぁ、ボク……今度は、こんな近くでみられちゃってるよぉ……)
先程の戦闘の余韻覚めやらぬ興奮状態で、刺激されている為、もう抵抗すら出来ずにパティはされるがままになっていた。
既にパティの思考は甘い色に染められ、異能を使った後の疲労と相まって意識朦朧となり始めている。

「ま、まったく。これだから人間は……あーもう、ハイハイ!合格よっ!
さっさと探索でも何でもして目的のものもって出て行きなさい!」
「……ちょっとだけ羨ましい、かな。私もロセさんと……」
「うう、どこを見ていいか解らない」
魔境に流れるピンクな雰囲気に、ルーアの殺気と張り詰めた緊張が嘘のように消えている。
(ん、ぁ……もしかして、お義姉達、それを狙って?――ん……)
ナトセにイロイロと蹂躙されながら、パティはそんなことを思う。

「でもねっ。アンタ達、ぜーーったいにココに来て、アレを魔女に渡した事、後悔するわ。
――ふん、それを考えたら別に認める認めない関係無いわね」
負け惜しみ、だけとは思えないロセアムの言葉にレイナはすっと瞳を細める。
「どういう意味、かしら?」
「その内解ると思います。――きっと」
「うん。僕たちは話せない」
ルーアとロセアムが、何故か僅かな同情を湛えた瞳でレイナを見つめる。
そして――。

「じゃあね。人間!――くれぐれも、ここでハレンチなことはしないよーーーに!!」
ステルラの宣言と共に、魔方陣が展開し――真魔三人の姿を一瞬でかき消した。

「どういう意味だったのだろうな」
「解らないわ……って、ナトセ……パティを失神させちゃったの?」
「あの力を使った後だからな、休息させるにこしたことは無い」
「ふふふ、そうね。さて――あの子達の言葉、どういう意味かわかる?」
「不明だ。魔女については、私の情報網でもわからない事の方が圧倒的に多い。彼女の持つ技術についてもな」
「――ん……少し調べてみましょうか」

17GM★:2008/03/25(火) 01:42:09

◇ ◇ ◇

エピローグ


"月の魔女"月宮かぐやの寝室。
中央に巨大なベッドが設えられた広い部屋で、長い黒髪の美女と金の髪のエルフが抱き合っていた。

「姉妹達のおかげで、準備は整ったわ。順調に行きそうね」
「んっ、私は――まだ、反対……で……す」
首筋に唇が這う。
バスローブの襟元から手を差し込まれ、エルフのものとは思えないたわわに実った乳房を愛撫されると、
金髪を揺らし、エルフ――ソフィー・フルフィウスは、部屋の主――月宮かぐやにしがみ付く。
「どうして?」
「かぐやが危険……ぁぁっ!やぁ、ふぁ」
「そうね。神無月はもう誤魔化せないでしょうね。聖者会議にも排撃の口実を与える」
「それ、なら――ぁふ」
「相変わらず大きくて敏感ね。ふふ、レイナも大きかったけれど、ソフィーには負けるわね」
「ぁくっ、比べるなんて……」
「クスクス。嫉妬?かわいいこと」
「誤魔化さないで下さ……い」
「かぐやさんの動きがとれなくなっても、貴女は充分に動けるでしょう?それで良いのではなくて?」
「くぅ、絞らない……で、あぁ。けれど、ふぁ」
「こういう風に愛してあげる機会が減るのがイヤなのかしら?」
「ち、違いま……すっ」
「では、かぐやさんの指示通りにね。いーい?」
「う……くぅ、は――い」
「良い子ね。ご褒美をあげる」
「やぁっ!それは……」
かぐやに快感を与えられながらソフィーは思う。
(逆らえないのは解っています……。でも……私の為では無く、かぐや……貴女の為に……)
意識がゆっくりと快感に溶けてゆく。
ソフィー・フルフィウスは月宮かぐやに逆らうことが出来ない。
――かぐやを護ることさえ、拒否されれば従うしかない。……それがとても悲しかった。


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