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ーーー リョナ2板 SS総合スレ 第6巻 ーーー

551DOAX3 〜開けてビックリ水上相撲〜 第3話:陥穽:2024/04/20(土) 10:20:45 ID:???
足先で軽やかに着地して素早く床を蹴って反転…。
そんな動作のイメージを心に描いていた彼女達だったが…。

 ツルッ!

「あんっ!」
「…ぁあっ!」
「きゃ…!」
予想外に足が思い切り滑る。
そして3人ともくノ一らしからぬ格好で、豪快に転倒してしまった。

跳ね床のトラップが弾く方向の床一帯は、
ほとんど摩擦係数がゼロではないかと思えるような極端に滑りやすい床材で造られていた。
超人的な身体能力も、物理法則という普遍の真理の前には無力であった。

床はツルツルな上、つかめるものも何もなく体勢を変えようとしても何も出来ず、
ある者はM字開脚のまま、またある者は腹這い大股開きのまま
まるでカーリングのストーンのように滑っていき……3人の身体は、数メートル先の壁にぶつかってようやく停止した。

「…うぅ……」
「…何よ、これ……」
「…あぅっ……」
困惑しながらもごく普通に、ほぼ反射的に、立ち上がる動作を取る霞たちだったが…。

横座りの姿勢から、床に手をついて立ち上がろうとした霞は…、
「…きゃ……!」
体重を支えようとしたそばからその手が斜め前へ滑って体勢が崩れ、
肩と腰を床に打ちつけるようにして再び倒れこんでしまった。

M字開脚で座り込んでいた綾音は、両手を身体の後方の床について体重を支え、
両腕の力で身体を押し上げ最短の動作で前方へ立ち上がろうとして…
「…ぁくッ?!」
お尻を床から浮かせたところで両足と両手がそれぞれ前と後ろに滑り、
M字開脚のまま勢いよく尻もちをついてしまう。そしてさらに…
「…きャっ!?」
床にお尻を強打した痛みにほんのすこし上体を反らしてしまったその拍子にお尻が前方へ滑り、
脚をだらしなく広げた仰向け状態で床へと倒れ込んでしまった。

ふたりよりも慎重に、滑らないようについた手で体を支え、ようやく膝立ちの姿勢にまで体勢を立て直した紅葉は、
無意識に髪の乱れが気になったのか、ポニーテールのほうにふと手を伸ばした。
女の子として半ば反射的な、ごく自然な行動であり普段なら何の問題も無いのだが……、
足元が滑りやすいこの状況では結果的にうかつな行動であった。
両手を頭の後ろへ回そうとして身体の重心がほんの少し高くなったその瞬間、
「…きゃっ?!」
両膝が思い切り後ろに滑って、胸を床に打ち付けるようにして再び倒れ込んでしまった。

彼女達が誘い込まれた壁際、その壁に面した2×4メートル程度の範囲は楕円形の浅い盆地状にくぼんでおり、
遠目には分からない程度のわずかな傾斜になっていた。
ただでさえ異様に滑りやすい床材のうえに、曲面状の微妙な────誘い込まれた者を苦しめるには絶妙な────
傾斜になっているせいで、うまく体重を支えることが出来ないのだ。

そしてこの再転倒という彼女達らしからぬ失態には、もう一つの要因があった。
それをあえて客観的に指摘するとしたら「危機感が足りない」と言うことになるだろう。

忍びとしての闘いや修行の日々からは遠く離れた別世界へと招待され、
体力を使う勝負事といえば、せいぜいビーチバレーやプールでの尻相撲程度……。
そうしたアクティビティを、くノ一としての実力は数割程度セーブした状態で彼女達は楽しんでいた。

このようなバカンスの場で、忍びとしての力をフルに解放して「本気モード」になるなんてのは、
レクリエーションのようなスポーツ大会でプロアスリートが本気を出すようなもので、
「無粋」あるいは「大人げない」というものだったのだろう。

もっとも、そのような状態でもなお、そんじょそこらの「運動神経に自信のあるグラビアアイドル」などとは
比較にならない跳躍力やバランス感覚は随所で見え隠れしていた。

そのような数日間を過ごした彼女達は、この時もまだ力をセーブした「バカンスモード」の身体能力のままで、
容易に立ち上がれるものと無意識のうちに思い込み……、それが先ほどのうかつな動作や再度の転倒につながったのだ。
しかし、この豪華で開放感あふれるホテルの一室は既に、彼女達にとってどんな忍者屋敷よりも恐ろしく
得体のしれない「カラクリ部屋」と化していた。

そのことを次第に感知してきた彼女達は、今度こそ慎重に、この場からの脱出行動を開始する。
二足歩行になるのはほぼ不可能。安定した四足歩行の動作……すなわち四つん這いで
両手両足に意識を集中し、まるで垂直の石壁に挑むような慎重さで、このわずかな窪みの緩斜面を登ろうとするのだった。

しかし、ひとたび体勢を崩されれれば、相手が攻撃の手を緩めることをしない限り、
体勢を立て直すことは二度と許されず、その一連の流れから決して逃れることが出来ない…。
そんな「トラップコンボ」の恐ろしさを、まだ彼女達は知らないのだった。


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