したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が900を超えています。1000を超えると投稿できなくなるよ。

リョナな長文リレー小説 第2話-2

1名無しさん:2018/05/11(金) 03:08:10 ID:???
前スレ:リョナな長文リレー小説 第2話
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/lite/read.cgi/game/37271/1483192943/l30

前々スレ:リョナな一行リレー小説 第二話
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/lite/read.cgi/game/37271/1406302492/l30

感想・要望スレ
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/lite/read.cgi/game/37271/1517672698/l30

まとめWiki
ttp://ryonarelayss.wiki.fc2.com/

ルール
・ここは前スレの続きから始まるリレー小説スレです。
・文字数制限なしで物語を進める。
・キャラはオリジナル限定。
・書き手をキャラとして登場させない。
 例:>>2はおもむろに立ち上がり…
・コメントがあればメ欄で。
・物語でないことを本文に書かない。
・連投可。でも間隔は開けないように。
・投稿しようとして書いたものの投稿されてしまっていた…という場合もその旨を書いて投稿可。次を描く人はどちらかを選んで繋げる。
・ルールを守っているレスは無視せず必ず繋げる。
 守っていないレスは無視。

では前スレの最後の続きを>>2からスタート。

289名無しさん:2018/10/22(月) 01:05:35 ID:???
「ヤヨイちゃーん、キリコさーん……って、うわぁー!?
なかなか戻ってこないから心配して探しに来たら、二人揃って大惨事ー!?」

……というわけで、ミライは地獄絵図と化した路地裏を見て驚愕した。

「ん……君は確か、さっきこいつらと一緒にいたヒーラーの少女だな。丁度いい、手を貸してくれ」
「ひぃっ!?」
全身から血を流して倒れているヤヨイの横に佇んでいるのは、まっ白なショートヘアに白衣、その下には黒いスーツとタイトスカートの小柄な女性。
キリコの昔の知り合いで、リザを狙っていた暗殺チームのリーダー格のめっちゃやばい人、のはずだが……
今は、先程会った時とは別人のように穏やかな雰囲気を漂わせていた。

「この少女には止血の秘孔を突いてあるが、魔法での治療も施した方が良いだろう……頼めるか」
「は、はい。やってみます……来たれ癒しの奔流よ!女神ネルトリウスの名の下に、大いなる慈悲と清廉なる心を、かの者に与え給え!」
ミライは最早すっかり彼女の代名詞と化した、最上位の治癒魔法「ソウルオブ・レイズデッド」をヤヨイに唱える。
それが終わると、アゲハはヤヨイの身体のあちこちを突きながら、血色や手足の動きなどの調子を確かめているようだった。

「……ついでに、私の鼻も頼めるか」
「は、はい。……ええと、キリコさんは…?」
「あいつは眠ってるだけだ……ほっといても問題ない」
「え……そ、そうなんですか……?」
「うーーん、むにゃむにゃ……もう食べられないよ……」
アゲハの言う通り、キリコには目立った外傷もなく、本当にただ眠っているだけのようだった。

「さてと、彼女の方はこれでよし……手足の機能も問題なさそうだ。修練を積めば、将来きっと良い忍びになれるだろう」
「……は、はい…」(な、何か……すっごくいい人……?)
暗殺者のはずのアゲハから漂う、静かではあるが慈愛に満ちたオーラに困惑しまくりのミライ。
彼女が実はいい人だったのだろうか? だとしたら、二人はどうして路地裏で大怪我して気絶しているのか?
……一体この路地裏で、何が起こったのか。怖くて聞けないミライであった。

「では、私はそろそろ失礼しよう……キリコの奴が目を覚ましたら、伝えておいて欲しい。
『お前が変わらないでいてくれた事に、心から感謝する。……だが、私の事はもう忘れろ』……と」
「え……ちょっと、待ってください…!」
ミライが止める間もなく、魔を討つ忍びよりも更に深い闇の住人……暗殺者『穿孔のアゲハ』は姿を消した。

290>>285から:2018/10/22(月) 01:37:29 ID:???
「時見のザギと言えど、既に定められた運命からは逃れられない……コルニーチェ・ブランカータ!」
「な……ぐぉ!?」

アルフレッドはザギの懐に飛び込み、二本の剣で斬撃を加える。あまりの早業に、ザギはまともにそれを喰らってしまう。

(馬鹿な……!全く見えなかった……!これがラウリート流剣術か……!)

だが、死ななかった。一撃死さえしなければ、ザギは何度でもやり直せる。再び忍法タイムエスケープを使おうとしたザギだが……

「言ったはずです……既に定められた運命からは、逃れられないと……」

ガルディアーノ……金と銀に輝く双剣の光が周囲を包む。すると、ザギの忍法タイムエスケープは何故か発動しなかった。

「な……!」
「終わりです……ラウリート流奥義……グランドゥレ・タルパトゥーラ!」
「ぐ、ぁあああ!」

グランドゥレ・タルパトゥーラは相手の脇を駆け抜けながら両腕、両脚、頸動脈を一瞬にして断ち切る技である。ザギは咄嗟の判断で両腕で急所を防ぎ、致命傷を避けたものの、一瞬で傷だらけになってしまった。

「防ぎましたか……ですがもう動けないでしょう。トドメを……」

アルフレッドは、突如飛来したクナイを双剣で弾く。

「ザギさん!大丈夫ですか!?」
「ぐぁ、な、なか……!」
「……また会いましたね、神楽木のお嬢さん……ですが、私がこの宝剣を抜いた以上、以前のようにはいきませんよ」
「あ、アルフレッドさん!?」
「う、王下十輝星までいる……どういう状況なの!?」

突然乱入して来たのは、リザの見舞いを切り上げて騒ぎの様子を確かめに来た、唯、鏡花、七華であった。

「確かにその双剣からは凄まじい魔力を感じますね……しかし、ここであなたが奮戦しても無意味です。あなたのご執心の運命の戦士のうち、2人はここに、2人は厨子内に……そしてもう一人は陛下のお側にいます。あなたの企みは既に破綻しているのですよ、大人しく投降なさってはいかがですか?」

七華は言外に、降伏しないのならばこの場にいる異世界人4人を賭けて前回の続きをやろうと言っていたのだが……アルフレッドはその挑発を聞いて、違和感を抱いていた。

おかしい。セーブ・ザ・クイーンの封印を解くには、運命の戦士が必要不可欠なはず……なぜ王は彼女たちなしで、ヴィラの樹海へ向かっている……?てっきり何人かは王の手に渡っていたと踏んでいたのだが……


「まさか……!?」

王は運命の戦士抜きで、セーブ・ザ・クイーンを手に入れようとしている……?

291名無しさん:2018/10/24(水) 00:59:11 ID:???
「……殺、す……アルフレッドも、アングレームも……抹殺、しなければ……!」
「ロゼッタさん、その怪我じゃ無理ですよ……!ここは退きましょう!」
「逃がすかよ、女ァ……!あの二刀流さえいなけりゃ、テメェらをぶっ倒すくらい……!」

フラフラと立ち上がったロゼッタだが、その足元は覚束ない。慌ててエミリアが支え、その場を離れようとする。
それに対しザギは自力で立ち上がるが、どちらも戦闘続行は不可能に見える。

「神楽木のお嬢さん、ここは一時休戦はいかがでしょうか?互いの負傷者は捨て置き、すぐにヴィラの樹海へ向かうべきです」

「……ザギさんはともかく、私がそちらのお二人まで逃がすとお思いですか?」

「ええ、ここは彼女たちとは戦わないのが賢明ですよ……セーブ・ザ・クイーンを狂王に掠め取られたくなければ、ですがね」

ロゼッタを守るかのように、七華に立ち塞がるアルフレッド。ロゼッタはそれを見て眉をひそめるが、エミリアが必死に宥める。

「……どういうことですか?」

「私は独自に、あの王がヴィラの樹海へ向かっている事を掴んでいたのですが……てっきり、運命の戦士を何人か手中に収めたものと見誤っていました。
運命の戦士を手中に納めていないにも拘らず、ヴィラの樹海にある魔の山へ向かっている……あの狂王が、何の考えもなくそんな事をするわけがありません」

「……何らかの手段で、運命の戦士無しでセーブ・ザ・クイーンを手にしようとしている、と?」

「事は一刻を争います……討魔忍衆が王を抑えている間に、神器を確保するべきでは?」

「まさか……封印を素通りして神器を奪取など、不可能に決まっています」

「あ、あの……ちょっといいですか?」

「唯ちゃん!?」

しばし睨み合うアルフレッドと七華。そこに手を挙げて割り込んだのは、我らが主人公の篠原唯。

「アルフレッドさんのお話では王様がヴィラの樹海って所に向かってて、コトネさんって人の情報ではリザちゃんもそこに向かってるんですよね?」

「ええ」「そうですね」

同時に肯定する2人。

「あの、もしかしてなんですけど……王様はリザちゃんの瞬間移動の能力で、神器?っていうのの封印を無視しようとしてるんじゃないでしょうか?」

292名無しさん:2018/10/24(水) 01:36:59 ID:???
サリカの樹海。別名ヴィラの森とも呼ばれている魔の山の麓の樹海である。
神器が眠る魔の山を登るにはこの樹海を通る必要があるので、神器を守るヴィラの一族を避けて通ることは許されない。
森自体は小動物も多く住む綺麗な森だが、今は夜のため、人を寄せ付け難い鬱蒼とした雰囲気に包まれていた。

「………来たか。」
そんな薄暗く不気味な樹海を前にして、トーメント王は待ち人の到着にニヤリと笑った。

「……王様、お待たせいたしました。」
暗闇の中から現れたのは、闇に紛れるような黒のコートを見にまとったリザである。
王の前で跪きながらフードを取った瞬間、彼女の金髪がきらりと闇の中で輝いた。
「リザよ……闘技大会では健闘したようだな。なんのためにあんな大会に出たのかは知らんが、無茶をするのもほどほどにしておけよ。」
「……はい。」
「クク………なぁリザ、お前の優勝を記念してご褒美をやろう。」
「………え。」
リザの素っ気ない返事を聞いた王は不吉なことを言った後、突然大きな手でリザの頭を掴み、そのままクシャクシャと撫で回した。

「んぅ!……お……王様……?」
「なんだ、嬉しくないのか?この世界で1番強い俺様がせっかくお前の頭を撫でてやっているというのに。普通の女は号泣しながら喜ぶところだろう。」
(えっ………!)
王のセリフに、リザは頭をトンカチで殴られたようなめまいに襲われた。
だが、ここは上司と部下の関係を壊さないよう接することが大切だ。

「……あ……う、嬉しい……です……」
本音を言うわけにもいかないので、リザは自分が出来る精一杯の明るさで、社交辞令の言葉を吐いた。(震え声で)
「ケケケ……そんなに声が震えるほど嬉しいか。それならここで服を脱いで裸になれば、お前のその小さな処女膜を今この場でぶち破ってやるぞ。」
「え………ええっ………!?」
「クックっク……冗談だよ。久しぶりにお前のそういう焦る顔が生で見たかっただけだ………」

王がリザに嫌がらせをした本当の理由………
さっきまで見ていた闘技大会の録画映像に映る、リザの服ビリや悲鳴に大層ムラついたから……というドン引き要素しかない理由は、一応秘密である。

293名無しさん:2018/10/26(金) 18:02:22 ID:???
「討魔忍共は他の連中が抑えているが、だからと言って楽に神器まで着けるわけじゃない」

「……ヴィラの一族、ですね」

「ああ、だがまぁ安心しろ、基本的に連中の相手は俺がやる……なんてったって、ここの亜人ちゃんは滅多に会えないSSレアだからな、俺が自分でリョナりたいのさ」

王様のセクハラを受けながらも、一応は平静を保ちつつ歩を進めるリザ。サリカの樹海の鬱蒼と茂る森林を進むのは少々疲れるが、大会での連戦と比べたら大したことはない。

そうしてしばらく進んでいると、二人は開けた広い場所に出た。するとその時!


『卑しい人間よ!これより先は魔のお方々が住まう神聖な地である!即刻立ち去れ!』


周囲にある木のどこかから、高慢ちきそうな女性の声が響いてきた。

「……!声は聞こえるのに、どこの木に潜んでるか気配が読めない……」
「お、いいねぇ、生意気な門番役ってのは定番だな」

真面目に周囲を警戒するリザと、どこまでも自由奔放な王。前者は立ち止まったのに対して、後者は何も聞こえなかったかのようにずんずん進んでいる。

「お、王様!?危険です!」
「平気平気、まぁ見てなって」

『愚かな!警告はしたぞ!』

警告を全く意に介さない王。その姿を見て、再びどこかの木から声が響いた瞬間……王を大量の植物の蔦が襲った!

「植物使いか……ちょうどいい!我がバトルスーツの触手の錆になるがいい!」


王が叫ぶと同時に、周囲から襲いかかっていた植物は全て、王のマントの下から伸びてきた触手に絡みつかれて無力化される。


『味な真似を……!だが、大自然の加護を受けたこの私を舐めるなよ!』

「大自然の加護、ねぇ……リザ、俺様の雄姿を目に焼き付けとけよ、ケケケケ!」

294>>287から:2018/10/26(金) 22:25:18 ID:???
「ちょ……え?どういうことだ?リザが、トーメントのスパイって……」
コトネからの緊急連絡によって、真実を知ってしまったヤコ。

「……うわ、どうすんだこれ」
「Oh...やべー事になりましたわ」
いきなり降って湧いた面倒事に、頭を抱えるシアナとアイナ。

「あれ?何だよそのリアクション……まさか、二人とも知ってたのか!?」
「いや知ってるって言うか、アイナ達も同業ですし……でも王下十輝星の一人だって事はギリギリバレてないみたいですわね」
「え?オーカ……何?」
「わーーっ!!バカ!シーッ!!」

ちなみにリザは>>280でコトネと互いに肩書も込み込みで名乗り合っているが、コトネはそれを公にはしていない。
リザも恐らくコトネの事は誰にも話さない。
これでお互い貸し借りなしとか、戦士同士の暗黙の了解とか、次回会った時に必ず始末するから無問題とか、当人同士にしかわからない理由があるのだろう。
それはさておき。

「うーん。こうなったら……コイツの記憶、消しとくか?」
「それならいい物がありますわ!\テテーン/きれーさっぱり!思い出ポロポロ!『キオクドロップ』〜〜!!」
わざわざ白くて丸い手袋をはめて、効果音を口で言いながらアイナが取り出したのは、なんか色々やべーかんじのやつだった。

「おい大丈夫かこれ……記憶以外の大事な物もポロポロしそうなんだが」
そんなやべースパイスをキメた状態のヤコを置き去りにしたら、さすがに無事では済まないだろう。
何しろ彼は、この国では種族単位で奴隷扱いされているアウィナイトなのだ。

「まあ……無事で済まなかったとしても、僕らに関係ないといえば、ないんだけど……どうする。一応リザに連絡してみるか?」
「あ、連絡と言えば……あああああ!!!……ロゼッタからもんのっすごい数のラインが入ってましたわ!?
『ザギとか言うやつ、こっちのこうげきめっちゃ避けるΣ(ノ゚□゚;)ノヤベーヨヤベーヨ(>_<;)』とか
『エミリアちゃんを人質に取られたー!(゚皿゚#)おのれヒキョーなり!ヽ(`Д´#)ノ=3<プンスコ』とか
『ボディに喰らったなう まぢいたい(´;ω;`)ブワッ 』とか
……ちょ、これ二人がピンチなんじゃありませんの!?」
「あのロゼッタが被弾するなんて、確かに並の相手じゃないな……(その割に結構余裕ありそうに見えるけど)」
「と、とにかくすぐに助けに行かなきゃですわー!シアナ、悪いけど後よろしくですわ!」
「え!おい待てアイナ!……って言うか、え。よろしくって……」

……そもそもロゼッタと組んで任務にあたるはずだったアイナは、今更ながら大慌てで助けに向かうのであった。
後に残されたのは、アイナが買った大量の荷物と……
……引き続き、真実を知ってしまってパニックに陥り、ここぞとばかりにグイグイ来るヤコ。

「おい、さっきから何の話してるんだ?……なあ教えてくれ。一体、お前達は何者なんだ……!!」
「……こいつの事、丸投げかよ……」
そして胸倉掴まれガックンガックン揺れながら、死んだ魚のような目で途方に暮れるシアナであった。

295名無しさん:2018/10/26(金) 22:28:21 ID:???
(もういっそこの場でキレイさっぱり始末しちゃおうかな)
……と、色々限界なシアナがやべーこと考え始めた、その時。

「失礼しますシアナ様!アウィナイトの男を一人、本国に護送せよと王様から指令を受けたのですが……」
今度は物資の運搬や捕虜の護送などを担当する、トーメント兵達が現れた。

「え?王様から?……どういう事だ……?」
トーメント王は今、リザと一緒に行動しているはず。
リザが王に直接頼んで、ヤコを王都で匿う事を認めてもらった……と考えれば、一応辻褄が合わなくもない。
要はエミリアや、サキの家族と同じ扱いだ。

「その男に間違いありませんか?王からは、目つきの悪い男だと聞いていたのですが」
「目つき?……いや、特に何も聞いてないが」
……だとしても、あまりに手回しが良すぎる。何か引っかかる物を感じたシアンだった。
だが……

「……まあいっか。とりあえず、コイツをトーメントに運んどいてくれ。ついでに、あっちに散らばってる荷物も頼む」
……もうなんか色々面倒だったので、ぜんぶ兵士に丸投げする事にした。
何しろ今回のリョナおしの旅に出てからというもの、もうずっと全方向にツッコミっぱなしだったのだ。

「はっ!かしこまりました!」(相変わらず人使い荒れーなこのクソガキ。ったく……)
「え!?ちょ、ちょっと待て!こいつらトーメント兵じゃねえか!助けてくれシアナー!!」
「おいこら、暴れるな!」「そっち側押さえろ!」「猿ぐつわしとけ!」
「どうせなら女の子さらいたかったなー」「だな。スズ・ユウヒちゃんでもその辺に歩いてないかなー」

(……とりあえずヤコはこれでよし。後の事はリザに任せよう……)
どっと疲れが出て、正直もう宿に帰りたい気分だったが……危機に陥ったというロゼッタ達や、助けに行ったアイナの事も気に掛かる。
シアナはアイナの後を追い、ロゼッタ達の元へ向かうのだった。

◆◆◆

「おーい。こっちにいたぞ、目つきの悪いアウィナイトの男。路地裏でふん縛られてた」
「リザ……あのメスガキ、絶対に許さねえ……俺様をコケにしやがって…ブツブツ」
「あれ?じゃ、こっちのガキは誰だ?」
「……まー、どうでもいいじゃん。とりあえず両方とも王都に運んで、地下牢に突っ込んどこうぜ」
「だなー。帰んべ帰んべ」
「もがもが……もがーー!(くそっ離せよお前ら!…リザーー!!)」

296名無しさん:2018/10/27(土) 02:40:48 ID:???
リザの制止も聞かず、トーメント王はずんずんと進んでいった。
「久しぶりに生で女をリョナってヤる機会だ。リザ、わかってるとは思うが邪魔をするなよ。」
「……わかりました。」
リザとしては協力して早く終わらせるべきだと思ったのだが、命令とあれば仕方ない。
一歩引いた場所で周囲を警戒しつつ、王の戦いを見ることにした。

「……どこの誰だか知らないが、ヴィラの森に許可なく入ったからには、それなりの覚悟はあるんだろうな?」
「お、やっとおでましか……」
木々の隙間から素早く跳躍して王の前に降り立ったのは、すらりと伸びた長い足にうさぎのような耳が付いた長身の美女であった。
長い白髪に赤い目はまさにアルビノを思わせる。
肩、胸、尻と極めて露出度の高い狩人衣装に身を包んだ女の姿に、王の視線は釘付けになった。

「いやー久しぶりに見たけどヴィラはいいねぇ……キリッと凛々しい顔の下についているしなやかで美しい体……まさにっ!虐めて、嬲って、堕としてやりたくなるってもんだ。リョナり甲斐があるってもんだぜ、ククク!」
「何を言っている……!貴様らのような野蛮人は、このゼリカが討ち倒してくれる!覚悟ッ!」

ゼリカと名乗ったヴィラの一族は、植物を体に纏いながら王へと突進した!



「食らうがいい!樹腕烈殺!」
腕を大木のように硬質化させたゼリカは、付近の植物と同時に王へと襲いかかる!
植物たちは瞬く間に王を包囲し、王のバトルスーツの触手へと絡みついて動きを封じていった。
(さっきより数が多い……!あれだけの植物に一斉に絡みつかれたら、身動きがとれなくなってしまう……!)
リザの心配した通り、先程植物を封じ込めた王の触手たちは、より多くの植物に絡め取られてしまっていた。
「お……?」
触手が動かないことに驚いたのか、素っ頓狂な声を出す王。その隙にゼリカは一気に肉薄する!
「貴様の動きは封じた!これで終わりだっ!」
(まずいっ……!)
リザが助けに入るべくテレポートの準備をすると同時に、ゼリカはその必殺の腕を王の首へと差し込んだ!


パシッ……!!
「なっ……!」
「俺様の動きを封じただと?ケケケケ!俺様はタコじゃないんだ。触手を封じられたくらいじゃ痛くもかゆくもないんだよなぁ……かわい子ちゃん。」
ゼリカの必殺の一撃は、信じられないことに、王の左手でいともたやすく受け止められていた。
「ば、ばかなっ……!私の腕を片手で止めるなんて……!」
「さて、今度はこっちの番だ……クケケケケケケケケ!!!」
王の笑い声に共鳴するかのように、触手たちは先程と同じように植物たちを拘束した。今植物に捕まったのは演技だったかのような動きで。
「ぐ……き、貴様……!」
「さて、余った触手ちゃんが一本、目の前にはクッソやらしい格好したパイオツカイデーの美人女戦士……こんな状況とくればもうこうするしかないよなぁ!」

シュルシュルシュルシュル……!
「や、やめろっ……!ん!ぐああああっ!!!」

王の触手はゼリカの悲鳴も御構い無しに、まるでお約束かのように足からゼリカの体に絡みつき、最後には胸にパチンッ!と食い込むようにして女戦士の体を拘束した!

ぎゅうっ……ギュウウ……!
「く……!ああぁっ!んんんんっ!!」
「フゥ〜いいねぇ。強調するような縛り方も悪くはないが、たまにはこんな柔らかそ〜なでっかいおっぱいにぶっっっ……とい触手がギチ……ギチギチ……!といやらしく食い込む様をじっくり観察するのも乙なもんだ……」
苦痛に喘ぐゼリカの顔と、その下でゼリカの胸にぎゅう、ぎゅうと音を立てて食い込む触手に、王はじゅるり、と舌なめずりをした。

(……あれ……すごくいやだな……)
心配が杞憂に終わったリザは、相変わらずの王のリョナ趣味に気分が悪くなりつつあった。

297名無しさん:2018/10/27(土) 17:09:50 ID:???
「さてさて、どうしてやろう……自然大好きなヴィラの女には木の枝を股にブチ込んでやるか、生きたまま野鳥の餌にしてやふか……ケケケケ!」

「が、ああああ……!」

触手に全身を締め上げられて、苦しげな声を漏らすゼリカ。それを見て嫌な気持ちになったリザは、王に声をかける。

「王様、そろそろ陽動も気づかれる頃合いです……急いだ方がよろしいかと」

「まぁまぁ、そう慌てるな……ここで斥候役を徹底的にリョナるのは合理的でもあるんだからさ」

「……?」

どういうことだ、という顔をしたリザに対し、王は説明を続ける。

「少数民族のサガってやつでな、ヴィラの一族は仲間の危機には必ず駆けつける……森の中で奇襲を警戒するより、コイツを餌に誘き寄せる方が確実ってわけだ」

「……そう、ですか」

同じ少数民族であるアウィナイトでも、自分可愛さに仲間を売るということを知ってしまったリザは、王の言葉に苦い顔をする。

「つまり、コイツに森中に響く勢いで悲鳴をあげてもらいながら進むのは、俺の趣味とは無関係の的確な判断なんだよ!ケケケ!」

絶対嘘だ、と思うリザとゼリカ。出会って数分だが、驚きのシンクロを見せた。

「ふざ、けるな……!ぐぅうう!虜囚の、憂き目になろうと……!これ以上仲間の足を引っ張ってたまるか……!がはぁあああ!」

「生意気なことを言ってるが、悲鳴が隠しきれてないぞ……さぁ、泣け!喚け!新キャラの見せ場を活かせないまま死んでゆけ!」

「んぅうう!泣き、叫びなど……!私は……んんんぅうう!!!」

298名無しさん:2018/10/27(土) 22:19:20 ID:???
「う、ぐぅっ……これしきの事で、屈すると思うな……ヴィラの一族を、舐めるなよっ……!!」
(ギリッ……ギリギリギリッ……!)
ゼリカは全身に力を込め、触手の拘束から逃れようともがく。

触手もゼリカの身体を更にきつく締めあげようと、ゼリカの全身……豊かな胸、鍛え上げられたしなやかな手足、
簡素な腰布と薄い織物の下着一枚に覆われた股間など、あらゆる所に粘液を擦り込みながら喰い込んでいった。
「あっ……ん……っく…………もう、少しっ……!」
果てしなく続くゼリカの苦闘は、見ようによっては淫らなダンスを踊っているかのようにも見える。

「クックック……さすがはヴィラの戦士。女にしては中々の力だ。だが……」
(くぱぁっ……)
王はニヤけた薄笑いを浮かべつつ、軽く合図を送ると……ゼリカの頭上にいた触手の先端が、花弁のように顎を開く。
内側は突起と繊毛でびっしりと覆われ、大量の粘液が涎のように滴る。針金のように細い触手が数本、蛇の下のように蠢いているのも見えた。触手の口は、背後からゼリカに忍びより……

(ちゅぷぅっ!!)
「ひゃふっっ!!?」
……ヴィラの一族の特徴である長い耳に、ぱくり、と喰らいつく!
(くちゅ、ちゅぷ、じゅぶぶっ にるるるる!)
「ひ、あんっ!!そ、そこ、だめ、みみは、だめえええ!!」
「ヴィラの連中は、相変わらず耳が敏感だなァ!…ヒーッヒッヒッヒ!」
先端から根本までを繊毛にしごかれ、粘液を擦り込まれ、何本もの針金舌に耳孔を奥まで穿られ……
どんな苦痛を受けてもあげまいとしていた叫び声を、ゼリカはいとも簡単に上げさせられてしまった。

「ほれほれ、さっきの力はどうした?早く抜け出さないと、触手がお股に喰い込んできてるぞ!愉快愉快!」
(くちゅ……みち、みちみち………ちゅぷっ……ぎりりりっ!!)
「ひっ……ぐ、ひきょう、なっ……きゃん!?う、んあああああんっ!!」
触手の耳責めで全身から力が抜け、触手の締め上げに対抗できなくなったゼリカ。
胸は触手が深く喰い込んで大きく撓み、身体全体がギリギリと締め付けられて徐々に苦しい体勢を強いられていく。

「は、ふぅっ……おっ……おのれ……は、なせぇっ……」
逆さ吊りのまま、大股開きで王の目の前にもう一つの急所を晒すゼリカ。
守る薄い織物の下着は、触手の粘液でグチョグチョに濡れそぼっていた。

「おやおや……もうグチョグチョじゃないか。木の枝なんかでなく、俺様の特大うまい棒をくれてやろうか?」
「み、るなっ……ああっ……さわるんじゃ、ないっ……!」
もはや勝負は決したかに見えた、その時……

「ゼリカ姉様、危ないっ!……『裂華斬』!!」
(ギュルルルル……ザンッ!!)
どこからともなく巨大なブーメランが飛んできて、ゼリカを拘束する根元から斬り裂いた。

299名無しさん:2018/10/27(土) 22:23:37 ID:???
「ヒッヒッヒ……さっそく一匹、釣れたようだな」
……森の奥から現れたのは、ゼリカと同じヴィラの一族の少女だった。
姉のゼリカと同じく、毛皮のチューブトップに腰布の軽装で、年の頃はリザと同じか、少し幼いように見えた。
だが先の巨大ブーメランの威力と精度から、この少女も姉と同じくヴィラの一族の戦士である事は疑いようがない。

「大丈夫、姉様!?……咲いて、癒しの花!」
ミゼルと呼ばれた少女が大地に手をかざすと、手の平大の白い花が、ミゼルの足元に幾つも花開く。
白い花の優しい香りが風に乗ってミゼルを包み、ゼリカの疲労と負傷を瞬く間に癒していった。

「はぁっ…はぁっ……ミゼル!すまん、助かった……!」
拘束から抜け出したゼリカは、荒い息を吐きながら切断された触手を遠くへ蹴り飛ばす。

(……ゼリカのダメージが、回復した…!)
リザの近くへ転がってきた触手は断面から汁を飛ばしながらビチビチと跳ね回り、生理的嫌悪感を掻き立てた。

「おっと。今度は妹ちゃんがお出ましか……だが、今更お前ごときロリっ子が一人加わった所で何ができる?
せいぜい姉妹丼の具になって美味しく頂かれるだけだ……ヒヒッ!」

「しまいどん?……何を言ってるのかよくわかりませんが、あまり舐めてると痛い目に遭いますよ。
私だって、サリカの樹海を守るヴィラの戦士なんですから。……咲いて、戦いの花!」

再びミゼルが地面に手をかざすと、今度は燃えるように赤い花が二人の周囲に咲き乱れる。
この花の香りは一種の興奮剤に似た作用を持ち、二人の身体能力や魔力などを大幅に上昇させるのだ。

「それに、私達『樹華の姉妹』は、二人揃ってこそ真の力を発揮する。……出でよ、『神樹棍』!……行くぞ、ミゼル!」
「はい、姉様!……戻って、『裂華斬』!!」
姉妹の眼が紅く輝き、棍とブーメラン、それぞれの武器を構えて再び王に立ち向かう。

「ヒヒッ。なるほど、これなら少しは楽しめそうだ……おいリザ。解ってると思うが、お前は絶〜〜っ対手を出すなよ?」
「は、はい王様。しかし、これ以上敵が増えない内に早く片付け……」
(……ギュルルルッ!!)
「……きゃあっ!?お、王様、これはっ……!」
二人を迎え撃つ王の後ろで控えるリザ。その足元から突然襲い掛かってきたのは……さきほどミゼルに斬り落とされた触手だった。
「おっと、言い忘れてた。俺様の触手は、切られても自分の意志でしばらくは動き続けるんだ。
でも絶〜〜っ対抵抗するなよ?ナイフとかで斬ってもすぐ再生するし、汁が飛ぶだけで無駄だからな。
コイツら片付けたら外してやるから大人しくしてろ……ヒッヒッヒ!!」
(にゅるるっ……ちゅぷっ!)
「そ、そんな、王様!……んうっ!?」
慌てたリザがテレポートで抜け出そうとした瞬間、何かを察したかのように触手の先端がスカートに潜り込み。

「……ひゃぅぅぅうぅんっ!?」
……下着越しにリザの股間にかぶりついて、『脱出』を阻止した。

300名無しさん:2018/10/28(日) 15:13:51 ID:???
「ひひゃああぁあ!?」

触手が股間にかぶりつき、素っ頓狂な悲鳴をあげるリザ。集中力が保てない為、テレポートで逃げることもできない。別に王の「絶〜〜っ対抵抗するなよ」命令に大人しく従う気はないが、粘着質な触手は力づくで引き剥がすことも難しく、結果としてされるがままになっていた。

触手はグチュグチュと音を立てて謎の粘液を吹き出しながら、リザの下着越しに股間を責め立てる。

「な、なんだあいつら……仲間割れか?」
「なら今が好機です!いきましょう姉様!」

棍とブーメランを構えた姉妹が、一気に王の元へ駆ける!

「ぐへへ……ゆけぃ触手共!」


ゼリカとミゼルの前に大量の触手が現れ、一斉に襲い掛かる!

「馬鹿の一つ覚えが……!ミゼル、合わせろ!」
「はい姉さま!裂華斬!」

ミゼルのブーメランが大量の触手を切断し、ゼリカの操る植物が切断されても動く触手を封じ込める。

「畳み掛ける!樹脚烈迅!」
「もう一度お願い!裂華斬!」


樹木を足に纏わせたゼリカが飛び蹴りを放ち、触手を切断したブーメランは大きく弧を描いて王の元へ向かう。これほどの連携攻撃、流石の王様も耐えられまい!……と思われたその時!


「ここで久々の〜!キ〜〜ング・スーパーゴールデンミラクルアルティメットハンド!D!X!二刀流〜〜!!」


先ほど、大量の触手によって姉妹の視界から王が隠れた一瞬のうちに用意していた、邪悪なマジックハンドが2人を襲う!

「え、きゃ……!?」

異様な伸縮を見せたマジックハンドが、後方にいたミゼルの小さな身体を捕らえる。


「ミゼル!おのれ、ミゼルを離せぇえ!」

辛うじてマジックハンドを回避したゼリカは、王への攻撃を中断して、ミゼルを拘束するマジックハンドに蹴りを放つ!


ガキィイイン!


「え……」

だが、キング(略)マジックハンドには、傷一つ付かなかった。

「隙ありぃ!」
「しま……!」

その隙をついて、王は先ほど回避された方のマジックハンドでゼリカを拘束した!

301名無しさん:2018/10/29(月) 20:30:59 ID:OALMHIO2
「トーメント王はあのアウィナイトの特殊能力を使い、神器を狙っている……ですか。」
唯がなんとなく言った内容を反復するアルフレッド。
「例えば、扉で封印されているならその裏側に王様ごとピョーン!とかn」
「ありえませんよ。」
唯の言葉を遮った七華は、小さく溜息をついた。

「神器の封印はあの瞬間移動の能力程度で突破できるものではありません。……先ほども申し上げましたが、封印を素通りなど不可能です。」
「ではなぜ、あの狂王がアウィナイトの少女を一人連れて魔の山へ向かっているのか……それについてわかるのですか?」
「ぅ……そ、それはっ……」
アルフレッドの問いに答えが出ない様子の七華は、手を縮こませて目を下に逸らした。
クロヒメを愚弄されると手がつけられないことになるが、これが彼女の本来の性格なのだろうか。

「……そんなことはよぉ……そこのメス共に聞けばいいじゃねえか。こいつらはトーメント王の手先なんだろ?神楽木ィ?」
ふらふらと立ち上がったザギがエミリアとロゼッタを指差した。
「……そうだとは思いますが、彼女たちを尋問する時間の余裕はなさそうです。……もしかすると今頃森に入られてしまっていて、ヴィラの一族と交戦しているかもしれません。……それとザギさん、ちょっと口が悪いです。」
「うるせぇアホらぎ。俺はもとからこんな喋り方だ。……いつかお前のそのいやらしいデカ乳を揉みまくるために油断させてたんだよ。」
「……ふえっ?……ザギさん……今なんて……」
突然のザギのカミングアウト&下ネタに驚きたじろぐ七華。その様子を見たザギはニヤリと笑った。

「クククッ……今タイムエスケープしてきたぜ。慌てふためくお前を押し倒してすっ裸にした後、こいつらが見てる目の前で思う存分陵辱した未来からなァ!」
「あ、あ、ああぁっ…………ガクッ」
「あ、七華さんが倒れちゃった!」
ザギの言葉に絶句した七華は、その場で小さく悲鳴を上げてレイプ目になり卒倒した。
それと同時に逗子の魔力が失われ、扉がギギギッと勢いよく開け放たれる!

「あ!鏡花ちゃん!瑠奈と彩芽ちゃんが出てきたよ!」
「そ、それはいいけど……!きゃあああああああっ!!」
気絶した彩芽と瑠奈が汗塗れで出てくるとともに、一緒に入っていた虫たちが勢いよく飛び回る!
「なぜ逗子の中に彼女たちが……皆さん、こちらへ!」
「あ、アルフレッドさん!助けてぇー!」
「わ、私も手伝います!ウィンドブレイド!」
「ククク……このどさくさに紛れてガチでアホらぎを犯してやるのもいいかもなァ……!」

混乱に陥る一同。その隙にエミリアはロゼッタを抱えて離れた路地へと避難した。
「……エミリア……迷惑かける……」
「気にしないでください……それより早くアイナちゃんやアトラ君たちと合流しないと!」
「……あの男を消す大チャンスを逃した……所詮私の運命も吹き荒れる風に弄ばれる木の葉の1つに過ぎないということ……か……」

302名無しさん:2018/10/31(水) 00:11:12 ID:???
「う………姉様っ……!」
「ミゼル……!くそおおお!」
堅牢なマジックハンドに囚われた2人は必死に脱出を試みるが、王のマジックハンドの握力は1人の女の力ではびくともしない強度であった。
「ケーッケッケッケ!ヴィラの女戦士を一気に2人もゲットだぜ!このままなつき度を上げて俺様のリョナ奴隷にしてやるぞ………ヒヒヒヒ!」
「……姉様……この者たちの狙いは間違いなく神器……!長たちにこのことを伝えないと……!」
「わかってる……!だがっ……くそぉ!こんなふざけたものでっ……指一本裏動かせないなんて……!」
「クックック……前に魔法少女の姉妹を捕まえた時は骨を折って全身グニャグニャにしてやったんだよなぁ……お前らはどう料理してやろうか……!」
マジックハンドがゆっくりと2人を王の前に運んでいく。
ゼリカは好戦的な視線を、ミゼルは恐怖に怯える視線を王へと向けた。

「〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
「……ん?なんだこの声は?」
少しくぐもったような声がした方に王が目をやると、大量の触手がぬらぬらと集まってちょっとした塊を作り上げていた。
「……もしかして……リザか?」
「ぷはぁっ!!!……お、王様……!たすけ、あううぅっ!」
触手の塊からかろうじて顔を出したリザはすぐに押さえつけられてしまい、その小さな体を大量の触手にがっちりと拘束されてしまう。
だが苦痛に歪むリザの表情は王に見えるようになっているあたり、触手もわかっているのである。

「くうぅっ……!王様、こ、これっ……締め付けが、強すぎっ……!やあああんっ!!!」
「あー、その触手は女の子のリョナい悲鳴でパワーアップするんだ。………お前どうせアレだろ?触手に触られて悲痛さとエロさが5:5でブレンドされた今みたいな悲鳴をあんやんあげてたんだろ?そんな可愛い顔でエロい声出してたら、触手ちゃんたちが発情するのも仕方ないってもんだよなぁ……ケケケケ!」
「……そ、そんなぁっ……!」
「ケッケッケ……まあこの子達を捕まえたら俺様が王子様になってやるから、それまで助けを待つヒロイン気分を味わってな………!」
こんなのが王子様なんて最悪な童話だと思いつつ、不用意に触手を興奮させないようリザは口を固く閉じた。

303名無しさん:2018/10/31(水) 17:04:23 ID:???
「……余所見とは随分余裕だな!秘術、神樹降臨!!」

王がリザに意識を向けて拘束がほんの僅かに一瞬、ゼリカは全力で巨大な樹木を生成した。だが、その巨木は王を攻撃することはなく……悠然と佇んでいる。

「ん?何の真似だ?」
「悔しいが、不意打ちはどうせ防がれるだけだ……ならばせめて、長に緊急事態を伝えるのみ……!」

森に突如として現れた大木……急ごしらえだが、緊急事態を知らせる為の手段としては十分機能する。

「あーもう、リザが話しかけてくるからこんなことになったじゃーん……後でおしおきだな」
「え……っ、ん、うぅ……!」

理不尽な王の言葉に文句を言いたくなったリザだが、触手責めに声を出さないようにするので精一杯でそれどころではない。

「すまんなミゼル、せめてお前だけでも逃がしてやりたかったが……」
「姉さま……いえ、ミゼルもヴィラの戦士です!一族の為に身を挺する覚悟はできております!」

目の前の侵入者は、きっと族長が何とかしてくれる……後はそれを信じるしかない姉妹は、毅然とした態度で王を見据える。

「我々を甚振りたいならば好きにするがいい……!」
「例えここで潰えようと、一族がきっと敵を取ってくれます!」

だが、そういう態度を取られれば取られるほど、泣き叫び、命乞いをする姿を見たくなるのがリョナラーというものである。

「ケケケ……ならば、せっかくのハロウィンだし、使う機会のなかった機能を使ってリョナってやろう!」

王が叫ぶと同時に、バトルスーツが禍々しい光を発する。そう、見た目が原型留めてないせいで分かりにくいが、スーツの技術的なベースはノワールの黒衣である。従って、彼女の持っている能力をある程度使用することも可能なのだ!

「出でよ魔獣よ!今日はモンスターの祭典だ!!」

304>>301から:2018/11/01(木) 12:44:27 ID:???
(ぞわわわわ……かさかさかさ)
「きゃあああっ!!す、スカートの中に……いやあああああ!!」
「きょ、鏡花ちゃんっ!ど、どうしよう。厨子の中から、虫がどんどん出てくるよ……!」
気絶した瑠奈と彩芽をかばいつつ、虫を追い払おうとする唯と鏡花。だが、大量に湧き出てくる虫の群れに押され気味になっていた。
「くっ……!さすがにこの数では……ん!?貴様、こんな時に何を……!」
(ずちゅ……ずぷっ……ばちゅっ ばちゅっ ばちゅっ どびゅっ)
「あ、ん……ぅ……くっ、んんっ……あ、はうっ……!」
「あー?七華を犯してるに決まってんだろ。つーか心配すんな、一発ヤったら『元に戻して』やっから」
「『元に戻す』…!?……『時見』のザギは未来を予知すると噂されていましたが、もしや貴方の本当の力は……」

「察しがいいねえ色男。だがどうやらその剣で斬られると、『斬られた運命』が確定しちまうらしくてな。
斬られた瞬間より前には戻れなくなっちまう……でもま、トーメント王の手先の女どもが逃げる前ぐらいまでなら戻れるぜ?」
「なに……!」
外道キャラの本性を見せたザギと、彼の真の能力に気付いたアルフレッド。
両者の間で微妙な駆け引きが行われていた。

「え……時間を戻す?……それなら、この虫の群れもなかったことに出来るのかな?」
「……時間を操る力なんて、ルミナスの魔法少女でもレア中のレアなのに……」
(ぶぅぅぅん……ギチギチギチ!)
「ひぅぅっ!?…ま、魔喰虫が、胸にぃ……い、いやぁっ!!そんな所っ、カジっちゃだめぇっ…!」
「こ、こらー!鏡花ちゃんから離れなさ……きゃっ!?……わ、私の方にも来てるっ……!」
アルフレッドが回答を迷っている間に、虫の大群は鏡花に群がり、唯の足元にまで迫っていた。
二人は気絶した瑠奈と彩芽を身を挺してかばうのがやっとで、このままでは四人とも虫の群れに呑み込まれるのは時間の問題だろう。

「さーてどうする?俺をその剣で斬れば、その瞬間に運命が確定……
あっちのメスガキ共も虫の苗床にされ、おっぱい女達を取り逃がしちまう。
何も難しい事じゃねえ。俺が満足するまで黙ってりゃ、それで万事丸く収まるんだぜ?ん〜〜?」
(……どうする。目の前で暴行されていると言っても、この女は、所詮敵……
それに、もしトーメント王が神器を手に入れる方法を見つけたのだとしたら、最早唯さん達にも人質の価値は無い。
いっそ、こいつを放置して王を追った方が……)
ザギの提案に首を縦に振るか否か。一瞬色々な思考が頭をよぎるアルフレッドだったが……

「あ、そうだ!アルフレッドさん!剣じゃなくて素手で殴ればいいんです!相手怪我してるから余裕で勝てます!」
「ちょ!?唯ちゃんそんな、身も蓋もない!」
「あ……なるほど」
主人公の発想が逆リョナし始めた。

「おいコラ待て!お前は誰にでも分け隔てなく接する性格で、コワモテな相手でもすぐ仲良くなっちゃうキャラ(Wiki調べ)じゃなかったのか!?」
「それとこれとは別です。七華さんにもひどい事してるし……さすがに許せません」
「……それもそうだね。じゃあ私も久々に全力全開の攻撃魔法を……」
「そうだ!時間を戻すまで蟲を食べさせ続けるっていうのは?」
「わーー!わかりましたすいません!戻す!戻しますー!!」
(こ、こいつ色々とヤベえな……怒らせないようにしとこう)

というわけで。

「……そんなことでしたらよぉ……そこのメス共に聞けばよろしいでございませんか。彼女たちはトーメント王の手先なんですよね?神楽木さんン?(棒)」
「……そうだとは思いますが、彼女たちを尋問する時間の余裕はなさそうです。……もしかすると今頃森に入られてしまっていて、ヴィラの一族と交戦しているかもしれません。……それとザギさん、なんだか死んだ魚みたいな目になってますよ?」
「…アッハイ、私は問題なく健康です」

ザギは無事にエミリアとロゼッタを尋問していた時間まで戻って来た。
だが……

(ボワン!!)
「きゃあっ!?何ですか、この煙は……!」
「キャーハハハハ!このアイナ様が姿を消して近付いて来ていた事、見事に全員忘れてましたわね!ロゼッタとエミリアちゃんは頂いていきますわよー!!」
「そ、その声はアイナちゃん……!」
「しまった、ロゼッタお嬢様達が……!」
(ガコン!バキ!!)
「きゃあっ!?誰よこんな所に箱なんか置いたの、って……」
(ぶぅぅぅうううん! ぞわわわわ ぎちぎちぎちぎち!!)
「「いやああああああっ!?」」

……とこんな感じで、ロゼッタ達を取り逃がして厨子から瑠奈と彩芽と虫がワラワラ出てくる世界線は変わらないのであった。

「……今のは俺のせいじゃないですよね唯さん」
「え?そうですね……どうして私に聞くんですか?」
「なんかさっきまでとキャラ変わってませんか貴方」

305名無しさん:2018/11/01(木) 13:06:53 ID:???
ロゼッタ達が逃走し、厨子から虫があふれ出し、七華が気絶し、瑠奈と彩芽を救出し……
ひとまず混乱が収まった頃には、全員ぐったりと疲れ果てていた。

「ったくてめーら、虫ぐれーでピーピー騒ぎやがって……ホンット女子ってこーいう時使えねーな!!」
「どーもすいません、女子なもんで」
なんだかんだで再びチンピラ化したザギ相手に、唯は例によってすんなり打ち解けている。

「お前らが駆除するの手伝わねーから、何匹か街の方に逃げちまったぞ……
あれ成長すると魔物化してマジでシャレにならねーんだからな!」
「そ、それはそんなの飼ってる七華さんが悪いのでは……」
「……それもそうか。んじゃ、とりま七華が魔物化した蟲の群れに苗床にされるスピンオフを、誰かが書いてくれるようお祈りしとくとして、だ」
「……残る問題は、魔の山に向かったトーメント王ですね。ここは一旦休戦して、奴を追うというのは如何でしょう」
ロゼッタは仲間に回収されたならひとまず危険はない、とアルフレッドは判断した。
王が封印をどうやって突破するつもりかはわからないが、何らかの手を講じている可能性は高い……緊急度が高いのはこちらの方だろう。

「俺は疲れたからパスだな……代わりに『アイツ』に追わせるから、後はてめーらで勝手にやれ。
俺はアホらぎを城に連れ帰る。ついでに犯す」
「…言う程疲れてないでしょ貴方。ところで『アイツ』というのは、まさか……」
「そう……討魔忍五人衆『残影のシン』。……ま、俺が言わなくてもテンジョウ様の命令でとっくに動いてるだろうけどな」

こうして、アルフレッドは王を追い、ザギは七華を連れて引き上げる事になった。
そして……

「……唯さんと鏡花さんは、瑠奈さん達が目を覚ますまで付いていてあげてください」
「え?アルフレッドさん一人で行くつもりなんですか!?」
「王が直接動いているとなると……危険すぎます。安全な場所に身を潜めているべきだ」
「ちょっと待ってください……さんざん私達を勝手な都合で振り回しておいて、用が済んだら置き去りですか」
有無を言わせないアルフレッドの態度に、とうとう鏡花の堪忍袋の緒が切れた。

「ちょ……鏡花ちゃん、落ち着いて!」
「そ……それについては大変申し訳なく思っています。しかし今の状況で、貴女方を連れて行くわけには」
「はぁ〜?オイオイ。まだ揉めるのかよ?揉めるのはその乳だけにしといてくれや……
要するにお前、単に『重要アイテムを手に入れるためのカギ扱い』が気に喰わねえんだろ?」
「も、揉め!?……いえ……そんな事……ない、と思います…けど……」
……割と図星だった。
鏡花だけではない。『運命の戦士』の五人は、これまで何かにつけて連れまわされたり囚われの身になったりしていたのだ。
……鬱屈した思いが溜まってしまうのも、無理はなかった。

「お前はさっさとあのアホ王を追っかけな、色男。まあ悪いようにはしねえよ……
……お前ら集合。いいか、例の森に行きたかったら、それ相応の実力をだなゴニョゴニョゴニョ」
「アリサお嬢様の件もありますし、正直不安ですが……今は討魔忍達の元に居た方が安全か。……いいでしょう」

女性の扱いが苦手なアルフレッドとしても、鏡花に詰め寄られる状況から解放されたのは有難い、と言うのが正直な所。
この場はザギに任せて森へ向かう事にした。

306名無しさん:2018/11/01(木) 22:24:19 ID:???
「……ね、ねえ唯ちゃん。どうするつもりなの?
さっきは私、ついカッとなっちゃったけど……毎回捕まってばっかりなのがイヤだっただけで、別に魔の森に行きたいとかそういうつもりは……」
「うん……鏡花ちゃん。実はね、私……考えてることがあるの」

アルフレッドが、そしてトーメント王が『神器』を狙っている理由。
詳しい事は未だわからないままだが、ただ一つ言えるのは……

『…いろんな女の子を、好き勝手にいたぶり続けたい…永遠に。そのために俺様は、このリョナラー世界を造ったんだ』

……やはりトーメント王こそが全ての災厄の源であり、この世界を救うため、そして唯達が元の世界に帰るためには、避けて通れない相手だという事。

『だが……ゲームで作ったこの世界には、ある『制約』があってね。
王であり創造主であるこの私が倒される『可能性』を存在させなければならない』

……それを成し遂げられるのは、この世界の運命から外れた存在……異世界人である『運命の戦士』のみ。
だが、王やその部下である十輝星達の力は、あまりにも圧倒的だ。
いくら技を磨き、魔法を学び、力を付けても、所詮は普通の少女でしかない唯達に、勝機など無いに等しい。
対抗する術があるとすれば……

「みんなが言ってるあの『神器』っていうのがあれば……王様を倒して、元の世界に帰れるかもしれない!」
もちろん確証なんてどこにも無いが、僅かでも可能性があるなら全力でそれに賭けるのみ。
何度倒されてもリョナられても、決して折れない強い決意が、唯の瞳には宿っていた。
そんな唯を見て、鏡花は改めて思い出す。自分もまた、そんな唯の強い心に、今まで何度も救われてきた事を。

「わかったよ……そんな事が本当に私達にできるのか、あまり自信はないけど……唯ちゃんがそこまで言うなら、私も全力で協力する!」
決意を新たにする唯と鏡花。
だが、少女達を待ち受けていたのは……新たな試練だった。

「おーい、何コソコソ喋ってんだお前ら。
悪いが、テンジョウ様からの命令で、お前らは城から出すなって言われててな……」
……所変わって、唯と鏡花、そして気絶したままの瑠奈と彩芽は、首都ムラサメの城の地下室へ連れてこられていた。

「ええー!せっかくやる気出してたのに、また監禁ですか!?」
「お前らみてーな雑魚、外に出してもトーメントの連中にとっ捕まるのがオチだからな。
俺は七華を犯……ゴホン。色々と忙しいから、別の奴らに見張りを頼む事にした」

ザギの合図で、三人の討魔忍が姿を現した。一人は妖艶な美女、一人は筋骨隆々の大男、もう一人は老人。
……そして、小型のラジコンヘリのような飛行物体が一台。

「ふふふ……あら、どの娘も美味しそうじゃない。『血華のスイビ』よ、よろしくねん♥」
「お…おで……『熊腕のグリズ』……」
「ひょっひょっひょ……儂は『粘導のウズ』じゃ。年のせいか山林歩きはきつくてのう……」
(ウィーン カタカタ……やあ唯ちゃん、こないだはどうも……『電網のカイ=コガ』だよ、覚えてる?)

「……ま、最低限こいつらを倒せるぐらいには強くなきゃ、王も神器も夢のまた夢、ってこった……ヒッヒッヒ」

「!……そ、そういう事なら」「受けて立ちます……!」
「ふふふ……ヤる気満々みたいね。だけど私達も『見張り』を命じられた以上、逃がすわけにはいかないわよ。
全員、足腰立たなくなるまで可愛がってあげる……♥」

立ちはだかる新たな試練、その名も見張り四人衆。
果たして唯達は、この強敵たちを撃破して神器を手にすることは出来るのだろうか……

307名無しさん:2018/11/02(金) 21:55:16 ID:???
「先手必勝!神速掌て……!?」

(ドローンからの映像を解析、対象に金縛りを付与……ククク、悪く思わないでね、唯ちゃん)

電網のカイ=コガ……電子を介した呪術を得意とする討魔忍であり、見張り四人衆の中では唯一の闘技大会予選落ちだ。しかし彼は優勝者であるリザ、本戦出場者のヤヨイ、そしてここにいる唯を同時に相手取り、あと一歩のところまで追い詰めた上、ぶっちゃけスーパーハッカーAYMの乱入がなければ勝ってたであろう、中忍とは思えぬ実力者である。

カイは戦闘が始まってすぐ、e-vilCurseによって唯を金縛りで拘束したのだ。先手を打とうとした唯は、踏み込んだ姿勢のまま固まってしまう。

(ククク……流石に優勝者のリザちゃんにちょっかい出すのは諦めるけど、唯ちゃんとヤヨイちゃんには仕返ししたいと思ってたんだよ!僕はこの子をやる!)

「う、動け、ない……!」

「唯ちゃん!」

「おっと、んなら、おで、オッパイちゃんがい゛い゛なぁ」

唯を助けに入ろうとした鏡花の前に、熊腕のグリズが立ち塞がった。彼は前年度の大会でアゲハに敗退した討魔忍である。熊のように毛むくじゃらな身体をした巨漢であり、その名の通りベアハッグを得意とする。ちなみに、トロールの血を引いているとかいないとか。

「うふふ♡なら、私たちは」
「気絶している二人を狙うとするかのう」

血華のスイビ。『ガチレズ吸血鬼』の異名を取る女忍び。背中には小さな蝙蝠の羽がついており、発達した犬歯がチャームポイント。服装は露出の多い黒のドレスである。

粘導のウズ。上位クラスの討魔忍で、世にも珍しい「スライム使い」。巨大な壺の中に飼っているスライムを巧みに操り、アイセをあと一歩のところまで追い詰めた。

その二人は、未だに意識を失っている瑠奈と彩芽ににじり寄る。

「る、瑠奈!彩芽ちゃん!」
「気絶してる人を狙うなんて!」
「ひょひょ、勝負の世界に卑怯もラッキョウもないのじゃよ!」
「ふふふ♡久しぶりのご馳走ね♡」

ウズの壺から飛び出てきたスライムが瑠奈に飛びかかり、スイビは牙を剥いて彩芽の首筋に噛みつきに行った!

308名無しさん:2018/11/03(土) 00:39:40 ID:???
ベチョベチョ!ヌチュゥ!

「……んぎゅ!?な、なに……!?」

月瀬瑠奈は、突然自分の上にのしかかって来た、ネバネバとした気持ち悪い感触によって目を覚ました。瑠奈の記憶は、七華に負けて、蟲のびっしり詰まった厨子の中に放り込まれ、全身を虫に這いずり回られ続けたところで途絶えていた。

「なっ……あっ、ひゃあぁぁっ!?」


だが、瑠奈に現在の状況を把握する暇は与えられなかった。瑠奈の上に覆い被さったスライムが、服の隙間から彼女の肢体に這い回り、胸に到達したからだ。

スライムたちは瑠奈のたわわな果実を何度も何度もぐにゅり、むにゅりと変形させ続ける。

「むぅ?その反応……よもや、既に別のスライムの調教を?確かめてみるかの」
「る、瑠奈ぁ!」

唯の悲痛な声も、スライムに胸を責められ続ける瑠奈に届いているかは定かではない。瑠奈は以前、射乳体質になってしまうほどの責めをスライムから受けている。
今の瑠奈は、否が応でもその時のトラウマを刺激されていた。

しかもウズのスライムは、媚薬粘液を全身から発生させ、瑠奈の胸に練りこんでいた。

「はひゃぁぁああぁっ!?むね、あついぃぃぃ!!ひきゅぁぁああぁぁっ!!」

一際大きい嬌声をあげた瑠奈の胸から、母乳が噴出される。

「ほっほっほ、どうやら調教済みらしいの……じゃが、それはそれでやりようはある」
「……!?ご、ぽぉお……!」

敢えて顔は避けていたスライムたちが、瑠奈の全身を丸呑みにする。


「ワシのスライムは肉体だけでなく、脳すらも犯す……このままスライムで脳クチュ常識改変じゃ!」

309名無しさん:2018/11/03(土) 21:59:18 ID:???
ぬちゅぬちゅっ!ごぽっ……じゅぶぶぶぶぶ!
「きゃあっ!!うっぷ……がはっ……!!」
何が起きているのかもわからないまま、瑠奈は全身をスライムに呑み込まれていく。
いくら手足を必死に振り回しても、不定形のスライムに打撃は通用する筈もなかった。
新たに修得した技『火蜥蜴の吐息(サラマンダー・ブレス)』を使おうにも、今のように呼吸すらできない状況では発動できない。

にゅるる……じゅぽっ……!
(ま、まずい……このまま、じゃ……っ!?)
次第に呼吸が苦しくなっていき、必死にもがく瑠奈。
だがスライム達は、獲物をただ溺れさせるだけで済ませるつもりはないらしい。
鼻の穴や耳の穴、更には唇をこじ開け、スライム達は少しずつ、瑠奈の中に入り込もうとしている!

「ひっひっひ……無駄じゃ無駄じゃ。どんなに口や目を閉じようと、手で塞ごうと、スライムは止められやせん……体の中の中までスライム漬けにしてやるぞい」
にゅるるっ…!!…ぢゅぶぶぶぶぶぶぶ
「う…〜〜〜〜…っ……ぅああああああ!」
スライムが指の隙間をすり抜け、耳の穴から瑠奈の入り込んだ……その瞬間、頭の中を直接かき混ぜられるような異様な感触に襲われる。
堪らず気泡を吐き出し絶叫すが……真の恐怖が訪れるのは、その後だった。

(が、ぐ……しまっ……スライムが、口の中に……!?……なに、これ……あ、まぁい……♥)
「クックック……どうやら効いてきたようじゃのう……
儂のスライム達がお前さんの脳みそを弄って、感覚そのものを作り変えとるんじゃ。
もう少しすれば、スライムの虜になっちまうだろうよ」
「………!!」
(…あまくて、とろけそうで、あったかくて……や、ば……これっ……きもち、よすぎて……だ、め……♥♥♥)
先程まで必死に手足をばたつかせていた瑠奈だったが、その動きは目に見えて緩慢になっていった。
内腿をもじもじと擦り合わせ、胸が潰れそうなほどに自分の身体を抱き締め、
何かを求めるように開け放たれた口から舌を突き出し、視線は虚空を泳ぐ。
スカートやブラウスが少しずつ溶かされ、薄いイエローのブラやショーツが見え隠れしているが、隠すどころか気付く余裕すら無くなっていた。

「ザギ様は『油断するな』と仰っとったが……あっけなかったのう。
では、仕上げといくか。この壺の中でカキ回して……スライム中毒の雌奴隷、一丁上がりじゃ。ヒッヒッヒ……!」
(ま、また、とじこめられちゃう……しかも、スライムと…!?…そんなの…ぜったい、いや……なの、に……)
じゅぶっ……にゅるるるるるる!!
「………〜〜〜〜っっ!!」
どんなに抗おうと思っても、屈したくないと願っても……頭の中をスライムにちゃぷりと揺さぶられると、どうする事も出来ない快楽の渦に、全身が反応して硬直してしまう。

「その名も渦壺忍術、超強力洗浄全身揉み洗いの術……ひょっひょっひょ……!」
瑠奈は結局、抵抗らしい抵抗も出来ずに、粘導のウズのスライム壺の中に閉じ込められてしまった。

310名無しさん:2018/11/03(土) 22:02:11 ID:???
「ごぼごぼ、ごぼ……っ………!……」
(ど、どうなってるの……いきが、できなくて、くるしいはずなのに……からだがきもちよすぎて……なにも、わからな……)

壺の中に閉じ込められた瑠奈は、スライムに頭の中を『洗浄』されながらごと洗濯機のように高速回転させられる。
全身を無茶苦茶に振り回され、何度も壺の内側に叩きつけられ、手足や首をいろいろな方向に引っ張られ……
それでも瑠奈の身体は全く痛みを感じることは無かった。
激突の衝撃をスライムが吸収しているせいか。あるいは、痛覚そのものを作り変えられているせいか。
だがそれでも心の奥底の方で、何かが必死に警鐘が鳴らし続けていて……

「ぐすっ……ひっく……う、ぇぇぇ……」
(……この、声は……誰……どうして、泣いているの……)

所謂、死の間際に見る類の幻影……走馬灯のような物が、瑠奈の意識に映し出されていた。


「もう大丈夫だよ……虐めっ子たちは、わたしがみんな追っ払ったから!」

「うう……ひぐっ……う、うえぇぇ……」

今にも沈みそうな夕日。

土手の上の小道。

そこに佇む二人の幼い少女。

一人は、短い髪にタンクトップ、ショートパンツ姿で、いかにも活発そうな印象を与える。

もう一人、腰まで伸びた長い髪。泥で汚れた白いワンピース。手足のあちこちに擦り傷が出来ていて、さっきからずっと泣き通し。

……瑠奈の意識は、二人の上空をふわふわと空中を漂っていた。

なぜ自分は今、こんな光景を見ているのか。そもそも自分は誰で、何をしていたのだったか……頭の中がぼんやりとしていて、しばらく思い出せずにいた。だが……二人を見ている内に、少しずつ、記憶が蘇ってくる。

(そうだ。この土手……この道……あの時の……)

二人の少女に、見覚えがあった。忘れようにも忘れられない。

「だから、もう泣かないで……そうだ。なまえ、おしえてよ!……わたし、しのはらゆい!」

「ぐすっ……わ、わたし……つきせ、るな」

(あれは…………私だ)

……大きな、禍々しい運命に翻弄され続ける二人の少女の出会い。
すべての始まりとなった日の事を、瑠奈は思い出していた。

311名無しさん:2018/11/04(日) 03:45:59 ID:???
「るなちゃんっていうんだ……すっごくかわいいなまえだね!」
「……かわいくないよ……みんなには、バカルナとかアホルナとかいわれてるし……」
「ええぇー……きっと、みんなるなちゃんがかわいいからヤキモチやいてるんだよ!うん!きっとそう!」
「……うぅ……ぐすっ……!」
「わわ、な、なかないでるなちゃん〜!」

馬鹿にされたことを思い出したのか、ロングヘアの少女はまたさめざめと泣き始めた。
(これは……唯と初めて会った時の記憶。いじめられてた私を通りがかった唯が助けてくれた、大切な思い出……)

唯も瑠奈も5歳。もうすぐ小学生に上がる春の訪れと同時に2人は出会った。
当時の瑠奈は臆病で気弱な性格だった。兄の陰に隠れてばかりで、自分の意見をはっきり言えない女の子だったのだ。

「……ゆいちゃん、すごくつよいんだね。おとこのこたちにまけないなんて。」
「えへへ……おじいちゃんがおしえてくれた、合気道っていう武道なんだよ!」
「合気道……なんだかすごいね。」
「心身ともに鍛えること。それ即ち己をを高めること……っておじいちゃんがいってるんだ。……わたしもよくわからないけど……」
唯は照れ臭そうに頭を掻いて笑った。
沈みゆく夕日が唯の顔を照らしていて、すごく綺麗な笑顔だったのを今でも覚えている。
そんな唯の笑顔を見たから、あんな決心がついたのだろう。

「……わたしにも、できるかな?」
「……え?」
「ゆいちゃんみたいに……つよくなって、だれにもまけないようになりたい。……ゆいちゃんみたいになりたい。」
「……るなちゃん……」
涙声になりながらも決意を伝える自分を見て、瑠奈は懐かしい気持ちになった。

「だから……ゆいちゃん……!」
「ん?なぁに?」
「……そ、その……!あの、えっと……うぅう……」
「ど、どうしたのるなちゃん?なんでもいっていいよ!わたし、なんでもきくよ!」
唯に優しく促され、小さな自分がゆっくりと口を開く。
こんな簡単なセリフが昔は言えなかったんだと、瑠奈は改めて気づいた。

「ゆいちゃん……わ、わたしと……あのっ、……とと、ともだちになってっ!」

312名無しさん:2018/11/04(日) 10:23:14 ID:???
「え?なにいってるの?」

「ぅ……そ、そうだよね、いやだよね、わたしなんかと……」

「おかーさんがいってたよ!じこしょーかいすれば、もうおともだちだって!」

「ふぇ?」

「だから、わたしとるなちゃんはもうおともだち!よろしくね、るなちゃん!」

「う、うん……よろしくね、ゆいちゃん!」

あれからだ、自分と唯が友達に……親友になったのは。
それから自分は、弱い自分を変えたくて、髪を短くして、唯のお爺ちゃんの勧めで空手を始めて、メキメキと頭角を現していった。

唯と一緒に上がった小学校でも、徐々にハッキリと物事を言えるようになり……唯とはずっと仲良しだった。

「ねぇ、唯ちゃんのこと、唯ってよんでいい?その代わり、わたしのこともよびすてでいいよ……ううん、いいわ!」

「え?いいけど、どうして?」

「おに……あにきが言ってたのよ、しゃべり方から強気にいくべきだって!」

「なんだかよくわからないけど……分かったよ、るな!」

気がつけば、自分の方が男勝りな女の子になっていて、周囲からは唯の方が気弱かのような印象を持たれることもあった。

でも自分は、唯の心の強さを知っている。それに救われたのだから。

だから瑠奈は、容姿端麗、成績優秀、ついでにロリ巨乳の完璧美少女になっても、自分を磨くことに余念がなかった。

そう、強くなって唯のようになるために……そして、今度は自分が、唯を守れるようになるために……!


「ご、ぽ……!」
(そうだ、私は……!)

スライムに溺れ、濁った色をしていた瑠奈の瞳に、光が戻る。

(私は、絶対に諦めない……!)

あの日の誓い……唯のように強くなるという誓いを、果たす為に。

(極光体術、奥義……!蝶の演舞!)

313名無しさん:2018/11/07(水) 23:00:44 ID:???
(ぐちゅっ…じゅぶぶぶぶ……)
「ひょっひょっひょ……そろそろ頃合いかの。
スライムに全身を掻き回されて、もう助平な事しか考えられないじゃろ」
壺からは暴れまわるスライムの粘音しか聞こえなくなり、瑠奈の悲鳴や嬌声もいつしか途絶えていた。

「い、いや……瑠奈……瑠奈ぁーーーっ!!」
「クックック……いつ聞いてもそそる悲鳴だね、唯ちゃん。
そうだ、他の仲間が全員始末されるまで、このまま金縛りにしておいてあげようか。
たっぷりと絶望を味わわせてから、最後にゆっくり止めを刺してあげるよ……!」
唯はカイ=コガに金縛りにされたままその一部始終をまざまざ見せつけられ、悲痛な叫び声を上げる。
……その時。

「極光体術、奥義……!蝶の演舞!」
(ドポッ……ビシッ!!)
「ぐおぅっ!?」
壺の中から瑠奈が飛び出し、蝶を思わせる華麗な動きで宙を舞った。
宙返りしながらの回転蹴りは鞭のように鋭くしなり、油断していたウズの頬を強く打ち付ける。

「…はぁっ……はぁっ……ライカさんの見様見真似だけど、上手く行ったみたいね……」
極光体術奥義、蝶の演舞。相手の攻撃の動きに逆らわず受け流し、隙を見て反撃する技である。

「まさか儂の渦壺忍術から脱出するとはのう……
じゃが、スライムに嬲られまくって、もう戦う体力なんぞ残っていまい。止めを刺されるのがちょいと遅くなっただけじゃ……!」

ウズの言うように、瑠奈はスライム壺による『超強力洗浄全身揉み洗いの術』を受け続けて、既に満身創痍だった。
スカートもブラウスも原形を留めないほどボロボロで、ブラジャーは肩ひもが外れて片胸がこぼれ落ちてしまっている。

(うぞうぞ……くちゅっ)
「ん、っ……!……く、うっ…」
体にへばりついたスライムの小片が怪しく蠢いて胸の先端を啄むと、じわりと母乳が染み出してきてしまう。
魔物の業に開発され敏感になった身体は、それだけで快楽に屈してしまいそうになるが……

「絶対、負け、ない……私は、強くなるんだ……トーメントのアホ王や、十輝星達……この世界の、唯を苦しめる奴ら全てから、唯を守り抜くために……!」
(ボゥッ……!!)
疼く身体を押さえながら……文字通り、瑠奈は激しく闘志を燃やした。
竜殺しのダンから伝授された極光体術の奥義、火蜥蜴の吐息(サラマンダー・ブレス)を発動し、体内の闘気を炎の魔力へと変えて身に纏う。

「ぬうっ!?……何じゃ、この気は……戻れスライム達っ!」
瑠奈の身体にまとわりついていたスライム達は、炎に焼かれて追い払われていく。
ウズはスライム達に号令をかけ、自信の守りを固めようとするが……

「遅いっ!!……極光体術・火蜥蜴爪!(サラマンダー・クロウ)!!」
瑠奈はそれよりも早く踏み込み、必殺の一撃を繰り出した。
極光体術・火蜥蜴爪……
体内の気に炎などの魔法属性を付与する『火蜥蜴の吐息』と、拳に斬撃を付与する『魔拳・蜥蜴の尻尾切り』の合わせ技。

(ぶしゅしゅしゅしゅ……!!)
「ぬああああっ……!!」
上級レベルの魔剣に匹敵する斬撃は、スライム達を易々と切り裂き、跡形もなく燃やし尽くす。
そしてウズは、ゴムボールのごとく吹き飛ばされ、壁に叩きつけられて気絶した。

314名無しさん:2018/11/08(木) 00:28:24 ID:EqWPjWRo
「はぁっ、はぁっ……この、スケベ親父っ!そこで寝てるといいわ!」
ウズを倒した瑠奈は体についたスライムを引き剥がして、唯の姿を確認した。
「す……すごいよ瑠奈っ!あんな技練習してたの?」
「あ、あんなのただのマグレだから………ってか、唯捕まってんじゃない!一体これどういう状況なの!?」
唯が捕まっており、辺りは見知らぬ忍びだらけ。鏡花が熊男と戦っていて、彩芽は気絶している。
「え、ええっと………何から話せばいいかなぁ………」
「ま、なんとなくわかったわ!こいつら全員ぶちのめせばいいんで………しょっ!」
瑠奈は見るからに怪しい目の前のドローンを破壊し、唯の拘束を解いた。

「あらあら、ウズのおじいちゃんは鼻の下伸ばして気絶しちゃったみたいね。あの人らしいっちゃあの人らしいわ。」
彩芽に目をつけたスイビはゆっくりと彩芽の体を持ち上げて、メガネに手をかけた。
「………んぅ………?」
「あらぁ〜♡ちっちゃいお顔、かわいい唇、ぷにぷにほっぺ……なんて可愛い子なのかしら♡」
「あ……あれ……?目の前に妖艶なサキュバスがいる………ボクサキュバスには嫌な思ひ出が……」
「あら、私は魔物なんかじゃないわよ〜?スイビっていう名前がある立派な討魔忍の女の子なんだから♡」
スイビは犬歯をキラリと光らせて、彩芽の首筋に口を近づけていく。

「え………な、なに………?」
「決まってるじゃない……あなたの血を全部吸ってあげるの♡かわいい女の子の生き血は最高なのよぉ?」
「う、うわあああああっ!」
口をガバッと開いたスイビを突き飛ばして、彩芽はよろよろと後ずさった。

(な、なにか武器になるものは………ボクの鞄は……?てかどういう状況だよこれ………!)
必死に辺りを見回してみるが、周りの仲間たちは拘束されていたり戦っていたりでそれどころではなさそうだった。
「怖がらなくてもいいのよ?私の吸血は快楽も送り込んじゃうんだから♡ガチレズ吸血鬼の異名は伊達じゃないのよ〜?」
「伊達じゃなかったら尚更嫌だよ!てかガチレズなら瑠奈とか鏡花とか胸でかいやつのほうがいいんじゃないか?ほら、体積が多い分中に入ってる血も多そうだし………」
口八丁で乗り切れるものなら乗り切りたい彩芽だったが、スイビはゆっくりと近づいてくる。
「そりゃまぁ、赤ちゃんみたいに乳首に噛みついて下からのアングルを楽しむのもいいけど……あなたみたいな普通のかわいい女の子が好きなタイプもいるのよぉ♡」
「ぐ……!万年栄養失調気味のボクの血なんか美味しくないはずなのに……!あっ!」
「さぁ、逃がさないわよおチビちゃん!!」
後ずさりをしていた彩芽の手がついに壁がついた瞬間、スイビはすばやく飛びかかった!

315>>303から:2018/11/09(金) 01:06:25 ID:???
「さ〜て、いつの間にかハロウィンの時期も過ぎちゃった感じだが……気にせず出でよ!パンプキンビースト!」
「ガルルルッ……」「グルル、ガゥッ!」「グゴッ……!」
バトルスーツの特殊能力によって、王は異空間から魔獣を召喚した。

【パンプキンビースト】
全身腐敗しゾンビ化した狼型の魔獣に、カボチャの実に似た巨大な植物が寄生した魔物。
猛毒を持つ鋭い爪と牙、そして背中の植物から生えたイバラの蔓を主な武器とし、瘴気と腐臭をまき散らしながら襲い掛かる。
実は背中に寄生した植物が本体であり、これを破壊しない限り倒すことは出来ない。

「それじゃ、まずは……妹ちゃんの方から行くかなぁ。ヒヒッ!」
「い、一体何を……きゃああぁっ!!」
王はミゼルを捕らえた方のマジックハンドをぶんぶんと振り回し……ゾンビ化した魔獣の群れの真ん中に、放り投げた!

「さて、妹ちゃんは無限に湧き続ける魔獣の群れ相手に何分ぐらい粘れるかな〜?……んじゃ、ゲームスタート!」
「「グォオオオオオゥ!!」」
「く……なんて悪趣味……ですが、そう簡単に私達を倒せると思ったら、大間違いです……咲いて、戦いの花!」
何とか無事に着地すると、ミゼルは先ほどと同様、戦闘力を上昇させる魔法の花を咲かせようとする。
……だが、赤い花はつぼみを付ける前に萎れ始め、瞬く間に枯れ落ちてしまった!

「こ……これは一体…!?……う、けほっ…けほっ……!!」
「ヒヒヒ……魔獣どもは魔界の瘴気を全身からまき散らしてるからな。そんなショボい花、枯れるのに10秒も掛からんよ。
もちろん人体にもめっっちゃ悪い!お子ちゃまには刺激が強すぎるかもなぁ?」
穢れた瘴気に咳き込み、膝をつくミゼル。すると……にちゃり、と粘つくような感触があった。
大地そのものが瘴気に冒され、周囲は花も咲かない毒と汚泥の沼と化している…!

「ミゼルっ!!……おのれ、卑劣な真似をっ……!!」
「ヒヒヒッ!そういや、君ら姉妹は二人揃って真の力を発揮するんだっけ?
てことは妹ちゃん一人じゃ、大した事ないって事か。こりゃ、あんまり長く持ちそうにないかなぁ〜?」
「グルルルルッ!!」
「……こ、これしきの事で、私は……私達『樹華の姉妹』は、負けませんっ!…行けっ…!!『裂華斬』!」
立て続けに襲い掛かる悪条件にもめげず、ミゼルは一人、魔獣の群れを相手に必死の戦いを繰り広げた。

「はあっ!!」 「ガルゥッ!」
「たあぁぁっ!!」 「グルルルッ!」
「こん……の、おっ!」 「ギャオオオオゥ!」
ミゼルが裂華斬を一度振るう度、魔獣が一匹倒れる。
魔獣が一匹倒れる度に、新手の魔獣がまた一匹現れる。
新たな魔獣が現れる度に、瘴気はミゼルの身体を蝕み、大地を穢していき……

「グルルルル……」「ガルルッ……」
「はぁっ……はぁっ……まだ、です……うっ……!……げ、ほ……うぇっ……!」
少しずつ蝕まれていく身体。一向に数の減らない敵。
猛毒の汚泥に膝まで漬かり、今にも崩れ落ちそうなミゼルを、当初の倍以上に数を増した魔獣の群れがとり囲む。

「ミゼルっ!!……く、…おい貴様!今すぐに止めさせろ!私が代わりにっ……!!」
「ヒヒヒッ!そんなに慌てなくても、お姉ちゃんもすぐ、後を追わせてやるさ。さあ、そろそろフィナーレだ……!!」

「「ギャオオオゥッ!」」
「ごめん……なさ、い………姉、さま……!」
魔獣の群れの毒爪毒牙、寄生植物の毒液とイバラの鞭が、前後左右あらゆる方向からミゼルに襲いかかった。

316>>314から:2018/11/10(土) 01:44:04 ID:???
「こ、こうなったらボクも現実世界の回想パートからの覚醒に入るしか……って肝心の亜理沙がいない!」

「訳の分からない事を言って煙に巻こうとしても無駄よぉ♡さぁ、大人しく私のご飯になりなさぁい♡」

スイビのチャームポイントである発達した犬歯が、カプ、と彩芽の首筋に刺さる。

「ぐ、痛っ!」

血管に突き刺さった牙による、鋭い痛みに声をあげる彩芽。だが、本番たる吸血行動はこれからである。

「んく、んく……ぐちゅ、ぢゅる……」

「ちょ、ま、ぐ、つぅう……!」

彩芽の首筋から、ドクドクと血を吸うスイビ。体の中から大事なモノが抜けていくような感覚に苦しめられる彩芽だが、次の瞬間には、その痛みは快楽に置き換わっていた。

「んんぅ!?ひ、ぁ……!」

知らず知らずのうちに内股を擦り合わせ、熱い吐息を吐いてしまう彩芽。そんな彼女を見て、スイビは彩芽の首筋から口を離して、恍惚とした表情を浮かべる。

「ぷはぁ、お・い・し・い♡」
「ん、うぅ……!瑠奈、唯、助けてくれぇ……!」
「あ、彩芽!」
「瑠奈は休んでて!私が彩芽ちゃんを!」

ダメージの色濃く残る瑠奈を休ませ、スイビに襲われる彩芽に駆け寄る唯。

「逃がさないよ唯ちゃん!ドローンが破壊されようと、僕にはアバター召喚がある!」
「カイ殿!助太刀致す!」
「デュフフフ!」

が、突然現れたカイ=コガとそのオタク仲間の電子アバターたちが、唯の前に立ちふさがる。
そして鏡花の方も、グリズを相手に決め手に欠けていて救援する余裕はない。

「んふ♡カイ君たちが時間を稼いでくれてる間に、ちゃ〜んと吸い尽くしてあ・げ・る♡」
「ちょ、ほんと、ただでさえ貧血なのに、これ以上血を吸われたら……!」
「大丈夫よ、死んじゃっても眷属にしてあげるから♡」

再び彩芽の首筋に牙を突き立てようとするスイビ。絶対絶命かと思われたその時……!



「待ちなさい!その子をレズ責めでトロットロにするのは、この私……サキュバスのサキノよ!」



予想外の乱入者が現れた。

317名無しさん:2018/11/10(土) 10:49:26 ID:???
「お前は!……えーと、サキュバスの……助けに来てくれたのか!?」
「ふふふ……覚えててくれたのね。そう、アナタの初めて♥を頂いちゃった、サキノよん♥……ま、ここにはたまたま通りがかっただけだけどねぇ〜ん」

赤い瞳にツインテールに結んだ髪。頭には角、背中からはコウモリ羽を生やした、淫魔とも呼ばれる人型の悪魔。
かつて彩芽を襲ってファーストキスを奪い、トーメントを追放された……彼女の名は、サキュバスのサキノ。

「あら、魔物がこんな所まで入り込むなんて……油断も隙も無いわねぇ」
一方「血華のスイビ」も、ガチレズではあるが曲がりなりにも魔を討つ忍び『討魔忍衆』の一人。
魔物が街中、しかもムラサメ城内にまで侵入したとあっては見逃すわけにはいかない。

「え。初めてって……」
「彩芽ちゃん……け、けっこう進んでるんだね……」
「ちょっと待って唯!?なんか誤解してない!?」
……と、三人がどうでもいい所で動揺している中、互いににらみ合い火花を散らす。

「討魔忍衆『血華のスイビ』……相手にとって不足は無いわ。私とレスレイプ合戦で勝負(デュエル)しなさい!」
「ふふ……まさか淫魔にまで私の名が知れ渡ってるなんてね。いいでしょう、受けて立ってあげるわ」
(…なんつー火の玉ストレートな勝負名……なんだか大変な事になってきたけど、とにかく助かった)
清楚ビッチ小悪魔系ロリ巨乳美少女と、露出過多妖艶ナイスバディ吸血魔女に挟まれ、
平べったい胸を撫でおろす彩芽だったが……

「…じゃ、ルールを確認するわ。
二人でターゲットを挟んで前と後ろから責めまくって、より多くイかせた方が勝ち。
媚薬も吸血もアリのバーリトゥードでいいわね?」
「ふ……望むところよ」
「ちょっと待て!ターゲットってボクかよ!!」
……ぜんぜん助かってなかった。

(前攻サキノ!後攻スイビ!…デュエルスタンバイ!!)
アバターの一人がなぜか審判をやらされる。

「やっ……やめろっ!レズりたいならお前ら二人でやればいいだろ!」
(スタート!)
「ふふふ……それじゃ改めて」「いただきま〜す♥」
(……ちゅぷつ……くちゅっ!!)
「ううっ……なんでボクはいつも、こういう奴らにばっかり気に入られるんだ……んぶっ!?」
試合開始の合図と同時に、正面に立ったサキノが彩芽の唇を奪い、背後からはスイビが彩芽の首筋に噛み付いた。

「んっ……っむ……ぷはっ。なんでアナタが気に入ったかって?そんなの決まってるじゃない……かわいいからよ」
「う、くっ……ん、ぷ、はぁっ……!……」
淫魔特有の長い舌が、彩芽の咥内をすみずみまで舐り回す。
互いの舌がねっとりと糸を引きながら離れるのを恍惚とした表情で眺めながら、サキノは彩芽の耳元で問いの答えを囁いた。

「ふふふ……言えてるわね。見た目はムッツリなのに、ちょっとイジっただけで……」
「ひっ…!…や、そこ、だめぇ……きゃ、ふっ……んん!」
スイビも吸血していた牙を離すと、彩芽の乳首を指先で弄びながら、耳たぶを甘噛みする。
力加減を変える度に彩芽の声色と表情がコロコロ変わるのを、楽しんでいる様子だった。

「ふふ。こんなに反応しちゃって。知識だけ偏ってて、身体はウブなのが丸わかりね♥」
「普段は低い声なのに、ヨがると甘ぁ〜い声になるのね。そこもたまらないわ♥」
「おっぱいがちっちゃい分、全身密着できるし」
「こんなにレズりがいがある子、なかなかいないわ……貴女、もっと自分のミリョクを自覚した方がいいわよ?」
「は、うぅ……そんなの、お前らに褒められたって全然うれしくな……やあああああんっっ!!」

スイビが彩芽の両乳首を強く捩じり、サキノが彩芽の胸からお臍、そしてヴァギナを貝合わせで擦り付けると、彩芽は小さな体をガクガクと震わせて絶頂に達した。

……だが、淫魔たちのデュエルはまだ始まったばかり。この快楽地獄から抜け出す術はあるのだろうか……

318名無しさん:2018/11/10(土) 12:15:28 ID:???
「あ、彩芽ちゃんっ!…は、早く……助けないと……!!」
「くっ……何よ、この影みたいなの……取れないっ……!」
(邪魔はさせないよ、唯ちゃん……ドローンを壊されても、この部屋の監視カメラを通じて君たちの動きを封じる事ができる。
みんな仲良くアバター達の餌食になるがいい!)

(最悪だ……唯達は動けない……鏡花も、亜理紗も……だいたい、どうしてボクが『五人の戦士』なんだ?
他の四人と違って、ボクなんて……剣も魔法も格闘技も使えない。トーメントの、バケモノみたいな奴らに対抗する力なんて……)
単純な筋力で言えば、スイビやサキノは一般人とそこまで大きく変わらない。
だが、彩芽の筋力と運動神経は、一般人を大きく下回っていた。ついでに視力とコミュニケーション能力も。

(前後交代!前攻スイビ!後攻サキノ!…スタンバイ!!)
「ふぁ……もう、やらぁっ……やめ、てぇ……」
「ふふっ……だ〜め♥それで押し返してるつもり?」
「クスクス……生意気な子には、お仕置きが必要ね♥」
「ひっ……やぁっ、もう、吸わない、れえぇぇっ……!」
……故に、例え彩芽が二人の責めに抵抗しても、力で押さえつけられれば逆らえない。
そうして適度に嗜虐心を煽ってくれる所も、彩芽の「ミリョク」と見なされてしまっていた。

「ひゃうっ……ぼく……また、イっちゃうぅぅっ……!!」
(『戦士』なんかじゃない……ボクはいつも、サラさんや桜子さんや、亜理紗達に守られてるばっかりで……)
「今のポイントは、25対12で私がリード。でも……」
「ええ……前攻の方がイかせられるポイントが多いし、この程度のリードは想定内ね。
後半戦に入って、ターゲットの抵抗力は弱まっている。勝負はこれからよ……!」

『貴女にはきっと、素質があると思う…私のパートナーになってくれないかしら?』
『わたくし達が力を合わせれば、どんなに強大な敵でも、きっと道は開けるはずですわ!』
『彩芽さん、早速ですが、貴女の力を貸してもらえませんか?』
『彩芽ちゃん!お願い!ルミナスのみんなを救って!』

サラさん……亜理紗……鏡花、唯……どうしてみんな、こんなボクの事……
ボクなんて、アヤメカが無ければ何もできない……ただの足手まといなのに。

スイビとサキノのサンドイッチ快楽責めで意識が混濁し、プチ走馬灯状態の彩芽。
本当に追い詰められると出るもんなんだな……と、彩芽が感慨に耽っていた、その時。はたと気づいた。

(いや、待てよ。あるぞ……メカ)
体の一部過ぎて忘れていたが、彩芽のメガネは様々な機能を持つデバイスである。
教授に首輪を付けられていた時は、ヘッドフォンで音を遮断し、特殊メガネで言葉を文字に可視化して話をするという、非常にめんどくさい生活をしていた。
視線や音声などでコマンドを入力すれば……二人に直接攻撃は無理でも、唯達の拘束を解くぐらいはできるかも知れない。

「んっ…♥…きゃっ……もう、いきたく、ないぃっ……♥」
「ふふふ……彩芽ちゃんたらそんなこと言って、身体の方はイキまくりよ?……これはポイント三桁台後半の勝負になるかしら」
「後半の前攻を譲ったのは失敗だったわね、サキノ。
前半の貴女の責めを見て、気付いたわ……彩芽ちゃんはズバリ!お臍が弱いんでしょ!!」
「ひひゅっ!?やっ……だめ、そこ、やあぁぁっ……♥♥」
「ふ……そこに気付くなんて、流石ガチレズで名高い『血華のスイビ』。
……だけど、私の切り札はもう一つ残っているわ!淫魔秘術『テイルドリル』!!」
「やあぁぁっ!?…や、ら……おしりは、いやああああ!!」

だが、それは……彩芽に前後から密着する二人に悟られないように、そして二人の責めに堕とされる前に行わなければならない。
古垣彩芽……又の名をスーパーハッカーAYM。
己の貞操を賭けた緊急ミッションが、今密かに幕を開けようとしていた。

319名無しさん:2018/11/10(土) 16:59:26 ID:???
「ちゅ、ちゅ、ちゅぷくっ……ちゅるっ、ぢゅちゅっ……♥」

「やっ!?なめ、な、ひぃっ!?ぁあああああ!?はな、せ、えっっ……っ、く、あぁぁっ……も、だ、ぃくぅぅっ……♥」

スイビの舌が焦らすかのように彩芽のへその周りをぐるりと舌でカーブしたかと思えば、一気に奥まで突き入っくる。
その技量に悲鳴をあげて、再び絶頂するしかない彩芽。だが、スイビがへそを舐める為に俯いている今は、特殊メガネを操作する絶好の機会でもある。

(ま、まずはマルチ機能を起動して……)

視線入力でアヤメガネ・マークⅡを起動して、レンズに難しい文字列を並ばせる彩芽。後はアバターにハッキングを仕掛けるだけだが……

「んっ♥私の、尻尾の先っちょ……♥入って、くぅ♥」

「ひゃあああああ!?それだめぇっ、ずぼずぼしないれぇ……!」

後ろからサキノの尻尾が、彩芽のアヌスの奥へ奥へと侵入していく。彩芽の懇願を聞き届けるはずもなく、尻尾は肛虐ピストンを始める。奥まで入ってきたかと思えば次の瞬間には抜き出され、また括約筋を掻き分けて中に入っていく。

前後からの責めに集中力が保てず、ハッキングは遅々として進まない。


(で、でも、やらなきゃ……!マジでボクの貞操が……!)

「ん、あぁあああ♥もう、やだぁあああああ!!!」

頭をぶんぶんと振って嫌がる素振りを見せつつ、眼鏡のレンズに浮かぶ文字列に気づかれないようにする。ネペンテスの時も似たようなことやったな……と思っている間にも、へそ責めとアナル責めは激しさを増す。

「ぢゅる、れろぉ……!ちゅっ、ぢゅぅうぅっ♥️はぁぷ、んぢゅっ♥ぢゅぶブぶぶぅぅっ♥」

下品かつ淫猥な音を立てて、スイビがへそに埋めている口の動きを加速させる。

「あ、彩芽ちゃんのお尻の中、ぎゅうぎゅう締め付けてきてぇ……♥私も、尻尾だけで、イっちゃいそうだわぁ♥」

ぬぐッ……ぐぷ……っ!ぎゅち……!ずぷぅ……!

サキノの尻尾の動きもさらに加速し、いつしか彩芽の臀部からは、少なくない液体が分泌されていた。

「きゃはぁっ!?あっ、うぐぅっ……お、おぉおぉぉっ、もう、無理ぃ……!」

また絶頂を極めさせられ、落ち着こうと息を荒らげているうちに、再び絶頂させられる。

(も、もう、駄目、だぁ……!い、急がないと……!)

「堕ち」てしまうまで余裕がない事を本能的に理解した彩芽は、脳内でアドレナリンがドバドバ分泌されているのを感じながら、大急ぎで視線入力でハッキングを進める。

(よし、これでアバターたちはしばらく消えるはず……!本当にはコントロールを奪いたかったけど、もう限界だ……!)

途中から隠匿をほとんど放棄して、なんとかハッキングプログラムを完成させる彩芽。果たして、この拙速が吉と出るか凶と出るか……!

320名無しさん:2018/11/11(日) 21:52:03 ID:???
「あっ♥ あっ♥♥……も、らめ、イくの、とまら……にゃああああ♥♥♥」
(あーーっと!淫魔サキノ選手、背筋からうなじを舌で舐めまくり、乳首責めに尻尾の肛虐ドリルピストンで攻めまくり!
対するガチレズ吸血鬼スイビ選手も、おへそ責め、手マン、吸血で猛追!ターゲット、息もつかせぬ連続絶頂だ!
果たして勝利の女神(ガチレズ)はどちらに微笑むのか!いかがでしょう、カイセツさん!)
(彩芽ちゃん、最初の方は反抗的なセリフも飛ばしてたんですが、今は完全にトロットロで喘ぎまくりイきまくりですね。
後半に入ってもう100回以上は絶頂してるんじゃないでしょうか)
いつのまにかアバターが実況解説していた。

「フフフ……わかってるでしょうね。この勝負で勝った方が……」
「ええ。『ガチレズ三姉妹』の長女の座は譲らないわ……!」
(あーっと!リョナリレー小説界にまた一つ、三人組が誕生しようとしています!それにしてもひどいチーム名だー!!)
前後からの激しすぎる快楽攻めにメロメロになりながらも、なんとかハッキングプログラムを完成させた彩芽。
既にコマンドは実行され、効果が現れるまであと10数秒、という所だったが……

「……あら。これは何かしら……彩芽ちゃん?」
サキノが、彩芽のメガネに表示された文字列に気付いてしまった。

「『ハッキングプログラム実行中』ですって?……呆れたわぁ。この期に及んで、まだ何か企んでたのね」
スイビも異変に気付き、彩芽のメガネに手を伸ばす。

「だ、だめっ……!」
メガネを奪われまいと、両手で頭を押さえる彩芽。

「ふふ……無駄無駄。わかってるはずよ」「私達には、逆らえないって……」
スイビとサキノは、二人がかりで彩芽のメガネを奪いに掛かるが……

「わた、さない……こ、れ……だけ、はぁぁ……♥♥」
脇を擽っても、首筋に噛み付いても、お臍やお尻を攻めまくっても、彩芽はメガネを手放さずに耐えた。

「あらあら、ずいぶん反抗的ね……彩芽ちゃんのくせに」「今さら何をした所で、貴女じゃ私達には敵わないのよ。観念なさい」
「っぐ……確かに、ボクじゃ……お前達にはかなわない。だけど……」

『ハッキング成功』『e-vilCurseの機能を制限します』『アバターシステムダウン』
(!?…か、身体が、消える……一体何が……カイセツ、さ……)
(これはまさか、伝説の……スーパーハッカーAYM……)

「!?アバター達が……」「彩芽ちゃん、一体何を…!」
「ボクは、もう……一人じゃない」
小さな電子音と共に、ミッション成功を表すメッセージがメガネ型スクリーンに浮かぶ。

「!…よし、動ける……こらーーっ!彩芽を」「放しなさーーーい!!」
「「んぎゃうっ!?」」

……その直後。瑠奈の飛び蹴りと唯の掌底が、スイビとサキノに炸裂した。

321名無しさん:2018/11/13(火) 21:32:20 ID:2AS8qhKw
「あぁんっ!」
「きゃあぁんっ!」
やたらとエロい悲鳴を上げた2人は唯と瑠奈の打撃技で吹き飛ばされ、地面に転がった。

(な、なんてこった……!まさかあの女の子がスーパーハッカーAYMだったなんて……!)
ハッキングを食らってしまったカイのドローンも、情けない音を立てながら地に落ちる。
一度ならず二度までも、と思った時にはカイのモニターは真っ暗になっていた。

「彩芽ちゃん、大丈夫!?」
「へへへ……なんとか、運命の戦士としての面目は果たせたかな……僕の運のパラもかなり高いみたいだ……」
「冗談が言えるなら大丈夫そうね……でも身体がその……アレだろうから、あの2人はあたしと唯に任せて!」
「う、うん……ごめん、しばらくボクに触らないでね。高い声出ちゃうから……」
「「うん、その気持ちよくわかる。」」
自分たちがスライムに責められた経験からか、謎のシンクロを果たす瑠奈と唯であった。

「あぁん、もう!せっかくあと少しで頭の中を洗脳できるところだったのに!」
「あの子達、許さないわ!サキノ!あの子たちを1人ずつ捕まえて、再戦するわよ!」
体を抑えながら立ち上がる清楚ビッチ小悪魔系ロリ巨乳美少女と、露出過多妖艶ナイスバディ吸血魔女。
男なら是非とも捕まって色々と体験したいところだが、女である唯と瑠奈は絶対に捕まるわけにはいかなかった。

「鏡花ちゃんも頑張ってる……!瑠奈!ここは負けられないよ!」
「そうね!まだ体は少し疼くけど……やってやるわよ!」

322名無しさん:2018/11/13(火) 21:34:20 ID:2AS8qhKw
あらゆる方向から襲いかかる魔獣の群との戦いで、ついに膝をつくミゼル。
瘴気と猛毒に苦しむ少女に襲いかかるのは無慈悲な獣。
姉の叫び声と狂ったような男の笑い声が聞こえた頃には、ミゼルの身体中に蔦が絡みつき牙が立てられていた。

「っあ゛ぐっ……ぐ……あ゛……っ」
全身の痛みと毒のせいで口から漏れるうめき声。そのために開いた口にまで細い植物の蔦が入り込み、ミゼルの中へと侵入していく。
「クックック……パンプキンビーストは寄生する主をいつでも変えることができる。こんな犬っコロに寄生するより可愛い妹属性のある女の子が宿主の方がいいってもんだよなぁ?」
「……趣味が悪いです。」
「そうだろうそうだろう……ん?リザ?お前触手はどうした?」
いつのまにか王の隣に、触手の粘液塗れになっているリザが立っていた。
心なしかいつもの無表情の中に、隠しきれない苛立ちが混ざっている。
無言でリザが指を指した先には、大量の触手の塊がグネグネと森の中を歩いていた。

「おー!テレポで抜けたのか!あのネバネバ粘液と処女みたいな締め付けの中よくそんなことができたなぁ。もしかしてお前……そんな顔してああいうのが好きなのか?お?やっぱムッツリかお前?」
「…………………………………」
王の問いかけに、リザは無表情でそっぽを向いた。
「あーあーわかったよ。悪かったよぉ。罰ゲームはなしにしてやるから、許してな?な!ほら、笑え?笑ってリザ?ねぇ笑って?笑ってよリザ!どんな男も落としちゃうキミのステキな笑顔を見せて!!」
「………………………………………………」

「っ……あっが!ううぅ……っ!」
「ミ、ミゼル!ミゼルーーーーーーーッ!!」
王がふざけている間にもミゼルの体は無慈悲に植物に蝕まれてゆく。
ゆっくりと植物に持ち上げられたミゼルの体がびくんっ!と跳ね上がったのを見て、ゼリカは叫んだ。
「ぐ……がほっ!お゛っ……ぐえぇっ!」
血に塗れた体が植物に犯されて、身にまとう軽装や腰布が剥ぎ取られた。
「おーおー!いい感じにエログロになってきたねえ。やっぱロリには多少グロを入れてやるのがミソだな。」
「ぐ……貴様……!」
「ケケケケ……心配しなくても、お姉ちゃんにはあんなことはしないさ。そのおっきいおっぱいを楽しめるように、じっくり触手で責めてやるよ……リザもそれがいいと思うだろ?」
「……………………………………………」
「……リザ。お前本気で怒ると黙るタイプなのな!」

323名無しさん:2018/11/14(水) 23:44:42 ID:???
唯と瑠奈がガチレズコンビと戦っている横では、鏡花がグリズと戦っていた。

「ぶもぉおおお!」
「ふっ!はっ!たあっ!」

グリズの豪腕を最小限の動きで避け、反撃に魔法を叩き込んでいく鏡花。五人の中では影が薄いところもあるが、ルミナスの戦隊長として戦ってきた彼女は流石に戦い慣れている。

「影が薄いは余計です……!エアスラッシュ!」
「んがぁあああ!」

業を煮やしてガムシャラに体当たりしてきたグリズに両手を向け、暴風域を発生させる魔法を使う鏡花。グリズの巨体は暴風に吹き飛ばされる。

「これで、終わりよ……!シャイニングバーストで決めるわ!」

グリズが吹き飛ばされた隙に、両手を胸の前で組んで魔力をチャージする鏡花。彼女の最も得意とする攻撃魔法、シャイニングバーストの構えだ。


「破邪の光よ、迸れ!シャイニングバースト・セミオープンッッ!!」

王都脱出の際に並み居る魔物兵を蹴散らした時に比べれば弱いが、それでも討魔忍一人を倒すには十分過ぎる威力の光がグリズを襲う。
だがグリズはそれを見て、不適にニチャァと笑った。

「お、奥の手は最後まで残しとくんだで!ベアーズ・ベルトコンベアー!」

グリズが毛むくじゃらの熊腕を迫りくる鏡花の魔法にかざすと、シャイニングバーストは急に軌道を変えた。

「な!?」
「お、おでの忍法は、と、飛び道具を弾けるんだな……!」

まるでベルトコンベアーに運ばれているかのように軌道を変えたシャイニングバーストは……レズコンビと戦っている唯と瑠奈の方へ、真っ直ぐ向かっていく!

「っ!2人とも、危ない!ロードアクセル!プロテクトシールド!」

咄嗟に加速魔法でシャイニングバーストを追い越して唯と瑠奈に迫る魔法に立ち塞がった鏡花は、防御魔法で自らの攻撃を受け止める。

「ぐ、ぅああああ!」
「鏡花!?」
「鏡花ちゃん!?」

魔力をチャージしたのが仇になった。防御魔法では殺しきれなかった衝撃が、強く鏡花を襲う。

「こんな、ことで……!」

それでも決意の声をあげて、何とか受けきった鏡花。しかし……

「す、す、隙だらけなんだな!」

シャイニングバーストを受けきって疲弊した所に、グリズの熊腕が迫り……その(胸以外)華奢な体を、ベアハッグの体勢に捕らえられてしまった!

324名無しさん:2018/11/16(金) 00:21:46 ID:???
「……お前、『油断』したなァ?……おでの事、身体がデカいだけのでくの坊だと思って、舐めてたんだろぉ?
ぐひひっ……『油断』は、良く、ないんだ、なぁぁ……ッッ!!」
グリズの剛腕が鏡花を捕え、その細くくびれた腰と、柔らかくボリューミィな胸を、力任せに締めあげる。

(ギリギリギリッ……ギチギチッ……!!)
「っく……う、ぁあああっ!!」
(なんて、力っ…!…早く抜け出さなきゃ…!)
グリズの腕に万力のごとく締め上げられ、苦し気な声を漏らす鏡花。
魔法少女の力を以てしてもその圧倒的パワーは耐えがたく、全身の骨がギシギシと悲鳴を上げた。

「ぐっ……『ライトシューター』!」
「……おぐっ!?」
なんとか右腕だけ拘束から解いて、肺から僅かな空気が絞り出して攻撃魔法を詠唱する鏡花。
放たれた光弾はグリズの顔面を直撃し、ベアハッグが僅かに緩んだ。

「はあっ……はぁっ……よし、今のうち…!」
その隙に、鏡花はグリズの腕の中から這い上がって、上半身だけ拘束から抜け出した。抑圧から解放された両胸がぶるりと震える。
だが、続いて両脚を引き抜こうとした、その時……

「ぐひ、ひひっ……逃がさねえぞぉ……ベアーズ・ベルトコンベアー!」
「きゃっ!?…な、何これっ……」
グリズの腕や胸に生えた剛毛が、臙脂色のオーラを放出し始めた。
オーラは鏡花の身体にまとわりつき、一定の方向に動き出す。
すると、鏡花の下半身が、まるでベルトコンベアーに挟まれたかのように、グリズの腕の中へと引きずり込まれていく!

「きゃあっ!?……あ、足が抜けない……っ!?」
「お前、また油断してだなぁ?……そんなチャチな攻撃魔法で、おでから逃げられっと思っだがぁ?…グヒヒ!」
グリズの顔面には、光弾を受けた痕があったが……なんと、その傷口が、鏡花の目の前でみるみる塞がっていく。
グリズは怪力と高い再生能力を持つ魔物「トロール」の血を引いており、少々の傷ならこのようにあっという間に回復してしまうのだ!

「ぐひひ……おでを舐める奴には、思い知らせてやっど……忍装束『履帯金剛熊鎧<ベルトコンベアーマー>』纏装……!」
グリズの体から立ち上るオーラは、全身を包み込んで忍び装束へと変わっていく。
それは、装束と言うより、金属製の鎧……それも、かなり独特の形状をしていた。

両腕には、金属製の短冊をいくつも繋いだ、すだれのような形の腕輪をいくつも付けている。
同じく、ベルト状のパーツを繋ぎ合わせたような胴鎧。……まるで、ベルトコンベア……いや、戦車のキャタピラを思わせる。

「グヒヒ……熊腕忍術奥義……『絶命無限軌道<ツキノワ>』!」
(グイィィィン……ギリ、ギチッ……ギリッ……ミシッ!!)
「!………こ、これはっ……あ、ぐっ……!!」
……それらがゆっくりと回転し、鏡花の身体をグリズの腕の中へと引きずり込んでいく。

それはまるで、ベルトコンベアに接続された巨大なプレス機。
まずは両脚。続いて下半身と、鏡花の身体を、徐々に呑み込んでいき……

「い、いやっ……やめて!離してっ!……『シャイニング……」
(……メキッ!ゴシャ!!ゴキィィッ!!)
「………っあ"あ"あ"あ"あ"あ"あぁぁっっ!!!」

……強い耐久力と生命力を持つ魔法少女の身体を、いとも簡単に破砕した。

325名無しさん:2018/11/16(金) 00:36:11 ID:???
「っぎ、いやあああああ!!」「っぐ!!っがあああああ!!」「……、…………!!」
(ボキボキ、ボキッ!!)(グチュッ……)(ゴキッ  グキ ずちゅ……)
すらりと伸びる両脚と、肉付きのいいお尻。ほっそりとくびれた腰。
同年代の少女達の中でも、飛びぬけて大きな胸。
そして、まだあどけなさの残る可愛らしい顔……

それら鏡花の身体が、グリズの腕の中に吸い込まれ、異音と共に壊され、すり潰されていく。
夥しい量の鮮血が飛び散り、周囲は血の海と化した。

「そ、そんなっ……鏡花ちゃあああんっ!!」
「…鏡…花……う、うそ、でしょ……!?」
「……ふふ。隙あり♥……戦ってる最中に他人の心配なんて、するもんじゃないわよぉ?」
「きゃっ!?し、しまっ……っく、あんっ……!」
「クスクス……あっちは大変ねぇ。私は優しくしてあげるから、安心しなさい♥」
「は、放しなさいよっ!あんた達なんかに、構ってる暇はっ……ん、ぐっ…!!」
あまりに凄惨な光景に動揺し、ガチレズ姉妹に捕まってしまった唯と瑠奈。
スイビ&サキノのガチレズコンビと、密着距離での揉み合い……いや、一方的に揉まれてしまう。
鏡花を助けに行くどころか、自分の身を守るのが精一杯だ!


「っ……ぐ、……ぅ……ま、だ………こんな所で……負けられない……」
グリズの『絶命無限軌道<ツキノワ>』で全身の骨を砕かれ、全身血まみれの鏡花。魔法少女の衣装もボロボロに破れている。

(そうよ、まだ……私は、負けてない……唯ちゃん達の為にも、負けられない……諦めなければ、必ずチャンスは……)
……常人なら、とっくに絶命しているレベルの重傷だった。
だが幸か不幸か、魔法少女に変身し生命力が高まった身体は、辛うじて鏡花の命と意識を繋ぎ止めている。
魔力は弱まり、変身が半ば解けかけていたが……それでも、その瞳には闘志が僅かに残っていた。

「グヒ、ヒヒ、ヒ……こんな所で、おで達みたいなやられ役に、負けるはずがねぇ……ってかぁ。
そうやって、おで達を舐めてたから、こうなったんだ……グヒッ!」
……一方。
グリズは、去年の闘技大会で一回戦敗退した、苦い記憶を思い起こしていた。

その時彼と戦ったのは、彼の半分にも満たない、小柄な女性の討魔忍。……名を「穿孔(せんこう)のアゲハ」。
必殺のベアハッグで全身の骨を砕きながらも、アゲハの「指」を一本残していたせいで、逆転負けを喫した。
実力主義のミツルギ皇国で、大観衆の前で、しかも女性一人に負けた事は、グリズにとってこの上ない屈辱であった。
それ以来、彼は厳しい修行に明け暮れ、更なる力と残虐性を身に付け……

……そして今。

「おでは……『油断』なんかしねえ。もう二度とな……グヒッ」
グリズは、虫の息の鏡花の腕を抱え、再度「奥義」の体勢に入る。
鏡花の身体を……そして心を、徹底的に『折る』ために。

(ギュイィィィィン………)
「!?……ま、まさか……い、いやっ……」
グリズに両腕を拘束され吊り下げられた鏡花は、頭上で再び鳴り出した異音に、その表情を凍らせた。
腕と胴鎧のベルトコンベアが回転し、再び鏡花の身体を巻き込もうとしている!

「今度は『指一本』すら残さねえ。……抵抗なんてできねえように、徹底的に、何度でも……痛めつけでやる」
「だ、だめっ……待って。これ以上はっ……本当に、壊されちゃ……」

「そのでっかいおっぱいで、思う存分遊ぶのは、それからだ……グヒッ!」
「……いやあああああああぁっ!!」

326>>278から:2018/11/18(日) 16:31:14 ID:???
一方、ナルビア王国首都、オメガネットにて。

灰色の雲に覆われた空を見上げ、アリスは静かにため息を吐いた。
予報によれば、当分はこの鬱々とした天気が続くらしい。
だが、アリスの心を曇らせているのは、天気ばかりではなかった……


「リンネさん……アリスです。……食事を持ってきました。ここを開けてください」
アリスはここ最近、リンネの個室を何度も訪れていた。
いつもの軍服ではなく、黒いリボンのついた白いブラウスと、長めのフレアスカートを身に付けている。

「リヴァイタライズ」と呼ばれる新薬が投与されて以来、ヒルダは二週間近くの間意識を取り戻していない。
時々うわ言で、リンネの名を呼ぶのだが……
リンネは、リヴァイタライズを自らの手でヒルダに打ち込んだあの日から、ずっと自室に籠ったままだ。

「………帰ってくれ」
……最初の何日かは、そう言って、門前払いされるだけだった。

「少しでも、食べないと……身体を壊してしまいます」
「……放っといてくれ」
仕方なく、食事のプレートをドア脇に置いて立ち去るしかなかった。
その食事にも、始めは全く手を付けることが無かった。

しかし最近になって、ほんの少しだけ変化が現れ始めた。
パンひとかけら、スープ一口……わずかだが、食事に手を付けるようになっていたのだ。
……リンネが少しずつ、立ち直り始めているのだと、アリスは感じていた。

「大切な人が、苦しんでいる姿を見るのは……辛い事だと、思います。
だけど……そんな時だからこそ、支えになってあげて欲しいんです。
ヒルダさんはずっと、うなされながらリンネさんの事を呼んでいる……彼女には、リンネさんが必要なんです…!」

……その日、アリスはリンネの部屋を訪れる前に、ヒルダを見舞っていた。
いつも以上に、ヒルダが苦しそうにしていて……何か、不吉な事が起きるような予感がした。
だからなのか。アリスはその日、部屋の前から立ち去らず、必死にリンネに呼びかけ続けた。

「…………。」
長い沈黙の後。ガチャリと音がして、ドアの錠が開いた。

「リンネさん……!」
ほんの少しでも、気持ちがリンネに届いたのだと思った。
何度もリンネの部屋に足を運び、呼びかけ続けたのは、無駄ではなかったのだと。
……だが。
アリスがドアを開け、部屋の中に踏み込んだ瞬間。

「……いい加減に、しろよ」
凄まじい力で頭を掴まれ、壁に叩きつけられた!

(ガコッ!! ドコッ!!……バキ!)
「あがっ!?…ど、どうして……や、めてくだ、さ……!!」
何度も力任せに叩きつけられ、部屋の中に引きずり込まれ、床に投げ出される。
そこでアリスが目にしたのは……

「お前に、何がわかる……ヒルダに……僕が必要だって?……僕は……ヒルダをずっと、騙し続けて来たんだぞ……!」
骨と皮だけに痩せ、目を血走らせた、リンネの姿だった。

「いずれこうなる事は分かっていた。なのに僕は、ヒルダを利用するために、取り入って、手名付けて……
すっかり油断した所で、あの最悪な薬を、打ち込んでやった、最低最悪の裏切者なんだ……!」
「そん、な……」

流血する頭を押さえながら、周囲を見回す。
……真っ暗な部屋の中には、叩き壊された家具や食器などが散乱していた。

「!……これ、は……」
背中に、なにか生暖かい感触があった。床に手を触れてみると、どろりとした物がこびり付き、異臭を放つ。
……それは、リンネの吐瀉物だった。食事を口にしようとして、戻してしまったのだろう。

「なあ、アリス……君は僕を舐めてるのか?それとも、バカにしてるのか?……
一人で、そんな恰好で、男の部屋に……それも、僕みたいな最低のクズの所にやってくるなんて。
こんなの、何されても、文句言えないよなぁ……!」
「ち、違います……私、そんなこと……!」
リンネの心は、想像以上に深く傷ついていた。自分は、急いで踏み込み過ぎたのだ。
アリスがその事に気付いた時には……
胸倉を強く掴まれ、ブラウスを引きちぎられ、やせ細って弱っているとは思えない程の力で、リンネに押し倒されていた。

「うっ……ごめんなさいっ……ごめんなさい、リンネさん、私……!」
「黙れ……僕は、最低なんだ……お前のことも……裏切ってやr……う、うぶっ!!」

混乱と恐怖のあまり、抵抗できないアリス。
リンネはアリスの身体に跨り、服を引きちぎり、自らの下半身も露出させようとして……
何かが限界に達したのか、盛大に嘔吐した。

「ひっぐ……ごめんなさい、リンネさん……私のせいで……私が、貴方を余計に傷つけて……」
「うっ……おえっ……黙、れ……さっさと、出て行け………二度と、僕に……近付くなっ!」
吐瀉物に塗れながら、アリスは自責の念に駆られ、子供のように泣きじゃくった。

327名無しさん:2018/11/18(日) 17:36:13 ID:???
「……本格的に、降りだしたな」
オメガネット中枢にある、王城兼国内最大規模の研究施設「オメガタワー」。
その高層にある執務室で、エリスはふと遠雷に気付き窓の外を眺める。

最近は周辺の魔物もなりを潜め、彼女たち師団長クラスが必要とされる任務は少ない。
双子の姉妹であるアリスは今日は非番だ。いつも通り、ヒルダとリンネの「見舞い」に行っているのだろう。

いつもより少し味の落ちる紅茶を淹れ、一息つくエリス。そこへ、執務室のドアがノックされ……

「空いている…入r」
「やっほー、エリスちゃん!……今ヒマ?ヒマを持て余ネコ?」
エリスの返事を待たずに、見知った顔……第1機甲部隊師団長、レイナ・フレグが入って来た。

「まあな。話し相手もいなくて、退屈していた所だ」
「私も私も!舞ちゃんは任務でトーメント王国に行っちゃったし……
それに、エリスちゃんと、一対一でお話したいって前から思ってたの。……ふふふ」
「?……そうか。……紅茶でも飲むか?私が淹れたのでよければ、だが」
レイナの様子に違和感を抱きつつも、エリスは新しいティーカップを取り出す。

「角砂糖は……どこにしまってあるかな。私は普段入れないから……」
「あ、私も手伝うよ。ちなみに私は角砂糖3個、ミルクもたっぷり派!」

ティーテーブルや戸棚を探し回るエリス。
普段お茶を入れるのはアリスに任せきりのため、いざとなると勝手がわからない。

テーブルの上に、アリスの愛用する武器、魔法針のセットが置き去りにされているのが目に留まり、
エリスにも、レイナとじっくり話したい議題がいくつかある事を思い出した。
リンネの事をどう思っているのか、アリスがリンネに好意を抱いている事を知っているかどうか。
更に言うなら、まさかエリスの気持ちにまで気付いていたりしないか……などなど。

「そっか、今日はアリスちゃん非番か〜。おまけに、武器も置いてきっぱなし……おあつらえ向きだねぇ」
「ああ、そうだ。ティーワゴンの下かも……何?今、なんて……ん、むっ……!?」
アリスのお気に入りのシュガーポットの場所を思い出し、エリスがレイナの方に振り向いた……その瞬間。
口の中いっぱいに、角砂糖3個分の甘みが広がった。

328名無しさん:2018/11/22(木) 01:22:07 ID:???
「ケケ……!神器を守るヴィラの一族とかたいそうな肩書きがあっても所詮は女……いいか?女が男に勝てるわけないんだよ。」
「うっぐ……!あああああああっ!!!」
ミゼルの体に触手が刺さり、傷口から血が吹き出した。
「あ、いいこと思いついた!このあとゼリカちゃんもこの触手で串刺しにして、お仲間のところに持って行ってやろ!」
「ミゼル……うぅ……っ……」
最愛の妹が串刺しにされる残酷な現実に、ゼリカは目を伏せ涙を浮かべる。
触手に囚われ助けることはおろか動くことすらできないゼリカの姿を、リザはじっと見ていた。
(……姉妹か……お姉ちゃんは……今のわたしのことをどう思っているのだろう。……わたしに正体を明かさないということは、つまり……)
平和な日常を壊されたことがきっかけで、悪逆国家トーメント随一の暗殺者となった自分。
利己的な理由で行われている妹の人殺しを、姉はどう思うだろうか。
仕方ない、と諦められ、同情されるのか。
許さない、と正義の剣を身内の自分に向けるのか。
それとも……もう身内とも思われていないのか。

「……………お姉ちゃん。」
「あ?なんかいったか?リザ………って、うおっ!?」
リザが小さく呟いた直後、突如地中から現れた影が剣を薙ぎ払い、姉妹たちを拘束していた触手が両断された。
「あぁ……う……」
「貴方は……!あっ!ミゼル、ミゼルッ!」
「………オソカッタナ……ソノドクハモウゼンシンニマワッテイル。ザンネンダガタスカラナイ。イモウトノイノチハアキラメロ。」
「そ、そんな……!ミゼル……!」
剣士から発せられたボイスチェンジャーのような声。
その声の主……残影のシンの登場に、リザは拳を握りしめた。

「ケケケ……リザ。お前コイツが誰だかわかるか?」
「……王様は、知っているんですか。」
「はっ!俺様はこの世界のことならなんでも知ってるさ。今日の晩飯や明日の天気はもちろん、お前が今履いてるパンツの色もな。あ、そうだっ!明日履くパンツの色も当ててやろうか?って、いって!」
リザは王の足をわざと踏み付け、現れた剣士……残影のシンの前にゆっくりと足を運んだ。

「……ケイコクハシタハズダ。マノヤマニチカヅクノナラヨウシャハシナイト。」
「……仮面を取って顔を見せて。貴方の正体はわかってる。……一体何を考えているの。」
「ソレハデキナイナ。リザ………ワタシノカオヲオマエニミセルヒツヨウハ、ナイ。」
「……ならその仮面、わたしが剥がしてやる。」
リザは先ほどの触手で少しベタついているナイフを手に取り、目の前で構えた。
「……イイダロウ。ムカッテクルノナラバ、ムカエウツノミダ。コレイジョウマノヤマへチカヅクコトハユルサナイ。」
リザの構えを見て剣を取るシン。表情からも言葉からも感情が読み取れないが、リザに迷いはなかった。

「……本気でいくよ。ミストお姉ちゃん。」

329名無しさん:2018/11/23(金) 19:03:12 ID:???
「ぐ、が、ぁあああああああああ!!!?」

再び、グリズの『絶命無限軌道<ツキノワ>』で押し潰されていく鏡花。すらりと伸びる両脚と、肉付きのいいお尻。ほっそりとくびれた腰が呑み込まれ……そして、豊かな胸が邪魔して、一瞬プレス機の動きが止まる。


「が、はぁ……!ごふ……!」

大量の血を吐き、息も絶え絶えの鏡花。もはや、攻撃魔法を撃つ余力は残されていない。そして、胸のつっかえによる静止は一瞬であった。

「ぎ、ぎひひ……!おでは、『油断』はしねぇ……!ここでおっぱいでも触ろうと拘束を離したら、また回想パートからの覚醒で新技で倒されるのがオチだで……!」


『絶命無限軌道<ツキノワ>』の動きを加速させ、つかえている部分を力押しで呑み込む。その後は遮るものもなく……鏡花の身体が、さらに呑み込まれていく。

「………っあ"あ"あ"あ"あ"あ"あぁぁっっ!!!」

再び絶叫をあげる鏡花。今や、首から下は全てプレスされているもう一度、顔面が呑み込まれてしまったら……流石の鏡花も、もはや立ち上がれないだろう。

頼みの綱の仲間は、全員動ける状態ではない。こうなればもはや、ただただグリズされるがままになるしかないと思われた。


(も、う、だめ……みんな、ごめん……!)

死を覚悟した鏡花は、最愛の妹水鳥……そして先ほどせっかく再会できたのに、バタバタしていて結局ゆっくり話すことができなかった親友ヒカリの顔が浮かぶ。

そして、ヒカリと初めて出会った時……三本腕の魔物に襲われた時のことを思い出す。

そして、鏡花に天啓走る。


「熊腕の……グリズ……」

「なんだぁ?言っておくけんど、命乞いは聞かないかんな」

今にも消えてしまいそうな声で、グリズに語りかける鏡花。だがその瞳は、力強い光を放っていた。

「あなたは、確かに『油断』はしなかった……相手が力尽きるまで、決して気を抜かずに、全力で私を殺しに来ていた……」

「そうだべ!おめぇさんはこのまま、おでに殺されるんだで!」

「だから、これから起きるのは、『油断』じゃなくて『誤算』……魔法が起こす奇跡……私の親友が見せてくれた奇跡……それがあなたの敗因!」

最後の最後、欠片ほど残った魔力……この残量では攻撃魔法を撃つことすらできない。だが、魔法は攻撃だけではない……。

そう、あの日……三本腕の魔物に襲われ、全身ヌルヌル、服も破れた自分にかけてくれた魔法。ルミナスの魔法少女たちからすれば、わざわざ名前をつけてもいない、初歩の初歩の……それでもあの時の自分には、素晴らしい奇跡に思えた魔法……!

「な、なんだぁ!?」

「衣服、生成……!」

グリズの攻撃によって、ビリビリになっていた鏡花の衣装……その残骸の布は、ベルトコンベアのあちこちに付着していた。

その布たちが、生命の息吹を受けたかのように、それぞれひとりでに大きくなって服の形を取っていき……ベルトコンベアの隙間に挟まった大量の布、それも魔法の布がストッパーの役割を果たすことで、回転していたベルトコンベアは動きを止めた。

「ぬ、ぉおお!?」

「衣装を作るだけの魔法でも……奇跡は起こせる……!」

回転の止まったベルトコンベアから這う這うの体で抜け出した鏡花。もはや魔力は一欠片も残ってはいない。自分に使う分の魔力まで衣服生成に充てたことで、今の彼女は下着姿だ。

状況が不利なことに変わりはない。けれど、拘束から抜け出せさえすれば……反撃のチャンスは、いくらでも湧いてくる。

「鏡花ー!味噌煮込みうどん味のマジックドロップだ!没ネタにあったやつだからwikiにも載ってないレア物だぞ!」

戦闘は無理でも、ポケットの中を探るくらいはできた彩芽が、魔力回復アイテムをこちらに投げてきた時に……しっかりとキャッチすることができた、今のように。

330名無しさん:2018/11/24(土) 14:25:40 ID:y0tuz8d2
「ふぁ………くしゅんっ!!」

未遂ながらもリンネに強姦されかけたアリスは、そのまま部屋を追い出された後途方に暮れていた。
本格的に降り出した雨は雷を伴い、外はバケツをひっくり返したような嵐になっていたのだ。

(……うぅ、止みそうにありませんね。)

仕方なく雨宿りのできる路地裏の屋根の下で雨が上がるのを待っているのだが、時折響く雷鳴はまだまだ勢いが落ちる様子はない。
引きちぎられてしまった服を体育座りで隠しながら、アリスはブルブルと体を震わせていた。

(……リンネさん……あそこまで追い詰められていたなんて……)
アリスの見たリンネは、もはやリンネではなかった。
血走った目、痩せ衰えた体、回らない滑舌、嘔吐物に塗れた部屋。
自分が好きだったリンネは、少し憂いを帯びたような瞳と細やかな気配りが出来る繊細な性格だった。
双子のエリス共々愛情表現を知らずに育ったせいで意地悪をしていたが、小さい頃は3人で無邪気にたくさん遊んでいたことをよく覚えている。

(……あの頃から、わたしはなにも変わっていない……)





「リンネ!ちゃんとついてこい!早くしないと日が暮れるぞ!」
「うぅ………わかってるけど……そろそろ休憩しようよ……疲れたよぉ……」
「だめですよ。今は先生が見ていないからといって、訓練の途中で休むことは許されません。しっかりしてください、リンネさん。」
「はぁ、はぁ……なんで2人とも女の子なのにそんなに元気なんだよぉ……」

ナルビア軍の訓練生だった3人は、一緒に訓練をすることが多かった。
そうなるとどうなるかというと、エリスが率先して行動し、アリスがそれをサポートし、リンネが置いていかれる図式である。
頭脳明晰だが体力ではアリスたちに勝てないリンネは、こういった実技訓練では足を引っ張ることばかりだった。

「勉強ばかりして足腰を鍛えていないからだ!誉れ高きナルビア軍の候補生としてしっかり走れ!」
「うぅ……きっつ……!もう10キロは走ってるのに、まだゴールじゃないのかよぉ……もう無理だよぉ……」
「…………仕方ありませんね。」

弱音を吐くリンネを見かねたアリスは、懐から魔法針を取り出した。
「リンネさん、胸を見せてください。」
「え………えぇっ!?なんで!?」
「……針から魔法を流し込んで体の筋肉を回復させます。そうすればまた走れるようになるかと。」
「な………!おいアリス!それは許されないぞ!訓練中の回復魔法は禁止されているのを忘れたのか!」
「……このままでは他のチームに先にゴールされて、私たちの査定にも響きます。通常の回復魔法ならばマナの残滓でゴール後の検査にひっかかりますが、私の針ならば問題ありません。」
「……だが、しかし……!」
「エリス。私たちがお母様やお父様のような軍人になるためになにが必要か、よく考えてください。」
「う……!」

結局エリスは身内の不正を見逃すことを選び、リンネの胸にアリスの魔法針が打ち込まれた。
「いたっ………!」
「痛くても我慢です。針治療のようなものですから。」
「うぅ……アリス、あんまりじろじろ見ないで……ほしい……」
「は、はぁ!?一体何を言って……!」
「……おいアリス。まさかお前、リンネの体が見たくてそんなことをしてるのか?」
「え……それって……」
エリスの確信めいた口調とリンネの恐怖に染まった視線に、アリスは耳まで赤くなった。
「な……!なにをさっきから馬鹿なことを!私はじろじろなんて見ていませんし、こんな馬鹿エリスの発言を鵜呑みにして変な感情を向けないでください!こ、こ、このロリコン!変態!ばか!!!嫌いです!!!」
グサ!!ブス!!!ドス!!!!!
「あがっ!ぐえっ!ぎゃああ!ちょっと、やめてくれアリス!優しく刺してよぉ!い、痛い痛いぃ!痛あああああぁぉいいいいいいいいいい!!!」

結局、リンネの絶叫で不正行為がバレてしまい、3人は一ヶ月トイレ掃除の刑に処されたのであった。

331名無しさん:2018/11/24(土) 14:54:05 ID:y0tuz8d2
(……あの頃から自分の感情を誤魔化すようになって、リンネさんを攻撃するようになって……自己嫌悪になることも多くなった。)
一緒にいるエリスにあわせてリンネを弄るうちに距離を置かれてしまったのは、自分でもよくわかっている。
リンネからしてみれば、自分のことを陰湿で意地悪な女だと思うのも無理はない。
一緒にいる時間が多かったせいか、結局素直な思いを伝えることもできずにシックスデイに着任した。

(……こんなことを考えてしまうのはおこがましいけれど……私がヒルダのような存在になれば、リンネさんはこんなことにはならなかったのかもしれない。)

英雄の細胞を移植したクローンとして生まれたリンネは、自分たち姉妹に対して劣等感を持ってしまったのかもしれない。そこに現れたヒルダという少女は、唯一リンネの存在を認めてくれた大切な存在であったことは想像に難くない。
同じクローン体同士ということもあるだろう。クローン体は人工的に作られていても、生殖能力や感情表現は人間と同一である。マーティンやダイも変わり者ではあるが人間と同じように生活している。

(……もうすぐ大きな戦争が始まるというのに、こんなことを考えてばかりなんて……お母様やお父様に知られたら、怒られてしまいますね。)

見上げた空は黒く、雨が止む気配はない。
この悪天候の中、自分に邪なる者の魔の手が迫っていることなどアリスは知らなかった。

332名無しさん:2018/11/25(日) 00:46:13 ID:???
オメガ・ネットの一室。Dことダイ・ブヤヴェーナは、SF映画とかによくある立体映像通信的な感じのやつで、ある人物と話し込んでいた。

「D、わざわざ立体映像通信で呼び出して、何の用だ?」

「……どこまで想定してたんだ、総帥サマ?」

「なに?」

「ガチレズが暴走してるのは、どこまでが予測の範囲内なんだ、と聞いている……アンタのことだ、ある程度は予測してただろ」

Dと話していた相手は、ナルビアの実質的なトップである総帥、レオナルド。Dと総帥の間に、得も言われぬ緊迫感が走る。

「気づいていたのか……やはりお前は底知れないな、D……いや、ダイ」

「給料掠め取る先がなくなったら困るんでね……警備員のバイトだけじゃアクアリウムする金もままならねぇし」

「……安心しろ、全てが予測の範囲内だ……私の、そしてナルビアの母たるマザーコンピューターのな」

そう、アイリスがレイナに手を出そうとすることは予測できていた。その上でなお、総帥はアイリスを放置していたのだ。もちろんそれには理由がある。

今も小型の情報解析ロホットが、アイリスの部屋、及び舞がレイナを押し倒した第二実験室を始め、オメガ・タワーの各所にいる。僅かに残る、美女美少女の色々なところから出た体液……それを分析し、部屋で何があったか……そして、アイリスの術についてを正確に解析しているのだ。

「司教アイリスの術のデータは、順調に集まっている」

総帥レオナルドは、司教アイリス自身からレズ性奴隷(舞)と引き換えに提供されたデータ……そこにシックス・デイの女性メンバーや舞が直接受けたデータを合わせることで、彼女の術……特に癒しの術の再現に踏み切っていたのだ。


「被検体1000号の体力では、リヴァイタライズの大量投与に耐えられない……ならば、回復手段を用意すればよいだけのこと……シックス・デイは捨石にするには大きかったが、それも最強の兵士が誕生すれば問題ない」

「……女狐と狸爺の化かし合い、か……巻き込まれる方はたまったもんじゃないな」

「安心しろ、用済みになったらアイリスは始末する……その時にはお前も働いてもらうぞ、D」

「あいあい、一応見捨てないつもりなら別に言うことはありませんよ、と」

Dはそう言うと、立体映像通信的感じのアレのスイッチを切った。一方的に通信を切られた総帥だが、特に気にした様子はない。


「全ては計算のうち……最強の兵士誕生の暁には、ナルビアこそが世界の頂点に立つのだ」

333名無しさん:2018/11/25(日) 15:48:53 ID:???
「ん、んな馬鹿な!おでは『油断』しなかった……!衣服生成は確かに予想外だったけんど、予想外の反撃も喰らわないように気を付けていた……!『油断』しなかったのに、なんでなんだべ……!」

「警戒とか気を付けるとか……そういう道理を吹き飛ばすから、『奇跡』って呼ぶのよ……そしてこれが、奇跡の光……!シャイニングセイバー!」

遠距離魔法は跳ね返されると知った鏡花は、クッソまずい味噌煮込みうどん味のマジックドロップで回復した分の魔力で、光の剣を形成する。ついでに言っとくと回復した魔力は全てそれに注ぎ込んでいるので、衣装は復活していない。ブラ、ショーツ共に花柄のついた可愛らしい下着姿を晒している。

「グヒ、せ、接近戦でおでのタフネスに敵うわけがねぇ!叩き潰してやる!」

いくら『絶命無限軌道<ツキノワ>』から抜け出そうと、受けたダメージが回復するわけではない。満身創痍の鏡花に、グリズは腕を掲げて迫る。

「鏡花ー!頑張れー!エロいぞー!」
「鏡花ちゃん!頑張ってー!」
「そんな奴、ちょちょいのちょいで倒してやりなさい!」

余計な一言を付け加ながら応援する彩芽。ガチレズコンビを押さえつけながらも声を張り上げる唯と瑠奈。

一部ツッコミを入れたかったが、その応援を受けて、鏡花の剣はさらに大きくなる。

「はぁあああ!!」
「ぐえ!?」

突然変わった間合いに適応しきれず、鏡花の剣を正面から受け止めるグリズ。忍装束『履帯金剛熊鎧<ベルトコンベアーマー>』の鎧と光の剣がぶつかり合い、火花を散らす。

「な、なんでだぁ!?応援なんてアホみてーなモンで、なんで急に強く……!」

「それが、魔法少女だから……!だから私は、私たちは……どこまでも強くなる!」

「ぐ、おおおおおおお!?」

バキン、という音と共に、グリズの鎧が砕ける。

「必殺……!ライトブルーム・ブレードォ!!」

「ぐ、げ……!また、こんな、女に負け……!ぐわぁあああああ!!」

光り輝く花のエフェクトをまき散らしながらの一閃。これこそが鏡花の必殺剣。それをもろに受けたグリズは、叫び声をあげながら、地面に倒れ伏した。

334名無しさん:2018/11/25(日) 22:44:54 ID:???
黒い画面をリザは見据える。シンの表情は読めずとも、静かな闘志は感じることはできる。

(……なんて、大きな威圧感……!)

シンの醸し出すとてつもない覇気に圧倒されなかったのは、その正体がわかっているからであろう。
もしわかっていなければ、目の前の鎧相手に冷静さを保てる自信がなかった。

(……来るっ!)

リザが直感した瞬間、シンの剣が頬を掠めた。そこにあった自分の金髪は剣の一閃に刈り取られて地面へと落下していく。

(やっぱり……お姉ちゃんもシフトの力を……!)

すぐに体制を立て直すと同時にナイフを翻したリザは、シンの懐に素早く潜り込んだ。
狙うは仮面。素早く大振りの強化ナイフに切り替え破壊力の高い一撃を繰り出す!

「アマイッ……!」
ガギンッ!
「くっ……!」
無駄のない動きで攻めたつもりのリザだっだが、シンの鎧をまとった腕に阻まれ仮面を外すことはできなかった。
食い込んだナイフを外そうと、右手に力を込めた瞬間──

「きゃっ!?」
「土乱蹴!」
ドゴッ!!
「んぐうううぅっ!!!!ぁあ゛っ…………ぐ、げほぁっ!!!」
シンの左手で体を掴まれた瞬間、シンの右足が腹に食い込み、体を貫くような痛みにリザは悶絶する。
もし自分の体を支えられてなければ、思い切り吹き飛んでいた一撃だった。むしろその方が勢いを殺しつつ距離を取れたのだが、そうさせないために支えられたのだろう。
悶絶した後の嗚咽で出た唾液が、シンの鎧に当たってぴしゃりと音を立てた。

「おーリザ!今のよかったよぉ!きゃっ!って可愛くなってからの、げほぁっ!でリアルな吐き出す感じの嗚咽混じりの悲鳴!うーんさいこー!」
王は必死にミゼルを介抱するゼリカをほっといて、観戦に回っていた。
「あ、リザ!俺様は助けないんで、そいつにやられたらお前の人生終わりだからな!そこんとこ気をつけろよー!」

「……リザ。前ニモ言ッタガオ前ノヤリカタハ間違ッテイル。アノ王ハオ前ヤアウィナイトノ事ナド全ク考エテイナイ……ソレドコロカ……」
「……はぁ、はぁ……そ、それどころか……何……?」
痛みに耐えながら自分の足で立ち、シンの仮面を見据えるリザ。その奥にある顔を想像すると、不思議と恐怖心は湧かなかった。
「……オ前ハ何モ知ラナイノカ……アノ日ノ真実ヲ。……誰ガアノ事件ヲ引キ起コシタノカ。私タチガ憎ムベキ相手ガ誰ナノカ。」
「……お姉、ちゃん……!ぅ、ぐふっ……」
痛みで少しふらついたリザを、シンは素早く支えた。それは優しくといった感じではなく、少し強引だったのだが、それでもリザはとてつもない安心感に包まれた。

「……トーメント王。コイツヲ少シ預カルゾ。」
「おーどうぞどうぞ……ってえ!?それは困るんですけど!俺様の可愛いお人形さんを取らないでえええ!」
王の悲痛な叫びも虚しく、結界魔法を発動させたシンはリザを掴んで闇の中へと消えていった。

335名無しさん:2018/11/25(日) 22:45:57 ID:???
「……ここは……」
しばし意識を失ったリザが目を覚ますと、辺り一面真っ白な部屋の中にいた。
「……私ノ結界ダ。長クハ持タナイガナ。」
声がした方に目を向けると、真っ白な部屋の中でかなり目立つ黒い鎧が座っていた。

「お姉ちゃん……もうその口調とかその仮面とか、やめてよ……私もうわかってるんだよ。」
「……………………………………………」
「ねぇ……一体何があったの?どうして顔も見せてくれないの?……私のこと忘れちゃったの……?」
「……オ前ノ事ヲ忘レタ事ハ、一度モナイ。」
「……なら、どうして……」
言葉に詰まるリザ。2人きりならば正体を明かしてくれるのではと期待したが、どうやらそれはないらしい。
途方にくれていると、シンはゆっくりと立ち上がってこう言った。

「全テヲ失ッタアノ日ノ事……オ前ヲココニ読ンダノハソノ為ダ。……私ノ事ニツイテモ教エテヤロウ……ナゼオ前ニ顔ヲ見セナイノカ。ナゼオ前ニ声ヲ聞カセナイノカ……」
「……お姉ちゃん……」
機械音声の中に、少し感情が現れ始めた。それは自分への愛情だと思っていたのだが……

「……私ガドレダケ、オ前ヲ憎ンデイルノカ。」
その一言に、リザは戦慄した。

336名無しさん:2018/11/25(日) 23:31:01 ID:???
「お疲れ鏡花!いやー、いいもん見せてもらったよ……あんなクッソまずそうな飴1個で、よくあんな大技出せるもんだ」
「ふふふ……飴だけじゃないよ。彩芽ちゃん達が、たくさん勇気をくれたから……まあ、あの飴は実際すっごいマズかったけど」

『熊腕のグリズ』を見事打ち破った鏡花が、彩芽と喜びを分かち合う。
その一方で。

「あ〜ら、そこそこ頑張ってたけど、クマ男もヤられちゃったのね……
ま、いいわ。こっちは気にせず楽しみましょ、唯ちゃん♥」
「ひっ!?……や、やだっ……血、吸わない、で……くっ…!」

「ふっふっふ……折角掴んだこの出番、イかせなかったら淫魔が廃るわ!
アンタのスライム漬けで限界寸前のメロメロボディ、しゃぶりつくして、あ♥げ♥る……♥♥」
「きゃうっ!?……こ、こいつっ……さっきから、ヘンな所ばっか触って……」

「ふっふっふ……我慢しなくていいのよ♥」
「女の子の気持ちイイ所は、女の子が一番よく知ってるんだから♥」
「あんっ……!きょ、鏡花ちゃん、彩芽ちゃんっ……!」
「わ、悪いんだけど、こっちも助けてくれると、嬉しい、かな……」
……二人は結構苦戦していた。

「え……えぇと。助けてあげたいのは山々だけど、私もう魔力切れで……」
「ボクもその二人はもう勘弁……悪いけど、二人でどうにかして」
「「ですよねーー」」
……前レスの流れが台無しだった。

「んっ……し、しょうがないわね……唯!あれ行くわよ!」
「お、オッケー瑠奈っ!……いっせーのっ!」

「ふふっ…観念しなさい、唯ちゃ……きゃあんっ!?」
唯は猛然と襲い掛かって来たスイビの腕を取ると、その勢いを利用して後方に投げた。


「な、一体何のつも、りっ……!?」
「せいっ!」
「「きゃあぐっ!?」」
瑠奈も同様に、サキノの腕を取って投げる。スイビとサキノは、背中合わせに衝突し……

「鳳凰旋風脚!」
「スピニング瑠奈ちゃんキィック!」
「「っきゃあああああ!!」」
唯にしては珍しい、自分から突っ込んでの飛び回し蹴りに、瑠奈のいつものやつに少しアレンジを加えたジャンピング回転キック。
見た目一大体緒な飛び蹴りを左右から同時に繰り出し、二人まとめてノックアウトした。
……なお回し蹴りでフィニッシュしたのは「女性相手に顔面強打はかわいそう」という
せめてもの配慮であるが、代りに首がやべー事になる危険性を秘めた諸刃の剣である。よい子はマネしないでね!

…というわけで、なんとか立ち塞がる強敵を倒した唯達であったが……

「お疲れー唯、瑠奈!いやー、僕らは信じてたよ。ちなみに鏡花と二人で応援してたんだけど、ちゃんと聞こえた?」
「うん……」「まあ、ね」
「あ……なんていうかほんと、ごめんなさい…」
……ちょっと微妙な空気が漂っていた。

「よーし、このまま魔の山?にいく前に……ちゃちゃっとアリサを探しに行くわよ!」
「そうだね。やっぱこういうのは、5人揃ってからじゃないと!」
「それに、ダンさんも助けなきゃね!捕まっちゃったけど、ひどい事されてないかなぁ……」
「うーん…まあ、あのおっさんをリョナろうって人はまずいないだろうし、大丈夫だと思うけど……どこにいるんだろう?」
まずは他の仲間を探すため、地下室を出ようとした四人。
だが、そこに……

「ふっふっふ……逃がさないよ。
僕がプログラムした改造警備ロボニンジャ軍団が、君たちを倒す!」

見張り四人衆最後の一人、電網のカイ=コガ率いるロボ軍団が、別にあのまま退場でも良かったのにしつこく襲い掛かってきた!

337名無しさん:2018/11/27(火) 00:33:54 ID:???
「……う……ぁ……?」
「お、気がついたみたいね。いやぁアウィナイトの女なんて久しぶりに拾ったわ。目を覚ましてくれてよかった。」
「……こ、ここは……?」

アウィナイトの少女、ミストが目を覚ましたのは、見慣れない機械や実験機材が散乱している大きな部屋の中だった。
「……ヴァイタル正常。うんうん、成功率も上がってきたかしら。これをもう少し改良する方向でよさそうね。後で王様に連絡しないと。」
せわしなく動きながらぶつぶつと喋っているのは、白衣を着た赤い髪に薄い青の目が特徴的な少女。おそらく自分より年下に見える。
だが状況的に、この少女が自分のことを助けてくれた事は間違いなさそうだった。

「あ、あの……!助けてくれてありがとう……」
「んー、助けたはいいものの使い道考えてなかったのよねー。蘇生薬も試したいのと、なんか珍しいから拾ったって感じ。」
「……え?つ、使い道……?」
「あんたらの本来の使い道としては、やっぱ金持ちの男の性処理なんだけど……別に今お金には困ってないのよねー。この薬が完成すれば当分は研究しようにも困らないし。」
自分に言っているのか独り言なのか、目の前の少女は微妙なラインで呟き続ける。
とりあえず、善良な人ではなさそうな雰囲気を感じたミストは、質問を変えることにした。

「あの……私と一緒にもう1人、アウィナイトの女の子がいませんでしたか?」
「さあ?あんた一人で海にプカプカ浮かんでたわよ。ちょうど海に出て………」
そこまで言いかけて、白衣の少女……ミシェルは言葉を止めて逡巡した。

(……アウィナイトって感情が動くとと本当に目の色が変わるのかしら。見てみたいわね……)

「……?」
「あ!女の子ね!ハイハイいたわよ!アンタよりもちっちゃいのが!でも残念ねー。アンタと一緒にプッカプッカ浮かんで、もう手の付くしようがなかったわー。なんか所々食べられてたし。」
「え………」
「あんたはまだ五体満足だったけど、あの子はもう体がほとんどなくなっちゃってたのよ。運が悪いわねー。」
「………そんな……嘘でしょ……リザっ……!」
「まああれは仕方ないわ。もう完全に死んでたし。腕も足も千切られてて、流石の私も吐いちゃったし。いやーほんとにグロテスクだったわー。もう若干トラウマよ。」
「……いや……いやぁ……リザっ……!
なんでアンタが死んで……ひぐっ!……あたしがぁっ……!……ぐすっ……こんなのいやあぁあぁあああぁぁ!」

アウィナイトの少女は相当ショックだったらしく、声を上げて泣き始めた。
「うえええええっ……!リザ……リザァッ……!リザあああぁぁぁぁあぁぁぁっ……!」
(いいもの見ちゃった。絶望した瞬間目の色が暗くなったわ。アウィナイトって面白いわね……)
声を抑えきれずに泣き続けるミストを見て、ミシェルはニヤリと笑う。また新しい実験を思いついたのだ。

(弱小民族とされているアウィナイト……この頭も体も弱そうな女をあたしの薬でどこまで強くできるか、育ててみようかしら。耐えきれなければ使い潰して死んでくれても、ぜんっぜん構わないしね………)

338名無しさん:2018/11/29(木) 01:21:27 ID:???
「ロボニンジャ軍団よ!一気に蹴散らせぇ!」
「ニンニン!」「ニンニン!」

カイのロボットたちが、ワラワラと唯たちに迫る!

「大人しく退場しとけば良かったのに……もう一度ハッキングするから、みんなは時間を稼いでくれ!」

「瑠奈も鏡花ちゃんも疲れてるし、ここは私が!」

再びアヤメガネでハッキングを仕掛ける彩芽と、彼女を守るように立ち塞がる仲間たち。これがオタサーの姫か……などとどうでもいいことを考えながら、彩芽はハッキングを開始する。

「たぁああ!」

その間に、今回の戦いであまりダメージを受けていない唯が前線に立ち、ロボニンジャ軍団を蹴散らしていく。

「せい!やぁあああ!」

「く、やはり無理か……ならば自爆特攻だ!いけぇ!」

馬鹿正直に戦っては不利と見たカイの命令を受けたロボットたちは、防御をかなぐり捨てて唯の体に突進して張り付く。

「ジバクシマス!ジバクシマス!」「ヤマトダマシーー!」

「え、ちょ……きゃあああぁあああ!?」

ロボニンジャたちの自爆を受けた唯は、爆風によって地下室の壁に強く叩き付けられる。

「がはっ!ぐぅうう!」

「よし!総攻撃チャンス!畳み掛けろ!」

壁に叩きつけられている怯んだ唯に、大量のロボニンジャが迫る。

「唯!?こんのクソナード!」

ヒ□アカみたいな台詞を言いながら、瑠奈はロボを無視して一気に司令塔のカイに迫る。カイさえ倒せば、ロボットたちも止まると考えての行動だったが……


「今だ!忍法隠れ身の術、解除!ロリ巨乳を拘束せよ!」
「シュシュットサンジョー!」

隠れ身の術で壁に隠れていたロボ忍者が、すぐ近くを通った瑠奈を後ろから羽交い締めに拘束する。

「きゃ!?」
「ウズの爺ちゃんのダメージが残ってるはずだ!おっぱいを責めろ!」
「シノビアーム、キドウシマス!」
「ちょ、またぁ!?んんうぅ!」

ロボットの冷たい鉄腕が、乱雑に瑠奈の胸を揉みしだく。

「よし、魔力の切れた魔法少女なら、テーザーガンで僕でも倒せる!」
「く……!」

唯、ヤヨイ、リザとの戦いで使用したテーザーガンを鏡花に向けて構えて、じりじりと迫るカイ。

「ちょ、みんな苦戦するの早いよ!まだハッキングまで時間が……!」
「ククク、スーパーハッカーAYM……君さえ消えれば、ハッキングナンバーワンは僕の手に!」

カイ=コガ……中忍の癖にやたらメインキャラを追い詰めた実績のある彼は、今回も結構奮戦していた。

「でも次のレスで一、二行くらいでサクッと逆転されそうだよな」
「減らず口を!ロボニンジャ!手の空いてる奴はスーパーハッカーAYMを狙え!」

339名無しさん:2018/11/29(木) 23:00:15 ID:???
「さあ行けロボニンジャ達!スーパーハッカーAYMを倒せっ!」
「彩芽ちゃん!危ないっ!!」
「わっ!?……ゆ、唯っ!!」
彩芽をかばった唯に、ロボニンジャが殺到した。

(う、もしかして……また自爆されちゃう!?)
すばやく手足や胴体にしがみついてくるロボニンジャ達。唯はまた自爆されるのかと警戒し、身構えるが……

「クックック……唯ちゃんが掛かったか。まあいい……行けっロボニンジャ達!変形合体!」
「なっ!?……こ、これはっ……!!」

「マンリキ・ヘッド!」(ガキィィン!!)「うぐっ……!!」
「サンダー・テジョウ!」(ジャラララッ!!)「きゃぁああっ!!」
「サンカク・ホース!」(ズキュウゥゥゥン!)「ひうぅんっ!?」
「ヘビー・アシカセ!!」(ズッシィィッィ!!)「あぐ、ううぅっ!!」

「「「「ヘンケイ!ガッタイ!りょなぶそう・てんこ盛り!!」」」」

なんとロボニンジャ達は、唯の全身を拘束しながら痛めつける、巨大拷問器具に変形合体した!

「な、なにこれっ!?………くっ……んっ……!は、放してっ……!」
強い力で頭部を締め付けられ、両腕に掛けられた手錠からは電流責め。
更に股間は三角木馬でいたぶられ、足につけた重りがその威力を増幅する。
鍛えて強くなったとはいえ、かよわい少女の腕力では、拷問機械の拘束から抜け出すことは出来ない。

「へ……変(けい合)たいだー!!」
「ゆ、唯ちゃんっ…!」
「こんのぉ……唯を放しなさいよ、このエロニンジャ!」

「ふふふ……いくら足掻いても無駄さ。……その姿、まるでネットに大量に上がっていた、リョナ動画そのままだね。
僕もアレには、随分とお世話になったよ」
「…くっ……!」

この世界に来たばかりの頃の唯は……悪意と暴力にひたすら翻弄されるだけの、悲しい程に無力な、ただの一人の少女だった。
今以上に様々な魔物やリョナラー達にリョナられまくり、その様子は逐一録画され、アンダーグラウンドな動画サイトに投稿された。
そして今も多数の人に閲覧されている……カイが言うように『お世話になった』リョナラーは数多い。

「君たちもこれまで随分と旅をして、修行を積んできたようだが……
結局はこうして、『ふりだし』に戻ってしまったわけだ」


…確かにカイが言うように、拷問機械に囚われた唯の姿は、あの頃の無力な唯と何ら変わりがないかのように見えた。
だが……

「……ふりだしなんかじゃ、ない。
この世界に来た頃の私は、ひとりぼっちで……いろんな人や怪物に、ひどい事されて。
ここから逃げ出したい。お家に帰りたい。パパやママやおじいちゃんに会いたい、って……いつも泣いてばかりいた。
でも今は……」

……唯の瞳には、あの頃にはなかった、強い意志の光が宿っていた。

「私はこの世界で、大勢の人達と知り合って……ひどい人も居たけど、良い人だって、たくさんいた。
だから……私は、この世界の人達を守るために。もう逃げないって、どんなに怖くても、戦うって決めたの。
……あの頃とは、違う!」

「くっ……そうやって強がったって無駄だ!『むしろリョナりがいがあって良いよね』って評価されるだけだ!
だいたい君の力じゃ、『りょなぶそう・てんこ盛り』からは……」
「……そうだな。確かにそいつ自身の力は、大して強くないかもしれん」
「…!?」
唯の眼光に気圧されるカイの背後から……低くて太い男の声が響いた。

「だが、そいつには、妙な魅力みたいなのがあるようでな。
行く先々で、どんどん仲間や味方が増えていく。
そう言う意味では、この『竜殺しのダン』も……そいつの『力』の一部、と言えるか」

340名無しさん:2018/11/29(木) 23:41:37 ID:???
「報告します!ザギ様、七華様共に負傷のため撤退!
ラガール様も、スパイと思われる一団を取り逃がしたとの事です!」

「『残影のシン』がトーメント王と思われる一派と遭遇、現在交戦中!
『魔剣使いアルフレッド』もヴィラの森に向かっている模様です!」

「捕らえていた『運命の戦士』の4人が地下室から脱走!カイ=コガ率いるロボット部隊が応戦中!」
「緊急事態発生!『竜殺しのダン』が現場に乱入しました!めっちゃ無双してます。ロボ部隊がゴミのようです」

「ええい……全く、何をやっているのだ!どいつもこいつも、ふがいない!」

闘技大会終了からわずか数時間で、事態は目まぐるしく動いていた。
次々に上がってくる不穏な報告に、テンジョウは次第に苛立ちを隠しきれなくなっている。

(大体、ラガールやザギはお姫様ーズに負けるし、闘技大会の優勝も余所者に掻っ攫われるし。一体どうなっているのだ!)
……これらの戦いを、テンジョウは間近で見ていた。だからこそ不可解だった。
討魔忍衆の力は、お姫様ーズやアウィナイトを遥かに上回っていたはずだ。
勝負とは、単純な『力』の差だけで決するとは限らない。
そんな事例を、テンジョウはこの一日で何度も見せつけられていた。

そして……

「……そう。アルフレッドや、唯達が……どうやら魔の山で、何かが起ころうとしているようですわね」
テンジョウの背後に控えているのは、『運命の戦士』最後の一人、アリサ・アングレーム。

「だ、大丈夫大丈夫!イザとなったら、アリサ姉ちゃんは俺が守ってやるから!」
「テンジョウ様……いえ、テンジョウ。…貴方には申し訳ありませんが、わたくしは……」

彼女は、無理やり白いメイド服を着せられ、腕に刻まれた双合(そうごう)の刻印のせいで逃げる事も出来ず、テンジョウの専属メイドにされてしまっていた。

「外は怖〜いモンスターや、トーメントの刺客がいっぱいだからな!ぜ〜ったい俺の傍から離れちゃダメだぞ!
いい子にしてたら、欲しいもの何でも買ってやる!」
「……聞いてください。わたくしは、行かなければならない。たとえどんな危険があろうとも」

「黙れ……黙れ黙れ黙れっ!アリサ姉ちゃんは、俺のそばにいろ!逆らったって無駄だぞ!
その腕の刻印がある限り、姉ちゃんは……!!」
あくまで冷静に拒絶するアリサに、テンジョウは怒りに任せて詰め寄る。

幼くして一国の長の座に据えられ、重い重責と孤独を抱えたテンジョウ。
その境遇には、アリサも同情の念はあった。しかし……

「わたくしも……ここで立ち止まるわけにはいかないのです。この腕を斬り落としてでも、行かせてもらいますわ!」
アリサは愛剣をすらりと引き抜くと、刻印が刻まれた自らの腕に、その刃を向ける。

「う、ううっ……やめろ……やめろよ……何だよ……
そんなに、俺の事が嫌いか?……そこまでして、俺の近くに居たくないってのか……!!」
「……そういうわけではありませんわ…!わたくしは、ただ……!」
アリサに拒絶されたと感じ、半泣きになるテンジョウ。
突然泣き出したテンジョウに、戸惑うアリサ。

「……お待ちください。テンジョウ様、アリサ様」
……そこへ、一人の男が現れる。

「?……貴方は……」
「……ローレンハインか」
白髪に燕尾服のクラシックないでたち。その静謐にして威厳あふれる佇まいは、まさに執事と呼ぶにふさわしい物であった。

341名無しさん:2018/11/30(金) 00:50:17 ID:???
「…申し訳ありませんでした、アリサ様。
テンジョウぼっちゃまは……早くに両親を亡くし、先代皇帝であった祖父も今は亡い。
厳しく叱ってくれる人も、甘えさせてくれる人も、……対等に付き合える友人も、あの方にはいなかった。
それ故に……『力』で押さえつける事しか、人と接する術を知らないのです」

「……そのようですわね。人付き合いに関しては、わたくしも偉そうなことは言えませんが」
(このご老人……相当できますわね)

ローレンハインの登場により、アリサはひとまず剣を収めた。
老執事の立ち居振る舞いは、一見何気ないように見えてどれ一つとっても隙が全く無く、底知れない実力を感じさせる。

「……テンジョウ様。ここは私に、お任せ頂けませんか」
「……どうするつもりだ」

「この私に、アリサ様と勝負させてください。
私が勝ったら……アリサ様には、一生テンジョウ様にお仕えしていただきます。
もし彼女が勝ったら、双合の刻印を解除し、彼女を自由にさせて頂きたい」

「!…それは……また、随分とシンプルですわね」
「……何を勝手な事を。まさか貴様、わざと負けるつもりじゃないだろうな」

「いえ……無論、私も本気で戦います。私の力は、テンジョウ様もよくご存じのはず。
単純な実力だけで言えば……率直に申し上げまして、アリサ様に勝てる要素は万に一つもありますまい」
「……随分と、はっきり言ってくれますわね」
(ですが、確かに……この老人の言う事は、ハッタリではない…)

「良いだろう……しかし、もし貴様が負けたら、その時は」
「ええ……この老骨の首一つで済むなら、安いものです。即刻差し上げましょう」
「なんですって!?……そんな、勝手な…!」
ローレンハインの申し出に、テンジョウが頷いた。
と同時に、ローレンハインは、闇の空間「ダークストレージ」から自らの武器を取り出し……

「……ちぇすとぉぉぉぉぉっ!!」
有無を言わせず、アリサに襲い掛かった!

(……ガキイィィン!!)
「……重ね重ねのご無礼、お許しくださいアリサ様。
先代皇帝ゲンジョウ様然り、そしてこの私然り……この国の古い人間は、『力』でしか人を計る事ができないのです」
「くっ……お気に、なさらず……わたくしも、こういう『古風なやり方』の方が、性に合っていますの……!」

「左様でございますか……しかし、先ほども申し上げました通り『力』だけでは、私には勝てない。
未来を切り開くためには……『力』だけでは、足りない。
「くっ……やはり、強い……ですが……」

(アリサ様……その身をもって、テンジョウ様に示して差し上げてください。
揺ぎ無い意志、人との絆が、時に『力』以上の力を生み出す事を……)

(……わたくしは、負けませんわ。
唯や、彩芽達と共に、サラさん達を救い出して……そして、全てに決着をつける…!)

342名無しさん:2018/12/01(土) 12:15:47 ID:???
ローレンハインの武器は、所謂バスタードソード。
特長のないのが特徴の、汎用性の高い西洋の剣である。

何合か打ち合うことで、アリサはローレンハインの強さを身をもって実感していた。

彼はこれまでの敵のように、派手な魔法や豪快な必殺技を使ってくるわけではない。
しかしその代わり、ただひたすらに堅実にして老練であった。

突きも斬りもできるバスタードソードの汎用性を活かした巧みな剣術に、付け入る隙は見つけられない。

こちらの攻撃は紙一重の間合いで避けられ、受け流され……痛いところに鋭いカウンターを仕掛けてくる。

「くっ……!リヒトクーゲル!」

一度距離を取りつつ、牽制としてエネルギー弾を放つアリサ。

「ふむ、その選択は関心しませんな」

「しま……!?」

距離を取りながらの遠距離攻撃……つまりは「逃げ」の姿勢。
地力で勝る相手に対しては、必ずしも悪手というわけではないのだが……ローレンハインの前で「逃げ」は圧倒的な隙となる。

バスタードソードは、片手でも両手でも扱える剣。これまで片手で扱っていたそれを両手で持ったローレンハインは、リヒトクーゲルを一刀両断すると、そのまま一気に肉薄してくる。

「ぐうううう!?」

ローレンハインの振り下ろしをリコルヌでガードするアリサ。ビリビリとした衝撃が、彼女の掌に広がる。

「はっ!せい!てぃやぁああ!!」

「ぐ、が、ん、んぅ……!」

堅実でありながら、好機に於いては苛烈な攻撃を加えてくるローレンハイン。
アリサはくぐもった呻き声をあげながら防戦一方となる。

致命的な攻撃は受けていないものの、少しずつローレンハインの剣がアリサの防御を突き崩していく。
アリサの白い服はソシャゲのキャラがピンチの時の絵の如く、徐々に切り刻まれていき、彼女の肌が見え隠れする。

実力で見れば、アリサがローレンハインに劣るのは純然とした事実。だが……だからこそ意味がある。

「テンジョウ、教えてさしあげますわ……人は、貴方の好きなゲームのステータスのように、数字だけでは図れないということを……!」

「いや、俺もイラストが好みだったら多少ステータスに難があっても使うけど?」

「そういう話をしてるのではありませんわ!?」

ちょっとカッコ付けた後に野暮なツッコミを入れられて赤面するアリサであった。

343名無しさん:2018/12/03(月) 02:25:16 ID:NV4hM/6g
「シュヴェーアトリヒト・エアースト!ツヴァイト!ドリット!」

「ふっ……!つぇええええい!」

「ぐっ!?」

美しい金髪をたなびかせながら必殺の三連コンボを放つアリサ。しかしローレンハインは斬り払い、突き、振り上げの華麗な連撃を、完全に見切って受け流していた。カウンターの一撃を辛うじて避けるアリサだが、彼女の服の裂傷はどんどん増える。

「私も伊達に歳を取ったわけではありません……アングレーム流の剣技は、幾年も前に既に見切っております」

ローレンハインの武器はその老練さと実戦経験の豊富さにある。アングレーム剣術自体は一子相伝の技だが、文献などから独自に再現することも不可能ではない。彼は以前、そのアングレームのコピー剣士と戦ったことがあり、アリサの動きを最初からほぼ見切っていた。

余談だが、くさそうの人も>>72でアングレーム剣術のコピーをしている。

「昔戦ったコピーと貴女のオリジナルでは違う部分もございますが……大元は同じ故、対応は容易い」

「……勝負あった……いや、戦う前から決まってたな……アリサ姉ちゃん、ローレンハインは一度戦った流派との再戦には滅法強いぜ」

「だからなんだと言うのです……!勝負は最後まで分かりませんわ!」

「はぁ……そういう台詞はゲームだけにしといてくれよ。アリサ姉ちゃんもさっき言ってたけど、結局さ、ステータスの強い方が勝って弱い方は負けるの。姉ちゃんはイラストだけはまぁまぁなキャラみたく、姫プレイで俺のそばにいてくれればいいわけ!」

「……可哀想に……あなたは肉親や友の情愛に触れたことがないから、ゲームのようにしか物事を見れないのですわね……ひょっとしたら私も、同じようになっていたかもしれませんわ」

実の両親は健在とは言え、親から愛を受けられなかったという意味ではアリサもテンジョウと同じだった。その境遇には同情と共に、少しの共感も覚えていた。

「私には、会わなければならない友達も、救わなければならない仲間も……決着をつけなければならない相手も、たくさんいるから、負けるわけにはいかない……けれど、『お友達』くらいには、なってあげるわ!」

知らず知らずのうちに、昔……現実世界にいた頃の口調に戻っていたアリサは、決意に満ちた瞳で武器を構える。

「素晴らしい……ならばこの私を打ち倒し、テンジョウ様に絆の力をお見せしていただきたい!」

どこか感極まったような表情をしながらも、剣のキレはますます冴え渡るローレンハイン。

自らのアングレーム流剣術が通じない相手に対し、アリサは……


「これが、絆の力……!飛翔烈空斬!!」

344名無しさん:2018/12/04(火) 00:47:41 ID:???
ミシェルに拾われたアウィナイトの少女……ミストは、彼女の実験台の道具となって過ごすようになった。
[弱小民族としての体をどこまで強化できるのか]という研究テーマの元に、投薬実験と身体強化を繰り返す地獄のような毎日。
普通の人間なら心が壊れてしまう生活だったが、ミストは何日続いても平気だった。

「はーい!じゃあ次はオーク2体の組み合わせでいくわよー!死なないように頑張りなさいー!」
「ゲヘヘ……アウィナイト、女ダ……久しぶりに見た女だァ……!」
「女、女ッ!オンナァ……!殴ッテ、犯シテ、腕も足も胸も目も全部食ベテヤル……!グヒヘヘヘヘ……!」

剣を携えたミストの目の前で不気味な声を出しているのは、亜人モンスターのオークたち。
頭は悪いがそれを補って余りある強靭な体を持っており、並大抵の実力では退けることさえ難しい魔物である。

「「ウガガガ……!女アアアアァ!!」」
己の欲望を剥き出しにして襲いかかるオークたち。挟み撃ちになったミストは2人のオークを見据えて、カッと目を見開いた。

「アデ?どこいっダ……?オグ!?」
「あ、アニギィ……?ヴ!?オボコガアァァ!!!」
土煙一つ浴びず、ほんの少しの風圧も感じず、オークたちは首から血を流して倒れた。
少し離れた場所で納刀の音がした方をミシェルが見やると、返り血一つ浴びていないミストの金髪がふわりと揺れている。

(フフフ……捕まえた時から心が壊れているから、薬でなんでもやり放題。挙げ句の果てにはこんなに強くなっちゃうなんて……ちょっと調子に乗りすぎちゃったかしら。)

オークが倒れると同時に、ミストを閉じ込めていた出口のドアが開かれる。
倒した獲物を一瞥することもなく、ミストは出口へと歩いていった。



「やるじゃない!もうあんたがどんどん強くなって怖くなるわよ。あたしの天才的な頭脳がね。」
「……た……かった……」
「え?なに?」

「……また……わたしは死ねなかった……」

ミシェルを見るわけでもなく、虚空を見つめてミストはぽつりと呟く。
ミシェルが嘘をついたあの日から、彼女の目に光が灯ることは今まで一度としてない。
ミシェルがどんなに美味しい食べ物を用意しても、広くて快適な部屋を与えてやっても、ミストの感情は希薄だった。

「……あーあ。いつもいつも自殺志願者見たいなこと言っちゃって。どんな強い魔物を出しても倒しちゃうからいけないんじゃない。死にたいならさっさと舌噛んで死ねば?」

「……わたしは殺されたいの……母さんや、父さんや、レオやリザがそうだったように……理不尽な存在に、私の体も私の心も踏み躙られたいの……レオやリザたちの絶望が少しでも感じられるように……そうすれば、あの世でみんなにまた会える気がするの……」

「う……あんた……あたし以上のサイコパスよね。こりゃもうお手上げだわ。」
ミストの言葉を理解できないミシェルは、匙を投げた様子でミストから離れていった。

(……母さんも父さんも……レオも……一番守るべきリザさえも守れなかった私に、幸せに生きる価値なんてない……あの子たちと同じように死ななければ……この世界に絶望して、最大限の苦痛を浴びて、あの子たちと同じように死なないと……いけないんだ……)

345名無しさん:2018/12/08(土) 02:25:16 ID:???
「あーもしもしジェシカ?スマ○ラ買った?は?レッツゴーイーVが終わってない?そんなのいいからスマ○ラ買いなさいよ。とにかくスネグアと、あとは闇ルートで虫の交易してるっていうアンタの兄貴辺りも誘って4人対戦を……は?さりげなく新キャラを示唆するな?アンタ何言ってんの?」

珍しく饒舌に誰かと電話しているミシェルを、虚ろな瞳で見つめるミスト。しばらくして通話を切ったミシェルは、トレードマークの白衣を羽織りながら、一瞥もせずにミストに話しかける。

「ちょっと出かけてくるわ、ついでにアンタの実験用の諸々を見繕ってくるから待ってなさい」

「……次はもっと、私を殺してくれるような魔物を連れてきてね」


返事もせずに出かけていくミシェル。ミストはしばらくぼうっとしていたが、やがて勝手にミシェルの製造した薬品の入った棚を漁り始めた。

(あの人の連れてくる魔物じゃダメだ……もっと理不尽に、もっと苦しく死なないと……何か、何か劇薬は……)

心の壊れたミストの物色はしばらく続いたが、良さげな劇薬は見つけられなかった。その後は乱雑に散らばった机の上を漁って、自分を殺してくれるような発明品を探していたのだが……その途中で、ある紙束……パンフレットを発見する。


「これは……?」

その紙束の表紙には『あなたへのオススメ奴隷』と書かれていた。ペラペラとページを捲ってみたところ、どうやらトーメント王国が捕まえたり購入したりした奴隷の一覧のようで、ミシェルに高額で買い取って貰うためのアピールポイントと共に、『ミツルギ最強を目指す女剣士』やら、『ウェイゲートを通さずに捕まえた異世界人』やらの項目が並んでいる。

そんな雑多な情報の中、最後のページにミストの目を引く文字列があった。

「『資金援助の結果、盗賊団はアウィナイトの大量確保に成功』……!?」

盗賊団、アウィナイト……自分の家族を奪ったあの事件に間違いないと察したミストは、それに続く情報を読み取っていく。

「『死体、生体を問わず、比較的強いアウィナイトの肉体をご所望でしたが、頑強な抵抗をした少年の死体を確保することに成功致しました』……きっとレオのことだ!」 

夢中になって紙束を食い入るように見つめるミストの青い瞳には、感情が戻っていた。

「『死体の鮮度はトーメントの技術でリカバリー済みです!ミシェル様が行っているアウィナイト強化実験のお力になることでしょう』……あの事件は、トーメントが裏で手を引いてたの……!?」

346名無しさん:2018/12/09(日) 03:58:02 ID:???
「天地殻葬外龍殺!」
突如現れた龍殺しのダンによる拳の叩きつけは、カイが操るロボットたちの足場を崩し奈落の底へと落としてしまった。
「うわぁ〜!ダンさんすごーい!」
「す、すげー……相手を倒すとか壊すとかじゃなくて、地形を変えちゃうなんて……」
「まさに規格外よね……てかこのおっさんをあそこまで追い詰めたあの七華ってやつはどんだけなのよ……」
「あれじゃないかな?女の子相手だから手加減してたとか……」
「初めて会った時アリサには腹パンかましてたけどね!」

ダンの助力でカイを退けた唯たちは、ムラサメの城の地下室から抜け出し、城の内部へと脱出していた。

「おいオメーら!あの金髪ロングは助けないくていいのか!?」
「アリサも助けます!きっとこの城のどこかにいるはず……!」
「けっ、運命の戦士ってんならどうせテンジョウのやつが囲ってんだろ。ゲンジョウの馬鹿ヤローの置き土産を久し振りに見にいくとするか……」

やけにミツルギの城に詳しいダンを先頭に、唯たちはテンジョウの私室を目指すことになった。



その頃、城の一室では。

「……ん……」
「ククク……いつもいつもクロヒゲクロヒゲうるっせえアホらぎも、こうして寝てさえいればただの女だな……」

下ネタで気絶した七華を部屋に連れ込んだザギが、寝ている七華に跨り征服感を満たしていた。
強力な睡眠の術式が施されたベッドに寝かせているため、七華が1人で起きることはないだろう。(これもタイムワープでちゃっかり用意したものである。)

「さっさと卑猥な言葉を使ってこうしてりゃあよかったぜ。……っと、いつまでも寝顔の俯瞰を楽しんでないで、一応しっかり拘束しておくか。クロヒゲは放置してきたがこいつ単体でも何するかわかんねーからな。」

七華が起きても何もできないように、クロヒメは放置してきたザギ。とはいえクロヒメがないときの七華の戦闘力は未知数なので、念には念をいれておかなければならない。
部屋に準備していた拘束具を手に取ると、七華が小さな口を開けた。

「んぅ……クロヒメ様……クロヒメ様ぁ……」
「うぇ、気味悪りぃ。寝てる時もそれなのかよ……ったくコイツ、顔と体と声以外は全部キモいな。」
「ほっほっほ……では無抵抗な女を拘束して性の欲望を満たそうとしているお主は、どうなのかえ?」
「…………あ?」

突如響いた妖艶な女の声にザキが振り返ると、そこにいるはずもない「モノ」があった。

「おい、ウソだろ……七華は寝てんだぞ……どうなってやがる……!」

「わらわは付喪神・血贄ノ黒姫……七華が動かぬから仕方なくこちらからきてやったのじゃ。それに……ちょうど血が足りなくなったところでな。貴様のような男を食べるくらいなら、七華も許してくれるじゃろう……」

347>>343から:2018/12/09(日) 12:04:43 ID:???
「ぬうっ!?この技は……アングレームの物ではない…!」
「はぁぁぁぁっ!!」
高く跳躍し、剣を相手に向けて突進。
アリサが繰り出した技……桜子の「飛翔烈空斬」は、これまでローレンハインが見た事のないものだった。

「どうやったか知りませんが、空中からいきなり突進してくるとは……
何より、貴女がアングレーム流以外の技を繰り出してくるとは、予想外でしたな」

「……わたくしがどんな剣を振るおうが、わたくしの自由。そうではなくて?」
「仰る通りですな……ならば私も、遠慮なくこの技で仕留めさせていただきましょう」
ローレンハインの殺気が、一段と鋭くなった。
バスタードソードを片手で背負うように構え、空いた手に魔力を込めていく。
発動した魔法は……

「……次の攻撃。まずは貴女の右脚を斬り裂くと、予言しましょう」
「なっ……何ですって…?」

シャドウリープやダークストレージなど、空間を操作する闇魔法の一種。
中でも、最も初歩的かつ高度な、空間に穴をあけて別の場所に転移する、「ダークゲート」の魔法だった。

「ダークゲート・スティング!!」
大規模なものになれば、船や竜車ごと離れた場所に移動する事すら可能。
だがローレンハインが使うのは、ごく短時間、そして近距離へ、剣が一本通るかどうかの小さいゲート。

(…ドスッ!!)
「……うぐっ、あああっ!!」
予測不能の刺突がアリサの右脚を貫くには、それだけで十分だった。

「……どうしました?今の一撃、貴女ほどの技量なら多少なりとも対応できたはずですが……」
「っ……わかっていて、やっているくせに。とことん喰えない方ですわね」

空間が歪み、剣先が消え、予告……いや、予言した箇所を刺し貫く。
その技は、アリサがかつて、完全敗北を喫し、命を奪われた……アルフレッドの魔剣『運命の螺旋』に酷似していた。

「ですが、わたくしは……こんな所で……負けるわけにはっ!!」
あの夜と同じように、白いドレスが血に染め上げられていく。
このままでは、アリサはローレンハインに近付く事すらできず、一方的に斬り刻まれてしまうだろう。
アリサは痛みを堪えて立ち上がり、右足を引きずりながらも前に出た。

「……次は、左腕といきましょうか」

二度目の必殺技が、その行く手を阻む。
アリサの左腕の周囲に無数のゲートが開き、ローレンハインの剣が現れる。
(キィン!!)
「くっ……!!」
ローレンハインが使う剣は、魔剣ではない。この技は、あくまであの魔剣のコピー、あるいは類似品にすぎない。
攻撃される個所がわかっているのだから、落ち着ていれば防げるはず……

(ガキィン!キン!ギャリン!!)
「このっ……あっ……しまっ」
わかっていても、あの夜の事が頭にちらついてしまう。
一度や二度は防いでも、ローレンハイン機械のように正確な追撃は、アリサの左腕を執拗に狙い続け……

(ズブッ!!)
「っぁぁぁああ"あ"ああああ"ああっっ!!」
偶然か。…それともやはり、運命なのか。
ローレンハインの剣が、あの夜と同じようにアリサの肩口から二の腕までを抉るように斬り裂いた。

348名無しさん:2018/12/09(日) 12:33:20 ID:???
「……例の事件の事、少々調べさせていただきました。
あの男は、私の旧知だったシュナイダー殿の仇でもありますからな……」

血だまりの中、ガクリと膝をついてしまったアリサに、ローレンハインは感情を押し殺し語る。
アリサの左肩と右脚は、失血で既に感覚がない。
立ち上がったとしても、この距離ではローレンハインの剣の餌食。次にあの攻撃を受けたら、今度こそ立てないだろう。

「残念ですが、ここまでのようですな……次で終わりにしましょう」
アリサの周囲に、三度無数のゲートが開く。

「あの日の私は、『奴隷』でしたわ……ある人が言っていました。人は皆……運命の『眠れる奴隷』なのだと」
……アリサの心の中にも、今までの旅の思い出がプチ走馬灯のごとくよぎっていた。

「どうやら貴女には……運命を変える事は出来なかったようですな!」
ローレンハインの剣が繰り出される。狙いはアリサの心臓。

「たとえ、変えられなくても……いいえ、だからこそ。
ただ眠るように従うのではなく、立ち向かわなければならない……一人一人、自らの運命に!」
ローレンハインの剣が届く寸前。アリサは、ゲートの一つに向かってリコルヌを投げた。

「…ぐっ!?」
ゲートは当然、どれも手元に通じている。
アリサの狙い通り、リコルヌはローレンハインの右肩に突き刺さった。
その隙に、アリサは右脚が痛むのも構わず間合いを一気に詰める。

「『覚悟』とは!暗闇の荒野に!進むべき道を切り開く事ッ!」
彩芽は『それが第五部のテーマなのだよ!(ドッギャァァン)』とか言っていたが、ありさにはそ-いうのよくわからない。

「そしてこれは、その証……『ライトニングパニッシャー』!」
「うっ……ぐあああああっ!!」
投げ刺した剣の柄を掴むと、落下の勢いを載せて、真下へ一気に斬り下ろした。

349名無しさん:2018/12/09(日) 19:41:31 ID:???
「ぐ、があああああ!!」

桜子の飛翔烈空斬とサラのライトニングパニッシャー……仲間の力を借りたアリサによって、ローレンハインは倒された。

「ぐ、は……!歳は、取りたくないものですな……!一撃喰らうだけで、ここまで重いとは……!」

ライトニングパニッシャーによって切り裂かれた肩を押さえながら、がっくりと膝をつくローレンハイン。

「そ、そんな……!ローレンハインが、負けるなんて……!」

幼い頃からの世話役が負けたことを、信じられないような目で見ているテンジョウ。

「はぁ、はぁ……!テンジョウ……これで分かったでしょう?ただの『力』ではない『強さ』が」

荒い息を吐きながら、ゆっくりと剣を鞘に納めるアリサ。

「ぐ……!ミツルギでは、力こそが正義……!姉ちゃんを手放すのは惜しいけど、勝っちまった以上しょうがないか……!」

「はぁ……私の言いたいことが全く伝わっていませんわね……」

相変わらず力、力と言っているテンジョウに、アリサは呆れた声を出す。

「うっさいな!そりゃ、仲間の技でローレンハインを倒したのはすげぇよ!でもそれは姉ちゃんが強かったからだ!」

「いいえ、あなたも分かっているでしょう?本来の実力ならば、私はローレンハイン氏に勝てる域に達していませんでしたわ。自らの流派以外を使うなんて奇策だけで勝てるほど、彼は簡単な相手ではなかった」

「だからって、そんな……絆とか友情とか言われても、漫画みたいだなぁとしか思わないし……」

「はぁ、温室育ちのお坊ちゃんはこれだからいけませんわね……本当に、以前の私のようですわ……趣味は彩芽みたいですけど」

溜息をついたアリサは、近くで戦いを観戦していたテンジョウに歩み寄ると……

「……わぷっ!?」

「……これは、最初の時の意趣返しですわ」

アリサは、ゆっくりとテンジョウの事を抱き締めた。

「な、なにすんだよ……」

「人の温もりが、恋しかったのでしょう?私もそうだったから……分かるわ……」

以前の口調に戻ったアリサは、多少気恥ずかしく感じながらも、テンジョウを抱き締める力を弱めない。

「力で押さえつけるしか知らないから、刻印を付けたりしたのね……でも、ただ寂しいと本音を言えば、応えてくれる人は必ずいる……私も、そんな簡単なことに、ずっと気がつかなかった」

「な、なにを……」

「家臣の中にだって、あなたのことを真に想っている人はいるわ……ただ、気づいてないだけで……だから今は、私が絆を……人の暖かさを、教えてあげる」

しばらくは気恥ずかしそうにもがいていたテンジョウだが、やがて力を抜いてアリサに抱きしめられるがままになる。

そろそろ離して、改めて刻印を解除して貰おうかとアリサが思った頃。アリサの耳に、聞き覚えがバリバリある声が入った。

「あわわわわ……あの亜理沙が、ショタコンに目覚めるなんて……えらいこっちゃえらいこっちゃ」

「もうちょっとしてから、助けに行こうかしら……」

「み、みんな意外と、進んでるんだね……」

350名無しさん:2018/12/09(日) 22:49:41 ID:???
「え!?み、みんな!?ち、ちち、違いますわっ!!これはその、不可抗力というか、なんというか……!」
「いやいや、亜理紗自分からそのショタを抱きしめにいったでしょ。もう現場は抑えてるんだよ。」
「う……!そ、それは……!」
「え、マジなの?うわああぁまさかと思ったらそうだったのか!亜理紗はホントにそういう……へぇー」
「彩芽、あんた性格悪すぎ……」

シリアスな雰囲気が一瞬にして女子の声が飛び交う華やかなものになり、テンジョウはぽかんとしていた。
「あ、ごめんなさい……みんな私を助けに来てくれたみたいで。」
「じゃあ亜理紗。外で待ってるから、色々と満足したら来てね。じゃ!」
彩芽は素早くそう言うと、そそくさと部屋を出て行った。
「え?あ、彩芽ちゃん!?」
「唯、今はあたし達も出て行った方がいいと思うわ。ね、鏡花?」
「うん。ついノックもせずに入っちゃったけど、今はアリサとあの子を2人にしてあげよう。」
「そ、そっか……そうだね!じゃあアリサ、部屋の外で待ってるね!」
「ち、ちょっと!みんなして変な勘違いを……!」

アリサの弁明も聞かず、3人は彩芽に続いて出ていき、部屋に静寂が戻った。
「……あれがアリサ姉ちゃんの友達かぁ。見事に美少女揃いだなぁ。」
「騒がしくしてごめんなさい……それで、刻印のことなのだけれど……」
「……あぁ、わかってるよ。もう解除した。アリサ姉ちゃんは自由の身だ。……無理やりメイドにしようとして、ごめん。」
申し訳なさそうに言ってから、テンジョウは頭を下げた。
今までの彼の言動からは考えられないようなしおらしい対応に、アリサは目を丸くする。

「……テンジョウ、貴方……そうやって素直に謝ることもできるのね。」
「……アリサ姉ちゃんに、嫌われたくないから。」
そう言ってテンジョウはアリサの目を見つめる。
心握の目と呼ばれ恐れられている彼の目だが、アリサには年相応のあどけなさが残る普通の少年の目に見えた。
「……アリサ姉ちゃん……さっきの続き、もうちょっとだけ、してほしい……」
テンジョウは恥ずかしそうにそう言って、じっとアリサを見つめた。

「……いいよ。……ほら。」
「……ん……」

アリサに許しを得たテンジョウは、今度は自分からアリサの体を抱きしめる。
相手が自分より身長の低い年下とはいえ、内心恥ずかしくて仕方なかったが、アリサはテンジョウに自分の姿を重ねていた。
親に監視され、暴力を振るわれ、自由のない生活を送った自分は、彩芽という友達を得たことで学校が楽しくなった。
(……この子にも誰か1人、対等に自分を見てくれる人がいればいい。……理由がなくても一緒にいたいと思えるような存在が……)

もし可能ならば、自分でもいい。
アリサはそう思いながら、テンジョウの体を抱き寄せた。
愛を知らない少年に対して今の自分にできることは、わかりやすい愛情表現をしてあげることだけだから……

351名無しさん:2018/12/09(日) 22:54:18 ID:???
「じゃあ運命の戦士の女の子たち……改めて、俺はテンジョウ・ミツルギ。14歳にしてこのミツルギ皇国の皇帝だ。」

アリサとしばらくそうしてから、テンジョウは運命の戦士たちを自分の部屋に招き入れた。
ローレンハインも回復し、今はテンジョウの傍で姿勢を正して立っている。
先程のやり取りを彼が聞いていたのか……それを本人に聞くのは野暮だと判断したアリサは、問いただすことなどしなかった。
(聞かれていたら正直すごく恥ずかしいが)

「すごいなぁ……私たちより年下なのに皇帝なんて。」
「亜理紗め……僕と同じ名前の剛○彩○のように、玉の輿を狙ってのさっきの所業か……!」
「彩芽、黙りなさい。」

アリサが彩芽を小突いてから、瑠奈はテンジョウに問いかけた。
「あの……魔の山にあるっていう神器についてなんですけど……あれって一体なんなんですか?」
「……セーブ・ザ・クイーン。あれにはこの世界で起こったこと、そしてこれから起こること全てが記録されている。」
「……記録されているっていうことは、魔力を帯びた本なのですか?」
鏡花が尋ねると、テンジョウは難しい顔をした。
「……本じゃない。あれを普通の人間が理解することは難しい。なぜなら、あれは人が理解できる範疇を超えている膨大な情報で……口では説明しづらい。」
口籠ったテンジョウを見て、ローレンハインが咳払いをした。
「坊ちゃまに代わって私が代わりにお答えさせていただきますと……いわゆる思念体のようなものでございます。皆様の世界にはそのようなものは存在していなかったとは思いますが……この世界には魔力の集まる場所や精霊の加護を受けた場所……あるいは強い思いが残された場所などには、思念体と呼ばれる情報が残ることがございます。」
「あ、あれかな!RPGとかで死体に近づくと、その人の無念が形になって霊になってたり変なセリフが聞こえてきたりする……」
「……ええ。そこまで外してはいないかと。」
「彩芽、あんたのゲーム脳、この世界ではすごい役に立ってるわよね……」
瑠奈は皮肉のつもりで言ったのだが、彩芽はこれ見よがしにふん、と鼻を鳴らした。

「俺がみんなを呼んだのは、神器の扱いについてなんだ。どうせ自分たちの世界に戻るために、なにかしら役に立つと思ってるんだろ?」
「え!なんでわかったの?」
「唯、敬語使いなさいよ……アリサはもうそういう関係だからいいとしても、この子は一応皇帝なのよ?」
「瑠奈ちゃん、なんか色々と失礼なこと言っちゃってるのは瑠奈ちゃんの方だよ……」
唯→瑠奈→鏡花の順で窘めが入ったのを見て、テンジョウは笑った。
「いいよいいよ敬語じゃなくて。アリサ姉ちゃんの友達なら全然タメ口でいいからさ。……で、神器のことだけど。」
自分たちが元の世界に帰る方法について、ようやく教えてもらう機会だ。
少女たちはテンジョウの言葉を待った。

「……神器を使えばこの世界に引き込まれたという事象を書き換えて、君たちをこの世界に引き込まれる前の状態にすることができる。でもそれは……」
「あ、まさか……」
展開を先読みした彩芽が、ポロリと言葉を零した。

「……そう、この世界に来たという事実を書き換えるということは、この世界で起こったことを全て忘れるということになる……そういうことだ。」

352名無しさん:2018/12/10(月) 02:33:56 ID:???
「そ、そんな……それじゃあ、この世界のみんなのこと……ううん、彩芽ちゃんもアリサも鏡花ちゃんのことも、忘れちゃうってこと……!?」

「アホ王とかクソガキとかはどうでもいいけど、ルミナスのライカさんたちのことまで忘れるなんて……!あ、でもあのスパルタ修行自体は別に忘れてもいいかも」

「ボクも亜理沙以外のこと……いや、亜理沙と仲直りしたことまでなくなるのか?せっかく引きこもり脱却できたのに!いや今も事情さえなければずっとゴロゴロしてたいけどさ!」

「……苦渋の選択を迫られる運命、ということですわね」

「私は、ルミナスのみんなは元からの友達が多いけど……それでも、忘れたくない人だってたくさん……!」

衝撃の真実を聞いて、愕然とする五人の戦士たち。リョナ世界に来てからの暴虐に満ちた記憶もなくなるのは嬉しいが、それでも、大切な出会いもたくさんあったのだから。

「まぁあれだ、うちの討魔忍たちがあの王を追っ払って、ヴィラの一族と交渉して神器を一時こっち預かりにするまで、まだ時間はあるしさ、ゆっくり考えなよ」


テンジョウのその言葉を聞いて、唯が思い出したように声をあげる。

「そ、そうだ!あの王様が、リザちゃんを利用して神器を奪おうと……!」

「アウィナイトに伝わるシフトの力は確かに未知数だけど、だからって神器を奪えるとは思えないし……さっきも言ったけど、仮に奪えるとしてもうちの連中が追っ払うし」

「だが、こいつらは万が一を警戒してる……そして今まで何度もあいつらに煮え湯を飲まされたこいつらの言うことは、中々信頼する値するぜ」

その時、ぬぅっと現れたのは竜殺しのダン。今までなんとなく空気を読んで隠れていたのだ。

「竜殺しのダン、アンタもいたのか……まぁどっちにしろ、俺に姉ちゃんたちを止める権利はない。王を追いたいなら追えばいいさ。ローレンハイン、途中まで案内してやれ」

「はっ!しかし、私でよろしいので?私はアリサお嬢さんに敗北し……」

「……そんなことでお前を処刑したら、アリサ姉ちゃんに嫌われちまうよ」

少しではあるが、力だけの考え方から変わっているテンジョウを見て、ローレンハインは嬉しそうな表情をする。

「……とにかく、これでやっと五人揃った……元の世界のことも大事だけど……」

「今は、あのアホ王を止めることだけ考えないとね!」

「あいつをどうにかしないと、帰る帰らない以前の問題だしな!」

353>>345から:2018/12/14(金) 00:11:43 ID:???
「まったく、ちょっと買い出し兼ねて遊びに行ってたら……油断も隙もないわね」

「……ひぐっ!?」

夢中になって資料を読み漁っていたミストの背後から声が聞こえてきた瞬間……バチバチバチ!とミストの体を電流が走る。

「アンタの体には暴走防止用の機械が埋め込んであってね、スイッチ一つでバリバリ!ってわけ」

「ぅ、あ……!ぁあああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

いつの間にか帰って来ていたミシェルが手に持つボタンを押せば、それだけでミストの体中を耐え難い電流が走る。

「ふふ……私の知り合いに結構な金持ちがいてね、そいつの家にあった古い文献によれば、アウィナイトにはシフトとかいう便利な能力があるそうね。発現条件はよく分かってないみたいだけど」

「ん、ぐ……!はぁ……!はぁ……!だから、なに……?」

「アウィナイト同士を上手いこと配合して、人工的にシフトの力を作れないかなと思ってね。ということで、こんなん買ってきたってことよ」

ミシェルがそう言った後、お手伝いロボットが運んできたものは……

「死体の防腐処理技術が凄くて助かったわ。トーメント王国様様ね」

「……!レ、オ……!?」

「あれ?この死体、あんたの弟だったの?それはご愁傷様ねー」

「どう、するつもり!?」

「言ったでしょ、配合するって。遺伝子情報をぐちゃぐちゃに組み換えて、もっと人間離れした強さにしてあげるんだから感謝しなさい」

「ま、さか……!ぐ、ぅう……がぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

「ふんふん、流石のアンタも、体の内側から流される電流にはどうしようもないようね」

悪魔の実験を行おうとしているミシェル。ミストは自分だけが被験者になるならばともかく、レオの遺体まで利用しようとしていると知って抵抗しようとするが……用心深いミシェルの作っていた暴走防止装置により、抵抗は叶わない。

「顔とか声とかが男の方と混ざるかもだけど、ベースはアンタにしとくから安心して実験台になりなさい」

薄れ行く意識の中、ミストが聞いたのは、どこまでも無機質で、あくまでも実験にしか考えていない、ミシェルの冷たい声だった……。

354名無しさん:2018/12/15(土) 19:02:26 ID:???
「こんな方法で、本当にうまくいくでしょうか……」
「唯達を解放してもらうにしても、じっくり交渉する時間がない。
私達も、明日には『次の場所』に向かわなきゃならないからな。イチかバチかではあるけど……やってみる価値はあるさ」

ひとまず話のまとまった王の間に、近づいて来る人影があった。

「じゃあな、気を付けろよアリサお姉ちゃん、あとその友達も。……なあ。俺、これから本当に……大丈夫かな」
「……大丈夫。勇気をもって心を開けば……きっと、応えてくれる人は現れますわ」

(バタン!!)
「たのもーーう!」「お、お邪魔します!」
「きゃああぁ!?あ、あなた達は……」

「……ミツルギ皇国皇帝テンジョウ陛下!我々といざ尋常に、スマブラで勝負していただきたい!」
魔法王国ルミナス代表、女王代理ヒカリ(使用キャラ:ピーチ)参戦!!

「我々が勝ったら、あなた方が身柄を拘束している、運命の戦士の方々を解放していただきます!」
(ほほほ本当に大丈夫ですか!?私まだ、基本の立ち回りとか良くわかってないんですけど…!)
シーヴァリア王国代表、女王リリス(使用キャラ:ゼルダ)参戦!!

「ヒカリ…!それに、騎士の女王様の……リリスさん!」
「……え。どうしたのこの人達。いきなりスマブラとか」
「お、いいじゃんいいじゃん!じゃ、ボクはスプラのイカにしようかな……」
「いや、やらないわよ!?私たちこれからバカ王を追いかけるんだから!」

「あ、そういえばそうだったね!」
唯(使用キャラ:しずえ)参戦!

「早く森に向かわないと……!」
鏡花(使用キャラ:パルテナ)参戦!

「あんたたちまで使用キャラ決めてんじゃないわよ!」
……しない!!

「ふっ……ははははは!……なーんだ。騎士と魔法少女の姉ちゃんたちも、案外話せるじゃんか……
……いいぜ。ボッコボコにリョナってやんよ!」
ミツルギ皇国代表、皇帝テンジョウ(使用キャラ:ディディーコング)参戦!!

「あれ?……なんか、リアクションとか状況とか……」
「……思ってたのと色々と違いますね」
「まあまあ、いいじゃねえか。そうなるともう一人メンツが欲しいな!」

「私は、この方たちを案内しなければなりませんし……」
ローレンハイン(使用キャラ:ゲッコウガ)参戦しない!

「……いや、俺もやらんぞ」
竜殺しのダン(使用キャラ:ガノンドロフ)参戦しない!

「んじゃ、五人衆から誰か呼ぶとするか!
ザギ(リドリー)か、ラガール(メタナイト)か、七華(WiiFitトレーナー)か……」

「ちょっと待ったー!私達、お供的サムシング勢を」
屈殺卿エール(使用キャラ:ゼロスーツサムス)参戦!!

「忘れてもらっちゃ困るわよ!」
有坂真凛(使用キャラ:ロゼッタ&チコ)参戦!!

「ふふふ……もう、心配はいらないようですわね、テンジョウ……」
(スマブラ……?…………どういうブラなのかしら)

……そんなわけで、親睦が深まりつつある各国代表を尻目に、運命の戦士達はヴィラの森へと向かうのであった。

355名無しさん:2018/12/15(土) 19:49:52 ID:???
一方、その頃。

「……お?王様から、新しい指令が来たな。どれどれ、これは……」
アトラ(使用キャラ:むらびと)

「運命の戦士達を……『殺せ』ですって? 急にどういう事ですの?」
アイナ(使用キャラ:カービィ)

「王様(使用キャラ:キングクルール)たちが神器の封印されている場所に到着したら連絡が来るから、
それを合図に一斉に……って事らしい」
シアナ(使用キャラ:ネス)

「運命の戦士達が死んだら……再び蘇る。『王』の元で」
ロゼッタ(使用キャラ:ベヨネッタ)

「なるほど……案外単純な作戦だったんだな。暗殺は趣味じゃねえが、別に初めてじゃねえし……ま、しょうがねえか」
アイベルト(使用キャラ:キャプテン・ファルコン)

(ノリでロゼッタさんに着いて行ったら、暗殺の相談が始まってしまったでござる……どうしよう)
エミリア(使用キャラ:ルフレ)

「アイベルトには『竜殺しのダン』の排除を頼みたいんだけど」
「ええ……またおっさん相手かよ!さらに趣味じゃなくなった!」
「……それもまた、運命……」

……運命の戦士達に、更なる過酷な『運命』が襲い掛かろうとしていた。

356>>353から:2018/12/16(日) 14:13:28 ID:???
「ん……あっ!?くっ……!」

気絶していたミストが目を覚ますと、自分の体は手術台に鎖で拘束されていた。

薬で強化された筋力で鎖を引きちぎろうとするも、特殊な鎖なようで一向に千切れない。

「目が覚めたみたいね」

手術台の上に横たわっているミストのそばには、ミシェルが手元に用意したコンソールを操作しながら佇んでいた。


「さぁ、いよいよ手術開始よ!麻酔なしでやるけど、まぁ大丈夫でしょ」

瞬間、ミストは思い出す。ミシェルの言っていたこと……レオの遺体に残る遺伝子情報を自分とぐちゃぐちゃに混ぜて、無理矢理シフトの力を発現させる、悪魔の実験のことを。

「や、やめ……!」

確認してみれば、自分の体には怪しげなチューブがいくつも突き入れられており、近くには同じ状態のレオの遺体がある。

「ふんふん、怒っても目の色が変わるのね……本当に面白い民族ね!」

「ッッガァアアアアアアアアァア!!!?」

必死に暴れるミストを嘲笑うかのように、手元のコンソールを無慈悲に操作するミシェル。

レオの死体から血が抜き出され、フィルターを通してミストの中に入っていく。

「ぎ、!?入っ、で!?レオ、が!レオが、わ゛た゛し゛の゛な゛か゛に゛!?」

ミシェルの宣言通り……姉と弟の遺伝子情報が、ぐちゃぐちゃに混ざりあっていく。

「はー、無駄にエロい言い回ししちゃつて……どう?嬉しい?お望み通り、体も心も踏み躙ってあげたけど?」

確かに、ミストは身も心も踏み躙られて死ぬのを望んでいた。だがそれは、自分だけの話だ。母を守ろうとして息絶えた弟の遺体を冒涜するようなことは、決して望んではいなかった。

「ゆ、るさない!!ッグガァア!よくも、よくもレオを!が、はぁ……!レオだけじゃ、ない!よくもリザを!父さんと母さんを!!ご、がぁ……!私は、私はトーナメント王国を絶対に許せない!」

「うーん、少し関わってたとは言え、アンタの家族殺したのはその辺のケチな盗賊でしょ?私らにキレられても」

「あの盗賊、だけじゃ、ない!力で全てを思い通りにしようとするような人は……はぁ……はぁ……!私は、絶対に認めない!」

息も絶え絶えになりながらも、必死にミシェルへ反抗の言葉を紡ぐミスト。それを見てミシェルは、より一層愉快そうな表情をする。

「へー、そういえば、市場調査兼ねて噂集めてたんだけど、面白い話を聞いたんだけど」

「っ、は……!」

突然、レオとミストの遺伝子をぐちゃぐちゃに混ぜていたチューブと機械の動きが停止する。落ち着いて話をするために、ミシェルが一時的に止めたのだ。

357名無しさん:2018/12/16(日) 14:14:44 ID:???
「アウィナイト含む3人組の女の子が、王都警備隊募集の大会で滅茶苦茶に暴れ回ったって話が、今王都で有名なんですって」

詳しくは感想スレのスピンオフ参照。

「っ、アウィ、ナイト……!?女の子……!?」

「アンタが言ってた妹さ、ほんとは別に死体を見たわけじゃなかったのよね。なんとなくアンタをいじりたかったから、死んだことにしといたけど」

「ま、さ、か……!」

驚愕の真実に気づいてしまうミスト。そうだ、なぜ自分はあの時、この女の言葉を鵜呑みにしてしまったのか……!

「アハハハ!私の口から出たデマカセを、ぜ〜んぶ信じちゃうんだから!ほんと頭が緩いわねぇ!」

ちなみに、ミシェルはアウィナイトの噂を聞いてはいたが、それがミストの妹だと確信したわけではない。

おそらくはそうであろうという推測……そして何より、このネタで煽ればいい感じに歪んだ顔を見せてくれそうだったから、さも確信しているかのように断定したのだ。

「リ、ザ……!」

「噂だけど、王下十輝星になってアウィナイトの保護政策を頼むつもりとか何とか」

ピンチに陥ったアウィナイトの少女を助けたクリーム色の髪の少女が、敵をぶっ飛ばしながらそんなことを言っていたのだ。

それを聞いて、ミストの体がピクンと反応する。

「そんな非現実的な……よしんば実現したとしても、すぐに本人が死んで無下にされるようなことの為に……アウィナイトの軟弱な体に鞭打って戦ってくれるなんてねぇ!おかげで私たちトーメントの悪事がやりやすくなるわ!」

(リ、ザ……なんで……!)

アウィナイトを守りたいという気持ちは痛いほど理解できる。だからといって、トーメントの手先になって、罪もない人々を殺すなど……あの盗賊一味と変わらないではないか。

虐げられる者の気持ちを誰よりも知っているはずなのに……そんな風にして手に入れる、自分たちだけの平和など……何の意味もない!

(なのに、どうして……!)

妹への言い様のない猜疑心に、ミストの心が暗い絶望に囚われた瞬間……再びミストを覆うチューブが蠢く。

「ぎっ、ぎぁぁああぁぁぁあぁぁっっ!! いゃッ、おぐうおおおおぉぉっ!! い゛や゛ああぁあああぁぁッッ!!」

またも遺伝子を無理矢理ミックスされたミストの中で、何かが壊れる音が響き……その直後、ミストの体はその場から忽然と消えてしまった。

ミシェルの実験により、ミストにシフトの力が発現したのである。

358名無しさん:2018/12/17(月) 02:05:43 ID:STk4FIdI
「ぐ……ぅ……?」
気づけばミストは研究所の廊下で倒れていた。自分の体には先ほどまでくっついていたチューブ類がそのままになっている。
「……これが、シフトの力……?」
明らかに瞬間移動したとしか思えない状況に困惑するミスト。だが彼女に考える時間は与えられなかった。

「ビービービー!被験体ガ脱走!被験体ガ脱走!直ちに高速セヨ!」
通路のドアが全て一斉に開き、警備ロボットたちがけたたましいブザー音を鳴らしながら襲いかかってくる。
「……捕まるわけには……いかない……!リザを、止めないと……!」

ミストには死ねない理由ができた。
それは、トーメントの兵士となり罪のない人々を殺そうとしている妹を正すこと。
たった1人の家族のために、ミストはここにきて初めて脱出を考えたのだ。

「シフトの力……この力で、絶対にリザにたどり着いてみせる……!」



「……チッ、たとえ覚醒しても魔力は使えないよう結界を張っていたのに逃げられるなんてね……あいつの場合、魔力を消費せずに力を使えるのかしら……」
移動用警備ロボットに乗ったミシェルが見たのは、無残に壊された警備ロボットの山だった。
「こりゃ厄介なやつを逃したかもしれないわね。あの力……十輝星でも手を焼きそうだわ。ま、報告なんてしないけど。」
既にデータは残っているし、シフトの力を覚醒させることもできた。また機会があればアウィナイトを捕まえて、同じように実験ができるだろう……
ミシェルはそう考えていた。

だが、ミシェルがその後に捕まえたアウィナイトたちはシフトの力を発現するどころか、過酷な実験に耐えることができず、実験段階で死亡してしまうばかりだった。
心が壊れ、絶望し、死に飢えていたミストというイレギュラーがいて成功した極めて稀有な実験。
そう判断したミシェルは、ほどなくしてアウィナイト強化実験を凍結したのだった。

359名無しさん:2018/12/17(月) 02:08:21 ID:???
ミシェルの研究所を抜け出したミストは、リザを探すためトーメントを目指した。
もちろんお金もなく、地図もなく、頼る人もなく、盗賊に見つかればすぐに襲われるアウィナイトの身一つでの旅は、元々ボロボロだったミストの精神を蝕んでいった。
かつての自慢だった金髪の髪は実験によって白にくすんでしまい、レオの遺伝子を混ぜられたせいか体には時折激痛が走る。
その度に魔物に襲われ、盗賊に捕まり、体や目を狙われる毎日。
それでもミストは、妹を強く思う心と、魔力を消費しないシフトの力で乗り越えてきた。

(……こんな体になってもできることが一つだけある……リザを止めること。それが私が……生き延びた理由……!)

何年もかけてミストがたどり着いたのは、イータブリックスにほど近いニムルベルクという街だった。
表向きは武器と工業の街だが、裏ではトーメントの王政を倒すべくレジスタンスたちが集まっている街。
流れの商人にそれを聞いていたミストは、ここで一晩休んでイータブリックスを目指そうとしていた。

「……これは……!」

街の中に入る前から嫌な気配はしていたが、中に入ってミストは確信した。
爆発音、男たちの大声、暴れまわる魔物兵たち……

「ガッハッハ!コソコソクーデターを企んでいる奴らは、俺たちトーメント魔物軍が成敗してくれるワ!」
「くそっ!北も東も落とされた……!だが、俺たちは絶対に諦めない!他国のみならず自国の民をも力で蹂躙するトーメント王を、俺たちは絶対に許さない!ボスが生きていれば、またきっと……!」
「ギギギギ!お前たちレジスタンスのボスは我らが王下十輝星が1人、スピカ様が追跡している!1匹たりとも逃げられると思うな!このごみ虫どもがぁ!」
「な、なにっ……!王下十輝星だと……!?」
「ガッハッハ!スピカ様は十輝星の中でも暗殺に秀でた殺しのプロ!お前らのボスはスピカ様の美しい金髪を見た瞬間、あの世へ昇天だア!」
「ギギギギ!王様に仇なすゴミが今際の際に美少女を見れるだけでもありがたいと思え!もっとも……なんの価値もないお前みたいな下っ端の雑魚はここで死ぬがな!」
グサ!!!
「うぐああああああああああああ!!!」
トカゲ魔物兵の尻尾に貫かれた男は、無造作に投げ捨てられた。

(……なんて酷い……こんなの、あの時と同じだ……!)
魔物兵たちの暴虐にあの時の惨劇の光景を重ねるミスト。だがあの時と違い、逃げるわけにはいかなかった。
(……レジスタンスのボスの人を見つけて、狙われていることを教えてあげないと。さっきの魔物兵が言っていたこと……妙に引っかかる……!)
美しい金髪、美少女……この二つのワードだけで、ミストの心は穏やかではなかった。
この時のミストは考えていなかった。
否、引っかかっていたが考えたくなかった。

この惨劇を引き起こしているのが、実の妹だという絶望的な事実に。

360名無しさん:2018/12/19(水) 01:16:01 ID:???
「美少女と噂のスピカ様はどこにいった!?俺見たことないから見てみたいぞ!」
「西の外れらしいぞ。まあどうでもいいだろ。勝手にレジボス(レジスタンスのボス)を殺ってくれるだろうし。」
「そうか!じゃあちょっくら行って目の保養をしてくるぜ!」
(チッ……あんな無表情で無愛想な小娘、全然可愛くねえ。俺たち下っ端を見るときもゴミを見るような顔しやがるし……あーあ、クリスマスになったらサンタがあのクソガキにキッツいお仕置きしてくんねーかなぁ……)

(西の外れ、か……)
街で暴れているトーメント兵たちから情報を得つつ、ミストはニムルベルクの西の外れを目指した。



(そんな……!ドラゴンが殺されてる……!)

西の外れに到着したミストが見たのは、竜車に繋がれたドラゴンが首を切られている現場だった。

(……竜車に使われているドラゴンは人に懐く優しい魔物なのに……誰がこんな……!)
「ボス、こちらへ!竜車はすぐそこです!」
「……!」

人の声がしたので、ミストは咄嗟にシフトの力で物陰に隠れようとする。
が、まだ慣れていないテレポートに少し失敗して竜車の中に隠れてしまった。

(やば……!連続使用はできないし、もしこっちに来たら……!)

「トーメントめ!カラザンに続きこのニムルベルクまで落としてくるとは……!反乱分子と思しきものは徹底的に排除するということか……!」
「アレス・ガンダルドへ行きましょう!紅蓮の連中なら匿ってくれるはずです!」
「アイセか。あいつにはあまり会いたくないがな……」

西の外れに来たのは遁走しているレジスタンスたちだった。
(……スピカとやらはここにはいない。それをこの人たちに教えてあげたいけど……)
竜車の中から出てきたら、ドラゴンを殺したとあらぬ疑いをかけられるかもしれない。それに、ドラゴンが殺されていると気付いて、レジスタンスたちに中を確認されたら終わりだ。
だが、ミストのその心配が現実になることはなかった。

シュッ!
「あぁ!ドラゴンがやられて……る……?」

ヒュン!
「なっ……!マイク、が!?……あぁ……?」

ゴトッ、ゴロゴロゴロ……

「マイク!ロディ!……このくそがあああああああああ!!」

「……え?」
ミストが見たのは一瞬だった。
レジスタンス2人の首が勢いよく飛び、地面にゴロゴロと転がっていったのだ。

キィン!!!
「ぐおおおおッ!?くそッ!!!この瞬間移動能力!貴様スピカだなッ!!」
「……………………」

金属音のした方にミストが目を向けると、レジスタンスのボスが素早く剣を取り出し、スピカと呼ばれた人物のナイフによる一撃を防いでいた。

「……嘘……よ……」

ミストは声を上げて驚愕する。
人間2人の命をいとも簡単に奪った暗殺者は、かつての優しさのかけらもない修羅のような目をした、妹だったから。

361>>355から:2018/12/21(金) 00:53:19 ID:???
「偵察報告ー!ターゲットは、馬車でヴィラの森に向かってるようですわ!……間もなくここを通るはずですわよ!」
……ヴィラの森にほど近い街道脇に、王下十輝星の5人+エミリアが身を隠していた。

「それじゃ、作戦と役割分担を決めよう。
この辺りは、地下に小さな洞窟がいくつもあるから、まずは落とし穴でターゲットを分断する。
まず護衛の『竜殺し』、次に回復魔法の使える唯ちゃんと鏡花ちゃん、そして残り3人、の3グループだ。
『竜殺し』はアイベルトが引き付けてくれ」
「んじゃ唯ちゃん達は、俺とシアナが担当な!」
「アングレームの剣士は……私が始末する」

狙いは唯達『運命の戦士』達の暗殺。王直々の命令という事もあり、全員かなり本気モードである。
……って思うじゃん?

「やーーだーー。俺もう、おっさんの相手したくないーーー!!」

そこはそれ、ぶれない男アイベルトである。

「ちょ……アイベルト、大人なんだから少しは空気読んでくれよ」
「だって野郎と戦っても何も面白くないし、がんばって本気出してもばっさりカットされちゃうし……」
「……はー。アホはほっときましょう。ほらエミリアちゃん、目を合わせちゃだめですわよ-」

「あーあ。俺だって女の子とキャッキャウフフして時にはフラグだって立ててみたいよ……
そうだ。もうすぐクリスマスだし、ダメ元でサンタさんにお願いしてみようかなぁ」
「は?アイベルト、ついに頭おかしくなったのか?」
「元からじゃね?」

「ちょ!?ままま、待った!それはシャレにならないですわ!
『竜殺し』の相手ならアイナ達が代わりますから、それだけは勘弁ですわ!」
アイナとエミリアのトラウマが蘇った。
「え、いいの?やったー!」
………というわけで。

「じゃ、改めて……ターゲットを落とし穴で分断したら、僕とアトラが唯ちゃんと鏡花ちゃん。
ロゼッタとアイベルトは、他の3人を担当。『竜殺し』(と執事っぽい人)は、アイナとエミリアで」
「え、ちょっと!?なし崩し的に私も手伝う事になってない!?
ていうかアイナちゃんもみんなも、あの王様の言いなりになって暗殺なんて、やっぱりおかしいよ!」

「……って言ってるけど、本当に大丈夫なのか?むしろ連れてったら邪魔されるんじゃ……」
「ふふふ……アイナに必勝の策ありですわ!」
自信満々のアイナが取り出したのは、何だか怪しい香りのするキャラメルであった。

「『竜殺し』が現れたら、この『一口食べれば狂戦士!スーパーバーサーカーキャラメル(カレー味)』を
エミリアちゃんに食べさせますわ!『竜殺し』だろうが何だろうがイチコロですわよー!」
「なんか嫌な予感しかしないんだけど……ていうかその状態で魔法使えるのか?」

不安は募るばかりだが、もう唯達の乗った馬車はすぐそこまで迫っていた。

「もがもがー!」
「大人しくしてるんですのよ、エミリアちゃん……もうすぐ美味しいキャラメルをあげますわ」
「さーて、久々に鏡花ちゃんのおっぱいを堪能……と行きたいけど、今回はガチモードだからな。罠も即死系だぜ!」
「つーかロゼッタとコンビとか久々だな!俺様が登場したてでキャラがぶれてた頃以来じゃね?」
「………鬱陶しい」
「行くぞ、みんな……作戦開始だ」

362名無しさん:2018/12/22(土) 00:01:19 ID:xbMGsp2Y
「おのれ、よくも……よくも俺の仲間を!」

「…………」

レジスタンスのリーダーは怒りのままに剣を振るうが、リザはナイフでいとも簡単に防ぎ、返す刀でリーダーの剣を遠くに弾き飛ばした。

「ぐぁ、しま……」

「…………これで、終わり」

「ぐげ!?」

リザは無防備になったリーダーの首を一閃。リーダーはうめき声をあげると、倒れ込んでしまった。


「な、なぜだ……我々は、ただ……この国の、平和の……た……め……」

無念そうに言い残し、息絶えるレジスタンスリーダー。
それを一瞥もせずに振り返った少女……リザは、誰に聞かせるでもなく、ボソリと呟く。

「そこに、私の平和は……私が家族と暮らす光景は、ない」

その直後、リザの体が掻き消える。シフトの力でテレポートしたのだろう。

「リザ……なんで、トーメントなんかに……!」

その光景を呆然と見ていることしかできなかったミスト。最愛の妹が、いくらアウィナイトを守る為とはいえ、トーメントの手先となって罪のない人々を虐殺している。

しかも、姉であるミストには、リザの本心……究極的にはアウィナイトそのものよりも、家族との再会を望んでいることも理解できてしまった。

「ぅ、ぐ……!っ!!あ、ぁぁあぁあああぁあああ!!!!」

その時、苦しそうに自らの左胸を押さえるミスト。体の中でレオの細胞が暴れているのが分かる。

「分かってるよ、レオ……私が、止めないと……!」


その後、休憩を挟んだことで再びシフトが使えるようになったミストは、トーメント軍が去った後のニムルベルクへテレポートする。そこで見たものは……

「や、やめて!なにを……!?」

「うるせぇ!お前アウィナイトだろ!殺される前に兄さんが言ってたんだよ、スピカはアウィナイトだって!」

「そんなこと言われても……!」

「どうせお前がレジスタンスの情報を売ったりしたんだろ!受け入れてやった恩を仇で返しやがって!」

「待って、私、本当に知らな……」

「うるせぇ!!」

「ごふぁ!?」


複数の少年が、一人のアウィナイトの少女を囲んで、殴る蹴るの暴行を加えていた。どうやら、リザの正体が噂としてこの街に出回っているようだ。

その結果、町にいたアウィナイトが迫害を受けていた。

「っ!君たち!止めなさい!」

「あぁ!?誰だアンタ!?よそ者は引っ込んでてくれ!」

「スピカがアウィナイトだとしても、その子は関係ないでしょ!」

「うるっせぇってんだよ!こっちは町のみんなをみんな殺されてんだよ!」

すぐに止めに入ったミストだが、興奮している少年たちは止めるミストを振り払ってアウィナイトの少女に再び暴行する。

「ちくしょう、ちくしょう!」
「お前のせいだ……!そうじゃなきゃ、そうじゃなきゃ、なんで兄さんが……!」
「が、がはぁ……!みんな、やめ……ぐうぅう!!」

「っ……いい加減にしなさい!!」

ミストが鋭く叫ぶと、気圧された少年たちは思わず動きを止める。

「ひ、ひいいぃ……!」

這う這うの体で逃げ出すアウィナイトの少女。動きを止めていた少年たちはそれを見て、石を拾って彼女に何度も何度も投げつけた。

「この町から出てけ疫病神!」
「アウィナイトなんて呪われた一族を町に入れたのが間違いだったんだ!」

口汚くアウィナイトを罵る少年たちを見て、ミストは愕然とする。
住民のほとんどを殺されたのだから、彼らが冷静でいられないのは分かる。ミストが愕然としたのは、リザの行動によって、アウィナイトを受け入れてくれていた優しい町が滅び、トーメントに占拠されてしまったこと……そしてそれどころか、そのせいでアウィナイトの肩身がさらに狭くなっていることだ。


(リザ……!やっぱり、アンタは……間違っている……!)

363名無しさん:2018/12/22(土) 23:53:22 ID:???
★ ★ ★

その後の旅の中でも、王下十輝星の悪名を聞かない日はなかった。やがてミストの目的は、リザを『止める』ことから『倒す』ことへと変わっていき……トーメントと緊張状態にある、ミツルギへと仕官したのである。

「リザヨ……オ前ノ行動ニヨッテ救ワレタ者モイルダロウ、故ニカゲロウカラ助ケタ……ダガ、コレ以上王二尻尾ヲ振リ、悪逆非道ヲ尽クスナラバ……容赦ハシナイ」

「お姉ちゃん……私のしたことが許せないっていうのは分かるよ……でもミツルギには、奴隷にされてるアウィナイトが……お母さんがいるんだよ!?」

「……奴隷ノホトンドハ、多少重イ労役ニ就カサレルダケダ。カゲロウノヨウナ者ニ買ワレル場合モアルガ……ソレハ少数派ニ過ギン」

「本気で言ってるの!?アウィナイトを奴隷として買う人の目的なんて……!分かるでしょ!?」

「ソノヨウニ、アウィナイトノミヲ特別視シテ……ソレガオ前ノ罪ダト言ッテイル!」

平行線を辿るリザとミストの会話。リザは思い切って、さらに踏み込んだことを聞き出そうとする。

「お姉ちゃん……肝心なことを教えてもらってないよ……なんでそんな仮面を……」

「……こういうこと、よ」

ゆっくりと、自らの仮面に手をかけ、仮面を外すミスト。その下にあったのは……

「っ!?お兄、ちゃん……!?」

その下にあった顔はそしてボイスチェンジャーを通さずに聞いたミストの声は……ミストの弟にしてリザの兄、レオのものであった。

「……たまに、『混ざる』のよ……私と、私の中のレオが」

そう語るミストの顔と声が、今度はゆっくりとミスト本来のものに戻っていく。これが、ミシェルから受けた実験の後遺症であった。

「そんな……」

「……これが仮面をしてた理由。口調は……あっちの方が落ち着くから。こんな話し方……普通じゃなくなった私には似合わないからね」

リザが呆然としている間に、ミストは再び仮面を装着した。仮面で顔と声を隠すことで、自分の特異体質を隠し……そして、感情を出さないように生きてきたのだ。

ただ戦う為の修羅となり、リザを……そしてトーメントを倒す為に……!

「オシャベリハ終ワリダ……オ前ガアウィナイトノ為ト嘯イテ、罪ナキ人ヲ殺シ続ケルナラバ……!」


剣を構えるミスト……否、残影のシン。

「お姉ちゃん……!」

「勝負ダ!リザ!」

こうして、戦いの火蓋が再び切って落とされた。

364名無しさん:2018/12/23(日) 11:12:04 ID:???
シフトを交えたシンの猛攻。それは躱すだけでは到底凌げるものではなく、リザも魔力を惜しまずシフトを使って対処する他なかった。

「逃ゲテイルダケカ!?見境ナク人ヲ殺ス殺戮者ナラバ実ノ姉ト兄ヲモ殺シテミセロ!ソレガオ前ノ選ンダ道ナノダロウ!」

キィィン!
シンの怒号とともに振り下ろされる一撃を、リザは大ぶりにしたナイフで弾き返す。
シンのとても普通の人間とは思えない力に、リザの細腕はびりびりと痺れた。

「くうぅっ……!」

「アノ日……!私タチがドンな気持ちでお前ヲ助けヨうとしたのか……!母さんと父さんガどんな気持チで死んでいったのか……!なぜ理解できなイッ!」

ガキィンッ!!!
「ああっ!」

シンのボイスチェンジャーが外れ、それと同時に放たれた一撃でリザのナイフは弾き飛ばされた。

「リザ……あんたは知らないでしょうね。潰されたニムルベルクの街にいたアウィナイトたちが、どんな目に遭ったのか。」
「え……?」
「あんたと同じアウィナイトだからって、理不尽に暴行されて、石を投げられて……!それもまだ、10歳くらいの小さな女の子が……!」

ボイスチェンジャーのないミストの声……それには時折レオの声が混ざっているが、その声にははっきりと感情が現れていた。

「なっ……あぐっ!?」

武器を失ったリザとシフトチェンジで位置を変え、突然の場所の変化に戸惑ったリザに急接近してそのまま蹴り上げる。

「その子だけじゃない……!あんたの悪評で苦しんだり殺されたりしてきたアウィナイトを私はたくさん見てきた……!あんたのやってることは、怒りに身を任せた殺戮と同じなのよ!アウィナイトのためといって自分を正当化してるだけで、アンタが本当にやりたいのは……!」

ドゴ!!
「がはっ!!」

空中に吹っ飛んだリザの体にジャンプしてからシフトで近づき、体重を乗せた蹴りおろしを腹に叩き込む。
目を閉じてくぐもった声を上げるリザに、ミストは容赦なく次の攻撃を仕掛ける。

「アンタがやってるのは……矛先を向ける先すら間違えている、感情任せの哀れな復讐よっ!」

「う゛ッ!?」

苦痛に喘いだリザの顔を鷲掴みにして、そのまま地面に投げつける。

「きゃあああぁっ!」

相当な腕力で繰り出される無慈悲な投げに、リザはワープも受け身も取れず、悲鳴を上げながら……

ドゴオオオオオッ!!!
「あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あぁぁぁぅっ!!」
断末魔のような濁った声を上げて、地面に激突した。



「……立ちなさい。アンタが苦しめた人たちの痛みは、こんなものじゃない。」

「ぅ……ぐ……!」

ミシェルの実験によって筋力が跳ね上がっているミストの格闘は、リザが今まで食らった物理攻撃の中でも特にダメージが大きい。
未だに骨が振動しているかのような振動にリザの体はピクピクと震えていた。

「……立テ。」
ガッ!
「うぅぐっ!!」
外れたボイスチェンジャーを起動したミストに胸ぐらを掴まれて、強引に起こされるリザ。
胸の下のスリットが大きく開いてほぼ中身が見えてしまっている状態のまま、空中に吊り上げられていく。

「フザケタ服ダ……オ前ガアノ王ノ着セ替エ人形デアルコトヲ象徴シテイルナ。」
「んぐっ……!ふうぅっ!」

なんとか抵抗しようと両手でミストの手を掴み引き剥がそうとするが、鎧に包まれた圧倒的なパワーを持つ体を、リザの力だけでは動かすことができなかった。

「……中途半端ナ奴ダ。アンナニアッサリト人ヲ殺ス癖ニ、肉親ニハマッタク手ヲ出セナイトハ。」
「ぐぅ……!あ゛っ!」

シンの片方の手がリザの首を捉え、急所にも容赦無く力を込めていく。

ギリギリギリギリ……!
「あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛……!」
「私ハオ前ヲ殺セルゾ……ソノタメニ生キテ来タノダ。オ前ヲ殺シタ後ハ、ミツルギノ兵士トシテトーメントヲ倒ス……誰一人理不尽ニ傷ツクコトノナイ、平和ナ世ヲ作ルタメニ。」
シンの言葉には、悪に堕ちた妹を倒すという強い意志が込められている。

「……って……な゛いっ……!」
「……ナニ?」
「お゛……お姉ちゃん゛は……何も……わかってないっ!!!」

シフトを発動させ、ミストの拘束から逃れるリザ。
ミストが辺りを見回しても、その姿はない。

「……はぁっ!」
「グ!?」
……一度上空にシフトし、辺りを見回した獲物が安全を確認した方向に再度シフトして一閃する。
死角がないのなら作り出す。土壇場で見せたリザのまさかの反撃に、ミストの仮面とボイスチェンジャーは弾き飛ばされた。

365名無しさん:2018/12/23(日) 11:51:35 ID:???
「……トーメントを倒して平和な世の中を作る……?お姉ちゃんがそれを本気で言ってるなら……何もわかってないのはお姉ちゃんの方だよ。」
「……………………」
「この世界はどこにいっても強者が絶対……弱者は強者に従うか、蹂躙されるかのどちらかだけ。あの日私たちは……蹂躙されたんだよ。」
「………………………」

ミストはリザの言葉を無言で聞いている。

「……あの日の後、私は生まれてきたことを後悔して死のうと思った……でも、こんな酷い世界を生き抜くために必死に強くなろうとしている女の子に出会って……私は死ぬのをやめた。」
「…………………………」
「アウィナイトである私たちがこの世界で平和に生きる場所が欲しいなら……何にも屈しない絶対的な力を持つしかない。だから私は、暗殺術を必死で学んで、血の滲むような訓練をして……王下十輝星になった。」
「…………………………」
「お姉ちゃんが言うこともわかる……でもそれは平和ボケしたどこか別の世界の話。私たちが生まれたこの世界は……そんな甘い価値観では生きていけない。自らが強者となって、歯向かう奴はすべて倒す。……それがこの醜い世界で生き抜くための理よ。」

リザの言葉を聞いたミストは、小さなため息とともに青い目を滲ませた。

「……リザ。あんたは昔からそう。冷静で頭も切れるけど、誰よりも頑固で……自分がこうと決めたらなかなか折れない。」
「……そうだね。私は頑固者だよ。こう見えても……結構負けず嫌いだから。」
「……もう顔も声も隠さないわ。リザ……いや、スピカ。私はミツルギの討魔忍として、お前を【殺す】」
「……なら私も、十輝星のスピカとして……残影のシンを、【倒す】」

こちらからはっきりと言っても、リザは自分を殺すつもりはないらしい。

「……アンタの命の恩人である私とレオを殺してみなさい。リザ。中途半端なまま非情になりきれないなら……アンタはここで全てを失う!!」

366名無しさん:2018/12/24(月) 14:47:37 ID:???
互いにシフトを使用し、背後を取り合うリザとミスト。魔力消費のないミストのシフトの方が長期戦には向くが、連続使用のスピードに於いてはリザのシフトに軍配が上がる。

「はっ!」

互いの長所と短所を理解しているが故に短期決戦を狙うリザだが、殺さないように手加減しているせいで、そのナイフ捌きは僅かながら精彩を欠く。

「ふっ……!でぇえええい!」

「ごっふぁ!?」

そして、単純な身体能力に於いては、ドーピングを受けたミストの方が上だ。間合いを見計らって一気に踏み込んだミストの蹴り上げが、深々とリザの腹部に埋まる。

「あの襲撃事件は、裏でトーメントが手を引いてた……!それを知ってなお、アンタはあの国に味方するっていうの!?」

「ぐ、うううぅ……!そんなこと言ったら、アウィナイトにも裏切り者がいる……!結局、あの日全てを失ったのは、誰のせいでもない……私たちに力が無かったからなんだよ!」

「ぐっぁああ!」

何とかダメージを立て直したリザは、素早い身のこなしと短距離シフトの連続でミストを翻弄し、その脇腹に鋭い回し蹴りを叩き込む。

姉妹の攻防、そして主義主張のぶつけ合いは一進一退であった。

「私のせいで余計迫害されたアウィナイトがいるっていうのは、ショックだったよ……!けど、今さら止まれない……!私の行動で救えたアウィナイトが、一人でもいるなら……!止まるわけにはいかないの!」

「トーメントの保護政策なんて、アンタがいくら頑張っても、そのうち反故にされるに決まってるじゃない!そんなことの為に……!」

そして戦いが進むうち、ミストが周囲に張った結界が、徐々に崩れていく。元々ミスト本人も言っていたように、長続きしないタイプの結界だったのだ。

「そろそろ保たないか……私は王も止めなきゃならないから……そろそろ終わりにさせてもらうわよ」

「はぁ……!はぁ……!望む、ところ……!」

長刀を上段に構えるミストと、ナイフを逆手に持つリザ。結界の崩壊は進んでいるが……互いに次の激突が正念場だと理解して、からこそ、迂闊には動かない。

「「はぁああぁああぁああっっ!!!」」

そして奇しくも……両者が相手へ向けて駆け出すタイミングまでも、姉妹同時であった。

367名無しさん:2018/12/24(月) 19:29:38 ID:???
リザとミストが実の姉妹同士で戦っている頃……


「ここを進めばヴィラの森です。既にヴィラの族長には話を通しております故、どうか御武運を」

「ありがとうございますわ、ローレンハインさん」

五人の戦士+竜殺しのダンは案内役のローレンハインと別れ、馬車でヴィラの森へと向かっていた。

「あのお爺さん滅茶苦茶強そうだし、どうせなら最後まで着いてきてくれたらいいのに」

「しょうがないですわ、彼はあくまでもミツルギの人間……異世界人である我々の都合に、必要以上に関わってもらうべきではありませんわ」

「え、でもダンのオッサンは……」

「……俺は根なし草だ。それにトーメントとも因縁があるしな、俺の同行は勝手にやってるだけだから気にするな」

馬車の中で話をしながら到着に備える面々。その時……!


「……っ!お前ら固まれ!」

「え?急にどうしたんですか……ってうわぁあ!?」


突然馬車が揺れ、浮遊感に襲われる唯たち。その直後、空間に空いた黒い穴が大量に開き、唯たちを呑み込む。

「これ、あのエロガキの……!?」

「ちょ、また分断パターンか!?まぁ大人数捌くの面倒くさいししょうがないか……」

「彩芽ちゃん、こんな時にまで変なこと言わないで!」

「十輝星……ということは、あの方も……」

突然の奇襲に対応し切れなかった唯たち。まんまとシアナの策通り……三つのグループに分断させられてしまう。

368>>346から:2018/12/24(月) 21:33:59 ID:???
「ぐわあああぁあああっ!!」
突如動き出したクロヒメに襲われるザギ。予想外の事態に、慌ててタイムエスケープで逃げようとするが……

(ドスドスドス!!)
「ぐおっ!!……これは……『封魔手裏剣』……!!」
「くっくっく……無駄じゃ」
エミリアを倒した時に使った武器で、今度は自分が術の発動を封じられてしまった。

「なぜだ……なぜ俺がこんな目に(男なのにリョナられる的な意味で)……!!」
絶体絶命の危機に陥ったザギ。そんな一部始終を、影から見守る一団が居た。

「あの地味で真面目なザギ様が意外と外道だった……と思ったら、あれよあれよと言う間にとんでもない事になってたでござる。
いいタイミングで割って入って、おこぼれにあずかろうと思ってたのに……」
青い装束の下忍A。

「あの人形、見た目は七華様に負けず劣らず超絶ゴックンボディの美女だというのに、とんだバーサーカーでござるな。
あーあ。折角のクリスマスだというのに、所詮我々下忍には、一生おいしい役など回って来ないのでござろうか……」
ブラック装束の下忍B。

「いいや……そうとも限らないでござるよ。サンタさんにお願いするでござる」
茶色のCが、そこへ割って入って来た。

「え?…お主、突然何言いだすでござる!?」
「頭沸いたでござるか!?」
デザートイエローのD、えんじ色のEが思わずツッコミを入れる。だが、Cはどうやら本気のようだった。

というわけで、一行リレー時代の>>212-215のようなやり取りを経て、サンタクロースが再び(厳密にいうと前スレ>>762も含めて三度)降臨したのであった。

「まさか、我々のような名無しのザコの為にサンタさんが……しかも、キリスト教とか全然関係ないミツルギ皇国に現れてくれるとは思いもよらなんだ」
「クックック……神の教えなど全然関係ないのは俺も同じだ。それで、まずはあの人形を何とかすればいいのだな?」
「いかにも。しかしいくらサンタさんとは言え、あの凶悪な人形に対抗できるのでござるか?」
「ていうか、お祈りしてる間にザギ殿がますますやべー事になってるでござる」
「簡単な事だ……俺を誰だと思っている?」

「ううっ……止めろ……来るなぁあああ!!」
「さて。そろそろ血を吸いつくしてやるとするかの……っ!?…なん、じゃこれは……身体が、動かぬ……!」
ザギを追い詰めたクロヒメに、突然異変が起こった。赤と緑に光る、糸のようなものがクロヒメの身体に絡みつく!

「俺様はサンタクロース。オモチャの扱いなどお手の物だ……貴様は、俺には逆らえん」
「なんじゃ、と……ありえぬ……!!……わらわを……付喪神・血贄ノ黒姫を、玩具扱いなど……ん、ぐうううんっ!?」
糸はクロヒメの耳の穴からチキチキと入り込み、その身体と心を、造り替えていく。
苦痛も快楽も感じる、肉の身体へ。恐怖し、堕落し、絶望する、生身の女の心へと……

「お……お前は……一体何者なんだ……本当に、サンタクロースなのか……!?」
「いいや、ただの偽物さ……だが、楽しいクリスマスは誰にでも等しくやってくる。まずはこの玩具で、楽しく遊ぼうじゃないか。
そして眠っている良い子には……素敵なプレゼントを」

「これ、は……何が、起こっているのじゃ……七…華……逃、げ………」

369名無しさん:2018/12/24(月) 22:49:57 ID:???
「クックック……危ない所だったな。今夜はともに楽しもうではないか、下忍Zよ」
「俺は下忍じゃないんだが……何にせよ、助かったぜ」
テンジョウから「スマブラやろうぜ!」ってLINE来ていたが、最早それどころではなかった。

「おのれ、下衆共が……まとめて毒虫の餌食にしてくれるわっ!!」
蠱毒の破戒(こどくのはかい)……クロヒメの体内で飼育している大量の毒虫を放出する、恐るべき技である。
だが、人形から人間になりつつあるクロヒメの身体から出てきたのは……

「うわ、オモチャの虫じゃねーか!びっくりさせやがって」
「ククク……無駄だ、雌人形。先ほどお前が受けた『クリスマス・リボン』は、玩具を生身の生き物へ、生き物を玩具へと変える」
「何っ……ならば、これならどうじゃ……『開魂の儀』っ!!」
関節部などに人形だった面影は残っているものの、徐々に生身になりつつある己の身体に戸惑うクロヒメ。
胸元が大きくはだけた黒い着物をはためかせ、麻痺毒の塗られた仕込み刀でサンタに斬りかかるが……

「そして、玩具は……俺様の思うがままに操れる」
「ひゃふっ!?……な、なんじゃこれは……玩具の蟲が……!」

不気味な緑色をした、手の平サイズの蜘蛛がクロヒメの顔に飛びつく。
無数の脚を持つ毒百足が、はだけた胸元から着物の中に入り込む。
足元からは青虫の群れが這い上り、まるで葉っぱを食べるように着物の裾をあっという間に食い荒らしていった。

「やっ……やめろっ……やめぬか……わらわに……付喪神・血贄ノ黒姫に、よくもこのような仕打ちを……」
「クックック……さあ、下忍ども。この生意気な雌人形に、『肉の悦び』を存分に教えてやれい!!」
「さっすが〜!!サンタさんは話がわかるッ!」
「レッツパーティでござる!」

蟲の毒に冒された生身の身体に、下衆な忍達が襲い掛かった。
「ウヒヒヒヒッ!何はともあれ、まずはこのデカチチから堪能でござる!」
「ひゃひっ!?……な、なにを、するのじゃっ……この、下賤なクズ忍めっ……あ、い、やあぁっ……ん、ふぅぅぅん!!」
本物同様に柔らかくなった二つの乳房が、力任せにこね回される。
その谷間に、下忍Aの熱い肉棒が挟み込まれた。
クロヒメは生まれて初めて感じる熱と苦痛に戸惑い、あられもない声を上げてしまう。
妖艶な見た目と反する新鮮な反応に、下忍達のペニスは瞬く間に怒張し、そして……

「アーイイ、遥かにイイ……っ!!」
どびゅっ!!……ぶびゅるるるるっ!!
完璧に整った美貌、艶やかな黒髪が、白磁のような肌、黒い着物。すべてが大量の白濁で穢される。

「んっ……やぁっ……ん、くあっ……や、やめ、ろっ……ふあああああぁぁぁぁつ!!」
だが、男たちの肉欲は一度や二度で収まるはずもなく、すぐさま強靭さと巨大さと熱とを取り戻した。

「クククッ……止めろだと?そいつは無理な相談でござるぜ……」
「こんなウルトラ極上ナイスバディラブドール、犯さないでいられるでござるかよ」
「ヒヒヒ……それに、サンタさんの酒とご馳走喰ってると、いくらでも肉欲が沸いて来るでござるんだよなぁ……」
「ひっ………!!」
だんだん理性(ござるの使い方)がおかしくなっていく下忍達。
狂気すらはらんだその瞳に、クロヒメは心臓を鷲掴みにされるような恐怖を覚えた。

「さて……下忍Zよ。お主は確か、この巫女狙いだったな」
「ああ。俺は、こいつを犯すため……そのためだけに、死に物狂いで修行して、時間を操る術すら身に着け……討魔忍五人衆にまで上り詰めた」
「ん……こ、ここは……ザギ、さん…!?…一体、これは……!……その赤い服を着た方は、誰なのですか……?」
……気を失った七華が、意識を取り戻した。気が付いたらクロヒメの姿はなく、鎖で拘束されている。
明かに異常な事態に、狼狽する七華。下卑た笑みを浮かべながらその様子を見下ろす、ザギと……サンタクロース。

「いっそ、普通に男としての魅力を磨いて七華の恋人になり、普通に和姦した方が楽だったかもしれねえ。だが、俺の中に滾る外道の本性がそれを許さなかった……
長かったぜぇ。今夜、ようやく見られる……お前が泣き叫んで、絶望に染まりながら冒される姿をなぁ……!!」
「ひっ……ザギ、さん……一体何を……いっ……嫌っ……嫌ぁあああああ!!」
七華の黒い巫女服を、ザギは力任せに引きちぎる。
その下からはぷるんと瑞々しい肌、そしてたわわに実った芳醇な乳房が姿を現した。

370名無しさん:2018/12/27(木) 10:52:13 ID:???
「いやぁああああ!!ザギさん!やめてください!!いやぁあああああ!!」

「ククク!このまま犯してやってもいいが、まずはテメェに女の無力さを味合わせないと……な!」

「……くっきゅううううぅん!?」

ザギは特製ブーツで巫女服の袴の上から、七華の股間を思いっきり踏みつけた。
思わず無駄にエロい悲鳴をあげてしまう七華。

「前から思ってたけど、テメェ下ネタ嫌いな癖に悲鳴はやたら色っぽいよなぁ……クク!」

衝撃波と振動を送り込むブーツをぐりぐりと押し付けるザギ。七華は嫌がって必死に身体を揺すっているが、そのせいで余計に露出させられた胸が揺れていることには気づいていない。


「アホらぎぃ……お前ほんと俺好みだよ……!」

「う、うぅんんんんんぅ!!?や、ぁああああんん!!」

ザギは足を七華の股間に置いたまま屈んで、彼女の豊満な胸を揉みしだく。

「クロヒゲ人形がなきゃ、テメェはただの女ってわけだ!こんな簡単な事だってのに、テメェときたら肌身離さずキモい人形とべったり……ったく苦労したぜぇ」

「う、ううぅ……ぐすっ、助けてください、クロヒメ様ぁ……!」

涙ぐみながら敬愛するクロヒメに助けを求める七華。それを見て、ザギは大笑いする。


「ヒャハハハ!いいぜぇ、見てみろよ!テメェの好きな人形様が今、どうなってるかをよぉ!」

すっ、と七華から離れて、遮っていた視線を開けるザギ。七華は突然のことに混乱して気付かなかったが、すぐ近くでクロヒメの声がするのに気づく。


「………………え?ク、ロ………ヒメ、さま?」


「ん、ぶううぅ!?見、見ないでおくれ、七華……わらわの、こんな、姿……んんぅう!?」


「くぅうう!このラブドール最高でござる!!」
「こんな生オナホ初めてでござる〜!」
「おらっ!もっと口開けろ!休んでんじゃねぇ!」

「い、いやじゃ、こんなの……わらわはもっと、強キャラとして君臨するはずだったんじゃ……こんな、こん……むっぶぅうう!?」

七華は理解できなかった。自らが神として崇めるクロヒメが、なぜ人間の姿になっているのか……なぜモブ下忍如きにいいようにされているのか……

しかも、今クロヒメが口に咥えさせられているのは、男性の……穢らわしい……


「い、いやぁああああぁあぁあああ!!クロヒメ様!クロヒメさまぁああぁああぁあ!!!」

クロヒメが何をされているか……全てを理解した時、七華は絶望に満ちた、凄まじい絶叫を挙げた。

371名無しさん:2018/12/28(金) 01:10:27 ID:EVbSh.8Y
「「きゃああああああぁっ!」」

突如現れた穴に落下していく唯と鏡花。このまま奈落の底に落ちるのではないかと思ったが……

ドンっ!!
「いたぁっ!……うぅ、ここは……洞窟……?」

「ゆ、唯ちゃん!大丈夫!?」

「う、うん!平気!……でも、みんなとはぐれちゃった……」

薄暗い洞窟に落とされた唯と鏡花。ほかの仲間たちもここに落とされているのだろうか。
そう思って立ち上がろうとした時、2つの影が現れた。

「よおよおよぉよぉ!鏡花ちゃんも唯ちゃんも元気してた?俺のこと忘れてないよな?」

「ククク……唯ちゃん、しばらく見ないうちに強くなったみたいだね。そのほうが潰し甲斐があって助かるよ……」

「……王下十輝星……!」

現れたのは赤い髪と青い髪の少年……トラップ使いのアトラと空間を操るシアナの2人だった。



「アヤメカNo.17、発光ダイハード起動!」

彩芽が起動したのは、ブルー◯ウィリ◯の頭が発行して辺りを照らすアヤメカである。

「なんでおっさんの頭を使うのよ。こんなのふつうに懐中電灯でいいでしょ……」

「わかってないなぁ瑠奈は。こういうのは何事もユーモアが必要なんだよ。実用性は確かに大切だけど、オリジナリティがなければボクが作った意味がないからね。」

(……そのオリジナリティのセンスもどうかと思うのは、わたくしだけなのかしら……)

アリサが心の中で毒づいた時、光の前に2人の男女が立ちふさがった。

「ウヒョー!美少女3人美女1人の中に放り込まれたのはこの俺様!赤眼のアイベルトオオオオォォォ!このままギャルゲの如くアタックしてくる美女4人のうち、俺様は誰を選びこの洞窟を共に出ることになるのか!」

「……アリサ・アングレーム……姉様を殺したソフィアの娘であるお前は、必ず私が殺してやる……!」

「えええ!この戦いにかけるスタンスがあまりにも2人で違いすぎないか!?」

「彩芽!こいつらは王下十輝星の中でも強い方よ!絶対に油断しないで!」

「わ、わかってる!赤髪の方はサラさんや鏡花のおかげで撃退したことはあるけど、こんななのにメチャクチャ強いんだよ……!」

「……瑠奈、彩芽……わたくしはあの方を止めますわ。2人は赤髪のバカを倒してくださる?」

「うわあぁ!金髪ロングのお嬢様にバカって言われたあぁ!も、も……もっと口汚く罵って欲しいぜええええええ!」

口ではそう言いながらも、なんとなく宿命の対決っぽい雰囲気を察したアイベルトは瑠奈と彩芽の方へと走り出していく。
ロゼッタはそんな彼に目もくれず、アリサの前に立ちふさがった。



「……ロゼッタ。わたくしを憎むのは構いませんわ。でも……わたくしもあなたに大人しく殺されるわけにはいかなくってよ。」

復讐に溺れているロゼッタは、昔の自分と同じだとアリサは感じていた。
自分を愛してくれた家族を殺され、自らも致命傷を負わされたあの日……アリサはアルフレッドへの復讐を誓った。
ロゼッタもまた、公開処刑のように殺された姉の復讐で、アルフレッドと自分を憎んでいる。

「……脆弱な貴様が十輝星のカペラであるわたしに勝てるとでも……?今度こそ、貴様の仲間たちを目の前で1人ずつ殺し、絶望の淵に叩き落としてやるわ……!」

ロゼッタは糸を収束させ、すべてを凍てつかせるような視線で不気味に笑った。

(くっ……なんて迷いのない殺意……!今のわたくしで、本当に勝てる相手なのかしら……?)





「さぁ、エミリアちゃん。もうすぐ竜殺しのおやじが来ますわよ。準備はできておりまして?」

「ヴヴヴ……グルルルル……」

アイナに声をかけられたエミリアは、下を向いて低いうなり声を上げている。
アイナが彼女に食べさせたお菓子「スーパーバーサーカーキャラメル(カレー味)」は、一定時間理性を忘れ狂戦士のように暴れまわる危険すぎるお菓子である。
今のエミリアは近づく者すべてに襲いかかる状態だが、アイナは透明になっているのでエミリアのそばにいても安全だ。

(うふふ……アイナは透明になってエミリアちゃんのサポートをすればいいだけ。いくら竜殺しといえど、理性を失ったバカ火力のエミリアちゃんには勝てませんわよ……)

本気を出したエミリアの火力は魔法使いとしても超弩級だ。彼女の攻撃に当たるようにアイナがサポートすれば、獲物はひとたまりもない。
そんなこととは露知らず、大きな肉の塊が洞窟の壁を壊してエミリアの前に姿を現した。

372名無しさん:2018/12/28(金) 23:11:57 ID:???
2人の少女の剣とナイフがすれ違いざまに交わり、金属音が響き渡る。
結界は最後の一撃の直前で崩壊し、大きな音に森の鳥たちがバサバサと飛び立っていく。
2人は互いに背を向けたまま、振り返らない。

リザとミスト──2人の少女の青い眼は突風に揺れる荒波のように、不安定な輝きを放っていた。



「……リザ……あなたは優しい子だった。無欲で、純真で、いつも静かにみんなを見守ってた。……あたしにはもったいないくらいの妹だった。」

「………」

「……覚えてる?あたしとレオとリザ、3人で遊びに行った森で女の子を助けたときのこと。」

「……ぅぐうぅっ……!」

リザの体は不自然に震え、その手に握っていたナイフがするりと滑り落ち、カラン、と音を立てた。



「盗賊に襲われそうになっているあの子を見たとき、あたしもレオも助けるのが怖くて何もできなかった。それどころか、自分たちが目をつけられないよう、ゆっくりその場を離れようとしてた。」

「……お゛ねえ、ちゃんっ……!」

リザは振り返ろうとしたが、体の感覚がとても鈍い。自分の声まで掠れている。
そっと違和感を感じた腹部に手を当てると、どろりとした液体が手にべっとりとついた。

「……でも、リザだけは違った。あの子の手を素早く掴んで、あたしたちとは逆方向へ一目散に走っていったよね。」

「……ぐぅ……がはッ!!」

ミストの声が昔のような優しい口調になっていく。その声を聞くととても懐かしい気持ちになる。
そんなリザの気持ちとは裏腹に、体には激しい痛みが走り、口からは血が飛び出した。



「リザはあたしとレオから盗賊を引き離すと同時に、あの女の子も助けようとした。その判断を一瞬でやってのけたリザを見て思ったよ……リザはいつかあたしたちの手の届かないような、遠いところに行っちゃうんだろうなぁって。」

「う……ぁ……」

激しい出血に立っていることができなくなり、リザはついに膝を地面についた。

「女の子を助けて表彰されるし、ピアノコンクールでも綺麗な演奏で優勝したし……このままいつかは有名なピアニストになるのかなって。……リザが一流のピアニストになったら、みんながアウィナイトを見る目も変わるんだろうなって……勝手にそんなことまで考えてたよ。」

「はぁ……はぁっ……!」
(……血がっ……とま……らなぃ……)

かつてピアノの鍵盤を叩いていた自分の指は、恐ろしいほどの真紅に染まっている。
ピアノが奏でる楽しい音や悲しい音が好きだったから演奏していた。
ピアニストになって自分たちへの差別をなくすなんて、一度も考えたことがなかった。



あの事件さえなければ、誰も犠牲にせずアウィナイトを守る道もあったのだろうか──

(……ぁ……もう……意識……が……)

リザがそう逡巡した時には、彼女の体は横に傾いていた。



「こんな結末……認めない。あたしのたった1人の大切な妹をこんな殺人鬼に変えたトーメントを、あたしは絶対に許さない……絶対に、許さない……!」

「……ぁ……」



ミストの背後で、小さな体が倒れる音がした。

373名無しさん:2018/12/30(日) 01:43:26 ID:???
「久しぶりの再会だから、積もる話もあるけど……今は急ぎだから、早速やらせてもらうよ!」

「ッ……!鏡花ちゃん!」
「分かってる!はぁああ!!」

アトラもシアナも油断ならない相手だが、どちらも中〜遠距離でのサポート的な能力だ。一気に接近して畳み掛けるのが、最速にして最善の策である。

「そう来ると思ったぜ……食らえ落石トラップ!」

だが、突然頭上から降ってきた大量の岩石に阻まれ、唯と鏡花は距離を取って回避せざるを得ない。

「くっ……!早く王様に追いつかなきゃならないのに!」
「こんな所で足止めを食らうなんて!」


「……あれ?」

シアナは唯たちの会話を聞いて違和感を覚える。彼女たちはシアナたちの目的を王に近寄らせない為の足止めと考えたようだ。
運命の戦士を呼び寄せたい王様と、王様を追いたい運命の戦士。その点に限れば目的は同じに思える。

「アトラ、僕にいい考えがある。一旦攻撃中止だ」
「えー?せっかく久しぶりに鏡花ちゃんをリョナれるのにー」
「リョナも含めていい考えってことだ。まぁ見てろ」

アトラにトラップ攻撃を止めさせて、一歩前に出るシアナ。そのまま唯たちに語りかける。

「唯ちゃん、君たちの目的は王様を止めることだろう?なら、協力してあげるよ」
「……協力?」
「最近死んでないから忘れちゃったのかい?ほら、運命の戦士は死んだ後、どうやって復活するっけ?」


例えば、唯と瑠奈が地下水路でスライムに犯し殺された際。あの時も、地下水路で死んだ後、二人が蘇ったのは……


「私たちは死ぬと、王様の近くで生き返る……!?」
「そういうこと。というわけで、殺してあげるよ唯ちゃん」
「あ、なるほど!デスルーラ的なやつをさせるってことか!シアナあったまいい!」

シアナの狙いが分かったアトラが指をパチンと鳴らす。だが当然というべきか、唯と鏡花の反応は鈍い。

「トーメント王は私たちを狙っている……やっぱり、私たちを利用してセーブ・ザ・クイーンを……!?でも、放っておくわけにも……」
「……えっと、王様を止めたいのは山々だけど、だからって殺されるっていうのは……」

だが、流石にシアナもその辺りは織り込み済みだった。

「いいのかな?王様のことだから、唯ちゃんたちがいなかったらいなかったでアングレームの遺産を手に入れる算段は立ってると思うよ?早く死んで王様を追わないと、取り返しのつかないことになるんじゃないかな?」

口先三寸でさも自分たちに殺された方がいいかのように説得するシアナ。しかも、言っていることは極端ではあるものの間違いではないのが余計に性質の悪い。

「トーメントクリスタル……セイクリッド・ダークネス……それに加えてセーブ・ザ・クイーンまで手に入れたら、もう誰も王様を止められないだろうね……ククク……」
「う、ううぅう……!」

しばらく俯いて逡巡していた唯だが、意を決したように顔を上げると、ゆっくりとシアナの元に無防備に近づいていく。

「唯ちゃん!?ダメ!きっと何かの罠よ!」
「鏡花ちゃん、私……私は急いで王様の所に行くから、鏡花ちゃんは後から来て……!」

「ふふ、流石唯ちゃん、凄い度胸だ……さぁ、すぐに殺してあげるよ」
(ククク、アドリブの割には中々上手くいったぞ……たまには自分から殺されに来たのをリョナるってのもいいな)

374名無しさん:2018/12/30(日) 01:43:27 ID:???
「久しぶりの再会だから、積もる話もあるけど……今は急ぎだから、早速やらせてもらうよ!」

「ッ……!鏡花ちゃん!」
「分かってる!はぁああ!!」

アトラもシアナも油断ならない相手だが、どちらも中〜遠距離でのサポート的な能力だ。一気に接近して畳み掛けるのが、最速にして最善の策である。

「そう来ると思ったぜ……食らえ落石トラップ!」

だが、突然頭上から降ってきた大量の岩石に阻まれ、唯と鏡花は距離を取って回避せざるを得ない。

「くっ……!早く王様に追いつかなきゃならないのに!」
「こんな所で足止めを食らうなんて!」


「……あれ?」

シアナは唯たちの会話を聞いて違和感を覚える。彼女たちはシアナたちの目的を王に近寄らせない為の足止めと考えたようだ。
運命の戦士を呼び寄せたい王様と、王様を追いたい運命の戦士。その点に限れば目的は同じに思える。

「アトラ、僕にいい考えがある。一旦攻撃中止だ」
「えー?せっかく久しぶりに鏡花ちゃんをリョナれるのにー」
「リョナも含めていい考えってことだ。まぁ見てろ」

アトラにトラップ攻撃を止めさせて、一歩前に出るシアナ。そのまま唯たちに語りかける。

「唯ちゃん、君たちの目的は王様を止めることだろう?なら、協力してあげるよ」
「……協力?」
「最近死んでないから忘れちゃったのかい?ほら、運命の戦士は死んだ後、どうやって復活するっけ?」


例えば、唯と瑠奈が地下水路でスライムに犯し殺された際。あの時も、地下水路で死んだ後、二人が蘇ったのは……


「私たちは死ぬと、王様の近くで生き返る……!?」
「そういうこと。というわけで、殺してあげるよ唯ちゃん」
「あ、なるほど!デスルーラ的なやつをさせるってことか!シアナあったまいい!」

シアナの狙いが分かったアトラが指をパチンと鳴らす。だが当然というべきか、唯と鏡花の反応は鈍い。

「トーメント王は私たちを狙っている……やっぱり、私たちを利用してセーブ・ザ・クイーンを……!?でも、放っておくわけにも……」
「……えっと、王様を止めたいのは山々だけど、だからって殺されるっていうのは……」

だが、流石にシアナもその辺りは織り込み済みだった。

「いいのかな?王様のことだから、唯ちゃんたちがいなかったらいなかったでアングレームの遺産を手に入れる算段は立ってると思うよ?早く死んで王様を追わないと、取り返しのつかないことになるんじゃないかな?」

口先三寸でさも自分たちに殺された方がいいかのように説得するシアナ。しかも、言っていることは極端ではあるものの間違いではないのが余計に性質の悪い。

「トーメントクリスタル……セイクリッド・ダークネス……それに加えてセーブ・ザ・クイーンまで手に入れたら、もう誰も王様を止められないだろうね……ククク……」
「う、ううぅう……!」

しばらく俯いて逡巡していた唯だが、意を決したように顔を上げると、ゆっくりとシアナの元に無防備に近づいていく。

「唯ちゃん!?ダメ!きっと何かの罠よ!」
「鏡花ちゃん、私……私は急いで王様の所に行くから、鏡花ちゃんは後から来て……!」

「ふふ、流石唯ちゃん、凄い度胸だ……さぁ、すぐに殺してあげるよ」
(ククク、アドリブの割には中々上手くいったぞ……たまには自分から殺されに来たのをリョナるってのもいいな)

375名無しさん:2018/12/30(日) 21:28:32 ID:???
「ケケケ……もうクリスマスなんてとっくの昔に終わったが、お前は逃がさねえ……長年溜めに溜めてた性欲、全部ぶちまけてやるぜ……!」

「ああうぅっ!ザギっ、さああん!こんなことやめてえええぇ!いやああああぁぁあぁっ!」

モブたちがクロヒメを輪姦しているのを尻目に、ザギは服を脱ぎ七華に飛びかかる。

(はぁ……七華の匂いだ……こんな間近で嗅げる日がくるなんてなぁ……!それに、この肌の柔らかい感触、やたらめったらエロい声……触覚、視覚、聴覚、嗅覚で勃起してきたぜ……)

味覚以外の五感ですっかり興奮ボルテージマックスになったザギは、七華の肌を覆う黒巫女の服を無残に引きちぎ……ったりはしなかった。

(ククク……裸にする方がもったいねえ。さっき引き裂いた着物の隙間から手やら口やら突っ込んで、着衣のまま犯してやるぜぇ!)



ザギは七華をムラサメで見かけるまでは、ごくごく普通のチンピラ下忍だった。
新しい討魔忍5人衆を紹介するイベントで、着任したばかりの七華を見たときにザギは衝撃を受けたのだ。

「えっと……神楽木七華です。本日から討魔忍5人衆の一員になりました。み、みなさん……!よ、よろしくお願いいたします……!」

「七華さまー!」
「巫女さんだああああああ!!」
「めちゃくそかわいいいいいいいいいいい!!!」
「シコリティMAX!!!」
「結婚してえええええ!」
「いつもお菓子買ってますーーー!!!」
「スリーサイズおしえてー!」
「後ろの箱はなんですかー?」

(……神楽木七華……!巫女属性、黒ロングヘア、あいつこそ俺様の性奴隷にふさわしい女だ!)

大喝采の中、ザギは決意したのだ。
自分も討魔忍5人衆に上り詰めて、七華を自分の性奴隷(モノ)にすると……!



「ククク……こんないい体で下ネタが嫌いなんてもったいないぜぇ?俺様が教えてやるよ。女としての本当の存在価値と、極上の快楽をな……!」

「ひ……!や、やぁっ……だ、誰か……助けてっ……!」

「無駄だぜ。この部屋は防音対策ばっちりだ。いくらお前の声が高くてよく響く声でも、誰の耳にも入らねえ……せいぜい後ろの連中がお前の声に誘われて、ふらふら犯しにくるくらいだな!ケケケケケ!」

あまりの恐怖に声も出せなくなる七華。そんな七華を見たザギは素早く着物の裾に手を入れて、七華の胸を堪能し始めた。

「ひゃうううううっんっ!」

「暴れんなよ……暴れんなよ……!お前のことが好きだったんだよ!」

そう、ザギの所業は某ホモビデオの4章のごとく、やっていることは最低だが、ずっと抱えていた一途な思い(性欲オンリー)をぶつけていることに変わりはないのだ!

376名無しさん:2018/12/30(日) 23:52:38 ID:???
「ルナティックちゃん!今度こそお前を妹にしてやるぜー!!」

「うう、あの時のあれは今思い出しても鳥肌が……私の精神衛生の為にも、ぶっ飛ばしてやるわ!」

「瑠奈、ボクは後ろから援護するよ!えーと、鞄鞄……」

整理してないせいで、鞄から使えそうな物を探すのに時間がかかる……というお決まりのパターンをする彩芽。

「その間一人で戦うことになる瑠奈ちゃんは、俺様に思う存分リョナられるのであった……」

「勝手に話を決めてんじゃないわよ……!流星脚!」

アホなことを言っているアイベルトに対し、初手安定と言わんばかりにいつもの飛び蹴りを放つ瑠奈。

「ふっ……自分から股を開いてくれるとはありがたいぜ!」

アイベルトは現実世界人とは相性が悪いとは言え、その実力は瑠奈を凌駕する。

易々と瑠奈の飛び蹴りをキャッチしたアイベルトは、片足を掴んだ状態で瑠奈を宙ずりにする。

「そう来ると……思ってたわ!蜥蜴の尻尾切り・脚刃!」

「いてっ!」

刃物の鋭さを拳に付与する魔拳・蜥蜴の尻尾切りの足バージョンを行う瑠奈。

その結果、刃物を握っているような鋭い痛みに襲われたアイベルトは、思わず手を離してしまう。

「貰った!!破岩拳!」

アイベルトの手から脱出した瑠奈は軽やかに着地すると、一気にアイベルトに接近する。

「ぬお、しまった……なんてな!アースクエイク!」
「ひゃっ!?」
「もういっちょお!!」
「きゃああああ!!」

アイベルトは地面を隆起させる魔法を不意討ち気味に放つことで、瑠奈を躓かせる。その隙をついて、再び瑠奈の片足を掴んでY字バランス立ちをさせる。その結果、アイベルトにスカートの中身が丸見えとなっている。

「おおぅ、眼福眼福……例えるならフレ◯ザードに捕まった時の マ◯ムだな!」
「ちょ、な、なっ!?こ、この変態!見てんじゃないわよ!こんなふざけた奴なんかに……!蜥蜴の尻尾切り・脚刃!」

スカートの中身が見られていることに赤面しつつ、再び足に刃物の鋭さを付与する瑠奈。

「へ、無駄だ……レインメタル!」

が、瑠奈を掴んでいる手を、剣の一部を媒介とした鋼魔法で手袋のように包むことで蜥蜴の尻尾切りを回避した。アイベルトは腐っても全属性の魔法を操る天才なのだ。

「なっ!?」

「さて、エキシビジョンマッチを見てやってみたくなったことを試すとするか!」

そう言うとアイベルトは……瑠奈の股間を思いっきり蹴り上げた!!

「ひぐううぅぅうぅあぁぁッッ!!はひっ……あぐ、あぅ……」

急所への攻撃を受け、ひび割れた悲鳴を響かせる瑠奈。その後は口をだらしなく開けて、パクパクと必死に息を吸って呼吸を整えている。

ソフトリョナラーであるアイベルトらしからぬ過激な攻撃だが、アホな童貞のアイベルトは恥骨が女性にとって如何に急所であるかをあまり把握していなかったのである。

377名無しさん:2018/12/31(月) 19:11:35 ID:???
「オラオラオラ!拙者の百裂腋ペロで(レロロロロ)腋だけで昇天するでござる!」
「拙者はクリスマスだけにクリ責めするでござるよ!(くちくちくち)」
「ふゃっ……や、やめよ、この下衆共……わらわにこんな事をして、ただで済むとっ……んあぅっ!?」

七華を五人衆の一角に押し上げた程の圧倒的戦闘力を持っていたクロヒメが、今は下忍達にいいように弄ばれていた。
生身に生まれ変わった身体は快楽に抗う術を知らず、下忍達の数に任せた暴力的な責めにさえ簡単に屈してしまう。

「クックック……無様だな、雌人形。だが貴様ごときが、こいつらを下衆と蔑める立場か?
この程度の仕打ち、お前の『悪巧み』の報いと思えばまだまだ生温いぐらいよ」
「な、何っ……わる、だくみ……じゃと……?…ひゃっふぁあああんっ!!」

邪悪なサンタクロースが下忍達に犯されるクロヒメを見下ろし、意味深な言葉をつぶやく。
その真意を問おうとするクロヒメだが、下忍達に寄ってたかって全身を嬲り責めにされ、思考と言葉は甘い悲鳴にかき消された。

「……それは己自身が一番よく知っているだろう。
貴様は神の名を騙り、あの巫女をたぶらかして人形を造らせ、自分の依り代とした。
巫女の心を操って、自分の身体を操らせた。そして、貴様の真の目的は……」

「フヒヒ……コイツ、下の毛ツルツルでござる!さすが元人形なだけの事はあるでござるな!」
「いやいや。元々この人形は七華様が本物の人間同様にと造った代物……しからば細部までリアリティにこだわっている筈」
「なんと……では、こやつがツルツルなのは、七華様が自分のを参考にしたせいかも知れぬと……!?」
「ひっ……や、あぁっ……なぜ、それを……い、言うなっ……そ、それ以上はっ……!!」

「あう、んぐ…!…クロヒメ様の、真の目的……!?」
「ヒヒヒヒッ……俺様はサンタクロースだ。『玩具』の事は、何でもお見通しよ。
そこの巫女も、下衆Zに犯されながら聞くが良い」
「やっ……言うなっ……聞くな、七華ぁっ……ひゃひいいいんっ!!」

「そこの下衆Zに犯されている巫女……あれの身体を乗っ取ろうとしていたのだろう?
人間に成り代わり、巫女の魂は依り代の人形に封じ込める。低級な付喪神ごときが考えそうな事よ」
「そっ……そんな、クロヒメ様が、私を……嘘だと言ってくださ……ひっ!!」
「ひ、んっ……七華っ……そ、それは……ひゃん、ぐぅっ……!!」
……クロヒメがずっと隠していた秘密が、謎の闖入者により白日の下に晒された。
クロヒメが弁明の言葉を紡げなかったのは、果たして下忍達の責めのせいだけだろうか。
七華の瞳から、希望の光が急速に喪われていく。

「ククク……そういう事かよ。よかったじゃねえか。あのクロヒゲ人形は、肉の身体を手に入れた。
そうなりゃ七華、テメエはもう用済みだ。
巫女の『身体』も、『純潔』も……もう必要ねえなら、俺様がもらっちまっていいよなぁ!?」
(グイィィィィン!!)
「い、いやっ……ザギさ……き、ぅうぅうううううううんっ!!」
ザギのブーツが振動衝撃波をひときわ強く発し、甘い悲鳴が大きく響き渡る。
それと共に、七華の股間がしっとりと濡れ始めた。

七華の体は十二分に熟しているにも関わらず、クロヒメと同様に、経験が伴っていないせいで快楽への耐性は無いに等しい。
どこを責められても感じてしまい、甘い嬌声を押さえられず、知識その物が乏しいせいで、次に何をされるか予測もできない。
だからこうして、優しさなど一切ないザギの乱暴な責めにも易々と屈してしまうのだ。

「んっ……く……そうは、いかぬ……七…華……確かに最初は……そなたの身体が目的であった……じゃが今は……」

「ひうっ!い、いやっ……からだ、どんどん、おかひくなって……ざぎ、さ……や、やめっ……
くろ、ひめ…さま、んあああ!!」

「ヒャーッハッハ!!俺様が何百回お前を犯そうとしたかわかるか!?
あのクソ忌々しいクロヒゲ人形に散々邪魔されてきたが……
それでも、お前の身体の事なら全て学習済みだぜぇ!!
お前の身体はどこをどう弄れば感じるのか、隅から隅までなぁ!!」

「わらわの事を一点の曇りもなく信じ、慈しんでくれたそなたを…何としてでも……」
「クックック……今さらどう足掻こうが無駄な事よ。付喪神など、所詮は下等な低級霊……
下衆な忍びどもに犯されてよがっているのが似合いという物だ」

「……いや、守って見せる……例えこの身が焼き尽くされようとも。
……『神火の天照』……!!」

378名無しさん:2018/12/31(月) 20:56:07 ID:???
「グオォォオォオッ……!」
クロヒメの身体が眩い光を放ち、その姿を変えていく。天を駆け火を放つ、龍の姿へと。

「グワーッ火炎!?一体何ごとでござる!?」
「バカな!生ラブドールが竜になったでござると!?」
「前に見た説明文だとドラゴン○ォートレスとか○星王みたいに変形(物理)ってイメージだったのに、生身でも変身できるなんて聞いてないでござる!」
「アイエェ…テストに出ないよぉ…」
混乱する下忍達を振りほどき、竜化したクロヒメはサンタとザギに向けて炎を吐く。
そして、七華を拘束する鎖を噛み千切り、その身体を背に乗せて飛び去った。

「なっ……何だと……あのクソ肉人形が、あんな身体になっても、まだ俺の邪魔をしやがるのかっ……!」
「ふん。落ち着け……サンタは玩具の事など何でもお見通しと言ったはずだ。
下忍どもに裸に剥かれた巫女と人形が、まず最初に欲しがる物は何か?……確か、この近くに倉庫があったはずだな」
「イカにも。武器や衣装や忍者道具……それに、クリスマス用パーティグッズなんかも置いてあったはずでござる」

「ケケケ!裸がイヤだからって、わざわざ出口と反対方向の行き止まりに逃げるなんてなぁ……
女ってのはつくづくバカな生き物だぜ」

………………

「はぁっ……はぁっ……おかげで助かりました、クロヒメ様」
「礼などよい……しかし、恐らく『神火の天照』はもう使えぬ。それに、奴らはすぐにでもここへやってこよう」
……サンタの読み通り、七華とクロヒメは倉庫に身を隠していた。
クロヒメは生身で龍化して力を使い果たし、元の姿には戻ったものの全身に軽いやけどを負い、七華から治療を受けている。

「私の一族は代々、神に仕える巫女『神通』の家系でした。
ですが、私は……巫女としては落ちこぼれ。討魔忍としての実力も二流がいい所でした。
クロヒメ様がおいでなさらなければ、とても五人衆に取り立てられるような器ではなかった」

「そうであろうの……元来、そなたの性格は戦いには向かぬ。
和菓子屋が一番性に合っておったろうに。全ては、お主を誑かしたわらわの罪……」

「いいえ……そのお陰で、討魔忍衆の皆様や多くの方々と出会えましたし、多くの民を魔物の手から救う事も出来ました。
私だって、クロヒメ様の力を利用していたのですから……お互い様ですわ」

「討魔忍衆、か……中には奴らのような不届き者もいるというのに。お主はどこまでお人好しなのじゃ」
「恐らく彼らは、あの赤い服の男によって暴走させられているのでしょう。……彼を倒せば、この状況を打開できるはずです」

「……じゃがスマホのないわらわ達には、救援を呼ぶ術も時間もない。
呼べたとしても、また奴に操られるかも知れぬ……わらわ達二人だけで、勝てるであろうか」
「大丈夫。きっと何とかなりますよ……私達、二人なら」

379名無しさん:2018/12/31(月) 20:57:36 ID:???
(ガコン!ドゴオン!!バキバキバキ!!)

「ヒャッハーーー!!俺達の年越しソバはどこだぁーーー!!」
完全に理性を失った下忍達が、倉庫の入口の扉を壊してなだれ込んできた。

(ズカッ!ザクザクザク!!)
……だがその足元の床に、どこからか飛んできたクナイと手裏剣が突き刺さる。

「人々の欲望に付け込み、惑わせる邪悪なる妖魔『サンタ・クロース』……」
「そなたの野望も、今宵限りじゃ……!」

「討魔忍五人衆が一人、『神通』の七華と」
「その守護者……『付喪神・血贄ノ黒姫』が」
「闇に滅して」「差し上げますっ!」

積まれた荷物の上に立ち、名乗りを上げる二人。その身に纏うのは、討魔忍の証である忍び装束……ではなく。

「あ、あの姿は……まさか…」「…何という事でござる……!!」

(……しかし七華。選り好みする時間がなかったとはいえ、他にもっとマシな服はなかったのかのう)
(これが一番、寒さが防げそうでしたし……それに、よくお似合いですよ)

ちょっとスカート短めな、白いファーの付いた赤い服。
あったかい事はあったかいのだが、胸元や太股周辺は不自然に開いている、いわゆる間違ったサンタ服であった。

「クックック……どうやら、まだまだ楽しませてくれそうだなぁ、アホらぎぃ……!」

「……下忍ども、そしてゲスな忍びZ男。俺様の『残り時間』もあと僅かだ。
全員、酒と肉をたらふく喰らえ。『サンタクロースの殺人玩具』を手に取れ。一気にケリを付けるぞ!」

「「「ヒャッハーー!!」」」

邪悪なサンタクロース率いる忍者軍団が迫る。
ミニスカサンタ討魔忍コンビがそれを迎え撃つ。

サイコーにクレイジーな決戦の火ぶたが、今ここに切って落とされようとしていた。

380>>332から:2019/01/01(火) 01:50:58 ID:???
「おいアリス、どうした?やけに元気がないじゃないか」

リンネの部屋を追い出された後、雨宿りをしながら空を眺めていたアリスだが、彼女は自らを呼ぶ双子の姉の声に振り向いた。

「……エリス……」

「実は、レイナが部屋に来ていてな。今後のことを相談しようと思ったのだが……って、その格好は何だ!?陰湿ロリコン男にやられたのか!?」

大きな傘をさしてアリスを迎えに来たエリスは、彼女の服が引きちぎられているのを見て驚愕する。

「い、いえ、これは、その……こ、転んだんです!」

これ以上話をややこしくして、リンネの負担を増やすわけにはいかないと考えたエリスは、下手な言い訳を連ねる。

「とにかく、一度部屋に戻るぞ……そんな恰好でいたら風邪をひいてしまう。ほら、こっちの傘に入れ」

こんな言い訳は通じるわけがないと思っていたアリスだが、エリスはひとまず追求は後回しにして彼女を家まで送ることを優先したようだ。

(エリスのことだから、我を忘れてリンネさんに物申しに行くかと思いましたが……今日は妙に冷静ですね)

少々違和感を覚えたエリスだが、下手に追求されてもこちらが困るだけなのは明白。故にアリスはリンネとヒルダに関する陰鬱とした考えを一旦振り切り、エリスと相合傘で雨を防ぎながら執務室へ向かう。

道中会話もなく、黙々と歩く美少女2人。しかし突然、エリスはピタリと止まった。

「エリス?」

「やはり元気がないな……リンネのことか?部屋にはレイナもいて話しにくいだろう。ここで私に相談してみないか?」

顔を近づけながら、囁くように語りかけてくるエリス。

「貴女に隠し事はできませんね……リンネさんは、ヒルダさんのことで大分精神的に思い詰めて……エリス、顔が近くないですか?」

「おっとすまない。だが、あまり大きな声で話すようなことでもないだろう?それに、一つの傘に入っているから、多少近くなるのはしょうがないだろう?」

「そ、そうですね……とにかく、リンネさんのことです。私が行くと彼を余計に追い詰めてしまいますから、ダイさんかマーティンさんに頼んで、せめてご飯だけでも……んんぅ!?」

意を決してリンネのことを相談しようとするアリス。だが、その内容が口から出ることはなかった。何故ならば、傘を投げ捨てたエリスの唇が、アリスの口を塞いでいたからだ。


普段のアリスであれば、双子であるエリスの様子がおかしいことに気づいたかもしれないが……リンネに強姦未遂されかけたことと、自分が余計にリンネを追い詰めていたのを知ったことで視野が狭まっていたアリスは、視野が狭くなっていたのだ


381名無しさん:2019/01/02(水) 02:08:02 ID:???
「来ましたわエミリアちゃん!竜殺しのドンですわよ!」

壁を壊して現れたダンにビシィっ!と指を指すステルス中のアイナ。その声に釣られて下を向いていたエミリアが顔を上げた。

「……爆炎のスカーレットか。噂によれば、ガラドで負けてからはトーメントに寝返ったらしいな。」

「ヴヴヴ……ガアアアアアァッ!!」

言葉も聞かず咆哮を上げながら向かってくるエミリアを見て、瞬時にダンは戦闘の構えを取る。

(速い……だが、合わせるのは余裕だな。)

スピードに任せた猪突猛進だが、百戦錬磨の竜殺しにとっては捌くことなど造作もない。
炎の魔力を纏いながら繰り出されたパンチを、ダンは魔力を帯びた片手で受け止めた!

バシッ!
「ガルルルルルルル!」
「……お前、なんかやべぇものでも食ったんじゃねえのか?せっかくの可愛いツラが台無しになってやがるぜ。」

{さ、流石は竜殺し……爆炎を纏ったエミリアちゃんのパンチを片手で受け止めるなんて……)

狂戦士化したエミリアの攻撃を軽くいなすダンに舌を巻くアイナ。だがここまでは予定通りだ。

(あの様子、アイナには気づいていないですわね……エミリアちゃんの攻撃に合わせて、このアイナ特製のカルピス味ねるねるねるねを大量にぶっかけてやりますわ!)

カルピス味ねるねるねるねとは、貼り付けば臭い匂いとともにべっとりと体に貼り付き、時間が経つとカピカピになって固まる代物である。
これは2年前のサンタ事件の時、自分にぶっかけられたものを参考に作り上げたお菓子兵器だ。
美少女にぶっかければ臭気と粘つく嫌悪感で絵になる姿を見せてくれるものだが、残念ながら今回の相手はオッサンである。



「ガルルルルルルル!!!」
「今度は冷気に雷を纏ったパンチか……よっと!」

(い、今ですわ!)

ビビューーールルルルルルッ!!!

エミリアの激しい攻撃を捌いている途中のダンに、アイナはチューブ状の大きな容器から白ねるねるねるねを汚い擬音と同時に大量放出する!
完全にダンの背後、死角からの攻撃であったが…………

「ほれ、小娘。お仲間がおとなしくさせてくれるってよ。」
「グ……うっ!?」

攻撃を捌いていて動けないはずのダンは、なんとエミリアの腕を掴んで背後へと放り投げたのである!
そうなればもちろん、アイナの放ったねるねるねるねは……

ビチャビチャビチャビチャ!!!
「う、ぶ……!?ん、うううぅっ!!!」
「きゃああああぁっ!!!エ、エミリアちゃああああん!!」

図らずも、意識を取り戻したエミリアという美少女の体にまとわりつくことになった。

382名無しさん:2019/01/02(水) 03:12:54 ID:???
ミストが振り返ると、うつ伏せで倒れたリザが小刻みに震えていた。
出血によって意識を失いかけていながらも、必死に立ち上がろうとしている、

「リザ。あんたの負けよ。それ以上苦しみたくないなら……もう動かない方がいいわ。」
「……い……いやだっ……わたし、は……こんな……ところでっ……!」

綺麗に殺せなかったことを、ミストは申し訳なく思った。
一瞬の刹那、リザは命を取ろうとはしていなかったが、ミストは本気だった。
妹を殺す……暗殺者である妹を今日ここで殺すために、技を磨いてきたのだから。



「……自分が哀れだと思わないの?偶然にも助かった命で、罪もない人を殺しまくるなんて……あなたはもう、あたしたち家族が知ってるリザじゃない。」

リザの傍らに立ったミストが見下ろしながらそう言うと、今まで緩慢な動作だったリザの顔がキッと上げられ、刺すような視線でミストの目を射抜いた。

「……ここでわたしを殺したって……ぐっ……!お姉ちゃんじゃ、トーメントには勝てないよ……お姉ちゃんだけじゃない。どの国も、運命の戦士でさえも……王様には絶対に勝てない。」

「……だからなに?そんな大層お強いトーメントに守られるために、あんたは何人も殺したの?」

「……どうしてっ……わからないの、お姉ちゃん……!もう普通に暮らしているアウィナイトは全滅寸前なんだよ?そんな状態の私たちが生きていくには……絶対的な後ろ盾が必要なのっ……!」

「……アンタのやり方で得る血に塗れた汚い後ろ盾なんか、いらない。アウィナイトは弱小民族だけど……生きていくために人の道を外れたりは絶対にしない。リザ、アンタがやっていることは……アウィナイトを虐げていた者と同じこと」
「違うッッッ!!!」



リザの目がカッと見開かれ、青い目がキラキラと潤み出す。

「はぁ、はぁっ……!どうしてそんなこと言うのッ!?じゃあ私一人でどうすればよかったのッ!?ぐっ……!……私たちみたいに……家族を理不尽に殺されるアウィナイトを、どうやって守れば……よかったの……?」

「……神にでもなったつもりなの?あんた一人で全員助けるなんて……無理。不可能よ。できるわけないじゃない。」

「……なんで……なんでお父さんやお母さんやおにいちゃんがあんなことになったのに……お姉ちゃんはそんなことがいけしゃあしゃあと言えるの……!」

リザの声に怒気が混ざる。
ここに来てミストは、妹が怒りに震える声を初めて聞いた。

これまでミストとリザは姉妹喧嘩をしたことがない。
ミストが間違えてリザが楽しみにしていたお菓子を食べても、リザが大切にしていたぬいぐるみにジュースを零しても、リザは怒らなかった。

その後、部屋で一人啜り泣くリザに気づいてミストが土下座しても、リザは泣きながら笑っていた。

(……あんなにいい子だったリザが……こんなことで怒るの……?あの事件は……この子をどこまで変えたの……?)




「……分からず屋……!お姉ちゃんの分からず屋分からず屋分からず屋分からず屋分からず屋あぁぁっ……!」」
「……………………」

リザの怒りに満ちた声に、ミストは言葉に詰まる。

「私だって迷ったよ……でもアウィナイトが迫害され続けるのを防ぐには、もうこうするしかないんだよっ……!」

「……あんたがなにを言おうと、あたしはあんたを許さない。それはもう……行動で示した……」

「……こんなことなら……こんな風にお姉ちゃんに殺されるくらいならっ……!あの時、私なんか死んじゃえばよかったんだ……!」

「…………………………」

「自分で助けたくせに、自分で殺すとか……!私の命はお姉ちゃんにとってオモチャなの……?酷いよ……酷すぎるよっ……!ゔっ!ごほっ!!!」

恐らく、もういつも通りの理路整然とした言葉は紡げないのだろう。
リザの言葉は慚愧の念に堪えない感情と、自分とも姉ともこの世界ともいえる行き場のない怒りによって、虚しく吐き出されていた……

383名無しさん:2019/01/02(水) 16:20:44 ID:???
「「まだまだクリスマス特別編は終わらないでござるよぉお!!」」
下忍達が『クリスマス 武器』で画像検索すると出てくる、ソシャゲの限定武器みたいなのを手に襲い掛かる!

「行きますよ、クロヒメ様……神罰刀・桜花!」
「共に魔の輩を討ち払おうぞ、七華……開魂の儀!」
「「峰打乱撃!!」」
迎え撃つのは、サンタ服姿の七華とクロヒメ。
もちろんサンタ服と言っても、太股や胸元が大胆に露出した、大いにけしからんやつだ!

「「ぐおお!!」」「「ぐふっ!!」」
七華とクロヒメの剣が、下忍達を「峰打ち」で次々と蹴散らしていく。
操られているだけ?の下忍達をなるべく殺さないようにという、七華の配慮である。

(しかし七華の奴……峰打ちとは言え、鉄の棒で人の頭をガンガン叩いて「不殺」とか無理があるのう。せめてたけのこだよね)
クロヒメも一応従ってはいるが、それでも敵を戦闘不能に至らしめるには十分すぎる威力。
と思われたのだが……

「げひ、ひひひ……クリスマスケーキのように甘いでござるよ!『リボンウィップ』!」
(ギュルルルル!!ビシ!!)
「きゃあっ!?」「ぬうっ!!これは……」
サンタの酒と料理で狂戦士化した下忍達は、怯む事無く襲い掛かった!
リボン型の鞭が素早く巻き付き、七華とクロヒメを背中合わせに拘束する!

「この程度の攻撃で、我らは止められぬでござる……『キャンドルロッド』!!」
(ジュブブブブ……ドロッ!!)
「っぐ、ろ、蝋が……!!」「あ、熱っ……うぁあああっ!!」
更に、燭台を模した杖を押し当てられ、胸元や太ももなどに融けた蝋を垂らしていく。
熱いだけではなく、スライムのように意志を持って動く蝋は、にゅるにゅると服の中に入り込もうとする!

「今でござるっ!『ターキーメイス』!!」「『ベルハンマー』!!」
(ドゴッ!!)(リンゴォォォン!!)
「「きゃあああぁぁああ!!」」
更に、巨大な七面鳥&鈴型ハンマーのフルスイングが直撃し、二人は為す術もなく吹っ飛ばされる。

「きゃっ!」「うぐ!!」「あんっ!」「ぐあ!!」
密閉された倉庫内の壁や天井に、七華とクロヒメの身体は何度もバウンドしながら叩きつけられる。
これが屋外の船上や終点であったら、画面外にまで吹っ飛ばされていた事だろう。

「「うあああああっ!!」」
……最後は、ガラクタが入った雑多な箱の山の中に、身体ごと叩き込まれた。

「フヒヒヒ……さすが『サンタクロースの殺人玩具』!討魔忍五人衆の七華様がヒィヒィ言ってるでござるぞ!」
「あんなけしからんドスケベボディの偽サンタは、クリスマスの後はリョ○の鐘で突きまくって……」
「その後は、鏡餅みたいな胸をこねてこねてこね回してやるでござる……!」

384名無しさん:2019/01/02(水) 16:25:24 ID:???
「はぁっ……はぁっ……な、なんてパワー……」
「う、ぐっ……ただの下忍どもが、ここまで強化されようとは……」

下忍達の猛攻に、あっという間にボロボロにされた七華とクロヒメ。
二人のサンタ服は所々が破けてますますけしからん事になり、赤緑のリボンで全身拘束ラッピングされていた。
もがけばもがくほど、ムチムチの柔肌にリボンが食い込んでいき、身動きが取れない。

「ケッケッケ……イイ格好だなぁ、クズらぎ七華……」
(ざしゅ……ぐりっ)
「くっ……ザギ、さん……お願いです。正気に戻って………きゃ、ひんっ!?」
動けない七華にザギが近付き、股間をぐりぐりと踏みつける。
その足に履いているのは、血のように赤い『クリスマスブーツ』。
先ほどまでの物とは比較にならない「破壊力」を秘めている事が、肌で感じられた。

「ケッ!正気に戻れだぁ?……クロヒゲ人形なんかにイカれてたお前に言われたかねえ」
(ドコッ!!)
「ひゃふぅぅぅうううんっ!?」

「ん、くぅ…!…七華っ……七華ぁぁぁっ!!」
背中合わせで拘束されているクロヒメにも、ザギの踏み付けの衝撃がビリビリと伝わってくる。
これ程の一撃を直接、股間に喰らった七華のダメージはどれほどの物か……クロヒメには想像もつかなかった。

「ヒッヒッヒ……俺様がプレゼントしてやった、生身の肉体はどうだ?
まあ人形だろうが生身の身体だろうが、『玩具』にされることに変わりはないがな」
ガラクタの中に這いつくばるクロヒメを、サンタクロースが見下ろす。
手にしているのは、『クリスマスツリー・チェーンソー』……あらゆる物を両断し、破滅的な激痛をもたらす最凶武器である。

「だ、黙れ下衆共が……わらわや七華に手出しをした以上、最早ただでは済まさぬ……!」
「クックック……どうやって?その身体では、腕力は普通の人間並。毒蟲も封じられ、龍化の術ももう使えまい」

「……そんな物より、もっと強い力が……わらわ達にはある……開魂の儀!」
クロヒメは、仕込み刀でリボンを斬り裂いて脱出した。

「……そうじゃな、七華……!」
「ええ、もちろんです。クロヒメ様……!」
続いて七華を助け起こす。満身創痍の二人は、既に立っているのがやっとだったが……

「私達の力は残り少ない……周りの雑魚共の攻撃を全てかわし、サンタクロースの防御をかいくぐって……」
「……一撃で、奴を仕留める。そのために必要なのは……わらわ達の、完璧な連携」

「小賢しい雌共が……下忍ども!一斉に掛かれ!!」
「「「ヤッフーーー!!」」」

(私が今まで、クロヒメ様を操って来たように……)
(わらわが、七華を操って来たように……)
((二人の身体を、繋ぎ合わせた一つの意思で操り、戦う……それが……!))

「「黒乃華・連刀舞!!」」(くろのはな・つらねがたなのまい)

385名無しさん:2019/01/02(水) 17:32:17 ID:???
「ぐおおっ!?なんでござるか!この動きは…!」
「二人とも死にかけでフラフラのはずなのに……捉えられきれんでござる!!」
「バカな……あんなスケベなボディの、どこにこんな力が!」

七華とクロヒメは、流れるような動きで下忍達の攻撃をかわしていく。

「クソがっ…やらせるかよっ!」
下忍達をかわした直後の隙を突いて、七華に蹴りを放つザギ。
強化ブーツを履いての一撃は、必殺の威力を持っている。だが……

「無駄じゃ」「当たりません」
(ビシッ)
「ぐぉっ!!」
クロヒメが七華の手を取って、抱き寄せるように倒れてザギの攻撃をかわす。
そして舞を舞うように、剣の峰でザギの脚を払って転ばせた。

「おのれ雌人形どもがっ……もう容赦はせぬ。死ねぇい!!」
(ブオォォォォン!!)
「「………!!」」
サンタクロースの殺人玩具でも最強の威力を誇る『クリスマスツリー・チェーンソー』が横薙ぎに振るわれる。
全てを斬り裂く必殺の一撃を、七華は跳躍して上に、クロヒメは身を伏せて下に回避。

「無駄ですっ!そんな物で、私たちの絆は断ち切れない!」
「これで終わりじゃ……闇に滅せいっ!!」
((……ザシュッ!!))
「………うぐおぉぉおおおおおっ……!!」
後の先で放たれた七華とクロヒメの斬撃が、サンタクロースの巨体を十文字に斬り裂いた。

(ゴォォォォッ……)
「………おの、れ……!!……だが、もう……時間切れ……か……!」
赤と緑の炎に包まれて、サンタクロースが消滅していき……周囲を包んでいた邪悪な気配は、やがて完全に消えた。

さっきまでクリスマスだったはずなのにいつのまにか新年が明けていたが、考えたら負けである。

「はぁっ……はぁっ……やったな、七華……」
「ええ、クロヒメ様。……そうだ、ザギさんや、他の皆さんは……!」
「……酒と料理の効果は、多分すぐ切れるじゃろう。しかし、用心せよ。奴らの性根は元々腐っているのじゃから」
「ザギさん!大丈夫ですか!?しっかりしてください!!」
「……こら七華。わらわの話を聴けい!少しは警戒をだな……!」

ザギや下忍達は「酒と料理を食べたらおかしくなっていた」と、全てサンタのせいにしてこの場を乗り切った。
もちろんクロヒメは信用しないが、七華が疑いもしなかったため、それ以上強くは言えなかった。

「全く。七華のお人好しにも困った物よ。
今回は何とかなったが、やはり七華を守るには生身の身体では難しいやも……
……む?これは」
クロヒメがため息をつき、ふと足元を見ると……赤と緑のリボンが落ちていた。
あれは、サンタクロースが使っていた『クリスマス・リボン』。
……玩具を生身の生き物へ、生き物を玩具へと変える力を持っている。

(……これを使えば、わらわは……再び人形に……?)
リボンを拾い上げ、そっと懐に忍ばせる。

「クロヒメ様、大変です!テンジョウ様から呼び出しだそうです!
すぐに参戦(使用キャラ:WiiFitトレーナー→アイスクライマー)しなければ!」
「う、うむ……すぐに行く」
……使うべきか。使わざるべきか。人形と人間、どちらの姿でいるべきか。
人としての強さと弱さを手に入れてしまったが故に、クロヒメは悩み、すぐには答えを導き出す事が出来なかった。

386名無しさん:2019/01/02(水) 21:54:05 ID:YRK6qvlA
「唯ちゃん!」
「鏡花ちゃん、ごめん……でも、すぐに王様を追うには、こうするしかないの……!」

王を追うために、敢えてその身をアトラとシアナに捧げようとする唯。それを見て鏡花は止めようとするが、唯の意思は固かった。

「アトラ君、シアナ君……私は王様を止める……前に約束したよね、王様を私が倒したら、2人は悪いことを止めるって」

「ああ、覚えてるよ唯ちゃん……だから今、僕に殺されてまで王様を追おうとしてるんだろう?」

「唯ちゃん……アトラ君とそんなことを……?」

以前唯と瑠奈がアトラとシアナと戦った時の約束を知った鏡花。それほどの決意を持って王を倒そうとしているのを見せられれば、鏡花は唯を止めることができなかった。

そして唯は嗜虐的な笑みを浮かべるシアナに気圧されながらも、わざと彼に殺されるのを止めるつもりはなかった。

そう、何か嫌な予感がするのだ。急がないといけないという、漠然とした嫌な予感が。故に、身を滅ぼしかねない行為も唯は取ろうとする。

「それじゃあ唯ちゃん……王様に新年の挨拶でもしてくるんだね!」

「あぅ!?」

突然唯の足元に現れた、唯の身体が丁度入るくらいの大きさの穴。そこにすっぽりと収まった唯は、受け入れたこととは言え、いざ今から殺されるとなると体がこわばってしまう。

「アトラ!溶解液トラップだ!」
「あいよ!ちょっとずつちょっとずつ溶かしてやるぜ!」

「唯ちゃん!」
「だ、大丈夫……!すぐに、王様を追うから……!ん、ぁぁああぁあああぁああ!!!!」

溶解液トラップ。人を少しずつ溶かしていく恐ろしいトラップを受けて悲鳴をあげる唯。
本当ならすぐにでも助けたい鏡花だが、王を追うためにはこうするしかないという現状に歯噛みする。


「うーん、諸々の事情で自分からリョナらればきゃいけない女の子……たまにはアリだな」
「普段は嫌がってるのを無理矢理リョナってるからな。たまには趣向も変えなきゃな」


アトラとシアナが喋っている間にも、溶解液はどんどん唯の体にかかっていく。
溶解液は唯の服を溶かし、パステルピンクの下着(wiki的には唯の下着4と同じやつ)が見え隠れする。
だが、今唯にかかっているのは都合よく服だけ溶かす水トラップではなく、都合よく顔とか胸とかの原型を留めながら相手を溶かして殺す溶解液トラップである。

「ぐ、っぅああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!や゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛!!!ぐ、ゔう゛ぅ゛う゛う゛!」

右腕にかかった溶解液が、ジュウジュウと音を立てて皮を溶かす。反射的に左手で液体を払うも、その間に今度は左肩に溶解液がかかる。しばらく経つとシアナの開けた穴は溶解液に満たされ、唯の体は液に漬かってしまう。

「ぎ、ご、ぉおお……!は、やぐ、ごろじでぇ゛!!ぼ、ぐぅう……!わだ、しは……!おう、ざま゛を……!と……め……」

普通ならばとっくに絶命しているはずの唯であるが、都合よく顔とか胸とかは残す溶解液は、そう簡単に相手を殺しはしない。ゆっくりと、じっくりと相手を溶かし……最期の一瞬まで、相手に自らの体が溶けて消えゆく恐怖を与えるのだ。

387名無しさん:2019/01/03(木) 04:10:22 ID:???
「んむぐっ!?ぐっ、あぁんっ!」
「んむ……!」

アイリスに操られ、アリスの唇を奪ったエリス。その目はいつものエリスの目よりもより一層赤く揺らめいていて、明らかに普通の様子ではない。

(ぐっ……!これは……口から魔力を流し込まれているっ………!)

突然双子の姉妹に唇を奪われたが、そこはアリスも軍人である。
すぐに状況を把握するべく全神経を研ぎ澄ませ、エリスが普通の状態ではないことに気づき、自分が何をされているかまで気づいた。

「ん、あああぁっ!やっ!ふ、あぁんっ!」
「んっ!はむっ……!んんん……!」

なんとか暴れてエリスの拘束を外れようとするが、武術を得意とするエリスの組み伏せをそう簡単には外せない。
口を離してもすぐに元の状態にされ、叫ぼうにも激しい雨が声を遮ってしまう。
キスで完全に虚を突かれ、そのまま寝かされてこの状態になってしまったからには、力での抵抗は無意味だった。

「ひ、ぁ……!ふ、あああぁんっ!」
(……だ、だめ……このまま、エリスに身をまかせては……だめ……)
「……んっ……んんっ……!」

エリスの口から流し込まれる快楽が、アリスの思考をグチャトロに混濁させてゆく。
もはやこれまでか……と思われた。



バチバチバチバチバチッ!!!
「ん゛ん゛ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!」
「ひあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!」

エリスとアリスに電流走る。比喩的なものではなく、正真正銘の電撃である。
雨で濡れた体に強い電撃を浴び、エリスはたまらず唇を離しアリスから離れた。

「あ゛あ゛ぁっ……!はぁ……はぁ……!」
「ぐ……き、貴様ぁ……!」

唇を手で拭い、歯ぎしりをするエリス。電撃によるダメージは両者同じくらいである。

「ふふ……雷式・天迅落破……自分の技を自分で食らったのは……初めてです……」

身動きの取れない状態でアリスが行ったのは、針を自分の体に流し込むことだった。
倒れた時に地面に落ちた針を僅かに動かせる手で掴み、魔力を流し込んで自分の体に刺したのだ。

(流石にエリスに直接刺すのは叶いませんでしたが……私の体を通して感電させてしまえばいいだけのこと……!)

感電で足を震えさせながら立ち上がるアリス。快楽によって体が痺れているが、ひとまず拘束を外れただけでも上出来だ。

「エリス……一体何があったんです……?今のあなたはおかしい……」

「……ふん。流石私の妹だ。だが逃しはしない。ここからは実力行使で行くぞ……!」

「キャッ!」

激しい雨に強烈な風が混ざり始める。
突風によってめくれ上がったフレアスカートをアリスが抑えた瞬間、エリスの手にはテンペストカルネージが握られていた。

「……ナルビアの神風……そうあなたが大衆に呼ばれるようになってから、こうして戦うことはなかったですね。」

「ふん。私の戦い方がわかりやすいから付けられただけの二つ名だ。……言っておくが手加減はしないぞ。」

「……エリス……あなたを操っている不届き者を突き止めるために、こちらも実力行使します。骨の一本や二本は覚悟してください。」

赤と青の視線が混じり合ってしばらくした後、前触れのない大突風がナルビアの街に吹き荒れた。

388名無しさん:2019/01/03(木) 12:40:12 ID:???
威勢よく啖呵を切ったアリスだが、はっきり言って状況は芳しくない。
突然の奇襲で既に少なくない快楽を送り込まれていることも無視できない要因だが、それ以上に……

「行くぞ!お前もあの方に跪くがいい!!」

「くっ……!ぐぅああ!!」

エリスの振るう槍を、素手でいなすアリス。当然その衝撃を完全に殺すことはできず、彼女の繊細な両手は傷だらけになっていく。

「はぁ……はぁ……つっ!痛……!」

「ククク……どうしたアリス?さぁ、得意の針を使ったらどうだ?」

「白々しい……!ほとんど部屋に置いてきたことは知っているでしょうに……!」

そう、アリスが苦戦している一番の要因は、武器不足にある。>>327にあるように、彼女は自分の部屋に愛用武器である針のほとんどを置いてきてしまっていたのだ。

護身用に持ち歩いていたほんの数本しか針を持っていない現状、ここぞという場面以外では針を使うわけにはいかない。
相手がそこらの雑兵であれば、例え針がなくとも負ける気はしないが……ナルビアの神風相手ではそうもいかない。

「そらそらそら!暴風弐連烈!」
「くっ……!碧式・疾風怒涛!」

風に乗りながら双槍を振るって一気に敵を切り裂くエリスの必殺技。素手で防御するのは不可能と見たアリスは、風の魔法が込められた針を投擲して風を相殺する。

(あと、2本……!)

姉妹の風がぶつかり合い、乱気流となって相殺される。風に乗っていたエリスの勢いは落ちたが、彼女の性格ならば、必ずこのまま突撃してくると呼んだアリスは、敢えてその場に留まって迎え撃つ構えに入る。


「嵐の加護がなくとも、我が槍の冴えは変わらん!行くぞ!」

「ええ、私の針術も、この程度の逆境……何でもありません!」

魔法による補助もなく、生身でアリスへ向けて走り出すエリス。

「終わりだ!!」

アリスが槍の間合いに入った瞬間、爆発的な膂力で槍を振るう。それに対しアリスは……

「こういう時、貴女はいつも……左の大振りからですね!」

今までずっと共に戦い続けてきた双子の姉の、些細な癖。普段のエリスであれば「自分の癖が見抜かれている」ことも念頭に置いて戦えただろうが……洗脳によって妹との思い出に陰りがある今のエリスには、それを読むことができなかった。

「くっ、しま……ぐ……がああ゛あ゛あ゛あ゛ぁーーっ!!!」

「あと、1本……!」

エリスの渾身の槍を避けたアリスは、そのままエリスの左腕に針を突き立てた。
針から注入される炎属性の魔法の痛みにのたうち回るエリス。
この意思力の低下も洗脳の弊害だ。常時のエリスならばこの程度の痛み、歯を食い縛って耐え、決して敵に隙を見せないというのに……!

「終わりです……!零式・無間奈落!!」




「ブーメランイーグル!!」

「が、は……!?」

今まさにエリス技を放とうとしたアリスの背中を……突如飛来したブーメランが、深々と切り裂いた。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板