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すぱろぐ大戦BBS・SS投下スレ

1名無しのも私だ:2007/03/22(木) 19:48:03 ID:DIl2PENc
★長編を直接本スレに投下するのがどうも躊躇う。
★原作の設定を改変してみた為、人によって好みが別れそう。
★本スレとは別にこっそりSSを投下してみたい。

そんな時の為のSS投下スレです。

本スレ以外の投下場所として
シャドーミラー システムXN実験所アップローダー
http://www3.uploader.jp/home/kagekagami/
と合わせてご利用ください。

(18禁に抵触しない程度の)直球なエロや暴力表現が含まれる場合は
アップローダーにテキスト形式でUpすると
作品単位で閲覧が出来るので、よりベターかもしれません。
また数レスに跨がる作品も、携帯の皆さんにはロダからの方が
読みやすいようです。

また、本スレにリンクを報告する際は内容及びレス番等も付け加えると親切です。

  例→SS投下スレの100-200にこうへーとエキドナの大恋愛長編を投下してみた。
    http://(略

感想を書き込む事に制限はありませんが、感想の枠を越えて雑談にならない様程々でどうぞ。


注1)いかなるSSも、ここへの投下を強制するモノではありません。
注2)18禁(エロ・グロ)の投下のみ、禁止となります。

16名無しのも私だ:2007/04/09(月) 00:04:45 ID:LBOQlv0o
>>15
4:……

三点リーダやダッシュは二つ一組で使うのが基本なんだとか、真偽は定かではないけど一応報告

17名無しのも私だ:2007/04/09(月) 19:15:56 ID:o6bj4/6M
俺は「1」ですかねえ
どれにしろ多用した文はカッコつけっぽくて苦手ですけど

18名無しのも私だ:2007/04/09(月) 22:36:13 ID:Xx5Sf77I
基本3で、他の方法にしろとイチャモンつけられたら変更するな、荒れると面倒だから
他のスレでは3のまま

19名無しのも私だ:2007/04/09(月) 22:43:31 ID:z0jgpQRk
>>15
めんどいから変換した時に一番最初に出たのそのままで

20名無しのも私だ:2007/04/09(月) 22:44:24 ID:j8PT7DVg
>>16
割と一般的な組版ルールではダッシュ(──)、三点リーダー(……)は
ふたつ一組で用い、分離禁則の対象になる(改行で二つに分かれない)、で正解。
もっとも分離禁則は気にされない場面も多いけど。

三点リーダーの全角中央に配置されるのは和文用なので、
縦組み用を持つ全角を使うのが一般的……であってほしい。

21名無しのも私だ:2007/04/10(火) 17:46:53 ID:cz04Xhs6
論文書くときはダッシュや三点リーダーは2の倍数で用いること、と言われたな。
他にも通常文はいいんだけど、論文だとダッシュやリーダーの後に必ず句点を入れる、とか。
他にもかっこ(「」、『』、()など)を用いる際も、最後に必ず句点とか。


――思い出した。俺の名前は、そう!

『寿限無寿限無五劫の擦り切れ海砂利水魚の水行末雲来末風来末食う寝るところに住むところやぶら小路のぶら小路パイポパイポパイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助だろ。』
「ちょっと待て、それ俺が名乗る名前!
 なんで皆で合わせてんのよ! それも一部舌かんでるし!」

ってな風に。

22名無しのも私だ:2007/04/10(火) 17:50:37 ID:cz04Xhs6
あ、>>21のダッシュやリーダーの後の句点。っていうのは文末にダッシュやリーダーがあった場合ね。
あとダッシュダッシュと言っているせいか。
『ダッシュ四駆郎』が『――四駆郎』と脳内変換されてわけわかんね。

23名無しのも私だ:2007/04/10(火) 20:34:12 ID:aK7iFxoQ
>>22
ダーシとも言うので使い分けると良いかも。
あと、疑問符、感嘆符の後の全角アキてのも意外と浸透してなかったり。

日本語の組版(記述)にはスタンダードなルールがないといわれているけど、
日本エディタースクールの冊子は良くできていて参考になる。
少々古い内容も含むけど。

24名無しのも私だ:2007/04/17(火) 02:18:16 ID:83zNULoA
本来は禁則ルールなのかもしれないが、
ただの無言の場合は「……」で、何か含んだ様子の無言は「……。」と使い分けている

25名無しのも私だ:2007/04/24(火) 00:10:19 ID:v/a9mm82
自分の場合は
「……」と「……っ」
ってしてる

26名無しのも私だ:2007/05/02(水) 03:05:44 ID:hKouTZaw
誰かを守るために、誰かを殺す。
自分が生きるために、違う誰かを殺している。
家族や大切な人を守るために、違う家族や大切な人を殺してる。
俺は……、なんのために戦っているんだ?


トウマ「ハァ……」
クォヴレー「どうした、トウマ?浮かない顔をして」
トウマ「いや、ちょっと考え事をな」
クォヴレー「考え事?」
トウマ「ああ、なんで俺達は戦っているのかと思ってさ」
クォヴレー「平和を勝ち取るため……。そのような大義名分を掲げているな」
トウマ「でもさ、平和を勝ち取るために、誰かを殺してるんだよな。」
クォヴレー「ああ、戦争だからな。」
トウマ「向こうもさ、多分大義とかさ色々あって戦ってると思うんだ。
俺達と同じように向こうの平和にさ。」
クォヴレー「向こうには、向こうの大義があるからな。
それが食い違うから戦争がおきてしまう。」
トウマ「俺と同じように、向こうにも家族とか好きな人とか友達とかいるんだよな。」
クォヴレー「ああ……」
トウマ「俺って、そんな人を殺してるんだよなとか思ったらさ、
なんか頭ん中で色々考えちまってよ……」
クォヴレー「……では、戦うのをやめたらどうだ?」

27名無しのも私だ:2007/05/02(水) 03:06:01 ID:hKouTZaw
クォヴレー「戦わなければ、誰かを殺さずにすむぞ
なにも、前線で戦うことだけが戦争ではない、銃後の支えも大事な戦いだ」
トウマ「……。」
クォヴレー「だが、トウマ、お前には戦う力がある。守れる力がある。
確かに、俺達は誰かを殺し、誰かの家族や大切な人を奪っているかもしれない……。
だが、それは向こうも同じだ。何かを守れるために、こちらの大切なモノを奪って行く。
それをさせないために俺達は戦っているんじゃないのか?
大切な誰かを守るために戦ってるんじゃないのか!?」
トウマ「大切な……、誰か……。」
クォヴレー「俺は作られた存在だった。戦うために生まれた存在だった。
だが、今は大切な仲間を守りたいと!友を守りたいと思い戦ってる!
その大切な仲間のために俺は戦う、それが俺の戦う意味だから」
トウマ「戦う意味…」
クォヴレー「お前は何のために今まで戦ってるきたんだ?
大切な誰かを守るためじゃなかったのか?」
トウマ「(そうだ……、俺はあの時、力が無いのが悔しかった。
目の前にいる女の子1人助けられない自分に腹が立った。
守りたいと、守るために戦いたいと強く思った。
だから……、俺は戦ってるいるんだ……)」

28名無しのも私だ:2007/05/02(水) 03:07:39 ID:hKouTZaw
トウマ「スゥ〜〜〜〜〜〜!ハァ〜〜〜〜〜!!
ヨッシャ!なんか吹っ切れた!」
クォヴレー「そうか……」
トウマ「確か、俺はこの戦争で何人の命を奪っている。
でも……、それでも守りたいと思う物がある。
その何かを守れるために、俺は戦うんだ!
この気持ちは揺るがねえ!」
クォヴレー「今思いっきり揺らいでいたじゃないか」
トウマ「ぐっ……!言うなよ……」
クォヴレー「冗談だ。」
トウマ「くぉの野郎!」
クォヴレー「フッ……」
トウマ「クォヴレー……」
クォヴレー「なんだ?」
トウマ「ありがとな」
クォヴレー「どういたしまして」




無駄に長くなった
そして、本スレの空気の壊したくないんでこっちに投下してみた

29名無しのも私だ:2007/05/10(木) 22:31:09 ID:FePUrKcA
続々々々々・イングラム先生のお悩み相談室。
アクセル隊長の悩み、及びエキドナ更生。

30DoLL:2007/05/10(木) 22:33:25 ID:FePUrKcA
――居酒屋ハガネ
「しかし、客の入りが悪い店ですな。こうも閑古鳥が鳴いては、赤字経営なのでは?」
「はは、なに。儂とて、本業を疎かにするつもりはない。半ば道楽商売だ」
 今日も居酒屋に入り浸る先生は大将であるダイテツ=ミナセと雑談をしていた。ここ最近は相談室を訪れる人間は居らずに開店休業状態が続いている。
「何とも勿体無い話ですね」
「構わないさ。儲けなどは考えておらんよ」
 これだけ上質な酒と料理を振舞う店が繁盛しないと言うのは信じられない。しかし、ダイテツが趣味でこの店を経営していると言うのならそれも考えられる話だ。
 艦長職の片手間の商売ならば、逆に繁盛してもらっては困るのかも知れない。そしてその構図は先生にもそのまま当て嵌まるのだ。
「まあ、ほどほど忙しいのが望ましいが、余り暇が過ぎるのも考え物だがな」
 大将はコップに注がれた日本酒を飲みながら笑う。イングラムはその大将の仕草に相槌を打ちつつ、肴に箸を伸ばした。
――ガラガラッ
 ……そんな折に居酒屋の引き戸が開かれる。新たな客が入店して来た。
「噂をすれば影だな」
 大将はそんな事を漏らしながら、接客に動き始めた。

「……む?」
 スッ、とイングラムの横の席に客が座ろうとする。店内には他にも大量の空席があるのに、敢えてそうするこの客に先生は思う所があった。

「隣の席、座っても良いだろうか?」

 そうしてその客は少し遅れてイングラムに了承を取り付けてきた。
 少ししゃがれた癖のある声。覗き込むその顔は美形と言って差し支えない部類に入る。若干垂れた眼と、そこに輝く瞳は髪色と同じくすんだ赤色だ。
「ああ。構わない」
 これはどうも間違い無いらしい。久方振りに迷える子羊が先生の下を訪れた。その客の名はアクセル=アルマーと言った。

「いらっしゃい。随分と顔を見せなかったじゃないか」
「最近は忙しかったから、来る機会を得られなかったんだ、これがな」
「で、今日は何にする?」
「そう……島酒。青龍をロックで」
「うむ。つまみは?」
「イカの沖漬け」

「ほう」
 会話を聞く限り、アクセルは何度かこの店に顔を出した事があるらしい。……実にキャッスルヴァニアだ。
 今迄面を合わせた事は無かったが、幸運にも今回その機会に恵まれた。

「……さて」
「?」
「お初にお目に掛かる。イングラム少佐、俺はアクセル……」
「自己紹介は結構だ。要件だけを聞こう」
 酒の入ったグラスを傾けつつ、イングラムはアクセルの事を盗み見た。……この男の事は報告書を読んで知っている。
 シャドーミラー所属の特殊処理班隊長。Wシリーズを統べる者にして、戦士としての己に誇り持っている男。
……しかし、次元転移実験の失敗により一時期記憶を失い、壊れてしまった時期が数ヶ月あったらしいが。
「流石は少佐、話が早い。当たりを付けて、ハガネに来た甲斐があった」
「御託は良い。お前の持つ悩みとやら……聞かせてみろ」
 先生にとっては久方振りの客だ。辣腕を振るいたくて居ても立ってもいられないかった。指揮系統が違うのか、アクセルは敬語を使う素振りは見せなかった。無論、先生はそんな事は気にはしない。
「っ、ゴホン!それじゃあ、本題に入らせて貰うんだな」
 イングラムの放つ無言のオーラに気圧されたのだろうか?アクセルは咳払いをしつつ、己が抱える悩みを打ち明けた。

「俺の悩みは一つだけ。部下との温度差を埋めたい」

31DoLL:2007/05/10(木) 22:36:08 ID:FePUrKcA
「む」
 中々に難しいお題をふっかけられた。どうやら、アクセルは自分と部下の間に溝を感じている様だ。
「こんな事は自分で処理しなくてはならない問題なのだろうけど、情けない事に俺はそれにどう対処して良いか分からない。だから、少佐に助言を貰いに来たんだな」
「成る程。お前と部下の間には軋轢があるのだな。……お前の部下と言うのは、Wシリーズと考えて良いのか?」
 軍隊だろうが私企業だろうが、人の上に立ち、指導する者は労務管理の責を負う。アクセルが持ちかけるのは中間管理職が通らねばならない気苦労の縮図だった。
 そう考えると、アクセルが普段どれだけの精神的疲労を負っているのかは想像に難くない。……イロモノ揃いのWシリーズの現場監督、及び指揮はさぞ大変なのだろう。
「ええ。……別に、そいつ等全員と仲が悪い訳じゃない。俺の手に余るのはたった一人だけなんだな」
「一人だけ?」
 イングラムは酒を呷りながら考えた。自分が知っている限り、思いつくWナンバーズは三人だけ。
 ウォーダン、エキドナ、ラミアの三人。そのどれもが一筋縄ではいかない人外だ。
「そう。……エキドナ=イーサッキ。彼女の事を相談したい」
「エキドナ、か」
 Wナンバー16。レモン=ブロウニングが開発したWナンバーの中で取り分け完成度の高い一品。
 人形としての自分に誇りを持ち、与えられた命令をこなす事こそが至上だと考えるヒトガタの見本品だ。
 アクセルは彼女の事が重荷になっているらしい。
「それで……お前はあの人形に何か不満があるのか?」
「ああ。ある」
 わざと人形と言う部分を強調して言うと、アクセルは若干だが眉間に皺を寄せた。
「それは何だ」
「備品としてエキドナを扱うのなら、彼女以上に扱いやすい道具はない。俺も、最初はそのつもりで扱っていた」
「今は違うと?」
「……確かに、彼女はどんな命令にも従うし、逆らう事も無い。昔はそれで良かったが、今は違う。俺の部下の中でエキドナだけが浮いているんだ」
 話を聞きながら、イングラムは愛用のオイルライターを取り出し、煙草を咥えた。話を聞く時に煙草を吸うのは先生のセオリーだ。こうして、煙草をふかす間は相手も声が良く聞こえるのだ。
「ふむ。それでお前は何が不満なんだ?」
「それは……」
 煙草の煙を吹きかけると、アクセルは少しだけ煙たそうな顔をした。こうして少しずつ相手の心を裸にしていくのは先生にとっては堪らない瞬間だ。
 そうしてイングラムの目論み通りにアクセルは動いた。
「彼女だけが変わらない。それが今の俺には許容出来ないし、エキドナにとっても良い事であるとは思えないんだな、これが」
「ハッ……成る程」
 その言葉でイングラムはアクセルの胸中が判った。それは裏を返せば、アクセル自身がエキドナを人形として扱う事を嫌っていると言う事に他ならない。
「お前も丸くなったものだな」
「かもしれない。でも、今はそれで良いと思っている」
 どうやら、頭を打った事でアクセルは人としての重要な部分を取り戻したらしい。そうでなくてはそんな台詞は出て来ないだろう。
 自分自身が変化し、同じ人形として創造されたラミアでさえ自我らしきものに目覚めている。ウォーダンについては知らないが、きっと同じ状況に居るのだろう。
 そんな周りの変化に反する様に変わらずに居るエキドナが今のアクセルには許せないのだ。例えそれが勝手な言い草だとしてもだ。

「……良く判った。確かに、お前が焦るのも尤もだし、荷が重いのも事実だろうな」
「少佐?」
「直接、俺がエキドナに話をしよう。アポを取り付けられるか?」
「ええ!?い、いや……流石にそこまでは宛てには」
 これ以上の状況の変化を望むのなら、イングラムはエキドナに直接合わねばならない。
 先生が言った言葉に面食らったアクセルはブンブンと首を振るが、先生はそれは突っ撥ねた。
「ふふ……俺を頼った時点で既にアウトだ。まあ、悪い様にはしないから、俺に任せてくれ」
「そこまで言うのなら……むう、本当に信じて構わないんだな?」
「無論だ。こちらには切り札もあるのでな。……注文が来ないようだな。俺の酒でよければ飲むか?」
 先生は自身満々に頷き、自分の酒をアクセルに勧め始める。……先生は機嫌がとても良い様だ。久々にやってきた鴨を逃したくない心が先生を突き動かす。
「はあ……それじゃあ、お言葉に甘えて」
「煙草も吸うか?」
「あー、自前のがあるから、結構」
「……そうか」
 イングラムは本気で残念そうな顔をした。案外、先生は友達が欲しいのかも知れない。
 ……その後、二人は看板になる時間まで酒を飲み続けた。

32DoLL:2007/05/10(木) 22:44:35 ID:FePUrKcA
――数日後 イングラム私室
「む、来たか」
 チャイムの電子音が来客を告げていた。イングラムは書類整理を切り上げて、マイクに向かって返事をする。
「開いている。入ってくれ」
 そうして、来訪者は無駄の無い動作で室内に入ってきた。
「失礼する」
 来客の名はエキドナ=イーサッキ。先日、アクセルの口から語られた、彼にとっての目の上のたんこぶだった。
「ああ。態々来て貰って済まんな」
「・・・」
 別段、エキドナはイングラムの下を訪れる用事等は無い。それでも、彼の部屋を訪れたのは隊長であるアクセルの口添えがあってこそだろう。
 むっつりと黙りこくり、顔色一つ変えないエキドナは出来の良い人形の様にイングラムのデスクの前に突っ立って居た。
「成る程。話には聞いていたが、あの男が気にかけるのも頷けるな」
 先生は品定めでもするかの様にエキドナを見やった。
 薄桃色の短髪に何も映しては居ない様な翠色をした瞳。女性の性を強調する様な大きな胸や腿のラインは官能的。
 太腿に凶器がある際どい装いから覗く肌は真っ白で、血が通っているのかが疑わしく思えてくる。
 確かに、芸術品としてみれば一流かもしれない。だが、その外界の変化を認識していない様な硬い美貌はじっと眺めていると魂を凍えさせる様な冷たさがあった。
 少しだけ、アクセルの気持ちが心の底で判った気がした先生だった。
「……?」
「失礼した」
 あまりにもジロジロ見過ぎてしまったのか、エキドナは表情を変えずに、それでも怪訝な視線をイングラムに送った。それに対しイングラムは素直に謝った。
「さて、単刀直入に本題だ。お前が此処に呼ばれた理由……検討は付くか?」
「私には解らない。ただ、隊長の指示で貴方に会えとだけ言われてきた」
 鉄面皮を超えた能面じみた表情だった。それには先生とて苦笑を隠せない。
「アイツらしい簡潔な物言いだな。……エキドナ=イーサッキ」
「何か?」

「お前には生活態度を改めて貰おう」

 だが、ここまで来てしまった以上は後には引けない。成功しようが失敗しようが、何らかの結果を残さねばイングラムは自分自身で納得出来ない。
「仰る意味が良く理解出来ない」
 そうして、一切の迷い無く言った台詞はエキドナには理解出来なかった。
「……解り易い様に言い直そう。お前のその人形の様な振る舞いを治して欲しい」
「拒否する」
 イングラムは子供でも解る様に言葉を選び、再び言ったが、今度は真っ向から拒絶された。どうやら、中々の強敵らしい。
「何故だ?」
「必要性を感じない。私は人形として創造された。それを否定する事は間違っている」
「ほう」
 漸く、エンジンに火が入った気がする先生。この手の超然とした輩を論破し、凹ませるのは先生の得意と致す処なのだ。
「つまり、お前はその生き方が気に入っている訳か」
「気に入るも気に入らないも無い。それが私に許された唯一の生き方だ」
「許された?それは誰によってだ」
「無論、レモン様に」
 淡々と事務的に会話するエキドナからはやはり感情の揺らぎと言ったモノは感じられてこない。だが、彼女を揺るがす足掛かりを見つけ気がする先生はほくそ笑む。
 創造主であるレモンの名を口にした時、エキドナの瞳は輝いた気がした。
「ああ……レモン=ブロウニングか」
 面識は無いが、イングラムもその名は知っている。シャドーミラーお抱えの科学者にして、パイロットでもある女傑。アクセルの恋人にしてWシリーズの生みの親。
 エキドナはレモンに兵士として生み出されたのだ。
「で……その女に許された生き方だから、お前はそのレールの上を行くのか。では問うが、お前と言う存在は何なのだ?」
「シャドーミラーの為に生み出された人形。そしてその戦力を担う一兵士に過ぎない」
 文句の付け様の無い位に模範的な回答だった。案外、生まれた時にその様に調整が施されたのかも知れない。
「オリジナリティの無い答えだ。そうやって感情が無い様に振舞った処で、優秀な兵士とやらにはなれるものか?」
「勿論だ。兵士に感情は不要。機械と化し、与えられた命令を処理する事こそが至上」
「ふ、ふふっ……!」
「む」
 イングラムはその台詞が可笑しくて噴出してしまった。
 そのエキドナの様子が、嘗て別の世界であったゼロの名を冠する機体に乗る少年パイロットに似ていたのだ。
 そんな先生が不気味に映ったのか、エキドナは軽く警戒した。

33DoLL:2007/05/10(木) 22:47:17 ID:FePUrKcA
「矛盾だな」
「何?」
「そうだろう?機械と化す……等と言ったが、お前は本当にそんな事が可能だと思っているのか?」
「……ああ」
 頭に浮かぶ言葉のままにエキドナに語るイングラムは真面目な視線を突き刺す。少しだけ間があったが、エキドナはその言葉に頷いた。
「無理だな。お前は逆立ちしたって機械には成れんよ」
「それは、どう言う事だ」
 が、先生はエキドナを否定した。何故こうも自信たっぷりに言えるのかが解らないエキドナは当然の様に聞き返す。
 気のせいかもしれないが、エキドナはムッとしている気がした。
「機械に成るにはお前は余りにも人間に近過ぎると言う事だ。お前の言う通り、戦うだけの機械が作りたいのならば、人間を雛形にする事等あるまい?」
「・・・」
 幾ら機械となる事を望んでも、人の形をしている以上はその時点でそうなる事は不条理であり、また不可能な事だとイングラムは言いたいらしい。
 エキドナは何かを考えている様に口を噤んでいた。
「仮に、お前が機械に成れたとしてら、その時点でもうお前は兵士ではない。銃器や戦車、PTと変わらない備品に過ぎんな」
 兵士である条件は人間である事だ。戦う為に国や軍隊などの組織に編入される人間を兵士と言う以上、エキドナの言は矛盾しているのだ。
「お前は根本の部分で間違えていないか?」
「な、何を……」
「何故、お前が人に似せられているのかと言う事だ」
 漸く、エキドナに揺らぎが見られ始めた。先生は言葉を紡ぎ続ける。
「レモンやヴィンデルが戦力を欲していたと言うのなら、お前やラミアの様なバイオロイドを作る必要等無い。それこそ、戦闘用のAIだけで事足りる筈だろう」
 その程度の技術力はシャドーミラーとて持っている。だが、エキドナは人造人間と言う指摘がなければ何処からどう見ても人間なのだ。

「それは……レモン様やヴィンデル様の趣味だと」

「ああ。その可能性もあるな。と言うか、水を差さんで貰おうか」
 やっと人間らしい反応が返ってきた。エキドナは真面目に反応しただけなのだろうが、先生にはそれが改心のボケに映ってしまった。

「憶測でモノは語りたくないが、きっとあの女は……人間を作ろうとしていたんだろうさ」
「レモン様が?」
 そんなエキドナの言葉を無視し、先生は心に浮かんだ仮説を口にしたそして、それは恐らく真実でもある。
「そう考えなくては辻褄が合わん。お前はコレでもかと言う位に生体部品が使われ、人脳もほぼ完璧に再現されているからな」
「私が……人間を目指して?」
「人間などと言う不合理、且つファジーな存在を態々を創るのは本当に骨が折れる事だろうよ。そんな不確定要素の塊さ、お前は」
「・・・」
 調達も難しく、コストも掛かるであろうパーツを組み合わせ、創られたエキドナ。レモンがどんな意図で人間を創ろうとしたかは本人にしか解らない事だが、彼女の目論見は上手くいったのだろう。
 心と言う一点を除けば、エキドナは人間と言って差し支えない。そして、その唯一の問題も解決しつつあった。
「な?最初から矛盾点はあっただろう。……が、聡明なお前はその事に気付きながら、それを考えない様に努めていた筈だ。違うか?」
 イングラムはエキドナの本質を見抜いた。人形に徹しようとしているのは、彼女がその生き方しか知らないからではない。
 自ら意志する事を放棄し、楽な生き方を選んでいるだけだ。流されていると言っても過言では無い。

34DoLL:2007/05/10(木) 22:50:46 ID:FePUrKcA
「もう一度だけ問おう。お前は人形なのか?」
「わ、私は……」
 詰めの段階迄後一歩。先生は揺らいで、不安定になっているエキドナに尚問い続けた。
「お前もラミアと同じく、人格プログラムはインストールされている筈だ。何故、それを眠らせておく?」
「そんなものは……所詮は対人オプションに過ぎないモノだ」
 イングラムはエキドナの凍えた魂を励起する様に語る。彼女は心が無い訳ではない。意図的にそれを抑えているだけだ。
 だが、エキドナにも意地があるのだろう。今迄そうして生きて来た彼女のプライドが最後の壁となり立ちはだかる。
「それがどうかしたのか?」
「え?」
 予想していた答えにイングラムは前もって考えていた台詞で躊躇無く返した。エキドナの目が点になる。 
「例え作り物だとしても、贋物だとしても……お前にとってはそれが心だ。そうして、そんな心があってこそ、新たに開ける世界があるんだぞ」
 イングラムは既に勝ちを確信していた。
「どうして……そんな事が貴方に言える?」
 エキドナは追い詰められられながらも何とか体裁を取り繕おうと必死だった。最早そんな事をしても何も変わらないと言う事にも気付けていなかった。
「それは、言えるさ」
「どうして……」

「俺もまた、ユーゼスによって創られた人形だったからだ」

 切り札を持ち出した先生は笑う。
 細部は違うが誰かに創られたと言う部分では自分もエキドナも変わりは無い。その自分が変われたのだから、お前が変わらない道理は無い。
 ……そう先生は信じたい。
「そう言う、事……か」
 それを突きつけられたエキドナは漸く先生の言葉を信じる気になった。
「幸運な事に俺は心に目覚め、奴の呪縛はほぼ振り切ったがね」
 細かく見なければ解らないが、エキドナの瞳は確かに笑っていた。
 表情は固いままだったが、それはエキドナが人形で居る事を放棄した証の様に先生には感じられた。

「どうすれば……良いんだ?私は」
「簡単だ。お前のしたい事を行えば良い」
 エキドナは生きる為の標を欲していた。今迄眠らせていた自分の心をいきなり使おうとするのは無理がある。そうでなくても人形として生きて来たエキドナにはその生き方が染み付いているのだ。
「・・・」
「そう言っても、いきなりは難しいか。ふむ……」
 イングラムは至極単純に言ったがそれが難しいエキドナは俯いてしまった。そんな頼りなさげなエキドナを正しく導いてやる為にイングラムは煙草を咥えて思案を始める。
 そうして、咥えていた煙草を吸いきったと同時にイングラムの頭にはある考えが浮かんできた。
「今回の事はアクセルに泣きつかれて引き受けた事だ」
「隊長が私を?」
 それはアクセル=アルマーを引き合いに出す事だった。
「うむ。それだけ……お前の事を心配していると言う事さ」
「あ……っ」
 今、確かにエキドナの瞳が泳いだ。頭の中でアクセルの顔を思い浮かべたに違いない。先生はエキドナに止めを刺した。
「今、アイツの顔を想い描いたな?」
「そ、そんな事は……!」
 言葉では否定していても、その反応は明らかに狼狽している事を示している。後は簡単だった。
「暫く、アクセルの側に居る事だな」
「なっ」
 その先生の台詞の意図が理解出来ないのか、エキドナは面白い顔を晒し、声を詰まらせる。
「先ずは自分の為ではなく、アイツの為にしてやれる事を見つけろ。そうすれば、自ずと自分の欲望もハッキリして来るだろう」
「そ、そんな恐れ多い事は」
「アイツはお前の事を嫌っていない。お前もそうだ。恐れず、喰らい付け。案外、向こうもそうして欲しいと思っているかもな」
 イングラムが甘い毒を吐き、エキドナの心を冒した。
 アクセルはエキドナをもう人形とは見ていないだろうし、エキドナだってアクセルをただの上司以上に慕っている。先生は彼らを一目見ただけで理解したのだ。
「……解り、ました。そうしてみる」
 どれだけ固く自我を否定しようとしても、頭の中に慕っている人物が居るのならば、それが堤を決壊させる亀裂となる。
 そして、エキドナもその例には漏れなかった。
「まあ、気長にやってみれば良い。お前の妹だって出来た事だ。お前も、変われるさ」
「W17……いや、ラミアの様に?……そう、成れるだろうか」
「今、お前はそれを望んでいる筈だ。それだけでも大した進歩だよ」
「……ありがとう、少佐」
 人を変え、叶えるのは自分自身の意志があってこそだ。その一歩を踏み出したエキドナは大きく変われる可能性を秘めている。
 エキドナはイングラムの言葉に感銘を受けたのか、何故か頭を下げて礼を述べていた。
「話は以上だ。ご苦労だったな」
 先生は久方振りの勝利に酔い、相談室の幕は閉じられたのだった。

35DoLL:2007/05/10(木) 22:53:31 ID:FePUrKcA
――数日後 BAR ヒリュウ
「創り手の意思に委ねられた生き方に身を投じるのも間違いでは無いのかも知れない。だが、エキドナにとって不幸だったのは、人形を人たらしめる要素を持っていたと言う事だな」
「そうね。そう言う点では私やラミアもまた同じね。無論、貴方もだけど」
 珍しくイングラムはヴィレッタに声を掛け、酒場の定位置で今回の瑣末について語っていた。
 創られた者の在り方の是非を問う訳ではないが、先生はその事を自分の片割れにも話しておきたかったのだ。
「誰かの都合で創られ、勝手に使われる生き方には華なぞ無い。未だ、エキドナはそれを理解するレベルには至っていないだろうがな」
「それはきっと時間が解決するでしょう。貴方がした事にはきっと価値があるって私は思うわよ」
 そう言って笑いかけるヴィレッタは微笑んでいた。人に似た存在であるエキドナはどう頑張っても人間になる事は無い。
 だが、それでも人の心に目覚めたのなら、その生き方に何らかの意味を見出す事は出来る。きっと、それが真実だ。

「お前はどうなんだ?」
「私?」
 若干、緊張した面持ちでイングラムはヴィレッタを見た。今迄聞きたかったが聞けなかった事をこの場で言おうとしていた。
「そうだ。俺はこの通りだが、お前もまた他人の都合で創られた。良かったと思うか?生まれて」
「・・・」
 突然振られた真面目な話題にヴィレッタは目を細め、少し考えた。そうして、一分ほど考えた後に、自分のグラスに満たされた褐色の液体を啜り、こう言った。
「ええ。勿論、そう思っているわ」
「それは……何故」
 その台詞が出る迄の空白が気になったイングラムは聞き返した。
「確かに、煩わしい事も腹が立つ事も沢山あるわよ?でも、それ以上に楽しい事や可笑しい事だってある。生きてないと、それは味わえないでしょう?」
「む……」
「こうして……貴方と一緒にお酒も飲める。それで十分じゃないかしら」
「はは、そうだな。その通りだ、ヴィレッタ」
 クッ、と笑いイングラムは納得した。 
 如何に使命を与えられて創られた存在と言えど、被造物である以上は確実に創造主の思惑を超える行動を取る事は神話の時代からのお約束だ。
 実際に、イングラムは別の世界でそれをやってのけたのだ。イングラムのクローンとして生み出されたヴィレッタもまた、同じなのかも知れない。
 こうして、酒を飲みながら取り留めない話で盛り上がっている実情を見ればそう考えざるを得なかった。

「で、お前はどう思うんだ?アラド」
「俺っスか?」
 イングラムの僚機であるアラドもまた、さっきから隣に控えていた。今迄会話の輪の中に入れなかったアラドは漸く巡って来た発言の機会に面食らっていた。
「えーっ、と……そうっスねえ」
 カルピスサワーの入ったグラスを揺らしながら、頭を回転させるアラドの顔は真剣だった。
「俺には難しい理論とかは解らないですけど」
「ああ」
 やっと自分の言葉を脳内で紡いだアラドはキリッとした顔付きでそれを言う。
「生きている以上は……それで良いんじゃないですか?」
「それは、どう言う事かしら」
「いえ、そのままの意味っスよ。酸いも甘いも噛分けるのは命あってのものだねでしょう?今を生きている事以上に重要な事はないと思うっス」
「ふふ……なるほど、ね」
 可愛い顔をして随分と核心に近い事を言ってくれると思うヴィレッタだった。
 全ては生きていると言う前提で始まっている。そして、生きると言う事は変わると言う事だ。人の心を持つのならば、その真理には抗えない。
 エキドナや自分達に限った話ではないのだ。
「貴方も変わったのね。少し、貫禄が出てきたんじゃないの?」
「いやあ、全然っスわ。でも大尉がそう思ってくれるなら、師匠の教育の賜物って事で」
 素直に賞賛したヴィレッタにアラドは照れ隠しする様にグラスを呷った。案外、褒められて恥ずかしい年頃なのかも知れない。
「……ですってよ。お兄ちゃん」
「そう思うだろう?実際、まだまだ仕込み足りないがな」
「いいっ!?か、勘弁して下さいっスよ……!」
 イングラムの口元はくの字に曲がっている。アラドは様々な技術や知識を青ワカメに植付けられていた。
 それがどんな代物かは本人達以外には解らないが、アラドの顔を見る限りは真っ当では無いモノで間違い無い。
 ヴィレッタはそんな歪な師弟関係を否定する気は無かった。

 そして……

36DoLL:2007/05/10(木) 22:56:22 ID:FePUrKcA
――一ヶ月後 アフリカ アースクレイドル
「あの……た、アクセル隊長」
「ん?ああ、エキドナ。どうかしたか?」
「コーヒーを淹れたのですが……宜しければ、隊長に」
「俺に?……ああ。有り難く貰おう」
「は、はい!暫しお待ちを」

「上手くやれている様だな。しかしあの女、あんな顔も出来るのか」
 余りまくっている有給を消費し、この世界でのシャドーミラーの活動拠点にやってきた先生。その目的は一月前に世話を焼いたアクセルの仕事現場を見学する事だった。
 そうして、物陰から覗いた光景はそこそこに満足のいく成果を示していた。アクセルには刺々しい部分は見えない。エキドナも多少ぎこちない部分が残っているが、上手く歩み寄れている。
「イングラム=プリスケン。貴方に会ってから、あの娘は変わったわ。一体、どんな魔法を使ったのかしら?」
「ここ最近、隊長がエキドナに付きっ切りで寂しいですたい。何をしたのか白状して欲しいですのぉ」
 先生と同じくその光景を盗み見ていたレモンとラミアが少し怖い表情をしながら、問い詰めて来る。
「俺が何をしたと言うのだ?……出来る訳が無いだろう」
「「・・・」」
 取り合うのも馬鹿らしいのでイングラムはすっ呆け様とした。だが、そんな事で女二人の追撃をかわす事は出来なかった。
「そんな顔で睨まないでくれ。ただ、何時もの様に得意のイカサマトークを炸裂させただけだ」
 どんより濁った鈍色の視線に冷や汗をかきつつ、先生はそれだけ言って再び視線をアクセル達へと向けた。

「少し薄めだけど、良い香りなんだな、これが」
「あ、有り難う御座います」
「礼を言うのはこっちだ。俺の為にありがとうな」
「あっ……隊長//////」

「ほう。あそこで頭を撫でるとはやるな」
 ……あんな光景を見れるとは、アフリカくんだりを決行したのも無駄ではなかったのかも知れないと先生は思った。
 爽やかな笑みと共にアクセルがエキドナのおかっぱ頭を撫でている。その優しげな手付きにエキドナは顔を紅潮させて身を捩っていた。
 とてつもなく嬉しそうなエキドナの変貌振りには驚かされる。少なくとも、過去のエキドナには絶対出来ない反応だった。
「アクセルは女の扱いは得手、なのか?」
「さあ?どうだったかしら」
 その旨をレモンに聞いてみると、彼女は面白く無さそうに呟いた。
「どうした、レモン=ブロウニング。眉間に皺が寄ってるぞ」
「複雑なのよ。あの娘が自分の意志を持ってくれたのは嬉しいけど……ね」
 成る程、とイングラムは納得した。成り行きの関係だと言っても、アクセルとレモンが付き合っているのは事実だ。
 それなのに自分の娘と言っても過言ではないエキドナと懇ろに成りつつあるアクセルに色々と想う所があるのは間違い無い。
 ひょっとしたら、裏でアクセルはエキドナを仕込んでいるのかも知れない。
「くやしい……!でも……エキドナに嫉妬しちゃう!」(ビクッビクッ)
「ラミア=ラヴレス。お前は再調整を受けろ」
 ……どれだけ、根拠の無い仮定を頭に浮かべても、真実を知るには今の距離では無理だった。
 取り合えず確かなのは、ラミアがおかしいのは言語機能だけでは無いと言う事だ。

「お前達……仕事をしろ」
 シャドーミラーの責任者であるヴィンデルは不機嫌そうに言葉を放ったが、レモンもラミアも全く聞いてはいなかった。
「ま、良いんじゃないのか?」
 何とも平和な会話で涙が出て来る。これが闘争の永続を願う軍隊の中身だと言うのだから、大層悪い冗談の様な気がしてくる先生はヴィンデルの肩にポンッ、と手を置いた。
「良くないわっ!この青ワカメ!」
 誰からも相手にされない緑ワカメを慰める青ワカメ。……どうやら、ワカメ同士の友情を育むのは難しいらしかった。

37名無しのも私だ:2007/05/10(木) 22:59:18 ID:FePUrKcA
投下終了。駄文失礼。
潤いのある生活を…潤いのある生活をこうへー様に!

今回のssは我らが神、こうへー様への供物であります!
出過ぎた真似をしてしまって申し訳ありませんでした!

38こうへー ◆TGSuPaUPbs:2007/05/12(土) 23:34:48 ID:KD/SUTlY
萌えスレで紹介されてたので駆けつけたらフォォォォ!!!
イングラム先生!!エッキドナ!!エッキドナ!!

くやしい……!でも萌えちゃう!(ベルグバウッ)

ただ1つ指摘させていただくのは神という言葉はID:FePUrKcA氏のように
新しいモノを作る人のことを指しているのだと思いますよ。

このSSを是非すぱろぐで紹介させてください!お願いします

39FePUrKc改め音ゲーマー:2007/05/13(日) 02:44:50 ID:MBvj55dM
こうへー様直々の返信、恐悦至極です!
しかし、私が思うにこうへー様こそが神であられると思います。
一年以上すぱろぐを存続し、守ってこられた御身の偉業は私に出来る事ではない故に。

すぱろぐで取り上げるとのお話ですが、是非お願い致します。
少なくとも13作までは作り続ける所存ですので、これからも宜しくお願い致します。

……本当はエロを書きたいんですけどね。需要があって、気が向けば。
それでは失礼します。

40こっちみんな係A:2007/05/21(月) 00:10:35 ID:ZWwwg/9s
長ったらしいのを書いてみた。三点リーダの多さはご愛嬌。
早朝から電波受信して推敲して
昼から仕事挟んでここまでかかってしまった。俺乙。

カズマとお色気担当2名の絡みです。
システム起動するかしないかのエロさのはず。いや、俺だけか。
影鏡にうpしときます

ttp://www3.uploader.jp/dl/kagekagami/kagekagami_uljp00118.doc.html

疲れた。

41こっちみんな係A:2007/05/22(火) 21:13:14 ID:ZWwwg/9s
なんか自分の付けたのより的確かつ(・∀・)イイ!!なタイトルがついてた罠。
こうへーさン、ありが㌧乙です

42再会:2007/05/25(金) 20:42:22 ID:Eci6/8U6
「いや〜アポ無しで悪いね。こっちも急に頼まれたからさ」
「このぐらい問題ないわ」
此処アシュアリー・クロイツェル社の一室で、一組の男女が会話している。
女性の方はカルヴィナ・クーランジュ、男性の方はアクセル・アルマー
アシュアリー・クロイツェル社はアル=ヴァン・ランクスとカルヴィナ・クーランジュが戦後に立ち上げた会社だ。
当時は風当たりが強かったが、最近になって落ち着いてきた。今、新機体のトライアル直前で他の会社に負けじと、出展機体を開発している。
開発している機体はフューリーの機体をベースにしているので、ウケは良くない。しかし、他の機体では出来ない柔軟な動きが、一部で評価されているのもまた事実。
アクセルはレモン・ブロウニング、ラミア・ラブレス等と共にジャンク屋を始めた。
しかし、Wナンバーを護衛役として派遣したり、運送業も行うなど、何でも屋みたいな状況になっている。アクセルが此処に来たのも、カルヴィナが注文した品を届けに来たからである。
「それで注文した品は?」
「それなら、格納庫に持って行かしたぜ。そろそろ連絡が来ると思うんだが…」
  プルルルルルルッ
タイミング良く鳴った電話を、カルヴィナが素早くを取った。
「ハイ、こちら副社長室…ええ、分かったわ。ところで、時間空いてる?空いてるなら、部屋まで来てちょうだい。見せたい物があるの…じゃあ、後で」
「しっかり届いてただろ」
仕事はちゃんとやってるんだぜ、と言いたげな表情してふんぞり返るアクセル。大人なのに子供っぽい仕草をする姿を見て苦笑する。
「…ところでさっきの奴、誰だ?随分親しげだったが…」
「それは………内緒」
肩透かしを食らった気分だ。最初はあんまり気にはしていないのだが、内緒と言われたら余計気になってしまう。
「教えてくれたっていいだろ。俺達の仲じゃないか」
「ふふふっ、少しは待つ事を覚えなさい。そう時間は掛からないから。それより商品の説明をお願いしたいわね」
「…釈然とはしないが、いいだろう」
アクセルは呼ばれた者が来るまで、商品の内容について話した。

43再会:2007/05/25(金) 20:43:41 ID:Eci6/8U6
20分は過ぎた頃だろうか。
コンコン
ノックの音が聞こえる。
「開いているわ」
簡素な応答をし、来客を向かい入れる。
「スイマセン、ミーティングが長引いてしまいまし……」
来客は詫びを入れながら、入室してきた所で口を開けたまま硬直した。
アクセルも随分待たした来客に、文句の一つでも言ってやろうとドアの方に目を向け口を開いたまま、固まった。
「アクセル!?」「ジョシュア!?」
同時に相手の名前を言いながら、再開の握手を交わす。
「アクセル何で此処に来ているんだ?」
「それはこっちの台詞だぜ、ジョシュア。南極に戻ったんじゃなかったのか」
「それは……」
「私が説明しましょう」
カルヴィナが某Iさんの真似をしながら、2人の仲裁した。
「何です、その言い回しは?」
冷静に突っ込む、ジョシュア
「何か見た事あるんだな、コレが?」
頭を捻って考える、アクセル
2人のリアクションを無視して、説明を始める。
「簡単に説明するわ。先ずはジョシュアの方から説明するわ。私たちが会社を立ち上げた後、アクセルも知っての通り人手不足で悩んだの。
 そこで、ジョシュアが自分で機体整備してた事を思い出して、雇ったって訳」
「本当、簡単に説明してくれるのだな。もう少し掘り下げていこうぜ、経緯とか」
「そんなの必要ないわ。結果が分かればいいでしょ?で、アクセルは……」
アクセルの言葉をスルーし、説明を続ける
「レモン・ブロウニングとラミア・ラブレス等と共にジャンク屋をやっているの。時折商品を頼んだり、OS作製を手伝ってもらっているの。ジョッシュにもいくつか渡したでしょ?あれらもアクセルに頼んだ物よ」
ジョシュアは、ふと疑問に思った事を聞いてみる。
「なら、何で教えてくれなかったんです。アクセルがジャンク屋をやっていた事」
「すぐ教えてあげても良かったんだけど…」
「俺が口止めしといたんだ。敵さんだった奴らと手を組んでるって知られたら、連邦に何言われるか分からん状況だしな。
 それに、ジョシュアの事は俺も知らなかったし、クーランジュは教えもくれんかった」
「聞かれなかったから、言わなかったのよ」
カルヴィナの対応に肩を竦めるアクセル。
「まぁ、今日会えたんだから、別にいいんだがな」
それもそうだ、とジョシュアも頷いた。


その後3人は時の許す限り談笑を続けた。

44再会:2007/05/25(金) 20:45:31 ID:Eci6/8U6
以上です。

何度か構成を練ってみたが、これ以上の発展が見込めず放置していたもんです。
オチも弱く、駄文となってしまいました。無念orz

45こっちみんn(ry:2007/05/28(月) 21:52:46 ID:ZWwwg/9s
懲りずにまた書いてしまった。
今日のはエロス分0です。
さて、日付変わったら仕事だよ…と

寝よう。

46こっちm(ry:2007/05/28(月) 21:56:00 ID:ZWwwg/9s
しまった コレ忘れてた

ttp://www3.uploader.jp/dl/kagekagami/kagekagami_uljp00126.txt.html

連投ゴメン だが謝らな(ぇ

47こっt(ry:2007/05/29(火) 22:24:37 ID:ZWwwg/9s
続き書いた。疲れたので短いです。

ttp://www3.uploader.jp/dl/kagekagami/kagekagami_uljp00128.txt.html

48こうへー ◆TGSuPaUPbs:2007/06/03(日) 21:39:17 ID:KD/SUTlY
>>45-47
返事遅れましたが、早速記事に反映しました。珍しいタイプの作品ありがとうございます

49名無しのも私だ:2007/07/16(月) 20:59:45 ID:mlH87fEY
ttp://www3.uploader.jp/dl/kagekagami/kagekagami_uljp00161.txt.html

OG2の頃から、お金にならない事はしないというミツコさんの言葉が引っかかっていました。
もしかしたらOGsの方でこれをぶっつぶすような設定があるかも知れないので、こんな妄想が出来るのもイマノウチ……

50名無しのも私だ:2007/07/28(土) 01:54:16 ID:10bj4Bo.
http://www3.uploader.jp/dl/kagekagami/kagekagami_uljp00168.txt.html

本スレで中断したキャラ解説です。
本スレに書いた方のはまとめにいれなくて結構ですのでよろしくお願いします。

51名無しのも私だ:2007/08/05(日) 01:42:45 ID:mlH87fEY
――新西暦179年
 久方ぶりに帰ってきた実家。
 自室に仕舞い込んだ宝物を取り出してくる。
 彼の名はカーク・ハミル。月面の作業用重機メーカーに所属するロボット工学者だ。今日は久しぶりの休暇に、生家へと戻っていた。
 居間で入れてきたコーヒーを片手に、その宝物――ロボットの図面を眺める。
 彼が幼少の頃、父は大勢の科学者を集めこのロボットの開発を行わせていた。
 年の離れた彼の兄は、父の唯一の汚点であり、資産の浪費だったと嘆いているが、そうではあるまいとカークは思っている。
 中世のルネッサンスにおいても、メディチ家のようなパトロンの存在があったからこそ、美術と科学の高度な発展が臨めたのだ。父がやりたかったのはそう言う事の筈だ。資金を投じる事でロボット工学の発展を促そうとしたのだろう。
 が、そんなカーク自身、幼い頃にその科学者達に接した結果として、今の道を歩んでいるので、余り中立的な立場とは言えまい。
「まぁ、カーク叔父様」
「こんな所でお勉強ですの?」
 たたたっと二人の愛らしい少女が走ってきた。それぞれに栗色と金色の髪が印象的だ。
栗色の髪の少女はマナミ・ハミル7歳で、もう一人はアイシャ・リッジモンド8歳だ。二人ともカークの姪であり、マナミが兄のハミル泊、アイシャが妹のリッジモンド子爵夫人の娘だ。
「まぁ、綺麗な絵。まるでお花みたいですわ」
 アイシャが最外部の、つまり外観の図面を見つつ言った。
「あら、違うわ。これは絵じゃなくて“せっけいず”って言うのよ」
「絵とせっけいず、何が違いますの?」
「え?それは……」
 アイシャの切り返しに困っているマナミ。頼るような視線に負けて、助け船を出してやる。
「設計図というモノは機械の内側を説明したものだ。例えばテレビの外側だけを作っても、そのテレビは映らない」
 居間に置かれたテレビをスッと指さす。
「その内側を知るためのものが、設計図だ」

52名無しのも私だ:2007/08/05(日) 01:43:15 ID:mlH87fEY
 ふーん、と軽く頷くアイシャ。
「でも、綺麗な機械ですわね。伯父様、これはどこにありますの?」
「これはまだ、作られては居ない機械だ。だからどこにも存在しない」
「そうなのですか……実物も見てみたかったのですけど……」
 しゅんと落ち込むアイシャ。
「大丈夫よ、アイシャ!」
 ぽんとマナミがアイシャの肩に手を置く。
「まだ無いのなら、作ればいいだけよ。作る為の設計図はここにあるわ!」
「でも、お金もかかるのでしょう?」
 伯爵家と子爵家の令嬢とは言っても、幼い二人に好きに出来る金額は限られている。というか本当に自由になるという点ではそこいらの子供にも劣っている。
「諦めたらいけないわ。私たちがお父様達のお仕事を手伝えるようになれば、きっと作れるだけのお金が貯まるわ。そうでしょう、叔父様」
 目を輝かせている姪に、端的な事実のみを告げる。
「そうだな。君たちが優秀で、兄さん達を助けられるほど頭が良くなれば、君たちの自由になる金額も比例して増えていくだろう」
 それには相当な時間が掛かるはずだとはあえて口には出さないで置く。
「ほら、カーク叔父様もこう言っているわ。だからこの機械……えーと、この機械の名前は?」
「スィームルグ、だ」
「スィームルグを作る為に、一所懸命お勉強しましょう!」
 アイシャの手を引いて、駆けだしていくマナミ。全く元気の良い事だ。
 姪二人の後ろ姿を見送り、カークは再びスィームルグの図面に目を移した。
 元々二人乗りの機体である事だし、あの二人には調度良いかも知れない。戦闘用の機体だが、今後の地球圏の情勢を考えれば、むしろあのマナミの気質ならば積極的に活用しようとする事だろう。
 今回、彼が帰宅したのはこれを手に入れる為だった。EOT利用を良しとしない駆動系開発主任の後押しをする為に、純地球産であるスィームルグの図面を見せようと言うのだ。
 さて、彼女はこれを気に入ってくれるだろうか……?
 心なしか、そんなカークの顔は先程の可愛らしい少女二人を相手にしているときよりも優しく見えた。

53名無しのも私だ:2007/08/05(日) 01:46:43 ID:mlH87fEY
カークが少し優しいのは仕様です。
この後マリオンさんとくっついたり離れたりしながら、ガリガリ削れていきます。
あと、マナミとアイシャが従姉妹なのは公式ですが、二人ともがカークの姪であるかは判りません。
というかマナミと血縁関係があるかすら判りませんが。
とりあえずレズ従姉妹萌え

54名無しのも私だ:2007/08/20(月) 06:25:41 ID:SeEomBmw
>>アラド等の年齢をはじめ、大分勘違いやスレネタを公式であるかのように
書いてあります。
あまり新規の方には見られないようにしてください。

55名無しのも私だ:2007/08/20(月) 06:26:38 ID:SeEomBmw
>>50へのレスです

56DMマイスター:2007/08/25(土) 21:13:16 ID:4gEHweLk
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57こっちみんな係A:2007/08/26(日) 15:02:14 ID:A9xqMdYw
久々にデムパが来たので書き上げてみました。
仕事で徹夜明けの頭で書いたので色々見苦しい点もあるかも。ご容赦ください。



「総員、第一種戦闘体制へ移行。戦闘員は速やかに配置について下さい。繰り返します、総員…」
急かしいサイレンと共にアナウンスが響き渡る。瞬く赤色灯が少し煩わしい。
慌ただしい気配が扉の向こうから伝わってくる。自分も急がねば。そう思いユウは一口分程残ったカップの中身を飲み干し、走り出す。

この艦…『クロガネ』はかの大乱の後、艦長、レーツェル・ファインシュメッカーの意向により、世界に未だ残る種々の陰謀の芽を刈り取るという、新たな戦いを始めていた。
そう、世は平和を謳歌しているようではあったが、その実それこそ薄氷の様に危ういものだと、この任に就いて改めて実感した。

大規模な政変に端を発した権力闘争。
その裏であいも変わらず不透明な資金、物資を地下で行き交すイスルギ重工。
そして未だその妄執を捨てきれず抵抗を続けるDC、NDC残党。

その関わる全てが如実に告げていた。
この仮の平和は、直に終わるのだと。
「ユウ!」
「む」

カーラに声をかけられ、しかめられた眉が幾分緩む。「ずいぶん不機嫌だね。どったの?」
この顔はいつもの『愚痴りたい顔』だ。心の中でにやけながらいつもの様に聞く事にする。
「…とっておきが一杯目で台なしにされたら、誰でもこうなる」
「あっはははは!それってきっとユウだけだよ!」
「…ふん」

あれから行動を共にして気付いたことがいくつか有る。
一つは以前より見せる表情が増えた…と言うより理解できるようになった事。
一つは、以外にもユウは自分の軽口を嫌っていない事だった。

「…そういうお前は何をしていたんだ」
「ダンスに使う曲選びと〜、後はこないだのレクチャーの復習かな?」
「ほう。…少しは飲めるようになっていると良いが」
「何よそれ…ふんだ、帰ったら見てなさいよ。びっくりするような美味しいのを煎れてやるんだから!」
「解ってると思うが、俺の採点は厳しいぞ」


「うん…だから―」
この艦で時間を共有していくうちに、二つ、気付いたことが有った。
一つは、カーラは以前思っていたよりもずっと繊細な心持ちをしていること。
「―終わったらさ、次のレクチャーしてよ。頑張るからさ」
声色も変わらず、表情も笑顔のまま。前を向いてそっと。
しかしその裏にある想いをユウは感じ取れるようになっていた。

―彼が死ぬかもしれない―
―自分が死ぬかもしれない―
―嫌だ嫌だ嫌だ、そんなの嫌だ!―

ともすれば噴き出しそうな、そんな負の感情を抑え、持ち前の陽気さで覆い隠して、彼女はそう言うのだ。
俺がしてやる事何だ?同情?そんなものなんかじゃない。
慰める?…駄目だ、それこそれこそ愚の骨頂だ。自分に出来るわけが無い、そもそもこいつが喜ぶはずも無かろう。
抱きしめる?……………………俺としたことが、何を非論理的な…。
そんなものでは無い、もっと簡単で、解りやすい―

「約束だよ、戻ったら必ず!」

―あぁ、そうだ、だから―

「…あぁ、良いだろう、その気があるなら付き合ってやる。ただし前回までの復習は済ませておけ。
二時間みっちりと鍛え上げてやる。」
「げっ…も、もうちょっと負かんない?」
「断る。これに関しては妥協するつもりは無い。」
「あっちゃ〜…薮蛇だったかぁ…」

―俺はこんな約束を交わすのだ―

以前ならただの口約束として流してしまっていたかもしれない。だが今は違う。気付いてしまったから。
あぁ、それこそが二つ目だ。俺は、こいつを―

58こっちみんな係A:2007/08/26(日) 15:04:30 ID:A9xqMdYw
続き


ふと気付くとカーラは後ろで立ち止まっていた。
「…どうした」
「約束ついでにさ、お願いがあるんだけど」
「何だ…言ってみろ」
言うなりニヤリと笑い―
「お守り代わりにさ、キス、ちょーだい」
「………………………は?」
「だから、キス。ちゅー。マウスツーマウス。」
「…付き合っていられん。先に行―」
「ダメ。行ったら泣くから」
「ぐっ…」
「さぁ、観念したした!」「…くっ…」(くそっキスだと?出撃前だというのにそんな事…そもそもお守りになるようなものなのか?非論理的な!
いやしかし待てここでしなければこいつの事だ俺は延々出撃も出来ずここに足止めされるに違いないそうだそのリスクを考えればキス等なんとたやすい事か!

そうだ挨拶みたいなものじゃないか簡単だ何より俺はこいつの事がいやいやそれはともかく一刻も早くハンガーに行かなければならないからするんだ!勘違いするな!)


(…みたいな事考えてんだろうな〜…誘いに乗りそうなのは予想外だったけど)
元々先のヘヴィな約束事の先返しの意趣も込めて言った冗談のつもりだったが。
(まぁそれならそれでっ…!)
「い、行くぞ…………んむむぅ…………〜〜〜〜ッ!」
正に唇が触れようとした刹那、いきなり組み付いてのフレンチキス!
これはかなりの予想外だったらしく目を白黒させてじたばたもがいてる。
がっちりホールドしてるから手遅れだけど。あはは、可愛い。
「〜〜〜〜〜〜〜〜ぷはっ。にひひ〜ご馳走様〜♪…ユウ?おーい。ユウキさーん」
「…」
「あらら…ちょっとやりすぎたかな…まぁ良いや。先行ってるね!」

(お守りも貰った、これで大丈夫、あたしは絶対負けない…!)

カーラが去ってから数秒、固まっていたユウはやおら顔を真っ赤にすると激しく頭を掻きむしって
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」と声にならない悲鳴を上げた。
(…くそ、くそっ!これで、"負けられない理由が出来てしまった"ではないか!)
暴れたい気持ちを抑えて深呼吸。忘れそうだったが、今は戦闘体制に入らなければならない。
『いつもの自分が』目覚める。…大丈夫だ、いける。
意を決してハンガーへ向かう。

「すまない!遅くなった!俺のラーズで出る。火は?」
「入れてあります。チェックはコクピット側を残すのみです」
「助かる…ラウル!出れるのか?」
「あぁ。フライヤーで出撃する。上は任せろ」
「あなたのレイヴンユニットは先の戦闘での損傷て残念ながら修理中ですが、一部関装可能な武装とパーツは入れ替えてあります。
以前のラーズより出力と運動性は上がっています。そのつもりで」
「ありがとう。…艦長!」
「待っていたぞ。目標は先の情報通りの擬装された打ち上げ基地。ただし、察知されたのか部隊が展開中だ」
「規模は?」
「AMリオン十数機、ランドタイプ不明、バレリオン10機、ガーリオン6機に…」
「…多いということですね」
「ああ。我々の目標はこれらに守られた打ち上げ準備中の輸送機の拿捕、もしくは破壊だ」
「骨の折れそうな任務ですね」
「…君とリルカーラ君で地上を掃射しつつルートの確保を。ラウル君は艦と共に航空戦力の排除。…友よ、君は直衛に回ってくれ。何か隠し玉があるやも知れん」
「了解」
「任せてよっ」
「わかりました」
「委細承知」
「目標地点は…ここだ。クロガネ到達後敵戦力を掃討もしくは無力化、輸送機を抑えて作戦終了とする…では各機、出撃を開始してくれ」
『了解』


「ねえ、ユウ…」
「…出撃前だ、手短にな」「…怒ってる?」
「…怒らなければならない理由が無い」
「え…」
「…」
「…そ、それって…」
「出るぞ」
「ちょ、ちょっと待ってよ!待てってば!こら〜」



―知らないことも沢山あるけど―

「ラーズアングリフ、カタパルト接続完了。…圧力上昇中。投下地点確認せよ」
―越えられないラインもまだまだ有るけど―

「ジェグナン機了解…確認した。コンディションオールグリーン。カウントダウン省略を要請」

―絆は確かに、そこに在った―
「カウントダウン省略許可。ユーハブコントロール。グッドラック」

―そう、俺達は、きっと―

「アイハブコントロール。ありがとう。…ユウキ・ジェグナン、ラーズアングリフ、出撃する!」

―恋を、している―


おわり

59こっちみんな係A:2007/08/26(日) 15:14:37 ID:A9xqMdYw
以上。
ホントは戦闘シーンも含めて書くはずでしたが
端末が携帯のみのため思ったより時間か
かってさまったためやむなくだんねん
ああねむい
もうだめ
しぬー


そのうち書くかも…

60<削除>:<削除>
<削除>

61名無しのも私だ:2007/09/04(火) 23:22:25 ID:ZB6I3qCM
ヴィンデル「ぬぅぅ、貴様らのような奴に…」
ギリアム「これが結果だ。覚悟しろ」
ヴィンデル「フ、フフフ、戦争に負けた者には死を…その運命に抗うつもりは無い」
ラミア「ヴィンデル様…我々には他の選択はなかったのでしょうか」
ヴィンデル「無い、これが全てだ。貴様は我々兵士から戦争を取ったら何が残ると思う」
ラミア「人間が残ります。この部隊の者がそう教えてくれました」
ブリット「ラミアさん…」
ヴィンデル「人間?…フフ、フフフ、フハハハハハハハハハハハ」
マサキ「何がおかしい!?」
ヴィンデル「人間が残るだと?ならば人間を捨てたもの、人間でさえ無い者はどうなのだ?」
マサキ「何!?」
ヴィンデル「我々はこの世界に身を墜とした時に人間を捨てたのだ。その我等から戦いを取ったところで悪鬼か修羅しか残らん」
アイビス「そんな簡単に人間を捨てれるものか!」
ヴィンデル「真の闘争を知らない者が何を言う!!貴様らは見たことがあるか!手足がもげ、死にそうな傷で死にきれず、呪詛と怨念を唱えながら死んでいく…それを何千何万とだ!そんな世界で人間を保てば死んでしまうのだ!」
アイビス「それは…」
ゼンガー「だが貴様らの存在がそのような存在を増やしているのも事実」
ヴィンデル「それは既に承知している。わかっていてもその世界を作らずにはいかんのだ」
ユウ「何故だ」
ヴィンデル「戦争が終わって上の連中は何をしたと思う?必要が無くなった我々を切り捨てたのだ!既に人でない我等に居場所はない、ならば作るしかない。闘争という世界を」
キョウスケ「貴様の行為は矛盾しているな。お前は何がしたい。兵を救おうとすればその存在は増えるのだぞ」
ヴィンデル「それも既に承知。しかし他に道はない…」
エクセレン(悲しい人生ね…。)
ヴィンデル「…グフ……そろそろ限界か。アクセル…レモン…そして兵たちよ、今私もそちらへ逝く。そして今度こそ成し遂げようぞ、我等の住まう闘争の世界を!!フハハハハハハ……」
ドッッッカァァァァン!!!!!
ギリアム(ヴィンデル…お前は……)

62名無しのも私だ:2007/10/02(火) 00:29:54 ID:inze9nt.
こちらお借りします
過ぎてしまいましたがカーラの誕生日記念SSです



アラド「カーラさん〜まだつかないんですか?」
カーラ「もう少しの辛抱だから」
テニア「お腹すいたー」
イング「腹減った〜」
ゼンガー「渇!!!!」

スパパパパーン

レーツェル「お前達、約束事を忘れたのか?」
アラド「少佐ぁ、痛いっす」
テニア「あーんと〜や〜助けて〜」
イング「痛い・・・」

カーラ、アラド、テニア、イング、ゼンガー、レーツェルそしてユウキを乗せた輸送機は或る場所に向かっていた。
戦いが収まったとはいえ、その傷跡がすぐに癒える訳でもない。身内が亡くなった者、帰る家が無くなってしまった者もいる。
もちろん、政府も全く無能というわけでもない、戦災にあった人々を救済するために、日夜活動を続けている。

レーツェル「再確認のために言っておこう・・・お前達は食べ過ぎた、統夜やゼオラが絶望するくらいにな」
アラド「あはは・・・それほどでも・・・」
レーツェル「褒めてはいない」
アラド「う・・・・」
レーツェル「そしてその代償は大きい、統夜は家を差し押さえられ、その身をシャナ姫に売り(嘘)」
テニア「ぎゃふん!」
レーツェル「ゼオラは卑猥な店へと身を売り(大嘘)」
アラド「うわぁぁぁぁぁぁゼオラァァァァ!!!!!!!」
イング「落ち着けオリジナル!!!ここは高度1万だぞ!!!パラシュートなしで飛び降りたら死ぬって!!」
レーツェル「もちろん嘘ではあるが、お前達に反省と今後の教訓のため・・・カーラの手伝いをしてもらう」
イング「て・・手伝い?」
カーラ「そう、手伝い・・・ああ、そろそろ着くよ・・」


戦災孤児を救いたい・・それは戦争で弟を失ったカーラの願いであった。
子供達に辛い思いをして欲しくない、弟のようになって欲しくない・・
その願いをレーツェルは聞き入れ、食料と輸送機の手配までしてくれた。
そして人手のほうも・・・強引ではあるが何とかなった。
輸送機はやがて、目的地へと高度を落としてゆく。


レーツェル「駆けよトロンベ達!!」
アラド「ひぃぃ!!!」
テニア「あぁん〜」
イング「うう・・・玉ねぎが目にしみる」

調理場で馬車馬のように働く大食い3人組。
カーラたちがやってきたのは戦災孤児保護センター。
かつての戦争で親や帰る家を失った子供達が集められている施設である。

アラド「それにしても・・すごい量・・・ジュル・」
ゼンガー「渇!!!!」

スパーン

アラド「イタイイタイ!!」
イング「オリジナル・・つまみ食いなんて考えないほうがいいみたい・・」
テニア「お腹すいたー・・生殺しだー!!」

3人組が大量の食材と食欲と戦っているころ・・・カーラとユウキは広場で子供達にダンスを教えていた。
子供たちも踊れるような軽いステップ、カーラのステップをまねて子供達もステップを踏み始める。

カーラ「そうそう、お上手よ〜ほらユウも頑張って」
子供「ユウキ先生がんばれ〜」
ユウキ「く・・こ・・こうか?」

子供達の声援を受けて必死にステップを踏むユウキ。やがて慣れてきたのか、ステップにリズムが生まれてきた。
リズムに合わせてステップを踏むユウキ、カーラも一緒に踊りだす。
やがて力尽きたのか、へなへなと座り込んでしまう。

カーラ「やるじゃないユウ!」
ユウキ「・・ふん・・くだらん」

不機嫌そうにそっぽ向くユウキ、そんなユウキの顔を覗き込む子供達。

子供「ユウキ先生怒ってるの?」
ユウキ「お・・怒ってなど・・いない・・」
子供「じゃあ一緒に踊ろう〜!」

子供達にせがまれ、ユウキは渋々立ち上がり。子供達の輪の中へ入ってゆく。
そしてBGMが流れ出す、陽気で楽しく、心が弾む音楽。
何時しか時を忘れ、カーラたちは楽しいひと時を送っていた。

63名無しのも私だ:2007/10/02(火) 00:31:27 ID:inze9nt.
続き







カーラ「ふう・・疲れた・・」
ユウキ「大丈夫か?」
カーラ「うん・・・でも、みんな嬉しそう」

子供達はレーツェルたちの作った料理を食べ、とても幸せな顔をしている。
その顔を見ていたカーラの顔は、まるで母親のような暖かさがあった。

カーラ「きてよかった・・」
ユウキ「お前らしいな・・」
カーラ「そう?」

食欲旺盛な子供達は次々とお変わりをする、その対応をするのは勿論大食い3人組。

子供「お兄ちゃんお代わり!!!」
子供「私も!!!」
子供「僕も!!」
??「オロカナヤツメー!!」

アラド「ああ〜どんどん無くなっていくー俺達のめしがー!」
イング「我慢するんだオリジナル・・・ジュル・・」
テニア「も・・もう力尽きそう・・」
ゼンガー「渇!!!」

すぱーん!!



そして食事が終わり・・別れの時間。
輸送機の周りに子供達が集まり、カーラやアラドたちにお礼を言う。

子供「またきてねー」
子供「練習一杯して待ってるから!」
子供「美味しいご飯をありがとう〜」

輸送機が離陸しても、子供達は手を振り続けていた。


ユウキ「疲れた・・・」
カーラ「どうだった?こういうのも悪くないでしょ」
ユウキ「・・・悪くは無いな・・」
カーラ「ユウったら、子供達に人気あったね」
ユウキ「ふん、お陰で茶の時間をすごせなかった・・・」
カーラ「いいじゃない・・・ありがとうユウ・・付き合って・・・ん?」

いつの間にかカーラに寄りかかりすやすやと寝息を立てているユウキ。
カーラは・・・そっとユウキの頬に口付けをする。

カーラ「本当にありがとう・・・ユウ」

64よっちゃん:2007/10/09(火) 00:07:23 ID:5oydu3fA
ちょっと関係ないかもしれませんが

クチコミだけで70万個以上売れた

超微粒子コラーゲンジェルの秘密だそうです。

私も使ってみましたが、かなり良かったです!!

65冷蔵庫で二人:2007/10/19(金) 01:06:05 ID:mlH87fEY
 薄暗闇の中、ユウキ・ジェグナンとリルカーラ・ボーグナインは肩を寄せ合っていた。
 恋人同士である二人で、二人きりなのにその表情はえらくけわしい。
「寒いね……」
「冷蔵庫だからな」
 ここはクロガネの冷蔵庫。
「今、何時?」
「……2時だ」
 二人は閉じこめられていた。

 クロガネは人員が少ない。
 元々、アイドネウス島での防衛戦に出撃したまま、総帥のビアン・ゾルダークは戦死。残党に合流する事もなく地球圏を彷徨い続け、時たまユウとカーラのような乗りかかった船の連中も加えたモノの、去る者は追わないエルザムの考えにより、L5戦役後に家族のある者は三々五々に散っていっていた。
 特に非戦闘員の定数割れは甚だしい。元々長期の航海のために集められた人員ではなかったのだから仕方ないが、今現在シェフは一人。しかも彼はユウやカーラと同じく途中参入組。彼が加入するまでは厨房はエルザムが主で、それ以外は非番の乗組員の持ち回りとなっていた。まぁ、現在でもそれは大して変わっておらず、シェフ以外の助手(要するに芋の皮むきだとか野菜を洗うだとか)はパイロットとかがやっていたりする。ちなみに悪を断つ剣ゼンガー・ゾンボルトもその例外ではない。
 ともかくそんな状況にあっては、艦内時間が夜の間厨房に来るのはほとんどいない。夜食を求める者も事前にシェフにサンドイッチやおにぎりなどの軽食系を頼んでいる。何せ来たとしても結局自分で作らなければならなくなるのだから。
 そんなわけで、こんな空っぽの厨房に来るのはわざわざ自分で鍋を持とうという酔狂な者達のみというわけだ。
 この日ユウは非番だった。
 茶菓子がつきかけていたのを思い出し、それを作ろうと厨房に行く途中カーラに会い、手伝ってくれるというので特に否も告げずにそのまま厨房へ。
 卵と牛乳を取りに冷蔵庫に入る際に入り口の押さえをカーラに任せていたのだが、蹴躓いて野菜の入った籠を転がしてしまい、その時に上がった声にカーラが反応して慌てて駆けつけて……
 気付いた時にはもう遅く、冷蔵庫はぴっちりと閉まっていた。
「……済まん」
 額に手を当てつつ呻くユウ。
「いや、ちゃんと支えを入れてなかったアタシにも問題有るし、大丈夫だって!5時には朝ご飯のために料理長さん来るだろうし!」
 かなり凹んでいるらしいユウに必死で慰めるカーラ。なんていう結構珍しいものが見れたりする。
 ちらり、と隣に座るカーラを見やると、小刻みに震えていた。その格好ではまぁ仕方有るまい。
「リルカ」
「え?」
 名前を呼ばれ、唐突にユウが近い。それに反応する間もなく、抱え上げられたカーラは引き寄せられ、あぐらをかいたユウの足の上に乗っていた。
「ひゃ……」
「こうすれば、寒さも少しはマシだろう」
 少しぶっきらぼうに言いつつ、ユウが後ろから抱きしめる。
「う……うん……」
 抱きしめてみて驚いた。ここまで冷たくなっているとは。もう少しはやくこうするべきだったかも知れない。
「ユウ、あったかいね」
「一般的に男性の方が体格も筋肉量も上だからな。熱量はある」
「ん……なんかアタシ火傷しちゃいそう……」
 結局、ユウを捜していたエルザムが中途半端に用意されていた厨房の様子から推測して発見するまでの1時間。二人はたっぷりと密着していた。

66名無しのも私だ:2007/10/19(金) 01:09:16 ID:mlH87fEY
暗闇で密着させてみました。気に入って頂けると幸いです。

67名無しのも私だ:2007/12/02(日) 22:18:15 ID:UTzOnnpw
リュウセイの実家が伊豆基地のすぐ近くで
ユキコママンが退院して働き出したって設定で一つ


リュウのおかげで体はすっかり良くなった。
退院して暫くは家の片付けなんかもしたけれど、
一人で家の中で過ごすのは退屈すぎて、
久しぶりにパートをしてみようと思った。
リュウは「オフクロ退院したてだろ!無茶するなよ!」
と、心配してくれたのだけど、
「家の中で一人で過ごすのは寂しいの。
 それに、体を壊す前はリュウを女手一つで育ててきたのよ?
 まだまだリュウには負けられないわ。」
と、説得したらしぶしぶ承諾してくれた。


新しい職場は伊豆基地近くの小高い丘の上。
年配のご夫婦が営むパン屋さん。
下っていく坂道の向こうには、リュウのいる伊豆基地と、きらきら輝く海が見える。
海から昇ってくる潮風がとても気持ちがいい。
仕事は主にレジうちなので、毎日綺麗な海を見れるのが嬉しい。
店主のご夫婦も良い人で、常連さんとも馴染みになった。
やっぱり、家の中で一人で過ごしているよりも
働いていたほうがずっと楽しいわ。


勤めだしてから暫くして、
リュウの御同僚のライディースさんがお昼を買いに来るようになった。
毎日、お昼に坂道を歩いてきてお昼にパンとパックのコーヒーを買っていく。
会計の度に二言三言言葉を交わす。
一度、「歩いてこれる距離なのに、リュウは顔を見せてくれないんですよ。」
と、愚痴をこぼしたら、
「母親の勤め先に顔を出すのが照れくさいんですよ。」
と言われ、そうかもしれないと思い、
「あの子もまだまだ子供ね。」と二人で笑った。
今日もそんな風に一日を過ごしていくと思ったのだけれど・・・



今日もお昼にライディースさんがお店に来た。
最近は、坂道を歩いて上ってくるのをつい目で追ってしまう。
いつものように彼が選んだパンを袋詰めして渡し、
「毎日うちのお昼じゃ飽きちゃうでしょう?」と聞いたら、
いつもは穏やかな笑みを絶やさない彼が、急に真面目な顔になって、

「弁当だけじゃないですから。」

とだけ言って、お金を払って出て行った。
私は、ぼぅっとしてしまって、坂道を下っていく後姿を見送ることしか出来なかった・・・



勤めからの帰り道で、今日のお昼のことを思い出す。
(あれはどういう意味だったのかしら?私の深読みのしすぎ?
 でもでもあんなに真剣な目でそんなことを言われたら・・・
 まってまって落ち着きなさいユキコ落ち着くのよ
 ライディースさんはリュウと一つしか違わないのよこんなオバさんなんかにそんなこと
 若くてあんなに御顔の整っていらっしゃるっていらっしゃる方だもの
 きっとお若い恋人の方がいらっしゃるわよそうよきっとそうよ!
 でもでもあの真剣な眼差しはetcetc・・・・・・・・・・・・・)

帰り道の間そんなことを考え続けて、頬が火照って仕方が無かった。
でも、あんなに若い方にもしそういう風に見られてるんだとしたら
ちょっとだけ、いやかなり、ううん、とっても・・・・・・

嬉しい。
私もまだまだ、女として捨てたものじゃないと思えたから

あんまり浮かれたので、思わずスキップなんてしてしまった。
誰も周りにいなかったけど、誰かに見られてたらと思うと恥ずかしい///
ライディースさんも困った方だわ。
年上の女の人を、立った一言でこんなにやきもきさせるなんて。
これは、明日のお昼にちょっぴり悪戯でお返しをしなくちゃ気が納まらないわ!
どんな悪戯をしようか考えると、とっても楽しい。
明日は大人の女の人の余裕をたっぷり見せてあげるんだから!

68名無しのも私だ:2007/12/02(日) 22:19:36 ID:UTzOnnpw
本スレと別のところに投下したら空気嫁といわれたのでこっちに
お目汚しスマソ

69名無しのも私だ:2007/12/02(日) 22:31:22 ID:rNhPwB8.
別に空気嫁とは言われてないだろ。
ただカップリング注意してた矢先にあれだからな…

70名無しのも私だ:2007/12/03(月) 07:59:05 ID:mlH87fEY
投下したスレの方では問題だったのかも知れないが、俺は好きだぜ?こういうの

71名無しのも私だ:2007/12/04(火) 01:48:04 ID:inze9nt.
GJだっぜ!

72名無しのも私だ:2007/12/17(月) 18:41:25 ID:3weENixE
先に言っておく、俺はか・な・り・反省している。ごめんなさい

ラウル・フィオナ・ミズホはエクサランスの実験中に
どこか荒廃した世界にに飛ばされてしまう
ラウル達は、そこで一台の情報端末を発展する。
端末「新西暦1999記録 セプタギンの日」
 地面からセプタギンの出現世界中に攻撃、そして映像が途切れる。
ラウル「な…なんだこれは…」
フィオナ「ここが、私たちの世界の未来だって言うの…」
ミズホ「たしかに、時流エンジンは時間移動が可能と
    言われてますけど…」
―間―
フィオナ「ねえ、変えちゃおうよ!!この未来を!!
     ねっ、ラウル・ミズホ」
ラウル「そうだな!!俺たちの目的は、人助けだ。
    こんなことになるのを知って放って置くなんてできない!!」
ミズホ「そうですね!!やりましょう!!」
フィオナ「ラージがいたら、未来への干渉は…なんとか、
     って言いそうだけどね」
ラウル「未来が無くなったら技術の進歩も止まっちまう
     だから、あいつも文句は無いはずさ」
ミズホ「行きましょう!!まずは変える方法を探さないと」

星はいつか夢を見た―ラウルトリガー―

73名無しのも私だ:2007/12/23(日) 00:12:04 ID:e9.XsT9c
銀河を賭けた最終決戦を切り抜けたハガネ・ヒリュウ隊

戦いには勝った
だが、地球は遥か数万光年の彼方にある
まだ彼らの戦いは終わってはいないのだ

「リュウ、まだ寝ないのか?」
「おう、あとちょっとだ。マイは先に寝てろよ」
「そうか・・・お休み」
「ああ、お休み」

マイが自室に戻ってから数分、
リュウセイは、一心不乱に手帳に何かを書き込んでいる
普段はデスクワークに何の興味も示さない彼が、ガラにもない

一通り書き終わったのか、フウとため息をつく
その時、ドアが開いた
「アヤか?・・・艦長!?俺、何か報告書ミスりましたか!?」

珍しい
ここは若いパイロット達の談話室
ヴィレッタですら用が無ければ来ない
増してやのテツヤ・オノデラ艦長が来ることなど
皆無と言っていい

「いや、寄って見ただけだ。何を書いていたんだ?」
「ああ、これですか?給料の計算ですよ」
「ほう・・・?」
「船外活動手当、特別船外活動手当、危険活動手当、特務手当
 あと本給とボーナスで、源泉徴収抜きで出航から今日まで
 しめて3037万5千800円になります!」
「さすがパイロットは高給取りだな
 何か買う予定でもあるのか?」
「いえ・・・おふくろが体が弱くて今入院してるんですが
 昔、病気を押してまで働いて俺を養ってくれたんです
 だからこの金はおふくろの入院費に当てます
 それに、戦死すれば遺族年金が出て、生活費くらいは・・・」
「リュウセイ!?」
「ハハハ、冗談ですよ。おふくろを1人残して死ねませんて」
「驚かせるな。まあ良い息子を持ってお母さんも幸せだな」

74名無しのも私だ:2007/12/23(日) 00:15:08 ID:e9.XsT9c
「・・・艦長、気遣ってもらってありがたいんですけど
 俺もマイもアヤも覚悟も納得もできてます
 なんていうか、
 もうただの民間人じゃなくて、ハガネの乗組員なんです」
「そうか・・・いや、それを聞いて安心した
 まだまだバンプレイオスには働いてもらうことになる
 しっかり休んでくれ」
「はい。それじゃあ、失礼します」

自室へと歩く少年、いや青年の背中を見てテツヤは思う

(母親のため・・・ばかりでは無いだろう
 元民間人の中でも、もっとも危険で重要な任務をこなしてきた
 その一人がリュウセイだ
 戦いに明け暮れ、人間ではなく念動力者として
 扱われがちになっている
 普通の人間でなくなっていく自分を恐れているのだろう

 今は、給料どころか地球に帰れるかすら分からないのだ
 正常な自分を維持するために、あての無い金額を計算しているのか・・・)

(いや!!
 あのリュウセイがそんな高等な物の考え方をする男か!?
 
 彼は、本気で地球に帰れると思っている
 本気で母親の入院費を支払おうとしているんだ
 ふふふ、だからあの時、
 ただ一人絶望せずに戦えたのかも知れないな)



元は単なる当てはめ(「ジパング」(かわぐちかいじ)の13巻)

しかし、書いていて
全然萌えない&キャラも本編と違う&元ネタとも違うのに気付き
わけが分からなくなってきました

お目汚し失礼しました
でも、「ジパング」はいい作品です(スパロボと全く違う意味で)

75こうへー ◆TGSuPaUPbs:2007/12/26(水) 01:22:37 ID:d0M1O4Bw
ネタバレスレを最下層に下げる為に一度ageます

76名無しのも私だ:2008/01/05(土) 23:03:08 ID:VzhS.X2g
◆あらすじ◆
アイビスが元気がない
それについてイルムが発言する
イルムの発言に対する、周囲の反応(制裁)

多種多様な発言が、次々と流れるように発せられる光景をご想像ください

イルム「ま、アイビスが男だったら簡単なんだがな」
イルイ「男だったらどうするの?」

イルム「簡単さ・・・」
リン「子供にそんな事を教えるな!」
イルムの脳天に、鋭い手刀が直撃する

同時に追撃が加えられる

「蹴り砕いてやる!」
「そ、そんな事言うなー!」
「チェストォー!」
「T-Linkナッコゥ!」
「音速を超えて切り込む」
「でぃぃぃぃぃぃや!」
「打ち抜く!」
「リュウセイ君直伝、ナックルパーンチ!」
「さくさく、さくさく・・・・・・」
「きゅうきょくぅ!」
「ぶれーどとんふぁー」
(以下 略)

イルムの体が見えない。包囲され、全身に打撃が加えられているからである。
全員の打撃部位が全く重複しないことは驚嘆するべきである

77名無しのも私だ:2008/01/05(土) 23:03:38 ID:VzhS.X2g
「イルイ、見ちゃダメよ」
「ミヒロちゃんもまだ早いからね」
「プレシア、お前もだ」

「・・・・・・最っ低ね」
「下品だ」
「良識ある人間の発言とは思えん」

「ひどい・・・」
「乙女心を何だと思ってるんですか!」

「気持ち悪い」
「地獄へ落ちろ」

「ゼオラ、イルムは何を言おうとしていたんだ?」
「し、知らないわよ」

「ショウコ・・・」
「知らない!」
「てめえ、人の妹にになんて事を聞きやがる!」

「ジョシュア」
「・・・あとでね」

「みんな若いわね」
「フ・・・」

その時、無数の鉄拳の内部からうめき声が
イルム「お、俺はまだ何も言って・・・」
リン「言わなくても分かる」

「おまえたち、任務に支障がない程度にしておけよ」

リン「さあ、帰るぞ」

皆で見送った、引きずられていくイルムを

78名無しのも私だ:2008/01/06(日) 23:23:10 ID:buqT2rFk
これは、J世界のifについて書いたものであり
実際の展開とは異なる場面もあります。むしろ、うろおぼえ。
誰か同じようなことをやっていたら二番煎じでごめん。

―統夜が三人娘と出会う1日前
シャナ「皆さん始めまして、シャナ=ミアです。」
その子は、今日このクラスに転校してきた
統夜「…!!」
転校生に対してあまり興味が無かったが、一目見て驚いた。
なぜなら、統夜はその子を知っていた。いや、実際の記憶にはない
統夜が最近見る不思議な夢に出てくる少女にそっくりなのだ。
統夜「…いや、そんなはずはない。」
統夜はその思いを打ち消すともう一度少女を見た…と、そのとき
目が合った。
シャナ「クスッ」
そして、彼女は笑いかけてきた。明らかに統夜に向けて、
統夜は、そのまま目をそらすことができなかった。
その後何事も無く放課後になり、帰宅中の統夜に
シャナ「あの…統夜さん…」
統夜「君は、ミアさん?だったかな、ところで何で俺の名前を??」
シャナ「シャナでいいです。覚えていませんか?私は、子供のころ…」
そう言われて思い返す、両親がまだ生きていた頃を、
ずいぶんと長く忘れていた…父はアーシェリークロイツ社に勤めていて
そこで、フランツおじさんにかわいがってもらった。
そのころ、父の知り合いの子供が…
シャナ「統夜さん??」
そう呼ばれて意識を現実に戻す。
統夜「えっ!!ああごめん、よく覚えてないみたいなんだ。」
シャナ「そうですか…」
とっさにそう答えてしまい、シャナは残念そうな顔をする。
統夜「あ…ごめん!!もしかしたら思い出せるかもしれないから
   一晩よく考えてみるよ、じゃあねシャナ!!」
シャナ「あっ…統夜…ご機嫌…よう」
何かを伝えたげなシャナから、逃げるように帰宅した

統夜「何かを思い出せそうなんだ…何かを」

79名無しのも私だ:2008/01/06(日) 23:24:06 ID:buqT2rFk
―翌日
シャナ「はぁ…」
シャナはため息をついた幼馴染である彼は自分のことを忘れていたからではない
彼女がここに来た目的は、統夜を保護するためだ。
シャナ「何とかして、彼と話をしないと…」
シャナは、ここに来るまでのことを思い出した。
グ=ランドン「姫!!地球人達と接触なさるというのですか!?」
シャナ「その通りです。グ=ランドン・ゴーツ総代騎士」
グ=ランドン「危険です!!奴らは争いを望む野蛮な種ですぞ!!姫の身に何か…」
シャナ「わかっています。ですが、騎士団の方向性が人類を排除することである
    ならば、フューリーの女王として実際に視察して真相をこの目で
確かめておく義務があります。」
グ=ランドン「…ならば騎士団から人員をお貸ししましょう。」
シャナ「お心づかいは感謝しますが、今回視察するのは、比較的治安のいい
日本という都市の学校です、近衛のものだけでも十分でしょう。
    それに…私に何かあったほうがそちらとしても都合がいいのでは?」
グ=ランドン「姫様!!!冗談が過ぎますぞ!!!
…分かりました、お気をつけて…。」
こうして、父の代より王家に尽くしてきたものだけを連れ地球に下りてきた
彼らが、統夜の存在を知ればきっと排除するだろう。未来の障害として、
そしてフューリーへの裏切りとして、
シャナ「だから…私は!!」
自分の声に気づき、シャナは考えるのをやめる。
統夜「おはよう、シャナ。何か考え事?」
背後から声をかけられ振り向くとそこに笑顔の統夜がいた。
シャナ「統夜さん、おはようございます。」
統夜「俺のことも統夜でいいよ。それよりさ、思い出せたんだ、君のこと。」
シャナ「本当ですか!?」
統夜「君たしか父さんがいた会社の重役の子供だろ?二人でよく遊んだよな。」
そうだった…私は、あの時そういう立場で彼と会ったのだ。
シャナ「ええ、そうです。思い出してくれてよかった。」
ほっと胸をなでおろす、だが本当に知ってもらわねばならないのは…
統夜「うん、俺も思い出せてよかったよ。あの時はさ…」
統夜の思い出話が始まる。今は話すのはよそう、もっと時間のあるときに、
彼がすべてを受け入れることができるように…
そう思い、シャナは統夜の話に耳を傾ける。

80名無しのも私だ:2008/01/06(日) 23:25:16 ID:buqT2rFk
―校門近く
甲児「やベー遅刻しちまうぜ!!」
ボス「まてよ〜甲児ぃ」
統夜の目の前をバイクが通り過ぎる。それに驚いたシャナがよろめく。
シャナ「きゃあ!!」
統夜「あ、危ないシャナ!!」
とっさに、シャナを抱きとめる。
シャナ「ありがとう統夜、助かりました…」
顔が近い…変な雰囲気をごまかすため統夜は詳細を口走る。
統夜「危ないなぁ、あいつらは近くの光子力研究所の兜甲児って言って
   最近出没する機械獣とマジンガーZで戦ってるやばい奴なんだ。」
シャナ「そうですか、まだ若いのに大変ですね。」
シャナのピントのずれた発言に少しあきれながら思い直す、この子の親は
起動兵器の生産プラントにいた、だからそういう考えに至ったんだろう。
だけど聞くところによるとあの会社は…もう存在しない、木星蜥蜴の
襲撃を受けたと言う、あの会社に関する話をするのはやめよう。
統夜「さあ、シャナ教室に行こうか」
シャナ「ええ、統夜」
そのとき、変な音が鳴り出した。バイクじゃない、音は空から来ている。
統夜「あれは…ロボット?軍の機動兵器か!?何でこんなところに?」
シャナ「…」
シャナが無言でそれを見つめている。きっと驚いているのだろう
そして、その直後その近くに別のロボットが出現する。
戦闘になれば、いずれ木星蜥蜴の集団が集まってくる。
統夜「くそっ、こんなところで戦闘かよ!!非難しようシャナ!!」
だが、シャナは動かないでじっとそれを見つめたままだ
そうこうしているうちに木星蜥蜴が集まってきた。
すると後から来たロボット達は、その場から撤退していった。
だがこうなってしまった以上、木星蜥蜴はこの町を攻撃するだろう。
統夜「兜の奴に期待するしかないのか…」
その兜は今学校を出たばかり…やっぱり危険だ、シャナを非難させよう。
そう考えシャナの方に手をさしのべようとすると、
シャナ「来ます!!」
そういうとそれは、こちらに向かってきて着地しようとする。
だがその前に、木星蜥蜴の攻撃を受けて転倒する。
統夜「はっ!!先生!!!」
その、転倒に巻き込まれそうになった教員を発見し間一髪で助けると、
ちょうどそれの中から人が出てくる。
統夜「女の子?」
カティア「お願いします!!あの機体に乗ってください!!」

81名無しのも私だ:2008/01/06(日) 23:26:14 ID:buqT2rFk
―そのころシャナサイド
私はそれを知っている…むしろそれを作り出した側に居る。
だけど、なぜそれがここに?後に出現した機体は、准騎士機とその配下
すぐに撤退したことを考えると私が狙いではないのだろう。
ならば、それに乗っているのは?
シャナ「統夜?」
ふと、統夜が居ないことに気付き辺りを見回すと、それの乗員であろう
者達が、統夜に何かを言っていた。シャナはある覚悟を決めそこに向かう。
テニア「おねがいだよ!!あんたが乗ってくれないと…」
統夜「だから、いやだって言ってるだろ!!俺はただの高校生だぞ!!」
メルア「お願いします!!あなたならできるんです!!」
統夜に話しかけている相手、面識はないが彼女たちを知っている
あの実験に利用された子達だ。おそらく、エ=セルダ様が…
シャナ「その役目、私に任せてもらえないでしょうか?」
私は、突然そう告げた。
統夜「助かったよシャナって、えぇっ!!何を言い出すんだ!!」
テニア「あんたは、黙ってて!!これが何か分かってんの?」
シャナ「存じております、これの事も、あなた方の事も」
三人の表情が一変する。
メルア「そんな…わたしたち、逃げられないの?」
シャナ「私は、あなた方の敵ではありません。メルアさん
エ=セルダ様の側の者です」
カティア「その言葉を、信じろと…?」
シャナ「信用できないならサイトロンに聞いてください。カティァさん」
そして、三人はそれに戻っていった。私が信用できないのも無理はない
彼女たちはそれだけの目にあったのだから…。
統夜「シャナ、どういうことなんだ!!父さんの側の人間って??」
シャナは手短に全体像を話した。自分のこと,自分たち種族のこと,
彼女たちのこと,そして、統夜のことを…
テニア「分かったよ、信じる。さあ行って、カティアちゃんが待ってる。」
シャナ「ありがとう、テニアさん…私にはこうするべき責任があります
だから、その子達をたのみますね…統夜さん。」
そして、シャナはそれに向かって歩いていった。
シャナ「命を賭してでも、これが私の償いだから…」

82名無しのも私だ:2008/01/06(日) 23:27:20 ID:buqT2rFk
―統夜サイド
統夜「いったい何なんだ。」
父さんが生きていて異星人で地球の生命を創り出した奴らの幹部で、
今回のことは父さんがあの子達を助けるために組織を裏切り、
シャナがその女王で俺を守るためにここに来た。
統夜「まるで、面白みの無い漫画じゃないか!?」
テニア「残念だけど、これが現実だよ。」
そう言われてその子たちのほうに向き直る。
メルア「巻き込んでしまってごめんなさい…でもわたしたちにはこうするしか。」
おそらく、彼女たちはこの事態のことを言っているのだろう。だが、確かに
どちらも現実である。シャナが戦おうとしていて、俺には戦う力がある。
統夜「ちょっと、ここで待ってて。」
俺は、急いでシャナのほうに走っていった。
統夜「シャナ!!ちょっと待ってくれ!!」
シャナ「統夜、心配しないでください。あなたはあの子たちと避難を…」
統夜「違うよ、シャナ、君の役目を俺に任せてくれ。」
シャナ「でも…たとえ父親が騎士であっても戦う必要はないのですよ!?」
統夜「俺は今まで何も知らなかった。だから、少しでも君の役にたちたい。
それに、変な意味じゃなくて…君が俺の大切な人だから守りたいんだ。」
シャナ「えっ…と、統夜!?いや、そうですよね?変な意味ではなくですよね。」
シャナの反応に、変な空気が漂い始める。そのとき、
カティア「あの…提案ですが、お二人で操縦してはいかがでしょうか?」
突然、二人に声がかけられる。
シャナ「えっと、どうします統夜?」
統夜「やれって言うなら、やってやるさ。君と共にならなおさらね。」
俺の決意は揺るがない。きっと、こうするべきだと思うから。
カティア「それでは、邪魔者は退散しますね。」
カティアは、そそくさと二人の下に行った。実は顔を真っ赤にして…
統夜「よし!!行こう、シャナ!!」
シャナ「ええ、サポートは任せてください。」
統夜「そうだ!?シャナこの機体はなんていうんだ?」
シャナ「たしか、この機体の名は…」



83ラドクリフ教授の日記帳 ◆2OPVuXHphE:2008/01/09(水) 23:00:23 ID:mlH87fEY
宇宙歴95年7月25日
遺跡内部で同一のマシン2基が発見された。動力機関であることが推測されるが、動作方法は不明。
レース・アルカーナと名付ける。
 
宇宙歴96年1月7日
遺跡にてマシンが発見された。
用途、作動方法等は一切不明。とりあえずシュンパティアと名付けておく
 
2月19日
発掘機器の保管庫に忍び込んでいたジョッシュが、興味深いことを言っていた。
レース・アルカーナとシュンパティアのそれぞれ一面が似通っていると言うのだ。
指し示された部分は、一見しただけでは似ても似つかない。
しかし、接続端子と思われる部分は鏡写しで、つまり直接つなぎ合わせることが前提とされているかのようだった。
とりあえず今日中に準備を行い、明日には実験を行う。
 
2月20日
やった、成功した。
ほんの僅かだが、確かにレース・アルカーナでエネルギーが発生したのだ。
シュンパティアがレース・アルカーナの機動キーであることが実証された。
あとはいかにして、シュンパティアを制御するかがわかればいいだけだ。
 
2月28日
二度もジョッシュに救われた。
シュンパティアを動かす鍵を求めて1週間。
完全に行き詰まっていた私達の目の前で、レース・アルカーナが突如として膨大なエネルギーを吐き出し始めたのだ。
切っ掛けはジョッシュだった。
あの子によると、実験終了後の片づけの最中、いつまでたっても動かないシュンパティアとレース・アルカーナに困っていた私達のために『お願い』をしたのだという。
もしやと思い、もう一度ジョッシュに『お願い』をしてもらったところ、確かにシュンパティアが作動し、それに反応してレース・アルカーナも起動していた。
信じられないことだが、シュンパティアは人の意思に反応するらしい。
レース・アルカーナとの接続時に発生した微弱なエネルギーは、おそらくはあの場にいた人間の意思に反応しての事だったのだろう。
接続した時以降、起動時に何が起こるか判らずに危険だからと基本的に隔離されていた箇所でアームによる遠隔操作を行っていたため、ほとんど人は触れていなかった。
だが、そもそもの接続時にはかなりの人間が直に接触していたにも関わらず、起動しなかったのはどういう訳か。
まだ研究の予知は大きい。
 
3月11日
リ・テクの全職員を対象に、再度シュンパティア、レース・アルカーナの起動実験を行ってみたところ、シュンパティアに適合する人間としない人間が居ることがわかった。
その内の何名かは、最初の接続実験にも立ち会っていた。おそらくは彼らが起動の引き金となっていたのだろう。
だが、結局は誰もジョッシュほどの出力を出すことは出来ていなかった。
何が理由かは判らないが、ジョッシュはシュンパティアに対しての適性が有るらしい。
実に興味深い。
 
他の研究員の薦めで、ジョッシュに手助けをしたご褒美に何が欲しいか尋ねてはどうかと提案され、聞いてみたところ、弟か妹が欲しい、と言われた。
 
ジョアンナにも長い間会っていない。
ジョッシュも、子供一人では寂しいのだろうか。

84ラドクリフ教授の日記帳 ◆2OPVuXHphE:2008/01/09(水) 23:01:03 ID:mlH87fEY
3月12日
ジョッシュとの会話を聞いていた女性職員に、アドバイスをもらった。
早速ジョッシュの弟、あるいは妹となる養子を探すために、今度の定期便にて南極を出ることにする。
 
4月29日
ジオンと統合軍の戦争から僅かな時間しか流れていなかったというのも理由の一つだろう。
どこの孤児院も子供で溢れていた。
その中で私が選び出したのは、双子の女の子だった。
ジョッシュの一つ年下で一卵性の双生児だという二人は、なるほどそっくりだったが、クリスという大人しい子に、リアナという活発な子と、性格は好対照であった。
早速ジョッシュに引き合わせてみたところ、ジョッシュも二人を気に入ったらしい。
久しぶりに父親らしいことをしてやれた。
 
私が居ない間に、シュンパティアの別の基が発見されたとのことだ。
明日からさっそく、もう一基のレース・アルカーナとの接続実験に入る。
 
4月30日
今日は二つの発見があった。
一つは、シュンパティアは必ずしもジョッシュに適合するわけではないということだ。
先日発見されたシュンパティアと組み合わせたレース・アルカーナは、ジョッシュに頼んでみても全く動かなかったのだ。
もしやと思い、慌てて先のシュンパティアを試させてみたところ、こちらは何の問題もなく動いてくれた。
では、このもう一基のシュンパティアはまた適合者から探さなければならないのかと、少々憂鬱になっていた私の前で、今度はクリスとリアナによって、レース・アルカーナが動き出していた。
なんという偶然か、或いは必然なのか。
しかも、二人で動かすことによる物か、その出力はジョッシュの動かすシュンパティアとレース・アルカーナよりも遙かに勝っていた。
明日は、レース・アルカーナの最高出力を調べてみよう。
 
5月4日
ここ数日、日記を書ける状況ではなかった。
1日の実験が原因だ。
クリスとリアナによって、膨大なエネルギーを放出したレース・アルカーナはそのまま暴走。
リアナはその身を挺してクリスを庇い即死。
クリスも先程まで昏睡状態が続いていた。
他の研究員も死者こそ出なかったものの、大半が怪我を負って、私も軽傷だ。
しかし、何の因果なのか、爆発四散したレース・アルカーナはともかくシュンパティアは僅かに伝送系に負荷が掛かっただけで無事であった。
 
シュンパティア、レース・アルカーナは封印処分として、二度とジョッシュ達に触れることが無いようにしなければならない。
 
10月20日
おかしな事になっている。
最近ようやく起きあがれるようになったクリスだが、あれは本当にクリスなのか?
時たま、まるでリアナのような言動をとる。
 
11月1日
今日、はっきりとクリスが告げた。
自分の中にはリアナが居るのだと。
シュンパティアが、精神に作用する物だとする仮説が正しいのならば、崩壊するリアナの肉体からクリスの体にその精神だけが移ったとは考えられまいか?
 
11月2日
クリスを改名することにした。
リアナの名前と掛け合わせ、クリアーナという名前にしようと思う。
あの体に二人の精神が同居しているのなら、こうするのがより自然だ。
呼び名も、名字であるリムスカヤから取ってリムと改めるようにジョッシュにも言い含めるつもりだ。
そちらの方がより平等といえるだろう。

85ラドクリフ教授の日記帳 ◆2OPVuXHphE:2008/01/09(水) 23:01:34 ID:mlH87fEY
宇宙歴101年12月16日
面白い新人が入ってきた。
名前はクリフォード・ガイギャクス。
北欧の大学を出た、リ・テクとしては珍しいロボット工学が専門分野の青年だ。
 
宇宙歴102年6月23日
クリフがシュンパティアとレース・アルカーナの封印の解除を求めてきた。
あの二つを操作系と動力系に組み込んだロボットを開発して、遺跡の探査、及びインベーダーからの防衛に充てたいという事だった。
 
宇宙歴105年10月18日
迂闊だった。
シュンパティアとレース・アルカーナを動かせる者などここには僅か二人しかいなかったというのに、何故それが判らなかったのか。
クリフは、開発した機体のパイロットを、ジョッシュにしていたのだ。
リムのような事故がいつ再び起こるとも判らないと私は反対したが、ジョッシュ自身が遺跡と我々研究者を守るのだとやる気になっていることや、私自身が、既にしてリムの件を引き起こしていたことについて追求され、結局見過ごすこととなってしまった。
もう、あの子達にはシュンパティアもレース・アルカーナも過去の物としなければならないのに。
 
宇宙歴108年12月3日
とうとう、この遺跡の最深部と思われる場所にたどり着いた。
そこにあったのはいくつものプラントと、門だった。
これをファブラ・フォレースと名付ける。
プラントの方は、あの、忌まわしいレース・アルカーナを作るためのラインのようだ。
 
宇宙歴109年1月25日
探査のための前線宿舎にジョッシュが凄まじい剣幕で下りてきた。
クリフが、リムの件を話したらしい。
二つの人格が共存する状況になった原因は私にあるのかと尋ねてきた。
事実だ。
隠しても仕方のないことだ。
だが、認めた私の前からジョッシュはそのまま姿を消し、先程聞いたクリフの話によると、そのままレース・アルカーナ搭載機に乗って、リムと共に出て行ったらしい。
愛想を尽かされたか。
仕方有るまい。到底、私はいい親では無かっただろう。

86ラドクリフ教授の日記帳 ◆2OPVuXHphE:2008/01/09(水) 23:02:05 ID:mlH87fEY
 2月21日。
 自らの付けていた日記帳を読み返しながら、フェリオ・ラドクリフは嘆息した。
 今でも覚えている。13年前の5月の事故。
 あの後、クリアーナを改名したのは、今から思えば浅ましい欺瞞だったのやも知れぬ。
 幼かったジョッシュもリムも、クリスとリアナが元々二人だった時のことなどすっかり忘れているようだ。
 ジョッシュが二人として接していたのは僅かな時間で、無理もない。
 リムにしても、幼い頃からずっと一緒にいたために、かえって一人になってからの記憶と混同しているフシがある。
 だが、だからこそ、改めて謝罪しなければならないのではないか。
 自問自答し、日記帳を閉じる。
「クリフ」
『はい?ああ、教授。やはりレース・アルカーナの動力部と規格が合一です。出力次第ですが、ファブラ・フォレースを開けることも出来るでしょう』
 通信機越しに、報告をするクリフォード・ガイギャクス。
「それは、場合によってはジョッシュの手も借りねばならんかな」
『レース・アルカーナ、シュンパティア共々相当数が揃えられましたから、研究チーム内のC級適合者でも数さえ揃えれば問題ないでしょう』
 これは、都合が良いかも知れない。
「そうか……出来れば、ジョッシュも立ち会って欲しいな。我々リ・テクノロジストの一応の到達点だ」
『教授の言葉では動かんでしょう』
 平然と痛いところを突いてくれる。まぁ、だからこそ信頼も出来るのだが。
「そうだろうな。君は何か、良い案が有るのかな?クリフ」
『私の方でもリムに用事がありますから、それを名目に呼びましょう』
「用事?」
『ええ、レース・アルカーナ搭載機の二号機が完成したので』
「…………」
『教授が気に入らないのは知っていますが、リムとの約束でしてね』
「リム、か……」
 レポートとしては残していないから、クリフもあの事件の詳細までは知っていないだろうが……
『実験当時居なかった若造に、好き勝手やられて腹に据えかねるのも判りますが、第三者だからこそ見えてくる物もあります。教授、別にリムは貴方のことを怨んでやいませんよ』
「君に慰められるとはな」
『……別段、慰めたつもりはないのですがね。客観的な認識を口にしただけですよ』
 これで照れているのだから、始末に負えない。
 への字に曲げたその口元を、少しでも笑わせれば良い物を。
『ともかく了解しました。ジョッシュ達が帰るまで、ファブラ・フォレースは現状維持ですか』
「待つ必要がないのなら進めて構わん。ジョッシュが先に帰ってくればそれで良し、先に門が開いても結果さえ教えられればいい」
 通信を切って、素直ではないのは自分もかと自嘲する。
 自分はただ、会って、謝罪したいのだろう。ジョッシュとリム、クリスとリアナに。
(それでどうなるとも思えんが)
 リムを元に戻す方法などない。
 有ったとしても自分の知らぬこと。無責任ここに極まれり、だが……
(私は謝ることしか出来ない)
 まだ幼かった少女を、その危険性も理解せず実験の材料とした事と、その出来事をすら、幼い頃のあやふやな記憶を利用して隠蔽しようとした事を。

87 ◆2OPVuXHphE:2008/01/19(土) 06:12:05 ID:mlH87fEY
うはwwwwやべぇwwwwwwwww

プレイし直したら、教授に頼まれてリム用に調整したってドクトル言ってるwwwwwwwwwwwwww

88名無しのも私だ:2008/01/19(土) 12:11:56 ID:6Qqra6kc
何を言いますか?
設定とSSが食い違うなんて日常茶飯事だぞ?
昨今の創作物を見てみなさい。

作者本人さえ設定を把握してないのが大半なんだぞ!

89名無しのも私だ:2008/01/19(土) 19:46:15 ID:MONOMAyI
グランゾンの戦闘シーンをガチで書くために設定調べて、あまりのいい加減さにぶち切れた俺が通りますよ。

90 ◆2OPVuXHphE:2008/01/19(土) 20:29:02 ID:mlH87fEY
>>88
現実そうかも知れんけどさ、だからこそ、スマートに決めたら粋じゃね?
だからって、わざわざDの捏造クロスオーバー作るために中古のPSとはいえゲーム買ってきた俺も俺だが

>>89
ま、そもそもの最初期が2次スパですからな。
あの頃はまさかこんなに映像技術が進歩するとは思っても居なかったから、自然とそこら辺の設定はおざなりでしょう。

91名無しのも私だ:2008/01/21(月) 20:35:50 ID:plF7QxlQ
>>90
不粋ですが、一つだけつっこみを。
実はクリアーナの愛称がリムなのです。キャサリンをキャシーと呼ぶようなものです。

92 ◆2OPVuXHphE:2008/01/21(月) 21:59:06 ID:mlH87fEY
ああ、その点は大丈夫。
二人の人格統合前にはそれぞれをクリスとリアナってちゃんと呼ばせてあるから。
名前を変えることにしたって言う後からでしょ。リムって呼ぶようになったのは。

93ある正月の五人:2008/01/22(火) 14:20:35 ID:1/HkAYz6


「よーっす」
「おう」
「明けましておめでとー」
「今年もよろしくお願いします」
「いやいやいや。今年もよろしくっと」
「松の内にみんな集まれるとは思わなかったねえ」
「正月くらいは休まないとな。クスハ達は?」
「女だけで話すって、あっちで。こたつのある大部屋を取られた」
「そんなものまであるのか、ここ」

「うー、中はあったかい」
「ユウキ、お茶入れるか?」
「ああ、ポットを貸してくれ。伊豆基地にちゃんと入ったのは初めてだが、綺麗な所だな」
「いつまでいられるんだ?」
「明日の夕方に帰艦することになってる。それまでは自由時間だ」
「相変わらず忙しいんだなー。リョウトもだろ」
「僕はもうちょっと早いよ。明日の昼には東京に行ってないと」
「それで、また月か。大変だよな、会社と軍掛け持ちなんて」
「もう慣れたよ、充実してるし。でも、年末にちょっとショックなことがあってさー。
久しぶりに実家に帰って」
「うん?」
「たまたま家計簿を見たら、うちより僕の方が収入が多かった」
「うわっ。自慢してやがるこいつ」
「違うって!」

94ある正月の五人:2008/01/22(火) 14:21:20 ID:1/HkAYz6
「リョウトん家って、道場つったっけ? ちゃんとしたとこだろ?」
「うん、今でも結構門下生いるし、別に貧乏してるわけじゃないんだけど」
「なら、いいじゃん。お前が稼いでるってことだろ」
「それが重いんだってば。同級生で大学行ってて、まだ親にお年玉貰ってるような奴だって
いるんだよ? なんだかこう、居心地悪いというか」
「威張ってりゃいいじゃねえか。親御さんに何か言われるとか?」
「みんな喜んでくれたよ。でも父さんがちょっと複雑みたいで……僕に道場継がせる気
だったんだけど、言い出しづらくなったろうし」
「それだけの働きをしてるなら、堂々としていればいいだろうが。何をうじうじと」
「そう割り切れるものでもないさ。俺もくにが田舎だから、たまに帰ると金銭感覚がちょっと
違って戸惑うことがある」
「まあリョウトの場合、ゲームやってたらいきなり軍に入って、その後マオ社だかんな。
給料取りになったのが急すぎるってのもあるっしょ」
「そうなんだよー。リュウセイはそういうの、ない?」
「俺、バーニングPTで賞金稼いでたからな。あ、でもおふくろの入院費の明細とか見て、
最近わりと余裕で払える額でびっくりしたことはある」
「何にせよ、贅沢な悩みだぞお前ら。俺なんか整備兵と兼業がせいぜいだ」
「ひがむなよ。まあ、リョウトもそうだが俺達はかなりの高給取りなんだ。自覚しないとな、
責任も含めて」
「俺は自覚してるよ。だけど、R-1の頭一個だけで学校が建つんだぜ。ある程度は麻痺しなきゃ
やってられねえよ」
「あーまあ、お前んとこは特にな」

95ある正月の五人:2008/01/22(火) 14:22:39 ID:1/HkAYz6
「でも、お金使う趣味があると、その辺わりと健全でいられる気がするよ。映像ディスクとか
おもちゃとか買ってると、ものの値段がわかるでしょ」
「クスハがしっかりしてるのもそのせいか……」
「給料といや、クロガネってその辺はどうなってるんだ?」
「月給を貰ってるわけじゃないが、活動費として定期的に渡される。出所はよくわからん」
「それはそれで不安だな」
「そもそも、あの艦の活動資金ってどこから出てるんだろう」
「新春から生臭い話はその辺でいいだろう。みかんがもうないぞ」
「廊下を左に行くとでかい箱がある、その中にいくらでもあるぜ。土地柄」
「誰が行く? 廊下は寒いぞ」
「「「「「じゃーんけーん」」」」」
「……ちっ」
「おいしいね、このみかん」
「敷地の中に果樹園みたいなとこがあるんだよ。ケネス司令が来て潰されるかと思ったら、
あの人がみかん好きでさ」
「へー。グレープフルーツみたいな頭してるくせに」
「やめてよ、僕グレープフルーツ好きなんだから」
「……あ、ここにいた。あのね、お餅を焼いたんだけど、みんなで食べませんか?」
「おっ、いいねえ! 海苔ある?」
「もちろんです。あんこと納豆もありますよ」
「ようし、行こう行こう。おーい、ユウー!」


End

96毛布:2008/01/22(火) 14:24:18 ID:1/HkAYz6
ひっそりと失礼します。冬コミでこうへーさんにお会いした記念に
久々何か書こうと思っていてこんな時期になってしまいました。

97名無しのも私だ:2008/01/22(火) 19:29:28 ID:zpGL7Dso
ああ、このシリーズいいわぁ。
どんぶり3杯はいけるぜ。

98名無しのも私だ:2008/01/22(火) 23:09:00 ID:mlH87fEY
お、毛布さんverの第5弾だ。
保存保存と……

99名無しのも私だ:2008/01/28(月) 04:49:07 ID:305O5sxk
スーパーロボット大戦OGで萌えるスレ その210
の223を見ていたら

じっちゃん = タスクの祖父
に見えてきた(>>223の意図は違うだろうが)

しかし、このスレ的には、タスクの祖父:大金持ち だ

父方の祖父:大金持ち
母方の祖父:整備
なんだと思う

こんな感じ?

祖父「しかし、お前もマメだな。休みのたびにうちに来てるじゃねえか」
タスク「ここに来るといろいろ楽しいからな」
祖父「お前の母親とは大違えだ。玉の輿だと思ったら、とうとう一度も帰って気やがらねえ」
タスク「・・・死んだ人をそういう風に言うのはよそうぜ。それに、じいちゃんの娘だろ?」
祖父「だな、悪かった」

祖父「ところで、お前の方はどうなった?」
タスク「俺の方って?」
祖父「とぼけんな、美人のジョノカが居るんだろ?」
タスク「”ジョノカ”っていつの言葉だよ?」
祖父「俺の若えころ」

タスク「・・・まあいいや。どこで聞いたんだ?まだ話してないだろ?」
祖父「彼女から直に聞いた」
タスク「へ!?」
祖父「ほれ」 っ 『じいちゃんとレオナの写真』

タスク「な!?いつ撮ったんだ!?」
祖父「合成だ」
タスク「はぁ?」
祖父「暮れに小隊の集合写真を送ってきたろ、あれだ」
タスク「・・・相変わらず、いい歳して何やってんだよ」
祖父「俺は永遠の18歳だからな。だが、これでこの娘がお前の嫁候補であることは確実になった」

タスク「でも何でレオナちゃんが俺の彼女だって分かったんだ?」
祖父「この稼業をやってると聞こえて来るんだよ」
タスク「じゃあ、レオナちゃんのこと言ってみろよ」

祖父「レオナ・ガーシュタイン
   誕生日:11月30日、血液型:A型、オクト小隊所属
   名門ガーシュタイン家の娘で、ブランシュタイン兄妹の従妹
   沈着冷静で頭脳明晰プライドが高く、ツンデレ
   でも、何でもこなすように見えるが音痴で料理下手
   つまり、タスク・シングウジの好みど真ん中」

タスク「まあ、基本情報だな」

祖父「元コロニー軍トロイエ隊・・・だったが、DC戦争の後、
   お前に撃墜されて連邦軍に寝返った
   ちなみに、彼女がいまだにヒリュウ改に居残ってるのは、
   お前が引き止めたのと、隊長さんが勝手に登録しちまったから」

タスク「ふ、ふうん、よく調べてるじゃねえか」

祖父「ちなみに引き止めた時の台詞は『俺にみそ汁とか作ってくれつつ・・・』
   念願かなって、レオナちゃんの味噌汁を飲んだタスク君
   が、彼女は料理ベタの才能を遺憾なく発揮し、お前は失神
   しかも1回のみならず少なくとも13回は
   しかし、同僚のお姐さんのアドバイスの甲斐あり
   今ではおかゆだけは作れるようになったとさ」

タスク「・・・ちょっと待てよ。どうしてそんな細かいことまで知ってるんだ?」
祖父「ふふふ、俺の情報網をナメるなよ?」
タスク「あんた本当にただの整備員か?」
祖父「もち」

100名無しのも私だ:2008/01/28(月) 05:23:53 ID:s0Hzm5Ps
ブランシュタイン兄妹?
兄妹?
ああ、たぶんさらに妹がいるんだろうな、うん

101名無しのも私だ:2008/01/28(月) 12:54:16 ID:8d0pWAYw
お久し振りの。
続々々々々々・イングラム先生のお悩み相談室。

ゼンガー=ゾンボルト。男の魅せ所。

102差無来!!:2008/01/28(月) 12:57:43 ID:8d0pWAYw
――極東伊豆基地 ハンガー裏手
 多くの人間が働き、また広大な敷地面積を誇る伊豆基地。華々しい日々の喧騒から切り離され、半ば人々の記憶から忘れ去れた様な場所が其処にはある。
 元は保養目的の為に作られたのだろうが、訪れる者も無く、雑草だらけで荒れ放題になっている緑地の様なその空間。朽ち果てた一脚のベンチに腰掛けている青年の姿があった。
「・・・」
 その人物の名はイングラム=プリスケン。長身痩躯の青ワカメ的な好青年で、似非カウンセラーとして活躍している皆の先生である。
 その先生はと言うと、別段何をする様子も無く、じっとベンチに座ったまま白痴の如く天を仰いでいた。
 今の彼は照り付ける陽の光を受けて光合成する植物の様だった。……否、ワカメも褐藻類である以上、光合成くらいはやってのけるのかもしれない。
 
 陽が南中してから数時間、微動だにせず光合成を続ける先生。冷気の含んだ風が時折吹き付けてその蒼い髪を揺らすが、やっぱり先生は動かない。まるで悟りを開いたかの様に。
「……?」
 そうして陽が少し傾いて来た時、先生は何者かの気配を感じ取り、その人物が居るであろう方向に視線をずらした。
――ザッザッ……
 草を掻き分ける音と共に、誰かの姿が見えてきた。

「む……?」
 現れた人物はベンチに座るイングラムの姿を見つけて少しだけ驚いた様だった。
「・・・」
 だが、当のイングラムはその人間に興味を持つ事は無く、目を閉じると再びお日様の光を吸収し始めた。
「イングラム=プリスケン……」
 その人物は若干、慎重な足取りで先生に近付く。そうして、暫く先生を眺めた後で口を開いた。
「お前は、何をしているのだ?」
「見ての通りだが?」
 非常に渋い男を感じさせる美声の持ち主だった。先生並の高身長を誇り、厳ついガタイと険しい瞳。そして凛々しい顔と銀髪を持った侍。
 その人物の名はゼンガー=ゾンボルトと言った。

103差無来!!:2008/01/28(月) 12:58:48 ID:8d0pWAYw
「いや、さっぱり判らんのだが」
「だから日向ぼっこだ。それ以外の何かに見えるのか?」
「一瞬、瞑想の類かと思ったが」
「フッ……そんな大層なモノではない」
 イングラム先生は自分より1cmだけ背の高い男の顔を見上げていった。先生とゼンガーは仕事上の付き合い以外に殆ど接点が無い。
「それで、何時から此処に」
「正午少し前位からか。それがどうかしたのか?」
「いや……お前はそんなに暇なのか?」
「今日は公休日だ。俺の様に何もせず過ごす人間が居ても良かろう。それに此処は人が寄り付かんからな」
「緑の匂いに誘われたか?」
「ああ、それもある。……と言うか、良く知っているな。」
 普段から口数多い方ではないゼンガーも先生の前では饒舌にならざるを得ないらしい。元々自然散策が好きな先生はこう言った人気の無い緑が豊富な場所に居る事を好む。
 だが、先生と接点が殆ど無いゼンガーがどうして彼の趣味を知っているかは不明だった。
「お前は何故此処に?」
「ああ。剣を振ろうと思ってな」
 ゼンガーの言葉に先生は視線を彼の身体に向ける。その手には確かに鞘に納まった真剣が握られていた。
「……邪魔なら消えるが」
「否。その必要は無い。寧ろ、それはどうでも良くなった」
 人気のない場所だからこそ、剣の修行の場にゼンガーは此処を選んだのだろう。それなのに自分が居ては邪魔になると踏んだ先生は、ゼンガーにこの場を譲る旨を告げたがそれは断れた。
「何?」
「イングラム=プリスケン……これも何かの縁なのだろうな」
 最早、剣を振る気が失せたゼンガーはイングラムの目をじっと見つめた。イングラムと言う人間の心を図るかの様にだ。
「な、何だ?」
 他人の心を見透かすのが上手い先生も逆の立場になれば弱い場合も多々ある。今の場合がそうだ。先生は何とか体裁を保ち、邪気が無い心の内を瞳に映し出した。
「風の噂に聞いたが……お前は駆け込み寺を営んでいるらしいな。……本当か?」
「う、お前の耳にも入っていたのか。……まあ、成り行きで、な」
「そうか……」
 気を持ち直した先生にはゼンガーがしたい事が見えてきた。だが、それよりも自分が有名になってしまったと言う事実に吐き気を催しそうになった先生。
 ……普段はクロガネの直援として色んな場所を飛び回っているこの男にも自分の副業(?)が耳に入っていると言う事。
 もう手遅れなのかも知れないと先生は諦めた。
「為らば、俺の悩みも聞いて貰えるのだろうかな」
「何だと?」
「意外、か?」
「いや、失敬」
 ゼンガーはイングラムが信頼できる人間だと確信出来たらしい。嘗ての洗脳状態の時とは違い、先生の瞳には黒い部分が全く無かったからだ。
 だからこそ、ゼンガーはイングラムに悩みを打ち明ける。剣の鬼であるゼンガーも人の子である以上は悩みとは無縁では居られないらしかった。
「ああ。そちらが語ると言うのであれば、俺も聞くし、助言の一つもしてやれるかもしれないな」
「なら、聞いてくれ。今は……藁にもワカメにでも縋りたいのだ」
「……座ったらどうだ?」
「うむ」
 ワカメ呼ばわりするな。そう先生は叫びたかったが、話が進まないのでそれは自重した。

104差無来!!:2008/01/28(月) 13:00:22 ID:8d0pWAYw
――数時間後 イングラム私室
 伊豆基地の兵舎の中でも辺境と言える程の外れにあるイングラムの部屋。彼の執務室と併設されているこの場所は移動の面では非常に都合が悪い。まるで隔離、若しくは島流し的な扱いの悪さだ。
 だが、その移動の利便性を犠牲にする事で彼の部屋は上級士官用としては破格の広さを誇っている。元々は空倉庫を改修しただけあって、それこそマンションの一部屋に相当する快適性を誇っていた。
「今帰った」
 自動ドアを開け、自室の中に足を踏み入れる先生は中に居る人間に帰りを告げた。
「お帰りなさいっス」「お疲れ様少佐〜〜」
 当然、そんな居心地の良い空間に引き寄せられる人間は出てくる。中からの返事は二つ。聞き慣れた少年の声と聞き飽きた間延びした女の声だ。
 アラド=バランガとセレーナ=レシタール。最初は匿う形……そして今は半居候と化した大食ぷに少年と何時からか懐かれてしまったおっぱい忍者の両名だった。 
「・・・」
 先生は言葉を発せなかった。アラドに関しては良い。自分で納得した上で引き入れた人間なのだから部屋に居てもおかしくはない。事実、部屋を出る時にもアラドは自分を見送ってくれたのだ。
 問題はセレーナの方だった。別に苦手意識は無いし、出入り禁止にしている訳では無い。偶に寝込みを襲われる事はあるが、それは問題ではない。
 今、彼女に持ち上がっている問題……それは彼女の格好についてだ。
 セレーナは何故か下着姿だった。風呂にでも入っていたのかも知れない。
「随分遅かったっスね。日が暮れるまで何してたんスか?」
「少佐ぁ……お疲れなら、私が誠意を以って癒しましょうかぁ?」
「ああ。ちと、長話が過ぎた」
 長話と言うか、また相談事を受けたのだが、説明が面倒なので此処は省く事にしたイングラム。
 加えて、セレーナの言葉はガン無視する事を決め込んだ。彼女の言葉の韻が卑猥なのは故意である事は間違いなかった。
「む……ちょっと少佐!何か私に言う事無いんですか!」
「あ?」
 セレーナは少し頬を膨らませている。どうやら無視した事を怒っているらしい。だが、イングラムはこの女に関わりたくなかった。
「お前の格好について、か?」
「そうそう!若い女が肌を見せてるんですよぉ?目のやり場に困る〜〜、とか勃起する〜〜とか無いんですか?」
 身体を張ったギャグなのか、それとも頭の螺子が跳んでしまったのかどちらかしか考えられないイングラム。当然、後者であると勝手に決めたイングラムは舎弟に任せる事にした。
「アラド、何か言ってやれ」
「俺?い、嫌っスよぉ!同レベルに落ちたくないっスもん!」
 当然、アラドはそれを拒絶した。見て見ぬ振りを続けたいらしい。だが、それは無理だった。
「ア・ラ・ド・君?どの口がそんな失礼な事言うのかなぁ」
「いっ!?いひゃいいひゃい!!」
 頭に青筋の十字路を浮かべたセレーナがアラドの魔性のほっぺを抓り上げた。
「はあ……やれやれ」
 自分の舎弟、と言うか弟子、または弟分が泣かされるのを黙って見ていられない先生はセレーナを黙らせる事にした。これ以上、寸劇に付き合う気は無かったのだ。
「セレーナ」
「は、はい!」
 たゆん、と自慢のお胸を揺らしたセレーナが姿勢を正す。何か彼女は自分にとって好ましい……例えば容姿を褒める類の言葉を先生が発するとでも思ったのだろうか?
 ……答えはNoだ。それとは真逆の言葉がセレーナに浴びせ掛けられた。

「お前の身体は見飽きた。それ以前に目が腐る。何か着ろ」

 決着。セレーナのライフはゼロになった。
「……ぐすっ」
「す、凄え!俺には絶対に言えない台詞だ……!」
 半泣きのセレーナはグスグス鼻を啜りながら自分の服を着る。アラドは自分の師の偉大さを殊更見せ付けられた様に感動していた。

105差無来!!:2008/01/28(月) 13:02:16 ID:8d0pWAYw
「何の話してたか忘れたけど……それより、今日のご飯は何スか少佐?」
「む……いかん。忘れてた」
 余計な事に精神を消耗させられたアラドはイングラムの言った長話には興味がないらしい。今の彼にとって重要なのは晩飯だった。
 そんなアラドの言葉に先生はハッとさせられた。今日の飯炊きは自分だと言う事をすっかり忘れていたのだ。
「いいっ!?そんなあ!」
「献立は冷蔵庫の中身次第だな。何も無いなら今日は外食だ」
「ええ?……少佐の作るご飯が食べたいんスけど」
「そう言われても、な」
 あからさまに肩を落としたアラドは先生の手料理を心待ちにしていたらしい。味云々ではなく、心の篭った大量の料理を食べたい年頃なのかも知れなかった。
 イングラムはアラドには悪いが冷蔵庫の食材で全てを決めようとした。何かあれば何とかなる。何も無くても何とかなる。
 そうして先生は冷蔵庫の扉を開けた。
「む?これ、は」
 中を覗いた先生は首を傾げる。中には大量の野菜類、魚類がゴロゴロしていた。
 ……こんなに沢山買ったかしらん?記憶の糸を手繰り寄せても、買った覚えが無い食材がそこにはあった。
「あ、さっき補充しときましたよ。田舎から送ってきて食べきれないから」
 復活を果たしたおっぱい忍者が手をヒラヒラさせていた。
「お前かセレーナ」
「あ、そう言えばそうだった。ぐっじょぶっス!セレーナさん」
 犯人はセレーナだった。彼女は手ぶらで飯を集りに来る事があれば、こうして頼んでもいないのに食材を補充する事がある。
 ……そして毎回気になる事だが、この女の故郷は何処なのだろうか?スペイン辺りだと踏んでいる先生にもいよいよ判らなくなってきた。
 どこからどうみても日本の食材としか見えないものが其処には含まれているのだ。
「大した事無いわよ。と、そう言う訳で少佐?愛の篭った男の手料理を一丁お願いします♪」
「……お前への愛なぞ無い」
「少佐、なるべく早くお願いするっス!」
「直ぐには出来ん。酒か煙草でもやって待っていろ」
 ギャラリーとの会話をそこそこに、先生は煙草に火をつけ、煙をふかしながらキッチンへと向かう。
 先生はキッチンドランカーでは無いが、キッチンスモーカーではある。……やっぱり先生は不良だった。

106差無来!!:2008/01/28(月) 13:03:48 ID:8d0pWAYw
 ……で、数十分後。
「では、頂き、ます」
「頂きますっス!」「頂きま〜〜す」
 テーブルに乗った夕餉に仰々しく手を合わせたイングラム。アラドとセレーナも先生に続き手を合わせた。
 本日のプリスケン宅の夕食献立……石狩鍋、常呂産帆立バター焼き(殻付き)、サロマ産牡蠣フライ、富良野牛のカルパッチョ、(消費期限間近の)釧路産牡丹海老の塩焼きetc
 ……見事なまでの北海道フェアだった。これだけの量を僅か数十分で作る先生は只者ではない。
「こりゃあ、うんめえぇ!レーツェルさんにゃ出せない男の味っスわ」
「シェフとして生計を立てられる男と比べられても困るが……まあ、喜んでくれたのなら幸いだ」
「大満足っスよ!……あ、ご飯おかわり」
「自分でよそえ」
 早速、ご馳走の群れにがっついたアラドはどんぶり飯をあっと言う間に平らげた。見ていて気持ち良くなる食べっぷりだった。
「この味の虜になりつつある自分が怖いです。本当に、毎日食べたいくらい」
「作るのは構わんのだが、後片付けが面倒でな。毎日は気合を入れて作りたくない」
「またまた。少佐はきっと良いお婿さんになれますよ。料理上手の男の人って貴重ですから」
「俺が娶られるのか?まあ、それでも良いが……相手が居ない裡は転んだって無理だな」
 セレーナも先生の料理に舌鼓を打ちながら、その味を褒めていた。こうやって数人集まって飯を掻き込む時は先生だって口数が多くなる。団欒の力は中々に侮れない。
「では、俺は一杯やらせて貰うか」
 自分で作った飯を喰う事はそこそこに、先生はテーブルの下から男山の原酒を取り出し、自分のコップに注ぎだした。度数の高そうな米の甘い香りが広がった。
「お前もやるか?アラド」
「え?……今日は止めときます。昨日、やりすぎたんで」
「そっか。セレーナ、お前は?」
「勿論頂きまっす!」
「では、コップを出せ」
 酒の相手を求めた先生はアラドには振られたが、セレーナを誘う事には成功した。出されたコップになみなみと酒を注いでやると、セレーナはそれを飲む。
「こりゃまた、美味しそうなお酒。味の方は……(ゴキュ)かああああ〜〜!堪んねえなこりゃ!」
「親父臭い女だ。嫁の貰い手、果たして居るのかどうかが疑問だな」
 親父臭いと言うよりは、泥付きの田舎娘臭いと言うのが正しい表現かも知れない。こんなのとコンビを組まされているエルマが可愛そうに思えてきた先生だった。
 その後凡そ一時間、他愛も無い話に盛り上がりながら夕食の時間は過ぎて行った。

「……むう」
 恙無く終了した団欒の後、先生は酒をちびちび呷りながら考え事をしていた。それは先程会ったゼンガーとの一件についてだ。むっつり黙りこくり、眉間に皺を寄せて思案するその姿は周囲に少なからず威圧感を与える。
「・・・」
 セレーナはアラドが立てる食器を洗う音には耳を貸さず、ただじっとイングラムを見ていた。

107差無来!!:2008/01/28(月) 13:05:37 ID:8d0pWAYw
「……座ったらどうだ?」
「うむ」
 ごつい男が隣に座ると朽ち掛けたベンチはギシッ、と嫌な音を立てた。
「それで、お前の心を悩ませているモノとは一体……」
「・・・」
 チラ、と先生はゼンガーを横目で盗み見た。ゼンガーは顔を俯かせ、少しばかり戸惑っているかの様に足の間で両手を組んだ。
 そうして、五秒ほど待つと、ゼンガーは覚悟が入ったかの様に呟いた。
「……ソフィア=ネート」
「む」
「彼女の事で、な」
「ソフィア=ネート……と言えば」
 御存知、プロジェクトアークの責任者であり、アースクレイドルの主。メイガスの開発者でもあり、何処かの世界ではアストラナガンをアウルゲルミルで喰った女性だ。
 加えて、彼女は何故かゼンガーとは親しく、何処かの誰かには心の伴侶とまで呼ばれている女性。ゼンガーの悩みの種は彼女についての事らしい。
 ……因みに、ソフィアは先生とは面識が無い人ではあるが、その容姿や立ち振る舞いは実に先生好みのだったりするのは秘密だ。
「で、その彼女がどうかしたのか?」
「うむ。近頃、彼女が素っ気無くてな。正直、持て余しているのだ」
「素っ気無い、か。具体的には?」
「軽く挨拶しようと思えば、無視される。廊下などで擦れ違えば、目を伏せられる。気が付けば、遠くから睨み付けられている……こんな処だ」
 ゼンガーの言葉を聞き、ソフィアのその時の姿を想像して先生は目を細める。確かに近寄り難い雰囲気と美貌を持つソフィアだが、他人相手にそんな態度を取るとは考えられなかった。
 若し、そんな態度を取るとするならば、理由は一つだけだろう。
「それは……素っ気無いのでは無く、怒っているのではないか?」
「……やはり、そうなのか」
「聞く限りではそうとしか思えんが。……と、言うかお前は何をやらかしたと言うのだ?ネート女史の怒りを買うとは」
「む……」
 ゼンガーも心の中ではそう思っていたらしい。だが、ソフィアに限ってそれは無いだろうとゼンガーは踏んでいたのだろう。先生から改めてそう告げられてゼンガーは言葉に詰まった。
「……彼女が怒っているとして、だ」
「ああ」
「俺にはその理由がさっぱり判らんのだ」
「・・・」
 ゼンガー本人にもソフィアを怒らす原因は判らないと言う。そう言われては先生とて何も言葉は掛けれなかった。
「俺は、どうするべきなのだろうかな」
「いや、それだけでは流石にどうしようもない」
「……そうか」
「お前としてはどうしたいんだ?聞いて欲しかっただけか?仲裁に入って欲しいのか?それとも、ただ怒りを冷ましたいだけなのか?」
 どうやら、ゼンガーは内心で相当焦っている様だ。明確な指針が自分の中で確立していない。何をしたいのか?何をして欲しいのか?ゼンガーの中にそれが無い以上、先生は行動出来ないのだ。
「お、俺は……」
「悩む場面か?支援して欲しいのなら、そう言ってくれ。俺はお前の力になるぞ?」
「イングラム……」
「過去には色々あったが、今はどうでも良い事柄だ。俺を信じてくれるなら、お前の望む形に落ち着く様、尽力しよう」
 イングラムは熱い台詞を吐き、ゼンガーの心を揺るがした。真面目で実直なこの男が迷いを抱える今、それを取り除けるのは自分だけだと言う事を理解した上での言葉だった。
 先生の言葉に、最後まで手放せなかった警戒心を捨て去ったゼンガーはとうとう頭を垂れた。

「ならば、力を貸してくれイングラム」

「それで、良いんだな?」
「ああ。お前を信じる。彼女の怒りを冷まし、原因を見つけた上で、元の鞘に俺は戻りたいんだ」
「了解した。ゼンガー」
 差し出されたゼンガーの右手を取ったイングラムは優しくそれを握った。剣ダコの目立つ、ゴツゴツしたその掌は冷たかった。

108差無来!!:2008/01/28(月) 13:07:01 ID:8d0pWAYw
「……とは言ったものの、情報が少な過ぎるな。此処はやはり、本人と話した方が一番良いのだろうな」
「何?」
「ゼンガー、お前に彼女を連れてきて欲しい。話を聞ければ、後は俺の領分だ。幾らでも良い方向に持っていけるだろう」
「ソフィアをお前の前に連れて行けと言うのか!?」
 協力関係に入ったゼンガーには是非やって貰わなければならない事がある。今言った事がそうだ。当然、ゼンガーは声を荒げた。
「ああ。彼女と面識の無い俺が呼べば不自然だろう?お前にしか出来ない事だ」
「む……ぬ」
「逃げる場面じゃない。それ位はやって貰う。……判っているだろうが、お前の為だ」
「承、知」
 渋々……否、半ば嫌々ゼンガーは頷いた。気拙い雰囲気のソフィアを誘う事はかなりの重労働になる事が判りきっているからだ。
「うむ。では明日……否、二日後にヒリュウで落ち合おう。それだけ時間があれば平気だな?」
「ああ、こちらで何とかしてみる……って、待て。ヒリュウとは、酒場の?」
「そうだ。場所は知っているだろう?夜九時以降なら俺は居る。……お前に飲めとは言わんさ」
「・・・」
 ゼンガーは先生が何をする気なのかが全く読めなかった。
 先生は相手を酒に酔わせ、思考力を奪った上でイカサマトークを炸裂させる気だった。それこそが先生の常套手段であるのだが、酒がほぼ一滴も飲めないゼンガーには酒の臭いが充満する酒場に居る事はそれだけで辛い。
 案外、ゼンガーとイングラムは相性が悪いのかも知れなかった。

「最後に一つ聞くが」
「何だ?」
 陽が暮れてきて、寒さが厳しくなってきたので二人はこの場での話をお開きにする気だった。立ち上がり、背中を見せたゼンガーに先生は声を掛ける。
「お前は普段、クロガネの乗員として彼方此方飛び回っているが……帰ってきたのは先日だな。連絡は取り合っていたのか?ネート女史と」
「ああ。頻繁に便りは来たがな。……此処最近は忙しくてまともに返事を返せてはいなかった」
「……筆不精なのか?お前は」
「そう言う訳では無いがな」
 ゼンガーの言葉がどうしてか先生の心に引っかかった。忙しいから、と言うのは理由にならない気がするが、何かそれこそがソフィアの怒りの根幹にある気がした先生だった。
「では、お前の娘はどうなんだ?ネート女史の様に風当たりが?」
「イルイの事か?……いや。変わらず俺に懐いているが」
「ふむ。お前が留守の間、誰がイルイの面倒を?」
「ソフィアだが」
 先生の心に何かが閃く。これはまさか。……だが、憶測で物を語りたくない先生はその考えを頭の隅に追いやった。

109差無来!!:2008/01/28(月) 13:07:50 ID:8d0pWAYw
「どうしたものかな、これは」
 何となくだが、ソフィアの不機嫌の察しが付いた先生は自体をどう収集すべきか思索を巡らせる。最悪、ゼンガーにはキツイ事を言わねばならなくなるからだ。
「何が、なんです?」
「む?」
 セレーナの声に現状を再認識させられる先生。気が付けば、かなりの時間が経過していた。
 アラドは食器洗いを終え、自分の横に何時の間にか座っているし、一升瓶に入った酒の量も半分に減っていた。
「ひょっとして、また相談事の類ですか?」
「いや、それは」
「あ、言いたくないなら構わないんですけど」
「む」
 口ではそう言いながらセレーナはじっとこちらの瞳を射抜いている。アラドも同様の視線を向けて来ていた。
 ……全てはこの女が始まりだった。その所為で自分の噂が様々な人間に飛んでしまったのだ。だが、その御蔭で様々な人間とのパイプは出来たし、アラドとだって仲良くなれた。
 最初は忌々しかったが、今はそれを素直に感謝出来る。
「実はな……」
 先生は口を開き、掻い摘んだ説明を始めた。

「ぜ、ゼンガー少佐って……また、大物が出て来ましたね」
「ああ。それだけ、ネームバリューが付いて来たと言う事の証かも知れんな」
「マジっスか?あのミスター武士道に悩みなんて」
「あの男とて、木の股から生まれた訳ではない。そう言う事だ」
 やはり、ゼンガー=ゾンボルトの名前は大きかったらしい。セレーナもアラドも揃って同じ様な顔を晒していた。
「それで、次に会うのは?」
「二日後だ」
「勝算は、まあ師匠の事だから当然あるっスよね」
「何となくは、だな。自信は無いが」
 勝算……と言うか、悩みを解決し、ゼンガーの望む結末に導いてやれるかどうかなのだが、今回はそれがちょっと怪しい。
 だが、鍵らしきものを既に見つけている先生は恐らく、勝つのだろう。アラドにはそれが判っている。
「私、何も出来ないですけど応援してますね」
「俺も師匠の勝ちを祈るっス。……結果は教えて欲しいっスけど」
「ありがとう、二人共。何より、励みになる言葉だ」
 仲間からの声援を受けた先生は、柔らかな笑みを湛え、その内に静かな闘志を燃やす。それは昔のイングラムには考えられない事だった。

110差無来!!:2008/01/28(月) 13:09:19 ID:8d0pWAYw
――あっと言う間に二日後 BARヒリュウ
「今日は随分と控えめに飲みますなあ、少佐」
「ああ。後で客が来る予定になっている。飛ばして飲む訳にはいかんのだ」
 最早、先生にとってのホームグラウンドとなったヒリュウ。そのカウンター壁際の定位置でショーン=ウェブリー少佐と談笑を交わす先生。
 その光景はヒリュウでは最早御馴染みの光景だし、逆にそれが無い日はヒリュウは火が消えた様に寂れるのだ。
 ヒリュウの主となって久しい先生は約束の時刻の一時間前から彼等が現れるのを待っていた。
「少佐を尋ねる客が居る、と?」
「ああ。多分、副長にとっても珍しい客だと思う」
「ほう……それは興味深い。楽しみにさせて貰いますかな」
「きっと驚くと思う。……温燗、もう一本」
 ショーンの驚く顔が目に浮かぶイングラムは含み笑いを浮かべて、空の銚子をショーンに渡した。
 ……そうして、約束の時刻から三十分後
「どうやら、来たようだな」
 来客を伝える様にドアベルが鳴った。今日の生贄……否、主役達が漸く登場した。
「いらっしゃ……!」
 ショーンの言葉は途中で止まった。予想通り驚いてくれたマスターに先生は笑いそうになった。
「こっちだ。二人共」
 先生が大きく手招きすると、ゼンガーはカウンター席までやって来た。その後ろにはソフィア=ネートがぴったりと付いて来ていた。
「約束通り、連れてきたぞイングラム」
「ご苦労様。……やはり、骨は折れたか?ゼンガー」
「いや、実はそうでもなかった」
 ゼンガーの表情を見る限り、その言葉に偽りは無さそうだった。そうして、軽めの挨拶に談笑を混ざらせていると、ソフィアが一歩前に出た。
「貴方だったのですね。ゼンガーが私に会わせたい人と言うのは」
 確かに美しい女性だった。強い意志が感じられる藍の瞳、と柔和さを感じさせる優しい微笑みを湛えた顔。
 後ろで纏められた色素の抜けた空色の長い髪の毛を引っ提げ、肌の色は雪の様に真っ白だ。知性を感じさせる広めのおでこはきっとチャームポイントなのだろう。
「そう言う事、ですな。ネート女史。……お初にお目にかかる。イングラム=プリスケンだ」
「ソフィア=ネートです。……直接、お会いするのは初めてですね」
 お互いに深々と頭を下げた先生とソフィア。些か仰々し過ぎる気がするがお互いに初対面なのでこれ位で丁度良かった。
「まあ、立ち話もあれでしょう?お二人とも、お掛けになっては如何ですかな」
 マスターがそう言葉を投げるとゼンガーとソフィアは同じタイミングで椅子に腰掛けた。ゼンガーの座った三本足の木製スツールがギシッ、と音を立てた。
「大物を連れてきましたな、少佐。一体、どう言う経緯で……」
「説明は面倒だから省く。だが、十分驚いただろう?」
「ええ、そりゃあもう」
 ひそひそと先生に耳打ちするショーンは最早、驚きを通り越して半分混乱している風にも見て取れた。これでまた一つ、ショーン副長は先生に対し謎を増やした。

「取り合えずは注文を。マスター?ゼンガーにウーロン酎を……」
「待たんか貴様。……殺す気か」
「冗談だ。彼にはウーロン茶を。で、ネート女史は……?」
「あ、私は熱燗を頂きたいのですけど」
「日本酒?……なら、丁度良い。俺の酒を出してやって欲しい」
「ウーロン茶と銀嶺月山の燗ですな?暫しお待ちを……」
 注文を聞いたマスターは奥に引っ込んだ。ソフィアは少し申し訳無さそうに呟いた。
「宜しいんですか?少佐のお酒を」
「構いませんよ。無理言って来て貰ったのはこちらです。飲み代位は負担します」
「し、しかしイングラム……良いのか?」
「ああ。まあ、任せてくれ」
 やっぱり含みのある笑みを浮かべイングラムは頷く。ゼンガーもソフィアもその言葉を頂戴する事しか出来なかった。
 そうして暫く待っていると、二人の注文が運ばれて来る。ソフィアはお猪口に燗酒を注ぎ、それを少し啜った。
「あら……おいしい」
「冷やして飲んだ方が上手い酒だが、敢えて燗で飲むのも贅沢ですな。遠慮せずにいって下さい」
「え、ええ」
「酒、か。俺には解からん世界だな」
「それだけ剣の腕がありながら、酒の味を解さないとは……不幸な事だな」
「そうかも知れないな……」
 美味い酒に感嘆の声を漏らすソフィアを尻目に、ウーロン茶をちびちび啜るゼンガーは決まりが悪そうだ。何処か残念がっているのはきっと気のせいではなかった。

111差無来!!:2008/01/28(月) 13:10:44 ID:8d0pWAYw
それから暫くの間は平和な時間が続いた。お互いの仕事の話やら取り留めない馬鹿な話に笑みを漏らしひたすらに酒とウーロン茶を消費し続けた。
 そして、時計の長針が一周した辺りで先生は仕事に切り出した。
「そろそろ、頃合か」
「え?」「……!」
――来た。ゼンガーはその時が訪れた事を悟り、顔を険しくさせた。だが、ソフィアは何の事なのか全く判らなかった。
 イングラムはじっとソフィアの顔を見つめた。ゼンガーの話では相当に怒っていた様だが、今の彼女の顔からはそう言った感情が一切見られない。
 つまり、それは彼女が怒りを手放していると言う事に他ならない。ゼンガーが彼女を誘う事に苦労しなかった点から考えても、自分の考えが間違いでない事は明らかだ。
 後は……その原因を暴き、両者の間で明らかにするだけだった。
「俺が今回、ご両人に会いたかったのは……他でもない。少し前に貴女が煩っていた不機嫌の原因究明とその対処についてだ」
「っ」
 告げられた真実にソフィアの顔が驚愕に歪む。何かあるとは踏んでいたソフィアだったが、何が待ち受けているのか迄は見抜けなかったのだ。
「まあ、俺には機巧が見えたが、その男は相変わらず何も判っていない様だ。だから、それをはっきり此処で知って貰う」
「ゼンガー……貴方は」
「済まん、ソフィア。俺が頼んだ事だ」
 少しだけ責める様なソフィアの視線がゼンガーに飛んだ。ゼンガーは落ち着きの無い様子で頭を下げる。その顔色はとんでもなく悪かった。

「私は、怒ってなどいませんよ?」
「今はそうでしょうな。だが、以前はそうだった筈だ。今、怒っているか否かは問題ではない。その原因だ。知らなければ、その男はまた繰り返すだろうからな」
 確かに彼女は怒ってはいない。だが、今明かさねばならないのはその原因についてだ。ゼンガーはそれを知らなければいけないのだ。
「・・・」
「ゼンガー……」
 無言で何かに耐える様にゼンガーは瞳を閉じていた。ソフィアはその佇まいが危うく見えたのか、自分が言いたい事が喉の奥に引っ込んでしまった。 
「俺の口から、言うか?」
「それは」
 当然そうなるのは目に見えていたので、ソフィアの代わりに第三者の視点からゼンガーに真実を語ろうとするイングラム。だが、ソフィアはそれを止めようとした。
「いや、いい。頼む、イングラム」
「ああ、では」
 だが、ゼンガーはそれを受け入れた。今は後腐れが無い様にきっぱり、すっぱりと自分に言葉をぶつけて欲しかったのだ。先生は頷いた。

112差無来!!:2008/01/28(月) 13:12:59 ID:8d0pWAYw
「どうして彼女がお前の誘いに乗ったか、解かるか?」
「偶々、機嫌が良かった……のでは?」
 イングラムの問いに手探り状態でゼンガーは答えた。声が若干、上擦っているのは何の感情の所為なのかは判らない。
「違う。嬉しかったのさ。お前に誘われた事がな」
「だから、容易く怒りは手放せた。……そうでしょう?ネート女史」
「・・・」
 案の定、正解を外したゼンガーにそう語るイングラム。怒ってはいても、好いた相手の誘いだからこそ、喜んで受けた。
 それが正しい事を示す様にソフィアは静かに首を縦に振る。
「では、もう一つ。何故、彼女が怒っていたのか?その理由は?」
「むっ……それが解からんから、俺は」
「フッ、そうか」
 そうして、更に設問が追加された。そもそも、ゼンガーはその答えを得る為にイングラムの協力を仰いだのだ。答えられないのも仕方ない事だった。
 イングラムはそんなゼンガーの解に少しだけ微笑を浮かべ……
「呆れた奴だな、お前」
 そうして、心底絶望したと言った表情を見せた。実は答え気付いていないのではなく、故意に茶を濁しているのでは?……と、先生は邪推してしまった。
「何……?」
 だが、そうではなかった。そんな先生の言葉と表情にムキになったのか、ゼンガーは少しだけ怖い表情をした。
 先生は渋々正解を語ってやった。
「それは彼女が寂しかったからさ。お前の身を案じ、何度も何度もお前に便りを出していたんだぞ?彼女は」
「う、っ」
 淡々と正解を語るイングラムにゼンガーは戦意を奪われた様に顔に脂汗を浮かばせる。ゼンガー自身もそれは気にしていた事だった。
「だが、お前は何だかんだと理由を付けて、返事を寄越さなかった。だから、キレちまったのさ」
 ゼンガーはまさかそれが原因だとは思いたくなかったらしい。彼らしからぬ楽観が全てに根差していた。
「お、俺も忙しかった。悪いとは思っていたが」
「理由にならん。お前がそうであった様に彼女もそうだった。否……その度合いでは彼女の方が上だった筈だぞ?
テスラ研と極東を行ったり来たりしながら、慣れない子育てに悪戦苦闘しつつ、それでもお前の事を考え、その帰りを待っていた。それを無視するとは良い度胸じゃないか?」
「……!」
 何とか体裁を取り繕おうと思ったゼンガーは誰から見ても苦しい言い訳をした。だが、当然それは先生の発する真実と言う名の槍の前には無力だった。ゼンガーはその重たい言葉に貫かれた。

113差無来!!:2008/01/28(月) 13:14:38 ID:8d0pWAYw

「しょ、少佐……あの」
「ネート女史、此処はきっちり言わせて貰うぞ」
 打ちひしがれた様に動けないゼンガーを心配したソフィアはゼンガーを助けようとするのだが、それを先生は許さない。今は情を掛ける場面ではなく、寧ろ相手に気付かせる事が重要な局面だからだ。
「夫婦間の事なら俺が口を挟む事じゃない。だが、お前達は未だそれ以前だろう?ゼンガー……お前はどれだけこの女に甘えていたか、理解しているのか?」
「それは」
 それが夫婦間の事ならば、それが家庭の事情だと言う事で話はお仕舞だ。だが、ゼンガーとソフィアは仲は良いのだろうがそんな関係では未だない。
 だからこそ、先生は口を挟まざるを得ない。それはゼンガーが望んだ事だからだ。
「そもそも、どれだけ釣った魚に餌を与えていないのかと言う話だ。それでは、女を繋ぎ止める事は出来んぞ」
「ソ、ソフィア?」
「・・・」
 決定的な一言が紡がれた。ソフィアが言おうと思っても言えなかった事を代弁した先生に彼女はうんうんと何度も頷いた。
 ……気のせいか、その瞳には涙が溜まっている様にも見える。ゼンガーは漸く己の浅慮に気付いた様だった。
「つまり、原因はお前の振る舞いにあった訳だ。……半ば、内縁に近い絆の深さなのだろう?為らば、お前はそれを明確な形にして示す冪だった」
「内え……!い、いや待て。俺とソフィアはそんな」
「そう思っているのはお前だけだ。気付けない事もまた罪だと知れ」
「お、俺とソフィアが……」
 此処に居たって何を馬鹿な事を、と先生は思ったが、流石にそれは言わなかった。思っていた以上にゼンガーは女心に疎く、また晩熟の様だ。そうでなくてはこうはならないだろう。
 そして、それを示せなかった事に罪があるというならば、それを購う方法はたった一つだけだ。
「ゼンガー……私」
「ソフィア……」
 ソフィアの瞳が心の全てを語っている様だった。それを認めたゼンガーは自分の矮小さを恥じ、穴があったら入りたくなった。
「気持ちを胸に飼うだけでは何も現実は動かない。以心伝心なんて普通では有り得ない。念動力等の不思議パワーも別にしてな。……それなら、お前はどうする?」
「むう……!」
「為らば、声に出して言うしかない。お前も、何れ言わねばならないと思っているんだろう?」
「あ、ああ」
 それこそが贖罪の方法であり、また罰だ。言う方としては火が出るほど恥ずかしいが、その程度は背負って貰わねば立ち行かない。凌ぐよりは乗り越えてナンボの世界だ。
「今がその時だと言う事だ。いや、遅過ぎる位だな。……好い加減、素直になれよ。それもまた、男の責任でもあるんだぞ?」
 ゼンガーの闘志に火を点けるべく、声援にも似た言葉を先生は送った。そして、それは確かにゼンガーの心に届いた。
「そう、か。そう言う事か」
 先生の粋な男気に心を打たれたゼンガーは、やっと自分がすべき事が見えた様だ。その手の台詞を女から求めるの事は間違っている。だが、それが欲しいからこそ女は待ち続ける。
 ソフィアが待っているのはゼンガーからのたった一言なのだ。ゼンガーはやっとそれを言う決心が付いた様だった。

114差無来!!:2008/01/28(月) 13:15:33 ID:8d0pWAYw
「イングラム、それならば見届けてくれ」
「む?」
 そうして、ゼンガーは立ち上がった。気迫でも使ったかの様に青い炎がゼンガーの背中で揺れている気がした。そして、次の瞬間……
「一意、専心!!」
「なっ!?」「ゼンガー!?」
 ゼンガーはイングラムの銚子を神速の動きで引っ手繰り、その中身を一気に呷った。
 ……嘗て、アラドも同じ事をしたのを先生は覚えていたが、問題なのはそれを今回はゼンガーがやったと言う事だ。酒に壊滅的弱い彼がこんな事をして無事で済むはずが無い。
「ぐっ……ぅ、ぐ……き、聞いてくれ……ソフィア」
「は、はい!」
 マッハを越える速度で酒は全身に回り、理性を、その他諸々の余計な感情を消し去っていく。
 真っ赤に染まりながらソフィアの前に仁王立ちするゼンガーは鬼気迫っていた。ソフィアはゼンガーの言葉を待った。

「俺は、貴方を……あ、愛してい……」

――ドサ
 『る』の一言は紡げなかったが、確かにゼンガーはソフィアに対し、自分の持つ素直な気持ちをぶつける事が出来た。
 そして、ゼンガーはその代償に床へと崩れ落ちた。
「ゼンガー……」
 漸く聞く事が出来た愛している男の言葉。ソフィアは女の幸せを噛み締めていた。
「確かに、見届けさせて貰ったぞ。お前の漢を、な」
 始終を見届けたイングラムは静かに頷くと、倒れたゼンガーの身体を起し、椅子に座らせてやった。
「私も貴方を……愛していますよ」
 カウンターに突っ伏したゼンガーにソフィアは顔を寄せた。そして、その頬に唇を押し付けた。
――ちゅっ
 ゼンガーの頬にはソフィアの唇の形をしたルージュの痕が綺麗に残った。

115差無来!!:2008/01/28(月) 13:16:09 ID:8d0pWAYw
「済まなかった、ネート女史。些か、急ぎ過ぎたのかも知れない」
「いいえ?寧ろ、お礼を言わせて下さい。私が一番欲しかった言葉を、彼の口から聞けた」
 今日の相談室はこれでお開きだ。先生はソフィアに対し謝罪していた。ゼンガーの、そしてソフィアの望む結末を引き入れたとは言え、ゼンガーを煽り過ぎた事は少しだけ後悔していたのだ。
 だが、ソフィアはそれを責める事は無かった。寧ろ、礼を言われてしまった先生はこっ恥ずかしくなってしまった。
「まあ、奴が酒に頼ったのは締まらない結末だったが……次は素面で言ってくれる事を期待しましょう」
「ええ。そうですね」
「為らば、今日は此処までですな。潰れたゼンガーを放置するのは気が引ける。……ネート女史は帰り支度を。俺は勘定を済ませる」
 これ以上、何かをする事は不可能なので先生は勘定の為に席を立った。出来る事ならば、この次は酒に頼らずに男らしく堂々と今日の台詞を言って欲しいと思う先生だった。
「ソ、フィア……俺は」
「帰りましょう、ゼンガー」
 ……だが、そんな日が果たして来るのかどうか。それは誰にも判らなかった。

「ぬう、お、重い」
「あの、平気ですか?」
「な、何とか……ぐっ」
 アフターケアは万全に。ゼンガーの部屋までその部屋の主を背負って帰り道を急ぐ先生は貧乏籤を引いていた。
 ヒリュウから兵舎までは結構な距離があるので実はあんまり大丈夫ではなかったりする。だが、此処まで来て無様を晒すのは先生のプライドが許さないので空元気で何とか答えた。
「……済まん。イングラム」
「お前は寝ていろ。無事に送り届けてやる」
 誰の所為でこんな苦労をしているんだ。イングラムは声高らかに叫びたがったが、やっぱり止めた。安請け合いした自分の落ち度だからだ。
「承知……zzz」
「ね、寝付きの良い奴だな」
「くすくす……大きな子供みたい」
 その台詞に安心したのか、ゼンガーは夢の世界に旅立った。イングラムはその余りの寝付きの良さに盛大に呆れ、ソフィアは楽しそうに微笑んでいた。
「全くです。……でも、好きなんでしょう?この朴念仁が」
「ええ。そうです」
 にっこり微笑んだソフィアの顔は全てを締め括る感嘆符の様だった。ゼンガーが少しだけ羨ましいイングラムだった。


そして……


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