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DQBR一時投下スレ

759転がり込んだ幸運 ◆EJXQFOy1D6:2019/12/23(月) 23:07:18 ID:RUDAQ9iE0
長い一日だった。随分と傾いてきた月を見遣りエイトは思う。
けれど色んな事を変えてしまうには短すぎる一日だった。
こんな僅かな時間に、旅の仲間たちは一人残らず逝ってしまった。
何よりも、身命を賭して使えるべき王がどこにも居ない。呪われてもめげず、五十路を超えてまだ自身を
おっさんじゃなくお兄さんだと言い張った、タフでひょうげた王の姿は本当に何処にも居なかった。

狂わずに済んでいるのは寸での所で引き止めてくれたアルスやブライ老、赦してくれたデボラの存在だけ
ではない。ゲームと称されたこの空間と、ここに放たれた人々が自分以上に狂っていたからだ。

ゼシカの側にあった遺体が最たる例だ。あの遺体の異常さは紛れもなく死後に蹂躙された結果だ。
最初はそれが何なのかさえ解らなかった。黒く焼け焦げた皮膚は直接の死因なのだろうが、それが悉く裂けて
桃色の肉が露出し、更に棒で叩いたか足で踏み散らかしたかで滅茶苦茶な有様だった。誰が何のために、そして
何故ゼシカとその隣にあった別の男性の遺体は無事だったのかと言う疑問はさて置いても、あんなものの傍に
ゼシカを放置するのは流石に躊躇われた。
まかり間違えば優しいミーティアの目に触れるやも知れない懸念があっての事、ではあるが。

「──姫。ミーティア姫!!」

丹念に周囲を見回しながら歩くエイトは、いつしか我知らず大声を上げている自分に気付いた。
あの遺体の惨状に引き比べる事で安堵を得ていた己の正気も、こうして彼女を見つけられずに居れば危ういらしい。
ドラゴンに変身出来れば探しやすいのにと思う。大きな背に姫を乗せ、遠くに飛んで行けたなら───だが所詮、
混血の身には叶わない。

何と中途半端な生き物だろうか。
竜にもなれず、そして人間の男なら──そうと思い込んだままで居られたなら──誰もが腹を括って掴めるので
あろう選択肢にも自分は────
 
 
 
 
【C-6/荒野/黎明〜早朝】
 
 
「──エイト?」

人らしき声を耳にして三人は足を止めた。

そして見た。荒野の出口、砂の地面から草地に変わる坂の上から姿を現したエイトの姿を。彼の方もまた
向かう先に立っている探し人の姿を見止める。

「…ッ!エイト!」

「ミーティアッ!!!」

互いに斜面を駆けていく二人。エイトは勢いが付き過ぎたのか、挿し伸ばした両手はミーティアを抱き
かかえる形になった。ミーティアもまた後ろに倒れそうな姿勢になってエイトの首にしがみ付く。

「……ん、良かったねミーティア」

「…熱いねえ」

不安定な足場のせいもあろうが通常より割増しに情熱的なハグを目の当たりにしたレックとキーファは、
少し離れた所から苦笑い半分の笑顔を浮かべている。

「エイト、嬉しいですけどちょっと苦しいですわ」

「あっ…失礼しました!」

我に返ったエイトはミーティアの背から手をほどき、彼女の足元に跪いた。


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