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DQBR一時投下スレ

758転がり込んだ幸運 ◆EJXQFOy1D6:2019/12/23(月) 23:06:19 ID:RUDAQ9iE0
「やっぱりか。世界が違えばそれでもアリな所が有るのかとも思ったが、普通どこでも無理だよな。
こういう事になっちまったら…」

「そうか。ミーティアは女王になるしかないって事か…」

妹にその立場を押し付けてしまったキーファと、自覚する暇もなく次期国王の座に就いてしまったレックは
それぞれ複雑な表情をしている。

無理もない事だがミーティアは混乱していた。あれほど嫌でたまらず、しかし受け入れるのが自分の責務と
悩み続けたチャゴスとの婚姻。それは逆に彼とだけは出来ないと言う話に変わってしまっていた。

(どうして気付かなかったのかしら。お父様が名前を呼ばれてから、今の今まで…)

いや違う。と、そこまで考えてミーティアは首を振った。いろんな事があったにせよ、今思えば新しい事実は
視界のすぐ端にチラついていたように思う。ただそれが余りにもあっさりと現れ、それでいて確定的な変化
だったから、目を向けるのを無意識に避けていたのだと彼女は思った。

(なんて事。私、もうとっくに自由でしたのね。誰でも好きな人を選んで、選んで貰えたなら…あのお城で
皆とずっと一緒に暮らしていける…)

それを幸運と言う程ミーティアはあさましくなかったし、父が一手に抱えていた責務は今彼女の中にある。
引き換えに、生まれつきどうしても持ち得なかった「自分で選ぶ」自由が突然得られた事に、ただ混乱ばかり
していられる程彼女は幼くも弱くもなかった。
 
 
 
 
【C-6/西のトンネル南側/黎明】
 
 
竜王は道に迷う事こそなかったものの、傷ついた体は歩みが遅かった。
ミーティア達が道を一つ間違えなければ、加えて竜王がここでもう一人の人物と出くわしていたならば、
彼らはまとめて再会していたかも知れない。

「行ったようですね。素早く気づいてくれて有難うございます、お爺様」

見覚えの無い人物がトンネルへ入るのを見送り、その足音もやがて消えるとエイトはトーポを掌に載せ、
身を潜めていた岩棚を滑り下りた。

余計な面倒事は二度と御免だ。トンネルを出てすぐに、鼠に姿を窶した祖父グルーノがいち早く南から
歩いてくる人影に気づかなければ、海側を禁止エリアで狭められたこの場所では否応なく対面する羽目に
なっていた。

何か気にかかるでも事があるのか、見知らぬ人物が去った方を眺めている祖父をポケットに戻して
エイトは声を掛ける。

「行きましょう。その調子で姫の事も見つけて貰えると助かりますよ」

慎重に行かなくては。この先の荒野は何度歩いても、空から観た記憶すらあってもなお得意ではない。
そびえ立つ岩壁と起伏の激しい地面には方向感覚を狂わされやすく、気付くと逆方向へ進んでいる事も
過去にしばしばあった。
禁止エリアが増えたお陰で南東部が寸断され、南からリーザス村へ行けなくなったのはむしろ有難いくらい
だった。そちらからミーティアがやってくる可能性が無くなるのだから、今回の捜索が終わればもう二度と
この難所に来る必要も無くなる。


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