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DQBR一時投下スレ

757転がり込んだ幸運 ◆EJXQFOy1D6:2019/12/23(月) 23:04:48 ID:RUDAQ9iE0
「そんなに落ち込むなよ。姫さんの案内が助かるのは元よりの事だし、ちょっとくらいの寄り道
構いやしないって」

最後尾を行くレックも努めて明るい調子で言った。

「良いさ。あんまり速いと竜王に追いてしまったかも知れない。あいつも案外迷ってたりしてさ」

「そうだな。そこで出会っちまったらお互いバツが悪いぜ」

「まあ。…うふふっ。でも、早くまた会いたいですね」

今のミーティアには二人の優しさが有難くも申し訳なかったが、落ち込んだ顔を見せたところで
何にもならないと思い直す。顔を上げると、切り立った岩棚の向こうに月が見えた。ミーティアは
頭の中で方角を整理する。今度こそは大丈夫そうだと思えた。

和やかなムードのまま三人は歩く。ただ、口数は再び少なくなった。皆それぞれにもう会えない者と、
まだ出会える希望が持てる者が居る。言っては悪いが竜王にかまけている間に失われたり、探す暇も無いままで
いたりする人々。黙々と歩いているれば嫌でも彼らの顔が頭に浮かんだ。
かと言って無理にお喋りをして頭から閉め出す事もしたくなかったし、そんな必要を感じずにいられるのは
目指す所に脱出の希望があるが故だった。

思考が悪い方へ向きそうな時、彼らは仲間に話しかけた。いずれもがちょっとした雑談。ミーティアに
とって衝撃の事実が齎されたのは、そんな中だった。

「…そういえばさ、姫さん。君って兄弟はいるのか?」

「いいえ?一人娘ですけれど」

前を向いたままポツリと呟かれたキーファの問いにミーティアは小首を傾げる。

「じゃあ……君の許嫁になってるって言う王子には兄弟がいるって事だよな?」

続いて質問されたその意図がミーティアには解らなかった。あのチャゴス王子がどうしたと言うのだろう。
彼もまた一人っ子で、そのせいかたっぷり甘やかされて───

「───あっ…」

ミーティアは気付いた。

そうなのだ。トロデーンにもサザンビークにも王の子は一人しか居ない。そこで王を失ったトロデーンの
ただ一人きりの王女が他国に嫁ぐ事など出来はしない。

「そう、ですわ…サザンビーク唯一の王子の彼がトロデーンの婿になる事も出来ない…」

トロデ在位のうちにミーティアとチャゴスの子を一人トロデーンに養子に出すと言う流れも御破算。
両国の婚姻話は、すでに破綻しているのだ。


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