したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

DQBR一時投下スレ

743愛さえも、夢さえも ◆EJXQFOy1D6:2019/09/01(日) 22:41:01 ID:gYmjXASs0
  
言うが早いか、ターニアの顔面に拳が突き入れられた。

「うぶッ!」

「聞かせてください。私は、とても頭が痛むんです。でも、和らげる為のヒントはさっき手に入れました。
貴女の名前は?」

「た、たーにあ…」

答えるしかなかった。喋らなければこうやって殴るつもりなのだ。

「よろしくターニア。私の名前はアベルです。出身は?」

再び髪を引っ張りながらアベルは歩き出す。

「ライフコッド…です。レイドックのお城の北、ずっと山奥にある…小さな村」

「いいですね。続けて。どんな所なのか、あなたの言葉でもっと聞かせてください」

口の中に溜まった血と一緒に歯を吐き出しながらターニアは懸命に話した。


ライフコッド。空気と日射しがとても綺麗な村。

よそから来た人にはすごく構えてしまうけれど、本当はとても優しい人ばかり。

両親をなくしてひとりになってしまった自分にも、皆とてもよくしてくれた。


「素晴らしいですね。私も、出来る事なら行ってみたいものです」


そう。大好きな村。不満はなにもなかった。

…いいえ、一つだけ。

平穏な一日の終わりにごはんを食べながら、その日のちょっと楽しかったこと、可笑しかった
ことを聴いてくれる人がいたらいいのになと思っていた。

例えばきょうだいがいたら、なんて。

贅沢をいえば、上のきょうだい。

うん、やっぱりお兄ちゃんがいいなぁ、って……。

「…お兄、ちゃん……」

ターニアの目に涙が溢れた。

黙り込んだターニアをアベルは繰り返し殴打した。しかし、その一言を最後にターニアは口を
開かなくなった。

その目からは光が失われ、表情も消えた。疲労と恐怖の果てにターニアの精神は、ここではない
別の場所へ肉体よりも先に旅立っていた。幻の大地とも違う、どこか遠い夢の世界へ。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板