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DQBR一時投下スレ

738愛さえも、夢さえも ◆EJXQFOy1D6:2019/09/01(日) 22:35:37 ID:gYmjXASs0
 
 

「久しぶりだねジンガー。武器はどうしたんだい?」


耳に心地いい声だ、と感じた事をジャンボは後にも思い出す事になる。

悪魔とは意外にも穏やかでよく通る声を持っているのだなと。


「奪ワレマシタ。申シ訳アリマセン───マスター、ヨクゾ御無事デ」

「ありがとう。お前もよく無事でいてくれた。武器ならお前に適当なものがあるから使うといい。
今取り出すから、少し待ってくれ」

お互いがはっきり見える距離まで歩み寄ったサフィール達は「もう一人」の様子に絶句した。
髪の毛を掴まれ、無理矢理歩かされている。

「さふぃーる、ドッチガ『あべる』ダ?鎧ノ方カ?青服ノヘバッテル方カ?」

「馬鹿野郎!男の方に決まってんだろうがッ!」ジャンボは激情に任せて怒鳴った。

「ついに会えたなアベル……てめえ、ターニアに何しやがったッ!!!」

少女から手を離すと、アベルは袋から戦鎚を取り出しジンガーに手渡した。

「お前にぴったりだな。いい時に居合わせてくれた」

そう言ってアベルは手をはたいた。何本もの青い髪がはらはらと地面に落ちる。

「答えろこの野郎ッ!!!」

「貴方が『ジャンボさん』ですか?察するにうちの娘を保護してくれていたようだ。礼を言いますよ。
そしてサフィール。しばらく振りでしたね、元気そうで何よりです」

アベルはにこりと微笑んだ。何の屈託もない、優しげな微笑だった。
サフィールは戸惑った。以前会った時に見せた冷酷な表情とは全く違う。まるで、一緒に旅をしていた
あの頃のような……。

「……ターニア、解るか?俺だ。あの時は怖がらせちまってすまなかった。お前の兄貴やその仲間を
どうこうしようなんてもう思っていない。誓って言う。だから、頼むからこっちへ来るんだ」

アベルを詰問しても埒が明かないと判断したジャンボはターニアに直接声を掛ける。少女は解放された後も
その場に力なくへたり込んで動こうとしない。

「心配ねえ、お前が動けば俺達がそいつらを抑える。頼むよ、そいつから離れてくれ…!」

しかしジャンボの訴えも虚しく、ターニアは再び髪の毛を掴まれ強引に立たされた。

「!…そ、その女性の顔は…お父さん…それに、その鎧は…」

「彼女が教えてくれました。この辺りに貴女達が居ると」

飽くまで優しい笑みを湛えてアベルは言う。

「有難うターニア。短い道中でしたが楽しかったですよ」

ジャンボは歯噛みした。こうなるともう迂闊に手出し出来ない。しかも立たされた事で見えたターニアの顔は、
見るも無残に腫れ上がっていた。


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