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DQBR一時投下スレ

733愛さえも、夢さえも ◆EJXQFOy1D6:2019/09/01(日) 22:30:55 ID:gYmjXASs0
 
次に出て来たのは大きな赤い宝石の付いた指輪だった。

「随分と大きな石を付けたものですね…」

宝石には特に魔力を感じない。飾りの大きさに見合わず細い径は女物である事を示していた。

「…エル…トリオから、ウィニアへ…」

アベルは目を凝らしリングの内側に刻まれた小さな文字を読んだ。


"愛を込めて。"


突如閃光のように広がる記憶。頭に締め付けられるような痛みを覚えアベルは指輪を取り落とした。

痛みにきつく閉じた筈の視界に一人の女の姿が浮かんだ。純白のヴェールが黒髪に流れている。
彼女が紡いだ言葉。その目が語った言葉───。

「ああ」

意識が追い付くよりも先にアベルは谷間に歩み寄っていた。足元で水がざあざあと音を立てている。アベルは
谷間に手を差し出すと、アルゴンリングを掌から零した。

ある若者の愛の結晶は、静かに川へ飲まれて行った。

(さようなら)

アベルは続いてウエディングドレスを放り投げた。

細密な刺繍に彩られたドレスが虚空に広がり、ゆっくりと落ちて行く。
眺めていると、頭痛もまたゆっくり引いて行くのを感じた。アベルは踵を返すと、残る支給品の確認に取り掛かった。


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