したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

DQBR一時投下スレ

578CURSE ◆JQqRUp1HeY:2016/04/24(日) 15:15:02 ID:qMa5JxGY0
「……ん?」
 その後ろを付いて行こうとしたサフィールが、ふと何かに気がつく。
 それは、ぴとりと水の雫が落ちるような音だった。
 音のする方へと体を向け、注意深く観察する。
 そして、それが何なのか、分かってしまった時。
「アイラ!!」
 マリベルの叫び声が、屋敷に響き渡る。
 急いで二階へと駆け登ると、そこに飛び込んできたのは、三つの影。
 ひとつは、マリベル。
 ひとつは、マリベルが抱きかかえている誰か。
 そして、もうひとつ。
 腕に仕込んだ巨大な鋏を掲げた、漆黒に身を包む一人の男の姿。
「爆ぜろ大気よ、イオナズン!!」
 万が一を考慮して詠唱しておいた呪文を、即座に放つ。
 空気が圧縮され、膨張し、そして破裂して生まれていく爆発が、漆黒の男を包み込んだ。
「大丈夫ですか?」
「けほっ、けほっ……ったく、加減ってモノをしなさいよ」
 急いで駆け寄ったマリベルの姿に、特に怪我はないことを確かめ、サフィールはひとまず安堵する。
 そして、マリベルのすぐ側に居た黒髪の女性の姿を見て、息を呑む。
 おびただしい量の血は、一度ならず何度も突き刺されたであろう、痛々しい傷跡から今も流れだしていた。
 考えるまでもない、下手人はあの男だろう。
 そして、その結論に辿り着いた時、耳慣れない金属音が鳴り響く。
 しゃきん、しゃきん、しゃきん。
 それは、鋏の刃と刃が触れ合う音。
 この場で鋏を持っている者は、ただ一人だ。
「一旦逃げましょう、ここじゃ分が悪すぎます!」
「言われなくても!!」
 危険を察知した二人は、急いで部屋から飛び出し、屋敷の正面玄関へと駆け込んでいく。
 幸い、足はそこまで速くないらしく、追いつかれることはなかった。
 全力で駆けた後、まだ男が中に居るであろう屋敷を睨み、マリベルは言い放つ。
「サフィール、あたしはアイツをぶっ飛ばすわよ」
 その言葉に込められていたのは、サフィールが初めて彼女から感じ取った感情。
「アイラの仇、ですもの」
 それは、明らかな怒りだった。
 その姿に、母の姿を少しだけ重ねながら、サフィールは一つの提案をする。
「マリベルさん。私に考えがあるんです。数分、稼いでもらえますか」
「はぁ!? あたしをコキ使おうっての!?」
 言い換えれば、盾になってくれという依頼。
 共に前線に立つつもりはないという意思表示にも等しい。
 もちろん、そんな都合のいい逃げを、マリベルが許すはずはない。
「信じてください、読みが合ってれば、すぐに無力化できると思うんです」
 そうだと分かっていても、それを押し切ってまで頼みたいと思う、確信が彼女にあった。
 わずかにすれ違った一瞬、感じ取った気配。
 それは、呪われし装備の、禍々しい気。
 もし、男が"何かの呪い"によって凶行に及んでいるのだとすれば。
 そして、何気なく口にしたマリベルの言葉が、本当だとすれば。
 全てが噛みあえば、この場を一瞬で終わらせることができる。
 だからこそ、彼女は無茶な願いをマリベルへと通した。
「ったく……三分よ、いいわね?」
 揺るぎないサフィールの瞳に、折れたのはマリベルだった。
 それから、時を同じくして、屋敷から飛び出してきた男へと、真っ直ぐに向かっていった。
 そして、サフィールは巻物を開き、ペンを握った。
「……お兄ちゃん、私に力を貸して!!」


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板