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DQBR一時投下スレ

321"サヨナラ"って言えなかった事、いつか許してね ◆CruTUZYrlM:2013/06/03(月) 00:09:28 ID:???0
 


「これで、良いでしょう」
汗を拭い、脇腹の痛みを堪えながらミネアは言う。
重ねがけの甲斐もあってか、ジャミラスの手首の傷は塞がり、翼の出血も止まっていた。
ジャミラスは手首をグルグルと回し、使用に違和感がない事を確かめる。
「……約束どおり、見逃してくれるんでしょうね」
「ああ、そうだな。約束どおり命は助けてやろう」
ミネアは契約を履行したことを告げ、ジャミラスはにこやかにそれに答える。
だが、言葉はそれで終わりではなく。
「"命"は、助けてやろう」
ジャミラスは、残酷な言葉を重ねていく。
「回復呪文が使える存在は貴重だからな、貴様にはこれからこの私に従ってもらう」
「なッ……!」
「ヒューッ……」
突然の隷属宣言に、ミネアは思わず言葉を失い、老魔は額から汗をたらす。
「どうした? 仲間がどうなっても良いのか?」
「くっ……」
歯がゆい思いをしながら引き下がるミネアと、悪魔の要求を平然と良いのけるジャミラスに感銘すら覚える老魔。
魔物の中でも、ここまで正直に欲望を放てる存在は初めて目にした。
その直球的な感情に、老魔は舌を巻くことしか出来ない。
「……我慢の限界です」
そんなジャミラスに、ついにミネアは本心をぶちまけていく。
「一度ならず二度までも、人を弄び踏みにじっていく」
ミネアがこうやって従わされるのはこれが初めてのことではない。
先ほどもジャミラスに蹂躙され、挙句の果てに肋骨の一本を毟り取られた。
そして今、自分に従えと強制してきている。
目当ては回復呪文、それ以外に価値は見出していないのだろう。
だから、自分が回復呪文を使わないと判断すれば、ジャミラスは即座に斬り捨てる筈。
これ以上悪事に加担したくない、そんな気持ちを正直にぶつけていく。
「そんな悪魔のクズの畜生に従うくらいなら、死んだ方がマシです!!」
ああ、こんな存在を少しでも信用してしまった自分が、憎くて仕方が無い。
せめて、せめて贖罪のために。
少しだけ取っておいたなけなしの魔力で呪文を紡ぐ。
その呪文は形となり、優しくミネアの体から離れ、ゆっくりと溶け出していく。

「ありがとう、そしてごめんなさい」

そんな声が、響いた気がした。


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