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FFDQかっこいい男コンテスト 〜ファイナルファンタジー5部門〜

21ギルバツ 1/16:2005/11/14(月) 14:52:43
 年代物と呼ぶには新しすぎる、空駆ける魚と呼ぶにふさわしい船体は動くたびにギリギリと物言わぬ声を上げ、長旅の疲れを訴える。
がくん、と船全体に衝撃を感じたかと思うと、血相を変えて部屋に飛び込んできたのはファリスだった。
「バッツ、来てくれ!潜水艇のスクリューに何か引っかかってる!」
船の運転をファリスに任せ、船内の一室でクルルとトランプをしていたバッツは、何の役もできていない手札をテーブルに放り出して操縦室に向かった。
魔物の出ない深海の移動はどうしても退屈で、皆それぞれ仮眠をとったり、武器の手入れをしたり、時にはカードなどをして暇な時を過ごしている。
錆びた鉄のような匂いの漂う操縦室では、仮眠室で休息していたはずのレナがドアのそばに立っていた。
張りつめた空気が無数の糸となり、網のように部屋全体を覆っている。
「何があったんだ?何が……何が引っかかってんだ?」
操縦席の背もたれに体重を預けているファリスに声をかけた。
「多分……海草かなんかだと思う。よく分かんねえけど、ひらひらしてんのがスクリューに絡まってんだ。おかげで船が進まねえ」
足の爪先をこつこつ鳴らしながら、ファリスは小さく舌打ちした。
「海の真ん中、それも深海で立ち往生かよ……。飛行はできるのか?」
「無理だろうな。さっき機関室の方を見てきたんだが、どうも潜水用のスクリューと飛行用のプロペラが連動してるらしい」
青ざめたレナがびくりと肩を震わせる。バッツはそんな彼女の肩を軽く叩くと、ファリスの方に向き直った。
「心配すんな、レナ。……ファリス、浮上はできるか?」
「あ、ああ……それは大丈夫だと思う。移動は無理だろうけどな」
「よし、じゃあ一旦船を上げてくれ。俺が見てくる」
言いながらバッツはおもむろに服を脱ぎ始める。
スクリューは船底の部分に張りつくように設置されているため、船体の下に潜り込まなければ状況の確認すらできないのだ。
「バカ、危ねえぜ!?」
「危険よ、バッツ!」
レナとファリスが目を見開き、ほぼ同時に叫ぶ。
「……心配してくれんのは嬉しいけど。他にどうしようもないだろ?」
二人に言い聞かせるように、バッツは優しく笑った。
「バッツ……でも……」
今にも泣き出しそうな眼で、レナはバッツを見上げた。
「じゃあ、せめて俺に行かせてくれよ。お前より泳ぎには自信がある」
レナの頭を慰めるように撫でながらファリスが声を上げた。
バッツは聞こえないふりをして、上着を操縦席に着せると静かに部屋を出ていった。


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