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酒の勢いで俺が適当にSS書いてみるスレ

705名無しさん:2011/07/20(水) 01:51:43
学校からの帰り道。

「あ、お兄ちゃん、今お帰りですか?
「ああ」

ディズィー達と遭遇した。
おそらくは、メイシップに向かう途中なのだろう。

「お仕事お疲れ様ですソルさん。ウチの熱い抱擁で癒されてキャア!?」

走り寄ってきたブリジットを追い払う。

「ちょっとだけ冗談じゃないですか」
「ちょっとした、じゃなくて?」

ほとんど本気ってことじゃねえか。

「お兄ちゃん、皆さんはうちで待ってますよ」

やはりか。

「ソル、私の部屋に勝手に入らないようにちゃんと見張っててよ?それと、猫達の世話も忘れないで」

俺に言わなくても、他人の部屋に勝手に入り込むほどのことはしないだろう。
ロボカイは怪しいが、カイや闇慈がなんとしても止めるはずだ。
猫の世話に関しては、言われるまでもない。

「それでは、私達はメイさん達と遊ぶ予定ですので行きますね」
「ソルさん!浮気しないでくださいね!」
「頼んだわよ」

ディズィー達と別れ、再び歩き出す。。
そして、家に着いた。玄関を開け家に入る。

「おかえりなさいバッドガイ君。お仕事お疲れさま」
「ああ」

とりあえず、荷物を部屋に置くか。

「蔵土縁さん達とお料理してるから、バッドガイ君も手伝ってくれると助かるの」

何を作っているのかも知らないがな。
自室へ向かい、ドアを開ける。

「良ぉお〜〜〜しッ!よしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよし。あ、おかえりソルっち」
「おかえりなさいませ。お邪魔していますわ」

人の部屋で何をやっている。
いや、猫をかわいがっているのはわかるが、勝手に俺の部屋に入るな。

「3個か!?キャットフード3個ほしいのか?3個・・・イヤしんぼめ!!」
「勝手に餌をやるな」

時間と量を決めて与えているのだ。
いや、それより

「部屋から出て行け」
「お気になさらないでください」

・・・こいつら、ディズィーとミリアの部屋に侵入してはいないだろうな。

「まさか!人の部屋に勝手に入るなんて失礼なことしないよ!」
「親しき仲にも礼儀ありですわ。当然のマナーです」

そうか。ならいい。
とりあえず本棚をチェックする。・・・荒らされてはいないようだ。

「なになにソルっち。見られちゃマズいものでもあったりするの?」
「まあまあ!バッドガイさんにもそんな趣味が」

言わんとしていることはわかるが、違う。
貴重な資料を傷つけられては困る。いつかのメイのように。
まだ書庫に移していないのでな。
本棚の無事を確認し、椅子に座る。

「おつかれソルっち。そんなソルっちにサンタナをプレゼント」
「ここの猫さん達はどの子もそうですけど、この子は特に大人しくて人馴れしていますわね」

2人から逃げるようにやってきたサンタナが膝の上に飛び乗ってくる。よしよし。
さすがのこいつも、ジェリーフィッシュには参ったようだ。

「うわお。ソルっちがサンタナを撫でてるよ。猫はソル=バッドガイが好き?」
「バッドガイさんがすることに、今更驚いてなんかいられませんわ」
「それもそっか」

こいつらは無視して、いつも通り研究を始め・・・いや、料理の手伝いが欲しいと言っていたな。
下に行くか。

「ん?下行くの?んじゃあたし達も行こっかな」
「他の猫さん達とも遊びたいですわ」

とにかく、部屋から出て行け。

706名無しさん:2011/07/22(金) 01:05:45
台所へ向かう前に、居間を通る。

「おうソル。帰ってたのかよ」
「邪魔してるぜ。お前もやるか?勝負、9のスリーカードだ」
「甘イナボンクラ。Aのファイブカードデ我輩ノ勝チダ!」
「いや、ジョーカー外しただろ。勝手に使うな」
「全然ダメだねロボっち。もっとバレないようにやんなきゃ。次あたしも参加ね。あ、タマおいでー」

料理の手伝いはしないのか。
台所はそれなりに広いとは言え、大人数が入れるほどのスペースもないから仕方ないが。

「お前、サマするなよ?」
「バレなきゃあイカサマじゃあねえんだぜ・・・・・・」
「やる気かよ。そっちは?」
「私は見学しておりますわ。どうぞお気になさらず」
「通しはするなよ?」
「さあ、なんのことでしょうか?」
「ま、いいや。見られないように注意しろよチップ、ロボ。カード配るぜ」

アクセルとカイは台所にいるらしい。

「コール。ロイヤルストレートフラッシュ。あたしの勝ちっ!いきなりツイてるね」
「どうやったんだよ!!」
「我輩ニモワカラナイゾ」
「なんで注意して見てるのにやられるんだ!?」

台所に入る。

「ソル、お帰りアル。ちょっと手伝ってほしいアルヨ」
「なんだ」
「ドーンと満漢全席を作ろうと思ったアルガ、さすがに大変アルネ。色々やってもらうアル」

宴会料理とはいえ、それを作るのか。
手間もかかるだろうに。いや、だから人手を必要としているのか。
それに、遊びもせず、すでに料理に取り掛かっている。
夕飯時までまだ時間はあるが、今から準備しないと間に合わないということだろう。

「とりあえず、肉と魚を捌くアルネ」
「わかった」

包丁を取り出し、渡された鶏を捌く。

「さすがだねえ。俺ら、野菜は切れても鶏の捌き方までわかんねえよ」
「紗夢の店から持ってきた物ですからね。さすがに殺してましたけど」
「ここで殺してたらパニックだっての。さすがにめぐみにゃ見せらんねえ」
「・・・・・・」
「見てて辛いなら休んでていいぜ?めぐみの分は俺がやっとくからさ」

鶏の解体は少々ショックらしい。

「めぐみ君、無理することないからね」
「少しは慣れてる私達でも、ちょっとなって思うの」
「それも凄いですけどね、貴方達は」
「ジョニーとリープおばさんの教育方針だからね」

一体どんな育て方をしているのだろうか。
単純に、こいつらがずぶとい神経をしているだけな気がしないでもない。 

「バッドガイ君、そこ、どうやって捌いてるの?」
「骨に沿うだけだ」
「そうなの?やらせてくれないかな?」

場所を代わる。

「こう?このまま切ればいいの?」
「ああ」
「あ、ほんとだ。意外と簡単に切れたの。残りもやっていい?」
「ああ」

こちらはこちらで、魚を捌く。

「君は手馴れてるね、さすが。どうも私は包丁が得意じゃないね」

人並みには使えているようだがな。

「リープおばさんに習って一通りのことはできるけどね、あんまり器用じゃないんだよ。
 うちの中じゃ料理下手な方だね。逆に、その子は一番上手だよ」
「そんな事ないの」
「私達も大したことはできませんよ。料理ができるだけで尊敬に値します」
「男の作る料理なんて適当で大雑把だしな。あ、旦那は別な」
「習うより慣れろアルネ。何度もやってたらその内に上達するアル」

ディズィーとブリジットもそうだった。

「蔵土縁さん、お肉捌き終わったの。これでいいよね?」
「大丈夫アルヨ。お疲れさまアル。次は下ごしらえネ。ソルに聞いてやるヨロシ」
「よろしくお願いしますバッドガイ君」

俺は何を作るかも知らないんだが。
全て解体してるということは、北京ダックではないようだ。まだ一羽残っているし、それがそうなのだろう。
ということは、これは普通に中華料理用の味付けをすればいいか。
各部位に合わせて、それぞれ下ごしらえを済ませていく。

「これってバッドガイ君なりのやり方なの?」
「いや、基本のレシピ通りだ」
「そうなんだ」

基本と言っても、いくらでも基本があるがな。
紗夢の料理に合わせたやり方、というのが最も正しいだろう。

707名無しさん:2011/07/22(金) 02:12:14
しばらく調理を続け、時間が経ち、次々と料理が出来上がる。

「そっちの方達、テーブルの準備をしてもらえませんか?」
「わかったぜ」
「ヤットデキタカ。我輩ヲ待タセルトハドウイウツモリダオリジナル」
「いいから最後ぐらい少しは手伝いなさいロボ」
「ハイ」

料理を運びこむ。

「お待たせアルネ。カイ達もお疲れさまアル。どんどん食べていいアルヨ」
「いいんですか?まだ料理が残っているんじゃ」
「大丈夫アルネ」
「じゃあお言葉に甘えさせてもらおうかな。もう腹が減ってしょうがねえよ」
「紗夢君ありがとう」
「美味そうたぜ!いただきます!」
「いただきまーす」

食うか。

「ア、悪いケド、ソルだけはちょっとだけ手伝ってほしいアル」
「ああ」

下ろしかけた腰を上げる。

「なんだ」
「まず、そっちの揚げ物をお願いアルネ」
「わかった」

揚げ物を油から取り出し、皿に盛り付ける。
空いた油に、また具を入れる。

「綺麗に盛り付けるアルナ。誰かに習ったアルカ?」
「独学だ」

暇を潰していれば、料理に関する勉強を行うこともある。

「じゃ、そっちの蒸してるのもお願いアル。私はこれを持っていくアルヨ」
「ああ」

蓋を開け、出来具合を確かめる。問題ないな。これも皿に盛り付ける。
そうしていくつかの料理を作っていると、足元で鳴き声がした。
猫達、これを食いたいのか。しかし、夜分の餌は与えたのだ。これ以上はやれない。

「何してるアルカ?」
「料理だ。スープの追加も出来上がったぞ」
「わかったアル。ところで、ネコが鳴いてるアルヨ?」
「ああ」
「何か食べたいんじゃないアルカ?」
「だろうな」
「あげないアルカ?」
「ああ」
「かわいそうアルナ」

健康上の問題だ。
昼間も、ジェリーフィッシュが余計な餌を与えていた。
これ以上、間食を増やすのは良くない。猫を病気になどさせられない。

「ま、飼い主がそう言うなら、ワタシには何も言えないアルネ」

何を言われても関係ないがな。

「そうそう、ソルももういいアルヨ。手伝ってくれてありがとうアル」
「そうか」
「こっちもあと少しアルネ。ワタシもすぐに行くアル」

なら、食いに行くか。

「お疲れなさいバッドガイ君。ここどうぞ」
「ああ」

空けられた場所に座る。
さて、食うか。

「お薦めはこれだね。これは美味しかった」
「いや、こっちのが美味かったぜ」
「俺はこれだな。おかわりってないの?」

それならさっき作った。
紗夢が持ってくるだろう。

「お待たせアル。とりあえずこれぐらいアルナ。無くなったらまた作るアルヨ、ソルが」

俺か。構わないが。

「イヤ、冗談アルヨ?ワタシが作るアル」
「旦那にゃその手の冗談は通じにくいぜ」
「紗夢っち的には、『俺が作るのかよ!?』みたいなツッコミを期待したのかもしれないけどさ、ソルっちにそれは無理だよ」

俺に関係のない押し付けは断るが、何しろ自分も食べている物だ。
誰かに作れと押し付ける気はない。作れというなら作る。

「ソル君は置いといてさ、これってまだある?美味しかったよ」
「それならすぐ出せるアルネ。ちょっと待つアル」
「いいよ、自分で取りに行くから。紗夢君もお疲れだからね」

賑やかな晩餐だ。

708名無しさん:2011/07/22(金) 03:11:44
夕食も終わって、片付け。

「洗い物が大量ですわ」
「しょうがないね。さっきは遊んでたんだから、後片付けぐらいはやんないとさ」
「さっさと始めようぜ!」
「何故我輩ガコンナコトヲ」
「文句言うなロボ。これだけの人数でやればあっという間に終わるからよ」
「片付けが終わるまでが料理ネ。気を抜かずにやるアル」

紗夢達が皿洗いを始める。
ゴミを捨てるか。
なるべく無駄を無くしたとはいえ、出るものは出る。

「アイヤッ!この洗剤何アルカ?汚れが嘘みたいに落ちるアル」
「ああそれ、ソルっちが作った洗剤だよ」
「うちにもいくつか頂いてます。リープおばさんが特に大喜びしていますわ」
「ワタシもほしいアル」
「だってさソルっち。余分があるなら紗夢っちにあげたら?」

まだ予備は十分にあったはず。
今日の飯の礼にくれてやっていい。

「洗剤なんて作ってんのかよ。すげえなソル」
「日用品からオーバーテクノロジーまで、なんでもござれなソルっちブランドさ」
「我輩ヲ洗剤ト一緒ニスルナ!」
「ええ、ロボさんより洗剤の方が役に立ちますわ」
「ナニィッ!?」
「凄いアルナ。鍋の汚れまで一瞬アル。まるで新品アルネ」
「それでいて肌に優しいんだよ。肌荒れになんないし」
「ありがたいアルナ」

いつか、世の女性のために売りに出したらどうかとディズィーが言っていたな。
今度、ガブリエルに製造法を売るとしよう。

「どうぞ、ザナフさん。水を拭いて、棚に仕舞っておいてくださいませ」
「任せな!」
「御津っちよろしく。しっかり働くんだよ?」
「あいよ。ちゃんとやってるから安心しな」
「コノ仕事ハ我輩ニハ向イテナイ。我輩ニハモット相応シイ仕事ガアルハズ」
「いいから働けロボ」

ゴミはこの程度か。
片付け終わった。なら、あとはここの連中に任せ、部屋に戻るか。

「ソル、お疲れさまアルネ。後で洗剤がほしいアル」
「そこの戸棚だ。適当に持って行け」
「ありがとうアル!」

階段を登り、部屋に入る。

「バッドガイ君、おじゃましてます」
「おつかれソル君。この部屋、アルバムはないんだね」
「本棚を荒らすな」
「いや、君のアルバムがないかなってちょっと探してみただけだよ」
「ない」

ここにあるのは学問・研究用の資料だけだ。
いや俺のアルバム自体、ありはしないが。

「ないんだ、残念。もしアレなアルバムがあったら、ソル君に叩きつけようと思ってたんだけどね」
「バッドガイ君に限ってそれはないと思うの」
「どうかな?人は見かけによらないし、ソル君に隠された趣味があるかもね」

こいつら、何故他人の部屋に勝手に入る。

「ディズィーとミリアの部屋には入ってないだろうな?」
「わかってるよ。だからこの部屋に来たんだからね」
「勝手に入ってごめんなさい」

あの2人の部屋に入ってないならいい。

「私達のことは気にせず、勉強してくれていいからね」
「うーん・・・邪魔みたいだし、下に行こう?」
「そう?ま、そうするかな。じゃあね、ソル君」
「この子達はバッドガイ君に任せるの」

膝に抱いていた猫を数匹降ろす。
過剰な可愛がり方をしてなかったからか、逃げ出す様子はない。
が、それでもこちらにやってくる。

「猫はバッドガイ君が好きなの。可愛がってあげてね」
「瓶詰めにしちゃダメだよ」

できねえよそんなこと。
2人が出て行った。本棚から資料を取り出し、改めて机に向かう。

コンコン

と、ドアをノックされた。

「誰だ」
「俺さ、旦那。暇なら下で遊びに付き合わねえ?」
「断る」
「じゃ、ここで遊ぶか。ブラック・ジャックでいい?」
「強引にすみませんね、ソル」

カイもいる。この調子じゃ、引く気はないらしい。
仕方がない。少し付き合うか。

そして、夜は更けていった。

709名無しさん:2011/07/22(金) 03:23:50
アバ「・・・本日のゲストは、ソルおまけver」

ソル「・・・・・・」

アバ「・・・基本的に無口だけど、最近はたまに喋るように」

ソル「・・・・・・」

アバ「・・・会話して」

ソル「断る」

アバ「・・・・・・」

ソル「・・・・・・」

アバ「・・・おまけの人たちは・・・よくこれに付き合える・・・」

ソル「・・・・・・」

アバ「・・・最近・・・700レス突破した・・・」

ソル「・・・・・・」

アバ「・・・恐らく、『・・・・・・』の中で、『だからなんだ』みたいなことを考えているはず」

ソル「・・・・・・」

アバ「・・・当たってる?」

ソル「ああ」

アバ「・・・・・・会話にならない・・・」

ソル「・・・・・・」

アバ「・・・もういいです」

ソル「・・・・・・」

アバ「・・・・・・」

ソル「・・・・・・」

アバ「それでは今日はここまで」

710名無しさん:2011/07/29(金) 01:19:48


「確か・・・そろそろでしたよね?」
「はい」

学校への登校途中、ディズィーさんとの会話。

「おめでとうございます・・・っていうのはちょっと早いですね。じゃあ、当日にお誕生日パーティをしましょう!」
「い、いえ。別にパーティなんてやらなくてもいいです」
「そうですか?私はやりたいんですけど。ブリジットさんには日頃お世話になっていることですし」
「そうですか?」

ウチがディズィーさんのお世話をしていたつもりは全くないですけど。

「はい。じゃあ、お誕生日プレゼントも考えないといけませんね」
「あの、そこまでしていただかなくても」
「いえいえ。是非させてください。お兄ちゃんも、ブリジットさんへのプレゼントを考えておいてくださいね」

後ろにいるソルさんにディズィーさんが声をかけます。
ソルさんがウチにプレゼントって、そんなことがあるんでしょうか?

「・・・・・・誕生日ですかぁ。ちょっと羨ましいです」

呟くように、ディズィーさんが言いました。
どういうことでしょう?

「はい?羨ましいですか?」
「あ、私は誕生日がないんです。いつ産まれたのか不明ですから」
「え・・・?」

あれ?今、軽く重い過去を打ち明けられました?
誕生日がないって・・・えー・・・なんて返せばいいんでしょう?
なんだか事情がありそうですけど、ウチが聞いていいものなんでしょうか。
こういう時は・・えーと・・・

「じゃ、じゃあ!自分で好きな日を誕生日にすればいいんじゃないですか!」

こんなんでいいんでしょうか?
返答に困ります。こんなディズィーさんはたまにありますけど、わざとやってるんでしょうか?

「それはいいですね。じゃあ、気が向いたら適当な日を誕生日にします」
「・・・あのー、できれば、事前にウチに教えてくれると助かります」

プレゼントとか用意したいですから。
唐突に「今日が私の誕生日です」なんて言われ手も、サプライズ過ぎます。

「はい、その時は。とりあえず、今はブリジットさんのお誕生日パーティですね」
「その、わざわざしてくれなくても大丈夫ですよ?」

ウチとしてもちょっとプレッシャーというか。
「誕生日おめでとう」ぐらいが気楽でいいんですけど。ディズィーさんはそれじゃ済みそうにないです。

「ブリジットさんが嫌がるなら諦めますけど・・・ご迷惑ですか?」
「い、いえ!そんなことはないです!」

ウチの誕生日を祝ってくれるのに、嫌なわけがありません。

「なら、やらせてください!楽しみですね」
「・・・そうですね。ウチも楽しみにしてます」

ディズィーさんが用意してくれるなら、ウチの予想を超える事態になりそうです。

「お兄ちゃん、聞いてましたよね?さっきも言いましたけど、ブリジットさんへのお誕生日プレゼントを用意しておいてください」
「ああ」

ソルさんが返事を返したってことは、ソルさんからプレゼントを貰えるってことですか?
わぁ、それは楽しみです。

「そうだ、バースデーケーキも必要ですよね。好きなケーキってありますか?」
「え?」
「イチゴのケーキとか、チョコとか、フルーツとか、色々ありますよね?」
「え、あの・・・じゃ、じゃあイチゴのケーキで」

もの凄く強引に話を進めてきますね。考える間もありませんよ。
それでも、やはりここは王道のイチゴの乗ったクリームたっぷりのケーキでいきましょう。

「わかりました。お兄ちゃんにとびきりおいしいケーキを作ってもらいますね!」
「ソルさんが作るんですか!?」

てっきり買うのかと。
ソルさんはケーキ作りなんてできるんですか?・・・できそうですね。できないはずないですよね。

「お兄ちゃん、聞いてました?」
「ああ」
「そういうわけで、ブリジットさんのためにケーキを作ってください」
「ああ」

本気ですか?ソルさんが?
なんでもできるのは知ってますけど、ケーキ作りはソルさんのイメージに合わない気がします。
ああ、そんなのはウチの勝手な想像ですね。

「私もブリジットさんのお誕生日プレゼントを考えないといけませんね」

ディズィーさんがやけにやる気です。
一体どうなるんでしょう、ウチの誕生日。

711名無しさん:2011/07/30(土) 02:09:05
誕生日プレゼントと言っても、毎年渡していれば選択肢もなくなってくる。
さて、今年は何を渡したものか。

「誕生日プレゼントって、意外と悩みの種だよね」
「んで、今年はどうすんの?ぬいぐるみにする?」
「それは去年も渡してるから、別のにしましょう」
「できればクマ関係がいいかな?教会系の物も結構合うよね。十字架とか」

メイ達がブリジットへのプレゼントを相談しあっている。

「家でやれ」

なぜ自室で行う。

「ボク達のことは気にしないでよ」
「仕事の邪魔だ」
「またまた。ソル先輩がこの程度で能率が落ちるわけないじゃないですか」

それはそうだが。

「邪魔だ」

家でやればいいものを。
とりあえずこいつらは無視して、明日の授業の準備をしなければ。

「ソルさんは今年は何を贈るんですか?」
「まだ決めていない」

ディズィーやお前達が決めた後で、それと被らないものを選択する。

「ソル先輩はまーた職人ばりの手の込んだアクセサリーですか?」

買うよりも、自分で作った方が納得できる物が用意できる。

「宝石の原石を手に入れて自分で加工するとか、どこまで拘るんですかソル先輩は」
「いいじゃん。ソル特製の世界に一つだけのものなんだからさ」
「うん。貰って嬉しいよね」
「おかげで、私達の普通のプレゼントがちょっと霞んじゃうのよねえ」

今年は何を作ったものか。

「あ、ところでお兄さん。今年もケーキを作っていいですか?」
「ああ」
「ありがとうございます」

我が家の台所でケーキ作りは行われる。
昔は俺が作っていたが、今ではジェリーフィッシュが、というより菓子作りが趣味なやつが行っている。
多少は手伝うこともあるが。

「ケーキかあ。ボクはチョコケーキがいい!」
「私は果物たっぷりのフルーツケーキが食べたいな」
「こら。あなた達じゃなくて、ブリジットの誕生ケーキでしょ」
「何作ろうかな。今まで作ったことが無いものを作ってみたいな」
「チョコ!」
「フルーツ!」
「いい加減にしなさい!」

騒がしい。
今までにないものと言っても、大抵の種類は作ってきた。
ブリジット以外にも、年に何度も誕生日が祝われる。
ジェリーフィッシュは大所帯だしな。

「普通にイチゴのケーキでいいなじゃない?最近作ってないでしょ?」
「そうかも。じゃあ、二段・・・ううん、三段積みのケーキなんてどうかな?」
「おおー。なんか凄そう!」
「作れるの?」
「お兄さん。何か難しいことがあったりしますか?」
「ない」

手間が多少増えるだけだ。

「じゃあ、作ってみるね。二段目三段目にチョコとか果物でデコレーションもできるかな」
「ディ・モールト(非常に)良いッ!」

騒がしい。

「じゃあケーキはそれでいいとして、やっぱりプレゼントね」
「今度みんなでプレゼント選びに行けばいいんじゃない?」
「いつも通りだよね」
「ケーキの材料も欲しいな」

相談も一区切りついたようなところで、こちらの仕事も終わった。

「帰る。出ろ」
「はーい」

ゾロゾロと去っていくジェリーフィッシュ。

「じゃあねソル」
「ソル先輩また明日」
「お邪魔しました」
「さようならお兄さん」

俺も帰るとしよう。

712名無しさん:2011/07/30(土) 02:59:34


ディズィーさんの家で一緒に学校の宿題をやっていると。

「ブリジットさんは、何か『これだけはダメ』というものはありますか?」
「はい?・・・ええと、いえ、ないと思います」
「そうですか。わかりました」

今のは何の質問なんでしょう?

「お誕生日プレゼントに、ブリジットさんが嫌がる物は贈りたくないですから」
「そういうことですか。大丈夫です。プレゼントが貰えるだけで、ウチは嬉しいです」

なんだか、あんまり気を遣わせてしまって悪いですね。
ディズィーさんの誕生日の時には全力でお返しを・・・って、そう言えばディズィーさんは・・・。
いやいや、誕生日に限らず機会があればいつかお礼をしましょう。

「メイさん達にもお話しました。皆さん乗り気でしたよ」
「そ、そうですか」

メイさん達は毎年お祝いしてくれてますけど、パーティまでやるのは初めてです。
楽しみになってきました。
と、ディズィーさんがノートを閉じました。

「どうかしました?」
「いえ、宿題が終わったので」
「もうですか!?」

早いです!ウチはまだ全然なのに。

「わからない所があるならお教えしますよ?お兄ちゃんほどの教え上手じゃないですけど」
「お願いします」
「まず、ここはですね・・・」

しばらく、宿題に集中です。
それにしても勉強って大変です。ウチには向いてないです。

そうして宿題がようやく終わりそうなころ、ソルさんが二階から降りてきました。

「お邪魔してます」

ソルさんはそのまま台所へ。
夕飯でも作るんでしょうか。そろそろそんな時間ですしね。

「お兄ちゃん」
「なんだ」

ディズィーさんが台所にいるソルさんに声をかけました。

「ブリジットさんへのお誕生日プレゼント、ダメなものはないそうです」
「そうか」
「ちゃんと考えてますか?」
「ああ」

へええ。ソルさんがウチのためのプレゼントを考えてくれてたんですか。
一体どんなものをプレゼントされるんでしょう。ワクワクです。

宿題も片付けて、ディズィーさんと学校であったこととかお喋りしていると、いい匂いが漂ってきました。
ソルさんの料理です。今日も美味しそうですね。匂いだけでわかります。

「ブリジットさんも、お夕飯を食べていきますか?」
「いいんですか?」
「はい。大歓迎です」
「でも、料理って二人分だけなんじゃないですか?」
「お兄ちゃん、お夕飯は三人分でお願いします」

えええ!今更言うんですか?ソルさんが大変すぎませんかそれは。
ていうか、ウチが食べていくこと決定してますね。文句なんてありませんけど。
何度か食べたことはありますが、ソルさんの料理はどれも美味しいです。

それから少しして

「できたぞ」
「わかりました。ブリジットさんもどうぞ」
「は、はい。ご馳走になります」
「急にブリジットさんの分もお願いしてすみませんでした。大丈夫でした?」
「適当に間に合わせた」

やっぱり迷惑だったんですね。あんなタイミングじゃ当然ですけど。
それにしても・・・これは本当に間に合わせで作ったんでしょうか?
一品一品の量はちょっとばかり少なめですけど、その分品数が多いです。
ウチのためにきっと後から追加で作ったんでしょうけど・・・あんなたに短時間でこんなに作れるものなんですか?
さすがソルさん。器用です。

「それでは、いただきます」
「いただきます」
「ああ」

ご飯もやっぱり美味しいです。
これが毎日食べられるディズィーさんがちょっと羨ましいぐらいですよ。
ウチもソルさんにお料理を習いましょうか?
ディズィーさんと一緒に教えてくださいと頼めば、聞いてくれそうな気がします。

なにはともあれ、今は美味しい夕飯をいただきましょう。

713名無しさん:2011/07/30(土) 03:04:51
アバ「・・・おやすみ」

ブリ「せっかくウチの出番ですよ!?」

アバ「・・・眠い」

ブリ「ウチはなんのために出てきたんでしょう?」

アバ「・・・特に意味はない」

ブリ「酷いです」

アバ「・・・おまけで出番あるし」

ブリ「だからって」

アバ「・・・もうお開き」

ブリ「それでは今日はここまで」

714名無しさん:2011/07/31(日) 02:38:23
夕食後。
部屋にていつも通り勉強をしていると、ドアをノックされた。

「なんだ」
「ちょっとお邪魔するわ。ついでにコーヒーを持ってきてあげたからどうぞ」

ミリアと、数匹の猫。
頼んでないが、持ってきたならもらおうか。

「用件は」

コーヒーを飲みつつ、ベッドに腰掛けるミリアに問う。

「朝も話してたけど、ブリジットの誕生日が近いそうね」
「ああ」
「彼女・・・いえ、彼かしら?とにかく、ブリジットが喜びそうな物を知らないから、何を贈ったものか困ってるの」
「ディズィーに聞け」

なぜ俺に聞く。

「もちろん聞いたわよ。返ってきた答えは『女の子がプレゼントされて嬉しい物ならなんでも大丈夫』だったわ」

それで十分だろう。

「選択肢が広くてわからないわ。参考までに、貴方は毎年どんな物を贈ってるのかしら?」
「アクセサリーやぬいぐるみが主だな」
「全部手作り?」
「ああ」
「・・・随分と気持ちが込もってるようね」

手作りはブリジットに限った話じゃないんだがな。
それにディズィーに催促されるから渡しているだけで、祝う気持ちも特にない。

「ディズィーはもちろん、エイプリル達もプレゼントを贈るんでしょう?
 イノ達も何か考えてるみたいだし、できれば重複は避けたいわ」

イノ達というと、梅軒とアバもか。
パーティ料理作りを主に担当するのは俺だ。参加人数を事前に確認しておかなければ。

「困ったものね。アクセサリーといってもブリジットの趣味をよく知ってるわけじゃないし」
「何を選んでも問題ないと思うがな」
「だといいけど」

そんなに心配ならば、一人で考えなくてもいい方法もある。

「選択に困るなら、ディズィーと一緒にプレゼントを贈るという形でもいい」
「あら、それはいいじゃない。そうね、その手があったわね」

メイ達もそうしている。イノ達も恐らくそうするだろう。
ならば、ディズィーとミリアからのプレゼントということにしてもおかしくはない。

「後でディズィーに話してみるわ。ありがとう」
「話が終わったなら、出て行け」

勉強の邪魔だ。

「・・・貴方ね。せっかく人がお礼を言ってるのに、何よその態度」
「言わなくていい」

感謝を求めた覚えはない。

「まったく、それじゃさっさと退散するわ。そうそう、カップ持って行くわ」
「ああ」

飲み終えたコーヒーカップを渡す。

「よくミルクも砂糖も無しで飲めたわね。かなり濃く淹れたつもりだったのだけど」
「失敗しただけだろう」

そんな嫌がらせをするような性格でもないと思う。

「・・・そうよ。悪かったわね。ちょっとばかり分量を間違えたの」

ちょっとどころではなかった。

「貴方なら飲んでくれると思ってたわ。おかわりがいるならまだ下にあるから。私はもう寝るから飲まないけど」

押し付ける気か。明日の朝にでも飲むとしよう。

「それじゃ、おやすみ」
「ああ。おやすみ」

ミリアが部屋から出ていく。
俺も寝ようと思っていたが、コーヒーのおかげで目が覚めた。
ブリジットへのプレゼントでも考えるか。

715名無しさん:2011/07/31(日) 03:33:04


ウチの誕生日がやってきました。
運良く今日は学校がお休みの日です。
ディズィーさん達がパーティの準備をしてくれているということですけど、ウチもじっとしてられないです。
お呼ばれした時間までまだまだありますけど、早めにお隣に行きましょう。

チャイムを鳴らして少し待っていると

「はいはーい。あれ、ブリジット?もう来たの?」
「はい。おはようございますメイさん。我慢できなくて来ちゃいました」
「えー、でもまだ準備終わってないよ?」
「ウチにも手伝わせてください!」
「いいのかなあ。ブリジットのためのパーティなのに」

大丈夫です。ウチがそうしたいんですから。
みんなでパーティの準備というのも楽しそうですしね。

「どしたのメイ?ありゃ、ブリちゃん?おはよう」
「おはようございます。ウチにも手伝わせてください!」
「だってさ。いいのかな?」
「いいんじゃない?本人が言ってるんだし」
「じゃあ、とりあえずエイプリルに伝えてくるね」
「任せたメイ」

ひとまず、居間に移動します。なんだか、台所の方が賑やかです。
皆さんでお料理を作ってるんでしょうか。

「ソル先輩が器用でさ、なんでも作れるんだねあの人」
「本当です。ウチも最近夕飯をご馳走になりましたが、とってもおいしかったです」
「いいなーブリちゃん。私達そんな機会ないし。今日は食べるよ!」

ソルさんの料理が目当てですか?

「あ、そうだ言うの忘れてた。ブリちゃん、誕生日おめでとう」
「ありがとうございます」

なんだかとてもついでな感じがありありですけど、祝われるとやっぱりうれしいです。
そんなお喋りをしていると

「いらっしゃいませブリジットさん。お誕生日おめでとうございます」
「ありがとうございますディズィーさん。何か手伝うことってありませんか?」
「えーと、大丈夫ですよ?それにブリジットさんは今日の主役じゃないですか」
「ご迷惑なら待ってますけど、できればウチも一緒にやりたいです」
「いえ、そんなことは。わかりました。一緒にお料理作りましょう」
「はい!」

楽しみです。

「がんばれー」
「美味しいの作ってね」
「ってお二人は何を?」
「ボク達、まだ料理できないもん。邪魔だってソルも言うしさ」
「だからお皿洗い要員。料理を運ぶぐらいはするけどね」

まあ、後片付けも大変な仕事ですよね。
台所に入ると

「ディズィーちゃんのお兄さん、後はこれを焼くだけですか?」
「ああ」
「じゃあオーブンに入れますね。次は何をするんでしょうか?」
「生クリーム作りは後でやる。ケーキ以外の菓子でも作るか」
「はい。お願いします」

ケーキ作りですか。出来上がりが楽しみです。

「ブリジット、おはよう」
「おはようブリジットちゃん」
「おはようございます。手伝いに来ました!」
「それじゃ、えっと、ソルさん、何をすれば?」
「サラダだ。作れるか?」
「わかりました。ブリジットは包丁使えるよね?」
「任せてください」

絶賛練習中です。大丈夫です。きっと大丈夫です。

「そこの野菜を切っておけ。ディズィー、そっちはどうだ」
「こっちは順調です。少し見てもらえますか?」
「ああ。・・・問題ない」
「あの、ディズィーちゃんのお兄さん、準備できました」
「わかった。まず・・・」

ウチ達のことも見ながら、手際よくどんどん作業をこなしていくソルさん。
ちょっとかっこいいです。ウチもあんな風にできる日がくるんでしょうか。

「うわー大変そう」
「味見させてとか言える雰囲気じゃないねこれ」
「だったら二人とも大人しく待ってなさい」

エイプリルさんに怒られてスゴスゴと居間に戻るお二人。
ウチも足手まといにならないようにがんばらないと!

716名無しさん:2011/07/31(日) 04:28:51
パーティは盛り上がっているようだ。

「よくこんだけ作ったな」
「皆さんで手分けをすれば大したことありませんよ」
「でも今年はいつも以上だよね。参加者が増えたもん」

ブリジットの誕生日を祝した後、料理を囲んでいる

「・・・美味しい」
「ほんとね。ディズィー達も手伝ったんでしょう?」
「ほとんどお兄ちゃんが作ったようなものです。おかわりもありますから、遠慮無くどうぞ」

作るのは俺だがな。
台所にて、追加の料理が出来上がったので居間に運ぶ。

「どもですソル先輩。こっちのお皿は片付いたのでお願いします」

空になった皿を持って台所に戻る。

「彼はいいの?」
「気にしない気にしない」
「と言われても、気にするなというのが無理じゃないかしら」
「イノとミリアの気持ちもわかるけど、ソルさんのことは優秀な執事だとでも思って」
「エイプリルまでそんな扱いするのね」

あいつはあれで遠慮がない。
そんな中

「そろそろケーキが焼けると思うな。見てくるね」

そう言って台所にやってくる。

「お兄さん、ケーキは焼けました?」
「もう少しだ」
「それでは、仕上げの準備します」

道具と材料を取り出す。
昔は俺が指示し、用意したものだが、もはやその必要もない。

「どんな飾り付けにしようかな。一段目は苺たっぷりにして・・・」

生クリームを作りながら考えている。
こっちも料理を作らなければ。
とはいえそろそろデザートなので、あまり多く作る必要はないだろう。

ケーキが焼き上がり、取り出す。

「うん、いい出来ですよね?」
「ああ」
「お兄さんにそう言ってもらえるなら完璧です」

そこまでの太鼓判を押したつもりはないのだが。
そんなことは気にせず、デコレーションを開始する。

料理を一つ作り、居間に運んで戻ってきたところで、ケーキが完成していた。

「どうですか?三段ケーキなんて初めてですけど、こんな感じでいいんでしょうか?」
「ああ」

よくできている。

「ありがとうございます。それじゃ居間に・・・どうやって運べば・・・?」

結構な大きさ、そして重さ。

「お願いしますお兄さん」
「断る」
「お兄さんは、今日のお料理担当じゃないですか」

だからケーキも運べと言うのか。

「わかった」
「ありがとうございます」

ケーキを慎重に運ぶ。

「三段ケーキって、俺は初めて生で見たぜ」
「・・・うん」
「これ、作ったんでしょ?凄いわね」
「お兄さんが教えてくれたから」
「ケーキだケーキだ!」
「蝋燭立てる?」
「どうするのブリジット?」
「お願いします!」
「お約束ですしね。お兄ちゃん、火をつけてください」
「貴方、すっかり雑用ね」

ライター代わりも慣れたものだ。
火をつけ終わる。

「それでは。ブリジットさん、お誕生日、おめでとうございます!」
「「「「おめでとう!!!」」」」
「ありがとうございます!」

さて、台所に戻って皿洗いをするか。

717名無しさん:2011/07/31(日) 05:37:01


みんなでケーキも食べ終えます。

「美味しかったねー」
「初めて作ってあんなに美味しいなんてすごいじゃん」
「ディズィーちゃんのお兄さんが教えてくれたからかな」
「あなたも結構がんばってたでしょ。このクッキーも美味しいわよ」
「ありがとうエイプリル」

本当に、びっくりです。
手作りケーキですか。ウチもいつか覚えたいですね。

「では、そろそろお誕生日プレゼントをお渡ししましょうか」
「あ、そだね」
「ここまでしてもらって、しかもプレゼントまで貰えるなんて、ウチは感謝しきれません!」
「大げさだなーブリちゃん。誕生日なんだからこれぐらい気にしないでよ」
「そうそう。年に一度でしょ。遠慮することないと思うわ」
「ケーキ作り、楽しかったし」

皆さんいい人ばかりです。
皆さんの誕生日の時は、ウチも全力で張り切らないといけませんね!

「では、私から。どうぞブリジットさん。お誕生日おめでとうございます」
「ありがとうございますディズィーさん。えっと、開けてみてもいいですか?」
「はい」

一体どんなプレゼントなんでしょう。
包を解いて開けてみると、かわいいリボンです。

「ブリジットさんの髪は長くて綺麗ですから、たまには束ねてみたらどうかと思いまして」
「わあぁ。明日さっそく使わせてもらいます!」
「気に入ってもらえたならなによりです」

ディズィーさんとお揃いな感じでしょうか。
明日と言わず、あとで早速試してみたいです。

「次はボク達だね。4人で考えたんだけど、動物のぬいぐるみだよ」
「ブリジット、色々持ってるもんね」
「ありがとうございます皆さん。かわいいですねぇ。よく見えるところに飾っておきます!」

イルカとクジラとシャチのぬいぐるみというのは初めて貰いました。
ジェリーフィッシュさんらしいです。

「・・・んで、後はソル先輩なわけだけど」
「ソルはちゃんとプレゼント用意してるの?」
「ああ」

本当にソルさんがウチにプレゼントをくれるんですか!?
一体何なんでしょう?期待より不安の方がちょっと大きいんですけど。
予想が付きません。

「ほら」
「あ、ありがとうございます」
「ソルさん、誕生日おめでとうぐらい言ってあげても」
「断る」
「それぐらい言えばいいのに」
「プレゼントを用意してるだけでも奇跡と思おうよ」

そうですね。無理に言ってもらわなくてもいいです。
あ、でもそうなると、このプレゼントもディズィーさんに言われて無理に用意したもののような・・・。
いえ、気にしないことにしましょう。ありがたくもらいます。

「開けてみてもいいですか?」
「ああ」

ドキドキです。さあ、なんですか?
渡された箱から出てきた物は・・・ヨーヨーが2つ。
ウチの趣味です。覚えててくれたんですね。

「ありがとうございますソルさん!」
「ヨーヨーなんだ。そうだ、久しぶりにブリジットちゃんのヨーヨーショーを見てみたいな」
「いいですよ!今日のお礼に、是非やらせてください」

ソルさんからもらったヨーヨーで早速やってみせましょう。
ヨーヨーの糸を指にはめると、おお、ウチにピッタリな感じです。

「取り扱いに気をつけろ」
「・・・はい?」
「説明書をつけた。よく読んで使え」
「ソル先輩、たかがヨーヨーですよ?どんな危険があるって言うんですか」
「爆発する」
「え、なにそれ。・・・ほんとに?」

爆発するって、えええ!?説明書説明書・・・あ、ありました。
えーと、『このヨーヨーは普通のヨーヨーではありません。注意事項をよく読み、取り扱いには十分注意してください』って。
それからも結構長めの説明が。・・・メンテナンス時は特に注意ですか。ヨーヨーが爆発して死んだらとんだ悲劇です。

なんだか使うのを躊躇うヨーヨーです。でも、さすがにプレゼントに危険物を贈るわけがないですよね。
説明書にも、ちゃんと使えば危険性はないって書いてますし。よーし、やりましょう!
少し感触を確かめてから

「ロジャー!」
「ウヌでは役不足だ!」

ヨーヨーがなぜかクマのぬいぐるみに変化して・・・いきなり怒られちゃいました?しかもすぐ消えちゃいました。
ヨーヨーがクマになったり、しかも突然怒られたりでわけがわかりません。

理解が追いつきませんけど、ロジャーも見た目はかわいいクマのぬいぐるみですし、大切にしましょう。

718名無しさん:2011/07/31(日) 06:26:44
パーティもお開き。
大量の皿が残る。さっさと洗ってしまおう。

「ウチも手伝います!」
「断る」
「なんでですか!?」

必要ない。

「2人でやりましょうよ。こうやって並んでお皿洗いをしてると、夫婦みタイッ!?」

皿洗いで両手が塞がっているので、蹴り飛ばす。
やはりこいつに構うぐらいなら、1人でやった方が早そうだ。

「もお、照れ屋さんですねソルさんは」

決してそんな理由で蹴ったのではない。
そして、無理やりに皿を洗い始める。

「そういえばプレゼント、ありがとうございました。綺麗なペンダントです。似合いますか?」

俺が贈った、熊をデザインしたペンダントを早速身に付けている。
似合うように作ったつもりだ。

「これも素敵ですけど、ウチとしてはやっぱりあれですね。婚約指輪なんかイタッ!!痛いです!」

黙って皿を洗えないのか。

「それにみなさんのパーティも嬉しいですけど、どうですかソルさん?
 夜景の綺麗なレストランで、2人でディナーを楽しむ誕生日をウチと過ごしたいと思いませんか?」
「思わん」
「ウチが『夜景が綺麗です』と言ったら、ソルさんは『お前の方が綺麗だ』なんて言ってくれるわけです!」

誰が言うんだそんな台詞。

「それで食事が終わる頃に、ソルさんが指輪を取り出すんです。そこでプロポーズですよ!!
 プロポーズの台詞はソルさんが考えてくださいね。ロマンチックな感じでお願いします。
 と言っても、ソルさんからのプロポーズならどんなセリフでもロマンチックなのは確定ですよね!!!」

皿洗いが終わらない。食器洗浄機を作ろうか。
今までは普段2人だったので不必要な上、ディズィーもいらないと言ってるから作ってないが。

「お楽しみの最中に悪いけど、お皿追加よ」
「どんどん追加してください!ソルさんと一緒のお皿洗いなら永遠にやっていたいぐらいです!」
「・・・お熱いことね」

ミリアが呆れたように居間に向かう。
まだ片付けは終わってないようだ。

「他にどんなシチュエーションがいいでしょうか?大勢の人の前でストレートに『好きだっ!』なんてのも情熱的と思いませんか?」
「思わん」
「そして周囲の人達はウチ達に注目するんです。そこでウチがソルさんの胸に飛び込めば、万雷の拍手ですよ!」

ずっとこいつの妄想を聞きながら皿洗いをしなければならないのか。

「結婚式は教会がいいです。純白のウェディングドレスは花嫁の憧れですよね」

男が着るものではない。

「でも綺麗な着物も捨てがたいです。うーん、迷います」
「どっちもやるというのはどうでしょう?」
「それでいきましょう!」
「楽しみですね。はい、お皿です。がんばってくださいお兄ちゃん、ブリジットさん」

妹に励まされ、皿洗いを続ける。
さて、大分片付いてきたな。

「ハネムーンはどこに行きますか?定番の南の島ですか?」

どこだろうと関係ない。行かないのだから。

「ちょっと変わったところに行ってみたい気もしますね。でもソルさんと一緒なら、どこに行っても想い出に残りますよ!」
「おみやげをよろしくね、ブリジット。食器はこれで最後よ」
「任せてください!」
「・・・この子、ちょっとテンション高すぎじゃない?」

誕生日だからだろう。
それとも、ケーキに少しアルコールが入っていたせいか。
香りづけ程度だったはずだがな。現に、ディズィーやミリアはいつもと変わらない。
・・・ブリジットもこれはこれでいつも通りと言えるのか。

「幸せな家庭を築きましょうねソルさん!」
「断る」

やっと皿洗いが終わった。
部屋に戻るか。

「あ、ウチとソルさんの愛の巣に戻るんですね?ウチも行きます!」
「来るな」
「貴方も大変ね」
「お兄ちゃん、向こうの片付けも終わりました」
「ああ。ブリジットを家に帰せ」
「わかりました。行きましょうブリジットさん」
「はい。さよならですソルさん。会えない時間が2人の愛を強くするんですね」

しねえよ。
部屋に戻ろう。

719名無しさん:2011/07/31(日) 06:31:49
アバ「・・・疲れた」

ミリ「随分と変則的な書き方をしてたわね」

アバ「・・・なんとなく思いついた」

ミリ「なんとなくの思いつきでまたやってしまったわけね」

アバ「・・・疲れた」

ミリ「さっきも聞いたわ」

アバ「・・・思った以上に大変だったから」

ミリ「書く方もそうだけど、読む方は大丈夫なのかしら」

アバ「・・・そこはもう適当になんとか各自で自己保管してもらうしか」

ミリ「なんて他人頼みなの」

アバ「・・・自分でも何書いてるのかわかってないかも」

ミリ「もっとしっかりしなさい」

アバ「・・・がんばります」

ミリ「それでは今日はここまで」

720名無しさん:2011/08/03(水) 02:17:52
朝、学校に着く。

「おはようバッドガイ君」
「やあソル君。おはよう」

いつも通りジェリーフィッシュの挨拶を適当に返し、昇降口へ。
靴を履き替えると、再び声をかけられた。

「良い朝だな。ソルよ、少し話がある。時間は取らせぬ故、職員室に来てもらおう」
「ああ」

ポチョムキンからの用件というのは珍しい。それも朝からか。
一体なんの用だ。職員室に入る。

「これを見てもらおう」

ポチョムキンに示された先には、

「炬燵か」
「そうだ」

組み立て前の炬燵。
炬燵布団まである。

「これがなんだ」
「昨日、学校の備品の買い出しをしたところ、商店街の抽選券を貰ったのだ。  
 やってみたところ、これが当たった」

経緯はどうでもいい。

「貴殿の自室に置かぬか?」
「必要ない」

机がある。それで十分だ。

「他に適当な場所もないのだ。職員室に置くスペースはない」

だからと言って、自室に置くな。
俺には不要だ。それに、こんな物を置けばどうなるかは大体想像がつく。

「生徒会室に置けばいいだろう」
「いや、昨日買ったと言った備品がまさにそれでな」

炬燵を買って貰った抽選券で、また炬燵を当てたのか。

「生徒会室にはすでに設置済みだ」

運がいいのか悪いのか。

「そういう事情だ。良いではないか。コタツというのもいいものだぞ?」
「不要だ」

仮に設置されても、使いはしない。
ならば、最初から置く必要がない。

「ふぅむ。そこまで言うなら仕方がないな」

諦めたか。

「用件は終わりか?なら、教室に行かせてもらう」
「うむ、手間を取らせた。今日も仕事をがんばろうではないか」

教室に向かう。

「おっすソル」
「グッドモーニング!」

席に着く。

「聞いたぜ。お前の自室にコタツが置かれるんだってな」
「うらやましいぜ!今度当たらせてくれよな!」

なんだと?
職員室からまっすぐ戻ってきたのに、すでに炬燵の件を知ってるのはいい。
しかし、それがなぜ炬燵を自室に置くという話になっている。
もっとも、こういう時は大抵ジェリーフィッシュ絡みだと決まっているが。

「何をした」

隣席に問う。

「・・・その、お姉さん達が・・・」

それで十分だ。あいつらか。
席を立つ。

「おい、どこ行くんだ?そろそろHR始まるぜ?」」

自室に向かい、中に入る。

「あちゃあ、わるお。もう来たの?」
「ちっ、意外と早くバレたか」
「でもね〜、時すでに遅しなんだよ〜」
「もうHRが始まるので失礼します、ソル先生」

去っていく4人のジェリーフィッシュ。
残されたのは設置済みの炬燵。

とりあえず、教室に戻らなければ。

721名無しさん:2011/08/03(水) 03:24:44
3年の授業中。

「なので、ここはこうなる。・・・ここまでで質問はあるか?」

教室を見渡し、質問がないことを確認する。

キーンコーンカーンコーン

鐘もなった。ここまでとするか。

「それでは今日はここまで。宿題を出す。指定した範囲をやってこい」

宿題の量を聞き、教室内に不満の声が挙がった。

「随分と多いようだな?」

ザトーの指摘は正しい。

「生活態度の悪い生徒がいるからだ」
「誰のことだろ?」
「後輩君の機嫌を損ねるなんてよほどのやつだね」
「私達とばっちりだ〜」
「私怨で宿題を増やすのは感心しません」
「・・・貴様達の図太さは見習いたいものだな」

さて、午前の授業も終わった。食事の前に、自室に教材を置きに行こう。
自室に入る。

「あ、バッドガイ君。お疲れさま」
「おかえりソルっち」
「さっそくコタツを堪能させていただいてますわ」
「時期的にはちょっと早いけど、最近随分寒くなってきたからね」

炬燵に入って昼食を食べている。

「ソル君も入る?君、二学期からはお弁当派になったよね?」

ディズィーとミリアで、弁当を作るようになったからな。
だが、教室の鞄の中だ。

「実は持ってきてるんだけどね」
「人の鞄を漁るな」

人の私物をなんだと思ってるのか。

「まあまあ気にしない気にしない。ところで、お弁当が欲しければ、このヤカンの水を沸かすのだ!」
「お茶っ葉は職員室から貰ってきたの」
「急須と湯のみはヤカンと同じく家庭科室からですわ。もちろんバッドガイさんの分もありますから」

用意がいい。

「あー、もうお姉ちゃん達いるし」

人がやってきた。

「おっと、遅かったなマイシスターズ。コタツは私達が占拠した」
「ボク達もコタツに入りたい!」
「食べ終わったら代わってあげますわ、メイ」
「教室から近いっていいよね」

1年の連中か。

「ソルさん!ウチと一緒にお昼を食べましょう!」
「断る」

弁当を取り返し、教室に行くとしよう。
ヤカンの水を沸かせばいいんだったな。

ヤカンを手に取り、炎を使い一瞬で湯に変える。

「これでいいだろ。弁当を寄越せ」
「お、ありがとソルっち。ついでにここで食べてかない?」
「断る」

弁当を受け取り、騒がしい自室を後にする。

「ソルさん、照れなくてもいいじゃないですか」

見当違いの事を言うブリジットを無視し、教室へ。そして席に着く。
ジェリーフィッシュは当然として、闇慈とチップもいない。恐らく食堂だろう。
これなら静かに食事ができる。

「珍しいアルナ。ソル一人アルカ?」
「ああ」
「私も今日はそうアルネ。良かったら一緒に食べるアル」

紗夢がやってきた。
一人ぐらいなら問題ないか。紗夢だしな。

「好きにしろ」
「そうするアル」

前の椅子に座り、紗夢が弁当を広げる。
恐らく自分で作ったのだろう。見た目からして美味であることが伺える。

「どうアルカ?少しぐらいならおかずを分けてあげるアルヨ?」
「いや、いい」

自分の分がある。
そのまま、たまに料理の話題になることもあったが、基本的には静かな昼食を過ごした。

722名無しさん:2011/08/03(水) 03:35:51
テスタ「今回の展開、ただ自室にコタツを置いてみたかっただけという」

アバ「・・・あれ、テスタ?」

テスタ「うむ。戻ってきた」

アバ「・・・クビにされたのに」

テスタ「やはり私がいなくては始まらないだろう」

アバ「・・・そうでもなかった」

テスタ「・・・え」

アバ「・・・なんとかなるもの」

テスタ「優しく出迎えてほしかった」

アバ「・・・無理」

テスタ「リストラ中、おまけでも出番がなかったのに」

アバ「・・・体育祭以外ね。多分」

テスタ「私なんかいなくても何も問題ないんだな」

アバ「・・・がんばれ」

テスタ「なぜこんなに私の扱いが悪いのか」

アバ「・・・キャラが弱い」

テスタ「なんということだ」

アバ「・・・主人公との接点もないし」

テスタ「つまり、これからも出番はないと」

アバ「・・・うん」

テスタ「私には本編がある」

アバ「・・・テスタじゃなくてもいいんだけど」

テスタ「絶望しかないな」

アバ「それでは今日はここまで」

723名無しさん:2011/08/05(金) 03:01:32
放課後、自室で仕事を行う。

「最高だぜコタツ!」
「お茶が美味く感じるな」
「和菓子モイケル」

もう授業は終わったのだ。
さっさと帰ればいいものを、炬燵目的で来るんじゃない。
炬燵が設置されてから、毎日誰かしらやって来るのが鬱陶しい。

「なあソル、授業の準備ならこっちでやろうぜ!」
「断る」
「もったいねえな。せっかくコタツがあるってのに」
「邪魔ダ。狭クナル」

お前達が仕事の邪魔だ。

「カイとアクセルも今頃生徒会室でコタツに当たってんのかな」
「ああ、そっちにもあるんだっけ。そういやソル、ディズィーも生徒会に入ったんだってな」
「何故ディズィーガ良クテ我輩ハ駄目ナノダ」
「そりゃロボは役員って柄じゃないだろ?」
「ソンナコトハナイ。我輩ハイズレボンクラ共ヲ支配シ、ハーレムヲ築クノダ。生徒会役員グライ簡単ダ」
「その考えがダメだろ」

カイ、アクセル、ディズィーの三人で来学期から新生徒会となる。
今学期は見習いとしてザトー達の手伝いを行う。
今日はその初日。歓迎会もやるということで、ディズィーの帰りは遅くなると聞いている。

「生徒会長か。俺もちょっとやってみたかったぜ」
「来年立候補しろよチップ」
「いや無理だろ」
「留年すればいけるんじゃないか?」
「頑張ルガイイ」
「やらねえよ!!」

騒がしい。

「ム、湯ガ無クナッタゾ」
「もうか?家庭科室でお湯わかしてこないとな。茶葉も交換しないと」
「頼んだぜロボ」
「ナゼ我輩ダ。オマエガヤレチップ」
「いや、俺はコタツから出たくないから」
「右に同じ」
「我輩モダ!」
「しょうがねえな。ジャンケンしようぜ」
「ソル、お前もほら」

なぜ俺まで。

「出さないと負けだぜ?ジャンケンポン!」

強制的に参加させられる。
だが、負けはしない。

「お、一発でケリがついたな」
「早く頼んだぜロボ」
「待テ、三回勝負ダ」
「断る」

さっさと行ってこい。

「覚エテロボンクラ共!」

ロボカイが自室から出ていく。

「イチイチ教室から出ないといけないのは不便だぜ」
「ちょっと早いけど、明日にでもストーブを引っ張りだすか?どっかの倉庫部屋にあるだろ」
「灯油はどうすんだ?」
「ソル、教師権限でどうにかならないか?」

ならないこともないが、そんなことをしてやる理由がない。

「やる気ないみたいだな」
「でもよ、ストーブがあっても水汲みには行かないといけないだろ?闇慈の水芸の水じゃ嫌だぜ?」
「俺だって嫌だっつーの。ソル、改築でどうにかならないか?」

ならないこともないが、やはりそんなことをしてやる理由がない。

「やる気ないみたいだな」
「やる気出そうぜソル!」
「断る」
「これだ。タンクでも用意するかねえ」

どうあってもここで茶を飲みたいのか。
寮に炬燵を用意すればいいだけだろう。

「戻ッタゾ」

ノックも無く自室のドアが開けられ、ロボカイが入ってくる。

「おう、お疲れ」
「待ってたぜ」
「我輩ニコンナ事ヲサセタノダ。美味イ茶ヲ淹レロ闇慈」
「任せとけ」

俺の仕事が片付くまで、座談会は続けられた。

724名無しさん:2011/08/05(金) 04:05:24
仕事を終え、帰途につく。
外から学校を見ると、生徒会室の明かりが付いている。
ディズィーはまだあそこにいるのだろう。
俺が先に帰るというのは、教師を始めて以来あまりなかったことだな。
これからも、こんな日がたまにはあるのだろう。

ちょっとした物珍しさを覚えつつ家に帰る。
家に着くと、いつも通り明かりがついている。当然だ。今はミリアがいるのだから。
当たり前で新鮮な体験。だからどうということもないが、そんな事を考えた時点で何か感じたこともあるのだろう。

家に入る。
まず猫に出迎えられ、次いでミリアが台所から出てきた。

「お帰りなさい。聞いてるかしら?今日はディズィーが遅くなるって」
「ああ」
「そう。だから晩ご飯は私が作ってるんだけど、構わないわよね?」
「ああ」
「良かったわ。もうすぐ出来上がるけど、ご飯にする?それともお風呂が先かしら?」

もうすぐ出来上がるというなら、食事を先にしようか。

「先に食べる・・・どうした」

返答した先、ミリアが顔を手で覆って俯いている。

「・・・いえ・・・なんでもないわ・・・」

そうは見えないが。
おそらくは、先ほどのやり取りに対しての後悔、それと多少の照れか?
こっちはブリジットに散々言われているので慣れているがな。
ミリアにすれば不用意で不覚だったというところか。
他意もなく、自然な流れで言ったのだから気にすることもないと思うが。いや、だからこそだろうか。

「火がついているな。台所に戻れ、焦げるぞ」
「え、ええ。そうね」
「俺は鞄を置いてくる」
「わかったわ」

ミリアを促し、料理に戻らせる。
俺は二階の自室に向かい、鞄を置いて再び階下へ。

「もう出来るわ。ご飯をよそってくれるかしら?」
「ああ」

二人分のご飯をよそい、ミリアが必要としてる皿も取り出す。

「あら、ありがとう」

そして、料理も並べ終えた。

「いただく」
「どうぞめしあがれ」

箸を取る。
考えてみれば、ミリアだけで食事を作るというのは初めてのことか?
いつもはミリアが主でも、ディズィーがなにかしら手伝いたがるからな。
そんなどうでもいいことを考えつつ、食事を始める。

「・・・どうかしら?」
「美味い」
「本当に?」
「ああ」
「そう」

こんなことで嘘をついてどうする。不味く作ったわけでもあるまいに。
しかし、そんな当たり前の褒め言葉でも、言われた方は嬉しいものか。
ミリアもようやくまともに食べ始めたしな。そんなに俺の感想が気になったか。
そしてしばらく食事を進めていると、ミリアが話しかけてきた。

「ソル、さっきのことなんだけど」
「ああ」

「さっき」とは、先ほどの玄関での会話のことだろう。

「忘れてちょうだい」

物覚えはいい方でな。しかし、忘れなくても、最初から気にしていないことだ。

「わかったかしら?」
「ああ」

ここは頷いておけばいいだろう。

「どうかしてたのよ。でなきゃあんな・・・あ・・・」

そこで言葉が途切れる。また少し頬が紅潮してるな。
何を言うつもりかは知らないが、何も言わずにいておいた方がいいと思うがな。

「・・・とにかく、誰にも言わないで」

念を押されなくても、他者に言う気などない。

「一生の不覚だわ・・・」

箸が止まっている。随分と落ち込んでいるようだ。
俺が気にすることでもないか。
食事を続けるとしよう。

725名無しさん:2011/08/05(金) 04:36:35
テスタ「問題」

アバ「・・・・・・?」

テスタ「ラブコメの主人公はなぜ鈍感なキャラが多いのか」

アバ「・・・・・・」

テスタ「答えは、『ヒロインの気持ちに敏感だと話が作りにくいから』」

アバ「・・・そうなの?」

テスタ「いや、実の所は知らない。私がそう思うだけだ。すまない」

アバ「・・・ふーん」

テスタ「そこで問題だ」

アバ「・・・また?」

テスタ「この万能でチートで他者の気持ちも察してしまう主人公をどうすればいいか」

アバ「・・・どうするの?」

テスタ「どうすればいいのだろう・・・」

アバ「・・・扱いづらい」

テスタ「『鈍感だけど優しくて明るくてちょっとHだけど好きな子のためなら一生懸命』なテンプレ主人公にするべきだったのでは」

アバ「・・・今更」

テスタ「それだと、今回のミリアの紅潮に対して『なんか顔が赤いけど大丈夫か?』とか言って」

アバ「・・・手をヒロインのおでこに当てたりでさらにヒロインが赤くなって」

テスタ「『風邪か?最近寒いからな。安静にしてろ』なんてお約束の展開ができたわけだ」

アバ「・・・ソルじゃ無理・・・」

テスタ「無理だな」

アバ「・・・ねえ」

テスタ「しかし今更性格変更もできないしな」

アバ「・・・がんばってなんとかして」

テスタ「前向きに努力はしよう」

アバ「・・・ファイト」

テスタ「それでは今日はここまで」

726名無しさん:2011/08/18(木) 02:58:37
授業中。

「そろそろ修学旅行だろ?」
「楽しみだぜ!」
「なあ。だから入念に準備してたんだ」
「そしたら、宿題やるの忘れちまったんだぜ」

闇慈とチップが宿題を忘れた言い訳をしている。

「な?気持ちはわかってくれるだろ?だから大目に見てくれよ」
「駄目だ」

そんな理由で見逃せるものか。
宿題ぐらいやってこい。大した量は出してないのだ。

「忘れて悪かったよ。それで、どうすりゃいいんだ?バケツ持って廊下に立ってろとか?」
「グラウンドを走ってこいでもいいぜ!」
「町内一周してこい」

町内一周でもこいつらにはぬるい。
錘もつけるか。

「バケツに水を汲んで、それを持って走ってこい」
「は?」
「ワット!?」
「さっさと行け」
「マジかよ・・・」
「どんな修行だよ」
「水を零すなよ」

嘘をつけばわかる。
とはいえ、途中でズルをしようと俺にはどうでもいいんだがな。

「行こうぜチップ」
「勝負しようぜ闇慈!」
「上等。負けたら昼奢りな」

こいつらなら、サボったりしないか。
後で、今回の授業分の補習プリントを作らなければならないな。

「他に宿題を忘れたものは?」

教室を見渡す。
・・・教卓前の紗夢が動揺している。

「お前もか」
「・・・昨日はお店が大繁盛だったアル」
「だからなんだ」
「部屋に戻ったらいつの間にか寝てたアルネ・・・」
「そうか。明日までにやってこい。他にいないか?」

再び教室を見渡す。
どうやらいないようだ。

「では授業を始める。宿題の解答からだ」
「ちょい待て!」

闇慈が物言いをつけてきた。

「いやおかしいだろ!?俺達は町内一周なのに紗夢は見逃すのかよ!」
「お前の意見は聞いていない。さっさと走ってこい」
「おいい!?」

それぞれに適した対処をしている。

「・・・いいアルカ?」
「明日は忘れるな」
「ちゃんとやってくるアルネ」

ならばいい。2日連続で忘れるようなら処罰も考えるが。
普段は真面目な紗夢だ。たまに宿題を忘れたぐらい問題じゃない。
闇慈とチップはそうはいかないがな。

「御津っち、早く行かないとチプっちに負けるよ?」
「ザナフ君は飛び出して行ったの」
「うおっ!」

闇慈も走り去っていく。
俺を追求するより、チップとの勝負が大事なようだ。

「それでは宿題の答え合わせだ。指名されたら、黒板に答えを書いていけ」

やっと授業を始められる。

727名無しさん:2011/08/20(土) 01:51:54
昼休み。

「結局、御津っちとチプっちは戻ってこなかったけど、大丈夫?」
「他の教師には話をつけてある」
「ぬかり無いアルナ」
「それでも、どうかと思うの」

あいつら何をしている。
まともにやれば、あいつらなら授業時間内に戻ってこれるはずだが。
あの連中にまともを期待するのが間違いか。

「ソルっちのお弁当美味しそう。ミリっちの愛妻弁当?」
「違う」
「でも、栄養なんかも考えられた弁当あるな。それに昨日のとも内容が違うアル」
「毎日飽きないお弁当作りって、結構難しいの」

俺に限っては、同じ献立でも飽きやしないがな。
しかし、作っているディズィーとミリアが飽きるか。

「うおっしゃあ!!勝った!!!」

昼食を食べていると、教室のドアが開け放たれた。

「あ、お帰り御津君」
「よっ、ただいま。いやあ、疲れたぜ」
「随分時間がかかったアルナ」
「途中から肉弾戦になったからな」

俺は走れと命じたはずだが。

「水をこぼしたらやり直しだろ?だから、途中で相手のバケツを狙うようになってよ」

やり直しと言った覚えはない。
ただ、零すなと。

「後はもうただの喧嘩だな。久々に思う存分やりあったぜ」
「んで、チプっちは?」
「ああ、どっかで死んでる」
「わお。そりゃ熱戦だったみたいだね」
「ああ。最後の疾ハメが成功しなかったら俺がやられてたな」

余計なことをせず、ただ走らずにはいられなかったのか。

「そう言えば、新しい宿題が出たアルネ」
「うは、そりゃきついな」
「明日はちゃんとやってきたほうがいいの」
「まぁ、がんばるさ」
「受けられなかった授業の補習用プリントがある。放課後に取りに来い」
「そりゃ助かる。明日も走らされるのはさすがに勘弁だからな」

午前の授業全ての分。俺が作る。
授業に欠席したのは俺に原因があるからな。
たまには冗談のような罰を与えるのもいいかと思ったが、ろくな結果にならなかった。
こうなるのは予想できてたはずなんだがな。

「あ、それあたしも欲しい」
「何故だ」
「だって、授業受けてなくても理解できるようになるようなプリントでしょ?貰って損はないと思うけど」

そうかもしれない。

「放課後に取りに来い」
「ありがと」

午後の授業をいくつかサボって、プリント作りをするとするか。
授業を欠席するのはあまり好ましくはないが、でなければプリント作成が間に合わない。

・・・それならば、授業の要点をまとめたものを毎回配布するというのはどうか。
授業中に理解が追いつかなかった者も、それを利用して理解できるようになるものを。
いや、それだと授業に対する集中力が低下するか。
あくまで授業有りきだ。俺としては、授業がなくとも独学でいくらでも勉学は可能だと、自身がそうなので知っているが。
だが、そうだな・・・授業の要点をまとめた物を配布するのは試してもいいか。成績が悪化すれば元に戻せばいいこと。

「ソル、お弁当はもっと味わって食べた方がいいアルネ」

昼食を食べ終わった。
考え事をしつつも、箸を止めることはない。紗夢には注意されたが。

「チップ遅えな。あいつの奢りなのに」
「いや、死んでるんでしょ?」
「あ、そうだった。仕方ねえ、一人で食堂に行くか」
「いってらっしゃい」
「お前が羨ましいぜソル。かわいい女の子に囲まれやがって」

闇慈が教室を出ていく。

「良かったねソルっち。かわいい女の子に囲まれて」

騒がしいだけだ。

「ご飯は一人で食べるより、みんなで楽しく食べたほうがいいと思うアル」
「誰かと食べるってだけで、美味しくなるの」

・・・そういえば、最後に一人で食事をしたのは、いつのことだったか。
意識した覚えはなかったが、最近はいつも、誰かと食べている気がする。

728名無しさん:2011/08/20(土) 03:03:29
放課後。

「サンキューソル!これでバッチリだぜ!」
「明日はちゃんと宿題やってくるからよ。じゃあな」
「また明日な!」

闇慈とチップが自室から出ていく。

「ほんとわかりやすいねこれ。ソル君、私にも頂戴」
「私の分もお願いしますわ」
「ちゃんと授業を聞いてれば大丈夫だと思うの」
「それでテストの点が良ければ苦労しないんだけどね」

ああ、それなら俺も面倒がなくて済む。
だがそれよりも、言うべきことがある。

「帰れ」

炬燵に入ってのんびりしてるんじゃない。

「宿題やってるんだからいいじゃん」
「もっと落ち着きなよ、ソル君。お茶が無いの?」
「あら、それは失礼しましたわ。今おかわりを」
「そういうことじゃないと思うの」

なぜここに集まる。
いや、炬燵があるせいということはわかっている。

「ねぇ、ここわかんないんだけど?」
「それはね、今日習ったとこなんだけど・・・」
「あ、そっか。なるほどオッケーわかったよ」

宿題をするのは良い事だ。やらないよりもよほどいい。
だがしかし、ここでやらなければならないことか。
家でやれ。

「あ、お湯が無くなった。水まだあるよね?」
「十分にありますわ」

自室にはストーブが設置され、さらに貯水用のタンクまで置かれた。
ここで茶を飲む分には、何も困らない。
その事が、生徒の溜まり場になっている一因ではあるが。

「バッドガイ君もどうぞ。お茶菓子いる?おせんべいがあるの」

仕事用の机に茶と煎餅を置かれる。

「ソルっちもこっちでやればいいのに」
「コタツ最高」
「でも、スペースがありませんわ」
「あ、私の隣でいいなら空けるけど?」

必要ない。

「相変わらず仕事熱心だなあ」
「それが彼の良い所ってことで」
「仕事にかまけて、家庭を顧みない人もいますわ」
「バッドガイ君なら、仕事と家庭を両立できると思うの」

好き勝手言っている。

「そういやさ。ソルっちってさ、修学旅行はどうすんの?」
「ああ、ソル君はいつも友達がいないからね」
「キスクさんとロウさんがどうにかするのでは?」
「でも、今年は教職も兼ねてるの」

お前達に心配されることでもないんだが。

「そもそも、今年の行き先ってどこだっけ?」
「・・・なんで忘れるの?」
「ありえませんわ」
「一番楽しみにしてたのに」
「い、いーじゃんか!ちょっとド忘れしちゃっただけだし!」
「うるさい」

仕事の邪魔になるほど騒ぐな。

「あーごめんね。で、なんだっけ?」

俺の忠告を気にしやしない。

「どっかの雪山を借りきってスキー三昧だよ」
「スノースポーツならなんでもいいそうですわ」
「シーズン前だからって、貸切って凄いの」

ガブリエルの人脈と聞いているが。
それにしてもだ。そこまでやるのか。

「ああ思い出した。楽しみだよね」
「去年は観光地巡りだったしね。あれも楽しかったけど」
「北へ南へ東へ西へ。有名所はあらかた見尽くしましたわ」
「終盤はみんなバテてたの。二年連続じゃなくて良かったの」

中々に興味深いものはあったがな。
机上の勉学だけでは得られないものもある。

729名無しさん:2011/08/22(月) 01:41:49
朝、目を覚ます。
ベッドから起きて、着替えた後一階に降りる。
猫に餌と水を与えてから、朝食の準備に取り掛かる。

「おはよう」
「ああ」

ミリアも起きてきた。

「何か手伝いましょうか?」
「皿とテーブルの準備をしろ」
「わかったわ」

料理は一人で十分だ。
魚を焼いて味噌汁も作ってきんぴらごぼうにだし巻き卵と。
こんなものでいいか。

「相変わらず朝から手が混んでるわね」
「大したことじゃない」

ディズィーもやっている。
平日は毎朝な。お前も手伝っているだろう。

「味が違う気がするのよね。卵なんて、どうしてこうも味の違いが出るのかしらと思うほどに」

慣れだ。
昔に比べれば、俺も上達している。

「隠し味でもあるのかしら?」
「ディズィーと変わりない」
「そうよね。見ていても、違ったところはないし。だったら、どうして差が出るのかしら」

ディズィーとの差を挙げるとすれば、火に対する感覚の違いか。
フライパンや油の熱し具合、火力、火にかける時間、タイミング。
そこらのわずかな差の積み重ねだろう。ディズィーも十分に美味い料理を作っているけどな。

「料理は人並みに作れる程度に自信はあったけど、この家に来てからはへこんでばっかりよ」

ミリアも下手ではないが。
さて、朝食ができた。

「それじゃ、いただきます」
「ああ」

しばらく朝食を食べていると、ミリアが口を開いた。

「そういえばそろそろ修学旅行だけど、私達がいない間、この子達はどうするの?」

この子達、とは猫のことか。

「自動で餌と水を与え、猫砂を新しいものに交換する機械を作る」

それで十分だろう。

「旅行中、この子達の面倒は?」
「放っておいても問題ない」
「ちょっと、何かあったらどうするのよ」
「何があるというんだ」

しばらく家を空けたところで、問題など起こるまい。
それでも文句があるなら、世話役用にミニロボでも作るか。命令に従順なタイプの。
必要ないと思うがな。

「まだ子猫なのよ?心配にならないかしら?」
「ならん」
「例えば、急に病気にでもなったらどうするの?」
「その可能性は低い」

常日頃から注意しているのだ。
病気の兆候があれば見逃しはしない。現状、その心配はない。

「0じゃないでしょう?」
「その程度を考慮するなら、修学旅行に参加するな」

それが手っ取り早い。
行かなければいい。それだけだ。

「さすがにそれは・・・」
「だったら、無用な心配をするだけ無駄だ」

留守中の猫共に関しては、俺とて無関心ではない。
それなりに対策は用意してある。

「・・・頼もしいわね。わかったわ、貴方に任せるとしましょう」

話が終わると同時に、朝食も食べ終えた。
さて、食器を片付けてから掃除。その後は猫共用の備えをするか。

「しばらく会えなくなるから、今日はたくさん遊んであげるからね」

ミリアは猫に構っている。
皿洗いを始めよう。

730名無しさん:2011/08/22(月) 02:33:05
しばらく家を開けるので、普段はあまり掃除しないところも綺麗にする。
掃除をしていると、玄関が開き、誰かが入ってきた。

「ソルさーん!おはようございます!」
「あらブリジット。おはよう」
「おはようですミリアさん」

朝から何の用だ。

「会いたいから会いに来たんです!愛に理由は要りません!」
「帰れ」

騒がしい。
窓掃除は終わった。次は棚を拭くか。

「もお、そんなこと言って本当にウチが帰ったら寂しいんですよね?」
「いいや全く」
「照れなくてもいいじゃないですか。ウチはソルさんと離れてる時はいつも寂しいですよ?」

知ったことか。
猫共があちこちと飛び乗るので、毛が結構あるな。
次からは、常にここも掃除することにするか。

「やっぱりウチの隣にはソルさんが。ソルさんの隣にはウチがいないとダメなんです!」

お前が隣にいなくても何も問題ない。むしろ、いない方がいい。
ミケめ、掃除を終わらせたばかりのところに飛び乗るな。拭き直す。

「運命の赤い糸ってやつですね。ウチ達が結ばれるのは間違い無いです!」

棚拭きも終わった。床を掃除するか。

「あ、ウチも手伝います!」
「断る」

一人で十分だ。

「まあまあ、これもいずれは主婦になるウチのお仕事になるんですから。旦那様はのんびりと待っててください」
「断る」

お前に任せるより俺がやった方が早く、丁寧だ。

「えー。じゃあ、ソルさんが奥さんで、ウチが夫ですか?・・・それもアリですね。ソルさんなら絶対にいいお嫁さんになれますし」

そういうことじゃない。
二階ヘ行き、床掃除を始める。

「ソルさんってどこからどう見ても完璧な主婦ですもんね」

やはり猫の毛が多いな。平日も時間があれば、掃き掃除ぐらいしておくべきか。
暇な時間なら、いくらでもある。

「その時は、ウチがソルさんのために一生懸命働いて、幸せな暮らしをさせてあげますね!」

掃除の邪魔だシロ。掃除機にじゃれ付くな。

「そしたらソルさんが玄関でウチを出迎えてくれるわけですか?『待ってたよ愛しのブリジット。お帰りのキスだ』とかキャー!」

自室も結構猫の毛が落ちている。
カーペットに猫の毛が絡んで、掃除するのも一苦労だ。
猫を飼うようになってから一度改良を施したが、より高性能に再改造を行うか。

「もう毎日がハッピーです!そんな幸せな未来がウチ達を待ってるんですよ?楽しみですねソルさん!」

二階はこれぐらいでいいだろう。
階段に移る。

「ソルさーん!?聞いてくれてますか!?」

タマが階段で寝そべっている。邪魔だ。
ミリアのところに行け。

「もしもーし!?」
「うるさい」
「あ、聞こえてたんですね。もう、いつも以上に無視されて、ウチのハートは傷つきました!責任とって結婚してください!」
「断る」
「うーん。勢いで『しょうがないな』って言うのを期待したんですけど」

誰が言うか。
階段にも掃除機をかけ、降りていく。

「でも、ウチはまったく諦めていませんからね?なんてったって、そろそろ修学旅行じゃないですか!」

一階へ。当然だが、ここが一番汚れている。

「一大イベントですよこれは!さすがのソルさんも、ふとした拍子にウチにときめいたりするんですよ!」
「邪魔だ。どけ」
「もう少し言い方ってものがないかしら」

ミリアと猫が場所を移動する。
掃除機をかける。

「行くのは雪山ですからね。お約束中のお約束、二人で遭難もしちゃいましょう!
 きっと都合のいい所に今は使われていない山小屋があったりしますから!そこで二人で温めあうんです!もちろん肌と肌で!!」
「さっきからブリジットは何を言っているの?」
「知らん」

ここも終わった。
あとは、地下書庫か。

731名無しさん:2011/08/22(月) 03:20:52
掃除が全て終わった。
昼飯を作るか。そろそろディズィーも起きてくる頃合いだ。

「聞いてくださいミリアさん。最近ソルさんがウチに冷たいんです。倦怠期なんでしょうか?」
「・・・そうね。たまには少し距離を置くことも大切なんじゃないかしら」
「そんな・・・!」
「四六時中愛を伝えられるのも、結構鬱陶・・・重いものよ?」
「そうですか・・・考えてみます」

ミリアもザトーにはうんざりしているからな。

「ところで、楽しみですよね。修学旅行」
「そうね。この学校は、全校生徒で行くのよね?」
「そうです。人数が少ないですからね。2年生だけじゃつまらないということで、みんなで行くんです!」
「三回も旅行に行けるのはいいけど、三年は今の時期に修学旅行なんて大丈夫なのかしら」
「問題ありません!教師の方たちが優秀ですから。今はソルさんもいますし!」

負担はこっちに来るというわけだ。
それが仕事なら仕方がないが。

「ソルと言えば、修学旅行中のソルの扱いってどうなるのかしら?」
「ソルさんですか?去年はカイさん達と同じグループでしたけど・・・あれ、今年はどうなるんでしょう?」
「旅行中まで教師の業務に追われるのかしら。どうなの、ソル?」
「そうなる」

もっとも、教師業をやるので、それなりの待遇は用意してもらっているがな。
待遇は生徒で、仕事だけ押し付けられるというのはお断りだ。
一人部屋や独自行動の自由、生徒への罰則権限他いくつかある。
俺を一介の生徒として参加させる道もあったが、学園側はそれを選ばなかった。
つまり、待遇に匹敵する無理難題を押し付けられると容易に想像できる。

「一人部屋!?それってウチを待っているってことですか!!?」
「貴方の前向きさには見習うべき所があるわね」

やめておけ。ろくなことにならない。
そうこう会話しているうちに昼食も出来上がり、見計らったかのようにディズィーが現れた。

「おはようございますお兄ちゃん」
「ああ」
「おはようディズィー」
「ディズィーさんおはようございます」
「お二人ともおはようございます」

ブリジットがいることに関して、疑問も持たない。もはや当然か。

「昼食ができた」
「美味しそうですね」
「ブリジットの分はあるのかしら?」
「ああ」
「さすがソルさん!ウチの愛が通じたんですね!!」

自分の分も頼むとお前がしつこく要求してきたからだ。

「では、いただきます」
「いただきます」
「いただきまーす!」
「ああ」

昼食を取る。

「ソルさんの料理はいつも美味しいですけど、前よりさらに美味しくなったような・・・。わかりました!隠し味はウチへの愛ですね?」
「違う」

そんなものは入れていない。

「朝もそんな会話をしてたわね」
「え、隠し味ってミリアさんへの愛情ですか!?」
「そういうことじゃなくて」

それも入れていない。・・・いや、ゼロでもないか。
食事する者のことを考えて作る。以前、学園祭時に紗夢に習ったことだ。実践できているかはわからないが。
気持ちで料理が上手くなるとは、どんな理論なのかわからないが。そういうこともあるのだろう。

「ディズィーと同じように作っているのに、どうしてこうも差がつくのかってこと。あ、ディズィーの料理もとても美味しいわよ?」
「ありがとうございますミリアさん。でも、やっぱりまだお兄ちゃんには敵わないんですよね」
「ウチもお料理の練習はいつもしてますけど、まだまだです。愛が足りないんでしょうか?」
「むしろ、ブリジットさんは愛を入れすぎなんじゃないですか?」
「うーん・・・じゃあ今度は少し愛を減らしてみます」

なぜそれを調味料のように語っているのだ。

「そうそう、お二人とも。後で、修学旅行用にお買い物に行きませんか?」
「そうね。色々と買っておかないと」
「ウチも行きます!」
「ということで、お兄ちゃん、後で出かけますね?」
「ああ」
「必要な物があれば、買ってきますよ?」
「大丈夫だ」

好きに行ってくればいい。
俺は猫用の機械の製造と、掃除機の改良でも行おう。

732名無しさん:2011/08/22(月) 03:39:38
テスタ「久々に本編」

アバ「・・・最近やらなかったからね」

テスタ「疲れてる時に酒飲むと寝てしまう」

アバ「・・・そんな時におまけを書かなくてもいいのに」

テスタ「やれると思った」

アバ「・・・2日続けて失敗したでしょ?」

テスタ「・・・すみません」

アバ「・・・以後気をつけるように」

テスタ「はい。・・・なぜ私が怒られているのだ?」

アバ「・・・気にしない」

テスタ「さて、今回は全開ブリジットで突っ走ってみた」

アバ「・・・久々に」

テスタ「結論。ソルの精神レベル設定を大いに間違えた」

アバ「・・・ねー」

テスタ「イメージ的に、仙人とか賢者とかその境地の精神キャラにしてるから」

アバ「・・・ブリジットに何を言われても反応がない」

テスタ「盛大に空回ってたな」

アバ「・・・まあ、それも一つの味と思えば」

テスタ「なんというか、自分で書いてて『こいつ無反応すぎじゃないか?』と思ってたからな」

アバ「・・・それもどうなの」

テスタ「これからどうすればブリジットエンドにいけるのか」

アバ「・・・ていうか、ミリアエンドにも行けそうにないよね?」

テスタ「それは・・・まあ・・・・・・どうしよう」

アバ「・・・修学旅行でなんとか」

テスタ「・・・遭難させるか」

アバ「・・・えー・・・安易」

テスタ「だが効果は高いはず」

アバ「・・・まずソルが遭難しそうにない」

テスタ「ああ・・・」

アバ「・・・困ったね」

テスタ「・・・遭難は諦めよう」

アバ「・・・・・・あっさり」

テスタ「他にもイベントはあるはず」

アバ「・・・これから考える」

テスタ「とにかく、修学旅行に行かせてみよう」

アバ「・・・いつもの見切り発車」

テスタ「やってみればどうにかなるものさ」

アバ「・・・それもいつも通り。・・・どうにかなってる?」

テスタ「どうにかなってなくても気にしない。最近もミスあったし」

アバ「・・・アレね。・・・誰も気づいていませんように」

テスタ「長々やった本編もそろそろこの辺りで」

アバ「それでは今日はここまで」

733名無しさん:2011/08/25(木) 01:57:58
修学旅行。
移動中のバスの中。

「我輩ハツーペアダ」
「スリーカードだぜ!」
「悪いな、フラッシュだ」
「フルハウスです」
「なんだとっ!」
「カイがレイズするからそれなりの手とは思ったけどよ。フラッシュで負けるとはなあ」
「カイは堅実だもんな。俺は降りて正解」
「貴方こそ確実に稼いでるでしょうアクセル。現在トップじゃないですか」
「ナゼ我輩ガ負ケル」
「その手で勝負に行ったのが驚きだぜ」

「やー、楽しいねえ」
「こういう時間も修学旅行の醍醐味だからね」
「移動にも結構時間がかかりますもの」
「景色を眺めてるだけで飽きないの」
「楽しみアルナ!」

「ザトー様。車酔いなどはないでしょうか?」
「大丈夫だ、ヴェノム」
「もし気分が悪くなった遠慮せずに言ってください。私にはいつでも膝枕の用意があります!」
「そ、そうか。まあ、その時はな」
「はい!お待ちしております!」

「いつになったら着くんだい?」
「せっかちね。学校を出たばかりじゃない」
「・・・まだまだ」
「飴でも舐めて落ち着きなさい梅軒」
「俺は子供かって」

「今年こそソルさんとの想い出を」
「毎年失敗してるよねブリちゃん」
「あまり問題にならないようにね」
「お兄さんも今年は大変そうだし」
「ソルなら何やっても許してくれるよ!」
「お兄ちゃんですから」

「今夜はどうする?」
「どうって・・・いつも通り」
「じゃ〜それで〜」
「今のうちに寝ておきましょうか」

騒がしい。俺以外の教師は、別のバスに乗り込んでいる。
面倒な連中の監督を押し付けられた。この程度、注意するほどじゃないが。

「よっ、旦那。相変わらず静かだねえ」
「何の用だ」
「別に用もないけどさ。ポーカーが一勝負ついたから抜けてきた」

アクセルがやってきた。
用もないのに、話しかけてくるな。

「旦那も仕事を押し付けられて大変だよな。ま、俺も生徒会の見習いとしていくつかやることあるんだけど」

お前は、そうだったな。

「意外とやることあんのな、生徒会って。忙しいのはイベント絡みの時だけらしいけど」
「ディズィーはどうだ」
「あれ、妹の心配?俺のことはどうでもいいわけ?」
「ああ」
「わーひでー、ってな。ディズィーもよくやってるぜ?少なくとも俺よりは」
「そうか」

それならいい。

「心配なら旦那も生徒会入りなよ。いつでも歓迎するから」
「断る」
「教職もあるもんな。ま、無理は言わねえよ。支持率0だったし」

それに関しては言い訳する気もない。厳然たる事実。

「しっかし、教師の仕事もやるからって、一人部屋貰えるのはどうなんだよ」

当然の権利だ。

「去年は、ってか今までは俺達と仲良く相部屋してたのによぉ。ちょっと寂しいじゃん旦那」
「知るか」

お前達のことなど知った事ではない。

「つれないこと。ま、旦那に関しちゃ、放っといてもジェリーフィッシュが巻き込むからな。そん時は適当に本気で遊ぼうぜ」

ジェリーフィッシュを止める気はないんだな。

「そんじゃまた俺はカードでもやってくるかな。旦那もどう?」
「断る」
「だよな。じゃ、また」

アクセルが隣席から移動していく。

734名無しさん:2011/08/25(木) 02:32:00
それからもバスに揺られて。
少しだけ景色が変わってきた。

「あの山に積もってるのって雪かな?」
「そうじゃない?ここらだともう降ってるんだね」
「私達のところでは、まだ秋の景色も色濃いですが」
「冬用のメニューを考えないといけないアルナ」
「蔵土縁さん、たまにはお仕事の事は気にしなくてもいいと思うの」

まだ先は長い。

「どうだソル。退屈しているようだな」

ザトーがやってきた。

「何の用だ」
「なに、貴様に用はない」
「戻れ」
「それは勘弁してくれ・・・」

ヴェノムから逃げてきたか。
俺の知った事ではない。

「貴様なら少しは私の気持ちもわかるだろう?ブリジットに迫られている貴様なら」

多少わかるからといって、同情し、協調する理由もない。

「戻れ」
「・・・まて、せいとかいちょうとしてはなしをしよう」

とってつけたような喋り方。
しかし、それが仕事絡みならば避けられない。

「なんだ」
「・・・貴様が悪魔にも天使にも見える。どちらかというと天使寄り」
「用件を言え」

こんな状態だからと言って、全く無関係な話を持ち出すやつでもない。
なにか、話をつけておくべきことがあるのだろう。

「そうだな・・・、まず、貴様の立場を明確にしておきたい」
「教師と生徒の兼任だ」
「それだ。例えば、教師を呼ぶ必要ができたときに、貴様を呼び出しても差し支えないんだな?」
「ああ」
「同時に、貴様を生徒として扱っても問題はないのだな?」
「ああ」

俺が都合のいい様に使い分けはしない。その辺は、お前達でやれ。
教師が必要ならその役を請け負うし、生徒として行動しろというならそれに従う。
使い勝手のいい駒だ。

「ふむ、それはいい。仮に教師の許可が必要なことをする場合、貴様の許可を得ていればいいのだな?」
「そうだ」

もっとも話が通じやすい相手として俺を選ぶか。それもいい。
それをわかっていて、スレイヤー達は俺をこの形で参加させている。
面倒事の処理を俺に押し付けたと見えなくもない。どうせ何も起きないさ。

「では次に、生徒会主催のイベントをいくつか企画している。貴様には、それの監督者になってもらいたい」
「他に頼め」
「他に頼んだ結果、全員貴様に頼めと言うのでな」

あの連中め。

「わかった。何をする」
「フッ、修学旅行といえば、なんだ?」
「知らん」
「クイズの出しがいの無いやつだな」

どうでもいい。

「答えは枕投げだ!」

去年もやっていたな。

「貴様は教師代表の参加者な」
「あ?」

何故そうなる。

「去年は参加しなかっただろ」
「興味がない」
「そういうわけで、今年は強制参加だ。教師代表として、存分に力を奮ってくれ」

そうきたか。
それならば、やらざるを得ない。

「今夜はそれぐらいだな。後のことはその時々で伝えよう」

今夜やるのか。
さきほど、3年のジェリーフィッシュが寝ようとしていたのはそれか。

「ザトー様、いつまでも席を離れているのは如何なものかと思います」
「うっ、いや、ソルと話していたのだ。業務上の理由でな」
「そうですか。では、そろそろ元の席へお戻りください。さあ!」
「・・・ではな、ソル」

ザトーが去っていく。

735名無しさん:2011/08/25(木) 03:25:46
バスの中。

「随分と暇そうね」

さっきから、誰か来ては適当に話して、去っていく。
今度はお前か。

「そう邪険にしなくてもいいでしょう?せっかくの修学旅行ですもの。楽しみましょう?」
「断る」
「調子に乗ってんじゃねえよ糞豚がっ!」

調子になど乗っていない。

「あら、ごめんなさい。つい本音が」
「何の用だ」
「別に用なんてないわ」

お前もか。ならば、何故来る。

「ハッ!テメエが暇つぶしに丁度いいからだろ。気づけよボケ」

それは知っている。
暇つぶしなら他に方法もあるだろう。俺に関わらなくてもな。

「退屈してんだよっ!何時間バスの中にいりゃいいんだっての」
「ギターでも弾いてろ」
「散々やったよっ!」

知っている。うるさかったからな。

「糞がっ!まだ着かないのかよ。テメエなんとかしろよ」
「無理だ」

こいつは、ストレスが溜まっているとこんな口調になるのは昔からか。
他人にはなるべく見せないように注意しているようだが。

「長旅も長すぎると嫌になっちゃうわね」

お前の相手をするのもな。

「イライラするねぇ。このバスぶっ壊そうか」
「やめろ」
「その後は全員でここで野宿だねっ!そりゃいい!今夜は乱交パーティだっ!!」

抑える。こいつは本気で壊しかねない。
寝てろ。無理やり意識を奪う。

「悪いね。イノは寝たかい?」
「ああ」
「・・・やれやれ」
「普段は落ち着いているのだけど」

しばらくは目を覚まさないはずだ。

「遠すぎなんだよ。イノの気持ちもわかるね」
「貴方まで暴れないでよ梅軒」
「・・・そろそろのはず」

イノを抱えて席へ戻って行く。
長時間バスに揺られたからか、車内も随分と活気を失ったものだ。

「静かになったよね」
「何の用だ」
「ソルとお喋りに来たんだよ。エイプリル達は疲れてるみたいだもん」

お前が元気すぎる。

「ねえねえ、ソルって一人部屋なんでしょ?いいなあ羨ましい。遊びに行くね!」
「来るな」
「えー、いいじゃん。どうせ一人で何もしないで部屋にいるだけでしょ?」

それは事実だ。
だからといって、お前に遊びに来て欲しいわけじゃない。

「なんでさ。修学旅行なんだから、みんなで遊んだほうがきっと楽しいよ!」

お前にとってはそうかもしれないがな。
俺にとっては違う。それだけのこと。

「よくわかんない。とにかくソルも一緒に遊ぶの!」
「断る」
「ダメー。もう決めたもんね。ソルはボク達と遊ぶの。雪合戦とか雪だるま作ろ!」

わがままな。
メイの我侭に付き合わされるのは昔からだが。

「ソルならすごい雪だるま作れそうだよね。でも、ボクも負けないもん!」

作るのか。作らなければならないのか。
おそらくは、生徒会も似たような事を考えているだろうから、不可避のイベントだろう。

「屋根より高い雪だるま作るもんね!」

鯉のぼりでもあるまいし。
とはいえ、メイなら可能かもしれないのが厄介だ。

そろそろ目的地に到着か。

736名無しさん:2011/08/25(木) 03:38:05
テスタ「さて、見切り発車」

アバ「・・・どうするの?」

テスタ「また次に書くときに考える」

アバ「・・・枕投げはしないと」

テスタ「それはやらないとな。忘れないように」

アバ「・・・忘れそう」

テスタ「酒が入ると記憶力に問題があるのは仕方がない」

アバ「・・・ところで、ラスボス風味イノさん初登場」

テスタ「あんな感じでいいのか?」

アバ「・・・さあ」

テスタ「どうでもいいのか」

アバ「・・・イノだし」

テスタ「サブキャラの扱いなんて悪くてもいいと」

アバ「・・・サブキャラなんてそんなもの」

テスタ「ああ。教師陣以外では唯一私の出番がなかったのもきっとそのせいだな」

アバ「・・・どんまい」

テスタ「わざと削っただろう」

アバ「・・・なんのことでしょう?」

テスタ「ひどすぎないか?」

アバ「・・・テスタがいなくても誰も気にしないし」

テスタ「ジェリーフィッシュは全員いるのに」

アバ「・・・どんまい」

テスタ「まさか、このままずっと出番が無いなんてことはないだろうな?」

アバ「・・・・・・・・・・・・」

テスタ「・・・・・・・・・・・・」

アバ「それでは今日はここまで」

737名無しさん:2011/09/01(木) 04:16:47
目的地に到着した。
移動に随分と時間を要し、土地と季節柄すでに陽は沈んでいる。

「もう真っ暗だな」
「これじゃ何もできないぜ!」
「疲レタゾ」
「ロボなのにな。ま、さっさと部屋に行こうぜ」
「お待ちなさい。一応先生方の話を聞いてからです」
「手短にしてほしいアル」

宿泊先のホテル。これも貸しきったという。シーズン前とはいえ豪快なことだ。
ロビーに集合すると、スレイヤーが前に立った。

「長々とは話さんよ。少しだけお付き合い願おうか。
 さて、諸君らも楽しみにしていた修学旅行だ。怪我や病気に気をつけて過ごしてくれたまえ。
 我々の町に比べ、寒いところだ。体調不良を感じたらファウストかソルにすぐに伝えるといい。
 これから数日間、君たちが充実した日々を送れることを期待する。
 ここからは各自、既に配布されている予定表等に従って行動してくれたまえ。以上だ。では解散とする」
 
医療用バッグも持ってはきたが、ファウストほどの用意はない。
それで間に合わない事態なんて起こらないと思うがな。
いざとなればファウストに任せるだけだ。

「やっと休めるー!」
「まだよメイ。部屋に行きましょう」
「私達はっと・・・えーと」
「行こ。ディズィーちゃん、ブリジットちゃん」
「はいです!」
「部屋を確認したら、すぐに夕食ですからね。楽しみです」

部屋に移動する。

「旦那は一人部屋か。暇になったら遊びに来いよ」
「と言っても、私達も私とアクセルの二人部屋なんですがね」
「何故我輩ガコノボンクラ二人ト同室ナノダ」
「俺とチップの何が不満だロボ。いいじゃねえか三人部屋」
「楽しくやろうぜ!」
「旦那、こっちこない?空室多いみたいだし、今から三人部屋に変更もできるぜ?」

部屋は最大4人部屋。
そして、ホテルを貸しきった結果、一人になる以外は自由にグループ編成を変えて使用していいとのこと。
とはいえ、俺は一人部屋から移る気はない。業務の問題もあるしな。

「ザトー様と二人っきり!!」
「いや、テスタがいるからな?」
「頼むテスタ!明日は部屋を移動してくれ!」
「頼むテスタ!ずっと同室でいてくれ!」

騒がしい連中がそれぞれの部屋に入っていき、最上階の部屋に着く。
鍵を開け、中に入る。

「ここがウチとソルさんの愛の巣ですか?いい部屋じゃないですか!」
「出て行け」
「そんな!?ウチにもこのスイートルームを堪能させてください!」
「断る」

荷物をおいて部屋を確認する。
あいつら、わざわざこんな部屋を用意しやがったか。

「わぁ、ソファとかフカフカですし、ベッドも寝心地良さそうですよ?
 なにより広すぎですこれ。どう考えても一人部屋の広さじゃないです。ウチ達の三人部屋よりずっと広いですよ?」

ブリジットが部屋を回り見る。

「ソルさん、ウチ達が新婚旅行に行くときはこんな部屋に泊まりましょう!」

夕食までには少し間があるが、食堂に行くか。

コンコン

部屋を出ようとしたところで、誰かが部屋の扉を叩いた。
オートロックなので外からは入れない。
入り口まで行き、ドアを開ける。

「失礼。おーっと、新婚夫婦の邪魔をしちまったか?」
「やっぱりウチ達ってそう見えます?ウチもずっとそう思ってました」
「何の用だ」

ジョニーが部屋に入ってくる。

「大したもんだな。さすがスイートルームだ。俺達は普通の一人部屋だからな」
 まぁ、待遇に見合う仕事はしてもらうが」
「何の用だ」
「特に用があるわけじゃないが、強いて言うなら確認だな。
 今から他の部屋に移って、ただの一生徒として修学旅行に参加してくれても構わないぞ?」

教師だろうと生徒だろうと、大して違いはない。

「どうでもいい。そっちで決めろ」
「こっちとしちゃあ、お前を『業務命令』で自由に使えるのはありがたい話さ。お前さんに不満がないなら、このままでいかせてもらう」
「ああ」
「教師をやるのはこの部屋が気に入ったから・・・ってわけじゃなさそうだな」

ただ休むだけなら、荷物を置けて寝る場所さえあれば他はどうでもいい。
ただ、労働に見合う対価として相応の待遇を要求しただけだ。

「スイートを用意したのは日頃の働きに対する恩賞も兼ねて、だ。
 実際に無茶な仕事を押し付けるつもりはない。もっとも、お前さんの医療スキルは別だが。医者がいて損はない」

ファウストさえいれば、俺は必要ないと思うがな。

738名無しさん:2011/09/02(金) 03:51:33
夕食。

「お前スイートだって?羨ましいな」
「俺達も泊まってみたいぜ!」
「我輩ニソノ部屋ヲ寄越セ」
「旦那みたいに教師になればいいんじゃね?」
「彼らには無理でしょう」

騒がしい。

「決めたぜ!俺は大統領になる!」
「いきなりどうしたチップ」
「だってよ、大統領になればどこに行ってもVIP待遇だろ?」
「そんな動機でいいのか」
「民衆や国のことを考えて立候補すべきですよ」
「バカメ。ボンクラ共ノ支配者ニハ我輩コソガ相応シイ」
「チップとロボの二択って嫌だな」

黙々と箸を進め、食事を終える。
食後のコーヒーを飲んだら、部屋に戻るとしよう。

「相変わらず、食べるのが早いですね」

無駄口を叩かなければこんなもんだ。
コーヒーも飲み終え、席を立つ。

「待てソル」

ザトーに呼び止められた。

「早いな貴様。まあいい。この後枕投げを行う。なに、細かいルールはない。ただ、枕を投げ合うだけのシンプルなものだ。
 もっとも、部屋に閉じこもるのだけは禁止だがな。時間になったら、部屋から出るように」
「ああ」

食堂から出て、部屋に戻る。
荷物の中から電子書籍機器を取り出し、本を読む。
時間が来るまではこれで暇を潰すとしよう。

コンコン

しばらく本を読んでいると、扉をノックされた。
枕投げ開始時間まではもう少しある。
ドアまで行き、扉を開ける。

「お邪魔するわ」

ミリアがいた。

「何の用だ」
「別に。ただ、噂のスイートルームを見に来てみただけよ」

部屋に入ってくる。

「・・・豪華なものね」

そういう部屋だからな。

「備え付けられている家具も高そうなものばっかりね。さすがはスイートルームってとこかしら」

ミリアは移動し、バルコニーへ出ていく。

「昼はさぞ景色がいいでしょうね。雪山に月というのも、綺麗なものだけど」

景色を眺めて満足したのか、室内に戻ってくる。

「それで、この部屋を堪能するでもなく、貴方は本を読んでるだけなのね」
「ああ」
「暇なら、誰かと遊んでいればいいじゃない。カイやアクセルがいるでしょう?
 他にもジェリーフィッシュや、ブリジット達。貴方なら相手に困らないでしょうに」
「興味がない」

遊び相手なんて必要ない。

「寂しいものね」
「そうでもない」

今のお前のように、部屋に押しかけてくるやつは多いんでな。
もっとも、寂しさなんて最初から欠片も感じてはいないが。

「さてと、それじゃあそろそろ枕投げの時間かしら?部屋を出たほうがいいんじゃない?」
「ああ」

本の電源を落とし、部屋を出る。

「一つ言っておくけど、貴方に対して害意はないわ。でも、貴方が敵に回るなら容赦はしないから」
「そうか」

好きにすればいい。
勝ちも負けもないのなら、こちらから攻撃する理由もない。
狙われれば、追い返すだけだ。

739名無しさん:2011/09/05(月) 01:29:42
枕投げの開始時刻となる。さて、どう動くか。
階段は両端に二箇所。エレベーターはあるが、下手に使えば、逃げ場がなくなるだけ。
ここが最上階というのが利点か。
各自部屋の前からスタートゆえに、この階には俺一人だけ。
開始直後に戦闘開始とはならない。今のうちに行動するとしよう。

できるだけ面倒ごとは避けたいが、逃げ場も隠れ場もないというのが厄介だ。
個室に逃げるのは禁止。使えるのは階段、廊下、エレベーター、それと下層階にあるやや広めのロビーや食堂程度か。
その内に誰かと遭遇すれば、枕を投げつけて追い払うしかない。
できるだけ、ここで時間を稼ぎたいものだな。
誰も最上階に来ないというのが理想的だが。

まずは階段に罠を仕掛ける。少しは時間稼ぎになるだろう。
下の方で騒ぎ声が聞こえてくる。随分と盛り上がっているらしい。

2つの階段に罠を設置し終えたところで、一方の階段からこちらへ登ってくる気配を感じた。

「とりあえず、今だけは協力してソルを倒そうぜ!」
「旦那は手強いからな」
「後ろから枕を投げるなよロボ?」
「我輩ハソンナ事ハシナイ。信用シロ」
「開始直後に背後から狙ってきたのは誰だよ」

4人か。罠を張って正解だ。あいつら4人相手は厳しい。
今のうちに、反対側からこの場を離脱しよう。

「アン?なんだこの糸?」
「旦那の罠じゃねえか?」
「馬鹿メ!我輩ガコンナ見エ透イタ罠ニ引ッカカルト思ッテイルノカ」
「・・・なあロボ。お前、なんか踏んでないか?」
「エ?・・・・・・!?」

あっさりとかかったか。

「おい、そこから動くなよロボ。俺達逃げるから」
「我輩ヲ置キ去リニスル気カ!?」
「今まで楽しかったな」
「お前の犠牲は忘れないぜ!」
「フザケルナ!貴様ラガ逃ゲヨウトスルナラ我輩ハコノ足ヲ上ゲルカラナ!道連レダ!」
「ちょっ、勘弁してよ」
「死ニタクナケレバ大人シクシテイロ。ワハハハハハハハハハ!!」

向こうはしばらくは動きがなさそうだな。
実際は足を離したところで、枕が集中的に飛んでくるだけで大したことない。
強行突破されるとどうしようもなかったが、勝手に地雷ということにしてロボで遊んでやがる。おかげでこっちも助かるが。
反対側の階段に着いた。が、こっちでも階下から声がする。

「ソルちゃんはまだ最上階にいそうだね〜」
「ブッ殺してやるッ!!」
「『最上階に居る』・・・・・・だが、それはよほど追いつめられてトチ狂ったか・・・それとも・・・、
 あたし達の追跡をかわす方法に『なんらか』の自信があるという事か・・・・・・どちらか・・・だな」
「どっちにしろブッ殺してやるッ!日頃の恨みだッ!」
「おいオメーさっきからうるせえぞ。『ブッ殺す』『ブッ殺す』ってよォ〜〜〜〜〜〜。
 どういうつもりだてめー。そういう言葉はあたし達の世界にはねーんだぜ・・・そんな弱虫の使う言葉はな・・・」

いつものジェリーフィッシュか。

「『ブッ殺す』・・・そんな言葉は使う必要がねーんだ。なぜならあたしや、あたし達の仲間はその言葉を頭の中に思い浮かべた時には!
 実際に相手を殺っちまってもうすでに終わってるからだッ!だから使ったことがねェ―――ッ。
 オマエもそうなるよなァ〜〜〜〜〜あたし達の仲間なら・・・わかるか?あたしの言ってる事・・・え?」
「あ・・・ああ!わかったよ!姉貴!」
「『ブッ殺した』なら使ってもいいッ!」

とりあえず、階段を登ってきて罠にかかるのを待つとしよう。

「それじゃあお約束も終わったことだし最上階へゴ〜!」
「おー!」
「ソル先輩相手に三人で大丈夫?」
「ま〜いきなりは無理だろうから、まずは様子見だね〜」
「だからって油断してたら、軽くやられるから注意してうひゃ!?」
「いたっ!?え、なにこれまくわたっ!!?」

連中が罠を踏み、枕が飛んでいく。

「ソルちゃんこんなの仕掛けたんだ〜っとっ」
「あたっ!」
「なんか反対側でもやってたっぽいよ。やりすぎだよソルっちわっ」
「わぷっ!?ちょっと!さっきから姉さん達の避けた枕が全部私に来てるんですけど!?」
「ちゃんと避けないと危ないよ〜」
「ほらまた来た」
「ちょっ避けっ」

最初は威嚇牽制程度の罠だが、あれだけ当たるとはな。
まあ、枕なので大して痛くもないだろう。
階段の上から眺めていると、向こうからも見つかった。

「あ、ソルちゃん。やっほ〜」
「面白いの作ったね。楽しんでるよ」
「ソル先輩、この2人が避けられない罠はないんですか・・・?」

もう少し上に来れば、難易度も上がる。

740名無しさん:2011/09/05(月) 03:04:42
ジェリーフィッシュが罠を踏み越えてくる。

「だいじょ〜ぶ?」
「さっきから自分で罠踏んでダメージ受けてるよね」
「・・・もうやだ」

前の2人が避けなくても、枕に当たり続けている。

「もーやだ。私はこれ以上行かないから!」
「ま〜仕方ないね〜」
「うん。気をつけて下に戻るんだよ」
「私の分までソル先輩をボコボコにしといてね姉さん」
「おっけ〜!」
「あ、ソル先輩、これは絶対やりすぎです!もっと手加減してください」

随分と怒っている。
痛みはないだろうが、あれだけ枕に当たればな。

「それじゃ!ぶっ!?」

回れ右をし、階段を一歩降りたところで、まだ未発動だった罠にかかった。

「あ〜あ。ソルちゃんひど〜い」
「どんだけ罠しかけたのさソルっち」
「悪かった。今から全部の罠を解除する」

こればかりは、非は完全に俺にある。

「ソルちゃんがこんなに素直に謝るなんて!?」

普段は、最初からこういうことにならないように気をつけているのだがな。
今回は配慮が足りていなかった。軽い罠でここまでなるとは。
罠を全て外していく。

「いや、ほんとに階段一つにどれだけ罠しかけてたのさ」
「お前らだけなら、時間一杯かけても突破できない程度だ」
「うわ〜ソルちゃん極悪〜」
「・・・これで全部ですか?私は動いても大丈夫ですか!?」
「ああ。すまなかった。詫びとして、俺にできることなら何でも聞こう」
「え?」
「あのソルちゃんが!?」
「ここまで下手にでるなんて!?」

それだけのことをしたからな。

「何でもって・・・本当ですか?」
「俺にできる範囲でだが」
「例えば、スイートルーム使いたいって言ったら?」
「好きに使え。俺は部屋を移る」
「いいな〜それ〜」
「何という大チャンス・・・あ、お願いは一度きりですか?」

すでに機嫌は直ったらしい。
立ち直りが早い。

「お前の気の済むまででいい」

とはいえ、それでこちらが許されるわけでもない。

「わぁお・・・本当に何でもアリか。・・・どうしよ」
「一度きりってわけじゃないんだし、思いついたままいけば?」
「そ〜そ〜。こんなチャンス、二度とないと思うよ」
「そーだよね。じゃあとりあえずソル先輩!」
「なんだ」

早速か。

「この2人に大量に枕を投げつけてください!」
「わかった」
「え?ふぎゃ!?」
「な、なんべっ!?」

落ちている枕を拾い、投げつける。
先ほどのささやかな復讐か。やってることは、ただの枕投げだが。

「そこですソル先輩!半径20m枕投げスプラッシュ!」
「無理だ」

罠があれば似たようなことができなくもなかったが、解除したしな。

「ね〜ちゃん!こっちも反撃!反撃!」
「お〜!きゃんっ」

お前ら2人相手なら勝負にもならない。
が、周囲に接近してくる気配がある。

「なんで旦那が普通に枕投げしてんの!?」
「とにかく俺達もやるぜ!」
「我輩ヲ罠ニカケタ報イダ!」
「そっちの2人、加勢するぜ」
「新手の敵ですよソル先輩!あっちも蹴散らしてください!」

敵が多い。だが、やるしかないようだ。

741名無しさん:2011/09/05(月) 03:43:06
どうにか状況を切り抜け、階下へ逃げる。

「さすがにあの人数だとソル先輩でも無理なんですね」
「ああ」

当然、俺にも限界はある。

「ソルさん!こんなとこで会うなんて、やっぱりウチ達は運命の赤い糸で結ばれてるですね!」
「あ、ブリちゃん。一人なの?」
「今はそうです。さっきまではディズィーさん達と一緒でしたけど、はぐれました」
「そうなんだ」
「ところで、どうしてお二人が一緒に行動してるんですか?」
「聞いて驚けブリちゃん。実はこれ私のスタンドなんだよ!」
「・・・はい?」

誰がスタンドだ。

「ま、簡単に言うと訳あって私の言うことなんでも聞いてくれる状態なの」
「え、えええ!?一体何があればそんなことが・・・。ウチにも是非その方法を教えてください!!」
「うーん。一応教えてもいいけど、多分ブリちゃんには無理な気がする」

だろうな。ブリジットに対して今回のようなミスはしない。

「?まあ、とにかく後でお願いします。今は枕投げの時間ですから」
「そーだったね。一緒に行こうよ」
「はいです。ソルさん、ウチとソルさんのラブラブコンビの力を見せつけましょう!」
「断る」
「任せてブリちゃん。ソル先輩、ブリちゃんと協力して敵と戦ってください」
「わかった」
「ほんとに従順ですね。・・・ウチがソルさんのご主人様になったら・・・あんなことやこんなことをキャー!」

これからは、より用心して行動しなければな。
また階を移動する。

「あら、珍しいパーティね」
「・・・意外」
「あ、こんばんはですミリアさん」
「先手必勝!攻撃ですソル先輩!」
「わかった」

枕をミリアに投げつける。

「っ!急に何をするのよ!?」
「枕投げだ」

それ以外に何がある。

「枕投げ?貴方が?」
「あら、ソルがこういうイベントに積極的に参加するとは思わなかったわ」
「どっかで適当に時間潰してそうだったんだがね。ま、仕掛けてくるなら相手になるまでだ」
「・・・ファイト」
「貴方もよアバ。それっ」
「ウチもやります!ソルさん、ウチを守ってくださバフゥ!?」
「ソル先輩、枕を投げるならブリちゃんじゃなくてミリちゃんの方へお願いします」
「わかった」

しばらくミリア達の相手をしていると、背後に気配。

「貴様あああああ!ミリアに手を出すなら私が相手だ!!」
「加勢しますザトー様!!」
「また新手のスタンド使いですよソル先輩!どうしましょう!?」

新手のスタンド使い・・・エディはそう見えなくもないか。
そして挟まれた。しかし手はある。

「ミリア、休戦だ。協同してザトーを叩く」
「乗ったわ。ザトーを全力で叩き潰す」
「あん?ソルはいいのかい?」
「いいんじゃないかしら?ミリアの敵はソルよりザトーなんでしょう?」
「・・・了解」

簡単に話がまとまった。
振り返り、ザトーを相手する。

「ま、待て。何故だミリア?私はお前を助けようと」
「目障りよ。消えなさい」
「ミリアさん容赦ないです」
「・・・攻撃開始」
「ザトー様、ここは私が!どうかお逃げください!!」
「おお・・・ヴェノム。お前を見捨てて逃げるなど私にはできない」
「ザトー様、私はそのお言葉だけで満足です。どうか、お達者で。グハァッ!」

数人がかりで集中攻撃。
ヴェノムは倒したが、ザトーは逃げた。

「ちっ、逃しちまったかい」
「あれだけやれば十分よ」
「それで、またソルと枕投げを再開するのかしら?」
「・・・準備OK」
「あ、私達は別の階に行くから。じゃあねーみんな」
「さよならです」

また移動か。

「待ってソル。どうして、彼女に従ってるの?」
「お前には関係ない」
「・・・ああそう。だったら、好きにすればいいわ」

最初からそうしている。

742名無しさん:2011/09/05(月) 04:35:55
また下へ移動する。

「おや、こんばんは」
「こんばんはですカイさん」
「あれ、カイ先輩も一人なんですか?」

カイと遭遇。単独で行動している様子だ。
最初に最上階に来る連中の中にもこいつはいなかったしな。

「ええ、まあ。なぜか女生徒からよく狙われてしまって。反撃するわけにもいきませんし、逃げまわってました」
「モテますねー。てか反撃しないってさすがカイ先輩。ソル先輩は容赦なく女の子に枕を投げつけてましたよ」
「私がモテるかどうかは置いておいて、枕投げですから。ソルが非難されることもないでしょう」

俺が非難されるとすれば最初の罠に関する件だが、今償い中だ。

「カイさんが狙われるのって・・・あ」
「どうかしましたかブリジット?私が狙われることについて何か思い当たることでも?」
「あの、いいえ。な、なんでもないです!」

その態度で隠し事はできない。

「知っているなら、是非教えて欲しいものですね。どんなことでもいいですよ?」
「えーと・・・あの、ちょっといいですか?」
「ん?どしたのブリちゃん?」

俺とカイを残し、2人で話し合っている。

「どうしたんでしょう?」
「さあな」
「・・・ところで、なぜ貴方が?」
「お前には関係ない」
「仰る通りですが、しかし気になるでしょう。こういった類の企画は面倒臭がる貴方が、一体どういう心境の変化ですか?」
「お前には関係ない」

事情が聞きたいなら俺以外から聞け。

「なるほど。・・・何かミスを犯して、彼女を傷つけた。だから言うことを聞いているといったところですか」

当たっている。

「恐らくそれに近い状況でしょう。でなければ、貴方が素直に人に従うなんてありえませんからね」

なんだかんだで、長い付き合いというわけか。

「それにしても、一体彼女達は何を話しているのでしょうね」

知ったことか。
2人が戻ってきた。

「えーとカイさん」
「はい。何故私が狙われるのか、教えて頂けるのですか?」
「すみませんがそれはできません。理由があって教えられません」
「はい?」
「それとですね、狙われる理由を他の誰かに聞くのも禁止です!いいですか?」
「は、はあ。よくわかりませんが、何か事情があるのなら、詮索するのはやめておきましょう」
「そういうことです。それじゃ、ウチ達はこれで失礼します」
「カイ先輩、頑張って逃げてください。あと、頑張りすぎるのもダメですからね」
「・・・ご忠告感謝します。それでは」

カイと別れる。
そしてまた階下へ移動。

「そろそろ時間ですし、もう一気に下まで行っちゃいましょうか」
「好きにしろ」

俺は従うだけだ。
一階へ移動する。
広さがあるだけあって、人も多い。

「さーてソル先輩、最後の命令です」
「最後でいいのか?」
「はい。実はとっくに気は済んでるんで」

お前がそういうならそれでいい。
大したことはしてないのだが。

「それじゃ最後は無理難題。このフロアー全員が敵です。一人でがんばってください!」

無茶を言う。この数を1人でか。
ディズィーや紗夢もいる。数だけでなく質でも厄介だ。
だがまあ、これで最後だ。

「大丈夫です!ウチはいつでもソルさんの味方ですバ゙ハッ!?」

ブリジットも敵。

「おーその調子です。応援してまふぎゃ!」

当然お前もだ。

さてやるか。どうせ勝ち負けはないんだ。
暴れるだけ暴れてやる。

743名無しさん:2011/09/05(月) 04:45:28
テスタ「枕投げのイベントとかどうしろと」

アバ「・・・終わってから言っても・・・」

テスタ「前回、前々回とどうすればいいかわからず筆が進まなかった」

アバ「・・・途中で寝たしね」

テスタ「そこでいつものお助け役のJFです」

アバ「・・・便利」

テスタ「まったくその通り」

アバ「・・・都合のいい女達」

テスタ「その言い方は嫌だな」

アバ「・・・次はどうするの?」

テスタ「どうしようかな」

アバ「・・・何かイベントを」

テスタ「修学旅行で何泊するかも決めてないのに」

アバ「・・・適当」

テスタ「どれくらいの期間が普通なんだろうな」

アバ「・・・さあ」

テスタ「まあ都合次第で『今日が最終日だ』とかやればいいよね」

アバ「・・・うん」

テスタ「それでは今日はここまで」

744名無しさん:2011/09/12(月) 01:41:15
早朝。部屋の外に気配を感じ、目を覚ます。
この階は俺のみなので、誰かが通りがかるということはない。

コンコン

やはり俺に用があるのか。
ベッドから起き上がり応対する。

「誰だ」
「おはようアル」

紗夢か。

「何の用だ」
「とりあえず、ドアを開けて欲しいアルネ」

ドアを開ける。

「おはようアル。やっぱり朝は凄く寒いアルナ」
「何の用だ」

暖房の効いている部屋に入れ、用件を問う。
こんな朝早くに、一体なんだ。

「いつも仕込みのためにこの時間に起きるカラ、今日も自然に目が覚めたアル」
「だからなんだ」
「せっかくだから散歩に行こうと思ったアルネ」

行けばいいだろう。

「一人で行くのも寂しいアルネ。ダカラ、ソルを誘いに来たアル。一緒に散歩に行かないアルカ?」
「断る」

他の誰かを誘えばいいだろう。
何故俺を選ぶ。

「同室のめぐみはぐっすり寝てるアル。他の部屋はみんな二人部屋以上アルカラ、こんな時間に大勢を無駄に起こすのも可哀想アル。
 ソルならそんな心配無いアルシ、散歩にも付き合ってくれるアルカラナ」

遠慮なしか。
それに、誘えば必ず乗ると思ってやがる。

「断ると言った」
「・・・どうしても、嫌アルカ?」
「いいや」

散歩に行くことが嫌なのではなく、散歩に付き合う理由がないだけだ。

「だったら行くアルネ。着替えるヨロシ。廊下でも結構寒いカラ、厚着した方がいいアルヨ」

人の話を聞かない。
こいつ、ジェリーフィッシュ達に染まってきたか。

「それじゃ、部屋の外で待ってるアル。寒いカラ、なるべく早く準備してほしいアルネ」

紗夢が部屋から出ていく。すでに行くことになっている。
仕方がない。着替えるとするか。

身支度を整え部屋を出る。

「早いアルナ。それじゃ行くアル」

一階まで降りて、ホテルを出る。

「ウ、外は一段と冷えるアルナ」

地元では味わえない気温だ。
昨夜も降っていた雪は、すでに十分に積もっている。

「デモ、空気が澄んでる気がするアルナ。ソルもそう思わないカ?」
「ああ」
「アイヤ、ソルにもこの情緒が分かるアルカ」

情緒でもなんでもない。
環境上、空気中の不純物が少ないという当たり前の事象だ。

「ホテルの周りを歩くケド、それでいいアルカ?」
「好きにしろ」
「そうするアル」

最初からそうしているだろう。
紗夢に付き合い、ホテル周辺を散策する。

「寒いケド、朝の散歩は気持ちがいいアルナ」

そうでもない。

「雪が綺麗アルナ。こんなに積もってるのは初めて見るアル」

これなら、スキーをするのにも問題はないだろう。

「スキー楽しみアルナ。ワタシは初めてアル。ソルはやったことあるアルカ?」
「ない」
「それじゃソルも初心者アルナ。一緒にがんばるアルヨ」

頑張る必要もなく、滑れると思うがな。

745名無しさん:2011/09/12(月) 03:04:49
しばらく紗夢と散歩をしていると。

「アヤ、キツネがいるアル」

歩いてる先を狐が横切る。

「カワイイアルナァ」

紗夢が狐に見とれてしばらく足を止める。
そろそろ日が昇る。巣に帰るところだろうか。
眺めていると、狐は雪山の方へ消えていった。

「珍しいものが見れたアルナ」

多少興奮気味で紗夢が言う。

「早起きは三文の得アルヨ」

再び、歩き始める。

「もっと珍しいのは居ないアルカ?冬眠中に目覚めたクマとか面白そうアル」
「熊鍋でも作る気か」
「この時期ならまだ冬眠を始めたばかりで、脂が一杯できっと美味しいアルヨ・・・って違うアル!失礼ネ!」

紗夢ならそれも有るかと思ったが。

「ワタシだからって、なんでもかんでも料理に結び付けないで欲しいアル」

それなら、ただ眺めたいがために熊を見たいと言ったのか。
迷惑なやつだ。

そして散歩を続ける。

「随分と日が昇ってきたアルナ。今日は晴れそうアル」
「午後から曇る」

昨夜確認した天気図だとそうなるだろう。
晴れ続けると雪が溶けるので、多少曇るぐらいなら都合がいい。

「ソルがそう言うならきっとそうアルナ。午後は曇アルカ。雨は降らないアルカ?」
「雨はない。たまに小雪がちらつく程度だろう」
「スキーをするには良さそうアル」

散歩も結構な時間を歩いたところ。

「風が冷たいアルナ。ソルは寒くないアルカ?」
「それほどでもない」

お前の忠告通り、多少多めに服を着てきたからな。

「丈夫アルナ。ワタシはもうちょっと厚着してくれば良かったアル・・・」

寒いのか。

「コートなら貸すぞ」
「寒さで頭がおかしくなったアルカ?」

正常だ。

「修学旅行の間は一応教師で医師も兼ねてるんでな。生徒の体調管理も仕事のうちだ」

俺が同行してるというのに、風邪などをひかせるわけにもいかない。

「アイヤ、そういう理由アルカ。よかったアル。ソルが錯乱したかと思ったアルヨ」

安心しろ。いつも通りだ。

「それなら、遠慮せずに貸してもらうアルネ」

コートを渡す。

「ウン、暖かいアル。ありがとうアル」

ついでだ。道端の手頃な大きさの石を拾う。

「何してるアルカ?」

石を炎で燃やし、適度な熱さにした後、ハンカチで包む。

「カイロだ。こいつも持ってろ」
「・・・ソルはもう生徒をやめてずっと教師をやらないアルカ?」
「断る」

それは俺が決めることだ。
今はまだ学生を辞める気はない。

「どうしてこの思いやりがいつもできないアルカ?」
「興味がない」

普段なら、お前が寒さに震えてようが風邪をひこうがどうでもいいことだ。

「もったいないアルナ。カイロも暖かくて気持ちいいアル。ありがとうアルヨ」
「今後は気をつけろ」
「そうするアル」

さて、ホテルまでもう少し歩くか。

746名無しさん:2011/09/12(月) 04:16:40
ホテルに戻ってくる。

「楽しかったアルナ。明日もどうアルカ?」
「断る」
「仕方ないアルナ。無理強いはしないアルヨ」

よく言う。

「おやおや、おはようソル君にジャム君」
「おはようアル」

ロビーに入ると、起床時間にはまだ少し早いがすでに起きているやつもいた。

「逢引?やるね。まあこれも修学旅行というイベントゆえかな」
「ご、誤解アル!」

わざわざ否定するまでもない。こいつはわざとやっている。

「隠さないでいいよジャム君。ソル君のコート来てるし、その手にしてるハンカチも男物だよね?」
「これは、寒かったからソルに貸りただけアル」
「ソル君はそんなことしないよ。・・・妹のディズィー君か、もしかすると恋人になら別だろうけど」
「ダカラ、そんなんじゃないアル!」

朝食までは少し時間がある。
一度部屋に戻ってコート等を置くか。

「というのはまあ冗談として。散歩に行ってたの?」
「・・・・・・そうアル」
「ふうん。良さそうだねそれ。明日は私も早起きして散歩してみようかな」
「楽しかったアルヨ。キツネも見れたアル」
「へえ。クマなんかはいないの?」
「熊鍋でも作る気アルカ?」
「それもいいね。ソル君に熊殺しやってもらおうか」
「アイヤ・・・」

やらねえよ。

「部屋に戻る。コートを返せ」

紗夢からコートを受け取る。

「それじゃ、明日は私とデートしようかソル君」
「断る」
「デートじゃないアル」
「ツレナイね。ジャム君の誘いには応じて、私はダメなの?」
「ああ」

紗夢と行けばいいだろう。
もしくはジェリーフィッシュの誰かでもいい。

「フラれた。ま、いいさ。ジャム君はどう?」
「問題ないアルヨ」
「オーケー。じゃあ、今晩は私と同室でいい?」
「了解アル」

では、俺は部屋に戻るか。

「ソル、また後でナ」

紗夢達と別れ、部屋に戻る。
コートをかけ、本を読んで時間を潰し、再び階下の食堂へ。

「ソルさーん!おはようございまグハッ!?」

飛びかかってきたブリジットを叩き落す。

「おはようございますお兄ちゃん」
「おはようございますお兄さん」
「ああ。おはよう」

ディズィー達と挨拶を交わし、食堂へ。

「よっ、旦那。隣どうぞ」

アクセルの隣に座る。

「噂になってるぜ?不倫してたんだってな」
「違う」

噂の伝搬が早い。ジェリーフィッシュめ。
不倫ってなんだ。

「おいおい嘘つくなよソル。朝からデートを楽しんでたんだろ?」
「やるじゃねえか!」
「何故貴様ガ!我輩ト変ワレ!!」
「貴方達、少し落ち着いたらどうですか?」
「コレガ落チ着イテイラレルカ!」

騒がしい。どうせすぐに消える噂だ。
無視しておけばいい。

「ソルさん!ウチがいるのにどういうことですガハッ!?」

朝食を取るとしよう。

747名無しさん:2011/09/12(月) 04:32:04
テスタ「ERROR!NGワードが含まれてます」

アバ「・・・ビックリ」

テスタ「カイロを変換したらロがひっかかったらしい」

アバ「・・・火戸」

テスタ「こういうこともあるのだな」

アバ「・・・懐の火戸。・・・読んで字のごとく」

テスタ「昔の人は、暖房具に石を焼いて懐に忍ばせていたとか」

アバ「・・・先人の知恵」

テスタ「恐れ入る」

アバ「・・・ね」

テスタ「閑話休題。今回は紗夢イベント」

アバ「・・・フラグが微妙に立ったような立ってないような」

テスタ「今更紗夢のフラグが立ったところで意味はないしな」

アバ「・・・なぜやった」

テスタ「なんとなく」

アバ「・・・・・・ああ」

テスタ「紗夢エンドが欲しい人なんていないだろう」

アバ「・・・どうだろ」

テスタ「紗夢エンドが有りならJFエンドを作る」

アバ「・・・それもどうだろ」

テスタ「どちらにせよあり得ない話だ」

アバ「・・・うん」

テスタ「本筋が進まないから、たまにはこんなサブキャラを書いて誤魔化してる」

アバ「・・・がんばれ」

テスタ「がんばろう」

アバ「それでは今日はここまで」

748名無しさん:2011/09/28(水) 02:55:46
朝食後、スキー場に集合する。

「よぉし、全員集まったようだな。待ちに待ったお楽しみの時間だ。
 これから思う存分滑っていいが、スキー、スノーボードは初めてのやつも多いだろう。
 コーチが欲しければソルに頼むといい。誰でも必ず滑れるようになるからな。
 それでは、全員怪我に気をつけて遊んでくれ。昼食は各自勝手に取るように。
 以上だ。何か質問があるものは?」

ジョニーが説明を行う。
また勝手に俺に仕事を押し付けてやがる。

「待てジョニー。俺もスキーやボードはやったことがない。滑れるかどうか知らんぞ」
「お前さんなら問題ないだろう?」

恐らくはな。だが、絶対ではない。
自分で滑れもしないのに、人に教えるわけにもいくまい。

「なら、一度やってみればいい。なぁに、大して難しくもないさ。コーチは頼んだぞ」

勝手なことを。

「とにかく、滑れる滑れないもまずはやってみることだ。全員リフトに乗って、まずは初心者コースからだな。
 ああ、経験者は好きにしていいぞ」
「だってよ闇慈。どうする?」
「まあ、最初ぐらい周りに合わせとこうぜ」
「あら、じゃあ私もそうしましょうかしら」
「・・・イノも滑れるの?」
「ええ、それなりには自信あるわよ」
「ザトー様、二人きりで一番上まで行きませんか?同じリフトに乗って!二人だけの世界を!」
「ヴェノム・・・私も生徒会長として皆を見守らなければならないからな?」
「ザトー様がそう仰るならば・・・」

経験者は何人かいるようだな。
俺ではなく、そいつらにコーチ役をやらせればいいものを。
とにかく、最初は全員で同じコースか。
リフトに乗るために移動する。

「ソルさん!ウチと一緒に乗りましょう!」
「断る」

リフトは二人乗り。
ブリジットが隣に並ぶ。

「あ、きましたよ。えーと、タイミングを合わせて座ればいいんですよね?」
「ああ」

リフトの乗り方は全員に教えてある。

「わっ、おおー!なんだか楽しいですねこれ。ちょっとしたアトラクションです!」

結局、こいつとか。

「わ〜。なんだか変わった眺めですね。雪が綺麗です」

足下の景色が流れていくというのは、あまり体験できるものではない。

「それにしても、これって落ちたりしたらどうなるんでしょう・・・?怖いです」

この高さで死にはしない。ましてや、下は柔らかな雪だ。
運が良ければ無傷で済む。

「怖いので、ソルさんにしがみついてもいいですか?」
「断る」

何を言っている。

「いいじゃないですか!ウチが恐怖のあまり暴れたりしたらどうするんですか!?
 二人とも落ちるかもしれませんよ!あ、ソルさんと心中ですか

749名無しさん:2011/10/01(土) 03:08:34
「・・・それもちょっと素敵だと思いませんか?愛する人と一緒に死ぬって、ちょっとロマンチックです」
「いいや」

心中にロマンは見いだせない。

「もう、最近ソルさんはウチの扱いがますますぞんざいになってますよ?愛が感じられません!
 もしウチが『ソルさんを殺してウチも死ぬ!』なんて性格だったら、ソルさんは何百回も死んでますから!」

お前に愛を持って接した覚えはない。
仮に殺意を持たれても、お前に殺されるようなヘマもしない。
ブリジットにうんざりしてると、リフトが止まった。

「あれ、どうしたんですか?」

何かトラブルでも起こったか。
誰かが乗り降りで不手際を起こしたのだろうが。
安全のためにリフトを停止したのだろう。すぐに動き出すはずだ。

「止まってませんか?あれ、もしかして、ずっとこのままなんてことはないですよね?
 そしたら永遠にここでソルさんと二人きりじゃないですか。最高じゃないですか!」

うるさい。

「ソルさん!こうなったからには仕方ありませんよ。二人で幸せな家庭を築きましょう!」

リフトの上でか。
何をどうすれば幸せな家庭が築けるのか想像もできない。
が、考えるまでもない。リフトが動き出した。
乗降場で誰かが上手くやれなかったのだろう。

「あれ、動き出しましたね。残念です。・・・ずっとあのままでも良かったのに」

最後の呟きまで聞こえている。
そんなのはお断りだ。

「あ、そろそろ降り場ですね。ソルさん、後でまた一緒に乗りましょうね。今度は、一番上まで一緒に行きませんか?」
「断る」

生徒に滑り方を教えなければならない。

「ウチもスキーは初めてですよ?滑り方を教えて下さい!」
「お前なら問題ないだろう」

教えなくてもどうにかなる程度の運動神経は持っている。
それでもダメだったら、教えてやるが。
・・・その前に、自分自身が滑れるかどうかが問題か。

「ソルさんに太鼓判を押されてしまいました・・・これは期待に応えるしかないですね!」

そうしてくれ。
余計な手間を増やすな。

リフトから降りる。

「ああ・・・ウチの至福の時間が・・・」

ブリジットを無視し、すでに幾らか集まっている集団に向かう。
しかし、生徒全員を教える必要はない。

「自信のあるものは勝手に滑ってろ」

教えずとも滑れる連中はいる。

「ウチは自信がありません!」
「お前ならできる」
「はい!行ってきます!!」
「ボクもできる気がする。行こ、ブリジット」

ブリジット達は颯爽とと滑り降りていく。
それに、他の生徒達も続いていく。転倒してるのもいるが、概ね問題ないようだ。
何度かやってれば慣れるだろう。手間が省けていい。

「チェンジ!木馬モード!」
「お前それでいいのか?」
「スキーしろよ」
「ワハハハハ!我輩ヲ貴様ラボンクラト一緒ニスルナ」

あれも無視していい。
残った連中に向き直る。あまり残ってないな。
それに、教えなくても大抵のやつはどうにかなる。
いきなり滑りだすには、少し自信がなかっただけだ。

「まず、やってみろ。それでできなければ、俺が教える」
「そういうあんたはどうなんだい?偉そうにしてるけど、未経験なんだろ?
 ろくに滑れもしないやつに教わりたくなんかないね」

梅軒から文句が出る。
こいつは残ってたのか。

「ソル、この子のことは気にしなくていいわよ?さっきリフトから降りる時にタイミングを誤って転んでたから、恥ずかしがってるだけなの」
「てめっ、イノ!余計なこと言ってんじゃないよ!」
「誰だってミスはするわ。リフトを止めたからって、誰もあなたを笑ったりしないわ」
「・・・どんまい」
「うるさいね・・・畜生、いっそ笑いやがれ」

あれはお前の仕業か。

750名無しさん:2011/10/01(土) 04:26:35
しかし、梅軒の言うことも最もだ。
俺も、滑れないのに教える気はない。

「とりあえず、少し下まで俺が滑る。お前達はそこまで滑ってこい」
「ハッ。それでこけたら、笑ってやるからな」

好きにしろ。

「転ばなかったら、梅軒を笑ってあげて」
「・・がんばれソル」
「あんた達はどっちの味方だい?」

笑う気なんて無い。
とにかく、やってみるか。

初滑り。短い距離だが、滑りだす。
直線だけでなく、多少のカーブを交えつつ滑り、停止する。
・・・問題ないな。杞憂だったか。
この程度の距離なら、滑れないやつがいたとしてもなんとか来れるだろう。

上を見ると、数名が降りて来る。

「お前達は問題ない。勝手にやれ」

声をかけると、そのまま通りすぎていく。
他の生徒も、おずおずとだが降りてきて、俺の付近でなんとか止まる。
が、梅軒達がまだやってこない。少しして、イノがやってきた。

「さすがねあなた。転んでたらそれはそれで美味しかったけど」
「梅軒は何をしている」
「やりたがらないのよ。きっとこけるのが恥ずかしいのね。あの子プライドが高いから」

何をしている。
上を見ると、イノとアバだけが残っている。

「精神的な問題かしら?さっきの失敗のせいで笑われたって思ってるのでしょうね。あの子ならそうそう転んだりしないと思うのだけど」

アバがこちらを向き、サインを送ってくる。

『・・・どうすれば?』
『突き落とせ』

即席の合図だが、アバなら恐らく通じるだろう。
果たして、アバが無理やり梅軒の背中を押している。

「うおああああっ!!?」

叫び声と共に、梅軒が滑り降りてくる。
そのまま速度を上げ、俺を通り過ぎ降っていった。

「・・・これでいいの?」
「ああ」

次いで降りてきたアバに答える。

「あの子、どこまで行ったのかしら」

かなりの速度が出ていたし、そろそろ麓に着く頃ではないか。
あいつが曲がり方や止まり方を知っているのかは知らない。
いざとなれば転んででも止まるだろう。

「私達も行きましょうアバ」
「・・・うん」

他のやつらも、俺が一から教えるまでもない。

「最初だけは下に着くまで付きそうが、その後は各自好きに滑れ」

少しばかりおかしな部分を指摘し修正させれば、それで何も問題なくなるだろう。

そうして再びリフトの所まで戻ってくる。
これで仕事は終わりだ。

751名無しさん:2011/10/01(土) 04:29:58
テスタ「誤投稿してやる気を失った結果さらにこんなことに」

アバ「・・・引きずり過ぎじゃ・・・」

テスタ「投げやりになることもある」

アバ「・・・次はもう少しやる気を出して」

テスタ「それでは今日はここまで」

752名無しさん:2011/10/03(月) 02:30:16
教える生徒もいなくなり、レストハウスで休む。

「おや、どうしました?」

ファウストがいた。いざという時のために、ここで待機しているのだろう。
他の教師連中は、生徒と共にスキーを楽しんでいるらしい。

「どうもない。休むだけだ」
「怪我したわけでもないのですね?」
「ああ」
「もう滑らないのですか?」
「ああ」

一度最上級コースも滑り、スキーというものも体験した。十分だ。

「疲れたわけでもないでしょうに」
「これ以上スキーをする意味もない」

ボードは明日にでもすればいい。

「なんとも達観してますねえ。若いんですから、もっと活動的になったらいかがです?」
「断る」

どう動こうと俺の勝手だ。

「お前こそ、行っていいぞ。ここは俺が見る」

話し相手はいらない。

「なんとまあご親切に。それではご厚意に甘えさせてもらいましょうか」

ファウストが立ち上がる。

「医療キットはそこにありますので。何かあればお願いしますよ」
「ああ」
「もしも貴方の手に負えない様ならお呼びください。いつでも駆けつけますから。では、また会いましょう」

ファウストが去っていく。あいつは、紙袋を被ったまま滑るのか?・・・どうでもいいか。
注文したコーヒーを飲みつつ、雪山を眺めて時間を潰す。

他の連中は、初めてのスキーを楽しんでいるようだ。
今日が初めてというやつが多いのに、既に問題なく滑れている。
それに俺が教えなくても、何か疑問があれば誰かが教えるだろう。
体育実技に関しちゃ、特に優秀なやつが多いからな。

そうしてしばらく何もせずにいると、人がやってきた。

「お兄ちゃん、何をやってるんですか?」
「何かあった時のために、ここで備えている」
「そうですか。スキーに飽きたから、滑るのをやめて何もせずに時間を潰してるんですね」
「・・・こんな時でもソルさんらしいです」
「先ほどは滑り方を教えてくれてありがとうございましたお兄さん」

三人か。

「お前はどうした」
「少し早いですが、お昼にしようかと思いまして」
「メイ達はまだ遊んでるみたいですけど」
「お兄さん、一緒に食べませんか?」

もうそんな時間か。混雑する前に食べておくとしよう。
ディズィー達と卓を囲み、早めの昼食を取る。

「ディズィーは上手だね。全然転んでないでしょ?」
「そういえばまだ転んでませんね。運がいいみたいです」
「凄いよそれ。私は初心者コースでも一度もこけずに滑り降りることもできないのに」
「すぐにできるようになると思いますよ?」
「ディズィーちゃんに言われてもちょっと信用できない」
「レベルが違うもんね。メイとかブリジットもそうだけど」

最初から上級者さながらのように滑っているからな。

「私もディズィーみたいに上手く滑りたいな」
「爽快感とか全然違いそう」
「お兄ちゃんに習ったらどうですか?」
「もう初心者講習終わっちゃったから、ソルさん教えてくれないんじゃないかな?」
「お兄さんだもん」

目の前でよく言う。その通りだが。

「私もなんとなくで滑っているので、上手く教えるというのはできませんし・・・」
「メイとブリジットも感覚でやってるよね」
「メイに滑り方を聞いたら、『イルカと泳ぐ感じで滑るんだよ!』って説明されたもん」

意味がわからない。

「ブリジットは『「それー!」って勢いつけて滑るんです』だったよ」
「ディズィーちゃんはどうやって滑ってるの?」
「え、私は・・・本当になんとなく滑ったら転ばずに滑れているだけですので・・・」

参考にならないな。

「お兄さん、私はどこが悪いんでしょう?」
「スピードが出た時に、怖がって腰が引けている。それでバランスを崩して転ぶ」
「ソルさん、私はどうですか?」
「曲がる際の重心移動が甘い。思うように止まれないのもそのせいだ」
「さすがお兄ちゃん。理論派ですね」

お前やメイやブリジットの説明が曖昧すぎるんだ。

753名無しさん:2011/10/03(月) 03:51:49
昼食を終え、ディズィー達は再びスキー場へ戻って行く。

「アドバイスありがとうございますソルさん」
「がんばって練習してきます」
「それじゃあ、上級コースに行ってみますか?」
「いや、それはちょっとまだ早い・・・」
「ディズィーちゃんだけでも行ってきていいよ?」

食後のコーヒーを飲んで、ディズィー達を見送る。
昼時。周囲は昼食を食べに来た生徒で溢れている。
一人でテーブルを占拠するのも邪魔か。移動するとしよう。
食事処から離れ、椅子に座る。

「よ、ソル。何してんだ?」

闇慈が現れた。

「非常時に備え待機している」
「ああ、そっか。お疲れさん。こんな時まで仕事ってのも大変だな」

何も大変なことはない。
何もしていないからな。

「飯は食ったのか?まだなら一緒にどうだ」
「すでに食べた。一人で食え」
「なんだ、早いな。どうすっかな。チップロボとはぐれちまってよ。一人で食うのも味気ないだろ?」

一人だろうとなかろうと大して違いはない。

「ま、ここで待ってりゃあいつらも来るだろ。待っても来なけりゃ他の誰かと食えばいいし。隣、座らしてもらうぜ」

闇慈が隣に腰掛ける。

「いやあ疲れた疲れた」

コーヒーが無くなった。

「お前って、最初のレクチャーが終わってからずっとここにいるわけ?」
「いいや」

レクチャー後に、少し滑っている。

「そうなのか?お前が滑ってるとこ見てないから、『スキーなんて興味ないぜ』って感じでここにいるんだとばかり」

それは当たっている。

「まあいいや。どうよ、午後に勝負でもしないか?チップ達も含めて、一番上からの競争とか」
「断る」
「いいじゃねえか。どうせ暇なんだろ?」
「仕事だ。仮に暇でも、お前に付き合う気はない」
「そういやそうか。誰かに代わってもらえないのか?ジョニーでもポチョでもいるだろ」

代わってもらうことはできるだろう。
俺が代わる気はないが。

「・・・お前さ、修学旅行だってのにいつも通りすぎるだろ。もうちょっとテンション上げていこうぜ?」
「断る」

お前達が修学旅行を楽しんでいるのはわかる。
だからといって、俺にとっては普段の日々と大差ない。

「まあ修学旅行ではしゃぐお前なんて見たらこっちが心配になるけどよお。もうちょっと、なあ?」

知ったことか。

「賞品でもつけるか?俺が負けたら晩飯のおかず一品なんてどうだ」
「いらん」
「お前が負けたら、今晩スイートルーム使わせてくれよ」

釣り合ってないだろう。

「お前、負けないだろ?だったら負けた時のことなんてどうでもいいじゃねえか」

だからと言って、そんな条件で勝負をする気はない。
いや、どんな条件でも受ける気はないが。

「なあ、スイートルームってどんな感じだ?やっぱり寝心地とか最高なんだろうな」

当然悪くはないが、自分で作った寝具よりは劣る。

「羨ましいねまったく。俺も一度体験してみたいからさ、せめて、チャンスをくれよ。だから勝負ってことで」
「断る」
「お、チップとロボだ。じゃあなソル。昼飯後、上で待ってるからな」

断ると言った。

「『昼飯後、上で待ってるからな』だって」
「デートの誘いですか?ソル先輩もスミにおけませんね」
「ソルさん今のはなんですか!デートするんですか?闇慈さんと!?ソルさんそういう趣味が!!?」
「ねえよ」
「ていうかブリちゃんも・・・ごめん、なんでもない・・・」

こいつらも昼食か。

「ソルさん一緒にご飯を食べましょう!デートするなら闇慈さんよりウチとしましょう!!」
「断る」

もう食事は済んでいる。
デートもしない。

754名無しさん:2011/10/03(月) 03:55:17
テスタ「スキーって楽しいのだろうか」

アバ「・・・さあ」

テスタ「整備されてない大自然の雪山を滑るやつってあるよな」

アバ「・・・うん」

テスタ「あれはかっこいいと思う」

アバ「・・・命がけ」

テスタ「雪崩に巻き込まれたり崖から落ちたり」

アバ「・・・恐ろしい」

テスタ「そういうスリルも楽しさの一つなのだろう」

アバ「・・・やりたくない」

テスタ「私もだ」

アバ「それでは今日はここまで」

755名無しさん:2011/10/06(木) 02:57:22
リフトに乗って山頂付近まで移動する。

「貴方はデメリットしかない勝負が好きなの?」
「いいや」

そんなわけがない。

「優勝者にスイートルーム提供だなんて、貴方には何の得もないでしょう?」
「ああ」
「だったら、どうしてそんな話になってるのかしら」
「さあな」

いつの間にか闇慈との勝負の話が大きくなり、スキー競争で優勝すればスイートルームが得られるということになっていた。
ジェリーフィッシュがまた都合よく解釈したのだろう。

「よく付き合うわね」
「やらなければ、不戦敗だ」
「そうなるのね・・・」

興味がないと断ったところで、聞く連中ではない。
強引に挑まれれば受けて立ち、勝つしかない。

「それでしっかり勝つんだから、大したものよね」

それでも、たまに負けることはあるがな。

「それにしても、頂上はまだかしら」

まだ半分辺り。
それなりの高さまで昇るから時間もかかる。

「これだけ時間をかけて上まで行っても、滑り出したらすぐに麓まで着くのよね」

そんなもんだ。

「滑ってる最中は気持ちいいのだけど」

それが楽しめなければ、スキーには向いてないだろう。

「貴方はどう?楽しんでるかしら?」
「いいや」
「でしょうね。いつもの貴方で安心したわ」

そう言うミリアはいつもより口数が多い。
修学旅行というイベント故か。

「・・・そういえば、家の猫達は元気にやってるかしら」
「問題ない」
「よく断言できるわね」
「何かあればアラートが鳴るようにしてある。何も起きていない」
「でも、もしかしたらその機械が故障してるかもしれないじゃない。餌や水が出なくなってるかもしれないわよ?」
「ねえよ」

そんなことを言い出したら、自分の目で確かめるまでいくらでも疑える。
可愛がっている猫を心配するのはわかるが、心配しすぎだ。

「冷酷ね。貴方は猫達に何かあったかもって、心配にならないの?」
「装置は二重三重に仕掛けてある。全部が壊れるのは、猫に何かあるより可能性が低いだろう」

何度も試した。動作に問題はない。

「・・・・・・もしかして、貴方って私以上に心配性なんじゃないかしら」

そんなことは無いだろう。

「でも、そうじゃなきゃそこまで徹底して気を配らないと思うのだけど?」
「お前が一つで大丈夫なのかとうるさいから、いくつも作ったんだが」
「・・・そうだったかしら?」

とぼけるな。

「ま、そんなことより。安全はともかく、私達がいなくて寂しがってるじゃないかしら?」

数日家を空けるのは初めてだが、日頃、学校にいる間は猫は家に放置している。
七匹もいるんだ。猫共同士で好きに遊んでるだろう。

「それに、私もあの子達と遊ばないと調子が出ないわ」

今日の様子を見る限り、そうは見えない。

「帰ったら、あの子達とたくさん遊んであげないといけないわね。早く帰りたいわ」

旅行二日目でホームシックにかかってやがる。
俺以上に、俺の家に愛着を持っているらしい。家というより猫にだが。

そして、リフト降り場に着いた。

「ようやくね。ソル、私も負ける気はないから。スイートルームは譲ってもらうわ」

言ってろ。リフトから降りる。

「お、旦那のおでましか。スイートは俺がもらっちゃうぜ?」
「アクセル。一応言っておきますが、もし貴方が勝っても、めぐみさんを連れ込むのは禁止ですよ?」
「・・・・・・・・・・・・ハハッ、何言ってんだよカイ。俺がそんなことするわけないだろ?」
「ザトー様、私が優勝した暁には、二人で甘い夜を楽しみましょう!」
「そうはいきませんよヴェノムさん!今夜スイートを堪能するのはウチとソルさんなんですから!」
「カイ、こいつらはいいわけ?」
「彼らの同室相手は同性です。何か問題がありますか?」

わかってやってるだろカイ。まあ、負けなければ何も問題ない。

756名無しさん:2011/10/06(木) 04:18:52
競技スタート。
と言っても、最も早く下まで辿り着いたものが勝ちという単純なルール。
最短ルートは傾斜の大きい上級コースだが、参加してる連中にとっては初心者コースと大差ない。
とにかく、ノーブレーキの最短最速で一気に降る。

「やっぱソルが一番の敵だな」
「勝負は始まったばかりだぜ!」
「負けないアル」

あまり差がつかない。
が、圧勝する必要はない。少しずつ差を広げ、確実に勝つ。

「ちっ、どうにも追いつけないね」
「手加減してよソル!」
「・・・大人気ない」
「必死ね」

何とでも言え。
そろそろ中盤。ここからは、人がいる。
貸切なので十分に広さはあるが、ゆっくり滑ったり、転倒している生徒がいる。
上手く避けつつ、スピードを落とさずに進まなければならない。

「うおっと、メンゴメンゴ!」
「我輩ノ為ニ道ヲ開ケロ!!」
「ガンマレイで一掃したいです・・・」
「ディズィー、それだけは絶対にやっちゃダメよ?」

後続を少し引き離したか。優勢だ。
最後にある急傾斜を降れば終了だ。

が、問題が起こった。

「きゃああっ!?」

前にいた生徒が、派手に転倒した。
・・・仕方ない。生徒のところで急停止する。

「大丈夫か」

転んだ拍子に怪我でもしてれば事だ。

「ぃたぁ・・・」

腰をさすっている。他は無事なのだろうか

「ん?ああ、バッドガイ・・・ではなくて、ソル先生。・・・ええ、大丈夫です」
「打ったのは腰だけか?」
「・・・はい。恐らく」

手を取ってを診る。捻挫や脱臼の心配はないか。

「ご心配ありがとうございます。ええと、板はどこに?」
「これでしょう?どうぞ」
「ストックもだ。随分と派手に転んでいたが、怪我はないかな?」
「ありがとうキスク。ザトー。大丈夫よ」
「それはなにより」

カイとザトーも気になったのか、滑るのをやめ、転んだ時に外れたスキー板等を拾っていた。

「もう少し他で練習してから、ここに挑んだ方がいいでしょうね」
「そうね。キスクの忠告を聞いておくわ」
「立てるか?」
「ん・・・っとと。はい、大じょっぅ」
「無理はするな。少し休むがいい。そうだ、我がエディで運んでやろう」

板を付け直し、立ち上がる、が、まだ少しふらついている。
まあ、少し安静にしていれば痛みも引くだろう。

「おおう、どしたの姉さん。変人三人に囲まれて」
「私がソルとザトーに並ぶんですか?」
「冗談さカイっち。んで、三人もいるなんてなにかあったの?」
「カイ、貴様は私をそんな目で見ていたのか」

間違ってないだろう。

「何、少々危険な転び方をしていたので気になっただけだ。怪我はなかったから安心するといい」
「そりゃ良かったね姉さん」
「だが、少し腰を打ったようでな。私がエディを使ってレストハウスまで運んでやるのだ」
「『命』を『運』んで来ると書いて『運命』!・・・・・・フフ、よくぞ言ったものだ」
「こら、少しは姉を心配しなさい」

その後、エディを使ってレストハウスまで移動し、ファウストに引き渡す。

「ふむ、軽く打っただけですね。少し安静にしていなさい。それとももうホテルに引き上げて温泉に入ってもいいですよ?
 確か打ち身に効く湯でしたから、すぐに痛みも引くでしょう」
「わかりました。ありがとうございますファウスト先生」
「付き合うよ姉さん。妹は姉が心配だからね」
「はいはい。それじゃ、ソル先生、キスク、ザトー、迷惑かけたわね。ありがとう」
「お大事に」
「養生するといい」

二人がホテルに戻って行く。

「ところで、結局誰が勝ったんですか?」
「そういえば勝負の最中だったな」

誰が勝とうが、俺が部屋を移動することに変わりはない。

757名無しさん:2011/10/06(木) 04:41:42
テスタ「ネタが思い浮かばない」

アバ「・・・ふーん」

テスタ「普段は一度につき3・4レスのペースが、2レスで終了している」

アバ「・・・うん」

テスタ「修学旅行なのに特別なことがないのが困る」

アバ「・・・何かあるはず」

テスタ「・・・女湯覗きとか?」

アバ「・・・ソルがそれをする絵が見えない」

テスタ「故意でも偶然でもありえないな」

アバ「・・・賢者だからね」

テスタ「だがしかし、ではなにをどうすればいいのか」

アバ「・・・家に帰れば?」

テスタ「それも一案」

アバ「・・・まだ二日目なのに」

テスタ「仕方ない」

アバ「・・・もう少し粘って」

テスタ「なるべくがんばろう」

アバ「それでは今日はここまで」

758名無しさん:2011/10/08(土) 00:47:30
陽も落ちて、ホテルに戻る。

「ソルはナイターで滑らないアルカ

759名無しさん:2011/10/08(土) 01:52:37
陽も落ちて、ホテルに戻る。

「ソルはナイターで滑らないアルカ?」
「興味がない」

日の光だろうと照明だろうと、大差ない。

「そうアルカ。私はもう少し滑ってくるアル」
「ボクもまだ遊んでるから、エイプリル達は先に戻っててよ」
「夕飯までには帰ってきてね、メイ」
「大丈夫だって」
「私が注意するアル」

紗夢とメイがリフト乗り場へ向かう。

「元気だなあ。私はヘトヘトだよ」
「ゆっくりと温泉を堪能しましょ」

ホテルに着く。
俺は、部屋を明け渡さなければならない。

「まさかデズちゃんが勝つとは思わなかったよ」
「そうですね。私も、まさか私が勝てるとは思ってませんでした」
「お姉ちゃんのアクシデントが無ければ、お兄さんが勝ってたんですよね?」

たらればは意味が無い。とにかく負けた。
勝ったのがディズィーというのは思っていなかったが。

「カイさんとザトーさんも足を止めてくれましたし」
「運も実力の内よディズィー」

一度ディズィー達と別れ、部屋に戻り荷物をまとめ、簡単に部屋を整えてから部屋を出る。

「鍵だ」
「ありがとうございますお兄ちゃん」
「それじゃあスイートルームを楽しもう!」
「私達もいいのディズィー?」
「もちろんです。ベッドに限界はあるので、全員ここで寝るわけにはいきませんが」
「メイ達が戻ってきたらジャンケンだね」

部屋に入っていくディズィー達。
さて、部屋を探すか。空き部屋は多い。

「む、ソル。いいところに」
「何か用か」

ポチョムキンに呼び止められた。

「これより職員会議が行われる。と言っても大したことはない。
 簡単に今日のことを報告してくれればいい」
「そうか」
「部屋を追い出されたそうだな。先に部屋を見つけるか?」
「いや、それは後でいい」

仕事が先だ。
荷物を持ったまま、スレイヤーの部屋に移動する。

「おお、来たか。今日は一日ご苦労だった」

苦労することはなかった。

「すぐに終わる。我々も疲れているし、夕食が近いのでな」

教師達も、生徒に混じってスキーを楽しんでいたからな。

「では、会議を始めよう。修学旅行二日目だが、今のところ大きな問題もなく、順調と言っていいだろう。
 君たちから何か、報告することはあるかね?」
「怪我をした生徒はいませんし、昼に転倒して腰を打った子がいますが、先ほど様子を見たところ問題ありませんでした。
 これからも怪我人が出ないことを祈ります。まあ、怪我人が出ても私がすぐさま治してみせますが」
「頼もしいねぇ」
「全く滑れないという生徒はいませんし、貸切ですから一般客とのトラブルも起こりませんし」
「万事順調だな」

平和なことだ。

「ソル、君から意見はあるかね?」
「生徒のホテル内の行動が、少し目に余る。夜遅くまで騒ぎすぎだ」
「ふむ。こんな時だからハメを外したく気持ちはわかるが」
「昨日の枕投げは特別に目を瞑るとしても、今日は少し注意をするとしよう」
「健康にも良くありませんし、寝不足でスキーをしては事故の元です」
「指導を聞かない生徒は、幽霊を取り憑かせましょうか」
「ほぅ、雪山で霊に呪われるとは、ちょっとしたホラーだな」

これで今夜は、静かに眠れるだろう。

「こんなところかな?それでは、明日も気を引き締めていこう。解散」

会議が終わった。
部屋探しに戻るか。

760名無しさん:2011/10/08(土) 02:58:55
部屋を見つけた。二階。階段から最も近い一人部屋。
食堂や温泉に近いので便利である。
眺めは良くなく、人通りも多いので、このような場所は生徒には不評のようだが。

荷物を起き、腰を落ち着ける。
夕飯時まで、本を読んで過ごす。

時間になり、食堂に向かう。

「や、ソルっち。部屋はどこにしたの?」
「君が負けるとは思わなかったよ」
「お姉さんの手当て、ありがとうバッドガイ君」
「もう元気になりましたわ」

席に着く。
空席があるな。帰って来てないやつがいるのか。

「ところでさ、メイとか御津っちとかのナイター組が帰って来てないんだけど、ご飯食べていいの?」

やはりか。

「放っておけ。時間は伝えてある」
「でも、メイやロボ君ならともかく、カイ君やザトー君までいないよ?」
「あの方達が時間に遅れるということは、何かあったのでは?」
「様子を見てこないで大丈夫かな?バッドガイ君?」
「問題ない」

何かあっても、カイとザトーがいるなら問題はない。
そもそもナイターをやってる連中は、大抵のことは独力でどうにかできる能力を持っている。

「あっ、噂をすればなんとやら。カイっち、なんだか慌ててるけど何かあったの?」
「ソル、少しいいですか?」
「なんだ」
「・・・ちょっとここでは」

カイが人目を避けるとは、何があった。
食堂から出る。

「なんだ」
「実は、闇慈とチップとロボが遭難しまして」

・・・つい先程、万事順調と職員会議で話し合ったばかりというのに。

「どうも、リフトで一番上まで行った後、何があったのか、コースから外れて周囲の林に突っ込んだみたいです」

おかしな競争でもして、無茶な滑り方でもしたのか。

「皆で探しているのですが、呼んでも反応もありません。どうしましょうか?」
「放っておけ。遭難で死ぬようなまともなやつらじゃない」
「いいんですか?確かに彼らなら、捜さなくてもいつの間にかホテルに帰ってきそうですけど」
「ロボカイもいる。問題ない。他の連中も引き上げさせろ」
「ロボですか?あれが頼りになるとは思えませんが」
「遭難時に役立つような機能は積んである」

GPS、この周辺の地図データ、地形データ。他色々。ロボカイがそれらの機能を使いこなせるかは怪しいが。
いざとなれば、通信機を使い、俺が連中を誘導すればいい。
天候も曇ってはいるが雪は降っていない。秘境の名峰というわけでもなし、大騒ぎすることではない。

「心配するだけ無駄だ」
「まあ、貴方がそこまで言い切るなら、そうしましょうか」
「他の連中を呼び戻してこい」
「わかりました」

カイがホテルを出ていく。
食堂に戻る。すでに、食事は始められている。

「カイっち、何だったの?」
「闇慈達が遭難した。それだけだ」
「そりゃ大変だ。達ってことは、後はチップ君とロボ君?」
「ああ」
「やったね、大当たり」

誰でも見当は付くだろう。

「それで、バッドガイ君は捜しに行かなくていいの?」
「必要ない。他の連中も捜索をやめて戻ってくる」
「まあ、冷たいですわバッドガイさん」

何とでも言え。

「ま、ソルっちが必要ないって言うからには、本当に必要ないさ」
「闇慈君達だからね。今頃皆で仲良く喧嘩でもしてるんじゃない?」
「『お前のせいで遭難しちまったじゃねえか!』『我輩ノセイジャナイゾ』『こんな時に喧嘩すんなよ』といった感じでしょうか」
「なんとなく想像できるの」

こいつら、カイよりも余裕があるな。

「それじゃ、御津っち達のおかずは貰っちゃおう」
「ありがたく頂きますわ。バッドガイさんもいかがです?」
「いらん」
「好き嫌いは良くないねソル君。天ぷらあげる」
「いいのかなぁ・・・」

捨てるよりはマシだ。

761名無しさん:2011/10/08(土) 03:42:52
テスタ「まさか2行目でミスするとは」

アバ「・・・早すぎる」

テスタ「途端にやる気ダウン。もう今日はいいかと思ったほど」

アバ「・・・もうね」

テスタ「やる気なくしたついでに、考えていた展開とかどっかいってこんなことに」

アバ「・・・遭難を馬鹿にしてる」

テスタ「どうせフィクションなので問題ない」

アバ「・・・えー・・・まあそうだけど」

テスタ「このまま次回はおまけ番外編『ドキッ!野郎だらけの遭難大会!?』でもやっちゃおうか」

アバ「・・・凄くどうでもいい」

テスタ「私もそう思う」

アバ「・・・・・・やるの?」

テスタ「たまにはソルから離れてみたいという思いはある」

アバ「・・・最近ブリジット編やってないしね」

テスタ「やるかどうかは酒の酔いに任せる」

アバ「・・・気分次第」

テスタ「それでは今日はここまで」

762名無しさん:2011/10/13(木) 03:20:58
入浴時間になる。
昨日は部屋にバスルームがあったが、この部屋にはない。
浴場へ向かう。

浴場の出入り口に近づくと、女湯の方から人が出てきた。

「お兄ちゃん、今から温泉ですか?」
「ああ」

ディズィー達は、上がったばかりらしい。

「あ、そだ。ねえねえソル、ボクの髪を乾かしてよ。前の時みたいにさ」
「断る」
「お願いだよ。髪が長いからすぐに乾かないんだもん」

髪を乾かすとは、学園祭の時のようにということか。
知った事ではない。放っておけばその内乾くだろう。

「お兄ちゃん、私もお願いします」
「こっち来い、ディズィー」
「いえ、私は最後でいいですから。皆さんお先にどうぞ」
「やったね!じゃ、ボクが一番最初!」
「その次は私もお願いしますソル先輩」

メイが目の前に来て、頭を差し出してくる。
これを終わらせないと、ディズィーの髪を乾かせないのか。
手に炎を纏い、メイの髪を撫でる。

「おー、久しぶりだけど気持ちいー。眠たくなってくるよ」
「俺に寄りかかるな」
「気にしない気にしない。もう終わった?」
「もう少しだ」

長い髪の持ち、乾かしていく。

「終わりだ」
「ちぇっ。もうちょっとゆっくりやってくれてもいいのに」
「メイ、交代。それじゃあお願いしますソル先輩。髪を燃やさないでくださいよ?」

そんなミスはしない。
メイと同様に、髪を乾かしていく。

「おおお、なにこれ。確かに良い感じの温かさで眠たくなってく・・・」
「寝るな」
「冗談ですって」

そうは見えなかったが。
寝るなら部屋に戻ってから存分に眠れ。

「終わりだ」
「どうもです。明日もお願いします」
「断る」
「えー。髪のケアは女の子にとっては死活問題ですよ?」
「自分でやれ」

俺に頼るな。次は誰だ。
残りの2人も手早く片付ける。
さて、やっとディズィーか。

「さっきから、何をやってるのかしら?」
「・・・髪を乾かしてる?」
「頭を撫でてるようにしか見えねえけどな」
「ハーレム乱交ね。私も混ぜてくれる?」
「イノ・・・それはないわ・・・色々と」

ミリア達も浴場から出てきた。
関係ないか。ディズィーの髪を乾かし、俺も温泉に入るとしよう。

「ディズィー、来い」
「私は最後って、さっき言いましたよ?まだミリアさん達がいますから」
「なんのこと?」
「・・・さあ」

こいつらもやれと言うか。

「ミリア達もまだ髪が乾いてないなら、ソルに乾かしてもらうといいよ」
「はあ?何言ってんだい?」
「それが、ソルさんってドライヤーより便利なの。試してみて損はないよ?」
「エイプリル、お兄さんとドライヤーを比べるのはちょっと酷いんじゃ・・・」

まさにドライヤー代わりに使われていたがな。

「よくわからないけど、そういう事ならお願いできるかしら?」
「ああ」
「あら、素直ね。もっと必死に抵抗する方が私の好みよ?それを調教するのって最高よね」

イノの好みなんか知ったことではない。

「頭出せ」
「こうでいいかしら」

俺に背を向けて立ち、髪を預けられる。

「ああ」
「時間かかるの?」
「すぐに終わる」

さっさと終わらせる。

763名無しさん:2011/10/13(木) 04:08:45
イノの髪も乾かし、アバももう終わる。

「・・・おー」

髪が短いのですぐに終わった。
後はミリアと梅軒か。

「俺はやんねえぞ」
「私もよ」
「なんでさ。二人とも髪長いんだから、まだ乾いてないでしょ?気持ち悪くない?」

やらないならやらないでいい。
ディズィーの髪を乾かして、風呂に入るだけのこと。

「俺はお前らほどそいつと仲良かないし、髪を任せるほど信頼もしてねえんだよ」

梅軒がまともな事を言う。

「へー。梅ちゃんってそういうの気にするんだ。やっぱり乙女だね」
「こら、そういうことを言わないの。梅軒だって、普段から十分女の子でしょ」
「エイプリルの言う通りよ。あの子、自分の部屋だと毎晩長い時間かけて髪の手入れしてるのよ?」
「・・・かわいい」
「いや、お前らちょっと待て。別に俺はそんなんじゃなくて・・・」

どうでもいいから、髪を乾かすのか乾かさないのか。

「でもさ、好きでもなきゃ長髪なんてやんないよね?結構邪魔だもん」
「梅軒さんの髪、綺麗ですしね」
「貴方はもう少しヘアスタイルに気をつけたらどうかしら?」
「もっと可愛くなると思うよ梅軒ちゃん」
「ちがっ、違う!俺は別に髪なんか気にしてないね!!」

慌てすぎだ。説得力がない。

「とにかく違うし俺はソルの厄介になんかならねえええ!!」

梅軒が駈け出して階段を上がっていった。

「・・・励ましてくる」
「任せるわアバ」

アバも去っていく。
まあいい。後はミリアとディズィーだけ。

「さ、ミリアさんどうぞ」
「・・・遠慮しておくわ」
「なんで?」
「ミリアちゃんはお兄さんと仲良いよね?」
「一緒に暮らしてるんだもの。悪いはずがないわ」

確かに悪くはないと思うが。

「髪は女の命って言うぐらいよ?逆に、どうして貴方達があっさりとソルに任せられるのかわからないわ」
「え、そりゃあソルなら安全だし」
「早いし」
「昔から仲も良いし」
「ダメな理由が見当たらないかな?」

仲良くした覚えはないが。
常に一方的に絡まれているだけだ。

「まあ、貴方達はそうでしょうね。でも、私は貴方達ほどソルトの付き合いは長くないの。だから、今日はやめておくわ」
「大丈夫だって。ソル先輩じゃなくて、プロに任せると思えばいいよ」
「そうそう。美容院の店員さんに任せる気分でさ!」
「お兄さんは髪を乾かすプロだから」
「ソルさんの匠の技が冴え渡るわよ?」

どうでもいいが、早く決断してくれないと俺が風呂に入れない。
入浴時間に制限はないが、いつまでもここにいても意味が無い。
ミリアに俺が必要ないなら、とっととディズィーの髪を乾かすだけだ。

「・・・やっぱりやめておくわ。別にソルを信用してないわけじゃないけど、なんとなくね。
 それじゃあ私は部屋に戻るから。・・・おやすみ、ソル」
「ああ。おやすみ」

ミリアも去っていく。
やっとだ。ディズィーの髪を乾かしてやろう。

「あ、私はもうほとんど乾いたみたいなので、やってもらわなくて大丈夫です」

おいディズィー。

「では、私達もお部屋に戻りましょう。おやすみなさい、お兄ちゃん」
「ああ。おやすみ」
「おやすみーソル」
「ソル先輩。また明日」
「ありがとうございましたソルさん」
「失礼します」

ディズィー達も去っていく。
時間を取られたが、温泉に入るとするか。

764名無しさん:2011/10/13(木) 04:53:34
ディズィー達と別れ、脱衣所に入る。
ブリジットの靴がある。いるのか、あいつは。
おそらくは、いずれ風呂に入る俺を待ちぶせているのだろう。

・・・しかし妙だ。気配を感じない。
脱衣所はもちろん、浴場の方にも誰かがいる気配は感じない。
だが、ブリジットがいないはずがない。脱衣所に服もある。
と言うことはだ。

服を脱がず、そのまま浴場に向かう。
ドアを開けると、案の定、ブリジットがいた。倒れている。
のぼせたか。どれだけ俺を待ち続けていたんだこいつ。

とにかく手当しなければならない。
湯船から引き上げ、横にし、タオルをかぶせる。

「おい、意識はあるか?」
「・・・・・・はい・・・?あ・・・ソルさ・・・じゃないですか・・・という・・・は・・・ここ・・・・・天国・・・ですね」

朦朧としている。脱衣所に運ぶ必要があるな。
露天風呂ゆえに、ここでは湯冷めして体調を崩すかもしれない。
ブリジットを抱え、移動する。

「わー・・・さすが、天国の、ソルさんは・・・一味違います。・・・・・・こんなこと・・・ソルさん、してくれません・・・し」

意識がはっきりしてるのか夢を見てるのか区別しにくいな。
こいつは放置しても大丈夫じゃないだろうか。医師としてそれはできないが。

脱衣所で横たわらせる。
頭部や手足を冷やす必要がある。それと水分補給。
冷ますのは特殊な炎でどうにかなるが、水分は持ってこなければならない。厨房に行くか。
水を用意するために立ち上がった所、裾を摘まれた。

「なんだ」
「・・・行かないで・・・欲しい、です」
「水がいる。すぐに戻る」
「・・・でも・・・・・・」

聞いていられない。水分を取らなければ回復が遅れるだけだ。
ブリジットを振り払い、脱衣所を出る。

厨房に行き水差しをグラスを用意し、風呂場へ戻る。
途中、出会した生徒に、ファウストを呼ぶように指示する。
脱衣所に戻り、ブリジットの様子を見る。

「・・・天国のソルさんにまで、邪険にされました・・・。これじゃ現実です・・・」

地獄でなく現実か。合っているが。

「水だ。飲め」
「・・・口移しで飲ませてください」

グラスに水を注ぎ、顔にかける。

「な、何するんですか・・・?」
「水を飲め」
「・・・はい」

水を飲ませ、安静にさせていると、ブリジットも大分回復してきた。

「・・・ウチは倒れてしまったんですね」
「ああ」
「はぁ・・・ソルさんと一緒に温泉に入ろうと思って、ずっと待ってましたから」

やはりか。

「そのおかげで、ソルさんに抱きかかえられたんですから、怪我の功名ですね」

たくましい。

「そうだソルさん。ウチの裸を見たんですから、責任取って結婚してくだワプッ!?」

水をかける。

「・・・病人には優しくしてほしいです」
「している」
「そうですね。いつもなら殴られてます」

意味のない会話していると、ファウストがやってきた。

「おやおや、湯にのぼせた人がいると聞いてやってきましたが、私は必要ないようですね」
「はい。もう大分楽になってきました」
「ふむふむ。顔色も問題ないですし、呼吸脈拍心拍数も正常値でしょう。立てますか?」
「大丈夫です。・・・わわっ」

まだ全快とはいかないか。
倒れそうになるブリジットを支える。

「あの、ありがとうございます」
「気をつけろ」
「はい!」

今ので元気になったらしい。

「ご迷惑をおかけしました。ウチは部屋に戻って休みます」
「お大事に。明日からは長湯に注意してください」
「はい。ソルさん、明日は一緒に温泉に入りましょうね!」
「断る」

ブリジットとファウストもいなくなり、ようやく温泉に入ることができた。

765名無しさん:2011/10/13(木) 05:07:34
テスタ「気がつけば、このスレが始まって2周年」

アバ「・・・そんなに」

テスタ「まさか、こんなにかかって終わらないとは思わなかった」

アバ「・・・誰も予想できない」

テスタ「2年もやって、完結することもなく、投げ出すこともなく、何をしているのだろう」

アバ「・・・さあ」

テスタ「1年前もきっと同じ事を思ってた」

アバ「・・・多分ね」

テスタ「確認したら、『早く終わらせたい』と書いてた」

アバ「・・・そして1年が経った」

テスタ「さすがに来年には終わってると思いたい」

アバ「・・・どうかな」

テスタ「1年前のレス数が521だった。そして今これで765」

アバ「・・・進みが遅くなってる」

テスタ「この1年で240しか進んでいない」

アバ「・・・1年目の半分」

テスタ「レス数は減ってるが、その分1レスの行数は多いんだぞ?」

アバ「・・・量より質」

テスタ「始めた頃は、数十行で投稿とかしてたからな」

アバ「・・・今は100行近い」

テスタ「当時は色々と不慣れだったのだよ」

アバ「・・・うん」

テスタ「しかしこのペースだと、1050まで行くのに、あと1年かかる」

アバ「・・・その前に、物語終わらせて」

テスタ「できるだろうか?」

アバ「・・・やるしかない」

テスタ「そうだな」

アバ「・・・・・・やるしかない・・・」

テスタ「悲壮感漂うな」

アバ「・・・がんばれテスタ」

テスタ「アバもだぞ」

アバ「・・・えー」

テスタ「がんばろう」

アバ「・・・おー」

テスタ「それでは今日はここまで」

766名無しさん:2011/10/19(水) 02:36:05
朝になって目が覚めました。
ベッドから起きてカーテンを開けると、雲ひとつ無い青空。朝日が眩しいです。
昨日は少し曇ってましたけど、これなら今日一日いいお天気になりそうです。

手早く着替えてから、まだ隣で寝ているエイプリルさんを起こします。

「エイプリルさん、朝ですよ。起きてください」
「・・・ん〜朝?・・・あ、メイを起こさなきゃ」
「エイプリルさんが行かなくても、ディズィーさんがいるから大丈夫だと思いますけど」

いつもの習慣でしょうか。
当たり前のようにメイさんを起こしに行こうとしました。

「・・・ああ、そっか。そうだね。おはようブリジット」
「おはようございますエイプリルさん」
「ちょっと部屋出てもらってていい?」
「はい。外で待ってます」
「ありがと。すぐ着替えるから」

これでもウチは男ですからね!女性の着替えを覗いたり邪魔したりなんてしないんです。
当たり前のように同室してますけど、これはこれそれはそれです。

廊下に出ると、丁度隣室のドアも開きました。

「おはようブリジットちゃん」
「ブリちゃんおはよ。エイプリルはまだ寝てるの?」
「おはようございます。いえ、今着替え中です」

もうそろそろ朝ご飯の時間ですから、部屋から人が出てきてますね。

「ブリジットちゃんは、体調はもういいの?」
「はい!おかげさまで大丈夫です。ご迷惑おかけしました」
「それは良かったけど、ソル先輩を待ち伏せてのぼせるのはもうやらないでね?」
「気をつけます」

昨夜はとんだ失敗です。
ソルさんに愛のある介護をしてもらったので差し引きゼロどころか大幅プラスですけどね。
でも、その後もフラフラなウチを見かねて、エイプリルさんが付き添って看病してくれてたんでした。
後でエイプリルさんにお礼を言っておかないといけません。

「ところで、メイとデズちゃんは?」
「まだ見てないです」
「もしかしてまだ寝てる?」

ディズィーさんなら起きてるんじゃないかと思いますけど

「ノックしてもしもお〜〜〜し」

メイさん達が寝てる部屋をノックしてます。・・・その台詞は必要なんですか?

「はーい、ちょっと待ってください」
「あ、ディズィーちゃん起きてた。ごめん何でもないよ、準備してるならゆっくりどうぞ」
「すみません、今すぐメイさんを叩き起こしますから」

え、叩き起こす?

「今物騒なこと言った?」
「ディズィーちゃんはたまに暴力的になるよね」
「時と場合を考えてやってるみたいですから、いいんじゃないですか?」

ディズィーさんはあれでソルさんより凶暴ですから怖いです。
ていうかソルさんは全く暴力的じゃないんですけど。ウチ以外に対しては。

「わあああああああああ!!??」
「えっ、なに!?」

なんだかメイさんの叫び声が聞こえてきたんですけど?
大丈夫ですか?何やったんですかディズィーさん?

「今の何?メイの声に聞こえたけど」

エイプリルさんが部屋から出てきました。

「おはよエイプリル」
「おはよー」
「おはよう。で、どうしたの?」
「ディズィーさんがメイさんを起こしたみたいです」
「・・・なんで叫び声が?」

それはウチ達も知りたいです。
それから少しして、部屋からディズィーさん達が出てきました。

「おはようございます皆さん」
「おはよう」
「おはよ」
「おはようです。・・・大丈夫ですかメイさん?」
「大丈夫大丈夫。おはよーみんな」
「おはよう。それじゃ、朝ご飯を食べにに行きましょ」

みんなで連れ立って一階へ。

「ディズィーさん、メイさんに何をしたんですか?」
「『メイさん、起きてください』って、身体を揺さぶっただけですよ?」
「ネクロで持ち上げてベランダの柵の外でやらないでよ!すっごく怖かったんだから。寒いし」
「そこまで移動してもメイさんが起きないからじゃないですか。それに慌て過ぎですメイさん。危うく落とすところでした」
「ボクが悪いの!?」

わりとシャレになってないですディズィーさん。

767名無しさん:2011/10/19(水) 03:36:29
一階に着くと、なんだか騒がしいです。

「何かあったんでしょうか?」
「行ってみようよ」

どうせ通り道ですしね。
近づくと、闇慈さん、チップさん、ロボさんがいました。

「あれ、闇慈達じゃん。そういえば遭難してたよね」
「あ、私それ完全に忘れてた」
「お兄さんが大丈夫だって言ってたから、気にもかけてなかったよね」
「ブリジットがのぼせたりでドタバタしてたし」
「ごめんなさいです。それと、ありがとうございましたエイプリルさん」
「いいのいいの。気にしないで」

優しいですエイプリルさん。
一方、闇慈さん達にカイさんとアクセルさんが話しかけてます。

「とにかく、無事でなによりでした。みな、貴方達を心配してましたよ」
「本当か?そうは見えないぜ?」
「あー悪い。正直、完璧に忘れてた」
「おい!?」
「薄情すぎるだろ!」
「我輩ガ遭難シタンダゾ!全力デ救出スベキダロ!」

・・・ウチも今まですっかり忘れてたました。
闇慈さん達ごめんなさい。

「夜の捜索は二次遭難等の可能性を考えて避けるべきでしょう?」
「まあ、それはわかるけどよ」
「旦那もお前らなら心配ないって保証してたしよ。ロボもいるからってな」
「ロボが?ホワイ?」
「遭難しても役に立つ機能を大量に搭載してると言ってましたが?知らないのですか?」
「マジで?」
「おいロボ、お前そんな機能あんの?」
「エッ、我輩ハ知ラナイゾ?」
「しかし、製作者であるソルが言っていたのですが」
「・・・機能サーチ中・・・機能サーチ中・・・アッ」
「・・・あったのか?」
「ナイ。ソンナ機能ハナカッタ。ボンクラノソルガ勘違イシテルダケダ。キットソウダ」
「ふざけんなてめええええええ!!」
「んな機能があるなら崖から落ちたり熊と戦ったりしなくてすんだのによおおおおおおお!!」
「我輩ノセイジャナイ!!」

あの人達は一体何をしてたんでしょう。

「ねえねえ、ご飯食べに行こうよ。ボクお腹すいた」
「そだね。あの先輩方は放っておこう」
「元気そうだしね」
「とても一晩中遭難してた風には見えないわよね」
「今日の朝ご飯は何でしょう」
「ウチはパンが食べたい気分です」

焼きたてのパンにバターを塗って食べるのがシンプルに美味しいです。
昨日は和風でしたから、今日は洋風でもいいんじゃないでしょうか。
もちろん和風も好きですけどね。

食堂に入ると、ミリアさん達がすでに来ていました。

「おはようございます」
「あら、おはよう」
「おはようございます皆さん。スイートルームの寝心地はどうでしたか?」
「・・・最高」
「文句なしね」
「しかし良かったのかい?せっかくあんたが手にした権利を、俺達に使わせてよ」
「私がゲームの勝者にあげると決めたんですから、何も気にすることありませんよ」
「なんだか悪いわね」

ディズィーさんはせっかく手にしたスイートルームの鍵を、再び誰が獲得するかゲームで決めたそうです。
ウチは体調不良でリタイアしてましたけど。
結果、ミリアさん達4人が使うことになったそうです。

「ディズィーちゃんももったいないことするよね」
「いいじゃないですか。それでゲームも盛り上がったんですし」
「ボクなら絶対に自分で使ってたよ」
「普通そうよね。でも、本人が気にしてないならこっちも変に遠慮するのも悪いもの」
「そうね。ああ、鍵を返すわディズィー」

ミリアさんからディズィーさんに鍵が渡ります。

「今晩のスイートルームの権利は誰が得るんでしょうね」
「え、それってソルさんのじゃないんですか?」

ソルさんに返すんじゃないんでしょうか。

「お兄ちゃんに鍵を返しても、わざわざ部屋を移動すると思いますか?」
「・・・しないね」
「ソルさんって今の普通の部屋で満足してそうよね」
「賭けにもならないわ」

満場一致です。ソルさんがスイートルームに戻る姿が想像できません。

「というわけで、今晩は今晩でまた決めましょう。今度は他の人も参加できるような方法で」
「そだね」

ソルさんの了解もとらずに話が進んでいきます。
まあソルさんなら何をやっても許してくれますよね。

768名無しさん:2011/10/19(水) 04:23:50
朝ご飯も食べ終わりました。
パンがあって良かったです。バターとジャムも美味しかったです。
きっと今日も一日良い日ですね。

食堂から外に出ると、ソルさんと鉢合わせました。
いきなりいい事が起こりました!・・・ちょっと気になることもありますけど。

「おはようございますソルさん!」
「おはようございますお兄ちゃん」
「おはよーソル」
「ああ」
「おはよう皆さん」
「おはよう、姉さん」

そう。何故かソルさんの隣によく見知った人が。

「とりあえず聞きたいんだけど」
「なにかしらエイプリル?」
「どうしてソルさんと姉さんが一緒にいるの?」
「少し早く目が覚めたので、散歩に行ってましたの。気持ちいいですわよ?」
「そうなんだ。じゃあもう一つ聞きたいんだけど」
「・・・なんでお兄さんと腕組んでるの?」

それです!なんでこの二人、腕を組んで歩いてるんですか!
デートですか?散歩という名のデートでもしてたんですか?
ウチが知らない間にそんな関係にまでなってたんですか!?

「これは雪で道路が滑って危ないから、転ばないようにですわ」
「ああ〜・・・」
「それだけ?」
「ええ。他になにか?」
「じゃあなんでまだホテルの中でまで腕を組んでるの?」
「何か問題でも?」
「え?・・・いやどうだろ」

素で返されてしまいました。どうなんでしょう。
腕を組んじゃいけないなんてルールはありませんけども。
だったら!

「ソルさん!反対側の腕はウチがもらいまグハッ!?」

いたぃ・・・。

「なんでその人は良くてウチはダメなんですか!?」
「腕を組む理由がない」

ええー。なんですかそれ。
だったら、今も腕を組んでる理由ってなんですか?
やっぱりソルさんは女の子が好きなんですか!?・・・いや、それって普通ですよね。あれ?

「ソル先輩、どうしてまだ姉さんと腕を組んでるんですか?」
「こいつが離さないからだ」
「え、それだけ?」

ソルさんだからそんなことだろうとは思ってましたけど。
ウチは泣いてもいいんじゃないでしょうか。

「姉さん、ブリジットが可哀想だからそろそろ離れてあげて」
「あらあら。それではバッドガイさん、エスコートありがとございましたわ。失礼します」

あっさりとソルさんから離れて食堂の方へ行ってしまいました。
なんでしょうこの敗北感。

「お兄ちゃん」
「なんだ」

ウチが落ち込んでいると、ディズィーさんがソルさんに声をかけてました。

「昨日預かったスイートルームの鍵ですけど、お兄ちゃんは今晩この部屋を使いますか?」
「いいや」
「では、これはこのまま私が預って、自由に使っていいでしょうか?」
「ああ」
「ありがとうございます」
「ソル先輩、予想通り過ぎなんですけど」

さすがの安定感です。
あっさりとスイートルームの使用許可が下りました。

「今度こそボクが勝つもんね!」
「いえ、今日はウチが勝ちます!それでソルさんと甘い夜を過ごしてみせます!」

そうです。ウチに落ち込んでる暇はありません。攻めあるのみです!

「すまないディズィー、その争奪戦に私も加わりたいのだが」
「おはようございますヴェノムさん。ええ、もちろんいいですよ」
「おはよう。ありがたい。フフ、ならば私のザトー様への愛にかけて誓う。今晩甘い夜を過ごすのは私とザトー様だとな!」
「愛の深さなら負けませんよヴェノムさん!」

普段は同志ですけど、こういう時はライバルです。
ウチも遠慮しません!全力で勝ちにいかせてもらいます!

「ブリジットちゃんもヴェノムさんも、相手のこと考えないよね」
「ポジティブシンキングって大切だと思う」
「まあ、私達は暖かく応援してあげましょう」

聞こえてますよ!?
いいじゃないですか。夢を見るのは自由なんですから。
ウチ達はいつでも前向きに走り続けます!

769名無しさん:2011/10/19(水) 04:51:13
テスタ「たまには現在のブリジット視点というのも」

アバ「・・・学園祭で一度やってた」

テスタ「うむ。過去やるようなタイミングでもないし」

アバ「・・・遭難は諦めた」

テスタ「それは無理だった」

アバ「・・・技量不足」

テスタ「二年もやってるのに、一向に文章力とかが上がっている気がしないな」

アバ「・・・酒飲んでちゃね」

テスタ「やはりか」

アバ「・・・真面目にやってたら、少しは上手くなってたかも」

テスタ「素面でこんなの書く度胸はないがな」

アバ「・・・まあね」

テスタ「それはともかく」

アバ「・・・閑話休題」

テスタ「たまにはソルとブリジット以外の視点というのもやってみていいかもしれない」

アバ「・・・またできもしないことを・・・」

テスタ「酷いことを言う」

アバ「・・・事実」

テスタ「反論できない」

アバ「・・・遭難編を諦めたばかりなのに」

テスタ「申し訳ない」

アバ「・・・反省しなさい」

テスタ「・・・はい」

アバ「・・・よろしい」

テスタ「怒られすぎじゃないか?」

アバ「・・・そうでもない」

テスタ「そうか」

アバ「・・・うん」

テスタ「まあ、変なことするのはやめておこう」

アバ「・・・よしよし」

テスタ「飴と鞭か」

アバ「それでは今日はここまで」

770名無しさん:2011/10/29(土) 02:59:34
昼食も食べ終えた午後。
昨日と同じように、何することもなくレストハウスで時間を潰す。
もっとも、昨日は部屋を賭けた競争に参加させられたが。

「暇そうだね」
「何か用か」
「かわいい後輩君と楽しくお喋りしに」

コーヒーを飲んでいると声をかけられた。
許可も出してないのに、テーブルの向かいに座る。

「結構疲れる、スキーって。君にはどうってことないだろうけど」

慣れない動きをするからな。
生徒を見ても、昨日ほど元気のある生徒は減っている。

「楽しいんだけどね。まあ最後の修学旅行だし、こうして君と旅行の思い出を作るのも一興」

お前が一方的に喋っているだけで、会話になってないがな。

「少しは先輩を気遣ってほしいね、後輩君」
「断る」

コーヒーが無くなった。

「おかわりを持ってくるなら、ついでに私のも」
「断る」
「先輩のささやかなお願いさ。頼むよ」

それで動く俺ではないとわかっているだろう。

「コーヒーを一杯飲んだら、またゲレンデに戻るから」

それなら、さっさと戻ってもらおう。
コーヒーを二杯用意し、席に戻る。

「ミルクと砂糖は?」
「ある」
「わざわざ悪いね」

コーヒーを置き、椅子に座る。
砂糖とミルクをふんだんに入れている。

「よくブラックで砂糖もなく飲めるね」

昔からこれで飲んでるからな。
俺からすれば、砂糖とミルクを大量に入れ過ぎているコーヒーの方が飲みにくい。

「私は甘いのが好き。溶けきれなかった砂糖が底に溜まってるぐらいのとびっきり甘いのがさ」
「知っている」
「うん。でもなきゃ自分は使わないのに砂糖を何本も持ってこない。気が利く君は好きだよ」

そうか。

「ケーキも持ってきてくれたら言うことなかったけど」

そこまでする気はない。

「疲れた時の甘い物は格別に最高。そう思わない?」
「思わん」
「君に女心は理解できないか」

女心は関係ない。
疲労時の糖分の有効性は認めるが、最高と思ったことはないというだけだ。

「先輩として後輩にアドバイスをあげよう。甘い物と可愛い物が嫌いな女の子ってほぼいないから」

それがなんのアドバイスになるんだ。

「好きな子に近づきたいときは参考にするといい。ブリジットにも有効だと思う」

参考にならない。

「でももしかして、たくさん砂糖を持ってきてくれたのは私に近づきたいから?」
「違う」
「冗談冗談。それに、私もさすがに砂糖だけじゃ完全に落ちたりしない」

つまり、砂糖だけでも少しは揺れるってことか。
いいのかそれで。

「さて、と。コーヒーも飲み終わったしまた一滑り行ってくる。君もどう?」
「断る」
「わかってる。そうそう、我らが妹達がなんか企んでたよ。どうせ君も巻き込まれるから覚悟しておくんだ」

我らが、ということはディズィーもか。
ならば、部屋を賭けた何かをするのだろう。

「じゃあね。とても楽しいコーヒーブレイクだったよ」

どこを楽しんだのかはわからないが、そう言って去っていった。

771名無しさん:2011/10/29(土) 04:42:28
一人になり、コーヒーを飲む。
しばらくして、メイがやってくる。

「ソルーちょっとこっち来てー」
「断る」
「ディズィーが呼んでるよ!」

ディズィーに呼ばれ、ハウスを出る。

「何の用だ」
「今から雪だるま作り大会やるから、ソルは審判してよ!」
「お願いしますお兄ちゃん」

雪だるま作り大会。何をやるかははっきりしている。
というより、他の生徒達はすでに雪だるま作りに取り掛かっている。
だがしかし、

「審判がいるのか?」
「もちろんだよ!」
「皆さんが雪だるまを作りますから、お兄ちゃんが優勝者を決めてください」
「評価の基準はなんだ」
「お兄ちゃんに一任します。お兄ちゃんが優勝だと思った物が優勝です」

随分と曖昧で杜撰な審査内容だな。
俺の一存で優勝者が決まるのも、それで参加者に不満は出ないのか。

「ソルが決めるなら誰も文句なんてないから大丈夫!」
「そういうことですから、お願いしますお兄ちゃん」
「わかった」

好きにやれというなら、そうする。

「わかってると思いますけど、優勝の景品はスイートルームの鍵ですから」
「ああ」

わかっている。昨日のような運動勝負ではどうしても一部の連中しか勝てない。
これなら、一応全生徒にチャンスがあるというわけだ。それも俺の裁量次第だが。

「それでは、私達も雪だるま作りに行きますので、完成まで少し待っててください」
「制限時間はないんだな?」
「はい。皆さん自由に作って、完成したらお兄ちゃんを呼ぶことになってます」
「未完成の者がいても優勝を決めてもいいのか」
「お兄ちゃんにお任せします」

そこも自由裁量か。いいだろう。
後は、完成した物を見てから判断しよう。
完成まで、製作途中の雪だるまを見て回る。

「ソロソロ完成スルゾ!優勝ハ我輩ガ頂キダ!」
「ロボ先輩、どうしてカイ先輩の雪像を作ってるんですか?」
「ナニィ!?貴様ノ目ハ節穴カ!ドコカラドウ見テモ我輩ダロ!!」
「いや、わかんないです。でも凄くそっくりですよ、カイ先輩に」
「駄目ダ!!オリジナルノ雪像ナンテ駄目駄目駄目駄目駄目駄目ェ!!!」
「うわっ、何も壊さなくても・・・」
「オリジナルガ粉々ダ!ザマアミロ、ワハハハハハ!」

雪像は雪だるまに入れていいのか?
俺が有りだと言えば有りだが、それなら完成しても優勝はないな。

「二人とも、何作ってるアルカ?」
「KAMAKURAだぜ!」
「チップが作ってみたいって言うからよ」
「アイヤ、面白そうなもの作ってるアルナ」
「完成したら呼んでやるよ」
「優勝はもらうお崩れっ!?」
「おいチップ生きてるか?すぐ掘り出してやるからな!」
「・・・がんばれアル」

闇慈とチップ。午前中は遭難の疲労で寝ていたはずだが、起きてきたのか。
タフなやつらだ。

「ねーポチョムキン。ボクはもっと大きくしたい!」
「これ以上か?」
「うん!」
「しかし、すでに貴殿より大きい雪玉だが」
「でもポチョムキンより小さいでしょ?どうせならできるだけ大きくしようよ。目立つしさ!」
「ううむ、我々の力ならやれなくもないか・・・?」
「けってーい。もっと転がしていこー!」

まともな雪だるまを作ろうとしているやつが少ない。

「・・・ふぅ、これでよし」
「あなたは何をしてるのザトー?」
「む、イノか」
「さっきから何かを埋めてたようだけど」
「ああ・・・ヴェノムをな」
「あら、とうとう我慢できなくなっちゃったの?」
「テスタと落とし穴を作ったら、見事にヴェノムがかかってしまったので、ついな。さすがテスタの罠だ」
「だったら、埋めるだけじゃダメよ。墓標も作ってあげないと可哀想だわ」
「そうか。ならばこのまま雪で作るとしよう」
「手伝ってあげる」
「すまないな」

誰を優勝に選べばいいのか。

772名無しさん:2011/11/07(月) 03:05:00
雪だるま作り大会終了。

「さすが旦那、見る目があるぜ」
「アクセル、くれぐれも」
「わかってるってーの、カイ。それにめぐみ以外にも人がいるんだからさ」
「わかってるならいいのですが」

優勝はめぐみを含む女子の一団。
優勝理由は、最も雪だるまらしい雪だるまを作っていたからだ。

「めぐみ達もいいセンスしてるよな」
「まあ、これは可愛らしいですね。目には炭団、鼻は人参、帽子のバケツにマフラー、樹の枝の手に手袋。
 お馴染みの雪だるまですが、よく考えたら実物を作ったことも見たこともありませんでした」
「俺達が作るといつもおかしなもんになるからな」
「貴方は今回何を作ったんですか?」
「なんだろうな、あれ・・・」
「モチーフさえもわからないもの作るのはおやめなさい」
「ビーナス像作るのはどうなんだよ。ロボと変わんねえぜ?」
「失礼な。私は自分の雪像を作ったりなんかしませんよ」

随分と大会に時間がかかったが、それも終わりだ。
優勝賞品の鍵はめぐみに渡したし、ホテルに戻るか。

「やったー!やっと完成!やったねポチョムキン!」
「そうだな、これは苦労したかいがあったというもの」
「あ、ソル!ねえねえ見てよこれ。すごいでしょ!」

メイも今になって完成したのか。
目をやると、巨大な雪玉が2つ横に並んでいた。
顔もそれにあわせて作られてある。寝ている雪だるまということか?

「どうどう?」
「なぜ横にしている」
「だって、縦に置いたら下の雪玉が重さで潰れちゃうんだもん」
「2回、それを繰り返したのち、この重さを重ねるのは不可能という結論に辿り着いた」
「一回一回このおっきい雪玉を重ねるだけでもかなり大変だったのに、全部パーになっちゃうんだもん」

そういうことも考えてサイズを決めて作ればいいだけのことだが。

「仕方がないゆえ、こういう形に落ち着いた」
「これを縦に置けたら良かったのにね」
「また壊れるだろう」
「ちぇっ。それでソル、優勝はボク達だよね?」
「もうめぐみ達のグループに決まった」
「手遅れ!?」
「むぅ、致し方ない。時間をかけすぎたのが敗因だな」

時間内でも、これよりはめぐみ達に優勝を与えるがな。

「今日こそはスイートルームに泊まってみたかったのに。いいもん、明日は勝つから」
「頑張るといい」

メイ達から離れ、再び歩き出す。

「うおおっ!?」
「チップー!お前何度埋まれば気が済むんだよ!?」
「コノママ埋メテシマエ!」
「さよならチップ君」
「あちらにヴェノムさんもいますから寂しくありませんわ」
「いやいや、やめてあげないアルカ?」

またチップが雪に埋まっている。

「でもよ、多分カマクラ作る時間とこいつ掘り出す時間、あんま変わんねえぞ?」
「コノボンクラバカリ埋マッテルシナ!」
「今崩れたのはロボ君が無理に雪を取り除こうとしたせいだけどね」
「その前は確か御津さん担当の部分が崩れてましたわ」
「何してるアルカ」
「待ってろチップ。今助ける!」
「我輩ノセイジャナイガ今回ハ助ケテヤロウ。ハッハッハッ!」

あいつらもまだかまくらは完成しないらしい。
そして、その向こうにはヴェノムの墓がある。

「いい墓標ができた」
「彼も喜ぶでしょうね」
「・・・アーメン」
「ヴェノムさん・・・ウチがヴェノムさんの分まで愛を叶えますから!安らかに眠ってください」
「私もこの墓に誓おう。ミリアと幸せになると」
「・・・パラケルスと幸せになれますように」
「私は誰にしようかしら。そうね、あの御方だったら最高かも」

あの連中は何をやっているんだ。
放っておけばいいか。問題にもなるまい。

「見誤ったな!!」

一団を無視してホテルに足を向けたところ、後方からそんな声が届いた。

「おおヴェノム。安らかに眠れ」
「そうよ。化けて出る必要なんてないのよ?」
「・・・悪霊退散」
「もういいんですヴェノムさん。ゆっくり休んでください」
「死んでないぞ!ザトー様と添い遂げるまで私は死んでも死なない!!」

ホテルに戻ったら、早めに入浴するか。
今なら人も少ないだろう。

773名無しさん:2011/11/07(月) 04:24:27
入浴もすんだ。しかし、夕食まではまだ時間があるな。
特にやるべき仕事もないが。

コンコン

本を読んでいると、ドアがノックされた。
ドアを開け応対する。

「やあ、ソル君。こんばんは」
「何の用だ」
「君、暇そうだね。いつもそうだけど」

お前はかまくらを作っていたはずだが。
作るのを諦めたか、抜け出してきたか。どっちでもいいが。

「用件は」
「散歩のお誘い。夕飯まで時間があるからね」
「断る」
「ふぅん。ジャム君達とは散歩するのに、私は駄目なの?今から私とは散歩できない理由でもあるの?」
「いいや」

誰が相手でも断る。

「なら問題ないね。じゃあ行こうか」

上着を取り、部屋を出る。
階段を降り、ホテルも出る。

「闇慈君達はまだかまくら作ってるね。私は疲れたから抜けてきたけど」

いつまでやるかは知らんが、夕食までに戻っては来るだろう。

「さ、行こうか。君が通った散歩道でいいよ。案内よろしく」

散歩を始める。

「もう真っ暗だね。足下もよく見えない」
「気をつけろ」
「わお、お優しいことで。でも大丈夫だよ、何かあれば君が助けてくれるからね」

最初から俺頼みか。
とっくに日は沈み、月は雲に隠れ、街灯もまばらにあるだけ。
朝方の散歩はそれなりに薄明るいが、今はただただ暗い。

「曇りじゃなかったら月明かりで少しはマシだったかな?」
「あまり違いはない」
「かもね。でも、『月が綺麗ですね』ぐらいは言えたよ。ソル君が」

言わねえよ。
適当に話を返しながら道を歩く。

「君ってやっぱり夜目が効くの?」
「少しはな」
「私は無理。だから、今歩いてるのも結構大変なんだよ」
「だからなんだ」
「私に抱きつかれるのと、炎を出して明かりを作るの、好きな方を選んでいいよ」

手のひらから炎を出す。
これで足下もよく見えるだろう。

「・・・迷いないね」

抱きつかれては歩きにくい。今朝、腕を組んだ時も多少歩きにくかったのだ。

「少しは迷ったフリぐらいしてくれてもいいんじゃないかと思うんだけど」

だいたい、抱きつくという選択肢は、炎を出すという選択をしやすくするためだけのものだろう。
お前自身、俺が炎を出すことは予想して問いかけたはずだ。

「まあいいさ。明かりをありがとう」

俺としても、夜道を歩くのに明かりがあって困ることはないからな。
なくても歩けるのでわざわざ出すことはなかったが。

「この時間の散歩は失敗だったかな?景色も見えないし。朝はどうなの?」
「今よりは明るい。景色も見える」
「だよねえ。せめて曇って無ければ星が綺麗かもしれないんだけど」

今は曇り空だ。今夜は雪だろう。明日も天気が回復しない可能性は高い。

「それならそれで雪が少し降ってくれたら、少しは雰囲気出たかもしれないのに」

まだ雪は降っていない。

「私はツいてないね」
「また明日散歩しろ」

それだけのことだ。

「ソル君も付き合ってくるのかな?」
「断る」
「やれやれだぜ」

呆れたように肩をすくめる。

「ほら、君との散歩なんてこの一度しかないんだからね。ま、残りの道を楽しもうか」

それからも気が向いた時に話しかけられ、適当に返し、その繰り返しで散歩を終えた。

774名無しさん:2011/11/07(月) 04:44:22
テスタ「変なところで寝るとその後がつらい」

アバ「・・・よくある」

テスタ「ついでに言うともうこの修学旅行早く終わらせたい」

アバ「・・・いつものこと」

テスタ「イベントやる時はいつも最初だけやる気出て、展開に詰まったら早く終わらせたくなる」

アバ「・・・お馴染みのパターン」

テスタ「やる気を保つために、この修学旅行はJF成分多めでいくことに」

アバ「・・・今回とか」

テスタ「誰も文句言ってこないし問題ないよな」

アバ「・・・うん」

テスタ「自由にやって好きに進めて適当に終わらせる」

アバ「・・・いつも通り」

テスタ「残りもがんばろう」

アバ「・・・おー」

テスタ「それでは今日はここまで」

775名無しさん:2011/11/11(金) 03:13:27
部屋の外に気配を感じ、目が覚めた。

コンコン

そして、ノックの音。

「おっはよーソルっち」
「何の用だ」
「散歩に行きたいんだけどさ」
「勝手に行け」
「外見て外。結構雪が降ってるでしょ?だから傘を貸して欲しくて」

窓の外に目を向ける。
昨晩から雪がちらついていたが、今は本格的に雪が降っている。

「ソルっちなら用意してるよね?貸してくれない?」
「断る」
「ええー。こんな雪の中を傘も差さずに歩いたら風邪引くかもしれないじゃん」

散歩をしなければいい。

「こんな雪って地元じゃ経験できないからさ、せっかくのチャンスだよ。
 貸してくれないなら傘無しで行くけど、風邪引いたらソルっちに責任とって看病してもらうからね」
「待て。わかった」

荷物から折りたたみ傘を取り出す。

「ありがとう。でもやっぱり小さいね。二人入れる?」
「一人で行け」

当たり前のように俺も行くことにするな。

「まさか。ソルっちだってもうわかってるでしょ。こうなったら逃げられないよ?逃さないよ?
 行こう!ねっ!散歩行こうッ!」

俺が行くと言うまでつきまとう気か。それも鬱陶しい。

「準備するからちょっと待て」
「おっけー」

着替え等を済ませ部屋を出る。

「雪の中の散歩ってのも乙なもんだよ、多分」

これで三日連続。夜も含めれば四度目の散歩だ。
ホテルを出る。

「おおう、結構降ってるね。傘お願い」

傘を広げる。

「あれ、でも道路は雪積もってないんだね」
「除雪設備が整ってるからな」
「これなら歩くのは問題ないね」
「滑る。気をつけろ」
「アイサー」

雪の降る中を歩く。

「道路以外は結構積もってるね」

一晩中降っていたみたいだからな。

「なんていうか、あのまっさらな雪原にダイブしてみたくならない?」
「ならん」
「未踏の大地に自分が最初に足跡つけるみたいな?そんな感じ。わかんない?」

何をしたいかはわかるが、それを自分がやりたいとは思わない。

「ちょっと行ってくる!」

言うやいなや、傘から飛び出し、雪の中を走り、そして積もった雪に飛び込んだ。
それから少しして立ち上がり、戻ってきた。

「ただいま!」

満足したようだ。

「ソルっちもやってみたら?楽しいしテンション上がるよ」
「断る」
「もったいないなー」

興味がわかない。

「でも寒いし一回やれば十分かな。うん」

雪まみれだ。払って落とす。

「うひゃ!?あ、ありがと」
「風邪をひくなよ」
「それなら大丈夫。バカは風邪をひかないって言うし」

そんな迷信は信じていない。

776名無しさん:2011/11/11(金) 04:08:11
雪が少し強くなってきた。

「あのさソルっち。このまま雪が強くなったら、今日のスキーはどうなるの?」
「これ以上雪が強くなれば中止だ。リフトを止める」
「あ、そっか。そこが止まったら昇れないもんね」

また遭難者を出すわけにもいかない。
遭難しても大丈夫な連中ならともかく、一般生徒を危険な目には合わせられない。

「そしたら今日はどうするの?ホテルで過ごすだけ?」
「そうなる」
「じゃあさ、そうなったらソルっちの部屋に遊びに行くね」
「断る」
「遊び道具なら持ってきたから、心配ないよ」

そんな心配はしていない。

「でも、スキーができないのも残念だな。こんな雪の中でリフトに乗るのも面白そうじゃない?」

そういうアトラクションじゃない。

「どっちでもいいや。どっちも楽しみだから」

気楽なものだ。
雪がまた少し強くなった。

「さむっ!」

風も出てきた。

「なんか冗談じゃなく寒くなってきてない?」

雪が降り風が吹けばそうも感じる。

「あとどれくらい歩くの?」
「帰りたいなら、すぐに戻る道はある」
「普通に歩けば?」
「今、半分を少し過ぎたところだ」
「まだそれだけしか歩いてなかったんだ」

雪で歩みが遅くなってるからな。

「どうしよっか」
「好きにしろ」
「ソルっちが選んでいいよ?」
「なら、散歩をやめてホテルに戻る」
「ありゃ、疲れたの?」
「お前がな」

俺は問題ない。
しかし、お前はもう半分歩かせると、朝食時間を過ぎるかもしれない。
それぐらいなら大したことはないが、この寒さの中無理をさせて風邪をひかれても厄介だ。

「あたしのため?あはは、それは照れるな」
「戻るぞ。こっちだ」
「はいはい」

道を変えホテルに戻る。

「結構雪被っちゃったね。温泉入れたらいいのに」
「ああ、いいぞ」
「え、いいの?」

原則朝風呂は禁止してるが、教師の許可があれば問題ない。

「他の子誘ってもいい?」
「好きにしろ」
「一体どうしたのさソルっち?優しすぎて不気味なんだけど」
「お前が風邪をひく一歩手前だからだ」

さっきから寒さで少し震えている。
もうホテル内だというのに。

「十分に暖を取れ」
「ん、ソルっちがそう言うなら。心配してくれてありがとね」

お前が風邪をひけば、看病するのは俺になるからな。
予防できるならするに越したことはない。まだ間に合う。

「じゃあね。また後で」

別れる。部屋に戻るか。

「ソールーさーんー」

ブリジットが現れた。

「なんですか?なんなんですか!?なにしてるんですか!」
「うるさい」

お前が何をしている。

「ウチは抗議します。ウチとも散歩してください!今から!今すぐ!!」
「断る」
「なんでですか!?」

何故俺がお前と散歩しなければならない。

777名無しさん:2011/11/11(金) 04:56:56
「ウチだってソルさんと散歩したくて頑張って早起きしたんですよ?
 なのに、ソルさんの部屋に行ったらもういなくなってるなんて酷いです」

俺の知った事ではない。

「ウチとも散歩に行きましょうよ。雪が降る中のデートなんてロマンチックじゃないですか」
「断る」

散歩なら今行ってきたばかりだ。

「早い者勝ちなんて聞いてませんよ。それならウチは明日のソルさんと一緒にお散歩権を今から予約しておきます!」

そんなものはない。

「いいですかソルさん?明日はウチとデートですから」
「断る」

その気はない。

「さっきから、何を騒いでいるのかしら?」
「あ、おはようございますミリアさん」
「おはようブリジット。ついでに、ソルも」
「ああ。おはよう」
「ハッ!そういえばウチはソルさんにおはようのキスをしてませんでした!ソルさん、おはようごジャヒ!?」

飛びついてきたブリジットを叩き落す。

「貴方達、さっきから何してるの?」
「いたた・・・。それが聞いてくださいミリアさん。ソルさんがひどんです」
「ソルが酷いのは前からでしょう?」
「そんなことはわかってます。だから、今回もいつも通りひどいんです!」
「ソル。貴方、ブリジットからもこんな目で見られてるのね」

それがどうした。

「ソルさんが、ウチ以外の人とは散歩するのに、ウチとはしてくれないんです。ひどいと思いませんか?」
「散歩?ああ、そういうことをしてるって噂は聞いてるわ。相手を取っ替え引っ替えだそうね」

それは間違ってないが、語弊がある。

「だからウチとも散歩してくださいとお願いしたのに、ウチとは駄目だって言うんです」
「嫌われてるわね」
「嫌われてません!!ただ、ウチと散歩してくれないだけです」
「・・・そう」

確かに、ブリジットを嫌って断っているわけではないが。

「落ち着いてブリジット。ソルが頼みごとを断るなんていつものことでしょう?」
「それはそうですけど」
「多分、私が散歩に誘っても断られるわ。だから、そんなに気にすることじゃないと思うわよ?」
「・・・・・・・・・・・・そうですね」
「なによ、今の間は」
「いえ、ミリアさんならもしかしたらあっさり承諾されるんじゃないかと思っただけです」
「まさか・・・」

そんなことはない。

「考え過ぎよ、ブリジット。ほら、そろそろ朝食の時間だし、食べに行きましょう」
「あ、もうそんな時間ですか。ではソルさん、明日の散歩楽しみですね!」
「行かん」

勝手に約束したことにするな。

「ねえ、ソル」
「なんだ」

ミリアが残り、声をかけてきた。

「もし、もし仮に、万が一何かの間違いで私が貴方を散歩に誘ったとして、貴方はなんて返答するかしら?」
「断る」
「・・・そうよね。ええ。もちろんわかってたわ。それじゃ、私も食堂に行くから」

ミリアもブリジットを追って行く。
俺は一旦部屋に戻るか。傘も置かなければならないしな。

778名無しさん:2011/11/11(金) 05:05:36
テスタ「全力でJF」

アバ「・・・贔屓はほどほどに」

テスタ「正直に言うと、『ソルっち』の少女を書くのが一番楽しい」

アバ「・・・ブリジットやミリアよりも?」

テスタ「その二人が特に書きづらいというわけではないんだが」

アバ「・・・JFが好きだから」

テスタ「それはあるな」

アバ「・・・ネタも使えるから」

テスタ「それも少しあるな」

アバ「・・・多分通じてない」

テスタ「自己満足でいい」

アバ「・・・そう」

テスタ「『ソルっち』以外でもJF2年生組は気に入ってる」

アバ「・・・メアリ・スー万歳」

テスタ「名前がなくてもなんとかなるものだしな。多分」

アバ「・・・ね」

テスタ「それでは今日はここまで」

779名無しさん:2011/11/16(水) 02:58:24
せっかくの修学旅行なんだし、ブリジットとソルの絡みをもっと見てみたいなぁ

780名無しさん:2011/11/18(金) 04:11:45
朝食後。スレイヤーの部屋にて職員会議が行われる。

「随分と雪が降っている。風も強い」
「これじゃスキーどころじゃないですね」
「また遭難者を出すわけにもいかないでしょう」
「となると、今日は一日ホテル内で過ごすことになるか」
「お前さんの天気予測はどうなんだ、ソル?」
「午後からは弱まる可能性がある」
「ふむ。では午前中はホテルで過ごすように。午後は天気を見てから再考する旨を生徒に通達しよう」

話は終わりか。

「ああザッパ、君に少し聞きたいことがある」
「僕ですか?何か?」
「昨夜、深夜に廊下に出ると幽霊らしき物を見たという生徒がいた。心当たりはあるかね?」
「いえ、昨夜は就寝時間になってすぐに寝ました」
「それから起きてないのかね?今朝起きた時はどうだったかな」
「朝まで目を覚ましたことはありません。朝は寝違えたせいか、身体が少し痛かったですが」
「・・・そうか。もういいぞ」

それで解散となる。
廊下に出る。部屋に戻るか。

「ソルさん!こんなところで会うなんて偶然ですね!」
「あ、おはよーソル」
「おはようございますソル先輩。今日はどうなったんですか?」
「午前中はスキーは禁止だ。ホテルで過ごせ。午後は天気を見てまた決める」
「そうなんだ。じゃあみんなにも教えてあげないと。ボク行ってくる!」
「この雪じゃ仕方ないよね。そんな中、姉さんとデートした人がいるらしいですけど」
「ソルさん!今からウチと出かけましょう!!」
「断る」

部屋に着いた。鍵を開け中に入る。

「スイートルームに比べたらやっぱり狭いですね。一人部屋だし」
「ソルさん、今日はウチと同じ部屋で寝ませんか?なんなら、ウチがこの部屋に来ますよ?
 ベッドは一人用の大きさですけどウチとソルさんなら何も問題ないですよね!」
「出て行け」

勝手に入ってくるな。

「あ、ソル先輩はブリちゃんと二人きりになりたいんですか?それはすみませんでした。おじゃま虫は消えますね」
「もう、ソルさんってば焦らなくても大丈夫ですよ。ウチはいつでもソルさんの側にいますから!」
「お前もだ」

二人共出て行け。騒がしい。

「えー、いいじゃないですか。どうせやることなくて暇なんですから」
「ウチとホテル内デートにでも行きませんか?」
「断る」

お前らの相手をする気はない。
本を取り出す。

「うわ、暇潰しなら私達の相手でもしてくださいよ」
「そうですソルさん。愛の言葉を囁きあうとか楽しいですよ、やりませんか?」
「ブリちゃん、それ私がついていけない」
「あ、すみません」

うるさいのを無視して読書する。
と、ドアがノックされた。

「はい、今開けます」

勝手に応対するな。

「あ、おはようございますザトーさん、ヴェノムさん」
「おはようブリジット。ソルはいるかな?」
「はい。ソルさんなら読書しています」
「失礼する」
「お邪魔する」
「どうぞです」

狭い部屋に人が増える。

「ソル先輩。今のソル先輩は、奥さんに玄関の応対を任せて自分は趣味に没頭する旦那さんみたいです」

勝手なイメージをつけるな。

「当然です!ウチはソルさんの良き妻ですから!」
「ほほう、すでにそこまでの関係になったかブリジット。私も見習わなければな」
「ザトー様、雑事は全て私にお任せください!」
「この話は置いておこうかヴェノム」
「何の用だ」

用があって俺を訪ねたのだろう。
早く用件を言え。

「ああまず、めぐみからこれを預かった。貴様に返しておこうと思ってな」

鍵を渡される。これは、スイートルームの鍵か。

「相当に満足していたようだ。今夜こそは私がその鍵を得てみせよう」
「お任せくださいザトー様!二人の夜のために、このヴェノム全力を尽くします!」
「させませんから!今夜はウチとソルさんの番です!」

騒がしい。

781名無しさん:2011/11/18(金) 05:05:20
狭いうえに騒がしい。
早く出て行かないものか。

「でも、次はどうやって決めるんですか?体力勝負だと、私なんかザトー先輩達には太刀打ちできないんですけど」
「うむ、それが問題だ。私とて、不公平な決め方をする気はない」
「じゃあ、どうやって決めるんですか?」
「それはソルが考える」

急に話を振られる。

「断る」
「何を言う。貴様に拒否権はない。いや、拒否するというのなら、今夜は部屋を移動しスイートルームに泊まれ」
「ウチはそれでも全然構いませんよソルさん!!」

なぜそうなる。

「まったく、貴様はスイートルームに興味がなかろうが、他の生徒達にとってはそうではない。
 ならば、その権利を使わないというのであれば他の誰かに譲りたまえ。これは生徒会長命令だ」
「ザトー先輩滅茶苦茶言いますね」
「生徒会長ってそんなに偉いんですか?」
「生徒会長が偉いのではない。ザトー様が偉いのだ」

強引なことを言う。
しかし、生徒会長命令ならば仕方がない。生徒として従おう。

「あ、言うこと聞くんだソル先輩。そういうところは正直、尊敬します。結構本気で」
「普通こんな命令聞けませんよね」
「私とて、普通こんな命令出したりしない。ただの暴君では生徒会長は務まらんよ」

俺相手だからというわけだ。

「とにかく、その鍵を賞品とした企画を考えてくれ。なるべく全生徒が公平に戦えるようなものをな」

面倒な注文をする。

「宝探しだ。鍵をホテル内のどこかに隠す。見つけた奴が勝ちだ」
「・・・もう思いついたか。ああ、それは悪くないな」
「それなら私にもチャンスがありますしね。大丈夫です」
「女湯等、性別的に進入不可の所に隠すのはなしだぞ?君ならわかっていると思うが」
「ああ」

当然だ。

「フフフフフ、これはウチが勝ったも同然です!」
「大した自信だねブリちゃん?」
「当然です。ウチは誰よりもソルさんのことを知ってます!
 ソルさんが鍵をどこに隠すかぐらい、ウチの愛があれば一瞬でわかりますよ!」
「む、それは確かに脅威だな」

隠し場所は考えなければならないな。

「でも、それならジェリーフィッシュも負けてないよ?こっちは人海戦術使えるし」
「ソルさんへの愛にかけてウチが勝利します!そして、ウチが勝ったら今夜はスイートな夜ですよソヴッザ!?」
「全生徒に告知し、部屋に戻らせろ。隠している所を見られては勝負にならない」
「そういうのはジェリーフィッシュにお任せあれです」
「頼もしいな。任せよう」
「開始の合図はどうしますか?」
「ソル、隠すのにどれくらい時間がいる?」
「半時あればいいだろう」
「では半時後にゲームスタートだ。ジェリーフィッシュ連絡網、頼んだぞ」
「了解です。行ってきます」
「我々も部屋に戻っておこう」

全員が部屋を出て行く。

「ソルさん!絶対にウチの愛で鍵を見つけてみせますから!!」

さて、隠しに行くか。
部屋を出る。廊下にはすでに誰もいない。

そして半時後、時間になり、宝探しが始まる。
ロビーにある椅子に座り、様子を見る。
生徒もやってきて、鍵が隠されていないか周囲を物色し始める。

「あ、ソル。また面白いことを始めたアルナ」

紗夢がやってきた。

「どこに隠したか、コッソリ教えてくれないアルカ?」
「断る」
「やっぱり駄目アルカ」

当たり前だ。

「ンン・・・ソルが隠し持ってるなんてことはないアルヨナ?」
「ああ」
「それは良かったアル。ついでに、ちょっと立って欲しいアル。座ってる所に隠してないか探すアル」

立ち上がる。
紗夢は鍵がないか探していたが、ここにはないと判断したようだ。

「ないアルナ。他を探すアル」

その後も数度、他の生徒達から紗夢と同じ事を尋ねられた。

782名無しさん:2011/11/18(金) 06:23:00
宝探しが始まってしばらく経ったが、まだ見つかったという声はない。

「おかしいです・・・ウチが見つけられないはずないです。一体どこに隠したんですかソルさん」
「もう結構な場所探したわよね?そっちはあった?」
「どこかで見落としたのかな?お兄さんだからあんまり凝った隠し方しないと思うんだけど」

どうしても見つからない場所に隠したということもない。
となれば、探しても見つからない理由は一つだ。

「あの、バッドガイ君。ちょっといいかな?」
「ああ」
「えっと、できれば人がいない所で話したいの」

こいつか。俺の部屋に移動する。

「お邪魔します。あのねバッドガイ君、私、どうしよう?」
「見つけたと言えばいいだけだ」
「そうなんだけど、今更だとちょっと言い出しにくいの」
「いつ見つけた」
「え?始まってすぐ、かな。最初に探しに行った場所にあったの」

それはさすがに早い。

「バッドガイ君だから、高い所とか狭い隙間とか、人によっては探しにくい所に隠すなんてしないし、隠すなら誰でも探せる凄く簡単な場所なの。
 でも、それだとすぐに見つかっちゃうから、少し工夫して一見だと見つからない隠し方をすると思ったの。
 でもそれをバッドガイ君が本気でやったら誰にも見つからなくなるから、私でも見つけられるような方法のはずだと思って。
 それで鍵はすぐ見つけたんだけど、そこで見つけたって言ったら、ゲームはすぐ終わっちゃうし、早すぎてなんだかズルしたみたいなの」

ズルなんてしてないし俺と共謀していたわけでもない。
その時点で見つけたと言うべきだった。

「だから、ちょっと経ってから言おうかなって思ったんだけど、ブリジットさんやキスク君達も同じ所を探してて。
 どこにあったかを聞かれたら、見つけた場所を答えられなくなっちゃったの・・・」

それでどうしようもなくなって、俺に相談か。

「今のを正直に言え」
「・・・やっぱり、それしかないかな?」
「文句を言うやつもいない」

見つけたのがお前なら、全員納得するだろう。

「うん。みんなに言ってくるの。ありがとうバッドガイ君」

そう言って部屋から出て行く。
しかし開始早々に発見されるとは、完全に読まれていた。
それなりに見つけにくい隠し方をしてはいたはずだが、意味がなかった。

部屋から出る。

「よお旦那。聞いたぜ、宝探しが始まって速攻で見つけられてたんだって?」
「ああ」
「俺もそこ探したけど、一足遅かったみたいだ。惜しかったなあ」

やはりアクセルも探していたか。

「こういう時の旦那はわかりやすいからな。まああいつの方が上手だったってことさ。仕方ねえ」

もう少し隠し方を考えるべきだったか。

「次をがんばるだけだね。ところで旦那、昼飯食いに行こうぜ」

もうそんな時間か。

「そういや雪は小降りになってきてる?どうなのよ旦那。午後は外に出れそう?」

外を見る。
この天候なら、スキーをしても大丈夫だろう。

「問題ないだろう」
「そりゃ良かった。明後日には帰るんだし、今のうちに存分に楽しまないとな」

そろそろ修学旅行も終わりか。

「ってことは、スイートルームの鍵を得るチャンスは明日が最後?うーん、一度くらい本気出してみよっかな」

食堂に着く。

「ソルさん、ごめんなさいです。ウチは負けてしまいました。ウチの愛が届きませんでした・・・」
「運が悪かっただけでしょ、ブリジット。さすがにお姉さんもすぐに見つかるとは思ってなかったみたいだったし」
「ブリジットさんも早めに探しに行った場所じゃないですか。ただ、部屋の位置的に最初に探しに行けなかっただけだと思います」
「それでもウチは勝ちたかったんです。うう、明日のラストチャンスは何が何でもウチは勝ちにいきます!」
「がんばってくださいね」
「ボク達だって負けたくないもんね。結局まだあの部屋には泊まれてないし」

明日はどのような方法が用いられるのか。

783名無しさん:2011/11/18(金) 06:34:35
テスタ「実に4ヶ月ぶりの客だ」

アバ「・・・まだいたんだね」

テスタ「我々以外が書きこんだら負けというルールでもあるのかと考えたくなるな」

アバ「・・・次は半年後」

テスタ「それにしても、この4ヶ月で80ほどしか進んでいない」

アバ「・・・スローペース」

テスタ「1050まで行くのにどれだけかかることか」

アバ「・・・完結しそうにない」

テスタ「まさか1スレかけて未完結という事態になるとは予想外」

アバ「・・・びっくり」

テスタ「まあやれるだけやろう」

アバ「・・・のんびり」

テスタ「それでは今日はここまで」

784名無しさん:2011/11/26(土) 02:51:54
昼食後。ホテル内を見回る。

「ソルさん!ウチの部屋に来るなんて、とうとうウチにプロポーズしに来てくれたんですか!?」
「違う」

部屋から出てきたブリジットに遭遇した。

「じゃあ、ウチに会いに来たんですか?何かご用でしょうか?デートの誘いならいつでもOKです!」
「違う」

午後になり天気が少し回復したが、初心者には大変だろうという判断の元、
スキーをしに外に出る生徒、ホテル内に残る生徒に分かれた。
俺は、スレイヤーからホテルの見張りを任されたので、ホテル内を巡回している。

「見回りですか?ソルさんはこんな時もお仕事ですか。お疲れさまです」

階段を昇り見回りを続ける。

「そういえばソルさん、すみませんでした」
「なにがだ」
「ソルさんが隠した鍵を、ウチは一番に見つけることができませんでした。あれだけ大きく宣言したのに・・・」

俺に謝ることでもない。

「ウチの愛はまだまだ足りないんでしょうか」

お前が鍵を見つけたところで、同室で寝泊まりすることはない。

「あら、貴方達がこんなところで何をしてるのかしら」
「こんにちはですミリアさん。見ての通り、デートしてます」

してねえよ。

「ホテル内の見回りかしら?修学旅行というのに、貴方も大変ね」
「ミリアさんは外に出ないんですか?」
「ええ。今日は身体を休めるわ。慣れないことをして疲れてるもの」

この階も問題なし。
そもそも騒ぎを起こしそうな連中の多くは外出しているので、あまり問題など起こらないだろう。
再び階段を昇る。

「そういう貴方はどうして残っているのかしら?」
「ウチは宝探しに負けたショックで、スキーをやる気分じゃないんです」
「そう。そういう時こそ、スポーツでストレスを発散させるのがいいんじゃないかしら?」
「・・・そういう考えもありましたか。でもいいです。ウチはソルさんに会えたから完全回復しました」
「気楽なものね」

何故こいつらは俺に付いてくるんだ。

「本当に落ち込んでたんですよ?ウチがソルさんの考えを読むゲームで負けたんですから!」
「宝探しでしょう?」
「宝探しとは言いますが、実際は『ソルさんならどこにどうやって鍵を隠すか』を考えるゲームです」

そうなるな。
わかっていたか、ブリジット。

「まあ、そうね。鍵を見つけた彼女はソルの思考を読みきってすぐに見つけていたものね」
「う・・・ウチだって、ウチだってソルさんの考えそうなことは大体わかっていたんです!」
「でも負けたじゃない」
「だから落ち込んでたんじゃないですか。ミリアさんはウチをイジメてるんですか?」
「ごめんなさい。そういうつもりはないわ」

俺からすれば、探すやつの考えを読んで裏をかき鍵を隠す、というゲームだった。
とはいえ、本当に誰にも見つからない隠し方をしてはゲームにならないので、ある程度で妥協はした。
その妥協点を読みきられたせいで、すぐにゲームは終わってしまったが。

「しょうがないんじゃないかしら?ソルと付き合いが長いのは貴方だけじゃないでしょう?」
「そうですけど、そこは愛でカバーです!」
「できなかったじゃない」
「ソルさーん!ミリアさんがウチをイジメるんです!ウチを優しく慰めるか黙って抱きしめるかしてください!」
「うるさい」

ブリジットを追い払う。

「ミリアさんにイジメられソルさんに冷たくされ、今日のウチは運勢最悪です」
「私はともかく、ソルはいつも通りじゃない」
「そんなことありません。恋愛運がいい日は、ソルさんがウチを殴らなかったりするんですよ?」
「・・・恋愛運ってそういうものだったかしら」

最上階まで周り、見回りを終える。
現状は問題なしだ。時間を置いてまたあとで見回るとしよう。

「あ、ソルさん下に戻るんですか?だったらウチと一緒に優雅なアフタヌーンティーでもどうでしょう?」
「断る」
「雪が降って寒いものね。私も一緒していいかしら?」
「もちろんです。行きましょうソルさん!」

階下に戻る。

785名無しさん:2011/11/26(土) 04:30:30
食堂。

「紅茶を持ってきますね。ソルさんにはコーヒーを」

ブリジットが飲み物を用意する間に、テーブルに着く。

「甲斐甲斐しいわねあの子は。貴方、あんなに懐かれてるのに、なんとも思わないのかしら」
「思わん」
「薄情ね」

お前に言われることじゃない。

「少しは優しくしてあげてもいいんじゃないかしら?」
「断る」
「どうして?」
「そうする理由がない」

必要があればする。あるいは俺がそうしたいと思った時。
今はどちらもない。

「人並みに優しくするだけでいいのに、貴方も困ったのもね」

なんとでも言え。

「お待たせしました!ソルさん、ウチの愛が詰まったコーヒーをどうぞ」
「私の紅茶には愛は入ってないわよね?」
「当然です。ウチの愛はソルさん専用です」
「貴方が淹れたわけでもないでしょうに、違いがわからないわ。まあいいわ、ありがとうブリジット」

コーヒーを受け取る。

「貴方も躊躇ないわね。ブリジットの愛を受け取るわけ?」
「そうなんですかソルさん!?とうとうウチと結婚してくれる気になりましたか!!」

なってない。
実際に何か入っているわけでもない。愛なんて気にしていない。

「ブリジットは少し気持ちを抑えた方がいいんじゃないかとたまに思うわ」
「そうですか?こういうのはやられる前にやれですよ」
「貴方はとっくにやられているんじゃないかしら」

これを飲み終えたら部屋に戻るとしよう。

「なんだかミリアさんがいつにも増して厳しいんですけど、何かありました?」
「そう?別に何もないけど」
「そうですか?・・・ウチの気のせいでしょうか」

カップが空になった。
席を立つ。

「あれ、ソルさんはもう飲み終わったんですか?」
「ああ。部屋に戻る。何か問題があれば呼びに来い」
「わかりました。ソルさんに会いに部屋に行きます」
「来るな」

そんな理由で。

「ソル」
「なんだ」
「まだ入浴時間じゃないけど、せっかく時間があるから温泉に入りたいのだけど。貴方の許可があればいいのかしら?」
「好きにしろ」
「あら、ありがとう。断られるかと思ったわ」

そこは教師の仕事だ。生徒の要望なら多少の融通は利かせる。

「ソルさん、一緒にお風呂に行きましょう!ここの露天風呂は景色がいいんですよ?昼間なら尚更です」
「雪が降ってるわよ。まあ、それも一つの風情かしら」
「ソルさんのことですから、どうせまだ一度露天風呂は利用してませんよね?丁度いい機会です。ウチと一緒に裸の付き合いをしましょう!!」
「断る」

露天風呂に入ってないのは事実だが、入る理由もない。
それに見回りがある。仮になくてもブリジットの頼みごとを聞く気はないが。
ブリジット達と別れ、部屋に戻る。

「ソルっちどこにいたのさ。遊びに来たよ」
「こんにちはお兄さん」

部屋の前に人がいた。
丁度いい。連絡役に使うか。

「お前達、時間外だが入浴を許可する。昼間の露天風呂を楽しみたければ入るといい。この事を、ホテル内にいる連中に伝達しろ」
「え?いきなりなに?どしたのさソルっち」
「お兄さん?ええと、お風呂に入っていいと、皆さんに伝えればいいんですね?わかりました。お姉ちゃん、お風呂行く?」
「私は朝入ったからまだいいかな。よくわかんないけど連絡係は任された。
 皆に教えてくるね。代わりに、その後遊び相手になってもらうからねソルっち」

二人が連絡に向かう。こういう時は便利な連中だ。
遊び相手にならなければいけないが。

786名無しさん:2011/11/26(土) 04:46:56
テスタ「要望に応えようとブリジットを中心に出してみたが」

アバ「・・・みたが?」

テスタ「こんなんだったっけ?という疑問が」

アバ「・・・不安」

テスタ「なにしろ変態で純愛で行き過ぎた愛情表現なキャラだから」

アバ「・・・これでいいのかと」

テスタ「未だにブリジット書くときはわけがわからなくなる」

アバ「・・・でも一応メインヒロイン」

テスタ「これが滅多に出てこないサブキャラレベルなら対して困らなかっただろうに」

アバ「・・・問題が山積み」

テスタ「本当にどうしよう」

アバ「それでは今日はここまで」

787名無しさん:2011/11/30(水) 02:27:17
鰤とソルのデートが見てみたいなw
罰ゲームとかで無理矢理言うこと聞かせればソルは仕方なくデートしそうな気がするしw
鰤の純粋さや可愛さが、きっと性別の壁とかソルの冷たい心も突破してくれると信じてる!

788名無しさん:2011/11/30(水) 03:36:21
夕食後。

「お兄ちゃん、一緒にお散歩にでも行きませんか?」

ディズィーにそう誘われた。

「ああ」

妹の誘いだ。乗ってやる。

「ありがとうございます。では行きましょうか」

ホテルを出る。

「お兄ちゃんは何度も散歩をしているんですよね?コースはお任せします」
「ああ」

いつも通りの道を歩き出す。

「暗いですね」
「夜だからな」

とはいえ、すでに雲は晴れて月が出ている。
昨日に比べれば随分と明るい。

「月が綺麗ですね」

月明かりで道も見える。これなら炎も必要ない。
しばらくディズィーと並び、散歩道を歩く。

「気になってたんですけど、うちにいる仔猫さん達は大丈夫なんでしょうか?」
「ああ。問題はないはずだ」
「お兄ちゃんがそういうなら安心です」

明後日には家に帰る。
この程度の期間なら家を不在にし、猫だけにしても問題はないようだ。
帰ってから掃除をする必要はあるだろうが。

「雪景色も綺麗ですよね。こんな景色、私は初めて見ました」

基本的に旅行には行かないからな。ジェリーフィッシュ共とどこかに行くことはあるようだが。
俺とてディズィーが望むなら、いくらでも連れていってやるが、ディズィーからそんな頼みをされたことはない。

「旅行に行きたいのなら言え」
「そうですね。でも、どうせ行くなら私とお兄ちゃんとだけじゃなくて、お友達の皆さんとも一緒に行きたいです」
「構わん」

その程度、どうということもない。

「でも大丈夫ですよ?私は、お兄ちゃんが行きたくもない旅行に連れて行けなんて言いませんから」
「そうか」

随分と兄思いだ。

「はい。家の中で思いっきり我侭を聞いてもらいます」

好きにすればいい。聞ける我侭なら聞いてやる。
ミリアを居候させる以上の我侭がそうそうあるとも思えないがな。
ディズィーは普段は大人しく、我侭を言わない性格なのだから。

「例えば、ブリジットさんとも一緒に暮らしたいなんてどうでしょうか?」
「断る」

あいつを家に置く理由がない。

「そこだけは譲らないんですね」
「いいや。家に置くだけの理由があれば構わない」

例えば、住む家が無くなったとかな。
ミリアの時も寝床を無くして家に来たのだ。

「ブリジットさんの家を焼き払ってしまいましょうか」
「やめろ」
「冗談です」

笑いながらとんでもないことを口にする。

「そんなことをしたらブリジットさんに怒られますからね」

そんな問題じゃない。
その後もディジーと会話をしつつ歩き続け、ホテルに戻ってくる。

「お兄ちゃん」
「なんだ」
「明日、一緒に滑りませんか?ずっとじゃなくていいんです。少しの間だけでも」
「ああ。いいぞ」

望むのなら、一日中でも。
もっとも、ディズィーはそこまで俺を拘束しないだろうが。

「ありがとうございます。それじゃ、私は部屋に戻ります。おやすみなさい」
「おやすみ」

ディズィーと別れる。
風呂に入るか。

789名無しさん:2011/11/30(水) 05:22:50
風呂場。

「君も一杯どうだ」
「断る」
「細かいことを気にするな。こんな時に飲む酒はまた格別というもの。君も味わうといい」

スレイヤーがぐい呑みを渡してくる。
それを受け取り、飲み干す。

「いい飲みっぷりだ。どれ、もう一杯いかがかね」
「いらん」
「たまには私に付き合いたまえ。それとも他の酒が所望かね?」

ただ興味がないだけだ。

「いいワインがあるぞ。明日の夜のために取っておいたが、まあ一本ぐらいいいだろう。
 私の自慢のコレクションの一品でね。これほどビンテージ品を揃えている者はそうはいないと自負している」

吸血鬼なら、それぐらい集めるのは簡単だろう。
スレイヤーがマントからワインとグラスを取り出し、注ぎ、俺に渡してくる。

「温泉の熱で温くなる前に飲むといい」

グラスを受け取り、飲む。

「私もいただこう。サイドディッシュも必要だな。チーズでいいかね?」

返答もしていないのに、チーズを取り出す。

「ああ、極楽だ。露天風呂 遥かに望む 雪景色」

しばらくスレイヤーに付き合い、酒を飲む。
少しして、人がやってきた。

「先客がいたか。失礼」
「ああジョニー、君も一杯どうかね?」
「おっと、それでは遠慮無く」
「君はウイスキーが好みだったかな?」
「お構いなく。開いているのがあるならそれをもらおう」

マントから更に取り出したグラスに、ワインが注がれる。

「ところで、お前がスレイヤーの酒に付き合うなんて、どういう風の吹き回しだ?」
「脱衣所で遭っただけだ」

そのまま露天風呂まで付き合わされた。
上司の命令となれば仕方がない。

「ま、いいさ。なんだ、グラスが空だな。ほれ、お前さんも飲みな」

ジョニーがワインを注いでくる。

「明日も酒盛りをする予定だがね。まあ一足早いが、乾杯といこう」
「平穏な修学旅行に」

スレイヤーとジョニーがグラスを掲げる。
それに付き合う気はない。

「ノリが悪いな」
「これがソルの味だ。気にすることもない」
「知ってるさ。昔からこいつはこんな奴だってことはな」

ジョニーとも、ジェリーフィッシュの連中絡みで長い付き合いになるな。

「おっと、ワインも切れたか。では次の酒を出そう」

スレイヤーが再び酒を取り出す。

「お前さんは何か好みの酒はないのか?」
「ない」
「ふむ。君らしいが、好みが無いというのは聞き捨てならんな」
「全部味が違うだろ?ワインとウイスキーなんてまったく別物だ」
「ああ、ワインこそが至高。まさに神の雫と言うに相応しい芸術品だ」
「それこそ聞き捨てならねぇな。ワインも悪くないが、ウイスキーの味わいの深みがわからないのか?」
「それがワインの奥行に敵うとでも?君も面白いことを言う」

酔っぱらいが争いだした。
グラスを空ける。と、再び露天風呂に人がやってきた。

「・・・あの、何故あのお二人が喧嘩してるんですか?」

やってきたザッパに問われる。

「ただの遊びだ」
「はあ・・・?」

納得はいっていないようだが、それ以上の説明もない。

「おお、ザッパ。丁度いいところに来た」
「はい?」
「お前さん、好きな酒はなんだ?」
「え?好きなお酒ですか?・・・清酒ですかね?」
「もちろん私のコレクションの中には極上の清酒もある。存分に飲み比べ、その上でワインが最高と思い知るといい」
「果実が原料のワインより穀類が元のウイスキーの方が清酒の方がウイスキーに近い。あんたこそワインが優れてるって考えを改めるんだなぁ」
「は?あの、一体何がどうなって・・・」
「まあとにかく。飲め、さもなくば出て行け」
「ええ!?」

騒がしい。
酒を飲む。

790名無しさん:2011/11/30(水) 06:00:35
テスタ「また客が来た」

アバ「・・・意外」

テスタ「罰ゲームでデート。それは可能だ」

アバ「・・・うん」

テスタ「ただし、それでデートすることをブリジットが望まない」

アバ「・・あー」

テスタ「あくまでソルの同意ありのラブいちゃデートを目指すのがブリジットのスタンス」

アバ「・・・無謀」

ブリ「ウチはソルさんが嫌がることはしませんから!」

テスタ「というゲストの声も」

アバ「・・・え?今の・・・え・・・?」

テスタ「とはいえ機会があれば罰ゲームだろうとデートはするけどな」

アバ「・・・おおぅ」

テスタ「まあ修学旅行中に一緒に散歩ぐらいできるんじゃないかな」

アバ「・・・残りは明日の朝と夜」

テスタ「それと最終日の朝」

アバ「・・・残り三回」

テスタ「ブリジットとミリア。あとはJFの残りの『バッドガイ君』の少女かな」

アバ「・・・その少女出るんだ」

テスタ「JF2年組の残りだし、裏メインヒロインだからな」

アバ「・・・えー」

テスタ「まあ脇役だから気にしない」

アバ「・・・・・・可哀想な扱い」

テスタ「大丈夫だ。私の脳内じゃ彼女が報われるルートはできている」

アバ「・・・うおぅ・・・・・・・え、それもどうなの?」

テスタ「それよりも今後の展開を考えないとな」

アバ「・・・・・・ブリジットルートもミリアルートも考えてないのに」

テスタ「どっちのルートに行くか未だ決められてないのはまずい」

アバ「・・・優柔不断」

テスタ「正直ブリジット展開を望む人が多いのが意外」

アバ「・・・・・・多いって言っても2人だけど」

テスタ「ブリジットは男です」

アバ「・・・わかってる」

テスタ「どうしよう」

アバ「・・・どうにかして」

テスタ「それでは今日はここまで」

791名無しさん:2011/12/09(金) 02:46:16
朝になり、目を覚ます。
まだ朝食までには時間があるが、連日この時間に起きていたせいか、目が覚めてしまった。
二度寝することもない。一先ず着替えるとするか。

着替え終えた時、ドアの前に人の気配。そしてノックの音。

「誰だ」
「ソルさんの運命の人です!」

それに心当たりはない。
本でも読むか。

「あれ、ソルさん?開けてください。ウチです。ソルさんの愛すべき妻、ブリジットです!」

デバイスを取り出し本を読む。

「ソルさん!?あのー開けてくれませんか?朝の廊下って結構寒いんですよ?
 このままだとウチは凍え死にます。せめてソルさんの胸の中で暖かく眠らせてください!」

断る。

「寝てるんですか?そんなはず無いですよね。さっき『誰だ』ってはっきり言ってましたもんね。
 あ、もしかしてソルさん。寝起きをウチに見られるのが恥ずかしくて、今急いで着替えとかしてるんですか?
 わかりました!だったらウチは待ってます。終わったらここを開けてください」

的外れな推測をして、勝手に納得している。
ずっと待っていればいい。と、もう一つ気配が増えた。

「あ、ブリジット。おはよ。隣にいないからどこに行ったのかなって探しちゃったよ」
「おはようございますメイさん。勝手にいなくなってすみません。ソルさんと一緒に散歩に行こうと思いまして」
「ソルと?ふうん。で、ソルの部屋の前で何してるの?ソルはまだ寝てるの?」
「いえ、起きてはいるんですけど、ドアを開けてくれないんです」
「そうなの?無理矢理開けちゃおうよ。ちょっと下がってて」
「え、それはマズイんじゃ・・・」
「大丈夫大丈夫。もし壊れてもソルが直すから」

急ぎ移動し、ドアを開ける

「あ、おはよソル。なんだ、やっぱり起きてたんだ」
「おはようございますソルさん!」
「ああ」

ドアを壊されずにすんでよかった。

「じゃあデートに行きましょうソルさん!」
「断る」
「えっ!?」

部屋に戻り、ドアを閉める。

「ねえソル。出てこないと本気で壊しちゃうよ?」
「やめろ」

再びドアを開ける。

「もうさ、ソルもこれぐらいの頼みぐらい聞いてあげなよ。ブリジットが可哀想じゃん!お姉ちゃん達とは散歩してたのにさ」
「そうです!不公平です!ウチにも愛をください!!」
「断る」

他の誰かと散歩をしたことが、ブリジットととも散歩する理由にはならない。

「ブリジットもさあ、頼み方が・・・。まあそれは今更だからしょうがないけどさ。
 だったら、ボクと行こうよソル。それならいいでしょ?ついでにブリジットも」
「ウチはついでですか!?」
「断る」
「来てくれないとホテル破壊して回るよ?ソルのせいだーって言いながら」
「わかった。行こう」

迷惑な。

「さっすがソル。物分りがいいね」
「メイさん。そんな脅しみたいなっていうかどう見ても脅しですけど、そうまでして無茶を言わなくても・・・」
「だってこうでもしないとソルは絶対動かなかったでしょ?」
「いえ、そこはいつかウチの愛が届いてたって信じてます」

外出の支度をし、部屋を出る。

「じゃあ行きましょうソルさん。ウチとのラブラブデートへ!」
「一応ボクもいるからね?」
「わかってますメイさん。大丈夫です!」
「なにが?」

ホテルを出る。

「いいお天気ですね!」
「うん。実質今日で最後だし、ずっと晴れだといいな」

そうなるだろう。今日は天気が崩れるとは考えにくい。

「それじゃレッツゴー!」
「おー!」

何度目かの散歩道を歩き出す。

792名無しさん:2011/12/09(金) 03:55:45
散歩中。

「それにしても歩道も雪だらけだよね」
「歩きづらいです。ソルさん、転んだら危ないので手を繋ぎましょう!」
「断る」
「そんな!同じ理由で腕を組んでた事もあったじゃないですか!」
「お前は転ばない」

あいつは危なっかしい。というか、実際に一度転倒しかけた。
それだけのこと。

「そうですか?ソルさんに褒められちゃいました。エヘヘ」
「それで喜ぶんだ」

あれは褒めたことになるのか。

「お前は気をつけろ」
「ボク?バカにしないでよねソル。いっつもジョニー言われてるもん。足下注意だってワワっ!?」

注意した矢先に、足を雪に取られた。
襟首を掴んで転ぶのを防ぐ。

「ぐっ!ちょっソル、苦しっ!」

立たせる。

「コホッ。あーもう、死ぬかと思った。これなら転んだ方がマシだよ」
「大丈夫ですかメイさん?」
「うん、大丈夫。おかげで怪我はないよ。一応ありがとね、ソル」

本人がそう言うのなら、次は助けるのは控えておこう。
それで怪我でもすれば、手当するのは俺になるのだろうが。

「ソルさん、ウチが転んだ時は優しく抱き抱えてください!」
「断る」
「だったら、転ばないように今からお姫様抱っこをお願いしまズッ!?」

鬱陶しい。

「あ、朝陽だよ朝陽。雪山から出てくるってのもかっこいいね!」
「朝陽を一緒に見るなんて、もはやウチとソルさんはそれほどの関係になっちゃいましたね!」
「ねえ、ボクもいるからね?正直、存在を無視されるのはちょっと悲しいんだけど」
「う、ごめんなさいですメイさん。ついテンション上がってしまいまして」

いつものことだ。

「ブリジットにはボクが邪魔だったかもしれないけどさ・・・」
「そんなこと無いです!ソルさんと散歩できるのもメイさんのおかげなんですから。拗ねないでください」

ブリジットがメイを宥める。

「ソルさんも何か言ってあげてください!」
「断る」
「ソルさん!?」

そこで俺に振るのが間違いだ。

「薄情過ぎるよソル!ボクが落ち込んでるんだから少しぐらい励ましてよ!」
「わ、メイさんが復活しました」
「ソルはもっと優しくなるべきだって。ボクにもブリジットにもみんなにも」

その必要はない。
今のままで十分だ。

「そうやって無視するし!そんなソルにはお仕置きが必要だね!くらえっ!!」

雪玉を投げつけてくる。

「ウチもやります!ソルさん、ウチの愛が詰まった雪玉を受け止めてください!」

躱す。

「なんで避けるんですか!?」
「そうだそうだー!ソルは避けちゃダメだからね!」

我侭なやつだ。

「えいっ!」
「それえっ!」

後方から飛んでくる雪玉を無視して歩き続ける。

「ああ、ソルさん!ウチを置いて行かないでください!」
「勝手に先に行かないでよ!」

勝手に足を止めたのはお前達だ。

「ブリジット、後でみんなで雪合戦しようよ」
「そうですね。そういえばまだやってませんでしたね」
「ねえ、ソルもやるよね?」
「断る」

お前達だけでやっていろ。

「もう。まだ懲りてないみたいだね。よし、もう一度雪玉攻撃だよブリジット!」
「わかりました!雪とウチの愛は無尽蔵です!」

また騒がしい。

793名無しさん:2011/12/09(金) 05:07:48
ホテルに戻る。

「疲れたぁ」
「ウチもヘトヘトです・・・」
「あんたら、朝から何やってんだい」
「あ、おはよー二人共」
「・・・おはよう」
「おはようございます」

ロビーで梅軒とアバに遭遇した。
すでに朝食の時間か。随分と散歩に時間がかかったな。

「で、なんでそんなに疲れてるんだい?散歩行ってたんじゃないのかよ」
「それが聞いてよ!ソルがひどいんだよ!」
「ウチの愛を無視するんです!」
「・・・いつも通りじゃない?」

連中を無視し、部屋に向かう。

「おや、おはようございますソル。貴方は今日も散歩ですか?健康的ですね」
「しかも連れて歩く相手を取っ替え引っ替えときた。いやあ、羨ましいねえ」

カイと闇慈。これから食堂に向かうらしい。

「俺なんてずっとチップとロボの相手だぜ?ちょっとは華が欲しいもんだ」
「半裸をやめてはどうですか?こんな場所でもそれは、さすがに皆さんも若干引いてますよ」
「そいつは聞けねえな。冬だろうと雪だろうと、こいつが俺の生き様だからよ」
「意味がわかりませんが、まあ、それで華がないと嘆いても自業自得ですね」

カイと闇慈の会話を背に、部屋に戻る。
外出用の上着等を脱ぎ、部屋を出て食堂に向かう。

「あ、おはようございますソルさん」
「ああ」
「メイとブリジットを見てませんか?朝からいないんです」
「散歩に行っていた」
「ソルさんとですか?」
「ああ」
「それは・・・メイがまた何か無茶を言いました?」
「ああ」
「すみません。後でメイに言っておきますから」
「お前が謝ることじゃない」

エイプリルに非は何もない。

「朝起きた時から、なんとなく嫌な予感はしてたんです。こう、胸騒ぎがするというか」

そこまで心配することか。

「またメイが何かしでかしたんじゃないかって。まさか、もう取り返しの付かない事しました?」
「いや。そこまではない」
「それは良かったです」

安堵している。
エイプリルも、メイに関しては気苦労が絶えない。

「二人は食堂に行きました?」
「ああ」
「ソルさんも今から?」
「ああ」
「だったら、一緒に行きましょう。食堂まで大してありませんけど」

エイプリルと並んで食堂に向かう。

「貴方、今度はエイプリルに手を出してるの?」
「気が多い上に手が早いわ。ついさっきまではメイとブリジットを弄んでたそうじゃない」

そんな事はしていない。

「警戒した方がいいわよエイプリル。ジェリーフィッシュも既に何人かこの男の毒牙にかけられたって噂だから」
「またそんな。ミリアとイノは誰からそんな噂を聞いたの?」
「さあ?誰だったかしら。でも、彼が色んな女性とデートをしてるのは間違いない事実よ」

散歩をデートと言うか。

「だから貴方も気をつけなさいエイプリル」
「ミリアに同意だわ。あまり信用しすぎるといざ襲われた時に困るわよ?」
「ソルさんの家に住んでるミリアには言われたくないな。ていうか、二人共全然信じてないでしょその噂」
「まあ、そうね。ほんの冗談よ」
「あら、私としては大いに有りだったのだけど?表で善人を装って裏では外道なんて、超の付く王道じゃない」
「イノ・・・」

随分と歪んだ見方をされている。

「ソルさんも大変ですよね」

噂を広めたのは恐らくジェリーフィッシュ本人共だろうがな。

「姉がいつもすみません」
「お前が謝ることじゃない」

エイプリルも苦労が絶えない。

794名無しさん:2011/12/09(金) 05:18:24
テスタ「ブリジット単独で一緒に散歩ならず」

アバ「・・・あーあ」

テスタ「いやね、ちょっと無理だったっていうか、ソルがどうしても誘いに応じなかった」

アバ「・・・そこをどうにか」

テスタ「しようとはした」

アバ「・・・結果を出して」

テスタ「申し訳ない」

アバ「・・・やれやれ」

テスタ「難しいんだブリジット」

アバ「・・・一応メインヒロインなのに」

テスタ「誰かとコンビ組ませればいい働きするんだが」

アバ「・・・メイとかミリアとか」

テスタ「ソルとブリジットだけだとろくに会話にならない」

アバ「・・・一応メインヒロインなのに」

テスタ「一応が付く時点でちょっとな」

アバ「・・・これからどうしようか」

テスタ「これから考える」

アバ「それでは今日はここまで」

795名無しさん:2011/12/14(水) 03:25:12
午前中、約束通りディズィー達に付き合って過ごした。
そしてレストハウスで昼食後。

「ありがとうございましたお兄ちゃん。おかげでいい思い出になりました」

もういいのか。

「ソルさん、午後はウチと二人っきりで過ごしましょう!」
「断る」
「照れなくてもいいじゃないですか」

照れてなどいない。

「まあまあ、ソル先輩なんて放っといて行こうよ。残り少ないんだしさ」
「お兄ちゃんなんて気にせず思い切り楽しみましょう」

ディズィー達が去っていく。
俺は連日通りに待機しておくとしよう。

「貴殿は今日もここに残るのか?」
「ああ」

ポチョムキンが声をかけてきた。

「今日は実質最終日だが、貴殿はそれでもいいのか?」
「ああ」
「今日ぐらいは教師役など気にせず存分に遊んでいいのだぞ?」
「興味がない」

スノースポーツはこれまでで十分に体験した。

「それならば無理に勧めることもできないが・・・ならば私も貴殿に付き合い、ここに残ろうか?」
「必要ない」

何かの時のために教師が一人残っていればいいのだ。
俺一人で十分だろう。

「そうか。では、ここは貴殿に任せよう。私はスキー場の生徒達を見回ることにする」
「ああ」

ポチョムキンも出て行く。

「つまんないなあ、わるお」

テーブルの向かい席に人が座る。

「何の用だ」
「休憩の暇つぶし。そんなことよりお前、たまにはハメを外したら?」
「断る」
「童心に返って無邪気に遊びまくるわるおなんてのを見てみたいんだけど。
 どうよ、尊敬する先輩の頼みを聞いてみる気はない?」
「ない」

尊敬もしていない。

「あ、自分で言ってみたら、もっと見たくなってきた。よし、行こうかわるお。付いてこい」
「断る」

命令を聞く気はないし、持ち場を離れるわけにもいかない。

「ザッパせんせー。わるおを連れて行っていいですか?」
「え?ああ、いいですよ。ここは僕が残りますから、どうぞいってらっしゃい」
「ってことで、行くよ。ほら、さっさと立つ」

強引に連れ出される。

「あら、お姉さまにバッドガイさん。どちらへ?」
「わるおが子供っぽく遊ぶところを見にいくんだよ」
「バッドガイさんが何かするのですか?」
「何かさせるんだよ。何がいいかなあ」

辺りを探している。何をさせる気だ。

「おっと、良い物発見。よし、これでいこう」
「ソリですか?」
「そ。これで一番高い所から一気に滑り落ちてもらうよ。さ、リフトに乗るよ」

それに一度付きあえば満足するだろうか。

「でも、危険ではありませんか?」
「わるおなら多少の危険は大丈夫でしょ」
「いえ、バッドガイさんがではなく、そんなコントロールもできなさそうなものでは、他の皆さんにぶつかってしまうかもしれませんわ」

ブレーキもハンドルもない、ただ滑るための単純なソリだからな。

「それもわるおに頑張ってもらおう」
「でしたら、安心ですわね」

重心移動だけでどこまで躱せるか。

796名無しさん:2011/12/14(水) 04:52:08
リフトで移動し、最高所へ。
それなりの傾斜と麓までの距離があるが、これをソリで滑り降りるのか。

「何やってるアルカ?」
「ヘイ、面白そうなもの持ってるな!」
「ボンクラニオ似合イノボロソリダ」

紗夢達もやってきた。

「いい所に来たねお前たち。これからわるおがソリ滑りするんだ」
「ここからアルカ?ソルもおかしなことをするアルナ」
「すげえな!なあ、終わったら次は俺にソリを貸してくれよ!」
「間抜ケメ。貴様デハ死ヌノガオチダ。我輩ガヤル」
「んだとロボ?ナメんじゃねえぜ!」
「喧嘩はいけませんわザナフさん、ロボさん。仲良くお二人で滑ればいいですわ」

二人、乗れなくはないが。

「雄ト同乗ナンテ死ンデモオ断リダ。雌ナラ許ス。紗夢、結婚ヲ前提トシテ我輩ト一緒ニ乗ッテクダサイ」
「お断りアル」
「何故ダ!?我輩ガ振ラレルナンテアリエナイ」
「さあさあこのポンコツは放っておいて、そろそろいってみようかわるお」
「頑張ってくださいバッドガイさん」

さっさと終わらせるか。

「でも結構難易度高いんじゃねえか?大丈夫かよソル」
「怖くないアルカ?」
「ああ」
「おおー。怖気付かないのはさすがだね」

問題は、麓付近で多くなる生徒達を避けきれるかどうかだ。
まあ、いざとなれば転倒してでも止まればいい。どうにかなるだろう。

「バッドガイさん、ご無事を祈っておきますわ」
「わるお以外のみんなのね」
「気をつけるアル」
「付いてくぜ、ソル」
「転ンデシマエボンクラ」

ソリに乗り、滑り始める。

「おおぅ。なんか見た感じ子供っぽいよわるお。うん、満足。後は途中で『イエー!』とか叫べばグッド」
「ジェットコースターみたいアルナ」
「似たようなものですわ」

もう満足したらしいが、既に止まりようもない。
どのみち、このまま行くしかない。

「はええよ!俺以上のスピードだと!?」

とにかく真っ直ぐに滑り落ちる以外にろくにできることがないからな。
幸い、急なカーブがあるコースではないので、ソリ滑りには適している。

ただただ滑り落ちていると、少しづつ人が増えてきた。
背後から高速で迫るのだから基本的にかわしようがない。俺がどうにか避けなければ大事故だ。

「旦那、何遊んでるの?危ないじゃん」
「うわあっ!何してるのさソル!ボクじゃなかったらぶつかってたよ!」
「貴様、怪我人だけは出すなよ」
「・・・危険」
「ウチを後ろに乗せヒャアッ!?」

反応できる連中が通り過ぎざまに一言言ってくる。
なんとか人との接触を避けそろそろ麓に着く。
ブレーキはついてないが、バランスを取って勢いを殺し転倒することもなく止まりきる。

「お見事ですねえ。怪我人が出るんじゃないかとハラハラしながら見てましたが、杞憂でしたか」
「しかし、あまり感心できないぞソル。お前さんが楽しむのはいいが、他の生徒達が怖がるだろう」
「わかっている」

あいつも満足していたし、もういいだろう。

「やっと追いついたぜ。速すぎんだよソル。じゃ、次は俺に貸してくれよ」
「駄目だ」
「ホワイ!?」
「一般生徒が危険だ」
「そりゃないぜ」

怪我人が出なかったのは幸いだ。

「ワハハハハ!デハ我輩ノ物トイウコトダナ!」
「誰だろうとソリは禁止だ」
「ナニイ!?」

俺ももうやらん。元から二度目をやる気はなかったが。

「わるおー、どうだった?爽快感あったんじゃない?」
「それどころじゃない」

後半は回避行動に全力を注いでいた。

「まあ、バッドガイさんがそれほど必死になるなんて、さぞ楽しかったんですわね」
「どうしてそうなるアルカ?」

もういいだろう。俺は非常時用の待機役に戻る。

797名無しさん:2011/12/23(金) 01:41:49
夜になって消灯時間になりました。

「やった。ボクの勝ちー!」
「あれ、負けた?勝てると思ったのに」
「ちっ、また一手遅かったか」
「梅軒はさっきから負け続けね」
「うるさいよ」

寝ようとする人はいませんけどね。
修学旅行最後の夜ですし、皆さんテンション高いです。
ゲームも盛り上がってます。

「梅軒さん、ウチと替わりますか?」
「冗談じゃない。勝つまでやってやるよ」
「・・・強情」
「ブリジットちゃん、私と替わろう?」
「はいです」

梅軒さんも負けず嫌いですね。
しかしウチ達はこのゲームに慣れてますから、ついさっきルールを知った梅軒さんにはちょっとやそっとじゃ負けませんけど。

「梅軒、あなたはプレイングがまずいのよ。他の人達の戦い方を見てるかしら?」
「言われなくてもわかってるさ、イノ。でもね、俺は俺のやり方で勝ってみせるんだよ」
「だから勝てないのよ。ま、負けて悔しがるあなたも可愛いからいいけど」
「梅ちゃんはもうちょっと融通効かせようよ。そしたら勝てるようになるから」

がんばってください梅軒さん。凄く運が良ければ少しは勝ち目はありますよ。

「ところでみんな、いつまで起きておくつもり?」
「何言ってるのさエイプリル。眠くなるまでに決まってるでしょ」
「・・・同じく」
「消灯時間って知ってる?」
「いいじゃないですかエイプリルさん。今日ぐらい気にしなくても」
「全くだね。このまま勝ち逃げなんて許さいないよ。ほら、もう一戦始めようぜ」
「はぁ・・・」
「お疲れ様ですエイプリルさん」

そういう反応をわかっていて、一応注意しただけでしょうけどね。
おっと、ウチもゲームに集中しないと。

「・・・あれ?ミリアちゃんは?」
「ミリアなら、喉が渇いたって出て行ったわよ」
「それは知ってるけど、結構前じゃなかったかな?」
「そう言えばそうかも。まだ帰って来てないの?」

確かに、ミリアさんがいません。人が多いので気付きませんでした。
ごめんなさいですミリアさん。

「ザトーに付きまとわれてるとか?」
「ザトーさんが鬱陶しいなら、なおさら部屋に戻ってくるんじゃないですか?」
「じゃあ、ザトー先輩以外と会って、食堂かどこかでのんびりしてるんじゃない?」
「あいつがかい?ミリアがそんなに親しく会話する相手なんてそんなにいないだろ」
「あの子、打ち解けない相手とはあまり喋らないものね」
「・・・ソルは?」

あ、ソルさんがいました。確かにソルさんが相手ならミリアさんも態度が柔らなくなります。

「今更だけど、お兄さんとミリアちゃんって仲良くやってるの?」
「うちだと、お互い邪魔をしないようにうまく共存しているって感じです」
「それってどうなのさ」
「同居してるのにそれじゃ、つまらないわ。一線を越えたイベントは起こってないのかしら?」
「そんなイベントはウチとだけで十分です」

ミリアさんに譲る気はありませんから!

「お兄ちゃんが本気で気を遣えばミリアさんに不満なんてあるわけがありません」
「ソルさんが本気出すんだ」
「本気かはわかりませんが、一緒に生活するんですから、関係を悪くしてもデメリットばかりじゃないですか。だから、そういうことはしてません」
「ボクの頼みごとは簡単に聞いてくれないくせに!」
「メイのは頼みごとじゃなくてわがままでしょ」
「え?そんなことないよ」

ソルさんも大変です。いえ、そんな程度、ソルさんにとっては大変でもなんでもないですね。

「それで、ミリアは結局、ソルといるってのかい?」
「他に遅れる理由はないと思うわ。何か問題でも起こってるなら別だけど」
「・・・心配」
「じゃあ、私はミリアちゃんを探しに行ってくるね」
「付き合うぜ。あいつも余計な手間かけさせやがって」
「梅ちゃん、まだゲーム途中なんだけど」
「イノ、替わりな」
「いいわよ。ミリアが心配でたまらないのね。本当に可愛いわあなた」
「ば、馬鹿言ってんじゃないよ。このままじゃゲームに集中できないってだけだ」
「語るに落ちてるわよ梅軒」

もしミリアさんがソルさんと会ってたとしたらどうなんでしょう。
ソルさんが簡単に誰かに心を許すとは思いませんけど。
ていうかそれならまずウチに心を許してついでに身も許してほしいです。
・・・はっ、そんな場合じゃないです。

「ディズィーさん、ウチと替わってくれませんか?」
「はい、いいですよ」
「ブリジットも?」
「はい。ソルさんが浮気してたら許せません!」
「はいはい。行ってらっしゃい」

気のない応援ですね。ま、いいです。

798名無しさん:2011/12/23(金) 02:40:31
一階まで降りて。

「いました?」
「ううん、食堂にはいなかったよ」
「風呂場も覗いたけど誰もいやしないね」

ミリアさんがいません。どこに行ったんでしょうか。
まさか、本当に何かあったんじゃないでしょうね。

「神隠しにでもあったかね」
「このホテルは幽霊が出るって噂なら聞いたことあるけど」
「まさか、本当に?」

いやいや、そんなまさか。この世に幽霊なんているはずが・・・あ、いましたね。
ザッパ先生が呼び出してるじゃないですか。
だとしたら、神隠しなんて不思議現象も本当にあったりするんでしょうか。

「諸君、何をしている。とっくに消灯時間は過ぎているぞ」
「っ!?」
「誰だい!?」

突然声をかけられて、ちょっと驚いちゃいました。

「あ、ザトーさん。こんばんは」
「うむ、こんばんは。それで、貴様達はここで何をしている。消灯時間は過ぎた。
 大人しく寝ろとは言わないが、堂々と室外を徘徊されては注意せざるを得ないな」
「すみません生徒会長。ミリアちゃんが部屋を出てから随分と戻ってこないので、探しに来たんです」
「なに?ミリアが?」
「あんたも知らないのかい」
「当然だ!知っていたらこんなに呑気にしているものか!!」
「落ち着いてくださいザトーさん」

ミリアさんのことになると途端に人が変わりますね。
ウチも同じですから気持はわかりますが。

「私もミリアを探す!どこだミリア!」
「うるさいね。ちょっと黙りな」
「ぐっ!?」
「梅軒ちゃん、なにも縛らなくても」
「こうでもしないと落ち着かないだろこいつは」

縛ったところでどうしましょう。

「別にミリアがいなくなったって決まったわけじゃないんだ。どこかの部屋にいるのかもしれないだろ」
「そうですね。探しましょうか」
「みんなに知らせる?お姉ちゃん達にもお願いすれば、ホテル内ならすぐに探せると思うけど」
「頼りになるなジェリーフィッシュ。是非頼む。一刻も早くミリアを見つけ出すのだ!」
「もう回復したのかい」

でも、ザトーさんも少しは冷静になったみたいです。

「では貴様は連絡を頼む。私はホテルを上から探そう。梅軒は下からだ。ブリジットは宿泊部屋以外の場所を探してくれ」
「わかりました!」
「任せな」
「きっとすぐに見つかりますよ」
「誰か探しているの?」
「ミリアさんがいなくなったんです」
「・・・?貴方は何を言っているのかしら?」
「だから、ミリアさんが・・・・・・あれ?」

目の前にミリアさんがいるじゃないですか。

「おお、ミリア!心配したぞ!」
「あんた、本物かい?」
「食堂にもいないから、何かあったんじゃないかなって」
「無事で良かったです!」
「もしかして、戻らなかったからって心配かけてしまったかしら?それは悪いことをしたわね。謝るわ」

怪我もないようですし、神隠しにあったわけでもなかったんですね。
安心しました。

「で、あんたは一体どこに行ってたんだい?飲み物を取りに行ったと思ってたんだが」
「飲み物ついでに、散歩に行ってたのよ。最後の夜だもの。なんとなくそんな気分になって。
 まさか、そこまで心配をかけてるとは思わなかったわ」
「いえいえ、勝手に早とちりしたのはウチ達ですから」
「人騒がせなやつだねまったく」
「梅軒ちゃんはずっと心配してたんだよ?」
「なっ、てめっ!」
「あら、ありがとう梅軒」
「別に心配なんてしてないね!俺はもう戻るからな!!」

梅軒さんもとんだ照れ屋さんですね。
イノさんやみんながからかいたくなるのもわかります。

「それでだなミリア。一つ聞きたいことがある」
「なによ」
「なぜソルと一緒にいるのだ?」
「一緒に散歩に行ってたからよ」
「ソルさん!ウチというものがありながら、浮気ですか!」
「うるさい」

そう、それが問題です。ミリアさんの後ろにソルさんがいるじゃないですか!
予想的中。やっぱりミリアさんはソルさんといたじゃないですか!
それも一緒に散歩ですか?羨ましいにもほどがあります。

799名無しさん:2011/12/23(金) 03:15:20
ソルさんは相変わらず口数が少ないです。

「ミリアちゃん、できれば理由を教えてほしいな。心配したんだから」
「食堂に行った後でソルと会って、照明と防寒具代わりに丁度いいから散歩に付き合ってもらったのだけど」
「お兄さん、完全に道具扱いなんですね」
「甘い!甘すぎる!」
「そうです!ウチとザトーさんはそんなんじゃ納得しませんから!」

そんな言い訳通じません。

「・・・じゃあ、どう言えば納得するのかしら?私がソルと共に散歩をしたかったから、理由を付けて付き合ってもらったと言えば満足するの?」
「うぐっ!」
「それは・・・」

真正面からそう言われると何も返す言葉がありません。

「でも、私にそんな思惑はないわ。まだ納得してもらえないかしら?」
「いや、もう十分だ・・・」
「ミリアさんにとって、ソルさんは道具なんですね・・・」

それで納得しておきます。
ミリアさんまでライバルになったら、既に茨の道のウチの恋路は、修羅の道になってしまいます。

「ミリアちゃん、部屋着のままだったからコートもないもんね。寒くなかった?」
「大丈夫よ。そのためのソルだもの。生徒を寒空に晒して風邪を引かせるなんて真似はしないわ」

ソルさんがいいように使われてます。
ソルさんをそんな風にウチとディズィーさんとジェリーフィッシュの皆さんとそれに・・・結構いますね。
だったら、

「ソルさん!今からウチとデートに行きましょう!」
「断る」
「ミリア!私と共に素敵な夜を過ごさないか?」
「お断りよ」
「ザトー様!修学旅行最後の夜を二人の思い出にしましょう!」
「拒否する。ってヴェノム、なぜお前がいる」
「ザトー様の帰りが遅いのでお迎えに参りました」
「・・・そうか。心配をかけたな」

そういえばウチ達も早く戻らないと皆さんが待ってます。
あ、でも梅軒さんがもう戻ってますから、その心配はいらないですかね。
早く戻るに越したことはありませんけど、できればソルさんとのデートをした後がいいです。

「ソルさん、ウチとデートに行きましょうよ」
「消灯時間は過ぎている。部屋に戻れ」
「あ・・・」

それがありましたか。それを言われるとどうしようもないです。

「では、部屋に戻ります。おやすみなさいお兄さん」
「おやすみですソルさん。一人寝が寂しかったらいつでもウチを呼んでください!」
「おやすみ、ソル」
「ああ」

ソルさんと別れて部屋に帰ります。

「ミリア、良い夜を」
「・・・・・・」

うわ、無視ですか。経験してるからわかりますけど、それって結構辛いんですよ?

「ミリア?くっ・・・」
「元気を出してくださいザトー様。私をミリアと思って甘えていいですから」
「・・・いや、それはやめておこう」

ヴェノムさんもさりげなく攻めますね。
ウチはザトーさんもヴェノムさんも応援していますが、ヴェノムさんの恋が実るのは有りなんでしょうか?
ウチが言えたことじゃないんですけど。

部屋まで戻る途中。

「ねえミリアちゃん。散歩の間、お兄さんとどんなこと話してたの?」
「別にどうでもいいことよ。猫は元気にしてるかとか、そんな程度ね」

ソルさんもミリアさんもお喋りなほうじゃないですから、あまり会話はなさそうですけど。

「ふうん・・・」
「なに?何か言いたそうだけど?」
「そう?えっと、ミリアちゃんはお兄さんと仲良くやってるんだなってだけ」
「どういう意味かしら」
「深い意味はないよ?ただ、仲が良いんだなって思っただけだから」
「そうかしら?これぐらい、貴方達だってやってることだと思うわ」

ウチ達を基準に考えちゃ駄目ですよ。

「私達はお兄さんと仲が良いでから。私達と同じくらいって言うなら、ミリアちゃんもお兄さんと仲が良いってことだよ?」
「・・・別に仲が良いってほどでも。悪いってわけではないけど。一応恩もあることだし」

ミリアさんも割と無自覚だった部分があるんですか。

「ミリアさん!」
「何かしらブリジット」
「ソルさんはウチが射止めますから!」
「はぁ?そんなライバル宣言みたいなことを言われても困るわ」

いいんです。なんとなく、言っておきたかっただけですから。

800名無しさん:2011/12/23(金) 03:30:47
テスタ「再びブリジット視点」

アバ「・・・逃げた」

テスタ「前にもやったからいいじゃないか」

アバ「・・・ミリアとの散歩をカット」

テスタ「一応やったということにはしたぞ?」

アバ「・・・ブリジットの時も2人きりじゃなかったのに」

テスタ「申し訳ない」

アバ「・・・・・・」

テスタ「どうにも書ける気がしなかった」

アバ「・・・はぁ」

テスタ「申し訳ありません」

アバ「・・・それは置いておこう」

テスタ「ああ、そうしよう」

アバ「・・・今回の展開」

テスタ「とてもどうでもいい設定だが、スイートルームは教師陣の宴会場に使われている」

アバ「・・・どうでもいい」

テスタ「そうだな」

アバ「・・・ソルが喋らない」

テスタ「ブリジット視点にして改めて思う、ソルの寡黙っぷり」

アバ「・・・なぜこんなキャラに」

テスタ「いつの間にかこんなことに」

アバ「・・・これも置いておこう」

テスタ「またか」

アバ「・・・今回の展開」

テスタ「ブリジット視点のミリア回といった感じか」

アバ「・・・主役は梅軒」

テスタ「ソルが人をからかうタイプじゃないから、ソル視点だと使えない梅軒」

アバ「・・・なぜあんなキャラに」

テスタ「どうしてだろうな」

アバ「・・・不思議」

テスタ「それでは今日はここまで」

801名無しさん:2011/12/29(木) 03:41:52
朝、目を覚ます。まだ夜明け前。
朝食まではまだ時間があるが、二度寝をするほど眠気もない。
とりあえずベッドから出て、着替えを済ます。

やることがない。
読書をするでもいいが、ここに来てからの習慣は朝の散歩となっている。
今日は誰も来ないようだが、だったら一人で行くとするか。
部屋を出る。ロビーまで行くと、人がいた。

「あれ?おはよう、バッドガイ君」
「ああ」

返事をし、ホテルを出る。
雪が少し降っている。だがこの程度なら、帰るには何も問題ないだろう。
慣れた道を歩く。

いつも通りに歩き続け、そろそろホテルに着こうという頃。

「ねえバッドガイ君。修学旅行は楽しかった?」
「いいや」
「私は楽しかったの。来年も楽しいといいね」

ホテルに戻る。

「グッモーニン!お前ら朝っぱらからどっか行ってたのか?」
「おはようザナフ君。散歩してきたの」
「雪中行軍ってやつか?そりゃいいな。俺も朝飯前にちょっと走ってくるか!」
「え?そうじゃなくて、あ・・・」

チップがホテルを走って出ていった。

「ねえバッドガイ君、大丈夫かな?もしかしたら、また迷子になりそうな予感がするの」

可能性は否定できない。

「おはようございます、お二人とも。どうかしましたか?」
「おはようキスク君。ザナフ君が、外に走りに行っちゃったの」
「・・・それはそれは」
「雪が降ってるから、足跡が消える前に追いかけた方がいいと思うんだけど」
「わかりました。私が行きましょう」
「うん。お願い」

カイもチップを追って出ていった。

「もう朝ご飯の時間かな。また後でね、バッドガイ君」

別れて、一度部屋に戻る。

「あらソル、おはよう」
「おはよ〜ソルちゃん」
「ああ」

イノ達と出会った。

「今度は彼女とデート?私も誘ってくれないかしら」
「断る」
「つれないわね。私だって貴方を満足させてあげるわよ?どんなプレイだって応えてあげるわ」

元より、誰も自分から誘った覚えはない。

「ね〜ソルちゃん」
「なんだ」
「カワイイ妹達を泣かしちゃダメだからね〜」

悪意を持って接しはしないが、それ以上は俺の知る所ではない。

「イノちゃんも〜、ソルちゃんみたいな人には気をつけるんだよ?」
「大丈夫よ。むしろペットにしてみたくなるわ」
「イノちゃんこわい」
「あなたも結構私好みよ?いじめてあげましょうか?」
「ソルちゃん助けてー!」

部屋まで戻り、コートを脱ぎ、再び廊下に出る。

「おはようございますソルさん!こんな所で会うなんて奇跡ですね!」

食堂に向かう。

「これはもう運命ですよ。ソルさんもそう感じませんか?」
「いいや」
「ウチにはわかります。ウチとソルさんは前世から結ばれ合うことが決められている二人なんです!」

騒がしい。

「外を見てください。美しい朝陽もウチ達を祝福してくれています!」

雪が降るほどの曇だ。
陽光が差し込む隙間もない。

「ハネムーンは南の島というのがお約束ですが、こういう雪が綺麗なとこも素敵かもしれません」

食堂に着いた。

「ウチはソルさんさえいればどこでも最高の場所になりますけどね!」

朝食を摂るとしよう。

802名無しさん:2011/12/29(木) 04:43:17
ホテルを出て、帰路のバスに乗り数時間。
最初は騒がしかった車内も、今は疲れたのか眠っている者が多い。

「ご苦労だった、という言葉を贈らせてもらおう」
「何の用だ」

そんな中で、ザトーが空いている隣席にやってきた。

「なに、貴様の労を労おうを思ってな」

労などない。
そもそも、教師などいなくてもザトーやカイがいるので生徒内での自治はよくできている。
余計なことをする必要がない。

「大きな事故も事件もなく皆無事に家に帰り着く。なによりではないか」

遭難者が出たが、あいつらなら事件ですらないか。それでも、

「まだ途中だ」
「ふむ、それはもっともだ。家に着くまでが修学旅行だな」

一応、俺の教師責任はまだ残っている。
ここで終わってはない。

「だが言うにはいい機会だ。これまでご苦労だった」
「何もしていない」
「そうか、まあ良い。貴様がそういうなら礼を重ねるのも返って失礼というもの」

それでザトーが黙る。
こちらも話すことなどない。

「ところで確認しておくが」
「なんだ」
「貴様、ミリアとは本当に何もないのか?」
「ない」

何度聞いても答えは変わらない。

「昨夜は二人で密会していただろう?」
「散歩に付き合っただけだ」
「貴様にはブリジットがいるではないか」
「いない」

勝手にそういう関係にするな。

「ミリアはともかく、貴様、本当にブリジットに冷たいな」

他の連中と大して扱いに違いはない。
うるさければ、たまに力尽くで黙らせる程度だ。

「私は自らを慕うものをあそこまで無碍にはできんぞ」

ヴェノムのことか。

「ではザトー様。学校に着くまでの残りの時間は、私の横でお過ごしください」
「なっ!?ヴェノム!」
「さあこちらへどうぞ。ザトー様、存分に私の愛を堪能してください」
「待てヴェノム。私はまだソルと話が」
「ソル、君はザトー様と話すことがあるか?」
「ない」
「ソルうううううううう」

好きに連れて行け。

「お静かに。寝ている皆が起きてしまいますよ?」
「む、それは悪いな」
「そういうことですので、さあ、私達も夢の時間を過ごしましょう」
「待てヴェノム、私には心に決めたミリアという女性が」
「わかっております。このヴェノム、常にザトー様を応援していますゆえ。ですので、大したことはしませんよ。
 膝枕をするのとされるのと、どっちがお好みですか?」
「・・・・・・それは選ばないと駄目か?」

周囲に気を遣い、二人も小声で話しだす。
もう声も聞こえない。

「やほーソルっち。なんであの二人はあんなことになってるの?」

また人が来た。

「説明されなくてもなんとなく予想付くけどね。さっきまで寝てたんだけど目が覚めてさ、話でもしようよ」
「断る」

話すことなどない。

「ちょっと早いけどお土産のお菓子食べる?美味しそうなのがあったんだ」

封を開ける。お土産ではなかったのか。

「食べ方があるのよ。決して前歯で噛んではいけません。ひと口めを口の奥でね・・・奥歯で噛むのよ」

菓子を一つ渡される。

「なんだこれはぁぁ―――ッ。ンマイなあああッ!!」
「静かにしろ」
「あ、ごめん。でもこれ美味しいよ?ソルっちも食べてみなよ」

結局、学校に着くまで話しかけられていた。

803名無しさん:2011/12/29(木) 05:24:00
家に着く。

「やっと着きましたね」
「ほんと、疲れたわ」
「それじゃ、また明日です!ソルさんお別れのキスを!」
「断る」

ブリジットが隣の家に向かう。

「あ、ブリジットさん。もし、お夕食の用意が大変なら、一緒にどうですか?」
「え、いいんですか?でも、ディズィーさんのおうちだって大変なんじゃ」
「大丈夫ですよ。うちはこれからお兄ちゃんがお買い物に行ってくれますから。もちろん晩御飯もお兄ちゃん特製です」

確かに今、家にはろくに食料がないから買い物は必要だ。
当然、料理もしなければならない。

「いいのディズィー?ソルだって少しは疲れてるんじゃないかしら?」
「どうですかお兄ちゃん?」
「問題ない」

荷物を置いたら出かけるとしよう。

「貴方、ずいぶんとタフね。ありがたいけど」

疲れることをしていない。

「それじゃ、また後でです!」
「はい、お待ちしています」

ディズィーが鍵を開け、家に入る。

「ただいま帰りました」
「ただいま」
「ああ」

家に入る。途端、猫が足下に寄ってきた。

「わ、っと。皆さん、お久しぶりです」
「元気にしてたみたいね。良かったわ」

数日家を開けたが、何も問題なかったようだ。
最も、何か問題があればこちらにわかるようにしてあったので、何もなかったのはわかっていたことだが。

「とりあえず、荷物を置きませんか?猫さんを可愛がるのはその後にしましょう」
「そうね」

家に上がる。

「・・・・・・」
「ミリアさん、どうかしましたか?」
「え、いえ。ただ、この家に帰ってきたって、そう思っただけよ。変かしら?」
「そんなことありません。ミリアさんがこの家を我が家と思ってくれるなら、私も嬉しいです」
「そう。・・・なんというか、これからもよろしく、ディズィー」
「はい。とりあえず、お洗濯をしますからお手伝いをお願いします」
「・・・了解よ、ディズィー。家事も分担しないとね」

俺も荷解きをして買い物に行くとするか。
自室に戻る。と、サンタナが付いてくる。

荷物を置き、ひとまずサンタナの健康状態を確認する。
・・・何もなしだ。急に人が消えたことで何かストレスを感じはしないかという可能性はあったが、杞憂だった。
他の猫も見た限りでは何か病気になったということもない。

コンコン

ノックされ、扉が開く。

「ソル、洗濯物があれば出してちょうだい」
「ああ」
「サンタナの様子を見てたのかしら?」
「ああ。健康に問題はない。明日、他のも詳しく検査するが、恐らくどれも大丈夫だろう」
「そう。それを聞いて安心したわ」

さて、買い物に行くとするか。

「行ってらっしゃい」
「ああ」

晩飯は何にしたものか。

804名無しさん:2011/12/29(木) 05:37:27
テスタ「修学旅行終了」

アバ「・・・おつかれ」

テスタ「修学旅行というのに大して進展がなかったな」

アバ「・・・いつも通り」

テスタ「どうやれば終わりに向かえるのか今もって迷走中だ」

アバ「・・・いつも通り」

テスタ「ところで、今年ももう終わりだな」

アバ「・・・うん」

テスタ「ログを見て、一年前の今年の目標を探してみた」

アバ「・・・こんな時のための私達」

テスタ「私の出番なんてここしかないしな」

アバ「・・・ご愁傷様」

テスタ「気にしてない。今年の目標は『目指せ完結』だった」

アバ「・・・・・・」

テスタ「・・・・・・」

アバ「・・・達成ならず」

テスタ「来年の目標を立てよう」

アバ「・・・なに?」

テスタ「目指せ完結」

アバ「・・・・・・」

テスタ「他にあるか?」

アバ「・・・ない」

テスタ「とうとうレス数800も越えたし、季節も冬にもなったし、来年こそは可能じゃないかって気がする」

アバ「・・・できるといいね」

テスタ「目指せ完結」

アバ「・・・目指せ完結」

テスタ「それでは今日はここまで」


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