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酒の勢いで俺が適当にSS書いてみるスレ

605名無しさん:2011/03/06(日) 01:41:39

夏休みも残りわずかになりました。

「もうやだ!遊ぼ!!」
「ダメだってメイ。またエイプリルに怒られちゃうし」
「そうですよメイさん。夏休みの間に宿題をやってなかったウチ達の自業自得じゃないですか」

夏休みの宿題がいまだに終わってないウチ達は、ディズィーさんの家で一緒に宿題やってます。

「だってわかんないんだもん。教えてよ」
「えーどこ?・・・あ、ごめん無理。私にもわかんない」
「ウチもです」

3人寄ればなんとかかんとかって言いますけど、ウチ達が3人集まっても意味が無いようですね。
自分の分の宿題もあまり捗りませんし。

「もう、なんで僕達だけで宿題やんなきゃなんないのさ」
「とっくに終わってる3人がお買い物に言ってるからでしょ」
「誰か残ってれば助かったんですけどね・・・」
「まあ、エイプリルは『自分でやりなさい』って言ってたし、どうせ教えてもらえなかったと思うよ」
「エイプリルのケチー」

ここで愚痴を言っても仕方ないですよメイさん。
夏休み中遊んでて、宿題をやってなかったウチ達が悪いんですから。
とはいえ、このままじゃ全然宿題が進みません。

「なんで夏休みなのにこんなに宿題があるのさ」
「夏休みだからじゃないですか?」
「これじゃ全然休みじゃないじゃん!」
「今まで散々遊びまわってたのに何言ってんの」

そのせいで、今ウチ達は苦しんでるんですけどね。
夏休みの最後に宿題に苦しむのも毎年の恒例行事になっちゃってます。
あ、ディズィーさんの家でっていうのは今年からですね。今まではメイさんのところかウチの家でやってましたから。

「こんなの毎日コツコツとちゃんとできる方がおかしいんだよ!」
「いやいやいや・・・」
「メイさん気持ちはわかりますけど、それはないです」

エイプリルさん達はちゃんとやってるじゃないですか。
あ、ディズィーさんは始まって一週間ぐらいで終わらせたとか言ってましたね。凄いです。
それに、宿題を一緒にやろうと集まった時もありました。
そんな時にウチ達は遊んでしまってたせいで、宿題が終わってないんですけど。

「もーやだ。勉強したくない。遊ぼうよ」
「ダメだって。エイプリルに言われたところまではやんないと、後が怖いし」
「そうです。がんばりましょう」
「そうはいってもさあ。わかんないもん」

それが問題です。
ウチ達だけじゃいつまでも問題とにらめっこです。
・・・あ、そうだ。

「ソルさんに教えてもらうというのはどうでしょう?」
「ソル先輩?・・・あの人頭はいいらしいけど、教えてくれるの?」
「無理ですね」

そんなの、頼んだ瞬間「断る」って言われるに決まってます。
思いつくだけ無駄でした。

「でもさ、他に聞ける人いないし、一応頼んでみたら?」
「それもそうですけど」
「んじゃ、ブリちゃんよろしく」
「ウチがですか!?」
「言い出したのってブリジットじゃん」

それはそうですけど・・・。
結果がわかってるのに聞くのも嫌なもんですね。
しょうがないから、一応行きましょうか。

「ブリジットがんばれー」
「ファイトーブリちゃん」

気軽に言ってくれます。
夏休みの間、ほぼ毎日この家には来てましたけど、ソルさんとはちっとも仲良くなれた気がしません。
ていうかソルさん、部屋に篭もりすぎじゃないでしょうか。外出とかしないんでしょうか?

ソルさんの部屋の前に着きました。

コンコン

とノックをすると、

「誰だ」
「ウチです。ブリジットです」

返事をしてから、ドアを開けます。
ウチが部屋に入っても、やはりソルさんはこっちを見ようともしません。
・・・・・・話しかけてもいいんでしょうか?

「あの、ソルさんにお願いがあるんですけど」
「なんだ」
「ウチ達、夏休みの宿題をやってるんですけど、わからないところを教えてもらえませんか?」
「断る」

やっぱりです。
予想通りすぎます。
これ以外の答えなんて想像できませんでした。

606名無しさん:2011/03/06(日) 02:18:48
スゴスゴと居間まで引き返します。

「おかえりブリジット。どうだった?」
「って、聞くまでもないみたい」
「はい。ダメでした」

取り付く島もないって感じです。

「やっぱりね」
「うん」
「無理ですよ。ソルさん、全然話聞いてくれないんです」

あれだけばっさりと断られたら、交渉する暇もありません。

「結局自分たちでやるしかないね」
「それができないからソルに教えてもらおうとしたんじゃん」
「じゃあ次はメイさんが頼んでみてくださいよ。ウチはもうギブアップです」
「えー。ボク?」

がんばってくださいメイさん。

「頼むっていってもさ、聞いてくれないんでしょ?どう頼めばいいのさ」
「姉さん達が言ってたけど、結構強引に頼めば割とお願いも聞いてくれるらしいよ」
「そうなの?」
「そうですね。確かにソルさんってちょっとそういうところがあると思います。
 ウチじゃ、ジェリーフィッシュの皆さんみたいに強引にいけませんけど」
「そうなんだ。じゃあちょっと力ずくで頼んでみるね!」

メイさんが立ち上がって二階へ向かいました。
・・・・・・え、今力ずくって言いました?

「ねえ、強引と力ずくって違うよね?」
「違うと思います」
「なんだろ。なんか嫌な予感がするんだけど」
「奇遇ですね。ウチもです」

メイさんは何か勘違いしてませんでしたか?

「ちょっと気になるので、ウチは後を追ってみます」
「あ、私も行く」

二人ですぐさま二階ヘ。
メイさんはまだドアをノックしてるところでした。

コンコン

「誰だ」
「ボクボク。メイだよ」

さて、メイさんはどんな頼み方をするんでしょうか。

「夏休みの宿題が終わんないから手伝って!」
「断る」
「山田さ〜〜〜〜〜ん!!!」

「えっ」
「ええ!?」

なななななにやってんですかブリジットさん!?
空中から大きい鯨が出てきてるんですけど!!
なんかソルさんの部屋から凄まじい音が聞こえてましたよ?
大丈夫ですか?大丈夫なわけないですけど、大丈夫なんですか!?

あまりのことにウチ達が呆然としていると、

「手伝って!!」
「ああ」

そんなやり取りが聞こえてきました。

「いや、ちょっ、メイ!」
「あれ、いたんだ」
「いたんだ、じゃないですよメイさん!何やってるんですか!」
「ソルに力ずくでお願いしたんだけど。効果抜群だね!手伝ってくれるってさ」

違う・・・違いますメイさん。これはお願いじゃなくて脅迫とかそういうものです。
断ったらきっとさらに山田さん召喚してましたよね?
それじゃ、お願いを聞かざるをえないじゃないですか。

「うわ・・・部屋が大変なことに。あのぉ、ソル先輩、大丈夫でしょうか?」
「メイを連れて下に行ってろ」
「は、はい。ほら、行こうメイ」
「ちゃんと下に来てよねソル」

こんな状態でまだ言いますかメイさん。

「片付けが終わればな」

え!?ソルさん、宿題教えてくれるんですか?
正直、家から叩き出されても文句は言えないんですけど。
ウチが呆気に取られている間にも、ソルさんはてきぱきと破壊された部屋を片付けていきます。
散乱したたくさんの本がどんどん整理されていきます。

「あ、あの、ウチも手伝います」
「必要ない」

またあっさりと断られてしまいました。
いえ、ここはそれこそちょっと強引にでも手伝わないといけませんよね。

607名無しさん:2011/03/06(日) 03:24:38
散らばっている本を集めて、本棚に・・・って、倒れてしまってます。
ソルさんが起こそうとしてましたので手伝いましょう。

「ウチはこっちを持ちますよ」

一方に立つと、ソルさんはその反対側に立ってくれました。
あれ、邪魔だとか言われるかと思いましたけど、そんなことないんですね。
少なくともウチが手伝うのを無視することまではないみたいです。
ソルさんと協力して本棚を起こしました。が、

「・・・壊れてますね、本棚」

棚の部分が折れてしまってます。これじゃ本が置けないです。
本当にメイさんはなんてことをしてくれてるんですか。
結構無茶する性格なのは知ってましたけど、さすがにここまでやるとは思ってませんでした。
ウチ達が強引にお願いすればいいと言ったせいなんでしょうか。
それよりもとりあえずは、

「あの、ソルさん。本はどこに置きましょうか?」
「どこでもいい」

ソルさんが本棚の側に置いたので、ウチもその近くに置きましょう。
本も片付きましたし、次は・・・・・・次は、ないですね。
この部屋本ばっかりでした。本を片付けたらほぼ元通りです。
ウチの部屋はぬいぐるみがいっぱいあったりするんですけど、この部屋はずいぶんと殺風景ですね。
本棚以外だとタンスが一つあるぐらいです。ソルさんらしいといえばらしいですか。

「部屋から出ろ」
「はいです」

ソルさんと一緒に部屋を出ます。

「ってソルさん、本当にウチ達に宿題教えてくれるんでしょうか?」
「ああ」
「でも、あんな無茶な頼み方だったんですから、聞かなくてもいいと思いますよ?
 メイさんにはウチ達から強く言っておきますし」
「一度引き受けたからには、やってやる」
「はぁ・・・」

うーん、あんなに部屋を滅茶苦茶にされたのに凄い人です。
もしウチが同じことをされたら、もう怒りまくってしばらく口を利きませんね。

「・・・ソルさん、あんなことされて怒ってないんですか?」

そういえば、ソルさんはずっと冷静というか、いつも通り無表情で淡々としてます。
内心では殺意を抱いたりなんてしないんでしょうか。

「ない」

あっさりと、そう言ってのけました。ソルさんのことはまだよくわかりませんけど、嘘って感じはしませんね。
あれで怒らないって、じゃあどんな事態になったらソルさんは怒るんでしょう?
忍耐力が高いにもほどがあります。

ソルさんと一緒に居間に戻ると。

「あ、ソル」

メイさんがなにやら落ち込んだ顔で待ってました。
さすがに随分と怒られたみたいです。普段はエイプリルさんの役割なんですけどね。

「ほら、メイ。ちゃんと言わないと」
「うん。あのね、ソル。ごめんなさい」

わわ、メイさんが素直に謝ってます。珍しいです。
さすがにやりすぎたとメイさんも反省してるんでしょう。
対してソルさんは。

「二度とするな」
「うん。ごめんね」
「本当にすみませんでしたソル先輩。ジョニーとエイプリルにも伝えてよく説教してもらいますので、どうか許してください」
「え、ジョニーにも言うの!?」
「そりゃ言うよ」
「仕方ないですよメイさん。それだけのことをしたんですから」
「ううぅ・・・」

メイさんとしては、さすがにジョニーさんには伝えて欲しくないみたいですけど、それは無理というものです。
そんな話をしてる間に、ソルさんは座ってました。

「どこだ」
「なにが?」
「宿題を手伝えと言っただろ」
「え、ああ、うん。ここだけど」

あれ。メイさんに何か言う事ないんですか?
まさか『二度とするな』だけで終わりなんですか?

「教科書出せ」
「んっとね。はい」
「このページ見てやれ」
「・・・え?それだけ?」
「それでできる」
「できないから聞いてるんだけど」
「やれ」
「・・・・・・うん」

なんかもう教える態勢になってますね。
ウチも再開しましょうか。

608名無しさん:2011/03/06(日) 05:08:35
それからもソルさんに聞きつつ宿題を続けて。

「終わったー!」
「おつかれー!」
「やりましたー!」

いやあ、まさかこんなに早く終わるなんて。
ソルさんのおかげです。
かなりのペースで宿題が進みました。

「疲れたあ」
「ソル先輩のおかげです。ありがとうございます」
「本当です。エイプリルさん達が帰ってくるまでに終わるなんて思ってませんでした。
 ありがとうございます。ってソルさん、どこへ?」
「部屋に戻る」

切り替え早いです!
もうちょっとこの開放感に浸りましょうよ。
まあソルさんは宿題なんてやってなかったわけですけど。

「ありがとねーソル」

メイさんの声に応えることなく、ソルさんは部屋から出ていってしまいました。

「ソルって愛想がなさすぎじゃない?もっと友好的になってもいいじゃん」
「部屋壊された相手にそこまでできたら、ソル先輩を聖人君子に認めるよ」
「怒らないだけでも凄いと思いますけどね」

メイさんには文句一つ言いませんでしたし。

「器が大きいです」
「そうかなあ?こう言うのはなんだけど、あの人の場合は底が抜けてるっていうか、どっか壊れてる気がする」
「うわ、言いますね」
「いやいや、悪口のつもりはないからね?」

ううん、まあ、言うことにちょっと共感できなくもないですけど。

「ところでソルってさ、教えるのはうまかったよね」
「あれはうまいって言うのかな?教科書の何ページ見てやれとしか言われなかったけど」
「でも、ウチ達はそれでできたわけですし」
「どうしてもわかんなかったらちゃんと説明してくれたし」

ソルさんの説明がとてもわかりやすかったのは意外でした。

「ソルさんは先生になれますね」
「えーボクはあんな先生やだ」
「あんまりしゃべらないし、先生には向かないんじゃない?」

それもそうですね。ウチもどんな先生がいいかと言ったら、親しみやすい人がいいです。
その点でソルさんは最低ですね。
そんな会話をしてると、玄関が開く音がして、

「ただいま帰りました」
「ただいま」
「ただいま。みんな、宿題はちゃんと進んでる?」

ディズィーさん達が帰ってきました。

「おかえりー。宿題なら終わったよ」
「よしよし。で、どこまで終わったの?」
「だから、全部終わったんだってば。信じられないのはわかるけどさ」
「・・・本当に?」
「エイプリルさん、しっかりしてください。ほら、ちゃんと終わってますから」
「え・・・?」

エイプリルさん大混乱です。

「本当に終わってるみたいだよエイプリル」
「ちょっと見せて」

自分で確認してようやく納得するエイプリルさん。
そんなに信用ないですかウチ達は。

「なんで終わってるの?」
「いや、なんでって言われても」
「終わってちゃダメなの?」
「がんばったからです」

実際はソルさんのおかげなんですけどね。

「みんな凄いね。今日は徹夜で手伝いかなって話してたんだよ?」
「あー、毎年そうだもんね」
「今年のボクたちは違うんだよ」
「強い味方がいたんです」
「お兄ちゃんに聞いたんですか?」

買ったものを冷蔵庫にしまってたディズィーさんがやってきました。
さすがです。お見通しですね。

「そうです」
「よくお兄ちゃんがお願いを聞いてくれましたね」
「ボク達が真剣に頼んだからだよ」
「よく言うよ。エイプリル、あのね・・・」
「わああ!言わないで!!!」
「メイが何かしたのね?」

メイさんはエイプリルさんにも散々に怒られてました。

609名無しさん:2011/03/06(日) 05:42:42
「うちのメイが本当にご迷惑をおかけしました」
「もう、さっきも謝ったんだって」
「メ〜イ〜」
「うっ。ご、ごめんなさい」
「ごめんなさいですソルさん」

ソルさんの部屋を再び訪れ、またソルさんに謝ってます。ウチも、先ほど謝っていなかったので。
メイさんに強引に頼むように言ったウチにも少しは責任がありますからね。

「それに宿題まで見ていただいたようで、ありがとうございます」
「エイプリルって固すぎ。どこでそんな言い方覚えたのさ」

確かに、エイプリルさんはウチ達と同い年なのに、随分と大人びてる感じです。
それもこれも、メイさんの面倒を見てるおかげだと思いますけど。
それにしても、さっきからウチ達が謝ってるのに、ソルさんは何とも言いません。
ていうか相変わらずこっちを見向きもしません。

「謝ってるんだからさ、こっち見るぐらいしてよソル」
「謝罪ならさっき聞いた。部屋から出て行け」

わぁ。これにどう反応すればいいんでしょう。
部屋から出てもいいんでしょうか。

「ソルさんが怒るのはわかります。何か私達にできることはありますか?」

エイプリルさん大人の対応です。かっこいいです。
でも、ソルさんは別に怒ってないんですよ?
いつも通り無愛想だから怒ってるように見えるかも知れませんけど。
なんて考えていると、ソルさんがこちらに振り向きました。

「これをジョニーに渡せ」
「なんですか?」
「本棚の修理費の請求書だ」
「・・・わかりました」
「それだけだ」

エイプリルさんに封筒を渡すと、これ以上話すことはないとばかりに、
ソルさんは再び机に向かってしまいました。

「では、失礼します」
「じゃあねーソル」
「おじゃましました」

3人で部屋から出て、一息。

「ほら、ちゃんと謝ってたから、ソルも怒ってなかったでしょ?」
「メイは怒られた方がいいの!」
「同感です」

それにソルさんが怒ってないのは最初からです。
謝ったからじゃありません。

「ボクもちょっとやりすぎたと思って反省してるし、もう二度としないから許してよエイプリル」
「許す許さないを決めるのはソルさんだけど、ソルさんも怒ってなかったしまあいいわ」
「ほんと?やったね」
「でもジョニーには言うから。これも渡さないといけないし」

と言いながら、封筒をヒラヒラと振るエイプリルさん。
壊した分はちゃんと弁償しないとダメですよね。

「ええぇ〜・・・はぁ、しょうがないか・・・」
「あ、メイさんもちゃんと反省してるんですね」
「ブリジット、ボクをなんだと思ってるのさ」

実は機会があったらまた同じことやるんじゃないかなってちょっと思ってました。すみませんメイさん。

「でも、ソルはちゃんと頼んだらお願い聞いてくれることはわかったし、収穫はアリだよ」
「あれはちゃんとじゃないです」
「今度からは普通に頼みなさいメイ」
「はーい」

しかし確かに、ソルさんにはあんな無茶苦茶な頼み方をしても、怒りもせず頼みごとを聞いてくれるというのはわかりました。
これなら、メイさんみたいな無茶はないとしても、結構押せ押せで頼めば聞いてくれるんじゃないでしょうか。
そうですね。今度からはウチもそうしてみましょうか。

明日からは新たに二学期が始まりますしね。

610名無しさん:2011/03/06(日) 06:01:05
テスタ「夏休み終わり」

アバ「・・・終わった」

テスタ「長かった」

アバ「・・・4・5ヶ月ぐらいかかったね」

テスタ「書かなかった期間もあったからな」

アバ「・・・うん」

テスタ「しかし、夏休みらしいイベントは、祭りぐらいしかやってないな」

アバ「・・・イベント不足」

テスタ「イベントって書くのに時間かかるから」

アバ「・・・海は?」

テスタ「ソルは行ってないが、その他はみんなで行っているという感じで」

アバ「・・・置いてけぼり」

テスタ「自ら望んでだから大丈夫」

アバ「・・・そう」

テスタ「それにしても夏休みは書き難かった」

アバ「・・・そうね」

テスタ「学校という舞台のありがたさを知った」

アバ「・・・学園物が多いわけ」

テスタ「家が中心だとどうしても登場できないキャラがいるからな」

アバ「・・・テスタとか」

テスタ「アバとか」

アバ「・・・泣ける」

テスタ「登場理由をわざわざ考え無きゃならないのは大変だった」

アバ「・・・おつかれ」

テスタ「冷やかしに来たとか遊びに来たとか」

アバ「・・・夏期講習とか」

テスタ「素のままじゃどう考えても接触しないだろなミリアは家に住まわせることにしたしな」

アバ「・・・そんな理由で」

テスタ「ソルは基本引き篭もってるからな。外の人間と接触する機会がない」

アバ「・・・おかげでミリアの出番激増」

テスタ「猫まで飼って、2学期も継続して家にいることになったし」

アバ「・・・なんという優遇」

テスタ「私たちに少しは出番を譲るべきだ」

アバ「・・・自分で書けば?」

テスタ「私の登場理由がない」

アバ「・・・かわいそうに」

テスタ「アバに同情されるとは・・・」

アバ「・・・いつかいいことあるといいね」

テスタ「あるといいな」

アバ「それでは今日はここまで」

611名無しさん:2011/03/08(火) 00:09:11
え?過去編で夏休みおわりなの???

いろいろこういう展開あるかなぁとか
妄想してたのに
(妄想内容をいうのはダウトのようですので
 いいませんが)

でも、少しづつ終わりに近づいている?
ようでなによりです

612名無しさん:2011/03/09(水) 04:35:15
新学期が始まった。
と言っても、夏休みの間も大部分は学校に行っていた身としては何か変わりがあるわけでもない。
違いがあるとすれば、ミリアが共に登校しているというぐらいか。

「なんか新鮮ですね。ずっとウチとソルさんとディズィーさんとで学校に行ってましたから」
「そう。しばらくの間だけど、よろしくお願いするわ」
「こちらこそ。そうだ、家の合鍵を作ってたんです。どうぞ」
「・・・・・・いいの?」
「もちろんです。私はお買い物に寄り道したりすることもあるので、そんな時のために作ったんです」

ディズィーはミリアを全面的に信頼しているらしい。
まあ、この状況で何か不穏な事があれば、容疑者は当然ミリアに向かうわけなので、ミリアも変なことはできないわけだが。

「それじゃあ受け取るけど・・・」
「ウチだって合鍵なんて持ってないのに。ミリアさん羨ましいです!」
「そう言われても困るわ」

鍵を受け取るミリア。
家の鍵を渡すというその行為に、どれほど意味を持っていることかディズィーは理解しているのだろうか。
つまり、家族であることを認める、ということだ。ミリアとブリジットの差がそこにある。
・・・あいつなら、わかっていてやっている気がするな。
ミリアがどう受け止めているのかは知らないが。

そんなやり取りをするうちにも、学校に近づく。

「おはー。久しぶりソルっち!」
「おはよう、バッドガイ君」
「おはよう。ミリア君と同居続行だってね。おめでとう」
「お久しぶりですバッドガイさん」

ジェリーフィッシュの連中と出会した。
「おはようディズィー、ブリジット、ミリア。昨日ぶり。今日から二学期だね!」
「おはようですメイさん。頻繁に会ってたから新学期って感じがしませんけどね」
「おはようございます」

人数が増え、一気に騒がしくなる。
学校に着き、校門の付近でさらに誰かと出会す。

「よう旦那。元気してた?」
「久しぶりですねソル」
「相変わらず暗いアルネ。新学期なんだからもっと元気だすアル」

新学期早々騒々しい。
校舎に入り、ディズィーらと別れる。

「ソルさん!離れてても心はいつも一緒ですからね!!」
「はいはいわかったから行きましょうねーブリちゃん」

引きづられていくブリジット。ようやく少しは静かになるか。
さて、教室に行く前に行かなければならない場所がある。

「バッドガイ君どこに・・・あ、職員室?お仕事大変だね。がんばってね」

ジェリーフィッシュ共とも別れ職員室に向かう。

「来たな、ソル」
「おはようございますソルさん」
「朝からすまないな。理事長と大統領もそろそろお見えになる」
「恨めしいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」

教師連中が集まっている。
職員会議はすぐにでも開かれるようだ。

あの男こと理事長と、校長のガブリエル、副校長のスレイヤーが職員室に入ってくる。
大した議題なんてない。お約束のような訓示をして終了。
教室に行くとしよう。

613名無しさん:2011/03/23(水) 02:59:43
始業式を行い、そしてHRが始まる。
連絡事項を伝えた後、

「じゃあ、席替えするか」

ということで、席替えをすることになった。

「クジは作ってるよジョニー」
「おう、準備がいいな」
「ソルっちの分は除いてるからね」

俺の席。窓際の最後列。
仕事で度々いなくなる俺は、空席が目立たないからとこの位置に固定されている。
授業中に配布物を配る時など、途中が空いていれば多少面倒がある、というような理由もある。

「それじゃあどんどん引いていってね。御津っちどぞ」
「はいよ」

クジが引かれ、席が決まっていく。

「ソルともおわかれアルナ」

おそらくそうなるだろう。

「ソルはもっと隣の席とは仲良くなるべきアル」
「興味がない」
「そっちはなくても、こっちは話し相手ぐらいなって欲しいアル」

話題もないのに会話をしてどうする。
雑談などしなくていい。

「紗夢っち、引いて引いて」
「アイヤ。教壇の目の前アルカ・・・」
「おおっと!そりゃヤなとこ引いちゃったね。どんまい紗夢っち」
「替わらないアルカ?」
「それはちょっと聞けないなあ」

それから全員クジを引き終わり、席の移動が開始される。
周辺の席に来るのは、静かなやつであればいいが。

「よろしくね、バッドガイ君」

隣席から挨拶される。こいつは一つ後ろに下がっただけか。

「あんたはまた指定席か」
「あ、私の前なの?久しぶりだね」
「そういえばそうかも。ソルっちやっほー」

その前の席。うるさいのが来たな。

「指定席ってなんだ?」
「ん?チプっちが隣なんだ」
「おう、よろしく頼むぜ!ソルもな!」

そして俺の前の席もまた騒がしいのが。

「それで、指定席ってなんなんだ?」
「ああ、ソルっちの隣がこの子の指定席なんだよ。どういうワケか、昔からソルっちの隣になることがやけに多くてさ。
 ソルっちが後から引く場合も、この子の隣の席が多いんだけど。もう運命ってよりは呪いの領域だよねーってぐらい」
「呪いかよ」
「すごいよ?最初にこの2人にクジ引かせたらピタリと隣同士を引き当てたり、逆に最後まで引かせなかったら見事に席が空いてるとか」
「すげえ」
「隣を外しても最低でもその前後は取るからね。前学期みたいに。今回は絶対隣に来ると思ってたよ」
「不思議なこともあるんだな」
「他にもさあ――」

前の2人がさっそく騒がしい。

614名無しさん:2011/03/23(水) 04:15:59
HRも終了し、授業もなく、本日は終了。放課後となる。
自室に行って仕事を始めるか。

「ばいばい、バッドガイ君。お仕事がんばってね」
「じゃーねーソルっち」
「また明日な!」

まだ人が多い教室を去り、自室に向かう。
明日はテストを行うため授業はないが、片付けないといけない事務作業が少しある。

自室。
鍵を開け中に入る。
夏期講習が終わってからここには来ていないので、多少埃が積もっている。
そもそも、ここで授業が行われていたのに、ろくに掃除もやっていない。
ジェリーフィッシュのやつらが講習後に一応掃除してはいたのだが、足りない。
椅子と机も置かれたままだ。
まずは、掃除をするか。とりあえず椅子と机を元の教室に運ぼう。

いくつかの机と椅子をまとめて持ち上げ、自室を出る。

「あれ、ソルさん何やってるんですか?」
「お掃除ですか?お手伝いしましょうかお兄ちゃん?」
「必要ない」
「そんな事言って、一人じゃ時間かかるでしょ。ボクたちも手伝ってあげるって。机運べばいいの?」
「元々姉さん達が強引にここ使うようにしたそうですし、片付けぐらい手伝いますよソルさん」
「お兄さん、箒借りますね。ミリアちゃんもはい」
「私もやるの?」
「ソル先輩、これ貸し一つってことで」

断っているのに勝手に手伝われ、貸しにまでなるのか。

「ねえソル、これどこに運べばいいの?」

メイが机を抱え、聞いてくる。
すでに拒否はできないらしい。

「付いてこい」
「オッケー」

とっとと終わらせよう。
そう決めて机を運んでいると、

「ありゃ、わるおにメイじゃん」
「私らも今から後輩君の部屋を掃除しに行こうとしてたんだけど、もう始めたのね」
「私たちが始めたことだもんね〜」
「すみませんソル先生。HRが少し長引いてしまったもので」

3年のジェリーフィッシュ共。それに加え

「ザトー様、すでに掃除が始まっているようです」
「それはいかんな。我々も加勢するぞヴェノム」
「はっ!」
「やけに賑やかだな。何かあったのか?」

ザトー、ヴェノム、テスタメントも現れた。

「ソル、貴方は何をしでかしたんですか」
「どったの旦那」
「我輩トモアロウ者ガ一夏ノロマンスモナカッタゾ。製造者デアル貴様ノセイダ。プログラムノ改良ヲ要求スル」

人が人を呼び、さらに増える。
ロボカイに関しては俺の知った事ではない。

「・・・楽しそう」
「そうね。私達もやりましょうか」
「俺は嫌だね。勝手に行ってろ」
「・・・・・・・・・・・・ジー」
「・・・・・・あーもうしょうがないねえ!」

来なくていい。
これ以上人が増えてもやることがないだろう。

「ヘイ!俺達を忘れてもらっちゃ困るぜ!」
「俺とチップが来たからには問題解決だ!」
「ところで、何やってるアルカ?」

掃除、のはずだが。

「ソル君が大変なことになってる模様」
「遊ぶなら私達も混ぜてほしいですわ」
「遊びじゃないと思うの。お掃除?手伝おうかバッドガイ君」
「おお、ジェリーフィッシュ全員集合してるじゃん。あたしらもゴー!」

遊びなのだろうか。
遊びなのだろうな。

「これは一体何の騒ぎかね?」
「放課後だってのにこんなに集まって、何やってんだお前ら」
「医者がご入用ならお任せを」
「そんな事態ではないようだが」
「斬らせろおおおお」

収集がつかない。

615名無しさん:2011/03/23(水) 05:48:39
結局、自室のみならず、校舎全体を掃除する事態にまで発展した。

「旦那、なんでこんなことになってんの?」
「知るか」
「知るかって・・・旦那が原因だろ?」

俺はただ、自室を掃除しようとしただけにすぎない。
最後の机と椅子を片付け、自室に戻る途中、アクセルに話しかけられる。

「全校生徒いるんじゃないの?誰も帰らなかったのかね」
「ソルが掃除を始めたのが早かったですからね。本来、大掃除は明日、テスト後にやる予定だったのですが」
「何故我輩ガ掃除ナンテシナケレバナラナイノダ」
「掃除ができる男はモテるらしいぜロボ」
「我輩ノスーパー掃除機能ヲ見セテヤロウ」

そんな機能はつけていない。

「ここら辺は終わりっと。カイ、次はどこよ」
「そうですね。・・・あちらの方になります」
「雌共二我輩ノ活躍ヲ見テモラエルカ?」
「もらえるもらえる。じゃあな旦那」

各人の担当区域は即興でザトーやカイ達によって場所を割り当てられ、スムーズに掃除が行われる。

自室に着くと、大分掃除が進んでいた。

「お帰りなさいですソルさん。ご飯にします?お風呂にします?それともウ・グゥ!?」
「前から思ってたけど、貴方、ブリジットだけには容赦ないわね」

元々、強引に黙らせてみろと言ってきたのはブリジットだからな。
ブリジットとしては、このような事態を想定していたわけではなかっただろうが。

「ひどいですソルさん!家に帰ってきたら奥さんに言ってほしいセリフナンバー1ですよ?なんで殴るんですか!?」

うるさいからだ。それに、以前も言ったよなその台詞。
こんな状況になる度に言うつもりなのか。

「負けませんよ。ソルさんがウチを選んでくれるまでは言いますから」
「貴方も執念ね」

永遠に言われ続けることになるのか。
まあ、一生こいつの近くにいるわけでもないとは思うが。

「お兄ちゃん、ここのお掃除は終わりましたけど、どこか行き届いてないところはありますか?」

ディズィーに言われ、部屋をチェックする。

「問題ない」
「良かったです。じゃあ、私達は他の場所に行きますね」
「早かったね。やっぱりみんなでやると一瞬だよ」
「メイはちょっと遊んでたでしょ」
「掃除もちゃんとやったよぉ」

ディズィー達が自室から出て行く。
部屋は綺麗になっている。では、仕事を始めるか。

「バッドガイ君は、お掃除しないの?」

仕事を始めようとしたところで、声をかけられる。

「何の用だ」
「たまたま通りがかったんだけど。お仕事?」
「ああ」
「みんなでお掃除やってるけど、バッドガイ君も一緒にどうかな?」
「断る」

自室が片付けば、それでいい。
それ以上は、他の連中が勝手に始めたことだ。俺が参加する理由はない。

「行事じゃないから強制はできないけど、バッドガイ君も一緒にお掃除してほしいな。イヤかな?」

嫌とは言わない。掃除を苦に感じることなどない。だが、やる理由もない。
思いつきやなんとなくで行動はしない。

「・・・やっぱり、私じゃバッドガイ君を説得できないね。お仕事の邪魔してごめんね。それじゃ」

そう言って、部屋から出ようとしたところで外から扉が開かれる。

「はっけ〜ん!探したよ、ここにいたんだ」
「ごめんなさい。ちょっとバッドガイ君と話してて」
「ソルちゃんと?ってなにやってるのソルちゃん?ちゃんと掃除しなきゃダメなんだから!」

勝手にやってろ。こっちは仕事だ。

「ちょうど人手が欲しかったんだよね〜。てことでおいでソルちゃん」
「断る」
「断るの禁止。掃除するよ!」

有無を言わさず。

「どうしたのソルちゃん?早く来て」
「あんまりバッドガイ君に無茶を言うのは悪いと思うの」
「だいじょ〜ぶだいじょ〜ぶ。。ソルちゃんはいい子だもん」

そんな事実はない。

「みんな待ってるから早く行こソルちゃん」

騒がしい。行かないければ、このままいつまでも粘られるのだろう。
結局、行くことになるのだ。

616名無しさん:2011/03/23(水) 05:57:33
テスタ「一応全キャラ出したはず」

アバ「・・・多分」

テスタ「忘れられたキャラがいても気にしない」

アバ「・・・誰が誰かわからない」

テスタ「そういうことも気にしない」

アバ「・・・それでいいの?」

テスタ「なぜかこんなことになった」

アバ「・・・なぜこんなことに」

テスタ「掃除やるなんて思ってもなかった」

アバ「・・・勢い」

テスタ「書き始めて変な方向に行くことはままあるが、ここまで狂うのも珍しい」

アバ「・・・もとから特に何も考えてなかったけど」

テスタ「勢いだけじゃどうにもならない事というのはあるものだな」

アバ「・・・今までなんど味わったことか」

テスタ「反省しても、寝て起きたら忘れるから」

アバ「・・・駄目駄目」

テスタ「それでは今日はここまで」

617名無しさん:2011/03/28(月) 03:11:53
新学期が始まって数日。

「クーラー最高だぜ!」
「ああ、まったくだ。ソル様様ってな」
「半裸でもやっぱり暑いんだ御津っち」
「そりゃまだまだ夏だしな」

冷房の効いた教室で夏期講習を行った結果か、夏休みが明けるとクーラーが全教室に設置されていた。
どうやら、教師共も冷房の効いた中での授業はやりやすかったらしい。
また、夏休みの前半に色々なところを救った見返りなのか、懐が随分と潤ったこともクーラー設置の要因と聞いた。
しかし、特に何をしたわけでもないのに、なぜか俺のおかげということになっている。
またジェリーフィッシュ共が適当に話を広めたのだろう。

「ソルもたまには役に立つアルナ」
「ほんとだぜ。そうだ、次は食堂のメニュー増やしてくれよ」
「そりゃいいなチップ。頼むなソル」

リープに直接頼むか、生徒会に要望を出せ。
俺の仕事じゃないしそんな権限もない。

「メニューなら、リープおばさんが秋向けに何か考えているみたいなの」
「あたしらジェリーフィッシュは一足早く試作品を食べさせてもらえるのさ」
「マジかよ。うらやましいぜ!」
「やるじゃねえかソル。頼んだことがさっそく実現されるなんてな」
「ソル関係ないアル」

騒がしい。

「あ、そろそろ次の授業が始まるよ?」
「おう、席に戻らねえと」
「そうアルネ」

ようやく、少し静かになった。
同時に、扉が開きザッパが入ってくる。

「席に着いてください。授業を始めます」

キーンコーンカーンコーン

「では、ここまでにしましょうか」

鐘が鳴り、授業の終了を告げる。
午前の授業が終わり、昼休みとなる。食堂に行くか

「ヘイ待てよソル、一緒に行こうぜ?」
「断る」
「相変わらずつれねえなお前は」
「だって旦那だし」
「彼に愛想を求めるのは無駄というものです」
「我輩、親ニ似ナクテヨカッタ」

またうるさくなった。

食堂に着く。
いつもの定食を注文し、席を取る。

「っておい。お前なんで一人で座ってんだ」
「こっちに6人用のテーブルがあるぜ?そこじゃ無理だろ」

だからなんだ。

「これは無理だな。ま、旦那は無視して飯にしようぜ」
「そうですね。ソルのことは気にしないでいいでしょう」
「慣レテルナ貴様ラ」
「俺達も1年以上の付き合いにはなるけど、さすがにそこまでスルーはできないぜ」
「こんな慣れるのもどうかって思うけどな。チップ、そこの醤油取ってくれ」

もとから、一緒に行動しているつもりもなかった。
昼食を食べ始める。

「ここ、座るよ」

向かいの席に、人。梅軒か。
アバとイノは周囲にいない。一人なのか。
好きにしろ、と返答する前に、すでに梅軒は腰を下ろしていた。

昼食を再開する。
会話することもないし、梅軒から話しかけてくることもない。

昼食を食べ終え、食器を持ち席を立とうとする。
と、そこで初めて梅軒から声がかかった。

「アンタ、一言いいかい?」
「断る」
「いいから一言ぐらい聞けっての」

一体なんだ。

618名無しさん:2011/03/28(月) 03:50:08
「こんな俺でもよ、さっきのは無いと思うぜ」

さっきの。つまり、闇慈達の誘いを無視して一人孤立したことか。

「最初から同行していたわけじゃない」
「ったく、本気で言ってんのかね」

ここで嘘を付く理由もない。

「俺も自分中心な考えをする方と思うけど、アンタほどじゃないね」
「言いたいことはそれだけか」

どうでもいいことだ。お前に言われることでもない。
食器を片付けるか。

「待ちなって。本題はこれからさ」

まだ何かあるのか。

「ミリアがアンタの家に世話になってるだろ?
 最初は夏休みの間だけって話が、いつの間にか寮が完成するまでってことにまでなって。
 一体何があってそんなことになったのか聞きたくてね」
「ディズィーが許可した。それだけだ」

それ以外にない。

「ミリアもディズィーもそう言ってたけどね、それだけとは思えないんだよ俺は。
 大体、アンタみたいな他人をなんとも思ってない人間と一緒に生活するなんて、俺は死んでもゴメンだね。
 それがなんだい。ミリアのやつ、断れたのにまだアンタの家で暮らすって。どういうことだい?
 アンタ何か弱みでも握って、ミリアを脅したりしてんじゃないだろうね」
「ねえよ」

そんなことをして俺に何の得がある。

「どうだかね。そもそもアンタは、夏休みの間はミリアと何かあったりしてないだろうね?」
「ない」

仮にあったとしても、お前に関係のあることではないだろう。

「信用できないね。なんでミリアもこいつの家になんかに居座るかね。ディズィーは信用できるけど」

色々と俺に難癖をつけるこいつは、つまるところ、ただミリアの身を案じているらしい。
姉御肌というやつか。ミリアのことが気にかかるのだろう。

「話は終わりか」

なら、食器を片付け教室に戻るとしよう。

「ちっ、最後にこれだけは言っておくけどね」
「なんだ」
「ミリアになんかあったら、覚悟するんだよ」

俺にその警告をするために、アバ達と離れ一人で食堂に来たというのか。
随分と心配性なやつだ。

席を立ち、移動する。
が、こちらも一つ梅軒に伝えておくことがある。

「おい」
「なんだい」
「お前に出した夏休みの課題、今日の放課後までに提出しろ」

成績不良者、一年では梅軒、ブリジット、メイだけに出した特別課題。

「・・・・・・明日・・・いや明後日じゃダメかい?それまでにはなんとか・・・」

急に態度が弱くなる。
やってないのか。予想はしてたが。

「2学期の授業初日に今日が期限だと決めたはずだ。今日、居残ってでも出せ」
「・・・ぐっ」

本来、最初の授業で提出すべきものだったが、梅軒の要望により今日に伸ばしたものだ。
これ以上、期限の延長はない。
ブリジットとメイも、周囲に頼りまくった挙句なんとか提出している。

「アンタ、徹夜することになるよ」
「構わん」
「・・・ちっ」

それが仕事なのだ。

「わかったよ。なんとかすりゃいいんだろ」

そうしろ。人に聞いてでも構わない。何もしないよりはマシだ。
さて、これ以上は何もない。教室に戻るか。

619名無しさん:2011/03/28(月) 04:47:29
放課後。

「・・・ここ簡単・・・こう。・・・わかった?」
「わかるか!」
「アバは言葉が足りないのよ。いいかしら?まずはこっちの――」
「待ちな、俺には何がなんだかわからない」
「ミリアも説明下手ね」
「そう言うイノが教えたらどうかしら」
「私にも荷が重いわ」
「ディズィー、アンタだけが頼みだ」
「私でわかる範囲でよければ」
「ウチも手伝います!」
「邪魔するんじゃないよ」

自室が騒がしい。

「教室でやれ」
「教室はもうクーラーは切られてるのよ。ここならリモコンは貴方が持ってるでしょう?」

というだけの理由で、ここで梅軒を数人で囲んでいる。

「・・・進まない」
「そんなに難しい問題じゃないわよね?」

当然だ。解けない問題を渡しても意味はない。
梅軒でもわかる範囲で作ってある。

梅軒達が騒ぎながら課題を進める傍ら、仕事をこなす。
そして、明日の授業の準備も、スレイヤーに頼まれた雑用も片付けた。
課題はまだ終わらないようだ。

「あれ、ソルさんお暇ですか?」

ブリジットが近寄ってくる。

「じゃあ今からウチと隣の教室に行きませんか?」
「断る」
「お願いしますソルさん!ウチの夢の一つを今叶えたいんです!」
「ブリジットの夢ってなんなのかしら?」

ミリアも会話に加わってくる。

「それはですね、夕日の差す放課後の静かな教室、ソルさんと二人っきりというムード満点の中、一世一代の告白をすることです!」
「梅軒、貴方、この子より成績悪いのよ」
「うるさいね。こっちだってちょっと落ち込んでるよ」

学業の成績と性格の異常さは別問題だが。
こいつより下というのはショックなものらしい。

「というわけでソルさん!ウチに付き合ってください」
「断る」
「なんでですか!?」

何故も何もない。付き合う理由が何一つない。

「ブリジットってバカよね」
「ひどいですミリアさん。ウチは純粋に恋する乙女なだけですよ」
「・・・・・・そう」

呆れて言葉もないらしい。

「私は応援するわよブリジット」
「イノさん!ありがとうございます」
「恋は女を美しくするって言うものね。今のブリジットは輝いてるわ」
「だそうですソルさん!今のウチは100万ボルトの輝きですよ!」

単位がおかしい。

「ちょっと静かにしてくれないかい?ディズィーの説明が聞こえやしないよ」
「すみません皆さん。もう少しお静かにお願いします」
「・・・梅軒・・・がんばれ」

少しは進み始めたか。

「梅軒さんの邪魔しちゃ悪いですし、隣の教室に行きましょうソルさん」
「断る」
「何ドサクサに紛れて誘ってるのよ」

鬱陶しいやつだ。

「ところで、そろそろ陽が沈むわよ」
「ああ・・・ウチの夢が・・・」

夏場で陽が沈むのが随分遅かったが、夜になった。
時間的にはとうに夜だったが。

「また今度がんばればいいじゃない」
「ウチの味方はイノさんだけです」
「私にできることがあったら協力するわブリジット」

余計なことをするなイノ。

「それはそうと、梅軒は少しは進んでるのかしら?」
「まだ終わりそうにないね」
「・・・次・・・ここがこう。・・・終わり」
「ちっともわかんないよ」
「あのですね――」

こんな調子で、結局、随分と遅くまで学校に残っていた。

620名無しさん:2011/03/28(月) 04:55:13
テスタ「2学期になった」

アバ「・・・おめでとう」

テスタ「新学期だし色々変えていこうかなと思っている」

アバ「・・・例えば?」

テスタ「本編のキャラをリストラするとか」

アバ「・・・・・・え?」

テスタ「2学期といえば行事がたくさん」

アバ「・・・急に話題が変わった」

テスタ「体育祭、生徒会選挙、修学旅行、冬休み、クリスマス、他」

アバ「・・・全部やるの?」

テスタ「キリがないな」

アバ「・・・うん」

テスタ「夏休みに関しても、あれやこれやとネタはあったが、それだといつまでも夏休みが終わらないので打ち切ったという」

アバ「・・・仕方ない」

テスタ「2学期はどれだけかかることになるか」

アバ「・・・やるしかない」

テスタ「がんばろう」

アバ「それでは今日はここまで」

621名無しさん:2011/03/30(水) 03:00:49
朝、目が覚める。
ベッドから出て着替えを済ませ、部屋から出る。
ベッドで寝ていた猫共も起きてついてくる。

一階に降りて、まず猫に餌と水を与える。
普段はディズィーかミリアの役割だが、休日は俺が最初に起きるので俺の役となる。

台所に立ち、朝食を作る。
手慣れた作業で、料理はすぐに完成する。
そこで、一旦手が止まった。

いつもならミリアが起きてくる頃合いなのだが、今日はそんな気配がない。
二学期となり最初の休日。生活が変わって疲れたのか、まだ眠っているのかもしれない。
料理は二人分作ってしまったが、寝ているなら起こす必要もない。
一人分だけ配膳し、食べるとしよう。

そうして一人で食事を始める。
そういえば、夏休みに入って以降は、ミリアが同席していたな。
一人きりの食卓というものも久しぶりか。
だからと言って何か感慨があるわけでもないのだが。

朝食を食べていると、足元にサンタナが寄ってきた。
いつもなら、ミリアに魚でも分けてもらえるが、生憎ミリアはいない。
無視して食事を続けていると、サンタナはいつまでもそこで座って待ち続けていた。
行儀の良い猫だ。ミリアはよく躾たものだと思う。特にこいつは。
他の猫も少しはいたが、諦めて散っているというのに。

なぜ待ち続けるのか。餌が足りなくているわけではない。まだ餌皿に餌は残っている。
猫の考えなどわかりはしない。魚を与えれば去るのだろうか。

試しに一つ、魚の身を少し取り、サンタナに与えてみる。
サンタナはまず匂いをかぎ、そして口をつける。
食べ終えると、また姿勢を戻し、こちらを見上げてくる。
魚が食べたいだけなのか。どれだけ食えばこいつは満足するのだろう。

もう一切れ、与えてみる。
サンタナは先ほどと同じ行動を繰り返し、また元の姿勢に戻る。
と同時に、一声、鳴いた。さて、今のは何のために鳴いたのか。
礼か、催促か、他の意味があるのか。考えたところでわかりはしない。

俺がサンタナに魚をやっているのを見たのか、トラも寄ってきた。
こいつにも一切れ、与えてみる。
トラの場合、食べ終わると、またどこかに行ってしまった。一切れで満足したのだろうか。

サンタナにもう一切れ与える。
それを食べ終えると、今度はその場に寝そべり、毛づくろいを始めた。
魚はもう十分らしい。三切れで腹が膨れたとも思えないが、まあいい。
自分の食事を再開しよう。
食べ終えるまでに、他の猫がやってきたりもしたが、一切れか二切れ魚を与えてやればトラのように離れていった。
魚の何が猫共を満足させているのかはわからないが、魚をやるだけでおとなしくなるなら楽なものだな。

食事を終え、食器を片付ける。
まずは皿を洗って、それから掃除を始めるとしよう。

掃除をしていると、ミリアが起きてきた。

「おはよう」
「ああ」

しかしどこか、落ち着かない感じだ。

「・・・私の分の朝食って・・・」
「作ってある。食べたいなら温めなおせ」
「やっぱり作ってたのね。ごめんなさい、寝過ごしてしまって・・・」

謝る必要などないが。
朝食までに起きてこいと決めているわけではない。
寝たいなら、ディズィーのように昼近くまで寝ていればいい。

「起こしてくれてもよかったのよ?」
「無理やり起こす理由もない。寝たいなら寝てろ」
「・・・そう。ご飯、貰うわね」

味噌汁に火をかけ、すでに焼けていた魚を温めなおす。
その他も配膳し、ミリアは朝食を取り始める。
こちらは掃除を続けるか。

「サンタナ?・・・魚がいらないのかしら?他の子もこないし」

掃除をしていると、そんな声が聞こえてきた。

「私が起きるのが遅くなったせいかしら・・・」

首を傾げるミリア。
まさか、俺が魚をすでに与えたからだとは想像もしないのだろう。
ある意味、お前が朝にいなかったからというのは当たっている。

622名無しさん:2011/03/30(水) 03:48:26
ピンポーン

と、チャイムが鳴り、

ガチャ

と玄関の開く音がした。
続いて家に上がり、こちらに近づいてくる足音。

「おはようございますソルさん!ウチに会えなくて寂しくなったりしてませんか!?」

昨日も当たり前のように顔を会わせたが。

「あ、おはようございますミリアさん。今朝御飯なんですか?」
「おはようブリジット。ええ、ちょっと寝過ごしてしまったのよ」
「そうなんですか。ミリアさんも随分この家に慣れたみたいですね」
「そうなるのかしら?」
「そうですよ。他人行儀だったら、寝過ごすなんてしないじゃないですか」
「・・・そうかもしれないわね」

確かに、夏休みの間は毎朝同じ時間に起きてきていた。
さっきも、寝過ごしたことに関して多少負い目を感じていたようだしな。

「それにしてもミリアさん羨ましいです。ソルさんに朝御飯を作ってもらえるなんて。ウチと代わってください!」
「貴方の気持ちはわかるけど、無理でしょう?」
「ウチがソルさんの朝御飯を用意するんです。『おはようブリジット。お前の味噌汁は世界で一番美味い!』なんて言ってもらイタッ!?」
「ちょっとソル、猫のおもちゃを投げないでちょうだい」

ちょうど手元にあったもんでな。

「いったぁ・・・これ結構硬いですよ?ウチが怪我したらソルさんに一生責任取ってもらいますからね?はっ、それもいいかも」
「めげないわね」

鬱陶しい。
掃除を続けよう。足元にクロがじゃれついてきて邪魔だが。

「そしたらソルさんに朝御飯を作ってもらうのもいいですね。ソルさんは料理上手ですから」
「そうね。休日の彼は完全に主夫だもの」
「ですよね。『おまようブリジット。お前にために味噌汁を作った。隠し味は隠しきれない愛情だ!』なんテッ!!」
「ソル、投げないでって言ったでしょ?」

ここから移動して殴りに行くのも面倒なもんでな。

「それにしても、貴方の脳内でのソルはとんでもないことになってるわね」
「そんなことないです。ソルさんならそれぐらいやってくれます」
「現実を見たほうがいいんじゃないかしら」

ミリアの言う通りだ。

「いいえ、ウチはいつかきっとソルさんとそんな仲になってみせます!あと一歩なんです!」
「貴方とソルの距離を測りなおした方がいいと思うわ」

居間の掃除は終わった。
他の所に移るか。

「あ、ソル」

移動しかけたところで、ミリアに呼び止められた。

「なんだ」
「ご飯、ごちそうさま。それだけよ」
「そうか」

わざわざ呼び止めてまで言わなくてもいいんだが。
二階の掃除をやるか。

「羨ましいですミリアさん!ウチだって今みたいなやり取りをソルさんとしたいです!!」
「何を言ってるのよ貴方」

そんな声を背に、二階に移動した。

623名無しさん:2011/03/30(水) 04:30:15
午前中に掃除を終わらせ、昼食を作り食べた後、部屋に戻る。
研究用の資料も整理し終えた。後は、いつも通り暇を潰すだけだ。

机に向かい勉学を始める。
しばらくしたころ、部屋がノックされた。

「誰だ」
「ウチです。ちょっと失礼します」

ブリジットが入ってくる。

「何の用だ」
「コーヒーをお持ちしました。それと、タマさんを探してるんですけど」

タマなら、ベッドで毛づくろいをしている。

「あ、やっぱりここにいたんですね。ソルさんのお部屋っていつでも一匹はいますよね」

そんなこともない。
現に今、お前がタマを連れ出せば一匹もいなくなる。

「ではこの子はお借りします。ソルさんも一緒にネコさんと遊びませんか?」
「断る」
「そうですか。それじゃあお勉強がんばってくださいです。失礼しました:

コーヒーを置き、代わりに猫を抱え、ブリジットはあっさりと出て行く。
こういう時は、俺が軽々に誘いに乗らないことを知っている。

その後も部屋に篭もり、時間が過ぎ、夜になる。
食事のために一階に降りると、すでにブリジットは帰っていた。

「あら、降りてきたのね。そろそろ晩ご飯ができるわ」
「ミリアさん、お皿を出してもらえますか?」
「はい、ディズィー」

二人で台所に立ち、夕食を作っていた。

「お兄ちゃん、テーブルの用意をお願いします」
「ああ」

テーブルを拭き、箸やコップを用意し、出来上がった料理を並べていく。
全ての料理が完成し準備が整い、食事となる。

「お兄ちゃん、そのシチューはどうですか?ミリアさんが作ったんですよ?」

シチューか。味はまあまあだが、それよりも、

「お前が教えたのか」
「はい。そうです」
「さすが、気づけるのね」

味付けが、ディズィーに似ている。
ミリアも料理はしていたが、その味付けはミリア好みのものだった。
うまいまずいではなく、調理法や調味料の使い方でそういう味の差はあるものだ。
それが、ディズィーの作るシチューに少し近付いている。

「私の、というよりはお兄ちゃんの味、ですけどね」

ディズィーに料理を教えたのは俺なので、そうも言えるか。
俺が教えたのはほんの基礎にすぎないがな。大部分はディズィーの努力によるものだ。

「やっぱり自分の作る料理とは違うわね」
「ミリアさんのお料理も美味しいですよ?」
「ありがとうディズィー。でも、せっかくだから、できれば貴方に合わせたいの」
「私でよければ。明日からも一緒にお料理しましょうね」
「ええ、よろしく」

ディズィーが俺と一緒に料理をすることなんてほとんどないからな。
主に、俺一人の方がうまくできるし効率もいいという理由でだ。
腕の差にディズィーが遠慮するのだ。俺は気にしないのだが。実際、ディズィーが思うほど差があるわけでもない。
しかしそんな事情もあるので、誰かと一緒に料理というのが、楽しかったりするのだろう。

食事を終え、風呂に入る。後は、眠るまでまた暇つぶし。
そして、俺の休日は終わりを迎える。

624名無しさん:2011/03/30(水) 04:33:19
アバ「・・・・・・」

アバ「・・・・・・?」

アバ「・・・テスタ?」

アバ「・・・・・・・・・・・・」

アバ「・・・・・・あれ?」

アバ「・・・まさか・・・」

アバ「・・・リストラされた?」

アバ「・・・・・・・・・・・・」

アバ「・・・どうしよう・・・」

アバ「・・・・・・」

アバ「それでは今日はここまで」

625名無しさん:2011/04/04(月) 02:47:01
キーンコーンカーンコーン

と、鐘が鳴り、授業の時間が終わりを迎えた。

「それでは今日はここまで」

授業を終わらせ、教材をまとめる。

「ハァ、ようやく終わったアル」

教壇の前の席である、紗夢が伸びをしながら独り言をこぼす。

「ソルの授業は相変わらず大疲れるアル。もっと優しく教えるネ」
「これ以上は難しいな」

すでに、自分なりにわかりやすく教えているつもりだ。
それに、理解できていない生徒には個別に課題を与えている。
紗夢も、小テストや宿題等で俺が確認する範囲では十分理解できている。

「そうじゃなくて、ソルの授業は堅苦しいアル。ずっと集中し続けるんじゃ息苦しいアルネ。
 たまには雑談の一つも挟んだらどうアルカ?」
「その必要はない」

スレイヤーやジョニーはそういう雑談や冗談を混じえた授業を得意としているが、俺のやり方ではない。
現状、それらの要素がなくても授業は成立している。

「ソルの授業は疲れるアル。同じ勉強をするのでも、楽しくやったほうがいいアルヨ?」
「楽しさより理解度が優先だ」

面白おかしく授業をしたところで、生徒が理解できていないなら無意味だ。

「料理だって味はもちろん大切アルが、見た目だって重要な要素アルネ。
 ソルなら面白い授業とわかりやすさをきっと両立できるアルヨ」

根拠のないことを言う。
両立して生徒がより授業を理解しやすくなるなら、するべきかもしれないが。
しかし、どうする。やるのか?俺が、それを。できるのか?
そんなことを考えつつ、教材をまとめ終え、教壇から去る。

「おつかれアル」

教室を出て、自室に向かう。
次の時間は、1年の授業を行う。
自室で教材を準備し、1年の教室に向かう。

「ソルさん!ウチに会いに来てくれたんですね!」
「席に着け」

ブリジットを追いやり、教壇に着く。

キーンコーンカーンコーン

と、鐘が鳴る。

「授業を始める」

そして、いつも通りに授業を始める。
いつものように、前日に立てた予定通りに授業を進める。
そこに、一つだけ、変化をつけてみる。

「・・・よって、ここはこうなる。余談ではあるが――」

紗夢に言われてみたことをやってみる。授業に関する適当な雑学を披露する。
雑学なら、普段の勉学の結果、それなりに持っている。

「――という逸話がある。次の問題だが」

と、次の項目の説明に移ろうとしたが、生徒が皆呆然としている。
この反応は予測できていた。いきなり今までやらなかったことをやれば、こんな結果にもなるだろう。
しかし、このままでは授業にならない。
生徒の一人を指名し、次の問題をやらせることにする。

「お前、次の問題をやってみろ」
「・・・え?は、はい。あの、でも、すみませんソル先輩。一つ質問が・・・」
「なんだ」
「・・・さっきの、なんですか?」

必然の質問だ。

「特に意味のない雑学だ。テストに出すことはないから覚えなくていい」
「雑学・・・・・・」

教室中がざわめく。
よほど俺の行動が理解できないらしい。
それも当然のことだとは思うが。

「ソルが壊れた」
「今すぐウチと一緒に病院に行きましょうソルさん!!!!」
「お兄ちゃん・・・とうとう・・・」
「一体何があったのよ・・・」
「違うって。あれはソル先輩じゃないって。絶対偽物だって」
「・・・そっくりさん」
「あんた、何モンだい?」
「本物のお兄さんはどこに?」
「ねえエイプリル、ファウストか誰かを呼んできたらどうかしら?」
「そ、そうね。行ってくる」
「行くな」

これでは、授業の理解が深まるどころの話ではないな。

626名無しさん:2011/04/04(月) 03:51:43
ざわめく教室を静め、授業を続ける。
時折、先程のような雑学を交え、その度に教室はざわめいていた。

キーンコーンカーンコーン

そして鐘が鳴り、授業は終了する。

「それでは今日はここまで」

終わりを告げると、数名の生徒がすぐさま席を立ち、教壇に近づいてきた。

「ソルさん!本当に、何があったんですか!?」
「そうだよソル!一体どうしたのさ!」
「私もちょっと驚きましたよ、お兄ちゃん」

ディズィー、お前はさっき「とうとう・・・」と言っていたな。
普段から何を予想しているんだお前は。

「姉さんに聞いてきたけど、今の一つ前の授業じゃいつも通りだったらしいよ?
 授業後にソル先輩と紗夢先輩が何か話してたらしいけど」

行動が早い。

「紗夢さんと何を話したんですかソルさん!」
「気になるわね」
「ソルさんが授業のスタイルを変えるほどの会話って想像できない」

こいつらに説明する必要もない。
教材をまとめ、教室を出る、その前に一つ言っておこう。

「前のやり方の方がいいなら、次から戻すぞ」
「え・・・うーん、別に悪いってわけじゃないよ?」
「そうです。ウチ達はちょっと驚いただけです」
「同意見ですね。お兄ちゃんがああいうことをするとは思ってなかったので」
「話がつまらなかったわけでもないし、止めて欲しいってほどではないわね」

最初の混乱のせいで、元の予定より進みは多少遅かったが、今後に支障をきたすほどの事でもなかった。
これで成績が下がるようなら、このやり方はやめた方がいいだろう。
しかし、しばらくは続けてみないと、効果は判断できない。

まだ騒がしい教室を出る。
他のクラスでの授業でも、おそらくここと似たような反応をされるのだろう。

その後、3年の授業を行ったが、案の定の反応であった。

その仕事も終え、教室に戻る。

「ようソル。噂は本当なのか?」
「勉強のしすぎでついに壊れたってな!」

事実無根だ。

「アー・・・もしかしてワタシのせいアルカ?」
「違う」

きっかけはお前だが、それを是とし、実行に移したのは自分自身だ。
紗夢のせいなどではない。

「ちぇっ。ソルっちの授業受けてみたかったのに、今日はもう終わりだしなあ」
「バッドガイ君の授業なら明日もあるの。明日も、今噂になってるような授業をするのかな?」

そのつもりではある。

「楽しみにしてるぜソル!」
「ソルっち、最高に笑える授業を頼むよ!」

・・・今、一体どんな噂になってるんだ?
ジェリーフィッシュがまた尾ひれを付け加えたか。

「ソル、がんばれアル」
「バッドガイ君、無茶はしない方がいいと思うの」

しばらくは、授業を行うのにも多少難がありそうだな。

627名無しさん:2011/04/04(月) 04:03:45
ロボ「我輩ノ時代ガ来タ」

アバ「・・・急に何?」

ロボ「本編ノ主役二ナレルチャンスト聞イタ」

アバ「・・・どこで」

ロボ「細カイコトハ気ニスルナ」

アバ「・・・そう」

ロボ「提案ガアル」

アバ「・・・何?」

ロボ「我輩ヲ主役ニスルベキ」

アバ「・・・却下」

ロボ「何故ダ!?」

アバ「・・・何故も何も・・・」

ロボ「機械ノ様ナ人間ヨリ、人間ノ様ナ機械ノ方ガ人気ガアルハズ」

アバ「・・・お帰りください」

ロボ「本編ヲ独リ占メスル気カ!」

アバ「・・・他の誰かを呼ぶから」

ロボ「我輩デモイイジャナイカ」

アバ「・・・やだ」

ロボ「酷イ」

アバ「それでは今日はここまで」

628名無しさん:2011/04/14(木) 02:29:21
放課後。自室にて仕事を行う。
いつも通り、明日の授業の準備。いつも通り、騒がしい連中がいる。
いつもと違い、その面子は多少変わったものではあるが。

「ソルも大変アルナ」
「彼にとってはなんてことはないでしょう」
「カイも先生をやってみたらどうアルカ?」
「私にはそこまでの学力はありませんよ。授業で習ったことなら多少は教えられますがね」

1年は終わった。次は2年の分だ。
授業のスタイルを少し変えたので、その辺りも考慮して授業計画を立てるようになった。
と言っても、これまで大きく変わることもないがな。

「ふむ、アバよ。貴様なら能力に問題はないのではないか?」
「・・・無理」
「貴方、人前に出ても喋らないものね」

ここらのポイントを中心に教えるとして、どう教えるか。
恐らく一度では理解しきれない生徒も出るだろう。その辺を補ってやる必要がある。

「それにしてもソルの奴め、最近の授業は一体どうしたというのだ。まさかっ、ミリアと何かあったのではないだろうな!?」
「なんでも私に結びつけるのはやめてくれないかしら」
「しかし、ソルと君は同居しているのだ。ザトー様が心配されるのも仕方のないこと」
「その短絡的な思考をやめてって言ってるのよヴェノム」
「仕方ないアルネ。年頃の男女が一つ屋根の下なのに何もないっていうのは逆に不自然アル」
「ぬああああああ!ミリア!貴様やはりソルと!!」
「うるさいわね」

騒がしい連中だ。仕事の邪魔をするな。

「あまり騒ぐのはやめましょう。ソルの仕事の邪魔ですよ。ザトー」
「む、カイの言う通りか。すまなかったなソル」

謝らなくていいから、黙っていろ。

「貴方、まだ仕事は終わらないの?」
「もうすぐだ」

2年も終わった。後は3年。

「・・・聞いたかヴェノム?今の台詞。まるで旦那の帰りを待つ妻のようではないか・・・」
「お気を確かに、ザトー様。ミリア!君は少しはザトー様を労ったらどうだ」
「馬鹿言わないでよヴェノム」
「・・・新婚気分?」
「ミリアああああああああああああああ!!!!」
「うるさい」
「すみません、ソル」

カイ、しっかりと管理してろ。

「ソルも大変アルナ」

俺が招いた苦労ではないんだがな。
さて、授業計画は立て終わった。仕事は終了だ。

「終わったようだな」
「お疲れ様です」
「ではソル、こっちに来てくれ」

しかし今日はまだ、生徒として生徒会に呼ばれている。
その呼び出した本人も、俺以外に呼ばれたやつらも、なぜか生徒会室ではなくこの自室に集まっているが。

「それでは緊急会議を始める。内容は告知していた通り、体育祭についてだ」

そのため、集められた。
各クラスの代表者に、俺とアバ。学園祭でも中心となったメンバー。
また、何事か押し付けられるのか。

「初参加となるミリアとアバもいる。最初に、簡単に我校の体育祭を説明しよう。ヴェノム」
「はっ。まず、チームを2つに分ける。そして互いに競い合い、点が高いほうが勝利となる。以上」
「貴方は何を言っているの?」
「・・・理解不能」
「そんなの聞かなくてもわかるアル」
「もう少し真面目にやってもらえませんか?ヴェノム」
「ちょっとした冗談のつもりだったのだが・・・ザトー様・・・慰めてください・・・」
「さすがの私も庇いきれんぞ」
「ザトー様・・・」

早く話を進めろ。

「とりあえずヴェノムは置いておこう。まず、チーム分けだが、これは各生徒の身体能力等を考慮し、我々で決定することにする」
「クジで決めるとかじゃないのね」
「我々のように、特に身体能力に秀でてる連中がいるからな。バランスは取ったほうがいい」
「・・・なるほど」
「去年もそうだったアルネ」
「一昨年、私にザトー様、そしてテスタが同じチームになった結果、ダブルスコア以上で決着がついたからな」
「明らかにやりすぎでしょう」
「反省している。なので、去年からは戦力の均衡化を図ることになった」

その辺のことはすでに知っている。
異論もない。好きにチームを分ければいい。

629名無しさん:2011/04/14(木) 03:24:03
会議は続く。

「しかし、チームを分けるにもこれまた問題があった」
「・・・何?」
「なんとなく、察しはつくけど」
「そう。ソルだ」
「去年のソルは無双してました」
「バランスブレイカーすぎるアル」

勝てる勝負で負けはしない。
それにあくまで、出場競技全てで勝利したにすぎない。
その競技数が、かなり多かったのは俺の采配ではないしな。

「対ソルは捨てればいいじゃない」
「得点の高い競技に出てくるアルヨ。捨てられないアル」
「・・・厄介」
「貴方、手加減しなさいよ」
「断る」

なぜわざわざ負けてやらなければならない。

「そういうわけで、今年のソルはちょっと特別扱いにすることにした」
「なんだ」

まだ、何も聞いていない。
変なルールでなければいいが。

「ソルは別枠だ。互いの組にそれぞれ2回まで助っ人キャラとして参加可能とする」
「お互いにソルを使えるということですか」
「それならまあ、公平アルナ」
「使いどころ次第で一発逆転も可能という感じだ」
「互いに同じ競技で助っ人を頼んだらどうするの?」
「その場合はくじ引きだ」
「・・・了解」
「それでいいんじゃないでしょうか」
「ソルもいいな?」
「ああ」

好きにしろ。

「ついでに、暇を持て余すソルには大会運営もやってもらうことになっている」

なんだそれは。

「ジェリーフィッシュが運営に協力を申し出てくれた。彼女達とうまくやってくれソル」
「具体的には、各競技で使う用具の準備や片付、その指示、審判、実況解説、他諸々だな。何かあれば私かザトー様に聞いてくれ」
「断る」
「残念だがすでに決定事項だ」

横暴な。

「貴方ならやれるでしょう。頼みますよソル」
「やればできるアル」
「・・・がんばれ」
「有能すぎるのも考えものね」

こういうのは、生徒会であるザトーとヴェノムのやることではないのか。

「我々は各組の大将だからな。それぞれの組の指揮と勝利を優先させてもらう」
「ザトー様と敵同士になってしまうとは・・・。なんという運命の悪戯!」
「ヴェノム、話し合いで決めただろう?」
「それでも!愛しあう二人が戦うとはなんという残酷なことでしょう!ああザトー様、どうしてあなたはザトー様なのですか?」

「ソル、貴方がしっかりしてくださいね」
「体育祭の成功は、ソルにかかってると言っても過言じゃないアル」
「・・・がんばれ」
「あんなのが大将でいいのかしら」

やはり、面倒ごとを押し付けてくれる。

「ああ、そうだ。チーム分けだが、草案はできている。これを見てくれ」

ザトーからプリントが配られる。
戦力均衡を図ったと言うが、確かにこれなら問題ないだろう。

「異論があるなら言ってくれ。ないならこれで決定とする」
「あら、私はヴェノムのチームなのね」
「そうだ。ザトー様の心遣いだ。感謝しろミリア」
「フッ、もし私のチームだったら、ミリアは必ず文句を言うと思ったからな」
「その通りよ。気が利くわね」
「ミリアに褒められたっ!!!!」
「そこで喜んでいいアルカ・・・?」
「ほっときましょう」

それが正しい対応だ。

630名無しさん:2011/04/14(木) 04:04:48
その後も体育祭についての話し合いが多少行われた。
そして、会議は終わる。

「では、遅くまで残ってくれてありがとう諸君。週末の体育祭はぜひ成功させようではないか」
「週末、なんですよね」
「いくらなんでも、急すぎないかしら。というか、こういう会議はもっと早く開くべきじゃないの?」
「なに、行き当たりばったりでもどうにかなるものだ」
「・・・適当」
「ソルがなんとかするアルヨ」
「そうだ。ザトー様と私の分まで、頼んだぞソル」

無茶苦茶なことを言ってくれる。
しかし、押し付けられたとはいえ、それが役割ならやるしかない。
文句を言ったところでどうにもならないのだ。

「それでは解散だ。気をつけて帰ってくれたまえ」
「私達も帰りましょう、ザトー様」
「うむ。アバも行くぞ」
「・・・うん」

俺も帰るか。荷物を持ち、自室を出る。
全員が出たのを確認し、鍵をかける。

「早く帰りましょう。ディズィーが待ってるわ」
「ああ」
「ちょっと待て!貴様、ミリアと一緒に帰るつもりか!」

帰ろうとしたところで、ザトーに絡まれた。

「許さん!許さんぞソル!そんな羨ましいこと私が絶対に許さん!!」
「お、落ち着いてくださいザトー様。仕方ないではありませんか」

帰る先が同じなのだ。わざわざ時間や道をずらす理由もない。

「ミリア!お前はどうなんだ?ソルと一緒に帰るなんて嫌じゃないのか!?」
「別に?」
「なっ!?」
「大体、一緒に帰りたくもない相手の家になんか居候しないわよ」
「それはそうでしょうね」
「ミリアの言う通りアル」

帰るとするか。
ザトーの騒ぎに付き合っていたらいつまでも帰れない。

「ちょっと、待ちなさい。置いていくことはないでしょう」
「・・・バイバイ、ミリア」
「ええ。また明日アバ」
「サヨナラアル」
「お気をつけて」
「ミリアああああああああ!!」
「ザトー様、私達も帰りましょう・・・」

靴に履き替え、外に出る。

「大分、薄暗くなってきたわね」

すでに、夏も終わりかけ、陽が沈むのも早くなっている。
家路につく。ディズィーが晩飯を作って待っている。
遅くなるとは伝えたが、この時間ならまだ食べずに待っているのだろう。

家まで、大した距離ではない。その短い道中を、無言で歩く。
ミリアが少し間を空けて横にいるが、話しかけてくることはない。
ブリジットならば、家に着くまでしゃべり続ける騒がしい帰り道も、ミリアならば静かなものだ。

そもそも、こいつと帰り道を同じにするというのは初めてだな。
夏休み中は一人で学校と家を行き来していたし、学校が始まれば、いつも仕事で遅くなる。
それでも、たまにブリジットが待ち伏せていたりするのだが。
結局、何一つ会話することもなく、家に着いた。

「帰った」
「ただいま」
「おかえりなさい、お兄ちゃん、ミリアさん。ご飯ができてますよ」
「遅くなってごめんなさいディズィー」
「気にすることありませんよ。お疲れさまでした」

ディズィーと猫に出迎えられる。
やはり、待っていたらしい。
なら、飯にするか。

631名無しさん:2011/04/14(木) 04:18:06
イノ「音楽の力って偉大よ」

アバ「・・・どうしたの?」

イノ「おまけを書くとき、いつもBGMを流してるのよ」

アバ「・・・うん」

イノ「その方が気分がノって書きやすかったりするの」

アバ「・・・そうね」

イノ「今日は、初めてクラシックにしてみたの」

アバ「・・・クラシック・・・」

イノ「ショパンとかベートヴェンよ?それを聞きながらおまけを書いたんだけど、もう最悪」

アバ「・・・ダメだったんだ」

イノ「全然テンションが上がらないのよ」

アバ「・・・あぁ」

イノ「やる気もなにもかも奪われた気がしたわ」

アバ「・・・そんなこともある」

イノ「選曲って大事よ」

アバ「・・・次は気をつけて」

イノ「偉大な音楽家より、お気に入りのサントラね」

アバ「・・・偉人が墓場で泣いている」

イノ「それでは今日はここまで」

632名無しさん:2011/04/18(月) 02:13:50
体育祭、当日。
必要最低限程度の準備だけを済まし、その日を迎えた。

「いい天気だ。今日は絶好の体育祭日和だな」
「ザトー様、例えザトー様が敵でも、負ける気はありませんよ」
「わかっているヴェノム。遠慮せず、全力でくるがいい」

運営の全てを俺に押し付けた生徒会役員の二人は、互いの健闘を祈っている。

「今日はよろしくわるお。うちの子達は、手足と思って使ってくれていいよ」
「期待には応えるよ。後輩君が私達に何かを期待するとも思わないけど」
「がんばってね〜ソルちゃん」
「ソル先生、そろそろ開会式です。行きましょう」

多少理不尽だろうと、こうなってしまったからには仕方がない。
やれるだけやるしかない。

お約束通りのザトーの開会宣言と、カイの選手宣誓を終わらせ、祭が始まる。
設置されているテントに向かう。そこが、今日一日俺が過ごす場所だ。

「遅いよソルっち。なにしてんのさ」
「何をしている」
「あたし?あたしは実況係だよ。ソルっちは解説役ね」

解説が必要とは思えないのだが。
まあいい。黙っていれば、こいつが好き勝手に喋り続けるだろう。

「そろそろ最初の徒競走が始まるからさ、早くクジを引いてよ」

クジか。
何を考えたのか、いや、何も考えていないのか、今体育祭の競技の進行は、事前にプログラムが決められていない。
最初の全員参加の徒競走の後は、クジを引き、次に行う競技を決める。出場選手も競技を進行具合に合わせて決める。
行き当たりばったりにもほどがあるシステムだ。

「さあさあ、早く引いてよ。何が出るかな?」

そのクジを引くのは、俺。体育祭を盛り上げるためにやれることはやるが、さすがにこれは運ゲーすぎる。
ザトーに理由を問うたが、曰く、「面白そうだからだ」とのこと。
奇抜なことをやれば面白いというわけでもないだろうに。
今更何を言ったところでどうしようもないので、従うしかないけどな。
適当にクジを引く。

「何引いたの?見せて」
「ああ」
「えー・・・。いきなり何引いてるのさソルっち」

引いたものは仕方がない。引き直しも無しときてる。
さっさと発表し、準備をさせろ。

「発表しまーす。次の競技は、棒倒し。次の競技は、棒倒し。各組はさっそく出場メンバーを選んでね」

そんな放送をする間にも、競技、準備も大していらない徒競走は行われている。
こちらは、ジェリーフィッシュに指示を出し、競技の準備をさせなければ。

「使う道具はわかってるな?用意しろ」
「アイサー、ソル先輩」

こういう時には素直に従うジェリーフィッシュの連中。冗談交じりに返事をし、体育倉庫に駈け出していく。

「ねえソルっち、なんでいきなりこんなの引いちゃうのさ。これって山場で盛り上がる競技でしょ。いきなりやっちゃってどうすんの?」
「俺に言うな」
「えー、ソルっちが引いたのに」

引いたのは俺だが、不可抗力だろう。こんなの、俺がどうこうできる問題じゃない。

「おっと、徒競走はそろそろ終わるのかな?今のとこはえーと・・・白組リード?」
「紅だ」
「あ、そうなの?現在優位なのは紅組だよ。白組がんばれ!」

適当なやつだな。こいつが実況で大丈夫なのか。
まあ、誰がやっても大して違いはないか。

「徒競走終了!みんなお疲れ様。現在勝っているのは・・・」
「紅」
「紅組!こういう時は励ますもんだよね。一回のオモテだ・・・まだ始まったばかりだ。がんばれ白組」

リードと言っても、微差だ。
紅組。ザトーを大将とし、アバを擁する組。
対して白組は、ヴェノムを大将とし、カイやミリアを抱えている。

「それじゃあ次は棒倒しだよ。誰が出るか決まった?出場選手は集合位置に集まってね」

集合をかける。競技の用意はできている。
棒を出すだけだから簡単なものだ。
体育祭の進行的にはともかく、運営側として最初がこれなのは助かったと言ったところか。
紅白の組がそれぞれに入場位置に集まる。そんな中、ザトーが声を上げた。

「本部!我々はソルを使わせてもらう!」

さっそく、お呼びがかかった。
俺を呼んだのは、ザトー。紅組。
行くか。

633名無しさん:2011/04/18(月) 03:31:05
「おおっと!紅組いきなりソルっちを投入!白組はどうする?」

白組も俺を使おうとすれば、後はクジ引き任せの運頼みとなる。
どっちにしろ、俺は棒倒しに参加しなければならないが。

「む、ザトー様め、さっそく動いてきたか。どうするカイ?」
「まだ始まったばかりです。ここは見送りましょう」
「これ、結構得点高いわよ?捨てていいの?」
「いくら相手がソルと言えど団体競技。勝ち目は薄いですがないわけではありません。仮に負けても、まだ序盤ですから逆転は可能です」
「去年は無双したんじゃなかったの?」
「それは、私もソルと同じ組でしたからね。彼を止める手立てはありますよ。伊達に長年付き合ってません。・・・難しいですけどね」
「・・・そうか。ならば貴公を信じよう。白組はこのまま行く!」

どうやら、白組の動向も決まったようだ。
カイめ、俺に勝つ気か。やってみせろ。
紅組の集まる場所へ向かう。

「ようこそソル。貴様、せっかくの権利を使ったのだ。頼りにさせてもらうぞ」
「・・・勝てる」
「カイがなんか考えてるっぽいけどな。ま、旦那なら大丈夫だよな」

参加するだけで勝ち確定のように扱われるのも困るのだが。
当然、勝てるために出来る限りのことはするが、俺とて勝率100%ではない。

「両陣営とも準備はオッケー?それじゃ、入場!」

形式も何もない実況の進行と共に、フィールドに入る。
さて、やるだけやるか。

「ルール説明なんかいらないよね。それじゃ、棒倒し、レディィィィィゴー!」

掛け声と共に、飛び出す。
この競技、直接的な暴力は基本的に禁止のはずなのだが、その辺りは割と適当である。
要するに、見てて面白ければよい。やりすぎるな。という程度のジャッジ具合。
そのジャッジも、今は実況役のあいつに預けてある。つまりおそらく、無法地帯。
重体の怪我人が出なければいいが。
棒に向かって進んでいると、進行方向を塞がれた。

「避けては通れんぞ!」
「始めっからトバしてくぜ!」
「ごぶさた、「ピー」野郎」

・・・三人がかり?俺一人にか。
随分と警戒されたものだが、他は大丈夫なのか。

「貴方を抑えないとどうしようもないですからね」
「悪いなソル。手加減なしだ」
「テメェはノイズなんだよ!」

「おおっと、無双なソルっちに対してまさかの三人がかり!これはさすがのソルっちも厳しいか!!」

なんとしても俺を抑え、その間に速攻でこちらの防御を崩し勝利しようということか。
さすがにこいつら三人相手は俺でもどうしようもない。あわよくば俺を倒し、突破する気だな。

「バカめ!貴様達がソルに構っているうちに、私が勝利を掴んで見せる!」
「貴方の相手は私よ。・・・・・・果てしなく気が進まないけど」
「ミ、ミリア!?」
「どうするの?私を攻撃する気?」
「いや、それは・・・」

ザトーも行動不能か。やる気あるのかあいつ。

「ザトっち、いくらなんでもそれはないよ」

実況にさえ不平を言われる始末。

「・・・突撃」
「ついてこれるか!」
「我輩ノ見セ場!」
「ここから先には行かせない!」

「おお!紅組の攻撃を鉄壁の要塞テスっちがことごとく防ぐ!」

防御役はテスタメントか。厄介な布陣を。

「隙あり!」
「ねえよ」

他に気を配っているからといって、目の前を疎かにはしない。
カイの攻撃をいなし、応戦する。互いに神器を使ってるが、審判が何も言わない以上、問題ないな。

「お前さ、なんで三対一で戦えるんだよ。結構ショックだぜ?」
「知るか」
「砂になっちまえ!」
「断る」

目の前の三人も、十分厄介だ。
だが、この状況、すでにアバの想定の内に入っている。
元より俺の役割は、棒を倒すことでなく、この三人を自分に引き付け、封じること。
現在、俺はその役割は果たしている。後は、アバの戦術がどこまで通じるかだ。

「戦況は膠着状態か?紅も白もどっちもがんばれー!」

無責任な実況の声が聞こえる。

634名無しさん:2011/04/18(月) 04:28:28
「私を忘れて貰っては困る。頂く!」

「ここでヴェノっちが紅組に突撃!防げるか紅組!」

「問題ないアルヨ」

ヴェノムに対して、紗夢が受ける。

「ちっ!やるな!」
「残念だったアルネ」

決着はついたな。
白組に、これ以上の攻撃手段はない。
対してこちらは、もう一枚、手札がある。

「行くよ、あんた達。付いてきな!」
「「「押忍!姐御!!」」」

「紅組が逆に反撃!梅っちを筆頭に白組をどんどん駆逐していく!」

ゲストである俺を入れた分、攻撃手段が一つ増える。簡単な話だ。
なぜかやたら慕われているようだ。

「おい、やばくねえか?うおあっ!?」

惜しい。もう少し届かなかったか。

「気をつけなさい闇慈!」
「でも、このままじゃ負けちゃうわよ?」
「わかってますよ。・・・ここは私が引き受けます。二人は梅軒を止めてください!」
「は?おい!」
「テメェじゃ無理だろ」

やる気か、カイ。

「他に手はないでしょう?任せてください。なんとかしてみせますよ」
「っ・・・。頼むぜカイ!」
「はっ!あの糞野郎は止めてやるよ」

闇慈とイノが戦線を離脱し、梅軒を止めに行く。

「・・・という訳です。少し付き合ってもらうぞ」
「ご苦労なこった」

一対一では相手にならない。
今までも何度かやっているからカイもわかっているだろう。
それでもやるか。

「みんなちゅうもーく!ソルっちとカイっちの一騎打ちだよ!」

わざわざ注目されるほどのことでもないんだがな。



「けっちゃーーーく!勝者、紅組!」

棒倒し、終了。勝った。
カイを降し、旗を倒しに向かった所でイノと闇慈、テスタに迎撃された。
だが、こちらは俺と梅軒、ロボ、チップ、アバ。応酬している間に、他の生徒によって旗は倒された。

「ちっくしょう!俺が倒したかったぜ!」
「我輩ガヒーローニナルハズダッタノニ」
「さすがにヴェノムの相手は疲れたアル」
「・・・計画通り」
「はっはー!見事だアバ!皆もよくやってくれた!おかげで我々の勝利だ!」
「よく言うよ。あんた、何もしてなかっただろ」

ザトーは最後までミリアを前に何もできていなかった。
さすがに防衛だけは行い、ミリアや他の侵攻を食い止めてはいたが。

「すみません。私のせいです」
「君はよくやった。責任を感じる必要はない」
「そうよカイ。善戦したほうだと思うわ」
「すまねえ。俺がもっと戦えてれば」
「くそがぁ!」

紅組とは逆に、白組はテンションが下がっている。
二競技目にして、さっそ大差がついたからな。
もっとも、まだ序盤。軽く挽回は可能な点数ではある。

「みんな、お疲れ様。それじゃあ次の競技に行こうか」

次は障害物競走だったか。
棒倒しに参加する前に引いていた。準備もさせてある。
今日は、少し忙しくなるかもしれない。

635名無しさん:2011/04/18(月) 04:36:23
スレ「何か色々間違えた感はないかね?」

アバ「・・・ある」

スレ「ふむ。自覚はあるのだな」

アバ「・・・自覚だけは」

スレ「まったく。それだけではどうしようもないこともあるのだよ」

アバ「・・・反省」

スレ「反省したのならば、次に活かせば良い」

アバ「・・・そうする」

スレ「人はそうやって経験を積み重ね、成長するものだ」

アバ「・・・・・・成長できてる?」

スレ「それは難しい問題だな」

アバ「・・・少しはできてたらいいね」

スレ「私もそう願っているよ」

アバ「・・・現実は厳しいけど・・・」

スレ「それでは今日はここまで」

636名無しさん:2011/04/22(金) 01:11:42
競技は進む。

「さーて、現在はザトっち率いる紅組リード!やっぱり最初の棒倒しの点が大きかったみたいだね」

行き当たりばったりな対応だが、今のところ対応はできている。
ジェリーフィッシュも大人しく指示に従っている。

「でもまだまだ白組も挽回可能!次は再び大量得点が可能な団体競技、玉入れだ!」

おなじみの競技だが、もっと子供向けの競技ではないのだろうか。
去年はやってなかったしな。

「ソルっちのせいで団体競技増やしたんだよ。ソルっち無双で終わらせないために」
「そうか」
「これならソルっちが個人プレイでいくらがんばっても、やりようによっては勝てるからね」
「そうか」
「そうだよ。てなわけで、両チームはどうする?ソルっち使う?」

体育祭で行う競技決めに、俺は参加していない。
どんなことをやるかも事前に告知されていない。
各組のリーダー格とジェリーフィッシュによって決められたと聞いているが、どんな競技を取り入れたのか。

「紅組は使わない」
「白組もここは遠慮しておこう。ザトー様、真っ向勝負です!」
「ふ、望むところだヴェノム。かかってこい」
「ということで、玉入れはガチ勝負だ!どっちもファイト!」
「いや、君もだよ」
「へ?」

後ろから、声がかかる。

「白組代表で君も参加するんだよ玉入れ。実況は変わるから。いってらっしゃい」
「あ、そうなんだ。んじゃ行ってくるねソルっち」
「そういうわけだから、少しの間よろしくソル君」
「ああ」

実況役が変わった。だからどうというということもないが。

「さっきから思ってたけど、少しは喋りなよソル君。君は解説役なんだから」
「実況一人で十分だったからな」

喋ることなど何もない。

「まああの子はね。私は適当に振るから、的確に答えてね」
「できればな」

それが仕事であれば、やるさ。

「ま、玉入れのルールの説明なんていらないよね。競技の準備も大丈夫?」
「できてるよ。入場Ok」
「それじゃ両チーム、入場」

各組ともに所定の位置につく。

「ほほう、今回はさっきと違い、主力レベルは結構温存してきてるね。どう思うソル君?」
「出場回数の上下限は決まっているからな。玉入れで戦力を浪費することはない」
「各大将もそう考えたみたいだね。でもさ、一つ疑問なんだけど」
「なんだ」
「玉入れのカゴって、あんな高い位置にあるもんだっけ?」

確かに、やたら高い。

「本来の公式の高さより、さらに高いな」
「ああ、資料にあった。『通常の高さじゃつまんないからもっと高くしようよ!』だってさ」

誰が提案したんだ。

「ていうか、公式なんてあるの?」
「一応ある。玉入れ発祥の地に因んだ高さやルール設定が」
「へえ、知らなかったよ。さすが雑学先生。君の授業は最近評判いいよ」

評判はどうでもいい。問題は成績だ。
次の定期テストでどれほどの結果が出るか。

「まあそんなわけで、この玉入れ、両チーム準備はいいかい?」
「ボク達はオッケーだよ!」
「ウチ達も大丈夫です。始めてください」
「それじゃ始めよう。両チーム、用意、スタート!」

掛け声と共に、スターターピストルを鳴らす。
各組共に、一斉に玉を取っては、カゴを狙い放り投げる。

「始まったね。棒倒しで負けた白組としては、ここで勝っておきたいところ」

生徒達は皆カゴに向かって玉を投げるが、しかし

「これ高すぎだよ!」
「ほとんど入らないんですけど!?」

あれだけ高ければ、そうもなるだろう。

「だってさ、ソル君。何かアドバイスは?」
「とにかく投げろ」
「全然アドバイスになってないじゃん!」
「ソルさんもっと具体的にお願いします!」

そうは言っても、この状況では他にアドバイスのしようもない。
全くカゴに玉が入らないというわけでもないのだ。
あとは玉入れらしく、多く投げ、多く入れた者勝ちだ。

637名無しさん:2011/04/22(金) 01:56:40
そして、競技時間終了

「そこまで。それじゃ、数を確認しようか」
「疲れたー。玉入れってこんなに疲れるもんだっけ」
「肩が痛いです。結構本気で投げないと届きもしないんですから」

ジェリーフィッシュによる数の確認が行われる。結果は

「紅組、8個。白組、10個。白組の勝ち」
「やったね!ボク達の勝ちだよ!!」
「うぅ、負けてしまいました」

随分とカゴに入った玉数が少ない。
やはり高すぎたのだろう。

「これで、白組は紅組を逆転したね。おめでとう」
「見事な勝利だ」
「おかげで、私達が負けた分が取り返せました」
「うん。このまま勝とうね!」

ヴェノムとカイがメイ達を労う。一方

「すみません・・・。負けてしまいました」
「なに、落ち込むな。諸君はよくやった」
「・・・どんまい」
「次で取り返します!」
「うむ。期待しているぞブリジット」

紅組は紅組でうまくやっている。
そして本部テントでは

「ふいぃ、疲れた。高くしてって言わなきゃよかったよ」
「君のせいか」

こいつがカゴの高さをあげたのか。

「いや、だって普通だと盛り上がりに欠けそうな気がしてさ」
「自業自得」
「まあいいじゃん。勝ったし。あたしも一つ入れたんだよ?」
「あっそ。君はしばらく裏方ね。実況は私がやっておく」
「ええ!?そんな!」
「いいから、玉入れの片付けと次の競技の準備を手伝ってきなよ」
「しょうがないなあ」

不満はあるようだが、素直にトラックに向かい、片付けを手伝い始める。

「次はなんだっけ?さっきクジを引いてたよね」
「二人三脚だ」
「了解。次は二人三脚。両チームは準備をお願いします」

放送をかけ、各組共準備を始める。

「ザトーさん!提案があります!」
「どうしたブリジット」
「ソルさんを使って、ウチと二人三脚すれば一位は間違いなしです!」
「却下だ」
「・・・絶対認められない」
「う、アバさんまでそう言いますか。まあ仕方ないですよね」

「どうやらブリジット君は、ソル君と一緒に走りたかったようだよ」

当然のようにザトーとアバに断られたがな。
後一度しかない権利を、ここで使うわけがない。

「そろそろ始めるよ。両チーム、入場」

各組共所定の位置に移動する。

「あ、その間にソル君には次の競技のクジを引いてもらわないとね。さあどうぞ」

クジ箱を差し出される。
腕を突っ込み、適当に選んで取り出す。

「さて発表します。この次の競技は『戦車戦』。・・・・・・あの子はまったく」
「資料見せろ」
「これだよ」

戦車戦。
騎馬戦の要領で馬と乗り手を用意し、トラックを一周する間にに互いに攻め合い落としあう。

「え、違うよそれ。確かに私も申請したけど、その前にすでに誰かが申請してたんだよ」
「ああ、それ私。後輩君、ちょっといい?片付けに手間取ってるから、少し手伝ってくれ」
「わかった」
「何やってんの姉君」
「体育祭でやってみたい競技をザトー君に聞かれたから、そう答えただけ。恨むな妹」
「恨んではないけど」

片付けが必要なんだろう。
さっさと行くか。

「こっちだよ。どうにもさっきの玉入れのカゴが、上手く用具室に入らなくてね」

まああの大きさではな。
というか、どうやってあれを用意したんだ。

用具室前に着き、用具を見る。
・・・これは、分解すればいいだけだ。
なんのことはない。長い鉄パイプとカゴを無理やりくっつけただけの代物。カゴも、急遽拵えたもののようだ。
体育祭用に特別に用意したのだろう。分解だけして本部に戻るか。
適当に放りこんでおけばいいだろう。

638名無しさん:2011/04/22(金) 02:38:35
本部に戻る。すでに次の競技は始まっていた。

「お帰り。現在白組リード。この差を守りきれるか」

競技は順調に進む。
これに関しては余計な変更は加えていないようだ。

「二人三脚終了。えーと、ポイントは白組の勝ち。トータルでも白組依然優勢」
「くっ、差を広げられたか」
「・・・挽回可能」
「まだ先はあるよ。両チームともがんばってください」

次は戦車戦か。
資料を見た限り、武器の用意は必要ないようだ。
つまり、何も準備擦る必要がない。楽でいいな。

「次は戦車戦。参加選手は所定を位置についてください」
「あなたもですわ」
「はい?」
「紅組の女子代表で選ばれてますのよ?」
「聞いてないよ?」
「今伝えましたわ」
「ふぅん、わかった」

また実況が代わるのか。

「戦車戦ね。ま、楽しんでくるよ」
「いってらっしゃいませ。お気をつけて」

怪我人が出そうな競技だ。ファウストがいるので問題はないだろうが。

「よろしくお願いいたします、バッドガイさん」
「ああ」
「ところで、実況って何をすればいいのかよくわからないので、バッドガイさんにお任せしますね」

わかってないなら代わるな。
各組、準備はできたようだ。

「戦車戦、選手入場」
「うおおおおおお!!」
「やるぞおおおお!!」

随分とやる気だ。資料を見るだけでも荒事な競技だしな。

「皆さん元気がよろしいですわね」
「ああ」
「戦車戦と言えば、古式ローマの戦車デスマッチ!これは見物ですわ」

命を賭けるほどのことはやらないが。

「始まりは雲に隠れた月が輝き出た時ですわよね?」
「普通にスターターピストルだ」
「あら、それは残念ですわ」

今は昼だぞ。
月も見えない。

「まあとにかく始めましょう。位置につきましたか?それでは用意、ドン!」

勝手にスタートを切りやがった。仕方ないので、合わせてピストルを鳴らす。

「最初は、アクセルさんとディズィーさんの戦いですわね」
「見てろよめぐみ!いいとこ見せてやるぜ!」

白組の第一走者はアクセル。気合は十分のようだがしかし

「誰も傷つけたくないの!」

ディズィーがまずい。

「アクセル、騎馬を崩し散開しろ。危険だ」
「は?ちょっ、旦那?」
「急げ」
「おい!旦那があそこまで言うのってマジだぜ!全員散れ!逃げろ!!」

「あああああああああああああああ!!!」

ディズィーのやつ、容赦なくガンマレイを撃ちやがった。

が、間一髪、回避が間に合い被害者はいない。撃った先も無人。さすがにそれは考えていたか。

「あら、アクセルさんが地面についてしまいましたわね。ディズィーさんの勝ちですわ」
「やりました皆さん!私達が勝ちました!」
「おいい!?今俺達今死にかけたんだぜ!?」

何事もなかったかのように、平然と競技は進行する。
命を賭けるほどのことはないと思ったが違った。
随分と命がけの競技らしいなこれは。

「これでこそ戦車戦ですわ」

これは戦車戦と言えるのか?

639名無しさん:2011/04/25(月) 00:20:44
戦車戦が終わった。
最初のディズィーの攻撃により、お互いに遠慮無用となり、派手な光景が繰り広げられた。

「元気があるのはいいですけど、もうちょっと怪我にも配慮してもらいませんと。はい、治療完了。次の方どうぞ」

ファウストに注文をつけられる。
競技を決めたのは俺ではない。今更言われても変更もできないしな。

「いたっ!ちょっとソル、もうちょっと痛くないようにしてよ」
「消毒液を塗っただけだ。文句言うな」

さっきまで錨を振り回して殴り合いをしてたやつの言う台詞か。
しかし、怪我人が多く出たからといって、なぜ俺がファウストを手伝い、応急処置をしなければならない。
運営がやることじゃないと思うが。

「ボクもファウストに看てもらいたいよ。ソルの手当てってぶっきらぼうなんだもん」
「必要なことはしている」
「適当にやってるようにしか見えない」
「ならファウストに看てもらえ。終わりだ。次のやつ」
「ありがとね。じゃ」

メイの手当てを終わらせ、次に移る。

「そこの包帯をとってもらえますか?薬も」
「ああ」
「ありがとうございます。そろそろ全員終わりそうですね」

こっちも特に問題もなく手当ては進んでいる。

「重大な怪我がなくてなによりです」

割と波乱な展開になったが、競技続行不可能なほどの傷を負った生徒はいない。
さすがにその辺は考えて攻撃していたということか。

「いやあ参ったぜ。まさかメガロマニアを撃たれるとは思わなかったぜ!」

最後はチップか。
見たところ致命傷だが、こいつなら問題ないだろう。
包帯を巻いておけばいいか。

「サンキューソル!」
「しばらく安静にしていろ」
「おうわかった!じゃあな!」

勢い良く返事をし、紅組に走って戻って行く。
なにもわかっていない。

「こっちは終わりだ」
「こちらもです。お疲れさまです。助かりました」

本部に戻るか。

「おかえりなさいバッドガイさん」
「ちわっす。ソル先輩」

増えている。

「ソル先輩がいない間は私が解説役をやってましたから。感謝してください」

頼んでいない。

「私は次は出番のようなので、失礼しますわ。後はお願いします」
「任せて。そんなわけでよろしくですソル先輩」

実況なんて誰でもいいようだ。

「現在紅組リード。戦車戦の勝利が大きかったようです。次は障害物競走」

各組の出場選手が集まる。
しかし、障害物競走というのに、トラックには何も準備がされていない。

「準備はどうした」
「ああ、これ準備いらずだそうです。資料にそう書いてますよ?」
「見せろ」

資料を読む。障害物競走、準備不要。
なるほど、確かにそのようだ。

「障害物も何もないですけど、どうするつもりなんでしょうね?」
「あいつらだろ」

わざわざ障害を用意しなくても、障害となる連中がいる。
出場選手とは別の位置に、数名集まっている。

「我々が障害そのものだ」
「言っておくが、これに限り敵も味方も関係ないからな」

「これは大変な事態になりました。障害物競争ではなく障害者競争!・・・あれ?なんか違う?」
「妨害者にしとけ」
「あ、それで」

やつらが走行の邪魔をするようだ。

「えーと、妨害人はザトー先輩、ヴェノム先輩、テスタ先輩、ファウスト先生、ザッパ先生、イノちゃん、それにメイ!
 これってどういう基準で選ばれてると思いますか?」
「罠設置や特殊な飛び道具が得意な連中だな」

あまり怪我人を出さないようにしてほしいものだ。

640名無しさん:2011/04/25(月) 01:22:40
競技が始まる。

「さあ始まりました。最初の関門はメイ。一体どんな妨害をするのか!?」
「いっくよー!イルカさんイルカさんイルカさんイルカさんイルカさんイルカさんイルカさんイルカさんイルカさん!」
「うわぁ・・・あれは鬱陶しい」

ところ構わずイルカに乗って跳ね回るメイ。
イルカが地面から出てきては、地面に呑まれていく。
走者に当たらないように注意しているのがせめてもの情けか。
あくまで妨害の立ち位置だから当然ではあるが。

「さてさて走者は全員イルカを突破!やりますね。次の妨害はザッパ先生!一体どうする気でしょう?

走者がザッパの妨害する領域に入る。

「三つ子だぁ!」
「おおっと、これは?どこからともなくゴルフボールや花瓶が飛んできました」
「バナナの皮もあるな」
「あ、危ない!・・・今の花瓶って避けなきゃ頭に直撃してませんでした?」
「避けられる用に投げてはいるようだ」

それでも、着地点をコントロールしていたメイと違い、幽霊の妨害は割と本気のようだ。
死人を出すなよ。

「それでも負けない選手!ザッパ先生のゾーンもなんとか突破した!」

怪我もなさそうだ。
ザッパが幽霊を引っ込める。

「あれって、毎回違う霊を憑依させて妨害する気なんですかね?」
「今霊魂が2つ溜まってる。数順後の生徒はラオウ相手だな」
「・・・ご愁傷さま。せめて当たらないように祈っててねみんな」

競技は続く。
すでに走者には疲労の色が見える。

「さあさあまだまだ勝負は中盤戦に入ったばかり。次はテスタ先輩の登場!一体どんな外道な罠を張っているのか」
「なに、大したことはない。HITOMIとゼイネストを進行上に設置しているだけさ」
「だそうです。どこに罠が設置されてるか全くわかんないけど、うまく回避してね!」

無茶を言う。

「おおっと!早速みんな罠にはまっております!さらに強化ゼイネストが見事に炸裂!」
「治療の準備が必要だな」

ファウストが妨害人として参加している。
俺がやるしかない。

「えーソル先輩抜けるんですか?」
「誰が手当てするんだ」
「仕方ないですね。それじゃ、ソル先輩の代わりに誰か来てよ」
「呼ばれて飛び出て〜!後は任せてねソルちゃん」
「解説よろしくお姉ちゃん」
「うん。がんばろ〜ね」

治療用のテントに向かう。
包帯と止血剤を十分に用意しておこう。解毒剤も念の為に。
なぜこんなものがあるのか謎だが。

「テスタ先輩のトラップ地帯もなんとか抜けた!未だ脱落者なし!すごい根性だ!」
「次はザトーちゃんだね」
「お馴染みエディが生徒を襲う!回避できるか!?」
「影の動きをよく見ればきっとなんとかなるよ〜」

さっきの戦車戦の治療で結構消毒液や包帯がなくなってるな。
保健室に取りに行くか。

「エディだけではないぞ!ドリル!ドリル!」
「これは手強い!地中から突然ドリルが現れた!」
「あ、誰かエディに捕まっちゃってるよ!」
「なんと!ここでまさか紅組走者が捕まった白組走者を助けようとしている!?」

放送を背に、保健室に向かう。
今日のために、必要そうな物は多く調達したと聞いている。
多めに取りだしておこう。

「ザトー先輩の影地帯も抜けたあ!もはや走者同士、協力して障害に当たっています!」
「競争じゃなくなっちゃったね。でも、これもいいと思うよ」
「強大な敵を前に、ライバルが手を取り合う。王道展開!」
「次はファウスト先生だね〜。みんな、がんばって!」

「あれ、バッドガイ君どこに行くの?」
「保健室に薬と包帯を取りに行く」
「手伝おうか?」
「そうだな。一緒に来い」
「うん」

一人で持ちきれる量では不安だ。

「ななな何がでるかな?ななな何が出るかな?」
「ファウスト先生の物投げ×8!さあ何が出るか!」
「ええっと、チビファウスト先生が3とハンマーが1、チビロボちゃんが2、タライが1かな?」
「よく見切ったねお姉ちゃん。あれ、一つ足りなくない?」
「みんな逃げて〜!」

頭上からメテオが降り注ぐ。

「ねえ、あれ、大丈夫なのかな?」

あいつらのことだ。重大な事故を起こすことはないだろう。

641名無しさん:2011/04/25(月) 02:21:39
保健室で包帯等を取り出す。

「さあ残りの関門は2人!まずはヴェノム先輩が道を塞ぐ!」
「あとちょっとだよ!がんばって〜!」

ここでも、放送の声が聞こえてくる。

「包帯ってこれぐらいでいいかな?」
「もう少し出しておけ。ガーゼもだ」
「うん」

こっちは薬だ。
必要そうなものを用意する。

「ヴェノム先輩お得意の弾幕が行く手を遮る!さあこれをどうやって突破するか!」
「手加減してあげてよヴェノムちゃん」

これぐらいでいいだろう。
薬をまとめて箱につめる。

「こっちもできたの。これで大丈夫だよね?」
「ああ」
「良かった」

薬を持ってテントに戻る。

「弾幕も突破!さあ残るはラスボスイノちゃん!」
「さっきもメガロマニアでチップちゃんを虐めてたからね。気をつけて〜」

ようやく終盤らしい。

「それじゃいいかしら?まとめて消えちまいな!」
「この軌道はメガロマニア拡散バージョン。イノちゃん本気だ!」
「あの距離じゃ避けられないよ!」
「おおおお!?ここでまさか、一人が前進しあえて攻撃に身を晒す!自ら盾になるつもりのようです!」
「かっこいい!!」

テントに戻り、箱から薬を取り出す。

「こっちのはここの置いておくね?」
「ああ」
「怪我の手当て、私で出来る範囲で手伝おうか?忙しくなりそうだし」
「競技の出番は?」
「次のは出ないから大丈夫なの」
「なら頼む」
「うん」

あの調子では、出場者ほぼ全員が治療テント送りだろう。

「ダウウウウウウン!メガロマニアをなんとか凌いだが、ここでついに力尽きた!!」
「バッドガイ君、救急車っているかな?」
「必要ないだろう」

おそらくだが。

「しかし!しかあああし!ここで倒れた選手に周りの選手が駆け寄る!彼を支え、全員でゴールを目指すようです!」
「感動的な光景だね〜」
「紅組も白組も関係ありません!そこにいるのは共に戦った仲間!ゆっくりとですが、ゴールに近づいてきます!」
「メガロマニア、二発目いっちゃおうかしら?」
「イノちゃんやめて〜」
「今、ゴオオオオオオオオオル!観客からは割れんばかりの拍手が沸き起こります!!」
「みんなおめでと〜!」

さて、出番か。
出場選手がそのまま治療テントにやってくる。

「結構ひどくないかな?大丈夫なのバッドガイ君?」
「・・・見た目だけだ。軽い打ち身だな」

やはりあいつら、手加減していた。これなら後遺症もなく、すぐ治るレベルだ。
全身をやられているから見た目は大変なことになっているが。
とりあえず全身を冷やすか。

「わっ、炎?燃やしちゃダメなんじゃ?氷は?」
「温度管理はしている」

以前、ミリアにも使った冷たい炎で、全身を包む。
まさか再び使うことになるとは。しかし、我が事ながら便利な炎だと思う。

「わぁ、ほんとだ。触っても冷たいの。どうなってるの?」
「机上の理論を実現させただけだ」
「全くわからないけど、バッドガイ君ならなんでもアリだからいいよね」

それで納得しておけ。
とりあえず、他の連中の手当てをするか。

「消毒液と包帯寄越せ」
「うん」

こちらが治療する間にも、競技は続けられる。

「さあ次のグループの出発です。すでに最初から協力体制で障害に当たるようです!」
「そうでもしないと大変だもんね〜」

それでは競争にならないと思うが。
まあいいか。好きにしろ。

642名無しさん:2011/04/25(月) 03:49:37
障害物競走終了。
随分と負傷者が出たものだ。
全員大したことないが、怪我よりも疲労の方が問題だ。
競技はまだ午後一杯残っている。体力が持つのか。

「死ぬかと思ったアルネ」
「私達の時だけ攻撃が本気でしたよね」
「情ケナイオリジナルメ。我輩ハ全然余裕ダッタ」
「よく言うぜ。被弾しまくってただろロボはよ」
「闇慈も結構危なかったアル」
「メガロマニアを全弾ガードポイントで凌ぐとは思いませんでしたよ」
「漢を魅せたぜ」

結局、ほぼ無傷で妨害を突破したのはこの4人組だけだった。
こいつらには絆創膏でも渡せば十分だろう。
競技が終わったため、ファウストも戻ってきた。

「後は代わりますよ。お二人とも、治療を行っていただいてありがとうございました」
「仕事だ」

投げ出すわけにもいかない。
後はファウストに任せ、本部テントに戻るか。

「お疲れさまバッドガイ君。次、私は出番だから」
「ああ。助かった」
「バッドガイ君にお礼を言われるって珍しいの」

言うだけのことをしてもらえば、言う。当然だ。
普段は基本的に、他人の助けを必要としないだけだ。

「また必要があったら呼んでね?いつでも手伝うから」
「ああ」

そんな状況はあまり迎えたくないが。
本部テントに戻る。

「あ、おかえりですソル先輩」
「大変だったね〜ソルちゃん」

席に着く。そろそろ次の競技だ。

「次、私達出場選手なんで」
「ばいばいソルちゃん」

実況は誰がやるんだ。

「私が担当させていただきます。よろしくお願いしますソル先生」

お前か。

「と言っても、次で午前最後の競技。少しの間だけですが」

もうそんな時間か。

「最後は簡単です。種目は綱引き。選手、入場してください」

準備も済んでいる。

「点数は現在紅組リード。白組がここで勝っても午前中は紅組優位で終わることはすでに確定しています」
「さっきの障害物競走の点数は除け」
「はい?・・・いいんですか?」
「あれは競争になっていない。その権限は持っている。両陣営の大将が認めればでいいが」
「紅組はその提案を承認する」
「白組も異存はない」

さっきのは、ゴールすることが目的になっていたからな。
点数などどうでもいいだろう。

「それでは、一つ前の競技の点数に戻りまして・・・。形成は依然紅組リード。しかし、ここで勝てば白組がわずかですが逆転となります」
「ザトー様、勝たせてもらいます」
「できるかなヴェノム。差を広げてくれる」

競技が開始される。
少しの間均衡が続いていたが、長く続くものではない。

「決着!勝者、紅組!」
「ハッハー!残念だったなヴェノム!」
「不覚・・・!」
「これで午前中の競技は終了です。紅組が最後に差を広げました。午後の白組の巻き返しに期待しましょう」

まだ、俺を使う権利も2つ残っているしな。

「それではこれから昼休みです。みなさん、十分に休憩を取ってください」

さて、やっと午前が終わった。
休めるうちに、休むとしよう。

643名無しさん:2011/04/25(月) 03:57:41
ポチョ「我々教職員の出番がないな」

アバ「・・・使いにくいから」

ポチョ「どうにかしてほしい」

アバ「・・・出たいの?」

ポチョ「放置されっぱなしというのも悲しいだろう」

アバ「・・・そうね」

ポチョ「ついでに一つ言っておきたいのだが」

アバ「・・・何?」

ポチョ「JFはここまで出さなくてもいいのではないか?」

アバ「・・・・・・不思議だね」

ポチョ「貴殿が言う事ではないだろう」

アバ「・・・使いやすいから」

ポチョ「だからと言ってな」

アバ「・・・努力はする」

ポチョ「がんばってくれ」

アバ「・・・結果は保証できない」

ポチョ「それでいいのか」

アバ「・・・いいよ」

ポチョ「それでは今日はここまで」

644名無しさん:2011/04/27(水) 02:37:55
昼休みとなった。昼食を取るとするか。
朝、ディズィー達が弁当を作っていた。

「ソルさん!こっちです!」

ブリジットに声をかけられ、一団を見つける。

「ささ、どうぞソルさん。ウチの隣に」

空けられた場所に座る。
座ったはいいが、しかし、これはどういう事態だ。

「旦那、おつかれ」
「忙しかったみたいね」
「貴様、何をしていた」
「早く飯にしようぜ!」
「たくさん食べるアル」
「いい加減食ってもいいかい?」
「・・・梅軒、めっ」
「ボクもお腹すいたよ!」
「ボンクラヲ待ツ必要ナンテナイダロ」
「少しは待てよロボ」
「ザトー様、おしぼりをどうぞ」
「完全にタイミングを逃しているぞヴェノム」
「待ってたんですよお兄ちゃん」
「遅い」
「全員、貴方待ちだったんですよソル」

人が多い。

「じゃあわるおも来たし食べようか!」
「いただきま〜す!」

体育祭の昼食でジェリーフィッシュやカイ達がいるのは毎年のことだ。
なので賑やかなのはもはや恒例ではあるが、ここまで多いのは初めてだ。

「さあさあソルさんどうぞ。あーんしてください」

ブリジットは無視して食事を始める。

「午前中はご苦労だったなソル」
「貴殿の働きは大統領も認めている」
「よくわかりませんが、僕のせいで怪我人が出たみたいで。すみませんでした」
「なぁに、あれぐらい怪我の内にも入らんさ。なぁソル?」
「貴方、本格的に医者になりませんか?」

教師までいるのはどういうことだ。
人数が多すぎるのではないか。

「この玉子焼きは美味しいアルナ」
「それはミリアさんが作ったんです」
「紗夢に認めてもらえるなら自信が持てるわね」
「なに!?おい、私にもそれをくれ!」
「ザトー様!私が作った玉子焼きもあります!ザトー様の為に朝早くから作りました!」
「そういや寮の調理室を占拠して何か作ってたなお前」
「貰うぜ!おお、美味いじゃねえか!」
「なっ!?それはザトー様のために・・・いや、こんな日だ。好きに食べるといい」
「リープおばはんが作ったのもほいひいよ!」
「こらメイ。食べながら喋らないの!」

食事ぐらい静かに取りたいものだが、それは無理のようだ。

「貴方の感想はどうかしら?」

ミリアに、卵焼きを皿に置かれる。
食いたいわけでもないのだが、置かれたものだ。食べてみる。

「ああ。美味い」

冷めてはいるが、それでも問題なく美味いと言える。
不味く作るのも難しいとは思うがな。しかし、形も整っていたし、よくできている方だろう。

「・・・ふぅん。そう」
「ソルさんソルさん!ウチが作った唐揚げも食べてください!」
「断る」
「なんでですか!?」

食うのはいいが、自分で取る。
唐揚げを俺の口に運ぼうとするお前に食わされる気はない。

「いいじゃないですかソル先輩。恋人同士がやる『はい、あーん』ってやつ、やってみてくださいよ」
「後輩君は照れてるのだよ。察してあげな」
「若いというののはいいものですねえ」
「貴殿にはファニー殿がいるのでは?」
「彼女は優秀な看護士です。それ以上でもそれ以下でもありませんよ」
「そういうものか」

外野を無視し、ブリジットが作ったという唐揚げを食べる。

「上出来だ」
「そうですか!?良かったです!どんどん食べてくださいね!!」

あまりブリジットを褒めるということがないからか、こんなことでも随分と喜んでいるようだ。

645名無しさん:2011/04/27(水) 03:47:21
昼食を食べ終える。
しかし、昼休みはまだ十分に残っている。

「午後は巻き返しますよザトー様」
「フッ、やってみせろ」
「紅組の思い通りに行くとは思わないことですね」
「・・・勝つ」
「このまま負けるつもりはないわ」

紅白のトップがすでに牽制しあっている。

「バッドガイ君、お茶どうぞ」
「ああ」

騒がしい奴らは無視し、食後の茶を飲む。

「午後もがんばりましょうね皆さん」
「めぐみにいいとこ見せないとな。ってかディズィーさ、あのガンマレイは殺気感じたんだけど」
「アクセルさんの気のせいじゃないですか?」
「しらばっくれてくれるね。まあいいけどよ。午後はこっちも手加減しないぜ?」
「じゃあ、私も本気で行きますね?」
「え?」

あれがディズィーの本気ではない
いや、それを言えばアクセルもそうか。能力の高さゆえに、特定の連中は本気などそうそう出せるわけもない。
さて、そろそろ本部に戻るか。戻ったところで何か仕事があるわけでもないが、ここにいる意味もない。

「待ちたまえ」

席を立つと、スレイヤーに呼び止められた。

「なんだ」
「考えていたのだがね、我々教師もこのイベントに参加するべきではないかと」
「そうか」
「それでだね、午後は私とザッパを紅組に、ポチョムキンとジョニーを白組に参加させようと思うが、いかがかね?」
「好きにしろ」

各組に同等の戦力が加わるなら、バランスは取れているだろう。しかし、

「ファウストはどうする」
「私は医者ですので。治療テントにいますよ」
「わかった」

なら問題もあるまい。
あとは各組の大将と相談すればいい。

「ほほう。貴様らが我が軍に加わるか。期待させてもらうぞ」
「大上段から言ってくれる。君こそしっかりしたまえよ」
「微力かもしれませんが、よろしくお願いします」
「貴公達なら申し分ない。頼りにするからな」
「全力を尽くさせてもらおう」
「ハッピーエンドの条件は・・・ハンサムが勝つことさ」

対応が速い。
さて、テントに戻るか。

本部テントに戻り、待機する。
本来なら午後の競技の準備を色々としたいところだが、生憎プログラムなんてものは存在しない。
結局、やることがない。

「あの、お兄さん」
「なんだ」
「あ、その、午後の最初の実況は私がやることになりました。よろしくお願いします」

そうか。

「私、盛り上げる話し方ってよくわからないんですけど」

よくそれで実況をやることになったな。
恐らく、やれと言われたのだろうが。

「でも、みんなが代わりばんこだからって」

やはりか。

「あの、できればフォロー、お願いします」
「ああ」

人それぞれ向き不向きはあるだろう。
不向きなやつに無理やりやらせることもないだろうに。

「ええと、午後最初の競技は、砲丸投げです」
「準備はやっているな?」
「はい。綱引きをやっている内に終わっています」
「そうか」

ならば、後は午後の競技が開始されるのを待つだけだ。

646名無しさん:2011/04/27(水) 04:03:19
闇慈「ちょっと思ったんだけどよ」

アバ「・・・なに?」

闇慈「台詞の連続って、誰がどの台詞を言ってるかちゃんと通じてんのか?」

アバ「・・・どうだろう」

闇慈「例えば>>644のとかな。本編みたいに台詞の前に名前が出るわけじゃないから、通じてない可能性もあるよな」

アバ「・・・わかるように努力はしてる」

闇慈「その努力が実ってるかどうかって問題だろ?」

アバ「・・・まあね」

闇慈「ついでにJFのキャラクター性もな。全員分はこっちも微妙だけど、レギュラークラスのキャラの性格は少しは把握されてるのか?」

アバ「・・・わかんない」

闇慈「ちょっと意見を聞きたいところだな。前回の俺達以外のレスからは一ヶ月以上経ってるし、たまには忌憚のない意見を聞いてみたいぜ」

アバ「・・・散々好き勝手やってるのに」

闇慈「そりゃ好き勝手やってるけどよ、ストレートに読みづらいって言われたら、少しは変える努力をするかも知れないだろ?」

アバ「・・・誰も何も言わなかったら?」

闇慈「そんときゃあれだ。何も問題なし!ってことで」

アバ「・・・おーけい」

闇慈「それでは今日はここまで」

647名無しさん:2011/04/27(水) 09:19:44
お疲れ様〜。
それじゃ俺の個人的な意見を書いてみます。

俺はいつも見てるから名前が出てなくても誰のセリフなのか分かるし、
各キャラの性格も把握してるよ〜。
JFは人数がちょっと多すぎる気がするけどw

まあ、だからと言ってJFが邪魔って訳でもないし、>>1にとってJFは使いやすいみたいだからこのままでも良いと思う。
でも、JFをこれ以上増やすのはあまり良くないかもw

あと、気になることは>>1の中ではもう誰ルートにするか決まってるのかな?
イベントとか日常をじっくり書くのも>>1の良い所だと思うけど、個人的にはもうちょっと展開を早くしてほしいなぁ。

最初にも言ったけど、これはあくまで俺の個人的な意見だから参考程度に思って下さい。
これからも続きを楽しみにしてるよ〜!

648名無しさん:2011/04/29(金) 03:41:48
午後の競技が始まる。

「現在の砲丸投げの一位はロボカイさん。さすがロボットといったところでしょうか」
「コレガ機械ノ力ダ!平伏スガイイ!」
「次はポチョムキン先生の登場です。後半からは教師陣も参戦することになりました。活躍が期待されます」

淡々とそつなく実況をこなすエイプリル。

「さあポチョムキン先生の投擲。おっと、これはロボカイさんの記録を超えた模様です」
「ナニイ!?馬鹿ナ!アリエナイ!!」
「見ての通りだ」

そのままポチョムキンが優勝した。

「一位はポチョムキン先生。二位はロボカイさん、三位はメイとなりました。それぞれ順位に応じて各組点数を得ることになります」

ポチョムキンとメイが白組、ロボカイは紅組。

「白組がやや取り返しました。まだまだ勝負はこれからです。みなさん午後もがんばりましょう」

砲丸投げが終わり、次の競技に移る。

「ふぅ。ソルさん、実況ってこんな感じでいいんでしょうか?」
「問題ない」
「あんまり私向きの仕事じゃありませんね」

俺に話しを振る余裕は全くなかったようだが、向いてないというほどでもないだろう。

「さ、ソルさん。それでは恒例のクジ引きをどうぞ。次は何をやるんですか?」

箱を差し出され、クジを引き、エイプリルに渡す。

「発表します。次の次の競技は・・・え?」
「なんだ」
「SBRって書いてあるんですけど・・・」
「おお!あたしの要望だよそれ。大当たり引いたじゃんソルっちグッジョブ!」

あいつか。

「・・・姉がすみません。ええと資料資料・・・」

エイプリルが謝ることじゃない。
資料を見る。内容は大体想像がつくが。

「これ、やるんでしょうか?」
「やるんだろう」

箱に入れられていたからには、競技としてザトー達が認めたということだ。

「簡単に説明すると、マラソンですか?」

問題は、レースコースが校外にあるということが。
行動範囲は校庭内、せめて校内に抑えるべきじゃないのか。

「参加選手は各組五人。すでに設置されてある複数のチェックポイントを通過し、いち早くゴールした人が優勝です」
「それまでのルートは自由のようだな」
「結構ポイント高いですねこれ。白組は点差を縮めるチャンスです」
「観戦もできないので、レース中は残った連中で競技は続けることになる」

エイプリルと共にルール説明。それにしても大雑把だな。
死人を出さない程度に、妨害も認められている。

「戦車戦といい、ザトーさん達は採用競技の選択間違ってませんか?体育祭の競技というにはあまりにもな内容と思います」
「わかってないようだねエイプリル。失敗というのは・・・・・・いいかよく聞けッ! 真の『失敗』とはッ!
 開拓の心を忘れ! 困難に挑戦する事に、無縁のところにいる者たちのことをいうのだッ!
 この体育祭に失敗なんか存在しないッ!存在するのは、冒険者だけだッ!」
「ソルさん、姉さんの相手をお願いします」
「お前がやれ」
「姉さんの担当はソルさんじゃないですか」
「違う」
「あれ、あたし無視?」

エイプリルめ、厄介ごとを俺に押し付けるな。

「白組はここでソルを使わせてもらう。いいですかザトー様?」
「む、ここで来るか。そちらはまだ権利が二回残っているからな。この場合、そちらに優先権がある」
「では遠慮無く、勝たせてもらいます。ザトー様、お覚悟を」
「ハ、まだ点差は大きいぞ」

「白組はソルさんを投入するようです。がんばってきてくださいソルさん。あ、その前に次の競技も引いておいてください」
「ああ。運営は任せる」
「はい」

エクジを引いて渡す。
俺がいない間にも競技は続けられるが、エイプリルならうまくやるだろう。

「がんばれソルっち。祈ってるから」
「何を言う。君も代表だ。あと、白組からはカイ、闇慈、ジョニーを出そう」
「俺の出番か。任せなぁ」
「紅組も決まった。ザッパ、チップ、アクセル、ロボ、ブリジットだ」
「ちょっと待ってヴェノっち?完全にあたしは場違いじゃない?」
「困難に挑戦するのだろう?」
「貴方が要望した企画ですしね」
「言い訳でも考えときな」
「ようこそ・・・『男の世界』へ・・・」
「ジョニーまで!?」

「姉さんファイト」

エイプリルの声援を受け、レースが始まる。

649名無しさん:2011/04/29(金) 05:13:47
スタート位置に移動する。

「『運命とは、自分で切り開くものである』と、ある人はいう・・・。
 しかしながら!自分の意志で正しい道を選択する余地などない、
 『ぬきさしならない状況』というのも、人生の過程では存在するッ!」
「早く並んでください」
「助けてソルっち。助けてくれないとあたしが死ぬ」
「断る」

自分でどうにかしろ。

「まあそんな焦るなって。お前を攻撃するやつなんかいないぜ!」
「我輩モ雌ニハ手ヲ出サナイ」
「でも、ザッパにだけは気を付けろよ」
「なぜですか?僕も生徒を襲ったりなんかしませんよ」
「やっぱ助けてソルっち」
「断る」

ザッパの憑依状態は危険だが、最下位を攻撃する理由なんて無い。
恐らく安全だろう。

「ウチと一緒にがんばりましょう!」
「ブリっちもなんだかんだで非常識についていってるしなあ」
「安心してください!誰かに襲われたらウチが守りますから!」
「・・・頼もしいよブリっち」

レースが始まる。
エイプリルがスタートの宣言をする。

「皆さん用意はいいですか?それではSBR、スタート」
「アクセルボンバー!」
「シュリケーン!」
「ミサイル発射!」
「犬怖ぇえ!」
「ロジャー!」

「紅組、レース開始と同時に乱闘開始です」

開始と同時に仕掛けてきた。
それは想定していた。

「読めてますよ」
「来ると思ってたぜ」
「マイプリンセスに手は出させないぜ」

迎え撃つ白組。戦力になるのは三人だけだが。
そして、俺はそれらを無視していち早く先頭に出て、校外に駆け出す。

「あんた何やってるんだソル=バッドガイ―――ッ!スピードはともかく理由を言え―――ッ!」
「姉さんが一人だけ完全に置いてかれています。いいから走ったら?」

しかし余裕あるなあいつ。
放っておいても大丈夫か。

最初のチェックポイントまで最短でルートを取る。
最初だけではない。全てのチェックポイントを最短最速で通過し、ゴールまでトップで行く。そういう作戦。
三人の抵抗が効を奏しているのか、問題なく走れている。

そしていくつかのチェックポイントを通過し、最後のチェックポイントにたどり着いた頃に

「追いついたぜソル!」

投げられた手裏剣を剣で弾く。チップが来たか。
恐らく、三対四でも勝てると踏み、チップだけ先行させたのだろう。
この速さで追いつけるのはこいつぐらいのもんだしな。それなら予定通りだ。

「へっ!ここから学校までの勝負なら負けねえ!一位は貰った!」

単純なスピード勝負ならそうだろう。だが

「お前、この早さ、屋根から屋根を飛んできただろ」
「ああ!忍者だからな!」
「不法侵入でアウトだ」
「ハン?」
「選手間の妨害は有りだが、犯罪は認められていない。当然だろ」
「はあ?ダマされるかよ!そんなの聞いてないぜ!」
「ならお前は、近道だからと他人の家の中を土足で通過するのも有りだと言うのか?」
「いやそれは・・・」
「屋根の上でも同じことだ。常識は弁えろ。お前はリタイアだ」
「な、なんてこった!?」

実際、犯罪行為はリタイアと決められているわけでもない。
そもそも屋根を飛び移る移動手段を想定してルール作ってないだろうからな。
だが、これでチップの足は止まる。

「すまねえみんな・・・」

落ち込み、座り込むチップを置いて、学校に向かう。
これで勝ちだな。

650名無しさん:2011/04/29(金) 05:56:01
学校に着く。

「あ、お兄さんが一位で帰ってきました」
「皆さん拍手で迎えましょう」
「やっぱり速いですねお兄さん」
「ソルさんなら驚くことでもないけどね」

淡々とした実況に迎えられる。
ゴールに近づき

「SBR、優勝はソルさんです」
「おめでとうございますお兄さん」

いや、まだゴールはしていない。ゴール前で止まる。
本番はここからだ。

「あの、どうしたんですかソルさん」
「何か問題でもありました?」
「いや、こういう作戦なだけだ」
「はい?」

すぐにわかる。

「あ、チップさん、アクセルさん、ロボカイさん、ザッパ先生も帰ってきました」
「どうする気ですかソルさん」

来たな。やはり紅組の連中か。
剣を持ち、ゴールの周囲に炎の壁を作り出す。

「・・・まさか、これからここで妨害ですか?」

その通り、炎で紅組の侵入を阻む。

「ソル!てめえさっきはよくも騙してくれたな!」
「ボンクラメ。アンナ奴二騙サレルナ」
「まあ、旦那の言う通り不法侵入は良くないけどな」
「ところで、これはどういうことですか?」

チップ達の目指すゴールの前には、炎。
俺は、その炎の内側に居る。アクセル達には手出しできない。

「おいおい、まさか旦那が戦わずに先行してたのって、これのため?」
「愚カ者メ!スーパー超高機能ウルトラロボットデアル我輩ハコンナ炎グライウアッチイイイイイイイイ!!??」
「大丈夫かよロボ」
「これじゃ近づくのは無理ですね」

「でもお兄さん、このままだと白組も入れないんじゃないですか?」
「白組に対しては通れるようにする」
「便利ですね。まさにマン・イン・ザ・ミラー状態」
「あ、カイさん達も帰ってきましたよ」

校門の方を見ると、カイや闇慈達の姿。

「おい!このままじゃ上位独占されるぜ!?なんとかなんねえのかよ!」
「あ、いいこと閃いた」
「早ク言エアクセル」
「なんですか?」
「チップ!お前突撃しろ」
「死んじまうぜ!?」

「アクセルさん、チップさんに対して死刑宣告」
「でも、ルールでは死人を出すのは禁止だよね?」
「えっと、うん、確かにそう」

「だからなチップ!旦那はお前を殺せないわけだ。きっと炎を解除してくる」
「ソノ隙二我輩達ガゴールスルワケダナ」
「しかし、もしソルさんが解除しなかったら?」
「そん時はチップが死んで、旦那の反則負けで炎解除だ。どっちにしろゴールできる」
「ボンクラノ割二名案ダ」
「それで行きましょう」
「おい、俺の意見は?」

来るか、チップ。

「・・・仕方ねえな。カミカゼ!」

チップの突進。しかしなんてことはない。
一部だけ炎の温度を下げ侵入を許可し、すぐにチップを捕え拘束する。

「SHIT!失敗か!?」
「そこだチップ!死ね!」
「モット強ク攻撃シロソル!」
「惜しいですね。ぎりぎり生きてます」

「なあソル、なんか俺死にたくなってきたぜ・・・」
「お兄さん、一思いに殺してあげたらどうでしょう?」
「こら、物騒なこと言わないの」

誰が殺すか。
ここで死なれると俺の負けだ。

651名無しさん:2011/04/29(金) 06:26:31
そして全員がゴールする。

「決着です。結果は、白組が一位から五位までを独占。逆に紅組は、六位から十位です」
「これで、白組は紅組を一気に逆転しました。おめでとうございます」

レースを終え、本部テントに戻る。

「お疲れ様でしたソルさん」
「お帰りなさいお兄さん」
「さっきのはちょっと外道もいいとこだと思います」

ルールに則り、勝利した。何も問題はない。

「いやまさか、完全勝利を手にするとはな。ソルを使って正解だった。皆もよくやってくれた」
「正直なところ、私達もあの作戦を聞いたときはどうかと思いましたが」
「俺達三人で五人を相手にするのは骨が折れたぜ」
「ちょっとエレガントさに欠けるが、まあ仕方ないだろう」
「あたし何もしてないんだけど」

「味方にすると頼もしかったが、敵に回すとああも厄介とはな。結果はともかく、ご苦労だった諸君」
「旦那容赦ねえな」
「アノボンクラマジチート」
「すみません。全くお役に立てず」
「・・・・・・」
「元気出してくださいチップさん。逆転のためにがんばりましょう。ウチ達はこれからですよ」

大将がそれぞれの選手を労う。
次の競技に移ろうか。

「お兄さん達がレースをやっている間に、競技が一つ終わっています。次のクジ引きもしておきました」
「準備も終わっています。それでは、私達はこれで交代します」
「ああ」

次の競技はなんなのか。
もうあまりおかしなものはないと思いたい。

652名無しさん:2011/04/29(金) 06:47:05
アバ「・・・展開が遅い」

医者「自然な感想ではありませんか?」

アバ「・・・かもね」

医者「個別ルートはどうするんしょう?」

アバ「・・・どうしよう」

医者「まだ迷ってるんですか?」

アバ「・・・ブリジットかミリアか」

医者「優柔不断が過ぎませんか?」

アバ「・・・隣に住んでる幼馴染がミリアだったら何も問題なかったのに」

医者「現状、隣に住むどころか同居してますけどね」

アバ「・・・JFハーレムエンドならいつでも行けるのに」

医者「ヒロインを無視して名無しキャラでハーレムエンドとは」

アバ「・・・ブリジットが女の子だったら迷わないのに」

医者「性別の壁は厚いようですね」

アバ「・・・初期設定を間違えたとしか言えない」

医者「最初から完全に出オチだとわかってたじゃないですか」

アバ「・・・どうしてブリジットは男の娘なの?」

医者「そんなキャラだからですよ」

アバ「・・・身も蓋もない」

医者「それでは今日はここまで」

653名無しさん:2011/05/09(月) 03:54:32
競技は進む。

「そろそろ終盤だぞ。みんな、まだやれるかー!?」
「「「おー!!」」」
「よーし良い返事だ!じゃあ次の競技に行くぞー!」
「「「おー!!」」」

実況の役目なのかこれは。

「ノリが悪いぞわるお。もっと盛り上がれ」
「断る」
「お前はまったく。ま、いいさ。無理に押し付けはしないのが私のいいところだからな」

お前の無理な押し付けで、夏休みの講習は俺の自室でやることになったのだが。
こいつには記憶にないらしい。

「今は白組リードだ。紅組の巻き返しはなるか!?」

SBRで全勝したのが大きかった。
とはいえ、紅も大分差はなくなってきている。

「次の競技はリレー!さあさあこれも高ポイント競技。・・・あ、わるお。クジ引きクジ引き」
「ああ」
「発表。次の競技は借り者競争。あれ、これ誤字じゃないの?」
「資料はどうなってる」

資料を見る。物ではなく者なのは、間違いないようだ。
物を借りる替りに、人を引っ張ってこいというだけのことか。

「ま、それは置いておいて、リレーの選手は決まった?」
「紅組は大丈夫だ」
「白組も問題ない」
「さて、それでは簡単にルール説明。と言っても大したことないけど。
 ちょっとした特殊ルールで、最終的な決着以外に、それぞれの走者間の勝利も加点になるのがポイントかな」
「最終的に負けても、途中経過で優位を保っていれば、それほど点差は広がらないということだ」
「逆に、途中も優勢、最終決着でも勝利するとかなり大きいな。わるおのSBR完全勝利に匹敵する点数が得られるぞ!」

誰をどの順で出すかも重要になってくる。
そこらは読みと運だな。

「こちらが紅組の出走順だ」
「白組はこうです」

ザトーとヴェノムがオーダーを見せ合う。

「ハッハー!ここで一気に逆転してくれる!」
「一矢は報いてみせますよザトー様」

ザトーはそれだけの自信を持つだけの連中を揃えてきている。

「んじゃ発表。第一走者、紅組ロボカイ、白組ヴェノム。
 第二走者、紅組アバ、白組テスタ。
 第三走者、紅組ブリジット、白組ディズィー。
 第4走者、紅組チップ、白組ミリア。だね。
 トラック半週ずつの計2週。短期決戦だ!」

まともにやれば紅組が有利なような布陣だが、しかし。
各走者が位置に着き、リレーが始まる。

「ヤット我輩ガ活躍スル場面ガ来タ」
「始めるか」
「ハッハッハッ!無様二敗北スルガイイ!」
「それでは紅白対抗リレー!位置について」
「オーバークロック!」

やはり使うのか。

「よーい、ドン!」
「我輩ノ勝チダ!」
「見誤ったな!」

そして開始のピストルの音と同時に、ヴェノムが転移した。
テスタメントのすぐ後方に。

「任せるぞテスタ」
「ああ。任せろ・・・おおおおおおおお!!」

そしてさらにウォレントでディズィーの背後に移動する。

「頼むディズィー」
「出来る限りがんばります」
「待テエエエエエエエエエエエ!!!!ナンダソレハ!!??」
「ロボ完全に置いてけぼり!まだ半分辺りだ。ていうか後ろにディズィーがいる!」
「何デコウナル!?」

まあ、コースアウトはしてないな。
実況も、瞬間移動に関しては完全に無視するようだ。

「しかしさすがに限カイロボは速い!」
「・・・焼成・・・変質!」
「今やっとアバにバトンタッチ!そして極諸刃アバもこれまた速い!
 だがディズィーもそろそろ最終走者ミリアに代わる!」

ディズィーも飛んでるなあれは。走るより飛ぶほうが速いしなあいつは。
さすがにトラックを横断するほどの移動力がないのが紅組には救いか。

654名無しさん:2011/05/09(月) 05:34:38
「・・・ブリジット・・・はい」
「やります!」
「ミリアさんお願いします!」
「ええ」
「さあ紅組は三人目のブリジット、白組は最終走者ミリアにそれぞれ渡った!白組断然有利!」
「まだだな」

瞬間移動ほどでもないが、ブリジットもショートカットスキルを持っている。

「それー!」
「ブリジット、ここでローリング移動で一気にショートカット!」
「チップさん!」
「おう!」
「さあ!紅組もついに最終走者のチップに渡った!しかしミリアとの差は絶望的だ!」
「甘え!トゥーレイッ!αブレー!!」
「・・・え?」

勝負はついた。

「けっちゃーく!紅組奇跡的な大逆てーん!!」
「カミカゼ!」
「ここまでね・・・」
「悪いなミリア。さすがに負けられねえしよ。できればまともに競争したかったぜ!」
「いいわよ別に。転移を使ったのはお互い様だもの」

ミリアもすぐにゴール。

「みんなお疲れさん。まさかあそこまで反則ギリギリのオンパレードとは思わなかったな!」
「フッ、勝てばいいのさ」
「しかし、各走者のポイントはこちらが貰いましたよザトー様」

白組は元からそれが狙いだったようだ。

「解説のわるお。勝因と敗因を簡単に」
「紅組も白組もこの結果は予定通りだ」
「というと?」
「まともに走りを競えばロボカイ、アバ、チップに太刀打ちできるのはミリアだけだ。
 だからその内二人に転移を当てた。三人目はそのリードでポイントを取る。
 白組は最初から、最終のミリアは運良く勝てればいいぐらいの認識だっただろう」
「負け覚悟?骨を断たせて肉を切った感じか。ヴェノムかテスタを最後に置けば勝てなかった?」
「それだと、途中のポイントを紅に取られる上、最後もチップ相手じゃ勝ちは際どいな」
「安全策に走ったのか。ま、白組は総合点だと勝ってたしね」
「仮に、テスタ、ミリア、ディズィー、ヴェノムだとすると、テスタとミリアまでは勝てるが、ディズィーでブリジットにやられ、チップに負ける」
「なるほどね。それよりはポイント3つ確実に取れれば御の字ってわけだ」

そもそも代表選手の内容的に、白が勝つのは相当難しい。ディズィーの代わりに俺を入れれば、ドライン使って勝てたが。
とは言え、紅組も完全勝利はやりにくかった相手。
紅組にしても、良くてポイントゲット、悪くても最後で勝てば十分との判断だろう。

「ではでは点数を加えて、現在勝っているのは白組!ただし紅とは僅差。ほぼ五分といった情勢だ!」
「では、次の競技で逆転といこうか」
「そう簡単にはいきませんよザトー様」

もう終盤というのに、ここに来て振り出しか。

「オイ、我輩ハ何モ活躍デキテナクナイカ?」
「そんなことはないぞロボ」
「そうだぜロボ。さっきもミリアに勝ったのはギリギリだったしな。お前の限カイのおかげだぜ!」
「我輩ハソンナ地味ナ活躍デハナク、誰ヨリモ目立チタイ!目立テバ雌二モテル!」
「・・・必死」
「落ち着くアル」

次の競技がそろそろ始まる。

「次はボクがやる!代わって代わって!」
「はいはい。しっかりやりなメイ」
「うん!がんばろうねソル!」
「お前は、学園祭の時に実況は不向きだっただろ」
「大丈夫だって!適当にソルと喋ってればいいんでしょ?」
「違う」

実況しろ。

「えー?だってみんなそうだったじゃん」
「仕事はしていた」
「そう?ボクにはいつも通りのお喋りに聞こえたけど」

いつもあんな会話はしていないはずだが。

「ま、なんとかなるって。それにボクが困ったらソルがどうにかしてくれるでしょ?」

最初から俺をアテにするな。

「それじゃ始めようよ!借り者競争!」
「ルールは読んだか?」
「ううん、まだ。どんなルール?」

資料ぐらい目を通せ。

「所謂借り物競争とほぼ同じだ。違う点は、お題となる紙はスタート前に俺が引く。
 その紙に書かれた人物を選手同士で奪い合うことになる」
「へー。じゃあ例えば紙に『ソル』って書かれてたら、どうすんの?早い者勝ち?」
「同時走者は4人。最低でも4人は対象となるお題になるようにしてあるはずだ」
「そっか。わかったよ。書かれているものと連れてきた人が合ってるかどうかは誰が判定するの?」
「俺達だ」

しかし、お題自体は生徒全員が知るところとなるので、大抵は判定などしなくても十分だろう。
しかし、ルールを作ったのはザトー達や一部のジェリーフィッシュなので、保証はできない。
俺も紙にどんな内容が書かれているかは知らない。この体育祭、運に頼りすぎなんじゃないだろうか。

655名無しさん:2011/05/09(月) 06:35:24
借り者競争開始。

「最初は私達ね」
「勝ちますよ、イノ」
「貴様らにできるかな?」
「負けないアル」
「それじゃ、最初のお題!はいソル、引いて」
「ああ」

クジを引く。
変な内容の物はないと思いたい。

「ほら」
「えっとね、最初のお題は『人外』だよ!」
「簡単ね」
「ええ」
「丁度いいから説明しておこう。私にはエディがいるが、これは借り者でないので認められない」
「そうアルカ」
「同様に、もし自分自身が対象となったときも、自分を選ぶことは不可とする」
「了解よ」

それではそろそろスタートするか。

「ピストルはボクが撃つ!これやってみたかったんだ!」

メイにピストルを渡す。

「それじゃ、位置について、よーい、ドン!」

掛け声と共に、ピストルを鳴らすメイ。

「うわっ!?これって自分でやるととってもうるさいんだね」
「ちゃんと耳を押さとけ」
「うん。次からはそうする」
「次用の弾を込めろ」
「どうするの?」
「貸せ」
「はい」

弾を込めて渡す。
次からは自分でやれるだろう。

「ありがと。あ、そうだ。レースは今どうなってるの?」
「それを実況するのがお前の役目だ」

仕事しろ。

「え?えーと、イノがアバを選んで、カイはロボを選んで、ザトーはスレイヤーを選んで、紗夢はディズィーを選んでるね」
「お前、代われ」
「なんで!?」

全くできてない。

「もう少し具体的に内容を説明しろ」
「えぇ・・・難しいよ」

これが難しいというなら、実況はできない。

「あの、すみませんがお二人共。私達はとっくにゴールしてるんですが」
「わかっている」
「あ、カイがゴール!一位おめでとー!」
「いえ、一位は私ではなく紗夢ですよ?」
「あ、そうなの?紗夢おめでとー!」
「アハハ・・・ありがとうアル」

これでは仕事にならない。

「ジェリーフィッシュ、誰か来い」
「え!?次からはちゃんとやるって!」
「無理だ」
「頑張るから!」
「無理だ」
「なにさ!ソルのケチ!」

ケチとかいう問題じゃない。

「あの、バッドガイ君、私でいいかな?」
「ああ」

メイよりは喋れるだろう。

「なんでボクはダメなのさ」
「さっきみたいなのじゃ、みんなそう思うのメイ」
「次はちゃんとやるよ!」
「じゃあ、一緒にやろう?」
「うん!」
「バッドガイ君、それでもいい?」
「好きにしろ」

それでも無理なら、どうしようもない。

656名無しさん:2011/05/09(月) 06:58:14
っ゚w゚)っ「やっほー」

アバ「・・・・・・」

っ゚w゚)っ「冷たい反応だ」

アバ「・・・何か?」

っ゚w゚)っ「特に用はない」

アバ「・・・・・・そう」

っ゚w゚)っ「そんな時があってもいいよね」

アバ「・・・・・・」

っ゚w゚)っ「おまけだとエディなんて出てないし」

アバ「・・・ザトーだからね」

っ゚w゚)っ「ザトーじゃなくて俺でも良かったんじゃないかなって思う」

アバ「・・・どっちでもいい」

っ゚w゚)っ「でも俺だとミリアのストーカーができないんだよ」

アバ「・・・そうなる」

っ゚w゚)っ「それでも別に支障ないんだけどな」

アバ「・・・うん」

っ゚w゚)っ「おまけにも俺を出してみないか?」

アバ「・・・うーん・・・」

っ゚w゚)っ「きっと癒しキャラとして大人気」

アバ「・・・それはどうかと」

っ゚w゚)っ「エディエンドとか作って」

アバ「・・・ダメ」

っ゚w゚)っ「だめか」

アバ「・・・うん」

っ゚w゚)っ「まあふとEDEDってダジャレが思い浮かんだから言っただけなんだけどね」

アバ「・・・・・・」

っ゚w゚)っ「それでは今日はここまで」

657名無しさん:2011/05/12(木) 04:24:16
借り者競争も終盤。

「紅組が一位二位で勝利!これで白組を逆転だよ!」

メイも少しはマシになってきた。

「ほら、ボクだってちゃんとやれたでしょソル?」
「メイはやればできる子なの」

最初からできるやつを使えばいいだけだが。
今後に必要なスキルでもあるまいし。

「そんじゃ、次行こう!」
「ミリア、ここは逆転するためにも勝つぞ」
「貴方こそ足を引っ張らないでよ」
「白組からはヴェノムとミリア!がんばってねーミリア」

個人的な応援は如何なものか。

「走るのは得意ではないのだがね」
「てかアンタ走れんの?瞬間移動なステップじゃなくてさ」
「なに、その気になれば君よりは速いさ。安心したまえ」
「紅組はスレイヤー先生とロウ君なの」
「クジ引き頼むぜ旦那。面白いのを引いてくれよ?」

完全に運任せなもので頼まれても、俺にはどうしようもない。
ただ引くだけだ。

「はいソル。引いて引いて!」
「ああ」
「オッケー!それじゃ今回のお題は『好きな人』!それじゃみんな位置について」
「ちょっと待ってメイ」
「よーい!ドン!」

ミリアの異議申し立てを無視し、メイがピストルを鳴らす。

「ザトオオオオオ様ああああああああ!!」
「めぐみー!どこだー!?」
「シャロン、私と共に来てくれ」
「ヴェノムとアクセルとスレイヤーが恋人目指して一直線!・・・あれ、ミリアどうしたの?早く行かないと」
「あのね・・・」

ミリアだけ取り残されている。

「『好きな人』がいない場合は、どうすればいいのかしら?」
「えーいないの?」
「いないわよ。仮にいたとしても、こんな人前で連れ出す気はないわ」
「だって他のみんなはやってるよ?」
「彼らは普段から隠してないじゃない。今更恥ずかしいなんてこともないでしょ?」

あいつらは、そうだろうな。

「バッドガイ君、どうするの?ミリアさんは棄権?」
「それじゃつまんないよ!」
「面白くてやってるわけじゃないわ」

それはそうだが。

「指定は『好きな人』だ。恋愛感情でなくても問題ない」
「・・・そうくるの」

友人としてでもいい。同性相手でも、好意を持っている相手なら誰でもいい。
そこに制限はかけられていない。

「どういうこと?」
「あのねメイ、例えば、私が好きな人を選ぶのに、家族であるメイを選んでもいいよってことなの」
「あ、なるほど」
「『好きな人』には違いないからね」
「そっかー。じゃあミリアもソルを選べばいいじゃん!」

俺に振るな。

「なんでそうなるのよ」
「なんで?ミリアってソル嫌いなの?」
「メ、メイ!無邪気に答えづらいことを聞いちゃダメなのっ」
「・・・・・・別に、嫌いとまでは言わないけど」

嫌ってれば、さすがに居候先には選ばないだろう。

「じゃあソルでいいじゃん」
「貴方ね・・・」
「レイジさん、あんまりメイの言う事は気にしないでいいから」
「なんでさ!?」

メイはもうちょっと場の空気を読めるようにならないか。

「・・・はぁ、もういいわ、ソルで。来なさいよ」

ミリアも諦めたか。呼ばれたなら、断ることもできない。
席を立つ。

「一応言っておくけど、確かに少しは貴方に感謝はしてるわ。でも、それだけよ。誤解しないで」
「ミリアアアアアアアアアアアア!!!何故ソルなんかを選ぶ!!?何故だ!私がいるじゃないか!!!」
「どういうことですかソルさん!浮気ですか!?ウチを見捨てるんですか!!?あんなに愛し合ったのに!!!」
「間違ってもアレのような勘違いはしないで。・・・まさかと思うけど、貴方ブリジットと・・・」
「違う」
「そうよね」

誇大妄想もいい加減にしろブリジット。

658名無しさん:2011/05/12(木) 05:17:13
「お疲れミリア、ソル。最下位だよ!」

言われなくてもわかっている。

「まったく、最下位とは情けない。紅組にやられてしまうぞミリア」
「そういうヴェノムだって三位だけどね!」
「それは、ザトー様が『ミリアを待つ!』と抵抗なされたから・・・」
「悪いなヴェノム。おかげでこっちは余裕だったけどな」
「ザトーも上手く時間を稼いでくれたものだ」

恐らく、半分以上は本気だっただろう。

「もっとまともなものを引きなさいよ」
「無理だ」

ミリアも無茶を言う。
そこまで万能ではない。

「おかえり、バッドガイ君」
「ああ」

さっさと次に移ろう。

「んじゃ次行こー!紅組はブリジットと梅軒だよ」
「ソルさん!ウチがソルさんを選べる内容をお願いします!『運命の相手』ぐらいだと完璧です!」
「それだとアンタ以外が誰も選べないだろ」
「んで白組はテスタとポチョムキンだね!」
「いや、私にはディズィーがいる」
「・・・一生仕える相手という意味なら、大統領がそうだな」
「おい!ここも俺以外変態の集まりじゃねえか!」

梅軒の主張を無視し、クジを引く。

「それじゃ、ブリジット達のお題は『嫌いな人』!」
「それじゃソルさんを選べないです!?」
「いいのかい?そんなド直球な内容」
「選んだ相手との今後が険悪になりそうなんだが」
「嫌いだと面と向かって言っても大丈夫な相手を選べということだろうか・・・」
「位置について、よーい、ドン!」

選手の意見を無視し、メイがピストルを鳴らす。
しかし今度は誰も動き出さない。

「どしたのさみんな?もう始まってるよ?」
「これ難しいんですよ」
「・・・あー、俺いたわ」

梅軒が駆け出す。

「ロボ、来な」
「エ!?我輩!?」
「そうだよ、アンタだ」
「コレッテ・・・プロポーズサレテル?」
「どこをどう考えたらそうなるんだい!?」
「嫌ヨ嫌ヨモ好キノ内トイウ言葉ガアル」
「いや、俺は100%アンタが嫌いだから安心しな」
「照レルナ。ソコマデ我輩二惚レテイタトハ思ワナカッタ」
「違うっつってんだろ!」
「ワカッタワカッタ。梅軒ハ我輩ノコトガ大嫌イナンダナ。大丈夫ダ。我輩ハワカッテイル」
「おい!こいつぶっ壊すの誰か手伝え!」

一方スタート地点では、

「私の嫌いな相手・・・義兄さん?」
「バッドガイ君、呼ばれてるの」

人違いだ。

「ディズィーを私にくれない義兄さんなんて嫌いだ」
「義兄じゃない」
「いいから来てくれ義兄さん」
「断る」

義兄じゃないので誘いには応じない。

「仕方がないな。私はお前が嫌いだ、ソル。だから来い」
「わかった」
「バッドガイ君、それはいいんだ」

名指しされて嫌いと言われるなら、条件は満たしている。

「ポチョムキンはどうすんの?」
「私は・・・ザトーかな」
「え、ポチョムキンってザトーのこと嫌いだったの?」
「いや、ザトーというよりエディがな。あれに追い込まれるとどうしようもないのだ」
「ああ、それで。ボクもエディは嫌い」
「理解者がいてありがたい」
「それじゃ、がんばってきてね!」
「うむ」

ポチョムキンも移動を開始した。
俺も行くとしよう。

659名無しさん:2011/05/12(木) 06:19:38
「一位はテスタとソルペア!おめでとー」
「これが義兄弟パワーだ」
「違う」
「そうつれなくするな。いつか本当に義兄弟になるのだから」

テスタメントを無視し、席に戻る。
メイしかいない。

「二位はポチョムキンとザトー!これで白組がまた紅組に迫った感じ?」
「メイ、お前だけか」
「うん。姉さんならブリジットに連れられて行ったよ」

ブリジットはあいつを選んだのか。

「ところで梅軒達さ、そろそろロボ壊すのやめてレースに戻ってよ!」
「あん?やばいね、忘れてた」
「ちょっとやり過ぎたアルカ?」
「まだ物足りないわぁ」
「インペリアルレイ撃ちたいです」
「・・・もっとぼこぼこに」
「跡形もなくしてあげる」
「・・・ピー・・・・・・ガガガガ・・・」
「ボクもやりたかったのに!」

やりすぎだ女共。メイも落ち着け。

「チップ、女を怒らせるなよ。お前じゃ確実に死ぬ」
「・・・ああ。肝に命じとくぜ」
「止める隙もなかったもんな・・・」
「今日一番の迫力でしたね」
「流れるような連携攻撃。見事と言う他ない」

結局梅軒も破壊をやめ、壊れかけた頭だけを持ち、レースに復帰した。
いいのかあれは。人ではなくロボット。しかも頭だけだが。・・・いいか。
ある程度の損傷なら自己修復で直るしな。

「そうこうしてる内にブリジット組ゴール!おつかれー」
「一緒に来てくれてありがとうございました」
「ううん、いいの。気にしないで」
「ソルさん!ウチの活躍見てくれましたか?」
「いいや」
「なんで見てないんですか!」

俺も走ってたからな。
それに、三位では活躍もないだろう。

「ただいま」
「おかえり―。梅軒もゴール!」
「頭だけだけど、問題ないよな」
「ああ」

すぐに直るだろう。

「コレガ暴力的ナツンデレトイウヤツダナ。照レ隠シニモ程ガガガガガガ・・・」

打たれ強いロボットだ。
精神的にも身体的にも。

「ロボカイ君ってバッドガイ君が作ったんだよね?凄いと思うの」
「でもさ、もうちょっとマシな性格にならなかったの?」

できたと思うが、今更だな。

「オイボンクラ、我輩ヲ助ケロ」
「断る」
「貴様、我輩ノ開発者ダロ!親ナラ子ヲ助ケロ」
「断る」
「・・・助ケテクダサイオ願イシマス」
「断る」
「ドウシロト!」

放置していれば、勝手に直るだろう。

「あんまり意地悪するのはよくないの。ロボカイ君、身体の所まで持っていけばいいかな?」
「オ前天使カ。我輩ノ嫁二ナッテクダサイ」
「それはお断りなの」
「ナゼ!?」
「お人好しだよね。まあいいや。レース続けよ!あとちょっとだから!」

残りも順調に消化し、借り者競争も終わりとなる。

660名無しさん:2011/05/12(木) 06:55:05
アク「テンポが悪いのは個別イベントがないからなんだけどさ」

アバ「・・・うん」

アク「個別イベントやるのが難しい理由がわかった」

アバ「・・・そう」

アク「いやルート決めてないってのもあるんだけど、他の理由がはっきりした」

アバ「・・・なに?」

アク「旦那のせい」

アバ「・・・ソル?」

アク「旦那の性格が個別イベントをやるのにまったく向かないんよ」

アバ「・・・まあ」

アク「下手になんでも有りなキャラにしたせいで、鈍感っていうのは違和感があってさ」

アバ「・・・そうね」

アク「つまり、相手の感情に気づいていながら無視するっていう形になる。ブリジットみたいに」

アバ「・・・ああ」

アク「でも、ブリジットはともかく他ヒロインでそれをやると旦那が結構な悪人になりそうじゃん?」

アバ「・・・そりゃね」

アク「そこら辺をどう解決するかを考えつかない限り、個別イベントは書きにくい」

アバ「・・・ふーん」

アク「下手にヒロイン側だけデレると、ブリジットの二の舞だしさ」

アバ「・・・そうなるね」

アク「空回り感が半端なくなる」

アバ「・・・それは勘弁」

アク「ほんとどうすりゃいいんだろ」

アバ「・・・がんばって考えて」

アク「それを考えるのはアバの役なんだけどな」

アバ「・・・え?」

アク「旦那に愛を取り戻せ」

アバ「・・・元から持ってないんじゃ」

アク「大丈夫。きっと大丈夫」

アバ「・・・根拠がない」

アク「それでは今日はここまで」

661名無しさん:2011/05/13(金) 03:25:09
体育祭もとうとう最後の競技になる。
これだけは予めクジ引きではなく決められていた。
さすがに最後に盛り上がりの薄い物を持ってくるのもどうかという判断だろうか。

「最後は騎馬戦だ。点差はほぼない。これに勝ったほうが勝ちとなる。わかりやすいだろう」

お馴染みの競技、騎馬戦。
そして全員参加であるため、俺が司会をしなければならない。

「両軍、入場しろ。解説のファウスト、何か一言あるか?」
「そうですねえ。最後ですから、皆さん怪我には気をつけてくださいね」
「無理だろうな」
「武器制限無し、騎馬が崩れるまで、というのはやりすぎではありませんか?鉢巻の奪い合いぐらいが妥当だと思いますがね」
「ザトー達に言え」

無制限なルールを作ったのはザトー達だ。

「まあ怪我しても私とソルさんが完璧に治療しますので、皆さんご安心を」
「だそうだ。両軍共に力を尽くせ」
「紅組の諸君!これが最後だ!必ず勝つぞ!!」
「「「おおお!」」」
「白組の皆。もう一頑張りだ。勝とうではないか!」
「「「おおお!」」」

盛り上がってるな。

「結局、あなたは一度づつしか参加しませんでしたね」
「どちらも俺の使いどころを探っているうちに、使い損ねたようだな」
「そして最後はあなたの力を借りずに正々堂々の勝負と。青春ですねえ」

午後は楽なものだった。
いや、今日一日そうだったと言える。

「しかし、せっかくですし、あなたも参加してみたいなんて少しは感じませんでしたか?」
「いいや」
「無気力すぎるのはあまり感心しませんね」

どうでもいいことだ。
両軍の入場が終わり、配置につく。

「では最後の競技、騎馬戦を始める。双方用意、始め」

ピストルを鳴らし、開始を告げる。

「まずは厄介な奴らを倒す!ザトー様とアバを狙え!」
「よっしゃ!行くぜ!」
「突出するのは危険です闇慈!足並みを揃えてください!」
「もう遅いぜ!闇慈はもらった!みんなやるぜ!」
「おお!?」

「無闇に突撃した闇慈がチップ達に囲まれる。闇慈の周囲に味方なし」
「若いですねえ」

「闇慈に敵が集中するなら他が空くはずです!ディジー、イノ、行きますよ!」
「カイさん、突撃しなくてもセイクリッドエッジとガンマレイとメガロマニアで一掃なんてどうですか?」
「とんでもないことを言いますね貴方」
「味方も少しは前にいるわよ?」
「敵に与えるダメージの方が大きいじゃないですか」
「それもそうね。楽しそうだし私は乗ったわ」
「・・・・・・やりますか」

「ここでディズィーが殲滅宣言。紅組はどう対処する」
「あの方、今日結構暴れてますよ。いいんですか?」
「死人は出ていない」
「あなたは昔からディズィーさんには甘いですねえ」

これに限っては公平だろう。ディジーだけを甘やかしていない。
他の連中が暴挙をやっても見逃している。
他が多少自重している中、ディズィーだけが全く自重していないというのもあるが。

「・・・全員散開。・・・盾役集合」
「アモルファス!」
「消滅しろ!」
「山田さーーーん!」
「戀崩嬢!」

「同じく飛び道具系で対抗してますね」
「それ以外ないしな」
「紅組はこの事態を予測していたように思いますが?」
「予測していただろう。対応が早かった」
「おや、今のに巻き込まれて誰か倒れてませんか?」
「チップが死んでるな。闇慈もか」

退場になった闇慈がこちらにやってくる。

「いってえ・・・酷すぎねえ?俺とチップがやりあってるのに、俺ら挟んで大技一斉に放つってよお」
「怪我はありませんか?」
「ああ、俺は大したことねえよ。でも騎馬組んでたの連中がちょっとやられててよ、見てやってくんねえか?」
「わかりました。ではここはあなたに任せましょう」
「あいよ。よろしく頼むなソル」
「いなくても問題ない」
「そう言うなって。旅は道連れ世は情け。これも何かの縁ってことよ」

そう言って、闇慈は隣に座る。
勝手にしろ。

662名無しさん:2011/05/13(金) 04:54:17
少しずつ脱落者が出始める中盤戦。

「・・・ブリジット、アクセル」
「なんですか?」
「お呼び?」

「お、紅組が動いてるぜ」
「遊撃だろう」
「なるほどね。あいつらの武器ってリーチあるしな。戦場で長物って厄介だしよ」
「長物というには特殊な武器ではあるが」

敵の間合いより遠くから戦うという点では、ヨーヨーも鎖鎌も変りないか。

「アクセルとブリジット、行動開始」
「なんか作戦立ててたな。白組気を付けろよ!」
「今のお前は中立だ。片方だけを応援するな」
「ああ、悪い。ついな」

「む、ブリジットとアクセルか。メイとミリア、行ってくれ」
「メイなら最前線で暴れてるわよ?」
「・・・なに?」
「さっき見てなかったかしら?自己防衛のため、ディジー達の覚醒技を紅組と一緒に迎撃してたけど」
「なにをやってるんだあいつは・・・。最初は私の側に控えていろと言ったはずだが」
「貴方がザトーを狙えって言ったから飛び出して行ったのよ。それよりブリジット達はどうするの?私だけじゃ抑えられないわよ」
「テスタは私の守りにしておきたいし、ジョニー頼むぞ」
「任せな。美人が隣にいるんだ。おじさん張り切っちゃうぞ」

「ブリジットがミリアと、アクセルがジョニーと対峙」
「どっちが勝つんだろうな。ソル、お前どっちだと思う?」
「俺は中立だ」
「ああ、そうだったな」

「ミリアさんには負けませんから!」
「やけに敵意を感じるのだけど?」
「ソルさんは渡しません!」
「・・・いえ、それはいらないわ。勝手に勘違いして敵視しないでちょうだい」
「ほんとですか?一緒に生活している内に、なんとなくソルさんが気になっちゃったりしてませんか!?」
「全くないわ」
「・・・よくそんな相手の所に転がり込めましたねミリアさん」
「・・・それを言われると困るわね。ディズィーに誘われたからなんだけど」

「お前、本当にミリアとなんもないの?」
「ない」
「一緒に暮らしてるのになあ」
「お前達寮の連中も、夏休みの間は男女が同じ建物内だっただろ」
「そう言われりゃそうだ。ま、こっちはこっちで楽しくやってけどな」

騒がしい奴らが揃っているからな寮組は。

「とにかくソルさんは渡しません!ミリアさんには負けません!」
「これ、勝ったらまた変な誤解されるんじゃないかしら?負けてしまいたいわ・・・」

「ブリジットとミリアが交戦開始。ミリアがやや押され気味」
「アクセルとジョニーもやりあってんな」

「悪いけど、まともに相手してらんないんだよねアンタは」
「だったらどうするアクセル」
「こうするぜ!っと」

鎖鎌を投げ、馬となっている人間の足を絡めとり、引っ張る。

「うおっ!?」
「馬を崩すなんて当然の戦術だろ?そらよっ!」

「アクセル、ジョニー相手と不利と見るや、馬を切り崩しにかかる」
「うまいなあれ。あいつにしか芸当だろ。ってか有りかよあんなん」
「問題ない」

武器の使用は許可されている。

「これで終わりっと!」
「油断したな!」
「うあっち!?」

「アクセル、ジョニー共に失格。退場しろ」
「馬を狙った最後の一撃に燕穿牙を合わせてアクセル道連れか。ジョニーのやつ、狙ってたな」

「あっちぃ・・・共倒れかよ」
「こっちも正直やられたぜ。騎手が馬を狙うなんて思ってなかったからな」
「そりゃまあ、鎖鎌がなきゃそんなんできないしよ」

「いよっ!お二人ともお疲れさん」
「後は応援だな。頑張ってくれよ紅!」
「俺は少しファウストを手伝うとするさ。じゃあな」

アクセルが残り、ジョニーが去る。
何故此処に来る。

「戦況は五分といったところ」
「白組が若干優勢じゃねえか?」
「何言ってんだ闇慈。紅の方が勝ってるっての」

何をしにきたんだこいつら。

663名無しさん:2011/05/13(金) 06:09:49
戦いは続く。

「しつこいのよブリジット」
「恋する乙女は無敵なんです!」
「貴方、乙女じゃないじゃない」
「そ、そんなこと言いますか!?酷いです!あんまりです!」
「だって事実でしょ?」
「事実でも言っちゃいけないことってあるじゃないですか!」

「なんか旦那を巡って火花散らしてるぜ?」
「『俺のために争うのはやめろ』なんて言ってみたらどうだ?」
「言わん」

ブリジットが一方的に絡んでいるだけだ。
ミリアにすればいい迷惑だろう。

「それに、ライバルなら私じゃなくて・・・いえ、なんでもないわ」

「ん?ミリアが今なんか言わなかったか?」
「俺には何も聞こえなかったぜ?な、旦那?」
「ああ」

「とにかく!ミリアさんには色々と負けられないんです!」
「もういいわ。とりあえず騎馬戦の決着をつけましょう」
「望むところです!キルマシーン使いますから!」

「あい、あんなん使ったらミリア以外が危険だろ」
「ミリアを攻撃しつつ、騎馬も崩しにかかっているな」

ミリアしか見えてないように見えて、意外と冷静じゃないかブリジット。

「ミリア、失格。退場しろ」
「やられたわね」
「やりました!ウチは勝ちましたよソルさん!これでソルさんはウチのものです!」
「おめでとう旦那」
「よかったなソル」
「祝福するわ」

勝手なことを言う。

「もう、何を照れてるんですかソルさうわあぁっ!?」

「ブリジット、失格。退場だ」
「ええ!?いくらなんでもソルさん、審判が攻撃するのはズルです!」
「俺じゃない」

さすがにあんな状況でブリジットを殴ったりしない。

「ミリアが最後に馬の足に髪の毛を飛ばしていた。それで崩れただけだ」
「え?そうなんですか?」
「よく見てたわね。気付かれないようにやったつもりだけど」

相打ちというわけだ。最初からそれをやっていれば勝てただろうに。
やらなかったのは、ブリジットに変な因縁をつけられたくなかったからか。

「なあ、リーチがあると馬を狙えて有利だよなこれ?」
「闇慈じゃどうしようもないもんな」
「ああ、絶扇でかくするにも限度があるしよ」
「疾使えよ」
「あれだけじゃ崩せねえよ」

「アクセルさん、闇慈さん、ウチと代わってください!」
「ん?ああ、いいぜ」
「んじゃ俺らは退散だな。旦那もがんばれよ」
「ありがとうございます!今からはウチとソルさんの夫婦で実況の時間です!」
「夫婦じゃない」

勝手なことを。

「細かいことはいいじゃないですか。今はどうなってますか?」
「まだ五分だな」
「なかなか均衡が崩れませんね」
「ザトー達はうまくチーム分けをしたな」

ここまで互角になるとは。

「これだと、ソルさんが付いたほうが勝ってましたね」
「そうだろうな」
「ウチとしては、ソルさんと一緒のチームで勝利の喜びを分かち合いたかったです」
「断る」
「あ、ディズィーさんが負けそうです!がんばってください!」
「片方だけを応援するな」
「じゃあ紅組も応援します。梅軒さんもがんばってください!ああ!後ろからイノさんもやってきてますよ!気をつけてください!」

そうではなく。

「ブリジットのせいで梅軒を倒しそこねたのだけど・・・」
「お兄ちゃん、今のは反則だと思います」
「白組の大将として公平なジャッジを求める。梅軒は失格ではないか?」

確かに今のは自軍である紅組を贔屓したと取られても仕方がない。
ただの応援なら口出ししてもいいが、ここに座っているならそれは認められない。

「ちょっと待ったソル。俺はイノが後ろから来てたことには気づいてたぜ?ブリジットがなくてもどうにかできてたさ」
「・・・私も・・・フォローに行ってた」
「確実にやられていたわけではあるまい。多少のペナルティは受けるが、失格というのはやり過ぎでは?」

梅軒とアバの動きは見ていたから、嘘を言っていないのはわかる。
どうするかな。

664名無しさん:2011/05/13(金) 07:15:10
「ヴェノム、誰か一組騎馬を復活させろ。それでいいか?」
「む・・・まあいいだろう。戦力が優位になるのに違いはない」
「ザトーはどうだ」
「やむを得ないな。しかし一つだけ頼みがある」
「なんだ」
「ブリジットをそこから離してくれ」
「うう・・・すみません・・・」

ブリジットが席を立つ。
さすがのこいつも居た堪れないようだ。

「応援はありがたいが、自軍の場所からやってくれブリジット。頼むぞ」
「はい。そうします」

ブリジットが去り、一人になった。

「カイ、誰を戻すのがいいと思う?」
「難しいですね・・・。ジョニーなら確実に安定した戦力になってくれると思いますが」
「悪いが俺はパスだ。治療で手が塞がっているんでな。後は生徒で決着をつけな」
「ああ言われては仕方がないな。ではミリアか闇慈のどちらかか」
「貴方達、どちらか出たいですか?」
「・・・私は遠慮しておくわ。さっきのブリジットの相手で疲れたから」
「んじゃ俺か?」
「闇慈か・・・」
「闇慈ですか・・・」
「おいなんだよその残念な物を見る目は。今度はちゃんとやるぜ?」
「・・・そこまで言うなら闇慈にしよう」
「しっかり働いてくださいよ」
「おう。わかってるって」

「白組は闇慈が復活。再開するぞ。いいか?」
「こちらが有利になった。ザトー様を倒すぞ」
「まだ甘いぞヴェノム。こちらにもまだ手はある」
「では騎馬戦、再び始め」

多少の休みになったようで、お互いに動きが良くなっている。
闇慈が戻ったのがどう転ぶか。

「貴方、仕事となるとまともに喋るわね」
「何の用だ」
「別に。暇だから来てみただけよ。白は私以外、みんな治療テントなんですもの」

暇だからと、ミリアが来た。
それにしても、負傷者多いな。

「ここは日陰でいいわね。椅子もあるし。私達は炎天下の中、一日中運動しっぱなしなのよ?」
「だからなんだ」
「深い意味はないわ。体育祭は騎馬戦で終わりだし、もう夕方だから大分涼しくなってきたもの」

そうか。

「そろそろザトーを狙いに行きますか」
「おう、付いてくぜカイ」
「ボクも行く!」
「頼むぞ三人とも。ザトー様は手強いぞ」
「他の敵は任せますよ」

「カイ、闇慈、メイ。紅組に突入」
「ザトー狙いのようね。白組は誰が相手をするのかしら?」

「・・・梅軒、紗夢」
「あいよ。さっきの借りを返してやるよ」
「そろそろ私もやるアルネ」
「やばい、やばいって!このままだと・・・・・・きたぁああ!」

「そういえばザッパがいたわね」
「うまく温存してたな。スレイヤーもまだ何も動きなしで残っている」
「よくそれで戦えてたわね」
「アバは雑兵を上手く使っていた。その差だ」
「こんなゲームでも戦術なんてあるのね」

アバのレベルでやるのは稀だと思うがな。

「紅の有力な戦力は、ザトー、アバ、梅軒、紗夢、ザッパ、スレイヤーといったところか」
「白はヴェノム、カイ、ディズィー、イノ、メイ、テスタ、・・・闇慈、ね」
「そこ!なんで俺の名前は戸惑った!?」

深い意味はないだろう。

「一応闇慈がいる分、白が数で有利のようね」
「だが、ヴェノムと守り役のテスタメント以外は疲労があるな」
「その点、紅は結構余裕があるわね。アバの作戦勝ちかしら?」

エディ、アバ、スレイヤーをまだ残しているからな。

「数で攻める。イノ、ディズィー。カイ達を援護しろ」
「わかりました」
「ここは大丈夫かしら?」
「テスタがいれば守りは万全だ」
「任せるがいい」

「数で押す気ね」
「そうだろうな」

数の利があるなら、活かすのは当然だ。
そろそろ決着がつきそうだな。

665名無しさん:2011/05/13(金) 08:38:37
「・・・スレイヤー」
「やっと出番かね。待ちくたびれたよ」
「・・・ヴェノム狙い。・・・私も」
「貴様も行くか、アバ」
「・・・エディは梅軒に加勢。・・・無理はしないで」
「わかっている。大将が落とされるわけにはいかないからな」
「4対5だが大丈夫かね?」
「なに、私とザッパは体力を残している。ヒケは取らんさ」

「紅組はここで大将のヴェノムを狙うようね」
「守りはテスタメントだけだしな」
「ところでずっと気になってたんだけど」
「なんだ」
「どうしてザトーはロボカイに乗ってるのかしら?それも木馬モードの」
「ヴェノムもポチョムキンに乗っているだろう」
「それは、馬が丈夫なことに越したことはないからよ。ポチョムキンなら文句なしだわ。上に乗ることもできないし」

確かにあの巨体ではな。

「ザトーも同じだろ」
「どうして人型ではなく木馬なのかしら?それによく、ロボカイがザトーが乗ることを許可したわね」
「お前達に破壊され、自己修復するときに、アバが少しいじっていた。その影響だ」
「何してるのよアバは」

夏休みの間に、いじったり分解したりで構造は理解していたらしい。

「躱せロボ」
「了解シマシタ」
「よし、いいぞ。攻撃に移る。突撃だ!」
「命令ヲ実行シマス。敵二対シ突撃ヲ敢行。目標、イノ」
「食らえイノ!合体ダークセンチネル!」

「完全にロボットね」
「AIを一時的に消したようだな」
「もうあのままでいいんじゃないかしら」
「どうでもいい」

アバが直すなら元に戻るが、放置すれば、あのまま人間に命令に忠実なロボットだ。

「イノ、メイ、梅軒、退場だ」
「やられちゃったわ」
「ごめんねみんな」
「ちっ、ここまでかい」
「今までよくやってくれた梅軒。これで数の利はなくなったな!」
「しかしおかげでそちらは随分と疲れているようですが?そこっ!」
「ハイヤッ!お互い様アルネ!」
「俺は途中で休んでたから、まだ元気だぜ!」
「刻みてぇ」
「みんなまとめてガンマレイで・・・」

「ディズィーってあんなに物騒だったかしら?」
「こういう時はハメを外すやつだ」
「ふぅん。・・・そういえば学園祭でもやってくれたわね」

実況もしなければ。

「3対3をしている間に、ヴェノムとテスタメントにアバとスレイヤーが迫っている」
「さて、大将ヴェノム。覚悟してもらおうか」
「・・・お命頂戴」
「ふ、2人だけでやれるつもりか?」
「ここから先へは行かせない」
「近づけば、馬を崩させてもらおう」

「テスタメントとポチョムキンね。守りに関しては厄介な組み合わせだけど、どう突破するのかしら?」
「・・・壊す」

アバが鍵を取り出し、振り回す。

「せっかく張った罠だ。そう簡単に壊されては困る」

それを、テスタメントが大鎌で受ける。

「・・・邪魔」
「それが役目だ」

アバとテスタメントが打ち合う。ヴェノムとスレイヤーは傍観しているだけだ。
しかし長くは続かない。何度目かの打ち合いの後、アバが大きく構えた。

「証拠・・・隠匿・・・!」
「くっ、罠を壊されたか。だがまだだ!」
「フィナーレといこう」
「!?」

アバの大技はただの目眩ましだ。

「お別れだ!」
「ザトー様ああああ!」
「道草を食ったがなかなか楽しめたよ」

「スレイヤー、ヴェノム、失格。大将ヴェノムの敗北により、勝者紅組」

やっと決着がついたか。
最後は奇襲だな。アバに合わせて騎馬を捨て、テスタメントを飛び越え、直下型ダンディーでヴェノムを弾き飛ばす。

「すまないヴェノム。アバにばかり注意してしまっていた」
「いや、私の不注意だ。私が気づいていれば、ヘブンリーでスレイヤー殿を捕えられたのだが」
「・・・全ては大将である私の責任だ。スレイヤーにやられたこともな。皆の奮闘に応えられず、申し訳ない」

騎馬戦、終了だ。

666名無しさん:2011/05/13(金) 08:44:10
アバ「・・・疲れた」

カイ「お疲れ様です」

アバ「・・・飲み過ぎた」

カイ「ずっと飲んでましたからね」

アバ「・・・なんとか騎馬戦を終わらせようと」

カイ「おかげで終わりましたよ」

アバ「・・・途中で切ってれば良かった・・・」

カイ「まあいいじゃないですか。終わったんですから」

アバ「・・・今回はもう滅茶苦茶読みにくいのはわかってる」

カイ「ほぼ会話台詞ですからね。台詞前に名前もありませんし」

アバ「・・・・・・疲労と酔いでとんでもないことに」

カイ「もう休みましょう。こんな時間ですよ」

アバ「・・・おやすみ」

カイ「おやすみなさい」

アバ「それでは今日はここまで」

667名無しさん:2011/05/19(木) 04:11:41
全ての競技が終わり、体育祭も終了となる。

「閉会式やるから、ミリアさんは戻ってもらえるかな?」
「ええ」
「あんまり後輩君とイチャイチャしてると、ブリジット君に後ろから刺されるよ」
「してないわ」
「そう?ま、君がそう思うならいいけど」
「どうしてこうも邪推する人が多いのかしら」

不満を言いつつ、ミリアが白組の位置に戻って行く。

「後輩君、今日一日ご苦労様。あと少し、閉会式まで付き合ってもらうよ」
「ああ」
「それじゃ始めようか。ザトー君、準備はいいかい?」
「問題ない。始めてくれ」
「それでは全選手、集合」

生徒が中央に集合する。

「今のうちに聞いておこうか。後輩君、解説者兼運営として、何か一言」

特に何もない。とは言え、何も言わないわけにもいかない。

「それぞれによくやった」
「無難だね。まあいいさ」

生徒が集合し終わる。
閉会式の始まりだ。

「それでは閉会式を始めます。まずは成績発表」

後輩君、と、無言で促される。俺がやるのか。

「成績発表。勝者、紅組」
「紅組、おめでとう」

すでにわかっていたが、改めて紅組が盛り上がる。

「諸君!我々の勝ちだ!」
「・・・勝利」
「我輩ノオカゲ」
「良かったです。ウチのせいで最後の騎馬戦負けたらどうしようかと・・・」
「ブリジットのせいにならないためにも、ワタシ達はがんばったアルネ」
「知らないね。俺はただ負けたくなかっただけだ」
「なんか体育系で勝ったの久々な気がするんだよね。いっつも旦那が敵で負けてたからな俺」
「見事だ」
「またも複雑骨折だー!!!!」

少しの間、静まるのを待つ。

「表彰行ってきてよ後輩君」
「俺の仕事か?」
「当然」

何故当然なのかわからないが、そう決まっているなら行くか。
代表のザトーと相対す。

「優勝、紅組。よくやった」
「うむ。ありがたくいただこうか」

賞状を渡し、それで終わり。
本部に戻る。

「次は、生徒会長からのお言葉」

ザトーが用意されたマイクの前に立つ。

「諸君、今日は一日ご苦労だった。諸君の奮闘のおかげで大いに盛り上がった体育祭となった。感謝する。
 そして、共に戦ってくれた教師方、裏で支えてくれたジェリーフィッシュ、そしてソルに感謝する」
 
何か感謝されることをやった覚えはないんだが。
俺はここに座って適当に喋っていただけだ。

「この調子で、これからも我々の学園生活を盛り上げていこうではないか!
 今日はゆっくり休んでくれたまえ。そしてまた明後日から賑やかな学校生活を再開しよう。以上だ」
「生徒会長からでした。次に、教頭先生からのお言葉」

ザトーの次はスレイヤー。

「皆それぞれ、よく戦った。結果的に紅組が勝ったが、両軍に差などなかったと思う。
 紅組は慢心することなく、白組は挫折することなく、今後も精進してくれたまえ」

短い。無駄に長話をしても全てを真面目に聞く者など少数なのだろう。

「それでは閉会の言葉」
「これにて体育祭を終了する」

随分と簡潔な閉会式だ。だが、それでいい。
とにかく、体育祭は終わった。

「お疲れ、後輩君」

それほど疲れてないけどな。

「私も疲れたしね。今日は、さっさと帰って寝ることにするよ」

好きにすればいい。

668名無しさん:2011/05/25(水) 03:17:21
朝、目を覚ます。
体育祭の翌日、昨日の代わりに今日は休みだ。
だが、休日であろうと起床時間に変更はない。
身体の上に乗って寝ていた猫をどかし、身体を起こす。
ベッドから降りて着替え、部屋を出る。猫共もついてくる。

一階に降りて、まず猫に餌と水を与える。
そして朝食を作る。

味噌汁を作っていると、足元にトラがじゃれついてきた。
後で魚をもらえることを知っているからか、餌は少量だけ食べて、満腹になることはない。
餌を食べないのは勝手にすればいいが、しかし、足元でうろつかれると邪魔だ。
出汁に使った煮干を一つ与える。これで大人しくしていろ。
トラは一鳴きし、煮干を食べ始める。さて、今のうちに朝食を完成させよう。

朝食を作り終えたころに、人の足音がした。

「おはようございます、お兄ちゃん」
「ああ」

ミリアでなく、ディズィーか。

「昨日は疲れて早く寝たので、珍しく早起きになりました」
「そうか」
「私の分ってありますか?」
「二人分ならあるが」
「ミリアさんの分ですよね?まだ起きてこないんでしょうか」
「そのようだな」
「起こしてきましょうか?」
「寝たいなら、寝かしておけばいい」
「そうですね。ミリアさんもお疲れでしょうし」

猫だけ、部屋から出してやればいいだろう。

「じゃあ、私がミリアさんの分の朝御飯を頂いてもいいですか?」
「ああ」

起きてこないなら、ディズィーが食べればいい。
起きてくれば、その時にまた作ればいいだけだ。
配膳を終わらせて、テーブルに着く。ディズィーも、ミリアの部屋にいた猫を連れて戻ってきた。

「いただきます」
「ああ」

朝食を食べ始める。

「そう言えば、お兄ちゃんの作る朝御飯って久しぶりです」
「昼まで寝てるからだ」

平日はディズィーが朝食を作っているしな。
こいつと二人きりで朝食というのも、随分と久しい。

「そうなんですけど。・・・あれ_お味噌汁の作り方、変えました?」
「少しばかり、ミリア寄りにな。気に入らんか?」
「いえ、美味しいですよ?ただ、以前のと、ちょっと違うかなって思っただけですから。当たってました」
「そうか」

少し薄味。出汁も違う。しかし、よく気づけたものだ。
ディズィーが起きてくるのがもう少し早ければ、ディズィー好みの味にしていたのだが。

「でも私の知らないうちに、密かにそんな変化があったんですね」

変化というほどのものではないだろう。

「お兄ちゃんとミリアさんも随分と仲良くなったみたいですし」

仲良くなった感じはないが。
依然として、必要があれば干渉し、必要がなければ互いに不干渉。
食事をしていると、猫が寄ってきた。相変わらず、魚が目当てのようだ。

「はい。どうぞ。皆さん、仲良く食べてくださいね」

ディズィーが猫に魚を与える。

「お兄ちゃんも少しあげたらどうですか?」
「餌なら十分やっている」
「サンタナさんも待ってるみたいですよ?」

ディズィーが言うなら、仕方がない。
魚を取り分け、サンタナに与える。

「お兄ちゃん、たまには猫さん達をかわいがってますか?」
「いいや」
「こんなにかわいいのに」

わからないな。

「でも、一方的に好かれてますよねお兄ちゃんは」
「みたいだな」
「うらやましいです。私にはブチさんがいますけどね。はいブチさん、お魚ですよ」

あんまり魚をやりすぎると、自分の分がなくなるぞ。

669名無しさん:2011/05/25(水) 04:49:00
朝食も終えて、ディズィーが淹れた茶を飲む。

「ごちそうさまでした。美味しかったです」

茶を飲んだら、掃除をするか。

「そう言えばお兄ちゃん、聞きましたか?新しい寮が、そろそろ完成するそうですよ」
「そうか」
「ミリアさんは、どうするんでしょうね?」

どうもこうも、ここを出て寮に行けばいい。元々、そういう話だったはずだ。

「でも、住めば都と言いますし、私達もミリアさんとの生活に慣れましたし、もうこの家にいてもいいと思いませんか?」
「思わん」
「猫さんだってかわいいですよ?」

ブチを抱いたディズィーが、そいつを撫でながら言う。
猫を手放したくないだけじゃないだろうなお前。

「猫さんのことは置いておくとしても、いいじゃないですかミリアさんがいても。
 私も話相手や一緒に家事をやってくれる人ができて楽しいです。ブリジットさんはたまに程度ですし」

一緒にやってくれと言われれば、俺も家事ぐらいいくらでも手伝うのだが。
話相手に関しては、確かに俺が相手では務まらないかもしれないがな。

「・・・・・・お兄ちゃんは家事スキルが高すぎて、私がいると足を引っ張ることになるので」
「負い目を感じるというわけか」
「そんなところです。お兄ちゃんが悪いわけじゃないんですけど」

ディズィーはあまり俺と一緒に家事をやりたがらない。
休日に一人で掃除するようになったのも、ディズィーがいない方が早く終わるからである。
とある休日、寝過ごしたディズィーが起きてきた時、普段なら二人がかりでまだ掃除をしている時間だったのに、俺一人で全て完了させていた。
それでショックを受けたのか、以来、ディズィーは休日は昼まで寝るようになった。

もっとも、そんなことは随分と昔の話で、今なら邪魔になることなんてないはずだ。
それでも、ディズィーは気にしているらしい。
ミリアが相手なら、そんな不安もないというわけか。

「しかし、ミリアを家に置いてやる理由がない」

そもそもの話、他人をそう簡単に我が家に住まわせるのはどうか。
すでにそれなりの時間、同居させているとはいえ。これから先、ミリアを家に置く理由がない。
ディズィーがそうすると言えば、俺に反対理由もないのだが。

「理由なんて別になくていいじゃないですか。私だって、お兄ちゃんと一緒に暮らしているわけですし」
「お前は妹だからだろ」
「でも、兄妹と言っても実のところ、血が繋がってないどころか、義兄妹ですらないですよね?」
「それはそうだが」

確かに、正確に言うなら俺とディズィーは他人だ。兄妹というのは自称に過ぎない。
俺がディズィーを妹とし、ディズィーが俺を兄としているので、兄妹としている。

「なら、ミリアさんがいても問題なしです。あ、お茶いりますか?」
「ああ」

ディズィーに茶のおかわりを貰う。
要は、ミリアとの生活は楽しいし猫もいるので、今後も続けたいということか。あっさりと言ってくれる。

「ミリアは何か言っているのか?」
「いえ、まだ何も。でも、きっとこの家のことを気に入ってくれてるんじゃないかと思います。
 夏休みが終わるときも、ザトーさんと一緒が嫌というよりは、なんだかんだ理由をつけて、まだこの家にいたいって感じでしたからね」
「しかし、ミリア次第だな」

あいつが寮に戻ると言うなら、引き止めはしない。それはディズィーもわかっているだろう。

「ということは、もし、ミリアさんがまだこの家にいたいって言えば、お兄ちゃんは認めてくれるんですか?」
「勝手にしろ」

どうせ拒否したところで、居座られたら力尽くで追い出すなんてことはしないのだ。

「昔から、懐に潜られたら抵抗するのも諦めますよねお兄ちゃんは。本気出せば軽く迎撃できるのに」
「一々やってられん」
「私はそんなお兄ちゃんが大好きですよ?」
「よく言う」

その性格を知っていて、度々利用しているやつが。

「でも、ミリアさんには今の話は内緒にしておきますけどね。
 もしミリアさんが、自分からお兄ちゃんにうちに置いてくださいって言ってきたら、許可してあげてください」
「わかった」

果たしてミリアが、そんなことを言うかな。夏休みの間だけ泊めてくれ、と言うのとは訳が違う。
男女別になったことだし、あっさりと寮に戻る可能性も十分にある。
まあ、どっちでもいい。どうでもいいことだ。話も終わったようだし、茶もなくなった。

「良かったですね、ブチさん。まだ一緒にいられます。お兄ちゃん、食器洗いは、私がやりますから」

ディズィーは膝に乗っているブチを撫でながら、まだ茶を飲んでいる。
すでにミリアが居座ると決めつけている。さて、掃除をしよう。

670名無しさん:2011/05/25(水) 05:19:11
(<◎>)「ソルとディズィーの昔の事情については、『おまけ外伝エピソード0』にて明かされる予定」

アバ「・・・いつやるの?」

(<◎>)「恐らくやらない」

アバ「・・・え?」

(<◎>)「本編に関係ないし、外伝なんてやってる暇もない」

アバ「・・・えー・・・そうだけど」

(<◎>)「それより体育祭が終わったぞ」

アバ「・・・良かったね」

(<◎>)「体育祭が始まったのが、4月の中旬だったようだ。一月程度で終わって良かった」

アバ「・・・一ヶ月以上かかってるけど」

(<◎>)「短いほうだろう。学園祭なんか確か半年ぐらいグダグダやってたからな。同じ轍は踏まない」

アバ「・・・成長したね」

(<◎>)「当然だ」

アバ「・・・最後があれだったけど」

(<◎>)「なんとかなったと思い込むことが大事だ」

アバ「・・・そう」

(<◎>)「そして次の問題だ」

アバ「・・・ミリア」

(<◎>)「どうしたものかな。居候続行か、寮に戻るか」

アバ「・・・決めてないんだ」

(<◎>)「猫がいてほしいから居候続行でいいかなと思っている」

アバ「・・・猫なんだ」

(<◎>)「ミリアはおまけ」

アバ「・・・いやいやそれは」

(<◎>)「サンタナ、シロ、クロ、トラ、ブチ、ミケ、タマの七匹だ。ちゃんと覚えてるか?」

アバ「・・・タマってなんなの?」

(<◎>)「メジャーな猫っぽい名前だろう?ちなみに、ブリティッシュ・ブルー種だ」

アバ「・・・とてもどうでもいい」

(<◎>)「JFが大喜び」

アバ「・・・だろうね」

(<◎>)「そんなことはどうでもよくてだな」

アバ「・・・えぇー・・・」

(<◎>)「最近、ブリジットの影が薄い気がする」

アバ「・・・もはや当て馬」

(<◎>)「このままではまずい。なんとかしないと」

アバ「・・・なんともならない」

(<◎>)「困ったな」

アバ「・・・どうしよう」

(<◎>)「ソル関連は諦めて、私とザトー様のラブロマンスに移行するのはどうか」

アバ「・・・思い切ったね」

(<◎>)「たまにはそんな開き直りも大事なんだ」

アバ「・・・でも却下」

(<◎>)「ザトー様・・・」

アバ「・・・体育祭終わったし、次はどうしようかな」

(<◎>)「それでは今日はここまで」

671名無しさん:2011/05/25(水) 20:52:54
確かに最近はミリアの出番が増えてきたから、鰤の影が薄くなってきてるねw
鰤もメインヒロインだし、もっと出してあげて欲しいなぁ。

672名無しさん:2011/06/06(月) 01:20:17

季節もすっかり秋になりました。

「おはようございますディズィーさん、ソルさん。今日は遠足ですよ!」
「おはようございますブリジットさん。晴れて良かったですね」
「絶好の遠足日和です!」

ソルさんは相変わらず挨拶してくれませんけど。
そんなことより今日は遠足です。近くの小山までみんなでハイキングです。
まずは、学校に行きますけどね。

「おはよー三人共」
「おはようございますメイさん」
「おはようです。ジェリーフィッシュの皆さんも」

校門付近でジェリーフィッシュの人たちと会いました。

「や、おはよソルっち。遠足が楽しみで興奮して眠れなかったりしたかい?」
「それは君のことでしょ」
「もしバッドガイさんがそんな方なら、それはそれでかわいらしいですけども」
「おはようバッドガイ君。今日はいい天気だね。あ、今日も、かな?」

もう見慣れた光景ですけど、ソルさんも少しは挨拶ぐらいしたらいいと思います。
上級生の人たちとは別れて、教室へ。
先生から注意事項の説明があった後、校庭に集合。
そこで全校生徒が集まって、いよいよ年に一度の遠足に出発です!

「さあ行こう!」
「メイ、列を乱さないの」
「はーい」
「まったく、毎年注意させないでよ」

メイさんとエイプリルさんはいつも通りです。

「旦那も行くんだ。サボりは無し?」
「彼は授業こそサボりますが、それ以外は真面目な生徒ですよ、アクセル」
「それもそっか。でも旦那、ちゃんとおやつとか買ってんの?」
「必要ない」
「マジかよ・・・。遠足でおやつがいらないなんてやつは初めて見たぜ・・・」
「さすがにお弁当は用意しましたよね?」
「ああ」

ソルさんもいつも通りです。それでも、おやついらないって本気ですか?
決められた値段以内でどのお菓子を選ぶか悩むのも楽しいですのに。
ウチはディズィーさんと一緒に買いに行きました。
あれ?確かその時、ディズィーさんがソルさんの分も買ってたような気がしたんですが?

「ディズィーさん、ソルさんの分って買ったんじゃないんですか?」
「買いはしたんですけど、お兄ちゃんがいらないって言うので。一応持ってきてはいるんですけど」
「ラッキーじゃん。それ、ソル先輩から貰ったってことにして私達でも食べちゃおう」
「いいのかなぁ・・・。ディズィーちゃんのお兄さんの分なのに、そんな勝手に」

きっと、後でディズィーさんがソルさんにおやつを渡しに行っても、
ソルさんなら「お前にやる」なんて感じでディズィーさんに全部あげそうです。

「ねえ、お弁当ってディズィーが作ったの?それともソルさん?」

ウチがおやつについて考えていると、エイプリルさんはお弁当の方に反応してました。

「お兄ちゃんに教わりながらですけど、一緒に作りました」
「へえ、ソルがお弁当作るって想像できない」
「でも、ソルさんは家事万能ですから、お弁当ぐらい簡単なんじゃないですか?」
「そうですね。お兄ちゃんも初めてのお弁当作りのはずなのに、とても上手に作るんですよ?
 私も少しはまともになってきたってお兄ちゃんに褒められるようになりましたけど、まだまだですね」
「それ、褒められてるんだ」

ソルさんにしては、褒め言葉なんじゃないでしょうか。
でも、ソルさんはなんとなくディズィーさんに甘い感じがしますから、実際の所はよくわからないです。

「でも凄いじゃんデズちゃん。私達はリープおばさんに作ってもらってるし」
「お手伝いもお姉さん達がやってるから、私達はなにもできないし」
「ほとんどお兄ちゃん頼みなのでそれほどでも。ブリジットさんはお手伝いさんが来てくれるんでしたか?」
「いえ、今年は一人で作ってみました!サンドイッチですけど」
「おー、ブリジットもやるね。ボクたちも来年は自分で作ろっか?」
「なら、まずは普通に料理を覚えなさいメイ」

ウチだって簡単なお料理を少しずつできるようになってるんです。
ソルさんを追い越す日も近いですね。
ウチ達のお喋りが少し途切れると、後方からソルさん達の声が聞こえてきました。

「ゴールド・エクスペリエンス。ソルっち、次『す』だよ」
「やらん」
「『や』じゃないよソル君。しりとり知らないの?」
「バッドガイさん、しりとりというのは、最後の文字を次の単語の頭文字にして繋げていくゲームですわ」

ジェリーフィッシュの人たちって、ソルさんを巻き込むのが好きですよね。

「ストーン・フリー」
「リーバッフ・オーバードライブ」
「ブローノ・ブチャラティ」
「ティナー・サックス」
「スターダスト・クルセイダース。はい、また『す』」

変な縛りでしりとりやってます。
ソルさんにちょっと同情します。

673名無しさん:2011/06/06(月) 02:38:56
山に着きました。

「疲れたー」
「そう?ボクはまだ全然余裕だね!」
「メイはそうでも、私たちは違うの」
「あと少し、山を登るんですよね?」
「そうそう。少し登ったら広いとこがあるから、そこで自由時間」
「あと少しですよ皆さん。がんばりましょう」
「ブリジットちゃんも元気だなぁ」

これでも男ですから。
体力には意外と自信アリです。

「スーパーフライ」
「はぁ・・・ちょっと待った・・・。・・・イエロー・テンパランス」
「す・・・す・・・スモーキーって出ました?」
「まだ、だったと、思う。もう、疲れたの・・・」
「じゃあ、君の負けでいい?おやつ一つ貰うよ?」
「き・・・キリマンジャロの雪解け水」
「また『す』!?おかしいって・・・」
「『す』で終わるのを、わざと選んでいたのは、貴方ですわ・・・」
「す・・・すぴーど・・・はダメ。あー・・・スリーフリーズってどう?」
「スタンド」
「あ、それまだ言ってなかったんだ・・・」
「・・・これなら、ソル君に勝てると、思ったのに。と・・・トンペティ」
「・・・ティレニア海ですわ」
「・・・いぐざくとりー(その通りでございます)・・・『す』なの」
「強引だよそれ・・・」

ソルさん達楽しそうですね。
ソルさんは楽しんでるかどうかわからないですけど。
ていうか、周囲が疲れ果てているのに、ソルさんだけ出発時とまるで変わらない様子で歩いているのはちょっと不気味です。

「あ、ほら皆、ついたみたいだよ」

後ろを気にしてるうちに、いつの間にか目的地にまで到着していました。

「やった!あー疲れた!」
「ほら、解散前に一旦集合だから。あとちょっと、がんばりなさい」
「エイプリルは元気だね・・・」
「ボクほどじゃないけどね!」
「メイさん、ちゃんと並びましょう?」

「目的地に到着したためゲームセット!」
「・・・運が良かったね」

「旦那すげえな。あいつらについていきやがった。むしろ時間切れがなかったら勝ってただろ」
「私達じゃ最初の数巡で負けてしまいますからね」

しりとりも終わったみたいです。

自由時間前に、一度集合。
これが終わればお昼ごはんです。

「やっと休める」
「さ、お昼にしましょう」
「ブリジットさん、シートを広げるのを手伝ってもらえますか?」
「おやすいごようです!」

ディズィーさんと一緒にみんなが座れるだけのスペースを確保。
待ちに待ったお昼ごはんの時間です。
たくさん歩いた後ですから、きっと美味しく食べられるでしょう。
みんなお弁当を取り出して、

「それじゃ、いただきまーす!」
「いただきます」

さあ食べましょう。って

「デズちゃん、随分とお弁当箱大きくない?一人で食べるの?」
「いえ、もし良ければ皆さんにもどうかと思って」
「いいの?」
「はい」
「それじゃ、遠慮無くいただきます」

ディズィーさん、用意がいいです。
ウチもたくさん作っておけば良かったですか?
今更言ってもしょうがないことですけど。

「ディズィーさん、ウチのサンドイッチと交換しましょう!」
「あ、それはいいですね。では、ブリジットさんのを、頂きますね」
「どうぞです。美味しいかはわからないですけど」
「・・・ん、美味しいですよ?」
「本当ですか?」
「ボクにもちょうだいブリジット。おかずと交換ね!リープおばさんのだから美味しいよ」

みんなで賑やかに騒がしくお昼を過ごします。
これぞ遠足って感じで楽しいです。

674名無しさん:2011/06/06(月) 02:45:50
デズ「遠足ってこんな感じでしたか?」

アバ「・・・遠い記憶」

デズ「『おやつは三百円以内』って、誰が三百円のラインを設定したんでしょうね?」

アバ「・・・さあ?」

デズ「『バナナはおやつに含まれますか?』って、どうして果物代表がバナナなんでしょうね?」

アバ「・・・さあ?」

デズ「『家に帰るまでが遠足』も、誰が言いだしたんでしょうね?」

アバ「・・・さあ?」

デズ「出自はわかりませんけど、どちらも随分と普及してるフレーズですよね」

アバ「・・・だね」

デズ「もう寝ます」

アバ「・・・随分と唐突」

デズ「それでは今日はここまで」
アバ「・・・

675名無しさん:2011/06/15(水) 02:34:07

「なにをしているんですか、ソルさん?」

お昼ごはんも食べ終わって、みんなと遊ぼうと歩いていると、ソルさんを見かけました。
広場から少し離れたところで、何もせずに座っていました。

「遊ばないんですか?」

我ながら愚問です。
ソルさんが遊ぶはずありませんね。

「お暇なら、ウチ達と一緒に遊びませんか?ディズィーさんもいますよ?」
「断る」

一応、誘ってみます。って返答早いです!
この人、人を無視しているようで、意外と話をちゃんと聞いてますね。
なら、最初からちゃんと受け答えをしてくれればいいのになんて思ってしまいます。

「ここで、なにしてるんですか?」

再度、最初と同じ質問。
この人、一体なにしてるんでしょうね。
何かしてるようには見えませんけど、ウチには理解出来ない、何かをやってるかもしれません。

「うるさい」
「ええっ!?」

なにをしてるのか聞いただけですのに、なんでこんなことを言われなくちゃいけないんですか!

「なにをしてるのか聞いただけじゃないですか」
「お前には関係ない」
「そりゃ関係ないかもしれないですけど、答えてくれてもいいじゃないですか」
「断る」

またですよ。
ソルさん、人の頼みなんか聞く気がありませんね!

「せっかくの遠足ですよ?少しは楽しみましょうよ」
「断る」
「なんでですか?」
「興味がない」

ここまで歩いてきて、遊びもせずただ休んでるなんてそれでいいんですか!?

「アクセルさんやジェリーフィッシュの皆さんに、遊ぼうなんて誘われませんでしたか?」

あの人達が、ソルさんを放っておくとも思えませんけど。
ああでも、多分、こんな調子で追い払ったんでしょうね。

「前々から思ってたんですけど、どうしてそんなに一人が好きなんですか?」

もうちょっと、友好的になってもいいと思います。
今でも、ジェリーフィッシュさん達と仲が良かったりするんですから、ソルさんがその気になれば友達だってたくさんできるはずです。

「うぜえ」

ええぇ。
そりゃ、ウチのおせっかいかもしれませんけど、ウチだって少しはソルさんと仲良くなりたいと思ってるんですから。
これまでのお付き合いで、普段はぶっきらぼうな性格ですけど、思ってるよりは良い人なんじゃないかななんて考えてるんですけど。
・・・気のせいですか?その可能性も高い気がします。
それでも

「ソルさん、そんなに一人が好きなんですか?答えてくれるまで、ウチも退きませんから」

ここで退いたら負けです!・・・なんにでしょうか?
なんて、自分でもよくわからない線引きをしてると

「うるさい。それが、気に食わない」
「え?」
「周囲が騒がしいのは鬱陶しい。一人でいるのも、排他的なのも、それを避けるためだけだ」
「・・・はい?」

あれ?ソルさん、ウチの質問に答えてくれてます?
いきなりすぎです!ちょっとついていけてないじゃないですか!

「・・・えっと、つまり・・・うるさいのが嫌いだと、それだけですか?」
「ああ」
「えええ・・・」

とことん人嫌いみたいですから、何か過去に深い傷でもあるんじゃないかなんてメイさん達と冗談で話したことありますけど、なんてことないです。
ただの我侭じゃないですか!

「・・・じゃあ、例えば、ウチが全く喋らずに隣に座ってたら、どうってことないんですか?」
「ああ」

でも、それじゃあ隣にいる意味がないじゃないですか。
お喋りしましょうよ。今みたいに。
・・・そうです。今みたいに、たまにはちゃんと会話してくれることもあるじゃないですか。
さっさと会話を打ち切ってウチを追い払いたいだけかもしれませんけど。

676名無しさん:2011/06/15(水) 04:10:11
なんとなく、ソルさんの隣に座ってお話続行です。

「ソルさんって、ジェリーフィッシュの人たちと仲がいいじゃないですか?」
「いいや」
「どう見ても仲良さそうですけど?」

ここまで歩いて来る間も、しりとりしてたじゃないですか。
まあ、無理やり巻き込まれたように見えなくもないですけど。

「ウチとももっと仲良くしませんか?お隣さんじゃないですか」
「断る」
「またそれですか」

この人断るの大好きですね。
あ、それなら

「じゃあ、ウチとは二度と会話しないでください!」
「わかった」
「え!?」

そこは断らないんですか!?

「い、いえ、今のはちょっとした冗談です!」

あぁ、ソルさんが「こいつうぜえ」なんて思ってそうなのがわかります。
今のは自分でもちょっとどうかと思いますから・・・。
なんでしょうね、このウチの空回り感。

「ソルさん、ほんの少しでいいですから、もうちょっと友好的になれませんか?」
「断る」
「また・・・」

やろうと思えば友好的にもなれるけど、やる気がないってことですか。
ディズィーさんはあんなに社交的なのに、どうしてお兄さんのソルさんはこんなのなんでしょう。
・・・ソルさんと話してたら、喉が乾いてきました。水筒取りに行きましょう。

「ちょっと、お茶を飲んできます」

恐らく、ソルさんにはどうでもいいことでしょうけど、一応断ってから荷物を置いている場所へ。

「よう、ブリジット。旦那と何話してたんだ?」
「大したこと話せてないです」

アクセルさんがやってきました。

「旦那はあんなんだし、放っておいてもいいんじゃないの?」
「でも、できるなら仲良くしたいじゃないですか」
「旦那はそう思ってないと思うぜ?」
「ソルさんはそうでも、ウチは仲良くしたいんです」
「なるほどねぇ。ま、がんばれよ」

そんなことを言うアクセルさんは、ソルさんと上手くやってるんでしょうか?

「アクセルさんはどうなんですか?」
「ん?俺?」
「そうです。ソルさんと同じクラスですし、なんだか仲良さそうですし」

ウチの見る限り、ジェリーフィッシュさん達に次いで、ソルさんと仲がいいのはアクセルさんです。

「んー・・・別に?かな。なんかわかんねえけど、旦那とは馬が合うっていうかさ。その程度だぜ?」
「へー、そうなんですか」
「ま、同じ炎使いだからな」
「え?」
「ん?」

あれ?今、なんて言いました?

「あれ、知らなかった?旦那、炎出せるけど」
「本当ですか!?」
「ほんとほんと。なんだ、知らなかったのか」
「初めて聞きました」
「あら、そうなの?黙ってたほうが良かったかなぁ・・・」

ソルさん魔法使いだったんですか!

「ちょっと確認してきます!」
「あ、おいっ!」

ソルさんの元へ一直線!そして

「ソルさん!」
「うるさい」

一蹴。
いえいえ、これぐらいはいつものソルさんです。

「ソルさん、アクセルさんから聞いたんですけど、炎を出せるんだとか?」

返答なし!
もうなんなんですかこの人!こんな質問ぐらい、答えてくれてもいいじゃないですか!

「どうなんですか!?」

もう一度、強めに質問を!
ソルさんなら、きっとこれで折れて答えてくれる気がします。

「出せる」

予想が大当たりです!
いや、違います。喜ぶところはそこじゃないです。

677名無しさん:2011/06/19(日) 01:24:27
「凄いですね。どうして今まで教えてくれなかったんですか?」
「お前に教える理由がない」

それはそうかも知れませんけど。

「実際に見てみたいです」
「断る」
「どうかお願いします!お菓子あげますから」

さっき、お茶を飲むついでに持ってきたお菓子をソルさんに渡します。

「いらん」
「ええー。じゃあ、どうすれば見せてもらえます?」
「見せん」
「そんなこと言わずに!」

ちょっとぐらいいいじゃないですか。ソルさんのケチ。

「ソルさん、お願いします!」
「うぜえ」
「ウチは諦めませんよ?」

自分でも、何もここまで執着することでもないと思うんですけど、こうなったら見せてもらうまでは退けません。
粘りの勝負になればソルさんなんて弱いもんですよ。あっさりと降参してくれるはずです。

なんて失礼なことを考えていると、無言のままソルさんが手のひらを出して、炎を出してくれました。
わー!本当にこんなことが出来る人っているんですね。
カイさんも雷出せますけど、凄い人達です。

「ありがとうございますソルさん!綺麗な火ですねえ」

まだお昼で明るいのに、それでも明るいソルさんの炎。
綺麗なものです。あ、もう消しちゃうんですか?

「凄いですねソルさん」

魔法使いなんて中々いませんよ。

そう言ったきり、しばらくの沈黙。
・・・炎を見せてもらったのはいいですけど、後に続く話題がありませんでした!
どうしましょうこの空気。ソルさんは気にしてないでしょうけど、ウチがちょっと気まずいです。

「え、えーと、どうして今まで黙ってたんですか?」
「言う理由がない」

ですよねー。
さっきも聞いたじゃないですかウチのバカ。

「じゃ、じゃあ、ソルさんが炎を出せるって知ってる人、どれくらいいるんですか?」

アクセルさんは知ってましたし、ディズィーさんも妹なんですからきっと知ってるはずです。
後は、カイさんぐらいでしょうか?
ジェリーフィッシュの人たちは知らない気がします。あの人達が知ったら、翌日には学校中に知れ渡ってるはずですから。
だとすると、ウチは四人目ですか?おお、ソルさんの秘密を知ってる数少ない人間って感じですね!
なんだか、それだけでちょっとソルさんと仲良くなれた気がします。気のせいかもしれませんが。

「・・・ソルさん?聞いてます?」

聞いてるはずですよね。返事してください。
会話のキャッチボールって大切ですよ?ウチが投げたボールを無視しないでほしいです。
それをソルさんに言っても無駄なんでしょうけど。

「お前で、五人目だ」
「五人目ですか」

あれ?だとすると、もう一人知ってる人がいるってことになりますね。
誰でしょう?

「ウチとアクセルさんとカイさんとディズィーさん、は合ってますよね?あと、誰ですか?」
「あいつだ」

ソルさんが目で示した先には・・・ああ、あの人ですか。
なるほどです。確かに、あの人なら他人の秘密を言い触らしたりはしないでしょうね。
家族であるジェリーフィッシュの皆さんにも黙ってそうです。
そうですか。ウチよりも先にソルさんの秘密を知ってる人がいましたか。
ディズィーさんは知ってて当然せしょうし、アクセルさんとカイさんは魔法使い同士でわかりますけど・・・。
特に理由はないですが、ウチが先に知りたかったなんて思うのは何故なんでしょう?
四人目も五人目も大して違いはないはずなんですけど。

「・・・どうしてあの人には教えたんですか?」
「必要があって、目の前で使った」

なるほど。
ソルさんにとっては、別に見せびらかすようなものでもないですけど、秘密にするほどの事でもないんですね
頼んだら、ウチにもあっさりと見せてくれましたし。

「そうですか。・・・あ、お菓子どうぞ。魔法を見せてくれたお礼です」
「いらん」
「遠慮せずにどうぞです!」

きっと遠慮なんかしてなくて、本当にいらないんでしょうけども。
それでもソルさんは、ウチが差し出したお菓子を取って、食べてくれました。

678名無しさん:2011/06/19(日) 02:22:04
「ソルさんってどんなお菓子が好きなんですか?」

そう言えば、ソルさんは遠足におやつなんていらないなんて言う猛者でした。
結局、ディズィーさんの持ってきたソルさん分のおやつはウチ達みんなで頂くことになりましたし。
ちょっとルール違反なんじゃないかって気がしますが。

「これ美味しいですよね。ウチは大好きです。ソルさんには何かオススメのお菓子なんてありますか?」

・・・返答なし。つまり無いってことですね。

「お菓子、嫌いなんですか?甘い物がダメだとか?」

甘いのが苦手なんてもったいないです。チョコとかケーキとかウチは大好きです。
でも、大人の人はそういう人がいるというのも聞いたことがあります。
ソルさんなんだか大人っぽいというか、人間離れしてますし、そんな人なのかも知れません。
そうだとしたら、無理やりお菓子を勧めるウチはとんだ厄介者ですね・・・。

「どうなんでしょう?もしそうなら、ウチは二度とソルさんにお菓子を勧めたりはしません。正直に言ってください!」
「好き嫌いはない」

あ、そうなんですか。じゃあ、お菓子も問題なしと。
良かったです。でも

「・・・好きな食べ物ってなんですか?」
「ない」

ああ、「好き嫌いはない」って、文字通り好きも嫌いもないんですね。
ソルさんらしいと言えばらしいです。

「少しぐらいないんですか?例えば、気づいたらよく作ってるお料理とか。ソルさんがお料理してるんですよね?」
「ない」

バランスよく料理を作ってるってことなんでしょうか。
ソルさんならなんでも作れそうですし。好みなんかより、栄養とかを考えた献立になるんですかね。

「あ、そう言えばソルさんの作ったお弁当を少し食べましたよ。美味しかったです!」

料理の話で思い出しました。
ディズィーさんの持ってきた、ソルさんが作ったというお弁当。みんなが絶賛してました。

「そうか」

うわぁ、興味なさそうです。褒めてるのに。

「あのですね、もし良かったら今度お料理教えてください!」
「断る」

こんな時だけ返事が早いです。
いつもこんなペースで受け答えしてくれませんか?

「ウチもお料理を覚えたいんです」
「一人でやれ」
「難しいじゃないですか」

まだ包丁だって満足に扱えないんです。

「だから、ディズィーさんと一緒に、ウチにもお料理を教えて欲しいんです」
「断る」
「いつか、おいしい料理を作ってソルさんに振舞いますから!」
「いらん」

なんて頑固なんでしょう。
ここはウチの熱意に負けて、『仕方ないな』なんて言ってくれてもいい場面じゃないですか。
こうなったら裏技です。

「じゃあ、ディズィーさんに頼みます。もし、ディズィーさんが一緒にやるのを認めてくれたら、ウチにも教えてくれますか」
「ああ」

そこで簡単に手のひら返しをするなら、最初から認めて欲しいんですけど。
まあいいです。ディズィーさんに頼んでみましょう。きっと、ディズィーさんなら一緒にやろうって言ってくれると思います。
とにかく、言質は取りました。ソルさんなら、約束を破ることもないでしょう。
今度、ディズィーさんに頼んでみることにします。

ウチがそんな決意をしていると、隣でソルさんが立ち上がりました。

「どうかしたんですか?」
「時間だ」

時間?時計を見ると・・・もうこんな時間なんですか!?自由時間も終わりじゃないですか。
ウチは結局、遊ぶよりソルさんと話してた時間の方が長かったです!

「ブリちゃーん!そろそろ集合だよ!」
「はい!今行きます!」
「なんかずっとソル先輩と話してたよね。何話してたの?」
「えーと・・・」

炎のことは・・・言わないほうがいいんでしょうか。
隠すことでもないですけど、言い触らすことでもないですよね?

「話してたというか、ウチが一方的に話してただけです。お弁当が美味しかったとか」
「そっか。うん、あれは美味しかったね。ソル先輩が作ったとは思えないぐらいに」

うまく誤魔化せてます。

「まさかリープおばさん並に美味しい卵焼きを作れるなんてねえ」
「他のおかずも美味しかったですし、おにぎりも、中の具は色々と凝ってましたよね」
「うん。種類も豊富で、具の量も適量。塩加減も文句なし。あの人おかしい」

おかしいって・・・。褒め言葉のつもりなんでしょうけど、もっと他に言葉はありませんか?

679名無しさん:2011/06/19(日) 03:19:00
「だってさ、後一年したら、私達も今のソル先輩と同じ年になるんだよ?私達があんなことできるようになると思う?」
「無理です」

一年であんな料理が作れるようになるなんて。
それはちょっと想像できません。

「あ、でも、もしかしたらウチはソルさんに料理を教えてもらうことになるかも知れません」
「そうなの?」
「はい。ディズィーさんが許してくれたらですけど」
「そうなんだ。まあ、夏休みの宿題もそうだったけど、キャラに合わないぐらい教えるのがうまいから、意外と上達するんじゃない?」
「ウチもそう思います。ソルさんに教わればウチも料理上手になれる気がします」
「うーん・・・料理かあ。私はリープおばさんに習うよ」
「リープおばさんのお弁当も美味しかったですよ」
「ありがと。リープおばさんに伝えとく」

ウチもいつかは、誰かに美味しいって言ってもらえる料理を作れるようになるんでしょうか。
ソルさんに教えてもらえば、そんなことも夢じゃないはずです。
がんばりましょう!

「はぁ・・・それにしても、今から歩いて帰るんだよね。やだなぁ」

ウチは遊ばずに、座って喋ってただけなので、元気が余ってますけどね。
とりあえず、学校までがんばって帰りましょう。

学校までの帰り道。

「ノド乾いたー!」

メイさんが、水を飲みたそうです。

「もう。だから、あんまりお茶を飲み過ぎないようにって注意したでしょ」
「そんなこと言ってもさあ」

そして、いつものようにエイプリルさんにお説教されてます。

「私のも残り少ないんだけどな」

エイプリルさんも大変です。それなら

「メイさん、ウチのをどうぞ」

ウチは、運動してない分、お茶の残りには余裕があります。
荷物も少しは軽くなりますし。

「ブリジット、いいの?」
「はい。どうぞです」
「わーい。ありがとう!」
「ごめんね、ブリジット」
「エイプリルさんが謝ることじゃないですよ」

こういう時は助け合いです。
ウチ達がそんなやり取りをしていると

「じゃんけんで負けたら荷物持ちね!」

行きと同様、後方で、というか、すぐ後ろでそんな声が。
今はウチ達はクラスの最後尾。ソルさん達は最前列にいるせいですけど。

「メイ達も参加する?」
「参加者が多いほうが、負ける確率は下がるからね」
「その分、負けたときは辛くなりますわ」

この人達も元気ですね。年上の余裕でしょうか。

「やる!荷物持ってもらうからね!」
「よく言った妹よ。ディズィー君もこっちおいで」
「いいんですか?」
「もちろん。負けたときは容赦しないけどね」
「では、勝たせてもらいます」

「んじゃ、俺らもやるか。な、カイ」
「女性に荷物を持たせるのは気が引けますが」
「あら、すでに勝った気なのですか?させませんわ」

・・・結構大人数が参加しますね。
いくら荷物が軽いとは言え、この人数だと負けたときは結構シャレにならないのでは?

「ソルっち、何ボーッとしてんの?ねェってばああ〜〜〜。『ジャンケン』しよおおおお〜〜〜〜〜ッ」
「うぜえ」
「あと出しは・・・・・・負けだよ」

ソルさんのマイペースを上回るこの強引さ。
ちょっと見習いたいぐらいです。

「でも、この人数だと中々決着つかないんじゃないかな?」
「そこら辺は、運任せってことで」
「意外とあっさりと勝負がつくかもしれませんわ」

・・・やりますか。
なんとしても勝ちたいところです。

680名無しさん:2011/06/19(日) 04:36:24
数回のあいこを繰り返した後。
数人が負けて、その人達でまたジャンケンを繰り返して、最後に二人だけで決着をつけることに。
そして

「勝ったぞ、ざまあみろッ!生まれてこの方・・・ジャンケンで勝ててこんなに嬉しかったことはないよ!持ちなッ!荷物!」

ウチも勝ちました。良かったです。
そして、負けたのは、

「それじゃ、よろしくねメイ」
「ごめんね」
「お願いしますメイさん」

メイさん。

「重いよ!」
「この人数ですからね。私も少し持ちましょうか?」
「甘やかさなくていいよカイ君」
「力自慢のメイなら、大丈夫ですわ」

がんばってくださいメイさん。
メイさんなら大丈夫ですよ。

「にしても、一つだけ明らかに重いのがあるんだけど!?」
「どれ?」
「ああ、旦那のじゃね?ほとんど水飲んでないみたいだし、水筒の中身、ほぼ丸々残ってるだろうぜ」
「ディズィーちゃんのお兄さん、喉は乾かないんですか?」
「いいや」
「飲んでよ!減らしてよ!じゃなきゃボクが飲む!」

滅茶苦茶言ってます。

「まあメイも可哀想だし、ソルっちのお茶を少し貰おう。喉が乾いてる子、いる?」
「はーい!ボクほしい!」
「私も飲んでいいですか、ディズィーちゃんのお兄さん?」
「私も欲しいですわ」
「俺は遠慮しとく」
「私も大丈夫ですので、皆さんでどうぞ」

凄いです。ソルさんの了解もなしに話が進んでいきます。
いいんですか?

「私も少し頂きます。お茶を貰っていいですか?お兄ちゃん」
「ああ」
「お兄ちゃんの許可が出ました。皆さんどうぞ」

いいらしいです。
ウチは自分の分に余裕があるので飲みませんけど。
アクセルさんとカイさんも遠慮してますし、ここはレディファースト。男は耐えるべきですね!

「あのさ、次はいつジャンケンするの?」
「いつにしようか?」
「学校についてからでいいんじゃない?」
「もう終わってるじゃん!」
「メイ、『家に帰るまでが遠足』ですわ」
「ええっ!?」
「あんまりいじめるのはよくないの」
「姉さん達、ほどほどにね」

結局、適当頃合いでまたジャンケンということになりました。
その間に、ちょっとお話をしたい人が。

「あの」
「どうしたの?ブリジットさん」
「ちょっとお聞きしたいことがありまして」
「なにかな?」

先程のソルさんに関してですが。

「ソルさんが炎を出せることを知ってるそうですね?」
「え、うん。ブリジットさんも知ってたんだ」
「いえ、ウチはつい先程知ったばかりなんです」
「そうなの?」

そうなんです。

「知ってたなら、どうして皆さんに秘密にしていたんですか?」
「ええと、なんだろう。秘密って感じでもなかったけど、あんまり言い触らすのも悪いかなって思ったの」

ウチの感想と似てますね。
この人は、ジェリーフィッシュの中でも特に優しさに溢れています。
なんでも、”ジェリーフィッシュの最後の良心”と一部では言われてるんだとか。

「それに・・・」
「?それに・・・なんですか?」
「あ、別に深い意味はないんだけど、他の人が知らないバッドガイ君の秘密を知ってるのが、少し嬉しかったから」

・・・それも、ウチもちょっと思ったことです。

「多分、ディズィーさんも知ってるし、キスク君とロウ君も知ってると思うの。あの二人は、バッドガイ君と仲がいいから」
「はい。ソルさんから聞きました。今のところ、この事を知ってるのはウチを含めて五人だけだそうです」
「そうなんだ」
「・・・なんだか嬉しそうに見えますけど?」
「そうかな?ディズィーさんは妹さんだから当然だけど、他はみんな男の子だし、
 バッドガイ君が炎を使えるって知ってる女の子は私だけなんだなって思っただけなの」

確かに、そう言えますね。というか、その通りです。
なのに、なんなんでしょう。ちょっと羨ましい、それとも、悔しい、ですか?自分でもよくわからない感情を持ってしまうのは。

去年までとは違う、遠足の一日でした。

681名無しさん:2011/06/19(日) 04:52:51
アバ「・・・困った」

梅軒「どうしたんだい?」

アバ「・・・イノの存在を完璧に忘れてた」

梅軒「おいおい」

アバ「・・・イノって影が薄いから」

梅軒「そうか?いや、だからって忘れてやるなよ」

アバ「・・・このスレ始めたころも・・・イノを忘れてた」

梅軒「ああ、そういやそんな感じだったな」

アバ「・・・私の中で・・・影が薄いキャラ」

梅軒「なんでだろうな」

アバ「・・・まあ・・・他の場所で・・・他のクラスメイトと・・・仲良くしてたということで」

梅軒「それでいいのかよ」

アバ「・・・もう一つ手がある」

梅軒「言ってみな」

アバ「・・・夏休みの間に・・・また転校していった」

梅軒「・・・・・・・」

アバ「・・・確か・・・短期間いただけという設定だったはず・・・」

梅軒「それでいいのかい?」

アバ「・・・おーけー」

梅軒「いいのかよ」

アバ「・・・次の過去編までには決めておく」

梅軒「しっかりしろよ」

アバ「・・・がんばる」

梅軒「それでは今日はここまで」

682名無しさん:2011/06/22(水) 01:51:12
放課後、自室。
明日のための授業計画を作っていると、

「精が出るな」

ザトーが、やってきた。

「何の用だ」
「そう急ぐな」

急ぎはしないが、雑談をするつもりもない。

「まずは、そうだな。先日の体育祭、ご苦労だった」

大した苦労ではない。

「それでだな。改めて思ったのだが、貴様、生徒会長になる気はないか?」
「ない」

何かと思えば、それか。

「そう邪険にするな。学園祭が終わったときにも誘ったと思うが、貴様の能力は高い。人格も多少問題あるとは言え、許容範囲内だ。
 生徒の先頭に立てる、良き生徒会長になれるだろう。この学園を導く気はないか?」
「ない」

俺にそんなものがあると思っているのか。

「そろそろ、次の生徒会長を決める選挙があるのは知っているだろう?貴様にはそれに出てもらいたい」
「断る」
「無駄だ。すでに、貴様はエントリーしてある」

なに?

「本人の同意もなく、勝手なことをするな」
「校則を変えた。『他薦アリ』とな。なので問題ない」

なんてことをしやがる。

「権力とは使うためにある。そういうことだ。貴様には、否が応でも生徒会長選挙に出てもらう」

すでに、拒否権はないのか。

「カイがいるだろ」

あいつなら、能力・資質・人格、どれも問題ない。
実際、これまでも生徒会長等の役職を務めてきた。
ザトーとて、カイが生徒会長になるならば、不満なんてないだろう。

「確かにな。やつは実に優秀な人間だ。やつになら私の後継者を任せてもいいとも思っている」
「なら、そうしろ」
「だが、それではつまらんだろう」

つまらないだと?

「私の時がそうだったのだがな、選挙というのに信任・不信任のみの投票というのはつまらないだろう」

知ったことか。俺は棄権したしな。
信任も不信任もない。生徒会長選挙なんてどうでもよかった。ゆえに、棄権。

「まあ、おかげで私は貴様以外の全生徒から信任を得たがな。
 もっとも、貴様さえ私に投票すれば、学園創設以来初の得票率100%が達成できたのだが」

俺の信任を得られなかったことを反省するんだな。

「それはともかくな。つまり、選択肢が欲しいのだ。
 恐らく、カイは生徒会長に立候補するだろう。そして、やつならば確実に生徒会長になる」

結構なことだ。

「だが、言っただろう?それではつまらない。ゆえに、貴様に生徒会長選挙に出てもらう。貴様が出れば、勝敗は予測できない。
 どんな結果になるのか、実に楽しみではないか」
「カイが勝つ」

しなくてもわかる。
俺を生徒会長に選ぶ生徒など、誰一人としていない。

「どうかな?やる気が無いとは言え、貴様の優秀は全校生徒の知るところだ。
 カイも文句のつけようがない男だが、貴様を選ぶ生徒もいることだろう」
「いねえよ」

やるだけ無駄だ。

「とにかくだ。貴様が勝つかどうかはともかく、カイの対立候補として選挙に出てもらいたい」

選挙を盛り上げるために、か。

「他にいないだろう?カイと渡り合える者が。
 カイも、貴様に勝って生徒会長になったとすれば、自信がつくと思うのだ」

見方が甘い。カイは、俺に不戦勝した程度のことで揺らぐやつではない。

「そういうわけで、貴様には形だけでも出てもらう。
 なに、選挙活動というものは存在しないのだ。大して面倒も増えまい。演説をしてもうらぐらいか」

元々、顔見知りが多いという世界なので、選挙活動などない。
生徒会長候補の受付期間が終われば、翌日には投票となる。
日頃の生活態度、人格、能力等がそのまま票に結びつく仕組みだ。カイならば、何も問題ないがな。

683名無しさん:2011/06/22(水) 02:39:29
ザトーの話が途切れる。もう終わりか。

「話が終わったなら、帰れ」
「生徒会長選挙に出てもらえるかな?」
「ああ」

他薦可能な校則を作られたのでは、仕方がない。

「うむ。貴様の健闘に期待する。演説内容は考えておけよ」

すでに、決まっている。
授業の準備も、もう終わるところだ。

「話は終わりか?」
「いや、もう一つ話がある」

まだあるのか。

「・・・ミリアのことなのだがな・・・」

ミリア絡みか。

「新しい寮が完成して一週間は経つ。・・・ミリアは、いつ引っ越すのだ?」
「知らん」

寮が完成するまで居候させてくれ、という最初の願いは、ディズィーによって、ミリアが望むなら居候を続けさせる、ということになっている。
だが、寮が完成したというのに、ミリアからは何も言い出してこない。
出て行くとも、ここに住まわせてくれとも。
どうでもいいので、こちらから聞き出すこともない。

「いつまで貴様の家に居続けるつもりだ」
「さあな」

ミリアが話しださないことには、話は進まない。

「・・・まさか、貴様が引き留めてるなんてことはあるまいな?」
「ない」
「どうだかな。『出て行くわ』『待て、もう少しいてもいいだろう』なんて感じで!許さんぞ!!」

ねえよ。

「では何故ミリアはいつまで経っても新しい寮に引っ越さない!」

俺の知った事ではない。
ミリアなりの事情と考えがあるのだろう。

「もしや!貴様、そのままミリアを嫁に迎えるなんてしないだろうな!?」
「ねえよ」

あれを嫁にして俺になんの得がある。
いや、結婚というものは損得でするものではないにしても、俺がミリアを選ぶ理由が見当たらない。

「ならば、貴様から言ってくれないか?寮に戻れ、と」
「断る」

お前の頼みを聞く義理もない。

「貴様!もしやミリアに惚れたか!?」
「いいや」

なぜそうなる。
・・・いや、そういう誤解を受けても仕方がない。普通、居候などめったな仲ではしないことだ。
だが、違う。しかし、説明するのも面倒だ。

「認めんぞ!貴様にミリアは渡さない!」

勝手に言ってろ。
この手のやつは、無視するに限る。ブリジットがそうだ。

「ミリア・・・なぜこんなやつと一緒に暮らしているのだ・・・」

お前が嫌われているからだろう。今となっては、それもきっかけにすぎないか。
思うに、ミリアは家族的なものに憧れているように見える。
誰かとも共同生活、そして寮よりも、より密着した今の家族的な生活の方が楽しいのではないか。
全て想像に過ぎないが。

ザトーと話しているうちに仕事も片付けた。帰るか。

「教室を出ろ。帰る」
「・・・む?そうか」

ザトーがおとなしくなる。

「とにかく、カイと対立する悪役をきっちりやってくれ。頼んだぞ」
「知るか」

わざわざヒールを演じたところで、それに騙される生徒なんかいない。
それだけ付き合いの長い連中が多い学園なのだ。

684名無しさん:2011/06/23(木) 03:21:33
ザトーとの会話の翌日。
すでに俺が生徒会長選に出るという話は広まっていた。

「まさかソル君が生徒会長を目指していたなんてね」
「キスクさんなんか圧勝だとおっしゃったそうですわ」
「大した自信じゃん。ソルっちなら本気出せばできるかもしれないけどさ」
「バッドガイ君、大丈夫なの?先生もやってるのに、これ以上お仕事増えるのは大変だと思うの」
「旦那がその程度で参る奴かって。大丈夫だろ」

昼休みの教室は、騒がしい。

「ヨシ、我輩モ出ルゾ。ソノ選挙」
「何言ってんだロボ?」
「体育祭で壊れたのが完全に直ってないのか?」
「ソル、ロボを早く直すアル」
「我輩ハ正常ダ!」

修復は完全だ。

「しかし、まさか貴方がこれに出るとは思ってませんでした。一体どういう心変わりですか?」
「わからないかなカイ君?ソル君は、ミリア君のために自分を変えようとしているんだよ」
「なんと」
「御立派な決断ですわバッドガイさん」」
「いい話アルナ」
「漢じゃねえかソル。カイには悪いが、俺はお前を応援するぜ!」

またジェリーフィッシュが余計なことを。

「バッドガイ君、また無理やり参加させられてるなら、たまにははっきり断ってもいいと思うの」
「だよな。旦那もたまには机を叩いて椅子を蹴飛ばして、強い調子で『冗談じゃねえ!』なんてやれば、
 こっちもそれ以上無理に絡もうとはしないと思うぜ?」

そこまでやらないと絡み続けるのか。
なぜ「断る」の一言で大人しく引かない。

「ソルも苦労するアルナ」

苦労の一端が言うことか。紗夢に関しては、それほどのゴリ押しはあまりないが。

「だからな、ロボ。生徒会長になっても大した権限なんてないし、ハーレムなんて作れないぜ?」
「バカナ。ソレデハ何ノ為ニ生徒会長ナンテモノニナルノダ」
「何のためって、そりゃ・・・何のためだカイ?」
「当然、この学園と生徒のためです」
「だとさ」
「胡散臭イ」
「言ってくれますね」

カイのことだ。嘘偽りのない本心だろう。

「カイっち模範解答すぎ」
「そこはユーモラスに答えて欲しかったですわ」
「そう言われましても・・・」
「カイ君の幼少時代の回想から入って、爽やかな風が吹いて、『「生徒会長」にあこがれるようになったのだ!』ぐらいやるべきだね」
「貴方達のジョークはいつも偏りすぎでしょう」

ジェリーフィッシュとは、昔からそんな連中だ。

「ま、カイは置いといて、とにかく生徒会長なんて面倒なこと普通はやんねえよ」
「その言い方は引っかかるのですが?」
「任セロ。我輩ハ普通デハナイ。スーパー高性能ナロボットダ。オ前タチボンクラヲ支配シテヤロウ。我輩ニヒレ伏スガイイ!」
「だから生徒会長はそんなんじゃねえって!」

そろそろ昼休みも終わるな。

「そういやカイ、お前が勝ったら、生徒会役員はどうするんだ?」
「それはまだ考えているところです。アクセル、やる気はありませんか?」
「俺かよ。・・・ま、考えとく」
「闇慈、ナンノコトダ?」
「ああ、選挙で決めるのって生徒会長だけなんだよ。それ以外は、生徒会長が全部選べる」

選挙で決めるのは、生徒会長のみ。他の生徒会役員は選ばれた会長が好きに決める。人数も、役職も。
必要がなければ、今のザトーのように、ザトーとヴェノムのみという2人だけの構成も可能。
小さい学校なのでそれで十分事足りているしな。

「それじゃ、万が一ソルっちが勝ったら、あたし達ジェリーフィッシュが全面協力してあげよう」
「良かったねソル君。ロボ君が望んでやまないハーレムだよ」
「ソンナノアリカ!?オイ闇慈!!」
「ああ、そんな感じでハーレムって作れたか。こいつは盲点だった」

わざとだろう。あえて言わなかったように見える。

「モット早ク言エボンクラガ!ヨシ、ヤハリ我輩モ生徒会長ヲ目指ス!」

その時、昼休みの終わりを告げる鐘が鳴った。

「残念、時間切れだロボ。受付は今日の昼休みまでだったからな」
「ナニ?」
「教室に戻りますよ」
「糞ガア!我輩ノハーレムガ!!!」
「じゃあね。明日が楽しみだねソル君」
「がんばってくださいな」

隣のクラスの連中が帰っていく。

「御津っち、なんでロボっちを立候補させなかったの?好きにさせてあげればいいじゃん?」
「そりゃ、ソルカイロボなんて並んだら、ほとんどあいつに票なんて入らないだろ。それも可哀想じゃねえか」
「大した思いやりアルナ」

とにかく、明日は選挙だ。

685名無しさん:2011/06/23(木) 04:16:25
選挙、当日。

「ソルさんが生徒会長になったらウチを副会長にしてください!他の役員はいなくていいです。
 毎日、2人っきりで、放課後の生徒会室で、充実したスクグッ!?」

朝からうるさい。

「朝から殴らなくてもいいじゃないですか」
「なら、黙れ」

隣で騒ぐな。

「酷いです。とにかく、いいですよねソルさん?」
「断る」
「でもですね、ソルさんによれば、ソルさんが勝つことは100%ないそうじゃないですか」
「ああ」
「だったら、どうせ実現しない約束です。してくれてもいいじゃないですか!」
「断る」

それとこれとは話が別だ。

「ソル、まさか貴方、密かに『もしかしたら選挙に勝って生徒会長になれるかも』なんて考えてるんじゃないかしら?」
「いいや」
「だったら、万が一にもありえない事なのでしょう?気休め程度にブリジットと約束してあげればいいじゃない」
「断る」

ミリアまで何を言い出す。

「ミリアさんの言う通りです。なんですかソルさん、もしかして勝つのが怖いんですか?」

違うと言っている。

「空約束でも、お前とそんな取り決めをする理由がない」

なぜブリジットが喜ぶ様な真似をしてやらなければならない。

「心の狭い男ね」
「お兄ちゃんですから」

学校に着く。

「おはよーみんな!」
「おはようですメイさん」
「おはようございます」

ジェリーフィッシュもいる。

「よ、わるお。運命の日だってことわかってる?」
「後輩君の今後の学校生活がガラリと変わるかも知れない日だよ」
「ソルちゃんなら意外と・・・でもないかな?結構いい生徒会長になれると思うよ〜」
「ソル先生、教師の仕事の方に支障をきたさないようにお願いします」

俺は勝てないと言っている。

「あれ、2年生の方達はどうしたんですか?」
「ああ、姉さん達なら朝早く出て行ったよ。ビラ配りするんだってさ」
「ビラ配り?」
「ほら、あれ」

昇降口付近で人だかりができている。

「バッドガイさんに清き一票をお願いしまーす!」
「ソルっちなら生徒会長になっても申し分ないよー!」

何をしているんだあいつら。

「何をしている」

近づいて、尋ねる。

「あら、おはようございますバッドガイさん。いい天気ですわ。絶好の選挙日和です」
「何をしている」

もう一度、尋ねる。

「見ての通り、ビラ配りですわ。バッドガイさんをアピールしてます」
「頼んだ覚えはないが」
「はい、頼まれてません。私達が勝手にやっていることですわ」
「勝手にするな」
「まあまあ、落ち着いてくださいな。あと、ポスターも作りましたの。今、校内に貼っていますわ」

こいつら、何をしているんだ。

「選挙活動の期間はありませんが、禁止されているわけではありませんから。
 そこでこの選挙を盛り上げようと、こうして朝の間だけでもバッドガイさんを応援しているんです」
「お、おはよソルっち。未来の生徒会長!あたし達に任せれば大丈夫さ!」

こいつら、どうすればいいんだ。

「ウチもやります!」
「ブリジットさん、おはようございます」
「おはようです。ウチもソルさんのためなら、一肌どころかいくらでも脱ぎます!」
「では、こちらをお願いしますわ」
「はい!がんばりましょう!」
「私もいいですか?お兄ちゃんのために何かしたいんです」
「大歓迎さデズっち」

やらなくていい。ディズィー、お前はわかっててやってるだろ。

686名無しさん:2011/06/23(木) 05:16:42
教室に着く。

「おうソル、おはようさん」
「おっす」

闇慈達も、なにかやっている。

「ほら、ジェリーフィッシュのやつらがお前を担ぎ上げてるだろ?
 だったらこっちはカイを担ぎ上げようってことになってよ」
「貴様ハ永遠ニ我輩ノ敵確定ダ。ナンダアノ雌共。ドウヤッテ手懐ケタ!ハーレムナンカ絶対ニ認メナイ!!」
「ロボもこんなんだしな。てなわけで旦那、俺達はカイに付くぜ」

好きにすればいい。

「ビラってこんな感じでいいのか?」
「いいんじゃないか?それじゃコピーしてきてくれチップ」
「任せな!」

チップが駆けていく。

「出来上がったらチップとアクセルで配ってくれ。ポスターは俺とロボで担当する」
「ソルノポスターナンカ剥ガシテヤル!」
「やりすぎだロボ。ちゃんと見張っててくれよ闇慈?」
「なんとか抑えるぜ」

盛り上がっている。

「私は、やらなくていいと止めたんですがね」

カイもいる。本人はこの騒動に乗り気でないようだ。

「その様子だと、貴方もジェリーフィッシュの方々の応援に困惑しているようですね。
 私も朝来たときは驚きました」

あいつら、カイより早く登校したのか。

「対立してる私に平然とビラを渡してきましたしね。『ソルをよろしく』と。まったく大した神経してますよ。
 彼女たちの誰かが生徒会長になれば、あの4人でかなり面白い生徒会が出来上がったかもしれません」

今更な話だな。

「ところで、どう思います?貴方はまだ、私が勝つと確信してますか?」
「ああ」
「対立候補に保証されるのも複雑な気分ですね。まあ、貴方がそういうなら勝たせてもらいます」

そうしろ。
カイと会話をしていると、教室に人が入ってきた。

「コピーしてきたぜ!これを配ればいいんだな?」
「おう。アクセル、そっちは頼んだ」
「あいよ。ま、ジェリーフィッシュに負けないようにやるさ」
「行こうぜアクセル!」

チップとアクセルが出て行く。

「んじゃ俺達も行くかロボ」
「スーパーロボカイセカンド2ダッシュデュアルレベル99発進!」

そして闇慈とロボも。
入れ替わるように、ザトーとヴェノムが入ってきた。

「随分と賑やかではないか。これだ。私はこれを求めていた!」
「二人とも見事だ。よくザトー様の期待に応えてくれた」
「私達は何もしてませんがね」

まったくだ。

「そこら中で会話がなされているぞ。ソルとカイ、どちらに投票すべきか、とな。
 ソル、貴様は先日『絶対にカイが勝つ』と言ったが、こうなるとどうかな?実に結果が楽しみではないか!」

楽しみなんてない。

「投票はさっそく午前中に授業を潰して行われる。軽い演説をしてもらうから、各自考えておいてくれ」
「わかりました」

言う事なんて、すでに決まっている。
ザトーとヴェノムは言うだけ言って、教室から出て行った。

「二人とも大変アルナ」
「おや、紗夢。貴方は傍観ですか?」
「どっちも応援してあげたいアルカラナ。どちらか一方に肩入れはできないアル」
「お心はありがたいですが、しかし、投票の際にはしっかり選んでくださいね。後悔のないように」
「そこは、自分へ一票お願いしますと言うところアルネ」

そろそろHRの時間だ。

「では、私は戻ります。また後ほど」

カイが出ていき、今度はジェリーフィッシュがやってきた。

「ばっちりだよソルっち!これで勝利はもらったね!」
「おはよう、バッドガイ君」

どんな手応えを掴んだのかは知らんが、気のせいだ。

「あの、ごめんね?勝手なことして。一応止めようとはしたの・・・」

こいつ一人ではあの三人を止められないだろう。

687名無しさん:2011/06/23(木) 05:24:55
アバ「・・・次回、決着、の予定」

ザッパ「ところで、ボクたち教師にも少しは出番を・・・」

アバ「・・・・・・」

ザッパ「何か言ってもらえませんか?」

アバ「・・・どんまい」

ザッパ「・・・・・・」

アバ「・・・機会があれば」

ザッパ「お願いしますよ?」

アバ「・・・・・・・」

ザッパ「なぜまた無言に」

アバ「それでは今日はここまで」

688名無しさん:2011/06/24(金) 02:26:08
体育館。全校生徒が集められる。

「それではこれより生徒会長を諸君に選んでもらうことになる。
 候補者は二人。カイ=キスクとソル=バッドガイだ。生徒会長に相応しいと思う方を選んで欲しい。
 では、投票の前に、少し選挙演説でもしてもらおうか」

ザトーが壇上から退く。

「どちらが先に行きますか?」
「好きにしろ」
「では、私からとさせてもらいましょう」

代わりに、カイが上がっていく。

「おはようございます、皆さん。カイ=キスクです。
 ザトーやソルに比べ未熟者ではありますが、皆さんに充実した学校生活を送ってもらうために、全力を尽くします。
 どうかよろしくお願いします」

一礼して、下がる。随分と簡潔だ。
しかし、生徒にはカイの意気込みは伝わっただろう。

「次はお前だぞソル」

ヴェノムに言われなくてもわかっている。
カイと入れ替わるように壇上に上がり、マイクの前に立つ。

「カイに入れろ。以上だ」

下がる。

「・・・いいんですか?あれで」
「ああ」
「貴様、対立候補を応援してどうする」
「元々、お前に勝手に推薦されただけだ」

白々しい御託はいらない。

「・・・それではこれより投票を開始する。投票が終われば今の位置に戻ってくれ。すぐに開票を行う」

投票が始まる。

「ソル先輩、もうちょっと空気読んでくださいよ」
「お兄さんがやる気がないのはわかってますけど・・・」
「・・・もう少しがんばりましょう」
「ま、あんたが真面目に生徒会長を目指すのも気色悪いけどな」
「私は面白かったわよ。次も期待してるわソル」
「はいはいみんな、今更ソルさんに何言っても無駄だから。投票に行きましょ」

エイプリルが1年をまとめて引き連れていく。

「散々言われてるな。無理もないことだがね」
「何の用だ」

スレイヤーがやってきた。

「なに、一つ面白いことを思いついたのだよ」
「なんだ」
「私が生徒会顧問をやっているのは知っているだろう?君は、それを引き継ぐ気はないかね?」
「断る」

すでに、俺が負ける前提か。それは構わない。
だが、仕事を増やすな。

「ふむ。やはりそう答えるか」

当然だ。

「ならば仕方がない。私の後任は他の誰かにやってもらうとしよう」

担当の顧問まで一年ごとに替わらなくていいと思うんだがな。

「誰がいいと思うかね?ジョニー、ポチョムキン、ザッパ、ファウスト。君なら誰を選ぶ」
「誰でもいい」

どうせ、名目上に過ぎない存在だ。
スレイヤーも、エディのやることにはほとんど口出しをしない。

「まあ、彼らの中から決めてもらうとするか。邪魔をしたね。君も投票に行くといい」

そうしよう。
どうやら俺が最後のようだ。
投票用紙に名前を書き、箱に入れる。

「さて、これで投票は終了だ。ご苦労だった。早速開票に移る!ヴェノム、準備はいいか?」
「はっ!用意はできてますザトー様」
「よし。諸君、どちらが次の生徒会長になったのか、すぐにわかるぞ。ではまず一票目――」

大した人数ではないので、全校生徒の前で集計作業を進める。
ザトーが次々と紙に書かれた名前を読み上げる。
そして、集計作業も終わった。

「・・・さて・・・厳正な選挙の結果、次の生徒会長が決定した。カイ=キスクだ。おめでとう」
「・・・ありがとうございます」

生徒達の間から、まばらに拍手が起こる。

「拍手が少ないな。もっと盛大に祝ってやろうではないか」

ザトーに促され、ようやく拍手が沸き起こる。

689名無しさん:2011/06/24(金) 03:45:13
「では、新生徒会長、と言っても貴様が活動を始めるのは三学期からだが、カイに勝利者コメントをいただこうか」
「えー、皆さんのおかげで生徒会長になれました。これからよろしくお願いします」

ザトーが今度は俺の方にやってくる。

「・・・あー、貴様にも一言もらっていいかな?」
「何も言うことはない」
「そう言うな。負けた気分はどうだ?」
「どうもない」

投票の結果、カイの得票率100%で勝利が決まった。逆に言えば、俺は得票率0%。
誰一人として俺に票を投じなかった。想定通りの結果だ。

「カイの得票率100%というのもザトー様を超える偉業ではあるのだが、まさかお前相手にこの結果になるとはな」
「・・・いい戦いでした」

開票当初、カイの名前が続いた時は生徒達も盛り上がっていたが、1/3を超えたあたりから徐々に静かになり、
終盤では、ひたすらカイの名前を読み上げ続けるザトーの声のみが響いていた。

「無様!負ケ犬!ワハハハハハ!!」
「おまっ、敗者に鞭打つ真似すんなって」
「ソルハオリジナルニ完全敗北シタ。ハーレムヲ築コウトシタ罰ダ。ヤーイヤーイ!」

選挙も終わったな。教室に戻るか。
それにしても、生徒の方からの哀れみ、同情といった感じの視線をやけに感じる。

「ソル、あんまり気にすんなよ?俺たちゃ別にお前が嫌いってわけじゃないからな?」
「そうだぜソル!人気投票じゃないんだから、誰もお前に票を入れなかったからって気にすること無いぜ!」
「チップ少し黙るアル。ソル、ウチの店でヤケ食いするなら、割引料金でいいアルヨ?」
「チップも闇慈も紗夢も気にしすぎだって。旦那がこんなことで凹むかよ。な、旦那?」

当然だ。

「にしても笑えるな。さすがに俺も旦那がここまで負けるなんて思ってなかったね」

俺にすれば、予想通りだけどな。

「ジェリーフィッシュとか、誰か入れるんじゃないかって思ってたんだぜ?」
「え、なんで?生徒会長選ぶならソル君よりカイ君だよ。迷う余地なんてない」
「バッドガイさんでも面白いかと思いましたが、やはりここはキスクさんが安定ですわ」
「それじゃゃなんでビラ撒いたりポスター作ってたりしたんだ?てっきり旦那を応援してるかと思ってたぜ」
「そりゃ、楽しそうだったからね。盛り上がるだけ盛り上がったし、いいんじゃない?」
「ひでえなお前ら」

いつも通りのジェリーフィッシュだ。

「ブリジットはどうなの?ボクはソルが生徒会長なんて無いと思ってカイにしたんだけど、どうしてブリジットはソルを選ばなかったの?」
「ウチはいつでもソルさんの味方です!なので、ソルさんが『カイさんに入れろ』と言った以上、カイさんに入れます!」
「うわお。それでいいのかブリちゃん」
「ディズィーちゃんもちょっと意外だったな。お兄さんに入れたんだと思ってた」
「ソルさんに地味な嫌がらせするの好きだもんね、ディズィーは」
「エイプリルさん、それは違います。私はいつもお兄ちゃんのためを想って行動してるんですから」
「どのあたりが?」

俺も聞いてみたい。

「貴方、せめて自分で自分に投票したら、こんな完全敗北なんてなかったんじゃないかしら?」
「普通はそうよね。自分に入れるものでしょう?」
「・・・カイもそうしてる」
「やりたくなかったんだろ。なら最初から立候補なんてしてんじゃないよ」

俺も出る気なんてなかったんだがな。

「ドンマイソルっち!残念だったね!」
「バッドガイ君、お疲れさま」
「あの投げやりな演説が決め手だったなあ。もうちょっとマシな台詞はなかったの?」
「ない」

俺にすれば、あれで完全に自身の勝ちを消したのだ。
これ以上の結果はない。

「一票も入らなかったのも、バッドガイ君の思惑通りなの?」
「ああ」
「やっぱり。バッドガイ君に入れなくて良かったの」
「えーなにさそれ。あたし達が昨日から頑張ったっていうのに」
「宿題から逃避したかっただけでしょ?バッドガイ君の宿題、ちゃんとやったの?」
「うっ」

やってないのか。
宿題をやらずにビラとポスター作りをしてたと。

「ほら、時には勉強より大事なものってあるんだよ」
「逃げて遊びたかっただけだと思うの」
「うぅ、その通りです。すいませんでした!」
「謝るなら私じゃなくてバッドガイ君なの」
「ごめんソルっち。宿題忘れちゃった」

そうか。

「放課後に補習プリント。それと、宿題は明日までにやってこい。当然今日出す宿題もやれ」
「うえ・・・勘弁してよ」
「だから、いつも宿題はちゃんとやろうって言ってるの」

騒がしい選挙も終わった。
次の時間は授業がある。仕事に戻ろう。

690名無しさん:2011/06/24(金) 04:11:35
紗夢「おまけ書いてて思いついたアルガ」

アバ「・・・なに?」

紗夢「ここで人気投票なんてやったら誰が人気アルカ?」

アバ「・・・・・・ミリア?」

紗夢「やってみるアルカ?人気投票」

アバ「・・・もうちょっと現実見て」

紗夢「誰かが一票入れたら、恐らくそれが優勝アルナ」

アバ「・・・一票で優勝ライン・・・」

紗夢「誰が優勝しても不思議じゃないアルナ」

アバ「・・・大混戦」

紗夢「全く混んでないアル」

アバ「・・・じゃあ、1m走」

紗夢「その例えは近い気がするアルヨ」

アバ「・・・やるの?」

紗夢「やらないアル。思いつきで言ってみただけアル」

アバ「・・・ですよね」

紗夢「そんなことより、次のイベントはどうするアルカ?」

アバ「・・・とりあえず、テスト?」

紗夢「定期イベントアルナ」

アバ「・・・他にないし」

紗夢「修学旅行はどうしたアルカ?」

アバ「・・・色々考えてるけど、とりあえずもう少し後で」

紗夢「そうアルカ」

アバ「・・・修学旅行ネタなんてどうすればいいんだろうね・・・」

紗夢「頑張って考えるアル」

アバ「・・・はい」

紗夢「それでは今日はここまで」

691名無しさん:2011/06/25(土) 01:09:12
朝、目を覚ます。テスト前の、最後の休日。
猫をベッドから追い出し、起き上がる。着替えてから、一階へ。

台所に向かうと、すでにミリアがいた。

「おはよう」
「ああ」

珍しい、というよりも初めての事態だ。

「早く目が覚めたのよ。だから、たまには私が朝食を作ってもいいでしょう?」
「ああ」
「すぐにできるわ。猫達と遊んでてあげて」

なら待つとしよう。椅子に腰をかける。
猫と遊べというのは・・・朝食を作ってもらうなら、それぐらいするか。
足元にいたサンタナを抱え上げる。猫の気持ちなどわかりはしないが、驚いているように見える。
俺がこんなことをするのは初めてだからな。撫でてやろう。

「生徒会長選挙、残念だったわね」
「どこがだ」
「誰も貴方に票を投じなかったじゃない」
「予定通りだ」
「負け惜しみでなくて?」

好きなように解釈すればいい。どう思われようと知った事ではない。
撫でていると、サンタナが喉を鳴らす。

「いざこうなってみると、貴方に猫という組み合わせも、随分似合わないわね」

なんとでも言え。猫と遊べと言ったのはお前だ。

「まあいいわ。お味噌汁も完成、と。きんぴらごぼうも作ったし、冷奴もあればいいかしら?
 後は魚が焼ければ完成ね。ソル、ご飯をよそってくれるかしら?」
「わかった」

それぐらいはする。サンタナを降ろし、手を洗ってからご飯をよそう。
撫でている途中で降ろされたからか、サンタナは不満そうに鳴いている。
ついでに、他の猫も鳴いている。自分も撫でろとでも言っているのか。

「・・・魚の焼き加減ってよくわからないのよね。貴方は生焼けでもなく焦がしもせずに上手く焼くけど。
 なにかコツでもあるのかしら?」
「数をこなせ」

経験でどうにかなるものだ。
ディズィーがそうだった。昔はよく中まで火が通っていなかったり、焦がしてたりしたものだ。
ミリアも基本的な料理はできるようだが、まだそれほど慣れているわけではないようだしな。

「もっと明日から手軽に使えるようなコツはないの?」
「焼き時間を計れ」

時間通り焼いたら、それ以上余計な真似をしないことだ。
見た目でまだ焼けてないように見えるからと、さらに焼くなんてすれば焦がすことになる。

「普通のアドバイスね。貴方らしい、もっと画期的な方法はないのかしら」
「ない」

台所のグリルでなく、自分の炎を使っていいなら、一瞬で焼き魚を完成させてみせるがな。
ミリアには無理な話だ。

「まあいいわ。完成したから、食べましょう」
「ああ」

配膳も終わり、再び席に着く。

「いただく」
「いただきます。どうぞめしあがれ」

食事を始める。

「・・・どうかしら?」
「まあまあだな」
「不満があるなら、ストレートに言ってくれていいわよ?私も、より上達できるというものだし」

なら言おう。

「味噌汁、随分と作り足したな」

最初に作った分に対して味噌が多かったのだろう。水を足している。そして今度は薄味になりすぎ、また味噌を足す。
それを何度かやっている。具の量が少ない。それに、最初に出汁を取った意味もほとんどなくなっている。

「2人分作るのって、意外と難しかったのよね。・・・おかわりしてちょうだい」

それはまあいい。

「魚は少し焼きすぎだな」
「ええ、それは反省してるわ。次からは上手くやるつもりよ」
「きんぴらごぼうは味見したのか?」
「してたけど・・・少し辛いわね」
「醤油が多すぎたな。もう少し減らせ」

適量、を把握していないようだ。

「全体的にまだまだってわけね」
「いや、細かい事を言っただけだ。これが自分の好みだと言えば、それが通る程度にはできている」
「・・・そう。味噌汁のおかわりはどうかしら?」
「もらおう」

ミリアの好みではないような味だから指摘したがな。

692名無しさん:2011/06/25(土) 02:34:27
朝食も終わって。

「お茶どうぞ」
「ああ」

食後の茶を出される。

「まだまだ経験不足ね」

ディズィーの料理の手伝いをしているようだが、本当に手伝い程度のことらしい。
味付けや調理はディズィーが主にやっているのだろう。
自分にやらせてもらえるようにディズィーに頼めば、すぐに上達する。

「・・・・・・・ところで」

そこで、ミリアが話題を変えた。

「どうして、何も言わないのかしら?」
「どうでもいいからだ」

ディズィーとも決めたしな。

「何の話かわかってるの?」
「この家にいるかどうかという問題だろ」
「え、ええ。その通りよ」

さっきまでの料理の話は、ミリアがこの家に居続けることを前提に話していた。
そのことに、ミリアには何か思うところがあったのか。今まで触れなかった話題を持ち出した。

「どうでもいいって、そんな軽い問題でもないと思うのだけど?」
「お前にとってはそうかもしれんが、俺とディズィーにとっては大した問題じゃない」
「・・・恐れいるわ」

認識の違いだ。

「学生寮も完成したわ。『出て行け』って言わないの?」
「さっき言った。どうでもいいと」
「でも、貴方は以前、私が居候することに反対してたじゃない」
「当然だ。他人を家に泊める理由がない」
「その通りね。私も、我ながら無茶な要求してると思ってたもの」

結局、ディズィーの一存で居候させることになったがな。

「なら、どうして今は私が居続けることに反対しないのよ」
「反対する理由がない」

すでに、ミリアとの同居にも慣れた。
今更追い出すほどのこともない。

「色々厄介になってることだし、それだけでも反対理由には十分だと思うわ」

厄介だとは思ってない。俺もディズィーも。
ミリアが勝手に思っているだけだ。

「とにかく、一度きっちりしておきたいの。夏休みから今まで、私をこの家にいさせてくれてありがとう。感謝してるわ」
「そうか」
「それで、最初の約束の『寮が完成するまで』というのは期限がきたわ。
 ・・・とっくに完成してたのに、今まで話しを切り出せなかったのはごめんなさい」
「ああ」
「もうこの家で暮らさせてもらう理由もなくなったわ。だから、私は・・・」

どうする気だ。

「私は・・・・・・」

その後が続かない。
残るのも去るのもミリアの好きにすればいい。
決めるのはミリアだ。俺が口を出すことじゃない。

しかし、しばらく待っていても、ミリアはまだ悩んでいる。
恐らく、常識的に考えれば出て行くべきだと思っているのだろう。
だが、それを口に出せない。まだここにいたいらしい。よほどこの家が気に入ったと見える。
ミリアの答えが出るまで、膝に飛び乗ってきたトラでも撫でていよう。

「・・・猫達は、随分と貴方に懐いてるわね」
「そのようだな」
「この子達がいなくなったら、貴方も少しは寂しいんじゃないかしら?」
「いや」

いなくなるなら、それまでだ。

「薄情ね。でも、ディズィーは悲しむんじゃないかしら?」
「ミリア」
「な、なによ?」
「追い出しはしないが、引き止めるつもりもない」
「・・・・・・」
「お前が決めろ」

俺の方から、この家に残ったらどうかと言わせたかったのだろう。
そんな事はしない。

満足したのかそれとも飽きたのか、トラは膝から降りた。代わりにミケが乗ってきた。
そいつも撫でてやる。猫でも、個体によって微妙に撫でられる箇所に好みの差があるようだ。

ミケを撫でていると、ミリアはついに決心がついたのか、口を開いた。

「・・・非常識なのはわかってるわ。でも、お願いします。私をこれからもこの家に住まわせてくれませんか?」
「ああ。いいぞ」

残るのか。構わんさ。

693名無しさん:2011/06/25(土) 03:15:31
「・・・いいの?」
「ああ」
「・・・・・・随分とあっさりね」

ミケを撫でていると、また膝から降りていった。他の猫のところへ向かう。
そして今度はブチか。

「貴方のことだから、頼んでも『断る』の一言で斬られると思ってたわ」

ディズィーと話をつけていなければ、そうしていたかもな。
ミリアが何も言い出さなければ、あのままの状態だっただろうが。
しかしあえて、再び俺に頭を下げた事は認めてやろう。

「その、ほら。猫達も貴方に懐いているようだし、離すのも猫が可哀想だと思って」

寝るなブチ。

「それに、この家にも慣れているようだし、今から寮に移動すると生活が変わって大変じゃない?」

言い訳などしなくてもいい。興味がない。

「だから・・・・・・それに、私もまだこの家にいたいのよ。いいの?」
「ああ」

さっき了承したはずだ。

「なんなのこれ・・・。最近ずっと、どう話そうか悩んでたのに」

悩んだ挙句、朝食を作って少しでもご機嫌取りか。もうちょっとマシな方法を考えたらどうか。

「もういいわ。とにかく、これからもよろしくお願いするわ、ソル。ディズィーにも後で話しておくから」
「ああ」

今回は、ディズィーより先に俺に話をつけたのか。
ディズィーを使えば俺の説得は容易だが、それをするのはミリアとて敬遠したらしい。
随分と非常識な頼みごとをするのだ。ミリアなりの、せめてもの誠意なのかもしれない。

「それにしても、さっきから貴方のその猫達からの大人気っぷりはなんなの?」
「知るか」

話も終わった。なら、掃除をするか。ブチを床に下ろす。
ミリアの話に時間がかかったので、ディズィーが起きてくるまであまり余裕がない。

「掃除するの?なら、私も手伝うわ」
「なら、二階の廊下掃除と、階段を掃除しろ」
「わかったわ」

遊びは終わりだ。どけ、猫共。
まずは、洗濯からだな。

694名無しさん:2011/06/25(土) 03:18:41
ジョニ「ミリアは結局残るのか」

アバ「・・・決め手はねこ」

ジョニ「まさか、夏休み始めた頃はこんなことになるなんて思ってもなかったぞ」

アバ「・・・ねこを飼ってなかったから」

ジョニ「どこまで猫を推すんだお前は」

アバ「・・・ねこ大好き」

ジョニ「ほどほどにな」

アバ「・・・うん」

ジョニ「それでは今日はここまで」

695名無しさん:2011/06/26(日) 18:15:35
人気投票ならあげなきゃ

俺はジャムね


でも、ここで投票くて1050に近づくと
作者むりやり終わらせそうで怖い

696名無しさん:2011/06/26(日) 18:32:20
いやいや、いちいちageんなよ…
>>1もみんなもずっとsageてひっそり書いてきたのに…

697名無しさん:2011/06/27(月) 00:01:22
>>1は人気投票を本当にやるとは言ってないけど、もしやったなら俺はブリジットだな。
ブリジットにあんなに積極的に迫られたら、男ってわかってても可愛すぎて惚れちまうわw
ブリジットにはがんばってソルを振り向かせてほしいわw

698名無しさん:2011/07/04(月) 01:32:45
確かにこのSSの鰤はかわいいね
鰤の恋が実るように応援してあげたい

699名無しさん:2011/07/12(火) 06:58:26
保守
続き楽しみにしてるよ〜

700名無しさん:2011/07/15(金) 00:14:44
朝、登校途中。

「結局、ミリアさんはソルさんの家で居候を続けるんですね?」
「そうなるわね」
「ずるいです!ウチもソルさんと同じ家で暮らして同じ部屋で過ごして同じベッドで眠りたいです!」
「そこまでやってないわよ」

やはり、ブリジットがうるさい。

「どうなってるんですかソルさん!?ミリアさんの同居を認めるなら、ウチだって居候させてくれてもいいじゃないですか!」
「断る」
「どうしてですか!?」
「許可する理由がない」

何故ブリジットまで家に置いてやらなければならないのか。

「こうなったら、ウチは無理やり押し掛け女房になりますよ?それでもいいんですか?」
「駄目だ」

いいわけがない。

「じゃあ、せめて通い妻になります。それならいいですか?」
「断る」

お前が家に来て何をするというんだ。

「家事全般やります!ウチはいいお嫁さんになれる自信があります!」
「ブリジットさん、家事は私がやっているんですけど」

ディズィーが口を挟む。

「家事はウチに任せて、ディズィーさんはのんびりしてていいですよ?」
「そう言われましても。私も家事は好きでやってますし、今はミリアさんもいますから」
「大体、家事ができるってソルを相手には何の自慢にもならないんじゃないかしら?彼こそ家事万能な主夫じゃない」
「そ、それを言われると困ります・・・」

ブリジットに任せるより、自分でやった方が早く、かつ上手くできる。
普段はディズィーに任せているが。

「・・・だったら、ウチは現地妻になります!ソルさん、学校帰りにウチの家に寄ってください。いつでももてなします!」
「断る」

すぐ隣に我が家があるというのに、寄り道をする必要がない。

「もうウチはどうすればいいんですか!?」

何もするな。

「ディズィーさん。ディズィーさんからソルさんを説得してもらえませんか?ウチもソルさんやディズィーさんと一緒に生活したいです」
「すみませんブリジットさん。それはちょっと」
「以前も言った気がするけど、貴方の判断基準が本当にわからないわディズィー」
「ウチにもわからないです」

俺にも理解出来ない。
ディズィーの考えに口を出す気はないがな。

「うーん・・・そうですね。もし、私がブリジットさんもうちに住んでいいですよって言ったらどうします?」
「今日にでも引っ越します!」
「迷いないわね」
「当然です」

嬉々として家にやってくるだろう。

「でもですね、お兄ちゃんはブリジットさんとの同居に反対してるんですよ?
 ブリジットさんは、私の許可とお兄ちゃんの不許可、どっちを取るんですか?」
「それは」
「ブリジットさんはいつでもお兄ちゃんの味方なんですよね?」
「・・・そうです」
「だったら、私が許可しても、お兄ちゃんの言う事に逆らったりしませんよね?」
「・・・・・・そうなります」
「ですから、お兄ちゃんが折れない限り、ブリジットさんはうちには住めないことになります」
「ソルさん!ウチと同居、いえいっそ結婚しましょう!」
「断る」
「残念ですねブリジットさん」

なぜ結婚にまで話が飛んだ。同居でも認めないというのに。

「ディズィーが許可してるなら、強引に住んでしまえばいいじゃない」
「そうはいきません!ウチはソルさんに嫌われたくないんです!」
「・・・何が貴方をそこまで駆り立てるのかしら。ていうか、現時点でソルに嫌われてないと思ってるの?」
「え・・・」

ミリアが、あっさりと核心的な事を言う。

「・・・ごめんなさい。今の発言は忘れてちょうだい」
「あ、はい・・・」

目に見えてブリジットのテンションが下がった。静かでいい。が、

「お兄ちゃん」
「なんだ?」
「正直に答えてくださいね?ブリジットさんのこと、好きですか?嫌いですか?」
「どうでもいい」
「だそうですよブリジットさん。嫌われてないそうです。良かったですね」
「はい!」
「『好きの反対は嫌いじゃなくて無関心』なんて、そんな言葉がなかったかしら」
「嫌われるぐらいなら、無関心の方がずっといいです!」

また騒がしくなった。

701名無しさん:2011/07/15(金) 01:33:37
「おはよーみんな」
「おはようです」
「ジェリーフィッシュのみなさん、おはようございます」
「おはよう」

学校に着いて、ジェリーフィッシュと遭遇する。

「おはーソルっち。今日からテストだよ。やだねぇ」

俺には関係ない話だ。

「ソル君はいいよね。テストの苦労がないんだから」
「でも、若い頃の苦労は買ってでもしろって言うよ〜。ソルちゃんは何か苦労してる?」
「じゃあ、ソル先輩は私の代わりに1年のテスト受けてみませんか?私はソル先輩の代わりに自室で休んでますから」
「お前が楽したいだけでしょっ。わるお、私と代わろう」
「姉ちゃんも同じじゃん!」

騒がしい連中だ。そこへ、

「ミリア!おお我が愛しのミリア!朝からお前に会えるとは今日は素晴らしい日になりそうだ!」
「うるさいのと会っちゃったわね」
「よう、ミリア」
「・・・おはよう」
「ええ、おはよう」
「結婚シテクダサイ」
「お断りよ」
「何故ダ!?」

寮の連中も現れた。

「おはようミリア」
「イノ、おはよう」
「聞きたいことがあるけど、いいかしら?」
「なに?テスト勉強でわからないことでも?」
「いえ、テストは関係ないわ。ただ、あなたがいつ頃寮に戻るのか気になってるの」
「・・・・・・」
「週末にソルに話すって言ってたから、どうなったのか気になってて」

イノの質問に対し、ミリアは答えに窮する。
昨日解決したばかりの問題だ。まだイノ達には伝えてなかったか。

「そうだミリア。私も待っている。お前はいつになったらソルの家を出るのだ」
「早ク我輩ノ嫁ニ来イ」
「馬鹿を言うなロボ!ミリアを娶るのは貴様じゃない。私だ!」
「ボンクラガ!我輩ノ方ガ相応シイ!!」
「アンタ達は黙ってな!で、どうなんだいミリア?」
「・・・気になる」
「それはその・・・」

俺やディズィーを見て助けを求めているようだが、ミリアの問題だ。
手を貸す理由もない。
教室に行くか。

「おっす旦那。朝から3人ものカワイコちゃんに囲まれて登校なんてうらやましいねえ」
「アクセル、貴方の彼女が後ろにいますが?」
「え?」
「・・・・・・」
「いや、違うぜめぐみ?別に浮気したいとかそんなんじゃなくて、ちょっと旦那をからかっただけっていうか」
「・・・・・・」
「ちょっ、待ってくれ!絶対誤解だって!」

アクセルに声をかけられたと思ったら、すぐに消えていった。

「やれやれですね。おはようございますソル」
「ああ」

昇降口にて靴を履き替え、教室に向かう。

「おはようアル。なんだか校庭が騒がしかったケド、何かあったアルカ?」
「知らん」

恐らく、ミリアの話を聞いたザトー辺りが原因だろうが。

「テストは憂鬱アルナ。ま、テスト明けのソルの家でのパーティを楽しみにして、乗り切るアルヨ」

当たり前のように俺の家に集まる気でいる。
勝手に決めるな。

「どんな料理を作るか考えてるアル。何か希望は有るアルカ?」
「ない」

まず、集会を認めていないのだ。

「後でみんなにも聞いてみるアル。ソルも食べたい物があったら言って欲しいアルネ」

他の場所でやればいいものを、何故俺の家に来るのか。
紗夢から離れ、自分の席に着く。

少しして、ジェリーフィッシュの2人がやってくる。

「ソルっち、聞いたよ」
「これからもレイジさんと一緒に暮らすって」
「家族ができるってのはいいもんさ。やるじゃん」
「ザトーさんや梅軒さんは少し怒ってたみたいだけど」
「修羅場だね。ファイトだソルっち」

何もがんばることなどない。

702名無しさん:2011/07/15(金) 02:34:05
テストが始まった。
屋上に行かず、自室にてスレイヤーに渡された事務仕事を片付けていると、ドアがノックされた。

「誰だ」

テストが始まったばかりだ。
この時間にここへ来れる者など、手の空いている教師か、でなければ

「・・・お邪魔します」

アバぐらいしかいない。
仕事を続けながら応答する。

「何の用だ」
「・・・ミリア」

他に用件もないか。

「・・・なんで?」

ミリアに聞け。俺の知ったことじゃない。

「・・・・・・手篭めにした?」
「ねえよ」

そんなにミリアが俺の家に留まるのが不自然か。
確かに、そう見られても仕方のない面もあるが。

「・・・じゃあ、どうして?」
「知らん」

ミリアに聞けばいいだろう。
俺にすれば、あいつが我が家に居たい理由などどうでもいい。

「・・・・・・弱みを握った?」
「ねえよ」

そうまでして家に置いておきたい理由もない。

「・・・不思議」

勝手に推測していればいい。
アバが少しばかり沈黙したところで、再びドアを開けられた。

「ソル!貴様どういうことだ!説明しろ!!」
「うるさい」

ザトーか。こいつも短時間でテストを終わらせ、ここに来たらしい。

「む、失礼。テスト中だったな。では改めて、一体どういうことだ?」
「知らん」
「知らないでは済まされないだろう。同年代の異性が同居するなど普通の事態ではない。それがミリアでなくともな。
 生徒会長として、事の経緯を知っておく必要があると判断した」
「ミリアに聞け」
「聞いてはみたが、私には関係ないの一点張りでな。取り付く島もない」

なら、お前には関係のないことだ。
相手が生徒会長であれ、説明する必要はない。

「・・・黙秘権は認められていない」
「そうだソル。貴様に人権はない。素直に全てを白状しろ」
「断る」

仕事も大分消化した。残り少しだ。

「・・・やっぱり、人には言えない事情が・・・」
「なんだと!?ソル、貴様!ミリアに何をした!!」

家に泊め、猫の飼育を許可し、たまに朝食を作った。
その程度だ。

「・・・貴方達、何をしてるの?」
「ん?おお、ミリア」

ミリアもテストを終わらせ、やってきた。

「珍しくアバが教室を出るから何かと思えば、私関係みたいね」
「・・・うん。・・・なんで寮に戻らないの?」
「今朝も説明したでしょう?住めば都と言うし、猫達も今の家と、ソルやディズィーにも懐いてるもの」
「・・・私達と寮暮らしするのが嫌とかじゃなくて?」
「そんなことはありえないから。安心してアバ」
「・・・・・・わかった」

アバは、それで一応納得したらしい。

「私は認めんぞ!」
「貴方に認めてもらおうなんて思ってもないわ」

その必要もないしな。

「ぐぅ・・・ならば、せめてこれだけははっきりさせておいてくれ」
「なによ」
「決してソルに惚れて同居を続けるということではないのだな?」
「ええ」
「ならば・・・今はよしとしよう。ミリア、いつか必ずお前を私に振り向かせてみせる!」
「・・・ザトー、ちょっとかっこいい」

アバがザトーを褒める。ミリアは呆れているようだが。
仕事が終わった。後は屋上へ行き、テストが終わるのを待つとするか。

703名無しさん:2011/07/15(金) 02:57:13
メイ「ソルってほとんど何もしてないよね」

アバ「・・・うん」

メイ「一応主人公なんだよね?」

アバ「・・・うん」

メイ「でもさ、ソルを無視して話が進んでいってる気がするんだけど」

アバ「・・・うん」

メイ「これでいいの?」

アバ「・・・うん」

メイ「いいんだ」

アバ「・・・実はソルがいない方が会話させやすい」

メイ「ちょっとヒドくない?」

アバ「・・・仕方がない」

メイ「一応主人公なのにね」

アバ「・・・ね」

メイ「それでは今日はここまで」

704名無しさん:2011/07/18(月) 02:26:30
全てのテストが終了した放課後。
最後に行われたテストの採点を自室で行う。

コンコン

とドアがノックされた。

「失礼します」

カイか。

「何の用だ」
「お時間は取らせませんよ」

テストの採点中に生徒を同席させるのは問題ではあるが。
気にすることでもないか。

「お仕事の邪魔をしてすみません」
「用件は」

前置きはいい。

「そうですね。先日、私が次期生徒会長に選ばれたのは知っての通りです。
 そこで、現在は生徒会役員を探しているところなのですが、ディズィーさんを役員にどうかと思いましてね」
「ディズィーに聞け」
「もちろんそうします。しかしその前に、一応兄である貴方の了解を取っておこうと思いまして。
 彼女が生徒会入れば、帰りが遅くなったりすることもあるでしょう。彼女は貴方の家の家事を担っているのですよね?
 貴方も仕事がありますし、何か不都合があるというのであれば誘いませんよ」
「問題ない。ディズィーに参加の意思があれば、それを尊重する」

家事なら自分でもできるし、今はミリアもいる。

「そうですか。では、遠慮せずに勧誘させてもらいます」
「ああ」

ディズィーならば、能力的にも問題はないだろう。

「ついでに、貴方も生徒会に入る気はありませんか?」
「ない」
「ま、そう言うとわかってましたがね。しかし、何か行事がある時は、貴方の力を借りるとこもあるかもしれません。
 その時は生徒会に協力してもらいますよ」
「ああ」

自分も票を投じた生徒会長だからな。

「では、私は失礼します。また後ほど。みなさん、貴方の家に集まっているようですしね」

勝手なやつらだ。
カイが部屋から出て行く。
テストの採点も残り少しだ。さっさと終わらせるとしよう。

全てのテストの採点が終わる。
今回、久しぶりに補習者が出た。梅軒とブリジットとメイ。いつもギリギリな連中。
テストの難易度は上げていない。ミリアの件で集中力を無くしたか。
ザトーなども明らかに点数を落としているしな。アバだけは相変わらず完璧だったが。
しかし理由はどうあれ、補習を行なわなければならない。
補習用の授業準備をするか。再テストも行うので問題の作成も必要だ。

それらも終わり、今日の業務は終了。
家に帰るとしよう。
その前に、職員室により、成績の提出をするが。

職員室。

「お疲れさまです」
「女遊びは程々になあ?後ろから刺されても知らないぜ」
「羨ましいですねえ。僕も嫁を探しているのですが、中々上手くいきません」
「貴殿の傍にはいつも・・・いや、なんでもない」

茶化してくる教師連中を無視し、スレイヤーに必要書類を提出する。

「ああ、ご苦労。それに、ミリアの住所変更手続きも受け取った。こちらで処理しておこう」
「ああ」
「ついでに戸籍改竄でも行うかね?どんな間柄が希望だ。妻でも妹でも娘でもいいぞ」
「必要ない」

ディズィーとて他人のままだ。ミリアもそれでいい。

「とやかくは言わんがね。しかし一応言っておくが、節度は保ちたまえよ」

同居を許可しただけで、それ以上の関係ではない。

「君にはいらぬ忠告だろうとは思うがな。とにかく、ご苦労だった。仕事もないし、帰ってくれて構わんよ」
「ああ」

理由もなく長居するつもりはない。
帰るとしよう。


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