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我の名は新人! 新時代の先駆者!!
563
:
名無しさん
:2013/08/06(火) 00:00:05
俺には過去しかない。
数年ぶりに戻った外には“今”がない。人への連絡手段もないし、身分もない。
捕まったあの日のように、過去を振り返る。
通っていた都立高校は廃校になっていた。
空き地になったその場所を、随分と急に無くなったものだと眺めていると、横に並んでくる人間がいた。何処かで見覚えのある青年。名前もクラスも覚えていないが、同級生だった人間なのだと思う。
「母校が無くなってしまうのは悲しいものですね」
そう話し掛けてみた。
両親に捨てられ、過去の人間との繋がりすら失った俺は交流に飢えていたのだと思う。だからこうして人を求める。一、二言話せるだけでよかった。きっと、それだけで救われた気分になる筈だ。
相手の男は此方を見て、好意的に微笑みかけてくる。
「久しぶりです。そうですね、感情的な話をするならば、やはり悲しいというのが本音です」
彼もまた、俺の事を覚えていたらしい。どの程度だかは分からない。名前やクラスも知っているかもしれないし、漠然と顔や暴力事件だけを覚えているのかもしれない。
高校生活など遠い昔の話。もうかれこれ八年近く前のことなど詳しく覚えていようもないが、この男とは在学中に交流が無かった気がする。実質的な初対面だが、母校が同じと言う共通点だけで身近に感じられた。
「俺は七年ぶりにこの街に戻ってきたもので、廃校には驚きました」
「そうでしたか。最近は廃校になる都立高校が多いですから、仕方がないのでしょう」
以降、言葉も交わさず、二人並んで空き地を眺めていた。
どちらからともなく、そろそろ、などと独り言のように呟いて、俺達は別れた。もうこの場所には来ることもないだろう。
母校の廃校以上に衝撃を受けたのは、通っていたゲームセンターの閉店だ。
元々ゲームセンターだった場所はカラオケ店に居抜されていた。街で唯一ビデオゲームが流行っているゲームセンターだったので、残念だ。
ここにいた仲間は何処へ行ったのだろう。そもそも、仮にゲームセンターがあったとして、嘗ての仲間がゲームをやっている保障など何処にもなかった。
比較的若手だった俺ですらもう25歳になる。流石にゲームを辞めていてもおかしくない年齢だ。
ゲームセンターだった場所の隣、あの806号室のあるビルへと昇る。
疚しいことなどする心算もないので、階段ではなくエレベーターで上がった。
八階に着くと、丁度エレベーターに乗ろうとしていた一人の女性と擦違う。不審に思われては堪らないので軽く会釈。相手も笑顔でそれに応じ、何事もなくエレベーターに乗り込み、扉を閉めた。
嘗ては空き部屋だらけだったこのフロアも、半分くらい入居者がいる状態となっている。
806号室にも人が住んでいるようで表札には近衛と書かれていた。心中複雑だったが、全て終わった過去だと割り切って、806号室の前で踵を返す。
ここも今では俺の場所じゃない。
この街に、この世界に、俺の居場所などあるのだろうかと思い始めた。
やがて辿り着いたのは、中学時代に通っていた学習塾のあるビル。
当時あった塾など残っていない。
エレベーターに乗って最上階で降り、外の非常階段へと出る。あんな事件があったからか。施錠は厳重なものとなっていた。
だが、横から手を伸ばして解錠できるのは相変わらず。それでなくとも手すりの脇から侵入できそうだった。
難なく施錠を突破して、形式的に侵入対策が為された屋上へと上がる。
この場所だけは、何も変わらなかった。
相変わらず安全策が為されておらず、視界を遮るものは何もない。初めて知っている場所に帰ってきた気分になった。
屋上の隅に立ち、煙草を咥えながらあの時の事を思い出す。
俺が正光寺に嵌められてヤクザに追い詰められた日。そして俺が逮捕された後の話。
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