したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | メール | |

我の名は新人! 新時代の先駆者!!

552名無しさん:2013/08/01(木) 00:15:19

西側にある駐車場にもパトカーが到着したらしい。サイレンの音を聞いて下を覗くと、西側では黒服の男と警察官が揉み合いになっていた。
俺達は三人並んでそんな光景を眺めている。
事態が収拾に向かったら、エレベーターを降りて警察に確保してもらおう。そんなことを考えていると、文香が口を開く。
「それにしても、江嵜お姉さんはどのようにしてこんなにも大量の警察官を呼んだのですか?」
それは江嵜に対する質問だった。
俺も同じく気になっていた内容だ。普通に薬物使用や売買の通報を受けても、これほどの人数が動員されることなどないだろう。
薬物使用や所持は拘留期間の短さ故に、確実に現場や物を押さえられる場合にしか動かないと聞く。では、何故これだけの人数が動いたのだろうか。
江嵜は「正直、文香ちゃんとは話したくもないけど、」と子供じみた前置きをして語る。どちらが年下だか分かったものではない。
「最初は薬物持ってる人がいますって言ったけど担当部署がなんだとかで、すぐには来てもらえないみたいだったの。だから、変な人がビルに侵入してるって言って通報した。次に、暴漢に襲われそうだって通報。これは嘘だったけど、本当になったみたいだね」
この場合、暴漢というよりは暴力団なのだが。そう大きくは変わらないだろう。
「なるほど」
文香は感心しているようで、どこか悔しそうでもある。
先程、彼女も携帯電話を取り出して何かをしていた。もしかしたら同じように警察を呼ぼうとしていたのかもしれない。だとすれば、手際が良かった江嵜に対して劣等感を覚えているのだろう。
そんな文香の表情を知ってのことか、江嵜は話を続ける。
「他にも、飛び降り自殺します、だとか、今から薬物使いますって予告だとか、もう必死になって電話を掛けた。後半は怪しまれてたみたいだけど、一応通報があったら現場に人を送らなければいけないらしく、それで偶然に暴力団でしょ。続々と増援が集まってる感じじゃないかな」
偶然にも、彼女の通報は其々が噛みあっていて、信憑性が生まれていた。
彼女は暴力団から入手した薬物を所持、そして使用している。何らかのトラブルが切っ掛けで自宅に彼らが押し掛け、逃れるために投身自殺を考えている。
要約するとこのようになる。順序がカットアップされているところも薬物使用者風だ。
受けた通報を管理している担当者はきっとこう考えたことだろう。

偶然が、運が、江嵜の行動が、すべてが噛み合って首の皮一枚繋がった。
安堵しながら一息つくと東側が突如として騒がしくなる。

停車中のパトカーからサイレンが鳴りだした。

気になって東側を見下ろす。
パトカーが次々に発車している。それらのパトカーの向かう先には、ランプもサイレンもつけずに蛇行するパトカーが一台。
明らかに強奪されたらしいその車両は、赤信号も交通標識も全て無視し、まるで警察を挑発するようにビルの周りをぐるりと回っていた。

すっかり雨量も少なくなり下の光景が良く見えた。
少なくとも、車の運転席から顔を出した人間の髪色くらいならば、問題なく確認できる。

奪還されたと思われるパトカーから挑発的に顔をだしている男は金髪。
前髪はカチューシャで上げていて、俺と同じくらいの背格好だろう。

ああ、間違いない。

パトカーで蛇行と周回を繰り返しているのは正光寺だった。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板